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【SecretTale】purpose

#シークレット・テイル

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#シークレット・テイル


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●he has a purpose
「…………」

 ジャックは今、ある場所に潜伏している。
 ここで姿を表す訳にはいかないからと、ある者の手引を受けてエルグランデのある場所で隠れ続けている。

「……割に合わねぇ仕事だな、ホント」

 ため息をつこうとしたが、ぐっと堪えて辺りの様子を窺う。
 周囲にいるのは……セクレト機関の研究者達。どうやら現在ジャックはセクレト機関の施設内にいるようだが、その姿を確認することは出来ない。
 何らかの手法によって|介入《・・》されているようだ……。

「さてと……ベルトアの奴が言ってた物を探さねぇとなぁ……どこあるんだ、言ってた本……」

 姿を隠したままに、ジャックはセクレト機関の中を歩く。
 セクレト機関の誰もが彼の姿を見ること無く、ただ自分の日常を過ごすように平凡に過ごしていた。

●ジャックの目的
 一方で、猟兵達は燦斗の誘いでセクレト機関の1階にあるミーティングフロアに来ていた。
 権限を与えたのは良いのだが、上階で自由に動ける権限までは与えられていなかったため仕方なく燦斗が無理矢理スケジュールをねじ込んで、このミーティングフロアを空けたとのこと。

「すみません、本当なら私の執務室か司令官室までお呼びしたほうが良いのでしょうが、現在何処まで権限を付与するかの会議が行われていまして……今回限り、ということで」

 次の会議までには猟兵専用で部屋を用意するため、それまではこのミーティングフロアを集合場所に使って情報を集めて欲しいとのこと。
 今回、猟兵に集めて欲しい情報に関しては上位研究員であるフェルゼン・ガグ・ヴェレットから説明があるというので彼に説明をしてもらった。

「ジャック・アルファードは何かを探しているようでしてね。それがヤツに渡るとこの世界に危機が訪れる……そんな気がしてならないのです」
「ああ、もちろん情報は全て渡すように全研究員・調査人・戦闘員にお伝えしましょう。エルドレット司令官にも、皆様への権限をギリギリまで多く渡せるよう進言いたします」

 優しそうな笑みを浮かべたフェルゼンはすぐさま全エージェントに向けて指令を通達。猟兵達に余すこと無く、情報を与えるようにと伝令が降った。
 その後フェルゼンは研究の続きがあるからとミーティングフロアを出ていったが、彼は最後に『私にも聞きたいことがあるならいつでもどうぞ』と一言残した。

●エルドレットの事情
 フェルゼンがフロアを出ていってから数分後、燦斗がなにやら難しい表情を浮かべていた。
 ……というのも、今回の事件があまりにも不自然な点が多く気になる点があるからだという。

「私は父上……司令官エルドレットとジャックには何らかの事情があると見ています。でなければ、普段私とエーミールに押し付けてくる父上が猟兵の方々への橋渡しだけというのもおかしいんですよ」
「猟兵の皆さんの力を借りたい、というのは……私やエーミールでは解決出来ない事柄があるのかもしれない」

 セクレト機関は本来、外部からの協力者を募ることは殆ど無い。
 例外的にエルグランデの住民には発令を出して協力を得ることはあるが、外世界からの協力者と言うのは稀にしか無く、今回のエルドレットはまさにその稀な事態を引き起こしている。

 これには燦斗も『何かある』としか思いつかないのだが、何度エルドレットに話を聞いても『今はまだ話せない』としか彼には伝えないのだそうだ。

「そこで、可能であれば父の事情も探っていただけないでしょうか? もちろん、ジャックの目的の物品探しもなんですが……父の事情を知ってからでも、遅くないかなと思いまして」

 自分に言ってくれないのなら、猟兵達に調べてもらうまで。
 そう考えた燦斗はエルドレットのみならず、本来ならば一般調査人では会話も出来ない司令官補佐のヴォルフやエミーリア、最高研究者であるフェルゼンとの話を出来るようにセッティングするとのことだ。
 言ってくれれば場を整えるし、なんならこのミーティングフロアに引きずり出すとのこと。

「皆さんにしか、父の考えを引きずり出せる気がしませんので」

 そう言いながら笑う燦斗の表情には、少し寂しさが入り混じっていた。


御影イズミ
 閲覧ありがとうございます、御影イズミです。
 自作PBW「シークレット・テイル」のシナリオ、第二章。
 今回は敵か味方かわからない侵入者、ジャック・アルファードの探し物について調査します。

 シークレットテイルHP:https://www.secret-tale.com/

 クリア条件に関しては『ジャック・アルファードの探し物について調べる』『エルドレットの事情を知る』となりますが、気になることがあれば他にも調べることが可能です。
 最終的に探し物が何か、彼らの目的がなにかがわかればOK。
 場所はセクレト機関内。既に猟兵の皆さんには調査権限が与えられているため、様々な情報用コンピューターを操作することが出来ます。

 また今回、WIZでの調査を行う際は以下NPCとの会話が可能となっております。
 『エルドレット・アーベントロート』
 『ヴォルフ・エーリッヒ・シュトルツァー』
 『エミーリア・アーベントロート』
 『フェルゼン・ガグ・ヴェレット』

 その他NPC(NPC設定に記載されてるNPC)でも会話は可能ですので、お気軽にお声がけしてもらってOKです。
 なお、エーミール、メルヒオールと会話をすると……?

 皆様の素敵なプレイング、お待ち致しております。
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第1章 日常 『プレイング』

POW   :    肉体や気合で挑戦できる行動

SPD   :    速さや技量で挑戦できる行動

WIZ   :    魔力や賢さで挑戦できる行動

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●Mission-02
 シナリオのクリア条件
 『ジャック・アルファードの探しものについて調べる』あるいは『エルドレットの事情を知る』
 ※どちらかを探る、両方探る可能

 フラグメント内容
 POW:研究員や調査人たちに話を聞いてみる。
 SPD:機関内コンピューターを調査する。
 WIZ:司令官や補佐等、高位研究者に話を聞いてみる。
バルタン・ノーヴェ
POW アドリブ連携歓迎!

ふむふむ。リサーチミッションデスネ!
了解デース! お任せくだサイ、燦斗殿!
ワタシたちがしっかりと調査して参りマース!
カモン! バルタンズ!
「バルッ!」「バルルー!」

お駄賃を支払って132体のミニ・バルタンたちをセレクト機関内部に放流!
ジャック殿の探している物を調べてもらいマース!
研究員たちの会話や独白を天上裏から聞き取ったり、ジャック殿本人を探してみたり。
15cmサイズと小柄なので人間では入れない場所も安々と進めマース!
まさにシークレット・サービス!

バルタンズに諜報してもらっている間、ワタシはメルヒオール殿と談話してマショー!
お疲れ様デース! 事務仕事は順調デスカー?



●Case.1 探しもの

「ということで、よろしくお願いしますね」
「ふむふむ。リサーチミッションデスネ!」
 燦斗から仕事を請け負ったバルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は書類を目に通し、受け取ったセクレト機関のマップに指をなぞらせて何処を調べるかを確認していた。
 今回の仕事は『ジャック・アルファードの探しもの』について。だが彼が探している物についてはまだ情報が1つもなく、何処から調べたものかとなっていた。
「セクレト機関内部は広いですが、それぞれの棟を結ぶ道は短時間で通れますのでそちらをご利用ください」
「了解デース! お任せくだサイ、燦斗殿! ワタシたちがしっかりと調査して参りマース!」
 そういったバルタンはユーベルコード『|秘密のバルタンズ《シークレット・サービス》』を使い、132体のミニ・バルタンを呼び寄せる。彼女達には多量のお駄賃を支払って、燦斗から渡されたマップをミニ・バルタンたちにも見せて各自の定位置を指定する。
 また燦斗が言うには機材の貸出もあるため、小型集音マイクと小型カメラを持たせての情報収集が出来るとのこと。そのため全員……とまではいかないが、5人に1人の割合でミニ・バルタン達には指示用のトランシーバーと情報収集用機材が持たせられた。
「そうなるとマップ指示はここで出したほうが良いデショウ。ですがこの人数となるとー……」
「じゃあ私が少し連れていきましょう。道がわからないでしょうし、少しは道案内出来ると思うので」
「ではこちらの部隊をお願いしマス。あとはー……」
 燦斗に何人かのミニ・バルタンを引率してもらいつつ、情報収集を開始。機関内全てを探れば、きっと何かが見つかると信じて。


「バルル~♪」
「バルバル~」
 小さなミニ・バルタン達はセクレト機関の中を歩く。猟兵であるバルタンについては既に全研究員・調査人達に通達してあるのか、ミニ・バルタンについてもきちんと情報が通っている。
 そのため彼女達が廊下をてくてくと歩いていてもなんら問題はなく、むしろ研究や調査で疲れた者達に癒やしを与えていた。
「バル~」
「可愛いねえ。アメちゃんいる?」
「バルル~!」
 通りがかった研究員・調査人達にナデナデされたり、飴をもらったりしつつもミニ・バルタン達は調査のために練り歩く。
 ……そんな時、ヒソヒソと話をする研究員達を見つけたミニ・バルタン。見つからないように隠れつつも、彼等の話に小型集音マイクを向ける。


「ベルトア・ウル・アビスリンクの姿を見たって聞いたか?」
「ああ……箱庭研究で出来た世界の神になっちまった奴、だろ?」
「そうそう。でもエルグランデには帰ってこれないって話だぜ?」
「うわっ、まさか生霊……!? 勘弁してくれよ……」
「けど、見た奴が言うには部屋間違えたりしてたって言ってたからな……アレってなんだろうな?」
「さあ……。生霊が何探すっていうんだよ」
「ベルトアの研究書籍だろ。アレ、箱庭研究でかなり使われたって話だからな」
「あー、じゃあ研究書籍のある場所を探し回ってるってこと?」
「多分、そうなるな」


「――ふむ……」
 ミーティングフロアでその話を聞いていたバルタンはこの情報が得たいものだったかまでは分からないが、何故だか精神的な何かが『この情報は持つべきだ』と訴える。
 今自分が探しているのは、ジャック・アルファードが探しているもの。だが……生霊とまで言われている者が何かを探しているという点が、どうにも今のジャックと似通っているのもあって離してはならないという考えに至っていた。
「もう少し、調べてみる必要がありそうデスネ……」
 ミニ・バルタン達にもう少し調べるようにと指令を与えたバルタン。後でこの情報は誰かに渡し、確認してもらおうと残しておいた。

 そんな中、ミーティングフロアにやって来た男が1人。メルヒオール・ツァーベルだ。
 彼は眉根を寄せ、仕事辛いという表情のままに入ってきたのだがバルタンを見つけるとその表情を止めて普段どおりの表情に戻る。
「おん? バルタンやん。お疲れ」
「お疲れ様デース! 事務仕事と伺っておりましたが、順調デスカー?」
 既に燦斗からはメルヒオールが事務仕事をしていると言う話を聞いていたバルタン。お互い大変だね、と声をかけたのも束の間、メルヒオールは机に突っ伏して姉であるエミーリアの怖さを呟き続けていた。
「聞かんで……姉さんこわい……姉さん怖い……」
「あらら。エミーリア殿と何かありマシタ?」
「エミさんおるのに、俺ばっかに仕事回してくるねん! 嫌やもおぉーー!!」
「あらら」
 よしよしと慰めたのもつかの間、メルヒオールとバルタンの脳内に声がかかる。その声は以前聞こえてきた司令官エルドレットの声であり、メルヒオールだけにと思ったらバルタンにも声がかかってしまったようだ。
『ありゃ、ごめんね。猟兵さんにも声が届くようになっちゃったみたい』
「いえいえ、お構いなく。何かありマシタ?」
『ん、いやね。メルの所属している部隊のメンバー、全員帰還させることになったから伝えておくよ~って』
「おや、そうデシタカ。メルヒオール殿……」
 バルタンがちらりと横目でメルヒオールの顔を見たが、またしても彼は顔を伏せている。どうやら部隊のメンバーまで帰ってくることは想定外だったそうで、意気消沈している様子のメルヒオールがそこにはいた。
「……もぉ逃げれんってことやな……」
 しかし逃げることが出来ないとわかったのか、彼は顔を上げてバルタンの情報を持ってから部隊と合流すると決意。
 バルタンの情報――亡霊と噂されている男が研究書籍を探している、という情報をメルヒオールに話すと、メルヒオールは顔を蒼白にさせた。
 というのも、ベルトア・ウル・アビスリンクという男はジャック・アルファードに非常に顔がよく似ており、おそらくミニ・バルタンが話を聞いた研究員達はジャックをベルトアと間違えた可能性があるという。
「ということは……ジャックの目的は、研究書籍ってことデスネ!」
「そーなるなぁ。……けど、なんで今更あの研究書籍を……?」
「ふむ……その辺りは、もう少し探ってみるほうが良さそうデスネー……」

 バルタンは引き続き調査を続けるため、音声を拾う。
 すると、少しだけ。……少しだけ、ジャックの声を拾うことが出来ていた。


●Case.? お駄賃欲しい……
「……ここ、でもないか。一体何処にあるってんだよ……」

 頭をガリガリと掻く音。小さな舌打ち。
 イライラが募っている様子のジャックの声が、小さく聞こえる。

「ベルトアの奴、放るだけ放ってあとはエルドレットに任せるとか言いやがって……」
「エルドレットもエルドレットでマップは無理とか言ってんじゃねえぞ……」

 ぶつくさと、苛立ちの声が聞こえる。
 彼にはミニ・バルタンの姿を見つけられていないために、不満をたっぷりと漏らしていた。

「……はぁ……。塩豆大福食べたい……落ちてねぇかなぁ……」

 とぼとぼと歩くジャックに、てくてくとついていくミニ・バルタン。
 彼もきっと、お駄賃が欲しいんだろうなぁとミニ・バルタンは眼差しを向けていた……。



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 ジャックの探しものが『研究書籍』であることが判明しました。

 諜報部隊「オルドヌング」 メンバー帰還が確定しました。
 →公式サイトの別ページにて会話が繰り広げられます。

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大成功 🔵​🔵​🔵​

黒木・摩那
【WIZ】
情報によると、ジャックさんは研究書籍を探索中。
まずはもらった権限を活用して【情報収集】。
これを元に司令官のもとに臨みます。

司令官と面談できたら、ずばり今回だけ猟兵呼んだのなぜですか?と聞いてみます。
侵略者は実力的にはここの戦力だけでも対応できそうです。
そしてジャックさんも放置しているということは、放置しても害は無いと判断してるということ。

まだ猟兵が必要なほどの戦力差も緊急度も感がられないんですよね。
休暇で招待してくれたとも思えませんし。
大事な話は早めにしてくださいね。

ついでにエミーリアさんに。
弟さんがぼやいてましたよ。
あんまりいじめちゃダメですよ。



●Case.2 司令官の秘密

「ふむ、なるほど……」
 先立って駆けつけていた猟兵により、ジャックの探しているものが研究書籍だと判明。
 その情報だけではまだ突き詰めるには少し判断材料が少ないだろうと、黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)は考えた。
「となると……情報収集をしてから司令官に話してみるのが1番かな」
 研究書籍、だけでは内容が薄すぎる。司令官と会話をするのなら、せめてもう少し深入りした情報が欲しいと考えた摩那は貰っておいたマップを見て、情報資料室へと出向いた。

「おぉ……」
 立ち並ぶコンピューターは自由開放されているようで、まばらではあるが研究者や調査人達も使用している。ここでは貰った権限を使って使用……と言われているのだが、その権限を使用する手段を貰っていない。
 どうしたら良いのだろう、と辺りを見渡していると、誰もが何かを使用して権限を解除する様子はない。どうやらこのセクレト機関のコンピューター類は少し特殊なようで、使用するだけでどんな権限を持っているかを判断してもらえているようだ。
「凄いなぁ……」
 一体どういった技術が使用されているのだろうか。それを考えながら空いていたスペースに座ると、画面上にこう映し出された。


 ――確認者...Marianela Velet.
 ――権限チェック...special authority.

 ――ようこそ、猟兵。歓迎します。


 その表示の後、何を知りたいのかといった検索画面やセクレト機関の情報スペースなどの画面に移る。摩那が探しやすいようなUI表示となっており、少しでも情報を渡したいという機関側の意志が感じ取れた。
「……それなら、まずは……」
 ジャックが探す研究書籍について……と調べようとしたが、彼が探す研究書籍そのものの名前はわからない。そこで先立って集まっていた情報の中にあった男の名前――ベルトア・ウル・アビスリンクという名前の人物についてのデータを先に入手する。
 ベルトア・ウル・アビスリンクという人物は以前このセクレト機関にいたようで、その時の情報が残っている。記載されているデータでは30年ほど前に『箱庭研究』という研究での事故で姿をくらましてしまい、以後消息不明という情報が記載されている。
 ただ、彼はその箱庭研究の事故が起こる前に彼はある研究結果の論文を残し、書籍として保管していた。そのタイトルが……。
「……『ゲート構築と■■の関係性について』……あれ、この部分だけ読めない……」
 タイトル一部分だけが削り取られていたが、どうやらベルトアは|侵略者《インベーダー》が使用していた《ゲート》についての研究結果を発表していた様子。
 この研究結果の書籍以外、彼は他に書籍を作成した様子はない。そのため、ジャックが探している書籍はこの『ゲート構築と■■について』という書籍以外にあり得ないことになった。
「……この情報、司令官に聞いてみないと」
 情報をメモし終えた摩那はコンピューターに終了の意思を伝えると、そのまま離席。
 彼女が離れた数秒後、使っていたコンピューターは直ぐに電源が切れた。


 そうして、摩那は集めた資料を元に司令官エルドレット・アーベントロートへの面会を求める。
 現在エルドレットは司令官室での作業に勤しんでいたそうだが、まだ猟兵達の権限では司令官室には立ち入れないとのことなので、急遽借りているミーティングフロアまで来てもらった。
「や、ごめんね。もうちょっと権限を与えられたらよかったのだけど」
「いえ、構いません。……むしろ、来てくださるとは思わなくて」
「俺はフレンドリーに行きたいからね。で、話って何かな?」
 お気楽な口調で問いかけるエルドレットに対し、摩那は率直に問いかける。
 ――なぜ、猟兵達を呼んだのかと。
「…………」
「実力的にはここの戦力だけでも対応出来ると私は感じています。そしてジャックさんを放置しているということは、放置しても害はないと判断しているということでもあります」
「あー……うん、そうだね。ジャック君に関しては、俺が手出ししないようにと命令してるしね」
「ジャックさんの目的……それは、これですよね?」
 す、と摩那が差し出したのは先程手に入れた書籍のタイトルが書かれたメモ。それを目にしたときのエルドレットの目が一瞬だけ開かれたが、数秒で通常の表情に戻る。
 彼は何かを隠している。そう判断した摩那は、少々呆れたようなため息をついてエルドレットに言った。
「まだ、猟兵が必要なほどの緊急度も戦力差も感じられないんですよね。休暇で招待したとも思えませんし……話があるのなら、早めに話してくださいね?」
「……あー……予定よりだいぶ早いけど、いいか」
 ガリガリと頭を掻きむしったエルドレットは腹を括ったかのように息をつき、1度ミーティングルームが盗聴されていないかの確認を取る。
 これから話すことは、燦斗、エーミール、エミーリア、メルヒオールには内緒にしてくれ。そう伝えてから、彼は話し始めた。

 エルドレットの持つコントラ・ソール《|預言者《プロフェータ》》。それによって見えた未来によれば、セクレト機関内にいる裏切り者によって近い将来エルグランデの均衡が崩れる事件が発生するという。
「さっきの|侵略者《インベーダー》事件に関しても、ゲートに細工がされていると情報を受けてね。緊急措置としてジャック君を|借りて《・・・》書籍を探して貰っているわけ」
「でも、そう簡単に世界の均衡って崩れるものなんでしょうか? 見た感じ、世界は平和そうにみえますけど」
「そう見えるでしょ? でもね、あることをされると一瞬で崩されるのがこの世界なのさ」
「……それは?」
「――コントラ・ソールが使えなくなること」
 静かに言い放ったエルドレットの視線は、少し鋭い。人々のコントラ・ソールが使えなくなれば世界全体に混乱が招かれ、一瞬にして均衡が乱れるのは間違いないだろうとエルドレットは指摘する。
 当然、コントラ・ソールを使って様々な事件を解決してきたセクレト機関にとっては大打撃になる。しかし内部に裏切り者がいる以上、公にしての捜査を行うことは犯人に刺激を与えることに等しい。
 故に今回、猟兵との繋がりを持つ燦斗やエーミールを呼び戻し、コントラ・ソールを失っても戦える者達の協力を仰ぎたかったそうなのだ。
「なるほど。……そういうのは早めに話しましょうね?」
「ごもっともです」
 鋭い摩那のツッコミに対し何も言えなくなったエルドレット。
 この話だけは燦斗達には本当に内緒にしてくれと懇願したまま、彼は摩那や猟兵達に色々と手続きしやすいように追加の権限を与えてくれたのだった。


●Case.? 天然の姉

「あ、エミーリアさん」
「わ、摩那さん。奇遇ですの~」
 ミーティングフロアを出た摩那は少しばかり内部を歩いて地形の把握をしていたのだが、ばったりとエミーリアに遭遇。彼女の方は別の研究フロアからの荷物の運び出しがあったようで、少し手荷物を抱えていた。

 既に摩那のやることは終わっているため、エミーリアのお手伝いとして荷物を少しばかり抱えて持っていく。他愛のない話に花を咲かせていたのだが、メルヒオールの話が出たときにすかさず摩那はツッコミを入れた。
「そういえば弟さん、ぼやいてましたよ。姉さんが怖いって」
「あら~、リアはめるめるを怖がらせたことはないですの~」
「……あんまりいじめちゃだめですよ?」
「めるめる|は《・》いじめてないですけど、気をつけるですの~」
(……メルヒオールさん『は』かぁ……)
 少しばかり遠い目をしながらも、エミーリアについていく摩那。
 言い方からして、エミーリアはエーミールや燦斗に対しては今の姿勢を貫くつもりのようだ……。


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 研究書籍の名前が判明しました。
 ジャックは『ゲート構築と■■の関係性について』を探しているようです。

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大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーノ・フォンベルジュ
🔷アドリブ歓迎します!
🔷NPCさんとの対話歓迎!

セクレト機関…
最新の設備と人材…
実際に目にすると凄かったです。
田舎から来た僕には憧れの場所です
さて… 探しものですね
正直なところ、エルドレット様とジャックさんを疑ってないんですよね僕

ですが…
「コントラ・ソールを失う」
気になるキーワードが出てきましたね
僕の扱う《生活魔法》は、風の魔法で軽くして物を運んだり
農産物や動物の皮、木材を一人で運べたりするんですよ
あと、脚立なしで電球が交換できたり
地味だけど生活には必要なんですね。
だから……
世界からコントラ・ソールが失われたら困っちゃいます
なんとかしないと…

まず書籍で過去の歴史とかも調べちゃいましょうか。



●Case.3 過去を探る

「す……っごいなぁ……」
 農村であるファムの村からやってきたユーノ・フォンベルジュ(《黒魔》エルグランデの魔剣士・f38624)にとって、セクレト機関はまさに未知の世界。最新鋭の設備と人材による高度な技術は農村で話を聞くことはあっても、実際に触れる機会は少ない。
 憧れだった場所に足を踏み入れるという幸福感をじっくりと噛み締めながら、ユーノは機関の内部をゆっくりと歩く。
「でも……コントラ・ソールが失われる、か……。それだけは、絶対になんとかしないと……」
 既に先に得ていた情報――エルドレットが話していた、いずれ訪れる未来の話にユーノは胸を締め付けられる想いが広がった。
 コントラ・ソールはエルグランデに住む者たち生活の基盤でもあり、ユーノも例外ではない。彼の持つコントラ・ソール《生活魔法》は日常の生活を便利にしたいと生まれたものであり、機械類を扱えない農村では必須レベルの力だ。
 重たい荷物を運ぶための風、自分より高い場所へ手を届かせる浮力、その他必要なときに農作物に水を与える力などなど、地味だけれど農村には必要不可欠な力である。失われれば農村にとって、否、世界中で大打撃となるだろう。
「となると、まずは過去に同じ例があったか調べてみたほうが……あ、すみません」
 近くを通りかかった研究員に声をかけ、ユーノは調べ物が出来る場所を教えてもらった。

「ええと、ここが現在地で……」
 現在、ユーノが探しているのは書庫。
 一応過去の研究などをデータベースで探ってみたのだが、欲しい情報が無かったため急遽過去の事件を保管している第二研究棟の書庫への立ち入り許可を貰った……のは良いのだが、何しろセクレト機関本部は縦にも横にもデカく、表記類も不親切な部分が多い。
「……もしかして、僕……」
 ――迷った?
 その言葉が頭に浮かんだ瞬間、身体が一気に冷えて血の気が引いた気がした。初めて来た場所で道に迷うとよくある現象である。
 しかし現在、ユーノの周囲には誰もいない。近くには連絡端末もなく、どうしよう、と少し不安になり始めたところで……足音が近づいてきた。
「おや、どうしたのかな?」
「あ、貴方は……ええと、フェルゼン様」
 ユーノの近くを通りがかったのは上位研究員のフェルゼン・ガグ・ヴェレット。彼はいくつかの書類を纏めたファイルを片手に持っており、近くの書庫に用があって通りがかったようだ。
 フェルゼン様、と呼ばれて少々小っ恥ずかしくなったようで、もう少し普通で構わない、と彼は少し笑っていた。
「何処かへ向かわれるのかな? 私で良ければ、案内するが」
「あ、助かります。ええと、第二書庫へ向かいたいのですが」
「第二書庫か。丁度いい、私もそちらへ向かう予定だから、連れて行こう」
 そういうとフェルゼンはついておいで、とゆっくり歩き始めた。片手に持っているファイルが落ちないようにだけ注意をしつつ、他愛のない話に花を咲かせる。
 彼が持っている書類は過去に取り扱った研究の書類や書庫へと移される過去の事件や事故のファイル。セクレト機関ではデータベースだけでは隠されてしまうような事例を全てファイリングして書庫に保管しており、一定期間保管されるのだそうだ。
「キミが調べたいのはどのような事例かな?」
「あ、ええと……そうですね、ちょっと言えないのですが過去の事件が関わっているのかな、と思いまして」
「……なるほど、箝口令が敷かれているか。ならばただの研究員である私は口出ししないほうが良さそうだな」
「すみません」
「何、気にする必要はないよ。……ああ、ここだ」
 フェルゼンの足が止まると、同じようにユーノの足が止まる。第二書庫と書かれた部屋は厳重にロックがかけられており、フェルゼンは研究員証をかざしてそのロックを外す。

 中に入れば、いくつもの書籍がずらりと並んでいる。過去の捜査資料だけではなく、異世界から持ち込まれた書籍などもこの部屋には少しだけあるそうだ。
「部屋を出ると自動でロックがかかる。帰り際、忘れ物がないように」
「はい、ご忠告ありがとうございます」
 ユーノに注意事項を告げたフェルゼンは持っていたファイルの中身に適切な処理を施し、本棚へと移す。その間はユーノに見向きすることもなく、真剣なものだった。
 対するユーノはキョロキョロと辺りを見渡して、コントラ・ソールの研究事例についてを探す。失われるには何かしらの条件があるはずだからと、重点的に研究事例の中身を調べていった。
「……あれ?」
 ぱらぱらとファイリングされた書類を眺めているのだが、ふと、文章の繋がりが不自然になっていることから一部抜けている書類があることに気づく。
 コントラ・ソールは過去にも世界から失われた事例があったそうだ。しかしその事例について読み進めるうちに、いくつかの書類が抜けた状態でファイリングされている。
 これはエルドレットが言っていた『裏切り者』による妨害なのだろう。抜けた事例を調べることは裏切り者判明にも繋がる……そんな気がしてならない。
「……これは、僕達猟兵とエルドレット様だけの秘密にしなくては……」
 小さく呟いて、今回の状態をフェルゼンに見えないようにメモ。後日、エルドレットにその情報を渡すことにした。

「あとは……ん、コントラ・ソールの過去名称?」
 ふと、気になった書類が目についたユーノ。今現在、コントラ・ソールと呼ばれている力には別の名称があったと書類には記されている。
 その名は『呪術』。人らしからぬ力を使うことから呪われた術だとも呼ばれていたそうだが、初代のセクレト機関研究員達の研究の末に力は呪われたものではなく『|契約呪文《コントラ・ソール》』と呼ばれるようになったそうだ。
「……契約って呼ばれるのも、なんだか不思議だけど……呪術、か……」
 呪術と呼ばれた過去は拭い去れないとわかっていても、やっぱり心が痛むユーノ。
 もしかしたらこの情報も後に何か役に立つかもしれない。そう考えて、メモを取り続けた。



●Case.? 一方その頃

「フェ~ル~ゼ~ン~さ~ん~??」
 書庫の担当職員がフェルゼンに向けてキレ散らかしている。
 というのも、届けてもらった書類の中にちょっとした改竄の跡が残されていたそうだ。
「いや、ははは。すまない、先日エーリッヒ殿に書き直したいと言われて……」
「いくら司令官の息子さんだからってダメですよ! 過去をそのままに残しておけっていうのは、彼の父エルドレット司令官の指示でしょう!?」
「いや、本当に。ははは」
「笑うなこの若作り50代! 次やったらヴォルフさんに言いつけてやりますからね!?」
「うわ、アイツだけは勘弁して。クソねちっこいから」
「どっちもどっちだよ!! ねちっこいおっさん組!!」
 ぎゃいぎゃいと怒りながらも、ファイルの中身を丁寧に入れ替えていく職員。その手さばきは慣れたもので、数秒で1冊分のファイルが出来上がる。
 そんな中でフェルゼンはちらりとユーノに視線を送り、彼が大丈夫かどうかを見守り続けていた。



***************************************

 コントラ・ソールに関する過去の情報が一部、何者かによって抜き取られているようです。

***************************************

大成功 🔵​🔵​🔵​

河原崎・修羅雪姫
【WIZ】
「色々考えたのだけど、今のセクレト機関に必要なのは、お互いに対する信頼感の醸成なんじゃないかなって?」

司令官は裏切り者の心配をしているようだけど。行き過ぎた秘密主義は組織の硬直化とモラルの低下をもたらすと、河原崎家の帝王学で学んだ。

ではどうするか?
「宴会だ!」
お酒を飲めないメンツもいるだろうからティーパーティー。

迷子放送で「エルドレットさん・ヴォルフさん、エミーリアさん、フェルゼンさん・エーミールさん・メルヒオールさん。御用とお急ぎでない方は1階のミーティングフロアに集合!」と呼びだす。

まずはお互いの抱いている感情を話し、『肉を切らせて骨を断つ」精神で友好度を高めよう。……だめ? 



●Case.4 肉を切らせてなんとやら

「う~~ん…………」
 ミーティングフロアの一角で、様々な情報を手に入れて思い悩む河原崎・修羅雪姫(プリンセス・スノーブラッド・f00298)。その様子に司令官エルドレット・アーベントロートがひょっこりと顔を覗きに来たのだが、それでも修羅雪姫の表情は変わらず。
「どしたん? なんか情報に変なの入ってた?」
「ううん。そうじゃなくて……私なりに、色々考えたのよねぇ」
「ほうほう」
 聞こうじゃないか、とエルドレットが椅子に座り、話を聞く体勢へと切り替わる。司令官だからこそ意見は必要であり、今後の事を考えていきたいという彼の意思が現れていた。
 対し、修羅雪姫の出した答えは『お互いに対する信頼感の醸成が必要ではないか?』という、セクレト機関そのもののあり方についての切り込み。
 エルドレットが裏切り者について心配していることは修羅雪姫にもわかる。しかし行き過ぎた秘密主義というのは組織の硬直化とモラルの低下をもたらすと学んでいるため、そこを少し切り替えてみてはいかがだろうか、とエルドレットに提言した。
「ふむ、なるほどねぇ。……だが、信頼感の醸成か。どうするんだ?」
「そうねぇ、やっぱりこういう時は、人が集まってちょっとしたパーティを開くのがいいわよねぇ」
「ってことはー……」
「宴会だ!!」
 ドン! と準備を始めた修羅雪姫はまず、テーブルクロスを広げてミーティングフロアを改造する。次に宴会と言ってもお酒を飲めない人がいるだろうということで、ティーパーティーという形で様々な茶葉を用意してもらった。
 ……心なしか、エルドレットの口がアヒル口になったようにも見えたが、気の所為ということにしておいてもらおう。

 ティーパーティーの準備を終えた修羅雪姫はエルドレットに放送室を借りて、迷子放送と言うかたちで呼び出しを行い始める。
『あー、あー。ヴォルフさん、エミーリアさん、フェルゼンさん、エーミールさん、メルヒオールさん、あと御用とお急ぎでない方は1階のはミーティングフロアまでどうぞー』
 セクレト機関全構内へと響き渡った修羅雪姫の放送。呼び出しを受けた以上は、ということで最初に到着したフェルゼンとエミーリアからティーパーティーを開始。
「ほう、良い茶葉を準備されているのだな?」
「ええ、私が目利きで持ってきたんです。ささ、どうぞ」
「はわ~、お茶の良い匂いが……」
「エミーリア嬢、どうぞお先に」
「フェルゼンさん、ありがとうですの。いただきますですの」
 差し出されたお茶を一口飲んだエミーリア。彼女が飲んだのは超高級紅茶であり、飲んだことのない味に目を輝かせながら、もう一杯、と修羅雪姫にねだってくる。
 その様子に、フェルゼンはお茶菓子が必要だろうと感じたのか、1度ミーティングフロアを出て購買部でちょっとしたお菓子類を購入。ティーパーティーに少しだけ色とりどりのお茶菓子が添えられた。
「さて、じゃあ色々とお話し合いしましょう? 今回の事件のこととか、これからのこととかねぇ」
「はいですの。……と言っても、まだ皆さんいらっしゃってませんね?」
「そうだな。ヴォルフやエーミール殿達が遅いのは珍しいが……」
 一口、ゆっくりと紅茶を啜るフェルゼン。彼らは時間より少し早めに到着するタイプの人間だから、自分たちより遅いのは少し珍しいな、と色々と呟きながらも今後について……少しでも先回りできる状況を作りたいと語る。
 対するエミーリアは今後のことについては不安しか無い、と語った。自分が戻ってきたことで多少様々なリスク分散なども行えるようにはなったが、未だにわからない謎が多く、本当に解決できるのかさえも不安だと。
「少しでも猟兵の皆さんの橋渡しになるように頑張りたい……ですが、逆に負担をかけさせてしまわないかとちょっぴり不安ですの……」
「ふむふむ。そういうのも、ちゃぁんと伝えておくのがいいかもしれないわねぇ」
「確かにな。エミーリア嬢は色々と、1人で抱え込みやすい。父君であるエルドレット司令官を困らせないようにしたいのはわかるが、それで自爆しては元も子もない。もっと他者を頼るようにしたほうが良いかもしれないな」
「うぅ、ありがとうですの~……。リア、もっともっと、皆さんを頼るようにしてみるですの~」
 ぐいっとカップの中の紅茶を飲み干したエミーリア。もう一杯! と修羅雪姫に伝えると、3杯目へと突入した。

「おぉう……なんこれ……」
 しばらくして、メルヒオールが到着。
 しかしそこではエミーリアがティーバッグを両手にブンブン振り回して暴走しており、エルドレットがお茶に飽きたのか酒だ酒を持って来い! と叫んでいるのをフェルゼンが窘めている風景が広がっていた。
 そのおかげで他研究員や調査人達がドン引きする事態となっており、最後にやってきたヴォルフとエーミールが絶句する事態となっていた。
「いいのかこれ。いや本当にいいのか?」
「うーん、紅茶でここまで暴走する人初めて見たかも?」
「いやでも、リアだけだったから助かった。兄さんがいたらヤバかったかもしれないです」
 エーミールのその言葉に対し、修羅雪姫はふと気づく。彼の兄である燦斗がこの場に来ていないことに。
 自分が呼ばなかったからなのかな? と考えていたが、どうやら燦斗は用があるからとエーミールに一言告げて何処かへ出向いたらしい。行き先については誰にも告げていないため、構内の何処かにはいるのだそうだ。
「ふむ。じゃあ今度は、お兄さんもご一緒に出来たらいいわねぇ」
「兄さん、紅茶には厳しいので今度は緑茶とかがいいかもしれませんけどね……」
「|燦斗《エーリッヒ》の奴、緑茶にも口出ししてきそうな気もするけどな」
「あ~~……兄さんならあり得る……」
 この場に燦斗がいなくてよかったとホッとするヴォルフとエーミール。
 視線の先に向けられているのは、燦斗の実父と義理の弟妹達with同僚だった……。




●Case.? 難儀な王子と司令官補佐

「…………」

 セクレト機関、大研究室。
 コンピューターの前にて、燦斗は画面に触れる。


 ――確認者...Alenhainz nier Walth.
 ――権限チェック...Assistant Commander-in-Chief.

 ――ようこそ、Erich Abendroth.
 ――今日は何を行いますか?


 画面に表示された文章を読みながら、小さく笑う燦斗。
 彼はある目的のためにこの書庫に訪れており、その目的のものに向けて視線を向けた。

 視線の先にいるのは……ジャック・アルファード。
 その手に握られているのは、黄土色の表紙の本――『ゲート構築と■■について』。

 ジャックは燦斗に鋭い視線を向けたまま、一歩も動こうとはしていない。むしろ、早く何かをやってくれと急かすように身体がソワソワと小刻みに動く。
 そう焦るなと燦斗が笑うと、彼はコンピューターに視線を戻して続きを入力し始めた。

「にしても、貴方が直接来るとは思いませんでした。人手不足ですか?」
「ベルトアは世界移動ができない、アマベルはギルド仕事、レティシエルは自由きままな旅行。これでわかるな?」
「貴方も難儀してますね。あの世界では一国の王子なのに」
「本当にな。……で、言ったやつは?」
「少々お待ちを。…………」

 もう一度コンピューターに検索情報を入力する燦斗。
 ジャックが必要としている情報を、彼は探し出してあげているようだ。

 大研究室に残されている情報は主に2つ。
 1つは過去の大きな功績を残した研究者達によって書かれた論文情報。
 もう1つは、ある研究を行った者達が残した『箱庭世界』を作るために使用した様々な技術論文の情報。

 ジャックが探しているのは後者。それも、それらを必ず死守するようにと伝えられていたようで。

「理由については聞いていますか?」
「死守できなければ、エルグランデを揺るがす最悪な事態が起こる。……それぐらいしか聞いていないな」

 首を傾げながらも、どういった意味なのかを考えるジャック。
 ……彼はコントラ・ソールの消失の危機については知らないため、エルグランデを揺るがす最悪の事態というのを思い描くことが出来ない。

 対する燦斗は見つけた情報に視線を向けるが、エルグランデを揺るがす最悪の事態、というワードと見つかった情報に繋がりを探ってしまって、コントラ・ソールの消失の危機という状況を思い浮かべることが出来なかったようだ。

「ふむ……こちらの情報はほとんどエルグランデとは関係ないように見えますが……」
「それでも、守れと。そのために俺はここに来たんだよ」
「ふーむ。やっぱり父を問いただすか……」

 大研究室のコンピューターから離れた燦斗。どうやって父であり司令官であるエルドレットに話を聞こうかと考えたところで……突如、サイレンが響き渡る。
 |侵略者《インベーダー》が機関内に侵入したという、あり得ざる状況の警報が――。



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  『purpose』 complete!

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大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年12月12日


挿絵イラスト