ああっエリクシルさまっ
●その出会いは運命
月の色が青く透き通って冴えわたり、少しだけ肌を刺す風が吹き始める季節。
もう少ししたら、空から白いものが舞い落ち始め、世界を静かに染めていくだろう。
そう、冬は、近いのだ。
「……ああ……またもうすぐ冬が来てしまう……」
そんな晩秋の街角を、コートの襟を立てながら、一人の青年が背中を丸めてとぼとぼと歩く。
彼のまなざしは生気なくどんよりと濁り、口からは疲れたような吐息が漏れ続ける。
「……今年こそ、クリスマスまでには彼女を作ろうって決意したのに。いや、去年もその前もだったけど……」
冬となればクリスマスの到来を知らせる鈴の音が聞こえ始める季節。
カップルにとっては心躍り、そして独り身のものにはひときわ寒さの染み渡る寂しさが襲い来る季節である。
「ああ、彼女が欲しい……」
ぽつりと彼がこぼしたその声と同時。
「いいでしょう、その願い、聞き届けましょう」
妙なる調べのような美しい声が響き、青年ははっと顔を上げた。
その視線の先に、恐るべきものが待ち構えているとも知らず。
それこそは……おお、なんたることか、血のように赤く輝く、宝石でできた巨大なる生首!
「『彼女が欲しい』それがあなたの願いですね? 私はいかなる願いも聞き届ける『いずれ来る到達点』こと鮮血の女王。あなたの願いを叶えま」
「何て美しいんだ!」
「……なんて?」
食い気味に「鮮血の女王」の声を遮った青年に、「鮮血の女王」は思わずその美しい眉をひそめた。が、青年はそれにも構わず、熱に浮かされたように言葉を継いでゆく。
「その輝くような肌、透き通ったまなざし、燃えるような情熱、神々しい気品、すべてが……すべてが僕の理想そのものだ! 願いを聞いてくれると言ったね? ならば君と恋人になりたい!」
ダメだこの男。
「……いや待って。私生首ですよ?」
「関係ない! 愛さえあれば体があろうとなかろうと些細な問題さ!」
「っていうか人間ではありませんよ?」
「愛さえあれば種族の差など意味はないさ!」
「……ぶっちゃけますが、私化け物ですよ?」
「そんな酷いことを言ってはダメだ! 君の素晴らしい価値を君自身が貶めるようなことを! 君は素晴らしい女性だ、もっと自分に自信を持つんだ!」
「えっ、そ、そんなに……?」
思わずポッと頬を真っ赤に染める女王。っていうか、何を本気になっているのかこのエリクシル。
「わ、わかりました……不束者ですが、こんな私でよろしければ……」
カップル成立しちゃったよ。
とはいえ、エリクシルは願いを歪めて叶える恐るべき存在。きっと何か禍々しい災いが……。
「はい、ダーリン、お食事ができましたよ」
「うん、やっぱりハニーの料理は絶品だなあ」
「愛情がこもっていますもの、うふふ」
「あはは」
……ふつーにイチャついていた。
●グリモアベース
「じょーだんじゃないわよー! あたしだってカレシもカノジョもできないまま二十歳になっちゃったのに、なんでエリクシルなんかに先を越されなきゃいけないのー!」
いつもより荒々しく舞い飛ぶシャボン玉の向こうで、ユメカ・ドリーミィ(夢幻と無限のシャボン玉・f18509)が地団太を踏んでいる。どうどう、と周りの猟兵たちがなだめる中、血走った眼でユメカは唸るような声を上げる。
「はあ、はあ……まあ、なんだかんだエリクシルだから、やっぱりマズいことにはなるの。カレシさんは『女王』とイチャイチャするのに夢中で会社にもいかなくなり始めてるし、さらにいえば少子高齢化が加速してしまうことによって社会が揺らぐわね。でも、もっとよくないことが予知されたの。それは」
それは!?
「他のエリクシルがこの噂を聞きつけて、カレシカノジョを作るために大挙してUDCアースに押し寄せてくる可能性があるわ!」
……そりゃ大問題だけどさ。
「さあみんな! このリア充エリクシルをぶっ飛ばしてUDCアースを守るのよー!」
天樹
こんにちは、天樹です。ちゃんとシリアスも書けますので文章リクエストお待ちしています(PR)。
それはさておき、エンドブレイカーの世界での依頼になります。『鮮血の女王』可愛いよね、って見た瞬間に思ったのですが、駄目でしょうか。
一章は日常、隠れているカレシさんと『女王』を探し出してください。
二章は集団戦、追い詰められた『女王』はUDCの群れを召喚し、足止めをしてきます。
三賞は『女王』との決戦です。
では皆様の素敵なプレイングをお待ちしています。
第1章 冒険
『人知れずに消える者』
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POW : しらみつぶしに聞き込みをして目撃者を探すなど、足で情報を集める
SPD : 被害者に関わりのありそうな人物、団体に当たりをつけて調査を行い、情報を集める
WIZ : 被害者に似た境遇を装い、接触してくる人物から情報を集める
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
猟兵たちはまず、この付近に隠れ住んでいる「鮮血の女王」とカレシを見つけ出さねばならない。
どう考えても目立つ外見ではあるが、さすがに女王はその能力を使って認識阻害を起こさせ、周囲の住民からは「でっけえ生首」であろうとも不自然に思わせなくしているらしい。とはいえ生首は生首なので、多少聞き込みや捜査をすればすぐに居場所を特定できるだろう。
しかし、かといってあまり派手に動くと、女王たちに気取られ、姿を晦まされてしまう可能性がある。
ゆえに、猟兵たちは、「相手に見つからないようにこっそり捜査する」ことが必要とされるかもしれない。
もしくは、その逆に……。
「超イケてるカップルがいるって噂で取材に来たんですけど」みたいにあえてこちらの存在を知らせ、色ボケしているエリクシルを誘い出すことも有効かもしれない。
何にせよ、方法は自由。とにかくこのヤバいカップルを見つけ出そう!
試作機・庚
こういうのいつか来るだろうなぁと思ったんデスけどもう出てきやがった!
ほっといてあげたいんデスけど流石にUDCアースが婚活会場になってエリクシルパーティになられるとさすがにこま…こま…困らない気もするデスけど一応仕事デスからやるしかないデスね!
とりあえず自立稼働フィギュア作った時の杵柄で生首用のボディパーツを作った後怪しい露天(警察・裏社会の人に許可申請済)を開いてよくわからん怪しい機器を売りながら情報収集するデスね…
生首がボディに惹かれて来たら…電子マーキングをこっそりつけて後で訪問するデスかね…
…どうにか平和的解決できないか模索しないとデスよ
「ボディー、ボディーはいらんかねデスー? ロリから熟女、まな板から爆乳まで各種取り揃えてるデスよー。お値段納得の1000円ぽっきりデース。ボディいらんかねデスよー」
屋台をえっこらやっこらガラガラと引きながら、試作機・庚(過去を裏切った者・f30104)の流して歩く声がご町内に響き渡る。屋台の中には彼女の言葉通り、各種色とりどりに取り揃えられたサイバースペアボディが山積みである。
「まあ、ボディ屋さんよ。風流ねー」
「もうそんな季節になったんだなー」
町の皆さんもそんな庚の姿を見てほっこりと季節の移ろいを感じるのだった。
「……って、なんでデスかー! いや自分でやってて言うのもなんデスけども!」
ボケ倒そうとしたが結局たまらずにツッコんでしまった庚。まあ確かに、ここはUDCアースであるがゆえに、屋台のボディ屋などと言うものがあろうはずもないのだ。サイバーザナドゥやスペースワールド系ならともかく(熱い風評被害)。
しかし、ボディ屋を開こうという庚の目論見にツッコミを入れたものは誰もいなかった。彼女はまじめにきちんと警察や関係各所に届けを出したうえで開業したのだが、普通にその申請は一瞬で通ってしまったのである。
これは果たしてネタシナリオであるが故の雑な展開なのか? 否! 断じて否!
(おそらく……エリクシルの力デスね……)
庚はえっこらやっこらガラガラと屋台を引きつつ、胸中で相手の恐るべき力に思いを馳せた。
いかなる望みも叶える代わりに意図的に曲解し破滅をもたらす万能宝石。「自分を彼女にしたい」と言う望みを叶えるということは、エリクシルが彼女であっても不思議ではない環境を作り出すということに他ならない。つまり、生首が当たり前に存在する世界なのであり、それ故に生首の需要を満たす職業が存在しても不審を与えないことになる!
(割ととんでもないデスね。それ拡大解釈していくと、文字通り何でもありになるデスよ。ただ平和に暮らしてるだけなら、ほっといてあげたい気もするんデスが……)
しかし、ここまで世界に影響を与える存在を放置しておくべきかどうか。ましてや……。
(流石にUDCアースが婚活会場になってエリクシルパーティになられるとさすがに……このレベルの認識改変が世界中に溢れるのはヤバババデスからねー)
そう、問題は、「鮮血の女王」のみならず、彼女の噂を聞き付けて他のエリクシルが現れ、事態が波及していく可能性なのだ。
(やはり何とかするしかないデス! ……とはいえ、こんな見え見えのトラップに引っかかってくれるかどうかなのデスが)
「まあダーリン、ボディ屋さんですよ」
「君に似合うボディがあるんじゃないかな、ハニー」
「あっさり引っかかったデスー!?」
……傍から見ても仲の良さ満点な生首と人間が速攻で庚の屋台に声を掛けたのだった。さすがに人間違いということはあるまい。生首だし。他に生首カップルがいたら怖いし。
(なんでこんな簡単に釣れるん……あっもしかしてこのエリクシル、認識改変を自分でも影響受けてるデス!? アホの子デスかー!?)
「ねえ、ダーリンは私にどんな体が似合うと思いますか? スレンダー? それともダイナマイト? お好みに合わせますよ、うふふ」
「そうだねえ、君にはどんな体も似合うと思うが……でも」
「でも?」
「そのままの君の方が、やっぱり一番綺麗かもしれないね」
「まあ、ダーリンったら、うふふ」
「あはは」
「うがー! やってらんねーデース!」
結局庚のボディ屋は二人のバカップルのノロケとイチャつきの踏み台にされただけで、何も買わずに帰られてしまったのだった。
「……とはいえ、電子マーキングを付けることには成功したデスから……付けていけば居場所は判明するデス。……どうにか平和的解決できないか模索しないとデスよ」
若干というか、かなり鬱陶しいバカップルではあるが、逆に言えば今のところはそれ以上のものではない。仮に事態を平穏に収められるならその方がいいのだが……。
いずれにせよ、即時対応は求められる。庚は決意を新たにすると、尾行を開始した。
……えっこらやっこらと山積みの屋台をガラガラ引きながら。
そう、このスペアボディの山は現在のUDCアースにとってはオーバーテクノロジー。そこらに放置しておくわけにはいかないのだ。
「くっ……作戦は成功したデスが、少々機動性に欠ける装備だったデス……次の機会までには汎用高機動型決戦屋台を開発しておくことにするデスよ!」
大成功
🔵🔵🔵
ダーティ・ゲイズコレクター
私はダーティ!ダーティ・ゲイズコレクター!
凶悪で極悪で劣悪で最悪な魔王ダーティとは私のことです!
カップルの仲を引き裂くお仕事?
ワルですね!やりましょう!
36歳で独り身だから引き受けたわけじゃないですよ?決して!
こっそり調べるなんて嫌なので街角インタビューな感じで調べるとしましょう!
(UC【積悪!穢澱虚兵蹂躙陣】を発動しテレビクルーっぽく変装させる)
いい感じです!後は{立て看板}の文字を書き換えて
ラブな波動を{ダーティアイ}で『情報収集』して突撃しちゃいましょう!
こんにちは!突然すみません!ワタクシ魔界テレビの記者のダーティというものですが!
ほんの少しお時間よろしいでしょうか!?
「私はダーティ! ダーティ・ゲイズコレクター! 凶悪で極悪で劣悪で最悪な魔王ダーティとは私のことです! さあ、今日もやってまいりました『突撃隣のナイスカップル!』のお時間です!」
ダーティ・ゲイズコレクター(Look at me・f31927)と、彼女の能力によって召喚された兵士が扮したテレビクルーたちは、賑々しくプラカードとマイクを持って町中を派手にうろつき回っていた。
おお、これぞカップル紹介番組を装い、エリクシルたちを炙り出そうという恐るべき悪辣非道なタクティクスである! ダーティはデビルキングワールドの8thキング最終選考にまで残ったほどの偉大なる悪魔であり、今も虎視眈々と次の王座を狙っているのだ。
「ふっふっふ、カップルの仲を引き裂くお仕事とは、なんとワルなのでしょう! これで次のキングは私に決まったも同然!」
己の邪悪さにダーティが身震いする中、テレビクルーに扮した召喚兵士たちも口々に彼女の恐ろしさを讃えていた。
『さすが我らが偉大なる魔王! 36歳独身という悲しい身の上を若いカップルにぶつけようとするその奸悪っぷり、お見事です!』
『さすが我らが偉大なる魔王! そろそろ身も心も寂しくなるお年頃だというのに、辛い涙を心に隠して世間の荒波に立ち向かう姿、あっぱれです!』
『さすが我らの偉大なる魔王! クリスマスやバレンタインが来るたびに、ひときわ熱心に悪事を働こうとする心意気、感嘆です!』
「ぐああああ! あなたたち余計なことを言ってるんじゃないですよー!」
思いもよらぬ後方からのフレンドリーファイアが全弾命中し、火だるまになったダーティは悶絶する。しかし、こんなところで立ち止まってはいられない。ダーティは次の一歩に向かって雄々しく踏み出すのだ。
「さ、さあ、ほんの少しお時間よろしいでしょうか? このあたりで評判のナイスカップルなどいらっしゃいますか?」
ダーティが唇を噛みながら突き出したマイクに、いかにも人の良さそうな、そしてその代わりあからさまにおしゃべり好きそうなおばちゃ……婦人が嬉々として回答した。
「まー、そりゃやっぱりウチのダンナとあたしでしょ! ガハハハハ! あらやだ冗談よぉ、やっぱり若い子の話よねえ」
「あ、あはは……」
おばちゃんパワーにさすがのダーティも少々気遅れ気味であるが、おばちゃんは構わず話を続ける。
「最近だと、そうねえ、やっぱりナマちゃんかしらねえ」
「……ナマちゃん……?」
「おっきな生首だからナマちゃんって呼んでるのよ、ガハハハ」
そこはせめて『首ちゃん』とかに略してあげた方がいいんじゃないかな……と思うダーティをよそにおばちゃんは続ける。
「でも礼儀正しい子でねえ、会うたびにお辞儀してくれるのよ」
「生首がお辞儀……まあ、できなくはなさそうですが……」
「それにカレシさんとの仲もよさそうでねえ、こないだはペアルック着てたわ」
「ペアルック!? 生首がペアルック!?」
「頭のてっぺんからセーター被ってるから全然前が見えなくなってたけどねえ、カレシさんがちゃんと面倒見てたわ。羨ましいわねえ。しかもナマちゃんの手編みのセーターなんですって」
「手編み!? 生首が手編み!?」
おお、なんたる乙女チックな初々しいカップルの熱烈清楚なるラブモーションか! ましてや、ダーティは情報収集のために、すべてのエネルギーの流れを見切る「ダーティアイ」を全開にしていたことで、このラブ波動を通常の数十倍の濃度でまともに受けてしまったのだ!
思わずダーティは血反吐を……いや、口から砂糖を吐く勢いで七転八倒! そんなダーティに召喚兵たちが駆け寄り、声援を送る!
『ああっ魔王さま、しっかりしてください! こんなことで『私の36年って何だったんでしょう』なんて思わないでください!』
『そうです! 魔王さまは愛も恋も振り捨てて自らの野望と使命に殉じたお方! 孤独と悲しみに負けず立ち上がってください!』
『そうですとも! こないだお誕生日だったばかりですけどやっぱり独り身だった魔王さま!』
「うわああああん、召喚主をそんなフルボッコにするなんて、あなたたち私よりよっぽどワルくないですかー!? でも私は負けません、負けませんからー!」
おろろーんと滂沱の涙を流しつつ、それでもダーティは「鮮血の女王」の居場所を聞き出すことには無事に成功したのだった。さすが我らの魔王さま! 負けるな我らの魔王さま!
大成功
🔵🔵🔵
上野・イオナ
エテルネ・イミタージョ(f36956)と
異なる世界の異なる種族の恋愛。いいね!好きだよそういうの。うーん、他のエリクシル達を呼び込まないならほっといても良いとおもうんだけどなぁ。
ゲームの設定でも参考になりそうだし、ガチで取材するのはありかもしれない。僕はそっち方面で探してみるけど、エテルネはどうする?
OK、じゃあ召喚するね
UC【2Dキャラクター】使用
その後は取材目的にカップル情報を聴き込んで探す。
※アドリブ・他との連携歓迎
エテルネ・イミタージョ
上野・イオナ(f03734)と
異種族恋愛は嫌いじゃないけど、スルッと付き合えててあまりロマンスを感じないわね。いや、これから猟兵達が倒しに行くと思ったら恋の障害はあるのか。
んー、本当にその手で引っかかるのかしら?
まぁ、いいか。私は一旦別行動して探すわね。あのスパイの子貸してくれないかしら?一緒に街中での井戸端会議を聞いて回るわ。
UC【バーチャル・ゴースト】使用
イオナの召喚したスパイキャラに取り憑き隠れながら情報収集
※アドリブ・他との連携歓迎
「異なる世界の異なる種族の恋愛。いいね! 好きだよそういうの」
上機嫌で事態を受け入れた上野・イオナ(レインボードリーム・f03734)の屈託のない笑顔に、エテルネ・イミタージョ(La vastiĝanta cibermondo・f36956)は小さく苦笑を浮かべた。イオナの無邪気でまっすぐな感情の発露は、無論エテルネにとっては好ましいものではあるけれど。
「異種族恋愛は嫌いじゃないけど、スルッと付き合えててあまりロマンスを感じないわね。……いや、これから猟兵達が倒しに行くと思ったら、恋の障害はあるのかしら」
「はは、僕たちが恋の障害ってわけか。少々英雄らしくない行動ではあるかもしれないけど、でもゲームの設定での参考にはなるかもしれないね!」
「……生首と恋をするゲームを作るの? いえ、確かにUDCアースには昔そんなゲームがあったというデータを見たことはあるけど……」
「……そうなのか。世の中は広いね……。うん、ますます取材意欲がわいてきた!」
「あなたにはエリクシルは不要ね。自分自身でいくらでも願いをかなえていくバイタリティがあるもの、ふふっ」
くすっと微笑み、エテルネは桜色の艶やかな髪を揺らす。光が跳ねて、イオナの翼に弾けた。少しでも目を離したら、そのままどこまでも己の夢に向かって飛んで行ってしまいそうなオラトリオの翼に。
「ってことで、ガチで取材してみるよ。僕はそっち方面で探してみるけど、エテルネはどうする?」
楽観的に尋ねたイオナに、エテルネは細い肩を竦め、小首をかしげつつ応えた。
「本当にその手で引っかかるのかしら? ……まぁ、いいか。私は一旦別行動して探すわね。あのスパイの子貸してくれないかしら?」
イオナは頷くと、己の能力を発動する。それは完全平面──2Dのキャラクターを召喚する力。3次元世界に生み出された2次元の存在は、それ故に極めて目立ちにくく、エリクシルといえども容易に発見することはできないだろう。
次いでエテルネがその力を示す。それは憑依の力──イオナの召喚したキャラクターに自ら取り憑いたのだ。
頷きあうと、二人は別れて各自に行動を開始した。
「あれ?」
「あら?」
……と思ったら、すぐに再開していたり。
場所は、街の中のスーパーマーケット。
「僕は取材の結果、このお店に、夕方になるとそれらしいひとが現れるって情報で」
「夕方、決まった時間……やはりね。私が街の皆さんの井戸端会議で聞き込んだ話と一致するわ」
エテルネは細い指で頬をトントンと叩きながら、納得したように頷く。そう、謎は全て解けた!
「つまり……半額セールタイムよ! 彼女はそれが狙いなんだわ!」
「……ええ……いや、エリクシルだよ相手……?」
顎をがっくりと落とし、イオナはドヤ顔のエテルネをまじまじと見つめる。
「エリクシルであると同時に、今は恋する乙女なのよ。ましてや今は、カレシさんはあまり会社にも行っていないというのでしょう、経済状況は苦しいはず。そこで半額セールタイムを狙って少しでも食費を浮かそうという涙ぐましい努力なのよ!」
「し、しかし、そんな所帯じみたエリクシルなんて……」
「えー、ただいまから半額セール始まりまーす! おっナマちゃん、今日も早いねえ!」
「おじさま、今日も頑張って安くしてくださいね」
……ほんとに現れた。エコバッグ持って、でっけえ生首がふわふわと。パック肉や生鮮食品と睨めっこしているエリクシルという、なんだこれな光景。
「……とにかく、見つかったわね」
「まあ何というか……買い物終わるまでは待ってあげようか……」
「せっかくの半額セールですものね……」
遠巻きにそのシュールな景色を眺めつつ、イオナとエテルネがしみじみと語り合う中、「鮮血の女王」はスーパーのおっちゃんと熱い|交渉《バトル》を繰り広げていた。
「ええっ、ポイントカードにハンコついてくださらないの!?」
「半額コーナーはポイント対象外なんだよナマちゃん、悪いね!」
「そんな、私、せっかくあと少しでポイント満額になりますのに。そこをなんとか、おまけしてくださいませんか!?」
「ポイントカードにハンコを集めるエリクシル……」
「なぜかしら、私、涙があふれてきそうだわ……」
そっと目頭を押さえるエテルネの小さい肩を、イオナは無言でぽんぽんと叩く。
「……でも。もしこのまま、他のエリクシルを呼びこまないで済むのなら……僕は彼女、放っておいてあげてもいいかもしれないって思うんだけどな」
小さくつぶやいたイオナの声に、エテルネは顔を上げた。彼の瞳はどこか遠く、目の前で繰り広げられている喧噪の遥か先を見据えているかのようだった。
『異世界、異種族同士の愛』について、イオナは語っていたとエテルネは思い出す。
──それは、イオナ自身の出自に重ね合わせての言葉だったのかもしれない。
ダークセイヴァーからキマイラフューチャーに渡ることで出会いの運命が紡がれた、イオナの両親、オラトリオとキマイラの姿──それを、イオナは眼前のエリクシルの姿の中に見ているのかもしれなかった。
そしてまた同様に、エテルネも。
(『女王』は、自らの生き方を見出した。願望を叶えるという「役割」だけの存在から、自分の道を歩き出した。……私が、ただの模造品のAIから、一人の女の子になろうともがいているのと、……それはもしかしたら似ているのかもしれないわ)
イオナとエテルネはそれぞれ、自分自身の映し鏡を、目の前のエリクシルに見出していたのかもしれない。
……粘り勝ちでポイントカードにハンコをついてもらい、満面の笑顔を浮かべる彼女に。
「やりましたぁ!」
「かーっ、ナマちゃんにゃあ敵わねえや!」
大成功
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サリー・オーガスティン
■SPD
エンドブレイカー!世界と通じてからと言うもの、ボク自身も最近、変な夢を見るようになっているというのに……
と、言っても仕方無いね。
それじゃ「生首女王様」を探すとするか!
索敵アイテムなら、これだね(【UC】発動)
ドローンの操作は[操縦]で操って、[迷彩]でその姿を目立たなくさせる。
しかる策をとって、[生首女王]とその彼を探す!
(破壊されてはたまらないので[オーラ防御]も展開させる。なお対・逃亡に対しては[追跡]を利用する)
発見に成功したら、ドローンを散開させて[コミュ力]発動させた上で、仲間に存在と場所を知らせる。
「しかし、女王の見てくれは、なんと収まりの悪い事か」
※連携・アドリブ共歓迎
「またヘンテコな事件が……『エンドブレイカー!』世界と通じてからと言うもの、ボク自身も最近、変な夢を見るようになっているというのに……」
サリー・オーガスティン(鉄馬の半身・f02199)は、依頼のトンチキぶりに疲れたような吐息をつかざるを得ない。
夢。そう、夢だ。
まるで、どこかの王子様のような……いや、何かの機械鎧の半身でもあるかのような、朧で定かではない、夢。無論、夢は夢でしかない。しかし、ああ、その夢は、あまりにもリアリティを持った幻となってサリーの魂に食い込んでいるかのようだ。あたかももう一つの現実をどこか遠い時の彼方で過ごしていたような。その二倍の人生が、サリーの身に鉛のように、泥のように重くまとわりつく。
「……まあ、いつまでも愚痴を言っていても仕方ないね。それじゃ、「生首女王様」を探すとするか!」
それでも心機一転、ギアを上げるように気持ちを切り替えて、サリーは両手で頬をパンと軽く叩き気合を入れた。「鮮血の女王」を見つけ出すために。それが……「世のため人のため」になるのなら。
「索敵アイテムなら、これだね! さあ飛べっ、『|Drone Action《ドローンアクション》』!!」
彼の呼ぶ声に応じ、小型ドローンが亜空から呼び出され、秋の高い空へ舞い上がっていく。すぐにその姿は風に溶け込むように消えた。迷彩を纏ったオーラの効果である。女王に気づかれ、破壊されてはたまらない。
「ドローンだから上空からのアングルになるけど、つまりは赤いもじゃもじゃ髪をさがせばいいわけだ。そんな目立つ姿、ドローンたちでしらみつぶしに探していけばすぐに見つかるさ」
サリーはドローンたちが飛び立っていく姿を満足そうに見つめて頷いた。
……ああ、だがしかし。
その考えが甘かったことを、サリーはすぐに知ることになる……。
「えっ赤い!? いやこっちも赤い塊が!? いやこっちも真っ赤なもじゃもじゃが!?」
おお、なんたることか。今は秋! すなわち、紅葉真っ盛りの季節に他ならぬ!
道一面に植樹された紅葉の葉が競うように真紅に染まり、さらにそれらが風に乗って踊るように舞い散って、この街すべてが真紅に焼け落ちていく夕日の中の光景のようだ!
そんな真っ赤な景色の中にあっては、「鮮血の女王」の紅いアタマは完全に保護色、いや迷彩! 何たることか、迷彩使いの達人たるサリーが逆に迷彩を仕掛けられたとは!
……いやまあ別に『女王』は特に何もしていないのだが。しいて言うならカレシと紅葉の中でロマンチックデートをしているくらいなのだが。
「ご覧、この真っ赤な世界そのものがハニーを飾るヴェールのようじゃないか」
「まあ、ダーリンはいつも本当に素敵なことを言ってくれますね。あなたも、私の手編みの紅いセーターがよくお似合いですよ、うふふ」
「あはは」
……みたいな。
「みたいなじゃなく! いや冗談じゃないよ! 悪い予感はしてたんだ、まったく! この女王の見てくれは、なんと収まりの悪い事かってやつだよ!」
ぎりりと歯噛みするサリー。宇宙バイクを駆っていた彼からすれば、地上の紅葉は今一つ考慮の外であったのかもしれぬ。だがこの事態をそのまま放置しておく彼ではない!
「上から見たらどこもかしこも真っ赤な迷彩。だけど、こうしたらどうかな!」
これぞサリーの巧みなる操縦テクニックの神髄。ドローンたちの大部隊は編隊を組んで超高速回転を始めたのだ。一糸乱れぬ統率のもと、機体の巻き起こす旋回は気流を乱し、風を呼び、一瞬とはいえ街の中を駆け抜けていくつむじ風を呼び寄せた!
ただの紅葉なら当然気流の中に翻弄され、風のまにまに漂っていくのみ。しかし、多くの紅い塊の中、たった一つだけ風に逆らって立ち止まった一点を、ドローンたちは見逃しはしなかった!
そう、それこそは、風の中にそっと寄り添ってお互いをかばい合った「鮮血の女王」とカレシに他ならぬ! 見事なる地形の利用、これこそがサリーの狙いだったのだ!
「よし、見つけたよ! そこだね!」
ぐっと握りこぶしに力を入れ、サリーは快哉を叫ぶ。見事なる戦略の勝利だ。かくしてサリーは『女王』の発見に成功したのである。
「……まあ、今の風で散らかしちゃった紅葉はあとでちゃんと片付けないとだけど……」
はあ、と少しだけ息をつくサリー。町中の紅葉の掃除……。うん、しかしそれもまた、世のため人のため、である! 頑張れサリー!
大成功
🔵🔵🔵
数宮・多喜
うんまぁ待てよ?落ち着け?
ユメカちゃんはまだ大丈夫さ、うん。
アタシもまたいい感じのカレシに巡り会えたらいいんだけどねぇ……
っとあまり身内の地雷踏み過ぎるのもアレだね。
さっさと情報収集行ってきますかねっと!
まーアレだ、モテない奴が急にモテると「裏切り者」に恨みを持った同じ会社の奴らが荒れてるだろうなぁ。
そう言う奴らが憂さ晴らしに遊んでそうなクラブや居酒屋に、遊び好きそうなカッコに『変装』して繰り出すよ。
そうしてカレシ募集中って話して独り身の傷口をえぐりつつ、言いくるめるように「裏切り者」の情報を聞き出そうじゃないの。
……いやイケメンがいたら捕まえようとかそういうやましい事はないからな!?
「……あー、まぁ落ち着け。ユメカちゃんはまだ大丈夫さ。二十歳だろ? まだまだだって。あたしなんてもう|クリスマス《にじゅうご》だよ、あはは……チクショウ笑いごとじゃねえ! 何でこうなった! 赤い糸!あたしの赤い糸はどこ行ったんだぁ! ワイヤーでもチェーンでも今からそこら中に結び付けっぞコラァ!!」
「あー、まぁ落ち着いて多喜さん? 全然平気よ、多喜さんほど魅力的な人なら……」
思わず、どうどう、と数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)をなだめる側に回ったユメカ・ドリーミィ。しかし、そんなユメカの顔を覗き込んで、多喜はニヤリと微笑む。
「……なぁんてね。ま、ちったぁ落ち着いたかい? 人間、同じようにテンパってる他人を見ると、意外にスッと冷静になれるもんさね」
「……多喜さん……あたしの気を落ち着けるためにわざとピエロになってくれたのね。やっぱりすごいわ、多喜さんは」
「そう、わざとさ。無論。もちろん。当然。わざと……チクショウ半分本気だよ……(ボソッ)」
──みたいなグリモアベースでの一幕を思い返しながら、多喜はとあるクラブの喧噪に身を晒していた。眩いライトとノリのいいミュージックが俗世のよどみを洗い流してくれるかのようだ。
このクラブは「鮮血の女王」のカレシが勤める会社の近くにあり、同社の独身貴族たちがたむろしている場所と調べはついている。しかも多喜はばっちりと変装をキメていた。そう、魔法少女へと。
「ちげえよ!?」
失敬、バニーガールへと。
……いやナンデ?
「だってそういうクラブだったんだからしゃあないじゃん……まあ、この格好ならかえって話も聞きだしやすいかもしれないし、いっか。……いやイケメンがいたら捕まえようとかそういうやましい事はないからな?」
アッハイ。
ともあれ、何故かいまいち浮いた話には縁が薄いとはいえ、多喜のプロポーションは見事な芸術といえるほど。さらに先ほどのユメカとの会話でもわかるように、コミュニケーション能力も無類のものだ。その魅力と巧みな話術で、多喜はカレシの会社の同僚と目星を付けた相手へと近づいていく。
「……へえ、そうかい。じゃなくて、そうなのね。その人、今まではモテなかったのに、急に綺麗な彼女ができたんですって? どんな人なのかしら」
「なんだ、あいつに興味があるのかい? やめとけやめとけ! あいつは付き合いが悪いんだ。「どこかに行こうぜ」って誘っても楽しいんだか楽しくないんだか……仕事はまじめでそつなくこなすが今ひとつ情熱のない男……悪いやつじゃあないんだが、これといって特徴のない……影のうすい男さ」
「……急にどうしたの」
「いや……同僚キャラのノルマだから……」
こほん、と咳払いし、同僚は改めて噂話を続ける。
「まあそれはさておき、その彼女ってのが会社に迎えに来てたのを見かけたことがあるんだが、驚いたね。マジでドキッとさせられて心臓が止まるような女性さ」
「……そりゃまあ、生首だからね……ドキッとするよね……」
「ん、なんか言ったかい? 実際、彼女の顔から目が離せなかったくらいだ」
「……そりゃまあ、生首だからね……顔以外に見るとこないからね……」
「ん、なんか言ったかい? ただ、二人で暮らし始めるとなると今までのアパートでは狭いみたいで、最近引っ越したみたいだったな」
きらりん、と多喜の目が光る。それこそまさに知りたかった情報! しかし素知らぬ顔を装い、彼女はさりげなく水を向ける。
「へえ、素敵ね、二人きりの愛の巣なんて。どんなところなのかしら」
さすがに『女王』達も、自分たちの住所そのものを明らかにするようなことはしていまい。しかし、それにつながるような重要なポイントが絞り込めればしめたもの、と、多喜はどんな小さな情報も聞きのがすまいと身構えた。
「ああ、この近くの●×マンションの9B号室だよ」
「知ってんのかーい!」
思わず生来のツッコミ気質が発動してしまった多喜を誰が責められようか。しかし同僚は平然と口にする。
「いやなんか、9B号室ってのにこだわりがあったみたいで、そういう部屋番号があるマンション見つけるの苦労したって自慢してたからさ。でも何で9Bなんだろうな? そこまでは俺も知らないけど」
「……そりゃまあ「生首」だからね……クビ、9Bってわけかい……」
駄洒落かー! とドッと疲れが全身を襲った多喜。しかし同時に、相手にちなんだ住所を選ぶほどか、と、少しだけカレシの甲斐性に感心もするのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ルエリラ・ルエラ
【アドリブ・改変大歓迎】
え…超絶美少女の私より生首の方が先に彼氏できるの?
世の中狂ってない?狂ってるね。生首は滅ぼそう
まずは『サメタンク』を用意してド派手にピンク色やキラキラに装飾![カップルに幸運と幸せを運ぶ美味しい芋煮!]と書かれたでっかいのぼりを装着して人が集まりそうなところを移動しながら芋煮を販売するよ
いい感じのカップルいなーい?って情報収集しつつ芋煮を広めるまさに一石二鳥な完璧な作戦!
運よく生首の人も買いに来たら…ん?生首のまま買いにくる…?見たい!
来たら配送サービスもしますって住所も聞いとこ。ダメなら『アクションフィギュア』に尾行させよう
え?目立ちすぎ?色ボケしてるならいけるいける
「え……超絶美少女の私より生首の方が先に彼氏できるの?」
ルエリラ・ルエラ(芋煮ハンター・f01185)は憮然とした面持ちで唇を尖らせた。
確かにルエリラは客観的に見れば絶世の美少女である。
「そうそう」
サファイアのように透明感を持って美しく輝く蒼い瞳と髪。
「うんうん」
真珠のように白く輝く滑らかな肌。
「だよねー」
思わず踏まれたくなるようなジト目。
「……ん?」
そしてまな板のようなつるんとした胸。
「アインス」
グワーッ! ルエリラのユーベルコードたる『アインス』はいかなるものをも貫く絶対必中の矢! その対象は地の文であっても例外ではなかった!
「……それはともかく。なんで私がモテないのかな。不思議すぎるね。まったく世の中狂ってるよ。滅びればいいんじゃないかな」
そんなこと言ってるからモテないのでは。
「アインス」
グワーッ!
「……って、そんな茶番してる場合じゃないね。世界を滅ぼすのはまあ今回は置いといて、エリクシルは滅ぼしておこう。そのためにも居場所を突き止めないとね」
ルエリラは力強く頷くと、さっそく用意を始める。まずは万能のサメタンクをラメラメの入った綺羅いドピンクに塗装! そんなことしなくてもサメタンクと言う外見だけで衆目を集めそうな気もするが塗装!
さらにノボリを用意、それも『カップルに幸運と幸せを運ぶ美味しい芋煮!』と大書されたものだ。そう、サメタンクにはホカホカな出来立ての芋煮を満載しているのは言うまでもない。
「これを使ってご町内を回れば、芋煮を普及し、芋煮を宣伝し、芋煮を教育することができるね。まさに一石三鳥だよ」
……ルエリラの目的とは一体。
「……あと、ついでにエリクシルも探せるね」
ついでかい。
「芋煮の魅力だけでも問題ないはずだけど、さらに念には念を入れて、大型プロジェクターで上映会も行いながら芋煮を食べられる趣向も盛り込んじゃうよ。プログラムは当然星1個から2個くらいまでのクソ映画だけだよ!」
地獄か。っていうか勝手に公衆に映画を上映してはいけません、権利的なアレで。
「クソ映画に権利とかあるわけないよね」
うわー。
しかし意外なことにと言うかなんというか、芋煮販売あんどクソ映画上映会はなんか大成功を収めていた。まあ普通の人は好き好んでクソ映画見たりしないので、物珍しいということもあったのだろうか。この手の映画は大勢でゲラゲラ笑いながら見るのが一番楽しいということもあるが。
クソ映画に沸き立つ観衆の中、元気いっぱいルエリラが声を張り上げ、芋煮を捌いていたところに。
「まあダーリン、イモニ……? ですって。私、食べたことありません」
「そうなのかい、ハニー? この季節にはとても美味しいものだよ。里芋のほろりとするような甘さと肉の風味が醤油や味噌の中に溶けだして極上のハーモニーを奏でるのさ」
「まあ、まるで私たちのようですね、うふふ」
「僕も今そう言おうと思っていたんだよ、あはは」
とかなんとかうるせえことを言いつつも、なんと、まんまと「鮮血の女王」のエリクシルとそのカレシ本人までが釣れたのである。
「いらっしゃい、仙台風も山形風もどっちもお好きなほうをどうぞ。芋煮に貴賎はないからね」
油断なく目を配りつつ、ルエリラは素知らぬていを装って『女王』たちに芋煮を薦める。そう、爛々と瞳を輝かせつつ。
ルエリラの注目する点はただ一つ。
(……この生首、芋煮食べたらその芋煮はどこ行くんだろう)
然り、生首であるがゆえにエリクシルがものを食べたら、一体どうなるというのか!
見よ、今しも『鮮血の女王』はカレシにあーんしてもらいながら……芋煮を……おお、食べた!
口に含み、咀嚼し、そして、ごくん、とその喉が鳴る!
──そのまま何も起きない!
「いやおかしいでしょ! 今食べた芋煮どこに消えたのさ! 飲みこんだじゃん! 喉が動いたじゃん!」
さすがにルエリラも突っ込まざるを得ない。確かにそんな論理上おかしな展開などは座視できないだろう!
「芋煮は美味しいのももちろんだけど、滋養強壮に溢れて強い体を作る効果もあるんだよ! 美味しさだけを味わうだけじゃ芋煮の本当の魅力を知ったことにはならないんだよ! 芋煮のために!」
……いや、芋煮のためだけだった。
しかし『女王』たちは気にも止めず、芋煮を堪能した後は二人で仲睦まじく帰っていく。
……首から突き出た脊髄や血管をぱたぱたと振りながら。
「……犬が尻尾振るみたいな感じなのかな、あれ……」
『女王』たちを自律稼働フィギュアに追跡させつつ、ルエリラはふと思うのだった。
(『虚空に消えた芋煮の謎』……これはいいクソ映画になりそうな気もするね。どっかの映画会社に企画書送りつけようかな)
うわつまんなさそう。
「アインス」
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『偽りの心を授けられた人形』
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POW : 我が身を砕かせ敵を討つ戦術
【相手の攻撃に対し、理論上最も有効な反撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
SPD : 限界を知りつつもそれを超える要求
【身体耐久力の限界を超えて操る邪神の眷属】を召喚し、自身を操らせる事で戦闘力が向上する。
WIZ : その身を犠牲に得る情報
【全身】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、全身から何度でも発動できる。
イラスト:黒江モノ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
かくして、あるいは直接、あるいは間接的に、様々な情報を集めながら、猟兵たちはついに「鮮血の女王」とそのカレシの居場所を突き止めたのだった。
だが、さすがにここまで追いつめられれば『女王』も相手の存在は察知する。
「この気配……|終焉に終焉をもたらすもの《エンドブレイカー》? ……いえ、違いますね。|六番目の猟兵《イェーガー》ですか!」
「ど、どうしたんだい、ハニー?」
不安げなカレシを自らの後ろにかばいつつ、『女王』は鋭い視線を周囲に向ける。
「心配しないでください、ダーリン。あなたと私の愛は誰にも邪魔はさせません」
今しもエリクシルと猟兵たちの決戦の火蓋が切って落とされようとした……しかし、その時。
空間から溶け出すように、滴り落ちるように、無数の異形が猟兵たちの周囲に現われ出でたではないか。それも数限りないほど無数に!
UDCだ、と猟兵たちは直感する。エリクシルによって世界法則が歪められたため、そこにUDCたちも引き寄せられてきたのだ。いかに猟兵たちといえど、この数は多すぎる!
「ふふ、これは好都合。猟兵たちの足止めに使わせてもらいましょ……って、ちょっと!?」
だが、UDCの思わぬ登場に慌てたのは猟兵たちだけではなかった。
「鮮血の女王」、もまた、大いに狼狽していたのである。
……UDCの大群は、『女王』のカレシに襲い掛かろうと、というか略奪愛しようとしていたのだから!
このUDC達もどうやら独り身は辛かったと見える!
「冗談ではありませんよ! 何を人のダーリンに手を出そうとしているのです、この色ボケモンスターども!」
それはお前だー! と異口同音に猟兵たちが突っ込む中、『女王』」はなんとUDCの群れを相手に大立ち回りを始めたではないか。
なんたる運命のいたずらか、今この場に限っては、猟兵たちと『女王』の敵は同じとなった。無論女王は「味方」ではない、あくまで「敵の敵」と言うだけにすぎない。しかし、少なくともカレシを気遣う必要はなく、UDCの群れを相手に思う存分戦うことはできる。
さて、この混戦を、猟兵たちはどう利用するだろうか。
その気があれば、もしかしたら、『女王』と戦闘の中で言葉を交わすこともできるのかもしれない……。
もちろん、敵と馴れ合う必要はなく、ただ純粋にUDCだけを相手に戦うこともできる。
ダーティ・ゲイズコレクター
UDCの方々と鮮血の女王さんがバトルし始めました
これってつまり…私が無視されている…ってコト!?
イチャついたうえに私を無視するなんて!!
断じて許し難し!
ここは魔王らしく威厳たっぷりに名乗りを上げて目立ってやります!
({コンパクトミラー}で自分を見つめて{ゲイズ・パワー}を溜めた後{ダーティウイング}で『空中浮遊』して名乗りを上げる)
聞きなさい!怨嗟が木霊し血風すさぶ戦場でふざけた争いを起こす人達!
私はダーティ!ダーティ・ゲイズコレクター!
凶悪で極悪で劣悪で最悪な魔王ダーティとは私のことです!
その私を無視してバトルなんて許しません!
コッチ見てバトルしなさい!
(UC【酷悪!濁穢花蕾狂咲】発動)
「『私はダー』」
「ヒトのダーリンに何をしようとしているのですかこの色ボケどもーっ!」
「黙りナサイ、愛が恒久不変などと思わないことデス! ワタシたちにクリぼっちで過ごせと言うのデスカ! ソのカレシをよこすのデス!」
「あああ! 人の名乗りに割って入らないでください!」
毎度お馴染みの名乗りを高らかに響かせようとしたダーティ・ゲイズコレクター(Look at me・f31927)は、その声をあっさりと中途でぶった切られて地団太を踏んだ。
まあ、ダーティが名乗ろうと名乗るまいとかまわず、今現在は二つの陣営のモンスター……エリクシルたる『鮮血の女王』と、UDCの群れとが激戦の真っ最中なのである。ダーティの声が耳に入らないのも無理はない。何しろこれは、愛を掛けたもっとも熾烈にして崇高なる戦いであるのだから!
しかし、だからとてダーティが挫けるはずもなし! 彼女こそは次なるキングに最も近い魔王であるのだから!
「負けずにもう一度です! こほん! えー、『私はダーティ! ダーティ・ゲイズコレ』」
「だからって人のカレシを奪おうなどとは! 独り者の相手くらい、人間でもUDCでもいくらでも余っているでしょう!」
「フン、愛の何たるかを知らない生ぬるい話デスネ! 愛は奪う瞬間こそが最も甘美で燃え上がるものなのデスヨ!」
「うーわ最低です! 本当の愛でも何でもないじゃないですか!」
「何が真実の愛と捉えるかは人それぞれなのデスヨ!」
「ええい、だから私の名乗りを邪魔しないでくださいー! 次こそ行きますよ、『私はダーティ! ダーティ・ゲイズコレクター! 凶悪で極悪で劣悪で最悪な魔王ダーティとは私のことで』」
「もう許せません、あなたたちに真の愛の強さを叩き込んであげましょう!」
「望むところデス! よその世界くんだりから紛れ込んできたよそ者ガー!」
「いやあと一文字で私の名乗り完成だったじゃないですか!? なんであと一文字くらい待ってくれないんです!?」
このままではダーティの存在園もがガン無視されたまま事態が進行してしまう。それはそれで潰し合ってくれるならいいよといえなくもないかもしれないが、しかし! ダーティにとって、事態の解決よりも優先すべきものがある、それは、誇り! 己の誇りだ!
「イチャついたうえに私を無視するなんて!! 断じて許し難し!」
覚悟を決めたダーティはついに、恐るべき最後の手段に打って出た。
それこそは……常に携帯しているコンパクトミラーだ!
「誰も私を見てくれないなら! 私が私を見つめればいいのです!」
それでいいのか! いや本人がそれでいいというならもう何も言うまい!
だが実際、己自身の視線を己に浴びせることで、ダーティの魔力は飛躍的に上昇した。これこそが彼女のゲイズパワーだ。蓄積した魔力を迸らせ、ダーティは今こそ天高く飛翔する。
「怨嗟が木霊し血風すさぶ戦場でふざけた争いを起こす人達、目にものを見せてあげましょう! しかし、今ここで普通に名乗ったとしても、おそらく先ほどの二の舞でしょう……魔王たるもの、同じ轍は踏みませんよ! ならば……」
ダーティは決意を固めると、高らかに詠唱に入った。彼女の恐るべきユーベルコードが、今、解き放たれる!
「『恐れ慄け! 泣き叫べ! 終焉告げる花よ咲け! ──酷悪! |濁穢花蕾狂咲《ダクアイカライキョウショウ》っ!!!』
天地に響く口訣の響きが波動のうねりを呼び起こし、エネルギーの奔流となって逆巻き、荒れ狂う龍のごとくに渦を巻いた! ダーティの魔力の収束は今、赤紫の閃光の矢となって無数に無限に大地へと降り注ぐ!
……文字の形を為して!
そう、最初の光の矢は「私」と読める形に!
次の光の形は「は」
さらに続いて「ダ」「―」「テ」「ィ」……!
おお、賢明なる読者諸兄はすでにお察しのことであろう! ダーティは己の光の矢を用いて、今度こそ自分の名乗りを──完成させたのだ!
「私」「は」「ダ」「ー」「テ」「ィ」「!」
以下『ダーティ・ゲイズコレクター! 凶悪で極悪で劣悪で最悪な魔王ダーティとは私のことです!』と、見事なまでに続く!
……いやそれでいいのだろうか。だが、ダーティにとっては己が注目を浴びることこそが何よりも重要、そのためには、この大いなるパフォーマンスの効果の高さは言うを待たない。
しかも、それだけではなかった。
「ああっ、眩しい!」
「くっ、これは一体どうしたのデス!」
自分たちの周囲一面を取り囲むように突き立った光の矢の閃きに、思わず目を背けようとした『女王』やUDCたちが向ける視線は、自然と……上空へと向かわざるを得ないのだ!
そう、ダーティが君臨する天空へと!
地上を見ればダーティの光の矢による名乗り! 上空を見ればダーティ本人!
どこを向いてもダーティに対する注目は一斉に高まる結果となる! これこそが恐るべき魔王の編み出した完璧なるタクティクスだ!
「ふふふ。やりました! ついに皆さん、一人残らず私に注目しましたね! これで私の勝ちです!」
高らかに勝利を満喫するダーティに、しかし。
女王はぽつりと漏らすのだった。
「世界中の人に注目されるより、私だったら愛する一人だけに見てほしいですけどね」
「いきなりノロケでぶん殴るのやめてください!!」
大成功
🔵🔵🔵
サリー・オーガスティン
■SPD
確かにボクは「色恋沙汰では朴念仁」で、女性相手にしくじった事は一度や二度じゃ済まないけどねぇ……。
(夢の中では、女性型モンスターに散々酷い目にあわされてたし)
さて、色ボケモンスターどもをやっつけにかかるか!
数も多いしここは、【UC】で自らを不可視化させてからの、衝撃波([スナイパー、一斉発射、誘導弾、2回攻撃、零距離射撃、なぎ払い、援護射撃]付き)で吹き飛ばす!
さて。気になる事を聞いてみるか
「(生首)女神様、望みを叶えるとは言うけれども、その望みは自分自身をも拘束するのかい?確かキミは望みをひねくれた形でしか叶えられないはず、だけどこれもその結果、かい?」
※連携・アドリブ共歓迎
試作機・庚
色ボケしかいねぇんデスか今回の依頼!
けどまぁ世界の破滅とかよりは健全でいいデスねうん…
ところでエリクシルの願いを歪めて叶えるってエリクシルの個人が意図的に歪んだ解釈で叶えるのか
それとも意図せずとも勝手に歪んで叶うんデスかね…?
歪めずに叶えれるならなんとかなりそうデスけど…
そこらへん聞いてみるデスか
ところで…敵の名前【偽りの心を授けられた人形】なんデスけど…授けられた心が色ボケ略奪愛って…本当にもう…何を思ってこんなの与えたんデスか…(顔を手で覆う
使うUCは【重力鎖の魔弾】
集団戦デスからきっちり当てて排除していくデス
本物なら心も痛むデスけど偽りな上色ボケはもう…潰してあげたほうが幸せデスよ…
「色ボケしかいねぇんデスか今回の依頼! けどまぁ世界の破滅とかよりは健全でいいデスねうん……多分……」
「いやそれもどうかな……恋も時と場合によっては相当ひどいことになるからね……」
試作機・庚(過去を裏切った者・f30104)の慨嘆に、サリー・オーガスティン(鉄馬の半身・f02199)は首を竦めて苦笑した。
(実際ボクは「色恋沙汰では朴念仁」で、女性相手にしくじった事は一度や二度じゃ済まないし……夢の中では、女性型モンスターに散々酷い目にあわされてたしねぇ)
悲しき(?))過去がサリーの胸中に木枯らしのように吹き抜け、その魂を晩秋の寂寥感で包み込む。
(その点、やっぱりバイクはいい……こちらの操作にどう反応してくれるか、風の中をどう走り抜けていくか、感覚でわかるからね……考えなくていいし女の子より素直だ……)
……そりゃ朴念仁って言われるよ。
「まあそれはともかく、とりあえずUDCから排除していくデスよ。一応、今の時点では『女王』は攻撃対象外、と言うことでいいんデスよね?」
「ああ、色ボケモンスターからやっつけていこう」
「そう色ボケから……いやどっちもそうなんデスが……まあいいデス」
あれもしかしてこの戦場でツッコミ役は自分だけ? という恐るべき事実に思い至りそうになった庚は、その過酷な現実から目を背けるべく、さっそく攻撃を開始した。
相手は偽りの心を授けられた人形。
(その授けられた心が色ボケ略奪愛ってもう何が何だかデス……深く考えた方が負けデスね!)
頭をブンブンと振って常識をどっかに追いやってから、庚は非常識に立ち向かう。
「本物なら心も痛むデスけど、偽りな上色ボケはもう潰してあげたほうが幸せデス……超重力に囚われてもらうデスよ──『|重力鎖の魔弾《フォール・フォア・フォー・フォルト》』!」
見よ、庚の巻き起こした重力嵐は光をひずませ空間を歪め、死すらもその底に沈め逝く暗黒の轟洞と化してUDCたちを次々と捉えていく。
「ああっ、これはなんというコト! 身動きができマセン! まるで運命のラブにフォーリンダウンしたかのようニ!」
「そんな発想まで色ボケデスかー!!」
何で攻撃している自分の方が体力削られていくんだろう、と思わなくもない庚だったが、とにかくも彼女が敵の行動を封じたところへ。
「衝撃波で吹きとばす──『|Ballistic wave《バリスティック・ウエーブ》』!!」
不可視の波動を身に纏ったサリーの放った衝撃波が、空間ごとあらゆるものを薙ぎ払うがごとき勢いでUDC達へと襲い掛かった。天をひび割れさせ虚空を引き裂いて、サリーの衝撃波が荒れ狂う!
「ぐえー! 恋の衝撃はいつでもサプライズー!」
断末魔の悲壮な呻きを残しながら空の彼方へぶっ飛んでいくUDCたち。まだまだ残存するその数は多いとはいえ、生じたその一瞬の余裕に、ふと、自然に視線が絡んだ。……『鮮血の女王』と、猟兵たちとの。
「……何です、その目は。とりあえず今は同じようにあの泥棒猫たちと戦ってはいますが、あなたたちとて私の敵に変わりはないのでしょう」
女王の冷ややかな言に、二人は顔を見合わせ、そして、どちらも同じように考えていた言葉を口にした。
そう、それは今回の事件の、ある意味では中核ともいえるかもしれない重大なポイント。
「確かキミは……エリクシルは、望みをひねくれた形でしか叶えられないはず、だけど、今のキミたちはそう見えないね。望みを叶えるとは言うけれども、その望みは自分自身をも拘束するのかい?」
「女王さんは、相手の願望を意図的に歪んだ解釈で叶えるのか、それとも意図せずとも勝手に歪んで叶うんデスかね……?」
そこが、まさに二人が疑問に思っていた点。
エリクシルは願望を歪めて叶えるもの。しかし、カレシが会社に行かなくなり、社会的に孤立しかけているのはその「影響」であって、願望を叶えたこととの直接のつながりはないともいえるかもしれない。
また、他のエリクシルたちが押し寄せてくる可能性があるというのも、同じように願望との直接の結びつきと言うよりはその「影響」が波及したものだろう。
では、カレシの願いは歪まずにかなえられたというのか?
「ふっ、そこを聞きますか……聞きたくて仕方がありませんか。そんなに目をキラキラさせるほどに」
「「いやそこまでは別に」」
「ならば仕方がありません! あれは私とダーリンが初めて出会ったその夜のこと……」
「「語り始めちゃったよ」」
ほわんほわんほわん……(回想開始のSE)
「私と恋人になりたいというあなたの願いはかなえました」
「ああ、ありがとう。本当に夢のようだよ、君のように素敵な人が僕の恋人になってくれるなんて。世界がバラ色に輝いて見えるくらいさ」
「……しかし、『いつまで恋人でいるか』という期間は限定されていませんでしたね。つまり……ここでお別れです」
「な、なんだって!? そんな! 歓喜の頂点からいきなり絶望のどん底に叩き落とされるなんて! もう、もう世界なんてどうなってもいい! こんな世界、何もかも破壊してやる!」
「願いを歪めて叶えるとはそういうことです。……しかし、ですね。……私の方から、もう一度あなたにお付き合いを申し込むことは──別に否定されていません」
「な、なんだって!? それはつまり」
「え、ええと。私の恋人になっていただけますか……?」
「もちろんOKだよ! 世界はなんてすばらしいんだ! すべてが虹色に輝いて見えるよ!」
ほわんほわんほわん……(回想終了のSE)
「ということを毎晩繰り返しているのです」
「「毎晩!?」」
「毎晩お別れをして、絶望に浸ったのちにもう一度お付き合いをすることによって、幸福感が二倍、いやそれ以上になるわけですね」
「「……それは……」」
サリーと庚は顔を見合わせ、ツッコミとも呆れともつかぬ叫びを一斉に口にした。
「「──歪んでるよぉ!!」」
「ええ、私エリクシルですから、歪んでいるのですよ?」
当たり前のことのように答える『女王』に、二人は思わず顔を覆って脱力するのだった。
「それって、もうさ……」
「ただのプレイじゃないデスか!」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
上野・イオナ
エテルネ・イミタージョ(f36956)と
「英雄イオナ 希望を描きにただいま参上!」ってね
UC【空を翔ける小鳥が歌うは夢の音色】使用
僕のUCで敵意が無い事を伝えながらエテルネのUCのコースターで鮮血の女王の近く、敵UDC達の真ん中へ突っ込む
という訳で二人とも助けに来たよ。
両手の『二朝』と触手で握る『彩虹の剣』の三刀流戦闘スタイル。余った触手も敵を捌くのに使用。
とりあえず行動で信用を得るターンかな。UDCと戦いつつ、女王を支援。もちろんカレシさんは守る。
あんまり多く話す余裕がないかも。
※アレンジ・他との連携歓迎
エテルネ・イミタージョ
上野・イオナ(f03734)と
もうっ、考え無しに1人で突っ込む気マンマンじゃない。
言ってくれたら手伝うんだから、
UC【ワールドデータ:フェアリーテイル・テーマパーク】使用
辺りに遊園地の電脳空間を展開 合体し空間に溶け込む
アミューズメントブキ『コースター=レールガン』でイオナを送り出す
同時に召喚したキャストドールには外周から敵の注意を引き付けさせる
さてと、スーパーの様子から大丈夫だと思うけど、本当にナマちゃんが敵か味方か確認しないと
アナウンスから声を出してナマちゃんへ会話を試みる
他猟兵との戦闘の可能性は別として
本人にこのまま事件を起こす意思がないか
言葉を聞いて見極めたい
※アレンジ・他との連携歓迎
「英雄イオナ 希望を描きに! ──って、あいたたた!」
猛然と勢い込んで突進を始めようとした上野・イオナ(レインボードリーム・f03734)がその勢いのままガクンと空中で急制動を掛けられた。イオナの襟首をぐいとひっ掴んだまま、エテルネ・イミタージョ(La vastiĝanta cibermondo・f36956)が大きく吐息をついている。
「まーちーなさいって。もうっ、考え無しに1人で突っ込む気マンマンじゃない。言ってくれたら手伝うんだから」
「そうか、ありがとう! じゃ、頼むよ!」
「素直か。……素直だったわね」
くすっとその反応に微苦笑をもらしつつ、エテルネは精神を集中し、UCの発動に移る。目標は眼前──「鮮血の女王」とUDC人形たちが激戦を繰り広げているその真っただ中だ!
「さあ、ショウの主役のご登場よ。楽しんで来てね! 『ワールドデータ:フェアリーテイル・テーマパーク』!!」
瞬時、広域空間が01のデジタル因子で覆われ尽くし、そこからこの世のものとも思えぬ美しくきらびやかなイルミネーションが軽やかにダンスを始め、ポップミュージックが弾むように流れ出す。
「コレは!?」
「一体何が!?」
動揺し、周囲を見回すUDCとエリクシル。あたかもそこは世界そのものが夢見たようなドリーミングワンダーランド! エテルネの力は遊園地の電脳空間を瞬時に構築したのだ。
そのワンダーランドの天空果てまで届くかと思われる巨大なる弧を描くシルエットこそは、超スケールのコースターだ! その頂点にはイオナが今や遅しと出撃を待ち構える!
「あははは、いやさすがに若干大きすぎるような気もしてきたけど! まあよし! 行くぞ!」
傲然! 一気呵成にコースターは滑り出し、1080度の超ループと上下反転さらに逆反転捻りこみを加えた超加速が風さえも置き去りにしてぶっ飛ぶ!
「あれっこれちょぉっとやり過ぎじゃないかなって思わなくもないけど! うわあああ!」
気合が悲鳴かよくわからない声を出しつつ、その弾丸のような勢いのままイオナは飛翔! まっしぐらに戦場のど真ん中へ激しく打ち込まれた! 穿たれた大クレーターと濛々たる土煙、果たしてイオナは大丈夫か!?
「え、英雄イオナ……希望を描きにただいま参上っ!」
おお、見事な名乗りである。若干ふらふらしつつも立ち上がったイオナは、度肝を抜かれているUDCたちを相手に抜く手も見せず三振りの刀を抜き放つ。
その両腕は彼に寄生した妖刀『二朝』、苦痛を代償にあらゆるものを斬り裂く魔剣、そしてのたうち、うねる触手が掴むは鮮やかなる虹の軌跡を描く彩紅の剣!
三本の剣が虚空を踊るところ、UDCたちは次々と倒れ伏す。
されどその剣閃は、UDCのみを切り伏せ、「鮮血の女王」へは向かうことはない。
警戒し、身構えていた『女王』だが、イオナの戦いそのものが無言の大いなるメッセージとなって彼女の元へと届いていた。あたかも夢の音色を奏でるがごとき玲瓏の調べと共に。そう、その優しき調べこそイオナのUC──『|空を翔ける小鳥が歌うは夢の音色《チェレステカンツォーネ》』に他ならぬ。
「……その猟兵の力……苦痛を代償にするようですね。それほどの痛みを味わいつつ、それでも相手を選んで……私を敵とはせずに戦っているというのですか」
「そうよ、それがイオナの決意と覚悟。あなたはどうなの、鮮血の女王?」
不意に空から降った声に、『女王』は視線を向ける。電脳テーマパークのスピーカーを通じ、エテルネの問いが自らに向けられたものだと知って。
「私の……?」
「あなたがカレシさんを守ろうとしていたのは見たわ。でも、もし本当にカレシさんを守ろうというのなら、この世界も同じように護らなければ……少なくとも積極的にこの世界に害を与えることはできないはず。カレシさんが存在するのはこの世界なのですもの」
しばしの沈黙。女王はやがて、歌うように声を紡ぐ。
「私はまだ……ダーリンと海にも行っていません。雪の聖夜を一緒に歩くことも。水族館にも。一緒に映画も。いいえ、そう、このような……ここのような遊園地にも未だ行ってはいないのです」
「遊園地に……あなた、遊園地に行きたいの?」
「ええ、ダーリンと観覧車に乗ったりとか」
「それは……」
エテルネ、そしてイオナは、観覧車のゴンドラの窓から巨大な生首だけが見えている姿を想像する。
「……ほ、他のお客さんからすればトラウマになりそうだけど……ま、まあ可愛い夢よね」
「あるいは、先ほどそちらの猟兵が飛んできたようなジェットコースターに一緒に乗ったりとか」
「……ジェットコースターはいいけど……きみ、どうやって安全バー付けるの……?」
「コーヒーカップを回したりとか」
「回った勢いで首だけ転がって行かないかしら……」
「回転木馬に乗ったりとか」
「木馬に乗る首……想像したらめっちゃシュールだ……」
「ええい、先ほどからなんなのです! 人の夢に対して!」
「ご、ごめん、でもいい夢だと思うよ、うん! もしよければ、あとでエテルネのUCで遊んで行ってもいいと思うよ!」
「ええ、もちろんよ、カレシさんも一緒にね!」
若干むくれ始めた『女王』を、慌ててなだめつつ、イオナとエテルネは『女王』の言葉を胸中で反芻していた。
それは、少なくとも今は──『女王』にとって、カレシとの思い出を作る方が優先だということと理解できる。
……「今は」、だ。
そこから先のことはわからない。本人も、分かってはいないのだろう。
それをどう判断するかは──猟兵たちに委ねられる。
潜在的な恐るべき脅威であることは間違いない、ゆえに排除するのか、それとも、……不確かな「今」のこの心を信じるのかは。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルエリラ・ルエラ
【アドリブ・改変大歓迎】
この展開は私がかっこよく登場できるタイミング!
女王と組んでモテない僻みでやってきた敵から始末してあげよう!
私はモテモテだから僻む人の気持ちがわからないなー!はっはっはー
まずカッコよく登場!
「ある時は芋煮の伝道者。ある時は芋煮屋さんの看板娘。またある時は幸せを呼ぶ芋煮屋さん!かくしてその正体は!そう、私だよ!」
そして女王に共闘を持ち掛けるよ。モテモテ同士非モテを駆逐しよう!
というわけで、ささっとみんな倒しちゃおう。【フィーア】で一気に殲滅!モテない敵なんてこれで十分
フッ…みんな後で私のとこにおいで。いい女は芋煮から。美味しい芋煮を作れるようになって男の人の胃を掴もう!
「むっ! この展開は私がかっこよく登場できるタイミングだね!」
どこをどう見ればそんな結論に結びつくのかはよくわからないが、とにかくルエリラ・ルエラ(芋煮ハンター・f01185)の類稀なる天才射手としての鋭い眼光は、己が目立つチャンスを一瞬たりとも見逃さないのだ。
鮮烈に身を翻し、軽やかに舞うように、ルエリラは「鮮血の女王」とUDCの大群が激烈なる戦いを繰り広げている戦場へと踊り込んだ!
「ある時は芋煮の伝道者。ある時は芋煮屋さんの看板娘。またある時は幸せを呼ぶ芋煮屋さん! かくしてその正体は! そう、私だよ!」
「いや誰ですあなたは」
「私だよ!」
「誰……」
「私だよ!」
「……よくわかりませんが……まあ、私の邪魔をするおつもりがないのでしたら後回しにしましょう」
頭上にクエスチョンマークを浮かべつつ、『鮮血の女王』は一応UDCたちの方へと向き直る。その彼女の肩……肩はないので頭の上に馴れ馴れしく腕を置き、ルエリラは誘いかけた。
「まーまーそう言わずに。どう、モテモテ同士、共闘して非モテを駆逐しない? あんなモテない僻みでやってきた、しょーもない敵なんかさー!」
だがなんたることか、女王より先に、その言葉を聞きとがめたUDC、キレた!
「ベベベベ別に僻みとかそういうんじゃないのデスヨ!」
「何を勝手に人が非モテだときめつけているのデス、許さないデス!」
UDC集団の恐ろしいまでの鋭い怨念と呪詛と憎悪に満ちた視線が集中する。
──女王の方に。
「えっ私!? いや違いますよ、今言ったのはこっちの猟兵で……」
慌てふためく女王だが、もうすでにその時ルエリラは女王の後ろにその小柄の体を隠していた! さらにそのままルエリラは続ける!
「ほらほらー、ほんとのこと言われたからってそんな真っ赤にならなくてもさー、偉大なエルフにして完璧完全な美少女たる私くらい心に余裕がないといつまでたってもモテないよー?」
「キーッ! ちょっとカレシができたからって生意気デス! ブッ飛ばしマス!」
「ちょっと猟兵!? あなたが勝手に稼いだヘイトを私に押し付けないでください!?」
恐るべしルエリラ。敵に回したら無論厄介だが、味方にしてもそれはそれで大変な女!
「ととととにかく、ワタシたちはあくまで略奪愛と言う背徳の官能を堪能しようとしているだけのことであって決してペアルックが羨ましいとかそういうことは言ってないのデス!」
が、その必死のUDCたちの抗弁に、やっと顔を出したルエリラはにやにやとした嘲笑を浮かべて返した。
「へー、そうなんだ。私はモテモテだから、ペアルックなんかで僻む人の気持ちがわからないなー! はっはっはー」
「何をいうのデスカ! そんなアナタだってどうせモテているはずは……」
ムキーッとなりつつ言いかけたUDCたちは、しかし! そこで重大かつ決定的なる証拠を目にした! ルエリラが間違いなくモテ子であるという、その動かず揺るがず確定的なエヴィデンスを!
「……ぺ、ペアルック!? それはまさか……ペアルックなのデスカ!?」
そう、UDCたちがそこに見たものは、ドヤ顔でルエリラがサメタンクから投影した証拠映像に他ならなかった。おお見よ、まさに……お揃いである! 同じ服を着ている!
──『サメぐるみ』と言う同じ服を! しかも何人も一緒に!
そう、同種の着ぐるみも、まあペアルックといえばペアルックなのだ!
「ふっふっふ、これでわかったかな? 私がいかにモテ強者かということが!」
「ぐ、ぐああああ! これがペアルックの威力―!!」
ぴこぴことサメぐるみのヒレを得意げに動かすルエリラの前に、たまらずにUDCたちはバタバタと倒れていく。恐るべきペアルックのモテパワーだ。あたかもそれは、ルエリラのユーベルコード『|魔力矢の雨《フィーア》』を炸裂させたがごとき一瞬の殲滅であった!
「……いやそれでいいのですかあなたたちは」
『女王』がツッコむ声もどこか遠くに響く。
かくしてルエリラはUDCの大群をモテパワーで見事一掃したのだった。
だが、ルエリラは何も無下に無慈悲にUDCたちを下したわけではない。その深い瞳に優しい光を宿らせて、ルエリラは傷つき倒れ伏したUDC達を見回す。
「フッ……みんな後で私のとこにおいで。いい女は芋煮から。美味しい芋煮を作れるようになって男の人の胃を掴もう!」
そう、芋煮の前にはみな平等。崇高なる芋煮に身を投げ出すことで心の平穏は齎されるのだ。芋煮を崇めよ。芋煮を讃えよ。オールフォー芋煮、芋煮フォーオール。
「ウウ……それがモテの極意だとイウノデスカ……」
「ツ、付いてイキマス、|師匠《マスター》!」
UDCたちは感涙にむせびつつ、ルエリラの教えを受けるのだった。
「……だからあなたたちはそれでいいのですか」
大成功
🔵🔵🔵
天空を闇夜が覆い尽くすがごとく、漆黒の衣が艶やかにはためき翻る。ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)の纏う黒き夜魔の翼が。
踊るように舞うように、群がる異形の怪物たちの頭上を通り抜け、ドゥルールは鮮やかに降り立った。「鮮血の女王」の傍らに。
「何者です……!?」
『女王』はあからさまな警戒心を向けた。さもあろう、ドゥルールから漂って来る深淵の気配は、UDCの群れよりもはるかに濃く、深く、恐るべきものであるのだから。
けれどドゥルールは妖艶な笑みをその朱唇に浮かべ、安心させるように柔らかく頷いた。
「心配しないで。私はドゥルール。──存在を否定される者達の救済者」
「存在を否定されるものの……?」
「ええ、貴女達が誰にも邪魔されず愛し合える環境を提供しに来たわ。でも、その前に……」
ドゥルールはくいと踵を返し、UDCの大群へと向き直る。
「まずは彼女達を救済するから、待ってて頂戴」
「救済……? それは一体……」
啞然とする女王たちを残し、ドゥルールは優雅に歩を進め、UDC達の中へと踏み込んでいった。
「アナタもワタシたちの愛を邪魔しにきたのデスネ!?」
UDCたちは一斉に鬼気迫る勢いでドゥルールを取り囲む。が、ドゥルールは恐れることもなく、かといって蔑むこともなく──むしろ慈母のごとき微笑みを浮かべて、UDCたちを眺めやった。
「恋愛は早い者勝ちではなく愛された者勝ちなのは確かね。だから私も略奪愛は否定しないけど……」
ドゥルールは細い肩を竦め、なだめるように言葉を継ぐ。
「でも、貴女たちは必ずしも、あちらの男性だけがいいというわけではないのでしょう? 他の人でもいいのよね? つまり……貴女たちを認め、受け入れ、愛してくれるのならば」
「そんな……そんなものがそうそう容易くいるわけがないデショウ!」
UDCたちの頭上に、一気に、どよーん! と縦の効果線が入る。漂ってきたどんよりした空気は梅雨のじっとりじめじめした湿気のようだ。もう洗濯物が数日乾かないくらいの。
「ワタシたちは……偽りの心を与えられた人形デス。自分達でもそれはわかっているのデス。だからこそ、せめて知りたかった……真実の愛を。異形でも構わずに愛したあの男性ならば、偽りの心しか持たないワタシたちにも真実の愛を教えてくれるかもシレナイ……そう、思ったのデス……」
思わぬ告白を受けたドゥルールはさすがにちょっとだけタジタジとなった。
「ネタシナリオかと思ったら意外にシリアスだったのね……でも、だったらなおさら、貴女たちを見捨てるわけにはいかないわ。貴女たちのその苦悩、その悲しみ、その涙を、誰にも偽りなどとは言わせない。──その心は間違いなく真実のものだと、貴女たち自身に──信じさせてあげる」
ドゥルールの周囲の空間が揺らぎ蠢き、虚空がひび割れ……その中から、陽炎のように不知火のように、無数の人影が浮かび出た。これこそ彼女の能力──131体の守護霊を呼び出す『|私達の楽園《ネヴァーエンド・ラブメモリーズ》』!
「こ、コレは!?」
驚愕するUDC達に、守護霊たちは優しく微笑みかける。
「可愛い子猫ちゃん、君にそんな涙は似合わないよ。僕を、その涙をぬぐうハンカチにさせてくれないか」
「キャーッ!? そんなセリフを恥ずかしげもなく言えて、しかもメッチャ似合っているとかナンデスカこの人ー!?」
あるUDCに壁ドンしつつその髪を撫でたのはまるでイケメンホストのごとき守護霊! UDCの目は完全にハート型だ!
「あっ、あのっ! 僕、お姉さんみたいな一生懸命な人を支えてあげたいんです! 僕のこの気持ち、どうか受け取ってください!」
またあるUDCに、緊張で手を震わせながらもラブレターと思しき手紙を手渡したのは、可憐で健気なショタ美少年!
「ああっ、私のような人形にあるはずのない母性本能がぎゅんぎゅん刺激されて……たまらないデス!」
さらに……あるところではイケオジ系ダンディが。ある場所では翳のあるクール系が。またあるところでは委員長系真面目メガネくんが。次々とUDC人形たちを口説き落としていく! 無論男性型ばかりではない、要は「真実の愛」がそこにあれば性別など関係はないのだ。お姉さま系、あるいは可愛い妹系キャラもどんどんUDCをオトし、二人で連れ立って物陰へ消えていく。男の娘もいたのはご愛敬だ!
「ああっ、深くて熱い、これが真実の愛なのデスネ……!」
「愛が体の奥の奥まで貫いて満たされてイキマス……!」
そこら中から上がりまくる悲鳴のような歓喜の声の大合唱を聴きながら、ドゥルールはくすりと妖艶な笑みを漏らすのだった。
「貴女たちを取り込んで、霊は私の中に還ってくる。私の中で末永くお幸せに、ね♥」
ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘×
グロ×
WIZ
【ダッシュ・ジャンプ・空中浮遊】で
UDCを飛び越え、女王達に接近
私はドゥルール。存在を否定される者達の救済者。
貴女達が誰にも邪魔されず愛し合える環境を提供しに来たわ。
まずは彼女達を救済するから待ってて頂戴
二人を【結界術】で保護し
UDCと対峙
恋愛は早い者勝ちではなく愛された者勝ち。
略奪愛は否定しないけど
貴女達は他の男でも良いのよね?
ヘタレ臭がするけど母性本能くすぐられる青年。
可愛いショタ。扇情的な男の娘。経験豊富なホスト等
『私達の楽園』で呼んだ私と同じ強さの霊131人が
【誘惑・催眠術】でUDCを魅了し【慰め・生命力吸収】
UDCを取り込んだ霊達は私に還る。私の中で末永くお幸せに♥
天空を闇夜が覆い尽くすがごとく、漆黒の衣が艶やかにはためき翻る。ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)の纏う黒き夜魔の翼が。
踊るように舞うように、群がる異形の怪物たちの頭上を通り抜け、ドゥルールは鮮やかに降り立った。「鮮血の女王」の傍らに。
「何者です……!?」
『女王』はあからさまな警戒心を向けた。さもあろう、ドゥルールから漂って来る深淵の気配は、UDCの群れよりもはるかに濃く、深く、恐るべきものであるのだから。
けれどドゥルールは妖艶な笑みをその朱唇に浮かべ、安心させるように柔らかく頷いた。
「心配しないで。私はドゥルール。──存在を否定される者達の救済者」
「存在を否定されるものの……?」
「ええ、貴女達が誰にも邪魔されず愛し合える環境を提供しに来たわ。でも、その前に……」
ドゥルールはくいと踵を返し、UDCの大群へと向き直る。
「まずは彼女達を救済するから、待ってて頂戴」
「救済……? それは一体……」
啞然とする女王たちを残し、ドゥルールは優雅に歩を進め、UDC達の中へと踏み込んでいった。
「アナタもワタシたちの愛を邪魔しにきたのデスネ!?」
UDCたちは一斉に鬼気迫る勢いでドゥルールを取り囲む。が、ドゥルールは恐れることもなく、かといって蔑むこともなく──むしろ慈母のごとき微笑みを浮かべて、UDCたちを眺めやった。
「恋愛は早い者勝ちではなく愛された者勝ちなのは確かね。だから私も略奪愛は否定しないけど……」
ドゥルールは細い肩を竦め、なだめるように言葉を継ぐ。
「でも、貴女たちは必ずしも、あちらの男性だけがいいというわけではないのでしょう? 他の人でもいいのよね? つまり……貴女たちを認め、受け入れ、愛してくれるのならば」
「そんな……そんなものがそうそう容易くいるわけがないデショウ!」
UDCたちの頭上に、一気に、どよーん! と縦の効果線が入る。漂ってきたどんよりした空気は梅雨のじっとりじめじめした湿気のようだ。もう洗濯物が数日乾かないくらいの。
「ワタシたちは……偽りの心を与えられた人形デス。自分達でもそれはわかっているのデス。だからこそ、せめて知りたかった……真実の愛を。異形でも構わずに愛したあの男性ならば、偽りの心しか持たないワタシたちにも真実の愛を教えてくれるかもシレナイ……そう、思ったのデス……」
思わぬ告白を受けたドゥルールはさすがにちょっとだけタジタジとなった。
「ネタシナリオかと思ったら意外にシリアスだったのね……でも、だったらなおさら、貴女たちを見捨てるわけにはいかないわ。貴女たちのその苦悩、その悲しみ、その涙を、誰にも偽りなどとは言わせない。──その心は間違いなく真実のものだと、貴女たち自身に──信じさせてあげる」
ドゥルールの周囲の空間が揺らぎ蠢き、虚空がひび割れ……その中から、陽炎のように不知火のように、無数の人影が浮かび出た。これこそ彼女の能力──131体の守護霊を呼び出す『|私達の楽園《ネヴァーエンド・ラブメモリーズ》』!
「こ、コレは!?」
驚愕するUDC達に、守護霊たちは優しく微笑みかける。
「可愛い子猫ちゃん、君にそんな涙は似合わないよ。僕を、その涙をぬぐうハンカチにさせてくれないか」
「キャーッ!? そんなセリフを恥ずかしげもなく言えて、しかもメッチャ似合っているとかナンデスカこの人ー!?」
あるUDCに壁ドンしつつその髪を撫でたのはまるでイケメンホストのごとき守護霊! UDCの目は完全にハート型だ!
「あっ、あのっ! 僕、お姉さんみたいな一生懸命な人を支えてあげたいんです! 僕のこの気持ち、どうか受け取ってください!」
またあるUDCに、緊張で手を震わせながらもラブレターと思しき手紙を手渡したのは、可憐で健気なショタ美少年!
「ああっ、私のような人形にあるはずのない母性本能がぎゅんぎゅん刺激されて……たまらないデス!」
さらに……あるところではイケオジ系ダンディが。ある場所では翳のあるクール系が。またあるところでは委員長系真面目メガネくんが。次々とUDC人形たちを口説き落としていく! 無論男性型ばかりではない、要は「真実の愛」がそこにあれば性別など関係はないのだ。お姉さま系、あるいは可愛い妹系キャラもどんどんUDCをオトし、二人で連れ立って物陰へ消えていく。男の娘もいたのはご愛敬だ!
「ああっ、深くて熱い、これが真実の愛なのデスネ……!」
「愛が体の奥の奥まで貫いて満たされてイキマス……!」
そこら中から上がりまくる悲鳴のような歓喜の声の大合唱を聴きながら、ドゥルールはくすりと妖艶な笑みを漏らすのだった。
「貴女たちを取り込んで、霊は私の中に還ってくる。私の中で末永くお幸せに、ね♥」
大成功
🔵🔵🔵
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】
オイぃ!?
なんだよこの状況は!?
いくらクリスマス前で焦ってる奴らばかりだとしても、
ちょっと必死過ぎやしねぇか!?
おいカレシさんよ!
お前アレか?ヒトにモテない代わりにヤバいのばかりにモテてるんじゃねぇのか!?
ほらなんか珍獣まで出張ってきてるしって
なんで出てくるんだよ!?
え?エリクシル絡みだから?んな訳あるかぁ!?
絶対ぇこのカオスな状況が魔法少女にうってつけだからだろ!?
とにかくもう告白イベントのお約束を収めるならここしかねぇだろ!
場面転換、ここは放課後の体育館裏だ!
さっさと甘酸っぱい青春に浸りやがれ……!
告って玉砕した奴はアタシが慰めながら浄化して消し飛ばすよ。
「え、やりたいんでしょ?」
「ちげーし」
「うっそだぁ、ね、正直になろうよ☆ やりたいんでしょ?」
「ちっげーし!」
「魔法少女したいんでしょォォォ!?」
「絶対にちげええええ!」
いつの世も最後の希望は託される。この世にきらめくラブリーとファンシーとキュート、そしてほんのちょっとの不条理と理不尽を詰め込んだ存在──魔法少女に!
「不条理と理不尽はいらないんじゃないかな!? チクショウ、何でお前まで出張ってきてんだよ珍獣!」
「ぶつくさ言わないで、さあ変身だよ多喜ちゃん!」
「くっそぉ、別に好き好んでじゃないからな! あくまでエリクシル絡みの事件を解決するためだから! そのために仕方なくだから! やむを得ずだから!」
もう自棄だー! っと言わんばかりに彼女が振るうステッキが輝くとき。
スタァダスト降り注ぐビビッドでリリカルなチャーミングスペースの中で、ぷるん!ぱん! と変身バンクが展開される! フリフリで萌え萌えなコスチュームを身に纏った、その姿こそ──数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)の魔法少女フォーム、マジカル☆多喜りんだ!
「バニーに続いてとうとうまた魔法少女かよ……何だいったいこのカオスな状況……」
げっそりとした多喜の傍らに飛び跳ねている謎生物が、ぽんぽん、とその肩を叩く。
「うんうん、しかしその本音は?」
「多喜りんだってまだまだ可愛いんだもん☆ ってやらせんな莫迦―!」
「アナタたち何をしているのデス……」
そんな多喜に冷ややかなツッコミがぶっ掛けられる。まあ、彼女たち──UDCからすれば、いきなり自分たちのど真ん中に飛び込んできた猟兵が、何をするかと思えばいきなり萌え萌えきゅんなラブリーチェンジをかましたのだ。引く。
「引くとかいうなよ!? ってか、そもそも|お前たち《UDC》のせいだかんな、こんな羽目になったのも! ……こうなったら食らいやがれ、りんりん☆多喜りん☆マジカルシュートッ!」
涙目になりながら多喜は魔法、もとい、ユーベルコードを行使した!
同時、認識がぐらつき概念が崩壊し常識が狂い踊る。そう、強制的に世界を書き換える恐るべきその力がもたらしたものは、──おお見よ、いつしか、ここは夕暮れの赤き陽ざしに染まるロマンチックな校舎裏、伝説の樹の下だ!
「こ、コレは!?」
動揺するUDCたちに、多喜は厳かに教示する。
「伝説の樹の下で告白し、結ばれると永遠の愛が叶うってのは知っているな?」
「マジデスカ」
ごくりと生唾を飲みこんだUDCたちの尻を叩き、多喜は叱咤した!
「マジだ! さぁ甘酸っぱい青春に浸りやがれ! 骨は拾ってやるからよ!」
「くっ、い、行くしかねえデス!」
多喜の号令一下、UDCたちは雲霞のごとき大群となって伝説の樹の元へと押し寄せた! さながらそれは愛を求め恋に焦がれたしるべなき迷い子から迸る激情の大渦! 向かう先は「鮮血の女王」のカレシただ一人だ! ある意味末期的なシチュエーション! 大地を揺るがせ土煙を上げ、風を巻いてUDCの大群が爆走する!
「ワタシと! お付き合いしてくださぁぁぁいいいい!!!!!」(×数百数千)
「あっごめん、僕にはハニーがいるから」
瞬殺だった。
「グワーッ!!!!!」(×数百数千)
バタバタと倒れ伏すUDCたちの姿に、多喜はこの世の無情を感じずにはいられない。まあ、強引な略奪愛による戦闘行動から巧みに方向性を逸らさせ、告白合戦に持ち込むことで容易く事態を収束させた多喜の素晴らしき戦略勝ちではあったが。
「えー、多喜ちゃん、ほんとぉ? 勢いと偶然じゃないの?」
疑わし気にのぞき込む謎生物を多喜はぺしっとひっぱたく。
「うるせえな、ちゃんと計算してたんだよ! 角度とか! まあ、結果としては告白と言うより酷薄になったけどよ」
「うわ多喜ちゃんギャグが親父くさい」
「うるせえってんだよ! ……に、しても」
謎生物にヘッドロックを掛けながら、ふと、多喜は半ば呆れ、半ば感心したようにカレシを見やった。
「アンタ、ヒトにモテない代わりにヤバいのばかりにモテてるんじゃねぇのか? そういう特異点みたいな存在なのかもな」
だが、カレシはそんな多喜の言葉に不思議そうに首を振る。
「僕は特別でもないし、ヤバいのが相手でもないよ。僕は普通で、そして普通にハニーに恋をした。ただそれだけだから」
「もう、恥ずかしいです、ダーリンったら、うふふ」
「でも本当のことだからね、あはは」
また傍目も気にせず見境なくイチャコラしだす「鮮血の女王」とカレシの姿に軽く頭痛を覚えながら、しかし多喜は思うのだった。
「……恋か。それこそが、ほんとの──魔法、だねえ」
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『鮮血の女王』
|
POW : 鮮血光線
【王冠のエリクシル】からレベルmまでの直線上に「神殺しの【真紅の光】」を放つ。自身よりレベルが高い敵には2倍ダメージ。
SPD : エリクシルの女王
【エリクシルの輝き】を纏った真の姿に変身する。変身中は負傷・疲労・致命傷の影響を一切受けず、効果終了後に受ける。
WIZ : 願われし力
【完全なる肉体を持つエリクシルの女王】に変身する。変身後の強さは自身の持つ【願望宝石エリクシルの数×大きさ】に比例し、[願望宝石エリクシルの数×大きさ]が損なわれると急速に弱体化する。
イラスト:Shionty
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
かくして──。
UDCの大群は一掃された。
何という運命のいたずらか、猟兵たちとエリクシルが、一時的にせよ共同戦線を張ったことで。
では……その次は?
無言の緊張が猟兵たちとエリクシルとの間に流れる。
戦うのか、それとも。
「ハニー、怪我はないかい?」
そんな中、カレシの声が響いた。
「ええ、大丈夫です、ダーリン」
「良かった……僕のせいで君を危険な目に遭わせてしまうなんて、すまない。でも、」
と、カレシは猟兵たちに向き直り、深々と頭を下げた。
「あなたたちのおかげで、ハニーも僕も無事でした。ありがとうございます」
礼儀正しく、なかなかの好青年であるようだ。
「それにしても、あなたたちは本当に強いんですね。あなたたちのような人がいるなんて、今まで知りませんでした。強いだけじゃなく、カッコいし、素敵です」
ぴきっ。
と、何かの音がした、ように思える。
いや、気のせいではない。
見よ、「鮮血の女王」のこめかみに……その巨大な生首のこめかみに、青筋が立っているではないか! 一本、また一本! イラストをご覧いただければわかるように、『女王』にはちゃんと血管があるので、青筋も立つのである!
「ダァァリン……浮気……ですか? ……浮気をするのですか?」
「え? いや、何を……?」
「猟兵たちが! 強くてカッコよくて素敵だと! 今言いました!」
「いやちょっと待ってくれ、ハニー! そういう意味じゃないよ! それにほら、皆さんの中には男性だっているじゃないか!」
「異種族の私を愛してくれたあなたなのですから性別だって関係ないはずです! もう黙ってはいられませんね……おのれ浮気相手の猟兵! 勝負です! 私の愛を取り戻すために!」
なんでこうなった。
とにかく、最終決戦と相成った。敵は──『浮気相手』の猟兵にブチ切れている「鮮血の女王」だ!
キレているのでまともな説得に応じてくれるかどうかはわからないぞ!
また、それに加え……そもそも、エリクシルと本当の意味で和解ができるかどうかも、誰もわからないのだ。あるいは、本当に倒してしまった方が世界のためなのかもしれない。
選択は──猟兵次第だ。
ダーティ・ゲイズコレクター
…勝負?
今、貴女…勝負とおっしゃいましたね?
魔王である私に勝負を挑むということは貴女は勇者ですね!?
({ダーティ・ウイング}をマントのように翻しながら悪そうな顔で高笑いをする)
我が名はダーティ!ダーティ・ゲイズコレクター!
血に飢えし悪鬼共が跋扈する常闇の地に君臨せし邪なる王なり!
燭台の灯の如き儚い輝きを以て我に挑みしその蛮勇なる精神ごと
骸の海の底へ叩き堕としてくれようぞ!
(高らかに宣言した後ジャンプして『空中浮遊』しながら{ゲイズ・パワー}を纏い赤紫色に輝く)
これはほんの挨拶代わりだ!
受け取るがいい!
邪なる王に潜む悍ましき穢れの澱よ!烙印刻む矛と成れ!
【醜悪!邪王穢澱烙印槍】!
「おのれ浮気相手の猟兵! 勝負です!」
──その「鮮血の女王」の言葉の響きが消える間もなく、というかむしろ食い気味に。
「……勝負? 今、貴女……勝負とおっしゃいましたね?」
ダーティ・ゲイズコレクター(Look at me・f31927)の瞳がギラリと光った。
「え? そ、そうです……勝負を……」
ダーティの強い語気に、猟兵に噛みついたはずの女王でさえもが思わず一瞬怯む。そこへさらに傘に掛かって、ダーティはずいと前に出た!
「魔王である私に勝負を挑むということは! ──貴女は勇者ですね!?」
「なんて!?」
思いもよらぬ論理展開に、女王は思わず目を見開く。だが、ダーティの舌鋒は火を噴いて止まらない!
「そう、そうだったのです! 凶悪で極悪で劣悪で最悪な魔王たるこのダーティ・ゲイズコレクターに、唯一足りなかったもの、それは──勇者の存在だったのです! 勇者がいるからこその魔王! 魔王がいるからこその勇者! すなわちそれは車の両輪、運命共同体にして光と闇の綾なす表裏一体なのです! 勇者がいなければ魔王は成り立たない! そこが私の問題だったのですね!しかし今ここに、私はついに勇者を得ました! さあ、魔王と勇者の運命輪舞を雄々しく美しく奏でようではありませんか!」
「ダーリンなんかこの人怖い!」
思わずカレシにすがりつこうとする女王を、ダーティはしかし厳しく叱咤した。
「何をしているのです! それでも勇者ですか! 魔王たる私の強大さに恐れおののくのはわかりますが、それを勇気で乗り超えてこその勇者なのです!」
「いや私エリクシルですからね!? どっちかといえば、世界のために戦う勇者なのはあなたたちのはずではありませんの!?」
「何を言うのです!」
びしっとダーティは気迫に満ちて女王を指さす。
「あなたは、なんのために戦っているのですか!? 愛のためでしょう! 愛のために戦うならそれはまあ大体勇者です! そして私はその愛を邪魔する存在ゆえに魔王! 何も間違っていません!」
「あれっ何かそういわれるとそんな気がしてきました……」
「そうでしょう! ではもう一度最初から始めますよ! ちょっと高いところ登りますね、失礼……よいしょよいしょ……」
「あっはい、お足元、お気を付けて……」
なんか女王もその気になり始めたところで、ダーティはよっこらせと高台によじ登った。おもむろに彼女は鮮やかにマントを翻し、高らかに哄笑を響かせつつ眼下を睥睨、凛然と宣告する。
「こほん……あえいうえおあお……よし! 我が名はダーティ! ダーティ・ゲイズコレクター! 血に飢えし悪鬼共が跋扈する常闇の地に君臨せし邪なる王なり! 燭台の灯の如き儚い輝きを以て我に挑みしその蛮勇なる精神ごと骸の海の底へ叩き堕としてくれようぞ!」
「そうはいきません、魔王よ! かけがえのないわが愛を守るため、儚くとも永遠なるこの想いの輝きを絶やさぬために──私は戦います!」
言うまでもないが今一度確認しておくと、前者が主人公で後者が敵役である。何この何。
「ふっふっふ、よくぞ言いましたね、勇者よ! では勝負です! とうっ!」
ダーティは風を引き裂いて天空高く跳躍! その総身に満ちたエネルギーが今、赤紫に光り輝き煌めいて鮮やかな軌跡を描く! そう、これこそが彼女の能力!
「これはほんの挨拶代わりだ! 受け取るがいい!『邪なる王に潜む悍ましき穢れの澱よ! 烙印刻む矛と成れ!──醜悪! |邪王穢澱烙印槍《ジャオウアイデンラクインソウ》』!!」
だが女王も怯まず退かぬ! ダーティの赤紫に対し、女王の全身……っていうか「全首」から真紅の輝きを迸らせて美麗に飛翔する!
「さすがは魔王! 見事なパワーです! しかし私の愛の力とて負けるわけにはいきません! 行きます、『鮮血光線』!!!」
おお、魔王が赤紫なら勇者は真紅! 何たる闇夜に煌めくエクスタシーたる空中の華麗にして熾烈なる激突か! 両者の輝くエネルギーが天空で二度、三度とぶつかり合い、しのぎを削り、空間すら悲鳴を上げるほどの衝撃が天地を揺るがせる! これこそまさに魔王と勇者の間に繰り広げられる最終聖戦と呼ぶにふさわしき戦い!
「見事ですね勇者! それでこそ我がライバルたる勇者です! しかし! 勝負は既に私の勝利です!」
「なんですって魔王! まだ決着はついていませんよ!」
虚空で激しくエネルギーの奔流となり双方互角の勢いでぶつかり合いながら、しかしダーティは不敵な笑みを浮かべていた。そう、凶悪で極悪で劣悪で最悪な笑顔を!
「なぜなら! 私が勝てばそのまま私の勝ち! そしてもし私が負けても、勇者に倒される魔王という役割を完璧かつ完全かつ絶対的に果たしたことになるので巨視的大局的に見て私の勝ちなのです!」
「なんですかそれ!? ずるくないですか!?」
「その通り、ずるいのです! なぜなら私は魔王だからです! いやぁワルいですねえ!」
「それ言い出すと誰も勝てないじゃないですか……」
ドン引く女王に、ダーティは魔王ならではの完全勝利を告げる高笑いを響かせ続けるのだった。
「ふははははははは! あっ笑いすぎてちょっと酸欠……げほげほ」
大成功
🔵🔵🔵
数宮・多喜
こンのバカップルどもがァ!?
二人のイチャつきで勝手に周りや世界を危機に追い込むんじゃねぇよ!
わーってんのかそこんトコ!
そう言うのは映画やドラマで間に合ってんだから現実に引き起こすんじゃねー!
その物騒な光線も飛ばすなって必死で躱しながら『コミュ力』でツッコみ続ける!
鮮血の女王さんよ!
さっきの告白玉砕虐殺会場を見ただろうがよ!
アンタのカレシの愛はマジモンだ!
それに応えようとしてるアンタの愛はどうなんだ!?
浮気をしてないって必死で訴えるカレシを信じられないほど、
アンタの愛ってのは浅いのかいッ!?
あーもう兎に角そこだけはきっちり主張する!
あとはみんな任せた!
「グワーッ!? こンのバカップルどもがァ!?」
数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)は、周辺に吹き飛ぶ瓦礫を、爆裂する岩盤を、ギリギリで回避しながら決死の面持ちでスーパーカブを疾駆させる! その様はあたかも、余っていた火薬を全部使いきってしまおうとして地形を変えてしまうくらいの大爆発を起こしてしまった特撮映画の如しだ!
そう、彼女の頭上から雨あられのように攻撃を乱れ撃ってくるのは「鮮血の女王」に他ならない!
「鮮血光線! 鮮血光線! 鮮血こうせーん!!!」
「でええい、二人のイチャつきで勝手に周りや世界を危機に追い込むんじゃねぇよ! わーってんのかそこんトコ!」
「鮮血! 鮮血鮮血鮮血ぅぅぅ!!」
「うわあああ!? そう言うのは映画やドラマで間に合ってんだから現実に引き起こすんじゃねー! その物騒な光線も飛ばすなぁ!!」
「せーん! けーつ! こーう! せーん!!」
「話ィ聞けー!」
必死で呼びかける多喜だが、頭に血が上った(まあ頭しかないが)女王は、多喜の言葉も耳に入らないようだ。
「ちっ! まずは距離を詰めねぇと……!」
多喜は決意を固めると、カブの後輪を軸に全力で超高速旋回を始めた! ギャリギャリギャリ! おお見よ、爆音とともに、大地が削れ、砂塵が濛々と沸き立って戦場一帯を覆い尽くす煙幕と化したではないか。
「うっ、これは……!?」
砂煙の中に多喜を見失った女王の動きが一瞬止まった。そこへ。
「スーパーカブ・ブレェェェェイクッ!!!!」
コンクリートの壁すらぶち破るほどの大迫力で、多喜のスーパーカブが跳躍し激突した!
「ンアーッ!?」
派手にぶちのめされ、女王は凄まじい勢いでゴロンゴロンと転がっていく。それはもう生首なので一度転がりだすとどこまでも転がる!
「ええい、生首だと思って人をおもちゃにして弄ぶとは!」
なんとか必死に勢いを止めた女王だったが、そこへ。
「女王の意気地なし!」
ばちーん!
サイキックエナジーを纏った多喜の全力の平手打ちが女王の頬を襲った!
「ンアーッ!?」
せっかく止まったと思いきや、またしても女王はごろごろと転がっていく!
そんな女王に、多喜は熱く激しく叫ぶように呼び掛けた。それは炎のように燃え上る魂の響き、激流のようにほとばしるスピリットの絶叫だ。
「鮮血の女王さんよ! さっきの告白玉砕虐殺会場を見ただろうがよ! アンタのカレシの愛はマジモンだ! ──だが、それに応えようとしてるアンタの愛はどうなんだ!? 浮気をしてないって必死で訴えるカレシを信じられないほど、アンタの愛ってのは浅いのかいッ!?」
「はっ!?」
多喜の叱咤に、思わず女王は電撃に打たれたかのように立ちすくむ。いやまあ、実際電撃めいたサイコエナジーに打たれたのだが。
しかし、今女王を竦ませたそれこそが多喜の能力に他ならなかった。
即ち──相手の心に生じた小さな罪悪感を拡大しその痛みを植え付ける、『|道説く陽光《テンモウカイカイソニシテモラサズ》のユーベルコードである。
「そ、それを言われると……しかし、恋をしたことがあれば、貴女もわかるはずです。恋すればするほど、乙女心は不安におののき、怖れで震え、小鳥のように怯えてしまうということを。その吐息の切なさを、恋をしたことがあるなら誰しもが」
「え!? お、おう、そそ、そうだな! わ、わかるよ! わかるともさ! いやー恋愛はなー、何度もなー、してきたからなー!」
思わず口ごもってしまったことは多喜の名誉のためにあえて指摘しないでおこう。
「してるじゃねえか! ……こほん。だがよ、だからこそ、愛ってのは戦いなんじゃないのかい。今アンタがしてるような誰彼構わない周りへの戦いって意味じゃねえ、自分自身との戦いさ! 自分の不安、自分の猜疑心、自分の嫉妬心と戦って、それを何よりも強い思いの力でねじ伏せられるかどうかの戦い! それがほんとの愛ってもんじゃないのかい!」
「はうううっ!!」
女王は多喜の深く激しく、しかもその中に強い励ましのこもった言葉に全身を震わせた。全身っていうか生首だが。
「そ、そうでしたね……おっしゃる通りです。お言葉、身に沁みました。身っていうか首ですが。感服しました、さぞかし多くの美しく華麗な恋を潜り抜けてきた経験豊富なお方とお見受けします……」
「え!? お、おう、そそ、そうだな! ももも、もちろんいろんな経験をしてきたさ! そりゃもう両手の指では足りないくらいね!」
思わずドモってしまったことは多喜の名誉のために伏せておこう。
「だからしてるじゃねえかー!」
「さすがです、猟兵様。いえ、今からは──恋愛の大先輩! 猟兵センパイ様と呼ばせてください!」
「えっいやその気持ちはありがたいけど別にアタシはそんな……」
「これからも恋の迷路に迷い込んで困ったときは相談させてください! 恋の経験豊富なセンパイ様!」
「いや待て! それは他のみんなに任せ……おい逃げるなぁぁ!?」
しーらね、とばかりスタコラサッサとトンズラしていく猟兵たちの背中に、虚しく多喜の声が響き渡るのだった。
大成功
🔵🔵🔵
サリー・オーガスティン
■SPD
彼氏さんとよろしくやってくれ、とは思うけども、これも願いを「叶えた」結果だし、エリクシルの団体様が来られてもここは厄介だしね。
申し訳ないけれども、ここはキッチリと倒してしまうよ
【UC】でちょっとジェイクに無理してもらおう
[操縦、オーラ防御、騎乗、地形の利用]で事故らないよう守りを固めつつ、[スナイパー、一斉発射、誘導弾、2回攻撃、零距離射撃、援護射撃]で撃つ!
エリクシルの女王の姿に変身するところ何だろうけども、これでもまぁ彼氏さんが驚いて覚める、等と言うことは無いだろうしね
「恋路を邪魔するような無粋な真似は、本当はイヤだけども、世界に与える影響が大きすぎるからね」
※連携アドリブ共歓迎
「さあて……行くよ! ジェイク!
きゅっと唇をかみしめ、決意に満ちた瞳を輝かせて、サリー・オーガスティン(鉄馬の半身・f02199)は凛然と面を上げ、鋼の「|愛馬《マシン》」に声を掛けた。轟然! 轟くエンジン音はあたかも千里を駆ける駿馬の雄々しきいななきの如し。
見据えるは眼前なる難敵──鮮血の女王だ。
サリーの決意はすでに固まっていた。
「申し訳ないけれども、ここはキッチリと倒してしまうよ」
『申し訳ない』──そう、その気持ちはサリーにもある。だが、それでも……否、それだからこそ。
サリーは宇宙バイクのアクセルを全開に──突撃を開始した!
「速さこそ、ボクにとって最高の居場所さ! |Cloud Nine《クラウドナイン》!!」
風邪も音も光さえも置き去りに、虚空を引き裂いて、サリーのバイクは全てを超えた「速さ」そのものの化身と化して突っ走る!
「くっ、速い!?」
「鮮血の女王」も対応せんとするが、さしもの超常存在たるエリクシルといえど、スピードの次元の体現者たる相手の走りには間に合わぬ。サリーの放ったアームドフォートの砲火が、まともに彼女を直撃した。
──が、おお、なんたることか。鋼を貫き大地を撃ち抜くはずの一撃を受け、しかし微動だにせぬ! 「鮮血の女王」のその妖艶なる姿態は!
姿態? 然り! 見よ、その不気味なる首級のみの存在であったはずの『女王』は、今や──真紅に光り輝く華麗なる体を備えているではないか!
「これこそが私の完全体。この体の前には、いかなる傷を負わせようとも私が揺らぐことはありません」
まさにこれが『女王』の恐るべきユーベルコードだ。一切の負傷の影響を受けないエリクシルの前に、サリーはなすすべがないのか。
いや、そんなことはなかった。
サリーは小さく微笑んでいたのだから。
「少し、無理してもらうよ……ジェイク!」
その言葉と同時、宇宙バイクのカウルがパージされ、さらなる加速の高次元へと突入する!
「いかに速くなったとしても同じこと、私に通用はしないと言ったはずです」
「さあて、どうかな!」
サリーの声は、速さの彼方に消えて。
一瞬すらまだ遅い刹那の後に──サリーは『女王』を通り過ぎていた。
「?」
不審な表情を浮かべる女王。だが!
「う、ああああ!?」
見る間に彼女は苦しみだしたではないか! 何ゆえか、一切の負傷を無効化する能力でありながらも!
「僕の極超高速が生み出した大気の圧縮は衝撃となって──君の体に「波」となり伝わった。君の体の表面に傷をつけたのではなく、その内部に沁みとおる波となってね。その波は君の体内を駆け巡り、その機能を狂わせ、異常を引き起こしたのさ。それは「負傷」でも「疲労」でもない、ゆえに……君の能力では防げない!」
静かに語るサリーの前で、苦しむ女王の体に無数のひびが入り、真紅の雨のように砕け散った。
大地に倒れ伏した『女王』を見やりながら、サリーは長い睫を伏せる。
「人の恋路を邪魔するような無粋な真似は、本当はイヤだけども、世界に与える影響が大きすぎるからね」
沈痛なサリーの声は、あたかも荘厳なる鎮魂歌のように響いて……。
「ハニー、ハニー! 大丈夫かい!しっかりするんだ!」
「ああ、ダーリン、ごめんなさい……頑張って体を作ったのに、壊れてしまいました……」
「気にすることはないよハニー! 確かにさっきの体はきれいで魅力的だった、でも一番きれいで魅力的なのは君の心なんだから!」
「まあダーリンったら、恥ずかしいです、うふふ」
「ほんとのことさ、あはは」
「いやちょっと待ってよ! たった今までガチシリアスな展開だったじゃないか!?」
『女王』に取りすがって介抱しているカレシと、その彼にここぞとばかりに甘える『女王』のイチャイチャぶりが突如眼前に繰り広げられ、サリーは思わずツッコまずにはいられない。
だがすまない、前半のシリアス展開は全て、後半のための前フリだったのだ。許してくれるだろうか、許してくれるね、グッドスピード。
「いや、っていうか、ツッコむも何も、あの二人こっちの言葉全然聞いてないんだけど……」
その通り、女王もカレシも、もはや周囲の存在など見えず聞こえぬかのようにイチャついている。これはまさに、恋する二人のみが展開することができるという伝説の絶対完全結界、いわゆる──「二人の世界」に他ならない。
だがその時サリーに電流走る!
「はっ、そ、そうか、「世界」に影響を与えないためには、「二人だけの世界」を構築してしまえばいいというのか! ……って、そんな馬鹿な!?」
サリーは思わず頭を抱える。
だが──他者に影響を受けず、また与えない、二人だけの結界、という考え。
もしかしたら、それはこの問題の解決に一筋の光明を指し示すものかもしれない、とサリーは苦笑しながらも思うのだった。
「……まあ、エリクシルの団体様がやってこられたら厄介だけど、もしそうはならない可能性があるのなら……カレシさんとよろしくやってもらうのもやぶさかではない、かな」
大成功
🔵🔵🔵
試作機・庚
【アドリブ改変・連携大歓迎】
まって?間に挟まる趣味はないんデスけど?
ええい!話をきけい!
とりあえずおとなしくさせないとデスね…
二人の恋路を邪魔するつもりはないデスよ!
馬に蹴られたくないデスから!
オブリビオンとも違って居るだけで悪ってわけでもなさそうデスし!
あっごめんお前のこと悪く言ってるわけじゃ…(キャバリアを見ながら)
ああもうややこしい!
使うUCは【英雄の帰還】
使う対象はそこの生首と彼氏さん
本当に愛し合ってるなら帰る場所は相方のいるところデスから多分何も起きないと思うデスけど…
本当に愛し合ってるならついでに売ってたボディもあげるデスよ(不良在庫処分)
…監視は必要そうデスけどね
敵対するなら殺す
「まって? 間に挟まる趣味はないんデスけど? ええい! 話をきけい!」
試作機・庚(過去を裏切った者・f30104)の言葉も聞かばこそ。嫉妬に狂った「鮮血の女王」はあたりかまわずというか当たるを幸いと言うか、とにかくでたらめに暴れまくっている。その真紅の髪を触手のように蠢かせ、鋼でできた鞭ででもあるかのように大地を撃ち砕き、風を斬り裂き、まさに嵐のような苛烈さだ。
「だーかーら、二人の恋路を(どかーん!)邪魔するつもりは(どごーん!)ないデスよ! 馬に蹴られたくないデスから(ずがががーん!)! いやほら、オブリビオンとも違って居るだけで悪ってわけでもなさそうデスし!(どごごごごーん!」」
ああ、なんたることか、庚の必死の声も、周囲を破壊しまくる『女王』の攻撃音に妨げられてろくに聞こえはしないのだった。そればかりか、
「ぐえー!? 誰デスいきなり人をドツクのはって、あっごめんお前のこと悪く言ってるわけじゃ……やめ! やめるデスよ!? いだだだだっ!」
うっかり口を滑らせてしまった庚の言葉を聞き逃さなかった相棒たるキャバリアがへそを曲げ、庚をしばき始めてしまう始末!
「グワーッ! こっちを避けるとグエーッ! こっちの被害がウボォーッ!」
女王の攻撃とキャバリアのツッコミが庚一人を対象に暴の二重奏となって吹き荒れる! なんたることか、いかに庚といえども、この期せずして起きた両面攻撃にどう対処せよというのか!
「ええいややこしい! もうめんどいからこれで終わらせるデスよ、『|英雄の帰還《サマー・トワイライト》!!』
半ば自棄になってぶっ放した庚のユーベルコードが、その時、鮮烈に展開された!
おお、それこそは……
あの遠い夏の日の思い出。
時の過ぎるのも忘れて波と戯れた追憶の彼方。
いつしか日は名残を惜しむかのような鮮やかさで焼け落ちていき、長い影だけが波打ち際で飛沫と踊る。
ああ、帰ろう。もう帰ろうと、一人赤い空を孤独に飛ぶ海鳥の歌が心に響く。
安らぎの我が家に、暖かい団欒の中に、帰ろうと。
その道行を忘れてさえいなければ──。
みたいなポエムっぽい光景が繰り広げられたとお考えいただきたい。
にしても、庚のユーベルコードであるから彼女の意識の具象化であるわけだが、なんだよー結構ろまんちっく乙女なんじゃん庚ーこのこのー。
「どういうスタンスのツッコミなんデス地の文=サン! ……こほん、それはさておき、私のUCは対象者をその帰るべき場所に戻す力。女王とカレシさんに対して使いマシタから、二人の愛が本物なら、結ばれてメデタシ・エンドになるのは間違いないデスよ!」
ああだがしかし。愛はかくまでに試しを求めるというのか。
「ダーリン! ……あら!?」
「ハニー! ……あれ!?」
女王とカレシ、二人に注ぎ込まれたユーべるコードの力は、まぎれもなく二人をその真実の住処へと帰還させた。……つまり、その瞬間まで相手がいた、まさにその場所へと。
その結果起きたことは。
──ふたりの位置が瞬時に入れ替わった……だけである。
「ダーリン!」
「ハニー!」
だが二人の愛は揺るがない、再びUCの力による転移が発生する!
……その瞬間まで相手がいたその場所へ。
つまり、また入れ替わるだけの結果に。
「ああっ、ダーリン! すぐ目の前にいるというのに、あなたに触れられません!」
「ハニー、こんなに側にいるのに、君を抱き締められないなんて!」
入れ替わる。入れ替わる、入れ替わる入れ替わる。そして──決して交わらない。手を伸ばせば触れられるほどすぐ近くにいるのに、その最後の空間だけが絶対の拒絶を示すかのように二人を隔てる! あまりにも酷薄にして無情な運命の皮肉! 二人はもう決して相手に触れられないというのか!
「えっあれっ……違っ私そんなつもりデハ……!」
「おのれ猟兵! やはり私たちの邪魔をしようというのですね!」
「何でそうなるデス!?」
アブナイ! このままでは再び猟兵対鮮血の女王の仁義なき大激突が始まってしまうぞ!
だがその絶体絶命の危機を救ったのは──。
「これを見るデスよ! これはさっきの屋台であなたたちが見ていたスぺアサイバーボディデス! アナタたちの愛は終わっていない! アナタたちの気高い愛は、決して絶やしてはならないのデス! 女王サンによくお似合いのスペアボディはここデス! 皆、ボディのもとへ集え!!!」
全宇宙へ向けて演説するがごとき言葉と共に、庚は先ほど売っていたサイバーボディを取り出した! おお、まさにそれは起死回生の一瞬。『女王』とカレシの意識が、その刹那、同じ一点……ボディに集中したのだ!
同時……。
UCの効果が発動し、女王とカレシはサイバーボディを中心に再び邂逅することができたのだ。何たる愛の奇跡か!
「ダーリン!」
「ハニー!」
ひしと抱きしめ合う二人を見て、思わずホッと胸をなでおろす庚だった。
(まあ、このボディに仕込んだモニターを通じて、しばらく監視している必要はありそうデスけどねー、敵対するなら殺さないとデスし)
もちろんそのモニターにひたすら延々と報告され続ける二人の甘酸っぱうるせえイチャコラを、砂を吐きながら責任もって監視してもらうのは庚の役目であるが。
「なんでそうなるデスか!?」
大成功
🔵🔵🔵
ルエリラ・ルエラ
【アドリブ・改変大歓迎】
これだから生首はー
でもこれもモテモテ同盟を組んだよしみ。ちょうどこういう状況に適したUCあるし、話を聞いてあげよう
そんなわけで落ち着かせるために語りかけるよ
「ふっ、確かに私の可愛さとかっこよさは全世界1…でもまずはこれをお食べ」
とさりげなく【どこでも芋煮会の会場設置】を発動して『ルエリラ特製の芋煮』を女王に差し出すよ。UC中はお腹が空くからね。…お腹あるのかな?敵意もUC後も永遠にほぼなくなるのでみんなも安心
誤解を解いて、今後彼氏はもちろん人とも仲良く暮らしていくというのなら手出しする気はないよ
ただ仲良く暮らしたいなら生活は改善してもらわないといけないね
彼氏にはちゃんと働いてもらって、生首の人は少子高齢化をどうにかするよう結婚推進活動は当然として、今後もUDCが来たら今回みたいに芋煮の作り方とモテる極意を伝えて追い払ってもらおう。もう来ない気はするけど
忙しくなるだろうけど多少会えない時間がある方が燃えるはずだからセーフ
生首がモテるのは遺憾だけどハッピーエンドが一番
「わわわ、んもー、これだから生首はー」
嫉妬と激怒に我を忘れた「鮮血の女王」が繰り出す怒涛のような攻撃を身軽に鮮やかに回避していきながら、ルエリラ・ルエラ(芋煮ハンター・f01185)はどうしたものかと首を捻っていた。
最初はエリクシルを倒すつもりでこの事件に来たとは言え、なにも無理に事を荒立てることもない。穏やかに収まるのならばその方がいいのだが。
「しょうがない、これもモテモテ同盟を組んだよしみだしねー、ちょうどこういう状況に適したUCあるし、話を聞いてあげようか!」
モテモテ同盟! それは激ヤバモテエルフたるルエリラ(注1:本人の申告に基づく)が、『鮮血の女王(注2:実際に彼氏持ちである)』に対し、一方的に言っているだけのなんかそういうのである!
「ふっ、確かに私の可愛さとかっこよさは全世界一……でもまずはこれをお食べ」
ルエリラは魔力を集中させるとこれを一気に展開。瞬時、周辺空間一帯が、コトコトと煮込まれる小気味のいい音と、かぐわしくも食欲を刺激してやまない香りに満ち溢れた。そして目の前には巨大なる芋煮鍋が現出! かの巨大ショベルカーを使うということで知られる山形の芋煮大会に匹敵するほどの規模だ。今の場合は、ショベルカーの代わりにルエリラのサメタンクを使用しているが。
これこそ、いついかなる時と場合でも、その場に問答無用かつ不条理に芋煮会会場を出現させるルエリラのユーベルコード、その名も『どこでも芋煮会の会場設置』に他ならない! そのまんまで実にわかりやすいネーミングである!
(この芋煮を食べてくれれば気持ちは落ち着くし、敵意もなくなるんだよ。めでたしめでたしだね。さすがは芋煮、芋煮は世界を救い平和をもたらしあまねく世を照らす光だね)
うんうん、とルエリラが芋煮の素晴らしさに改めて感嘆していた、しかしその時。
「いや芋煮はさっき食べましたからお腹いっぱいです」
なんたることか! 『女王』はすげなく芋煮の誘いを断り、また攻撃を開始したではないか!
「さっき!? あ、そっか!」
ルエリラは思い出す。居場所のわからなかった『女王』を見つけ出すために流しの芋煮屋さんに変装し、その才におびき出された『女王』に、芋煮を振舞っていたのだ! 詳しくは第一章を参照されたい!
ともあれ、その時すでに芋煮を食べてしまっていたために、今の女王は満腹状態、UCが効かないというのか!
「お腹いっぱいって、でも女王は生首なんだからお腹ないでしょ! お腹がなければお腹いっぱいにもならないはずだよ! かんぺきなりろんだよ!」
素晴らしい論理武装で反論するルエリラ。おおしかし! ルエリラは今回のプレイングをWIZで選択していた! ゆえに、『女王』もまたWIZで対抗する……すなわち、『完全なる肉体を持つエリクシルの女王に変身する』能力だ。
「つまり今の私にはお腹があるのです。お腹があるのでお腹いっぱいになるのです。かんぺきなりろんです」
「し、しまったー!」
これぞ論理武装返し! ぐぐ、と進退窮まったルエリラは、次の瞬間……。
「えい」
先ほど芋煮会乗用に召喚したサメタンクを使い、カレシを捕縛すると猛ダッシュで疾走を始めたのだ!
「う、うわあああ!?」
「ちょ、何をするのです! やはりダーリンを奪う気なのですねー!」
慌てふためくカレシと『女王』を尻目に、サメタンクは大地を蹴立て、走る! 走る!
「逃がしませんよ!」
だが完全なる肉体を得た女王もまた真紅の閃光となって激走! 猛然と風を切って追跡し、今にもサメタンクは追いつかれそうだ! だが!
「サメスカイ、ゴー!!」
瞬時にサメタンクは跳躍したかと見えるや、勇壮なる猛禽のごとく天空を飛翔! サメは空でも宇宙でも生息しているものである、今やこれは常識!
「うわわーっ!?」
カレシは目を回しかけているが気にしない!
「ええい、こちらだって!」
しかし『女王』もさるもの、真紅の宝石でできた輝かしい翼を背中に生やすと、彼女もまた天へと昇る! そう、「完全なる肉体」を手にした女王もまた、その完全性ゆえに、あらゆる環境に適応するのだ。
今度こそ追いつかれそうになった次の瞬間。
「サメマリン、ゴー!」
今度は荒波渦巻く大海嘯へとサメタンクは飛び込んでいく! なんということか、サメは海でも生息できるというのか! これこそ恐るべきサメタンクの力である!
「アババーッ!? ゴボボーッ!?」
その一方でまたしてもカレシは大変な目に遭っていたがやっぱり気にしない!
「逃がしませんよ!」
されど「完全肉体」を有する「鮮血の女王」は、今度はヒレを生やし海中へと鮮やかにダイブ! 水中での目まぐるしいチェイスが展開された!
「そしてサメタンク、ゴー!」
空と海をめぐり、再び陸上タイプとなったサメタンクがギャリギャリギャリとキャタピラを軋ませ大地を走る、が、そのキャタピラは静かに止まった。
「つ、ついに観念しましたか猟兵、ぜーはー。ダーリンを返すのです、ぜーはー」
肩で息をしながら、「鮮血の女王」はギラリとしたまなざしでルエリラを睨みつける。だがそんな女王に、ルエリラはそっと椀を差し出すのだった。
「さ、一杯走って飛んで泳いで、さぞかしお腹もすいたよね。この暖かい芋煮を食べるといいよ。カレシさんもどうぞ」
おお、然り、ルエリラがカレシを攫い、サメタンクを駆って陸海空を激走したのは、すべて──『女王』に激しい運動をさせ、彼女を空腹にするためだったのだ!
「特にUC中はお腹が空くからね」
そうだっけ。でも能力を使うのでそういうものかもしれない。
「くっ、これは……なんというこうばしい香りでしょう……」
思わず『女王』、そしてカレシは芋煮を口にし、味わっていかざるを得ない。その、一流楽団が奏でる名曲や、世紀を超えて鑑賞される名画にも匹敵すべき芸術的味わいを備えた肉が、ネギが、そして芋が……、喉を一口ずつ通っていくたびごとに、『女王』の戦意と激昂は少しずつ治まり、穏やかで安らかな気持ちが取り戻されていく。荒ぶる気持ちは溶けて消え、そこにあるものはただ美食への感謝、美味への愛。そう、これがUCの力、いや芋煮の力なのだ。
「今後カレシさんはもちろん、人とも仲良く暮らしていくというのなら手出しする気はないよ。まあ、多少生活は改善してもらわないといけないけどね」
ルエリラは落ち着いた様子の女王にお代わりを振舞いながら告げる。カレシにはちゃんと働いてもらうこと、また他のUDCやエリクシルが来た時の対応など、問題は山積だ。しかし、ルエリラは悲観しない。なぜなら、いつだって芋煮はそこにある。そして芋煮の本質は、──団欒と絆と愛なのだから。
「忙しくなるだろうけど、多少会えない時間がある方が燃えるはずだからセーフってことで。ハッピーエンドが一番だからね。やれやれ、また芋煮が世界を救ってしまったね」
大成功
🔵🔵🔵
ドゥルール・ブラッドティアーズ
……何がハニーよ。
命懸けで戦う彼女を命懸けで止めもせず
猟兵の攻撃から庇いもしないくせに。
半端な気持ちで恋人を欲しがるんじゃないわよ!!
『快楽の檻』で無数のオブリビオンの霊が
私を中心に四肢を絡め合い、直径131mの群体淫魔に。
オーバーロードで黒炎の巨翼も生え
【召喚術】で更に霊を召喚して憑依【ドーピング】
人間とエリクシルが愛し合うだけで揺らぐ脆弱な世界。
他者の幸福を妬んだり生産性で恋愛を語る浅ましい人間。
愛する者を命懸けで守らない屑。
……いい加減、頭に来たわ
今の私の力は自分でも測り知れないけど
油断せず【念動力】で願望宝石エリクシルを【盗み】
弱体化した女王に655km/hの【空中浮遊・空中戦】で接近し
群体内に取り込み【怪力・捕縛】
抵抗しても【継戦能力・激痛耐性・気合い】で蚊ほどにも感じない
これが最後のチャンスよ。
お前に人間としての生を棄てる覚悟があるなら
私の中で彼女と永遠に過ごさせてあげる
もし拒めば
女王だけ【慰め・生命力吸収】で救済し
男は【呪詛・全力魔法】で一生独身に。会社もクビになってしまえ
「……何がハニーよ」
底知れぬ暗黒の深淵から響くような呪詛に満ちた声が周囲を染める。いや、それは果たして呪いだろうか、怒りだろうか。それよりももっと深く狂おしい、魂の悲哀なる慟哭が聴こえないだろうか。
──ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)の。
「えっ……?」
思わずカレシは振り向き、慄然とする。ドゥルールが己に向けるまなざしの、その虚空に空いた暗渠のような昏い瞳に。
「……命懸けで戦う彼女を命懸けで止めもせず、猟兵の攻撃から庇いもしないくせに。半端な気持ちで恋人を欲しがるんじゃないわよ!!」
それは怒り。それは涙。それは怨嗟。それは世界のすべてに対する、ドゥルールの激情。歪んで軋んだ世界に対する、狂える吸血姫の憤怒。
「人間とエリクシルが愛し合うだけで揺らぐ脆弱な世界。──他者の幸福を妬んだり生産性で恋愛を語る浅ましい人間。──愛する者を命懸けで守らない屑。……いい加減、頭に来たわ……!」
ドゥルールの視線は確かにまっすぐにカレシに向けられている。だが、彼女の牙を剝くべき相手はただ一人の彼個人に限られたものではない。愛が愛ゆえの純粋な愛としてだけの存在でさえ許さぬものに──あらゆる「何か」に対する、絶対的で根源的な、尽きることなき咆哮だ。孤独な影を引きながら叫ぶ血の歌だ。
「た、確かに……そちらの方の言う通りかもしれない。僕は思わず足がすくみ、君を危険から守ることができなかった……!」
地にがくりと膝をつき、苦し気に頭を抱えて呻くカレシに、そっと赤い影が寄り添う。
「何を言うのです、ダーリン。あなたはほんのたった今まで、平穏と安寧の日常の中にいた方。急に化け物どもに襲われたり、不可思議の力を持つ者たちに囲まれたりしたら、咄嗟の反応ができなくても仕方がありません」
血が滴るようなドゥルールの叱責に、硬い表情で反論したのは「鮮血の女王」──真紅なる|万能宝石《エリクシル》。
そんな『女王』に、ドゥルールは小さく苛立たし気に首を振る。
「貴女も、変にかばい立てをしない方がいいわ。そもそも、その男は……貴女と付き合っている時点で、すでに非日常に足を踏み入れているはずじゃない。『急に不思議な出来事が起きたから』なんて言い訳は通じないわ」
「えっ」
「えっ」
「……えっ?」
一瞬、きょとんとした表情がカレシと『女王』との間に流れ、僅かに遅れてドゥルールも怪訝な顔をする。
まるで想定になかったことを言われたような雰囲気の『女王』とカレシは顔を見合わせ……そして、くすっと微笑んだ。
「ああ、そういえば、君は人間じゃなかったんだっけ。忘れていたよ」
「もう、うっかりさんですね、ダ-リンは」
笑いあう二人の姿に、ドゥルールの顔にさえ、ぽかんとした間が浮かぶ。
──カレシは、『女王』がエリクシルであることをすら意識していなかったと。
ただ彼女の「存在」そのものとしてのみ認識し、そこに非日常の意識は全くなかったと。
……そう、言っているというのか。
異形のものが、異形としての誇りを、権利を認められる、というわけでさえない。
単に、そこに差異があると認識さえしない、当たり前に在るというだけの、……そんな世界。
月の光は星の光を差別しない。かといって、共存すべき、などと声高に唱えることもまたしない。ただ静かに、共に大地を朧に照らす。それだけのこと。
──それは、もしかしたら。
もしかしたら、ドゥルールが秘かに……無意識に……望んでいた世界なのでは……なかったか。
「いいえ、 私の望む世界は情熱と歓喜、快楽と熱狂で包まれた燃え上るような愛の世界! 不死鳥が己の身さえ焼き尽くしその灰の中から飛翔するかのような真紅の愛の! そう、見せてあげる──『|快楽の檻《サキュバス・レギオン》』!!」
激しく拳を握り締めると、ドゥルールは己の力を、いや情念を解き放った。泣き笑いのように歪んだ空間の中に無数の嬌声と甘い吐息が満ち溢れる。ドゥルールがこれまでに取り込み「救って」来た数知れぬほどのオブリビオンの霊が、うねり、のたうち、人の影をした触手とも言うべき姿と化してドゥルールを中心に絡みついていく。
『ああ、ルル、私たちを呼んだ?』『ふふふ、さあ、また愛し合いましょう、ルル、忘我の中で』『私たちの燃えるような、狂うような愛を謳い上げましょう……』
ドゥルールの体に絡みつき、耳元で熱くささやきながら、霊たちはさざめく波のようにドゥルールの体の美しいラインをなぞり、その喜びを共有していく。数限りないほどの豊かな肉がはずみ、たわみ、視界を埋め尽くすほどの白い肌が紅潮し、しっとりと濡れ、桜色の唇からこぼれる蜜が滔々と溢れて滴っていく。それはまさにドゥルール自身さえその力の果てをうかがい知ることができぬほどの淫魔の大群、いや──その巨大なる群れそのものが、一つの意志持った群体だ。
「これが最後のチャンスよ。お前に人間としての生を棄てる覚悟があるなら、私の中で彼女と永遠に過ごさせてあげる……」
衆にして一なるもの、一にして衆なるものと化したドゥルールは、容易く『女王』をその触手に取り込み、残ったカレシに対して世界が揺れるような声を降らせた。
もし相手が拒むのなら、全力の呪詛を叩き込むだけだ。
……けれど。
「……それ、今とあんまり変わらないんじゃないかな……?」
首を捻るカレシに、ドゥルールは思わず、「はぁ!?」と声を上げそうになった。
「いやつまり、会社にもいかなくていいし、彼女と二人きりでずっとお互いを見つめ合って語り合って抱きしめ合う生活ってことですよね。たぶんそれ、今とあんまり変わらない……」
「ふざけないで!? 崇高なる愛の試練をそんな怠惰な目的のためになんて!」
「怠惰っていうか結果的にそうなるってことで。うん、いいですよ、今とおんなじだし……、いや今よりもっといいか、隣の部屋から、夜遅くまでイチャイチャしないで、って苦情とか言われなくなるし」
「まあダーリン、そんなに私のことをお求めだなんて、恥ずかしいです、ぽっ」
「ははは、ついブレーキが利かなくなってしまうんだよね、ハニーといると」
「……はぁ」
深くため息をついたドゥルールは、やれやれとばかりにぽいと二人を開放した。
「貴女たちを下手に自分の中に取り込んだら、私の頭痛の種が増えるだけな気がしてきたわ……今はとりあえず勝手になさい。でも、その愛にもし不誠実と裏切りの匂いがしたら、私の呪いが必ずお前を捉えることだけは覚えておくことね」
「御心配はいりませんよ、なぜなら僕はすでに囚われているからです。いわば、ハニーへの愛という呪いにね! なんてね、あはは!」
「まあダーリンったら素敵、うふふ」
「……もうほんと勝手にして」
大成功
🔵🔵🔵
エテルネ・イミタージョ
上野・イオナ(f03734)と
なんか、どうするのよ、コレ?無茶苦茶な状況なんだけど。
まぁ、イオナがそうするなら手伝うわ。
UC【プロジェクト・ディーヴァ】使用
さてと、彼氏さん、|愛する人を怪人から救いたい《憧れの人の手助けをしたい》なら、ちょっとは根性を見せなさいよ。
和解したいなら|コッチ《彼氏さん》を立てた方がいいでしょ。
ソーシャル・レーザーにつけたカメラでキマイラフューチャーへ(住人から受けが良さそうだし、他エリクシルはまだ居ないので情報がもれなそうなので)配信開始。
適当に武器を持たせながら、UCで彼氏さんを強化させましょう。
変な嫉妬されないように隠れながらやらないとね。
後は鮮血の女王が彼氏さんの愛を再確認しながらも良い感じに弱体化してくれるといいんだけど。
※和解方向に向かわないなら行動はお任せします
※アレンジ・他の人との連携歓迎
上野・イオナ
エテルネ・イミタージョ(f36956)と
うーん、修羅場かな?
今までの行動的にアレだけど、エリクシルをほっといたらヤバいのは分かっているからね
とりあえず勘違いの暴走や猟兵との戦いの様子とか見た彼氏さんに改めて彼女をどう思っているか聞いてみようかな。
まだ、彼女を愛しているようなら、和解できるように頑張ってみよう。
UC【模倣侵略蔵書「『KKKK』会誌(創刊号)」】使用
ブレブレ達、猟書家がアリス・オリジンにおこなった力の強奪。情報が少なくても再現してみせましょうぞ。
代用に怪人エリクシルの力を宿し作り出すは簡易的な書架牢獄。他の怪人の力も使いながら意地でも鮮血の女王を捕まえに行く。
変な暴走して周りに迷惑かけないようになるまで弱体化出来ればいいけど。
※彼氏の愛が冷めてた時の行動はお任せします。
※アレンジ・他の人との連携歓迎
「やっぱりさ、囚われのお姫様……いや女王様を助けるのは伝説の勇者様だろ。王道ファンタジー風がいいと思うんだ」
「もちろんそれもいいけれど、同じ構図ならレーザー剣とビームガンを装備したヒーローが宇宙要塞を舞台に、なんていうスペースオペラも悪くないと思うわ」
「現代ミリタリーアクションでもいいんだよな。タフガイな主人公が恋人を助けるためにライフルやバズーカで無双、最後は爆発をバックに熱いキス。これだね」
「うーん、難しいわね……ね、あなたはどう思うの? あなた自身のことよ?」
「……え、え、え?」
上野・イオナ(レインボードリーム・f03734)と、エテルネ・イミタージョ(La vastiĝanta cibermondo・f36956)が額を寄せ合い相談している、なんだかわけのわからない話を急に振られ、カレシは頭上にクエスチョンマークを浮かべた。
そう、この事態の説明には、少々時間を巻き戻す必要がある……。
少し前。
瓦礫の影に身を隠したイオナとエテルネ、そしてカレシは、そっと向こうを覗き見ていた。そこには、真紅に輝く絶世の美女──「鮮血の女王」が、嫉妬に怒り狂い、我を忘れて暴れまわる光景があった。
「ダーリンをどこに連れ去ったのです猟兵! 出てきなさい! だいたい、あなたたちはすでにお似合いの連れ合いではありませんか! それなのにダーリンを連れていってどうしようというのです! さ、さささ、三人でお付き合いするとでもいうのですか! 愛に決まった形はないとはいえ、そ、それはやっぱりふけんぜんです! ふどうとくです! えっちなのはいけないとおもいます!」
「……とかなんとか言ってますが。修羅場だね」
「どうするのよコレ、って感じね。無茶苦茶な状況なんだけど。……とはいえ」
イオナとエテルネは顔を見合わせ、お互いに肩を竦めると、同じ見解を吐露した。
「「……実は女王さん、結構、素朴っていうか純情?」」
途端にカレシは目を輝かせてマシンガンのように言葉を叩きだす。
「そう! そうなんですよ! あんな気品に満ちた凛とした美しい姿をしていながら、実は彼女の性格はピュアで繊細で、初心なところもあって、でもそんなところもすごく魅力的っていうか可愛いっていうか可憐っていうかつまり」
「あー、おーけーおーけー。うん、よくわかったよ、君が彼女をどう思ってるかってことはね」
「ええ、心配はないみたいね、どうもごちそうさま」
苦笑を漏らしながらイオナはエテルネに視線を向けた。エテルネもくすっと微笑み、頷く。
「女王」の暴走した姿、あるいはUDCや猟兵たちとの苛烈な戦いの姿を目にしたことで、もしかしたらカレシの気持ちは変わってしまったのではないか……イオナとエテルネはそんな危惧を抱いていた。しかし、放っておくと延々と惚気を聞かされそうなこの姿を見れば、そんな心配は杞憂であったとすぐにわかる。
ならば、──あとは『女王』の気持ちを沈め、落ち着かせればいいだけだ。
……ということで冒頭に戻る。
計画をまとめたイオナとエテルネ、そしてカレシは……行動を開始した。
「『鮮血の女王』! そこまでだ! おとなしくしてもらおうか!」
まず飛び出したのはイオナ。繰り出すは恐るべきそのユーベルコード──『|模倣侵略蔵書「『KKKK』会誌(創刊号)」《デッドコピービブリオマニア・ナンバーゼロ》』だ!
「出てきましたね……うっ、その力は!?」
イオナに向き直った「鮮血の女王」は、思わず瞠目する。両手を十字に組み合わせたイオナが、真紅の破壊光線を発射した姿を見て!
おお、それこそはまるで、『女王』自身の能力──「鮮血光線」と瓜二つの力ではないか! そう、イオナの力は怪人の力を身に宿し再現するのだ!
「君の技はさっきまでの猟兵たちとの戦いで見せてもらった! 情報が少なくても再現してみせる! ──シュワッ、鮮血ウム光線ッ!」
「くっ、著作権料を払いなさい! 本家の力を見せてあげます、元祖鮮血光線ッ!」
『女王』も驚愕しながらも、咄嗟に自らの鮮血光線を撃ち放つ!
BAGOOONNN!!!
二条のまばゆい真紅の光が空中で大激突、周囲の空気をプラズマ化しながらもその威力は拮抗し、エネルギー同士が激しく押し合う! 完全に互角、だがイオナにはまだ奥の手がある!
「さすがだね元祖! でも僕は他の怪人の力も再現できる! そう、さっき戦ったUDCの力もね……そして彼女たちの力も偶然コピー能力だった。それも、何度も発射できる力! デュワッ、鮮血ウム光線×10!」
「えっそれってずるくないです……!? ンアーッ!!??」
さすがに10倍の威力を受けてはエリクシルといえどもひとたまりもない! 『女王』はイオナの光線を喰らい、激しく吹き飛ばされた!
「さあ、とどめだ!(棒読み)」
イオナが『女王』にとどめを刺そうとした(ように見えた)……しかし、その時。
「ま、待ってください! ……じゃなくて、待てぇい!」
「むっ、何者!?(棒読み)」
イオナの背後から声がかかり、彼は芝居がかって見得を切りつつ振り向いた。そこに立つ者は……おお、見よ、鋼に輝く超科学のメタルスーツに身を包んだ救世主──カレシ、いや、その名は!
「宇宙! ダーリン! カレシバン!」
(うわーメタルヒーロー系のチョイスかー、いいなー僕がやりたかったなー!)
とか思いつつ、イオナは大袈裟に驚いて見せる。
「か、カレシバンだと!」
「そうだ! 僕のハニーにそれ以上手は出させないぞ! レーザァー……ブレード!」
カレシ、いやカレシバンが抜き放った剣に閃光のレーザーが走る!
「今ね、BGMスタートよ!」
物陰からこっそりとそのタイミングを計っていたエテルネは、見事な呼吸で血沸き肉躍る勇壮な音楽を大音量でスイッチオン! わかる人にはわかっていただきたいチャラララチャラララなアレっぽい奴である!
そう、この一連の流れは、すべてイオナとエテルネの考えたプロジェクト。イオナがまず暴れる『女王』を取り押さえ、彼女がピンチになったところに、エテルネのユーベルコードを用い、カレシを英雄として登場させるというものだった。これにより、『女王』に、カレシからまぎれもない愛を向けられていることをはっきりと確認させるのだ。
(ただ説得するだけじゃなく、|コッチ《彼氏さん》を立てることも必要でしょうし)
『女王』に見つからないように巧みに身を隠しつつ、エテルネはそっと激励を送る。
(さてと、彼氏さん、|愛する人を怪人から救いたい《憧れの人の手助けをしたい》なら、ちょっとは根性を見せなさいよね、ふふっ)
見よ、単なるパンピーであったはずのカレシは、今やメタルスーツに身を固め、イオナと激しく戦っている! もちろんヤラセではあるが、殺陣を打ち合わせる時間があったはずもなく、立ち回りはアドリブだ!
ではなぜ、一流の猟兵であるイオナの動きにカレシが付いていけているのか。それは、エテルネの能力、『プロジェクト・ディーヴァ』の効果。SNSの反響の大きさに応じて願望を叶える力だ。
そして今、エテルネがこの状況を生配信しているのは……キマイラフューチャー! お祭り大好きノーテンキ野郎どものワンダーワールド!
(ここなら、この派手な騒ぎも住人から受けが良さそうだし、他のエリクシルはまだ居ないので情報がもれなそうだものね)
エテルネのその想定は見事的中、この事件の実況生配信は見る間に同接がガンガン上がり、「いいね」もうなぎのぼりだ! ゆえに、カレシバンのパワーも超絶に上昇!
「さあカレシさん、最後に決めちゃって!」
「うおおお、ハニーのために! カレシバン・ダイナミック!」
「ぐわあああ、やられたあああ(棒読み)」
オーバーリアクションをとって、レーザー剣に斬られたっぽい演技をしつつ、イオナは退場! カレシバンは「女王」を抱き起し、熱っぽく語り掛ける。
「大丈夫かい! ハニー!」
「ああ、ダーリン……やはり私を助けてくれたのですね……」
「もちろん決まっているじゃないか。君は僕のただ一人の運命の人なんだ」
エテルネがすかさず流した感動的なBGMに包まれ、恋人たちは夕日の中で熱く燃え上がる愛を再確認するのだった。
ちゃらららーらーらー……!(ハッピーエンド)。
そんな二人の姿を遠くから眺めつつ、エテルネとイオナは二人で微笑みを交わし合う。
「……ふふっ、お疲れさま。英雄を目指すものとしては少し不本意な役まわりだったかしら?」
「いや、僕は『希望を描くもの』。ここにあるのは、間違いなく……希望そのものだよ」
●そしてやはり、その出会いは運命
「……いやー、お騒がせしました。皆さんにご迷惑をおかけして、申し訳ありません」
「私も、ついその、頭に血が上ってしまって……私、頭しかありませんが……」
とりあえず大騒動は落ち着き、「鮮血の女王」とカレシは済まなさそうに猟兵たちに頭を下げている。「女王」は頭しかないが。
なんだかんだ、ひとまずこの二人はうまくいきそうではある。
エリクシルの力で周囲に一種の結界を生み出し、これによって『女王』の力が漏れ出すのを防ぐことで、先ほどのようにUDCを呼び寄せたり、他のエリクシルに影響を及ぼすのを防いでみよう、ということで、意見はまとまっていた。
もちろん、それですべてが解決するかどうかは不明である。
「オブリビオン」は存在するだけで世界に破滅をもたらす。
「影朧」は浄化と転生というシークエンスを挟むことで共存の可能性がある。
UDCたちの中でも「UDC―P」は明確に人類の仲間であり友。
では……「エリクシル」はどうなのか。まだ誰にもわからない。
けれど、目の前にある小さな幸せを摘み取ることを、猟兵たちは選ばなかったのだ。
『女王』は猟兵たちに言葉を贈る。
「ありがとう、皆さん。あなたたちは確かに──『|最悪の結末を防ぐもの《バッドエンドブレイカー》でした』
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵