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天に祈りを、夢に眠りを

#エンドブレイカー! #水神祭都アクエリオ

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#エンドブレイカー!
#水神祭都アクエリオ


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●星鏡の泉へ
 水神祭都アクエリオ。
 其処は無限の水を湛える巨大な水瓶を中心に発達した都市国家だ。星霊建築によって都市中に巡らされた運河には『アクエリオの水瓶』より溢れる恵みの水が流れている。
 水と共に生きる人々の主要な移動手段は特別なゴンドラ。ペンギンの姿をした星霊ディオスを用いた星霊魔法が宿された舟をゴンドラ乗りが漕げば、自由自在に祭都を行き交うことが出来る。
 そんなアクエリオの中層辺りの街にて。
 意気揚々と運河を進むのは、少女が漕ぐ真白なゴンドラだ。
「やあ、元気かい?」
「こんばんは、お兄さん。そろそろ日が暮れてきていい雰囲気ですね。お星様を眺めるのに絶好の夜です!」
 運河の横に伸びる煉瓦造りの道から青年が声を掛けてくる。
 少女は顔見知りの青年に手を振った後、きらきらと瞳を輝かせた。そのゴンドラの先端には普段は飾っていない星型の小さなランプが吊るされている。
「そういや今日はエストレリヤの日だったな。てことは、嬢ちゃんはこれからの時間が稼ぎ時ってわけか」
「はい! 今夜は星鏡の泉への航行予約がたくさん入っていますから!」
「気合いが入ってるねえ」
「だって今夜は星霊の夜空がひときわ綺麗に見える夜ですよ。私もお客様と一緒に夜空をしっかり眺めるつもりです。お願い事なんかもしちゃったりして……えへへ」
 ゴンドラ乗りの少女は今夜の星見祭を実に楽しみにしているらしい。
 街の人々に『エストレリヤの夜祭』と呼ばれる今宵は、この地域の者にとっては特別な時間だ。
 目的地は澄んだ水で満たされた泉。
 祭りの内容は泉にゴンドラを浮かべ、その上から巡りゆく星を眺めること。
 この夜のために用意されるのは特別な星型のランプ。淡い光は手元だけを照らしてくれるので、ゆっくりと夜空の巡りに浸ることができる。
 舟から見上げる夜空も美しいが、此処では水面に映った星を見ることも好まれている。揺らめくゴンドラの上で温かい紅茶やココアを飲んだり、共に舟に乗る人と秘密の話を交わしたり、持ち込んだ美味しいものやお酒で乾杯したりと、過ごし方は人それぞれ。
 ゴンドラ乗りの少女は、『星のランプに願い事を込め、泉の水面に映せば空へと届く』という言い伝えを信じているらしい。そのため、純白のゴンドラにも星型の灯火が繋がれていた。

 今宵は星の夜を楽しむ日。
 ちいさな幸せが訪れる夜のはずだった。しかし、其処には災いの影が迫っている。
 その首謀者は過去から蘇ったマスカレイド、夢姫レム。
 彼女は幸せな夜を虐殺と悲鳴で満たし、エリクシルの力を巡らせようとしていた。
「壊せば誰かが祈ってくれるはず。『あんな事件が起こる前に戻りたい』って。そうなればわたしの夢のお城も、たくさんのおもちゃも、夢のお友達も戻ってくるよね」
 幸福を壊せばいい。そのように考える夢姫は薄く笑っていた。見た目は幼いが、彼女は邪悪に染まってしまっている。自分の夢のために人々の夢を壊すことに躊躇などせず、ただ不幸を呼ぶだけの存在だ。
 そして、夢姫レムは両手を広げる。
「さぁ――わたしのカーニバルを、もう一度はじめましょう」

●迫る闇と歪んだ夢
「やあ、久し振り。いや……初めましての人の方が多いかな」
 エンドブレイカーのひとり、イスルギ・アイゼン(灰雨・f38910)は軽く片手をあげて挨拶をした。世界が繋がったことで猟兵にも覚醒した彼は、自分達の故郷の世界で事件が起きそうなのだと説明する。
 星霊建築の力によって街が積み重なる形で作られている都市国家。
 此処では魔法の力の影響で、頭上に天蓋のある階層でも屋外同様の空が見られる。その中層にある街で『星鏡の泉』と呼ばれている区域では、ひときわ美しい星空が見られると言われていた。
「アンタ達にも僕が好きな都市国家の美しさを知って欲しくてね。けれどその前に、蘇ったマスカレイドが起こす事件を阻止して貰いたいんだ」
 イスルギは今回に現れる敵、夢姫レムが行おうとしていることを語る。
 夢姫は幸せな時間に乱入して虐殺を起こすことで不幸な未来を引き起こそうとしている。過去の残滓でしかないレムにはかつての記憶は殆どない。されど、かつて自分が思い描いた夢の城でお友達と共にカーニバルをひらきたい、と願っているようだ。
「幸いにもレムが最初に現れる場所はわかっているよ。星鏡の泉の手前にある丘のあたりから南下して、ゴンドラが行き交う街の運河を襲おうとしているんだ。でも、その前に接触して阻止できるよ」
 戦場になるのは丘と運河の間。
 其処で待ち伏せして迎え討てばいいとして、イスルギは簡易地図を示した。
 しかし、上手くレムを倒せたとしても死に際に悪しき願いの力が発動してしまう。そうなれば辺りにはマスターデモンと呼ばれる夜の化身が召喚されるようだ。
「夜の悪魔達は星すら見えなくなるほどの闇を広げてくる。一体も残さず倒さなければ、今夜の星見は台無しになるだろうね。……そんなエンディングは嫌だろ?」
 エンドブレイカー、もとい猟兵達ならば悲しみの夜を壊せる。
 かつての仲間は勿論のこと、新たな仲間に信頼の眼差しを向けたイスルギは静かな笑みを見せた。

「無事に夢姫とマスターデモンを倒せたら、やっとエストレリヤの夜祭を楽しめるってわけさ。泉にいけば無人ゴンドラもあるから、好きな雰囲気の舟にのって泉へ漕ぎ出せばいい。温かい飲み物や食べ物、寒さ対策の外套や毛布、星のランプも泉に行くまでの街で手に入れられるよ」
 後は舟から星鏡の景色を楽しむだけ。
 星の燈火を泉に映せば、鏡写しになった夜空に願いが届くとも言われている。その際、願いの種類はランプの色によって分けることが一般的なようだ。
「赤系のランプは想いに関する願い、青のランプは自分への誓いや夢について、紫は大切な人にへの祈りや願い、金色は本当に特別な思いを込めて、銀色のランプは――誰も言えない秘密を、だったかな」
 赤や青と一言でいっても、緋色や紺色、秘色に桜色など細かな種類の違いもある。自分好みの色のランプを探して手に入れて祈ったり願ってみるのもいい。
 また、願いを泉に沈めるという意味で思いを置いていくこともできる。たとえば失恋の想いを忘れたいだとか、夢に折り合いを付けるという者もいるということだ。それもまた人として大切なことだろう。
 誰かと一緒に。または一人で。過ごす星夜はきっと思い出になる。
「良い夜を楽しんできて」
 そして、イスルギは水神祭都アクエリオへと繋がる路を示し、仲間達を見送った。


犬塚ひなこ
 今回の世界は『エンドブレイカー!』
 楽しいお祭りが壊される未来が予測されました。敵を倒し、星の夜を楽しみましょう。

●第一章:👿『夢姫レム』
 時刻は宵頃。とある丘から運河に向けてやってくるので、その中間地点で待ち伏せて戦闘開始となります。
 周囲に街の人はいないのでおもいっきり戦ってください。
 |幻想獣《イマージュ》を呼び出し、自分の夢のお城を取り戻すために戦います。過去のことはあまり覚えていないようなので、そのことについて話しかけてもあまり良い反応は貰えません。

●第二章:👾『マスターデモン』
 夢姫レムを倒すと夜の化身が溢れ出してきます。
 放っておくと夜が滅茶苦茶になるので一体残らず倒してください。言葉を喋ることはなく、淡々と周囲の者を排除しようと襲ってきます。

●第三章:🏠『星霊建築の星空』
 こちらの章のみのご参加も歓迎しています。
 アクアリオは地球でいうヴェネツィアのような雰囲気の都市です。

 ゴンドラに乗って星鏡の泉に行き、美しい星空を眺められます。
 泉の片隅には無人ゴンドラも浮かべられているので、ひとりやふたりきりの時間を過ごすことも出来ます。
 近くのゴンドラ乗りさんに声を掛けて舟を出してもらい、一緒に過ごしてもらうことも可能です。(その際、どんなゴンドラ乗りに出会うかはこちらでランダムに設定させて頂きます)

 願いを込められる星のランプは掌サイズ。ランプの色によって掛ける思いを変えるといいとされています。
 🔴赤:恋や愛、友情などの想い全般に関する願い。
 🔵青:自分への誓いや夢への思い。
 🟣紫:いちばん大切な人への思い。
 🟡金:必ず叶えたい特別な思い。
 ⚪銀:誰にも言えない秘密の願いや祈り。
 思いや祈り、願いを込めて水面に燈火を映すと、空に届くと言われています。それをいつか叶えたいと願うのか、空に届けるだけに留めるか、または泉に思いを沈めて終わりとするのかは皆様次第です。
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第1章 ボス戦 『夢姫レム』

POW   :    魔王覚醒
【マスカレイドの王】に変身する。変身の度に自身の【魔王の部位】の数と身長が2倍になり、負傷が回復する。
SPD   :    夢奪い
【目覚めぬ眠りをもたらす呪詛】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全対象を眠らせる。また、睡眠中の対象は負傷が回復する。
WIZ   :    レムのおともだち
召喚したレベル×1体の【幻想獣(イマージュ)マスカレイド】に【幻想の翼】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。

イラスト:ぴょん吉

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●夢姫と過去の栄光
 十数年前、このアクエリオでは魔王の部位を奪い合うマスカレイドの争奪戦が行われていた。
 あの戦いの中で名を聞いたものもいるだろう。
 その名は――夢姫レム。彼女は嘗ての過去の残滓として、蘇ったマスカレイドだ。されど少女は過去のことをはっきりとは覚えておらず、自分が君臨していた夢の城に戻りたいという願いしか持っていない。
「私のお城……おもちゃ箱みたいな、素敵な宮殿だったの」
 取り戻すためなら何でもする。
 そのために人を虐殺し、生き残った者を苦しめることに何の躊躇もない。少女の姿をした悪はただ願いを叶えることだけを胸に抱き、丘を南下していた。
 そうなる前に街と丘の中間、即ち、処で迎え撃つ必要がある。そして――。
 此方に歩み寄ってきた夢姫レムは猟兵達の存在に気付き、不思議そうに首を傾げた。
「だあれ? 邪魔だよ、どいて」
 しかし、猟兵達が退くことはない。このままではこの先にある運河沿いの街の人々が殺されてしまうからだ。
 此方に退く気がないことを察したレムは冷たい声で言い放った。
「じゃあいいよ、あなた達から先に殺しちゃうから。そうしたらまた私のカーニバルがはじめられる……!」
 抱いていた枕を強く抱きしめたレムは、仮面の下の口許を歪める。
 カーニバル。その言葉がどんな意味であったのかも忘れたまま、狂気の夢姫は敵意を差し向けた。
 そうして此処から、戦いが始まっていく。
 
トスカ・ベリル
アクエリオ
なんだか、懐かしい……ううん、わたしが直接来たわけじゃ、なくて
話に、……聴いて、た、気が
それどころじゃない、か

はじめましてお姫さま
我儘はそこまでにしようね
たぶんきっと向こうのおともだちの方が数が多い
だから、英霊たちにはお姫さま本体を狙うように伝える
わたしは時計を巨大化させて相手の攻撃に耐えるよ
もちろん、ぜんぶ防げるとは思ってないけど
他の猟兵さんたちとも協力できたらありがたいかな

きみの楽しみは、まあ、わかる
理解はできないけど、知識として
でも、他のひとの楽しみまで、奪っちゃだめ
他の方法……なんて、きみにはないのだろうから
ここで足止めさせてね

あるいは
今だけなら、おともだちと名乗ってあげるよ


マシュマローネ・アラモード
◎アドリブOKです

モワ!あれがかつての!
強敵とお見受けしましたわ、容赦は致しません!

UC、|高貴なる看破《ノーブル・ディテクター》!

貴方が強化する度に、モワ、わたくしの戦槌の威力は上がりますわ!弱点は……あの仮面かしら?

吹き飛ばしをオーラのように纏う権能、斥力で攻撃を逸らしつつ、機動力を活かして戦いましょう!
吹き飛ばしの斥力は、空を蹴ることにも使えましてよ!

嘗て、貴方を倒した勇者様はどう戦われたのでしょう!
武勇に謳われた力と技、異邦の魔術……!心躍る英雄譚の一端が垣間見ることができるのなら、このマシュマローネ、光栄の極みにて!

さぁ、参ります!


シアン・マグノリア
アクエリオ、なんか久々に訪れた気がしますね
ここは相変わらず変わりませんねー…
マスカレイドの次はエリクシルですか、厄介事は尽きませんね

私は、当時不在でしたので貴女の存在を存じ上げませんが
噂はいろいろ聞いてます
ここで好きにさせる訳には行きません。止めさせてもらいますよ!

相手の攻撃は動作を見ながら予見しましょう
いざという時は【勝負勘】にも頼って
長年のエンドブレイカーとしての勘を信じましょう
夢姫レムの行動に隙が伺えたら、【黒鉄兵団の紋章】を描きます

わあ、なんかコレ描くのも久しぶりですねー!
さあ、行きますよ黒鉄の兵たち!かの幻想に終焉を!

怪我をしても笑顔で。
笑っていれば、大丈夫!なんですから



●夢の再来
 水神祭都アクエリオ。
 シアン・マグノリア(天空に紡ぐ詩・f38998)は懐かしくも感じる都市を思う。
「ここは相変わらず変わりませんねー……」
 久方振りの到来であっても、アクエリオの雰囲気は変わっていない。今も絶えず水神の力が巡っているからだろう。しみじみと呟くシアンの近くにはトスカ・ベリル(潮彩カランド・f20443)の姿もあった。
 何だか懐かしい。此処はトスカにとってもそんな気がする場所だ。
「わたしが直接来たわけじゃ、ない、場所。昔……話に、……聴いて、た、気が」
 暫し運河と街がある方角を見つめていたトスカだったが、はたとして振り向く。すぐ其処まで邪悪な気配が漂ってきていることが分かったからだ。
「それどころじゃない、か」
「モワ! あれがかつての!」
 トスカと同じ方向に目を向けたマシュマローネ・アラモード(第十二皇女『兎の皇女』・f38748)も身構える。
 猟兵達が待ち構えていた場所に現れたのは、過去の残滓とも呼べる存在――夢姫レム。
 彼女が纏うオーラや雰囲気だけで、マシュマローネは全力で警戒すべき相手だと察した。
「強敵とお見受けしましたわ、容赦は致しません!」
「あなた達、だあれ?」
「シアンと申しますが、名前は覚えて頂かなくとも大丈夫ですよ」
 マスカレイドの次はエリクシル。
 厄介事が尽きない世界を思いつつ、シアンは颯爽と名乗った。其処に続いてマシュマローネが兎の皇女として優雅に名を告げていく。
「モワ! 第十二皇女マシュマローネ・アラモードですわ!」
「私は貴女の存在を直接は存じ上げませんが、噂はいろいろ聞いてます。ここで好きにさせる訳には行きません。止めさせてもらいますよ!」
 シアンの言葉を聞いたレムは口許を歪めた。
「……そう」
 異形の翼を背に持ち、顔を半分覆い尽くす仮面を被った少女は不機嫌そうだ。対するトスカは礼儀を示すため、軽く会釈してみせる。
「はじめましてお姫さま。わたしはトスカ。我儘はそこまでにしようね」
「わがままなんかじゃないわ。邪魔するなら退いてもらうから。……来て、おともだち」
 対するレムは幻想獣を呼び出し、猟兵達をを襲わせようとしていた。迫ってくる幻想獣の軌道を読んだトスカは素早く回避しながら、自らも英霊を呼び起こしていく。
 やはり向こうのおともだちの方が数が多い。それゆえにトスカは幻想獣を引き付け、英霊達には夢姫本人を狙ってもらう作戦を取った。
 敵には翼が生やされているが、首の無い英霊達にも三対六枚の翼が与えられている。
 トスカは刻の懐中時計を掲げ、身の丈ほどの時計型オーラを展開した。幻想獣の攻撃は激しいが、大方は防御できた。もちろん、トスカは全てを防げるとは考えていない。
 其処で頼りにしているのがシアンやマシュマローネの存在だ。
「さぁ、参ります!」
 ――|高貴なる看破《ノーブル・ディテクター》!
 マシュマローネから吹き荒ぶ王族の闘気が放たれ、反転の力がレムに与えられる。
「貴方が強化する度に、モワ、わたくしの戦槌の威力は上がりますわ! 弱点は……あの翼か、仮面かしら?」
 弱点を探すため、マシュマローネは魔王の部位を重点的に狙った。
 吹き飛ばしの力をオーラのように纏う権能。その力を余すことなく駆使していく彼女は、仲間に向かっていた幻想獣を蹴散らす。更に自分への攻撃を逸らしつつ、機動力を活かして戦うマシュマローネは勇敢だ。
 空を蹴り、優雅かつ活発に動き回るマシュマローネは自由自在に戦場を翔けている。
 同じ頃、長年のエンドブレイカーとしての勘を信じているシアンは幻想獣に狙いを定めていた。最終目標はレム本人だが、まずは邪魔をするイマージュから撃ち落としても構わないだろうと考えてのことだ。
 発動、黒鉄兵団の紋章。
「わあ、なんかコレ描くのも久しぶりですねー!」
 嘗ての現役時代から扱う力を迸らせ、シアンは視線を敵に注ぐ。紋章から現れた甲冑騎士の幻影はイマージュに向かっていき、トスカへの攻撃を散らした。
「さあ、行きますよ黒鉄の兵たち! かの幻想に終焉を!」
 其処から先は夢姫レムへと構成を仕掛けていくのみ。トスカも英霊に願い、甲冑騎士達の援護と敵への攻撃に回って貰った。その最中、トスカはレムをしかと見据える。
「きみの楽しみは、まあ、わかる」
「じゃあ、どうして邪魔してくるの?」
「理解はできないけど、知識としてだけ。でも、他のひとの楽しみまで、奪っちゃだめ」
「そうですよ、それが我儘というものです」
 トスカの言葉に続き、シアンもレムの所業はいけないことだと語った。だが、夢姫が行動を改めることなどないだろう。過去の残滓でしかない存在であり、エリクシルによって蘇ったものを止める術はひとつしかない。
「他の方法……なんて、きみにはないのだろうから」
 ここで足止めさせてね、と告げたトスカは祝福の力を更に巡らせていく。
 相容れないならば、或いは。
「今だけなら、おともだちと名乗ってあげるよ」
 それがせめてもの手向けになると信じ、トスカは夢姫レムを瞳に映した。其処に返ってきたレムの笑みは半分だけのもの。それが示す意味合いは分からないが、仲間と共に戦い抜くことだけは間違いない。
 そして、マシュマローネも更なる攻撃を重ねる。
「嘗て、貴方を倒した勇者様はどう戦われたのでしょう! 武勇に謳われた力と技、異邦の魔術……! 心躍る英雄譚の一端が垣間見ることができるのなら、このマシュマローネ、光栄の極みにて!」
「そこまで言われると照れてしまいますね。何にせよ、全力を出すことは変わりません」
 マシュマローネが語る畏敬の念に対し、シアンは嬉しげに笑う。しかし、そのとき――新たに呼び出された幻想獣の一体がシアンに傷を負わせた。
「大丈夫?」
 トスカはシアンを庇うように布陣しなおし、マシュマローネも急いで駆け寄る。
「モワ! 平気でしたか?」
「心配はありません。笑っていれば、大丈夫! なんですから」
 怪我をしても笑顔を貫き通すのがシアンの信条だ。よろめきかけた体勢を整えたシアンは、夢姫レムとイマージュ達を真っ直ぐに見つめた。
 終焉を終焉させ、過去を還す。エンドブレイカーと猟兵の力は、確かに此処にある。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

陽向・理玖
【月風】
成程な
A&Wやアルダワの戦争で見かけた物騒な奴ら
ここ由来か
面倒臭ぇ奴らと戦ってるんだなぁ
ちょっとでも手伝えたらいいなって思うんだけど
大丈夫か?瑠碧

龍珠弾いて握り締めドライバーにセット
変身ッ!
衝撃波飛ばし残像纏いダッシュで間合い詰めグラップル
拳で殴る

今更魔王って言われても何とも思わねぇんだよな
もう余所で倒してるし
増えたら増えた分だけぶっ壊せばいいだけだ
魔王の部位狙い
拳の乱れ撃ちで部位破壊

瑠碧の援護活用し追い打ち
俺が瑠碧の助けを無駄にする訳ねぇだろ
同時に残像纏いフェイント織交ぜ
確実にダメージ重ねる

あんたの城はないし
ここの祭りにもお呼びじゃねぇ
さっさと還んな
限界突破し更に加速
懐に飛び込みUC


泉宮・瑠碧
【月風】

オブリビオンではなくマスカレイド
…というのも不思議ですね
でもこの世界は…私の故郷世界と似た雰囲気です
はい、彼女の願いは少し可哀想ですが…
命には代えられません

弓を手に消去水矢
放つ幾本もの矢を雨にして一回で複数体消していきます
可能なら最初から、少なくとも再度召喚するのなら
レム自身へ消去水矢を射って召喚自体を阻害します
魔王覚醒についても同じく
発動のタイミングは魔力の流れを第六感で察する様に

基本的に理玖の援護射撃
距離がある分、全体が見えるので
動きの先読みを含め、攻撃や追撃の妨害

…覚えて無くて、喪失感ばかりでも
その為に命を奪うのは、赦しません
…ごめんなさい

貴女自身で、幸せな夢が見られますように…



●夢を見た少女の結末
「あれが――」
 オブリビオンではなくマスカレイド。エリクシルによって蘇った存在だと知り、泉宮・瑠碧(月白・f04280)と陽向・理玖(夏疾風・f22773)は夢姫レムを見据えた。
「成程な。以前の戦争で見かけた物騒な奴らはここ由来か」
「何だか、不思議ですね」
 過去から滲んだ存在ということは同じだが、骸の海を介していないとなると奇妙に思えた。
 瑠碧がマスカレイドを見つめる最中、理玖は身構えた。同時に、新たな仲間として加わったエンドブレイカーは実に面倒な相手と戦っているのだと感じた。
「ちょっとでも手伝えたらいいな。……っと、大丈夫か?」
 ふと瑠碧の様子に気付いた理玖は気遣う視線を向けた。瑠碧は自分の故郷とよく似た雰囲気を持つこの世界に思いを馳せているようだ。はたとした瑠碧は理玖に向け、静かに頷く。
「はい、彼女の願いは少し可哀想ですが……命には代えられません」
 たったひとりの願いのために、誰かの命が散ってしまうなどあってはいけないことだ。
 平気だと答えた瑠碧を信じ、理玖は夢姫レムに立ち向かう決心を抱いた。駆けると同時に龍珠を弾いて握り締め、ドライバーにセットする。そして――。
「変身ッ!」
 勢いのある掛け声と共に理玖は衝撃波を飛ばし、夢姫との間合いを詰めた。変身した彼の残像を目で追いながら瑠碧は弓を手にする。理玖がレムへ拳で殴り掛かっていく中、瑠碧は魔法の水の矢を放った。
 同時に夢姫を穿った一閃は深く巡る。
「いたい」
 対するレムは魔王の部位を変化させ、巨大な影を作っていく。
「今更魔王って言われても何とも思わねぇんだよな」
 もう余所で倒してるし、と零した理玖は更に拳を握った。相手がマスカレイドの王としての力を使い、部位を増やすのならばそれでいい。
「増えたら増えた分だけぶっ壊せばいいだけだ」
「……流石は理玖」
 魔王の部位を狙って拳を振り上げた理玖を見て、瑠碧は納得する。拳の乱れ撃ちが夢姫を貫いていく様を見つめたまま、瑠碧はレムが召喚した幻想獣マスカレイドに相対していった。
 放つ幾本もの矢は雨の如く、複数体を一度に消滅させていく。どうして邪魔するの、と夢姫レムが悔しげに口走った。その言葉を聞いた瑠碧は緩く首を振る。
 次はレム自身へ消去の水矢を射った瑠碧はイマージュの召喚自体を阻害する狙いだ。
「理玖……あの部位を」
「わかった」
 その際、瑠碧はレムの翼の一部が破れていることに気付いた。更なる魔王としての覚醒が成される前に其処を叩くのがいいはずだ。応えた理玖は瑠碧の援護を活用していき、追い打ちを掛けるように連撃を叩き込む。
 瑠碧は魔力の流れを第六感で察し、夢姫レムに対抗していた。
「あなた達、本当に邪魔」
「その魂胆を聞いたら邪魔くらいするぜ。それに俺が瑠碧の助けを無駄にする訳ねぇだろ」
 残像を纏いフェイントを織り交ぜた一撃を繰り出し、理玖は魔王の部位である翼を穿った。確実にダメージを重ねるためには一瞬たりとも気を抜いてはいけない。
 瑠碧はずっと懸命に理玖の援護射撃を行ってくれているため、其処から生まれた隙を逃すはずがなかった。
 レムと瑠碧との距離はあるが、その分だけ全体が見える利点もある。瑠碧も決して油断しないように努め、先の先を読みながら力を振るってゆく。
「この……!」
 夢姫は幻想獣や魔王の力を使いながら猟兵に対抗していた。
 されど理玖も瑠碧も容赦などしない。
「あんたの城はないし、ここの祭りにもお呼びじゃねぇ。さっさと還んな」
 理玖はこの後に巡るはずの幸せな時間を思い、己の限界を突破する。更なる加速度を得た理玖はひといきに夢姫レムの懐に飛び込み、力いっぱいの拳を突き放った。
「う、ぅ……っ」
「危ないです、理玖」
「うわ! かなりやばいな、これ」
 一瞬、夢姫の魔法の力が理玖のすべてを包み込みそうになった。瑠碧の声ではっとした理玖はフルスピードで後方に下がり、魔王としての一撃を避けた。安堵した瑠碧は理玖と共に体勢を立て直し、レムを瞳に映す。
 あれほどに少女が殺戮を選び取ろうとするのは、過去を失って自分すらわからなくなっているからだろう。しかし、理玖は手加減をする理由など持っていない。
「どんな理由があっても止める」
「……覚えて無くて、喪失感ばかりでも、その為に命を奪うのは、赦しません」
 ――ごめんなさい。
 瑠碧が紡いだ言の葉は戦場の物音に紛れて消えていく。その代わりに瑠碧は静かに願う。
 貴女自身で、幸せな夢が見られますように――と。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルルティエ・シャルロット
【神風】

わたしにとってこれが初めての依頼
離れた先に佇む彼女はどこか禍々しくて
故郷の森で見た獣や魔物とは全く異なって…

お母さんがくれたペンダントを無意識に握りしめ
だいじょうぶ、だいじょうぶ…
そう自分に言い聞かせる

…なのに、
ディランさんが引きつけてくれても
弓が震えて狙いが定まらない
体内のマナを上手くコントロール出来ない…!

不安と焦燥感に満たされる最中
傍に降り立つディランさんの
落ち着いた微笑みと声音
…だいじょうぶ
わたしは独りじゃない

上手く出来なくたっていい
真っ直ぐに脅威を見据えて
わたしにできる精一杯を…!

その一撃が届いたなら
きっと自信に繋がるはず
ディランさん、出来ましたっ
ありがとうございます…!


ディラン・ロータリー
【神風】

願いのためにどんな事でもする気持ちわからなくはない
例え誰かを犠牲にしたとしても…
本当に禍々しいね

そうか、今日が初めての依頼なんだね
危なくなったら迷わず逃げて
無理せずに頑張ろう

ルルティエちゃんは弓で攻撃するだね
じゃ俺が敵を引きつける

ディスクガンで敵をこちらに向けさせる
ルルティエちゃん?
どうやら彼女は緊張してる

もう片方の銃、ダイモンデバイス
悪魔さんよ、彼女の初の晴れ舞台手伝ってくれよな
悪魔召喚で敵に一撃を加え動けなくし

ルルティエちゃん、大丈夫だ
ゆっくり息をして、そう君なら出来るよ
彼女の後ろから弓を引く

ほら、出来た
綺麗な一撃、見事に当たったね
ううん、ルルティエちゃんが頑張ったからだよ



●はじまりの一矢
 夢姫レム。魔王の部位を宿し、己のカーニバルを再び始めようとする、過去の存在。
 少し遠目に見える彼女に視線を向け、ルルティエ・シャルロット(|風翼《ルークス》・f38744)は穹翠の名を冠する弓を構えた。しかし、その手は僅かに震えている。
 自分よりも幼い雰囲気の夢姫だが、彼女の様子はどこか禍々しく見えた。故郷の森で見た獣や魔物とは全く異なった、闇を纏う姿は不釣り合いで奇妙だ。
「ルルティエちゃん?」
「だいじょうぶ、だいじょうぶ……」
 ディラン・ロータリー(神だってサラリーマン・f38778)がその名を呼んでも、ルルティエは自分に言い聞かせるように呟いていた。母がくれたペンダントを無意識に握りしめている彼女は、言葉とは裏腹に平気ではなさそうだ。
 されど、そのことについて言及するほどディランは野暮ではない。
 その代わりにルルティエの前に一歩踏み出したディランは、夢姫レムを見据える。
「夢姫レム、か……。自分の願いや望みのためにどんな事でもする気持ちわからなくはない。たとえ誰かを犠牲にしたとしても……」
 本当に禍々しいね、と言葉にしたディランはルルティエに視線を戻した。
 大丈夫だと言葉にしたことで少し落ち着いたのか、彼女もレムに眼指しを向けている。
「ルルティエちゃん、危なくなったら迷わず逃げて」
「そんな、逃げるなんて……」
「昔の兵法だか戦法に、三十六計逃げるに如かずってのがあってね。逃走も戦略の内なんだ。無理せずに頑張ろう」
「……はい」
 ディランが自分を気遣ってくれていることは十分に分かった。ルルティエにとっての初めての戦い、それも人の姿をした者相手の戦闘を失敗や台無しにはしたくない。そういった思いと心がディランにはある。
「ルルティエちゃんは弓で攻撃するんだね。じゃ俺が敵を引きつける」
 踏み出したディランは後方からの援護を願った。
 まずはディスクガンで打ち出す光線で夢姫の意識を自分に向けることからだ。
「あなたも、邪魔するの?」
 冷たい眼差しがディランに向けられ、レムが放った幻想獣が襲い掛かってくる。イマージュと呼ばれる獣を目にしたルルティエは弓の弦を引き絞った。
 落ち着いて、相手の一部は獣だから。
 そうやって心の中で繰り返してみても、ルルティエの震えは止まらない。ディランが果敢に幻想獣ごと敵を引きつけてくれているというのに援護射撃すらままならない状態だ。
(どうしよう、体内のマナを上手くコントロール出来ない……!)
 感じるのは不安と焦燥。
 無力感に満たされていき、余計に矢が射てなくなっていく。イマージュをディスクガンで撃ち抜いたディランは矢の援護がないことに気付いた。
「ルルティエちゃん!」
 急いでもう片方、手にした銃――ダイモンデバイスを掲げたディランは悪魔を召喚した。天に向けて打ち放たれた一閃が目映い光となり、其処に獄炎の術を操る悪魔・アスモデウスが出現していく。
「悪魔さんよ、彼女の初の晴れ舞台手伝ってくれよな」
 幸いにも夢姫レムは他の猟兵を相手取ってもいた。その隙を狙ったディランは即座にルルティエの傍につく。はっとしたルルティエは震える腕を一度下ろし、彼の顔を見つめた。
「ディラン、さん……」
「大丈夫だ、ルルティエちゃん。ゆっくり息をして……」
「――、……」
 彼の声に従ったルルティエは呼吸を整えた。そうすれば次第に震えが収まり、僅かに平静が戻ってくる。
「そう、君なら出来るよ。一緒にやろう」
 ルルティエは彼の落ち着いた微笑みと声音が心地よいと感じた。ディランはルルティエの後ろに回り、緊張を解きほぐすように自分の手と彼女の手を重ねる。ディランはそれ以上は何も言わずに行動に移った。後ろから一緒に弓を引いてくれる手の温もりが、ルルティエにとって何よりの応援になった。
「……だいじょうぶ」
 ――わたしは、独りじゃない。
 上手く出来なくたっていい。逃げるよりも、真っ直ぐに脅威を見据えて。
「わたしにできる精一杯を……!」
 ルルティエがしかと前を見据えた、次の瞬間。千里眼射ちの一閃が夢姫レムを捉え、深い一撃となった。
 ディランは悪魔を呼び戻し、身構え直す。
「ほら、出来た」
「ディランさん、出来ましたっ」
 確りと成し遂げた最初の一撃。あの一閃が届いたことでルルティエの自信に繋がっていった。そのことを確かめたディランは優しく微笑み、この調子でいけばいいと教える。
「綺麗な一撃、見事に当たったね」
「ありがとうございます……! ディランさんのおかげです」
「ううん、ルルティエちゃんが頑張ったからだよ」
 お礼を告げる彼女に対し、ディランは首を横に振った。あの一矢が見事なものだったゆえ、戦いと勝敗の天秤も傾き始めていた。されど、まだ夢姫との攻防は続くだろう。
「悲しい終焉ってのを阻止しないとね。ルルティエちゃん、まだ行ける?」
「はい……!」
 ディランが問いかけるとルルティエは先程よりも力強く、精一杯の声を返した。完全に恐怖が消えたといえば嘘になってしまう。それでも、ひとりきりではないと気付けたことがルルティエの成長の証だ。
 そして、頷きあった二人は其々の力を揮っていく。
 街の人々が不幸に陥れられる、悲しい未来を救うために――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ディルティーノ・ラヴィヴィス


また会えるとは思ってもいなかったよ
お目覚めのところ悪いけど、また眠って貰うよ
物語の結末を変えるのは得意なんだ、エンドブレイカーだからね

その魔王の姿は無意識のうちなのか、覚えていたからなのか
どっちでもいいけど、僕はあんたの事知ってるよ
過去の戦闘知識を活かせば、相手の動きをそれなりに読めたりするかな
野太刀での薙ぎ払いと衝撃波で攻撃を受け流しながら接近して、
刃の届く場所まで潜り込めたら【天地無双剣】で魔王の部位を破壊しよう
何度攻撃されようが部位が増えようが、何度だって反撃してやるさ
あんたを倒すのは僕達…猟兵だからね



●終わりを猟る獅子
「――夢姫レム」
 その名を声にしたディルティーノ・ラヴィヴィス(黄昏の獅子・f38911)は、過去を懐かしむ。
 魔王の部位をより多く集め、誰よりも魔王に近いと言われた少女。夢の城の玉座を再び求める少女は今、悲劇の終焉を引き起こそうとしている。
「また会えるとは思ってもいなかったよ」
「……誰?」
 ディルティーノが語りかけても、彼女は首を傾げるばかり。カーニバルや夢の城の記憶は残っているようだが、自分がどうしてそのような思いを抱いているかまでは分かっていない。まさに過去の残滓としか呼べない存在が、今の夢姫レムというものだ。
「お目覚めのところ悪いけど、また眠って貰うよ」
「嫌だっていったら、どうするの?」
 身構えたディルティーノに対してレムは敵意を向けた。魔王の覇気めいたものを感じたが、ディルティーノは怯むことなどない。何故ならディルティーノにとって、これは既に乗り越えた過去でしかないのだから。
「物語の結末を変えるのは得意なんだ、エンドブレイカーだからね」
「エンド、ブレイカー……」
 夢姫は意味深に呟いたが、覚えているのかいないのかすら分からない。その代わりに感じたのは彼女が魔王へと覚醒していく異様なオーラの鳴動だ。
 瞬く間にマスカレイドの王へと変貌した夢姫は翼を大きく広げた。
 其処から巻き起こる風は激しいものだが、ディルティーノはひといきに地を蹴ることでレムに向かう。この魔王の姿は無意識のうちなのか、覚えていたからなのか。
「どっちでもいいけど、僕はあんたの事知ってるよ」
「わたしは、知らない。……どうして覚えてないのかな」
 ディルティーノが掛けた言葉に反応したレムは一瞬だけ不思議そうな顔をした。されどその顔の半分は仮面に覆われており、表情の全貌を知ることは出来ない。
 渦巻く風に対して野太刀を構えたディルティーノは、風そのものを斬り裂いた。おそらく過去の戦闘知識を活かせば、相手の動きをある程度は読むことが出来るはず。
 薙ぎ払いと同時に衝撃波を飛ばしたディルティーノは相手の攻撃を受け流し、距離を詰めていく。
「来ないで、邪魔だよ」
「そういうわけにはいかないから、ね……!」
 緩急をつけ、一気に刃の届く場所まで潜り込んだディルティーノは力を巡らせた。エンドブレイカーの技でもあり、猟兵としてのユーベルコードにも昇華された一閃――天地無双剣。
 魔王の部位を狙って振るわれた神速の突きは鋭い。
 全てを破壊し、終焉を正しく終焉させるために、ディルティーノは返す刃で更に斬り込んでゆく。
「あなた達、手強いかも」
 対する夢姫レムは忌々しげな反応を見せた。彼女が力を見せたことで更に魔王の力が増強されたが、ディルティーノにとっては脅威ではない。
「幾度攻撃されようが、部位が増えようが、何度だって反撃してやるさ」
 鋭く翔ける風と重い威圧感を受けながらも、彼女は果敢に立ち向かっていった。
 そして、ディルティーノは新たな力と使命を抱く名を言の葉に乗せる。
「あんたを倒すのは僕達……猟兵、だからね」
 エンドブレイカーでありイェーガー。二つの力を併せ持つ者は再び、終焉を未来に繋げていく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

マウザー・ハイネン
この地で夢姫と戦ったのはどれ程昔になりましたか。
あれからも色々な絶望のエンディングがありましたけども全部乗り越えて今日のこのアクエリオがある。
万能宝石…今は魔神だろうと砕かせはしません。

可能なら他の方とタイミングを合わせ仕掛けます。
UC起動、周囲の地形を凍結させできるだけ滑り易くします。
夢姫の呪詛は地形も利用しつつ滑走して回避。
周囲を加速し距離取りつつ隙を伺う。
呪詛にやられる前、或いは隙を見出したら方向転換し滑走突撃、氷剣で仮面や魔王の部位を刺し貫き温度を奪い隙を作りましょう。
他の方に繋げる為の攻撃は慣れていますし。
…私達の現実は貴女のカーニバルの夢に負ける程に生易しいものではありませんよ?





●過去を刺し穿つ者
 その名の如く、優しき水神に護られし都市国家――水神祭都アクエリオ。
「この地で夢姫と戦ったのはどれ程昔になりましたか」
 淡々とした様子でちいさく呟いたのは、マウザー・ハイネン(霧氷荊の冠・f38913)だ。以前の出来事を思い返してしまうほどにこの地は印象深い。
 魔王の部位争奪戦が起こったこの地は、あれから平穏に包まれている。今もそのはずだった。
「あれからも色々な絶望のエンディングがありましたけども、全部乗り越えて今日のこのアクエリオがある。それを再び揺るがせるなど……」
 そんなことは、あってはいけないことだとマウザーは考えていた。
 滅ぼしたはずのマスカレイドは蘇り、エリクシルが叶える歪んだ願いが世界を脅かそうとしている。エリクシルは此処だけではなく、外の世界にまで巡っているらしいが、この地にまで危険と崩壊の終焉を齎そうとしているという。
「万能宝石……今は魔神だろうと砕かせはしません」
 マウザーは強く身構え、夢姫レムを迎え撃つ他の仲間達と共に駆け出した。皆とタイミングを合わせ、仕掛けていくのはユーベルコードとして覚醒した力。
 ――発動、封印の凍土。
 マウザーはアイスレイピア『ジュデッカ』を大地に突き刺し、戦場となった周囲に星霊クリンの力を広げた。
 その力を帯びたマウザーは地を滑っていき、敵の魔力を弾く不融氷で覆ってゆく。
 仲間に影響が及ばぬ程度に抑えた凍結地面は、そのままマウザーの動きを加速させるものになってた。
「だから、邪魔しないでってば」
 夢姫が解き放つのは目覚めぬ眠りをもたらす呪詛。素早く滑走したマウザーは眠りの力に耐え、齎されていく眠気を振り払った。その勢いでひといきに加速したマウザーは、夢姫と距離を取りながら隙をうかがう。
 出来るならば、呪詛にやられる前がいい。
 一瞬の隙を見出したマウザーは一気に方向転換した。其処から繰り出される滑走突撃はするおい。氷剣で狙うのはレムの顔を覆う仮面、或いは顕現している魔王の部位だ。
 鋭く刺し貫き、温度を奪えば更なる隙を生むことに繋がるだろう。以前の戦いのときから、他の者に繋げる為の攻撃を行うことには慣れている。
 他者の援護に努め、機会をうかがっていくマウザーの眼差しは真剣だ。
 そして、攻防は深く巡っていく。
 猟兵の攻撃を受けた夢姫レムは痛みに耐える苦しげな声をあげ、徐々に押され始めていた。そのことに気付いたマウザーはアイスレイピアを構え直し、夢姫に言い放つ。
「……私達の現実は。貴女のカーニバルの夢に負ける程に生易しいものではありませんよ?」
 其処から更に突き放たれた攻撃。
 それは悪しき過去の夢を砕くに相応しい、確かな一閃となっていった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルーシー・ブルーベル
【月光】◎

過去を覚えていないの?
何かを取り戻したい気持ち自体は否定しない
…そうね、もしルーシーもゆぇパパとも想い出を無くしたら
ぽっかり穴が開いてしまうし
必死に取り戻したいと思うかも
けれど、そのために誰かの不幸を求めるというのなら
…やはりその願いは誰かによって壊されてしまうのよ
ココから先は行かせないわ
街の方々をお守りしましょう、ゆぇパパ

あなたもお友だちを喚ぶのね
ならばルーシーのお友だちもお見せするわ
おいで、ふわふわなお友だち
お空を飛ぶあなたのお友だちごとふわふわで包んでしまいましょう

あなた達の動きを封じたあとは
パパ、お任せしてもいい?
夢は夢のまま
眠りの中からでることなく
おやすみなさい


朧・ユェー
【月光】◎

哀しげな少女
覚えてない過去があるのは不安でしょうねぇ
それを取り戻したいと思うのは誰しもある事
きっと僕も今の記憶が無くなれば、何としても取り戻そうとするかもしれません
ルーシーちゃんの言う通り
誰かの不幸を求めそれを壊そうとするのは違いますね
そんな事をしても記憶も幸せも貴女には戻らないし訪れないでしょう

カーニバルをはじめましょう
本当のカーニバルはもっと楽しいものです
街の皆さんを守りましょう
ルーシーちゃんのお友達は可愛らしいですが、貴女のは少し違いますね
えぇ、ありがとうねぇ、ルーシーちゃん

嘘喰
貴女の偽の夢は喰べてしまいましょう
一欠片も残さずに
おやすみなさい、永遠の夢の中で願いが叶う事を祈って



●見果てぬ夢の終わりへ
 夢姫という名を冠する少女、レム。
 枕を抱え、魔王の翼や仮面を宿す少女からは禍々しいオーラが放たれていた。しかし、その様子は妙な雰囲気であり、まるで空っぽのように思える。
「あの子は……過去を覚えていないの?」
 ルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)が疑問を零すと、朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)も何処か哀しげな少女を瞳に映した。
「覚えてない過去があるのは不安でしょうねぇ」
「そうね、何かを取り戻したい気持ち自体は否定しない。……もしルーシーもゆぇパパとの想い出を無くしたらって思うと、どうしても辛くなるもの」
 きっと、胸にぽっかりと穴が空いてしまう。
 無気力になってしまうか、それとも必死に取り戻したいと思うかはそうならなければ分からない。
「取り戻したいと思うのは誰しもあることです。ルーシーちゃんと同じで、きっと僕も今の記憶が無くなれば、何としても取り戻そうとするかもしれません」
「……うん」
 ユェーの返答を聞き、ルーシーは僅かに俯いた。
 されど今は夢姫の侵略を阻止するべきとき。顔を上げたルーシーは決意を固めた。
「けれど、そのために誰かの不幸を求めるというのなら――やはりその願いは誰かによって壊されてしまうのよ」
「ルーシーちゃんの言う通り。誰かの不幸を求めそれを壊そうとするのは違いますね」
 ユェーも己の思いを整理した後、夢姫レムが進もうとしていた先に立ち塞がる。レムは冷ややかな眼差しを向けてくるだけだが、その瞳は「退いて」と語っているようだ。
「ココから先は行かせないわ」
「だったら、蹴散らしちゃうよ」
「そんなことをしても記憶も幸せも貴女には戻らないし訪れないでしょう」
 両手を広げて進行を阻んだルーシーに対し、レムは強い敵意を向けた。その殺気は一般の人々が受ければそれだけで恐怖してしまうほどのものだ。
「街の方々をお守りしましょう、ゆぇパパ」
「えぇ、ルーシーちゃん。街の皆さんを守りましょう」
 ユェーは相手の出方を窺い、ルーシーも力を巡らせる準備を整えた。夢姫レムは指先をこちらに向け、幻想獣マスカレイドを召喚する。
「行って、わたしのお友達」
「あなたもお友だちを喚ぶのね。ならばルーシーのお友だちもお見せするわ」
 対抗するルーシーはユーベルコードの力を解放した。
「おいで、ふわふわなお友だち」
 抱きしめたぬいぐるみから伸びるのは丈夫な綿。幻想獣を包み込むように広がった綿は敵の動きを止め、飛翔するイマージュを捕らえていく。その間にユェーが夢姫へと駆け
「正しいカーニバルをはじめましょう。本当のカーニバルはもっと楽しいものです」
「どうして? わたしのカーニバルは普通のものじゃないから、これでいいの」
「そうですか……」
 ユェーは正しきカーニバルについて語ったが、レムはその言葉を跳ね除けた。どうやら彼女は自分だけの特別なカーニバルを思っているらしく、他者が楽しいかどうかは関係ないらしい。だが、それは過去の残滓でしかない存在が歪めてしまった叶わぬ夢だ。
「ルーシーちゃんのお友達は可愛らしいですが、貴女のは少し違いますね」
「お空を飛ぶあなたのお友だちごとふわふわで包んでしまいましょう」
 ユェーが距離を計っていく中、ルーシーは援護に回り続けた。彼女の伸ばす綿がイマージュを着実に止めてくれていることを確かめ、ユェーはタイミングを見極めていく。ルーシーも好機が巡ってきていると感じ、ユェーに信頼を込めた眼差しを向けた。
「パパ、お任せしてもいい?」
「えぇ、ありがとうねぇ、ルーシーちゃん。後は――こうするだけです」
 ユーベルコードを発動させたユェーは夢姫レムをしかと見つめる。死の紋様を敵に付与していく彼は容赦なく夢姫を穿っていった。
「貴女の偽の夢は喰べてしまいましょう。ただの一欠片も残さずに」
 その一撃は深く減り込み、夢姫レムの身体を貫く。
 もうすぐ彼女が倒れると察したルーシーは、終わりに続く言葉をそっと紡いだ。
「夢は夢のまま、眠りの中からでることなく、」
「永遠の夢の中で願いが叶う事を祈って」
 ――おやすみなさい。
 別れの言葉を声にしたルーシーとユェーは近付く終幕を見守るため、夢姫を強く見つめた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ラウム・オラージュ
猟兵に骸の海
俺たちに似た奴らがいるってのはまあ、わかった
要するにあれだろ、ぶっ潰さなくちゃいけないものが増えたってこと!

思い出したくないもの、手放したくなかったものだって
たくさん、たくさんあるけど

それでもさ。ちょっとわくわくしてんだよな、俺
世界にはまだ知らないものが沢山あるんだってこと!

夢に揺蕩うオヒメサマに目を眇めた
……お前、遊びたかっただけなのにな
トモダチが欲しかっただけなのに

良いぜ、遊んでやるよ
それでさ、

己が内に秘めた夜の棘を解き放ち、幻想獣の翼を穿つ
デモンウイングの滑翔そのままに肉薄し蹴撃を打ち込む

……今度こそ、楽しい夢だけ見てればいいじゃん
おまえのお城は、なくなっちゃいねえんだからさ



●夢の彼方
 終焉を終焉させる者、エンドブレイカー。
 骸の海から滲む過去を還す者、|猟兵《イェーガー》。
 ラウム・オラージュ(闇鴉・f39070)は新たに知った異世界の存在を思いながら、夢姫レムと相対する。
「俺たちに似た奴らがいるってのはまあ、わかった」
 過去に倒したはずのマスカレイドが蘇っているのはエリクシルのせいだ。しかし、それとは別に外世界には過去から蘇るオブリビオンというものがある。
 よく似ているゆえに理解しやすい。ラウムは金の瞳を夢姫に向け、地を強く踏み締めた。
「要するにあれだろ、ぶっ潰さなくちゃいけないものが増えたってこと!」
 考え方は単純で構わない。
 エンドブレイカーとしても、覚醒したばかりの猟兵としても、結局はやることは同じ。ラウムは過去の栄光を求めるレムを見据え、一気に地を蹴る。
「わたしの邪魔、しないで」
 夢姫レムの願いは嘗ての夢の城を取り戻すこと。そうすればどうなるかの意味すらわからず、唯一覚えているものに縋っているだけだ。ラウムは彼女の姿を実に哀しいものだと感じていた。
「そりゃあさ……思い出したくないもの、手放したくなかったものだって、たくさん、たくさんあるけど――」
 過去は過去として、今は今として在るべきだ。
 それに、と付け加えたラウムは宵空に向かって飛翔する。夢姫レムはラウムを邪魔者だと見做し、幻想獣を解き放ってきた。宙を素早く旋回した彼はイマージュマスカレイドの軌道から身を翻し、力と言葉を紡ぐ。
「それでもさ。ちょっとわくわくしてんだよな、俺」
「――?」
「世界にはまだ知らないものが沢山あるんだってこと!」
 光の一閃でイマージュを穿ち、ラウムは夢に揺蕩うレム――オヒメサマに目を眇めた。ラウムは知っている。過去に沈んだ彼女の本当の願いや、思いを。
「……お前、遊びたかっただけなのにな」
 ただ、トモダチが欲しかっただけなのに。そんなことも忘れてしまった過去の残滓は、届かない願いを求めて狂気に染まるだけ。ラウムは更に迫ってきた幻想獣を破壊の光で貫き、夢姫に向かってデモンの翼を広げる。
「良いぜ、遊んでやるよ」
「ふぅん……遊んでくれるなら、少し歓迎するよ」
「それでさ、」
 対する夢姫レムは僅かに笑みを見せた。仮面に覆い隠された顔の全ては見えないが、遊ぶという言葉に反応したことだけは間違いない。
 そして、ラウムは己が内に秘めた夜の棘を解き放つ。幻想獣の翼を穿ちながら、滑翔そのままに一気に肉薄した彼はレムに容赦のない蹴撃を見舞った。
「……っ!」
「今度こそ、楽しい夢だけ見てればいいじゃん。そこでならおまえのお城は、なくなっちゃいねえんだからさ」
 ラウムの言葉は夜の狭間に零れ落ち、夢姫が静かに眠る未来を示した。
 さぁ――夢の中に、おかえり。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

カルディア・アミュレット

🌸🕯

もう一度を望む願いは…
悲劇からの願いであってはいけない
もう一度を繰り返し願うならば
幸せな想い出を紡いだ繰り返しであってほしい

…そう、惨劇は起こさせない
あなたにも幸せな夢があったのでしょう
きっと、そうだと思うから…ここで、あなたをとめる

高速詠唱による全力魔法
――貴方を裁く、不滅の青焔…。
不滅の焔を宿す青き焔の精霊・|Calme《カルム》を召喚
悲しき願いよ青き焔に抱かれて灰に還りなさい

ふわり、焔が舞い上がる
それは死者を導く輝き成れと――

そして
隣り合い戦う志桜の騎士達が敵を狩り尽くす道と成ろう
夢姫へ至るまでの敵は悉くと焼き払って

志桜、わたしが道をひらくわ…
思い切り…騎士さん達と戦って
どこまでもどこまでも
絶えることない青焔は騎士達の剣先まで輝きを齎す

…静かに燃え尽きなさい
そっと目を閉じて眠って
次にその目を開いた時…あなたの望むカーニバルが叶いますように
その命の次なる生の芽吹きを…ただ、ただ…祈っているわ…
あなたの命だってわたしは…この燈で導きたい


荻原・志桜

🌸🕯

カーニバルって誰もが楽しくて笑顔になれるものだと思うの
悲しくて苦しくて流す涙があったら寂しいよ
どんな理由があったとしても命を奪う行為を見過ごせない
だからアナタがいま望む願いを、ここで止める
惨劇になんてさせない!

華月を周囲に展開、結界とオーラ防御で守りを固め
杖を構えて魔力を練り上げ、足りないものは魔石で補う
さあ立ち上がれ、|我が軍勢《グラディウス》!
この先に一匹も通したらダメだよ
翼を持つ騎士たちを召喚し幻想獣を残らず剣で応戦

もう一度戻りたい
憶えのある願いに握りしめる杖に力が入る
違うけど、一緒なのかもしれないね
アナタの言うおもちゃ箱みたいな、素敵な宮殿もね
どういうところなのか気になるよ
どんな花が咲いているのかな
楽しくてきらきら輝いているのかなって
でも、そのための代償が他者の不幸と苦しみなら
わたしは守るために戦うよ

カルディアちゃんが導いてくれる
青き焔はいつだって、わたしの力になってくれる
これなら負ける気なんて起きない!
うんっ任せて!
グラディウス、導きの焔を信じて…狩り尽くせ!



●夢の再演
 あの日々を、再び。
 身を焦がすほどに願って已まない思いがあるのは、はたして幸か不幸か。
 カルディア・アミュレット(命の灯神・f09196)と荻原・志桜(春燈の魔女・f01141)は、夢姫レムを見つめた。仮面に覆われた少女の口許は歪められている。邪魔者を排除せんとして幻想獣を操るレムの攻撃は苛烈だ。
「もう一度を望む願いは……悲劇からの願いであってはいけない、から」
 カルディアは夢姫が起こそうとしている悲劇について語る。
 今一度。或いはもう一度。
 そのことを繰り返し願うならば、幸せな想い出を紡いだ繰り返しであってほしいのがカルディアの思いだ。志桜も杖を構え、終焉を導くカーニバルへの思いを紡いでいく。
「カーニバルって誰もが楽しくて笑顔になれるものだと思うの。悲しくて苦しくて流す涙があったら寂しいよ」
「そんなの知らない。わたしのカーニバルは、わたしのためのものだから」
 対する夢姫は志桜達の言葉を跳ね除ける。
 過去の残滓である夢姫レムが求めるのは、形だけになってしまった嘗てへの思いのみ。どうしてカーニバルを行いたいと願ったのか、何故に夢の城が壊れてしまったかまでは覚えていないようだ。
 志桜は春燈の導を強く握り締め、カルディアと共に一歩前に踏み出した。
「どんな理由があったとしても命を奪う行為を見過ごせない」
「……そう、惨劇は起こさせない」
「だからアナタがいま望む願いを、ここで止める。惨劇になんてさせない!」
「あなたにも幸せな夢があったのでしょう。きっと、そうだと思うから……ここで、あなたをとめる」
 二人は夢姫を瞳に映したまま、それぞれの力を巡らせてゆく。
 その声を耳にしたレムは魔王の力を覚醒させていき、禍々しい翼を大きく広げた。
「邪魔するなら、力尽くで退いてもらうだけ」
 魔王の部位から波動が解き放たれる中、カルディアは素早く詠唱を紡ぐ。一撃目から全力を込めなければ魔王となった夢姫には勝てないと判断してのことだ。
「――貴方を裁く、不滅の青焔……」
 カルディアが召喚したのは、不滅の焔を宿す青き焔の精霊カルム。冷たく燃える青き炎が周囲に漂いはじめ、其処から激しい軌跡が描かれていく。
「悲しき願いよ、青き焔に抱かれて灰に還りなさい」
 ふわり、舞い上がった焔はカルディアが見据える先、即ちレムの元に飛翔した。強力な魔王の部位である翼を撃ち抜く焔。それは死者を導く輝きに成れと願われ、放たれたものだ。
 志桜も魔術印が刻まれたカード、華月を周囲に展開した。先ずはあの幻想獣の攻撃を防ぐために結界を巡らせることで守りを固める。
 桜が舞うように広がった魔術札は志桜本人だけではなく、カルディアに迫る波動を阻んでいった。
 それから志桜は杖を高く掲げる。其処から練り上げた魔力を注ぐ先は、徐々に広がっていく魔法陣。魔石で魔力を補いながら召喚するのは――。
「さあ立ち上がれ、|我が軍勢《グラディウス》!」
 イマージュマスカレイドを貫くため、魔剣騎士の軍団が突撃していく。騎士達の背には幻想獣に対抗するための翼が生えており、激しい空中戦が志桜の前で繰り広げられた。
「皆、この先には一匹も通したらダメだよ」
 幻想獣に向けられた騎士達の剣は鋭い。志桜自身も魔力を溜めながら力を巡らせていった。
「……強いね、あなた達」
 猟兵に対抗する夢姫は素直な言葉を零す。しかし、それは称賛ではなく忌々しいと感じるがゆえのものだった。カルディアは相手に押し負けぬよう、強い思いを抱く。
 隣り合い、共に戦う志桜。彼女が呼んだ騎士達が敵を狩り尽くす道と成るために。
 夢姫へ至るまでの敵は悉くと焼き払ってしまえばいい。
「志桜、わたしが道をひらくわ……」
「うん! お願いね、カルディアちゃん」
「このまま思い切り……騎士さん達と戦って……」
 カルディアは志桜に呼びかけ、どこまでもどこまでも絶えることない青焔を巡らせ続けた。カルムの焔は騎士達の剣先まで輝きを齎すように揺らめき燃える。
 その思いに応えるべく、志桜も込める魔力を強めていく。
 ――もう一度、戻りたい。
 自分にも憶えのある願いを、あの少女は宿している。確かにそうだ。戻りたいと願うほどに憧れ、焦がれたものがどれほど身を苛むかは志桜にも理解できた。握る杖に力が入っていることに気付いた志桜は、ふと呟く。
「違うけど、一緒なのかもしれないね」
「……?」
 イマージュを解き放つレムは志桜の言葉を聞いて首を傾げた。
「アナタの言うおもちゃ箱みたいな、素敵な宮殿もね。どういうところなのか気になるよ」
 志桜は語りかけていく。
 其処にはどんな花が咲いているのか。楽しくてきらきら輝いているのか。レムにとってどんな場所だったのか、と。すると夢姫レムは少しだけ笑った。
「わたしの宮殿は素敵なの。たくさんのおもちゃがあって、お友達もいて、うさぎさんも……。あれ? うさぎさんって誰だったっけ……」
 楽しげに自分の夢の城について語ったレムだったが、その言葉が途中で疑問に変わる。
 おそらく記憶が殆どないからだろう。夢姫が覚えているものは夢の城についてだけ。どうして、何故に自分がそう語ったのかすら分からないらしい。
 カルディアは僅かに瞼を伏せ、緩く首を振った。
「とても、哀しいものね」
「そうだね……。でも、そのための代償が他者の不幸と苦しみならわたしは守るために戦うよ」
 彼女の思いを感じ取り、志桜もレムのことを思う。されど同情や容赦は抱いてはいけない。頷きを交わしたカルディアと志桜は更なる焔と魔力を解き放った。
「……静かに燃え尽きなさい」
 どうか、そっと目を閉じて眠って。
 次にその目を開いたときに、あなたの望むカーニバルが叶いますように。永遠に醒めない、夢の中で。
 レムへと願えるのはただそれだけ。
 マスカレイドという存在に心を向けたカルディアは、胸の裡から溢れた言の葉を送っていく。
「その命の次なる生の芽吹きを……ただ、ただ……祈っているわ……」
「わたしも、その夢を叶えてあげたかった。だけどね、それでも……!」
 志桜はカルディアが導く焔に合わせ、騎士達を飛翔させた。いつしかイマージュ達の数は少なくなり、残ったものも騎士と焔によって倒されていく。
 青き焔はいつだって、力になってくれる。そう感じた志桜はカルディアの焔を見つめた。
「これなら負ける気なんて起きない!」
「……志桜、いける?」
「うんっ任せて! グラディウス、導きの焔を信じて……狩り尽くせ!」
 蒼き焔が迸り、夢姫本人に誓剣の騎士達が刃を向ける。
 この一撃を、この力を、終わりに向けて。歪んだ夢の終焉こそが未来を拓くものだと信じ、志桜達は懸命に戦い続けた。そして、カルディアは最後を思い、心からの言葉を声にしていく。
「あなたの命だってわたしは……この燈で導きたい」
 どうか、終幕を。
 哀しき命の繰り返しを終えるべく、焔の精霊と魔剣の騎士の一閃が夢姫を貫いた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユヴェン・ポシェット
見ろよミヌレ、デカい水瓶だ。それに綺麗なところだな…ここがアクエリオか
…なんて、ゆっくり見るのは後からだな。まずは、やるべき事をやろうか

しかしこの世界の事まだあまりわかっちゃいないのだが、エリクシルっての確か聞いた事あるよな。何か妖精が…ってミヌレも共にいただろう?
……覚えてないのか

「あんな事件が起こる前に戻りたい」、そんな悲しい気持ちをあえて作らせる訳にはいかないからな
アンタには譲れないもんがあるのだろうが…悪いな。俺達も譲れない。

いくぞミヌレ。
叶えさせるわけにはいかない、願いを貫き砕く為に。
彼女の力が強く想いが強固であったとしても、立ち塞ぎ続けよう。
…まさか体が鈍ったとか言わないよな、相棒?

なぁ、レム…といったか
アンタの城を戻す事はできない。
だが、それがアンタにとってとても大切なものだと言うことはわかった。
だから…良ければアンタの夢の城についてもう少し聴かせて貰えないだろうか?
何ができる訳でもない。
俺達はアンタの願いは届けさせない。だが、せめて…その想いだけは覚えていたいと思うんだ。



●夢は泡沫
「見ろよミヌレ、デカい水瓶だ」
 水神祭都を象徴する、アクエリオの水瓶は今宵も清らかな水を都市中に巡らせている。
 ユヴェン・ポシェット(  ・f01669)は街の方にも流れる水路を見遣り、この都市の美しさを思う。その隣には名を呼ばれた鉱石竜、ミヌレが天蓋や街を見上げたり見下ろしたりと忙しい様子でいる。
 ミヌレが興味津々になるのも頷けるとして、ユヴェンは心からの思いを声にした。
「綺麗なところだな……」
 ここがアクエリオか、と確かめたユヴェンだったが、すぐに水路や街から視線を逸らす。
 その理由は勿論、この区域に現れた夢姫レムに相対するためだ。
「……なんて、ゆっくり見るのは後からだな。まずは、やるべき事をやろうか」
 ユヴェンが身構えると、夢姫に戦いを挑んでいく仲間達の姿が見えた。自分達も彼らに続こうと決め、ユヴェンはミヌレと共に駆け出す。
 彼にとってこの世界のことは未知数だが、聞き覚えのある言葉もあった。
「エリクシルっての、確か聞いた事あるよな。何か妖精が――」
「きゅ……?」
「って、ミヌレも共にいただろう? 覚えてないのか」
「???」
 ユヴェンは過去の事件に思いを馳せたが、ミヌレは不思議そうに首を傾げるだけ。それでもいいさ、と言葉にしたユヴェンは目の前の脅威に意識を向ける。
 エリクシルの目的は、希望を持つ知的生命体を創造主たる怪物に捧げることだという。どのような形であれど、その存在は破滅を導くだけだ。
「――あんな事件が起こる前に戻りたい、か。そんな悲しい気持ちをあえて作らせる訳にはいかないからな」
「やめて、わたしのお城に帰りたいだけなの!」
 ユヴェンの言葉を聞きつけた夢姫レムは悲痛な声をあげた。確かに彼女にとってはたったそれだけだという認識なのだろう。嘗ての夢の城を求めることだけが、蘇らせられた少女の裡に残っている唯一の事柄なのかもしれない。
 ユヴェンは首を横に振り、自分達は相容れられないのだと示す。
「アンタには譲れないもんがあるのだろうが……悪いな。俺達も譲れない」
「きゅ!!」
 主の声に同意するように槍竜が強く鳴いた。その声を頼もしいと感じながら、ユヴェンはミヌレを呼ぶ。
「いくぞミヌレ」
 その瞬間、ユヴェンの手の中に槍となったミヌレが収まった。
 初撃を確実に当てるべく、ユヴェンは夢姫レムと肉薄する勢いで地を蹴る。槍の切っ先は鋭く真っ直ぐにレムに向けられ――刹那、ミヌレの一閃が命中した。
「叶えさせるわけにはいかない、願いを貫き砕く為に」
「痛い……! どうして、どうしてなの。みんなわたしの邪魔をするのは、なんで?」
 過去の一部だけが歪んだ思いと共に蘇った存在。それが夢姫レムだ。それ以外を何も覚えていない、もとい何も持っていない少女は何がいけないことであるかすら理解できないようだ。
 だが、その分だけ唯一宿っている思いは強い。
 ユヴェンに向けてレムは魔王の部位である翼を広げた。ただそうしただけで鋭利な風が吹き抜け、肌を裂くほどの衝撃波が巡ってくる。ミヌレの槍と共に風撃に耐えたユヴェンは双眸を鋭く細めた。
 彼女の力は強いが、此処で押し負けたりはしない。たとえどれほど少女の想いが強固であったとしても、立ち塞ぎ続けるのが猟兵としての使命であり、成すべきことだ。
「……まさか体が鈍ったとか言わないよな、相棒?」
 ユヴェンは体勢を立て直しながらミヌレに呼びかける。するとミヌレが極熱の力を宿し、そんなことはないというような意思が伝わってきた。それでこそだと相棒を褒めたユヴェンは強く地面を蹴り上げた。
 魔王の翼を槍の一閃で貫いたユヴェンは、夢姫レムを見据える。
「やめ、て……」
「なぁ、レムといったか」
「そうよ、だからどうしたっていうの……?」
 猟兵達の猛攻を受け、夢姫はかなり弱り始めていた。それでもレムはユヴェンを片目だけで睥睨している。
「アンタの城を戻す事はできない」
「そんなこと、ない……!」
「だが、それがアンタにとってとても大切なものだと言うことはわかった。だから……良ければアンタの夢の城についてもう少し聴かせて貰えないだろうか?」
「それは――」
 最期が近付いてきている最中、ユヴェンが少女に対して出来るのは問いかけることのみ。
 だが、夢姫レムは言葉に詰まった。
 そして、堰を切ったように苦しげで悲しそうな声が紡がれていく。
「わからない、わからないの……。夢のお城がどんなものだったのか、わたしは誰だったのか。わたしは何? どうしてここにいるの? かえりたいよ……。でも、どこに――?」
「……そうか」
 過去の残滓でしかない少女には、夢の城という断片的な記憶しかなかった。過去の状態に戻ることが出来たならばそれを取り戻せると思ったのだろうか。ユヴェンにも、他の猟兵にも何も出来ることはない。
 ユヴェンは覚悟を決め、最期を与える一撃を繰り出しに掛かる。
「俺達はアンタの願いは届けさせない。真の意味で叶えることもできない。だが、せめて……その想いだけは覚えていたいと思うんだ」
 かえりたい。
 哀しきものであっても、ユヴェンはその願いを記憶した。ならば今こそ、望み通りに。

 猟兵達が繰り出した其々の一閃が迸る。
 その力は夢姫を貫き、穿ち――哀しき少女との戦いに終止符を打った。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『マスターデモン』

POW   :    デモニックエクリプス
【真なる「夜」 】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD   :    ダークネスフォール
【破壊力を持つ闇の塊 】を降らせる事で、戦場全体が【|悪魔《デモン》の来た異界】と同じ環境に変化する。[|悪魔《デモン》の来た異界]に適応した者の行動成功率が上昇する。
WIZ   :    デモニックアルター
X体の【実体を持つ「具現化された夜」 】を召喚する。[実体を持つ「具現化された夜」 ]は自身と同じ能力を持つが、生命力を共有し、X倍多くダメージを受ける。

イラスト:タヌギモ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●世界を夜で覆うもの
「かえりたい、……でも、わたしのお城は――」
 猟兵達の猛攻によって夢姫レムがその場に膝を付き、深く俯いた。
 魔王の部位は崩れ落ち、顔には仮面だけが残っている。もはや存在していることすらぎりぎりの夢姫は苦しげに呻き、目の前に弱々しく腕を伸ばした。
「カーニバル、を……お友達と……誰、か……」
 掠れた声が紡がれた刹那、夢姫レムはその場で消滅する。何の痕跡すら残さずに夢姫は消えたが、此処でエリクシルの影響が途切れたわけではない。
 レムの死に際に願いの力は暴走していき、周囲に漆黒の影が現れはじめた。それはエリクシルの力によって呼び出されたマスターデモン。肉体と知性を持つ、具現化した夜の化身だ。
 蠢くように広がっていくマスターデモンの群れは街の方に向かい始めている。ここで止めなければアクエリオの街に悲劇が訪れる未来が訪れてしまう。
 夢の残滓として現れたマスターデモンを倒すことができるのは、此処に訪れた猟兵だけ。
 戦いは未だ、続いていく。
 
ラウム・オラージュ
……大丈夫だよ。夢で会える

渦巻く漆黒の影に眉を顰める
それは自身の中にも渦巻く夜そのもの――の、影だ

エリクシルは何時も釣り合わない天秤に数多の願いを乗せていた
渇望を餌にするみたいに屁理屈で捻じ曲げた望みを無機質に突き付ける
俺はそれが前から気に入らなかった

お前に叶えて貰わなくったってな!
人は自分の力で叶えられるんだよ、死んだ奴まで揺り起こしてんじゃねえ!

来い!

指笛を鳴らし周囲に棘を張り巡らせる
呼ばうは闇鴉
足に印を結んだ渡鴉の群れ

鴉が造り上げた闇に紛れ込み虚無の貌を蹴り上げる
鴉達に引き裂かれ弱った個体を一人ずつ確実に潰していく

夜は奪うものじゃねえ、皆の眠りを守るものだ
――何度だって俺が証明してやる!



●夜の証左
「……大丈夫だよ。夢で会える」
 夢姫――否、ただの少女レムが消えゆく様を見送った後、ラウムは敵影に向き直る。
 其処に顕現しているのはマスターデモン。具現化した夜そのものである存在だ。彼らは嘗てデモニスタを通じて全ての悪を滅ぼす、世界革命を行おうとしたもの。
 渦巻く漆黒の影はラウムもよく知っている。眉を顰めたラウムは無意識に胸に手を当てた。
 それは自身の中にも渦巻く夜の化身。
「けど――ただの、影だ」
 ラウムは自らの棘を巡らせ、迫り来るマスターデモンに視線を差し向けた。あれらもまた過去の残滓に過ぎない。それでも質量も力も同じものであるゆえ油断は出来ない。
 思えばエリクシルは何時も釣り合わない天秤に数多の願いを乗せていた。渇望を餌にするかのように願いを屁理屈で捻じ曲げ、歪んだ望みを無機質に突き付けるのみ。
 今だって、レムのお友達への思いがこのような夜の化身として顕現してしまっている。
「俺は前から気に入らなかった。エリクシルの願いの叶え方が!」
 ラウムは指笛を鳴らし、周囲へと一気に棘を張り巡らせた。広がるソーンの力はラウムを取り巻きながら、夜の化身に向けて収束していく。
「――来い!」
 其処に呼ばうは闇鴉。
 足に印を結んだ渡鴉の群れは瞬時にマスターデモンへと翼を広げ、視界を覆う黒羽を解き放った。腕を敵へ向け、渡鴉達に攻撃を願ったラウムは強く言い放つ。
「いいか、エリクシル! お前に叶えて貰わなくったってな! 人は自分の力で叶えられるんだよ、死んだ奴まで揺り起こしてんじゃねえ!」
 自分が本当は誰かも分からず、ただカーニバルを望んだ少女は哀しく散った。
 ラウムは裡に宿す怒りを力に変え、マスターデモンを穿っていく。そして、彼は鴉が造り上げた闇に紛れ込む。その勢いのまま敵に近付き、虚無の貌を蹴り上げた。
 同時に、吹き荒れる嵐の如き渡鴉の爪が敵を裂く。黒い影は夜の影を容赦なく穿った。だが、マスターデモン達もラウムを排除すべく襲い掛かってきている。
 破壊力を持つ闇の塊がラウムや渡鴉に向けられた。鋭い痛みと共に周囲に異界の様相が広がり、鴉が纏う棘が無惨に散った。だが、ラウム自身は悪魔の世界に適応しうる者。
 更に鴉達を喚んだ彼は、爪に引き裂かれて弱った個体を狙っていった。確実に潰す、という確固たる思いを抱いたラウムは凛とした声を響かせる。
「夜は奪うものじゃねえ、皆の眠りを守るものだ」
 闇は星を覆い隠すように巡っていくが、その度にラウムが漆黒を塗り替えていた。
 恐怖や死を呼ぶ夜など、認められない。
 星を眺めることを望む人がいるように。夢に安らぎや楽しみを視る者がいるように。そして、夜から朝へと巡りゆく明日を願う人がいるから。
「――何度だって俺が証明してやる!」
 闇鴉が羽搏き、ラウムの放った蹴撃が夜の化身を貫く。
 本当の夜を取り戻すために。放たれ続ける棘は戦場を包み込むように、安らかな夜を導いていった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

マシュマローネ・アラモード


モワ、素早く動くものですわね?
グレイス・フルムーン🌕!
敵の陽動に吹き飛ばし衝撃波で、高速で吹き荒ぶ中を駆けていき、UC|高貴なる看破《ノーブル・ディテクター》で、術式を解除、内部から炸裂させていきますわ!

吹き飛ばしの嵐が渦巻く中でもわたくしを覆う吹き飛ばし『斥力』で接近して、UCを確実にぶつけて破壊していきましょう!
完全なる夜が何者であろうとも、この先にある街はなんとしても死守しましょう!
無辜なる人々が安心して眠りにつけるように、戦う事こそが高貴なるものに課せられた使命ですもの!

さぁ、夜が明けるまで決着と参りましょう!



●月が導く星の夜
 夜を纏う魔の者が、街へと侵攻していく。
 その前に素早く回り込み、立ち塞がったマシュマローネはマスターデモン達を強く見つめた。
 対するマスターデモンは此方を脅威だと認めたのか、鋭く身構える。刹那、彼らは真なる夜に変化していく。それまでよりも高い攻撃力と耐久力を得たようだ。
 理性と引き換えに力を得た敵は手強いが、こういった手合いに対抗する方法もある。
「モワ、攻撃対象は素早く動くものですわね?」
 マシュマローネは敵を引き付けるため、地を強く蹴った。マスターデモン達の視線や意識が自分に向いたと確信したマシュマローネは銀色に輝く機構の月の名を声にする。
「グレイス・フルムーン!」
 それは傍を衛星のように周回する防衛機構だ。移動手段ともなる機構の月と共に戦場を駆けるマシュマローネは、敵を陽動する動きに入った。まずは吹き飛ばしを狙った衝撃波。
 戦場に激しい風が吹き荒び、マスターデモン達を揺らがせる。
 彼女自身は高速でその最中を駆けていき、ひといきにユーベルコードを発動させた。
 ――|高貴なる看破《ノーブル・ディテクター》。
 王族の闘気によって術式を解除したマシュマローネは、一体ずつに狙いを定める。相手は超耐久力を持っているようだが、今のマシュマローネにとって怖いものではない。
「どれほど固くとも構いませんわ。だって、内部から炸裂させていけばいいのですから!」
 刹那、一体のマスターデモンが爆発するように崩れ落ちた。
 勢いは上々だと感じたマシュマローネは更なる攻勢に入っていく。
 嵐が渦巻く中でも彼女は決して止まらない。己を覆う斥力で以て、敵に接近していくマシュマローネは勇猛果敢に攻め込んでいる。確実に、かつ着実に。吹き荒ぶ闘気をぶつけてマスターデモンを破壊すれば、徐々に相手の数も減ってくる。マスターデモンはマシュマローネにとって得体の知れない存在だが、そんなことで怯むようなことはない。
「完全なる夜が何者であろうとも、この先にある街はなんとしても死守しましょう!」
 街を背にしたマシュマローネは凛々しく語る。
 住む星や世界が違ったとしても、無辜なる人々を守ることこそが王族の務め。
「皆が安心して眠りにつけるように。そして、平穏に暮らすためにも。身を賭して戦う事こそが高貴なるものに課せられた使命ですもの!」
 それはノブレス・オブリージュの志。
 襲い来るマスターデモンの攻撃は激しいが、マシュマローネは押し負けてなどいない。まだ夜は巡り始めたばかりであり、この後には素晴らしい星見の刻も待っている。
 更なる闘気を纏ったマシュマローネは、反転の術式で夜の化身を穿った。
「さぁ、この夜が明けるまでに――いえ、美しき夜の最中で決着と参りましょう!」
 凛とした宣言と共に放つ力は正確無比。
 言の葉が紡がれ終わった瞬間、マスターデモン達が次々と倒れていった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

トスカ・ベリル
お姫さま。
カーニバルは、お昼に楽しんでもいいんだよ
……なんて、戯言

わたしも夜は好き
でも別に具現化しなくてもいい、かな
鎧さん、よろしく
超耐久力と言っても、限界はあるでしょ
わたしの鎧さんは無敵なんだよ


そう言えばきみの姿はちょっぴり鎧さんに似てる
首を飛ばせばより似るよ
『夜』は、それくらいじゃ終らないよね
囮として『夜』の間をうさぎらしく飛び跳ねるよ
──さあ、凱旋せよ
わたしはお姫さまじゃない
時計ウサギ、道案内
おいで、鎧さん

……そう
道案内
路を拓く者
……|師《せんせい》
……アクエリオへの道を辿った、街の英雄
思い出した
ううん、最初から無くしてない
わたしトスカ、師の名前をもらったうさぎ

師の愛したこの都市が好き



●その名は
「――お姫さま」
 倒れた夢姫に呼びかけた声が夜の狭間に揺らめいた。
 消えていくレムが一瞬、声の方に目を向けたような気がした。トスカは双眸を緩やかに細め、そっと語る。
「カーニバルは、お昼に楽しんでもいいんだよ」
 告げた言の葉は暗闇に沈んでいく。
 きっと届かない。届いていたとしても、消滅した夢姫レムのカーニバルは永遠の終わりを迎えた。いつかまた蘇ることがあっても、本当のレムは何処にもいない。
「……なんて、戯言」
 トスカはそれまでレムがいた場所から視線を背け、数多の気配がする方に目を向けた。其処には多数のマスターデモンがおり、夜の化身として顕現している。
「わたしも夜は好き。でも別に具現化しなくてもいい、かな」
 マスターデモン達を見渡したトスカは、再び英霊を呼び起こしていく。次に頼りにするのは鎧を纏った英霊だ。
 真なる夜と成った敵は強敵かもしれないが、トスカは冷静に敵を見据えている。
「鎧さん、よろしく」
 彼女の声に呼応した英霊は敵に向かっていく。超耐久力といっても限界はあるはず。無敵でない限りやりようはいくらでもある。それに――。
「わたしの鎧さんは無敵なんだよ」
 自分達の方が強い。疑念など一切なく、首のない英霊を信じるトスカの眼差しは揺らがない。鎧の英霊はマスターデモンへと迫り、鋭い一閃で以てその身を穿つ。重さを伴う一撃は夜の化身を勢いよく弾き飛ばした。それによって夜の欠片が散り、デモンの力が削がれてゆく。
「ね、そう言えばきみの姿はちょっぴり鎧さんに似てる」
 それならば、とトスカは刃のように真っ直ぐにした自分の手を首に当てる。そのまま真横に手を引けば、鎧の英霊が横薙ぎの一撃を放った。
 勿論、その攻撃はマスターデモンの首を狙ったものだ。
「だから、首を飛ばせばより似るよ」
 自分が信じる英霊と同じようにすればいい。トスカの言葉の直後にデモンの首が落ちた。しかし、気を抜いてはいけない。トスカはマスターデモン達の力を侮ってなどいなかった。
「でも、『夜』は、それくらいじゃ終らないよね」
 未だ動き続けようとする敵を見遣り、トスカは夜の間を駆けていく。追われるうさぎらしく飛び跳ねながら撹乱していけば、英霊が攻撃を行う隙が出来る。
 ――さあ、凱旋せよ。
「わたしはあの子みたいな、お姫さまじゃない」
 時計ウサギであり、道案内が役目。
 おいで、と英霊を呼んだトスカは攻撃の軌道へと誘っていた。鎧さん、と声にすることで英霊は導きに従い、次々とマスターデモンを斬り裂いてゆく。
 そう、道案内。それは即ち路を拓く者。
「……|師《せんせい》」
 倒れていく夜の化身を瞳に映しながらも、トスカが思うのは彼のひと。
 アクエリオへの道を辿った、街の英雄。
 今、はっきりと思い出した。否、最初から失くしてなどいない。
「わたしは、トスカ。師の名前をもらったうさぎ」
 懐かしさと憧憬で僅かに俯いていたトスカは、そっと顔を上げた。
 師の愛した、この都市が――水神祭都が好き。それゆえに守り、慈しみたいと願ったトスカは英霊と共に駆ける。
 この先に安らぎの夜を導き、平穏に続く道へ案内していく為に。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

マウザー・ハイネン

夢の跡は夜、ですか。
カーニバルのお友達と望んで現れたのがそれというのはジェスターの正体的には合っているのかもしれませんが。
何にせよここを通す訳にはいきませんから…全力で行きましょう。

マスターデモンの挙動に注視、攻撃のタイミングを見切り氷細剣で受け流したりバックステップで直撃を回避。
隙を見て装甲?の隙間や関節部にカウンターで突きこみ攻撃しましょう。
デモニックアルターを使い数で押そうとしてきたらこちらも氷細剣媒介にUC起動。
戦場全体に吹き荒れる吹雪で纏めて手足を凍らせ封じましょう。
生命力を共有している故にダメージは増えた数だけ倍加される、耐えきっても氷槍の追撃を喰らわせ確実に仕留めましょうか。



●夜を終わらせに
「夢の跡は夜、ですか」
 目の前に出現していくマスターデモン達を見つめ、マウザーは納得した様子を見せた。
 倒れた夢姫レムが最後に願ったのは、お友達。
「カーニバルのお友達を、と望んで現れたのがそれというのは……黒幕だったジェスターの正体的には合っているのかもしれませんが――」
 やはりエリクシルの願いの叶え方は歪んでいる。
 マウザーは過去を思い返しながら身構えた。此方に敵意を向けているものもいるが、マスターデモンの多くはこの先にある運河の街を襲うことになるだろう。
「何にせよここを通す訳にはいきませんから……全力で行きましょう」
 マウザーは街を背にする形で敵に立ち塞がり、覚悟を決めた。相手は実体を持つ、具現化された夜を次々と召喚していっている。マスターデモンの挙動に注視したマウザーは攻撃のタイミングをはかった。
 数多に膨れ上がっていく夜は脅威だが、マウザーは決して引かない。
 氷細剣で相手の攻撃を受け流した彼女は、素早いバックステップを刻む。その勢いで直撃を回避したマウザーは、一気に身を翻した。
「どきなさい、私の邪魔をするなら排除します」
 隙を見て敵の装甲めいた部位を狙ったマウザーは、突きの一閃を見舞っていく。
 ――氷獄の吹雪と共に希望は来たれり。
 そして、それと同時に氷細剣を媒介にした力を巡らせた。四肢を凍らせ、封じる魔の吹雪が戦場全体に広がる。相手が数で押そうとしてくるのならば、此方も吹雪で対抗すればいい。
 纏めてマスターデモンの手足を凍らせていければ動きも封じられる。
 戦場全体に吹き荒れる吹雪はマスターデモンを穿っていき、同時に味方には雪と飛来する聖剣での強化を齎していった。マウザーは敵の様子を鋭く観察していき、上手く立ち回る。
 相手の攻撃は激しいが、倒れるほどのダメージは負っていない。それゆえにまだ力を尽くせるとして、マウザーは更なる吹雪と一閃を解き放ってゆく。
 敵は多いが、生命力を共有している節がある。故にダメージは増えた数だけ倍増していく計算だ。
「耐えきっても無駄です」
 主格らしい個体に狙いを付けたマウザーは強く言い放つ。
 苦難の果てに平穏が導かれるならば、その役目は自分達が担えばいい。マウザーは揺らがぬ眼差しを向け、マスターデモンに氷槍の追撃を喰らわせた。
 目の前の個体を確実に仕留めたこと確かめ、マウザーは次の敵に視線を向ける。
 此処に現れた敵を全て屠るまで、彼女の戦いは終わらない。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

ディルティーノ・ラヴィヴィス


永遠の夜なんていらない。夢の続きもいらない
もう…悲しくて虚しい夜はごめんだからさ

真なる夜なんて名乗るのは滑稽だ、ただのバーサーカーじゃないか
速く動くものに反応するなら、翼から羽根を素早く飛ばして囮にできるかな
攻撃がそっちに向いた瞬間に野太刀で薙ぎ払おう

攻撃がこっちに来たら…咄嗟に右腕を突き出して受け止める
気付いたら棘が僕の右腕に絡み付いてて…。そっか、デモンの力は健在、か
なら使うしかないね。この腕で受け流しながら野太刀で流れるように反撃だ

野太刀で攻撃しながら右腕の棘を撃ち出したり、攻防一体の戦法を取ってみようか
ふぅん、これもユーベルコードの力なのかな。さながら…天地無双剣改って所かな



●零から絶へ
 どれだけ正しく望もうとも、願いは歪められて叶えられる。
 それこそがエリクシルの厄介な力であり、哀しき終焉を作り出す新たな脅威だ。
「永遠の夜なんていらない。夢の続きもいらない」
 ディルティーノは消えていった夢姫を思い、彼女の最期の願いの果てに呼び出された魔物達を見遣る。マスターデモンは真なる夜として顕現しており、このままでは無辜の人々が住まう運河の街を襲ってしまうだろう。
「もう……悲しくて虚しい夜はごめんだからさ」
 白龍王の名を冠する野太刀を左手で構え、ディルティーノはマスターデモンを見据える。
 超攻撃力と超耐久力を得ている敵は此方の動きに反応した。このまま自分に相手を引き付ければいいと判断したディルティーノは地面を蹴り上げた。
 それに伴い、ディルティーノを標的としたマスターデモンが動く。その姿には妙な威厳すら感じるが、理性と引き換えにあの動きを得ているのならば――。
「真なる夜なんて名乗るのは滑稽だ、ただのバーサーカーじゃないか」
 ディルティーノは黒の翼を広げ、一気に解き放つ。相手が速く動くものに反応するなら、羽根を素早く飛ばせばきっと囮になるだろう。ディルティーノの方向に訪れていた敵は思惑通り、羽根の方に向かった。
 刹那、振り上げた野太刀がマスターデモンの身を裂く。
 そのままの勢いで複数体を薙ぎ払ったディルティーノは身を翻した。黒の翼での囮は有効だが、やはり攻撃を行えば注目は自分に向く。迫りくるマスターデモンの腕を察知した彼女は、咄嗟に右腕を突き出した。
 攻撃を受け止めたことで|棘《ソーン》が巡る。
「……!」
 右腕に棘が絡み付いていることに気付いたディルティーノは、はっとした。だが、すぐにこの状況を受け入れた彼女は拳を握り締める。そうしたことで棘がマスターデモンを絡め取っていく。
「そっか、デモンの力は健在、か」
 それならばこの力すら用いて、攻勢に転じていくしかない。
 この腕で。そして、この刃で。
 更に迫ってきたマスターデモンの攻撃を右腕で受け流しながら、ディルティーノは野太刀を振るう。流れるように反撃に移っていった彼女の動きは、まるで元からこの攻撃方法を知っていたかのように自然に動いていく。
 どれほどの耐久力を持っていようともマスターデモンとて無敵ではないはずだ。
 ディルティーノは白龍王での一閃で敵を翻弄しながら右腕から棘を撃ち出す。それはまさに攻防一体。
「ふぅん、これもユーベルコードの力なのかな」
 天へ昇る龍の如く、白き光を纏いて闇を裂く。その刃と棘の力は夜の化身を圧倒している。
 そして、ディルティーノはこの力に名を付けた。
「さながら……天地無双剣改って所かな」
 撃ち出される棘は容赦なく悪しき夜を穿ち、彼女の周囲に夜の残滓が散っていった。穏やかで優しい、本来あるべき刻を取り戻すために。天地を貫く棘と刃は未来のために振るわれていく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

陽向・理玖
【月風】

願いを言ってはいけない…か
どっちにしても還って来てる以上どうにもなんなかったけど
マジでクソだなエリクシル
止めるぜ瑠碧

変身状態維持
衝撃波飛ばし動きを止めつつ残像纏い手近な敵にダッシュで間合い詰めUC起動しグラップル
更に足払いでなぎ払い
他の敵の位置を確認しつつ追い打ちで蹴り吹き飛ばし
他の敵にぶつけ纏めて動き邪魔し攻撃、倒す

あっぶね!
降る闇の塊はよく見て見切り避け
瑠碧が消してくれたら軽く手を上げ
適応しようがしまいが
もう動きは読めてる
それ以上の速さでそれ以上の力で
揺さぶってお前らの弱いとこ打ちのめすだけだ
限界突破し一気にスピード上げ懐へ飛び込み
フェイントに攻撃上下に揺さぶりのち
拳の乱れ撃ち


泉宮・瑠碧
【月風】

迂闊に何かを願えば、歪めて叶えられる…
良いも悪いも、本人の望む通りにはならないのも、辛いですね
…夢姫の願いは、叶えてはいけなかったけれど
はい、止めましょう

弓を杖に変え、デモン達とは可能な限り距離を取り
浄化を籠めて円環命域
元々広範囲の浄化なので数が増えても同じ事です
…範囲内だけでも空間も浄化出来る様に

理玖の動きや位置もよく見て
闇の塊は、光や闇の精霊に打ち消して貰いつつ
降る闇の塊は出来る限り
浄化を籠めた水の槍を撃ち出して消そうと試みます
…夜は好きですが
化身が人を害するのは悲しいですね
…デモンとして現れたから、害しているだけかも知れませんが

安らぎを与える静寂の夜へと還りましょう
おやすみなさい



●夜には睡りを
 万能宝石エリクシル。
 それは正しき願いであっても、奇妙に歪めて叶える存在だ。
 迂闊に何かを望めば、思い通りにはならない未来が待っている。たとえ良き願いだとしても、はたまた悪い望みだったとしても、本人の望む通りになることなど決してない。
「辛い、ですね……。夢姫の願いは、叶えてはいけなかったけれど」
 それでも、と瞼を揺らした瑠碧は哀しげな顔をしていた。その隣に立つ理玖はエリクシルについての悪態をつきながら、深く肩を落とした。
「つまり、願いを言ってはいけない……か」
 どちらにしても今という時代に悪夢が還ってきている以上、どうにもならなかったのだが――。こうしてマスターデモンが顕現している現状、やるべきことはひとつ。
「止めるぜ瑠碧」
「はい、止めましょう」
 互いに戦いへの意思を確かめあった二人はそれぞれに攻勢に入っていく。瑠碧は弓を杖に変えていき、マスターデモン達と可能な限り距離を取っていった。
 浄化を籠めて放つのは円環命域の力。
 同時に衝撃波を飛ばした理玖は先程と同じように、素早く駆けた。変身状態を維持している彼の勢いは止められるものではなく、激しい一撃が手近なマスターデモンを穿つ。
 残像を纏いながら敵の間を縫うように駆け巡る理玖は、拳ではなく足技も交えて夜の化身を貫いた。
 夜そのものだという存在であっても、身体があるのならばやりやすい。足払いで敵をなぎ払った理玖は複数体の位置取りを目で確認していき、更なる追い打ちを掛けにゆく。
「黙って倒れとけ」
 蹴り上げ、吹き飛ばしては次の敵へ。
 相手の数が多いならば他の敵にぶつけていき、纏めて動きを邪魔してやるのがいいはずだ。
 幸いにも理玖には瑠碧がついている。
「……命の祝福よ、どうか此処へ」
 元より広範囲の浄化を巡らせる身であるゆえ、瑠碧の援護と攻撃は上手く巡っていた。具現化された夜が召喚され、数が増えても同じこと。
 瑠碧は理玖が範囲内から外れないよう位置取りに気を付け、癒しと生命の領域で彼を包んでいった。彼の実力も勢いも知っているが、やはり傷は負ってほしくない。
 瑠碧は理玖とマスターデモン、両方の動きや位置をしかと瞳に映した。
 迫りくる闇の塊は光や闇の精霊に打ち消して貰い、降りゆく闇の塊は出来る限り浄化で打ち消す。水の槍を撃ち出した瑠碧は自分に解き放たれた力を浄化で消滅させた。
 しかし、次の瞬間。
「あっぶね!」
「――理玖?」
 彼の慌てた声が響いたかと思うと深い夜の闇が周囲に広がった。一瞬、理玖の姿を見失った瑠碧は僅かに不安げな声を紡いでしまう。されど、すぐに彼の凛とした声が聞こえてきた。
「大丈夫! 今ので一緒に消してくれただろ?」
「……よかった」
 闇の塊を見切っていた理玖は上手く避けられたようだ。闇の残滓だけが広がっていたようだが、瑠碧からは死角になってしまっていたらしい。
 徐々に闇が晴れる中、理玖は瑠碧に向けて軽く手を上げた。
 安堵を抱いた瑠碧は静かな笑みを返し、更なる領域を巡らせてゆく。周囲には異界めいた空間が残っている。だが、理玖にとっては其処に適応しようがしまいが関係ない。
「もう動きは読めてるからな」
 敵がどれほど攻撃を仕掛けてこようとも、それ以上の速さで。そして、それ以上の力で当たればいいだけのこと。弱いところを揺さぶって打ちのめすだけならば容易だ。
 それもすべて瑠碧が背を支えてくれているからだと理玖も解っている。
「やりましょう、理玖」
「おう!」
 瑠碧からの呼びかけに応えた理玖は限界を突破していき、一気にスピード上げて敵の懐へ飛び込んだ。フェイントからの攻撃は上下に揺さぶる撹乱の一手。
 其処から繰り出される拳の乱れ撃ちはマスターデモンを次々と地に伏せさせていく。
「……夜は好きですが、化身が人を害するのは悲しいですね」
 デモンとして現れたから害しているだけかもしれないが、未来を闇に染めさせるわけにはいかない。瑠碧は理玖の背と拳の動きを見つめ、自らも命域による円環の導きを示していった。
「安らぎを与える静寂の夜へと還りましょう」
 ――おやすみなさい。
 眠りを願う、夜に相応しい言の葉を送った瑠碧は真っ直ぐに前を見つめ続ける。
 其処にはいつだって、彼――理玖がいてくれることを、信じて。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

荻原・志桜

🌸🕯

うん、そうだね
願いを叶えるお手伝いがしたかった
あの子が本当に望んでいた夢がたくさん溢れている
輝きに満ちた願いを一緒に楽しむことができたなら

だけど歪められてしまった犠牲を伴う
甘いことしか言えないけど
でもあの子ね、少しだけ笑ってくれたの
あのときの顔を見たら本望じゃないと
そう信じたい…

悲劇は起こしちゃいけない
何がなんでも此処で食い止める
最初から全力全開!
いくよカルディアちゃんっ

わあ、炎の龍、すごい…!
にひひ、わたしも負けてられないなぁ
桜の魔女の術を唱ってみせよう

微笑む彼女に笑い返して
杖を掲げ唱えれば幾何学の陣が翠の光を帯びて浮かぶ
どうかわたしに力を貸して、風の精霊!
あの猛き炎龍に導を
今日はわたしがカルディアちゃんの道となる
邪魔するものは全て吹き飛ばせ
カルディアちゃん、思いっきりやっちゃえ!

あの場所で暮らす人たちの笑顔を守るため
そしてこれから先ずっと続いていく未来を奪わせないために!
できるよ。だってひとりじゃないもん
キミの隣にはわたしがいる
できないことなんてないよ!


カルディア・アミュレット
🌸🕯

消えゆくレムの言葉が耳に残っている
苦し気な声に弱弱しい腕
その腕を純粋な願いを叶えてあげられたら…どれほどよかったか…
――胸が…ずきんとするわ…志桜…

でも、悲しんでばかりはいられない
エリクシルの力で呼び出されたデモンを祓う仕事が残っている

あなた達が夜の化身ならば…
わたしはその夜を照らし守る燈
決してあなた達を街へは行かせない――!

ランタンの柄を地面に打つ
炎の色が赤い赫い炎に染まりゆく
――冥界に熱く鋭く燃ゆる死焔の精よ
我が焔を導として、煉獄より雄々しき炎龍を呼び起さん

ランタンの炎が大きな魔法陣を描き
陣から赫い焔を纏った龍が現れる

ふふ…この子をお披露目するのは、はじめて…ね
凄いと笑う彼女にほんのりと笑みを向けて

…人の想いが織り成す願いを守りたい
この願いはエリクシルすら歪めさせない

志桜…わたし…この先にいる、たくさんのひとの笑顔、まもりたい
…うん…。ふたりだから、守れる
失うものは、なにもないわ…!
あなたが隣にいるから

桜の魔女とその精霊が齎す風の導きを得て
炎龍は業火のドラゴンブレスを撃ち放つ



●二人で紡ぐ夜導
 かえりたい。けれども、何処にもかえれない。
 夢姫レムが最期に遺した言葉を思い、カルディアは自分の胸元に手を添えた。消えゆくレムの言葉は切実だった。未だ耳に残っている苦しげな声と、弱々しく伸ばされた腕。
「その腕が何かに届けば……。あの純粋なだけの願いを叶えてあげられたら……どれほどよかったか……」
「うん、そうだね」
「――胸が……ずきんとするわ……志桜……」
 カルディアの言葉を聞いた志桜も切なげに頷いた。
 夢姫ではなく、純粋な少女としての願いを叶える手伝いがしたかった。志桜の思いもカルディアと同じだったが、それが叶えられないものだということは解っている。
「あの子が本当に望んでいた、楽しい夢がたくさん溢れている夜が此処にあるのに」
 もしも、輝きに満ちた願いを一緒に楽しむことができたなら。
 志桜もやりようのない思いを胸の奥に秘めていた。しかし、少女の存在はエリクシルによって無理矢理に歪められて復活させられたものだった。レムの夢を叶えることはつまり、無辜の命を闇に沈めてしまうこと。
 歪められてしまった夢は犠牲を伴う。
「わたしね、甘いことしか言えないけど……でもあの子ね、少しだけ笑ってくれたの」
「そうね……」
 自分のお城について語ったとき、レムはマスカレイドとしてではなく本当の自分として笑っていた気がする。過去も記憶も殆ど失ってしまっている少女だったが、きっと――。
「あのときの顔を見たら本望じゃないと、そう信じたいな……」
「悲しんでばかりは……いられないわね」
 志桜とカルディア視線を交わし、目の前の状況を確かめた。
 レムの最期の願いはこうして、夜の化身を呼び出すという歪んだ状況に変わってしまっている。お友達と一緒にカーニバルがしたい。自分の代わりに、誰か。
 そのような思いは破壊と混沌の力を持つものとなり、街に被害を齎さんとしている。
 エリクシルの力で呼び出されたデモン。それらを祓う役目が残っているとして、カルディアはランタンを強く握り締める。志桜も春告げの杖を敵に向け、戦いへの思いを抱いた。
「悲劇は起こしちゃいけない」
「……その通りよ」
「何がなんでも此処で食い止めるよ。最初から全力全開!」
「あなた達が夜の化身ならば……わたし達は、その夜を照らし守る燈……」
 二人は魔力を巡らせながら、街を背にする形で布陣する。迫りくるマスターデモンも敵意を此方に向けているらしく、禍々しい雰囲気が伝わってきた。だが、志桜もカルディアも退いたりはしない。
「いくよカルディアちゃんっ」
「ええ、志桜。マスターデモン、決してあなた達を街へは行かせない――!」
 互いの名を呼ぶ声と共に戦いが始まる。
 美しき夜を守り、悪しき闇を祓うために。少女達は言葉通りの全力を解き放ってゆく。
 対するマスターデモンは具現化された夜を増殖させ、辺り一面に闇を広げた。闇の塊が降りそそぐ戦場の最中、カルディアはランタンの柄を強く地面に打つ。
「冥界に熱く鋭く燃ゆる死焔の精よ」
 我が焔を導として、煉獄より雄々しき炎龍を呼び起さん。
 ――フラム・ドラゴン。
 死焔の精霊を呼び出し、その力で煉獄の炎龍を召喚していくカルディアはマスターデモンを見据える。炎の色が赤い赫い炎に染まりゆく。ランタンの炎が大きな魔法陣を描き、其処から赫い焔を纏った龍が現れた。
 其処から炎は悪しき者を焼き尽くすものとなっていった。
 その光景を見つめた志桜はカルディアに明るい眼差しを向ける。
「わあ、炎の龍、すごい……!」
「ふふ……この子をお披露目するのは、はじめて……ね」
 視線を返したカルディアはほんのりとした笑みを浮かべ、更に赫龍の力を迸らせていく。それによってマスターデモンが穿たれていき、徐々に数が減っていた。
 それまで結界を張って敵の侵攻を抑えていた志桜は、カルディアの横に並び立つ。
「にひひ、わたしも負けてられないなぁ」
 桜の魔女の術を唱ってみせよう、と言葉にした志桜は微笑む彼女に笑い返した。そして、魔術杖を掲げた志桜は詠唱を声にしていく。
「――どうかわたしに力を貸して、風の精霊!」
 幾何学の陣が翠の光を帯びて浮かびあがり、周囲のマスターデモンに向かった。
 風は同時に猛き炎龍に導を示す。
「今日はわたしがカルディアちゃんの道となるから、大丈夫だよ。お願い精霊達、邪魔するものは全て吹き飛ばして」
 志桜の声に呼応するように風が鋭く巡った。
 カルディアは志桜の力をしかと捉え、煉獄の炎龍に魔力をそそぐ。
「あなたの業火で、どうか――全てを灰に還して……」
「カルディアちゃん、思いっきりやっちゃえ!」
 風と炎が折り重なり、更に強い力となって夜の化身を穿った。破壊力を持つ闇の塊は跳ね除けられ、周囲に満ちていた深い夜の色が薄まる。
 星を見るならば夜が深まった方がより美しくなるが、星すら見えなくなる闇はお断り。
 志桜は背後にある街を思い、更なる魔力を解き放った。
「あの場所で暮らす人たちの笑顔を守るため。そしてこれから先ずっと続いていく未来を奪わせないために!」
 マスターデモンの力は奇妙で恐ろしいが、怯むことなどない。
 人の想いが織り成す願いを守りたい。この願いはエリクシルすら歪めさせたくない。
 カルディアも思いを同じくしており、この戦いを終わらせると心に決めていた。
「志桜……わたし……この先にいる、たくさんのひとの笑顔、まもりたい」
「できるよ。だってひとりじゃないもん」
 呼び掛けに対して瞳を向けた志桜は、力強く答えて笑う。もう勝利は見えている。それならば後は最後まで全力で立ち向かっていくだけ。
「キミの隣にはわたしがいる。できないことなんてないよ!」
「……うん……。ふたりだから、守れる。失うものは、なにもないわ……!」
 あなたが、キミが、隣にいるから。
 桜の魔女が巡らせる風の導きと、ランタンの燈火から放たれる激しい焔龍の炎。
 鋭い風と業火の吐息が撃ち放たれ、悪しき夜の化身は空に解けるように消えていった。頷きと視線を交わした志桜とカルディアは変わらぬ心強さを抱き、前を見据える。
 風と炎が導いていくのは、美しき星の夜。
 煌めく天蓋の星々はただ静かに、在るべき未来が訪れるときを待っている。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朧・ユェー
【月光】

星や月を漆黒の闇が覆う
それはとても深く夜とは違う
まるで地獄の黒の様
昔の僕はこの闇を求めていた
嫌、自分はそんな存在だと思っていた
何も無い真っ暗な闇
誰よりも不幸をもたらす存在だと

誰かが僕を月の様だと言った
誰かが月の光は綺麗だと言った
そしてこの子はそんな月が好きだと言った
パパはお月様、誰よりも光って皆を照らしてくれる人だと
この子はそんな月の傍にそっと光、小さな星
その光は月よりも輝きは大きく皆を癒す

嗚呼、月の光、星の光とはこんなにも輝いていたのですね
そんな光を閉ざすモノはいけませんねぇ

大喰
そんな闇は喰べてしまわないと
一欠片も残さずに

おやおや、ふふっ、嬉しい事を言って下さりますね
僕もルーシーちゃん、ララ、星の様な君が大好きですよ
そっと彼女を片手で抱き上げて頭を撫でる

好きだ、大好きだと言ってくれた月の光を
誰よりも愛する星の光を取り戻す為に


ルーシー・ブルーベル
【月光】◎

星月夜を覆う漆黒を
ルーシーは夜とは認めたくないわ
……いえ、そういう一面もあるかも知れないけれど
もっと夜は穏やかで静かで、安らげる一面だってもっているもの
おおきくていつも見守ってくれる優しい月も
小さいけれど一生懸命瞬く星も夜にはある

本当ね、
昏く覆われたことで
お月さまやお星さまがどれほど夜空を彩っていたのかが分かる
一層恋しくなっちゃった!
さあ、本当の夜を
お月さまもお星さまも返してもらいましょう

闇を祓う、怪火の灯りを
夜を点すふたいろの明かり
もし数多の漆黒を喚ぶのなら
蒼の炎を広くひろく焼いて祓いましょう
その分集まるダメージは増えるはず
花菱草の炎はふたりの周りへ
ゆぇパパを闇に閉ざしたりなんて
けしてルーシーがゆるさないから
どうぞ、思い切り

……ふふ
以前お伝えした言葉を覚えていて下さっていて、うれしい
ええ、ええ
ルーシーはお月さまがすきよ
お月さまのようなパパの事もだいすきよ!
……!
本当の名を呼んでもらえる事もだいすき、かも
きっとお星さまはお月さまと同じ空がうれしくて
ピカピカ光るのでしょうね



●月の傍に在る星
 マスターデモンの出現と共に周囲は深い闇に包まれていく。
 星霊建築の空、即ちドロースピカの力で創られている夜空が覆われた。其処に在るべき星や月を漆黒の闇が包み込んでいく様を見て、ユェーとルーシーは僅かに息を呑む。
「これは……」
 妙に深く、普通の夜とは違うもの。まるで地獄の黒のようだと感じたユェーは或る思いを抱いていた。
 ――昔の自分は、この闇を求めていた。
 否、自分はそんな存在だと思うようにしていたのだ。
 何も無い真っ暗な闇こそが己であり、誰よりも不幸をもたらす存在だと思い込もうとしてしまっていた。
「星月夜を覆う漆黒を、ルーシーは夜とは認めたくないわ」
「……ルーシーちゃん」
 其処に聞こえた少女の声によって、ユェーは過去への思いから引き戻される。一歩前に踏み出したルーシーはマスターデモンを見渡しながら、首を横に振った。
「……いえ、そういう一面もあるかもしれないけれど」
 ルーシーは語る。
 夜はもっと穏やかで静かなもの。静寂が怖いときもあるけれど、安らげる一面だってもっている。
「おおきくていつも見守ってくれる優しい月も、」
 夜の化身に怯むことなく、ルーシーは怪火を傍に呼んだ。その輝きはまるで揺らめく星のようだ。ルーシーはマスターデモンとの距離をはかりながら更に言葉を続ける。
「小さいけれど一生懸命瞬く星も夜にはあるの」
 それを消してしまうなんて、夜そのものであっても許されない。特にこの都市国家ではなおさらのこと。
 ルーシーの言葉と共に巡った炎を見つめ、ユェーは掌を握る。
 誰かが自分を月のようだと言った。違う誰かが、月の光は綺麗だと言ってくれた。そして――この子は、ルーシーはそんな月が好きだと言ってくれている。
(僕は……パパはお月様、誰よりも光って皆を照らしてくれる人だと、この子は――)
 果敢に前に立とうとしているルーシーの背を瞳に映し、ユェーはしみじみとした思いを抱いた。恐ろしい夜の化身を前にしても戦う意志を持つ少女は強い。
 自分が月ならば、きっとこの子は傍でそっと光り続けてくれる小さな星に違いない。
 その光は小さくとも目映い。
 自分のおゆな月よりも輝きは大きく、みんなを癒す力を持っている。
「嗚呼、月の光、星の光とはこんなにも輝いていたのですね」
「本当ね。昏く覆われたことで、お月さまやお星さまがどれほど夜空を彩っていたのかが分かるわ」
 ユェーが言葉にしたことに頷きを返し、ルーシーは空を見上げた。曇ったような漆黒になってしまっているが、この闇は今から自分達が晴らしてしまえばいい。ユェーもマスターデモンを強く睨みつけ、宣戦布告をする。
「そんな光を閉ざすモノはいけませんねぇ」
「何だか本当の夜が一層恋しくなっちゃった!」
「えぇ、はやく元に戻しましょう」
「さあ、本当の夜を――お月さまもお星さまも返してもらいましょう」
 二人は頷きを重ね、マスターデモンへの攻勢に入っていく。二人で挑むならば絶対に負けはしない。揺るぎない信頼と心を抱きながら、ユェーとルーシーは夜の化身に戦意を向けた。
 すると実体を持つ、具現化された夜が二人の周囲に召喚されていく。マスターデモンの分身めいたもの達に囲まれたユェーはぐるりと辺りを見渡した。
 自分までもが闇に包まれてしまったような感覚が巡ったが、ユェーは慌てたりなどしない。
「そんな闇は喰べてしまわないと」
 ――大喰。
 そう、一欠片も残さずに。ユェーが闇に向けて解き放ったのは暴食グール。その無数の口や手が幾何学模様を描きながらマスターデモンに迫っていく。
「嗚呼、お腹を空かせてるね。まだまだ喰べられるよ。お喰べ」
 グールに呼び掛けたユェーに容赦はない。
 彼に合わせてルーシーもふたいろ芥子の怪火を解放した。闇を祓う、怪火の灯り。それは夜を点すふたいろの明かりとなってマスターデモンを穿っていく。
 数多の漆黒が喚ばれたとて、蒼の炎を広く巡らせて焼いていけばいいはず。そうして敵を祓っていけば、その分だけ集まるダメージは増えていくだろう。
 ルーシーとユェーが背にしている街。其処に住む人々はまだ平穏の最中。
 この異変に気がついてないならばそれが一番だ。何も知らずに日常を過ごし、その中で訪れる特別で素敵な夜を楽しめばいいのだから。
 ルーシーは街の人々や今宵の巡りのことを考えながら、花菱草の炎を自分とユェーの周りへ巡らせた。
「ゆぇパパを闇に閉ざしたりなんて、けしてルーシーがゆるさないから」
「おやおや、ふふっ、嬉しい事を言って下さりますね」
「どうぞ、思い切り。パパの思うように!」
 ルーシーが心からの言の葉を紡ぐとユェーが嬉しげに微笑む。そして、援護は任せて欲しいと胸を張ったルーシーは炎を更に多く巡らせた。
 ユェーもユーベルコードを駆使していき、マスターデモンの力を削ぐ。
 その姿を見たルーシーは小さく笑む。
「……ふふ」
 彼は以前に伝えした言葉を覚えていてくれていた。それだけで嬉しくて戦う力も湧いてくる。ルーシーはユェーから視線を向けられていることに気付き、そっと頷いた。
「僕を好きだと言ってくれてありがとう、ルーシーちゃん」
「ええ、ええ。ルーシーはお月さまがすきよ。お月さまのようなパパの事もだいすきよ!」
 いとしい気持ちを力に変え、二人は夜の化身を倒し続けていく。
 ユェーは心に満ちる晴れやかな思いを大切に秘め、優しく腕を伸ばした。
「僕もルーシーちゃん……ララ、星のような君が大好きですよ」
 そのままそっとその身体を片手で抱き上げたユェーは、ルーシーの頭を撫でる。どんな敵が訪れても自分が彼女を守ると決め、ユェーは暴食グールに夜を喰らわせてゆく。
「……!」
「どうかしましたか?」
「あの、えっと……本当の名を呼んでもらえる事もだいすき、かも」
「そうですか。ふふっ」
 抱き上げられたルーシーはユェーに身を預け、好きの気持ちを素直に言葉にした。徐々にマスターデモンの数は減っており、侵攻も防ぐことが出来ている。
 好きだ、大好きだ。そう言ってくれた月の光を――誰よりも愛する星の光を取り戻す為に。
 力を尽くしていくユェーとルーシーは本当の夜を思う。
「もうすぐですよ、ルーシーちゃん」
「えぇ。きっとお星さまはお月さまと同じ空がうれしくて、ピカピカ光るのでしょうね」
 だって今、自分も嬉しいから。そのように感じたルーシーはすぐ傍にある大切な月に想いを馳せる。
 煌めく夜空を取り戻す為に。
 二人の力は見事に重なり、悪しき夜の化身を討ち滅ぼしていった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シアン・マグノリア
マスターデモン。…これまた懐かしいですね
どうしても感傷に浸ってしまいますね。やっぱり歳を重ねたから、でしょうかー
…やめましょう、この話は!

お祭りを楽しみにしている方々がいるのです
早々に何とかしなくては、ですね!
相手の攻撃は【受け流し】で往なしましょう
大丈夫、過去にも相手をした事があります
多少の動きは【勝負勘】が働くはずです、たぶん!

変わったものも、変わらないものもある
けど、マスカレイドについては変わったものです
もう、悲劇はおしまいの時間
もう一度封印させて貰いますよー!
かの狂王を討ったとされる【勇騎士ジョナの紋章】を貴方に
寂しい夜の時間はおしまい。
さあ、今度こそ安寧の眠りをもたらしましょう
私は笑顔で貴方を見送ります
笑っていれば、大丈夫

この信念だけはずっと、ずっと変わらないものだから



●宵星に咲く笑顔
 かつて異界に封印された存在、マスターデモン。
 具現化した夜と呼ぶに相応しい、否、そうと呼ぶしかないもの達が再び出現している。エリクシルの力によって呼び起こされたマスターデモンを見据え、シアンは静かに肩を竦めた。
「……これまた懐かしいですね」
 過去、マスターデモンは世界の全生命体と引き換えに、全ての悪を滅ぼす世界革命を行おうとした。それもエンドブレイカーによって防がれたわけだが、こうして現在に顕現しているとなると思うこともある。
「どうしても感傷に浸ってしまいますね」
 やはりあれから幾分も歳を重ねたからだろうか。子供達も成長しており、世界が見たいといって旅立った。それほどにシアンも長き日々を過ごしてきている。ふと過った思いに気付いたシアンは首を横に振った。
「……考えるのはやめましょう、この話は!」
 過ぎ去った年月よりも、今は目の前のことに集中するのがいい。シアンは身構え、迫り来るマスターデモン達を見渡した。あれらを止めなければシアンや他の猟兵が背にしている街が襲われることになる。
 それに今宵は特別な日。
「星見のお祭りを楽しみにしている方々がいるのです」
 きっとあのマスターデモン達にこんなことを言っても意にも介されないだろう。しかし、シアンの胸の内には揺るぎない思いと戦意が宿っている。
「早々に何とかしなくては、ですね!」
 シアンが地を蹴った瞬間、敵が破壊力を持つ闇の塊を解き放った。辺りが異界めいた空気に包まれる中、シアンは勇騎士ジョナの紋章を描く。
 闇を受け流しながら華麗に描かれた軌跡。それは狂王を討った偉大なる騎士の紋章だ。相手の攻撃を往なしたシアンは心を強く持つ。マスターデモン達は容赦がないが、シアンには勇気ある誓いの力もある。
「大丈夫、過去にも相手をした事があります」
 多少の動きは勝負勘が働くはずだと信じ、シアンは輝光剣を巡らせていく。光の斬撃は闇を祓うように鋭く迸り、マスターデモンの身を穿った。光速の連斬は真なる夜を斬り裂き、次々と地に伏せさせている。
 戦いの最中、シアンは過去からこれまでを思い返していた。
 あれから変わったものがある。そして、あのときから変わらないものもある。
「けど、マスカレイドについては変わったものです」
 あれがただの過去の繰り返しであるならば、今を変えてしまうことなど出来ないはず。何故なら、エンドブレイカーと猟兵の力があるからだ。
「もう、悲劇はおしまいの時間。もう一度封印させて貰いますよー!」
 シアンは更に紋章を描く。
 かの狂王を討った勇騎士ジョナの力であれば、マスターデモンなど退けられる。それに紋章の力だけではなくシアンが未来に向ける思いも其処には宿っていた。
 あのときの世界革命には程遠い、過去の残滓達。真なる夜の悪しき化身が星を覆い尽くす未来など認められない。
 彼らが存在したままでは夜の穏やかさは冷たき闇に包まれてしまう。
「寂しい夜の時間はおしまい。さあ、今度こそ安寧の眠りをもたらしましょう」
 シアンの描いた紋章は優しい光を広げ、輝く剣が宙を舞う。それは夜を越えて巡りくる朝のように目映く、悪しき存在を真正面から貫いた。
 そして、シアンは彼女らしい笑みを浮かべる。
 たとえ受け入れられぬ夜だとしても冷酷な送り方はしない。それこそがシアンの抱く思いだ。
 ――真なる誓いを、此処に。
 描かれた紋章から光が溢れた次の瞬間、最後のマスターデモンが消滅した。空気に解けていくように夜の化身が倒れて消えれば、深くて冷たい闇が晴れる。
 星霊の空の下、ちいさな夜の狭間で戦いは終わりを迎えた。天蓋に光る星を見上げたシアンは穏やかに笑む。その瞳には宵の明星めいた光が宿っていた。
「私は笑顔で貴方を見送ります。笑っていれば、大丈夫」

 この信念だけは――ずっと、ずっと変わらないものだから。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『星霊建築の星空』

POW   :    キャンプを張り、長い夜を快適に過ごす

SPD   :    美しい星空を眺めながらとりとめのない話をする

WIZ   :    静かな星空にひとり想いを馳せる

イラスト:れんた

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●水面と天の星
 今夜はエストレリヤの夜祭。
 その名の通り、星の日とも呼ばれている宵には様々な光が夜に灯る。アクエリオの水瓶より溢れる恵みの水は、今宵も清らかに流れており、泉に映る星々もひときわ美しく見えていた。
 泉に漕ぎ出したゴンドラの上から星を眺める夜。
 今夜のために用意された星型のランプは特別なものだ。
 赤に青、紫。それから金と銀。淡い光は手元だけを照らすほどの小さな灯り。
 星霊建築で映し出された夜空と星の巡りに浸るにはぴったりだ。
 空に浮かぶ星。泉に映り込んだ星。どちらを眺めても構わない。手にしたランプに願いを込め、空に送るのか泉に沈めるかは、訪れた者の自由。
 赤のランプには想いを込めて。青のランプには自分への誓いや夢を宿して。
 紫には大切な人にへの祈りや願いを捧げて、金色は本当に特別な思いを託す。そして、銀色のランプには誰にも言えない秘密をそっと潜めて。
 今宵に何を思い、何を祈り、何を願うのか。それもまた、特別で唯一のこと。

 そして、エストレリヤの夜祭は幕開ける。
 静かに揺らめくゴンドラの上で星霊の輝きをのぞむ為に。色とりどりの願いと想いが今、輝く。
 
ティタ・ノシュタリア
【💫💫】◎
わあっ……綺麗っ!
見てくださいマシュマローネ!
空と泉、どっちを向いても星でいっぱいですよ!

むむ、ゴンドラがあるんですね!乗ってみたいです!
それとココア買っていきませんか?

満天の星を見上げて
今見えるのは故郷の空とは違う星、違う輝き
ああ、旅をしてるんだなぁって実感しちゃいます

ココアをひとくち
ふふ、あったかい。なんだかほっとします

そうでした、お願いごとですよね!
もっともっとたくさんの知らないものが見られますように、です!
マシュマローネの願いを聞いてくすっと笑って
じゃあ私も。ご縁がずーっと続きますように!お願い追加です!
よくばりすぎですかね?なんて
青色のランプを水面に映して、そらに祈りを


マシュマローネ・アラモード
【💫💫】


お友達のティタと御一緒する星の泉、モワ、ワクワクするのはお互いさまですわね?
この景色をお見せできて本当に良かったですわ。

ココアを?モワ!そうですわね……夜冷えして参りましたし、良い選択だと思いますわ!

ゴンドラに乗ってお喋りをしながら星空を眺めながら。
わたくしも、つい、見える星や天体が違うのに故郷の夜空と重ねてしまいそうですわね。

ランプの色は青、私たち同じ色を選びましたね?
モワ、願いごとは旅の成功……その為に、良き友情や縁が結ばれる事……今日ここに一緒にいる友達との友情が末長くありますように……願いを空へと返しましょう。

願いは自ら叶えるもの、欲張りなくらいがちょうど良いですわ!



●王女と皇女と星の夜
 星すら見えなくなるほど闇を振り払って、導いたのは静かで美しい夜。
 これから始まる時間を思い、ティタとマシュマローネは辺りの様子を見渡してみる。
「わあっ……綺麗っ!」
「素敵な夜ですわね」
「見てくださいマシュマローネ! 空と泉、どっちを向いても星でいっぱいですよ!」
 頭上に広がる天蓋の空と、足元を流れる運河から続く泉。
 ティタは瞳を輝かせながらマシュマローネを呼ぶ。気持ちを弾ませているらしい彼女の後に続き、マシュマローネもそっと先へ踏み出してみる。
「モワ、ワクワクするのはお互いさまですわね?」
 自分もティタと同じ気持ちを抱いていることを示したマシュマローネはふわりと笑んだ。まるで先程までの戦いが嘘だったような穏やかさが広がっている。自分達が守りきったものだと思うと感慨も深くなった。
「この景色をお見せできて本当に良かったですわ」
 少し先を進むティタの背を見つめ、マシュマローネは心からの思いを抱く。
 そうしているとティタが運河に浮かぶ舟を見つけた。
「むむ、ゴンドラがあるんですね! 乗ってみたいです!」
「いいですわね!」
「それとココア買っていきませんか?」
「そこのお店でココアを? モワ! そうですわね……夜冷えして参りましたし、良い選択だと思いますわ!」
 ゴンドラに乗り込む前には準備も必要だ。
 この後の時間をもっともっと素敵にするために、二人は明るく頷きあった。
 温かい飲み物にランプ、それからめいっぱいに今夜を楽しむ気持ち。準備は万端だとして、マシュマローネとティタは星の泉に漕ぎ出していった。
 緩やかに進むゴンドラの揺れは心地よい。
 ティタは満天の星を見上げ、煌めく光を眺めてみる。
 今、此処に見えるのは故郷の空とは違う星と、違う輝きばかり。本物の星とは違うが、星霊魔法の力で巡る煌めきは美しい。偽物だとか本物だとか、そういったことも気にならなくなるほどだ。
 ――ああ、旅をしてるんだなぁ。
 そう実感したティタは穏やかな思いを抱いた。
「綺麗ですわね」
「ふふ、とっても!」
 マシュマローネの言葉に明るく答えたティタは、ココアをひとくち味わってみる。マシュマローネも倣って星を見上げながら、温かい飲み物で一息ついた。
「モワ、何だかいつもよりも美味しい気がしますわ。
「あったかい。なんだかほっとします」
 ティタが感じているのは心の中に灯ったような温もり。マシュマローネもティタと一緒に星の輝きを瞳に映しており、長閑で静かな時間を楽しんでいた。
 宇宙の世界を故郷に持つ者同士、見える星や天体に興味が巡るのはお約束。故郷の夜空と星を重ねた二人は穏やかに会話を重ねていった。
 違う星、似た星、自分達の住む場所から見た星。
 夜と一言で語っても、生まれ育ったり過ごしたところで様々な形がある。他愛無い話であってもティタとマシュマローネにとっては大切なこと。
 そうして、ゴンドラは次第に泉の中央の方に進んでいく。
 次は頭上ではなく、水面に映る夜空を眺めるティタ。それまでのんびりとした気持ちでいた彼女はふと、この泉と夜に特別ないわれがあることを思い出した。
「そうでした、お願いごとですよね!」
「そろそろお願いをしましょうか。確かランプは同じ色を選びましたよね?」
「はい!」
 二人が取り出した星のランプの色は青。
 ティタとマシュマローネは掌の中で揺れる灯火を暫し見つめ、それぞれの思いを言葉にする。
「もっともっとたくさんの知らないものが見られますように、です!」
「モワ、願いごとは旅の成功……その為に、良き友情や縁が結ばれる事……今日ここに一緒にいる友達との友情が末長くありますように……」
 明るく言い切ったティタと、祈るように願いを紡いだマシュマローネ。
 マシュマローネの切なる言葉を聞いたティタは、微笑ましげにくすりと笑った。そうした理由はとても嬉しいお願い事だと感じたからだ。
「じゃあ私も。ご縁がずーっと続きますように! よくばりすぎですかね?」
「願いは自ら叶えるもの、欲張りなくらいがちょうど良いですわ!」
 お願いの追加をしたティタは悪戯っぽく片目を瞑ってみせる。願いへの思いを話したマシュマローネはきっと大丈夫だと語り、ティタと一緒に青色のランプを水面に映し込んだ。
 揺らめく水の流れは清らかで、心まで洗われるようだ。ティタとマシュマローネは快い思いを交わし、二人で過ごす夜のひとときを楽しんだ。
 そらに祈りを、ゆめに願いを。
 空へと届けられた希望の欠片はきっと、いつかの未来に繋がっていく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マウザー・ハイネン

夜の化身が去ったなら、後は楽しい夜のお祭りの時間ですね。
守り切ったこの平和をゆるりと楽しむとしましょうか。
…夢は幾つか叶っても、まだ足りないのです。

淡い青の星野ランプを手に舟を出して貰います。
自分で操縦するのも楽しいですけれど、星空を楽しみたい今夜は誰かに導いて貰うのがいいような。
このアクエリオを長らく拠点にして見慣れてはいるのですが…やはり夜空綺麗ですね。
泉の水面に青の光を映し、込める願いは守り続けること。
大魔女を滅ぼし平和を取り戻し、けれど新たな災厄が世界を危機に陥れようとしている。
ならば前と変わらず抗い続ける事を願いたいな、と。
…ささやかな夢として、主と認められる方に巡り合えたらとも。



●終焉の先に待つもの
 冷たき夜の化身が去ったなら、後は楽しい夜のお祭りの時間。
 マウザーは平穏が満ちた街並みを眺め、ゴンドラに乗り込んだ。自分達の手で守り切ったこの平和を楽しむことが出来るのはエンドブレイカー、ひいては猟兵としての特権だ。
 街の人々は危機が訪れていたことを知らないが、それこそが完璧に守護しきれた証だ。
 それぞれに訪れる、小さな幸せのエンディングのお裾分けを貰うこと。それこそがこれまでと変わらない、エンドブレイカーとしての在り方でもある。
「さて、ゆるりと過ごすとしましょうか」
 願いや祈り、思い。
 そういったものはいつの時代にでも生まれるもの。
 今までたくさんの出来事や物事があり、願いは叶えられてきた。しかし、其処で終わりではない。生きる人々が迎えるエンディングの後は無ではなく、新たな物語が始まるものだ。
「……夢は幾つか叶っても、まだ足りないのです」
 まだゴールではない。
 むしろ過去のゴールの先に今という時間があるといってもいい。マウザーは淡い青の星のランプを手にしており、ゴンドラ乗りに舟を出して貰っていく。
 自分で操縦するのも楽しいのだが、今夜は特別。
 星空を楽しみたいと願った今夜は、こうして誰かに導いて貰うのがいいような気がしたからだ。ゴンドラ乗りの女性は優しく微笑んでおり、お客様のお願いの邪魔はしませんよ、と告げてくれた。
 どうやら操舵に専念してくれるらしく、マウザーはそっと感謝を伝え返す。
「このアクエリオを長らく拠点にして見慣れてはいるのですが……やはり夜空は綺麗ですね」
 マウザーが語ると、ゴンドラ乗りが静かに頷いた。
 肯定してくれることを嬉しく感じたマウザーは、泉の水面に青の光を映してみる。
 其処に込める願いは、守り続けること。
 大魔女を滅ぼして平和を取り戻した過去はあれど、数年前から新たな戦いも始まっていた。新たな災厄がこの世界だけではなく、別の世界をも危機に陥れようとしているならば――。
「前と変わらず抗い続ける事を願いましょう」
 青の煌めきは水面に反射しており、星を彩るように光っていた。
 心を穏やかにしてくれるような光景を見つめながら、マウザーはもうひとつの願いを胸に抱く。
 いつか、ささやかな夢として――主と認められる方に巡り逢えますように、と。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

陽向・理玖
【月風】

瑠碧に手を貸しゴンドラに乗り込み
カヌーが漕げればコレも漕げるんかな…?
二人分のランプと飲み物を足元に置き漕ぎ出し

見渡す限りの星空だな
水面にも星が映ると
境目が分かんなくなって
…まるで空にいるみたいだ
そのまま掬えそうな気がしちまうな
水面の星ごと水を手で掬い
冷てっ
慌てて手を振り
手取られ少し照れ礼を言い

意外と冷たかった
冷える前に飲み物飲もうぜ
ほら瑠碧ももっと寄って
一緒に毛布に包みココアで一息
おー温まる…

…まぁ
こうしてくっつく口実にしたかっただけだけどな

藤色のランプをゴンドラの縁に寄せて燈火映し眺め
これからも
こんな風に色んな瞬間を二人で共有して過ごしていきたい

…なんて
願わなくても実現させるけどな


泉宮・瑠碧
【月風】

理玖と一緒に無人ゴンドラをお借りして乗り込み
カヌー…漕げるのですか

はい、綺麗な星空…
水面の星も地上の星空みたいで
空の中を漕いでいるみたいですね
理玖の手を取り、タオルで拭き

日も落ちてますから、水も冷えたのかも
お誘いには頷いて、理玖に寄り添い
一緒に毛布に包まるのは…何だか楽しいですね
用意してあったココアをそれぞれ手にして
じんわり温かさと甘さが染みわたります

小さく笑い

藤色のランプ…縁に寄せるのは出来ます
少しだけこわごわと明かりを泉に映し
…日々の営みを一緒に過ごして
いつか夫婦、そして夫婦から家族になっても
こうして大切な時間を一緒に重ねていきたいです、ね

はい、願いというよりは…
確認と希望、ですね



●叶える為の夢
 進む先は一艘のゴンドラ。
 先に舟に乗り込んだ理玖は瑠碧へと手を伸ばし、二人は視線を交わす。街並みは穏やかさに包まれており、自分達が取り戻した平穏が巡っている。
「カヌーが漕げればコレも漕げるんかな……?」
 理玖はゴンドラのオールを持ち、足元に二人分のランプと飲み物を置いた。席に腰をおろした瑠碧は揺れる舟から辺りを見渡した後、理玖を見上げる。
「カヌー……漕げるのですか」
「それなりにな。お、いい感じに進んだ」
 理玖が操るゴンドラは星の泉に向けて出発した。
 街を抜けた運河の先に広がる景色は星の夜空。理玖は水面に映る星と天蓋の空に広がる景色を交互に見遣る。
「見渡す限りの星空だな」
「綺麗な星空……」
 瑠碧も理玖と一緒に天と地の煌めきを眺めた。
 上空だけではなく水面にも星が映っていることで空との境界が混じり合っているような感覚にもなる。
「境目が分かんなくなって……まるで空にいるみたいだ」
「はい、何だか浮かんでいるようですね」
 星の泉に辿り着いた理玖はオールから手を離し、瑠碧の横に座った。泉の上に浮かぶゴンドラはゆらゆらと揺らめきながら止まる。
「そのまま掬えそうな気がしちまうな」
「水面の星も地上の星空みたいで、空の中を漕いでいたみたいです」
 理玖は水面の星ごと水を手で掬ってみた。しかし、冬に近付いている今の水温は低い。
「冷てっ」
「大丈夫ですか……?」
 瑠碧は慌てて手を振った理玖に向けて腕を伸ばした。彼女が用意してきたタオルで拭いて貰ったことで理玖は少し照れた様子を見せる。ありがと、と告げた理玖は触れ合った温もりを確かめ、そっと笑った。
「意外と冷たかった」
「日も落ちてますから、水も冷えたのかも」
「だな。これ以上、冷える前に飲み物でも飲もうぜ」
「そうしましょう」
 理玖からの誘いに頷いて答えた瑠碧は、街で購入したものを広げていく。理玖は冷えた手を自分のもう片手で包みながら、彼女の方に身を寄せた。
「ほら、瑠碧ももっと寄って」
「……はい」
 持ってきた毛布に一緒に包まれば、仄かな温かさを感じる。理玖に寄り添った瑠碧も互いに触れ合う嬉しさや、特別な夜の雰囲気を楽しんでいるようだ。
「一緒に毛布に包まるのは……何だか楽しいですね」
「おー、ココアも温まる」
 冷えた空気の中で際立つのはココアの熱。じんわり伝わる温かさと共に甘さが染みわたっていき、瑠碧は緩やかに双眸を細めた。すると理玖がぽつりと呟く。
「……まぁ、こうしてくっつく口実にしたかっただけだけどな」
 素直に告げてくれた思いは何だか可愛らしい。
 彼に向けて小さく笑った瑠碧は、敢えてそのことを言わずにこくりと首を縦に振った。ゆらりと空中に漂うあたたかな湯気は天に昇っていっている。
 その様子を暫し見つめていた理玖は、瑠碧に呼び掛けた。
「そろそろ願い、込めとく?」
「いいですね……お願いを、空へ」
 理玖は藤色のランプをゴンドラの縁に寄せた。水面に映す燈火は星と一緒に揺らめいている。
 瑠碧も同じ色の灯火を、少しだけこわごわとした様子で映し出す。普段ならば火には恐怖を覚えるが、このランプの光は星のようにささやかだ。
 魔法の灯の明かりは優しく、水面の夜空を静かに彩った。
「これからも、こんな風に――」
 色んな瞬間を二人で共有して過ごしていきたい。
 理玖が願ったのは自分達のこれからのこと。何を願うかと問われれば、常に思っているこのことが相応しい。瑠碧も同様に思いを言の葉にした。
「……日々の営みを一緒に過ごして、いつか夫婦、そして夫婦から家族になっても……」
「あぁ」
「こうして大切な時間を一緒に重ねていきたいです、ね」
 二人の想いは同じ。
 理玖と過ごす日々を思い描いた瑠碧は、幸せそうに微笑む。その笑顔こそが守りたいものであり、自分だけのものにしたいのだと感じた理玖は拳を握る。
「……なんて、願わなくても実現させるけどな」
「はい、願いというよりは……確認と希望、ですね」
 信じているから、疑わない。
 理玖と瑠碧の願いと未来への想いは今、此処で――この先もずっと、確かな灯火となって輝き続ける。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シアン・マグノリア
やっぱり、アクアリオは綺麗ですねえ
この光景を、お祭りを護れて本当に良かった
折角です、ちょっとお邪魔させてもらいましょうかー

アクアリオに来たことはありますが…
ゴンドラ、実は乗った事無いんですよねえ…
ので、近くのゴンドラ乗りさんに声を掛けてみましょうか

ここは変わらず善き星空ですね
星型のランプも、何とも可愛らしい造形です
青のランプを選びましょう
あの時から変わらない、私の信念ー
―笑っていれば、大丈夫
そうすれば、どんな逆境だって乗り越える事が出来る
これは故郷を離れる時に、母から教わった大切な事
マスカレイド蔓延る戦いから変わらずに胸にある、私の誓い

なんて。
想い出よりも、今は星空を眺めましょか
きらきら、星の光と、ランプの光がまじりあって
とても綺麗な光景ですね
ゴンドラ乗りさんも、ランプに託したい事とかあったりします?
なんて、他愛のない話に花を咲かせて。
ゆったりと、のんびりと
星空と幻想的な光溢れるこの宵の時を楽しみましょう



●星空と花咲く笑顔
「やっぱり、アクエリオは綺麗ですねえ」
 清らかな水の流れと、見事な星霊建築の空は美しく澄み渡っている。
 シアンがしみじみと感じているのは、この光景とお祭りを護れて本当に良かった、ということ。現に街の人々はアクエリオに危機が訪れていたということを何も知らない。
 エストレリヤの夜祭を楽しむための準備をしている人々を眺め、シアンは穏やかな気持ちを抱いていた。
 そして、シアンは運河の方に歩んでいく。
「折角です、ちょっとお邪魔させてもらいましょうかー」
 すみません、と声をかければゴンドラ乗りの少女が顔を上げた。いらっしゃいませ、と語って微笑んだ少女はシアンが星の泉へいくお客だと察してくれたらしい。
「こんばんは! こちらのゴンドラにお乗りですね?」
「はい、お願いします」
「お手を失礼します。気を付けてお乗りください」
 ユーイです、と名乗った少女はシアンに手を差し伸べた。岸辺からゴンドラへと下りたシアンは揺れる舟の心地を確かめる。揺らめく水面には既に天蓋の空が映り込んでおり、波打つ様もまた美しかった。
 そうして、ゴンドラは星の泉に向かって漕ぎ出される。
「アクアリオに来たことはありますが……」
「わあ、旅行者の方なのですね。アクエリオはもちろん、この街も綺麗でしょう?」
 ユーイはこの街で生まれ育ったらしく、嬉しそうに語っていた。この笑顔が守れたことだけでも戦った甲斐があると感じ、シアンは双眸を細める。
 その際、少しだけ舟が揺れたことでシアンがはたとした。漕手の少女としては操舵ミスをしたつもりではなかった為、なにか失礼があったのかと心配しいる。
「あれ、どうかしましたか?」
「ゴンドラ、実は今まで乗った事が無いんですよねえ……」
「まぁ! それならゆっくり丁寧にゴンドラを進めますね。いえ、今まで適当だったわけじゃないですよっ」
「大丈夫ですよ、そう思ったわけじゃありませんから」
「良かった……。でも、お客様にとって初めてのゴンドラ体験ですものね。光栄です!」
 気合いを入れたユーイは、シアンにめいっぱい楽しんでもらいたいと願った。
 そのため道中はたくさんお話をするが、星の泉の真ん中についたら静かにしていると約束してくれた。それからシアンとユーイは他愛無い話で盛り上がっていく。
 この街のおすすめの食堂のことから始まり、近所で可愛がられている猫や、たくさん犬がいる家のこと。
 シアンの方は双子の子供がいることや、愛用の武具の手入れについてなど。
 やがてゴンドラは星の泉に到着する。
 にっこりと笑ったユーイに笑みを返したシアンは、改めて夜空を見上げた。
「ここは変わらず善き星空ですね」
 街で手に入れてきた星型のランプも、何とも可愛らしい造形で良い雰囲気だ。静かな夜を照らすランプの光はささやかであり、星の煌めきを隠してしまうこともない。
 シアンが選んできたのは青のランプ。そう、これは――。
(あの時から変わらない、私の信念の色)

 笑っていれば、大丈夫。
 そうすれば、どんな逆境だって乗り越えることが出来るから。

 これはシアンが故郷を離れるときに、母から教わった大切な言葉。
 マスカレイドが蔓延っていた過去の戦いの時分より、変わらずに胸の中に宿っているものだ。
 己の誓いそのものでもある言の葉はきっと、星のように胸の奥で光り続けている。どれだけ年月が流れようとも、どんなことが起きたとしても。
 笑顔が一番。
「――なんて。想い出よりも、今は星空を眺めましょうか」
 シアンは自分の胸にそっと手を当て、静かに笑む。その途中でユーイが気を利かせてくれたのか、より星々が美しく見えるところまでゴンドラを進めてくれた。
 きらきら輝く星の光。
 ゆらゆらと灯るランプの光。
 ふたつの煌めきと燈火がまじりあっていく光景は綺麗だと評する以外にない。
「とても穏やかな光景ですね」
「はい……」
 シアンの言葉にユーイが頷く。はっとした少女は黙っている約束だったのに、と口を噤もうとした。気を遣いすぎなくても大丈夫だと告げたシアンはユーイに問いかけてみる。
「そういえばユーイさんも、ランプに託したい事とかあったりします?」
「わっ、わたしですか? え、えっと……」
「恥ずかしいことなら話さなくても大丈夫ですが……ふふ、あるんですね」
「あのですね、その……名前はナイショですが好きな人がいて、そのお兄さんと仲良くしたくて……」
 するとユーイは年頃らしい話を小声で告げた。
 微笑ましさを覚えたシアンはユーイの恋を応援したいと話す。秘密ですからね、と小さく笑った少女はシアンを見つめ、二人は暫し恋の話に花を咲かせていった。
 ゆったり、のんびりと流れるひととき。
 星空と幻想的な光が溢れる、この宵は幸せな終焉にも繋がっていくはず。特別な時を大切に楽しんでいくシアンは、水の都市に住む人々の安寧と平和を願った。
 どうか、此処で笑顔が咲き続けるように――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルーシー・ブルーベル
【月光】◎

ありがとう
ゆぇパパとゴンドラに乗り運河へ
なんてキレイ!
水面に星と灯りが映ってステキね

パパは何色のランプ?
わたしは銀色
ふふ、いっしょね

…わたしは
ブルーベルの血を飲まないと生きられない
青花が欲するから
今も命は奪わないよう少しずつ

血を貰う対価は
青花冠する当主でいる事
そしていつか青花に食べられる事
一族の神性を保つ為に
彼らの拠り所の為に

なのに最近は
『対価』を払いたくない気持ちが大きくなって
そのクセに死にたくなくて、血は啜って
命(血)を食べるのならば
いつか食べられないといけないのに
この『役割』は
お父さまがわたしだけにくれた唯一なのに

いつからわたしは
こんなに身勝手で、生き汚い
悪いコになってしまったんだろう

ゆぇパパの事がいとおしくて大切で
家族になれた事が嬉しくて
役割より一緒に生きたいと願う様になってしまったから

こんな気持ちをパパが知ったらどう思うかな
…いえ
きっと変わらないわね

けど、この想いの結論は
きっとわたし自身で出すべき事だから
だから今は水底へ
見送るふたつの銀星

…さ、パパ
ホットコーヒー飲む?


朧・ユェー
【月光】◎

彼女をひょいと抱き上げてゴンドラへ
本当に綺麗な夜ですねぇ
星の映る海の中、まるで夜空に挟まれる不思議な世界

星のランプ?色で願いが違うのですね
ルーシーちゃんは何色でしょうか
僕は…銀色に光
嗚呼、今僕に必要な色

最近は内緒事はせず色んな事や気持ちを話ている
それでも…
見た目だけだと言いかせてもやはりあの男の血が流れているのか
誰よりも強い独占欲と自我欲
自分が一番大事だからこそあの男はこの身体を欲しがる
僕もまた自分が傷つきなく無いと逃げた
何故?あの男は若さを欲しがるのか?
もしかしたら誰か愛する、大切な者が居るのかもしれない
それが母や僕では無い、違う者

この子は愛する大切な娘
成長していく彼女を嬉しく思いつつも一人で歩いていける大人になっていく
淋しさとずっと幼いままで居てほしいと思う
僕のエゴ

そんな姿を見せてもこの子は笑って、そんなパパでも好きと言ってくれるとわかっているが
カッコ良い父親で居たいと思う複雑な気持ち
だから今は君が大人になるまで内緒に

それまで海へとおやすみなさい
おや?ありがとうねぇ
頂きます



●闇の最中に星ひとつ
 星が綺麗な夜が訪れ、様々なゴンドラが泉に向けて進んでいく。
 借りたゴンドラへと先に乗ったユェーはルーシーに腕を伸ばした。そのままひょいと彼女を抱き上げて舟に乗せたユェーは静かに微笑む。
「ありがとう、ゆぇパパ」
 ルーシーはお礼を忘れず、ユェーに笑みを返した。
 そうして、運河へ漕ぎ出した二人は星霊建築の空を眺める。天蓋になっている空に映り込む星は魔法で作られたものであり、本物ではない。しかし、そんなことが気にならなくなるほどに美しい。
「本当に綺麗な夜ですねぇ」
「なんてキレイ! 水面に星と灯りが映ってステキね」
「星の映る水面の中、まるで夜空に挟まれているような不思議な世界ですね」
「ええ!」
 ゴンドラの端までそっと寄ったルーシーは水面の星に手を伸ばす。しかし、ぐらりと舟が揺れたことで勢い余ってしまいそうになった。すかさず、危ないですよ、とユェーがルーシーを引き寄せたことで事なきを得た。
「きゃ……!」
「大丈夫でしたか?」
「パパのおかげで平気よ。ゴンドラの端に寄りすぎないよう、これからは気を付けなきゃ」
「いい子です、ルーシーちゃん」
 ちゃんと教訓を得てくれたルーシーに向け、ユェーは優しく笑む。だが、綺麗なものに引き寄せられる気持ちも尊いものだ。もし今後に彼女がこういった危ない目にあっても自分が助ければいいだけのこと。ユェーはそっと誓いながら、星の泉と呼ばれる場所へ進んでいく。
 此処では様々な色のランプに思いや願いを込められる。
 街で手に入れてきた灯りを取り出したルーシーは、ユェーの方に問いかけた。
「パパは何色のランプ?」
「色で願いが違うのですよね、僕は……と、ルーシーちゃんは何色でしょうか」
 ユェーはランプを荷物から取り出しつつ、先に少女が持つ灯りに目を向ける。ルーシーは彼によく見えるように両手を差し出してみた。
「わたしは銀色よ。パパのも――ふふ、いっしょね」
「えぇ。銀の光です」
 嗚呼、と感嘆の言葉を零したユェーはこれが今の自分に必要な色だと話す。二人は視線を交わし、天と地で煌めく星々を暫し見つめていた。
 手の中で灯る銀の光が示すのは、誰にも言えない秘密があるということ。
 それゆえにルーシーもユェーも互いの願いを聞くことはしなかった。ルーシーは水面に映っている光をじっと見つめたまま、銀のランプをゆらりと揺らす。
 そして、或る思いを胸に抱いた。
(……わたしは、)
 ブルーベルの血を飲まないと生きられない。何故なら、青花が欲するから。
 今だって命は奪わないよう、少しずつ蝕まれているようなもの。
 血を貰う対価もある。青花を冠する家の、当主で居続けること。それが幼い少女に課せられている状況であり、逃れられない宿命のようなもの。
 そして、対価はもうひとつある。それは、いつか青花に食べられること。
 一族の神性を保つため。
 または、彼らの拠り所のために。
 そのことがおかしいとは思わない。そういうものだと教えられ、そうやって生きてきたからだ。何も変なことなどないはず。ルーシーの当たり前は人とは違っているが、唯一の存在理由でもある。
 それなのに――。
(最近は、『対価』を払いたくない気持ちが大きくなってるの)
 そのクセに死にたくはない。
 血は啜って、命を、血を食べ続けているのならば、対価としていつか食べられないといけないというのに。
 ルーシーはぎゅっと掌を握り締める。
 震えるほどに片手に力が入っているからか、もう片手に持っているランプが揺れていた。
(だめ、なのはわかっているわ。この『役割』はお父さまがわたしだけにくれた――)
 唯一なのに。
 両手でランプを包み込んだルーシーは首を横に振る。星が美しいことに反して、自分がそれとは真逆にいるような気もしてきた。どうして、と心の中で木霊する思いが消えてくれない。
(いつからわたしは、こんなに身勝手で、生き汚い悪いコになってしまったんだろう)
 隣にいてくれる彼のことが、いとおしくて大切で。
 血は繋がっていなくとも家族になれた今が嬉しくて、大事になっている。
 役割よりも、一緒に生きたいと願うようになってしまったから――。
(こんな気持ちをパパが知ったらどう思うかな)
 ルーシーはいつしか、静かに笑っていた。きっと変わらないということが分かるから。
 不安も自分への嫌悪もあるけれど、今だけは幸福に近付けている。水面の星に目を向けたルーシーは一度だけ、ゆっくりと瞼を閉じた。
 同じようにユェーも秘めたる思いを灯火に向けている。
 かつてと違って、最近は内緒事などはせずにいた。様々な事柄についての気持ちや思いを話しているユェーだったが、それでも言えないことがある。
 見た目だけだと言いかせても、やはりあの男の血が流れているのだろう。
 誰よりも強い、独占欲と自我が己の中にあることを実感した。
(自分が一番大事だからこそ、あの男はこの身体を欲しがる……そして僕もまた――)
 自分が傷つきたくないからと逃げ出した。
 何故?
 あの男は若さを欲しがるのか。胸中で問うてみても答えが返ってくることはない。
(もしかしたら誰か、愛する大切な者が居るのかもしれない)
 されどそれは母や自分ではない、違う者だとも分かっていた。あの男に関することだけはルーシーにはよく語れず、自分が秘めている思いも言葉に出来ないままだ。
 そして、銀の光から星の煌きに視線を移したユェーは、ルーシーの横顔を見遣る。
(この子は僕が愛する、大切な娘)
 日々成長していく彼女の姿をいとおしく思いつつも、いつか一人で歩いていける大人になっていくことも理解していた。嬉しさと同時に淋しさもあり、叶うならばずっと幼いままで居てほしいとも思う。
(だけど、僕のエゴだ)
 幼いままを望むならば時を止めて、棺に氷漬けにしておくほどではないといけない。だが、そんなことは出来なかった。ユェーが望む永遠とは全く別のものであるからだ。
 このように思う情けない姿を見せても、きっと少女は笑ってくれる。
 そんなパパでも好きだと言ってくれることもわかっていた。それゆえに格好いい父親代わりでいたいと思う複雑な気持ちがある。だからこそ、今は君が大人になるまで待とう。
 内緒にしておけば、今の幸せは保たれる。ユェーは思いを纏め、光を水面に沈めるように手を伸ばした。
「……それまで、水底へとおやすみなさい」
「また、ね」
 ルーシーも同時にユェーに倣って光を沈める。
 この想いの結論はきっと、自身で出すべきこと。だから今は水底へと見送ってしまえばいい。
 ふたつの銀星をそうっと送った二人は顔を上げた。
「……さ、パパ。ホットコーヒー飲む?」
「おや? ありがとうねぇ、頂きます」
 それまで巡らせていた思いは沈め、ルーシーとユェーは普段のままの笑顔になっていく。
 どうか、ほんの少しでもいい。
 束の間でしかないこの幸福が、僅かでも長く続いていくように祈って。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ラウム・オラージュ
【紫】
俺は自分のゴンドラ持ってないから
近くの船乗りに乗せてもらう

ねえちゃんのゴンドラに乗せてもらったことがあったけど
『歌わなければならないらしい』『だから、練習』なんて
柄にもないこと言って、喋る事も億劫だったくせにさ
今は領主さまだもんな。もう随分顔見せてねえや

鴉達を数羽招いて、宝物の薔薇を宵の空に掲げた
枯れないそれは忌の残香
のろいか、それとも

かあさん、とうさん
ねえちゃん、にいちゃん
俺、立派にやれてっかなあ

旅はまだ終わらない
俺が生きている限り、ずっとずっとこの道は続いて行くから

『――見守ってて。そんで、見るたび驚いて!』

柄じゃねえや
でもさ、タマシイは天に昇るっていうらしいじゃん
一番空に近いこの泉に俺の声を届けて貰うんだ
……ねえちゃんとにいちゃんは死んでない?何ならすぐ会えるって?
いーだろ別に!手紙書いたり直接言うの恥ずいんだよ!

自分の願い事にするか迷ったんだよな
『自分だけのでっかい宝物が見つかりますように』って
でもさ、俺はいつだってひとりじゃなかったから
……新たな旅立ちへの抱負ってことで!



●星空に届け
「懐かしいな……」
 昔と変わらぬ清らかな水が巡るアクエリオにて、ラウムはいつかのことを思い返す。
 星が瞬く星霊の夜空は美しく、これが自分達の守ったものだと思うと更に感慨も深くなった。そんなラウムは今、ゴンドラ乗りが操舵する舟に乗っている。
 ゴンドラの主は無口な青年であり、これは静かに航行する舟だと最初に話してくれていた。
 わいわいと話しながら進むゴンドラもいいが、こんな夜は静けさを楽しんでいくのもいい。そうして現在、ラウムは以前にゴンドラに乗ったときのことを思い出している、というわけだ。
(ねえちゃんのゴンドラに乗せてもらったときは……)
 たしか、彼女はこういっていた。
『ゴンドラ乗りは歌わなければならないらしい』
(そうそう、それから――)
『だから、練習』
 ラウムからすれば柄にもないこと言った彼女は舟を漕ぎながら歌った。喋ることも億劫だったくせに、とちいさく呟いたラウムは懐かしさに少しだけ笑む。
(今は領主さまだもんな。もう随分顔見せてねえや)
 元気かなぁ、と彼女のことを思い浮かべたラウムは空を見上げた。
 見れば見るほどに美しい星空だと感じる。
 この辺りでも一番の煌きだと言われるのは、星霊建築を施した者の腕が相当なものだったからでもあるのだろう。そのおかげでこんなに綺麗な景色を見られる。
 何処かの誰かに、そしてゴンドラを漕ぐ青年にも感謝しながら、ラウムは腕を伸ばす。
 そうすると招いていた鴉達が近くで羽ばたいた。それと同時にラウムは宝物の薔薇を宵の空に掲げてみる。
 この薔薇はずっと枯れない。
 それは忌の残香だ。のろいか、それとも。
 考えを巡らせていくラウムは目を細めた。そうしていると、星の泉の中央にゴンドラが進む。ラウムは街で用意してきたランプをゴンドラの帆先に掛けて貰っていた。
 淡く先を照らす光は星の輝きの妨げにはなっていない。ラウムは水面に映る星を見つめ、ゆっくりと口をひらく。
「かあさん、とうさん」
 まず言葉に出たのは両親のこと。
 今夜は家族への思いが強く巡っている。そして、次に紡いでいくのは――。
「ねえちゃん、にいちゃん。俺、立派にやれてっかなあ」
 勿論、誰かからの答えはない。
 ラウムもそのことをわかっているが、今宵は星に語りかけることが言葉を届ける手段だと信じていた。空で、または水面で瞬く星の煌きこそが答え代わりにもなる。
 あれから何年も経った。
 けれども旅はまだ終わらない。
(俺が生きている限り、ずっとずっとこの道は続いて行くから)
 心の中で誓いと志を強くしたラウムは、水面から空に目を向ける。自分の思いを言葉にするならば沈めるよりも天に向けて宣言する方がきっといい。

『――見守ってて。そんで、見るたび驚いて!』

 思いを言の葉にして込めたラウムは、すぐにふっと笑う。
 柄じゃねえや、と声にした彼はくすぐったいような不思議な気持ちを覚えていた。するとゴンドラ乗りの青年が静かに微笑む。ラウムは彼が自分に微笑ましさを覚えてくれたのだと分かり、笑みを返した。
「ほら、タマシイは天に昇るっていうらしいじゃん」
「……はい」
「だから一番空に近いこの泉に俺の声を届けて貰うんだ」
 こくりと頷いた青年は、それはいいことだ、というように空を見上げる。あまり言葉を語らずとも青年がこちらを気遣ってくれているのがよくわかった。
 そうしていると鴉達がラウムの頭に止まり、額をつつきはじめる。
「いや……ねえちゃんとにいちゃんは別に死んでないし、何ならすぐ会えるけどさ!」
 いてて、と声をあげたラウムは鴉達の言いたいことに答えた。
 そうだったのかというように青年も目をぱちぱちと瞬いている。どうやらラウムの家族みんなが空にいると思っていたようだが、これで誤解はとけた。
「いーだろ別に! 手紙書いたり直接言うの恥ずいんだよ!」
 鴉達を頭から退かせたラウムは、ふい、とそっぽを向く。その言葉を聞いていたゴンドラ乗りの青年――後ほどやっと聞き出せたのだが、彼の名はライアネールトというらしい――が、状況を見兼ねて封筒と便箋をラウムに渡したのは、もう暫し後のこと。
 そうして、ラウムは再び星空を見つめる。
 本当は己自身にかかわる願い事にするかどうか、とても迷っていた。
 ――『自分だけのでっかい宝物が見つかりますように』という思いだ。
 しかし、ラウムはいつだってひとりではなかった。だからこそ自分だけの願いは此処ではお預けだ。皆で見つける宝物もきっと、最高に価値のあるものに違いない。
「……新たな旅立ちへの抱負ってことで!」
 いいだろ、と鴉達に笑いかけたラウムの表情は晴れ晴れとしたものだ。
 空から見守る星々は、優しい夜の中で輝き続けていた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

叶・灯環

星型のランプは銀の光
指で突けば銀河が波打つかのようで
こいつの光も祈れば届くのかねぇ

なあ、少しだけ聞いてくれよ
逢いたいと願ったひとに逢えないんだ
何処を捜してもいない
声も顔も薄れていく。俺も薄情なやつだよなぁ
あんなにもあの人に懐いてたのにさ

代々続く魔術師の血が流れる俺
しかし魔術の才能はなく欠陥品扱い
そんな中で似た境遇でありながら
或る日、力を得た年上の従兄がいた
俺を腐らせずにいさせた存在

今だから気付いたことも多いんだ
教えてくれるヤツがいないから知識を俺に叩き込んだ
魔術しか能がない人間だらけ故に対抗する術として武術を俺に教えた

アンタ、ほんっっっとうに分かり辛ぇ!
そもそも頼んでないし。よくぶっ叩くし
与えるだけ与えて勝手に居なくなって
なに死んでんだよ
何一つ返させてくれないとか横暴だ
不満は尽きず文句ばかりが口から出る

どうせ出ていくんなら連れてけよ…
ぽつり吐いた言葉に苦笑零し
アンタから貰ったもんは活かされてるよ
いつか俺がそっちに行ったときにでも聞かせるよ、兄さん

だからいまは空に届けずに想いを泉に沈めて



●彼の穹へ届くまで
 銀の星灯は淡く、揺らめく火は静かに点っている。
 灯環は無人のゴンドラにひとりで座り込み、星型のランプを指先で何気なく突いてみた。
 まるで銀河が波打つかのような灯火は美しいものに思える。しかし、今宵に巡るこの色が意味するのは、誰にも言えない秘密の事があること。
「こいつの光も祈れば届くのかねぇ」
 灯環の薄墨の髪もまた、銀の光に照らされている。
 星灯りを消さないほどの小さな火であるゆえ、夜空の美しさは確かめられた。灯環はランプを手の中で揺らしながら、誰にともなく――光に向けて声を落とした。
「なあ、少しだけ聞いてくれよ」
 ランプの火が夜風を受けて揺れた。それが頷きのようにも思えた灯環は語りはじめる。
 自分には逢いたいと願ったひとがいる。
 けれども、今も逢えないまま。
 何処を捜してもいない。噂を聞くようなこともなかった。幼少期から知っていた相手だが、会えなくなった年月が長くなるにつれ、いつしか声も顔も薄れていった。
「逢いたいのにさ、あんなにもあの人に懐いてたのにさ……俺も薄情なやつだよなぁ」
 一説によると人の記憶からはまず、音が消えていくという。
 つまりそれは声だ。どんな風に語っていたか。そして、その顔はどのようなものだったか。声の次は顔や表情で、最後に残るのは相手と過ごした日々の記憶だけ。
 灯環の一族は代々続く魔術師の家系だ。
 勿論自分にもその血が流れているが、家の者が期待するような能力もなく、望まれる結果も残せなかった。
 家では魔術の才能がない者は欠陥品扱いされるのが常だ。
 灯環は一族の中では日陰者であり、それが当たり前で仕方のないことだと自分を納得させていた。そんな中で似た境遇にいたのが、逢いたい相手――年上の従兄だ。
 しかし彼は或る日、唐突に力を得た。
 驚きはしたが、彼が魔力を欲していたのならばそれでいいとも思えた。しかし、全てを割り切れるわけでもなく、当時の灯環の心境は複雑でしかなった。
「それでもアイツは、俺を腐らせずにいさせた存在で……」
 そう、今だからこそ気付いたことも多い。
 灯環は自分の考えをそっと言葉にしていく。
「教えてくれるヤツがいないから知識を俺に叩き込んで、魔術しか能がない人間だらけ故に対抗する術として武術を俺に教えていった。そういうことだよな……?」
 うん、と頷いた灯環は彼がしていったことを確かめた。
 そうならそうと言ってくれればよかったのだが、当時の彼は何も言わずにいた。だからこそ今の灯環は悔しさを覚えてしまっている。
「アンタ、ほんっっっとうに分かり辛ぇ!」
 勢いのままにゴンドラの縁に拳をぶつけた灯環は、痛ってぇ、と思わず呟く。頑丈なゴンドラが壊れることはなかったことは安心だが、拳がじんじんと痛む。まるで嘗て、従兄に武術の技を決められたときのようだ。
「そもそも頼んでないし。よくぶっ叩くし、殴るし、容赦ないし」
 少しの怒りが沸々と湧いてくる。
 だが、灯環は俯いた。
「与えるだけ与えて勝手に居なくなって……なに、死んでんだよ」
 捜していたときは見つからなかった。
 しかし、随分と後になってわかった。彼はとうに亡くなっていた、ということを。
「何一つ返させてくれないとか横暴だ」
 届かせたかった、と無意識に思っていた手は最後まで届かなかった。そのように実感した今は彼への不満は尽きず、文句ばかりが口から出てしまう。
 俯いたままの灯環は、此処に誰もいなくてよかったと感じた。何故なら――。
「どうせ出ていくんなら連れてけよ……」
 自分でも気付かぬまま、ぽつりと吐いた言葉に苦笑してしまうほどだったからだ。冷たいと分かっていたが、灯環はゴンドラから水面に手を伸ばす。
 冷えた感覚が泉から伝わってきたが、不快ではない。
「アンタから貰ったもんは活かされてるよ」
 遠い空の彼方へ。
 そして、今は触れられるほど近くにある星空の鏡に。そっと告げた灯環は、いつになるか分からないけれど、と付け加えた後に語る。
「いつか俺がそっちに行ったときにでも聞かせるよ。――兄さん」
 だから、いまは空に届けずともいい。
 想いを泉に沈めた灯環は、眼下に見える鏡写しの空を暫し見つめていた。
 星は何も語らず、ただ美しく瞬いていた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

アンゼリカ・レンブラント
エストレリヤの夜祭にそっと混ざらせてもらおう
泉の片隅で無人ゴンドラに乗り、ひとりの時間を過ごそうか

星空を見上げ物思いにふけりつつ
紅茶を飲みながら星の燈火を泉に映そう

澄み渡る空を思わせる青のランプを泉に映せば
鏡写しになった夜空に届けと心中に念じよう
15年前―この見た目通りの少女だったなら大きな声をあげ
歓声と共に空を見上げたのだろうけどな

やれやれ、この15年でおばさんになってしまったもの
初々しさは無くしても、心の奥に灯る大事なものは
無くしてないつもりだけど――

そうだな、今日は
かつての思い出に浸り、あの頃の心を思い出し
そして新たな活力をいただく為来たんだ

20年近くを戦ってきたが、
猟兵なる者としてまた新たな戦いが待っているらしい
望むところじゃないか

悪しき終焉を砕き、平穏に1日を終わらせるが我らが勲章
私たちが務めを果たす世界がたくさんあるなら、
それは望むところってもんさ

今日を休んだら、また新たな冒険に赴こう
剣を置いた多くの仲間たちにも
剣を取り続けた多くの仲間たちにも
またいい土産話を持っていけそうだ



●天光が映す未来
 今宵はエストレリヤの夜祭。
 星を眺めて願う、或いは祈りや思いを馳せる日だと云われている。
 アンゼリカは街に降り立ち、星のよく見える泉に出発していくゴンドラを見ていた。良い機会であるため、自分もそっと混ざらせてもらおうと決めたアンゼリカも星の泉に向かっていく。
「さて、行ってみるとしようか」
 そうして、到着した泉の片隅。
 静謐な雰囲気が満ちる中、アンゼリカは無人ゴンドラに乗り込む。
 今夜のような日はこうしてひとり、穏やかな時間を過ごすのが良さそうだ。そのように考えたアンゼリカは夜の楽しみ方を充分に知っている。
 揺らめく水面に映る星は美しい。少し漕ぎ出せばゴンドラも心地よく揺れた。
 まるで鏡写しだと感じたアンゼリカは、空が自分の真下にあるような不思議な感覚をおぼえている。手を伸ばせば星を掴めるような気もしたが、そう思った自分に少し笑ってしまった。
 されど、とても微笑ましくて心地よい時間だ。
 アンゼリカは星空を見上げ、物思いにふけってゆく。
 用意してきた紅茶を飲めばふわりとしたあたたかさが巡っていった。そして、アンゼリカは星の燈火を泉に映してみる。手にしているのは澄み渡る空を思わせる青のランプ。
 泉に映り込んだ灯火は淡い。
 それでもしかと燃えている火を見つめると、心までもが青の心地に染まっていくかのようだ。
 夜空に届け、と念じたアンゼリカは星を瞼の裏にも映し込むように目を閉じた。沈黙は静寂となり、静かな水の音だけが耳に届いている。
 思い返すのは、十五年前。
 もしも自分がこの見た目通りの少女のままだったならば、大きな声をあげて星空を賑やかに見ていただろう。きっと歓声と共に空を見上げ、純粋そのものである眼差しに頭上の星を映したはず。
 そっと瞼をひらいたアンゼリカは懐かしき日々に想いを馳せていた。
「若い頃はそうだったのだろうけどな」
 ふ、と笑ったアンゼリカの表情には見た目以上の深みが見えた。
 確かに年月は重ねてきたが、歳を取りすぎたとも思っていない。それでも過去との違いを嫌でも実感する。これを成長とも呼ぶのだろうが、アンゼリカはあえて少しだけ茶化してみる。
「やれやれ、この十五年でおばさんになってしまったものだね」
 初々しさはなくしてしまったかもしれない。
 しかし、心の奥に灯る大事なものはなくしていないつもりだ。アンゼリカはアンゼリカという個人のまま、ずっとこうして生きてきた。
 それゆえに過去を失ったとは思わず、新たな境地に辿り着いている。
 青のランプを手の中で揺らしてみた。
「そうだな、今日は――」
 街の人々が特別だと語る夜だ。
 自身も少しばかり特別な思いに浸ってもいいだろう。アンゼリカはかつての思い出に浸り、あの頃の心を思い出してゆく。そして、此処から新たな活力をいただく。
 そのために此処に来たのだといってもいい。
 ――みんなの心の輝きが、究極の光!
 そういって真っ直ぐに前を見据え、長い金髪を揺らして大きな天光色の瞳にたくさんのものを映してきた。あれから二十年近く戦ってきたが、まだ冒険も旅も終わっていない。
「これからは猟兵なる者としてまた新たな戦いが待っているらしい。望むところじゃないか」
 今も昔も、アンゼリカは黄金戦姫のまま。
 その称号に相応しい道筋をこれまでも、今後も歩んでいけるだろう。今もこうしてイェーガーの一員となってもエンドブレイカーとしての意志は持ち続けている。
 悪しき終焉を砕き、平穏に一日を終わらせる。人知れず事件を解決すること。時折、その功労に感謝を貰えること。それこそが我らが、エンドブレイカーの勲章。
 猟兵としても同じことが出来るならば、この世界以外にも喜んで出向いていける。
「私たちが務めを果たす世界がたくさんあるなら、それは望むところってもんさ」
 これから、どのような場所を見られるだろうか。
 新たな冒険が待ち受けているのか。それとも、スリーピング・ビューティと戦っていたときのような苦難が訪れるのだろうか。どちらにしろ、進むことには変わらない。
 寧ろどのような困難に巡り遭おうとも、エンドブレイカーも猟兵も乗り越える心算で立ち向かうはずだ。
「今日を休んだら、また新たな冒険に赴こう」
 アンゼリカはこの先に巡るはずの未知や未来を思い、静かに笑む。
 その表情の中には、嘗ての無邪気だった少女の面影がしかと宿っている。それでいて大人の眼差しを持っているアンゼリカは、未来への希望を忘れていない。
 剣を置いた多くの仲間たちにも、剣を取り続けた多くの仲間たちにも。
「……うん。またいい土産話を持っていけそうだ」
 星のランプは揺れるゴンドラの上で、穏やかに灯り続けている。
 思いは美しき空へ、願いは胸の奥へ。
 終焉から続いていく新たな物語。それはまた此処から、新たに始まってゆく。

 さぁ――心の光を輝かせて、数多の終焉を砕きに行こう。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

荻原・志桜

🌸🕯

すごく綺麗だねぇ
空を見上げても、泉を覗いてもきらきら輝いてるの
星の世界を切り取って、その中に入り込んだみたい
星霊建築ってこんなこともできるんだね
カルディアちゃん興味深々?にひひ、わたしもだよ
心を奪われてしまうぐらい
強く惹かれる美しい景色だもん
すごいなぁ、まだまだ知らないことばかりだよ

灯す星型ランプを眩そうに見つめ
わたしは赤色
本物のお星様にも負けないぐらい輝いてるよ

わたしね、好きがいっぱいあるんだ
魔法と魔女の絵本
紅茶と一緒に食べる甘いお菓子
お花は全部好きだけど桜は特に好き
生涯捧げる愛は恋人へ
幼い恋と憧憬は魔法の師に
そして――
ずっと変わらない友愛を捧ぐのは…カルディア、あなたに
星にも負けない輝きを秘めた美しいひと
キミのランプから生み出す光も
いつもわたしを想ってくれるその心も
その全てがわたしは好きだよ

にひひ。特別はひとつじゃないといけないって決まりないもん
だってぜんぶ特別だから
なにひとつ欠けちゃいけないの

わたしの幸せ願うカルディアの倖を祈るの
赤色の灯を泉に映し
祈りが空に届きますように


カルディア・アミュレット
🌸🕯

天と地、どちらが空で泉か
星空の中を進めば見惚れる

ほんとうに、美しい都市…
水に恵まれ美しい世界を映す
星霊建築というのはとても興味深いわ
好奇心に己が心であるランタンの焔を揺らしながら
今夜はもう一つランプを手にしていた
わたしが選んだのは紫の燈

志桜は、何色を選んだの?

わたしはね、このランプの燈に
あなたの未来の幸せが
もっと花咲くものでありますようにってお祈りしたい
志桜にはね
ずっと…わたし、いろんな楽しいをもらっているから
その分、あなたにも
これからも楽しいことや幸せなことが訪れてほしい
志桜が幸せである姿が、いちばん…わたしにとって幸せ

特別な気持ちを紡ぐ志桜の話を聞く
ふわりと微笑みランプの燈をあなたに見せて
…大切なものを全て愛しめるあなたをわたしも大好きよ
もちろん…わたしの大切な友人としても
何ひとつ欠くことはないわ
あなたはたくさんの人を大切にできる優しい魔女よ
その言霊はあなたの大切な人もわたしも幸せにする

ふたりで祈りましょうか
この願いを煌く空へ
届けばきっと互いの望む幸いに辿り着けますように



●特別なものをめいっぱいに
 天と地、空と泉。
 どちらが上で、どちらが下なのか。進んできた方向はどちらだったのか。
 あまりの美しさにそれすら分からなくなりそうな幻想的な光景が広がっている。鏡写しの星空はまるで自分達が銀河に浮かんでいるかのような感覚を巡らせてくれた。
「すごく綺麗だねぇ」
 ふたりきりのゴンドラに乗り込んだ志桜は空を見上げ、次に泉を覗いてみる。どちらもきらきらと輝いているので、ふたつの星空の間に漂っているようにも思えた。
「ほんとうに、美しい都市……この星空も――」
 カルディアも志桜と一緒に水に恵まれた美しい世界を瞳に映す。
 ゆっくりと星空の中を進めば見惚れるほどに綺麗な光景が広がっていく。志桜はカルディアに微笑みかけ、心地よい気持ちを抱いていることを示した。
「星の世界を切り取って、その中に入り込んだみたい」
「星霊建築というのはとても興味深いわ。遠い空に見えるけれど、あれは天井なのね」
「すごいねぇ。星霊建築ってこんなこともできるんだね」
 本物の星空と見間違うほどだが、この煌めきは天蓋に映されたものだ。たくさんの街や家々、自然などの層が重なった都市国家というものは殆どすべてが星霊の魔法で作り出されている。
「カルディアちゃん興味津々? にひひ、わたしもだよ」
「だって、不思議でしょう?」
「うん、わかるよ。心を奪われてしまうぐらい強く惹かれる美しい景色だもん」
 カルディアと志桜は暫し星霊建築の夜空を眺めていた。
 他の世界と変わらないほどに美しい天蓋は、とても不思議でありながらも落ち着いた雰囲気だ。星の泉に浮かぶゴンドラもゆっくり、ゆらゆらと揺れている。その心地もまた心があたたかくなる要因のひとつ。
「綺麗ね……」
「すごいなぁ、まだまだ知らないことばかりだよ」
 好奇心が刺激されるような気もして、二人は視線を交わした。己が心であるランタンの焔を揺らしているカルディアは幾度か瞬く。ランタンとは別に、今夜の彼女はもうひとつのランプを手にしていた。
 それは星明かりを邪魔しないほどの、ちいさな光が灯されたものだ。
 そっと紫のランプを掲げたカルディアは志桜に問いかける。
「志桜は、何色を選んだの?」
「わたしは赤色。見て、ひとつずつは本物のお星様にも負けないぐらい輝いてるよ」
 手の中にランプを取り出した志桜はちいさくとも確かな輝きを胸の前に掲げた。カルディアは自分の紫と志桜の赤を交互に眺め、穏やかな思いを抱く。
 志桜もカルディアのランプを見つめた後、そっと語り始めた。
「わたしね、好きがいっぱいあるんだ」
 たとえば魔法と魔女の絵本。
 それから、紅茶と一緒に食べる甘いお菓子も好きなもののひとつ。お花は全部が好きだけれど、桜の花は特に好きで大切なもの。自分の名前にも入っている花だからかも、と志桜は笑う。
 生涯捧げる愛は恋人へ。幼い恋と憧憬は魔法の師に向けていた。
 志桜はそれぞれに好きなもの、愛おしいもの、大切なもののことを話す。カルディアはこくりと頷きながら志桜の話に耳を傾けていた。泉に映り込む星が瞬くのも、二人の話を静かに聞いて頷いてくれているからかもしれない。そんな風に思えるほどに此処は佳き光景だ。
 そして――。
「ずっと変わらない友愛を捧ぐのは……カルディア、あなたに」
「わたしに?」
 首を傾げたカルディアは志桜がランプを掲げた仕草を見つめる。
 ――星にも負けない輝きを秘めた美しいひと。
 カルディアをそのように形容した志桜は、心からの思いを言葉にしていく。
「キミのランプから生み出す光も、いつもわたしを想ってくれるその心も、その全てがわたしは好きだよ」
「志桜……」
 特別な気持ちを紡ぐ志桜の話は、とても嬉しく感じるものだ。
 カルディアはふわりと微笑み、ランプの燈を志桜に見せる。ゴンドラの中で向かい合って座る二人の間には確かな信頼と、快さがある。舟が少し揺れる度に視線が重なり、嬉しさがもっと満ちていった。
 そうして、カルディアは志桜へと語り返していく。
「わたしはね、このランプの燈に、あなたの未来の幸せがもっと花咲くものでありますようにってお祈りしたい」
「ふふ、ありがとう」
 カルディアの言葉を聞いた志桜もまた、嬉しそうに笑む。
 それからカルディアはこれまでのことを思い返した。一緒に過ごした日々や、たくさんのことを語り合ったり、時には危険な戦いにも共に赴いている。それらがすべて、カルディアにとっての大切な記憶だ。
「志桜にはね、ずっと……わたし、いろんな楽しいをもらっているから」
 だから、と告げたカルディアは願う。
「その分、あなたにもこれからも楽しいことや幸せなことが訪れてほしい。志桜が幸せである姿が、いちばん…わたしにとって幸せ」
 カルディアの思いは真っ直ぐな言の葉となって、友に伝わった。
 今も快い気分であるのはお互いが素直な気持ちを抱けているからに違いない。双眸を細めたカルディアは互いの手の中にあるランプに、大切な想いが込められていることを確かめた。
 好きだよ、と伝えてくれた志桜に返す思いは同じ。
「……大切なものを全て愛しめるあなたをわたしも大好きよ」
「にひひ。特別はひとつじゃないといけないって決まりはないもん」
「そうね、その通りだわ」
 少しばかり悪戯っぽく笑った志桜が何故だか眩しく感じられる。カルディアはそっと頷き、その感覚の正体を知った。己がランタンとして照らす光とは別に、彼女は心を照らす光を持っているからだ。
 志桜は両手でランプを包み込み、これまでに語った大切なものを思い浮かべていく。どれもがすべて、今の自分になるために必要なものだった。勿論、目の前のカルディアだって大事なものだ。
 今宵は改めて、自分の中にある思いと向き合えた。志桜は一度、そうっと瞼を閉じてみる。
「だってぜんぶ特別だから、なにひとつ欠けちゃいけないの」
「もちろん……わたしの大切な友人としても、何ひとつ欠くことはないわ」
 ゆるりと瞼を開いた志桜は満面の笑みを浮かべた。
「ありがとう、カルディア」
「ええ。あなたはたくさんの人を大切にできる優しい魔女よ。その言霊はあなたの大切な人もわたしも幸せにするわ、きっと。ううん……絶対に、かしら」
 二人は互いの幸先と、これからも共に過ごす日々への思いを抱いた。
「わたしの幸せを願ってくれる、カルディアの倖を――」
 祈るのは空へ。
 赤色の灯を泉に映した志桜は、この思いが届きますように、と願っていった。
 カルディアも志桜の傍で幸いを願い続ける。
「ふたりで祈りましょうか」
 この願いを煌く空へ。
 届けばきっと、互いの望む幸いに辿り着けるはずだから。どうか、叶いますように。
 星はいつでも人々見守り、ときには先を照らす灯火のように導いてくれる。今宵に二人が紡いだ思いも願いも、そして祈りも、きっと――。
 この気持ちは、未来に進むための道標になっていく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夏目・晴夜

トトさん(f20443)と

トトさん、お仕事お疲れ様でした
色々と話を聴きたいところなのですが…
今、夜とは思えない程に眩い祭が開かれているようですよ
折角ですから一緒に行きましょう

へえ、これがゴンドラ。乗るのは初めてです
おや、トトさんも初めてですか
万が一転覆したら危険ですし、ゴンドラ乗りさんにお願いしますか?
ですね、誰かさんはカナヅチですし
誰かさんはカナヅチですし(笑いながら念を押し)

手にするのは、赤のランプを
これからもトトさんや大事な方々と素晴らしい時間を共に過ごせるように、と友情を願って
奇を衒わない想いを真っ直ぐ祈れるのもハレルヤの良い所です

愛…まあ、そうですね
愛に関する願いを込めましたね、一応
駄目です、教えませんよ
内緒の方がミステリアスで格好良いですから

それに最初に申した通り、私は可愛い妹の話を聴きたい気分なのですよ(紫のランプに目をやり)
トトさんの大切な人、どんな御方だったんですか?
ハレルヤみたく内緒でも構いませんがね

聴かせてください、幾らでも
夜が明けるまでお付き合いしてもいいですよ


トスカ・ベリル

ハレ(f00145)と

うん、行く
一緒に行きたかったから、嬉しい(足早に乗り場へ)

わたしも初めて
だから、……うん、お願いしよ
ち、ちがうもん泳げないのは普通だもん泳げる方がすごいだけだもん
よろしくお願いします(ぐいぐいハレを押しやりつつゴンドラ乗りへ頭を下げて)

ランプの色は紫
ハレは……赤? えっと、恋や、愛、だっけ?
いいんだよ、いもーとに聴かせてくれても(わくわく耳をちょっぴり持ち上げて)

んん、残念
けど、秘密主義もカッコいいね
さすがハレ
……愛を堂々と語れるのも格好良いと思うから、いつか、聴かせてね?

わたしは……(ゴンドラからの景色を見遣って)
ハレ、聴いてくれる?
わたしの、|師《せんせい》の話
この都市に辿り着いた、英雄の話
(聴いてもらえるのが嬉しくてくすぐったくて
話せることが誇らしくて)
……ありがとう
あのね、

大切な友人に話し終えたら、ランプを水面に映して師に言いたいな

師、あなたとの記憶をわたし、無くしてなかった
トトはいつかきっと、師のところに帰るよ
それまでにたくさんのお土産話を準備するね



●敬愛と記憶
 戦いが繰り広げられた丘から続く街。
 危機が訪れていたことは誰も知らず、街には今宵の特別な時間を楽しみにしている人々が行き交っている。
 星が一番美しく見える泉に向かうためにゴンドラを漕ぎ出す者。泉で願いや祈りを込めるためにランプを用意している子供、そしてちょっとした軽食を舟に持ち込む人。
 みな穏やかで楽しげであり、これこそが在るべき平穏そのものだ。
 そんな街の中でトスカを待っていたのは晴夜だ。
「トトさん、お仕事お疲れ様でした」
「ありがと」
 晴夜はトスカをはじめとした猟兵達が今夜の功労者であることを知っている。人知れず事件を解決していき、不幸の終焉を幸せなものへと変える存在、それがエンドブレイカーだ。もちろん猟兵も同じであり、この世界でもこうして活躍しはじめている。
「色々と話を聴きたいところなのですが……今、夜とは思えない程に眩い祭が開かれているようですよ」
 街に通る運河を示した晴夜は静かに笑む。
 折角ですから一緒に行きましょう、と彼が告げたことでトスカが首を縦に振る。
「うん、行く」
「そう答えてくださると思って、ゴンドラを頼んでおきました」
「一緒に行きたかったから、嬉しい」
 片手をゴンドラ乗り場に伸ばした晴夜。その先には言葉通り、少女が漕手として佇む一艘の舟が浮かんでいた。話によると向こうから乗らないかと声を掛けてきたらしく、晴夜がその提案に乗ったということだ。
 トスカは気を回してくれた晴夜に少女に感謝を抱きながら、足早に乗り場へ向かう。晴夜も妹分をエスコートするように桟橋へと歩いていき、ゴンドラにそっと乗ってみる。
「へえ、これがゴンドラ。揺れはそれほどないようですね。寧ろ心地よいくらいです」
「ハレも、初体験?」
「はい、見たことはありましたが乗るのは今夜が初めてです」
「わたしも初めて」
「おや、トトさんも初めてですか。一緒ですね」
 二人がゴンドラの乗り心地を確かめていると、舟の持ち主でもある少女がぺこりと頭を下げた。
 マリシェと名乗った少女は星の泉までの航路をゆっくりと進めていくと語り、晴夜とトスカを交互に見つめる。
「泉についたら私はあまり喋りませんので、お二人でお好きなようにお過ごしくださいね。それから、初めてのゴンドラの漕手になれて光栄ですっ! よろしくおねがいします!」
 ゴンドラ乗りの少女は明るい笑みを浮かべた後、運河へと漕ぎ出した。
 漕手がいないゴンドラもあったのだが、二人とも初心者であるゆえにこの形が一番いい。こちらこそ、と軽く頭を下げ返したトスカに倣い、晴夜もマリシェに一礼した。
「これで舟が転覆するようなことはありませんね」
「……うん、うん、お願いしてよかった」
「ですね、誰かさんはカナヅチですし」
「ち、ちがうもん泳げないのは普通だもん泳げる方がすごいだけだもん」
「ええ、泳げる方への尊敬は存分に。それはそれとして、誰かさんはカナヅチですし」
 はっとして首を振ったトスカに対し、晴夜は笑いながら念を押す。そんな二人の様子を見守るマリシェはくすりと笑み、絶対に転覆はさせません、と意気込んだ。
「それじゃあ、えっと……マリシェ。よろしくお願いします」
 トスカは改めて少女に願い、からかい気味の晴夜の口を片手で塞いだ。そのままゴンドラの反対側にぐいぐいと晴夜を押したトスカは、バランスが取れるように反対側に腰を下ろす。
 向い合わせの形で座った二人は進んでいく景色を見渡した。街に流れる運河を進めば、次第に心地よい静けさが広がっていく。途中、マリシェは街が出来た頃の歴史の話や、そのときに活躍した星霊術士がどれほど素晴らしい星霊建築を施してくれたかを説明してくれた。
 そして、ゴンドラは星の泉に到着する。晴夜とトスカは視線を交わし、星空を見上げた。
 街から見る景色も充分に美しかったが、ひときわ綺麗だといわれるこの場所からみる星々は素晴らしいものだ。波紋ひとつない泉の水面に映る星を見つめ、晴夜は赤のランプを手にする。
 手の中で光る灯火は星明かりと共存できるほどの優しい光だ。
「…………」
 何も語らず、心の中で晴夜が願ったのは絆のこと。
 これからもトスカをはじめとした大事な人々と素晴らしい時間を共に過ごせるように。
 友情を願った晴夜は顔をあげ、空の星を振り仰ぐ。その際に思うのは自分への称賛。こうして奇を衒わない想いを真っ直ぐに祈れることも晴夜の良い所だということ。
 トスカは紫のランプを両手で包んで持っている。願いや思いを込める前に、トスカは晴夜の手元を眺めた。
「ハレは……赤? えっと、恋や、愛、だっけ?」
「愛……まあ、そうですね」
 彼女から問われたことで晴夜はほんの少しだけ言葉に詰まる。改めて愛と言葉にされると流石の晴夜も照れのような感情が浮かんだ。晴夜の尾はゆっくりとだが、ふわりと揺れている。
 そのことに気付いたトスカは耳を軽く持ち上げ、わくわくした様子を見せた。
「いいんだよ、いもーとに聴かせてくれても」
「愛に関する願いを込めましたね、一応。ですが駄目です、教えませんよ」
「どうしても?」
 首を横に振る晴夜に対してトスカは視線を向ける。しかし、晴夜の意志は固い。
「内緒の方がミステリアスで格好良いですから」
「んん、残念。けど、秘密主義もカッコいいね」
 さすがハレ、と晴夜を褒めたトスカは淡く笑む。だが、大人しく引き下がるだけではないのがトスカだ。じっと彼を見つめるトスカはそっと付け加える。
「……愛を堂々と語れるのも格好良いと思うから、いつか、聴かせてね?」
「考えておきましょう」
 晴夜から返ってきたのはきっと良い返事だ。いつかを楽しみにしていると伝えた後、トスカは紫のランプをそうっと手の中で揺らしてみる。
 そうしていると晴夜がトスカに語りかけてきた。
「それに最初に申した通り、私は可愛い妹の話を聴きたい気分なのですよ」
「わたしは……」
 トスカはゴンドラからの景色を見遣り、アクエリオならではの光景を瞳に映し込んだ。
「トトさんの大切な人、どんな御方だったんですか? ハレルヤみたく内緒でも構いませんがね」
「ううん……ハレ、聴いてくれる?」
「勿論です。聴かせてください、幾らでも」
 晴夜からの問いかけにこくりと頷いたトスカは、ゆっくりと話し始める。
 それはトスカの|師《せんせい》のこと。この都市に辿り着いた、英雄の話だ。
「……ありがとう、あのね――」
 トスカが語っていく師の話に耳を傾けた晴夜は頷きを返していく。余計な言葉は挟まず、絶妙な相槌で聞いていることを示してくれる晴夜。
 彼に聴いてもらえることは嬉しくて、同時にくすぐったい。それに話せることそのものが誇らしいと感じたトスカは師との記憶や、伝え聞いた都市の話などを語った。
 嬉しげな彼女の様子を見ていた晴夜は穏やかな気持を抱く。
 夜が明けるまででも、付き合ってもいい。そう思えるほどにトスカの話は快いものだった。
 そして、時は過ぎていく。
 トスカは大切な友人に大事な人の話を語り終えてから、ランプを水面に映す。晴夜も赤のランプを手の中に収め、静かなひとときをそっと楽しんでいた。
 語る言葉がなくとも、こうして過ごす時間も心地よい。
 そうして、トスカは水面に映る星へ――師への思いを向けてゆく。
(師、あなたとの記憶をわたし、失くしてなかった。トトはいつかきっと、師のところに帰るよ)
 それまでにたくさんのお土産話を準備するから。
 誓いにも似た大切な思い。それらは星と灯の中に宿り、夜空の下で巡っていく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ディラン・ロータリー
【神風】

うん、ルルティエちゃんが頑張ったからね
そうだね、でもきっと大丈夫だと思うよ

そうだよ、君が笑顔だと俺も嬉しいな
沢山色んな事があるけどけして全てが悪い方向だけじゃないから

へぇ、どんな森だろ
いつか行ってみたいな
あっ、ゴンドラがあるね
乗ろうか?危ないからと手を差し出して彼女を乗せる
そんな事ないよ
綺麗なモノや楽しい事は皆平等だもの!

とってもキラキラして綺麗だね
あっ、そういえば星のランプで願いが叶ったり出来るみたいだけどルルティエちゃんは何色かな?
青か…澄んだ綺麗な色
ルルティエちゃんの故郷か
どんなのかなぁ

俺は……
彼女に一目惚れした、何処か淋しそうででも健気に頑張る姿に護りたいと思った
彼女にとって俺は優しい親切なお兄さんなんだろう
本当なら赤色を
でも金色を選ぶ
今の彼女は恋や愛よりも今の生活でいっぱいいっぱいだろう
俺は彼女の笑顔が好きだ
沢山の冒険で傷つき泣く事が増える、その時傍にいたい
君がいつまでも笑って居られる様に
彼女の大切な存在になれる様に

その時まで
金色のランプを空へと
君の願いも一緒に


ルルティエ・シャルロット
【神風】

この素敵な風景が守られたこと
本当に良かった
…あの子の夢は叶えられるものではなかったけれど
それがやっぱりかわいそうで心残り

いつまでもこんな顔してちゃダメだよね
この先も割り切らなくちゃいけないこと
きっとたくさんあるはずだから

ロマンティックな船にちょっぴり気後れしちゃう
田舎者のわたしなんかが乗っていいのかな?
おずおず彼の手を借りて

わたしの住んでた森にも泉はあったけれど
こんな光景は初めて!
とってもきれいですね…ディランさん
いつまでも眺めていられそうです

街で耳にした灯りの意味
自分への誓いということなら
故郷の穹のように澄んだ青

小さく平和な村で育ったわたし
不自由なかったけれど
田舎だからかちょっぴり閉鎖的
幼い頃から風の噂で聞く冒険に憧れて
偶に訪れる行商人のお話と
売物の魔法アイテムを見るのが楽しみだった
今やっと駆け出した世界は驚くほど未知で広くて
けれどわくわくしているの
もっと頑張りたい
いろんなものを見てみたい

ディランさんはどんな想いを込めて灯すんだろう
いつも助けてくれる優しい彼の願い
叶いますように



●憧憬と秘めた想い
 清らかに流れる水。ゴンドラが行き交う運河。
 そして、美しい景色とそれを楽しむ心を持っている善良な人々。皆が何事もなく特別な夜を迎えられているのは、密かに活躍した者達のおかげだ。戦いのことは街の人々は知らないが、それこそが猟兵達が勝ち取ったよりよい未来の形でもある。
 夜空に輝く星霊建築の星は美しく、ルルティエはこの素敵な風景が守られたことを嬉しく感じていた。
「本当に良かった」
「うん、ルルティエちゃんが頑張ったからね」
 彼女が心からの言葉を紡ぐと、ディランが頑張りを褒め称える。震えながらもしかと使命を果たしたルルティエの姿は尊かった。ディランがルルティエを見つめると、彼女も先程のことを思い出したのだろう。その瞳が僅かに曇り、少しだけ哀しげな声が落とされる。
「……あの子の夢は叶えられるものではなかったけれど――」
 ルルティエとしては、そのことがかわいそうで心残りらしい。ディランは静かな笑みをたたえ、ルルティエの隣に歩み寄った。きっと今は物思いに耽るよりも、自分達で導いた平穏を見つめる方がいい。
「そうだね、でもきっと大丈夫だと思うよ」
「ディランさん……。いつまでもこんな顔してちゃダメですよね」
 この先も割り切らなければいけないことや、どちらかひとつを選び取らなければならないことが、きっとたくさんあるはずだから。そういってルルティエは顔を上げた。
「そうだよ、君が笑顔だと俺も嬉しいな」
 世の中や世界には様々な事柄があるが、けして全てが悪い方向だけに進むものではない。ルルティエはディランに向けてふわりと笑み、励ましてくれたことに礼を告げた。
 そうして、二人は泉の方に歩いていく。
 水面に星々が映り込んでおり、ときおり揺れる波紋が空の光を更に美しく見せてくれているように見えた。
「わたしの住んでた森にも泉はあったけれど、こんな光景は初めて!」
「へぇ、どんな森だろ」
 ルルティエが語った故郷のことを聞き、いつか行ってみたいな、とディランが笑む。そんなとき、二人の目に留まったのは無人のゴンドラだ。
「あっ、ゴンドラがあるね。乗ろうか?」
「あれで泉の中央に漕ぎ出すのかな。なんだかロマンティック……」
「ほら、おいで」
 先にゴンドラに乗り込んだディランは、落ちたら危ないからといってルルティエに手を差し出す。その手を取ろうとしたルルティエははたとして動きを止めた。
「田舎者のわたしなんかが乗っていいのかな?」
「そんな事ないよ。綺麗なモノや楽しい事は皆平等だもの!」
「それなら……」
 どうやら気後れしていたらしいルルティエに向け、ディランは首を横に振る。彼の言葉を聞いたルルティエはおずおずと腕を伸ばし、その手を借りてゴンドラに乗り込んだ。
 水面に浮かぶ舟はゆっくりと泉を進んでいく。漕がずとも良い心地だと感じたディランはゴンドラに腰を下ろす。向かい合わせで座ったルルティエは彼を見つめてから、空を振り仰いだ。
「とってもきれいですね……ディランさん」
「空も水面もキラキラして綺麗だね」
「何だかいつまでも眺めていられそうです」
 二人は暫し星霊建築の夜空を眺める。ディランは時折、空を仰ぐルルティエの顔を見ていた。少し浮かない顔をしていた先程までの彼女は何処にもおらず、今は純粋にこの景色を楽しんでいるようだ。
 そして、ディランはふと思い出す。
「あっ、そういえば星のランプを用意していたよね。ルルティエちゃんは何色かな?」
 彼が問いかけたのは、此処に訪れる前にそれぞれが街で調達したランプのことだ。ルルティエは荷物から星のランプを取り出し、彼に見せた。
 街で耳にした灯りの意味は色ごとに違う。自分への誓いということなら、ルルティエが選んだのは故郷の穹のように澄んだ青だ。
「この色を選んでみました」
「青か……澄んだ綺麗な色だね」
「森から見ていた空の色に似ていたからです」
「ルルティエちゃんの故郷か。どんなのかなぁ」
 ディランが興味を示すと、ルルティエは少し話をすると告げた。その声に耳を傾けたディランの手の中には金色のランプがあった。優しい火が手元を照らしてくれる中、ルルティエはゆっくりと語りはじめた。
 小さくても平和だった村。
 そんな場所で育ったルルティエはこれまで、生活に不自由を感じたことはなかった。その代わりに村はどちらかといえば田舎で、ちょっぴり閉鎖的なところもあった。
 けれどもルルティエには憧れがあった、幼い頃から風の噂で聞く冒険の話。
 偶に訪れる行商人から聞く話や、売り物として持ち込まれた魔法アイテムを見るのが楽しみだった。幼少時から思いを馳せていた違う世界。
 今のルルティエは実際に、こうして知らない場所へ踏み出している。
 やっと駆け出してこれた世界は驚くほど広くて、未知がひしめくものだった。けれど、と口にしたルルティエはディランを見つめ、今の心境を言葉にした。
「わくわくしています。もっと頑張りたい、いろんなものを見てみたいって」
「いいことだね」
 ディランはルルティエの口調が柔らかくなり、表情が明るくなっていることに気付き、静かに笑んでみせる。ルルティエは故郷を思い出しているのか、次は水面に映った星を見下ろした。
 その様子をそっと確かめながら、ディランはルルティエに抱く思いを心の中で巡らせる。
(俺は……)
 ディランは彼女に一目惚れしていた。
 何処か淋しそうで、それでいて健気に頑張る姿。そんな彼女を護りたいと思った。きっとルルティエにとって自分は優しくて親切なお兄さんといった印象なのだろう。
 しかし、それでもいい。
 本当なら星のランプは赤色を選ぶはずだった。だが、ディランの手の中にあるのは金色。
 今の彼女は、恋や愛よりも今の生活に慣れていくことを優先する方がいい。憧れていた村の外を見て回っている現状でこの恋心を晒しても、彼女が見るはずだった世界を狭めてしまうかもしれない。
 だから、今は言葉にはしない。
 するとルルティエが視線に気付き、ディランに向けて首を傾げる。
「どうかしましたか、ディランさん」
「いいや、なんでもないよ。ルルティエちゃんと同じように星を見ていたんだ」
「見惚れてしまいそうですものね」
(――やっぱり、その笑顔が好きだ)
 微笑んでくれたルルティエに視線を返したディランは、改めての思いを抱く。冒険は楽しいことだけではない。今回のように苦しくて悲しいことや、傷付いて泣くことも増えるだろう。
 それならば、その時に傍にいたい。
(君がいつまでも笑って居られるように。いつか、大切な存在になれるように――)
 ランプを静かに掲げたディランは想いを声には出さず、願いを込めた。
(ディランさんはどんな想いを込めて灯すんだろう)
 真剣な彼の表情を見ていたルルティエは、そのランプに宿された思いを想像する。無粋になるだろうから、と考えたルルティエはディランに問いかけるようなことはしなかった。
 そして、彼女は静かな思いを巡らせる。
 ――いつも助けてくれる優しい彼の願いが、叶いますように。
 此処で願うのはこの思いがいい。
 ルルティエが青のランプを両手で包み込む中、ディランも金色のランプに込めた願いを抱き、空を見上げる。
 ――どうか、君の願いも一緒に。
 その時まで、と小さく言葉にしたディランには誓いにも似た心がある。
 二人を見守るように、瞬く星々はいつまでも煌めいていた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年12月11日


挿絵イラスト