Plamotion Disguise Actor
●君が思い描き、君が作って、君が戦う
『プラモーション・アクト』――通称『プラクト』。
それはプラスチックホビーを作り上げ、自身の動きをトレースさせ、時に内部に再現されたコンソールを操作して競うホビースポーツである。
思い描いた理想の形を作り上げるというのならば、たしかに『プラクト』は心・技・体を兼ね備えたスポーツであったことだろう。
だが!
今回は少々趣きが異なる。
そう、世はハロウィンの真っ最中。
アスリートアースにだってハロウィンはあるし、それが一大イベントになっているのだ。それが『仮装大マラソン大会』である。
ルールは簡単である。
ハロウィンの仮装に身を包んで、一斉にコースを駆け抜けていくだけ。
単純なマラソン競技であり、必要条件は仮装をしているということだけ。ただそれだけでいいのだ。
確かに一着は勝利の証であろう。
けれど、これは『仮装大マラソン大会』である。
「そう、単純なスピードだけじゃないんだよなー」
『アイン』と呼ばれる少女がうなずく。
彼女は未だ公式競技化されていないホビースポーツ、『プラクト』のアスリートだ。彼女もこの機会に『プラクト』を広めようとハロウィンの『仮装大マラソン大会』に参加しようとしているのだ。
そのために彼女は今、自分の仮装をチームメイトである少女『ツヴァイ』と共に作っている。
もちろん、作ることにかけては彼女たちはどんなトップアスリートたちにも負けないだろう。彼女たちが今作っている仮装は、彼女たちが『プラクト』で使うプラスチックホビーを模している。
有り体に言えば、ロボットの仮装である。
「この箇所の強度が足りません。計算をやり直しましょう」
「そんな時間ねーよ。こういうのは現地改修していくから、熱いんだろーが!」
『ツヴァイ』と『アイン』がワイワイ『五月雨模型店』で仮装を作り出している。主に『ツヴァイ』が仮装の設計を。マラソン大会にて走るのは『アイン』が担当している。
そして、新たに仲間に加わった『ドライ』が……。
「応援である!」
「うるせーぞ! 手伝えよ!」
「そうですよ、お菓子ばっかり持ってきては置いていって!」
『ドライ』が闊達に笑っている。
ダークリーガーに敗北しダーク化していたアスリートである彼は、ダークリーガーが打倒された今、こうして『五月雨模型店』のチームメイトになっているのである。
少年『ドライ』はまだ笑っている。
「アスリートたるもの、食べるのも仕事のうちだ! ほら、たくさん食べるといい!」
「だーら! 食べるわ! 食べるけど限度ってもんがあるんだろうが!」
「ああっ、そのお菓子は私が取っておいたのに!」
そんなふうに三人はワイワイがやがや楽しげにハロウィンの一大イベントである『仮装大マラソン大会』に参加するために着々と準備を整えていく。
しかし、彼らが参加しようとしている『仮装大マラソン大会』にもまた『ダークリーガー』の影が忍び寄る――。
●幸せな夢を見る
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。皆さん……」
彼女の顔は真剣そのものであった。
だが、猟兵たちはすでに勘付いているかも知れない。そう、彼女がこういう雰囲気を醸し出しているとは大抵ろくでもないことであったし、また大抵ポンコツなことを言い出す前触れである。
「仮装はお好きですか!」
ほーら来た。はい、ポンコッツ。
ナイアルテは、じゃーん、と手を広げる。何が? と猟兵たちは思ったかも知れない。彼女の手にあったのは、アスリートアースで放送されているアニメーション作品を集めた雑誌である。
にこし。
ろくでもない微笑みを浮かべている時のナイアルテの効果音である。
「いえ、アスリートアースにおいてもハロウィンは一大イベントです。特に『仮装大マラソン大会』は毎年大いに盛り上がりを見せる競技でもあります。このときばかりは、皆さん、競技の枠組みを超えて仮装し、マラソン大会に興じるのです」
なるほど。段々と事態が読み込めてきたことだろう。
この一大イベントをオブリビオンであるダークリーガーが見逃すわけがない。例え、イベントのマラソン大会と言えど、順位がつく。
つまり、ダークリーガーが一着になってしまえば、それ以下の順位のアスリートたちは例外なくダーク化されてしまう。
それも一大イベントたる『仮装大マラソン大会』であれば、参加者も膨大なものとなる。
「ええ、そのとおりです。ダークリーガー『レジェンドアスリーテス』は『仮装大マラソン大会』を蹂躙し、参加者の皆さんをつるっとくるっとまるっとそっくりそのままダーク化して配下にしようとしているのです。おそらく、これに立ち向かえるのは皆さんだけです……!」
ナイアルテの言葉は先程までの緊迫感のなさから一転している。
それが真実ならば、これは大事件である。
「『仮装大マラソン大会』は単純にスピードのみならず、『仮装自体のスゴさ』や『仮装の世界観を表現する走り』といった芸術性も大きく問われます。その総合点によって順位は決定されるのですが、やはり一着を取るということはポイントが高いのです」
なるほど、と猟兵たちは納得する。
本来の『仮装大マラソン大会』であれば、和気藹々と仮装をアピールしながら完走することが目的となる。
だが、ダークリーガーは別だ。
圧倒的な力で一着を問答無用で取るであろうし、ナイアルテの言葉から察するにダークリーガー『レジェンドアスリーテス』は、恐らくスピード・スタミナ・仮装の全てにおいて高い完成度を持っていると見ていい。
ならばこそ、猟兵しか対抗できないのも頷ける話だ。
「ええ、ですので!」
ふんす。ナイアルテは雑誌をめくる。参考にしてくださいね、と丁寧に猟兵たちに雑誌を配っている。
単純にナイアルテが猟兵たちの仮装姿を見てみたいと思っているだけかもしれない。いや、多分そうだ。
「ダークリーガー『レジェンドアスリーテス』は強敵です。圧倒的な速度でマラソンコースを走り抜けますし、彼女の仮装は美しいものです。ですが、皆さんもきっと負けてはいないはずなのです!」
拳をぐぐっと握り、ナイアルテは目を爛々とさせる。
猟兵たちならばきっと『レジェンドアスリーテス』の完璧なる『仮装大マラソン』フォームを打ち破ることができるはずなのだと――!
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はアスリートアースにおける『仮装大マラソン大会』に参加し、一着を目指すシナリオになります。
またこれはハロウィンシナリオに該当しています。
※これは2章構成のアポカリプスヘルのシナリオになります。
●第一章
冒険です。
『仮装大マラソン大会』では、単純なスピードだけでは決まりません。
『仮装自体のスゴさ』や『仮装の世界観を表現する走り』といった芸術点も加味されます。
皆さんは、ご自身の仮装を普段とは違うユニフォームで勝手の違う走りでもってアピールしなければなりません。
また仮装は別にどんなものでも構いません。恐らくハロウィンらしさを表現した走りが高得点となるでしょう。
そして、未だ公式競技化されていないホビースポーツ『プラクト』のチーム『五月雨模型店』からは『アイン』と呼ばれる少女が出走しています。
『ツヴァイ』と『ドライ』は応援係です。多分どこかで皆さんと『アイン』を応援しています。
●第二章
ボス戦です。
レースの終盤です。
ついに皆さんは先頭をぶっちぎりでひた走るダークリーガー『レジェンドアスリーテス』の背中を捉えます。
ですが、彼女はスピード・スタミナ・仮装のスゴさを全て兼ね備えたダークリーガーです。
この終盤のデッドヒートを『レジェンドアスリーテス』と繰り広げ、制し、皆さんの誰かが優勝することができればダークリーガーを打倒することができるでしょう。
それでは、ハロウィンの一大イベント『仮装大マラソン大会』をめぐるダークリーガーとのデッドヒートを繰り広げる皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 冒険
『仮装マラソンに出場しよう!』
|
POW : アスリート魂を燃やしてひたむきに走りまくる
SPD : 走りやすいよう、衣装に工夫を凝らしておく
WIZ : 人目を惹く衣装をデザインし、美しさで得点を稼ぐ
イラスト:ヒミコ
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アスリートアースの一大イベント『仮装大マラソン大会』はハロウィンの時期に行われる風物詩であった。
出走するアスリートたちは皆、思い思いの仮装に身を包んでいる。
当然、普段とは違うユニフォームで走るため多くのアスリートたちは苦戦するだろう。けれど、それでもいいのだ。この『仮装大マラソン大会』は優勝を目指すこともそうであるが、最も大切なのは仮装を楽しむことである。
勿論、『仮装自体のスゴさ』や『仮装の世界を表現する走り』といった芸術点も大切だ。
けれど、やっぱりイベントなのである。
みんなで楽しく走ったほうがいい。
それに未だ公式競技化されていなスポーツのアスリートたちは、ここぞとばかりに自分たちの参加しているスポーツをアピールできる絶好の機会なのだ。
ホビースポーツ『プラモーション・アクト』……通称『プラクト』のアスリートである少女『アイン』もそのつもりなのだ。
「よーし、私の仮装『熾裂』の凄さ、見せてやるぜ!」
彼女の背に配された羽のようなパーツはただの飾りではない。彼女が走ることによって生み出されるダウンフォースを最大限に活かせる空力設計がなされているのだ。これはチームメイトである『ツヴァイ』と『ドライ』の協力があってこそ出来たことだ。
彼らの思いを受けて『アイン』はこの『仮装大マラソン大会』に並々ならぬ思いを滾らせていた。
だが、そんな彼女の思いとは裏腹に、この『仮装大マラソン大会』はダークリーガーに狙われていた。
ダークリーガーの名は『レジェンドアスリーテス』。
かつて若くして非業の死を遂げた伝説的なアスリートであったが、ダークリーガーとして蘇っていた。
「……どうやら骨のありそうなアスリートがいるようね」
彼女は油断などしていなかった。
身にまとうコスチュームは、アスリートアースで放映されているスポーツアニメの主人公の衣装そのものである。奇しくも、そのアニメは徒競走を題材としたものであり、またコスチュームの華美な様相は『仮装大マラソン大会』にマッチしている。
死角など何処にもない。
スピード・スタミナ・仮装のスゴさ。
どれをとっても伝説級。故におごりも傲慢さもない。ただただ、アスリートが本来持っている競技に対する真摯さと、勤勉さが、その驚異的な身体能力を支えているのだ。
「来るなら来るがいいわ。圧倒的なスピードで振り切って、圧倒的なスタミナでぶっちぎって、圧倒的な仮装のスゴさで、優勝をかっさらうわ!」
彼女は本気である。
その本気に対抗するためには、猟兵たちも本気にならなければならない。
『仮装大マラソン大会』という楽しげでありながら、和気藹々とした緩やかなイベンドでは最早ない。
これより起こるは熱風荒ぶ『仮装大マラソン大会』である。
ならば、見せねばならない。
猟兵たちの仮装に籠めた思い。そして、情熱を!
今、スタートの空砲が青空の元に鳴り響く――。
リコ・エンブラエル
●POW
模型店ならではの仮装、か
それならこのプラモデル『|FA《フルアーマー》なんとか』を参考にギアを飾っていこう
なるべく五月雨模型店の売上に貢献するように、プラ板や塗料などを活用して無骨なギアのボディに貼り付けたり乗せたりだ
本来であればバトリングでの殴り合いにも耐えれる強度が欲しいところだが、そこはチャリティレースということで目を瞑ろう
イメージは『ヘビーアームド・ウェポナイズ』で重武装化したギアといったところだ
重装甲で高火力
だがその分、機動性を犠牲にしているという設定か
プラモデルの説明書を見ながらのスクラッチであるが、折角なのでプラモデル自体もギアの操縦席に乗せておこう
あとはぶっつけ本番だ
アスリートアースにおけるハロウィンは一大イベントだ。
『仮装大マラソン大会』が最も有名なものであり、毎年注目度が高い。だからこそ、個人のみならず、商店街の店や公式競技化されていないスポーツアスリート、はたまた企業までもが仮装したアスリートを参加させ脚光を浴びようとする。
『プラモーション・アクト』――通称『プラクト』と呼ばれるホビースポーツもその一つだ。
「よーしっ、がんばるぜー!」
そう言って意気揚々としているのはスタート前の少女『アイン』。
彼女は『五月雨模型店』のアスリートであり、今回の『仮装大マラソン大会』に意欲的であった。
身にまとうのは白い装甲。
俗に言うメカ少女という類ではなく、完全にロボットの装い。
世界観を大切にするのも、この『仮装大マラソン大会』の醍醐味だ。
リコ・エンブラエル(鉄騎乗りの水先案内人・f23815)は、そんな彼女の意気込みをみやりうなずく。
猟兵として参加するのだとしても、やはり仮装は必須。
そして、リコとしては『五月雨模型店』に協力したいと思うのだ。だからこそ、模型店ならではの仮装というものについて一つ考える。
「ふむ、それならこのプラモデル『|FA《フルアーマー》なんとか』を参考にギアを飾ったのは正解だったな」
彼が乗るテレビウム用汎用人型作業マシンはプラ板とラッカー塗料で持って無骨なギアを重装化する。
といっても、プラ板が材料のため、完全に見掛け倒しだ。
けれど、それでいいのである。
これは『仮装大マラソン大会』だ。別に戦うわけではない。
とは言え、今回はダークリーガーが一着を狙っている。ならば卑怯な手をつかってくるかもしれないから、殴り合いという名のラフファイトに耐えられるような強度が欲しいのだ。
「だが、ここはチャリティレースだからな」
目をつむらなければならない。
リコは早速プラ板でヘビーアームド・ウェポナイズされたギアを駆り、レーススタートの合図と共にギアで走り出す。
この『仮装大マラソン大会』には多くのアスリートたちが参加している。
皆思い思いの仮装に身を包み、ゴール目指して走り出す。そこには陽気な雰囲気と共に爽やかささえあったことだろう。
「おっ! いいじゃん! 重装甲に高火力! いいね! 浪漫だね!」
「わかるか、少女。この良さが」
「わかるって! あんたがこれをどんだけ楽しく作ったのかがさ! 他の皆だってわかってるんだぜ、そういうの!」
ひゅーと『アイン』と呼ばれている少女がリコのギアを見てフェイスガードを跳ね上げて目をキラキラさせている。
他の参加者たちも同様であった。この『仮装大マラソン大会』を楽しんでいる。自分の仮装だけじゃない。
他者の仮装も楽しむ。なんとも面映い。
「ふっ、だがその分、機動性を犠牲にしている……」
「いいじゃん! それこそ浪漫じゃん! 鈍重な動き! イエスじゃねーか!」
「ここにモデルとなったプラモデルもあるのだ」
そう言ってリコは操縦席に備えられた元となったプラモデルを示す。
ギアの縮小版ともいえる小さなプラモデル。
塗装もほどこされているし、ギアとして汚しがところどころ入っているのもいい。
「よーし、私も負けてらんねーな! お先に行くぜ!」
リコはそんな『アイン』を見送る。
流石はアスリートアースである。少女であっても、超人的な運動能力は粒ぞろいというわけだ。
だが、リコも負けてはいられない。
思った以上にギアをデコレーションという名の仮装するのに時間が掛かってしまったせいで、レース自体はぶっつけ本番。
「でたこと勝負というわけだ。だが、それでこそだな」
テレビウムの顔、その画面が煌めく。
そう、目指すは先頭集団。さらにその先をぶっちぎっているダークリーガーの背。リコは競技用ギアであるパワードギアの出力を上げ、鈍重な機動性を思わせる『FAヘビーアームド・ギア』の姿とは裏腹に一気に先頭集団を割るようにしながら走り抜け、ダークリーガー『レジェンドアスリーテス』の背を捉えるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
(依頼の方向性的に)ナイアルテさんに呼ばれたような気がして、来てみました。何でだろう?
渡された雑誌を読んでいると、いつの間にかUC発動…。
女神の自分が「この可愛らしいヒロインの仮装は如何でしょう?」
邪神?の自分が「一人くらいラスボスの女王っぽい服装で参加する方が盛りあがります!」
と提案。
という事で邪神様なりきりセットをアニメ作品の某ラスボスっぽくアレンジして参加します(セットの下には体操服着用)。
悪のカリスマと威厳を纏い、天候操作で雷雲を呼び出しつつ入場して悪役っぽく見得を切る(演技)。
競技が始まれば空中浮遊で少し浮き、念動力で前に運びつつ、時折ダッシュで加速を続けて優雅な感じで駆けますよ。
仮装は楽しんでやるものである。
それは自由で、豊かで、心を癒やす行いである。だからこそ、仮装は自由でなければならない。
しかしながら、あまりにも自由すぎて方向性を見誤ることもあるだろう。
だからグリモア猟兵はアスリートアースにて発行されている雑誌を手渡したのだ。この雑誌の中にあるキャラクターや作品から仮装のインスピレーションを得られればと思ったのだ。
「呼ばれたような気がして、来てみました」
大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)は無意識のうちにユーベルコードを発現させていた。
彼女の隣に真の姿たる幻影が浮かぶ。
「この可愛らしいヒロインの仮装は如何でしょう?」
真の姿たる神としての幻影が詩乃に指差してささやく。
そこにあったのは純白のワンピースを身にまとい、麦わら帽子を胸元に抱えているキャラクター。それは至極まっとうな、常識的な仮装であった。
いやさ、仮装というか普段の詩乃では? と思わないでもない。ということは、詩乃は正統派ヒロインってことになるのではないだろうか。いやきっとそうである。
しかし、もう片方の隣に浮かぶのは邪神様なりきりセットを着た詩乃であった。
「一人くらいラスボスの女王っぽい服装で参加するほうが盛り上がります!」
それは大変に際どいあれやそれやが眩しいラスボス女王の仮装であった。
青少年の性癖を歪める感じの!
流石にここまで過激なのは……と詩乃は善と悪(?)の狭間にて(ゼントアクノハザマニテ)揺れ動く。
揺れ動いてんの!?
そんなこんなで詩乃は『仮装大マラソン大会』にやってきていた。
彼女の身にまとう仮装は、女王様ラスボス!
漆黒のドレス!
スリットの深いドレス! 御御足が眩しい! しかし見えぬ! 色んなものが! 見えるはずのものが見えぬ!
そう、今の彼女は対策バッチリなのである。
夜を思わせるドレスの舌には体操服を着込んでいる。アスリートアースだからね。アスリート仕様だからね。仕方ないね。
「これでよかったのでしょうか……」
これはこれでアリ!
むしろ、斬新な仮装は多くの人々の目を集めただろう。
空砲と共にマラソンがスタートされると詩乃は速攻で雷雲を呼び出す。それはまるで悪役そのもの。
プロレスだったら、完全にヒールの出で立ちであった。
「さあ、道を開けてもらいましょうか! この私、ラスボスが! ええっと、ダークネスな私が通りますよ!」
演技ではあるのだが、微妙に役により切れていない感じが、『仮装大マラソン大会』の参加者たちの心をほっこりさせる。
そういう初々しい反応いいよね。
そんな詩乃の姿を消除『アイン』は見上げる。
「っていうか浮いてる!?」
「ええ、念動力で少しだけ浮いています。そして、ちょっと力を加えれば、ほらこの通り」
詩乃はドレス姿という出で立ちでありながら、ものすごい速度でコースを走っていく。超人アスリートあふれるアスリートアースにおいても、その歩法というかフォームはとんでもないものであった。
具体的に言えば、腕組みしながら超人的な速度で走っているアレのような感じである。
「ど、どういう理屈!? え、えぇー……!?」
その走りについていける『アイン』もまた超人アスリートの一人であるといえるだろう。
だが、詩乃は微笑み優雅に『アイン』を引き離しダークリーガーである『レジェンドアスリーテス』の背中を追う。
他の追随を許さぬかのようにトップを単独でひた走る『レジェンドアスリーテス』の背中はまだ遠い。
けれど、詩乃は不敵に笑うのだ。
そう、彼女は邪神様なりきりセットを着た自分に従ったのだ。
さらに今の優雅なフォームは維持されたまま華麗に速度を上げる。
「まだ加速するのかよ!?」
「ふふ、これがラスボスの力というものです。それでは、これにて失礼しますね」
そんなふうに微笑んで詩乃は雷雲背負いながら、一気にトップとの距離を縮めるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
国栖ヶ谷・鈴鹿
◎アドリブOKです
👗仮装は『金烏玉兎』この日の為に、アスリートアースのアスリートに負けないサクラミラージュ大正メイドウェアで勝負するよ!
デザインはぼくの真の姿の時の衣装に近いかな?今年の仮装でもあるんだよね!
そしてぼくのユーベルコヲドで引き出されたダッシュ能力を引き上げて、美しく勝者のカリスマで注目を集めていくよ!
パフォーマンスで、足元に桜舞い散る光のホログラムが残るように演出を施して、桜と共に走るようなサクラミラージュ、桜の幻影をウェアと共に意匠を凝らしていこう!
この日のためにと新調されたメイド服が風に翻る。
スタートの空砲が鳴り響けば、一斉に走り出すアスリートたち。彼らの腕が、足が、風を生み出していく。
超人アスリートたちひしめくアスリートアースに置いてハロウィンの一大イベント『仮装大マラソン大会』に仮装は欠かせぬものであった。
だから、国栖ヶ谷・鈴鹿(命短し恋せよ乙女・f23254)は走る。
風に翻るのは黒を基調とした金のライン。
メイド服。
そう、それは大正モダン、麗しのメイドガアル。
「この姿は伊達じゃないってとこ、見せてあげるよ!」
そして、天才、超天才と彼女を言わしめるのは、超高精度技能再現化装置(パーフヱクトフォースローダー)。
超人アスリートひしめくこの世界にあって、身体能力とは即ち力である。
この『仮装大マラソン大会』においてもアピールするためには身体能力が必須とされる。様々な仮装をまとうアスリートたちの中に埋没することなく、その姿を人々に見てもらうために必要なのは、一にも二にもなく脚力であった。
「メイド服! なんか私の知っているやつと違う! えー、いいじゃん……え、かわいっ、怖いくらいかわいっ!」
そんなふうに驚異的なダッシュ能力でもってぽっかりと空いた空白地帯、上位集団と中位集団との間に鈴鹿は躍り出ていた。
彼女の隣を走るのは白いロボットの仮装をした少女『アイン』。
彼女は男勝りであったが、女の子である。
大正モダンなメイド服の可愛さに『アイン』は目をキラキラさせていた。もっと近くでみたいな、と思ったのでがんばって鈴鹿に追いついてきているのだ。
「そうでしょう? 今年の仮装でもあるんだよね!」
「いいなっ。いや、本当に。ふりふりしてる……それにそれ、どうやってんの!?」
『アイン』が示すのは、走る足が地面を踏みしめるたびに噴出する桜舞い散る光のホログラム。
鈴鹿が前に進むたびに、彼女の背後には桜吹雪が舞い散るのだ。
その光景は沿道で応援している人々の目を楽しませる。
まるで桜と共に走るメイドさん。
確かに疾走疾駆しているのに、どこか優雅ささえ漂う。
彼女が目指した大正モダンなメイドガアルは、アスリートアースに置いても大変に目を引くものであったのだ。
それは彼女がサクラミラージュ出身であること、そして超天才であることが掛け合わされたことに寄って生み出された光と衣装のマリアージュ。
幻想的なまでの走るフォームに皆目が釘付けである。
「ふふ、せっかくの催しだしね。楽しむだけじゃあなくって、楽しませたいって思うものでしょ?」
その言葉に『アイン』はうなずく。
スポーツは確かに競うものだ。『仮装大マラソン大会』だって競うものである。順位だってつく。
けれど、それ以上に楽しみたいのだ。
走る喜び。
それを見て応援する人々の気持ち。
どれもがかけがえのないものだってわかるからこそ、鈴鹿は己の持てる技術と力でもって桜吹雪を演出する。
それは季節外れの、決して見ることの出来ない光景であった。
サクラミーラジュであれば、幻朧桜が常に咲き誇っている。けれど、他の世界ではそうではないのだ。
秋には秋の花が咲く。
「この世界では季節外れかも知れないけれど……でも、おいで、みんな。一緒に走ろう」
そういって鈴鹿は速度を上げていく。
桜吹雪を背負って走るように彼女はぐんぐん順位を上げていく。
上位集団を突き抜け、捉えるは先頭をひた走るダークリーガー『レジェンドアスリーテス』の背中。
必ず勝って、『仮装大マラソン大会』を利用しようとするダークリーガーの野望を打ち砕くために、鈴鹿は邁進するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ニィナ・アンエノン
わーい、レースレース!
バイクのレースじゃないのは残念だけど、仮装してって楽しそう!
ハロウィンっぽい服……あったあった、一昨年に仮装で使った悪魔のやつ!
これを【防具改造】しちゃおうかな。
所々を汗が乾きやすい素材にしたり、翼の形状や角度に手を加えてちょっと揚力を持たせたりして……ここは【メカニック】の腕の見せ所だね。
ちょっと布面積は小さいけど、陸上競技してる子の着てるユニフォームも大体こんな感じのセパレートだし大丈夫でしょ☆
とは言えにぃなちゃん、バイクはともかく走るのはそんな大得意って事もないんだよね。
ここは【パフォーマンス】重視で、手を振ったりハイタッチしたりして皆を【誘惑】しながら走ろうっと☆
ニィナ・アンエノン(スチームライダー・f03174)はレースが好きだ。
一位を争うデッドヒートの熱気も、熱のこもった人々の応援の声も、どれもがニィナの肌を焦がすようであったから。
それに走れば風が熱を持った肌を冷ましてくれる。
レースには色んなものがあるのだ。
だから、ニィナは熱気渦巻く『仮装大マラソン大会』に参加することがとても嬉しかった。
とは言え、バイクのレースではないことだけが少し残念であった。
けれど、仮装をしていいというのはとても嬉しい。楽しいことは大歓迎なのである。
「それ、大丈夫か?」
少女『アイン』がスタート前のニィナの仮装をみて首を傾げている。
彼女が心配しているのはニィナの肌面積である。
ニィナが用意したのは昨年の仮装行列で来ていた悪魔風の衣装。ちょっと、こう、その、大変に肌色が多いのである。
網タイツで足の肌色は隠れて……隠れてないな! 逆に扇情的である。
「ふふん、ここはメカニックの腕の見せ所だよ」
ニィナは『アイン』の言葉にうなずく。
確かに布面積は多くはない。けれど、陸上競技をしているアスリートたちのユニフォームだってこんな感じのセパレートだ。
問題なんてどこにもない。
いや、ある気がするけどなぁって『アイン』は思った。けれど、言わなかった。それは野暮ってものだし、過激さで言うなら商店街の大人のお店のおねーさんたちのほうが余程であったからだ。
「でも汗とか大丈夫か? むさない?」
「汗が乾きやすい素材に置き換えてるからね☆ それにほら、翼の形状も……」
「あ、なるほどなー! 揚力をもたせているのか!」
そうそう、とニィナと『アイン』は意気投合しつつ空砲のスタートと共に走り出す。だが、しかし順調だったのはスタート直後だけであった。
「ひぃ、はぁ……」
ニィナはバイクで走るのはともかくとして、生身で走るマラソンというのはそんなに得意というものでもなかった。
息が切れる。
けれど、ニィナは切り替える。例え、速度で負けていたとしても、これは通常のマラソン大会ではない。
『仮装大マラソン大会』である。
走る順位も大切ではあるが、もっと大切なのは仮装衣装に対する思いである。
どんな思いを込め、どんなふうに沿道の人々を魅了するのか。それがこの『仮装大マラソン大会』の醍醐味の一つでもあったのだ。
「みんなー☆はいたーっち☆」
ニィナはバンザーイってするように両手を上げる。
そうすれば、その言葉に従うように共に走っていた仮装アスリートたちが笑顔でハイタッチに答えてくれる。
ぱんぱんって手を打つ音が響き渡り、先行するアスリートたちは、その音になんだ? と首をひねって後方を見やるだろう。
そうすればニィナが次々とアスリートたちとハイタッチをしながら順位を挙げてくるのだ。
「さあ、もう誰にも止めらんないぞ☆」
アンストッパブルにニィナは走り続ける。
確かに生身で走るのは大得意ってわけじゃない。
けれど、こうやって皆で楽しみながら走るのならば、話は別だ。人生を楽しむのに必要なのは笑顔だけだ。
笑顔があれば、みんな自然と頬がほころぶ。
呼吸の辛さも、足の痛みも、何もかもが笑顔で帳消しにされる。
「いぇい☆ はいたーっち!」
ニィナは悪魔衣装で誘惑するみたいにアスリートたちとハイタッチしていく。彼女とハイタッチしたいがために順位を落とすアスリートさえも居る始末だ。
さらに言えば、沿道の人々もまたニィナとハイタッチしていく。
マラソンコース全てを巻き込むように、ニィナは歓声と共に先頭を追う。
そう、ダークリーガー『レジェンドアスリーテス』。
この『仮装大マラソン大会』をもってアスリートたちをダーク化しようと目論むダークリーガーの背を捉えるため、彼女は笑顔と共に走るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
【サージェさんと】
プラクトでハロウィンを楽しみつつ、
ダークリーガーも倒しちゃう感じだね。おっけい。
でもなんでナイアルテさんは仮装してないの? ねぇなんで?
って、それは帰ってきてからいろいろ着てもらえばいいか。
衣装は偽装錬金でいくらでも作れるしね!
で、競技はマラソンだっけ。
仮装前提ってことだし、もちろん番長仮装一択だよね。
でも『菜医愛流帝』フィギュアは泣いちゃいそうだから、
『憂国学徒兵』シリーズ『F型』を、ハロウィン仕様の塗装にして、
理緒特製『菜医愛流帝』長ランを着せていこう。
履き物はもちろん下駄。方にジャックさんのマーキングもしていこうかな。
あ、サージェさん、長ランもう一着あるけど使う?
サージェ・ライト
【理緒さんと】
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、仮装していても胸が目立つとかそんなことないもんっ!
そもそも忍んでますし
興奮しすぎでうっかり『アポカリプスヘル』とか言っちゃってるナイアルテさん萌え
にゃいあるてさんになる日も近いですね!!
(理緒さんブレないなーって顔)
仕方ありませんよね私たちには
世界(猟兵的に骸の海を越えるレベルで)に『菜医愛流帝』を布教しなければなりません
その学ランいただき
私がにゃいあるてになりましょう
つまり菜医愛流帝が猫仮装したらというシミュレーション
ネコ耳ネコ尻尾装着でいっきまーす
【ちまっとかぐや隊!】でちまかぐやを呼び出してツヴァイさんたちと一緒に応援させますねー
うっかりって誰にでもあるものである。にんげんだもの。
とは言え、わりとうっかりで洒落にならない事態になることもままあるのである。そういう意味ではサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は、だいたいいつもそうって感じであった。反省はとても大切なことである。
彼女はクノイチである。
「お呼びとあらば参じましょう。私はクノイチ、仮装していても胸が目立つとかそんなことないもんっ!」
あるもんっ!
あるもんっ! 跳ねるたびに弛む素敵な膨らみが目立たぬわけなどないのである。
ドジっ子萌えとか言っている場合ではない。
そんな日は来ない。絶対に来ないのである!
「でもなんで仮装してないの? ねぇなんで?」
菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は今回のアスリートアースにおけるハロウィンの事件を説明していたグリモア猟兵が仮装していないことにご立腹であった。
なんか黒いオーラさえ見えるような気がするのは気のせいであろうか。うん気のせいである。
グリモア猟兵が仮装しないのは大人の事情ってやつである。泣いてなんかない。
「そもそも忍んでますし!」
「いや、サージェさんは忍んでないよ」
「え!?」
「まあ、それはそれ。仮装衣装がないならユーベルコードで作っちゃえばいいんだよ!」
理緒さんブレないなーってサージェは思った。
だがしかし、そんな理緒の意気込みをサージェは理解している。そう、『菜医愛流帝』ファンクラブとしては、世界すら超えて布教しなければならないのだ。布教しないでいいです、と断れても布教する。
ファンクラブってそういうものである。
会長と副会長そろってこんな感じなので、止めるだけ無駄というものである。
「で、競技はマラソンだっけ。仮装前提ってことだし、もちろん番長仮装一択だよね」
理緒はにっこりしている。
にっこし笑っていた彼女以上ににっこりしていた。黒歴史をほじくり返すのは様式美というやつである。
理緒は長ラン翻し、さらには胸ポケットに『憂国学徒兵』シリーズの『F型』をハロウィン仕様に塗装しなおして、理緒さん特製の長ランパーツを着込ませる改造を施したプラスチックホビーを添えている。
ここに少女『アイン』がいたのなら、目を輝かせていたであろう。
「あ、サージェさん、長ランもう一着あるけど使う?」
理緒がからころと下駄を鳴らしながらサージェに近づく。
サージェは何をしていたのかというと、『五月雨模型店』のチームメイトである『ツヴァイ』と『ドライ』に布教していた。
何を、とは言わなくてもわかるであろう。
「あの、なんでこの方は男性の服装を……?」
「番長! 心躍るワードだな!」
「ふふ、これが『菜医愛流帝』の魅力なのですよ……おっと、理緒さん、その長ラン頂きましょう!」
サージェは長ランに袖を通し、はちまきをまく。
はちまきには『菜医愛流帝』と達筆な字が書かれている。ここまで行くと最早宗教なのでは? と思わないでもない。カルトってやつである。
しかし、サージェはさらに付け足す。
「私がにゃいあるてになりましょう。つまり『菜医愛流帝』が猫仮装したらというシュミレーション」
目がぐるぐるしている。
正気の沙汰ではない。完全にアレである。もう目がやべーあれになっている気がしないでもない。
「あ、スタートの空砲がなりますよ。急いでください」
『ツヴァイ』が二人を急かす。
ここまでやっておいてなんであるが、これは『仮装大マラソン大会』である。走って順位を挙げなければ得点にならないし、仮装の世界観や芸術性をアピールできなくても得点にすることはできないのだ。
「ならば問題ありませんよ! ネコ耳ネコ尻尾が嫌いない人なんていません!」
「そうだよ!」
パシャパシャパシャパシャ! と理緒がいつのまにかサージェのネコ番長スタイルを激写しまくっているのはいいのだろうか。
スタートの空砲が鳴り響き二人は駆け出していく。
ちまっとかぐや隊!(ゲーミングカグヤヒメトアソボウ)とGreasemonkey(グリースモンキー)によって、ゲーミングカラーに煌めく小さなかぐや姫と電子妖精たちが空を飛びながら沿道から二人の走りを応援してくれる。
『ツヴァイ』と『ドライ』も彼女たちのチームメイトである『アイン』を応援するために並走している。
これがアスリートアースにおける『仮装大マラソン大会』のあるべき姿だ。
順位は確かに大切なものだ。
一位になれたのならば、その注目度は高いものとなるだろう。目立つことが目的であるのならば、それが正道。
「でもね、やっぱり楽しむべきなんだよ。ひた走ることも大切だけど、今日はお祭りなんだから」
「ええ、そのとおりです。なら!」
理緒とサージェは一気に加速していく。
応援を背に受けて、ただひたすらに先頭をひた走るダークリーガー『レジェンドアスリーテス』の背中を追いかけ、追いつかんと番長長ランを翻し、その背に刺繍された『菜医愛流帝』の文字を沿道の人々の瞳に焼き付けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『レジェンドアスリーテス』
|
POW : レジェンド降臨
【伝説のアスリート】のオーラを纏い、自身の【陸上】競技力と【水泳】競技力を2〜8倍にする(競技が限定的である程強い)。
SPD : 疾風のごとく
自身と武装を【敵を切り裂く疾風】で覆い、視聴嗅覚での感知を不可能にする。また、[敵を切り裂く疾風]を飛ばして遠距離攻撃も可能。
WIZ : アンリミテッド・スピード
【全力疾走】の継続時間に比例して、自身の移動力・攻撃力・身体硬度・勝負勘が上昇する。
イラスト:hoi
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
風をきるようにして走るのがアスリートならば、ダークリーガー『レジェンドアスリーテス』は風そのものとなるアスリートであった。
かつて伝説的な偉業を成し遂げたアスリート。
それが彼女である。
その名はすでに風化しているが、彼女のアスリートとしての生き様はアスリートアースにおける歴史に多くの影響を与えたことであろう。
きらびやかな和装をアレンジしたユニフォーム。
華美なる刺繍や柄は人々の目を楽しませる。一陣の風そのもとなって先頭を走る彼女の背は、多くのアスリートの憧れの的であったはずだ。
スピード、スタミナ、仮装。
どれを取って『レジェンドアスリーテス』は超一流であった。
「……背後からのプレッシャー。漸く追いついてきたようね」
彼女は背後を振り返ることなく、己の背に迫る猟兵達を認識していた。背に刺さる視線んだけで、彼女は猟兵たちがただならぬ力を持つことを理解する。
「けど、一位は譲らない。それが私という存在だもの。圧倒的な力でもって、全てを振り切る。それが私!」
足に力がこもる。
踏み出す一歩は、他の超人アスリートの数歩先を往く。
通常のマラソン大会ならば彼女に猟兵たちは勝てなかったことだろう。けれど、これは『仮装大マラソン大会』である。
仮装自体のスゴさ、仮装の世界を表現する走り。
それらが合わさることによって一位を決める大会なのだ。だからこそ、『レジェンドアスリーテス』に猟兵たちは追いすがることができる。
彼女にとって仮装とは足枷でしかなかった。
けれど、猟兵たちにとっては背を押す追い風なのだ。
さあ、繰り広げよう。
熱き思いと仮装を表現する豊かな心。
そのデッドヒートを――!
大町・詩乃
レースも終盤戦ですし勝負掛けますよ~!
邪神様なりきりセットをキャストオフ。
下に着ていた体操服(ブルマタイプ)に馬の付け耳とゼッケンを早着替えで装着。
ウ●娘の仮装に変身です!
先程同様に空中浮遊で少し浮いて念動力で前に運びますが、更に足の裏から衝撃波を噴出してのロケットダッシュを繰り返して加速!
《慈眼乃光》によって詩乃を後押しする局所的な追い風やダッシュを完璧なものとする地面のフォローも上乗せして、先程とはまた異なる種類の優雅なフォームでダークリーガーさんを猛追。
何故か(?)逆風に苦しむダークリーガーさんを追い抜きます。
選手さん達をダーク化させる訳にはいきません!
打てる手を打って勝ちに行きますよ!
ダークリーガー『レジェンドアスリーテス』は常に全力疾走していた。
彼女の力は己の自身を疾風そのもの変えるかのような速度。流麗なフォームから繰り出される速度は爆発的なものであり、また同時にそのスピードを長時間持続させるだけのスタミナも有していた。
まさにその名前に恥じぬ伝説的な走りを『仮装大マラソン大会』にて披露していたのだ。
「あれが噂に聞く伝説的アスリート……その仮装ってわけかよ!」
少女『アイン』は舌を巻く。
圧倒的な速度で背に追いついたと思っても、また離されてしまうのだ。
だが、すでにレースは終盤戦。
ここで勝負を仕掛けなければ、どこで仕掛けるというのだろうか。
大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)の瞳が輝く。
翻る邪神様なりきりセットたるドレスが風をはらんで詩乃の走りを帆のように抑制していた。
これも仮装であるがための弊害である。
だが、詩乃は何のために下に体操服を着ていたのか。その理由が今明かされる。別に新たなジャンルを確立しようとかそういうつもりではんかあったのだ。
「仕掛けますよ~!」
ドレスに付いていた紐を引っ張る。
するとまるで羽化すように詩乃の体がさらされる……わけではない。彼女の下に着込んでいた体操服姿。
それは紛うこと無く体操服姿であったが、はちまきが風にさらわれた瞬間、抑えられていた『耳』がぴょこんと立つ。
「あ、あれは!?」
「ええ、そのとおりです。事前にアスリートアースのアニメ雑誌から情報は得ているのです。国民的お馬さんゲームのキャラクターたち! その仮装に変身です!」
華麗に変身した詩乃。
「キャストオフ!?」
「変身といいましょう!」
「……面白いわね。でも、私には届かない!」
さらに速度を上げる『レジェンドアスリーテス』。
彼女の速度に詩乃は空中浮遊と念動力で体を前に運ぶ。だが、それだけではない。足の裏に衝撃波を噴出してロケットダッシュを繰り返して加速していく。
凄まじい加速に彼女の黒髪が背後に引っ張られるようになびく。
見つめる先にあるのは『レジェンドアスリーテス』の背中だけだ。
慈眼乃光(ジガンノヒカリ)たる視線が彼女の背中にささる。
「確かにあなたは精一杯、あなたの人生という名のレースを走り抜いたのでしょう」
詩乃は視線を巡らせる。
確かに速い。ユーベルコードを抜きにしても『レジェンドアスリーテス』の速度は凄まじいものであった。
詩乃の脚力では足りないのかもしれない。けれど、彼女は視線を巡らせた。
暖かく慈しむ視線。
この風景を見ることなく前だけをひたむきに見ることは、脇目を振らぬということ。だが、それは同時に視野狭窄というものだ。
「だから! 何!」
猛烈な向かい風が『レジェンドアスリーテス』の体を押す。
速度が緩んだ瞬間、詩乃の足は完璧なフォームを描く。地面のアスファルトがたわみ、ジェットの如き衝撃波を放つ彼女の足をバネのように後押ししたのだ。
「――……そのフォーム!」
「ええ、国民的お馬さんのアニメのキャラクターのフォームです」
流れるような前傾姿勢。振る腕の美しさまで完璧に再現した詩乃は一気にダークリーガー『レジェンドアスリーテス』を横から抜き去る。
何故、向かい風が突如として吹いたのか。
またタイミングよく彼女を壁として風をいなし前に躍り出ることができたのか。詩乃にはよくわかっていなかった。
けれど、それは周囲を見ていたからだ。
流れる風景。
風、蹴る大地。あらゆるものがなければ、マラソンは成り立たない。そうした息遣いを感じることさえ忘れたからこそ、『レジェンドアスリーテス』は詩乃に抜かれる。
「アスリートの皆さんをダーク化させるわけにはいきません!」
打てる手は何でも打って勝つ。
それが詩乃がダークリーガーに出来る唯一の手向け。
抜き去った詩乃は『レジェンドアスリーテス』を流し見て、微笑む。
これは生死の掛かった勝負ではない。
だからこそ、詩乃は勝ちたいと思ったのだ。かの伝説的なアスリートの生き様を、自分の持てる力を持って打倒したいと。
故に、詩乃は疾風を躱して、旋風のように『レジェンドアスリーテス』を躱し、さらに前傾姿勢を深め、疾駆していく。
それはまるで爽やかな秋風のように、彼女の頬を撫でるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ニィナ・アンエノン
よーし、ダークリーガーの背中が見えて来たぞ!
レジェンド相手に、にぃなちゃんにしては頑張ったんじゃないかな?
でもここでもう一押し、ラストスパートかけちゃうぞ☆
そんな訳でユーベルコード発動!
マールちゃんと合体して、悪魔パワーで【ダッシュ】だ!
服も少し変わっちゃうけど、合体だからこれも仮装って事で良いよね。
変身シーンはサービスしとくぞ☆
これで足も少しは速くなるはず!
これやると気持ちが疲れちゃうけど……うん!今日は身も心も疲れ切るまで出し切って、気持ち良ーく寝ちゃおう!
一応【瞬間思考力】で計算して、ゴール出来るようにはしとくよ。
にぃなちゃんファンがいたらゴールで待っててね、ベッドまで運ばせてあげるぞ☆
バイクを使ったレースは大の得意なニィナ・アンエノン(スチームライダー・f03174)であっても、自分の体を使ってのマラソン大会はそうでもなかった。
むしろ、伝説のアスリート、『レジェンドアスリーテス』を相手に此処まで肉薄できたことこそが褒められるべきであったことだろう。
ニィナ自身もがんばったんじゃないかと自分を自分で褒めてあげたい気持ちになったことだろう。
だが、レースは未だ終盤戦。
終わっていないのだ。
「まだ!」
『レジェンドアスリーテス』の体を包み込むのは風。
それは自身を疾風そのものに変えるかのような凄まじい速度で走る事によって生まれるソニックブームを解き放つ。
一段と加速する『レジェンドアスリーテス』の速度にニィナはまた再び引き離されてしまうし、放たれる疾風の斬撃じみた衝撃波がニィナを襲う。
「にぃなちゃんにしては頑張ったって思ったけど、でもここでもうひと押し! ラストスパートかけちゃうぞ☆」
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
瀝青の懲罰者(ディアボロ・マルボルジェ)たる骸魂『マールブランシュ』と合体し、一時的にオブリビオン化する。
それは合体することによってさらなる悪魔のパワーを得ることが出来るユーベルコードである。
さらに言えば!
そう!
「――姿が変わるッ!」
「なんかもっと際どくなってるー!?」
『レジェンドアスリーテス』と少女『アイン』が驚愕に目を見開く。
確かにニィナは小悪魔風の仮装に身を包んでいた。
けれど、骸魂と合体したニィナはさらに肌の露出面積が上がっているのである。変身シーンのごとく、謎の光がマラソンコースに満ちる。
ニィナの体が謎の発光を続け、リボンのように衣装が体に巻き付いていく。
キラキラと光って弾ければ、そこにあるのは小悪魔から悪魔にクラスチェンジしたかのようなニィナの姿が!
「悪魔と一緒に、踊ってみない?」
ここでキメ台詞とポーズである。
これがサービスというやつである。沿道の人々はニィナのサービスに釘付けであったし、さらにニィナのファンを増やすことだろう。
これで更に身体能力が強化され、『レジェンドアスリーテス』に迫ることができる。放たれる衝撃波がニィナのコスチュームの一部を切断する。
更に上る危ない肌面積!
いいぞ、『レジェンドアスリーテス』がんばれ! と謎の応援も飛び交うようになってしまう。
一体全体どっちを応援して良いのかわからなくなってしまう始末であったが、ニィナは笑う。
だってそうだ。このユーベルコードは確かに協力だ。
伝説のアスリートに肉薄することのできるほどの身体能力。終わった後、ニィナは精神力を消費しきって眠くなってしまうだろう。
けれど、構わないのだ。
「……うん! 今日は身も心も疲れ切るまで出し切って、気持ちよーく寝ちゃおう!」
だから、構わない。
全力の最後の一滴まで絞り出すようにニィナは足を踏み出す。踏み込んだ足がアスファルトを割るようにしながら一気に駆け出していく。
「まだ速度が上がる……でもね!」
『レジェンドアスリーテス』がニィナの走路をカバーするようにまた加速する。だが、ニィナは一瞬で計算していたのだ。
彼女の走路を塞ぐ走り、風、ルートの変更。
あらゆるものを計算に入れ、一気に走る。
看板を蹴ってニィナは三角跳びの要領で『レジェンドアスリーテス』の頭上を飛び越えて、彼女の前に躍り出る。
「にぃなちゃんファンがいたらゴールで待っててね、ベッドまで運ばせてあげるぞ☆」
なんて、そんな愛嬌をふりまく余裕さえニィナにはあった。
沿道からは絶叫の如き咆哮があがる。
言うまでもない。
アスリートアースで増えたにぃなちゃんファンのみんなである。我先にと駆け出すファンたち。
けれど、彼らはきっとゴール前に届くことはないだろう。
何故ならば、ニィナと『レジェンドアスリーテス』の疾走は彼らよりも速い。
「負けるものですか!」
「んーん、にぃなちゃんだって負けないよ☆ 今日はぐっすりお休みするって決めているんだ。なら、勝って終わりたいもんね☆」
二人のデッドヒートが続く。
肩ぶつけ合うような激しい疾走。二人の巻き起こす衝撃波は、凄まじい勢いで『仮装大マラソン大会』のハイライトを飾るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
【理緒さんと】
なるほど、『菜医愛流帝』教
それはそれでありかもしれませんね?
信者を増やすというの言葉がよく似合う……
そうなるとナイアルテさんが教祖様ですね(こくり
さて走りながらではネタにも限界があります
ここまで来たならレジェントアスリーテスをしっかりと捉えましょう
理緒さんのUCで加速したらレジェントアスリーテスを一気に……
ってなんでー?!?!
全周囲が敵なんですけど!!
理緒さん目を覚まして!?
危うく|フレンドファイア《ちゃぶ台返し》を喰らうところでした
ここで一気に決めます
【電光石火】でさらにスピード上乗せ&
一気に距離を詰めて抜き去りつつカタールで一閃!
一回とは言え追い抜かされた気分はどうですか?
菫宮・理緒
【サージェさんと】
めいっぱい|楽しみ《布教し》つつではあるけど、
負ける気もないからね。
ここからは、電脳コンビの忍べない追い上げでいくよー!
デバイスでサージェさんとわたしを自撮りしたら、
【フレーム・アドバンス】を使って、わたしたちを早送り。
スピードアップしてダークリーガーさんに追いつくよ。
早送り、胸の揺れも、早送り(5-7-5)
忍ぶとは……(哲学風
忍べるか、こんなもーん!(ちゃぶ台返し)
はっ。ついつい敵を見間違えるところだった。
長ランがなかったらあぶなかったね!
よし、気合い入れて、まくっていこう。
希ちゃん、16倍速までいっちゃってー!
あ、わたし対応できなくなるから、コースとかよろしくね!
『仮装大マラソン大会』の本分は楽しむことである。
だが、ダークリーガーはそれをしない。
圧倒的なスピード、スタミナ、仮装。それらを持ちながら、彼女は楽しまない。ただ勝利のためだけに邁進する。
過ちであるとは言えない。
競技である以上、順位がつく以上、優劣が生み出されるのは仕方のないことであったからだ。
「一位じゃなければ、意味がないのよ」
彼女はそう言うだろう。
誰よりも速いことを、誰よりも強いことを証明して見せなければ『レジェンドアスリーテス』は己の存在意義を見いだせない。
爽やかさえあるこのアスリートアースにおいてダークリーガーとなった彼女の心は生前のそれからかけ離れていたことだろう。
「めいっぱい|楽しみ《布教し》つつではあるけど、負ける気もないからね」
菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は黒い長ランをたなびかせるようにマラソンコースを走る。
ともに走るサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)も同じく長ランをはためかせている。
「なるほど、『菜医愛流帝』教。それはそれでありかもしれませんね?」
なしだよ。
「信者を増やすという言葉がよく似合う……そうなると教祖様ですね」
「いっぱい増やそうね! さ、ここからは電脳コンビの忍べない追い上げでいくよー!」
理緒がデバイスを構える。
瞳に輝くはユーベルコード。
彼女のユーベルコード、フレーム・アドバンスは対象の画像を取り込みトリミングして同期プログラムによって現実を侵食する電脳魔術である。
「はい、サージェさんいくよー! 3、2、1……」
「走りながらではネタにも限界があります。ですが! はい!」
ちーず。
今の子こういう時何て言うの。ちーず、ちーずでいいんですよね!?
ぱしゃりと理緒とサージェが自撮りで画像をコンピュータに取り込む。
それによって現実と同期されるのは速度。
「早送り、胸の揺れも、早送り」
ごーしちごー。
サージェの主張激しい胸の震源地を理緒は見ながら哲学する。忍とは一体。忍ぶとは、宇宙とは、真理とは……。
理緒の背後に銀河が見える。宇宙が見える。
それは宇宙の真理に触れそうなほどの哲学であった。
「この勢いで『レジェンドアスリーテス』を捉えることができますよ! 一気に……」
だが、サージェたちが追う『レジェンドアスリーテス』の走りから生み出されるソニックブームが彼女たちを襲う。
放たれる衝撃波はただ走るだけで生み出され、近づくものを尽く切り裂く。
それを電光石火(イカズチノゴトキスルドイザンゲキ)の勢いと共にカタールで切り払う。
このまま一気に、と彼女が足を踏み出そうとした瞬間、理緒が宇宙の真理から舞い戻る。
「忍べるか、こんなもーん!」
ちゃぶ台返しである。エアちゃぶ台返しである。
理緒は思った。
早送りしても揺れるもんは揺れるのである。褐色のたゆんたゆんが、ゆんゆん揺れ揺れしているのである。
人は自分にないものを求める。凸と凹があるように。かっちり噛み合うように。だからこそ、理緒はちゃぶ台返しをしたのだ。
「ってなんでー?!?!」
サージェからしてみれば、獅子身中の虫。
なんだかんだで信頼関係を結べていたと思っていたが、いきなりの理緒のちゃぶ台返しに驚愕しきりである。
「理緒さん目を覚まして!?」
危うくフレンドファイアである。
「はっ」
理緒は漸く我に返る。ついつち敵を間違えることろであった。長ランで見分けがつかなければ、危ないところであった。
「ごめんねー! でも、ここから気合入れてまくっていこう。希ちゃん、16倍速までいっちゃってー!」
「それ早すぎません!? 私、電光石火でさらに速度上がって――」
「あ、わたし対応できなくなるから、コースとかよろしくね!」
「まさかの全部おまかせ! ですが! 任されました!!」
サージェは走る。
電光石火は忍びの本領。忍び、目にも留まらぬ速度で仕事を終える。ならば、彼女の速度が理緒のユーベルコードによって16倍速に引き上げられているのだとしても、目で追えぬことなどないのである。
「――……フォームも何もあったものじゃないわね、それ」
「なにせ倍速ですから!」
肉薄する『レジェンドアスリーテス』。ここまでの速度を持ってしても互角。サージェは理緒を抱えたまま、吹き荒れる疾風をカタールで弾き飛ばす。
「デッドヒートは望むところ!」
「さらに上乗せ!」
サージェの瞳がユーベルコードに更に輝く。スピードを上乗せして、『レジェンドアスリーテス』を躱す。
理緒はもう、何がどうなっているのかわからない。
目の前で景色が線を引くように流れていくことしか自覚できない。けれど、わかったのだ。今まさに『レジェンドアスリーテス』をサージェと共に追い抜いた。
「一回とは言え追い抜かされた気分はどうですか?」
言うまでもない。
まだゴールは割っていないのならば。
「諦めるなんて選択肢はないよねー!」
理緒は『レジェンドアスリーテス』の言葉を追い抜く。きっと同じ気持ちのはずだ。残されたコースは僅か。
猟兵かダークリーガーか。
最後のデッドヒートが始まる――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リコ・エンブラエル
●SPD
ようやく追いつき始めたが、生憎勇ましいギアの|外装《フルアーマー》は初戦はハリボテに過ぎない
ミサイルやキャノンなど撃てたとしても、それで妨害行動を行えば競技精神に反することになるだろう
であれば、伝説的な偉業を成し遂げたアスリートのオブリビオンとして敬意を示し、正々堂々たる|戦い《レース》をここに宣言する
とは言え、ギアのローラーダッシュに迫る速さとギアの質量でさえ揺さぶられる疾風は流石と言った所だ
だが、ギアの脚部を降着モードの手前にまで下げ、『刹那の機転』によりスリップストリームに入ることで前走が作った空気の渦によって後続が引き寄せられる力を得てのオーバーテイクで一気に追い抜いてみせよう
猟兵とダークリーガー『レジェンドアスリーテス』とのデッドヒートは『仮装大マラソン大会』を大いに湧かせるものであった。
追い抜き、追い越し、また追いつく。
猟兵達が何度追い抜いても『レジェンドアスリーテス』はさらに迫ってくる。
それが伝説のアスリートであった頃の彼女の矜持であったのかもしれない。記憶から忘れ去られても、今尚残る記録がある。
だからこそ、アスリートたちは己の存在を懸けて戦うのだろう。競うのだろう。
「本当は――記録など残せなくても良いのよ。本当は、記憶に残りたかっただけ」
彼女の望みはそれであった。
けれど、ダークリーガーとして蘇ったのならば、その思いも願いもまた歪むだろう。だからこそ、彼女は『仮装大マラソン大会』に参加しながら楽しむことをしなかった。
それが猟兵と彼女との間にあった差異。
「ようやく追いつき始めたが――」
「それはハリボテなのでしょう」
「そのとおりだ」
リコ・エンブラエル(鉄騎乗りの水先案内人・f23815)はギアの勇ましい|外装《フルアーマー》がこれまでの走行でガタガタ言うのを聞く。
急ごしらえであったのも祟った。
けれど、それ以上にリコは思うのだ。これは『仮装大マラソン大会』である。
例え、ミサイルやキャノンをギアが撃てたとしても、それは妨害行動だ。
スポーツマンシップに則るのならば、それはこのアスリートアースに流れる競技精神に反することになるはずだ。
「だが、伝説的な偉業を成し遂げたアスリート……それに敬意を表する」
「それは勝った者だけがいえることよ。敗者が示すことができるのは敗北したという事実のみ!」
疾風の如く『レジェンドアスリーテス』の体を包み込む全てを切り裂く疾風。
それが衝撃波となってリコを襲う。
ギアの装甲が斬り裂かれ、弾け飛んでいく。
「そうか。だが、俺は宣言する。正々堂々たる|戦い《レース》を」
ローラーダッシュがアスファルトを斬りつける。
火花を散らせながら、疾風のごとく疾駆する『レジェンドアスリーテス』に肉薄する。
揺さぶられる。
ただ走っているだけなのに、彼女の疾走はこちらのギアを揺らすほどであった。ギアの質量さえものとものしない衝撃。
流石と言うしかない。
だが、とリコはギアの脚部を地面スレスレまでに下げ、体勢を低くする。
前傾姿勢と言っても良い。
リコの顔もまた低くなる。見据えるは『レジェンドアスリーテス』の背中。
「……これか!」
刹那の機転(モータル・コンバット)であった。『レジェンドアスリーテス』が疾風のように走るのならば、そこには風によって生み出された渦が生み出される。
いわゆるスリップストリーム。
風よけに使い、無風の中を走るリコのギアは風の抵抗を受けずに脚をためるようにしてぴったりと張り付く。
「私を壁に……でもねっ! そんな小手先など!」
さらに速度があがる。
空気に引っ張られるようにしてギアの体制が崩れてしまう。先頭を走るものは常に風にさらされる。
体力も消耗するだろう。
けれど、『レジェンドアスリーテス』は、その名のとおり伝説級のアスリートであった。これまでも何度もそうやって後続に張り付かれてきたのだ。
これが初めてということなどない。
だからこそ、彼女の脚部は更に人体の限界を超えていく。アスファルトを踏み割るほどに勢いで踏み出す。
「引っ張られる……!」
「いいえ、引きずっているのよ」
「だが……! 勝負は最後の刹那までわからぬものだ!」
無理矢理に風の力でリコのギアは体制を崩されている。
だが、リコは風の力に逆らうのではなく、背に帆を広げるように|外装《フルアーマー》の装甲を広げる。
追い風を目一杯受けるようにして開かれた装甲がひしゃげる。
けれど、それは刹那にリコの速度を『レジェンドアスリーテス』の速度に上乗せする。その刹那でよかったのだ。
リコのギアが『レジェンドアスリーテス』と並ぶ。
ギリギリの攻防であった。
これがリコと『レジェンドアスリーテス』との一騎打ちであったのならば、リコは敗北しただろう。
けれど、これまで猟兵との幾度のデッドヒートで『レジェンドアスリーテス』は消耗していた。
いや、もっと言えば気持ちの問題であった。
楽しもうという気持ちが欠けていたからこそ、その分リコ達猟兵は『レジェンドアスリーテス』を追い抜いたのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
国栖ヶ谷・鈴鹿
◎アドリブOKです
いよいよここからが本番だね。
仮装マラソンを大成功で終わらせるよ!
ユーベルコヲド、超高精度技能再現化装置起動!
衝撃波を発生させるほどの運動能力!
ぼくはジャストガードを最大化!
袖を凪いで受け流そう!
あとはダッシュ・勝者のカリスマ・パフォーマンスで、桜をダッシュとともにホログラムを舞い散らせ、カリスマで注目を集めて、水鳥の如く華麗に走り切ってみせるよ!
こんな風にスタアとして注目されてみるのも、応援されるのも楽しいことだね。
また走りに来たいな、今度もまた新しい演出を考えてね!
だって今日は最高のフェスティバル日和なんだもんね!
「最後の大勝負――本番だね。『仮装大マラソン大会』を大成功で終わらせるよ!」
国栖ヶ谷・鈴鹿(命短し恋せよ乙女・f23254)はダークリーガー『レジェンドアスリーテス』との最後のデッドヒートに挑む。
猟兵たちがこれまで紡いできたレース。
『仮装大マラソン大会』の本分は楽しむことにある。
順位はつく。得点だってつく。
そこに優劣ははっきりと生まれてしまう。けれど、人々の心には記録よりも記憶が残るのだ。今日という日の楽しさを。思い出を。
ならば、鈴鹿の言うところの大成功とは、ダークリーガーに勝利することではない。
「ユーベルコヲド、超高精度技能再現化装置(パーフヱクトフォースローダー)起動!」
大正メイドガアルが『レジェンドアスリーテス』に迫る。
彼女の速度はただ走るだけで衝撃波を生み出す。
疾風のように走る彼女のフォームは確かに美しかった。涙が出るほどに美しく流麗であった。
先頭をひた走る姿に多くのアスリートたちが羨望と同時に感動さえ覚えただろう。
最も美しいものには手さえ伸ばすことを躊躇われるように。
彼女の走りは確かに伝説的そのものであった。
「衝撃波を発生させるほどの運動能力!」
鈴鹿の大正メイド服の袖が風に揺れるように振るわれる。それは受け流す力。ジャストガード。
風を攻撃として受け止めるのではなく、風として受け流すことに彼女のユーベルコードは特化する。
さらに、鈴鹿は模倣する。
『レジェンドアスリーテス』のフォームを。けれど、フォームを真似たところで身体能力まで真似ることはできない。
だからこそのユーベルコヲド。
彼女の放つ輝きは4つ。一つは『レジェンドアスリーテス』の放つ衝撃波を受け流す力。
そして、一つはダッシュ能力。
残る二つは――!
「まだ勝敗は決していない。ならば、勝ってそれを証明してみせなさい!」
『レジェンドアスリーテス』が放つ勝者のカリスマは、先頭を走っているからこそである。彼女の言葉に鈴鹿はうなずく。
勝って発露しなければならないものがある。
膨れ上がるプレッシャーを『レジェンドアスリーテス』は感じただろう。桜色の風が己の背中から追いかけているようにも思えたのだ。
それは幻覚でなかった。
鈴鹿が一歩前に踏み出すたびに桜のホログラムが風にのって『レジェンドアスリーテス』を追い越していくのだ。
桜花嵐。
そう呼ぶにふさわしいパフォーマンス。人々の視線が先頭を走る『レジェンドアスリーテス』ではなく、追いすがる鈴鹿に集まる。
これがただのマラソンレースであったのならば。
鈴鹿は負けたはずだ。他の猟兵だって負けた。競り負け、追い越すことなどできなかった。けれど、猟兵たちはただ楽しむという一点において、『レジェンドアスリーテス』を追い越す。
「こんなふうにスタアとして注目されてみるのも、応援されるのも楽しいことだね」
「応援? アスリートは孤独な人種よ。他者の力によって押し上げられることなど――!」
「ううん、皆の声援がぼくの、ぼくらの背中を押してくれるんだよ」
その言葉と桜の花びらと共に鈴鹿は『レジェンドアスリーテス』に並ぶ。
これまで猟兵たちが何度もしてきたように、鈴鹿もまた並んだのだ。
目の前に迫るのはゴールライン。
「――……そうよね。そうだったのよ。私は、それを忘れていたのね」
その瞬間、『レジェンドアスリーテス』は顔を伏せた。
鈴鹿は天を仰いだ。
それが決定的な瞬間であったことだろう。空砲が鳴り響く。
「また走りたいな、今度もまた新しい演出を考えてね!」
鈴鹿が『レジェンドアスリーテス』を振り返ろうとする。だが、それを彼女は制する。
「勝者は前を向きなさい。喝采を浴びて、脚光の中に立ちなさい。それが勝者の役目。敗者は――」
だが、その言葉を待つこと無く鈴鹿は振り返っていうのだ。これは『仮装大マラソン大会』。勝者も敗者も同じく共に走ったことにこそ意味があるのだから。だから、鈴鹿は言う。
「今日は最高のフェスティバル日和なんだもん!」
その言葉に呆れるように、けれど……そうね、と『レジェンドアスリーテス』は微笑んで言うのだ。
彼女と観客たち、そして後からゴールするアスリートたちは拍手を送る。
レースを大いに盛り上げた猟兵たちに。伝説を打ち破った今日一番に楽しんだ者たちに。
その様子を『レジェンドアスリーテス』は見ながら光の中に消えていく。満足気に。ひどく満足気に微笑みながら――。
大成功
🔵🔵🔵