水神祭都にまたたく凶星
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「♪~♫~……よしっ。いい感じ」
夜の運河で|星霊建築《ドロースピカ》の星明かりに照らされて、歌いながらゴンドラを漕ぐ少女がいる。
彼女の名はリゼッタ。この水神祭都アクエリオで、今年自分の船を手に入れたばかりの新米ゴンドラ乗りだ。
「まだちょっと揺れるし、スピードも全然……でも、良くなってきてる、よね」
先輩達と自分の操船を見比べ、改善点を考えながら練習に励む日々。
たまに失敗して叱られたり、凹んだりする日もある。それでも彼女の毎日は充実していた。
「もっと頑張らなきゃ。いつか、1番のゴンドラ乗りに……アクエリオの星になるんだもの」
幼い頃から抱いた、ひとつの大きな夢が、少女を今日まで支え続けていた。
この都市国家で生まれ育った人間なら、誰もが1度は抱くであろう憧れ。しかし、彼女がその夢にかける想いは人一倍強く、真剣だった。
『その願い、叶えてあげるわ』
「……えっ?」
――故にこそ、その願いは万能の魔神を呼び寄せる。
声をかけられ、はっと振り返ったリゼッタのゴンドラの後部には、異形を纏った1人の少女がいた。
『この都市国家で1番のゴンドラ乗りに。かんたんなことよ、こうすれば』
異形に覆われていない少女の顔半分が笑みを浮かべるのと同時に、運河の流れが逆巻き、水が濁りだす。
恐怖に悲鳴を上げようとしたリゼッタは、異形の翼に包み隠され――そして、水神祭都に危機が訪れる。
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「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「エンドブレイカーの世界にある都市国家の1つ、『水神祭都アクエリオ』が、エリクシルによって滅亡する未来を予知しました」
|悪しき未来《エンディング》を破壊する、猟兵とは異なる超人「エンドブレイカー」の故郷であるかの世界は、万能の魔神「エリクシル」の脅威に晒されている。エリクシルは生命体の願いを歪んだ形で叶える事で、死者を蘇らせ、国を滅ぼすほどの力を発揮し、さらには他世界にまで侵略の魔の手を伸ばそうとしているのだ。
「水神祭都アクエリオは、都市の隅々まで張り巡らされた運河によって繁栄してきた都市国家です。この都市の交通、運搬、観光の要となるのはゴンドラで、これを操る『ゴンドラ乗り』が花形の職業となっています」
歌いながら船を操り、運河を自由に渡るゴンドラ乗りはアクエリオの市民の憧れで、彼らの存在無くしてアクエリオの発展はなかったと言っても過言ではない。だが、それゆえにゴンドラ乗りには誰もがなれる訳ではなく、一流と呼ばれるようになるまでの道程も簡単ではない。
「今回の事件を起こしてしまったのは、リゼッタという新米ゴンドラ乗りの少女です。彼女は『アクエリオで一番のゴンドラ乗りになりたい』という夢を抱いて、操船の修行に励んでいましたが……その願いを、エリクシルに利用されてしまったようです」
先述の通り、エリクシルは生命体の願いを悪意に満ちた歪んだ形で叶える。夢見る少女の純粋な願いは、「アクエリオのゴンドラ乗りが1人だけになれば、その者が1番のゴンドラ乗りになる」と曲解された。その結果、アクエリオの世界法則は歪められ、都市国家全域に未曾有の災害が起きようとしている。
「エリクシルの力で世界法則を歪められたアクエリオでは、各地で運河が氾濫し、津波や大渦などの大規模な水害が発生しています」
リゼッタ以外のゴンドラ乗りと、ゴンドラ乗りになる可能性のあるアクエリオ市民全てが水底に沈むまで、この災害は止まらない。このままでは都市国家の崩壊は時間の問題であり、大至急元凶のエリクシルを止めなければならない。
「おそらくエリクシルは水害の中心にいるはずです。願いの主であるリゼッタさんも一緒でしょう」
そこに向かうためには、アクエリオ中で巻き起こる水の異常災害を乗り越えていかなければならない。押し寄せる津波、大渦、鉄砲水、これらを凌ぎながら運河を遡っていけば、エリクシルの元に辿り着けるだろう。
「道中ではエリクシルの力で呼び出されたモンスターも道を阻んでくるはずです」
万能の魔神エリクシルの力は、かつてエンドブレイカーが滅ぼした仮面の怪物『マスカレイド』さえも蘇らせる。過去にもアクエリオを滅亡の危機に陥れた危険性は現在でも健在であり、猟兵にとっても油断ならない敵となるだろう。
「そしてエリクシルは、復活させたマスカレイドの中でも特に強力な個体に、願いの力を移植して操っているようです」
このボス級のマスカレイドを撃破すれば「願いの力」も失われ、アクエリオの危機は去る。ただし、万能の魔神が操る力は絶大であり、そのまま戦えば苦戦はまぬがれない強敵である。敢えて全力勝負を挑むのも良いが、勝算を高めるには敵の力を弱める必要がある。
「エリクシルが叶えようとしている、今回の事件の発端となった願い。それをかけたリゼッタさんが勝利の鍵です」
囚われている彼女に呼びかけ、その目を覚ますことができれば、敵を強化している「願いの力」は弱まる。
その状態のマスカレイドであれば、十分に勝機はあるだろうとリミティアは語った。強敵には違いないものの、単独で都市国家を滅ぼすほどの絶大なパワーは失われるはずだと。
「ひとりのゴンドラ乗りの罪のない願いを、最悪の形で叶えさせるわけにはいきません。どうか、皆様の力をお貸しください」
説明を終えたリミティアは手のひらの上にグリモアを浮かべ、エンドブレイカーの世界への道を開く。
水の災いによって滅びようとしている、水神祭都アクエリオ。かの地をエリクシルの魔の手から守る戦いが幕を開ける。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」
戌
こんにちは、戌です。
待ちわびていた新世界。今回のシナリオはエンドブレイカーの世界で、都市国家を崩壊させようとするエリクシルの企てを阻止する依頼です。
舞台は水神祭都アクエリオ。過去作にも登場した都市国家ですが、オープニングを一読いただければそれ以上の知識は今回のシナリオでは必要ありません。
1章はこの都市国家を襲う水害を乗り越え、荒れ狂う運河を遡ってエリクシルの元へ向かう冒険パートです。ゴンドラ乗りよろしく船で渡ってもいいですし、空を飛んでも構いません。
2章はエリクシルの力で復活したマスカレイドとの集団戦です。
オブリビオンではありませんが、戦いにおいて特に留意することはありません。倒すべき敵に変わりはないので、全力で撃破してもらって結構です。
3章はエリクシルに「願いの力」を移植された、マスカレイドのボスとの戦闘です。
願いの力を操るマスカレイドは超強敵ですが、願いの主である見習いゴンドラ乗りの少女、リゼッタの目を覚まさせることができれば、その力は弱体化します。
願いを歪められるまでのリゼッタは、夢にひたむきで努力家な女の子です。その心に寄り添うような呼びかけがあれば、成功率は高まるでしょう。
無事にボスを撃破すれば「願いの力」は失われ、アクエリオの崩壊の危機は去ります。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 冒険
『エリクシル大災害』
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POW : 体力と胆力で災害に耐えながら進む
SPD : 災害の影響を少しでも凌げるルートを探し、急いで進む
WIZ : 広域魔法を展開し、僅かでも災害の被害を和らげながら進む
イラスト:純志
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
暗都・魎夜
POW
【心情】
ゴンドラで観光気分の街って聞いていたのに、なんてこった
まあ、観光で回るのは後の話だ
ひとまずはエリクシルを止めねえとな
【心情】
「師匠が言ってたぜ、"退路は前にしかない"ってな」
ゴンドラを借りて、水路を使って移動
街も危なそうなので、最短距離を進行
「ゴンドラ乗るのは修学旅行以来か? まさか自分が動かす側になるとは思わなかったぜ」
「運転」「運搬」でゴンドラを操縦
昔見たゴンドラ乗り(イタリア人)の様子を思い出しつつ
一般のボート位は動かしたことはある
こんだけ街があれてりゃ、エリクシル以外の敵が出てきそうだし「索敵」「偵察」は怠らず
出来れば嫁と完全に観光で来たい場所だったぜ
「ゴンドラで観光気分の街って聞いていたのに、なんてこった」
暗都・魎夜(全てを壊し全てを繋ぐ・f35256)が訪れた時には既に、水神祭都アクエリオは崩壊を始めていた。荒れ狂う激流が運河より溢れ、建物を破壊し、全てを押し流していく。観光地としても名高い風光明媚な水の都の姿は、もはや見る影もない。
「まあ、観光で回るのは後の話だ。ひとまずはエリクシルを止めねえとな」
この事態を引き起こした万能の魔神「エリクシル」。彼奴の力による都市国家の滅亡を防ぐのが、今回彼が引き受けた依頼だ。トレードマークのバンダナをなびかせ、濁った激流の来る方角を見る。元凶がいるとすれば、この異変の中心だろう。
「師匠が言ってたぜ、"退路は前にしかない"ってな」
過去に自分を救ってくれた師匠の言葉を引用しつつ、魎夜は運河の脇に落ちていたゴンドラを担ぎ上げる。
元の乗り手は無事に逃げられたのだろうか? 安否が気になるが、ひとまずここは事件解決のために船を借りさせてもらおう。
「ゴンドラ乗るのは修学旅行以来か? まさか自分が動かす側になるとは思わなかったぜ」
これでも一般のボート位は動かしたことはある。水路にゴンドラを浮かべ、昔の記憶頼りにオールを漕ぐ。
さる観光都市にてイタリア人のゴンドラ乗りが操船していた時は、こんな荒れ狂った流れでは無かったが。その時の様子を思い出しつつ手を動かせば、ぎこちなくも船は前に進んだ。
「街も危なそうだ、のんびり進んじゃいられないな」
激流の中に浮かぶ一枚の木の葉のように、魎夜のゴンドラは水路を行く。転覆しないよう懸命にバランスを取りつつ、進行ルートは最短距離を選ぶ。現在進行系で広がる都市国家への被害を考えれば、安全第一で迂回している余裕など無いだろう。
(こんだけ街があれてりゃ、エリクシル以外の敵も出てきそうだ)
そして都市国家に潜む敵は万能の魔神だけではない。いつモンスターの襲撃があっても即座に反応できるよう、彼は索敵と偵察を怠らなかった。猛獣のように細められた眼は揺れる船の上でも怪しいものを見逃さず、水中からの攻撃も警戒して、濁流の中を動くものがないか目を凝らす。
「しかし本当に元はいい街だったんだな」
索敵中に自然と目に入るのは、何層にも築き上げられたアクエリオの街並み。星霊建築という魔法技術によって創られた都市国家は、何千何万という村や町、森や川などの自然を内包しており、頭上を見上げれば天井に「空」まで再現されている。本来なら観る場所には困らない都市国家だっただろう。
「出来れば嫁と完全に観光で来たい場所だったぜ」
愛する者と一緒にのんびりとゴンドラに揺られて都市巡りなど、きっと良い思い出になっただろう。いや、ここでアクエリオを救う事ができれば、そうした機会もまた訪れるかもしれない――この都市国家を救う希望と決意を胸に抱いて、魎夜は激流の中をひたすらに進むのであった。
大成功
🔵🔵🔵
リィリン・エンドローフ
肩にお供代わりに星霊スピカを連れておきますの
(スピカに呼びかけるなら"お兄様"と呼びます)
ゴンドラの操縦の仕方は聞いた事が在るような気もしますが、水路をぶつからずに通り抜けられる気はしませんの
私は貴族の出ですから、巻き込まれても焦らず対処することにしますのよ
黒鉄兵団の紋章を、ゴンドラに書き込んで津波を相殺するようにしますから
……私の道を阻むなんて、どんな教育がされておりますの?
大渦も鉄砲水も、なんやかんやとやや正確がひん曲がった事を口にしながら、多少ゆっくりでも障害を乗り越えていこうかと
ゴンドラ乗りに頼んでいるなら、当然、私が居る限り貴方様の操縦の邪魔はさせませんのよ
さあ、慌てず急いでと急かす
「都市国家の滅亡なんて、見過ごす訳にはいきませんのよ」
エリクシルの力で崩壊しつつある水神祭都に、ひとり降り立ったのはリィリン・エンドローフ(鞭撻の虎・f38937)。彼女はかつて、この世界を|仮面の魔物《マスカレイド》の手から救ったエンドブレイカーの一人。そして今は猟兵として、万能の魔神エリクシルからこの世界を守る者だ。
「行きましょう、"お兄様"」
肩に乗せたお供代わりの星霊スピカにそう呼びかけて、彼女は激流渦巻く現在のアクエリオに乗り込んだ。
この水害の中で目的地に向かうのは簡単な事ではない。もっとも堅実なのはやはりゴンドラを利用することだろうか。住民は避難中とはいえ、運河の近くにはまだゴンドラ乗りも残っているだろう。
「そこの貴方様。私の足になってくださいませ」
「え、えっ。あたしですか?」
ふいにリィリンの指名を受けたゴンドラ乗りは、目を白黒させて驚いていたが。「これはアクエリオを救うためですのよ」と言われれば否も応もない。高飛車お嬢様を船に乗せて、おっかなびっくり激流に漕ぎ出す。
(ゴンドラの操縦の仕方は聞いた事が在るような気もしますが、水路をぶつからずに通り抜けられる気はしませんの)
というわけで本職の力を頼ることにしたリィリン、もちろん客として乗っているだけというワケではなく、ちゃんと仕事をする気はある。魔想紋章士としての技をふるって、船体に書き込むのは【黒鉄兵団の紋章】。アビリティからユーベルコードへと進化を遂げた力が、ここに披露される。
「……私の道を阻むなんて、どんな教育がされておりますの?」
津波に大渦に鉄砲水、そして流されてきた瓦礫や大木がゴンドラに押し寄せれば、甲冑騎士の幻影が現れてそれらを相殺する。眼前まで迫った水害にゴンドラ乗りは「ひぇえ!」と叫ぶが、リィリンは水しぶきを鬱陶しそうに払うだけで平然としたもの。
「当然、私が居る限り貴方様の操縦の邪魔はさせませんのよ」
意思なき水害にすらなんやかんやと文句を口にする、やや性格がひん曲がったところはあるものの、彼女は貴族の名誉と家名に恥じるような行いは決してしない。事件解決に協力させるからには怪我ひとつさせないのが道理。黒鉄兵団の幻影はその意に応えて鉄壁の陣でゴンドラを守る。
「す、すごいですね。アクエリオ中がこんな事になってるのに、堂々としてて……」
「私は貴族の出ですから、巻き込まれても焦らず対処することにしてますのよ」
揺れるゴンドラの上でも堂々とした佇まいを崩さず、リィリンは前だけを見ている。自意識過剰なきらいはあるものの、その態度は努力と経験に裏打ちされた実力によるもの。これが本物の貴族なのかと、ゴンドラ乗りとしては感心するしかない。
「さあ、慌てず急いで」
「は、はいっ」
リィリンが急かすとゴンドラ乗りは操船に集中し、歌とオール捌きで揺れを安定させる。この分なら目的地に着くまで転覆することは無いだろう。高飛車お嬢様を乗せたゴンドラは順調に激流の源に迫っていく――。
大成功
🔵🔵🔵
サツキ・ウカガミ
アクエリオ……綺麗な都市が、こんなことに。
エリクシルを早く止めないと!
なるべく都市への被害を抑えたいけれど、
ボクは水害を抑える術を持ってない。
悔しいけれど、ボクが今出来ることは、
マスカレイドのもとに
いち早くたどり着くことだね。急ごう!
水の流れが厳しいから、
なるべくそれに邪魔されずに行きたいね。
水害の中心へ【ダッシュ】で向かう。
水の流れや足場の状況を【見切り】、
無事な陸路や建物の壁に屋根、
水路に浮かぶものなど、
足場に使えるものを使って【悪路走破】するよ。
足場がないところは「月牙」を振るって
衝撃波で足場を作ろう。
【水上歩行】は、最後の手段。
待っててねアクエリオの皆、
悪い未来を壊してくるからね!
「アクエリオ……綺麗な都市が、こんなことに」
エンドブレイカーとして往時のアクエリオの姿を知るサツキ・ウカガミ(|忍夜皐曲者《しのびよるめいはくせもの》・f38892)は、その現在の有様を思わず嘆いた。水神祭都と謳われた水の都市国家は、牙を剥いた水の災いによって崩壊しようとしている。
「エリクシルを早く止めないと!」
この事態を引き起こしたエリクシルの「願いの力」を消し去れば、まだ崩壊は止められるはず。この都市に住まう大勢の人達の|悪しき未来《エンディング》を覆すために、少女は荒れ狂う水害の中心に向かって駆けだした。
(なるべく都市への被害を抑えたいけれど、ボクは水害を抑える術を持ってない)
忍者らしい俊敏な身のこなしで都市を進めば、現状の被害状況は嫌でも目に入る。津波で破壊された建物、濁流に沈む木々、転覆した無人のゴンドラ――それらを見るたびサツキの胸には悔しさがつのる。せめて住民だけは無事に避難してくれているようにと祈るばかりだ。
「悔しいけれど、ボクが今出来ることは、マスカレイドのもとにいち早くたどり着くことだね。急ごう!」
決意をより強くした彼女の足は一層速くなり、風のように水神祭都を駆ける。同時に目を凝らして水の流れや足場の状況を見極め、目的地までの最短経路を探る。この荒れ狂う水の源流にこそ、倒すべき敵が待っているはずだから。
(水の流れが厳しいから、なるべくそれに邪魔されずに行きたいね)
人並み外れた身軽さと身体能力を持つサツキには、普通の人間では不可能なルートも開拓できる。無事な陸路や建物の壁に屋根、果ては水路に浮かんでいる瓦礫や樹木など、足場に使えるあらゆるものにピョンピョンと跳び移って、水害の中を走破していく。
(水上歩行は、最後の手段かな)
これだけ水面が荒れていると、水の上を走るほうが寧ろリスクは高そうだ。水を御する星霊術「ドローディオス」を仕込んだ草履「沼浮沓」は念のため履いているが、その力に頼る必要もなく彼女は先へ進んでいく。
「あっと、足場がない」
移動は順調だったが、それでも何処かで道の途切れる場所はある。元は都市の動脈を司っていたであろう、横幅の広い運河。先に進むためには向こう岸に渡る必要があるが、激流の中に適当な足場は浮いていない――しかし、サツキは焦ることなく腰から太刀を抜いた。
「澄みわたれ、月牙」
月光の如く煌めく【月牙】の斬撃が空を斬り、その軌跡に三日月型の衝撃波が残る。彼女はそれを繰り返し行うことで、運河に橋をかけるように足場を作っていく。しばらくすれば衝撃波は消えてしまうが、ここを通り抜けるまでは保つはずだ。
「待っててねアクエリオの皆、悪い未来を壊してくるからね!」
運河の上を飛ぶように走り抜けながら、サツキは誓いの言葉を改めて口にする。悪しき終焉を終焉させる、エンドブレイカーの信念は猟兵となった今でも変わりはしない。この水神祭都を元の美しい都に戻すために、新たな|忍術《ユーベルコード》を刻んだ瞳はまっすぐに前を見据えていた――。
大成功
🔵🔵🔵
ソラウ・エクステリア
運命の再開
心なき咎人の続き
進む方法は結界術とオーラ防御と衝撃波の壁を貼るよ!エミリアーノと一緒に発動すれば大丈夫だね!
行こう!ライズサン!
『…ライズサン君』
エミリアーノは心配した声を出す
『あっ…ああ』
あの日以来ライズサンは元気は無い
リミティアさんに聞いたがライズサンの言っていたフラーウムとは完全に別人だと言い切られてしまった事と友達を手にかけてしまった事を気にしているようだ
さあ行こうとした時
誰か溺れていない?助けないと!
『…仕方ねえか』
溺れている人を引き上げる
『えっ…は?』
ライズサンが硬直していた
『?!』
その人をみたエミリアーノも驚いていた
その人は前に戦った『フラーウム』にそっくりだったからだ
フラーウム・ティラメイト
運命の再開
f38698ソラウさんに助けられる
ソラウ達が来る前
内緒で来ましたが凄い勢いですね
怪物の力…興味が湧きました
凍結攻撃とユーベルコードの力で水を防ぎながら行きましょう
彼女は気づいていなかった
マーアリアが一人で行かせなかった理由は彼女が魔法の制御が全然駄目という事に…
そうでした私は魔法が下手でした
あっさりゴンドラが転覆し藻掻く中
彼女は気づいた
ソドムの料理をもっと食べるべきでしたね…
私は波に飲まれたが誰かに掬い上げられた
げほっ…ありがとうご…
あれ、ライズサンじゃないですか?どうしたんですか?故郷に帰ったはずでは?
『フラーウム…なのか?』
はい、そうですよ?
私は胸を刺された後、光に包まれて…そのあとはマーアリアに拾われて一命を取り留めましたよ
あの後帰れたようで良かったです
ライズサンは無言で嗚咽していた
泣かないでライズサン…
彼の頭を撫でた
その後はソラウさん達に背中に乗せてもらいました
私のゴンドラとは違いますね
とっても速いですね…
『あのフラーウム…マジで別人だったのかよ』ライズサンは赤面でした
「結界術とオーラと衝撃波の壁を貼るよ! エミリアーノと一緒に発動すれば大丈夫だね!」
未曾有の水害に襲われる水神祭都アクエリオで、ソラウ・エクステリア(歌姫の時空騎士と時空龍の協奏曲・f38698)は先に進む方法を練っていた。宇宙の秩序を守る時空騎士として、万能の魔神から都市国家の民を救わんとする彼女の士気は高い。
「行こう! ライズサン!」
『………』
だが、彼女の仲間である時空龍ライズサンは、浮かない顔をして黙りこくっていた。ここに来る以前、別の依頼であった出来事をまだ引きずっているようだ。同行するもう一体の時空龍エミリアーノが、その様子を心配して声をかける。
『……ライズサン君』
『あっ……ああ』
なんとか返事をしたものの、ライズサンの声にはやはり元気がない。あの日以来彼はずっとこうだ――過去に因縁のあった人物のオブリビオンと遭遇し、手にかけてしまった事を今だに気にしている。やむを得ない事情があったとはいえ、簡単に割り切れる事ではないのだろう。
(リミティアさんに聞いたけど、ライズサンの言っていたフラーウムとは完全に別人だって)
はっきりとそう言い切られてしまった事もまた、ライズサンの憂いを深くする一因なのだろう。別人だからといって友人を手にかけた辛さが軽くなるわけでもない。ソラウも深く同情はするが、今はこの都市国家を救うことが先決だ。後悔に囚われてまだ生きている人達を見殺しにすることはできない。
「さあ行こう……あれ? 誰か溺れていない?」
オーラと衝撃波による水害避けの結界を張っていざ進もうとした時、ソラウは運河の中から上がるかすかな水しぶきと人影らしきものに気付く。もしや、水害から逃げ遅れたアクエリオの住民がまだいたのだろうか。
「助けないと!」
『……仕方ねえか』
流石に目の前で死にそうな人がいるとなれば、ライズサンも落ち込んでばかりはいられず、切り替えるように頭を振ってからざぶんと運河に飛び込んだ。星の海を翔ける時空龍なら、この程度の激流は耐えられよう。そのまま溺れている人の元まで泳いでいき、岸に引き上げようと――。
『えっ……は?』
『?!』
救助したその人の顔を見た瞬間、ライズサンが硬直する。エミリアーノも驚きのあまり言葉を失っていた。
一体どうしたのだろうかと、ソラウは首を傾げつつ彼らのもとに近寄って――その驚愕のわけを理解する。
「えっ……この人って」
溺れていたその女性の顔は、前の依頼で戦ったオブリビオン『フラーウム』の顔にそっくりだったからだ。
三人が揃って息を呑む中、女性は「こほっ」と咳き込んで水を吐くと、うっすらと目を開いて辺りを見る。
「げほっ……ありがとうご……あれ、ライズサンじゃないですか?」
その女性、フラーウム・ティラメイト(因果獣と因果を喰らう者を宿す探究者・f38982)はライズサンの顔を見ると、無表情ながらも親しげで人懐っこい態度を見せる。まるで、ずっと会えなかった友人と再会したような反応だ。
「故郷に帰ったはずでは?」
『フラーウム……なのか?』
「はい、そうですよ?」
この表情、この言動は間違いない、あのオブリビオンではなくライズサンの知る『フラーウム』のものだ。
ライズサンの記憶では、彼女は確かに自分を庇って死んだはず。それがなぜ故郷ではなくエンドブレイカーの世界にいて、しかも昔と変わらない姿で生きているのか。感動と同じくらいの疑問が頭の中に溢れかえる。
「私は胸を刺された後、光に包まれて……そのあとはマーアリアに拾われて一命を取り留めましたよ」
それは数千年前の話。ダークセイヴァーに流れ着いた幼き日のライズサン達は、このフラーウムに生命を救われた。引き換えに彼女は敵との戦いで致命傷を負ったが、「因果獣皇マーアリア」の助けによって救われ、長い眠りを経て現代に目覚めたのだ。
「ここにはアーマリアには内緒で来たのですが……」
同時に猟兵として覚醒した彼女は、ソラウ達と同じようにアクエリオの危機を聞きつけてこの世界にやって来た。それがなぜ溺れて救けられる羽目になったのか、これまでにあった事を彼女はかいつまんで語りだす。
「内緒で来ましたが凄い勢いですね」
遡ること数刻前。フラーウム・ティラメイトは運河のほとりから津波のように荒れ狂う濁流を眺めていた。
現在、巨大な都市国家の全域でこのような災害が発生している。その元凶となったのは一人の少女の願いを利用した、万能の魔神エリクシルの力だという。
「怪物の力……興味が湧きました」
一度この目で確認してみたいと、彼女は水害の中心地に足を進める。まともに歩いて進めるような状況ではないが、彼女にはユーベルコードの力がある。アーマリアにもらった「因果獣の杖」を手に呪文を唱えれば、周囲に雪と氷がちらつき始める。
「邪魔な水は凍らせてしまいましょう」
フラーウムが発動した【エレメンタル・ファンタジア】は、猛吹雪となって水を凍結させ、氷の壁を作って水害を防ぐ。この間に彼女は置き捨てられていたゴンドラに乗って、らくらく先に進もうとしたのだが――。
「あら?」
彼女は気づいていなかった。|保護者《アーマリア》が彼女を一人で行かせなかった理由は、魔法の制御が全然ダメだからという事に。コントロールを外れた吹雪は無秩序に暴れだし、強風に煽られたゴンドラはあっさりと転覆してしまう。
(そうでした私は魔法が下手でした)
船から投げ出されたフラーウムはようやく自分のうっかりに気付き、冷たい水の中でもがく。だが後悔先に立たずとはこの事か、無情にも波に飲まれて水底に沈んでいく。因果獣の加護があるとはいえ、ダンピールである彼女はこのまま溺死もあり得る。
(ソドムの料理をもっと食べるべきでしたね……)
と、心残りを抱えたまま意識が遠のきかけたところをソラウに発見され、ライズサンに救助されたという訳だ。もし彼女らがたまたまここを通りがからなければ、本当に危ない所だったかもしれない。常に無表情かつ淡々としているので分かりづらいが、とんだうっかりさんである。
「あの後帰れたようで良かったです」
ともあれ無事救出されたフラーウムは、さっきまでの事が無かったかのように旧友との再会を無垢に喜ぶ。
そのマイペースさを目の当たりにしたライズサンは、顔を隠して無言で嗚咽する。とても言葉にはできない感情が、心の中で渦巻いているのだろう。
「泣かないでライズサン……」
フラーウムは幼い子供にするように、優しくそっと彼の頭を撫でた。彼も、それを振り払おうとはしない。
数千年ぶりとなる二人の再会を、ソラウとエミーリアは慈しむように穏やかな微笑みで見守っていた――。
「フラーウムさん、乗り心地はどう?」
「私のゴンドラとは違いますね。とっても速いですね……」
その後、フラーウムはソラウ達と一緒にライズサンの背中に乗せてもらい、事件解決に向かう事となった。
魔法を使うとまた同じ事故が起きかねないので自重し、水害はソラウの防御結界に防いでもらう。オーラの衝撃波に守られた時空龍は、快調に都市国家の空を翔けていく。
『あのフラーウム……マジで別人だったのかよ』
その道中、ぽつりとライズサンが漏らした呟きは、水音に紛れて他の者にはよく聞こえなかったようだ。
あの時の言動を振り返ると、恥ずかしさで赤面が堪えきれない――他人の空似とは恐ろしいものだと、心に深く刻んだ時空龍であった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
空桐・清導
【POW】アドリブや連携も大歓迎だ
「エリクシル…!
少女の願いをこんな形で叶えるなんて、絶対に許せねえ!!」
災害によって巻き起こる嵐や運河の荒れ模様を見て吼える
これだけの災害の中にありながら、小揺るぎもしない
その姿に清導の怒りの強さが窺えた
UCを発動して嵐の中を突っ切ってエリクシルの元に飛翔する
遮る風を切り裂き、叩き付ける雨は彼の熱によって蒸発した
途中で助けを求めている人が居れば高い建物と言った
安全地帯に避難させていく
怯える人々が居れば安心させるように声を掛け、
みんなで協力して凌いで欲しいと伝える
「必ず空は晴れる!それまで生きるんだ!」
「待ってろよリゼッタ!
キミも、この街も必ず救ってみせる!!」
「エリクシル……! 少女の願いをこんな形で叶えるなんて、絶対に許せねえ!!」
災害によって巻き起こる嵐や運河の荒れ模様を見て、空桐・清導(ブレイザイン・f28542)は怒りの咆哮を上げる。「他のゴンドラ乗りが死に絶えれば、自分がアクエリオで1番のゴンドラ乗りになれる」――そんな手段で願いが叶えられることを、かのリゼッタという少女は断じて望まなかったはずだ。
「すぐにぶっ飛ばしに行ってやるからな!」
風や激流の音にも負けじと大声で吼える。これだけの災害の中にありながら、彼の身は小揺るぎもしない。
その姿にはヒーローとして、罪なき少女の祈りを利用した|万能の魔神《ヴィラン》に対する、彼の怒りの強さが窺えた。
「超鋼真紅ブレイザイン、出動!」
滾る意志の力を黄金のオーラに変えて、真紅の機械鎧を纏った清導は都市国家を飛翔する。【スーパー・ジャスティス】を発動した彼のパワーの前では、この程度の災害など障害にもならない。嵐の中を突っ切って、エリクシルの元まで一直線だ。
「この災害の先に、エリクシルとリゼッタがいるんだな!」
遮る風を真紅が切り裂き、叩きつける雨は彼の熱によって蒸発した。まっすぐに翔けていくその姿は、地上からは流星のように見えただろう。災害の渦中にいるアクエリオの住民には、希望を呼び込む吉星のように。
「誰か……救けてくれ……」
「! 今の声は!」
嵐に紛れて微かに聞こえた誰かの声を、清導は聞き逃さなかった。さっと辺りを見回せば、濁流に呑まれた建物の天井に、逃げ遅れた人間がいる。先を急ぐ身ではあっても、助けを求めている人を放っていく事など、ヒーローとしてできるわけがない。
「待ってろ、今助ける!」
「たすけ……わわっ?!」
彼はその人達の元にすぐさま翔けつけると、災害の届かない安全地帯まで移送する。水辺から離れた場所や高い建物ならば、しばらくは水害に見舞われる心配はないだろう。機械鎧で強化された身体とユーベルコードの飛翔能力によって、救助活動は迅速に進められた。
「必ず空は晴れる! それまで生きるんだ!」
住んでいた都市が突如このような惨状となり、住民はみな不安な気持ちでいるだろう。清導は彼らを安心させるように声をかけ、みんなで協力して凌いで欲しいと伝える。どんなに激しい嵐でも、いつかはきっと止むのだからと。
「わ……わかりました」
「私達、負けません!」
力強い励ましの言葉を受けて、住民達の怯えもいくらか収まったようだ。パニックを起こさずに避難場所の安全確保や怪我人の手当などを手分けして行う。その様子を見届けてから、清導は再び黄金のオーラを纏って飛び立った。
「待ってろよリゼッタ! キミも、この街も必ず救ってみせる!!」
誰かを救う為に、清導は決して諦めない。ヒーロー・ブレイザインはいつだって救いを求める者の味方だ。
嵐も吹き飛ばすような熱い想いを滾らせて、彼は水神祭都を飛翔する。全ての災いの元凶たるエリクシル、奴らに怒りの拳を叩きつけるまで、あと少しだ――。
大成功
🔵🔵🔵
マシロ・コールドウェル
エリクシル、遂に独り言な願いまで叶えるようになっちゃったかー。
そんじゃ、アクエリオの下層に店を構えてるマシロさんとしては商売上がったりだし?
何より公認の先輩ゴンドラ乗りとして、やる気のある後輩はほっとけないし?
一丁助けに行っちゃいますかねッ!
喉の調子よーし!ゴンドラにドローディオスも準備よーし!
ほんじゃ、いっきまーす!
『♪ Dona eis requiem…』
災害のせいで沈んだ建物とかで座礁しちゃまずいし、流れも変わってそうかな?
だけど、スピードも重要、と。
んじゃ、ちょいと新たな道を造ってくかなッ!
前方の廃墟や障害物付近に人が居ない事を確認してから…
Dブラストで、道を撃ち拓くッ!!
「エリクシル、遂に独り言な願いまで叶えるようになっちゃったかー」
15年以上前からエンドブレイカーとしてこの世界を守るために戦ってきたマシロ・コールドウェル(真白色の鎮魂歌・f38912)は、エリクシルの事もよく知っている。それがまだ「万能宝石」と呼ばれていた頃から危険な存在であったが、本性が明らかとなってからはますます邪悪さに磨きがかかっている気がする。
「そんじゃ、アクエリオの下層に店を構えてるマシロさんとしては商売上がったりだし? 何より公認の先輩ゴンドラ乗りとして、やる気のある後輩はほっとけないし? 一丁助けに行っちゃいますかねッ!」
いち都市国家民としても個人としても、この惨状を見過ごす理由はひとつも無い。本来の美しきアクエリオを取り戻すために、彼女は自前のゴンドラに乗って荒れた運河に漕ぎ出す。そう、彼女はこの都市を象徴する水運の要、ゴンドラ乗りの1人でもあるのだ。
「喉の調子よーし! ゴンドラにドローディオスも準備よーし! ほんじゃ、いっきまーす!」
点検を終えたマシロが澄んだ声で歌い始めると、ゴンドラはすいすいと動き始める。ゴンドラ乗りは歌う事で船と共鳴し、目的地へ向かう最適な運河を見つけることが出来る。網目のように張り巡らされたアクエリオの運河を、自由に航行できるのは彼女らだけだ。
『♪ Dona eis requiem……』
激しい流れの中でも彼女のゴンドラは小揺るぎもせず、快調な速度で逆流を登っていく。ゴンドラは乗り手と共に「成長する船」でもあり、乗り手が経験を積めば性能も向上する。それ即ち、長年この都市に店を構えてきたマシロの力量と経験が、並のゴンドラ乗り以上であることを示していた。
「災害のせいで沈んだ建物とかで座礁しちゃまずいし、流れも変わってそうかな?」
巧みなオール捌きと歌声で荒波を乗り越えつつ、マシロは進路を確認。エリクシルがもたらした水害の影響は大きく、知っている運河も普段と同じようには進めない。安全に進もうと思えばルートの確認や迂回などで時間を取られることになるだろう。
「だけど、スピードも重要、と。んじゃ、ちょいと新たな道を造ってくかなッ!」
悠長にしていてアクエリオのほうが先に滅びてしまったら元も子もない。多少強引にでも道を開拓すべく、彼女は黒鋼の紫煙銃『overload:Exusiai』を抜き、魔想紋章士の力で銃口に紅い少女の紋章を展開させる。
「イブ・ザ・プリマビスタの紋章展開……『根源の力』、励起完了!」
前方に立ち塞がるのは水害で押し流されてきた廃墟や瓦礫の障害物。付近に巻き込まれそうな人はいない。
盛大にぶっ放しても問題ないことを確認してから、マシロは紫煙銃の照準をロック。高らかに叫ぶと同時にトリガーを引き絞った。
「Dブラストッ、|発射《テ》ェーッ!!」
撃ち出されるのは創世の輝きを伴う魔力の奔流、全てを虚無に帰す紫冥の光芒だ。それに呑み込まれた障害物は跡形もなく消滅し、ゴンドラの進路が開ける。これがアビリティの力をユーベルコードへと昇華させた、猟兵としての彼女の力だ。
「順調順調、このまま行っちゃおー!」
【デモリッションブラスト・レクイエム】により道を撃ち拓いたマシロは、ゴンドラのスピードを上げる。
最短経路を最速で進む以上に効率的な道中はない。商売の邪魔をするエリクシルと見所ある後輩の元へと、彼女は一目散に向かうのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ポーラリア・ベル
かつて、UDCアースでは
色んな会社のマスコットキャラクターの人形を氷河だかに流して、一番早く陸地に着いた者が優勝するレースをしていたと冬づてに聞いたわ
(皆凍って脱落したそうです)
と言うわけで始まりました。アクエリオマスコットダービー!
一番手カビパンお姉ちゃん(ユーベルコード)!
二番手ぴぇん(の顔したブイ)!
三番手練り菓子の塊!
四番手エビ!
ああっと!どこかの倉庫が決壊して洪水と共に乱入者!
アクエリオ名物大量のウォータくん人形だーっ!(あとディオスボール)
溢れかえる人形が洪水をせき止めて逆流を起こし始めたわ!
この人形に乗ってレースを開始しましょう!
頑張ってお姉ちゃんー!(お姉ちゃんの着物の中に入り
「かつて、UDCアースでは色んな会社のマスコットキャラクターの人形を氷河だかに流して、一番早く陸地に着いた者が優勝するレースをしていたと冬づてに聞いたわ」
一体どこでそんな噂を聞いたのか、アクエリオ某所にて異世界の奇祭の話をするのはポーラリア・ベル(冬告精・f06947)。この都市国家でも年に一度のお祭りの際にはゴンドラ乗り達によるレースが開催されるというが、多分それとは関係ない。
「ちなみにレースの結果は皆凍って脱落したそうよ」
さもありなんというオチを付けつつ、急にどうしてそんな話をしたのか。それは彼女の目の前にある運河を見れば分かる。そこには荒波に揺られつつぷかぷかと浮かぶ4隻のゴンドラと、4人(?)の選手がいた。
「と言うわけで始まりました。アクエリオマスコットダービー!」
運河の張り巡らされたアクエリオの地形を利用して、かつてのレースをこの地で復活させようと言うのか。
正直そんな事をしている場合ではないと思うが、ポーラリアは(たぶん)本気である。この試合に向けて選りすぐった4体のマスコットが、開始の時を待っている。
「一番手カビパンお姉ちゃん!」
「あーはいはい、よろしく」
最初の枠番に入るのはユーベルコード【冬を告げに来たよ(ねぇよ)】で召喚された悪霊雪女のカビパン。
あんまりやる気が無さそうな態度はいつもの事だ。それでも今回のレースでは唯一のナマモノ枠とう事で、消去法的に優勝候補として期待がかかる。
「二番手ぴぇん! 三番手練り菓子の塊! 四番手エビ!」
カビパンの後に並ぶのは泣き顔をデフォルメした形のブイ。三番手と四番手に関してはそのまんまである。
やっつけ感のある出来レースの匂いが漂ってきたが、それでもポーラリアはノリノリである。全選手をスタート地点に並べて、いよいよ開始の合図を出そうと――。
「よーい、スター……」
その時。ガラガラと何かが崩れるような大きな音がして、大量の水が彼女らのいる運河に流れ込んでくる。
その濁流の中には大量の漂流物が紛れ込んでいるのが分かる。ここに来るまでに破壊し、呑み込んできた物だろう。よく見るとそれはデフォルメされた人間の形をしている。
「ああっと! どこかの倉庫が決壊して洪水と共に乱入者! アクエリオ名物大量のウォータくん人形だーっ!」
意外に余裕のあるポーラリアの実況通り、それはアクエリオで年に一度開催される水神祭のマスコットキャラクター「ウォータくん」。伝説の海賊をモチーフにしたという、ゴンドラ型の帽子とひょうきんな笑顔がトレードマークの人形である。次の祭りに備えて保管されていたのか、その数はゆうに数百に達する。
「溢れかえる人形が洪水をせき止めて逆流を起こし始めたわ!」
冬の妖精が見ている前で、多すぎるウォータくん人形は運河の狭くなった所で詰まり、水の流れを変える。
この都市の人気スポーツである「ディオスボール」のボールなど、様々な漂流物がその上に重なることで、即席の堤防が出来上がっていた。
「この人形に乗ってレースを開始しましょう!」
ゴンドラに揺られるよりもこっちのほうが面白そうだとポーラリアは急遽予定を変更。カビパン、ぴぇん、練り菓子、そしてエビをウォータくん人形の上に乗せ換え、自分はカビパンの着物の中にちゃっかり収まる。
「頑張ってお姉ちゃんー!」
「めんどくさい……」
着物の中から声援を飛ばすと、カビパンは心底面倒くさそうにしながらも人形にしがみついて運河を行く。
操船という概念はなく、実質流されているだけと言っても良いが、この逆流の先にはきっとエリクシルもいるだろう。彼女らの最大の課題は、そこまで沈没せずにいられるかだった――。
大成功
🔵🔵🔵
シン・コーエン
シン眞
久しぶりに故郷の世界に戻ってみれば大変な事になっているな。
最低限のやるべき事はしてきたつもりだったが、少し寄り道が過ぎたかもしれない。
親父(リョウ・コーエン)は、かつて入手したエリクシルに「大星霊アクエリオの力の完全復活」を願い、正しく成し遂げて後の勝利に繋げた。
その都市を滅ぼさせる訳にはいかない!
ゴンドラは扱えないから、ここは空を飛ぼう。
UC:神速之剣を使用して飛行可能となり、眞白さんを抱きかかえて進む。
困っている人々がいれば救い出して安全な場所まで移動させたり、念動力で安全な場所まで引き上げるなどで対応。
眞白さんの行動についても必要に応じてサポートする。
この落とし前はつけさせる!
神元・眞白
【WIZ/割と自由に】【シン眞】
エンドブレイカー。新しい世界が見つかったなら、伺ってみるのが筋というもの。
観光してみたり、その世界でできることをやってみたり……。
シンさんの故郷というのなら一層行ってみないといけませんね。
ただ普段のアクエリオを回るなら一段落してからということですか。
今日のアクエリオは荒れ模様。ゴンドラでというわけにもいきません。
シンさんが飛べるといってもそのままでは大変でしょう。
蛇を呼びますので雨避け水除けにすることにしましょうか。
進んでいけばこの都市のこともわかってくればいいのですが、
初めての場所ですのでできることをやっていきましょう。
「久しぶりに故郷の世界に戻ってみれば大変な事になっているな」
幾年ぶりとなる帰郷を果たしたエンドブレイカーにして猟兵、シン・コーエン(灼閃・f13886)は、水害により崩壊しつつある水神祭都の惨状を眺める。旅行中に「神隠し」にあって以来、まったく別の世界群を放浪していた彼は、つい最近まで故郷の現状を知る術がなかったのだ。
「最低限のやるべき事はしてきたつもりだったが、少し寄り道が過ぎたかもしれない」
知的生命体の「願い」を利用して、災いを引き起こす万能の魔神エリクシル。妖精という制限を解除された彼らはいよいよ本性を顕し、シンの知らぬ間にも世界の侵略を進めていた。このままではこの都市国家が滅亡するのも時間の問題だろう。
「エンドブレイカー。新しい世界が見つかったなら、伺ってみるのが筋というもの。シンさんの故郷というのなら一層行ってみないといけませんね」
そう思ってシンの帰郷に同行してきた神元・眞白(真白のキャンパス・f00949)も、同じように水神祭都を見渡していた。観光してみたり、その世界でできることをやってみたりと、折角ならやりたい事はたくさんあったのだが、今はそう呑気にしてもいられないようだ。
「普段のアクエリオを回るなら一段落してからということですか」
「そうだな。付き合ってくれるか、眞白さん」
シンからすれば故郷の事情に巻き込むことになるが、眞白に不満はない。連理の仲を誓いあった者として、助けになるのは当然の事ではあるし、何よりエリクシルが侵略を企んでいるのはこの世界だけではない。放っておけば自分の世界にも魔の手が伸びてくるかもしれないのだから。
「親父は、かつて入手したエリクシルに『大星霊アクエリオの力の完全復活』を願い、正しく成し遂げて後の勝利に繋げた」
シンの父「リョウ・コーエン」は、かつて|仮面の魔物《マスカレイド》と大魔女スリーピング・ビューティの脅威から世界を救ったエンドブレイカーの1人である。彼の願いによって力を回復した「大星霊アクエリオ」はエンドブレイカー達の頼もしい協力者となり、現在もこの水神祭都の守護者として崇拝されている。
「その都市を滅ぼさせる訳にはいかない!」
現状を見るに万能の魔神となったエリクシルは、その大星霊の力を以ってしても手に余る存在なのだろう。
ならば、対抗できる存在はもはや猟兵をおいて他にない。英雄である父と母にかわって、今度は息子である自分が世界を救う番だ。
「今日のアクエリオは荒れ模様。ゴンドラでというわけにもいきません」
シンの意気込みに寄り添うように並び立ちながら、眞白は激流渦巻く運河の様子を見ていた。この状況では船を出そうにも素人の腕前で進むのは難しい。自分用の船を持つゴンドラ乗りであれば――と、シンのほうを見てみるが、彼もそちらの心得は無いようで首を横に振った。
「ゴンドラは扱えないから、ここは空を飛ぼう」
代わりにシンには異世界の冒険で鍛えてきたユーベルコードがある。彼は眞白をお姫様のように抱きかかえると【神速之剣】を発動し、オーラを全身にまとって空に舞い上がった。都市国家の空には「天井」があるため高度は限界があるが、洪水や津波を避けるぶんにはこれで十分だ。
「シンさんが飛べるといってもそのままでは大変でしょう。蛇を呼びますので雨避け水除けにすることにしましょうか」
眞白はきゅっとシンの身体にしがみつきながら、【リザレクト・オブリビオン】で死霊蛇竜を召喚する。
蛇竜はとぐろを巻いて雨風を弾き、二人の安全を確保する。もし嵐に乗って瓦礫などの危険物が飛んできても、この蛇とシンのまとったオーラが防いでくれるだろう。
「ありがとう……うん、あそこに居るのは?」
お礼を言ってスピードを上げようとしたシンの視界の端に、ふと人影らしきものがよぎる。足を止めて確認してみれば、運河のほとりで波にさらわれ、今にも溺れそうになっている少女がいた。「たすけ……」というか細い声が、濁流の音に紛れてかすかに聞こえる。
「今助ける!」
「お手伝いします」
シンはすぐさま急降下するとサイキックエネルギーを念動力にして操り、濁流の中から少女を引き上げる。
幸いにも発見が早かったおかげで水をさほど飲んでおらず、低体温症にもなっていないようだ。眞白が蛇竜の背中にその子を乗せて、安全な場所まで急いで移動させる。
「大丈夫か?」
「う、うん。ありがとう、お兄ちゃん、お姉ちゃん」
水の来ない高所まで運ぶと、少女はほっと安堵の笑顔を見せる。災害の規模はまだ広がる一方だが、ここにいればしばらくは大丈夫だろう。嵐が収まるまでここを動かないようにと言い聞かせてから、シンは再び眞白を抱えて飛び立った。
「水辺の近くにまだ、取り残されている人がいるようですね」
先に進んでいくうちに、眞白もだんだんこの都市のことがわかってきたようだ。シンの腕の中から網の目のように張り巡らされたアクエリオの水路を見下ろし、困っている人がいないか探す。先を急ぐ必要があるとはいえ、最優先すべきは住民の生命だ。
「初めての場所ですのでできることをやっていきましょう」
「助かるよ、眞白さん」
捜索の目が増えれば救い出せる生命も増える。二人は可能な範囲での救助活動を行いながら、災害がより激しくなる方角に向かって移動を続けていた。予知によると今回の元凶であるエリクシルは、異変の中心にいる可能性が高いという。
「この落とし前はつけさせる!」
縁のある水の都をこんな有様にしたエリクシルへの怒りを口にして、飛翔速度を上げるシン。普段は強敵との戦いを喜ぶ傾向にある彼だが、それはあくまで尊敬できる相手に対しての事だ。罪なき願いを歪めて破滅を引き起こす、最低の外道には憤りしか沸かない。
「はい。私も元通りになったアクエリオが見てみたいです」
彼の想いを助けようと、眞白も小さくこくりと頷く。まだ知らないことだらけのエンドブレイカーの世界だが、だからこそ知る前に滅ぼされる訳にはいかない。行ってみたい事、やってみたい事は沢山あるのだから。
連理之枝で繋がれた二人の意志は固く強く。その進路はアクエリオの上層へと徐々に迫りつつあった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
マウザー・ハイネン
ゴンドラ乗り…黒鳥という部位所有者がいましたね。
あちらもゴンドラ乗りを手駒にしていましたが…エリクシルは規模も桁違いですね。
いずれにせよ、真っ当な努力が報われないなんて許せる事ではありません。
久しぶりに頑張りましょうか。
ゴンドラを準備、昔取った杵柄で歌い操船して荒れ狂う波を越えていきましょう。
比較的ましな進路を選び、津波などを被らないように丁寧にハンドリングを。
どうしても飲み込まれてしまいそうな場合はUC発動、波という地形を凍らせて止めてしまいましょう。
長時間凍らせるのは無理でも一瞬止めればそこに活路は見出せるはず。
さあ、急いでいきましょうか。
※アドリブ絡み等お任せ
「ゴンドラ乗り……黒鳥という部位所有者がいましたね」
それは今から20年近くも前、エンドブレイカーの1人としてマスカレイドとの戦いを続けていた頃の事。この水神祭都アクエリオであった事件をマウザー・ハイネン(霧氷荊の冠・f38913)は思い出していた。
かつてこの都市に封じられていたマスカレイドの王ゼルデギロス。分割された彼の力は複数のマスカレイドに「部位」として宿り、彼ら部位所持者は魔王の復活を目指して陰謀を企てていた。その1人であったのが、黒きゴンドラ乗り『黒鳥』コゼットだ。
「あちらもゴンドラ乗りを手駒にしていましたが……エリクシルは規模も桁違いですね」
1人の若きゴンドラ乗りの「願い」を利用して、都市国家ひとつを崩壊させるほどの力を発揮するとは。
これが「万能宝石」ではない万能の魔神エリクシルの真の力。大魔女スリーピング・ビューティはとんでもない物を利用していたものだと改めて思う。
「いずれにせよ、真っ当な努力が報われないなんて許せる事ではありません。久しぶりに頑張りましょうか」
戦いが終わってしばらくは運営する服飾店の経営や夢に向けての勉学に励んでいたが、まだマウザーの剣は錆びついていない。彼女は自分のゴンドラを準備すると声の調子を整え、激しい運河の流れに漕ぎ出した。
(昔取った杵柄です)
しばらくぶりの操船でも、身体はやり方を覚えていた。ゴンドラ乗りの船は本人と一緒に成長する一心同体の存在――歌いながらオールを漕げば、まるで身体の一部のように応えてくれる。氷のように凛然と佇む乙女を乗せて、ゴンドラは荒れ狂う波を悠々と越えていく。
「こちらの進路が比較的ましですね」
歌うことで目的地までの最適な運河を見つけ出すのも、ゴンドラ乗りの能力だ。極力安全なルートを選び、津波などを被らないよう丁寧にハンドリングを行う。並みの乗り手では転覆しないようにするだけでも精一杯だろうに、見事な操船だ。
「……波が激しくなってきました」
だが、エリクシルがもたらした災厄は進むにつれて激しさを増していく。アクエリオそのものの世界法則が改変されたことで、未曾有の規模となった大渦や洪水といった水害の数々が都市を崩壊させようとしている。やがてそれは純粋な操船技術だけでは抗いきれないものとなりつつあった。
「このままではどうしても飲み込まれてしまいそうですね」
そう感じた感じたマウザーはオールを片手で持ちつつ、空いた手でアイスレイピア「ジュデッカ」を抜く。
地獄の名を冠した氷剣をもって放つは【封印の凍土】。ゴンドラの上でバランスを取ったまま、流麗な動きで押し寄せる波をひと突きすれば、切っ先から凄まじい魔力が迸った。
「速度を上げていきましょうか」
波はたちまち凍りつき、彼女を囲うトンネルのような形状で動きを止める。規模が規模のために長時間この状態を維持しておくのは難しいが、一瞬止めればそこに活路は見出だせるはず。幾度も終焉を終焉させてきたエンドブレイカーの、機を見るに敏なる性質が発揮される。
「さあ、急いでいきましょうか」
凍った波間を巧みな操船ですり抜けて、難所を突破するマウザー。背後で氷が砕けて散る音が聞こえたが、もう振り返りはしない。視線はまっすぐ前方を、この災厄の元凶たるエリクシルの座す方角を見つめていた。
残された時間は決して多くはない。アクエリオが完全に水害の底に沈むまでに、決着をつけなくては――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『ボアヘッド』
|
POW : ボアクラッシュ
自身の【牙】を【長大】化して攻撃し、ダメージと【大量出血】の状態異常を与える。
SPD : 剛鬼投げ
【接近して敵を掴んで】から【投げ技】を放ち、【抑え込み】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : 集落形成
レベルm半径内を【バルバの集落】とする。敵味方全て、範囲内にいる間は【凶暴性】が強化され、【知性】が弱体化される。
イラスト:京作
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
崩壊を続ける水神祭都アクエリオにて、荒れ狂う水害を乗り越えエリクシルとリゼッタの元に急ぐ猟兵達。
運河を遡り、あるいは飛び越えて、都市の上層に差し掛かった頃。荒波の中に潜む、ヒトとも獣ともつかぬ者達の影に彼らは気付いた。
「ボ、ボァ、ボァー……」
人間の胴体に猪の頭部。それはバルバと呼ばれる獣人種族の一種、「ボアヘッド」の群れだった。
その形相と猟兵達に向ける殺意は正気ではない。よく見れば彼らの身体の何処かには不気味な仮面がある。
あれはエリクシルの力で復活させられた仮面の魔物――「マスカレイド」化したボアヘッドのようだ。
「殺ス、殺ス……あくえりおノ人間、全テ、殺ス」
このボアヘッド達は水上や水中の戦闘に適応しているらしく、荒波の中でも平然とこちらに向かってくる。
知性はさほど高くないものの、バルバ特有の身体能力の高さに加えてユーベルコードも使用する。水神祭都から一切の生命を消し去るために、エリクシルが送り込んだ刺客ということだろう。
マスカレイドまで出てきたということは、おそらくエリクシルの居所までそう遠くない所まで来ている。
そこにはエリクシルに「願いの力」を利用されたゴンドラ乗りの少女、リゼッタも一緒にいるはずだ。
ここで足止めを食らっている暇はない。猟兵達は即座に戦闘態勢を取り、ボアヘッドの群れを迎え撃った。
マシロ・コールドウェル
相変わらず、人を食った感じのいい笑顔だわー、仮面。
じゃ、ひと砕きしますかねッ!
今の私には手札があんまないしにゃー?
開幕でDブラストをブッ放す!!
一度砲撃が抜けたら、余程の耐久力で直進して来ない限りは敵もバラけてるだろうし?
もう一発、スタミナを温存しつつ最大戦果を挙げられる準備、整えましょうかァ!
【砲撃】と【跳弾】の時間差攻撃で牽制して注意を引き、接近を許さない様距離を保ちつつ、細い路地(水路)まで誘導するよッ!
御誂え向きに、こうも一直線に並んでくれてちゃってさ?
Dブラストの撃ち甲斐もあるってェモンじゃない?
『♪ Kyrie eleison…』
可愛い後輩が待ってる!
先を急ぐとしよーか!
「相変わらず、人を食った感じのいい笑顔だわー、仮面」
昔は数え切れないほど対面したマスカレイドの仮面。接近するボアヘッドの群れにしっかりとそれが張り付いているのを見て、マシロは冗談めかして笑みを浮かべた。エンドブレイカー時代にさんざん手古摺らされた宿敵ではあるが、今となっては昔馴染みのような懐かしささえ感じる。
「じゃ、ひと砕きしますかねッ!」
「「ボァ、ボァー!!」」
慣れた手つきで紫煙銃を抜き放つと、ボアヘッド達も咆哮を上げて襲い掛かってくる。かつては大魔女の、今はエリクシルの配下として|悪しき終焉《エンディング》をもたらす存在。その対処法は今も昔も変わらない。終焉を終焉させるのはエンドブレイカーの得意分野だ。
「今の私には手札があんまないしにゃー? 開幕でブッ放す!!」
まだ猟兵に覚醒して日が浅いマシロに扱える最大火力のユーベルコードは、【Dブラスト・レクイエム】。
再び創世神の紋章を展開した「overload:Exusiai」から、直進してくる敵集団に魔力の奔流を撃ち放つ。
「「ボアァー?!」」
猪突猛進を絵に描いたボアヘッド連中は、もろに直撃を喰らって吹き飛ばされる。これで倒れなかった連中もいくら頑健なバルバ種とは言え、余程の耐久力がなければこの砲撃の中を直進し続けることはできないだろう。突き抜ける奔流に押しのけられるように群れがバラけ、敵の連携が崩れる。
「狙い通りってね!」
うまく敵の出鼻を挫くことに成功したマシロは、Dブラストの放射を一時中断。通常モードでの射撃に切り替えて牽制しつつ、ゴンドラを操縦して進路を変更する。あいつらの得意分野は見るからに白兵戦だ、わざわざ接近を許して殴り合いに付き合ってやる義理はない。
「もう一発、スタミナを温存しつつ最大戦果を挙げられる準備、整えましょうかァ!」
曲芸じみたガンプレイで紫煙銃を巧みに操り、弾丸の雨をばらまくマシロ。それらは都市の壁や天井に当たって跳弾し、時間差でターゲットを襲う。どこから来るかも分からない多角的な攻撃に晒されるボアヘッド達は、見るからに混乱している様子であった。
「ボ、ボァッ!」「逃ガスナ、追エー!」
それでもボアヘッドの脳内に後退の二文字はない。とっ捕まえて【剛鬼投げ】を食らわせてやろうと、統率も取れぬまま遮二無二マシロを追い回す。脱落者が出てもお構いなしの彼らには、自分達がどこへ誘導されているのか気付いてすらいないだろう。
「鬼さん、いや猪さんこーちらッ!」
公認ゴンドラ乗りのマシロは、アクエリオの水路を当然熟知している。彼女が向かったのは表通りの広い水路ではなく支流にあたる細い水路。ここに大挙して押し寄せれば、道幅の都合で敵は一列にならざるを得ない。
「御誂え向きに、こうも一直線に並んでくれてちゃってさ? Dブラストの撃ち甲斐もあるってェモンじゃない?」
一網打尽にする準備は整った。マシロがくるりと追手の方を振り返ると、銃口にまたもや創世の輝きが灯る。
この水路の幅なら今度こそ逃げることはできない。温存した魔力とスタミナを込めて、歌声と共にトリガーを引く。
『♪ Kyrie eleison……』
紡ぐ聖歌は敵に捧げるレクイエム。初撃に劣らぬ威力を持った砲撃が、ボアヘッドの群れを一直線に貫く。
愚かなマスカレイドは「ボアァー?!!」と断末魔の悲鳴を上げて、仮面と共に運河の藻屑と消えていった。
「可愛い後輩が待ってる! 先を急ぐとしよーか!」
障害を排除してマシロは再びゴンドラの進路を変更し、アクエリオ上層に舵を取る。エリクシルに願いの力を利用された、後輩ゴンドラ乗りを救い出すために――都市国家を蹂躙する災厄の中心地まで、後もう少しだ。
大成功
🔵🔵🔵
サツキ・ウカガミ
SPD
うーん、なるべく遠距離から削ろうかな?
喚び出した「折り紙手裏剣」の一部を
自身の立体映像にして、囮に。
ボアヘッド達の攪乱を狙うよ。
残りの手裏剣は、水上のボアヘッドに投擲。
水中にも潜んでいるなら、時限爆弾にして
近くで爆発させる。火は出なくても、
音と衝撃で水中から追い出せると良いね。
投擲した手裏剣を避けそうな敵がいたら、
「瞳術『忍夜皐曲者』・蛇」を併用。
避けられないように動きを止めるよ。
手裏剣で仕留め切れない敵は
混乱している間に刀の【なぎ払い】や【居合】、
隙をついてのクナイで【急所突き】【暗殺】。
状況を【見切り】、立体映像越しに
攻撃したりして、虚をついていきたいね。
どう?ビックリしたかな?
「うーん、なるべく遠距離から削ろうかな?」
見るからに肉弾戦を得意としてそうなバルバの群れを見て、そう呟いたのはサツキ。こちらから近付いて切り結ぶよりも、遠くから撹乱したほうが勝算は高くなりそうだ。そう考えた彼女はユーベルコードを発動する。
「ボクの技に対応できるかな?」
喚び出された呪符は【折り紙手裏剣】の形に折り上げられ、生き物のように宙を舞う。そのうちの一部は術者の立体映像を表示しながら敵に向かって飛んでいった。あちらの視点からば突然サツキが何人にも分身したように見えるだろう。
「ボァー?」「ボァ、ボァー!」
さほど知能の高くないボアヘッド達は、立体映像と気付かずに飛び交うサツキに掴みかかろうとするが、その手は空を切るばかり。いともあっさり混乱した敵の群れに、本物のサツキは残りの手裏剣を純粋な投擲武器として投げつける。
「隙だらけだよ!」
「「ボァァーー?!」」
折り紙とはいえ呪符に忍術を込めて作られたそれは、鉄の刃と変わらぬ威力を誇る。水上にいたボアヘッドの多くは隙を晒したところに急所を射抜かれ、続々と断末魔の悲鳴を上げた。さほど忍ばない忍者と言われても、世界を守るために鍛錬を重ねたサツキの腕前は確かなものだ。
「まだ水中にも潜んでいるかな?」
さらにサツキは手裏剣を時限爆弾にして運河の中に投げ込み、潜水している敵の近くで爆発させる。火は出なくとも水中で炸裂する音と衝撃波は大気中よりも高速で伝わり、機を覗っていた連中を無理矢理あぶり出す。
「「ボ、ボアァー!?」」
他世界には爆発物を使用した危険な猟法があるそうだが、まさにそれと同じように大勢のボアヘッドが水中から追い出されて浮かび上がってくる。爆発の衝撃をもろに喰らってピクリとも動かない者もいれば、まだ息のある者もいる。だがダメージを受けていない者は一人もいない。
「ヨ、ヨクモ……ボァ?」
「動かないでね」
傷ついたボアヘッドに追い打ちをかけるのは折り紙手裏剣。混乱しながらも避けようとする連中に、サツキは瞳術『忍夜皐曲者』を仕掛けた。サツキ模様に変化した彼女の瞳から放たれる視線は、生命体や無機物、果ては自然現象からも敵意を奪い去る。
「オマエ、俺ノ、トモダチ……? グガァッ!」
術にかかって動きの止まったボアヘッドに手裏剣が次々と突き刺さり、運河の水が血飛沫で真っ赤に染まる。
次から次に起こる予想外の攻撃に、敵はもはや完全に混乱していた。数と腕力で勝るバルバの群れも、こうなればもう怖くない。
「そろそろ仕留めようか」
サツキは浮雲のような足運びで距離を詰めると、まだ残っている自分の立体映像越しに近接攻撃を仕掛ける。
愛刀「月牙」を用いた、抜く手を見せぬ居合い切り。動揺している今のボアヘッド達に見切る術はあるまい。
「どう? ビックリしたかな?」
「ボァ……ボアァァーー!!?」
鮮やかな月光の煌きで敵陣をなぎ払ったかと思えば、次の瞬間にはクナイを抜き、死角から敵の喉笛を突く。
忍術、瞳術、そして武術。持てる技の数々を駆使してマスカレイドを圧倒した彼女は、そのままエリクシルの元へと駆けていく――。
大成功
🔵🔵🔵
空桐・清導
【POW】アドリブや連携も大歓迎だ
「ボアヘッド…。そして、こいつがマスカレイド!
アクエリオの人達は1人だって殺させない!!
やるぞ、ソルブレイザー!そしてブレイズ・ビートル!」
強化された武装バイクに跨がり、エンジンを吹かす
「正面切ってぶち抜かせてもらう!
そして、サンライザー[エネルギー充填]!」
[オーラ防御]を展開して防御を硬めながら突っ込む
[騎乗攻撃]を繰り出しながら、群れを一気にぶっ飛ばす
サンライザーより強化された[誘導弾]を[一斉発射]
周囲のボアヘッドを更に撃破していく
雨や嵐といった[悪路も走破]し、赤き閃光が奔る
「強い力を感じる…。これがエリクシルなのか…?
ヘッ!ついに決着の時だな!!」
「ボアヘッド……。そして、こいつがマスカレイド! アクエリオの人達は1人だって殺させない!!」
初めて遭遇するオブリビオンとは別種の「敵」を前にしても、清導の闘志は衰えることを知らなかった。
人々の生命や未来を脅かす|悪党《ヴィラン》が居るのなら、立ち向かうのがヒーローの使命。それがオブリビオンで無いとしても彼のなすべき事は変わらない。
「やるぞ、ソルブレイザー! そしてブレイズ・ビートル!」
武装バイク「ソルブレイザー」に跨りエンジンを吹かすと、空の彼方から昆虫型の機械兵器が舞い降りる。
その名は"鋼炎虫"ブレイズビートル。バイク用の追加武装に変形する事で性能をアップさせる、ブレイザインのサポートメカだ。
「いくぜ、機炎合体! ハイパーソルブレイザー!!」
ブレイズビートルとの【合体『剛炎勇車』】によって、ソルブレイザーの装甲とスピードは飛躍的に向上。
それに騎乗する清導は機械鎧に搭載された砲撃用超兵器を起動しつつ、ボアヘッドの群れに突撃を仕掛けた。
「正面切ってぶち抜かせてもらう! そしてサンライザー、エネルギー充填!」
変形した鎧の砲口にエネルギーが集束され、太陽の如き熱と光を生み出す。そのうち一部の余剰エネルギーは炎のオーラとなって彼の身体とバイクを包み込んだ。エンジンの咆哮が轟き、剛炎の勇者が戦場を疾走する。
「「ボァ、ボァァーーッ?!!!」」
敵も猪突猛進を旨とするボアヘッドだが、清導とソルブレイザーの突撃はそのお株を奪うような一撃だった。
装甲とオーラでがっちりと防御を硬めたボディには、連中の斧も牙も通らず。馬力と速度にものを言わせて、進路上にいる群れを蹴散らしていく。
「一気にぶっ飛ばす!」
さらに清導は充填完了した「サンライザー」より強化された誘導弾を一斉発射し、周囲の敵群に追撃を行う。
燃ゆる闘志を具現化したかの如き炎の砲弾は、邪悪なる者を決して逃さず。骨まで焦がす圧倒的熱量を以て、敵を灰燼に帰していく。
「その仮面ごと、過去に帰るんだなッ!」
そんな勇ましい啖呵に違わず、ソルブレイザーと人機一体となり獅子奮迅の戦いぶりを見せる清導。行く手を阻める敵は誰もおらず、雨や嵐といった悪路も何のその。水しぶきを蒸発させながら赤き閃光が奔り抜ける。
「「ボァ、ボァァーッ!!!」」
蛮勇にて立ちはだかったボアヘッド達はみな車体に撥ね倒されるか、あるいは剛炎の砲撃にて焼き払われた。
周囲にいた敵が全て撃破されるまでにさほどの時間はかからず。進路が開ければ彼はエンジンの出力を上げ、都市国家のさらに上層へと向かう。
「強い力を感じる……。これがエリクシルなのか……? ヘッ! ついに決着の時だな!!」
先に進むにつれてひしひしと感じる強大な気配。たった今蹴散らしたボアヘッドなどとは比較にもならない。
肌が粟立つような感覚に、清導は武者震いと共に不敵に笑ってみせる。アクエリオに災厄をもたらした元凶がこの先にいるのだ。ここで奮い立たずして、なにがヒーローだろうか――。
大成功
🔵🔵🔵
暗都・魎夜
【心情】
マスカレイドってのはたしか、エンドブレイカーじゃないと本質的に滅ぼせないんだっけか?
俺がどうこうできるかはわからねえが、その辺はこの世界の仕事だな
俺としてはひとまず、この場にいる連中をぶっ飛ばすだけだ
【戦闘】
猪の獣人って奴か?
見た目にたがわぬパワータイプって奴だな
迂闊に近寄ればパワー負けしそうだぜ
とは言え、群れを作らせたらこっちが不利
なら、こうやらせてもらうか
「天候操作」で召喚したUCでボアヘッドと距離を取りながら
「斬撃波」による「なぎ払い」を行って攻撃
接近してくるものは「見切り」「ジャンプ」で距離を取る
こういうやつが出てきたってことは、エリクシルの所もまであと一歩ってことだ
「マスカレイドってのはたしか、エンドブレイカーじゃないと本質的に滅ぼせないんだっけか?」
魎夜が聞きかじった話によれば、マスカレイドは世界の根源である棘(ソーン)というエネルギーに寄生する事で、不滅の存在になっていたらしい。棘(ソーン)の総量が減らない限りマスカレイドを撲滅することはできず、それが可能だったのはエンドブレイカーの「終焉を終焉させる力」だけだったのだ。
「俺がどうこうできるかはわからねえが、その辺はこの世界の仕事だな」
エリクシルに復活させられたマスカレイドが同様の不滅性を持つのか、その場合猟兵もエンドブレイカー同様奴らを滅ぼせるのか。それを考えるのは自分の役目ではないと彼は判断した。少なくとも今、都市国家の人々を襲うモンスターを倒す力が自分達にはある。それだけは確かなのだから。
「俺としてはひとまず、この場にいる連中をぶっ飛ばすだけだ」
「殺ス、殺ス、殺ス……ボァァー!」
七支刀「滅びの業火」を片手に身構える魎夜の元に、ボアヘッドの群れが殺到する。その言動におよそ高度な知性は感じられず。目についた者を無差別に襲っている様子だ。この都市国家にいる全ての人間を殺し尽くすまで、彼らの猛進は止まることを知らない。
「猪の獣人って奴か? 見た目にたがわぬパワータイプって奴だな」
この世界では、この手の獣人種族はバルバと総称されるらしい。本来は温厚な者もいるが、マスカレイド化した彼らは頑健な肉体と獣の闘争心を合わせ持つ危険なモンスターだ。迂闊に近寄ればパワー負けしそうだぜ、と魎夜は呟く。
「とは言え、群れを作らせたらこっちが不利」
あまり放置すれば連中は【集落形成】を行い、凶暴性をさらに増すだろう。巻き込まれるとこちらの知性まで下がってしまいそうだ。野蛮な殴り合いで数の暴力に勝てる保証はないし、勝てたとしても消耗は免れない。
「なら、こうやらせてもらうか」
猛然と突っ込んでくるボアヘッド達の前で、魎夜は剣を掲げ天候を操る。|嵐の王《ストームブリンガー》である彼の力は、雨や嵐に関する事象を自在に操る――そして、戦場に降り注いだ雨は異空間に繋がる水鏡を作り上げるのだ。
「雨よ、嵐の王のために道を作りな!」
異空間で繋がった2つの水鏡をくぐる事で、長距離を瞬間移動する【鏡雨転身】。このアビリティを回避に応用する事で、魎夜は敵と距離を取った。あと一歩で獲物を捉えるはずだった獣人の斧は、虚しくも空を切る。
「ボアッ!?」「イツノ間ニ?!」
驚愕する連中を置き去りにして、対の水鏡から飛び出した魎夜は剣を振るう。幾つもの戦いを経て鍛えられた彼の愛剣は、遠間からでも斬撃波によって敵を討つ。豪雨の中に浮かび上がる斬撃の軌跡が、ボアヘッドの群れを纏めてなぎ払った。
「ボアァァーーッ?!」「ヨ、ヨクモッ!」
同胞を斬り伏せられたボアヘッド達は怒り、猛然と再突撃を仕掛けてくるが、感情任せの特攻ほど見切り易いものはない。魎夜は雨に打たれながらひらりとジャンプで攻撃を躱し、再び水鏡をくぐって間合いを整える。
「こういうやつが出てきたってことは、エリクシルの所もまであと一歩ってことだ」
だったら尚更足止めを食らっている場合ではないと、振るった剣閃は再び斬撃の波動を描き、敵陣を薙ぐ。
断末魔と共にばたばたと倒れていくボアヘッドを後目に、彼はアクエリオの上層へと駆け上がっていく――。
大成功
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リィリン・エンドローフ
慌てず、騒がずBloom roseを手に、行動しますの
剣技は"お兄様"より劣りますけれど、氷の扱いに長ける星霊クリン(白熊)を召喚して、氷のリンクを作り上げ場を整えて差し上げましょう
躱しきれずに投げられてしまうのは、貴族としては屈辱
……しかし、私の"お兄様(クリン)"を忘れておられるのかしら
コロコロ転がって、対象を抱擁して凍らせるような子ですのよ
他の皆様が傍におられるのなら、氷結床の範囲は考えますし
ボアヘッドだけが転ぶように調整するとしましょう
エンドローフ家たるもの
素敵に。華麗に、大胆な戦術で魅せなければ
攻撃の得物はアイスレイピア
貴方様も過去に習って、薔薇の花びらのように散りゆくと宜しいですわ
「出てきましたわね、マスカレイド」
いかにも凶暴そうな猪獣人の群れが押し寄せてきても、リィリンは慌てず騒がす、アイスレイピア「Bloom rose」を手に応戦の構えを取る。名門たるもの戦いの場においても常に優雅であらねば――立ち居振る舞いはさながら魔法剣士だが、実はそちらの知識と技術は学んでいないのはご愛嬌だ。
「剣技は"お兄様"より劣りますけれど、私には星霊術がありますの。場を整えて差し上げましょう」
運河の上を切っ先でとんと突けば、白熊の星霊クリンが召喚され、水面を彼女のための氷のリンクに変える。
これで水上戦であっても足場の不利はない。ゴンドラから氷結した床に降り立ったリィリンは、挑発するようにレイピアを突きつけた。
「ブチノメスッ!」「殺スッ!」
ボアヘッド達はやかましい怒号をがなり立てながら、水面より飛び出して獲物に殺到。無骨な手で掴みかかってくる連中に対し、リィリンは氷上で滑らかに身を躱すが――1人、2人と回避するうちに、数の暴力で徐々に追い込まれていく。
「……乱暴ですこと」
とうとう躱しきれずに【剛鬼投げ】を食らってしまい、投げ飛ばされた彼女はピクリと眉をひそめる。表面上は怒りを抑えているように見えるが、貴族としては屈辱極まりないだろう。本当なら指一本触れさせずに勝利を収めたかったが、やはり体術では"お兄様"ほど上手くはいかない。
「ボァーッ!!」
リィリンを投げ飛ばしたボアヘッドは、そのまま抑え込みに移行して身動きを封じようとする。この状況下でマウントを取られれば最後、凄惨ななぶり殺しにあうのは火を見るよりも明らかだ。猪頭の形相が、殺戮の高揚で醜悪に歪む。
「……しかし、私の"お兄様"を忘れておられるのかしら」
「ボアッ?!」
剛腕が令嬢の矮躯を押さえつける直前。コロコロ転がってきた星霊クリンが、ボアヘッドの脚に抱きついた。
氷の扱いに長けたこの星霊は、ただ水を氷にするだけが能ではない。敵を凍らせ行動を阻害する事もできる。不意に足元を凍結させられた敵は、バランスを崩して盛大にすっ転んだ。
「助かりましたわ"お兄様"」
この隙に立ち上がったリィリンは、転倒したボアヘッドの喉笛にアイスレイピアを突き刺す。所作は優雅だが情け容赦は一切ない致命のひと刺し――敵は断末魔を上げる事もできずに絶命し、そのまま氷の像となった。
「"素敵"だと賛美なさい」
「ヨ、ヨクモッ!!」
仲間を殺された連中はいきり立つが、彼女は涼しい顔で怒りを受け流し【フリージングアクセル】を再使用。
他の猟兵達を巻き込まない程度に氷結床の範囲を広げ、ボアヘッドだけが転ぶように滑りやすさを調整する。
「エンドローフ家たるもの、素敵に。華麗に、大胆な戦術で魅せなければ」
完全にステージの準備が整えば、そこはもはやリィリンの独壇場だった。水中から上がったボアヘッドは滑る足場で思うように動けず、転ばないように踏ん張るのが精一杯。対してリィリンはアイススケートのように自在に氷の上を移動し、軽やかに敵の急所を突く。
「貴方様も過去に習って、薔薇の花びらのように散りゆくと宜しいですわ」
「ボ、ボアァー……ッ!!」
細剣の軌跡は氷の花弁となって舞い、愚かな敵の死に彩りを添える。キラキラと散る氷の結晶の中で、華麗な剣舞を魅せる令嬢。矜持に違わぬ戦いぶりを披露した彼女の表情は、当然とばかりの自信に満ち溢れていた。
大成功
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ソラウ・エクステリア
運命の再開
フラーウムさん行きましょう!
情報収集と視力で状況を把握する
結界術と衝撃波で攻撃を防ぎカウンターする
『おらよっと!』
ライズサンは念動力と音響弾と電撃で相手を攻撃する
…ライズサン元気になってよかった
『行くわよ!』
エミリアーノも爆撃と斬撃波と神罰で相手を吹き飛ばしている
エミリアーノはちょっと元気になりすぎかな
敵がUCを使用したが僕らは範囲から離れて僕がUCを発動!
敵が攻撃しても次元アーマーを付与しているから攻撃は反射だ!
さてフラーウムさんは?
『ぐはっ!』(心なき咎人の発言を思い出す)
ライズサンが叫ぶ
どうしたの!大丈夫?
『多分あれよ』
僕がエミリアーノが指さした方向を見る
モザイクの坩堝があった
フラーウム・ティラメイト
運命の再開
では一旦別れましょう
ソラウと別れた後
あれがボアヘッド…少し興味がわきました
さあ…あなたの考えを教えてください
ボアヘッドさん達ようこそ…ここは議論をするば…
敵はいきなり攻撃を仕掛けてきました
結界術と念動力を組み合わせて貼っていたのて大丈夫。
全員攻撃してきたのでモザイクの坩堝に閉じ込めてられたようです
上手くいきました彼らは理性が無いので攻撃してくると思いました
『なら貴女が何も言わずに此処に来た事について議論しましょう』
……あっ(顔が青褪る)
『貴女には少し説教がいるようだから…』
目が笑っていないマーアリアがいました
『説教はここまでにしましょう』
…ごめんなさい
何故かライズサンは悶えていました
「フラーウムさん行きましょう!」
「はい、戦うのですね」
世界を超えた運命の再会を果たした後、ソラウ達とフラーウムは上層にてボアヘッドの群れと対峙していた。
こいつらを倒さなければエリクシルの元には向かえない。また放置しても住民に犠牲者が出るのは明らかだ。意気盛んに号令するソラウに、フラーウムもこくりと同意する。
「では一旦別れましょう」
「分かりました!」
まだ会ったばかりの二人では息の合った連携は難しい。ここは個別に行動して敵を各個撃破する方針を立て、互いの武運を祈りつつ二手に分かれる。「都市国家の人間を皆殺しする」という命令を受けているボアヘッド達も、それに合わせて群れを二つに分けた。
「「ボアァァァーー!!!」」
マスカレイド化により凶暴性の塊と化したボアヘッドの群れは、戦斧を振りかざして猟兵達に襲い掛かる。
対するソラウは即座に結界を張り、インパクトの瞬間に合わせて衝撃波を発生させる事で、攻撃の威力を相殺した。
「今だよ!」
『おらよっと!』
すかさずカウンターを仕掛けるのはライズサン。念動力で敵群を押し返し、空中に投げ上げたところに雷撃を一閃。鼓膜をつんざくような音響と共に稲妻が骨の髄まで敵を痺れさせ、原型も残らぬほどの消し炭に変える。さっきまでの気落ちした様子はどこへやら、実にイキイキした攻撃だ。
「……ライズサン元気になってよかった」
すっかり調子が戻ったようでほっとしつつ、ソラウは防御に徹する。今回は特に自分が攻撃に回らなくとも、やる気に満ちた時空龍達に任せて大丈夫そうだったからだ。ライズサンだけでなくエミリアーノの方も、元気に爆撃や斬撃波を放っている。
『行くわよ!』
「ボアーッ?!」
神罰のパワーを込めた時空龍の一撃が放たれるたびに、ボアヘッドの群れが吹き飛んでいく。あまりに威力が高すぎて、下手すると周囲の建造物まで壊してしまいそうな勢いだ。彼女も彼女でフラーウムとの再会がよほど嬉しかったのだろうか。
「エミリアーノはちょっと元気になりすぎかな」
張り切りまくっている時空龍達に肩をすくめつつ、ソラウは状況把握を怠らない。このままでは勝てないと悟ったボアヘッド達は【集落形成】を行い。周辺一帯を自分達の集落とすることで凶暴性を強化しつつあった。
「殺ス、殺ス殺ス殺ス……!」
「おっと、二人とも離れるよ!」
このままでは自分達まで凶暴性を煽られ冷静な判断ができなくなってしまう。ソラウは時空龍達に声をかけてその場を離れ、敵のユーベルコードの範囲から逃れると【轟雷時空歌・エクステリア・レイン】を発動した。
「クロノドラグマに伝わる時空歌を皆に届けるよ!
騎士であり歌姫でもあるソラウの歌声は、戦場に癒やしの雨と裁きの豪雷を発生させる。雷鳴と雨音をBGMにして、澄みきったソプラノの歌声が響き渡る。それは獣達の咆哮やがなり声をかき消してしまうほど美しい。
「♪轟け! 鳴り響け! 時空の歌よ! 麗しい雨で心を癒やし、暗雲には轟雷を!」
「「ボ、ボアァーッ!!」」
心から楽しそうに歌う少女は敵からすれば目立つ的であり、当然のようにボアヘッドが殺到するが――連中が凶暴性のままに突き立てた斧や牙は、彼女に触れる前に見えざる次元の鎧に阻まれ、跳ね返されてしまった。
「次元アーマーを付与しているから攻撃は反射だ!」
「バ、バカナッ! ボアーッ!?」
自らの攻撃の威力をそのまま反射されたボアヘッド達は、絶叫しながらバタバタと倒れていく。一種の狂戦士に近い状態と化していた彼らは防御を完全に捨てて攻撃のみに専念しており、それが致命傷に繋がったようだ。
「さてフラーウムさんは?」
『ぐはっ!』
大勢が決したところで、ソラウはもう1人の仲間がどうしているか様子を見る。すると、なぜかライズサンが胸を押さえて苦しげに叫んでいた。さっきまでノリノリで暴れ回っていたのに、一体何があったのだろうか。
「どうしたの! 大丈夫?」
『多分あれよ』
「あれ?」
ソラウがエミリアーノの指さした方向を見ると、そこには極彩色に揺らめくモザイクの坩堝があった。あれは前にも別の依頼で見たことがある、闇の種族のオブリビオン『フラーウム』が使っていたユーベルコードだ。
ただ、あの時とは違って邪悪で禍々しい気配は感じない。その使い手が誰なのか、彼女らにはもう薄々予想がついていた。
「あれがボアヘッド……少し興味がわきました」
ソラウ達と別れたあと、フラーウムは初めて見たこの世界の異種族「バルバ」に興味を示していた。もともと彼女は自由な性格で、一度興味を持ったものには戦闘中だろうと観察を優先してしまう悪癖を持つ。今回もそれが出てしまったようだ。
「さあ……あなたの考えを教えてください」
彼女はユーベルコードを発動し、戦場内に議論の開始を宣言。周囲のボアヘッドを強制的に自分の領域に引きずり込む。ここでは議論が行われている間の攻撃行為や逃走が禁止され、違反者には罰則が下る。これは術者本人であっても適用される公平なルールであった。
「ボアヘッドさん達ようこそ……ここは議論をするば……」
「「ボァ、ボァー!」」
だが【集落形成】で凶暴性が強化され、逆に知性の低下したボアヘッド達は、議論などお構いなしにいきなり攻撃を仕掛けてきた。彼らの長大化した牙による【ボアクラッシュ】は、当たれば大量出血を引き起こす危険なユーベルコードだが――。
「上手くいきました」
案の定といった表情で佇むフラーウムの前方に、結界術と念動力を組み合わせた防壁が出現し、猪牙を防ぐ。
その直後、彼女の持つ「鍵形の黒剣」から大量のモザイクが溢れ出し、ルールを違反した者への処罰を行う。議論を妨げる者、議論から逃れようとする者から、このモザイクは行動力を奪い取る。
「彼らは理性が無いので攻撃してくると思いました」
「「―――!!!」」
モザイクの坩堝に閉じ込められたボアヘッド達がどうなったのか、外から窺い知ることは出来ない。藻掻きながら極彩色の中に沈んでいく連中を、フラーウムは淡々と見守っていた。彼女は好奇心に流されやすいが頭は良いので、こうなるであろう事は最初から予想していたようだ。
『なら貴女が何も言わずに此処に来た事について議論しましょう』
「……あっ」
だが。その次に背後からかけられた声については予想外だったようで、無表情だった彼女の顔が青ざめる。
振り返ればそこに居たのは、彼女の守護獣であり保護者でもある「因果獣皇マーアリア」。赤髪の人間の女性の姿をしており、常に落ち着いて優しい母親のような人物だが、今は目が笑っていない。
その後。無断かつ単独で勝手に行動した事について、フラームがこってりと絞られたのは言うまでもない。
とはいえ、今は都市国家の存亡がかかった緊急事態である。流石にマーアリアもこの状況を放置して帰るつもりはない。
『説教はここまでにしましょう』
「……ごめんなさい」
すっかり肩を落としたフラーウムの首根っこを掴んで、マーアリアはソラウ達と合流する。なぜか仲間が増えているのに向こうは首を傾げていたが、信頼できる実力者の参戦はありがたい。軽く自己紹介を交わした後に、引き続き共同戦線を敷くこととなった。
『ところでそちらの方は?』
「あー、もう少ししたら復活すると思うから」
――モザイクの坩堝を見て、以前の恥ずかしい記憶がぶり返したのか、ライズサンが悶える一幕もあったが。
時空騎士と時空龍、探求者と因果獣という大所帯となった一同は、いよいよエリクシルの元に迫るのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シン・コーエン
シン眞
マスカレイドか、両親達からよく話を聞いたものだ。
(相手の言葉に対し)
気が合うな。俺も同じ気持ちだよ。
この街の人々に手出しはさせん。お前達は全て討ち果たす!
UC:灼星凄雨にて創り上げた130本近い灼星剣の複製(オリジナルの2倍の大きさで設定)を操作し、1体につき1本の割合でボアヘッド達を貫いて斃していく。
相手は接近しての攻撃を狙うだろうから、眞白さんをかばえるように前に立ち、第六感で予測しての見切りで躱そう。
念の為、オーラ防御も展開する。
そして右手の灼星剣、左手の村正に風の属性攻撃を宿し、2回攻撃・斬撃波・鎧無視攻撃・範囲攻撃にて纏めて斬り裂いて斃す。
必要に応じて眞白さんをサポートする。
神元・眞白
【WIZ/割と自由に】【シン眞】
街を登ってまた街が。エンドブレイカーは興味深い建築方法を取っていますね。
水路はどういう走り方をしているのでしょう……。とても不思議です。
この世界に住むことになるのなら調べておく必要もあるでしょう。
滅ぼされた存在も蘇らせる。エリクシルはさながら動く骸の海の様なもの。
終わったものはそのままにするのが常。元ある場所に戻しましょう。
数には数、良く言いますががそれは同じぐらいの勢力同士として。
一騎当千ならば覆る事。シンさん、私はここに。手が塞がっていては大変でしょう。
私は鏡鳴符の展開をします。できた鏡にその姿を映してもらえば、相手をかく乱できるはず。
「街を登ってまた街が。エンドブレイカーは興味深い建築方法を取っていますね」
階層上に土地や居住区を積み上げていく「都市国家」というこの世界独自の建築を、眞白は興味深そうに観察しながら登っていく。様々な脅威に満ちた大地において、人類が生存圏を確保する為の技術体系だと言うが、街だけでなく森や川といった自然すらも内包した超巨大都市とは驚きだ。
「水路はどういう走り方をしているのでしょう……。とても不思議です」
この世界に住むことになるのなら調べておく必要もあるでしょう、と語る彼女の瞳は、連理之枝――シンと共に生きる未来を見据えている。しかし現在の水神祭都アクエリオには、その未来を破滅の終焉で塗り替えようとする輩が沸いていた。それはかつて、アクエリオを滅亡させかけた脅威と同種のものだ。
「マスカレイドか、両親達からよく話を聞いたものだ」
父や母の世代が壮大な冒険のすえに滅ぼしたという、万物に寄生する仮面の魔物。その名はシンもよく知っている。創造主である大魔女スリーピング・ビューティすらも倒された今になって連中を復活させたのは、万能の魔神エリクシルか。
「滅ぼされた存在も蘇らせる。エリクシルはさながら動く骸の海の様なもの」
この世界の出身ではない眞白にも、その驚異は十分に理解できた。罪なき人の「願いの力」を利用して歪め、阻止されたはずの|世界の終焉《エンディング》を再演する。これを放置しておけば、オブリビオンによるものと同様のカタストロフが起こり、世界は滅ぼされるだろう。
「終わったものはそのままにするのが常。元ある場所に戻しましょう」
「気が合うな。俺も同じ気持ちだよ」
眞白の言葉に対してシンも同意を示し、荒波を蹴立てて接近するマスカレイド――ボアヘッドの群れを睨む。
仮面に取り憑かれ正気を失った獣性と凶暴性の塊は、エリクシルの意図するままに、この都市国家に住まう者を虐殺しようとしていた。
「この街の人々に手出しはさせん。お前達は全て討ち果たす!」
威勢と共にシンが掲げるは「灼星剣」。深紅に輝くサイキックエナジーから創造した、彼の愛刀かつ分身だ。
それを更に100本以上――オリジナルの2倍の大きさで複製し、念動力によって全てばらばらに操作する。
「我が剣よ、全てを滅ぼす凄雨と化し、天空を駆け、大地に降り注げ」
シンが放った【灼星凄雨】は近付いてくるボアヘッド1体に対して1本の割合で飛来する。巨大な深紅の刃に貫かれた敵は「ボアァーッ?!」と断末魔の悲鳴を上げ、次々に斃れていく。猟兵として他世界で鍛え上げた彼の力は、マスカレイド相手にも通用するようだ。
「ボァ、ボァー!!」「殺セ、殺セッ!」
だが、一度群れを成して突撃を始めたボアヘッドはちょっとやそっとの事では止まらない。強化された凶暴性は撤退という思考を失わせ、隣にいた同胞が倒されようとも猪突猛進を続ける。絵に描いたような数の暴力で、こちらを蹂躙するつもりだ。
「数には数、良く言いますががそれは同じぐらいの勢力同士として。一騎当千ならば覆る事」
しかし眞白は敵の攻勢を見ても落ち着いた様子。それはシンと自分の力を信じているから口にできる言葉だ。
大切な相方の傍に寄り添うように立ち、霊力を込めた銀色の符を取り出す。楚々とした深窓の令嬢に見えて、彼女も様々な戦いを経験した猟兵であり、その能力は味方を支援する事にも長けている。
「シンさん、私はここに。手が塞がっていては大変でしょう」
「わかった。ありがとう眞白さん」
シンは常に眞白をかばえるように前に立ち、第六感でボアヘッドの動きを予測して応戦を続ける。相手が接近しての攻撃を狙っているのは明白で、凶暴性と引き換えに知性が下がっているため見切るのも容易。念のためにオーラで守りを固めつつ、複製した灼星剣を武器に盾にと縦横無尽に操作して敵を寄せ付けない。
「私は鏡鳴符の展開をします。できた鏡にその姿を映してもらえば、相手をかく乱できるはず」
「なるほど。よし、その手でいこう」
この間に眞白は【鏡鳴符「ふしぎなおいかけっこ」】を発動し、銀色の符から鏡の障壁を作り出す。その傍にシンが姿を晒せば、敵の目には彼が分身したように見えるだろう。見境をなくしたボアヘッドに、本物と鏡像の区別などつくものか。
「ボァッ、ボァァ……ボァッ?!」
鏡の中にいる敵に【剛鬼投げ】を喰らわせようとするボアヘッド達。ただの鏡なら割れるだけだが、ユーベルコードで展開されたそれには相手の攻撃を吸収・反射する効果がある。猪突猛進の勢いをそのまま跳ね返され、連中は大きく体勢を崩した。
「あとはお任せします」
「ああ、俺の出番だな」
すかさすシンは右手の灼星剣、そして左手の銘刀「村正」に風の力を宿し、狼狽した敵の群れに斬りかかる。
鋭く繰り出された二度の斬撃は、旋風波を伴って嵐を巻き起こし。気休め程度に連中が身に付けた革鎧ごと、ボアヘッド達をまとめて斬り裂いた。
「「ボアァァァァァーーーッ!!!?!」」
完全に無防備な隙を突かれたボアヘッド達は、断末魔の悲鳴と血飛沫を撒き散らしながら水底に沈んでいく。
彼らが浮かび上がることは二度とない。エリクシルの力で蘇らされた過去の災いは、再び過去に還ったのだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ポーラリア・ベル
豚さんの群れだわ!
そして即座に豚さんの集落化が行われたわ!
家畜にはカビパンお姉ちゃん(ユーベルコード)の聖人的なムーブが効きそうな気がするのですがその辺り如何でしょうか。
なんだか気分が悪そうだわ。……船酔いした!?1章のアレで!?
来ないでー!凶暴な悪霊の口から吐かれるとしゃーなあれが絵面に出来ないアレが。
あっちょっとたじろいだ?凶暴でも警戒とか恐怖とかあるよね多分
ほらー、聖人雪女なお姉ちゃんなんか神っぽいし、とりあえず蛮神として祟えるには十分な感じが本能(凶暴)でしません?
ですので、みんなで協力してお姉ちゃんを、戦場の奥(3章戦場)までご看病のご搬送(凶暴)を、どうかーどうかー!
「豚さんの群れだわ!」
正確には豚ではなく猪だが――水しぶきを上げて突っ込んでくるボアヘッドの群れに、ポーラリアは見たまんまを叫んだ。敵はその叫びに反応して「ボァー!」と叫び、鼻息を荒らげて血走った目でこちらを睨んでくる。
「そして即座に豚さんの集落化が行われたわ!」
群れをなして【集落形成】したバルバ達は、知性と引き換えに凶暴性を増す。連中に集中攻撃を食らったら、猟兵でも痛いでは済まないだろう。ひとまず彼らを落ち着かせる方法はないだろうかと冬の妖精は考える。
「家畜にはカビパンお姉ちゃんの聖人的なムーブが効きそうな気がするのですがその辺り如何でしょうか」
ここはひとまず【冬を告げに来たよ(ねぇよ)】で呼んだカビパンのカリスマ性に頼ろうとするポーラリア。
直接戦闘はダメダメだが、彼女には不思議と人を引き付ける魅力がある。真面目にしていれば凛々しい立ち振舞いで教団の教祖にまで収まっていた人物なので、ボアヘッドくらい騙くらかせないかと思ったのだが。
「なんだか気分が悪そうだわ。……船酔いした!? さっきのアレで!?」
「ええ。めっちゃ吐きそう」
残念なことに今のカビパンには外面を取り繕う余裕すら無かった。先程のアクエリオマスコットダービーで、ウォータくん人形に乗って揺られまくったのが効いたらしい。そりゃ普通の人間はあんなので無理やり激流登りなんてすれば、体調くらい崩してもおかしくは無いが。
「うぷっ」
「来ないでー!」
危機を察知したポーラリアが飛び退いた直後、凶暴な悪霊(カビパン)の口から吐かれるとしゃーなあれが、絵面にできないアレが盛大にリバースされる。その様子は集落にいたボアヘッド達もバッチリ見ていただろう。
「あっちょっとたじろいだ? 凶暴でも警戒とか恐怖とかあるよね多分」
いくら知性が弱体化していても、連中にも「近付くたくない」と思うものくらいあるだろう。鼻のきく猪には吐瀉物の悪臭がキツかったのもあるかもしれない。意図した形では無いものの、敵の出鼻を挫くことはできたようだ。
「ほらー、聖人雪女なお姉ちゃんなんか神っぽいし、とりあえず蛮神として祟えるには十分な感じが本能でしません?」
ここぞとばかりにポーラリアは口車で敵を言いくるめようとする。知性よりも直感でものを考える今のボアヘッド相手なら、冷静に考えるとおかしいことでも勢いでゴリ押せないだろうか。出会い頭で船酔いしてる神とか威厳が足りない気もするが。
「ボ、ボァー……」「良ク分カランガ、ソウカモ」
それが逆に連中の威勢を削いだのだろうか、困惑しながらも妖精の言葉に耳を傾けるボアヘッド達。まじまじとカビパンの様子を眺めれば、なんか後光っぽいものも出ているし、本当に神様なのかもしれない――おおむね見た目と振る舞いだけで判断するくらいには、彼らのおつむは残念なことになっていた。
「ですので、みんなで協力してお姉ちゃんを、戦場の奥までご看病のご搬送を、どうかーどうかー!」
「……ワカッタ。神サマ、ハコブ」
こうして普通ならありえないようなポーラリアの頼みは、なぜか聞き入れられてしまい。ボアヘッドの群れはまだ酔っているカビパンを担いでえっさほいさと上層に運んでいく。水中活動に長けた彼らの運搬は、少なくともウォータ君人形よりは快適だろう。
「ありがたやーありがたやー!」
これでエリクシルの元まで体力や魔力もろもろを温存したまま先に進める。マジで救いの女神になってしまったカビパンを拝みつつ、ポーラリアは神輿のように運ばれていく彼女の後をパタパタ付いていくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
マウザー・ハイネン
…シーボアヘッドでもないのに水に適応しているとは。
ボアヘッドならまあそういう事もあるでしょう。昔も色々やってましたし。
ですがここにいるのはマスカレイド、殺す為に襲い掛かってくるのなら遠慮なく潰して差し上げましょう。
引き続きゴンドラに乗って荒波の間を抜けていきます。
ボアヘッドの攻撃をすり抜けつつ槍で受け流し回避。
水面近くに多く集まってきたなら氷剣を水面に刺しUC発動。
氷は出来るだけ滑りやすく加速し易いようにしましょうか。
ボアヘッドを巻き込む形で水を凍結させれば隙もできる、その間に槍の突撃で貫き仕留めてましょうか。
始末が終わったらゴンドラに戻りUC解除し上を目指しましょうか。
※アドリブ絡み等お任せ
「……シーボアヘッドでもないのに水に適応しているとは」
バルバの中でも「シーバルバ」と呼ばれる、水中でも陸地でも生活できる水棲系のバルバがアクエリオに生息していた事をマウザーは覚えている。だが見たところ、今彼女の眼の前にいるボアヘッドはマスカレイド化しているとはいえ通常種。水上戦に適応しているのはエリクシルの力か、あるいは本人達の特性か。
「ボアヘッドならまあそういう事もあるでしょう。昔も色々やってましたし」
かつての冒険で一体どんな経験をしてきたのだろうか、彼女は割とあっさり疑問を呑み込んだ。そんな事よりもっと不思議な事や奇妙な事はいくらでも見てきた。すいすいと軽快に荒波の中を泳ぐボアヘッドがいても、今更驚くまい。
「ですがここにいるのはマスカレイド、殺す為に襲い掛かってくるのなら遠慮なく潰して差し上げましょう」
「「ボァ、ボァ、ボァァー!!」」
マウザーの静かな闘志に引かれるように、ボアヘッド達は大挙して襲い掛かる。まずはゴンドラの上から引きずり下ろすつもりか、素手による【剛鬼投げ】を仕掛けを仕掛けてくるが、彼女もそう簡単に掴まりはしない。
「どきなさい」
手にした「教皇の氷槍」の柄で敵の腕をぴしゃりと打ちすえ、攻撃を受け流し。戦闘中でもゴンドラを巧みに操作して荒波の間をくぐり、敵の群れをすり抜けていく。これも昔取った杵柄なのか、水の上の戦いでも遅れを取る様子はまるでなかった。
「「ボァァァーッ!!」」
快調に先をゆくマウザーを追いかけて、ボアヘッドの群れは猪突猛進。咆哮に呼ばれた仲間も集まってきて、大規模な追跡が始まる。回り込んで包囲するような知恵はないようなので、そう簡単に捕まることは無いだろうが――。
「彼らを連れたままエリクシルの元に向かうわけにもいきませんね」
マウザーは彼らが水面近くに集まってくるのを待ってから、もう一度『ジュデッカ』を抜き【封印の凍土】を発動。水面に刺さったアイスレイピアが周囲を凍りつかせていく。水に適応したボアヘッドと言えど、氷の上は果たしてどうだろうか。
(氷は出来るだけ滑りやすく加速し易いようにしましょうか)
滑らかな不融氷に覆われた運河は、さながら巨大なスケートリンクの如く。マウザーはその上にとん、と軽やかに着地するが、巻き込まれたボアヘッド達はそうはいかなかった。急激な地形の変化に対応できず、追跡の勢い余って盛大に転ぶ。
「ボァッ?!」「ボァァーーー!?」
戦斧を支えにしてなんとか立ち上がろうとするが、踏ん張りのきかないへっぴり腰は見るからに隙だらけ。
その間にマウザーは氷の上を滑走して距離を詰め、無防備な心臓を狙って槍を突き出す。氷荊と白百合で飾り立てられた銀色の穂先が、冷たい煌めきを放って。
「ボ、ボアァ……!!」
十分な加速が乗った突撃と銀槍の鋭さは、バルバの分厚い胸板を串刺しにするのに十分な威力があった。
貫かれたボアヘッドは血反吐をばら撒いて斃れ、跡形もなく消滅する。反撃しようにもこの足場では逃げる事さえままならない。
「……終わりましたね」
またたく間に始末をつけたマウザーは槍についた血を払うと、ゴンドラに戻ってユーベルコードを解除する。
夥しい数のボアヘッドの血で濡れた氷が、運河の水に溶けていく。その様子を見届ける暇もなく、彼女は再びオールを漕いで都市国家の上を目指すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
キャスパー・クロス
共闘歓迎
ったくもー、またエリクシルが悪さをしてるんだね?
猟兵とかユーベルコードってのもまだ、我が事ながらしょーじきよく分かってないけど…
私の愛するアクエリオを脅かすなら
「容赦しないよ、|ボアヘッド《マヌケ頭》ども!」
【空中機動】で荒波を飛び越えるように疾走し接近
私はとにかくハイスピードに動き回って手数で圧倒するスタイル
【連続コンボ】の【早業】で蹴り突き殴り払い乱打乱打乱打!
相手は水上に慣れてるとはいえ、【体勢を崩す】ことさえできれば濁流に足を取られるのは道理でしょう
まして牙がでかくなれば余計にバランスが悪い筈!
「葡萄色──」
ボアヘッドが攻撃してくるタイミングを見計らい、【カウンター】の《葡萄色は秘やか》で体勢を崩し
「──喰らえ、乙女色ッ!」
巨大化した牙ごと《乙女色は僅か》で顔面を粉砕!
更に【傷口をえぐる】ように乱打ッ!
嗜虐はしない、然し容赦もしない
さあ、次かかってこい!
「ったくもー、またエリクシルが悪さをしてるんだね?」
宝石だった頃は何度も砕いてやったのに往生際の悪い奴らだと、文句を言うのはキャスパー・クロス(空色は雅やか・f38927)。かつては世界中を飛んで跳んで走り抜け、世界に平和をもたらしたエンドブレイカーの1人であり、新たに覚醒した猟兵の一員だ。
「猟兵とかユーベルコードってのもまだ、我が事ながらしょーじきよく分かってないけど……」
骸の海とかオブリビオンとか、急に言われても何それ? って感じだし、自分の中で何が変わったのかもまだピンとこない。けれど今、目の前に許しちゃダメな奴らがいて、そいつらのせいでアクエリオが大変なことになっているのなら。
「私の愛するアクエリオを脅かすなら、容赦しないよ、|ボアヘッド《マヌケ頭》ども!」
この都市国家に人一倍の愛着を持つキャスパーは、怒りを込めて大地を蹴った。まるで羽が生えているような軽やかな跳躍で荒波を飛び越え、空を翔ぶように疾走する。大雨洪水なんのその、スカイランナーにかかれば街中の全てが足場だ。
「ボァ、ボァー!」
単騎で向かってくる獲物に対してボアヘッド達は【ボアクラッシュ】を発動、長大化させた牙で上空の獲物を串刺しにせんとする。しかしキャスパーはひらりと空中で体勢を変えて切っ先を避けると、そのまま敵との距離を詰めてきた。
「まずは一発、ニ発、三発、まだまだっ!」
「ボァ、ボァ、ボァ、ボァァッ!!?」
キャスパーの戦法はとにかくハイスピードに動き回り手数で圧倒するスタイル。目にも留まらぬ早業で蹴り、殴り、突き、払いの乱打乱打乱打。息もつかせぬ|連続コンボ《ダブルトリガー》はエンドブレイカーの戦いの華だが、彼女の場合は経験を重ねてさらに磨きがかかっている。
「グギギ、ヤッテクレタナ!」
しかし相手もなかなかタフな様で、殴られた痛みを怒りに変えて強引に突き返してくる。至近距離から伸びる猪の牙は、貫かれれば大量出血は必至――だが、キャスパーはそのタイミングを見計らってカウンターの構えを取っていた。
「葡萄色──」
「ボァッ?!」
円運動を利用した視覚外からの拳打が、ボアヘッドの横っ面をはたく。痛烈ではなかったものの、不意の衝撃でバランスを崩した敵の攻撃は空を切る。慌てて立ち直ろうとするが、頭が重いようで逆にフラつくばかり。
(相手は水上に慣れてるとはいえ、体勢を崩すことさえできれば濁流に足を取られるのは道理でしょう。まして牙がでかくなれば余計にバランスが悪い筈!)
アクエリオを滅ぼすための災害や武器を、逆に利用して敵を討つチャンスを作る。コンボの起点となる【葡萄色は秘やか】でボアヘッドの体勢を崩したキャスパーは、間髪入れずに本命の【乙女色は僅か】を繰り出した。
「──喰らえ、乙女色ッ!」
「ボガァッ!!!?」
遠心力を乗せた強烈なひと蹴りが、巨大化した牙ごとボアヘッドの顔面を粉砕する。さらに傷口をえぐるように乱打を叩き込めば、とうとう相手は力尽きて濁流の底に沈んでいった。嗜虐はしない、しかし容赦もしない、見事な完封勝利である。
「さあ、次かかってこい!」
「ボ、ボァ……ッ」
キャスパーはすぐさま残っている群れに向き直ると、闘志を剥き出しにして叫ぶ。いかに凶暴なバルバでも、今の仲間のやられようを見て猪突猛進できる者はいないだろう。脳裏によぎった微かな恐れが脚をすくませる。その時点でもう決着はついていた。
「来ないならこっちから行くよ!」
それからの戦いはほぼ一方的だった。キャスパーは目についた敵を次から次に蹴り飛ばし、殴り倒し、運河の藻屑に変えていく。彼女の前からボアヘッドの群れが全滅するのに、それから大した時間はかからなかった。
マヌケ頭どもを一掃した後、いよいよ彼女はアクエリオ上層に。そこに居座っている災いの元凶、エリクシルの元に向かうのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『夢姫レム』
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POW : 魔王覚醒
【マスカレイドの王】に変身する。変身の度に自身の【魔王の部位】の数と身長が2倍になり、負傷が回復する。
SPD : 夢奪い
【目覚めぬ眠りをもたらす呪詛】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全対象を眠らせる。また、睡眠中の対象は負傷が回復する。
WIZ : レムのおともだち
召喚したレベル×1体の【幻想獣(イマージュ)マスカレイド】に【幻想の翼】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。
イラスト:ぴょん吉
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
立ち塞がるマスカレイド「ボアヘッド」の群れを蹴散らし、崩壊するアクエリオをさらに突き進む猟兵達。
気がつけば都市国家のかなり上まで来ていたようで、水神祭都の象徴である「水瓶」が、もう間近に見える。恵みをもたらすはずの水は今や災いの激流となり、都市に住まう生命を水底に沈めようとしていた。
「……あら。あなたの『夢』を邪魔する人たちが来たみたいよ、リゼッタ」
「…………」
その濁流の源で猟兵達を待っていたのは、二人の少女だった。
正確には「1人と半分の少女」と言うべきかもしれない。何故ならば、彼女らのうち片方の半身は、明らかな異形と化していたからだ。左半身は寝巻きを着た金髪の娘だが、右半身は道化師めいた怪物であり、背中にはニ枚の翼が生えている。
この世界のエンドブレイカー達に聞けば、それがマスカレイドの中でも特別な個体だと分かるだろう。
彼女の名は「夢姫レム」。かつてアクエリオに封印されていたマスカレイドの王「ゼルデギロス」の力を受け継いだ「部位所有者」であり、この都市を危機に陥れた上級マスカレイドだ。
「あなたの『夢』、あなたの『願い』。それを叶えるためには、殺さないと」
「そう……そうすれば、私はアクエリオの星になれる……」
そしてレムの隣にいる少女こそ、今回の事件の発端となってしまったゴンドラ乗りのリゼッタだろう。
アクエリオで1番のゴンドラ乗りになるという、無垢で純粋な夢を抱いて努力を重ねてきた少女。だが、その夢はエリクシルによって歪められ、本人も正気の様子ではない。虚ろな瞳でたたずむ姿はまるで操り人形だ。
「そうよ。叶えたいなら、願って。それがわたしの力になるの」
「一番の……ゴンドラ乗りに……」
エリクシルから「願いの力」を移植されたレムは、リゼッタが願い続けるように囁きかける。
その願いをさらなる力に変えて、彼女はアクエリオを滅ぼそうとしているのだ。枕で隠された胸元に煌めく、赤いエリクシルの輝きがどんどん大きくなっている。
元々彼女はアクエリオでも最強格だったマスカレイドであり、それがエリクシルで強化されているとなれば、苦戦は必至の強敵だろう。だが、その魔力はあくまで1人の少女の「願い」に起因している点が弱点になる。
リゼッタの目を覚まさせ、正気に戻すことができれば、歪められた「願いの力」は弱まる。そうすればレムの撃破も可能になるはずだ。
「そうよ……もう二度と、わたしたちの夢は邪魔させない……誰にも、誰にも!」
エリクシルによって復活し、その力とひとつになった夢姫レム。彼女を倒せば、アクエリオの滅亡は防げる。
万能の魔神の力を得た仮面の魔物から、果たして猟兵達は水神祭都を救う事はできるのか――決戦の火蓋が、ここに切って落とされる。
サツキ・ウカガミ
瞳術『忍夜皐曲者』・暴悪でレムを捕縛。
ボク、今から彼女と話したいから。
待っててくれるかな?
リゼッタに語りかける。
キミの夢を聞いたよ。
素敵だね!「一番のゴンドラ乗り」!
実は。
ボクもアマツカグラの帝になる夢があるんだ。
昔、アマツカグラの皆は強い人を帝に
求めていてね。でも当時、ボクには求められた
力が備わってなかったんだよ。
で、今はキミと同じ。頑張ってる所。
でもね、ボクが本当に夢見てるのは
「皆を守れる強い存在」であって、
それに帝という名前がついてるだけなんだよね。
キミも同じじゃないかな?
キミがなりたい一番のゴンドラ乗りは
技術や経験に支えられた存在じゃない?
キミは「アクエリオの星」の称号が欲しいだけ?
レムの甘言で、キミの願いは本当に叶うのかな?
さぁ、目を覚まして!
夢への道は、そっちじゃないよ!
リゼッタの目が覚めるか
捕縛がとけるなら、レムと戦闘。
お待たせしちゃったね。
刀の居合いになぎ払い、武器受け。
クナイのナイフ投げに急所突き、不意打ち。
見切りに気配感知。
持てる技能全てで、レムとお友達を相手するよ!
「さあ、わたしたちの夢のために、死んでちょうだい……あら?」
願いの力を宿した『夢姫レム』が、戦いの開幕を宣言しようとしたその時。見えない糸でも絡まったように、彼女の動きが不自然に固まる。その理由は先んじてサツキが放った【瞳術『忍夜皐曲者』・暴悪】にあった。
「ボク、今から彼女と話したいから。待っててくれるかな?」
サツキ模様の浮かんだ彼女の瞳に魅入られた者は、その命令に応じて動きを一時的に封じられる。ボアヘッドとの戦いで披露した瞳術のさらに上位版にあたるユーベルコードであり、万能の魔神さえも捕縛しうる奥義だ。
「動けない……どうして?」
単に体を動かせないだけでなくユーベルコードの使用も封じられたレムは、困惑しながら立ち尽くしている。
あまり長く持続させられる保証はないが、それでも会話をするには十分な時間稼ぎだ。この間にサツキは視線を切らさないように気をつけつつ、リゼッタに語りかける。
「キミの夢を聞いたよ。素敵だね! 『一番のゴンドラ乗り』!」
「…………」
彼女の呼びかけにリゼッタはぼうっと突っ立っているだけで返事をしない。ただ、一番のゴンドラ乗りという言葉にだけは微かな反応があった。エリクシルに目をつけられるほど強く純粋な願い。正気を失わされた今でも本当の想いは胸の奥に眠っているはずだ。
「実は。ボクもアマツカグラの帝になる夢があるんだ」
少女の正気を呼び覚まそうと、サツキは自らの夢を語り始める。彼女の故郷である「霊峰天舞アマツカグラ」は、|帝《ミカド》と呼ばれる君主によって代々統治されてきた。かつては血統による世襲制であったが、あるエンドブレイカーの一団が帝位の証たる『茨太刀』を抜いた事から流れが変わる。
「昔、アマツカグラの皆は強い人を帝に求めていてね。でも当時、ボクには求められた力が備わってなかったんだよ」
アマツカグラはマスカレイドの侵略を強く受けた都市国家のひとつだ。一時は都市全体が陥落する事態にまで陥った事もある。そういった経緯から民衆が自分達を守ってくれるエンドブレイカーの中でも最強の者を帝にと望んだのは必然だった。帝の資格を争う闘技大会にサツキも挑んだものの、結果は惜しくも敗退であった。
「で、今はキミと同じ。頑張ってる所」
15年前は敗れたとはいえ、サツキはまだ夢を諦めてはいない。鍛錬と情報収集を続け、猟兵に覚醒した事で新たな|忍術《ユーベルコード》も得た。頂にはまだ遠くとも、歩みを止めたことは一日とて無かった。その直向きでキラキラした眼差しが、じっとリゼッタを見つめる。
「でもね、ボクが本当に夢見てるのは『皆を守れる強い存在』であって、それに帝という名前がついてるだけなんだよね」
欲しいのは「帝」という称号にまつわる名誉や権威ではない。帝になれるくらい強くなれば、きっと世界中の皆を守る事もできるから。今もこうして危機に瀕している都市国家や、悪者に苦しめられている人は大勢いる。そんな人達を守れるようになるための"目標"を言葉にしたものが、サツキにとっての「帝」なのだ。
「キミも同じじゃないかな? キミがなりたい一番のゴンドラ乗りは、技術や経験に支えられた存在じゃない?」
どうしてリゼッタは「一番のゴンドラ乗り」になりたいのか。その言葉の真意をサツキは問う。エリクシルの力で自分以外のゴンドラ乗りを消してしまえば、確かに一番にはなれるだろう。だが、そんなものは実を伴わない、ただの虚名だ。
「キミは『アクエリオの星』の称号が欲しいだけ? レムの甘言で、キミの願いは本当に叶うのかな?」
「……私が、叶えたいのは……」
またたく天上の星に手を伸ばした理由は。その胸に宿した本当の夢は。きっと、こんな形ではなかったはず。
呼びかけるうちにリゼッタの瞳には微かに光が戻り、唇がぽつりと言葉を紡ぐ。さっきよりも明確な反応に、レムが「嘘っ、どうして」と驚きの声を上げた。
「さぁ、目を覚まして! 夢への道は、そっちじゃないよ!」
迷える少女を正しき道に連れ戻そうと、サツキは手を差し伸べる。心の底奥まで響くまっすぐな呼びかけは、洗脳されたリゼッタにも届いた。エリクシルの呪縛から逃れるように、自らも手を伸ばし、一歩前に出て――。
「――耳を貸しちゃだめよ、リゼッタ!」
それを遮ったのはレムだった。どうやらもう瞳術の拘束を解いたらしい。あと一歩だったのに、とサツキは眉を顰めるものの、言いたいことは全て伝えることができた。正気に戻れるかどうか、あとは本人の意思次第だ。
「お待たせしちゃったね」
刀の柄に手をかけて、改めて敵と対峙するサツキ。新しい"お友達"をたぶらかされそうになって、夢姫レムはお怒りのようだ。仮面に覆われていない左半面を癇癪に歪め、枕を抱きしめる腕にぎゅっと力を込めている。
「もう許さないわ。みんな、あいつをやっつけて!」
その呼び声に応じて現れるのは、幻想の翼を生やした【レムのおともだち】の群れ。自らの空想をイマージュという魔物に変えて具現化するのが、彼女のマスカレイドとしての能力だ。かつてのアクエリオの戦いにおいて最強の「部位保有者」となった実力は、ただの夢見がちな少女のそれではない。
「ボクの夢は、こんな所で終わらない!」
押し寄せるイマージュの群れを、サツキは「月牙」でなぎ払う。抜く手も見せぬ達人の居合いが幻想を切り裂き、悪しき夢を討ち払う。なるほど数は大したものだが、一体一体は今の彼女にとってさほどの脅威ではない。鍛錬の成果か、敵のほうが弱体化しているのか、あるいは両方か。
「っ……どうして? 力が出ない……!」
先程の説得が効いている証だろう、万全に「願いの力」を発揮する事ができず、レムは焦りを隠せなかった。
一方のサツキは落ち着いており、心眼の域まで研ぎ澄まされた直感は四方八方に上空、あらゆる方角からの敵の気配を察知し、完全に見切っていた。猟兵として、エンドブレイカーとして身に付けた|技能と鍛錬《アビリティ》の全てが、悪しき終焉を打ち破る力となる。
「そこだっ!」
敵群の中に生じた一筋の活路を見逃さず、サツキは懐から一本のクナイを投げ放った。艶消しの漆黒に星空風の精緻な細工が映える、その業物の銘は「宵闇」。流星のように疾く、影法師よりも静かに、終焉を穿つ刃だ。
「きゃっ……!!?」
針に糸を通すような正確さで急所を突かれたレムは、悲鳴を上げて後ろに倒れ込む。その傷から滴るは鮮血。
いくらエリクシルの力で生前より強大に蘇っても、倒せない敵などいない。鍛錬と実戦に裏打ちされた揺るぎない自信を秘めて、サツキは刃を振るい続けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
リィリン・エンドローフ
願うこと自体は悪ではないと思いますの
ただ、実現のさせ方が実力ではないというのは如何なものかと
荒波が、アクエリオに襲うことはあるでしょう
アクエリオの星が、全てを滅ぼして得る名誉で良いのですの?
――毎年決まるアクエリオの星を冠する人物は、そういう手段を使って、いたかしら。
説得は高圧的かつ、腹黒に。
悪意の心も、お詫びも合わせて洗いざらい流すなら、いまのうち。
星霊ジェナスの群れを呼び、敵軍にぶつけますの
貴方様の夢は、貴方様の努力でいつか叶います。
悪夢に手を染めてまで実現させる夢に、貴方様は胸を張れるのですの?
私は貴族の生まれ、目標を汚される事は耐えかねます
リゼッタ様は、歪んだ形で叶った夢に喜べますの?
「願うこと自体は悪ではないと思いますの。ただ、実現のさせ方が実力ではないというのは如何なものかと」
落ち着いていながらもきっぱりとした物言いで、ゴンドラ乗りの少女に呼びかけるのはリィリン。アクエリオの星――この都市国家で1番のゴンドラ乗りになるという夢は、それだけで邪悪とはいえない。願いを歪めて叶えようとする輩がいただけで。
「荒波が、アクエリオに襲うことはあるでしょう。アクエリオの星が、全てを滅ぼして得る名誉で良いのですの?」
瓦礫と化した都市国家の上で、孤独にまたたく凶星となってなんの価値があるだろうと彼女は言う。その虚名を手にした時にはもう、称えてくれる人さえ居ないというのに。つらつらとした彼女の呼びかけは、洗脳された少女の心を打つ。
「――毎年決まるアクエリオの星を冠する人物は、そういう手段を使って、いたかしら」
高圧的かつ腹に一物抱えていそうな言い方だったが、リィリンの説得は真っ当なものだった。言葉を重ねるうちにリゼッタの瞳は揺れ、正気を失った状態でも葛藤と動揺が明らかに見て取れる。彼女はまだ、心の底まで邪悪に染まってしまった訳ではない。
「違う……私の憧れた、アクエリオの星は……」
「リゼッタ! 耳を貸しちゃだめよ!」
そこで説得の邪魔をしたのは『夢姫レム』。せっかくの願いを奪われてはたまらないと、焦りが声に含まれている。強大な力を持つマスカレイドとして復活した彼女だが、その力はあくまでもリゼッタの願いの力に支えられているのだ。
「あなたは、もう黙って!」
レムはミラージュマスカレイドの【レムのおともだち】を喚び出し、口封じの為にリィリンへとけしかける。
対するリィリンも白い大きなサメの姿をした【|星霊《せいれい》ジェナス】の群れを召喚し、敵の軍勢を迎え撃った。
「噛み砕く鮫牙。これを貴方様は防げまして?」
宙を泳ぐ大量のサメの群れは荒波を産み、戦場に大津波を発生させる。折しも今のアクエリオの運河は荒れ模様、生じる波の規模も普段よりも大きく、様々な姿形をしたレムのミラージュ軍団をまとめて押し流していく。
「貴方様の夢は、貴方様の努力でいつか叶います。悪夢に手を染めてまで実現させる夢に、貴方様は胸を張れるのですの?」
星霊ジェナスの群れを使役しながら、リィリンはリゼッタへの説得を止めない。エリクシルという邪悪な力を利用し、夢のために重ねてきた努力や研鑽を否定してしまうのかと。少なくとも、リィリン自身はそんなことは絶対に御免だった。
「私は貴族の生まれ、目標を汚される事は耐えかねます。リゼッタ様は、歪んだ形で叶った夢に喜べますの?」
「……喜べない、と思う……私も……!」
夢見心地のようにぼんやりとしていた少女の語気が、だんだんと強くなってくる。「リゼッタ!?」とレムが呼びかけても無駄だ。彼女が正気を取り戻しつつある証拠として、ミラージュの軍勢から幻想の翼が消え、力が失われていく――。
「悪意の心も、お詫びも合わせて洗いざらい流すなら、いまのうち」
翼を失ったミラージュマスカレイドを、星霊の津波が呑み込んでいく。こんな悪夢は早く覚めてしまいなさいと言うように、リィリンは冷然とした眼差しでそれを見下ろしていた。一時はアクエリオを滅ぼさんとしていた水害は、今は夢姫に対する逆襲となって、サメの星霊と一緒に牙を剥く。
「ッ……!!」
牙に噛みつかれ、波に押し流され、苦悶を顔に浮かべるレム。この都市の未来の潮目が変わろうとしていた。
大成功
🔵🔵🔵
空桐・清導
【POW】アドリブや連携も大歓迎だ
「リゼッタを、そしてその夢を返して貰うぞ、夢姫レム!」
豪雨の中でも通るような声で叫ぶ
魔王となったレムの攻撃を捌きながらも、リゼッタに声をかける
「リゼッタ!キミが一番になりたかったのは
こんな嵐吹き荒れるアクエリオじゃないだろ!?
思い出すんだ!キミが一番になりたかったのは
活気溢れるアクエリオだったはずだ!
こんな空も見えない場所じゃ、アクエリオの星にはなれないぜ!」
彼女が正気に戻った瞬間、UCを発動
その瞬間、嵐が吹き消された
そう、光り輝く巨人が嵐を割いたのだ!
天から星の光が降り注ぎ、纏う光を剣に変える
光剣をしかと握りしめ、
偽りの夢を騙る魔王を一刀両断する!
「リゼッタを、そしてその夢を返して貰うぞ、夢姫レム!」
豪雨の中でも通るような声で叫ぶのは、真紅の鎧を身に纏った清導――この場においては"ブレイザイン"と呼ぶべきか。無垢なる願いを邪悪に歪め、都市国家を滅亡させようとする|悪党《ヴィラン》は目の前に。ヒーローとしての本懐を、果たすべき時は今だ。
「この子はもう、わたしのおともだち。絶対に返さないわ!」
対するレムが子供じみた癇癪を起こして叫ぶと、まだ人の姿を保っていた部位までもが異形に変化していく。
【魔王覚醒】により引き起こされるその変異は、かつてこの都市に封印されていたマスカレイドの王、ゼルデギロスに近付いているようだった。
「わたしたちの『夢』を邪魔する人は、みんなやっつけちゃうんだから!」
4枚に増えた翼を羽ばたかせ、異形化した腕を振りかざして、邪魔者に襲い掛かるレム。対する清導は装甲の厚い部分や腕部の「ブレイヴ・ガントレット」を駆使して攻撃を捌きながらも、今だ洗脳下にあるリゼッタに声をかける。
「リゼッタ! キミが一番になりたかったのは、こんな嵐吹き荒れるアクエリオじゃないだろ!?」
元々この都市は運河で結ばれた美しい都市国家だったという。風光明媚な街並みを歌いながら自由に行き交うゴンドラ乗りはアクエリオの花形であり象徴。リゼッタもきっと、その姿に憧れてゴンドラ乗りとなり、いつかは一番にと夢を志したはずだ。
「思い出すんだ! キミが一番になりたかったのは、活気溢れるアクエリオだったはずだ!」
「黙れ……っ、これ以上、リゼッタを惑わせないで!」
夢姫の猛攻によって鎧の一部が破損する。だが、それでも清導は声をかけるのを止めない。水害に見舞われた現在のアクエリオには、表を行き交う人の気配すらない。しかし"水神祭都"と謳われた本来の美しきアクエリオの光景は、夢と共にリゼッタの心の中に残っているはずだ。
「こんな空も見えない場所じゃ、アクエリオの星にはなれないぜ!」
「……私が……私が憧れた、アクエリオの星……」
彼の言葉につられるように、リゼッタが空を見上げる。昏く濁った曇天と吹き荒れる嵐しか、そこにはない。
星など見えぬ終焉の闇。歪められた夢が行き着く結果を改めて目の当たりにした時、彼女の瞳に光が戻った。
「そうだ……違う。こんなのは、私が目指したアクエリオの星じゃない!」
「リゼッタ?!」
はっきりと意思の籠もった声でリゼッタが叫ぶと、レムの身体から追加された部位が剥がれ落ちる。一瞬でも彼女が正気を取り戻したことで、マスカレイドの手から「願いの力」が失われたのだ――その瞬間を逃さずに、清導はユーベルコードを発動した。
「オレの魂からあふれ出る光をオーラに変えて!! いくぜ! 究極!! 変身!!!」
力強い雄叫びが天を衝いたその時、アクエリオの上空から嵐が吹き消された。同時に現れるのは黄金のオーラで形作られた光り輝く巨人。そう、【究極変身!】を遂げた清導の勇姿が、終焉の闇を払い、嵐を割いたのだ!
「なっ……なによ、その姿は……!」
「これが本当の、夢の力だ!」
呆然と見上げるレムの前で、清導は手を上に掲げる。すると天から星の光が降り注ぎ、纏う光は剣に変わる。
ヒーローの魂より溢れ出るその輝きは可能性の具現。奇跡を生み出し、未来を切り拓く無限の力だ。彼はそれをしかと握りしめ、全身全霊の力をもって振り下ろした。
「偽りの夢を騙る魔王よ! 思い知れ!!!」
「―――ッ!!?」
燦然と煌めく光の斬撃が、魔王を一刀両断する。断ち切られた部位は消滅し、レムの肉体は本来のサイズに。
致命傷には至らなかったものの、焼印のように刻まれたその傷は、誰の目から見ても明らかな深手であった。
大成功
🔵🔵🔵
ポーラリア・ベル
ゴンドラでゴンゴンドラドラするのがあなたの夢なのね!
でも大丈夫!?大変じゃない!?1日にこの広いアクエリオ中を、お客さん全員引き受けて運ぶなら
よりおっきくて立派で超速のゴンドラに改造とかー
あっ、ポーラがお水凍らせてゴンドラ滑らせれば早くなるかしら!
そうじゃない?そうなの?
じゃあお姉ちゃんはどんな風にゴンドラを……
考えて。そしてお口にしてみて
ふぇあー!忘れてたわ!マスカレイドとカビパンお姉ちゃん(ユーベルコード)とボアヘッド!
ボアヘッドのお兄ちゃん!あたし達は人間じゃないよ!(妖精と悪霊)
カビパン神様のご加護の為に、今一度戦って!
(カビパンを一瞬消して【怪力】によるボアヘッド【投擲】を繰り返し)
「ゴンドラでゴンゴンドラドラするのがあなたの夢なのね!」
「ごんごん……どらどら……?」
アクエリオで1番のゴンドラ乗りになるというリゼッタの願いを、そう評したのはポーラリア。謎の擬音に相手は首を傾げているが、まあ言わんとする事はなんとなく分かるだろう。それ自体は真っ当で立派な夢である。
「でも大丈夫!? 大変じゃない!? 1日にこの広いアクエリオ中を、お客さん全員引き受けて運ぶなら、よりおっきくて立派で超速のゴンドラに改造とかー」
エリクシルの力でアクエリオ中のゴンドラ乗りがいなくなれば、仕事の負担はリゼッタ1人にのしかかる事になる。どうやらポーラリアはそれを心配しているようだ。心配するポイントがちょっとズレているような気もするが、本人は大真面目な様子である。
「あっ、ポーラがお水凍らせてゴンドラ滑らせれば早くなるかしら!」
「えっと……そうじゃない……」
まだ洗脳から完全に抜けきれていないリゼッタでも、なんとなくそれはピントがズレていると思った。凍った運河の上を行くならゴンドラではなくソリでもいいし、ただ滑るだけなら操船の技術は必要ない。彼女が憧れたゴンドラ乗りの姿とは異なるものだ。
「そうじゃない? そうなの? じゃあお姉ちゃんはどんな風にゴンドラを……」
「えっと……それは……」
ポーラリアが質問すると、彼女はぼんやりと考える素振りを見せた。自分はこれまでどうやってゴンドラを動かしていたか。そして、心に思い描く理想のゴンドラ乗りの姿とは。夢を今一度振り返ることが、エリクシルの呪縛を乗り越える力になる。
「考えて。そしてお口にしてみて」
「私は……どんな流れでもすいっと乗り越えて……お客さんみんなを笑顔にする、そんなゴンドラ乗りに……」
それがリゼッタの考える「アクエリオの星」。技量に優れるだけでなく、乗客に満足させられることも大事。
妖精の呼びかけによって自分の夢を再認識した少女の瞳には、だんだんと光が戻ってくる。それを見て焦りだしたのは「夢姫レム」だ。
「ちょっと、わたしのお友達になにをしてるの!?」
彼女は慌てて【レムのおともだち】を呼び出し、ポーラリアとリゼッタを引き離そうとする。歪んだ夢の力が失われれば、その分だけエリクシルの力も弱まる。これ以上正気に戻される前に、もう一度願いの主を洗脳するつもりか。
「ふぇあー! 忘れてたわ! マスカレイドとカビパンお姉ちゃんとボアヘッド!」
押し寄せるミラージュマスカレイドの群れを見て、ポーラリアは当初の目的を思い出したらしい。その後ろには【冬を告げに来たよ(ねぇよ)】で召喚したままのカビパンと、何故かついてきてしまったボアヘッドの群れがいる。
「ちょっと、あなたたち! 人間をみんな殺してって言ったはずよ!」
アクエリオを滅ぼすために派遣したはずのモンスターが、どうして猟兵と一緒に戻ってきているのか。レムは当然お怒りだが、今ここにいるボアヘッドはポーラリアの口車に言いくるめられ、カビパンの事を神と崇めている連中である。今さら夢姫の言う事など聞きはしない。
「ボアヘッドのお兄ちゃん! あたし達は人間じゃないよ!」
「確カニ、ソウダ」
妖精と悪霊なら抹殺する対象には含まれない、というポーラリアの詭弁を、ボアヘッド達はあっさり信じた。
この分ならまだ自分達の味方でいてくれるだろう。そう判断した彼女はユーベルコードを解除し、カビパンを一瞬消してからボアヘッドをひょいと持ち上げる。
「カビパン神様のご加護の為に、今一度戦って!」
「ボァ、ボァー!!」
妖精離れした怪力で投擲されたボアヘッドは、その自慢の牙をもってミラージュの群れを貫く弾丸となる。
願いの力が薄れてレムが弱体化した事で、配下の力も弱まっているようだ。一介のバルバと魔王の眷属、その力関係は逆転していた。
「そ、そんな……きゃぁっ!?」
「まだまだいくよ!」
思わぬ造反に戸惑うレムの元に、次々と投げつけられるボアヘッド。ぽいぽいと投擲を繰り返すポーラリアの様子は楽しげで、まるで雪合戦で遊んでいるかのよう。その無邪気さの前では、どんな悪意も悪夢も退散する。
水神祭都にやって来た当初から変わらない自由気ままなノリで、彼女は夢姫を追い詰めていくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
暗都・魎夜
【心情】
歪んだ形で願い叶えるって言っても、限度があるぜ
こんなとんでもない奴らが暴れているってなら、どうにかしねえとな
うちの世界に来られても困るしよ
【リゼッタに】
お前がなりたいのは乗せる相手もいない、繰り上げ1位のゴンドラ乗りなのか?
ちげえだろ
ちがうなら、姫様に本当の願いを言ってやりな
【戦闘】
延々魔王としての力で強くなっていくって言うのなら、それ以上の力でぶん殴るまでだ
UCで強化した「斬撃波」で「切断」
攻撃は「見切り」「武器受け」で防御
「師匠が言ってたぜ、"悪い奴の誘いは天使の誘いに聞こえる"ってな」
「(片付いたらリゼッタに)今度、観光で来るときには、ゴンドラに乗せてくれよ、楽しみにしてるから」
「歪んだ形で願い叶えるって言っても、限度があるぜ」
願った方もまさかこんな事になるなんて思っていなかっただろうと、呆れと怒りを混じえて呟いたのは魎夜。
エリクシルに「願いの力」を移植されたマスカレイド・夢姫レム。都市国家を滅びに誘う力もさる事ながら、最も恐ろしいのは願いに対する歪んだ執着と邪悪な想像力かもしれない。
「こんなとんでもない奴らが暴れているってなら、どうにかしねえとな。うちの世界に来られても困るしよ」
既に他世界にまで侵略の手を広げているエリクシルに、これ以上好き勝手を許す訳にはいかない。彼は魔剣を構えて夢姫に対峙しつつ、その傍らにいるゴンドラ乗りの少女に声をかける。まずは、あの娘を歪んだ悪夢から解放してやる事からだ。
「お前がなりたいのは乗せる相手もいない、繰り上げ1位のゴンドラ乗りなのか?」
「……っ」
その端的かつ的確な指摘に、リゼッタがぴくりと反応を示す。このままアクエリオの全てを滅ぼしてゴンドラ乗りの頂点に立ったとしても、その栄誉を讃えるものはなく、足元にあるのは瓦礫と屍の山。繰り上げ1位とはなかなか的を射た表現だ。
「ちげえだろ。ちがうなら、姫様に本当の願いを言ってやりな」
「わ……私は……」
まだ洗脳により意識がおぼつかない様子のリゼッタは、それでも正気を振り絞るようにして魎夜の呼びかけに応える。開いた口から紡がれる言葉はレムに操られて発するものではない、彼女自身の偽りない本心であった。
「私は、自分の力で……みんなと競い合って、みんなにアクエリオの星として認められたい……!」
「リゼッタ?! っ、よくもっ!」
明確にエリクシルの力を拒絶し始めたリゼッタにレムは焦り、怒りの矛先を魎夜に向ける。その半身を覆った魔王の部位が増殖を始め、真なるマスカレイドの王の姿へと【魔王覚醒】を遂げる。そこにもはや少女の面影はほとんどない。
「余計な事をわたしのお友達に吹き込んで! 絶対に許さないんだから!」
「そりゃこっちの台詞だ」
異形と化した夢姫の八つ当たりを、魎夜は魔剣「滅びの業火」で受け止める。癇癪のままに放たれた攻撃を見切るのは容易かったが、それでも刀身を通じて衝撃が伝わってくる。中身は子供でも魔王の「部位保有者」の力は伊達ではないという事か。
「延々魔王としての力で強くなっていくって言うのなら、それ以上の力でぶん殴るまでだ」
追撃を食らう前に魎夜は【赤い太陽】を発動。燃え盛る太陽の炎を自身に纏い、攻撃力を飛躍的に強化する。
引き換えにこのユーベルコードの発動中は防御力が激減し、全ての攻撃が致命傷になる。攻撃に全力を注いだ乾坤一擲の構えと言えよう。運河の水さえ蒸発するほどの熱量が、夢姫の身を焦がす。
「師匠が言ってたぜ、"悪い奴の誘いは天使の誘いに聞こえる"ってな」
「ッ――……!!?!」
師より学んだ言葉と共に放つのは渾身の斬撃波。燃える闘志の激しさをそのままに、灼熱の波動が悪を斬る。
魔王の部位を切断されたレムは、炭化した半身を押さえて言葉にならない悲鳴を上げ、その場に崩れ落ちた。
「今度、観光で来るときには、ゴンドラに乗せてくれよ、楽しみにしてるから」
「……うんっ」
一太刀にて敵に重症を与えた魎夜は、炎の消えた魔剣をとんと肩に担ぎ、ゴンドラ乗りの少女に笑いかける。
少女がそれに応えて見せた微かな笑みは、洗脳が解けかかっている証。終焉の暗闇に覆われたアクエリオに、夜明けが訪れようとしていた――。
大成功
🔵🔵🔵
神元・眞白
【SPD/割と自由に】【シン眞】
都市登りも終わりが見えてきましたね。あの水瓶がゴールなのでしょう?
さて、アクエリオの出来事もこれで幕を引くことに。長いようで短いようで。
やる事はしっかりと。必要なことは、必要な時に。
並ぶ姿はまるで人形と操者。似たようなものであればあの女の子へ伝える方法も流用できるでしょうか。思念糸を伸ばして、あの子に。本当にしたかった願いが何か。過程と結果が間違っていないか。突き放すことは簡単ですが、必要なのは近くにいる人たち。
眠りを仕掛けてくるとしても私達は人形。人とは違うカタチ。
飛威、この状況ですから回りくどい仕掛けは必要ありません。
認識外からの攻撃は効果的になりますから。
シン・コーエン
シン眞
リゼッタの目を覚まさせる為に語り掛ける。
「君は一番のゴンドラ乗りになる夢を叶える為に努力してきたのだろう。
君の夢は君だけものだ。そこにいる都合の良い夢を見るだけの化物に利用される程、君の夢は安くない筈だ。さあ、起きる時間だよ。」と
レムや配下に対してはUC:フォースの導きを使用。
UC効果+第六感・見切りで攻撃を躱し(オーラ防御も展開)、カウンターで右手の灼星剣・左手の村正に炎の属性攻撃を宿し、UC効果+2回攻撃・斬撃波・破魔・鎧無視攻撃・範囲攻撃にて配下諸共レムを斬り焼いていく。
「お前の夢など何度でも終わらせてみせる。ここで消えろ。」
任務が終わったら眞白さんとこの街を観光してみたいものだ。
「都市登りも終わりが見えてきましたね。あの水瓶がゴールなのでしょう?」
「そうみたいだな」
ここまで眞白とシンが二人三脚で歩んできた、アクエリオを救うための長い道程も、いよいよ最後の敵を残すのみとなった。都市に水を供給する「水瓶」の前で待っているのは、仮面と異形を身に付けた少女と、その傍らにいるゴンドラ乗りの少女。
「さて、アクエリオの出来事もこれで幕を引くことに。長いようで短いようで」
「しっかり幕を引いて、過去の役者にはご退場願わないとな」
世話役の戦闘用人形を起動させる眞白に、深紅のフォースセイバーを具現化するシン。構えは異なれども二人の目指す所は同じ。此度の災いの元凶である「夢姫レム」を撃破し、少女とアクエリオに救いをもたらすのだ。
「幕引きになんてさせないわ。わたしたちのカーニバルは、これから始まるのよ!」
劣勢に立たされつつある夢姫レムは、それを認めまいとするように【レムのおともだち】を召喚。自らの空想からイマージュマスカレイドの軍勢を創造し、猟兵達にけしかけた。悪夢から湧いて出たような奇怪で異質な姿をしたそれらの行進は、まさにカーニバル。レムとゴンドラ乗りの少女――リゼッタはその後方に控える。
「配下は俺が抑える。眞白さんはあの子を」
「はい。やる事はしっかりと。必要なことは、必要な時に」
短い会話と目配せで互いの意思を確認しあうと、まずはシンが前線に飛び出していく。一方の眞白は手元で見えない何かをたぐり、ユーベルコードの発動準備を行う。いかにして少女を救いマスカレイドを倒すか、作戦は既に決まっているようだ。
「見えた! 勝利への道筋がはっきりと」
シンは【フォースの導き】のままに、ミラージュ軍団相手に大立ち回りを見せる。エリクシルの魔力がどれだけ強力でも、フォースの力、すなわち思念の力においては彼のほうが上だ。宇宙の騎士たるフォースナイトは、その力を攻防両面において発揮する。
「キャハハハハ……キャッ?!」「ギヒヒ……グエッ!!」
笑いながら襲ってくるミラージュ達の動きを、未来予知にも等しいほど強化された第六感で見切り、あるいはフォースオーラの鎧で受け止める。そして間髪入れずに右手の「灼星剣」、左手の「村正」に炎を宿してカウンターを仕掛ければ、敵は断末魔と共に灰燼に帰した。
「並ぶ姿はまるで人形と操者。似たようなものであればあの女の子へ伝える方法も流用できるでしょうか」
シンがミラージュの軍勢を抑えている間に、眞白は【事象を歪めるもの】を発動し、目に見えない思念の糸を戦場全域に張り巡らせていく。夢姫という人形遣いに操られているリゼッタに、こちらの想いを伝えるために。
(本当にしたかった願いが何か。過程と結果が間違っていないか。突き放すことは簡単ですが、必要なのは近くにいる人たち)
リゼッタの心に接続を果たすと、彼女は声ではなく思念で語りかける。このままアクエリオを滅ぼして、瓦礫の上の頂点に立って、それで本当に満足なのかと。感情の起伏は少ないが、淡々と心に直接響く思いは、洗脳を上書きするのに十分な効果があった。
「わ……私……こんな事、望んでない……」
「リゼッタ? どうしたの?」
人形が自我を取り戻し始めたことに気付き、レムが慌てて肩を揺さぶる。だが、思念の糸による繋がりを物理的に断ち切ることはできない。止めようと思うのならそもそもユーベルコードを発動する前に止められなかったのが、彼女の失策だろう。
「君は一番のゴンドラ乗りになる夢を叶える為に努力してきたのだろう。君の夢は君だけものだ。そこにいる都合の良い夢を見るだけの化物に利用される程、君の夢は安くない筈だ。さあ、起きる時間だよ」
この機に乗じてシンも、リゼッタの目を覚まさせるために語り掛ける。その口を塞ごうとミラージュの群れが飛び掛かってくるが、明らかにさっきより動きが鈍くなっていた。レムが「願いの力」を失いつつある証拠だ。
「っ……もう、みんなうるさいっ!!」
思い通りにいかない戦局にとうとう癇癪を起こしたレムは【夢奪い】で周囲にいる全てを黙らせようとする。
目覚めぬ眠りをもたらす呪詛が、子供じみた叫びと共に解き放たれ――シンは咄嗟にフォースオーラの密度を高めて耐える。そしてもう一方の眞白はといえば、無防備なまま平然としていた。
「眠りを仕掛けてくるとしても私達は人形。人とは違うカタチ」
ミレナリィドールである彼女には、通常の生物と同じ意味での睡眠は必要ない。むしろ、この状況は反撃するチャンスでさえあった。ユーベルコードを放った直後の敵が意識的に無防備になる瞬間、彼女は人形に命じる。
(飛威、この状況ですから回りくどい仕掛けは必要ありません。認識外からの攻撃は効果的になりますから)
糸を通じて伝えられた指令のままに、近接戦闘用戦術器「飛威」がナイフを持って斬りかかる。ミラージュの群れの隙間を縫って、レムの元に一目散に――なぜ、敵は彼女を止められないのか。それは張り巡らされた思念の糸が、連中から認識力を奪い去っていたから。
「底まで落ちたらあがるだけ。底があるなら」
「きゃぁっ!!?」
リゼッタと交信を行ったのは応用編。【事象を歪めるもの】本来の効果が、レムに人形という不幸を届ける。
"飛来する威力"を意味する認識外の斬撃を夢姫は躱すことができず、胸元をざっくりと切り裂かれてたたらを踏む。主君負傷による動揺は配下にも広がっていき、幻想獣の軍団が烏合の衆と化した時――。
「お前の夢など何度でも終わらせてみせる。ここで消えろ」
フォースの力を深紅の閃光に、燃え滾る闘志を紅蓮の炎に変えて、シン渾身のニ刀斬撃波が戦場をなぎ払う。
嵐の如き波動は戦場にいる全ての敵を切り裂き、焼き焦がし、配下のミラージュもろともレムを焼き斬った。
「っ、きゃぁぁぁぁっ!!!!?」
骨の髄まで焦がされる痛みに、レムはたまらず悲鳴を上げ、ミラージュ達も絶叫を遺して悪夢に還っていく。
もちろん、リゼッタのほうには火の粉ひとつ飛ばしてはいない。救うべき者を救い、倒すべき者を倒す、両方こなしてこその完璧な"幕引き"だ。
「任務が終わったら眞白さんとこの街を観光してみたいものだ」
「はい。楽しみです」
戦いが佳境へと差し掛かっているのを感じて、シンは剣を握ったまま「水瓶」を見上げる。本来の姿を取り戻したアクエリオには、観光名所もたくさんある。今度はゴンドラに乗って運河の旅など、いかにも楽しそうだ。
その提案には眞白も嬉しそうにこくりと頷き、思念の糸をきゅっと手繰る。悪しき終焉を打ち砕いた先にある未来――夜明けの青空はきっと、もう遠くない所まで来ていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
マウザー・ハイネン
…イマージュ創りに他人の夢を利用したり、得意分野なのでしょう。
ですがアクエリオを守る為、それは阻止させて頂きます。
UC発動、吹雪でイマージュと夢姫の動きを縛りましょう。
リゼッタ様への呼びかけも妨害してくるでしょうし。
その間にリゼッタ様に近づき呼びかけます。
夢を目指す中、不安に駆られる事はあるでしょう。
叶わないという絶望…ですが、それで他人に願いを叶えてもらうのはおかしくないです?
自分でどうにもできなかった、という後悔を抱いてそれを晴らすこともできないのはなかなか辛いものです。
…赤き誘惑を跳ね除けて、自力で夢を掴みましょう?
彼女が正気に戻ったら護衛しつつ夢姫に吹雪の追撃を。
※アドリブ絡み等お任せ
「……イマージュ創りに他人の夢を利用したり、得意分野なのでしょう」
夢姫レムが過去にどうやって勢力を拡大してきたか、その過程で起こされた事件を、マウザーは知っていた。
エリクシルの力で蘇った今も、彼女は誰かの「|夢《ねがい》」を利用して力を高めている。それも単独で都市国家を崩壊させるほどの絶大な力を。
「ですがアクエリオを守る為、それは阻止させて頂きます」
「いや、いや、いや! 止まらないわ! わたしたちのカーニバルは、もう二度と!」
毅然とした態度で氷細剣「ジュデッカ」を突きつければ、レムは癇癪を起こした子供のように喚き散らす。
猟兵と終焉を破壊する者達の攻勢は、徐々に彼女を追い詰めつつある。本人もそれが分かっているからこそ焦るのだろう、新たな【レムのおともだち】を次々に呼び出して態勢を整えようとしていた。
(まずは吹雪でイマージュと夢姫の動きを縛りましょう)
マウザーは「ジュデッカ」を媒介として【氷獄の吹雪と共に希望は来たれり】を発動し、戦場全体に魔の吹雪を発生させる。身を切るような冷たさと共に吹き荒れる雪が、レムと「おともだち」の視界を真っ白に染めた。
「きゃっ!? ど、どこに行ったの?」
標的を見失ったレム達は吹雪の中を右往左往。あまりに寒すぎてミラージュ達の四肢は凍りついてしまった。
この間にマウザーはリゼッタの元に近付いていく。まず最初に目眩ましと行動阻害を仕掛けたのは、彼女への呼びかけを妨害されないためでもあったのだ。
「夢を目指す中、不安に駆られる事はあるでしょう。叶わないという絶望……ですが、それで他人に願いを叶えてもらうのはおかしくないです?」
邪魔される事なくリゼッタとの接触を果たしたマウザーは、その耳元で静かに語りかける。どんな願いも叶えてくれる万能の存在が現れれば、縋ってしまいたくなる気持ちは分かる。しかし、その結果として得られたものには必ず"虚しさ"があるはずだ。
「自分でどうにもできなかった、という後悔を抱いてそれを晴らすこともできないのはなかなか辛いものです」
たとえ一時の満足を得られたとしても、その後の一生に後悔がつきまとう人生。それは余りにも重い代償だ。
目先の苦しさから逃れるための逃げ道は、もっと絶望的な結末に通じている。それも本人だけではなく周りの者まで不幸にする、エリクシルという邪悪に歪められた最悪の未来が。
「……赤き誘惑を跳ね除けて、自力で夢を掴みましょう?」
夢までの道程がどんなに苦しくても、遠くても、全ての苦しみを自分のものにできるからこそ人は成長する。
諦めなければ必ず叶う、などと言えるほど世界は優しくはないが。それでも本当の意味で「夢を叶える」ためには、自分で努力するしかないのだ。
「……うん。私、間違ってた。絶対に叶えたい夢だから、自分の力で叶えなきゃ……!」
マウザーの説得を受けて、リゼッタの瞳に光が戻る。最初に見た時の操り人形のような印象は薄れ、ひとりの人間としての意思が感じられる。心の奥に封じ込められていた願いが、夢姫の呪縛から介抱されつつあるのだ。
「リゼッタ!? あなた、何をしているの!」
「ようやく来ましたか。ですがもう遅いです」
吹雪をかき分けてレムとミラージュ達がやって来ると、マウザーはリゼッタの前に立って護衛態勢を取る。
彼女が正気を取り戻し「願いの力」が失われれば後はこちらのもの。氷細剣を片手にもう一度ユーベルコードを発動し、吹雪の追撃を夢姫に浴びせる。
「きゃぁぁぁぁーーーっ!!?」
弱体化したレムにこれを耐えきる術はなく、魔王の部位化した半身がみるみるうちに蒼氷に覆われていく。
配下のミラージュ軍団に至っては、完全に物言わぬ氷像と化し。吹きすさぶ雪の帳は悪しき者達を少女の元に決して寄せ付けはしなかった――。
大成功
🔵🔵🔵
マシロ・コールドウェル
アクエリオの星、ねぇ。
人事を尽くしてなお届かない、遠い星。
どんだけの数のゴンドラ乗りが夢破れたことやら。
で?リゼッタ。あなたの夢は、自分で名乗ってなるモンじゃあないって事、ちゃんとわかってるでしょ?
愛され、縁を結び、選ばれてこそのアクエリオの星。
その貴女の夢を、本当に邪魔してるのは誰かってェ事さッ!!
今、先輩がその憑き物を落としたげるッ!!
対龍捕獲糸を発動ッ!
動きを止めて…その効果でDブラスト・レクイエムを併用するよッ!
紫冥の光芒に、夢を歪めて嘲笑う邪悪よッ、虚無と消えよッ!!
にひひ、御同業とか、ライバルは多いけどねぇ?私もなった事ないし!
是非、いいライバルに育って欲しいな!ね、リゼッタ?
「アクエリオの星、ねぇ」
それは、この都市で毎年開かれる水神祭にて選ばれる、最高のゴンドラ乗りに与えられる称号。アクエリオの歴史に名を刻む栄光の綺羅星。ゴンドラ乗りの1人として、マシロもその称号には多少なりと思う所はあった。
「人事を尽くしてなお届かない、遠い星。どんだけの数のゴンドラ乗りが夢破れたことやら」
かつてはその称号に執着するあまり、マスカレイドと化したゴンドラ乗りまで居た。栄光の陰で夢破れた者達の悲しみ、絶望、未練――それらは時に悲劇を生む。想いが強ければ強いほど、憧れが遠ければ遠いほど、道を踏み外した時の反動も大きい。
「で? リゼッタ。あなたの夢は、自分で名乗ってなるモンじゃあないって事、ちゃんとわかってるでしょ?」
今またそうしたゴンドラ乗りの悲劇を起こさせないために、マシロはリゼッタに呼びかける。競合する相手をエリクシルの力で皆殺しにして、異を唱える者が消え去っても、そんな方法で手に入れた「アクエリオの星」はただの虚名に過ぎない。
「愛され、縁を結び、選ばれてこそのアクエリオの星。その貴女の夢を、本当に邪魔してるのは誰かってェ事さッ!!」
「………!」
正しい意味での1番のゴンドラ乗りを目指すなら、アクエリオを滅ぼすなど論外。甘言を弄して夢を叶えてやるなどと嘯く「夢姫レム」こそが真の敵だと、マシロは居丈高に吼える。その剣幕はリゼッタの心を激しく揺さぶり、上級マスカレイドであるレムでさえ「っ?!」と思わずたじろぐ程であった。
「今、先輩がその憑き物を落としたげるッ!!」
「だ、だめよ。この子はもう、わたしのおともだち……っ?!」
肩を怒らせてつかつかと近付いてくるマシロを止めようと、レムは【夢奪い】の呪詛を放つ――が、その寸前でピタリと動きが止まった。よく目を凝らして見れば、細い糸が何本も彼女の手足や胴体に絡みついている。
「隠してた手札、ここで役に立ちそうだッ! つーかまーえたッ!!」
マシロが放ったのは不可視かつ強靭な【対龍捕獲糸】。一度絡まれば容赦のない締め付けで身動きを封じる、捕縛用のユーベルコードだ。これ自体は一時的に敵を行動不能にするだけの技だが、他の攻撃用ユーベルコードと組み合わせる事で真価を発揮する。
「なんなの、この糸……はなしてっ……!」
蜘蛛の巣に引っかかった蝶のようにもがくレム。「願いの力」が万全であれば幾らでも対処のしようはあっただろうが、リゼッタの洗脳が解け始めている今、彼女の力は大幅に弱体化している――マシロはこの機を逃さず「overload:Exusiai」を抜き、【Dブラスト・レクイエム】の発射体勢に入った。
「紫冥の光芒に、夢を歪めて嘲笑う邪悪よッ、虚無と消えよッ!!」
「――……!!!」
勇猛なる宣告と共にトリガーを引けば、黒鋼の紫煙銃より放たれる「根源の力」。創世の輝きを伴った魔力の奔流が、無防備に捕縛された夢姫を撃ち抜く。その圧力に少女の矮躯は耐えきれず、声にならぬ悲鳴を上げて、壁際まで叩きつけられる事となった。
「にひひ、御同業とか、ライバルは多いけどねぇ? 私もなった事ないし!」
壁にめりこんだままぐったりと動かないレムから、目を丸くしているリゼッタに視線を移し。くるくるとガンプレイで紫煙銃をホルスターに収めると、マシロは笑顔でそう言った。アクエリオの星を目指すゴンドラ乗りは、アクエリオ中にごまんといる。彼女らはみな互いに競い合い、切磋琢磨して夢への道程を歩んでいく。
「是非、いいライバルに育って欲しいな! ね、リゼッタ?」
「……はいっ。ありがとう、ございますっ」
こくりと笑顔で頷いたリゼッタの瞳には、己の努力で夢を叶えんとする者の、意思の輝きが戻りつつあった。
かわいい後輩にしてライバルが、この事件さえも糧にして成長してくれる事を期待しつつ。敵の指先がぴくりと動いたのを見て、マシロは再び気を引き締める――。
大成功
🔵🔵🔵
キャスパー・クロス
せっ、説得かぁ!ううーーん!
一番のゴンドラ乗りに…か。私はそんな“一番”を目指すような高い志を抱いたことは無…
…うぅん、いっこだけあった
「リゼッタさん!!」
風のオーラによる【空中浮遊】からの【推力移動】でレムの幻想獣を【見切り】【受け流し】て避けつつ、大声で呼び掛けるよ
「一番のゴンドラ乗りになりたかったのは、どうして!?ゴンドラが、ゴンドラ乗りという仕事が!ゴンドラ乗りの皆が!大好きだったからでしょう!」
先輩への憧れがあったはず、お客様との憩いがあったはず、夢見た自分の姿があったはず
それら全てが大好きだったはず!
誰か、或いは何かのことを“いちばん”好き!と思う心は、大きな力になるってこと
それだけは私にもわかるから、その想いを言葉に乗せる
「夢ってのは、大好きなものを守るためにあるんだろ!!」
リゼッタさんが反応してくれたら、笑みを浮かべて
「萌黄色──」
ユーベルコードを発動
【斬撃波】の【範囲攻撃】で纏めて幻想獣を【なぎ払い】
「聞こえたかレム。今から、お前の|悪夢《エンディング》を破壊する!」
「せっ、説得かぁ! ううーーん!」
エリクシルの力を弱めるために、惑わされた少女の目を覚まさせる。理屈は分かるものの、キャスパーの口からはそのための言葉がすぐには出てこなかった。どれだけ努力しても届かないかもしれない、高くて困難な夢。それでも諦めない一途で純粋な想いを、軽々しく「気持ちは分かる」とは言えなかったから。
「一番のゴンドラ乗りに……か。私はそんな"一番"を目指すような高い志を抱いたことは無……うぅん、いっこだけあった」
あの子の心に寄り添える言葉を。共感できる気持ちを、自分の中から見つけ出してから、彼女はぐっと両手を握りしめる。そして風のオーラを足底から発して宙に浮かび上がると、運河の上を滑るように翔けていった。
「リゼッタさん!!」
「……あなた、は?」
キャスパーの呼びかけに少女が反応する。こちらの声は届いているようだ。だがそれ以上近付こうとすれば、【レムのおともだち】の妨害を受ける。リゼッタを猟兵の手に渡さないために、そして自分自身を守るために、夢姫レムが召喚したイマージュマスカレイドの軍団だ。
「もう、この子に余計なことを吹き込まないで! この子はわたしのおともだちなんだから!」
大事な"もの"を取られそうになって癇癪を起こす子供のように。夢姫の妄想から生まれたイマージュは悪夢の如き姿となって牙を剥く。これまでの激戦で相当に消耗しているはずだが、かつての「部位所有者」のひとり、魔王ゼルデギロスの器としての実力は健在であった。
(こんな所で立ち止まっていられない!)
キャスパーは風のオーラを推力に変えて、空中を跳ねるように飛び回ってイマージュの攻撃を避ける。爪と牙の合間をすり抜けるように、向けられた悪意を受け流し――そして獣達の咆哮にも濁流の音にも負けないよう、さらに声を張り上げて叫んだ。
「一番のゴンドラ乗りになりたかったのは、どうして!? ゴンドラが、ゴンドラ乗りという仕事が! ゴンドラ乗りの皆が! 大好きだったからでしょう!」
遥かな目標を一途に追い続けられる理由なんて、彼女にはそれ以上のものが思いつかなかった。どんなに辛い時でもそこに「好き」という気持ちがあれば、不思議と力が湧いてくる。幼い頃から抱き続けた夢なら、なおさら「好き」も強かったはずだ。
「先輩への憧れがあったはず、お客様との憩いがあったはず、夢見た自分の姿があったはず。それら全てが大好きだったはず!」
誰か、或いは何かのことを"いちばん"好き! と思う心は、大きな力になるということ。それだけは自分にも分かるから、キャスパーはその想いを言葉に乗せる。悪夢に囚われた少女の心に、想いが響くことを祈って。
「だまりなさい! だまって!」
なんとか説得を止めさせようと、レムのイマージュの攻撃が激しくなる。しかし彼女は止まらない、彼女の"自由"は奪えない。誰かの夢を歪めて叶え、好きなものを壊させようとする、そんな奴なんかに負けるものか――あの子だって、きっと。
「夢ってのは、大好きなものを守るためにあるんだろ!!」
胸の奥からありったけの想いを込めて吐き出した、キャスパーの叫びは――少女の心に、しっかりと届いた。
ぱちり、とまぶたを瞬かせたリゼッタの瞳に、光が戻っていく。その眼差しははっきりと焦点があっていて。
「……そうだ。私はゴンドラとアクエリオの皆が大好きだから……皆を笑顔にできる、そんなアクエリオの星になりたかったんだ」
夢の原点を今一度思い出したことで、少女は夢姫の悪夢から目を覚ました。同時に、戦場にいたミラージュの背中から翼が消え、動きが鈍くなる。レムが焦った様子で「リゼッタ?!」と叫ぶが、一度手元から離れた願いの力は、もう二度と戻ってくることは無かった。
「萌黄色──」
リゼッタが反応してくれたのを見ると、キャスパーは笑みを浮かべてユーベルコードを発動。風を纏った足刀を勢いよく蹴り上げて、大気の斬撃波を放つ。「スコルピウス」と名付けられたその術技は、弱体化したイマージュの群れを纏めてなぎ払い、バラバラに切り刻んだ。
「聞こえたかレム。今から、お前の|悪夢《エンディング》を破壊する!」
「くっ……!」
会心の表情を見せるキャスパーと、悔しげに奥歯を噛むレム。二人の表情の違いはそのまま余裕の差だった。
【萌黄色は強か】は、その心の優位を力に変えるユーベルコードだ。有象無象を蹴散らして見通しの良くなった空で、彼女は悪夢の元凶へと渾身のひと蹴りを繰り出した。
「アクエリオはやらせない。勝つのは私と、リゼッタさんだ!」
「っ……きゃぁぁぁぁっ!!!!?」
キャスパーが放った神速の足刀は猛る烈風の刃となり、レムの身体を真っ二つに分けるように切り裂いた。
少女と異形の境目から鮮血を吹き出し、悲鳴を上げる|仮面の魔物《マスカレイド》。その身に移植されたエリクシルの光は、今にも消えそうになっていた――。
大成功
🔵🔵🔵
ソラウ・エクステリア
運命の再開
ライズサン回想
俺達は目覚めたら知らない所に居た
クロノドラグマ星では無い場所で怖くてエミリアーノは泣いていた
俺は必死に宥めようとするが…オブリビオンが現れた
そしてオブリビオンの鋭い爪が俺達を引き裂こうとして…
「やはりオブリビオンハンターが一番儲かりますね、オベイ」
石の鳥が敵の眼を破壊し鍵形の黒剣で切り裂いてそう呟いた…
ライズサン!起きて!休憩は終わりだよ!
『悪い、懐かしい夢を見たんだ…じゃあ行くか』
ライズサンは呟きリゼッタの所へ行く
自己紹介する時に一瞬マーアリアさんはライズサンとエミリアーノを見て動揺していたが誰も気付かない
リゼッタさんに呼びかける
貴女の手には蛸が沢山ある
それは必死に努力していた証拠だよ!
君の願いはそんな奴に汚されていいわけないよ!
攻撃は結界術と念動力で防ぎ
攻撃は音響弾と電撃で攻撃
『届いて!お願い!』
エミリアーノは爆撃と呪殺弾で敵を攻撃する
『…』
ライズサンは何故か黙り込んでいるが
凍結攻撃と弾幕で海を凍らせながら
敵を攻撃する
フラーウムさんが変身した敵に吹き飛ばされた
フラーウム・ティラメイト
最後にリプレイ希望
運命の再開
マーアリアは凍結攻撃と矢弾の雨で攻撃
ソラウを庇う
両親を闇の一族に殺されて森で一人で彷徨っていた時に拾った「ケー」と喋り動く不思議な鳥形の石
一人になった私にとってはもしも自分が猟兵になった後の夢を語る家族として『オベイ』と名付けた
ここは?
「ケー」
オベイ、貴方は私が目覚めた後には動なくなった筈…
「フラーウム、私は君の夢が好きだった」
オベイ?
「敵を消滅させる事しか知らなかった私に色んな事を教えてくれた…だから私の力と命をあげよう。その代わり私に君の夢の続きを見せてくれ」
待っ…
グォォォォォ!
次元能力で瞬間移動し背後から敵の両腕を切断
因果断絶で敵の両腕は『最初から存在しない』に改変した
動揺する敵に
リゼッタさんの…この国の未来を奪うなら…排除します
敵は私の姿を見て恐怖していた(根源的な恐怖を与えた)
電撃を纏った鎖で攻撃
『フラーウム!止めだ!行くぞ!』
ライズサンは創世の光を纏った拳で攻撃する
私も拳で一緒に殴ります
空が…綺麗ですね
貴女はあんな者に頼らなくても夢は叶えられますよ
(ここは……どこだ?)
それは遠い昔の話。若き日の時空龍ライズサンは、目覚めると知らない所にいた。故郷であるクロノドラグマ星とは明らかに違う、暗い闇に閉ざされた世界――泣き声が聞こえてふと振り返ると、そこには恐怖で泣きじゃくるエミリアーノがいた。
「ひっく、ぐすっ……」
どうやら二人は別の世界に迷い込んでしまったらしい。何故そうなったのかも、元の世界に戻れるかも分からない焦燥感に襲われながら、ライズサンは「ああもう、泣くなよ」と必死にエミリアーノを宥めようとする。
だが、そんな余裕も無いくらい異変は立て続けに起こる。暗闇の中から不気味な唸り声を上げて、一匹の異形――オブリビオンが姿を現したのだ。
「グルルルルル……」
「ま、マズいっ」
せめてコイツだけはと、ライズサンは咄嗟にエミリアーノを庇うが――鋭い爪が二人を引き裂く前に、ヒュッと音を立てて何かがオブリビオンの眼に突き刺さった。「ギャァ!?」とのけ反る異形の悲鳴に重なって、若い女性の声が聞こえてくる。
「やはりオブリビオンハンターが一番儲かりますね、オベイ」
その直後、オブリビオンの巨体は鍵型の黒剣によって真っ二つに切り裂かれていた。短い金髪を夜風になびかせたその少女が、フラーウムという名だと知るのは後のこと。自分達を救ってくれた見知らぬ女戦士を、この時のライズサンはただ呆然と見つめる事しかできなかった。
「ライズサン! 起きて! 休憩は終わりだよ!」
『悪い、懐かしい夢を見たんだ……じゃあ行くか』
そして時は現代に戻り、ライズサンはソラウの呼びかけで目を覚ます。ここはあの夜闇の世界ではなく、崩壊の危機迫る水神祭都アクエリオ。自分達は今、危機の元凶たるエリクシルとマスカレイド討伐に向かう最中だ。
「フラーウムさん達も、行けそう?」
「はい。問題ありません」
道中の疲労を抜くための小休止はもう十分だろう。遅くなって戦いに間に合わなくなっては元も子もない。
ソラウと時空龍、フラーウムと因果獣の一行はアクエリオの最上層、「水瓶」の見える戦場へと向かった。
「…………」
その中でただ1人、物憂げに沈黙を貫くのは因果獣皇マーアリア。
ライズサンとエミリアーノに出会った時、彼女は微かに動揺していたが、その事には誰も気付かなかった。
何か気になる事があったのかもしれないが――仮に気付かれても、それを問い詰める時間は無かっただろう。
「いた。リゼッタさんだ!」
一行が最上層にたどり着いた時、戦いは既に佳境を迎えていた。「水瓶」の麓に立つのは傷ついた半身異形のマスカレイド――夢姫レムと、ゴンドラ乗りのリゼッタ。アクエリオを包む災厄の、まさに中心に立つ娘達だ。
「ッ……こないで……こないでぇッ!!!」
このタイミングでの増援でいよいよ進退窮まったレムは、最後の悪足掻きとばかりに【魔王覚醒】を発動。
半身のみだった異形化が全身に広がり、身体自体のサイズも倍以上に膨れ上がる。これがかつて世界を滅亡のエンディングで支配したマスカレイドの王、ゼルデギロスの姿か。
「消えて、消えて、消えてぇッ!!」
癇癪を撒き散らしながら猟兵達に攻撃を仕掛けるレム。翼を羽ばたかせるだけで暴風が吹き荒れ、腕のひと振りで大地が砕ける。魔王の名に恥じない暴力から一同を守るように、ソラウが前に出て念動力の結界を張った。
「リゼッタさん、貴女の手には蛸が沢山ある。それは必死に努力していた証拠だよ!」
魔王の暴威をなんとか耐え凌ぎながら、リゼッタに向けて呼びかける。何千回、何万回とオールを漕ぐうちに出来たであろう、ゴンドラ乗りの勲章を彼女は見逃さなかった。まだ見習いの身でそれだけ蛸ができるほど練習するのは、並大抵の想いで出来ることではなかろう。
「君の願いはそんな奴に汚されていいわけないよ!」
本当の気持ちをどうか思い出してと、ソラウは懸命に呼びかけながら「時空騎士銃槍」を構える。その穂先から放たれた音響弾と電撃が、魔王レムの巨体に突き刺さった。それを皮切りに他の時空龍達も反撃へと転じる。
『届いて! お願い!』
『……』
エミリアーノは必死の表情で爆撃と呪殺弾を、ライズサンは何故か黙り込みつつも凍結弾の弾幕で運河を凍らせながら敵を攻める。三者三様の総攻撃を受けた魔王はたたらを踏んで後退するが、その肉体はさらなる異形化と共にみるみるうちに修復されていく。
『なかなかやるようですね』
因果獣皇マーアリアも凍結の矢弾を雨のように降らせて攻撃するが、敵は何度も【魔王覚醒】を繰り返す事で再生し、さらに【レムのおともだち】を呼び出して応戦する。追い詰められた手負いの獣ほど危険なものはないと言うが、今の彼女はまさにそれだろう。
「この子の夢はわたしが叶えるの! この子はわたしのおともだちなんだから――!」
「ううん……違う。私はもう、あなたには願わない」
だが。暴れまわるレムの後ろで、リゼッタがぽつりと呟いた時、場の流れが変わった。猟兵達の説得によって正気を取り戻した彼女は、もはや夢姫の支配下にはない。甘言を弄して自分の願いを利用したマスカレイドに、きっぱりと拒絶の意思を伝える。
「アクエリオをこんな風にするなんて私は望まない。私の願いは、私自身の力で叶える!」
「ッ―――!!!」
レムが奪い取った「願いの力」は、その言葉で完全に失われた。肉体の変化が止まり、召喚したミラージュの軍団が消えていく。歪めた願いでアクエリオを滅ぼす事がエリクシルの目的であれば、その計画はここで完全に潰えたのだ。
「よくも……よくも、よくもッ!!」
敗北が確定的となったレムは、八つ当たりじみた攻撃を猟兵達に叩きつける。驚愕、怒り、絶望、様々な感情を乗せた渾身の一撃は、防御結界をもってしても防ぎきれない――まずい、とソラウが額に汗をにじませたその時、ひとりの少女が前に飛び出してきた。
「フラーウムさん?!」
「うっ……」
敵の攻撃からソラウをかばったフラーウムは、小さなうめき声を上げて吹き飛ばされる。願いの力は失われたとはいえ、魔王に限りなく近付いた上級マスカレイドの全力だ。運河の中に落ちた彼女は濁流に呑まれ、浮かび上がってこない。
『フラーウム?!』『ど、どうしよう』
「あははははは! やったわぁっ!」
にわかに焦りだすソラウ達とは対照的に、レムの勝ち誇った哄笑が響き渡る。救助に向かいたくともこの相手を前にして迂闊に背を向ける事はできない。無事でありますようにと祈りながら戦いに専念するほか無かった。
「ケー」
終局に向けて戦いが激しさを増す一方、運河に落ちたフラーウムは薄れゆく意識の中で鳥の鳴き声を聞いた。
うっすらと目を開くと、そこは水の中ではなく光に包まれた真っ白な空間。目の前には彼女がいつも身に付けていた鳥型の石、「ディストーション・オベイ」が浮かんでいた。
「ここは? それにオベイ、貴方は私が目覚めた後には動なくなった筈……」
この石は遠い昔、フラーウムが両親を闇の一族に殺され、孤独に森を彷徨っていた頃に拾ったもの。「ケー」と喋って動く不思議なそれに彼女は「オベイ」と名付け、もしも自分が猟兵になれた時の夢を語り掛けるなど、新しい家族として扱った。長い休眠から目を覚ましてからは、ただの石ころになっていたはずだが――。
「フラーウム、私は君の夢が好きだった」
「オベイ?」
石の鳥から紡がれたのは、流暢で理知的な人の言葉。自分がオベイと名付けたこの石に、実は封じ込められた魂があったことをフラーウムは知らなかった。封印の内側でその魂はずっと彼女の夢を聞き続けていた。無力な少女がいつか運命に立ち向かう力を手に入れた時、なにを叶えようかと楽しげに語ったことを。
「敵を消滅させる事しか知らなかった私に色んな事を教えてくれた……だから私の力と命をあげよう。その代わり私に君の夢の続きを見せてくれ」
「待っ……」
封印石から光が溢れる。目を開けていられずに思わず瞼を閉じながら、フラーウムはその光に手を伸ばした。
その瞬間、身体に漲るのはこれまでに感じた事もないような力。猟兵に覚醒した時にも勝るほどのパワーが、体の中で|超克《オーバーロード》の時を告げている。
「グォォォォォ!」
「なっ?!」
「なに!?」
水飛沫と共に轟く獣の咆哮に、敵も味方も誰もが驚く。その直後、フラーウムはレムの背後に立っていた。
【因果獣神皇・ディストーション・オベイ】。その力を手に入れた彼女は両腕から牙のような剣を生やし、背中には翼のチェーンソーを広げ、首には死霊のマフラーをなびかせて、渦眼で敵を睨み付けていた。
「な、なによ、あなたは……ッ!!!?」
背後を取られたレムは咄嗟に腕を振り回すが――ごとんと音を立て、その腕が肩の付け根から地面に落ちる。
物理的に切断されたのではない。オベイが持つ因果断絶の力によって、彼女の両腕は『最初から存在しない』と改変されたのだ。動揺する夢姫に向かって、フラーウムは静かに、だが凄みのある声色で告げる。
「リゼッタさんの……この国の未来を奪うなら……排除します」
「ひっ……!」
異形と化した少女の姿に、レムは思わず息を呑んだ。上級マスカレイドさえも怯えさせるほどの根源的な恐怖が魂を揺さぶったのだ。この隙にフラーウムは電撃を纏った鎖を振るい、敵を打ち据えると同時に縛り上げる。
『フラーウム! 止めだ! 行くぞ!』
これをチャンスだと飛び出してきたのはライズサン。フラーウムの突然の覚醒と変身にも驚かなかった彼は、【創世時空龍帝の本気】を発動し、創世の神光を拳に纏わせる。それを見たフラーウムも合わせるようにぎゅっと拳を握りしめた。
「終わりだ!」
「消えてください」
創世時空龍帝と因果獣神皇、万物を消し去り因果を打ち砕く超存在達の拳が|仮面の魔物《マスカレイド》に叩きつけられる。
ピシリ、と硝子がひび割れるような音を立てて、夢姫の肉体は崩壊していき――その頭部を覆っていた仮面が真っ二つに砕ける。
「わたしの夢が、終わる……いや……いや、いやぁぁぁぁぁ……!!!」
耳をつんざくような断末魔の悲鳴を上げて、『夢姫レム』はエリクシルと共にチリひとつ残さず消滅する。
それと同時に濁流と化していた運河の水は鎮まり、穏やかで美しい、本来のアクエリオの光景が戻ってくる。
都市国家崩壊の危機は去った。雨雲の隙間からのぞいた晴れ間を見上げて、フラーウムがぽつりと呟く。
「空が……綺麗ですね」
「はい。これが私の好きなアクエリオです」
すぐ近くにはライズサンや仲間達、そしてエリクシルの呪縛から解放されたリゼッタがいる。利用されて都市を滅ぼしかけた負い目はあるだろうが、彼女はきっとそれも乗り越えて、これからも夢を追い続けるのだろう。
「貴女はあんな者に頼らなくても夢は叶えられますよ」
「はいっ。みなさん、助けてくれて、本当にありがとうございましたっ!」
アクエリオを、自分の命を、そして夢を守ってくれた猟兵達に、リゼッタは感謝を込めて深々と頭を下げる。
悪しき終焉はここに打ち砕かれ、希望に満ちた新しい未来が生まれた。その先にある彼女のエンディングは、まだ誰も知らない。
――かくして水神祭都にまたたく凶星は落ち、猟兵達の活躍はアクエリオの新たなる伝説として語られる。
万能の魔神エリクシルと、仮面の魔物マスカレイドから、皆の希望と未来と夢を守り抜いた勇士達として。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵