彩虹バッドトリップ
♪~
義体疾走らせ 虹のごとく
酩酊 酔態 早くて ヤバい
疾風 迅雷 届くよ 七輪
運ぶ輝き キノコの輝き
あゝ 迅雷運輸 迅雷運輸
●体にいい秋の味覚
ネオン輝く夜のストリートを一つ折れて、暗く汚れた裏通りを進んだ先、この辺りでは少しばかり名の知れたクラブの駐車場が、今日のパーティの会場だった。ハロウィンなんて似合いもしない街だけれど、無節操に、輝かしく、形ばかりの華やかさに照らされたそこは、立食パーティ……というかバーベキューの風情で、火を入れた焼き網がいくつも並んでいた。
「これが有名なサイバーキノコの原木か~、こんなとこで栽培してたとはねぇ」
傍にひっそりと建てられていた立ち入り禁止の『栽培室』が解放され、今日のために育てられた蛍光色のキノコが、色とりどりの輝きで人々を歓迎している。
サイケデリックな見た目のそれは、味の方も格別らしく、カクテルを片手に仮装した人々が舌鼓を打っていた。
「はぁ、この味、脳髄に響くぅ……」
「すっご~い、なんでこんなキラキラしてんの~?」
どこか茫洋とした声音に、虚空を見上げる焦点の合わない瞳。
網の上で美味しそうな音を立てているキノコは、蛍光色に輝きながら、空に虹色の煙を立ち上らせていた。
●とても安全なキノコ狩り
「この世界じゃあそういうパーティもよくあるらしいんだけどねえ」
先日の依頼――奴隷工場への潜入任務で猟兵の持ち帰った情報からすると、残念ながらこのパーティはメガコーポの陰謀によるものらしい。オブシダン・ソード(黒耀石の剣・f00250)がそう言って肩を竦める。
主催者が特別に用意したキノコの味を楽しんだ人々は、酩酊し、前後不覚に陥ったところを、乗り込んできたメガコーポの刺客に連れ去られてしまうのだ。そうしてさらわれた人々は、強制的に義体化改造を施され、奴隷工場や地下闘技場に売り渡される――何とも惨い話である。
「黙って見過ごすわけにはいかないでしょう? ということで、君達にはこのパーティに潜入して、皆を助けてあげてほしいんだ」
一見の客は警戒されるかもしれないが、今回はハロウィンパーティだ、仮装していけば問題なく紛れ込めるだろう。あとは他の客から浮かぬよう、目立たぬように過ごせば良い。
もちろん、ここで言う『目立たない』というのは静かに大人しくしているのとは違う。周囲の人々はキノコを食べ、その効能にどっぷりと浸かっているのだから。
「ここは、みんなと一緒にキノコを楽しむのが一番の偽装になるってことだよ」
振舞われている秋の味覚……サイバーキノコは、会場に併設された『栽培室』のサイバー原木に生えている。原木は大量に用意されており、キノコ自体も蛍光色で自然発光しているので見落とすことはないだろう。
「焼く時は石づきを落として、傘を下向きにして置くのが基本だよ。しばらくすると旨味の詰まった出し汁が、傘の中にしみ出してくるからね。そうするとだんだん虹色の煙が薄くなってくるから、その辺りが食べ頃かな」
七色に輝くサイバー醤油をちょっと垂らして食べるのが一番おすすめらしい。何の話だ?
とにかく、キノコは美味しいだけでなくほかにも効能がある。基本的には、酒に酔うようにふわふわと気持ちがよくなる程度なのだが、人によっては視界がチカチカしたり、突然泣きたくなったり、隣の人が好きになったり、存在しない彼女の幻覚が見えるようになったりするらしい。そのまま食べ続けていれば、人々はやがて倒れるように眠ってしまう。
「けれど、君達なら多分大丈夫だと思うんだよね」
何の根拠もない時の笑顔でオブシダンが言う。
「そうして現れたメガコーポの刺客を、人々が浚われる前に撃破してほしい」
現れるのはメガコーポ『迅雷運輸』の擁する頭脳戦車群だ。タイヤや空中移動用のジェットを駆使して襲い来る彼等は、人間を乗せて運ぶのにも向いているらしい。倒れている人を捕まえると、そのまま走り去ってしまうため、迎撃に当たるにしても注意が必要だろう。
「引っ繰り返すと身動きが取れなくなるとかいう弱点もあるみたいだよ。まあ、うまく立ち回って、気持ちよく解決しちゃおうね」
それじゃあ、楽しんで来て。そう言い添えて、オブシダンは一同を送り出した。
つじ
どうも、つじです。
今回の舞台はサイバーザナドゥ。メガコーポが何だか怪しいパーティを企画しているようですので、そちらを楽しみつつ、彼等の企みを阻止してください。
●とても体に良くて中毒性のないサイバーキノコ狩りパーティ
半地下の栽培ルームにはサイバー原木がたくさん並べてありますので、各自お好きなサイバーキノコを取ってきてください。表のパーティ会場で焼いて食べられます。見た目はサイケデリックなシイタケですが、食べると様々な感情が湧きだしたり不思議なことが起こったりします。がんばってください。
選択肢については気にしなくても問題ありません。パーティを楽しめれば大成功です。
●『迅速ハコベールくん』
メガコーポ『迅雷運輸』の用意した荷物運搬用の頭脳戦車達です。
猟兵以外のパーティ来場者が概ね眠ってしまった頃に現れ、人々を誘拐する為に行動を開始します。
●メガコーポ『迅雷運輸』
物流関係をメインにしているメガコーポです。誘拐と人身売買は得意分野だと思われます。
今回のシナリオは生贄パーツリクルート(https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=43211)からの流れになりますが、別に読まなくても問題ありません。お気軽にご参加ください。
第1章 日常
『あぶないハロウィンナイト』
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POW : 何も知らないパリピと積極的に会話し、さりげなく守る
SPD : パーティ会場をうろつき、怪しい場所に目星をつけておく
WIZ : 敵に気付かれないよう、密かに黒幕の情報を探る
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
烏護・ハル
……キノコ食べるだけでも命懸けね。
私は魔女の仮装。
後は、カボチャ頭被った式神さん一人を肩に乗せて、と。
ごめんねー、式神さん。窮屈かもしれないけど我慢してね。
さて、この……。
故郷でもこんなペカペカなキノコ見たことないよ。
こう、焼いて。お醤油。
うわぁ、これも光ってる。
お醤油かな、これ。
頂きまーす……味は、キノコね。たぶん。
……お醤油がアレに見えなくもない。
前に工場で計量しまくったお薬。
あ、これ幻覚だ。
おっかしいなぁ、目から汗が……。
式神さん、さりげなくで良いから、解毒の術式。お願いね……。
そろそろ眠り込んじゃうお客さんが出そうね。
隅っこまで連れてってあげよう。
お疲れですかー?こっちで休憩しましょ。
●フラッシュバック
ハロウィンを意識したのであろう色とりどりの飾りの中、一際目立っていたのは、他ならぬ秋の味覚、サイバーキノコそのものだった。サイバーの原木に群生し、てかてかと蛍光色に輝くキノコ達の前で、魔女の仮装をした烏護・ハル(妖狐の陰陽師・f03121)が眩し気に目を細めた。
「故郷でもこんなペカペカなキノコ見たことないよ……」
感心するような、呆れるような、複雑な溜息と共にそれを摘み取った彼女は、早速周りのパリピに混じってそれを焼き網に乗せた。
炙ることしばし、傘から溢れた出汁がじゅうじゅうと音を立て、香ばしい匂いが広がるのにつられて、肩に乗せたカボチャ頭――仮装した式神がそわそわし始める。とはいえ、カボチャ頭を外して実際の光景を目にすれば、式神さんもドン引きするのではないだろうか。
詮無いことを考えつつ、ハルは良い感じに焼けてきた蛍光イエローのキノコに醤油を垂らす。
「うわぁ……」
良い匂い、と続けたいところだが、垂らした醤油が七色に輝いていることにどうしても目が行ってしまう。これほんとにお醤油かな。でもこの匂いはお醤油だよね。というか、メガコーポに対抗するためとはいえ、ここまでする必要……ある? サイバー醤油の描くサイケデリックな模様のように、頭の中で様々な疑問が渦を巻く。
「頂きまーす」
しかしながら、案じていても始まらない、というか食べないと怪しまれる可能性もある。意を決した彼女は、良い感じに焼けて虹色の湯気を立てるそれを、ゆっくりと口に運んだ。
「味は……普通にキノコね。たぶん」
秋の味覚だのなんだのと謳うだけあって、順当に美味しいと感じられる。
だがそれにしても、と視線を落とした先は、三日月状に齧り取られたサイバーキノコの残り部分。傘の内側を流れるサイバー醤油の輝きが、記憶の奥底を刺激する。
「あ……これ、あの時のお薬に似てる……」
今回とはまた違うが、潜入任務と言う意味では共通点もあるだろうか。迅雷運輸の奴隷工場に潜入し、ひたすら計量しまくったあのクスリだ。碌な休憩もなく、果てしなく終わらないあの労働の時間を思い出して、ハルの表情が暗澹たるものに変わる。
「もう計量は……やだよぉ……」
あの日の感覚が蘇り、どんよりとした酔い方を始めた彼女だが、どうやら他のお客の中にも、似たような状況に陥っている者が居たらしい。
「ああ……嬢ちゃんも覚えがあるのかい。奇遇だなぁ……」
「え……?」
声に聞き覚えがあるように感じるが、気のせいだろうか。
もしかして、奴隷工場でお会いしませんでした? そう確かめようにも不思議と視界が滲んで、彼の顔がよく見えない。
「おっかしいなぁ、目から汗が……」
ごしごしと目から零れるそれを拭うと、世界そのものが歪みだす。あ、これ幻覚見てるな。どうにかそう自覚できた彼女は、式神さんをつついて解毒の術式を促した。
頭をぼんやりとさせるその成分が少しずつ中和されてきたのか、現実味を帯びてきた世界の中で、どうやら誰かと喋っていたのは幻聴ではなかったらしいとわかる。
「大丈夫? お疲れですかー」
まあその人は完全に突っ伏してしまっているのだが。
「さ、こっちで休憩しましょ」
眠りこけている彼を引きずって、彼女は会場の隅っこの方へと移動していった。
ほどなくここは戦場となる。その時に、巻き込まれなくても良いように。
大成功
🔵🔵🔵
カルマ・ヴィローシャナ
何だって、迅雷運輸がヤバイキノコで人間狩り!?
矢張りメガコーポ滅ぶべし……早速パーティ会場へ潜入よ!
ライブストリーマーらしくセレブ紛いの目立つ格好に
それでは実食! |アクジキXX《ブラックホール》フル稼働!
ガッツリ食べても致命傷にはならない――筈……
――過去、アミダインダストリーの施設に囚われて
無数の管に繋がれ拘束されたままの当時の姿が脳裏に浮かぶ
オブリビオンを××する為に試験用の|機械化義体《サイバーザナドゥ》に換装|させられ《・・・・》
虚無の中を生かされ続けたあの頃――
おっと危ない
私のセンチメンタリズム……いや
復讐の原点ね、これは
兎も角後は寝たふり💤
ヤバかったらドローンに起こしてもらう!
●記憶
眩いネオンの見下ろす場所で、七色の煙が辺りを満たす。ケミカルな色合いとキノコの効能による酔態、それらの彩るパーティ会場に、セレブ紛いの高級ドレスの女性が姿を現す。ライブスリーマーらしい人目を引く服装と所作で、カルマ・ヴィローシャナ(|波羅破螺都計《ヴォイドエクスプロージョン》・f36625)は疑われることなくその場に馴染んで見せた。
潜入はつつがなく成功、にこやかに声を掛けてくる人々の相手をしつつ、周囲の様子に目を配る。置かれた機材だけ見ればバーベキューのような風情だが、やっていることはドラッグパーティの方が近いだろう。酩酊し、クスリに溺れたように茫洋とした彼等の瞳を覗き込みつつ、彼女もまたそこに飛び込む覚悟を決める。
「ガッツリ食べても致命傷にはならない――筈……」
カルマの内にあるエネルギー変換装置――|アクジキXX《ブラックホール》を以てすれば、骸の海とて呑み込めるのだ。サイバーキノコ如きに負ける道理はない。
「いただきます……!」
程よく焼けてしんなりとした、蛍光緑に輝くキノコを、彼女は勢いよく口にした。
「動画映えは……うーん、あんまりしなさそうね」
別に今は配信していないので視聴者を気にする必要もないのだが。サイケデリックな模様に反し、その味はシンプルで堅実。もう一口、もう一口と周囲の人々が溺れていくのは、この味も一因となっているのだろう。とはいえやはりメインは薬効の方か。アクジキXXがフル稼働して無毒化に努めるものの、じわりと滲み出たそれが神経をくすぐるのを感じる。
過敏になった五感によるものか、周囲の人々の視線が絡みつくような錯覚を覚える。手を取り、足を取り、四肢を繋ぐそれはやがて、無数の管に拘束されたあの日の光景を呼び覚ます。|巨大企業群《メガコーポ》の一つ、アミダインダストリーに囚われ、試験用の義体に換装させられ、虚無の中を生かされ続けたあの頃。
「――っと、危ない危ない」
我に返ったカルマは、頭を振ってその記憶から離れる。忘れえぬそれに伴い、未だ色鮮やかな感情もまた、呼び起こされて腹の奥で叫びをあげる。
センチメンタリズム、いや、これは復讐の原点か。熱を持つそれを溜息で冷まして、彼女は体の力を抜いた。
「メガコーポ滅ぶべし……」
なんてね、と小さく口にして、他の寝入った客のように倒れてみせる。
アミダインダストリーであれ、迅雷運輸であれ、こんなパーティをいくつも起こし、人々を食い物にしようなどという企みは、この手で挫いてやるべきだろう。
改めて直視することになったその感情を抱いて、カルマは敵の到来を待ち受ける。
大成功
🔵🔵🔵
マリーア・ダンテス
「それは私向きですね。中身を人工内臓に換装済みですから。飲食物に入った麻薬も毒も、胃で無害化されます」
にっこり笑う
「ええ、これはシスターのl仮装です」
にこやかに普段の戦闘スタイル(体表が8割以上露出する戦闘用修道服背中に背負う棺桶型武器BOX)で参加
「確かに食べ応えがあるキノコですね」
サイバーキノコを笊に山盛りに採取
石突きを落として傘を下向きにしたら傘部分に各種酒やタレを塗り虹色の煙が薄くなるまで放置
食べ頃になったと思ったらどんどん食べる
酒も各種ジョッキでガンガン飲む
キノコも酒も胃で無害化され全く酔わないので軽く酔った振りをしつつ周囲観察
トイレに行く間に隠しカメラ位置等の見当をつけておく
●効かない体質
ひゅう、と誰か吹いたのへたくそな口笛が、パーティ会場に現れたマリーア・ダンテス(サイボーグの処刑人・f37225)を迎える。体表の八割を露出した修道服に似たその服装は、この世界でする仮装の中でもかなりぶっ飛んだ部類に入るだろう。
「ええ、これはシスターの仮装です」
まあ、普段の戦闘服と何も変わっていないのだが。
にやついた顔の受付に対し、にこやかにそう告げて会場へと潜り込んだ彼女は、早速例のサイバー原木の栽培室に向かう。そして色とりどりで目に優しくないキノコ達を、笊に目いっぱい採取し、虹色の山を築いていった。
「確かに食べ応えがあるキノコですね」
えっそんなに? みたいな顔で目を丸くする他の客にもにっこりと笑みを返して、焼き網の前へ。
特にこだわりも気負いもないので、焼き方はお手本通り。石突きを落として傘を下向きに、赤青黄色と蛍光色それを焼き網の上に並べて、酒やタレを塗って食べ頃を待つ。それぞれ風合いの違う虹色の煙がいくつも混ざり、気流に沿ってサイケデリックな模様が描かれるのを目で追う。それらがやがて薄まり、色あせる頃を狙って、マリーアはそれらを網から上げた。
食事のペースは酒も交えてかなりの速さで、焼けたと思ったそばからどんどん口の中へと放り込む。
飲み込んだ先にあるのは、換装された人口の内臓だ。強靭なそれには、アルコールや各種麻薬に対して、即座に無毒化する機能もついている。
つまりは酒をいくら飲もうが、薬効のあるキノコを食べようが、味を楽しんだ後は人口内蔵を酷使しただけ。いつも通り、冷静な思考を保ったまま、彼女はせめてほろ酔いの演技だけをしてその場を乗り切りにかかった。積み上げられたジョッキの影から、さりげなく監視カメラの位置を確認して、怪しまれにくそうな場所へと移動し、酔いつぶれていく人々を観察する。
この世界ならば内臓を義体化している者も居そうなものだが、酔えないのにこんなパーティに参加する物好きはいないということだろうか、他の客はやがて座り込んだり突っ伏したり、空を見上げたまま目を閉じたり、次々と意識を失っていく。残っているのは猟兵ばかり、と周囲の様子を探りつつ、彼女はいずれ来るであろうメガコーポの刺客を、警戒して待ち続けていた。
大成功
🔵🔵🔵
シキ・ジルモント
仮装は白衣の“スーパーハッカ―”…らしい
よくわからないからと適当に選びすぎたか、まぁ怪しまれなければ構わない
この後に備えた武器の類も白衣の下に隠しておく
しかし本当に食べても大丈夫なんだろうな…
サイケデリックなキノコに引きつつ、オブシダンの言葉を信じて一口
確かに酒の酔いに似たふらつきはあるが、この程度なら問題はないと食べ進めて
…なんだか無性に楽しくなってくる
周囲の人々の様子や妙なキノコの色すら酷く愉快だ
いつのまにか漏れていた低い笑い声に気付き、少し驚いて口元を押さえる
異様な情動がおかしいと一応自覚はある
しかしこれは偽装だ仕方がないとキノコをもう一つ
大丈夫だこれは仕事だ問題はない…たぶん、おそらく
●虹色の情動
七色に煙るパーティの会場で、たなびく白衣は逆に色鮮やかに映る。この街の医者がその手のものを来ていることはあまりないため、シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)の仮装はむしろネットに精通する者――あえてあれな言い方をすれば『スーパーハッカー』の風情である。本人の中に「適当に選び過ぎたか」みたいな懸念はあるが、それっぽいバイザーで目元も隠せるその仮装は、潜入用にも丁度良い。さらに言うなら丈の長い白衣は、武装をこっそりと持ち込むのにも向いていた。
この後のことも含め、準備万端の様子で潜入を果たしたシキは、渦巻くパリピの空気にさらに溶け込むべく例のキノコと向かい合った。
「本当に食べても大丈夫なんだろうな……?」
じゅうじゅうと焼き網の上で美味しそうな音色を奏でるそれは、シキの目の前でショッキングピンクの湯気を立てている。
人狼の持つ鋭敏な五感と歴戦の勘が揃って「やめとけ」と言っている気がするが、これはグリモア猟兵が大丈夫と請け負った案件だ。やらないわけにもいかないだろう、とシキは慎重にそれを口にした。
「……なるほど」
パーティの主役にしてしまう程度に味は良い。そして口の中から広がる酒の酔いに似た酩酊感は、パーリーなピーポーには丁度良いだろう。
一瞬思考の中に妙な単語が混ざったような気がするが、この程度なら問題はない……そう判断して、シキは蛍光色のキノコを食べ進めていった。
「おにーさん、たのしそーねえ」
「そういうあんたは大丈夫か。顔色が蛍光緑になっているが」
パーティに来ている客の一人だろう、こちらを覗き込んできたゾンビじみた仮装の彼女にそう答える。あはは、と楽し気に笑ったそのゾンビは、輪郭までとろけるような瞳で「だいじょうぶ」と請け負った。
「おにーさんはねえ、紫色に光ってるよお」
普通に考えてそんなことが起こるはずもない。どうやら相当『酔っている』客だと見て取り、シキは追い払うように手を振った。
爆音で鳴り響く音楽の合間で、誰かがくつくつと喉を鳴らして笑っている。一息ついたところで空を仰ぐと、視界の端、ネオンの灯の下で虹色が渦を巻いて見える。キノコの煙の混ざったものだろうか。
「……?」
しかし思い返すと、先程の彼女の言動は少々気がかりだった。楽しそう、と言ったか?
はっとして口元を押さえると、確かに口の端が上がっている。さっきから聞こえている低い笑い声は、まさか自分が――?
腹の底で湧く笑いの衝動を自覚する。これはなんだ? いつから異様な情動がおかしい?
ぐるっと回る視界の中で、キノコが食べ頃に焼けたな、と感じて箸を伸ばす。
「ふふ――」
大丈夫これは仕事だ問題ない。グリモア猟兵もこのキノコに依存性はないと言っていた。いっていたよな? そんなきがする。たぶん、おそらく。
滲む思考と視界。良い感じに出来上がってきたシキの前で、ゾンビみたいな彼女が壁伝いに座り込み、眠りに落ちる。
すると、ビビッドなパープルとイエローで塗られた、頭脳戦車達が飛び込んできた。『酔っ払った』シキの目には、その塗装はかなりサイケデリックに見えたかもしれない。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『迅速ハコベールくん』
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POW : 強制お荷物お預かり機能
【モノアイから放つトラクタービーム】が命中した物品ひとつを、自身の装備する【装甲内部の格納スペース】の中に転移させる(入らないものは転移できない)。
SPD : 超スーパーお急ぎ便機能
【最適な脚部に換装し、衝突上等走行ルーチン】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : 安心安全お届け機能
全身を【脚部を引っ込めた対衝撃防御形態】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●ニンゲンデリバリーサービス
やがてキノコを焼く者も居なくなり、たなびく煙も色褪せていく。いつの間にやら姿を消した主催者側の人員に代わって、このパーティ会場に現れたのはカラフルな頭脳戦車達だった。
「はっぴーはろいーん」
「はー、今日の仕事ちょろいわー」
「この調子で毎日ぱーちーしててほしいなー」
サイバーキノコで夢心地、無抵抗と化した人々を運び出すのは、彼等にしてみれば容易いことなのだろう。びよびよと鳴る妙な光線を浴びせれば、あっという間に格納部に人間を搭載してしまえる。
安心安全早くて安い。一台につき一人捕まえたら、あとは『改造工場』までドライブするだけだ。楽勝の仕事に完全に油断した様子の彼等は、無警戒で現場に踏み入った。
「何かまだ寝てない奴おらへん?」
「マ?」
烏護・ハル
……聞き覚えのある声だった。
あの時の奴隷先輩……?
まさか、ね。
たまたま似てただけ……よね?
あいつらの弱点は知ってる。
ひっくり返せば良いんだ。
……よし、『材料』なら沢山転がってるじゃない。
UCで辺り一面の器物、残骸を『弾丸』や『刃』の如く硬質化。
脚に当たる部位へ呪符を誘導する様に術式を調整。
式神さん達を複数召喚。
UCの発動中、魔力を充填し続けてもらうよ。
みんな、お願いね。
ついでに、バランスを崩した奴から呪殺弾ブチ込んで!
なぁに?
別にイラついてないもん。
トラウマの腹いせとか、まさかそんな。
あはは……。
……トラウマ抉ってくれたわねぇ!
まずはアンタらよ、亀さんモドキ!
やるよ、式神さん!
片っ端からぁ‼︎
●怒ってないけど?
|巨大企業群《メガコーポ》の刺客の到着に、式神達による解毒はどうにか間に合ったか、ハルはキノコの見せる茫洋とした光景を振り払う。人々が倒れ喧噪は収まり、パーティ用にかけられた音楽ばかりが響く――耳の働きも正常なようだが。
「さっきの声は……あの時の奴隷先輩……?」
いやそんなまさか、奴隷労働から脱したと思ったら同じ企業の罠に嵌ってるなんて、不運の極みのような出来事があっていいはずがない。たまたま似ていたか幻覚か、その辺りであってほしい。改めて確認するのは恐ろしいが、幸いその暇はなさそうだ。
「わー、ホントに起きとるやん。どーする?」
「さっさと一人積んで逃げるか~」
ハルの姿を発見した頭脳戦車達が顔を突き合わせてそんな話をしている。まとめてかかってくる気はないようだが、周囲の人々を優先的に狙われるのは、それはそれで厄介だ。
「させないからね……!」
奴隷先輩混じってるかもしれないし。いやそうでなくとも見逃すわけにはいかない。彼等の動きを阻止するべく、ハルの手から呪符が展開されていく。
「アー、何か嫌な予感するなー」
「とりあえず飛んどく?」
脚部換装、飛行形態に切り替えて空へ逃れようとするハコベールくん達をも逃さず、呪符の嵐は一帯を取り囲んだ。
いつもより気合の入ったハルの様子に、カボチャを被っていた式神が心配そうな目を向けてくるが、問題はない。別にイラついてなんかいませんからね。
もしかしたらキノコの影響も疑われているかもしれないが、それもきっと大丈夫。そう目配せをして、ハルは『濤式』を発動した。
「……よくもトラウマ抉ってくれたわねぇ! まずはアンタらよ、亀さんモドキ!」
怒ってません? とにかく、カメによく似たデザインの彼等とは一度戦ったことがあり、弱点の方も把握できている。引っ繰り返してやればいいのだと、ハルの狙い通りに術式は作用する。パーリーなピーポーが撒き散らした食器やら空き瓶、先程までキノコを乗せていた焼き網などが、呪符に引き寄せられるようにして宙に飛んだ。舞い踊るそれらは頭脳戦車の装甲に弾かれ、割れてひしゃげる――はずなのだが、ハルの術で硬度を増したそれらは高い硬度を誇る弾丸となって、敵の身体を打ち据える。
「あっ、これあかんやつ」
狙いは当然その脚部だ。空中で一方向の脚部を連打され、頭脳戦車達は体勢を崩した。
「アァーーーッ!!!!?」
そうなると脚部の向きがよろしくない。ジェット噴射で体勢を整えようとしたハコベールくん達は、その勢いで地面向かってっ突っ込んでいった。
「やるよ、式神さん! 片っ端からぁ!!」
身動きの取れなくなった彼等に向かって、ハルの号令が響く。彼女の命を受けた式神達は、一斉に呪殺弾を放ち、敵を仕留めていった。
大成功
🔵🔵🔵
カルマ・ヴィローシャナ
色々思い出させてくれたわね……実際ユルサン!
まずは遮導を展開してパリピの皆さんの退路を確保
空中から|制圧射撃《フォトンブラスター》でハコベール君の進路や介入を防ぎつつ
パフォーマンスで存在感を示して避難を促すよ!
皆ー! ここにいると|迅雷運輸《暗黒メガコーポ》につかまって死ぬまで|地下闘技場《アングラ》で|強制労働《オツトメ》だにゃん!
だからパーティーはここでお開き。いいね?
つまり見せしめに一つ壊そう
制圧射撃で防御形態のハコベール君へ|終末を齎す《ユーベルコード》
ほぼ無敵だが動けない。じゃあ奈落へ落として上げる!
瞬間に巨大な落とし穴をその場に作り
這い上がってきた所へ|功夫《カラテ》! イヤーッ!
●|奈落行き《ボッシュート》
迫り来る頭脳戦車達の前に、カルマは光学迷彩機能搭載のドローンを展開、一時的にその歩みを遅らせる。
過去の記憶を再認識させられた彼女としては、周りの人々が同じように|巨大企業群《メガコーポ》の被害に遭うのを放っておくことは出来ない。可能な限り安全を確保しておきたいところだが。
「皆ー! ここにいると|迅雷運輸《暗黒メガコーポ》につかまって死ぬまで|地下闘技場《アングラ》で|強制労働《オツトメ》だにゃん!」
だからパーティーはここでお開き。いいね? そう呼び掛けては見るが、サイバーキノコをたらふくキメて失神した彼等の瞳は、今もまだ茫洋と揺れている。パフォーマンスに優れたカルマの姿を見ても、幻覚と夢心地の世界からまだ帰ってこれていないようで。
「はあ……お空で虹が笑って咲いて……」
「わ、私の義体が勝手に踊り出す……アアア……」
「紫と黄色のカメが襲ってくるよお……」
「うーん、最後のは現実に起きてるんだけどね」
この調子では状況を把握するまでまだ時間がかかるだろう。時間稼ぎの必要性を察し、カルマは迫り来るハコベールくん達へとブラスターでの制圧射撃を仕掛ける。
「なんやそんなもん」「効かへんよー」
しかしその程度の武装など、頑丈に作られた装甲の前では無意味である。両足を引っ込めて、防御態勢になった頭脳戦車は、熱線を揺らぐことなくやり過ごす。だが身動き取れないその姿勢こそが、カルマの狙いだった。
発動せしは『|終末を刻む秒針《ヴォイド・カタストロフ・シークエンス》』、足元の地面が組み替えられ、突如深い落とし穴が生成される。
「ウワーーッ!?」
「兄さーーーーん!!」
足止め代わりに見せしめを一つ。動けないその隙を突いて、カルマは先頭の一体を奈落へと落として見せた。とはいえ、脚部次第では飛べる彼等に、落とし穴の効果は限定的に過ぎない。
「あんなーオネーチャン、やって良いことと悪いことが――」
「イヤーッ!!」「グワーッ!?」
当然ながら、浮上中は無敵状態が解除されている。功夫の構えで待ち受けていたカルマのカラテが炸裂し、落とし穴から出てきたハコベールくんは、装甲を砕かれて吹っ飛んでいった。
「弟よ、後は任せた……」
「兄さん……!」
機能停止する頭脳戦車を看取って、怒りと悲しみに濡れた電子音声が響く。復讐に燃える下っ端が、エンジンを唸らせたそこで。
「次はあなたの番ね!」
「ウワーーーーーーッ!?」
奈落への落とし穴がもう一つ開いた。
大成功
🔵🔵🔵
ケビ・ピオシュ
やあ、ごきげんよう
お仕事の邪魔をさせてもらうよ
背より伸びる巨大な掌型の武器を叩きつけて攻撃
私を捕らえたって人身売買の役には立たないだろうし
きのこでご機嫌になったりしないから
君達は何にせよ骨折り損のくたびれ儲けだね
掌を広げれば転送されないかな
されたとしたって中で暴れてやろう
ともかく
君たちはひっくり返すと困るのだろう
床をばーんと叩いて
そう、無理だね
出来れば格好良かったのだけれどね
エーイ!
掌で普通にひっくり返すよ
ウウム、少し野蛮だったかい
こうみえて私は年嵩でね
あまり激しい運動は得意ではないのさ
掌で床や壁を叩いて回避や移動
足で歩く速度は遅い
帽子が飛ばないように手で抑えて
モニタの髭を撫でるのが癖
●かたやぶり
乗り込んできた迅雷運輸の刺客と、それを迎え撃つ猟兵達の戦闘でてんやわんやになったパーティ会場、虹色の煙が今もうっすら漂うそこへ、ケビ・ピオシュ(テレビウムのUDCメカニック・f00041)が訪れた。
「やあ、ごきげんよう。お仕事の邪魔をさせてもらうよ」
「え……」「そんな、ひどない……?」
仕事の手、というか足を止めた頭脳戦車達は思わず顔を見合わせ、ひそひそと相談を始めたようだが。
「まあ、こちらもそれが仕事だからねえ」
「そっかー、困るなー」「じゃあとりあえず回収しとこか」
結論はなんか速やかに出た。
びよびよびよ、と謎のリング状の光線が放たれると、小さなテレビウムの体はあっという間にハコベールくんの格納スペースに転送されてしまう。荷物保護のためか割とクッションの利いたそこで、ケビは「ふうむ」とモニタ上の髭を撫でる。
「私を捕らえたって、人身売買の役には立たないと思うのだけどね……」
そんなつぶやきと同時に、彼の背中からクランケヴァッフェ……巨大な掌が広がり始めた。
カメを模したと思しきこの頭脳戦車は、外装こそ強靭に作られているようだが、内側から押し出されることについては想定されていなかったらしい。ケビの『掌』はぐいぐいとそれを押し広げ、左右に割くようにして、ついにそれをこじ開けた。
「うわっ、グロっ」「えぐいことしよるわー」
「君たちが話を聞かないから……」
掌を支えに、帽子を押さえながら身体を下ろしたケビは、やれやれとひとつ溜息を吐く。
「私に手を出しても、骨折り損のくたびれ儲けになるだけだよ」
そう言い聞かせるようにしながらも、彼の『両手』は翼のように大きく広げられている。まあどちらにせよ、君たちは仕事を果たせないことになるのだけどね。
広げられた両手が、おもむろに地面を叩く。二つの掌は地へとめりこみ、風と共に轟音が辺りに響いた。
響いたけれども。
「……ふむ」
「な、なに?」
「いや、これで君たちをまとめてひっくり返せたら格好良いと思ったのだけれどね」
できなかったらしい。両者の間に一時の沈黙が降りる。
「エーイ!」
「ウワーッ!?」
問題ないなら体当たりで轢いちゃおっかな、くらいのノリで発進した敵機を、ケビの掌がちゃぶ台返しの要領で吹き飛ばす。少し野蛮だったか、とそんな心配が脳裏を過るが。まあ。
「……こうみえて私は年嵩でね、あまり激しい運動は得意ではないのさ」
片っ端から普通に引っ繰り返していったハコベールくん達を前に、ケビはもう一度髭を撫でると、次なる敵へと向かって歩き出した。
「……」
トコトコと数歩進んだところで、全く敵の動きについていけないことを悟ると、足の代わりに掌の五指が地面を掴む。
そのまま思い切り身体を引き寄せて、自分自身をぶん投げるような挙動で、ケビは今度こそ次の相手めがけて飛んでいった。
大成功
🔵🔵🔵
シキ・ジルモント
くくっ、愉快な頭脳戦車だな
虹色に発光して、何の仮装だ?(幻覚)
ゾンビの仮装の彼女が狙われるなら連れ去られないよう抱えて退避
眠っているだけなら大丈夫だ顔色が緑色でも問題無い
視界がまわるが頭は冴えて体も軽い
ふふふ…菓子の代わりに弾丸でもくれてやろう
ユーベルコード発動、白衣に隠した武装で応戦
増大した反射速度で敵の速度に対抗
エンチャントアタッチメントを拳銃に装着し、突進する戦車へ射撃を見舞う
狙うのは敵の前肢と進路上の地面
氷の魔力を纏う弾丸で、凍結による行動妨害を試みる
交戦しつつ抑えきれない笑いが漏れて
テンションが上がるついでに真の姿が暴発(月光に似た淡い光を纏う。犬歯が牙のように変化、瞳は夜の獣のように輝く)
凍結で動きが鈍った戦車達の横っ腹へ、片っ端から蹴撃を叩き込む
凍って踏ん張りが利かなければ転がす事くらいは出来そうだ
戦車は転倒からの復帰が困難、ひっくり返せばこちらのもの
転がった戦車すら面白く、高笑いと共に追撃の引き金を引いては次の敵へ
…正気に戻れば羞恥で自己嫌悪に陥る事など、今は考えも及ばず
●蹴散らす
「あかんやんこれ」「もう帰ろか?」
猟兵達の迎撃によって数を減らしていく自陣の様子に、残ったハコベールくん達が投げやりな会話を交わしている。とはいえ、それで仕事を放棄するわけにもいかないのが下っ端の辛いところだ。
そんな彼等の前に立ち塞がった白衣のスーパーハッカー、もといシキは、低く喉を鳴らして笑う。
「愉快な頭脳戦車だな。虹色に発光して、何の仮装だ?」
「え?」
仮装してるように見えるだろうか、と頭脳戦車達が互いの顔を見合わせる。会社のイメージカラーの紫と黄色に塗装されたボディは、派手ではあるが虹色発光機能までは付いていない。どうやら昏倒まではいかないものの、キノコで視界がおかしなことになっているようだと彼等は悟る。
「は、はっぴーはろいーん」
ならもうちょっと誤魔化してたら、キノコが回って寝てくれるんじゃないかなこの人。そんな計算を頭の中で回して、適当なことを言い始めた彼等だったが、シキの視界と頭脳の回り方はその斜め上を行っていた。
ハッピーハロウィン、にこやかに応じた彼の手が白衣の下に伸ばされると、銀色の大口径拳銃が姿を現す。
「ふふふ……菓子の代わりに弾丸でもくれてやろう」
「あかーん!」「ダメな酔い方しとる!!」
散開! 一斉に四方へと走り出した頭脳戦車達は、すぐさまつんのめるようにして動きを止められる。アタッチメントによって付与された氷の魔力を込めた弾丸が、その足元へと撃ち込まれたのだ。とはいえ彼等の数は多い、逃れた者達は各々の方向に走り出すが、その中でも欲をかいた者――倒れた市民へと走っていた者を、シキは見逃さなかった。
素早い射撃で目前の地面を凍らされ、スリップしたハコベールくんが、「あーれー」みたいな悲鳴を上げながら転がっていった。
「やめておけ、そっちにはゾンビが居るからな」
「ゾンビが!?」
「そう、緑色のゾンビが」
自分で言った言葉に思わず笑みを零しながら、氷で足を縫い留められた者達へと踏み出す。袖振り合うも何とやらだ、先程会ったゾンビメイクの彼女を守るような位置取りを取った彼は、背後で眠る人々を一瞥する。
……ゾンビの仮装で合っているよな? 改めて聞いてはいなかったが、今は緑の顔色の中に色鮮やかなピンクが混ざっているように見えなくもない。実際のところはどうなのか、まあ眠っているだけなら顔色がどうでも問題はないだろう。たぶん、きっと。
「隙あり!」
「残念、遅いな」
その間に走り出そうとした一体を迎撃、氷の塊で躓かせた上で、蹴り飛ばす。反対向きに引っくり返ったその個体は、しばらくじたばたしていたが、「あー」みたいな声と共に諦めた。
「なるほどな……?」
良い玩具を見つけた、とでも言うように、シキの笑みが深まる。テンションが上がりすぎたか、9割キノコのせいだと思われるが、口の端に覗く犬歯が牙のように形を変えて、その身は冴えた月のような光を纏う。勢い余って真の姿を晒した彼の瞳が、闇夜から覗く獣のそれのように輝き、頭脳戦車達を見下ろした。
「イヤーッ!!」
「おにーさん仮装気合入りすぎやない!!?」
視線の圧力のレベルが上がって、ハコベールくん達は悲鳴を上げて、氷の拘束を逃れようと試みる。エンジンを唸らせ、タイヤを軋ませ、どうにかそれを引き剥がした者も居たが。
「逃がさんぞ」
既に側面に回っていたシキは先程と同じ要領で、その横っ腹を蹴り上げていく。あちこちを凍らされ、踏ん張りの効かない地形でその一撃は致命的。バランスを失い、転がるその様を気に入ったのか、これまでの抑えた笑みから声を上げ始めたシキは、固まった者達も含め、手あたり次第に敵を行動不能に追い込んでいった。
きゃー、みたいな悲鳴を上げて、ハコベールくん達が次々に転がり、成す術もなく氷の上を滑っていく。慣性のままにくるくる回り続ける者、全てを諦めたようにぐったりしている者、愉快気な高笑いを響かせながら、シキは倒した彼等に等しくとどめの銃撃を加えていった。
――後程、助けた市民の一人が「狼男の仮装でめっちゃはしゃいでる人がいた」という証言を残すことになるのだが、まあ。彼にはその時に頭を抱えてもらうことにしよう。
●Happy Halloween
猟兵達の手によって、迅速ハコベールくん達は悉く撃退された。サイバーキノコを楽しんだ末に寝落ちていた人々も、それぞれに目覚め、何が起きたかいまいち掴めないまま、家路に着くことだろう。
人々の平和と、パーティへの投資が不意になった迅雷運輸への経済的打撃、その両方を掴み取り、猟兵達もまた帰途に就いた。
ネオンの向こうの薄曇りの空が徐々に明るくなって、虹色の夜が明ける。
――それではあとは、よきハロウィンを。
大成功
🔵🔵🔵