●花傘新都ローゼリアス
新たなる世界エンドブレイカー。
UDCアースやシルバーレインで例えるならば中世ヨーロッパ然とした文明レベルでありながら、星霊建築という独自の建築技法により超高層の都市国家を築く。内部に農地や青空すら造り上げることで、壁に閉ざされた都市国家内でも人々は生活を営むことができるという。広大な外の世界が望めぬ代わりに、荒野に蔓延る魔物たちの危険からは遠くーそんなそこそこ平穏な暮らしの中でも、時に不運に見舞われて滅びる都市国家も少なくはない。
石突きは空高く天頂を仰ぎ、空駆ける鳥のように力強く親骨を広げる。生地のない骨組みの傘に数多の蔦が絡み合い、季節折々の花を咲かせる様はまるで花傘のようにー此処、花傘『新都』ローゼリアスもまたそのような都市のひとつであった。人知れず旧都が壊滅の憂き目にあい、されど逞しく生きる人々は絶望を抱くことなく、新たなる地にて都市の復興を果たす。そして今日はその復興して1年目を祝う新都誕生のめでたい祭り。
人々の幸せな笑い声が響き、雨のように降りしきる花々が華やかに都市を彩る中、男は密やかに降り立つ。
出で立ちこそ人なれどその身なりは明らかに高貴なる者、一目見て只人ではないとわかるだろうその男は、万能の魔神エリクシルによって蘇生された狂王アニール。かつて都市国家『山斬烈槍ランスブルグ』の歴史において最恐最悪と名を遺した気狂いの王。
己を蘇生したエリクシルにより願いの力を宿されし狂王の目的はただ二つ。人々を惨殺せしめることで『死んだ人々を生き返らせたい』という大きな願いを抱かせ、強大な力を得ること。そしてあわよくば己が『恐怖の王朝』を再現することである。
男は大剣を抜き、そしてー。
●グリモアベースでほねっこ少女曰く
「お祭りを台無しにする輩は処されても仕方がないと、たからは思う」
目深に被った猫耳フードから覗くサングラスを剣呑に光らせ、スケルトンの少女は少々、否、大分憤慨した様子でそう宣った。いきなりちょっと過激がすぎないか、たからちゃん。だが仕方ない、齢6歳で殺害されたほねっこ少女は長く生きれど中身は所詮、幼い少女。感情の抑制はまだまだ苦手なお年頃である。
たからは集まってくれた猟兵たちに向き直ると、いくつかのからくり人形を巧みに操って人形劇を始めた。15分ちょっとの短い劇の内容は要約すると、エリクシルという魔神により蘇った狂王アニールが、願いの力を得る為にある街のお祭りの最中に表れて人々を次々と惨殺していくという悲劇。突然の人形劇にきょとんとする猟兵たちに、あ、とたからは声を漏らす。
「これ、予知の内容」
それは最初に言うことだ。
「今から向かえば間に合う。だからみんなはまず、ローゼリアス……街の名前……の旧都の方に向かって。新都の裏の山の中に旧都があって、王様はそこから大きな花傘を伝って町の中央に降り立つ。山中に花傘に飛び移れそうな崖がひとつあるから、そこで迎撃するといいと思う」
わざわざ描いてきたのだろう、少々拙いながらもしっかりした手書きの地図を一枚一枚手渡したたからは、びしりとほねっこの指で中空を指示した。皆の視線がたからに集まる。
「王様を倒したからと言っても油断禁物。死に際に大量の殺人蜂を引き連れた人型アンデッドを召喚する。蜂は飛べてしまう。一匹でも防衛線を突破されたら危ない」
地図を見る限り、崖からはすぐ新都を見下ろせる。人目が使いない場所とは言えど決して離れている訳ではない。ましてやアンデッドが引き連れている蜂自体はそれほど大きい的ではないようで、戦いに集中するあまりに見逃してしまう可能性も0とは言い切れなかった。一匹でも逃せば大惨事は間違いない。惨事は結局、狂王を蘇らせたエリクシルの目的を果たしてしまうことになる。猟兵たちの間に緊張が走る。
「きっとみんななら大丈夫、信じてるから頑張って。無事、蜂も一匹残らず倒せたら、時間は丁度夜ぐらい。お祭り騒ぎも密やかに酒場のあたりが大盛り上がり。そこで」
たからは意味深に区切る。ふふふ、なんて悪戯気に笑い。
「街のシンボルの花傘、その側に植える記念の花を募集してる。酒場のマスターに種を預けたら、代わりに植えてくれるから、美味しいものを食べたり飲んだりしながら参加してくればいいと思う」
新たな世界に自分の軌跡を残してもいいと思う。少女は少しだけ寂し気に笑いー。
「じゃ、いってらっしゃい」
ぴしりと敬礼をしたかと思うと、ひらりひらり| 青色の蝶《グリモア》が羽ばたいた。
なるーん
初めましてなるーんです。
まずはMSページをご確認お願い致します。
ファンタジーがちょっと苦手だというのに初作品エンドブレイカーという無謀をやってみせました。花の神様がお誕生日を祝う祭りみたいなことをやりたかったんだ!ガチャは無事引けましたがお財布は寂しいです。
今回の都市国家はTW3にはありません。またMSはTW3はほぼ未経験です(登録のみ活動なし)TW3の知識は生放送と世界観紹介の知識程度ですのでご了承ください。
さて、冒頭の通りですが以下のような流れになります。
●第一章:ボス戦 狂王アニール
転送先は旧都が存在した山中の新都が見下ろせる崖です。新都と旧都の距離はさほど離れておりませんが一方で高低差があります。お祭り騒ぎの最中ですし、少々派手にぶちかましても人々は気付きませんので遠慮なくどうぞ。
●第二章:集団戦 ワスプポッド
殺人蜂を連れた人型アンデッドとの対戦です。一章すぐ直後からの連戦で崖からは新都が見下ろせます。
防衛線=最終防衛線とお考え下さい。一匹でも突破されたらアウトです。小さな蜂も見落とさないよう注意を払う、崖より空中に躍り出た蜂を空中戦で叩くなどのプレイングにはボーナス有りです。
●第三章:日常 酒場で大宴会です。
フラグメント気にせず、ご自由にどうぞ。冒頭記載の通り花傘の側に記念の花を植えることができます。ご希望の方はプレイング頭に🌹(薔薇の絵文字)をお付けください。
●その他:未成年は飲酒NG、ノンアルコールが提供されます。
複数名参加は2名まで。グループ名かIDで、締日が同日になるよう送信下さい。
また、再送あるかもしれません(現状も体調がやや不安定のため)
それではどうぞお付き合いよろしくお願い申し上げます。
第1章 ボス戦
『狂王アニール』
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POW : クルーエルストリーム
レベルm半径内に【真紅の衝撃波】を放ち、命中した敵から【生命力】を奪う。範囲内が暗闇なら威力3倍。
SPD : 暴走せし殺意
【剣】が命中した敵に、「【命を捨ててもアニールを殺したい】」という激しい衝動を付与する。
WIZ : 我こそが王なり
自身の【王冠】から【恐怖のオーラ】を放出し、戦場内全ての【王ならざる者】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。
イラスト:天野 英
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ひらりひらり| 青い蝶《グリモア》が羽ばたくと、砂上の楼閣のようにそれまでの風景がさらさらと崩れ去る。が、それはほんの瞬きの間、肌に触れる風の温もりから、鼻腔に感じる空気の匂い、耳に聞こえる木々のざわめき、最後に目に映る風景ががらりと変じ、猟兵たちは転送の完了をしっかりと感じ取る。ぐるり周りを見渡せば其処は紅葉鮮やかなる山の中、哀れ瓦礫と化した建築物が積み重なる場所だった。なるほど、どうやら此処が旧都らしい。
ほねっこ少女より手渡された地図を広げて見れば、件の崖は目と鼻の先。少しの距離を木々の狭間を縫うようにして進むと、随分と開けた場所に出た。其処より先に道はなく確かに崖ではあるもの、戦闘を行うには充分な広さだと知れる。敵味方入り乱れる混戦や、所謂、| 仲間への被弾《フレンドリーファイア》を気にする必要はなさそうだ。
但し、気になる点がひとつ。新都のシンボルたる花傘の一部と、崖の高低差が想定よりも近いことだ。花傘から人々の住む住居エリアまでは確かに充分な高さがあるものの、今より現れるだろう狂王が崖から飛び降り、足場に伝う骨組みまでが少々近い。落石や| 風倒《ふうとう》などが起きてしまえば、花傘に影響があるだろう。其処は気を付ける必要がありそうだ。
戦場の確認の最中、崖下より強い煽り風が吹いた。花傘に咲く花々から花弁が舞い上がり、| 秋天《しゅうてん》へと駆けていく。
まるで夢のような光景にざわりと不穏な| 重圧《プレッシャー》が後方より混ざる。
猟兵たちが振り返れば、其処に立つのは狂王アニールーだったもの。
| 過去よりの再現《オブリビオン》ではなく、他者から受けた蘇生のせいか、身なりの高貴さから窺い知れるかつての気高さなどまるきり失った男は、ただただキヒヒヒ、と甲高い狂笑を浮かべ出鱈目にぐるぐると黒目を彷徨わせる。嗚呼、まさに気狂いの其れ。
「余ヨよ、余ョョョヨぉ、余ぉこそはぁあああ、アニーールであるぞおおぉおおお!余、余のぉおお、行くてを阻む不敬はああああ、しざああああい!!!!」
キャハハハハハハ、言葉すら覚束ない男は耳障りな叫び声を唾と共に吐き散らかして、すらり大剣を引き抜いた。そしてーその| 狂人《凶刃》は| 猟兵《イェーガー》たちへと襲い掛かる‼
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MSより
・上記色々記載しておりますが、先制攻撃しません。
・故意的に山火事を起こす、落石、木々を薙ぎ倒すようなプレイングさえしなければ、特段気にしないで大丈夫です。
※攻撃の出力抑えめにした、とか記載してあれば大体OK。
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アルジェン・カーム
嘗ては都市を作る事も困難な時代でありました
ですがこうして多くの都市が生まれ…人が自由に生きれるという事はとても素晴らしい事なのでしょう
ならば…守るのみです
…まさか彼の狂王アニールと戦う事になるとは思いませんでしたね
これこそがエリクシルというものの恐ろしさですか
ですが…嘗ての恐るべき敵に挑む機会を得られた事は少しだけ…嬉しくも思います
恐るべき王…アニール…貴方がどうしてそうなったかは僕は知りません
ですが…貴方が齎す|惨劇の終焉《エンディング》は…破壊させて頂きます
UC発動
【オーラ防御】
光のオーラを展開して暗闇を払う
その上でアニールの動きと攻撃は全力で視認する
【切断】
宝剣による連続斬撃で切り刻み
●かつての世界を知る者は、
都市を見下ろす空色の眼差しに郷愁を宿す。
星屑の如く煌く銀色の髪が美しい青年アルジェン・カーム(銀牙狼・f38896)は、エンドブレイカー世界出身の猟兵だ。マスカレイドによる| 終焉《エンディング》の危機に晒されていた時は、新たな都市国家を築くことすら難しかった。わいわいと賑わう人々の活気づいた喧噪は、舞い上がる花弁と共に風に運ばれ、アルジェンの耳にも届く。
(こうして多くの都市が生まれ、人が自由に生きれるという事はとても素晴らしい事なのでしょう。ならば……)
「守るのみです」
アルジェンは振り返りながら、背後より迫る重圧に向けて、覚悟を改め、静かに告げた。
エンドブレイカーとして覚醒した時には既に討たれていた、かつての強敵ー狂王アニール。しかし今、大剣を振りかざし差し迫る狂人からは、話に聞いていた面影など欠片も残っていない。エリクシルの蘇生も人格の再現までは至らぬ様子で、恐るべき敵に挑む機会に恵まれども、それが少しだけ残念に思えたーあくまでも、理性の上では。戦士として養われた本能は、逆に、歓喜に打ち震える。それが彼の狂王そのままでなくとも、目の前の存在が、確かに強敵だと告げるようにー。
「恐るべき王……アニール……いえ、アニールだった者よ。かつての貴方がどうして狂ってしまったのか、僕は知りませんし、今はもう察することもできません。言葉を交わすことも無駄でしょう。ですが」
狂王の大剣が仄暗い真紅の光を灯す。敵の御業の前触れといち早く気付いたアルジェンが、猟兵たちの前へと躍り出た。アルジェンの全身が一瞬の眩い光に包まれ、そしてー、その身に呼び出し纏ったのは、輝く戦神の防具。戦場を幾度も共にしてきた、白銀の鎧。視界に入る全ての攻撃に対して無敵をほこるその鎧でもってして、大剣より放たれた真紅の衝撃波を見事、弾いてみせる。
「貴方が齎す惨劇の| 終焉《エンディング》は……破壊させて頂きます‼」
アルジェンの宣告が戦場に高らかに響いた。
それを聞き届けた狂王アニールは、ぐるぐると出鱈目に回すだけだった黒目に、意思ある赤い光をギラリと宿す。身に纏う鎧をものともせずに風のように先駆けて、愛用の宝剣で次々と浅からぬ傷を与えてくるアルジェンの姿を、その双眸にしっかりと、しっかりと、焼き付けるように目にうつし。ヒヒ、と笑い声ひとつ。アルジェンの剣戟を大剣でいなして防戦一方の姿勢から、ざくり、利き腕ではない方の腕を盾にアルジェンの宝剣を捕らえた。
「余がぁ、| 終焉《エンディング》を齎すぅうう? 否、いないないな、否ぁあああ! 余が齎すは、再演よ。余の王朝の再演の前に| 終焉《エンディング》などあらず。始まってすらいないのだからなぁ。これは、そう、再演のための掃除だ。折角の舞台にゴミなどあってはたまらんからなぁあ」
アルジェンに狂王の大剣が迫るが、金属と金属が打ち鳴る音が響くだけ。輝く戦神の防具の効果にて傷こそ負わずとも、剣先を捕らえられたままでは攻撃することもできない。アルジェンはやむを得ず、一度後方に飛び退く。
狂王アニールは鮮血滴る片腕を、ぶらり、ぶらさげて、ただただ嗤う。
成功
🔵🔵🔴
スピネル・クローバルド(サポート)
『お姉ちゃんに任せておいてね♪』
妖狐のクレリック×アーチャーの女の子です。
普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、兄弟姉妹には「優しい(私、~君、ね、よ、なの、なの?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
性格は温厚で人に対して友好的な態度をとります。
滅多に怒る事はなく、穏やかです。
怖そうな敵にも、勇気を持って果敢に挑む一面もあります。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
小宮・あき(サポート)
お困りの方がいる、と聞いて参りました。
スポット参戦のような形でフラリと。
◆性格・人柄
敬虔な聖職者として猟兵に目覚めた、人間の聖者。
です・ます口調の礼儀正しい少女。
ピンクの髪に、透き通る水色の瞳が特徴的。
ふふ、と微笑み愛らしい見た目で佇んでいますが、
本業は商人。ホテル経営者。冷静で非情な心も持ち合わせています。
既婚者。
神と夫に報告できない行動は、絶対に取りません。
◆戦闘
UC「神罰」
半径レベルmの【範囲攻撃】です。
強力なスポットライトのような光の【属性攻撃】で物質を透過します。
媒体は【祈り】。敬虔な聖職者の祈りは【早業】【高速詠唱】で発動。
最後衛で距離を取り戦います。
◆冒険
基本『お任せ』です。
●戦場に駆ける乙女
ひらりひらりーふと、戦場に2匹の青い蝶が舞う。
2匹の蝶は先達の猟兵たちと狂王の間に踊り出て、狂王より漏れ出る仄暗い闇色を払うように、白く眩い光を放つ。光が収まる頃には、其処に2人の乙女が立っていた。
「お困りの方がいる、と聞いて参りました」
片や淡い桃色の髪と空を閉じ込めたかのような水色の瞳が特徴的な、まだ少しの少女性をその面影に残す乙女、小宮・あき(人間の聖者・f03848)
「此処は任せてください」
片や黄金に波打つ髪と揃いの狐耳が愛らしい妖狐の少女、スピネル・クローバルド(家族想いな女の子・f07667)
2人はどうやらグリモア猟兵が急遽転送させてきた助っ人のようだった。
少女たちは顔を見合わせ、こくり、頷くと華麗な連携にて狂王を追い詰めていく。まずあきとスピネルは、それぞれマスケット銃と弓で狂王の足元を狙撃した。多少の捨て身で駆ければ越えられそうな防衛線より距離を離すのが狙いだ。どちらも連撃性に劣る武器ではあるが、これでも2人は数々の戦場を駆け抜けた腕の立つ猟兵ー個々の技量と、射撃の間隔を微妙にずらしていくという機転でそれをカバーする。
雨のように絶えず降り注ぐ鉛玉と矢。これには狂王も後退するしかなかった。片腕がほぼ利かない状態では大剣を盾にすることすらできない。じりじりと崖より離され、悔しそうに声をーあげる隙すら2人は許さなかった。
「平和に生きる人々を殺すなんて許されることではありません。森よーどうか私を助けてください」
あきが後退し、その場に膝を折り、指を組みー静かに祈りの姿勢に入る。其れを阻止せんと駆けようとした狂王を、スピネルの狙撃と| 超常《ユーベルコード》が阻んだ。| 森樹祝請讃詞《フォレスト・プロヴィデンス》ー戦場を森に書き換え、木の根や枝で対象を攻撃する超常の力。されど此処は山の中、森に書き換えずとも周りに連なるは木々ばかり。力の展開は常より迅速にー| 彼女《スピネル》の願いに応えた山の木々の根が、地中より狂王の手足を鋭く刺し貫く。
「この街には心から平和を願う人々の願いの力が既に満ちています。それを殺戮により歪め、己の野望の為に利用しようなどという冒涜を、神は決してお許しにはならないでしょう。これは神罰です」
そして、あきの静謐な声が響く。伏せていた| 彼女《あき》の瞼がおもむろ開かれ、無垢な空色の瞳が狂王をうつした。途端、空より降り注ぐ光が柱となって狂王のみを焼き払う。
「がぁああっ‼」
空をつんざくかのような狂王の悲鳴。嗚呼、無様であれども、しかし、王は王なり。王冠を戴くに値するからこその王なれば、狂王の力を秘めし武器は大剣だけにあらず。狂王の王冠が闇色の光を灯し、閃光のようにそれを放つと、四肢を縫い留めていた木々も、身を焼いていた光も、ぱたりと力なく止んだ。王ならざる者を無力化する御業でもってして、相殺せしめてみせたのだ。威力の全てが| 超常《ユーベルコード》の相殺にあてがわれた為、間近で食らったあきもスピネルも無事ではあったがー。
「申し訳ございません。皆さま。時間です」
「ごめんなさい‼」
助っ人の滞在時間は長くない。ひらり、2人の姿が蝶へと転じ、空へ消える。
彼の狂王は満身創痍、しかしその瞳にはまだ、諦めの色はない。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
七篠・コガネ
圭一さん(f35364)と!
お生憎様。僕はもっと恐ろしい君主を知っている
銀河皇帝リスアット・スターゲイザー
あの方と比べれば貴方など可愛いもの
引きつけです?任して下さい!
ほらこっちですよ!狂王モビール!【ダッシュ】して急接近
剣撃には【武器受け】で受け止めましょう
手の鉤爪で【早業】攻撃して敵の意識をこちらに集中させます
狂王が崖下へ向かおうとしたなら――
ダッシュで狂王を追い越して阻むような立ち位置へ。
そこから突進してUC使用です!
この世界に宇宙船はございますかね?
受けてみて下さいよ!狂王ビニール!
圭一さん、蟻さんって機械は食べません…よね?
え!?僕ずっと名前間違えてたです!?
山崎・圭一
コガネ(f01385)と。
想像以上に安っぽい王様が来たじゃねーの
パイプ椅子でも持ってくりゃ良かったか?
必要だろ?“玉座”
おっと白燐蟲使いの前に闇は存在しないと思ってもらおう
白燐光で暗闇状態阻止よ
アンデッドか。お前
となりゃ死を恐れちゃいねぇな
だが舐めンなよ。死者を相手取るのは能力者の十八番だ
奴の注意がコガネにいってる間に『永孤盛衰』発動
何処の世界も暗君ってなァ徐々に追い詰められるもの
奴の頭上に【呪殺弾】ぶちかましたる
…軍隊は好きか?その呪殺弾にゃ軍隊アリ白燐蟲達を搭載だ
食い意地張っててよ。死肉も大好物なんだ
同じ事繰り返しゃ同じ結末も繰り返す
いい加減学べ。王墓ぐれぇならその辺の小石で建ててやるよ
●凸凹コンビは思わず、
「「……」」
目の前で繰り広げられた花のように可憐な乙女たちによる、鮮やかで容赦のない連撃に息をのんだという。
ーさて、気を取り直して。
濡鴉色の髪が風に踊る。|菫青石《アイオライト》の瞳で、眼前の敵を静かに見定めるのは山崎・圭一(宇宙帰りの蟲使い・f35364)その双眸にうつる狂王とやらは、身なりこそ高貴であることは認めるが、その振る舞いとやらは随分とー小物の域を出ない、というのが圭一が抱いた率直な印象だった。ふん、と思わず嘲笑が浮かぶ。
「三流役者以下だな」
「なにぃ?」
「三流役者以下だなっつたんだよ。想像以上に安っぽい王様が来たじゃねーの。向こうの瓦礫から椅子っぽいもん持ってくりゃ良かったか?」
狂王の赤く鋭い眼光を受けても物ともせず、圭一は指先まで毒におかされた手で虚空を掴み、手中に|命捕網《みことりあみ》を顕現した。天頂にあった陽は傾きかけているー次第に増す木々の陰、迫る夕日が齎す暗闇は狂王の有利になると判断した圭一は、挑発しながらも命捕網を一文字に薙ぐ。しゃらり、と|遊環《ゆかん》が鈴鳴ると、網より飛び出した白燐蟲たちがその身に光を灯して飛び回り、戦場の闇を制していく。圭一は狂王から視線を逸らすことはせず、視界の端でそれを見届ける。にやり、口端を吊り上げ。
「ーー必要だろ? “玉座” 」
「おのれ余を愚弄するかぁああ」
「じゃ、コガネ後は任せた」
煽るに煽られた狂王はすっかりしっかり怒髪天。一方、圭一はそれまで黙って見守っていた七篠・コガネ(金碧のリュシエール・f01385)に後を任せて後退する。コガネは月のような金色の瞳をまあるくさせて、えええええ!?と叫ぶが、静かに詠唱の姿勢に入る圭一を見て、意図するところを察した。
「あ、なるほど、引きつけですね? 任せてください! ほらこっちですよ、狂王モビール!」
「貴様も余を愚弄するかっ‼」
「いいえ、お生憎様‼」
重厚なマシン・ボディも何のその。コガネは重さを感じさせない疾風の速度で狂王に接敵する。手先を瞬時に鉤爪へと変形させて繰り出す早業、怒涛の如き連撃を狂王は大剣で受け流す。が、片腕ではそれが精一杯といったところか。コガネは、やっぱり怖くない、としみじみ思った。ふふ、なんて笑みすらこぼれてしまう。銀河皇帝リスアット・スターゲイザー、かつて立ちはだかったあの恐ろし絶対君主に比べたら、目の前の狂王などー。
「あの方と比べれば貴方など可愛いものですよ‼ 僕はもーっと恐ろしい君主を知っているだけです‼」
コガネが振り下ろした鍵爪を、狂王はぎりりと大剣で受け止めてーキヒヒ、狂王は嗤い大剣を手放した。鍔迫る対象を失えば、体勢が傾くのは力をかけてたコガネの方。そして体躯差はコガネが大きく上回る。その隙を突いた狂王が姿勢を低く、脇を縫うようにして崖へと走り出した。しかしー
「っととと、させませんよ‼」
コガネは突かれた隙すらも見事リカバリーしてみせた。背中のプラズマジェットを展開させた高速の機動は、人の身の全速力では追い抜かれるのは必然。ましてや狂王は満身創痍だ、コガネにとっては【沙羅の花を纏い、狂王への飛び向かう白燐蟲たち】よりも遅い。人造兵器|Raptor《ラプター》はあっという間に狂王を追い抜き、追い越し、先回り。そしてー|超常《ユーベルコード》を発動させた。但し威力はちょっと控えめにして。何故なら勢いあまって木々を薙ぎ倒してしまいかねないから、だ。なんせこの|超常《ユーベルコード》はー。
「この世界に宇宙船はございますかね? 受けてみて下さいよ!狂王ビニール!」
「っ‼」
【宇宙船の装甲すら破壊する蹴りを伴った突進による攻撃】だ。繰り返す。狂王アニールは肉の器で、ましてや満身創痍だ。モロに入ったコガネの一撃、受けたダメージは計り知れない。彼の王は一本の木に衝突するまで跳ね飛ばられた。骨も臓器も衝撃により破壊されたようで、吐血した赤黒い血の軌跡が地に残こる。因みに木は折れなかったので、出力調整は大成功といったところか。コガネは引き続き狂王が逃れられないように、しかし壁にした木が折れないように、微妙な出力バランスで敵を押しとどめながら叫んだ。
「圭一さん今です‼」
「ちぃっと焦ったけど上等‼」
ごぷりごぷり、狂王の身体が痙攣し、口からは滝のように赤黒い血が零れる。最早、死に体ーだが王の意地か、今だその瞳の色は衰えず。王冠が再び闇色の光を灯す。しかしー王の御業は、発動しなかった。途中で王冠が光を失い始めたのだ。狂王の瞳がみるみる赤い光を失い、絶望の色を宿していく。
「あああ、余の、余の王朝が、余の王朝が滅びていくううううう‼」
彼の王は声にならない声で悲痛に叫んだ。まるで酷い悪夢を夢見て、魘されているかのように出鱈目に頭を振り、動かない腕で蟲を振り払うような仕草を繰り返す。それは圭一が密かに発動した|超常《ユーベルコード》によるもの。|永孤盛衰《シュリー・ロバスタ》ー対象に【沙羅の花と、宇宙の虚無で構成された蟲】の幻影を纏わせることで【やがて訪れる滅び】を感じさせ、それを克服するまで敵の御業の一切を封じるというもの。
「舐めンなよ、死者を相手取るのは能力者の十八番だ。それに何処の世界も暗君ってなァ、徐々に追い詰められるもの」
べっ、と赤い舌を覗かせて悪戯に笑む圭一は、命捕網を振りかぶり、黒塗りの指先で獲物を指し示す。彼の王の頭上に練り上げるは白燐蟲を搭載した呪殺弾。それに込められた蟲たちは、|希代の蟲使い《圭一》が狂王のために選りすぐった精鋭だ。最早、滅亡の幻影に囚われるだけの狂王に、これはせめてもの|餞《はなむけ》になるだろうーそれは決して、優しいものではないけれど。
「軍隊もねえお前にくれてやンよ。好きだろ? こいつらはきっとお前のことが好きだぜ、なんせ食い意地張っててよ。死肉も大好物なんだ」
闇色の指先が引導の指揮を執る。呪殺弾が狂王に向かって勢いよく降下してーぞろりぞろり、弾けた弾より零れ出でるは飢えた軍隊アリの群れ。遠慮も容赦もない、本能で生きる|彼ら《軍隊アリ》は与えられた獲物に嬉々としてかぶりついていく。それは幻影による絶望が齎したものか、食い荒らされていく痛みによるものか、狂王から咆哮のような絶叫が響くーまさに断末魔。因みに生命反応ーアンデットのようなものだけれどもーのようなものが消えるまで、と、コガネは今だ狂王を押しとどめており、軍隊アリの進軍にばっちりしっかり巻き込まれていた。食いしん坊ということで少し不安がよぎる。
「……あの、ちょっと圭一さん‼ 蟻さんって機械は食べません……よね?」
「大丈夫じゃね?多分」
「多分ってなんですかーーーーーっ‼」
コガネはそれはそれはもう大慌てで、狂王と交戦していたとき以上の速度でもってして、ずざざざざーーーと勢いよく飛び退いた。圭一は思わず笑みこぼす。そんな緊張が途切れた一瞬、王冠がからりと空しく大地に転がる音がした。軍隊アリたちの食事は尚も続けられ、次第に跡形もなくなっていく狂王に、圭一は一瞥の後に酷く冷めた声で告げる。
「同じ事繰り返しゃ同じ結末も繰り返す。いい加減学べ。王墓ぐれぇならその辺の小石で建ててやるよ」
ーところで少し余談だが、軍隊アリたちの食事が終わるまで、こんなやり取りが行われていたそうだ。
「ところでコガネ。お前あれの名前、覚えてっか?」
「え、勿論、覚えてますよ? デニールですよね?」
「ちっげーよ、アニール‼ お前が言ってたのはモビールとビニールとデニール‼」
「え!? 僕ずっと名前間違えてたです!?」
「……、無自覚かよ。たちわるっ」
ーこうしていまいち格好よくは締まらないのが凸凹コンビであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『ワスプポッド』
|
POW : 蜂毒刺し
【赤い爪】が命中した部位に【強化蜂毒】を流し込み、部位を爆破、もしくはレベル秒間操作する(抵抗は可能)。
SPD : ワスプスウォーム
【体に出来た殺人蜂の巣】から、戦場全体に「敵味方を識別する【殺人蜂】」を放ち、ダメージと【猛毒】の状態異常を与える。
WIZ : ワスプハニー
【蜂蜜】を纏わせた対象1体に「攻撃力強化」「装甲強化」「敵対者に【空腹】を誘発する効果」を付与する。
イラスト:KANtarou
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
※注意※少々グロテスクな表現があります。苦手な方はMS連絡まで読み飛ばし推奨。
狂王アニールも最早、残骸。
群がる軍隊アリの神経毒におかされ、身動きひとつ取れもせず、ただただ木に寄りかかり、その身すべてを貪り食われるを待つばかりーでは、なかった。そう、ほねっこ少女も確かに言っていたではないか、その死に際にアンデットを召喚すると。ぐりん、狂王の首だけが奇妙な角度に傾いて、口が引き裂けんばかりに三日月に歪む。叫びのような、嗤い声のような、そんな声がけたたましく、姦しく、煩わしく木霊してーぴたり、それが不自然に途絶えたとき、最早、動かすことも叶わぬ筈の舌でしっかりと言葉を紡いだ。
「嗚呼、万能の魔神エリクシルに託されし願いの力よ。例え此の身が滅びようとも余に悲願成就の祝福を‼」
その瞬間、猟兵たちは蜂のあの独特の羽音を耳にした。が、音の出所が異常なのだ。ブブブ、というあの羽音が狂王の身体の中から聞こえ、そして増殖していく。然程の時間もかからず、木々の騒めきと聞き間違う程にそれは増していき。ずるり、狂王の身体が、真ん中より縦に割れて、ずれおち、風船のように、いきおいよく、
はじけた。
びちゃり飛び散る肉片と共に、大量の殺人蜂が一斉に飛び出す。戦場を飛び交う蜂どもは、先ほどまで確かに狂王の身体の中にいたのだと証明するかのように、赤黒い血液と脂でてらりと濡れて、より凶悪な風貌を晒していた。そして蜂に守られるように、一体の人型のアンデットが佇む。その風貌はまさにグロテスクそのもの。四肢や肉体は酷く醜く腫れ上がり、身体の至る所に蜂の巣の穴がぼこりぼこりと開いている。だらり、弛緩した口内からはまるで吐瀉物のように殺人蜂が黒い帯を成して、零れ落ちていく。
ワスプポッドー死して尚、殺人蜂の巣として尊厳を弄ばれた、元人間。
つまるところ、殺人蜂を一匹でも逃せば、崖下の街の住人たちが辿るだろう運命の ”成れの果て” だ。
「あ"ぁあ"あ"ー」
ワスプポッドはまるで助けを求めるかのようなうめき声をあげながら、その身より出でる殺人蜂を引き連れて、猟兵たちにゆらり、ゆらりと差し迫る。
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MSより
・要約:狂王の肉体を代償にワスプポッドが召喚されたので討伐してください。
・肉片とか血痕はワスプポッド(と蜂)を倒しきったら綺麗に消えますのでご安心ください。
・小さな蜂も見落とさないよう注意を払う、崖より空中に躍り出た蜂を空中戦で叩くなどのプレイングにはボーナス有り。
・引き続き、故意的な自然破壊には注意です。
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アルジェン・カーム
……恐ろしいものですね
だが…その願いの果てが|悲劇の終焉《エンディング》ならば…破壊するのみです
とはいえ我が身はまだ未熟…広範囲の敵を一気に殲滅する術は未だ我が手には非ずです
だから…少し手数で行きますね?
ユーベルコードへ至った我が四門の技…試させて頂きます!
【オーラ防御】
蒼き覇気を展開し敵の位置を可能な限り捕捉
特に視認しづらい小さな蜂は確実に
英霊剣群展開発動
そしてUC発動
超高速の拳で粉砕
他の蜂を蹴り潰し
【切断】
宝剣による一閃
離れてたり空中に躍り出てる蜂は
空気の断層による斬撃で切断
支援斬撃も利用して
当然本体にも猛攻
本体は爪と手を狙い確実に此方への攻撃を妨害
寄生虫というのは怖いものですね
●星屑は魁る
「あ"ぁあ"あ"ー」
「っ、恐ろしいものですね。狂王の……願いへの、執念は……! ですが、やはり、その願いの果てが無辜の人々の|悲劇の終焉《エンディング》ならば……僕は、ただ破壊するのみです」
死体損壊ーUDCアースやシルバーレインの世界では法として定められ、特にそれを犯したものはより重き罪に問われるという。尊厳の冒涜、霊魂の安静を害したから等その罪科の理由は様々に説かれるが、狂王はつまり、自らの身体そして”王”としての尊厳を犠牲にしてまでアンデットの召喚を成し遂げてみせた。狂王の執念に空恐ろしいものを感じながら、アルジェンは迫りよるワスプポッドに向き直る。
巣にされたその身より零れるように溢れ出る殺人蜂は果たしてどれほどか。けたたましく重なる無数の羽音、飛び交う小さな影すべてを目視でとらえるのは、いくら歴戦の戦士といえども難しいものがある。ましてはアルジェンには、広範囲の敵を殲滅できる術がその手にはなかった。嗚呼、その身は未熟か?否、否否ーその術がないのであれば、その手にある術で|悲劇の終焉《エンディング》に抗うからこその”エンドブレイカー”。その影すべてを目視”で”とらえるのが難しいのであれば、気配でとらえてしまえばいい。まとめてうち滅ぼせないのであればー
「……少し手数で、行きますね?」
飛び交う虫より素早く、その身すべてを武器として圧倒的な力でもってうち滅ぼせば済む話。アルジェンはその身より蒼穹の如き覇気を展開し、殺人蜂の気配を余すことなく補足する。こちらの目をあからさまに引き付ける巣は、視界の端のみでとらえればいい。一匹でも逃せないのは、より小さき虫どもだ。とらえたならば、さあ、あとは叩くだけーアルジェンは周囲に覇気より練り上げた無数の神剣の幻影を作りあげ、 その幻影と共に疾風の如き速度で魁る。続く先陣を誰よりもはやく駆ける銀髪は、まるで流星の軌跡のように。当然、殺人蜂も容赦なくアルジェンに対して牙を剥くも、駆ける星屑を小さき虫が止められるはずもなく。あとはただアルジェンの一方的な蹂躙。握った拳で、蹴りで、神剣の幻影で、殺人蜂どもは次々と地に叩き落され、刺し貫かれ、さらり砂塵と消えていく。小回りの利く身体でもって連撃の隙を縫い、崖より躍り出る殺人蜂も多少はあれどー
「させません!!」
アルジェンの覇気による補足からは逃れられず、宝剣により斬撃波の一閃で哀れ空の藻屑と化していく。みるみるうちに数を減らしていく殺人蜂も危機と察したか、ちらほらとワスプポッドーその肉塊の巣の内へと引き戻るものも出てくる始末。無論アルジェンはその好機を見逃す筈がなく、振りかぶる宝剣が傾く夕日を受けてきらり煌きーまさに紫電一閃、ワスプポッド、その両腕の巣を見事切り裂いて見せた。
大成功
🔵🔵🔵
エリー・マイヤー(サポート)
ごきげんよう、グリモア猟兵さん。
掃除が必要と聞いて手伝いに来ましたエリーです。
【念動力】で掃除できる相手なら任せてください。
とりあえず、念動力で敵の攻撃を防ぎつつ反撃する感じですかね。
単純に念動力で押したり曲げたり捻ったり千切ったりとか、
集めて一塊にして纏めてぶん投げたりとか、
あるいは重い物を掴んで振り回すのもありでしょうか。
尖った力で貫いたり、鋭い力で切り裂いたりとかもできますよ。
重力を相殺して浮かべて動きを封じたりとか、
逆に地面に押し付けて潰したりもいいかもですね。
まぁ、状況次第でそれっぽく戦えますので、適当にこき使ってください。
精神攻撃なんかは対処が苦手ですが…
やれるだけやってみます。
ひらり、再び青い蝶が戦場を舞う。
数を減らしたとは言えど今だ殺人蜂が群をなす中、ひらりひらりと場違いなほど優雅に舞う蝶は、一陣の風に吹かれると途端に砂のように崩れてー| 砂塵《残骸》はそのまま人の形をなした。夕方の風になびく青い髪、感情も控えめにただ淡々と戦場を眺める青い瞳が特徴的な乙女は、エリー・マイヤー(被造物・f29376)彼女の咥えた煙草が燻ぶり、有害な紫煙が静かに立ち上る。
「掃除が必要と聞いて手伝いに来ましたが、掃除というか害虫駆除ですね、これ。まあ、いいです。やりましょう。やってやれないことはないです」
ブルー・スピネルの瞳が武器を求めて改めて戦場を見回す。エリーの持ち物はトランクひとつとその中身、他の生物に有害な煙草も彼女自身の生命線でかつあくまで嗜好品だ。害虫如きに使うには、少々惜しい。エリーの纏う黒曜のドレスに釣られるように次々と牙を剥く害虫どもを、巧みな力の操作で攻撃の軌道ごと逸らしてやりすごす最中、視界の端でとらえたのは打ち捨てられた禍々しい大剣。| それ《大剣》に微かに残る力の残滓が、殺人蜂どもが纏う| それ《力》と似通っていることを感じて、エリーはなるほどと静かに呟いた。
「いいものあるじゃないですか。これって同士討ちになるんですかね?」
くるり、突如、宙を舞う大剣が殺人蜂を薙ぎ払う。大剣はまるで踊るように殺人蜂どもを時に剣刃で切り裂いて、時に剣背で叩き落して。攻撃手をエリーと見定めた蜂どもが群れを成して襲い来ても、それを大剣を盾に受け流して、念動力の申し子はその場から一歩も動かぬままに害虫駆除をこなしていく。それにいよいよ焦れたのはワスプポッド、まだその身に残る巣から次々とより強力な蜂を生み出して、恐るべき襲撃者を猛毒にて無力化しようとするもー
「遅いですよ」
ー叶わない。エリーは全方位から包み込むように念動力を放ち、ワスプポッドと虫どもをぎりぎりと締め付けることで、逆にその身動きを封じて見せた。彼女の超常ー| 念動バインド《サイ・バインド》だ。もがくばかりの害虫どもを肴に、彼女は新しい煙草に火をつけて優雅に一服してみせる。
「私の念動力は| 獲物《武器》がなくても別にいいんですよ、残念でしたね。じゃ、そろそろ時間なので後は頼みました。どうやらそちらは害虫駆除の専門家っぽいですし」
戦場から消える間際、ブルー・スピネルが| 菫青石《アイオライト》をとらえて、くすり、微笑んだ。
成功
🔵🔵🔴
山崎・圭一
コガネ(f01385)と。
まさにその道のスペシャリストを前に
随分デカイ面してくれてンじゃねーか
え、誰の事って…俺だよ!おーれッ!
|マリア《スズメバチ白燐蟲》部隊出動!
コイツらには|アデレイド《蜘蛛白燐蟲》の糸を仕掛けてある
つまり縦横無尽に飛べば巨大な蜘蛛の巣一丁上がりってワケ
それでも潜り抜けた蜂がいたらコガネに頼んだ
猛毒なら気にすンな。【毒耐性】で凌いでやるよ
蜘蛛の次は頭上の雲目掛けてUC使用
【蟲使い】なら簡単な事。俺が降らすのは蟲化した雨だぜ
雨を躱して飛べる蜂はいるか?やってみろや
さあ雨蟲共!1匹残さず蜂を捕らえろ!
そして水は電気をよく通すってな。コガネ、後は――分かるな?
七篠・コガネ
圭一さん(f35364)と!
狂王アニラナイからトンデモ化物が!
スペシャリスト?何処にです!?
蜂1匹も逃さないとは中々難題ですね
『適応型コアマシン』から電気エネルギー産出!
この『鉤爪』に帯電させてUCで蜂を落としていきます!
圭一さんが蜂を増やした!
でも白い蜂さんなので分かりやすいですね
蜘蛛の巣潜り抜けた蜂がいたら圭一さんの指示に従いましょう
【ダッシュ】してはたき落として。
飛んでる蜂なら僕だって飛べますから!
蜂の針なんて怖くないです!機械の僕と相性は悪いでしょう?
おや?圭一さんが何かやり始めた様子
はっ!雨が虫さんになってるです!…なるほど。理解しました
帯電を全身に広げて電撃を【一斉発射】です!
●虫退治はお任せを
「あぁ、まさにその道のスペシャリストってンだー頼んだぜ、アデレイド、マリア」
ブルー・スピネルと刹那、| 相会《あいくわ》す。圭一はにやりと笑んで命捕網をひらり振るった。頼まれたからには張り切らざるを得ないーもとより害虫駆除は圭一の| 十八番《おはこ》と言っていいだろう、なんせ蟲の専門家だ。彼は身の内に飼い慣らす白燐蟲たちに、少々手の込んだことを命じる。一方でコガネは、肉片飛び散る惨憺たる現状もなんのその、狂王アニラナイからトンデモ化物がーっ!と叫びながら、まるで鳥が虫を啄むようにぴょんぴょんハツラツ跳ねて回って、電気エネルギーを纏わせた鉤爪を高速で振るっていた。コガネの体躯に比べたら蜂はあまりに小さく、1匹も逃さないとはかなりの難題だ。だから念動力の残滓で身動きが取れない僅かの間に、できるだけ殺人蜂たちを叩き落そうという算段だった。ところでとうとうアニールの名前、ニアミスですらなくなったね、コガネ君。頭2文字はあってるけれど!ってツッコミはどうしても入れたかったって白状しておきます。
「えっ!?スペシャリスト?何処にです!?」
「はぁっ!?俺だよ!おーれッ!他に誰がいるんだよ!?」
「えっと、そのアデーレさんとマリーンさんでは?」
「違うわ!誰だそれ!ったく」
そういう訳で圭一が小細工していた間、| 超常《ユーベルコード》を用いての全力で、必死に鍵爪を振るっていたコガネは先のやり取りなど全く気付く筈もなく、ましてや確りと聞き取れる筈もなく。| 蜘蛛白燐蟲《アデレイド》と| スズメバチ白燐蟲《マリア》から架空の第三者を創り出すコガネの| お約束《ボケじゃない》に| 宿主《圭一》は思わず突っ込んだ。圭一は、やれやれ、という溜め息一つ吐き出して気を取り直しーいけ!と鋭い一言で大群の| マリア《スズメバチ型白燐蟲》部隊を解き放つ。
「圭一さんが蜂を増やした!ってあれ?」
蜂vs蜂ーの抗争になるかと思いきやマリアたちは殺人蜂をスルーして縦横無尽、様々な方向に飛び回る。よくよく見れば| 彼女《マリア》たちの白い身体はより白く、飛行の邪魔にならない腹部や毒針に蜘蛛の糸のようなものが絡んでいて、飛び交う度にそれは空中で複雑な文様を描き出す。まるで蜂たちのあやとり。そして間もなく出来上がるのは、美しく見事に巨大な蜘蛛の巣だ。糸の始点・終点を動点にすることで、待ち伏せの罠から自由な捕獲網に早変わりした蜘蛛の巣は、いよいよ念動力の拘束から逃れ出して崖を目指す殺人蜂たちを、次から次へと捕獲していく。数多の白燐蟲をその身に宿す圭一だからこそ成せる業に、これには思わずコガネも感嘆の声を上げた。
「蜂さんたちすごいですね!」
ーマリアさんたちに。
「……、まだまだ暫く任せたぜ、コガネ。巣抜けた奴らは叩き落とせ」
「了解です!」
圭一は何か言いたそうなのを堪えつつ、すぐに次の支度にとりかかる。無論、無防備なその身を害虫どもの毒針が襲うも、圭一自身の猛毒で動けなくなるのは蜂の方だし、コガネのアイアンボディーにはそもそも針が刺さらない。ならばと| 彼ら《害虫バスターズ》を無視して崖を目指すも、マリアたちの巣に捕まるし、運よく抜けても飛行できるコガネに叩き落される。散々な状況にその巣の肉塊すら歩みを止める程、蜂たちの間で諦めムードが漂うが、それで見逃してやる筈もなく。
「雨を躱して飛べる蜂はいるか?やってみろや」
容赦なく圭一が発動するは超常ー| 羽蘭盆会《ウラバンナ》夜の帳が迫る頭上の雲ーの正しくはそれを構成する水滴に、蟲型ゴーストのオブリビオンを向けて憑依させる。キャルルルル、なんて可愛い声をあげながら、害虫めがけて降り落ちてくるは雨雫の蟲たちだ。
「はっ!雨が虫さんになってるです!」
「さあ雨蟲共!1匹残さず蜂を捕らえろ!」
主の名に忠実に従う雨蟲たちは逃げ惑う殺人蜂を、そして| 彼ら《雨蟲》たちの一部はその水の身をぴたりぴたりとくっつけてより巨大な蟲と化け、ぐるり|殺人蜂の巣 《ワスプポッド》と今だ巣に潜む蜂をまるっと飲み込んだ。しめしめと、圭一は細く笑み、やれ一仕事は終わったと慣れた仕草で煙草を一本、取り出した。
「そして水は電気をよく通すってな。コガネ、後は――分かるな?」
「……なるほど。理解しました!!山火事しない程度に全力でいきますよーーーー!!」
コガネもつられて似たような笑みを返す。彼は元々殲滅兵器ー高威力・広範囲の殲滅攻撃は大得意だ。出力調整にちょっと不安は残るけれども、万が一のときは雨蟲さんたちが消火活動をしてくれる筈である。きっと。たぶん。おそらく。否、ぜったいしてくださいね、お願いします。帯電を全身に広げての| Raptor《ラプター》による電撃一斉発射(高火力)はあっぱれ狂王アニールの願いの残滓ー殺人蜂もワスプポッドも、そして飛び散った肉片も大地に染みた血痕も、遺された大剣も王冠もなにもかもーを綺麗さっぱり跡形もなく水の泡の如くに消し去った。
ー後に残ったのは勢いあまった電撃に端っこがちょっぴり焦げた落ち葉数枚と、何かが衝突したような痕跡が幹に残った木が1本。これくらいなら何も支障はないだろうことは明らかで。猟兵たち以外は誰も知らない戦いはこうして終わりを告げた。再び吹いた煽り風が勝利の歓声の代わりに人々の賑わいの声を届け、花傘より祝杯の花の雨が降る。理不尽な| 悲劇《エンディング》は回避され、かわりに街に訪れるのは平穏な|一日の眠り《エンディング》。
山に、街に夜の帳が落ちてくるーされど、今宵ばかりは街も人も眠らない。なんていたって今日は新都の誕生祭!希望あふれる新たな街の門出の日なのだから!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『旅人の酒場で大宴会!』
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POW : 宴会のご馳走を大いに楽しむ
SPD : 他の旅人と意気投合し、情報交換する
WIZ : 歌や踊りや話芸で宴席を盛り上げる
イラスト:ハルヨリ
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
帰りの準備は時間かかるから暇潰してて、という雑な一言が記載されていただけで、肝心な街へ下る経路は地図になく。どうにかこうにかしてようやっとローゼリアスへ着いた頃には、すっかり空は真っ暗で。月は輝き、星は煌き、それでも街は、人々は、子どもも、そして花さえも今宵ばかりは眠らない。希望に満ちたお祭り騒ぎはまだまだ続く。
山からは花傘ばかりが目立つものだからよくわからなかった街並みは、例えるならばフランスのアルザス地方コルマールを思わせる。小さな生活用運河の傍に並ぶコロンバージュ様式の家々はどれも個性豊かに塗り飾られて、各家のフラワーボックスに咲き誇る花々は色鮮やかに咲き誇り、甘い香りを匂わせる。石畳の街路には人の背丈以上あるホタルブクロの花が立ち並び、街灯かわりに淡く優しく夜道を照らしていて、花傘からは絶えず花の雨が降り注ぐ。花傘新都ローゼリアスーーそこはまるで花と生きる街。
人々の笑顔も花咲くようで。やあ、ようこそいらっしゃい!と外からの| 来訪者たち《猟兵たち》を快く歓迎する。あれよあれよと案内されたのは中層部あたりの特に賑わう大きな酒場。お酒も入ってすっかり構いたがり、話したがりになっている常連たちを軽く諫めた酒場の主人が、よかったら参加してっておくれ、と案内された経緯を説明してくれた。
復興1年を迎えたといえど街はまだまだ発展途上、整備が必要な場所もある。そこで各自治体の領主たちよりどのような都市にしたいかという意見が募られて、取りまとめられた結果、街のシンボルたる花傘がある場所を記念公園にしたい、という酒場の主人の案が採用されたそうだ。
花傘の持ち手を囲うように花壇を作り、節目節目のお祭りに記念の花を植えていく。次年度より新都周年祭と名を改める誕生祭を迎えるごとに、花壇は花で満たされて、10周年を迎えるころには花で満開の見事な公園となるーーそんな夢のような計画。
今年はそんな大がかりな計画の最初の年ーーだからこそ、住人は勿論、外から訪れてくれた旅人たちからも記念の花の募っているのだそうで。だから連れてこられたんだろうね、と主人は笑う。
計画の立案者ということで主人が責任もってそれらを植えて、街の住人たちがお世話をしてくれるそうなので、好きな花のものを預けてみたらどうだろう。季節?そんなものはどうにだってなる。どんな花でも開花は街の創立記念日に合わせるそうで。どうやって?まあまあ、そんな細かいことは気にせずに。
新たな世界にささやかだけど、自分の軌跡をのこしていくのもーーたまには、きっと、いいだろう。
さあ、貴方はどんな花を預ける?
勿論、預けないのも全然ありだ。
豪華な食事に美味しいお酒(未成年はダメだよ)。働いた後のご馳走を存分に楽しんで。
お祭りは楽しんだもの勝ちなのだから。
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MSより
・記念のお花を植えることができます。
・苗、種、なんでもいいです。植えたい方はプレイング冒頭に🌹(薔薇の絵文字)
・お花お任せは🌹🌹(薔薇の絵文字2つ)
・植えなくてもいいです。自由にお祭りお楽しみください。
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天日・叶恵(サポート)
私なりの、お狐さまの矜持としてささやかなお願いがあればついでで積極的に叶えたいです
例えば、探しものを見つけたり、忘れ物をこっそり届けたり、道をこっそり綺麗にしたり、といったものです
それ以外では、オブリビオン退治に必要であればできるだけ違法ではない範囲でお手伝いしたいと思いまーす
戦闘については、昔は銀誓館学園で能力者として戦っていたので心得はありますー
補助や妨害といった動きが得意ですねぇ
あとは、白燐蟲へ力を与えて体当たりしてもらったり…術扇で妖力を込めたマヒ効果の衝撃波を出したり、でしょうか?
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも公序良俗に反する行為はしません。
●瑠璃色の空の花
ふわり、灰色の豊かな髪が花の香りの風に靡く。天日・叶恵(小さな神社のお狐様・f35376)は賑わう酒場をこっそり抜け出して、テラス席でのんびりと街並みを楽しんでいた。あたたかなお茶と甘いケーキを味わいながら、今は月と星が一面に輝く夜空を見上げて、マスターに手渡した種がいずれ花咲く情景を思う。叶恵が酒場の主人に預けた花はネモフィラだ。ネモフィラとは厳密にはムラサキ科ネモフィラ属に分類される植物の総称で、咲く花の特徴でそれぞれ呼称が付いている。叶恵はその中でも特に大きな花を咲かせるインシグニスブルーを選んだ。空の様な青さが美しい、あの有名なネモフィラだ。
「多めに種を渡しましたから、無事に咲くことができたら、きっと空のような光景になるでしょう」
街のシンボルたる花傘は大きく、骨組みを伝う植物たちが生い茂ることがあれば、空を覆い隠してしまうのではないかーーと、何となくそんなことを思ったのだ。花で彩られる天上はさぞ見事だろうが、空の青さが望めないのは少し寂しい。もし誰かが空を見たいと望んだときに、ネモフィラの瑠璃色がそのささやかな願いに寄り添うことができればーー。
「ささやなかお願いを叶える為とはいえ、流石に花傘のお花を勝手に切ってしまう訳にはいかないですから。それにーーネモフィラの祝福がこの街にはきっと必要です」
ネモフィラの花言葉のひとつに、どこでも成功、というものがある。ネモフィラは、原産の地より新たな地へと種が渡った際、その強い生命力でぐんぐんと育ち、花を咲かせたという。都市を新たな地へと移し、この日よりまた一歩歴史を刻もうとするローゼリアスに相応しい花のひとつと言えるだろう。旧都がどうして壊滅したのか、その原因は今はまだわからない。災害か災厄かーーいずれにしろ、悲劇に見舞われたことは確かなのだ。だからこそーー
(どうかこの街にネモフィラの祝福がありますように。この街の新しい歴史が幸せなものでありますようにーー)
叶恵は瑠璃色の空の花にそっと願いを託して。
成功
🔵🔵🔴
山崎・圭一
お伽噺の舞台のような街だな
これは何処を歩いても飽きねーぞ
さて、蟲達。お前らも頑張ったんだからさ
街の雰囲気楽しんでけや
知らぬ間にコガネはどっか行っちまったみてェだし
俺は一人で散策しに行ってこよ
カラフルな家々、歴史の始まりを祝う人々
イチ写真家としてこの風景収めずにはいられねーってよ
……腹減った
街の人に声かけて美味しい飯食えるとこ教えてもらお
てわけで教えてもらったレストランでタルトフランベを頂く事に。
ピザ…なのか?これ
赤ワインとコルドンブルーも一緒に頂くぜー
花傘の街か。旧都も今と光景は変わんねぇンかな
ワイングラスごしに見える橙色の灯りが何処かノスタルジー
…次来る時はクレアを連れてくか
●花香に交じる
酒場のマスターの誘いをそっと断り、圭一は今だ賑わう街へと一人繰り出す。新たな地に自分の軌跡を遺すより、この街の新たな歴史の始まりを遺したい、そんなイチ写真家として抗いようのない| 性《さが》に駆られたからだ。銀の雨が降る世界では、新都誕生の瞬間などそうそう相まみえることはないから、尚更というもの。この歴史的な瞬間を見逃すなどあまりに惜しい。圭一は、長年連れ添う相棒ともいえるカメラで、人々の笑顔を、街の賑わいを、輝かしい時の一瞬一瞬を、ぱしゃりぱしゃりと次々に写していく。
そんな撮り歩きついでの散策――更についでにいつの間にかはぐれてしまったコガネの捜索――も、いつまでも飽きがこない。なんせこの街、どこもかしこもとにかく”映える”。コロンバージュ様式の家々は、ただでさえ愛らしい外観をカラフルに彩り、それを花々が飾るのだ。まるで。
「お伽噺の舞台のような街だな」
街の風景だけでもそう思わせるに充分なのに、あまつさえ花と生きる街の人々は、花に誘われる虫たちにも当然のように寛容なのだ。折角だからと放った白燐蟲たちが、花と、そして人と戯れる様も――子どもたちなど、蟲さんこんばんわ、と挨拶までしてきた――嗚呼、まるで本当に夢か童話そのもののよう。勿論、蟲たちが楽しむ風景も、ぱしゃりぱしゃりとカメラに収めることは忘れない。いつの間にか自分すらも楽しんでいた一人歩きに、すっかり心が満たされて――だがしかし。
「……腹減った」
減るものは減る。思えば昼間から今まで何も補給をしてない。そこそこハードだった連戦を終えたらすぐ下山して、そのまま食事も摂らずに街を歩いていれば、そりゃあ空腹にもなろうというもの。摂るもの摂らねば写真を撮るのもままならないくらい、大分、腹の虫がぐぅぐぅ空腹を訴えていた。とはいえ圭一に土地勘などあろう筈もなく。
「なあ、美味いもの食える店、どっか知らなねェかな?」
此処は素直に| スズメバチ型白燐蟲《マリア》たちときゃっきゃ戯れていた子どもたちを頼ることにした。
そんなこんなで連れてこられたレストラン。蜂さんたちにどうぞ、と子どもたちの一人に貰った| ピンクの薔薇《ティファニー》を一輪、胸ポケットに刺したまま――圭一が触れると枯れるので、胸ポケットに入れて貰いました――案内された席に着く。2階窓際、大きな通りを見下ろせるなかなかにいい感じの席で、窓ガラス越しの喧噪を楽しみながら注文を待つこと暫し。芳醇な香りの赤ワイン、マッシュルームがたっぷりのった| タルトフランベ《フォレスティエール》、子牛肉のコルドン・ブルーが運ばれてきた。食欲のままにコルドン・ブルーをナイフで切り分ければ、衣はさくりと軽い音を立て。一口食べればよく溶けたチーズが広がる肉汁と絡み合う――間違いなく| 腕のいい料理人《コルドン・ブルー》がいる店だ。美味いワインがより美味い。
(ピザ……なのか?これ)
タルトフランベ。ピザの割には心もとない薄さの生地を取り分けて。一枚かじれば意外とたっぷりのったマッシュルームでボリューミー。零さぬように気を付けながらも軽やかな味を楽しむ。そうして食事を楽しむ最中、ふと通りを見下ろせば、花傘からまたひらひらと花の雨が降る。
(花傘の街か。旧都も今と光景は変わんねぇンかな)
圭一はそっと、通りの人々と祝杯を捧げるように、ワイングラスを掲げた。グラス越しにぼんやりと覗く蛍袋のあたたかな灯が、どこかノスタルジックな雰囲気をつくりだし、つい山中にあった残骸の街――旧都のかつての光景に、失われた遠い過去に想いを馳せる。そこにまるで現実に引き戻すかのように、ふわりと鼻を擽ったのは、ダマスク・クラシックの甘い香り。圭一にとって最近は、すっかり当たり前のように身近にあるその香りだが、しかし今はそれを纏う大切な人の姿は此処になく――郷愁とは別の、寂しさに、駆られる。
「……次来る時はクレアを連れてくか」
(そういえば花も童話も好きだったな)
自分だけにゆるされた名前をそっと呟いて、連れてきたときの反応を想像してみる。きっときらきらと目を輝かせて、自分だけに見せるといった花のような笑顔で|咲う《わらう》のだろう。思わずくすり、と微笑んで――圭一は| 赤ワイン《郷愁》を飲み干した。
大成功
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こうして街を訪れた猟兵たちは、花傘新都ローゼリアスの新都誕生祭を思い思いに楽しんで。眠らぬ街の夜は賑やかに更けていく。――めでたしめでたし。
さて、それは果たして本当に?水を流れる美しい花筏も、やがては澱み穢れとなるように、華やかなこの街にも抱える問題は様々に。されどそれはまたいずれ、語るべきときがきたときに。終わりを告げるハツカネズミが可愛くちょろりと鳴いたので、ひとまずはこれにて。おしまい、おしまい。