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魔女の|香草茶《ハーブティー》と秘蜜のレシピ

#サクラミラージュ #お祭り2022 #ハロウィン

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●二代目魔女の独白
 ――あら、いらっしゃい。お客さんかしら、珍しいわね。
 ふふ。ええ、そうよ。あまり知られていないけれど、此処はカフェーなの。|香草茶《ハーブティー》を取り扱う、ちょっと珍しいカフェーね。
 それにしてもまあ、よく此処まで辿り着けたわね。大変だったでしょう?
 大通りから数えて三番目、背の高い建物の間に隠れる様にして――人一人がやっと通れるくらいの大きさの小道を見つけないといけないんですもの。
 クロの案内があれば、もっと簡単に辿り着けるのだけど。彼、とても気まぐれでやんちゃだから。すぐに何処かに行っちゃうのよね。

 折角辿り着いたんだもの。ゆっくりしていって頂戴ね。
 ね、貴方はどんな料理やお茶が好き? 悩み事や不安はあるの?
 少しでも心内を蝕む闇があるのなら、是非聞かせて頂戴。
 うちの|香草茶《ハーブティー》を前にしたら、悩み事の大半なんてあっという間に吹き飛んじゃうわ。
 料理やお菓子も取り扱っているから、リラックスしたらのんびり過ごしていっても良いのよ。
 ラベンダーのシフォンケーキに、ローズマリーやミントを添えた果物のコンポート、オレガノのリゾット辺りは他のカフェーでもメニューに載っているかしら?
 でもでも、うちのお勧めはそれだけじゃないの。
 お客様の悩み事や不安を聞いてね。それから、悩みや不安に合わせて、その人の為だけに淹れた|香草茶《ハーブティー》でしょ、蒲公英珈琲に、|香草《ハーブ》とお酒や紅茶を混ぜた、香草酒や香草紅茶に。
 あら、一番人気のお茶を忘れていたわ。青から紫。秘密を一滴加えると、鮮やかな夜明け空へ。夜明けを告げる不思議な香草茶も。

 そうそう! 今日はハロウィンだから、一日限りの特別なメニューも扱っているの。
 名付けて「気紛れ魔女のハロウィン料理」って言うのよ。
 ええ。お菓子や料理を飲食すれば、オマケで不思議な効果がついてくるわ!
 動物の尻尾や耳が生えたり、髪色が変わったり。後は、小さくなったり大きくなったり?
 安心して、数時間も経てばすっかり元に戻るから。

 あら、隣の雑貨屋に並べてある商品が気になるの? 自由に見ても構わないわよ。
 お手製の雑貨やジョークグッズなんかも取り扱っているの。殆ど私の趣味の様なものだけど。
 今日は折角のハロウィンの日だもの。ちょっとくらい「悪戯」したって、神様も許してくれるに違いないわ。
 本物そっくりな血糊に、即席火の玉に。幽霊の姿が見える眼鏡に、未来の自分が見えるって噂のラムプでしょ。夜になると勝手に灯る蝋燭に。後はほら、持ち主以外の姿が映らない手鏡もあるわよ。
 幽霊さんのお仲間に混ざりたいのなら、こちらの影だけが消えるマフィンがオススメね。後は、猫耳が生える飴や、声が高くなる飲み物もあるわ。
 でもでも、悪用はくれぐれも禁止よ?
 「完全で不完全な魔女の魔法薬」はどうか、用途用量を守って頂戴ね。約束を守らない悪い子は、髪の毛が七色に輝いたり、高確率で家具の角に小指をぶつけてしまったりする日々が何日も続くことになってしまうから。

●秘蜜のカフェーへの招待状
「青から紫、ピンク色へと色を変えるハーブティーには――ブルーマロウや、バタフライピーって言う名前のハーブが使われているみたいね。そうやって色が変わることから、『夜明けのハーブティー』とか、そういう名前で呼ばれてもいるみたいよ」
 パラ、パラと。グリモアベースに木霊するのは、小さな妖精が本のページを捲る微かな音の響きだった。
 昨年は古城ホテルのパンフレットを。そして今年は、『帝都穴場のカフェー特集』と記されたカラフルな本を。手にした品は違えど、イベント好きな妖精は今年もハロウィンに纏わるイベントが記された情報媒体をその手にしっかり握りしめている。
「ねえ、ハーブティーに興味はあるかしら?」
 キリの良いところまで読み終えたのだろう。ハーモニア・ミルクティー(太陽に向かって・f12114)は手にした本をパタンと閉じると、グリモアベースに集った猟兵達を前に改めて向き直った。
「ええ、そうよ。そうなの。今日は、サクラミラージュの|香草茶《ハーブティー》カフェーで開かれる、ハロウィンパーティーのご案内に来たの!」
 にこやかに笑いかけた妖精が本を広げて見せる先には、白と木の色合いが温かな――北欧風の小洒落たカフェーの外見と内観がページの目立つところにドドンと掲載されていた。
 天井の高い所には小さなステンドグラスが設けられ。広々とした吹き抜けのカフェーは、柔らかな白と木目のコントラストが優しい印象を与えてくれる。
 カフェー周辺に広がる大きな庭は、ハーブ畑も兼ねており、カフェーで扱うハーブの大半は此処で育てて収穫していると云う話だ。
 ハーブ畑以外にも、大きな庭には見所があるらしい。少しの乱れも無く手入れされた秋の花が乱れ咲く花壇の数々に、幾重にも重なった薔薇彩るガーデンアーチ。そして、それらを一望できる、カフェーのテラス席。
 女学生を中心に、如何にも若者ウケが良さそうな外見をしてるのだが――。
「|愛実《めぐみ》さんっていう女性がね、少し前にカフェーの先代店主だったお祖母様の後を継がれて、二代目店主になられたのだけど……。彼女、とっても宣伝が下手なのよ」
 ヒソリ、と。ハーモニアが声を潜める。
 若き二代目店主の宣伝技術は……それはもう、目も当てられない程に壊滅的で。
 祖母の代では常に満員御礼であったカフェーも、そのせいで徐々に客足が遠退いて――今やすっかり、閑古鳥が鳴いているのだと云う。
「この特集ページも、お祖母様を知る雑誌編集者の方が、愛実さんにどうにか『助言』して、漸くほんの少し注目を集めるくらいになったっていう話なのよ」
 そんな訳で、彼女が店主となり迎える初めてのハロウィン。
 一からパーティーを企画して。料理やメニュー、雑貨屋の品揃えや庭の手入れにも力を入れて。
 そうやって、お客さんを待っているのにも関わらず――ちっとも見向きされずに、広い店内で店主一人と看板猫一匹、寂しく放置されている始末。
 若き二代店主は、見向きもされない現状にそろそろ拗ね始める頃合いだろう。
「皆を誘ったのは、愛実さんのカフェーを一緒に盛り上げましょう! 今なら貸切よ! っていう考えもあるのだけど……。
 何よりこのままじゃあ、このカフェーが影朧に襲撃されてしまうからなのよ」
 そう。「仮装した子供の影朧」が群れを成して現れ、愛実さんが用意したお菓子を根こそぎ強奪して去っていく未来が予知されたから。
 それを止めて欲しいと、ハーモニアは告げる。
 カフェーを襲撃するのはごく力の弱い影朧達で、今はまだ人々に直接的な危害を加えてはいないが……万が一もあり得る。
 そうなる前に、どうか彼らを転生の道へ。
 追いかけっこや隠れん坊。悪戯や、鬼ごっこに。カフェーにやってきた彼らと思う存分遊んだのなら、きっと満足してくれるだろうから。
「警戒してちゃ影朧の子共達も逃げてしまうから、仮装と楽しむことも忘れずに、ね。
 じゃあ、早速行きましょうか? どうか皆が、不思議でおかしなハロウィンを、存分に楽しめます様に!」
 心癒す香草茶と、お洒落な料理やお菓子に、不思議な魔法薬。それから、小さな襲撃者達。
 賑やかなハロウィン・パーティーは、もう間もなく始まるだろうから――。


夜行薫

 ハッピーハロウィン!
 夜行薫です。
 今回の舞台はサクラミラージュ。
 カフェーでの、小さいながらもとびきりドタバタとしたハロウィン・パーティーへのご招待です。

●受付/進行について。
 受付期間はタグとMSページでお知らせ。全章を通して断章追加致します。
 のんびり進行予定。人数によっては再送をお願いする場合がございます。

●第1章
 お昼のカフェー&雑貨屋です。
 子供の影朧達が来るまで、自由にお楽しみください。
 仮装も忘れずに!

●できること
 【1】カフェーを楽しむ。
 ハーブティーやハーブが使われた料理・スイーツを楽めます。
 通常のメニューの他、髪の毛の色が変わったり、動物の尻尾や耳が生えたり、声が変になったり、子供に戻ってしまったり、反対に大人になったり等といったランダムでちょっとした外見変化を伴う効果がある「気紛れ魔女のハロウィン料理」もあります。お菓子も悪戯も楽しみたい方に。
 ※変化の内容はご自由に指定して下さい。
 ※料理やハーブティー、変化内容のお任せも可能です。

 【2】雑貨屋「クロノス・くろのす」
 カフェに併設されたアンティーク・ショップでのお買い物ができます。売り物は、雑貨やインテリア、各種ジョークグッズ等。
 影が消えるマフィンに、身体の一部分だけ半透明になれる薬や、猫耳が生える飴等。効果は数時間~長くても半日程ですが、ハロウィン仕様の魔法薬(?)も売ってます。
 他にも、探せば色々な効果の魔法薬があることでしょう。
 悪用厳禁。用途用量を守ってお楽しみください。

●第2章
 ド派手に登場した影朧達が、カフェーのお菓子を奪って逃げ出します。
 追いかけっこを楽しむようにカフェーの店内や庭を無邪気に逃げ回る彼らを、捕まえてください。
 ※料理の効果を利用したり、雑貨屋のハロウィン仕様魔法薬、ジョークグッズ等の使用も可。変化した身体に戸惑いながら。影朧達や仲間達に悪戯したり、驚かしたり等しつつ追いかけても大丈夫です。楽しく行きましょう!
 ※影朧は猟兵に捕まると、満足したように幻朧桜の花びらに身を任せて消えていきます。

●カフェーの愉快な仲間達
「|愛実《めぐみ》」
 カフェーの先代店主であった祖母の後を継いだばかり。自称・二代目魔女です。
 明るく朗らかな女性。

「クロ」
 年若いやんちゃボーイの黒猫。
 特技は盗み食いとイタズラ、忍び足。
 雑貨屋の片隅に毛布を集め、自分の巣兼縄張りとしています。
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第1章 日常 『カフェーで一休み』

POW   :    ご飯を頂戴

SPD   :    飲み物を頂戴

WIZ   :    スイーツを頂戴

イラスト:静谷

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●二代目魔女のハロウィン・ティーパーティー
「あら、いらっしゃい! お客さんかしら? そうよね、そうよね!? 遂に来てくれたわ!」
 ハロウィンらしく飾り付けられた店内も、今は無人で。閑古鳥が鳴くだけの店内を見て、デロンとカウンター席に突っ伏して不貞腐れていた人影が、人の気配にガバリと勢い良く立ち上がった。
 満面の笑みで猟兵達へと挨拶を送り、意気揚々と店内へ案内してくれるのは――二代目店主である、|愛実《めぐみ》その人だ。
 愛実の足元では、看板猫であるクロが飼い主の変わり身の早さに呆れた様に「にゃあ」と呟いている。
 そうして店主に案内されたカフェー店内は、光と温もりで満ちていた。

 優しい印象を与える木の床に、映えるのは穏やかな白壁。天井付近に設けられた小さなステンドグラスからは秋の柔らかな陽光が差し込んでいて、万華鏡の様にくるりくるりとその身に宿す|色彩《いろ》を変化させていく。
 ソファーやイスに乗ったクッションはどれもふかふかで、大きな木のテーブルには繊細なレヱスのテーブルクロスが敷かれていた。
 ふわふわは無いけれど、その代わりに。カフェー外のテラス席からは大きな庭の景色が一望できる。
 
 メニューを開けば、飛び込んでくるのは食欲を誘う料理の数々。
 このカフェー名物の|香草茶《ハーブティー》は、不眠やほてり、花粉症や疲労といった項目別にお勧めの|香草茶《ハーブティー》として調べられる様になっていて。
 勿論、効能以外にも――味や見た目、香りで選んだって良いだろう。実際、一番人気の「夜明けのハーブティー」は、殆ど見た目で選ばれていると云うのだから。
 |香草茶《ハーブティー》以外に、ローズやハイビスカスをブレンドした紅茶に、ラベンダーを加えた白ワインにマートルの実のリキュールといった、各種香草酒や香草紅茶も。
 それから、カフェーである以上避けて語れないのが甘いお菓子の数々。
 透き通った赤色が美しいハイビスカスのゼリー、ローズマリーとベリーを添えたフォンダンショコラに、ラベンダー・クリームのシフォンケーキや、ジンジャークッキー。ピンク色が美しいルバームのジャムやスミレにオレンジといった花やハーブ、果実の砂糖漬けは、紅茶やシフォンケーキ、クッキー、パンケーキと一緒に。
 |香草《ハーブ》は、料理にだって使われている。ナスタチウムやゼラニウムの花が散ったサラダに、ソレルの葉が加わった魚料理。チャービルのキッシュやオムレツに、サフランのパエリア、セイボリーのスープや肉料理だって。
 いつものメニューも良いけれど、魔女の小さな悪戯がオマケでついてくる、ハロウィンの日限定の「気紛れ魔女のハロウィン料理」も目を向けて。
 耳や尻尾、翼が生えたり、髪が派手な色に染まったり。数センチだけ浮く様になってしまったり。どんな効果が出てしまうか。それは、お茶や料理を楽しんでからのお楽しみ。
 
●雑貨屋「クロノス・くろのす」
 カフェーに隣接しているアンティーク調の雑貨屋には、カフェーとは変わって不可思議な光景が広がっていた。
 摩訶不思議で幻想的なお菓子や商品が所狭しと並べられているその様は、魔女の実験室を連想させる内装だ。
 血糊に付け耳、つけ牙といったハロウィン定番の仮装グッズは勿論のこと。
 本物そっくりな頭蓋骨の|貯古齢糖《チョコレート》に、光る鉱石を模した砂糖菓子の瓶詰。
 『白雪姫』に出てくる毒林檎の様に真っ赤な林檎飴、飛び回って逃げる蝙蝠の|貯古齢糖《チョコレート》といった妖しげなお菓子に。
 歌う骸骨のミニチュア模型に、夜になると勝手に火が灯る蝋燭。時々喋るかもしれない魔女の帽子に、持ち主以外が開くと噛みついてくる古書。何やら怪しい曰く付きの品々だって。
 中でもハロウィンの日であるからか、一際力を入れられているスペースがあった。「完全で不完全な魔女の魔法薬」と。その魔法薬を加えて作られた、マフィンやクッキー、飴といった「おかしなお菓子」の棚だ。
 「完全で不完全な魔女の魔法薬」は、「気紛れ魔女のハロウィン料理」にも加えられているのだと云う。
 翼、動物の耳や尻尾が生えたり、身長が伸びたり縮んだり。髪色や目の色が変わったり、影が無くなってしまったり。鏡に映らなくなったり、身体の一部が透明や半透明になってしまったり。或いは、語尾に「わん」や「にゃん」がつくようになってしまったり。
 看板猫のクロがあまりにも盗み食いを繰り返した為、店主が試行錯誤を重ねて動物も摂取可能にした魔法薬とお菓子。効果自体は、長くても半日で消えてしまう上に、悪用しようとしたら即座に「ただの水」や「ただのお菓子」に戻って、悪用しようとした悪い子は「ちょっと不幸な出来事」に見舞われてしまうけれど。
 「完全で不完全な魔女の魔法薬」や「おかしなお菓子」の効果は、数えきれない程多岐に渡る。
 魔法薬をそのまま楽しんでも、ひと手間加わったお菓子の方を買っても。購入した雑貨や魔法薬、お菓子を広げるスペースも設けられているから、存分に楽しむことが出来るだろう。

「こら、クロ! あなた、また盗み食いしたでしょ?」
 ペロペロペロと。ひょっとしたら、新米店主は顔に付いたクリーム以上に舐められているのかもしれない。
 雑貨屋の片隅。大小様々な毛布がとぐろを巻いている「巣」の中心にて。気ままに丸くなっている、黒猫の姿があった。
 怒り気味な飼い主の声にも全く耳を貸さず、くわっと大きな欠伸を一つ披露してみせる看板猫・クロと言えば、非常に自由気ままなもので。
 顔の端についていたクリームをぺろりと舐め取れば盗み食いの証拠隠滅は即座に完了するけれども、髭の端にちょこんと引っ付いた粉砂糖や、「おかしなお菓子」のせいで二つ、三つと別れてしまった尻尾ばかりは誤魔化せない。
 それに、毛布の合間から盗み食いを働いた確固たる証拠の、お菓子の包装紙の姿がチラリと覗いていて――あ、後ろ足で隠した。
 そんなクロの巣の傍らには、二代目魔女手製の立札が立てられている。曰く――「食い物を捧げよ。我を撫で崇めるのだ」と。

 面白おかしく、それから不思議なカフェーで。影朧の子供達が襲撃してくるまで、思い思いに過ごそうか。
 そうそう。ハロウィンの日だから、仮装も忘れずに。
灰神楽・綾
【不死蝶】◆
【1】カフェ
黒い狼男の仮装

うーん、どのメニューも気になる…
でも今日限定と来ればこれを頼むっきゃないよね
「気紛れ魔女のハロウィン料理」を注文

料理のお洒落な見た目とその味に感嘆の声を漏らす
こんなに美味しいのにお店は閑古鳥なんて勿体ないよねぇ
猟兵達の口コミでもっとお客さんが来るようになればいいんだけど

梓とそんな雑談をしながら食べていたら
…あれー? 梓、なんか大きくなった?
※7歳くらいの子供の姿に変化

わぁ、服まで小さくなってるよ、すごーい
心なしか思考も若干子供化

あっ、梓ってばワンコの耳が4つ付いてるーおもしろーい!
ねぇねぇ、触らせて触らせて
梓の身体によじ登って犬耳を引っ張ろうとする


乱獅子・梓
【不死蝶】◆
【1】カフェ
白い狼男の仮装

限定ものに心惹かれるのは人の性だな
俺も綾と同じものを注文
不思議な効果とやらが気になるが…
まぁそんなに変なことは起きないだろう(フラグ

おぉ、確かにこれは美味い
今日だけの限定メニューにしておくのは惜しいな
料理の質が良いのは第一条件だが、それだけでは
客が集まるとは限らないのが商売の難しいところだよな…

んん!? いやいや、お前が小さくなってるぞ!
突然子供化した綾に混乱
魔女の不思議な効果、恐るべし…!

ワンコの耳が4つ…?
仮装用の耳の傍に本物の犬耳が生えてきてる!?
試しに触ってみたらリアルなもふもふだししっかり痛覚まである
コラ!引っ張るんじゃありません!




「うーん、どのメニューも気になる……」
 ジンジャーとクミンでピリリと辛く爽やかな風味の鶏肉料理も気になるけれど、お洒落に盛り付けられた、写真映えする|香草《ハーブ》を使ったお菓子各種も捨てがたい。
 狼の付け耳を片手でクルクルと触りながら。連れ立ってカフェーを訪れた二人の狼男のうちの黒い方――灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は、たっぷり悩んで漸く注文するメニューを決めた様だった。
 漸く決まったか、と。綾とは対照的に真っ白な狼男こと乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は、呆れ交じりに溜息を一つ。
 待たせて当然というか、「梓なら待ってくれるよね?」というか。綾の自分に対する、無言の甘えや信頼と呼べるかもしれない感情に悪い気はしなくとも――メニューを考えるのにすっかり夢中で、存在を半ば忘れ去られるのは困る。
 けれども、注文を選ぶ綾があまりにも楽しそうであるから。
 梓もつい、口元まで出かかっていた小言を飲み込んでしまう辺り――二人のスタンスは、ハロウィンの日であっても通常運転の様だ。
「でも今日限定と来ればこれを頼むっきゃないよね」
「限定ものに心惹かれるのは人の性だな」
 迷いに迷って、結局綾の指は最初に心惹かれたハロウィン限定メニューの「気紛れ魔女のハロウィン料理」の元へ。
 もはや、そうすることが当たり前という様に、さり気ない流れで梓も綾と同じ料理を頼みつつ、先程まで綾が独占していたメニュー表へと視線を落とす。
「不思議な効果とやらが気になるが……まぁそんなに変なことは起きないだろう」
 メニュー表の端っこに、吹き出しにされて書かれている注意書き。不思議な効果とやらは気になるが、変なことにはならないだろう、と。
 根拠も出自も不明な自信を抱きつつ、ふっと明るい笑みを浮かべた梓の横顔に――狼の着ぐるみから顔を覗かせている仔ドラゴンの焔と零が、心なしかジト目に見えなくもない視線を向けていた。
「わあ、ハロウィンチックで飾り付けもお洒落だね」
「食べるのが勿体無いくらいだな」
 そして、料理を注文して待つこと少しの間。
 運ばれてきたハロウィン料理に、綾の唇から感嘆の息が漏れた。
 クローブパウダーと明るいオレンジ色のフルーツソースが掛かったハムのオーブン焼きに、蝙蝠の形をしたフォンダンショコラ。サーモンやレバーペーストが豪華なオープンサンドには、タイムを添えて。
 料理を味わう前に、記念撮影を。
 早速スマホを取り出して連写し始めた綾の後を追う様にして、梓もスマホを取り出し――インカメにした途端、こそーっとオープンサンドに前足を伸ばす焔の姿が画面越しに目に入り、梓は焔を静かに摘まみ上げた。
 ついでに、「仕方ないな、焔は」と呆れた様に振舞いつつ、すまし顔でしれっとハムの一切れを手繰り寄せ様としていた零の方も捕獲していく。
 食べ始めるのは、記念撮影と「いただきます」を終えてからだ。
「おぉ、確かにこれは美味い。今日だけの限定メニューにしておくのは惜しいな」
「こんなに美味しいのにお店は閑古鳥なんて勿体ないよねぇ。猟兵達の口コミでもっとお客さんが来るようになればいいんだけど」
「料理の質が良いのは第一条件だが、それだけでは、客が集まるとは限らないのが商売の難しいところだよな……」
 クローブのピリッとした刺激に、フルーツソースが甘く絡みついていく。
 一口大に切り分けたハムを上機嫌で口へと運びながら、「惜しい」と感想を紡ぐ綾。
 綾の感想に梓も肯定を返しながら、ぐるりと店内を見渡した。
 来店しているのは同業者である猟兵達ばかりで、一般客の姿は目に入らない。料理の質と客の多さが等式で直結しないところが、商売の難しいところなのだろう。
「オープンサンド、思っていたよりも大きいんだね。……あれー? 梓、なんか大きくなった?」
「いや、オープンサンドの大きさは変わらないだろう……んん!? いやいや、お前が小さくなってるぞ!」
 一口ではぐりと食べようとしたところ、何故だか食べきれた先程とは違って、一口で口に収まりきらなくなっているオープンサンド。
 大きさが変わったのかと純粋な疑問を抱く綾に、ふと料理から顔を上げた梓が素っ頓狂な声を上げた。
 先程見た時はいつもの綾であったはず。それが、何故少し目を離した隙にこうなっているのか。
 突然子供化した綾に混乱しつつ、ゴシゴシと目を擦ってみるが――七歳くらいの子供綾は消えてくれない。
「俺が小さくなったんだねー。わぁ、服まで小さくなってるよ、すごーい」
「魔女の不思議な効果、恐るべし……!」
 不思議な効果のお陰か、服まで一緒に小さくなってしまっている。
 キラキラとした無邪気な表情で服の袖をヒラヒラさせては、「すごーい」とはしゃぎ回る綾に、梓は内心で頭を抱えた。
 心なしか綾の思考も若干子供化している様に感じられるのは、悲しいかな、恐らく梓の気のせいではない。
「あっ、梓ってばワンコの耳が4つ付いてるーおもしろーい!」
「ワンコの耳が4つ……? 仮装用の耳の傍に本物の犬耳が生えてきてる!?」
 綾が興味津々と指差す先は、紛うこと無き己の頭頂部。
 綾の指差す方に恐る恐る指を這わせてみれば――伝わってきたのは、作り物の付け耳の硬い感触では無くて、もにゅっとした生温かい感触で……。
 グラスを鏡代わりに自分の姿を見つめてみれば、頭に四つの狼耳が生えている、何ともシュールな姿をした自分自身と目が合った。
 試しに少し引っ張ってみたら、微妙に痛い。しっかり痛覚まで備わっている様だ。
「ねぇねぇ、触らせて触らせて」
「コラ! 引っ張るんじゃありません!」
 シュッパッといつもよりも幾分か俊敏な動きで、ぴょんと梓の背中に乗っかって。
 触ったらどうなるんだろう? どんな感触がするんだろう? そんな好奇心に突き動かされるまま、瞳を煌めかせた綾は梓の頭へとググっと手を伸ばすと、むにーっと狼耳を引っ張った。
 恐らく、力加減もまともに出来ない今の綾に狼耳を触らせ続けたらロクなことにならない。何とか背中に引っ付いた悪戯好きな狼子供を引っぺがそうと引っ張る梓。
 ただでさえ今の段階でそれなりに痛いというのに、それ以上の痛みは御免だ。
 しかし、天才的なまでの吸着力を発揮する綾は――ビクともしない。
「ちょっとだけ! もうちょっとだけで良いから触らせてー」
「だから! 引っ張るんじゃありません!」
 ぎゃいぎゃいと賑やかにじゃれ合う二人を横目に眺めながら、料理効果でピコピコと主人とお揃いの狼耳を生やした焔と零は、はむはむとハムをまた一切れ口に運んでいく。
 二人と二匹の日常は、ハロウィンの日でも賑やかだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月居・蒼汰
◆ラナさん(f06644)と
【1】

魔女のカフェ
ラナさんはきっと好きだろうなと思ったので
心弾む様子に俺まで何だか嬉しくて

夜明けの香草茶に
頼むのは気紛れ魔女のハロウィン料理
デザートにシフォンケーキを

食べてみても特に何かが変わった自覚はないけれど
(髪が桜色に)
ラナさん、どうですか…?
…!
ラナさんに生えたうさ耳に思わず(はわ…!?)なんて
顔をしてしまったかもしれないけれど
隠すまでの一部始終から目を離さずに
とても可愛いです!!(力強く)
今だけのお揃いは少し擽ったいけど嬉しくて
無意識に耳をぴこぴこ揺らしつつ
折角なので一枚どうですか?なんてスマホを出して
今日だけの姿を、今日の記念に
ええ、二人だけの秘密、です


ラナ・スピラエア
◆蒼汰さん(f16730)

1

魔女のカフェだなんてワクワクしますね!
憧れの人に近付けたことが嬉しくて
いつも以上に興奮してしまう

どれも綺麗で美味しそうですね
そっか、薬を食べ物に混ぜちゃうのも有りですね
夜明けを告げる香草茶と特別メニューを

ドキドキしながら口にすれば
頭から伸びる兎の耳(形状お任せ)
あれ?
不思議そうに瞳を瞬いた後
恥ずかしくて耳を隠すようにするけど全然隠れていない

可愛いの声に顔を上げれば
目の前の彼は桜色
…お揃いですね
髪と、耳
つい笑顔が零れてしまう

長い耳があるって不思議ですね
前から気になっていた耳を動かして

折角の写真は残したいけど
あの
誰にも見せないで下さいね?
恥ずかしさが拭えなくてつい我儘を



● 
「魔女のカフェだなんてワクワクしますね!」
 魔法の勉強を趣味に、日課のお茶の時間は欠かせない、何よりも大切なもの。多岐に渡る魔法に関するものの中でも、特に魔法薬作りに一際強く心惹かれていて。
 大好きを凝縮して箱いっぱいに詰め込んだかの様なこのカフェーは、ラナ・スピラエア(苺色の魔法・f06644)にとって、天国の様な場所なのかもしれない。
 淡い桜色の髪をふわふわと弾ませながら。店内を眺めては心奪われた様にほうっと短く吐息を漏らすラナの横顔を、月居・蒼汰(泡沫メランコリー・f16730)は優しい眼差しで見守っていた。
(「魔女のカフェ、ラナさんはきっと好きだろうなと思ったので」)
 予想通り、心弾ませて嬉しそうにニコニコ微笑むラナの姿を一番近くで眺めているだけで、蒼汰の笑みも自然と深まってしまう。
 大切な人が嬉しそうにしていると、それだけで自分も嬉しくなってくる。
 いつも以上に興奮した様子で――常よりも少し早口で、饒舌に話しかけながら――魔女や魔法への憧れを語るラナに、蒼汰は穏やかに微笑みかけたまま緩く相槌を打った。
「どちらも綺麗な夜明け色になりますが、どうやら違いがあるみたいですよ」
「これ、全部ブルーマロウなんですね? 別のお茶かと思いました……」
「上手に淹れるには、少しコツが必要らしいです」
 二人で一つのメニュー表を覗き込み、どんな料理を頼もうか一緒に悩んでいたところ、目に飛び込んできたのは、「夜明けの香草茶」について解説も混ぜた紹介文。
 ブルーマロウとバタフライピー。どちらも鮮やかな青に染まる点は同じだけれども、バタフライピーが安定して綺麗な青色になるのに対して、ブルーマロウはお湯の温度や蒸らす時間で面白いくらいに色が変わってしまうんだとか。
 透き通った水色、紺色に深い藍色。それから、薄い黄色や枯草の様な茶色まで……。とても同じブルーマロウとは思えない。
 豆知識として、ブルーマロウの色の変化について写真と共に纏められた頁を穴が開くくらい見つめるラナに、蒼汰が小さく苦笑を漏らした。
「二度と同じ色に出逢えないって思うとロマンチックですけど、うーん」
「ラナさん、きっとそこは練習の積み重ねですよ」
 幾つかのポイント通りに淹れれば綺麗な青は出るだろうけれども、きっと細かな色の濃淡までは調整できない。
 頬に手を当て、悩ましげに紹介文に視線を落とすラナ。日課のお茶の延長で手を伸ばすには、少し難易度が高い様な。
 ラナの悩み声を背景音楽にして聴きながら、蒼汰はゆるりと瞳を伏せた。
 思い返すのは、二人で共に過ごしてきたこれまでのこと。
 奇跡と偶然の連続で生まれた青色に、二人で見てきた幾つもの海や空の色を重ねてみれば――彼女の手によって生まれるだろうどの青も、等しく愛おしく思えるだろうから。
「どれも綺麗で美味しそうですね。そっか、薬を食べ物に混ぜちゃうのも有りですね」
 香草が使われた料理はどれもお洒落で、隣の雑貨屋で取り扱っているという魔法薬も気になって。どちらも気になるのなら、両方合わせた料理を。
 二人が頼んだのは夜明けを告げる香草茶と、本日限定の特別メニューだった。お揃いのメニューに加えて、蒼汰はデザートにシフォンケーキも。
(「食べてみても特に何かが変わった自覚はないけれど」)
 仄かな甘みの中に隠れている、スッキリとした味わいを楽しみながら。
 添えられていたフェンネルと一緒に蒸された白身魚を味わっていた蒼汰だったけれども、「気紛れ魔女のハロウィン料理」を食べても、特に何かが変わったような感覚は感じられなくて。
 少し首を傾げて南瓜を模した形のシナモンロールを千切りながら、向かいに座るラナへと問いかけた――ところで、思わず蒼汰の声が裏返る。
「ラナさん、どうですか……? ……!」
「蒼汰さん? どうかしましたか? 」
 どんな風になるのでしょうか、と。ドキドキしながら――それでも、思いきった様にローズマリーとクミンのポテトサラダを一口、口に運んだラナ。
 その瞬間、ラナの頭からふわふわとした兎耳がみるみるうちに現れたものだから。
 決定的瞬間を見てしまった蒼汰の心の中は、「はわ……!?」と大慌てだ。
 途中までは元気に上に伸びているのに、真ん中辺りからは自分の耳と同じ様にぺったりと緩く垂れている桜色の兎耳。
「あれ?」
 頬を桜色に染めた蒼汰とは対照的に、ラナ自身は何が起こったのかまだ理解していなくて。不思議そうに瞳を瞬かせている様子が、本物のウサギみたいで可愛らしい。
 瞳を何度か瞬かせて、それから漸く、自分の視界の端でぴょこぴょこしている兎耳に気付いたみたいだった。
 恥ずかしさから両手で耳を隠そうとするけれど――長くてふわふわな耳は、全然隠れてくれない。
「ラナさん、とても可愛いです!!」
 変化に気付かなくてきょとんとしている表情も、兎耳に気付いて顔が苺みたいに真っ赤に染まる過程も、耳を隠そうとして隠しきれなくてアタフタしている状況も。そのどれもが、とびきり可愛らしくて。
 その一部始終から目を離さずに見ていた蒼汰は、「とても可愛いです!!」と力強く言いきった。
 大切な人からの「可愛い」という言葉に、ラナはピタリと一瞬だけ動きを止める。
 それから、恐る恐ると言った様子で伏せていた顔を上げながら、ぎゅっと握り締めていた兎耳をするすると手放して。
「……お揃いですね。髪と、耳」
 顔を上げたラナの目に飛び込んできたのは、頬と髪を桜色に染めた蒼汰の姿。
 予想外の「お揃い」に恥ずかしさも忘れて、つい笑顔が零れてしまう。
「長い耳があるって不思議ですね」
 長い兎耳があるのは、どんな感覚なのだろう、と。彼のロップイヤーを見る度に、気になっていた密かな疑問。
 長い耳があるのはとても不思議な感覚だけど、お揃いなのは嬉しいから。ラナは兎耳をふわふわ揺らしながら、そっと笑みを深めた。
「折角なので一枚どうですか?」
 髪と耳。大切な人の一部を掬い取ったかの様な今だけのお揃いは、少し擽ったいけれど嬉しくて。
 無意識に垂れた耳をぴこぴこ左右に揺らしながら、ふわりと微笑みかけた蒼汰はスマホを取り出した。
「あの、誰にも見せないで下さいね?」
「ええ、二人だけの秘密、です」
 写真は撮りたいけれど、拭いきれない恥ずかしさは心の中に居座ったまま。
 恥ずかしさから告げられたラナの我儘も、蒼汰はにこやかに笑いかけて受け止める。
 二人で寄り添って、今この瞬間を確かに切り取ったのなら。
 今日だけの姿を、今日の記念に。そっとスマホに閉じ込めて。
 お揃いの髪と耳のことは――二人だけの、甘い秘密に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

国栖ヶ谷・鈴鹿
【澪鈴】

アリス衣装でご来店。
【1】ハーブティーを楽しんで。(子供の姿に戻って)

つゆりんはお誘いありがとうね、こういうお店があるのは初めて知ったんだ。
でも、帝都通のぼくでも知らないとなると宣伝は必須!
ハイカラに、ブームの仕掛け人として腕を奮ってみよう!
愛実さん写真って撮っても平気?
大丈夫なら、ちょっと不思議な体験で、この事や、クロとお揃いの猫耳をつけて、写真を撮って広めちゃおう。

つゆりんも、このお店のいいところいっぱい見つけてて、これは良いプロモーションになりそう!
カフェーの美味しいお菓子にお星様⭐️をつけて、雑貨店の方にもチェック❣️のマークをつけてかわいい宣伝写真にしとこうか!


栗花落・澪
【澪鈴/1】
2020南瓜:アリス衣装着用

ローズティーとフォンダンショコラに…
気紛れ魔女さんのお料理も、お願いしようかな
折角のハロウィン、楽しまないと
※幼児化。髪は膝丈くらいまでで低身長
食べ物がおっきく見えるー!

人数は多い方が楽しいからね
宣伝は僕もお手伝いするよ
【指定UC】で呼び出したこの世界の人達にも
飲食や景色を楽しんでほしいな
お店に迷惑かけないでしっかり並んでねー
それで、家族や友人、色んな人に
このお店のこと広めてほしいな
写真写りにも協力してね

隠れ家的な立地も面白いし…
若い子はジンクスとか大好きだから
気になる子と一緒に訪れる事が出来たら仲が深まるらしいよ、なんて
ちょっとだけ色も付けてみたりして




「つゆりんはお誘いありがとうね、こういうお店があるのは初めて知ったんだ」
 ふわっふわとしたフリルの花を満開に花咲かせながら。
 店内を見渡し、今回のお誘いを企画してくれた人物へと向かって、国栖ヶ谷・鈴鹿(命短し恋せよ|乙女《ハイカラさん》・f23254)は、明るく笑いかける。
 鈴鹿が「ね?」と問いかければ、その動きに合わせる様にして彼女の頭頂部を飾っていたフリルたっぷりのホワイトブリムと、汚れ一つないひらひらとした真っ白なエプロンドレスの裾がふわりと揺れた。
「でも、帝都通のぼくでも知らないとなると宣伝は必須!」
 こんなに素敵なお店なのに、帝都の人々に知られないままなんて勿体ない。
 流行に敏感な鈴鹿であるからこそ、刺激されるのはブームにして広めたいという使命感。
 それに、キッチンの方では店主さんが何やら気合いを入れて仕込みを行っていたみたいだけれども、この調子では誰にも食べられる事無く余ってしまう素材が出てくることだろう。
 時として一流パテシエイルとして腕をふるうこともある鈴鹿であるからこそ、思う事がある。料理は大勢の人に食べられてこそ、だ。
「ローズティーとフォンダンショコラに……気紛れ魔女さんのお料理も、お願いしようかな」
 宣伝計画へのやる気を胸いっぱいに抱きながらメニュー表を捲る鈴鹿の姿を、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は優しい眼差しで眺めていた。
 お勧めしたお店を気に入って貰えるのは嬉しいことだし、彼女が楽しそうなのなら、澪もまた楽しくなってくるから。
 ゆるりとサックスブルーのリボンで結われた甘やかな琥珀色の髪の毛に触れながら、澪はメニュー表の文字をなぞって気になる料理を注文する。
 料理が来る前に、と。膝の上に乗せていた真っ白なウサギのぬいぐるみを、隣の椅子に座らせる澪の身体を包んでいるのは――仄かにピンク色がかった、ロリィタ風のアリスドレスだ。
 アリスと言えばな、澄んだサックスブルーのアリスドレス。それに袖を通した、ふわふわとした可愛らしいアリスが二人。
 お揃いの仮装にお互いに微笑み合いながら、澪と鈴鹿は料理が運ばれてくるのを待った。
「折角のハロウィン、楽しまないと」
 オレガノが香るピザや、ゼラニウムの花が散った南瓜のサラダを始めとする「気紛れ魔女のハロウィン料理」に、ミントとベリーのフォンダンショコラ。ローズティーは、透明なグラスに注がれた、落ち着いた深い赤色がお洒落だ。
 甘い薔薇の香りを楽しみながら、今日だけの特別メニューを口にした途端――スルスルと縮んでいくのは、自分の視点。
「食べ物がおっきく見えるー!」
「つゆりんも小さくなってるよ!」
 気が付けば、片手で持てていたローズティーのカップがすっかり両手で収まるくらいのサイズに。
 パチパチと数回瞳を瞬かせて。澪は大きく見える料理やお茶に、すっかり興味津々な様子。
 大きく見える食べ物を不思議がる澪の横で、鈴鹿もまた、子供に戻ってしまったせいで、何倍にも大きく感じられるフォンダンショコラをじっと眺めた。
「物語のアリスもこんな気分だったんじゃないかな? 不思議な体験ができる点は、外せないお勧めポイントだね」
「比喩じゃなくて、本当におとぎ話の世界に迷い込んだみたいだもん」
 低くなった視点。いつもより小さな身体。何倍も大きく見える料理やお皿を新鮮に思いながら、料理を楽しんで。
「よし。ハイカラに、ブームの仕掛け人として腕を奮ってみよう!」
 食事を終えた鈴鹿は、意気揚々と椅子から――子供化しているせいで、飛び降りる形になったけれども――勢い良く立ち上がった。
 ブームの仕掛け人として、如何に流行らせられるかが腕の見せ所。それにプロモーションするのなら、少しだって手は抜けなかった。
「人数は多い方が楽しいからね。宣伝は僕もお手伝いするよ」
 鈴鹿の後を追って「よいしょ」っと椅子から滑り降りた澪もまた、鈴鹿が中心となって行う宣伝を手伝うべく、サクラミラージュに居る自らの親衛隊に呼びかける。
「……また人数増えた?」
 澪の掛け声に、何処からともなく一斉に現れたのは、澪の親衛隊。
 普段とは異なり、膝丈までの長い髪をふわふわと揺らす、小さなアリスとなった澪の姿を見た親衛隊員達から悲鳴の様な歓声が上がるが――それよりも、澪にはちょっと気になることがあるような。
「きっと気のせいだよね?」
 心なしか、親衛隊の人数がまた増えている様な。
 そろそろ人数も、すぐには数えられないくらいになってきた親衛隊達の隊員達。
 「増えたもしれない説」は、そっと見なかったことにして。
 「飲食や景色を楽しんでほしいな。お店に迷惑かけないでしっかり並んでねー」と。澪は集まった親衛隊員達に明るい声で呼びかけていく。
「愛実さん写真って撮っても平気?」
 澪が隊員に協力を呼びかけているその頃、鈴鹿の方はというと。店主の愛実に写真撮影の許可を尋ねに行っているところで。
 鈴鹿の問いかけに、「勿論、大歓迎よ」と明るい返事が返ってきた。
 「大丈夫なら」、と。鈴鹿は早速カメラを構えて、ちょこんと鈴鹿の肩に乗ってきたクロと一緒に写真をパシャリ!
「ちょっと不思議な体験で、この事や、クロとお揃いの猫耳をつけて、写真を撮って広めちゃおう」
 クロとお揃いの猫耳を付けた小さなアリスと、その肩に乗った少し生意気そうな黒猫。
 満面の笑みでポーズを決める鈴鹿とドヤ顔のクロの写真は、本当によく撮れていて。これなら、人々の注目も集まることだろう。
「それで、家族や友人、色んな人に、このお店のこと広めてほしいな。写真写りにも協力してね」
 澪のお願いによって、隊員達は思い思いにカフェーを楽しんでいく。
 店主が腕をかけた料理に舌鼓を打ったり、雑貨屋の耳や尻尾、翼が生える飴に驚いたり。
 そんな新鮮な表情や反応を、余すことなく写真として切り取っていくのは鈴鹿だ。
「あとね。気になる子と一緒に訪れる事が出来たら仲が深まるらしいよ、なんて」
 隠れ家的な立地も面白いし……。若い子はジンクスとか大好きだから。
 噂がより広まりますように、と。そっと澪が秘密を一匙付け加えれば――隊員達が更に盛り上がりをみせる。
「今の反応はバッチリだね! つゆりんも、このお店のいいところいっぱい見つけてて、これは良いプロモーションになりそう!」
 澪の声に、一斉に咲いたのは人々の笑顔の花。その瞬間も逃さずにシャッターに収めた鈴鹿は、満足そうににっこりと笑みを一つ。
「カフェーの美味しいお菓子にお星様⭐️をつけて、雑貨店の方にもチェック❣️のマークをつけてかわいい宣伝写真にしとこうか!」
「僕はこのお菓子がオススメかな?」
 数々の写真に映したのは、このカフェーの様々なメニューや商品達。
 二人で宣伝写真のレイアウトを話し合う時間は、賑やかに過ぎ去っていく。
 鈴鹿と澪の手によって計画されたこのプロモーションは、大成功間違いないだろうから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エグゼ・シナバーローズ
【風祈】で【1】

メイド服で参加
今年はみんなでメイド服っつー話になって、やってやろーじゃねーか!と(内緒だがちょっぴりヤケな気分で)合わせたワケだが、これ着てパレードはともかく店に入るのはかなり恥ずかしいな?!
だがやると決めたからにはやってやる!

俺は香草紅茶と気まぐれハロウィン料理をいただくぜ
って、アレ?周りのモンが高くなったような…
ぬおー、子供になってる!これが魔法薬の力か
かなたのは…確かにコメントに困る…
蒼はパンダと言われると可愛く見える

写真撮影!?
メイド服だけで恥ずかしいのに変化した姿が記録されるというのか
えーい、ここには楽しみに来たんだ、乗ってやるよ!
(スカートの裾を両手でつまみポーズ)


花降・かなた
【風祈】で【1】
メイド服で参加よ
普通可愛いメイド服!
ふっふー。猫耳メイドってあざとすぎて可愛くない?
つまり私はかわいい。かわいいって罪…
さあこい猫耳!
(気まぐれハロウィン料理をいただきつつ
…あれ?何かしらこの耳?象の耳?
んー。んんんんんんん、コメントに困るわね!!
皆さんはどんな感じになったかし…
あらエグゼさん、かわいい!
子供可愛い。うーわーかーわーいーいー!!(机に悶え突っ伏してる
蒼さんもかわいいわ!
何ですかそのパンだ。おかわうい。丸いお耳とか私の心にクリティカルヒットよ!!

これは、写真撮りましょう。写真!
ほら二人とも、ポーズを決めて頂戴な!!
いいじゃなーい。すっごい素敵な思い出よ!(ピース!


神宮時・蒼
【風祈】

【1】

中華風のメイド服で参加
…皆様、素敵な、めいどさん、ですね
可愛いは、正義、とも、言います、もの、ね

折角なので、魔女のハロウィン料理と香草紅茶を
ぼーいの黒猫さん、大変素敵です…!
わ、花降様の、お耳が、象さん、に…
ひらひら、ゆらゆら、意外と、可愛い…
シナバーローズ様は、…とても、可愛らしい、お姿に…!
…ボク、は…。……これは、ぱんださんの、お耳と、尻尾、でしょうか
ぱんださんは、熊猫と、書く、よう、ですから、此れは、此れで…
中華風、と言う事で其方に寄ったのでしょうか

写真、ですか…
うまく、写れるでしょうか
ならば、見た事がある拳を手で包む動作を
なんとも、楽しい一時、でした




「今年はみんなでメイド服っつー話になって、やってやろーじゃねーか! と合わせたワケだが、」
 と、そんな訳で。それぞれ異なった「メイド服」に袖を通したのは、「風祈」の面々だ。
 王道のヴィクトリア風なメイド服に身を包んだエグゼ・シナバーローズ(4色使いの転校生・f10628)は、内心ではちょっぴりヤケな気分に浸りながらも、それを吹き飛ばす様に元気良く声を上げる。
 スカート丈が長いことは救いだが、その分フリルのボリュームも増している。黒いドレスとは対照的に真っ白なエプロンも、フリルがあしらわれていてふわふわだ。
 少しでも大きく動こうものなら、その度に背中で大きく結ばれた純白のリボンがひらひらするのが妙に恥ずかしい。
 乗りかかった舟である以上、途中下船なんてしたらエグゼの中の男の矜持やそういった類のものが廃れるもの。
 だが。
「――これ着てパレードはともかく店に入るのはかなり恥ずかしいな?!」
 イロモノや女装・男装、果てはネタや悪ノリに極振りした仮装に至るまで。
 それぞれが思い思いにはっちゃける個性様々なハロウィン・パレードに参加するのならともかく、この格好でカフェーに入るのはかなり恥ずかしい。
「だがやると決めたからにはやってやる!」
 グッと意を決した様に拳を握り締めて決意を新たにするエグゼを応援するみたいに、エグゼといつも一緒な火の精霊がふよふよとエグゼの周りを回っていた。
「ふっふー。猫耳メイドってあざとすぎて可愛くない?」
 少し気取ってあざといポーズを決めてみせたり、上機嫌で鼻歌交じりに喋ってみたり。そして、クルリと回って一回転! 身体の動きに合わせる様にして、少し遅れてふわりとパニエの花が空中に花開く。
 メイド服姿を存分に楽しむ様に思いきりヒラヒラさせているのは、花降・かなた(雨上がりに見た幻・f12235)だ。
 落ち着いた薄紫色の生地に、重ねられるのは淡いピンクのレヱスやフリル。ホワイトブリムも忘れずに装着して、後は猫耳があれば完璧だ。
 王道の可愛いがたっぷり詰まったメイド服を揺らしながら、コツコツとパンプスで地面を叩いて、かなたは即席の音楽を奏で始める。
「狙うは猫耳よ。ね・こ・み・み~♪」
 ――一般人並みに上手な歌唱能力なのに歌詞が残念と定評のかなたの歌は、本日も通常運転の様だ。
「……皆様、素敵な、めいどさん、ですね」
 メイド服に身を包んだかなたとエグゼをそっと眺めて。神宮時・蒼(追懐の花雨・f03681)は、微かに目元を細めた。
 琥珀と赤。色彩異なる蒼の双眸に映った二人の姿は、今日も賑やかで楽しそうだ。
 そしてそんな蒼もまた、例外なくメイドの装いを纏っている。
 落ち着いた朱が人目を惹く、袖の長いチャイナ服風のドレスに、雪色のサロンエプロンを重ねて。
 裾や袖にあしらわれた金や黒の飾り結びの装飾が、蒼の装いに彩りを加えていた。
 膝丈のスカートを揺らしながら、蒼は中華風メイド服が皺になってしまわぬ様に気を付けつつ――そっとしゃがみ込んで、足元で気配を消していたカフェーの看板猫に向かって静かに微笑みかける。
 蒼の衣装に施されている、飾り結びの紐端が気になっていたらしい看板猫のクロ。まさか、気付かれているとは思わなかったのだろう。
 向けられた蒼の視線にクロは「にゃああん?」と少し上擦った鳴き声を一つ上げると、にょっにょっと少しずつ後退って自分の巣へ。
 愛想笑いを浮かべて撤退していく悪戯にゃんこに表情を緩めて見送りながら、蒼はかなたとエグゼに話しかけた。
「可愛いは、正義、とも、言います、もの、ね」
「そうよ。可愛いは正義だわ! エプロンにリボン、髪飾りに――」
「……ひらひらは少なめで頼むぜ?」
 メイド服は可愛いし、可愛いは正義だ。
 蒼の問いかけにノリノリで即答したかなた。
 このままではメイド服をアレンジして、更にフリフリ尽くしにしかねないかなたの勢いに、冷や汗を浮かべながらエグゼが待ったをかける。
「ぼーいの黒猫さん、大変素敵です……!」
 そうして、カフェーの扉を開けたのなら――いつかの悪戯にゃんこが、先程の印象を払拭する様におすまし顔で出迎えてくれた。
 和洋折衷のボーイな衣装を身に纏って。ちょこちょこと優雅な足取りで三人を席に案内し始めたクロの後ろ姿に、蒼はキラキラと瞳を輝かせる。
「もしかして、ネタを奪われたかしら……!」
 うっとりとクロを眺める蒼の背後では、猫耳メイドを狙うかなたが、クロへ静かに対抗心を燃やしていたり。
 そうやって賑やかに話しながら。どんな変化が起こるのか、ドキドキしながら案内された席に着いたのなら――三人で仲良く頼むのは、香草紅茶と気紛れなハロウィン料理。
「さあこい猫耳!」
 ローズマリー香るビーフシチューと、黒猫型のハンバーグ。飲み物のキャットニップを始め、数種類の香草がブレンドされた香草紅茶は、爽やかな甘味が癖になる。
 猫耳一点狙い派のかなたは、気合十二分で喝を入れると料理を一口に運んで。運んで――……。
「……あれ? 何かしらこの耳?」
 料理をモグモグと咀嚼して。すると途端、にょきにょきと生えてきたのは、髪色と同じ淡いピンク色のナニカ。
 かなたの感情に合わせる様にして、パタパタと元気に左右に揺れ動いている。
「わ、花降様の、お耳が、象さん、に……」
「象の耳? んー。んんんんんんん、コメントに困るわね!!」
「かなたのは……確かにコメントに困る……」
 そっと手渡された手鏡に映っていたのは、空を飛べる某子象みたいに大きな象の耳で。
 狙っていた猫耳から外れていて。それにコメントしようにも――象の耳はかなた本人にとっても想定外で、感想が浮かんでこない。
 かなたらしいと言えばそうかもしれない象の耳に、エグゼも苦笑を浮かべてパタパタ揺れる象耳を眺めている。
「ひらひら、ゆらゆら、意外と、可愛い……」
 それでも、意外にかなたに似合っているのかもしれない象の耳。
 ひらひらゆらゆら。思いきり自己主張しているかなたの象耳に、蒼はほっこりと声音を弾ませた。
 頭の両端で思いきり象耳がパタパタしている様子は、かなたのお転婆な気質が現れたものなのかもしれない。
「象耳があるなら、ハシビロコウとかアルマジロとかもあるかもな。って、アレ? 周りのモンが高くなったような……」
「さすがにそれは象の耳以上に反応に困るわね。そういえば、皆さんはどんな感じになったかし……あらエグゼさん、かわいい!」
 バゲットにチキンソテーやパプリカ、キュウリ等の野菜とコリアンダーを挟んで。
 スパイシーなサンドイッチに齧りついていたエグゼは――食べ進める度に少しずつ低くなっていく目線の高さに、目を丸くしてサンドイッチを食べる手を止めた。
 気が付けば、すっかり視線が小さくなっている。周りのものも大きいし、普段は見下ろす形になっているかなたや蒼の姿だって、今は見上げる形で。
「ぬおー、子供になってる! これが魔法薬の力か」
 自身の身に訪れた変化が「子供化」であることにやや遅れて気付いたエグゼは、「すげー!」と驚きの声を上げた。
 見るもの全てが大きいし、さっきまで齧りつけていたサンドイッチだって、今ではとても大きく感じられてしまうのだから。
「シナバーローズ様は、……とても、可愛らしい、お姿に……!」
 視線の低さに驚いたり、子供に戻った身体の感覚に歓声をあげたり。
 ちょこまかと椅子の上で動いてみては、万華鏡の様にクルクルと表情を変えるエグゼの姿に、蒼は興味と可愛らしさからそっと息を呑む。
 魔法薬の効果は人によって本当に様々な様で。自分がどんな変化をするのか、想像するだけでワクワクドキドキしてしまう。
 頬に両手を添えて「可愛らしい、です……!」とエグゼを眺めている蒼のすぐ脇では、かなたがテーブルに突っ伏しているところであった。
「子供可愛い。うーわーかーわーいーいー!!」
 きょとんとかなたを見上げる幼い仕草も、クルクルと表情が変わるその様も。そのどれもがとびきり可愛らしい。
 子供と化したエグゼの爆弾級の可愛さの中に、「可愛い」を先取りされた悔しさを一匙加えて。ひとしきりテーブルに突っ伏して悶えてから、かなたはガバッ! と顔を上げた。
「それで、蒼さんはどうかしら?」
「……ボク、は……。……これは、ぱんださんの、お耳と、尻尾、でしょうか」
「あら、蒼さんもかわいいわ!」
「蒼はパンダか? そうと言われると可愛く見えるな」
 口の端についてしまった、南瓜シチューをそっとナプキンで拭いながら。
 手鏡を覗き込んだ蒼の視界に入ってきたのは、黒くて小さくてまん丸な耳が生えた自分の姿。
 腰辺りの違和感に後ろを振り向いて見れば、耳と同じ様なまるっとしてふわふわな白い尻尾が生えていて。
 これは、きっとパンダの耳と尻尾なのだろう。
 恐る恐る耳に手を伸ばして触れてみれば、小さいけれど、ふわふわしている。
「ぱんださんは、熊猫と、書く、よう、ですから、此れは、此れで……」
 ふわふわな感覚は、時間を忘れて触れられてしまいそうで。
 それに、パンダは熊猫ともいうから。猫好きな蒼は、そぅっと笑みを深めた。
「中華風、と言う事で其方に寄ったのでしょうか」
「何ですかそのパンだ。おかわうい。丸いお耳とか私の心にクリティカルヒットよ!!」
 足元に寄ってきていた看板猫のクロも、熊猫な蒼の姿を見ると「にゃおん」と上機嫌に鳴いて。
 にこにこと微笑みかける蒼の姿に――とどめを刺されたかなたが、再びテーブルの上へと沈んでいく。
「これは、写真撮りましょう。写真! ほら二人とも、ポーズを決めて頂戴な!!」
「写真、ですか……。うまく、写れるでしょうか」
 そして、再び顔を上げたかなたの手には、しっかりちゃっかりカメラなんかが握り締められていた訳で。
 今日だけの思い出にするには惜しいと力説するかなたに、上手くポーズを取れるか不安そうにパンダ耳をへにょらせる蒼。そして二人の後ろでは、エグゼがぎょっとした様に大きく目を見開いていた。
「写真撮影!? メイド服だけで恥ずかしいのに変化した姿が記録されるというのか」
 メイド服だけでも恥ずかしいのに、更に子供化しているのだ。これではもう、どこからどう見てもメイド見習いの少女の姿で。
 恥ずかしいと語るエグゼの手を引いて、かなたはすちゃっとカメラを向ける。
「いいじゃなーい。すっごい素敵な思い出よ!」
「えーい、ここには楽しみに来たんだ、乗ってやるよ!」
「パンダ。ならば、見た事がある拳を手で包む動作を、しましょうか」
 ここまで来たらヤケもヤケ。スカートの端を両手で摘まみ、足を少し引いて。
 完璧にメイドとして振舞ってみせるエグゼの隣に、拳をもう片方の手で包み込んでポーズを取った蒼が並ぶ。
「ピースよ、ピース!」
 せめてと、象耳を盛大にパタつかせつつ、片手で猫耳を作ったかなたが掛け声と共にシャッターを切れば――画面には、ハロウィン仕様の三人の姿が映りこんでいた。
「なんとも、楽しい一時、でした」
 撮ったばかりの写真を覗き込んで。蒼は柔らかに微笑みを一つ、二人へと送る。
 楽しい一時はあっという間だけど、写真として残せば、いつでも思い出に触れることができるだろから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

邨戸・嵐
【シンク】◆

仮装は和装につけ角と自前の鱗で龍神サマ
手抜きとか言わないでよ
お菓子のお祭りなんて最高
あれ、悪戯のお祭りだっけ?

目当てはカフェー
ほんとはメニューの片っ端から頼みたいぐらい
香草酒にメイン料理、デザートと店員のお薦めで
みつきも悩むぐらいなら全部頼めばいいのに

夜明けのハーブティーはふたりのを見せて貰お
朝焼けは綺麗でいいよねえ
君たちとも何度か見た光景だ

悪戯料理はデザートに
どんな効果だったら面白いだろ
一人ずつ食べる?
それともせーので一緒がいいかな

変化はお任せ
どこが変わった?ってふたりに訊こう
コッペリウスの真似して外見通りふざけようか
今日限りの料理も楽しい時間も
食べ尽くさなきゃ損だものねえ


コッペリウス・ソムヌス
【シンク】◆
仮装はマントにマスカレードマスク
凝ってるのは眺めるに限るからねぇ…
ふたりの格好も似合ってると思うよ
お菓子と悪戯の祭りってことで楽しもうか

優しい木の雰囲気が印象的な店内に
夜明けの、って名前が気になったから
色変わる香草茶を注文して、
料理やスイーツ沢山並びそうな様を想像するのも楽しいなぁ
美味しい味があったら、後で感想聞かせて貰えると有難いよ

悪戯料理の種類と効果はお任せで
さて、どんな外見変化が見られるだろうね
常とは変わったふたりの雰囲気は
ハロウィンらしい思い出にピッタリじゃないかなって
オレも変化した見た目通りっぽく
振る舞ってみるのも吝かではないからねぇ
料理もひと時も愉しかったよ


神白・みつき
【シンク】◆
仮装を伴う催し物が初めてなので迷いましたが
定番の魔女の装いで出掛けましょう
落ち着かないので少し、和装の名残はありますが

嵐様とコッペリウス様と共にカフェーの席へついたら
お品書きに目を通し何にしようかと話し合う
人と食事を共にすること自体とても新鮮で
そのせいなのか、あれやこれやと目移りしてしまいますね

嵐様は全部頼めばいいと仰いますが、さすがに入りません
悩みに悩んで夜明けの香草茶とシフォンケーキ、それから悪戯料理を
種類と効果はお任せで

料理の効果を面白がるお二人の姿や、美しい箱庭のような風景
平穏そのものといったこの空間に思わず破顔するのも、仕方の無いことと言えましょう
今日は、お祭ですものね




 隠れ家的カフェーにお忍び感満載で訪れていたのは――龍神サマに扮した邨戸・嵐(飢える・f36333)を始めとする、「シンク」の面々であった。
「手抜きとか言わないでよ」
 夜影を纏ったかの様な、黒基調の装いは普段通りに。しかし、常よりも豪華な和装に袖を通して。
 嵐の身を包んでいる着物は、様々な濃淡の黒糸が曲線や直線を描きながら複雑に絡まり合って独特の紋様を紡いでおり、チラチラと鱗の様に光を反射させていた。
 ふわりと靡く灰影色の羽織を肩に乗せ、風をきって優雅な身のこなしで歩いて行く。
 豪奢な和装に、肌覆う鱗は自前のもの。そこに付け角を付けたのなら――腹満ちぬ蛇も、本日ばかりは龍神サマに。
「言わないよ。凝ってるのは眺めるに限るからねぇ……」
 付け角を付けただけは、果たして仮装のうちに入るのだろうか。
 ツッコミが入る前に、嵐は先手を打って釘を刺しておく。
 そんな嵐の言葉に、砂色の髪を揺らしながら答えてみせたのは、コッペリウス・ソムヌス(Sandmann・f30787)だ。
 恐らくは、嵐と似たような意見のコッペリウス。
 そう、眺めるに限る。恐らく間違っても、自分でしたいとは思わない。
 大通りから微かに聞こえてくるのは、そんな「凝っている仮装」をしているであろう学生達のはしゃぎ声。明るい彼らの話し声を背景音楽に、コッペリウスは深い赤に染め抜かれたロングマントを翻した。
 マスカレードマスクで目元を隠せば、怪盗や吸血鬼にも見える、何処か危うくて妖しげな青年の完成だ。
「仮装を伴う催し物が初めてなので迷いましたが」
 と。戸惑いつつも、嵐とコッペリウスの後ろに続いていく人影があった。
 夕闇を思わせる淡いピンクから、真紅を経て徐々に赤紫へと染め上げられていく和風のワンピースを身に纏い。紫色のローブは、桜のブローチで前を留めて。
 桜の飾りがあしらわれた大きな魔女帽子の下からは、桜色の双眸がきょろきょろと忙しなく催し物の様子を観察している。
 初めての催し物に驚きながらも、興味津々な様子で人々の仮装を眺めているのは、神白・みつき(幽寂・f34870)だ。
 みつきの仮装は定番の魔女。とはいえ、親しみのある和の要素をまるきり取り払ってしまうのも落ち着かないので、和洋折衷な魔女の仮装だ。
「お菓子のお祭りなんて最高。あれ、悪戯のお祭りだっけ?」
 甘いもの、スパイシーなものに、爽やかなもの。カフェーから漂ってくる様々な香りに、嵐の足取りは真っ直ぐにそちらの方へと向かっていた。
 お菓子のお祭りなんて、いつもハラペコな嵐にとっては外せない催し。
 どのようなお菓子が食べられるのか、楽しみにしつつ思考を巡らせたところで――ふと、悪戯をするお祭りでもあったかもしれない事を思い出す。
「ふたりの格好も似合ってると思うよ。お菓子と悪戯の祭りってことで楽しもうか」
「ええ。お二人とも、とても素敵です。お菓子も悪戯も楽しみましょうか」
 「どうだったっけ?」と。こてりと首を傾げた嵐の声に、コッペリウスとみつきの声が重なった。
 そう、今日はお菓子と悪戯のお祭りだ。
 両方のお祭りと言う事で。「二つとも楽しみましょう」と語るみつきに、嵐も「そうだね」と微笑を一つ。
 そのまま三人仲良くカフェーの扉を開けば――優しい木の温もりで満ちた店内が、静かに三人の事を出迎えてくれた。
「ほんとはメニューの片っ端から頼みたいぐらい」
「料理やスイーツ沢山並びそうな様を想像するのも楽しいなぁ」
 砂糖漬けにされたスミレや金木犀が散らされたパンケーキ。具沢山なマジョラムのシチューに、サフラン香るパエリア。
 メニュー表を最初から最後まで頼んでズラリとテーブルいっぱいに並べたい誘惑に駆られる嵐だったが、今日は我慢だ。
 嵐の一言に、テーブルいっぱいに料理が並んだ様を想像したコッペリウスもまた、楽しそうに口元を和らげる。
 実際に注文はしなくとも、メニュー表の品々が目の前にあることを想像するだけでも、楽しいもので。
「人と食事を共にすること自体とても新鮮で。そのせいなのか、あれやこれやと目移りしてしまいますね」
 あれこれと賑やかに語らい料理を選んでいる嵐とコッペリウスにクスリと微笑浮かべ、みつきもまた、手元のメニューを覗き込む。
 人と食事を共にする経験が乏しかったみつき。それ故に、三人で楽しく語らいながら一つのテーブルを囲む経験は、とても新鮮なもので。
 ワクワクする気持ちに駆られるまま、気になる料理をどれも頼んでみたくなるが――きっと、全ては食べられない。
 シソを始めとする季節の食材の天ぷら等の和食。反対に、数種類の香草が散らされたピザや、セージと一緒に焼き上げたステーキと言った、普段はあまりの馴染み無い洋食も気になってしまう。
「みつきも悩むぐらいなら全部頼めばいいのに」
 一つ一つ料理を吟味しては真剣な表情で悩んでいる様子のみつきに、嵐がゆったりとした口調で話しかける。
「さすがに入りませんよ」
 何でもないことの様に言ってみせた嵐に苦笑いを返しながら――みつきは悩みに悩んで、夜明けの香草茶とシフォンケーキ、それから本日限定の悪戯料理を注文した。
「コッペリウス様は何にされましたか?」
「夜明けの、って名前が気になったから」
 みつきと同じく、コッペリウスもまた「夜明けの香草茶」を頼むことに決めたらしい。
 コッペリウスが好奇心宿る銀の双眸で眺める先には、「夜明けの香草茶」について解説も交えて紹介された、特集ページがあった。
 青から紫、それからレモンシロップを入れると澄んだピンク色に。まるで夜が明ける様にお茶の色合いが変化する様は、しっかり間近で見てみたい。
「美味しい味があったら、後で感想聞かせて貰えると有難いよ」
 「夜明けの香草茶」を楽しみにしつつ、コッペリウスがそう告げる。
 全ての料理を一人で食べることは出来なくとも、お互いに食べた料理の感想を交えて話ができたら、もっと盛り上がるだろうから。
「夜明けのハーブティーはふたりのを見せて貰お」
「時間経過と共に紫になっていくんだってねぇ。何とも不思議なお茶だ」
 そして、やがて運ばれてきたのは、みつきとコッペリウスが頼んだ「夜明けの香草茶」で。
 どんな風に変化していくのか。それを心待ちにするのもまた、「夜明けの香草茶」の楽しみ方なのだろう。
「青色と言うより、青紫色に近付いた様に見せません?」
 と、まったりと香草茶を眺めていたみつきが、少し声を弾ませて変化を告げる。
「朝焼けは綺麗でいいよねえ。君たちとも何度か見た光景だ」
 ゆっくりと深まっていく青紫の色彩に、嘗て何度かコッペリウスやみつきと共に眺めた朝焼けの風景を瞼の裏に思い描きながら――嵐はにっと笑みを浮かべる。
「これで、レモンシロップを垂らすんだったんだよねぇ」
 やがて、香草茶が深い紫色に染まりきったのを見計らって。
 コッペリウスが少しレモンシロップをグラスの中に垂らせば、レモンシロップが辿り着いた底の方から、一気に夜が明けていく。
「美しいですね。本物の夜明けの様で」
「ほんと、あの時の朝焼けそっくりだ」
 生まれた薄ピンク色の朝靄の様な揺らぎは、ゆらゆらと揺らめきながら、上へ上へと上っていき。
 やがて、香草茶全体を明るいピンク色へと変えてしまう。
 本物の夜明けの様な光景に、それぞれが驚いた様な声を上げて――夜明けを楽しんだのなら、次はワクドキの悪戯料理タイム。
「どんな効果だったら面白いだろ。一人ずつ食べる? それともせーので一緒がいいかな」
 ラベンダー香る白ワインの香草酒のグラスを持ち、味と香りを楽しみつつ、あっという間にスパイスの効いた白身魚のソテーや、パセリが散らされたムール貝のワイン蒸しと言った数品を食べ終わってしまった嵐。
 香草の香りと不思議な味わいを楽しんでいたら、すぐに食べ終わってしまった事を少し残念に思いつつも、お楽しみのデザートを手繰り寄せる。
「折角だし、一緒に食べてみようか? さて、どんな外見変化が見られるだろうね」
「ええ。どのように変化するのか、楽しみですね」
 夜明けの香草茶を楽しみながら、ゆったりと料理に舌鼓を打っていたコッペリウスとみつきも嵐の提案にこくりと頷いた。
 コッペリウスは嵐の提案を聞き終えるなり、にかっと悪戯な笑みを浮かべると、スパイシーなセイボリーのステーキに齧りつき。
 みつきもまた、ローズマリーとタイムが爽やかな風味を演出しているロブスターのグリル焼きを一口大に切り分けて、ゆっくりと口元へ。
「どこが変わった?」
 唇に付いたバラのアップルパイのクリームをぺろりと舐めながら、嵐が真っ先に問いかける。
「鱗が神々しく輝いています」
「あと、付け角の横に龍神サマっぽい角が生えてないかなぁ」
 金の様な銀の様な。何やら神々しい金属光沢の様な光を放ち始めた嵐の鱗に、頭部で自己主張しているのは、幾重にも枝分かれした東洋龍の様な立派な角で。
 名実ともに龍神サマに。
 角と鱗の変化を確認した嵐は、優雅な動作で足を組むと――残っていた白ワインをゆらゆらと揺らし、それっぽい雰囲気を放ってみる。
「コッペリウスはそれ、吸血鬼の翼かな」
「影もまるで夜空の様で、幻想的ですね」
「オレも変化した見た目通りっぽく、振る舞ってみるのも吝かではないからねぇ」
 と、自らの変化を鏡越しに見たコッペリウスはマスカレードマスクに手を添えると、ニヤリと妖しげな笑みを浮かべた。それと同時に、背中から生えた闇色の蝙蝠の様な翼もパサリと広がって。
 コッペリウスの動きに合わせて動く彼の影は、星空の様に青く染まり――かと思えば、炎の様に揺らめいて。端の方から砂金の様に輝くとポロリと崩れ落ちては、また再生するを繰り返している。
「みつきは、黒猫だろうか」
「似合ってると思うよ。常とは変わったふたりの雰囲気は、ハロウィンらしい思い出にピッタリじゃないかな」
「ええ。普段と変わった姿は、何とも不思議な感じがしますが」
 頭頂部ににょきっと現れた黒い猫耳をピコピコと動かし、長ーい尻尾をゆらゆらと揺らしながら。耳と尻尾がある感覚を、新鮮に感じていたみつき。
 そしてよく見れば、髪にも桜が咲く様になっていて――みつきの感情に合わせて、髪の桜が咲いたり閉じたりを繰り返している様子には、思わず笑みも綻んでしまう。
「龍神サマらしいと言うと、こうかな」
 コッペリウスを見習って龍神サマっぽく振舞っている嵐は、妙に荘厳な雰囲気で――じぃっと手にしたメニュー表を見つめ始めた。
「龍神様にはお供え物が必要でしょうか」
「食べ足りなかったら、追加で注文して良いよ。費用は自腹でお願いするけどねぇ」
「心配ないよ。『サアビスチケット』があるから。今日限りの料理も楽しい時間も、食べ尽くさなきゃ損だものねえ」」
 準備万端を告げる龍神サマのドヤ顔に、くすりと微笑む黒猫のみつき。これは、「おかわり」を頼みそうな雰囲気である。
「料理もひと時も愉しかったよ。でも、本当に頼むつもりなのかなぁ」
「今日は、お祭ですものね。多少羽目を外しても許されるでしょう」
 真剣に悩み始める嵐の姿を、コッペリウスが苦笑いで見守っている。
 料理の効果を面白がって、それっぽく振舞いつつも、時々隠し切れない素の二人らしさが姿を見せていて。
 そして、自分を包み囲んでいるのは、穏やかで美しい箱庭の様な風景で。
 それはまさに「平穏」という、何物にも代えがたい大切な一時。
 悪ふざけを繰り返す嵐とコッペリウスの姿に、みつきはゆるりと破顔した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヘルガ・リープフラウ
❄花狼

ハーブづくしの料理にお菓子
店内には香草茶の香りが漂って、内装もとても雰囲気がいいわ
こうしてテーブル席に座ってオーダーを待っているだけで心躍るよう
それは「魔女の秘薬」のせいかしら
それとも……ヴォルフ、あなたが傍にいるから?

料理は店主のおすすめメニューで
せっかくですから「気まぐれ魔女のハロウィン料理」をいただきましょう
食後には薔薇の香りの紅茶を

……あら?
わたくしの髪が桜色に?
ミスミソウの傍、所々に小さな桜の花と香りも綻び始めて
秋だというのに、わたくしたちの周りだけはまるで
雪深き冬から花霞の春へと移ろうよう

慌てふためくヴォルフの姿もとても愛おしい
大丈夫。あなたの想いは伝わってるから


ヴォルフガング・エアレーザー
❄花狼

「気まぐれ魔女のメニュー」だって?
ヘルガ、本当に大丈夫なのか?
……いや、別に危険なものではないと分かってはいるが、
お前が恥ずかしい思いをするのではないかと心配で……

わかった、俺も腹をくくろう
食後にはラベンダーを加えた白ワインを頼む

食事を終えた瞬間、目の前のヘルガの髪が、桜のような薄紅色に変わる
ヘルガ、お前……
言いかけた俺の口から色とりどりの小さな花が零れ落ちる
いや確かに、桜色の髪のヘルガは可愛い、とても可愛い
伝えようとした言葉は、口にした途端、次々と花と化して溢れ零れる
えづくとか苦しいとかそんなことはないんだが
気まぐれな魔法の悪戯に阻まれて声に出来ないのがもどかしい

ヘルガ、俺は……




 柔らかな木の温もりに満ちた店内は、ゆったりとした時間が流れていた。
 ふわりと人が動く度に香るのは、種類も多種多様な|香草《ハーブ》の香りだ。
 華やかなもの、刺激的なもの、スッキリとした爽やかなもの等々――香草ごとに香りの傾向も異なっているが、それぞれが主張し合うことなく絶妙な形で調和しており、一つの不思議な香りを作り出している。
(「ハーブづくしの料理にお菓子。店内には香草茶の香りが漂って、内装もとても雰囲気がいいわ」)
 ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)は、穏やかな時間の流れる店内の様子にそっと瞳を細め、壁に飾り付けられていた店主お手製のスワッグに更に笑みを深めた。
 ヘルガと共にカフェーを訪れたヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)も、内装に心奪われたのか、「良いところだな」と半ば独り言の様に呟いている。
 壁に等間隔に設けられた大きな窓からは、乱れの無い様に手入れされた、ハーブ畑や庭の光景を見ることが出来た。
 窓の外の風景を眺めながら。案内された席へと向かうヘルガとヴォルフガングの姿を、天井付近のステンドグラスから差し込む優しい陽光が、静かに見守っている。
(「こうしてテーブル席に座ってオーダーを待っているだけで心躍るよう」)
 席に着き、メニュー表を眺めて料理を選んでいる今この瞬間も、ヘルガの鼓動は高鳴る一方で。
 ハロウィンである本日限定だと言うメニューも気になるし、このカフェーの雰囲気だってとても素敵で。
「それは『魔女の秘薬』のせいかしら。それとも……ヴォルフ、あなたが傍にいるから?」
 それはきっと、どちらともが正解。
 料理への期待に心躍るままに柔く微笑むヘルガとは対照的に、向かいに座るヴォルフガングの表情は固い。
「『気まぐれ魔女のメニュー』だって? ヘルガ、本当に大丈夫なのか?」
 ヴォルフガングの表情が妙にぎこちないのも――それはひとえに、ヘルガの身を案じているからだ。
 ヘルガが「気紛れ魔女のメニュー」に興味を示しているのは良いが、その「悪戯」が、ヘルガを傷付けてしまわないか。ヴォルフガングは、そればかりが心配だった。
 ハロウィンの日は、きっと誰もが笑顔になるステキな祭りの日であるはずだから。
 そんな日にヘルガが悲しむ様な事があってはならないと、ヴォルフガングは強くそう思っている。
「……いや、別に危険なものではないと分かってはいるが、お前が恥ずかしい思いをするのではないかと心配で……」
「心配しなくても大丈夫よ、ヴォルフ」
 オロオロと伸ばしかけた手を空中に彷徨わせたり、引っ込めたり。
 若干の気まずさからか、頬を赤く染めつつたどたどしく本心を紡ぐヴォルフガングに、ヘルガは柔らかな眼差しを向けて優しい声音で言い聞かせた。
 ヘルガの声と様子から、何も心配するまでも無いことはヴォルフガングとて重々承知してる――が、やはり、万一の事があったらと、不安にもなるもので。
 どうしたものかとヴォルフガングが心の中で葛藤を繰り返しているうちに、ヘルガはニコリと微笑むと注文を告げ始めてしまった。
「一年に一度のハロウィンの日ですもの。せっかくですから『気まぐれ魔女のハロウィン料理』をいただきましょう」
「わかった、俺も腹をくくろう。俺ヘルガと同じ物を頼む」
 まるで、戦地に赴く覚悟を決めた騎士の様に。キリリと引き締まった真剣な表情で料理を頼む最愛の人の姿に、ヘルガは思わず柔らかな微笑を浮かべた。
 ヴォルフガングの言動は過保護過ぎるかもしれないが、それも全て自分を思っての行動だと思うと、頬が桃色に染まるのを自覚してしまう。
 悪戯な料理の他にも、それぞれ食後に薔薇香る紅茶とラベンダーの白ワインを注文して。やがて、二人が注文した料理が運ばれてくる。
 カモミールジュレとフルーツソースが華やかなローストビーフに、タイムやバジルが入ったミニシチュー、数種類の香草が練り込まれたパン。
 テーブルに幾つかの料理が運ばれてきた途端、花咲く様な笑みで感嘆の息を漏らすヘルガ。
 それを見ていたヴォルフガングもまた、心が解きほぐされていく様な感覚を覚えたのだが、心の奥底に居座った一抹の不安は、拭えないままであった。
「……あら? わたくしの髪が桜色に?」
 そして。和やかに会話を交わしながら、料理の最後の一口を食べ終えて。
 それぞれが食後の紅茶やワインに手を伸ばそうとし――その動作を止めたのは、互いの身に訪れた小さな変化がきっかけだった。
 ふわり、と。桜の香りが鼻先を掠めたような。
 ふわふわと根元から桜を思わせる薄紅色に染まっていく、ヘルガの長い髪。
 春色に染まりきったかと思えば、ミスミソウの傍に小さな桜と香りも綻び始めて。
 まるで、春を告げるかの様に。ヘルガの髪で咲き綻んでいる。
(「秋だというのに、わたくしたちの周りだけはまるで、雪深き冬から花霞の春へと移ろうよう」)
 髪にそっと手を添え、綻んだ小さな桜達を愛でるヘルガを想うと、心の底から「愛おしい」という感情が溢れてくるヴォルフガング。
「ヘルガ、お前……」
 何かを言おうとして。しかし――言いかけたヴォルフガングの口から零れ落ちたのは、ぶつぎりの言の葉ではなく、色とりどりの小さな花の雨だった。
 「ヘルガ」とか、「俺は、」だとか。ヴォルフガングが何かを言いかける度に、その先を遮るようにしてはらはらと散っていく、小さな花の雨。
 その光景と、慌てふためくヴォルフガングの様子に。ヘルガはクスクスと小さく微笑んでいるが、悪戯が訪れたヴォルフガング当人は、呑気にこの状態を楽しめる様な余裕は無かった。
(「いや確かに、桜色の髪のヘルガは可愛い、とても可愛い」)
 伝えたい想いはこんなにも花と化して溢れてくるのに、言葉として伝えられないことがもどかしい。
 ヴォルフガングが伝えようとした言葉は、口にした途端、次々と花と化して溢れ零れる。幾つも、幾つも。絶え間なく、止めどなく。
(「えづくとか苦しいとかそんなことはないんだが、気まぐれな魔法の悪戯に阻まれて声に出来ないのがもどかしい」)
 どうやら、気紛れな悪戯が訪れたのは、ヘルガの方ではなく自分の方であったらしい。
 ヘルガでは無かったと安堵すると共に、想定外の出来事に焦ってしまって普段なら纏まる思考も纏まらないままだ。
(「慌てふためくヴォルフの姿もとても愛おしい」)
 そう。とても愛おしい。このまま暫くは慌てふためく彼の様子を眺めていたいと、そんないじわるな感想が浮かんでしまう程に。
「ヘルガ、俺は……」
「大丈夫。あなたの想いは伝わってるから」
 しゅんとした表情のヴォルフガングに、ヘルガは優しく語り聞かせた。
 そう。ヴォルフガングの想いは伝わっているから。
 ヴォルフガングがヘルガを想う気持ちは、床に落ちた花の数だけ。
 いつの間にか足元に生まれていた、床が見えなくなる程の花の絨毯に、ヘルガは幸せそうな表情で瞳を伏せた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

氷雫森・レイン

【星雨】
(料理お任せ、狐耳と尾が生える)
愛弟子からの手紙の中身に珍しく頭を抱えた結果
「お招き有難う。…ええと、笑わないで頂戴ね?」
選んだ仮装は狐
但し妖狐の親友からの贈り物である着ぐるみ風の寝袋…つまり寝間着で来た様なもので大分恥ずかしい
「フェアリー自体仮装みたいなものでしょうに」
けれど傾きかけた機嫌は美しい程の香りに癒された
もう解る
何故弟子が此処へ呼んだのか
「…成程ね」
人狼病患者の体調を注視しながらで気が抜けない旅の疲れを労おうというのでしょう
「ならお相伴に与りましょうか」

手鏡で見れば親友そっくりの狐耳
「ねぇアレク、…あら?」
天使とでもいうべきかしら
狼も犬も変わらないわ
愛でていくとしましょう


アレクシス・ミラ

【星雨】
※料理お任せ

レインさんの手紙から
共に旅する少年の人狼病完治の道のりは未だ長い事と
ほんの少しだけ彼女が気を張り続けているように感じたんだ
…この誘いは師を困らせるかもしれないと不安もあったから
現れた姿に安堵した
「笑う理由なんて何処にもないさ。来てくれてありがとう」
仮装は猟犬の将校
…僕も犬耳と尻尾には慣れないが
「(…それでも君は、ちゃんと仮装して来てくれたんだね)」
だからこそ…少しでもこの時間が癒しとなれれば幸いだ

ある依頼で彼女から教えてもらったブルーマロウと料理を頼もう
…あれ?
「ぼ、僕が子供に!?」
少々気恥ずかしいのだが…彼女が何処か楽し気に見えるから
小さな狐の先生が心ゆく迄お受けしよう




 時間と言うのは、本当に残酷なものだ。
 旅の終わりは未だ遠きまま、日々ばかりが無情に過ぎ去っていき。
 氷雫森・レイン(雨垂れ雫の氷王冠・f10073)が、今こうして頭を抱えて悩んでいる間にも、時計の針は一度だって立ち止まることなく、とっとことっとこと前に進んで行ってしまう。
 さて、どの様に返事をしたものか。
 フェアリーとしては些か型破りな気質の持ち主である彼女にしては珍しく、心から惑っていた。
 先程机の上に置いた手紙には、何度見ても同じ文言が書かれているのだ。それすなわち、愛弟子からの誘いで。
 本当にどうしたものか。断るべきか、誘いに乗るべきか。
 レインは、時間が許す限りたっぷりと悩み抜いて――。

「お招き有難う。……ええと、笑わないで頂戴ね?」
 ――結局、最終的には愛弟子の誘いに乗ってカフェーに来てしまう辺り、彼女も大概愛弟子に甘い。
 恐らくそれこそが彼女の本質で。だからこそ、彼女の愛弟子であるアレクシス・ミラ(赤暁の盾・f14882)は、姿を現してくれたレインに感謝と安堵を抱きつつも、同時に「困らせてしまっただろうか」という一抹の申し訳なさも抱いていた。
(「レインさんの手紙から、共に旅する少年の人狼病完治の道のりは未だ長い事と、ほんの少しだけ彼女が気を張り続けているように感じたんだ」)
 アレクシスは、自分の師であるレインが、とある人狼の少年と病が完治する手法を探し求めて旅をしていることはよく知っている。
 ……師と人狼少年が旅の目的としている「人狼病の完治」が、困難な目的であることも、痛いくらいに。
(「……この誘いは師を困らせるかもしれないと不安もあったから、現れた姿に安堵した」)
 恐らくは旅の間中、ずっと気を張り続けているのだろう。
 レインから送られた手紙の内容や言い回し、筆跡からそれを機敏に感じ取ったアレクシスは、少しでも彼女の心が安らぐ瞬間を得られたら、と。その一心で手紙を認めたのだが。
 その誘いが反対に師を困らせてしまうかもしれないから、こうして姿を現してくれた今、心の底から安堵した。
「笑う理由なんて何処にもないさ。来てくれてありがとう」
 心に押し隠そうとしているレインの恥ずかしさが彼女の表情に、仄かに滲み出ている様で。
 アレクシスは、そぅっと瞳を伏せるとゆるりと表情を和らげた。
 レインが選んだ仮装は狐。そう、狐であったのだが――但しそれは、妖狐の親友から贈られた着ぐるみ風の寝袋で。
 頭を狐の顔のフードに食まれ、もふっとした袖や裾を振りながら。
 愛弟子が笑ったり、「可愛らしい」とかこちらが恥ずかしくなる様な変な感想を口走ったりする前に、釘を刺しておくレイン。
 寝間着で公共のカフェーに現れた様なもので、レインとしては大分恥ずかしいのだ。
「フェアリー自体仮装みたいなものでしょうに」
「……僕も犬耳と尻尾には慣れないが」
 恐らくは、レインが釘を刺さなければ、「似合っていると思う」だとか。そう、レインにとってあまり深堀して欲しくない話題を続けていたに違いない。
 言外に滲ませた気まずさを感じ取ったのか、慌てて話題を変えたアレクシスからレインはフイっと視線を逸らした。
 心のティーカップに注がれていた機嫌を少しだけ傾けてしまった様子のレインに、アレクシスは頬杖をついたまま、彼女の姿を眺め――一つ、息を吐く。
(「……それでも君は、ちゃんと仮装して来てくれたんだね))
 普段ならばアレクシスには存在していない部位である、犬耳と尻尾を新鮮に思いながら。
 重々しい軍用マントを羽織った将校が思うのは、目の前のフェアリーのことだ。
 忙しいのにも関わらず、手紙をしっかり読んでくれたらしい。
 それに、きちんと仮装をしてまで。
 だからこそ、そんな遠回しな他人思いの彼女にとって。この時間が少しでも癒しとなれば良いと、アレクシスは願う。
「……成程ね」
 柔らかな笑みを浮かべて自身を眺めるアレクシスの表情に、愛弟子の考える事などすっかりお見通しのレインは、しっかりと彼の考えを見抜いていた。
(「人狼病患者の体調を注視しながらで気が抜けない旅の疲れを労おうというのでしょう」)
 穏やかな香草の香りに機嫌を直しつつ、小さな師は目の前の弟子に向かってふわりと言い聞かせた。
「ならお相伴に与りましょうか」
 折角の愛弟子の心遣いなのだから。ここは受け取るべきだろうから。
「……あれ?」
 「夜明けの香草茶」とも呼ばれるブルーマロウの鮮やかな青の色彩は、アレクシスにとっても見覚えのある色の一つであった。
 とある依頼で、今この場にもいるレインから教えて貰った青い香草茶。
 それと、本日限定の悪戯が込められたメニューを頼んで。ローズマリーとマジョラム香るローストチキンを食べていたところ、不意に感じたのは、自身の声に対する違和感で。
「ぼ、僕が子供に!?」
 声がいつもより高いとそう気が付いた瞬間、スルスルスルとあっという間に縮んでいく身長に、低くなっていく視界。
 手にしていたナイフをことりとテーブルの上に落っことして、アレクシスは子供に戻ってしまった自身の身体を驚きながら動かしてみせた。
「ねぇアレク、……あら?」
 狐顔のフードをはらりと取り払って。
 途中まで食べていた、生地にサフランの練り込まれたパンを一度皿に戻し、手鏡を覗いていたレイン。
 彼女の耳には、親友そっくりの狐耳と尻尾がひょこりと生えていた。
 動かそうと思えば自分の意思で動かせるし、ひょこひょこと自由自在になる感覚がまた新鮮で。
 手鏡を覗き込んでいたところ、不意に静かになったアレクシスに違和感を抱き、彼の座る席を見る。
「あら。天使とでもいうべきかしら」
 レインの視界に飛び込んできたのは、ふわりと跳ねる金髪に、常よりも少し浅い青の瞳の――すっかり小さくなった愛弟子の姿だ。
 犬耳と尻尾と将校の装いはそのままに、仔犬の様なあどけない表情でレインのことを見つめている。
「狼も犬も変わらないわ。愛でていくとしましょう」
 すっかり可愛らしくなったアレクシスの姿にレインは機嫌良く口遊むと、「いらっしゃい」と自分の傍までアレクシスを呼び寄せる。
(「少々気恥ずかしいのだが……彼女が何処か楽し気に見えるから。小さな狐の先生が心ゆく迄お受けしよう」)
 子供扱いされることは恥ずかしいが、これで、師が楽しいのなら。
 彼女の心が少しでも軽くなると良いと。そんなことを願ながら、アレクシスはそっとレインの元へと向かっていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ディル・ウェッジウイッター
幸四郎(f35892)さんと一緒にカフェに伺います。お誘い頂きありがとうございます

仮装:最新イエカ


香草茶も気になりますが、ここは一番人気の「夜明けのハーブティー」と「気紛れ魔女のハロウィン料理」をいただきましょう
食べたらどんな効果が出るのでしょうね

このお茶に合うお菓子、ですか
そうですね…(少し思案し)夜明けの様に澄んだ色が特徴のお茶です。お菓子に合わせるならやはり同じく澄んだ色のお菓子、ハイビスカスのゼリーなどが合うと思います
あとはこちらのお茶はクセが無いので茶葉をブレンドすればまた違う組み合わせができるかと


幸四郎さん猫耳が…って私もウサギの耳が
シルクハット、要らなくなりました


御鏡・幸四郎
ディルさん(f37834)とカフェを訪れます。

仮装:TW2の2008年南瓜行列SD(黒ローブの死神姿)

私も店を持つ身ですが、これは良いカフェですね。
品揃えも豊富で色々目移りしてしまいます。
まずはお勧めの『夜明けのハーブティー』をいただきましょうか。

ふむ。
花の香りはしますが、味は強くないですね。
どうですディルさん。これに合うお菓子を選んでみませんか?
(菓子職人目線)

私が選んだのは、
『レアチーズケーキのオレンジコンポート添え』

元々柑橘系が合うお茶なので、酸味ベースで選びました。
夜明けから朝を迎え、明るい日差しへと続くイメージですが
どうでしょう?

味わっていると頭がムズムズと。
「……ネコ耳、ですね」




 南瓜やお菓子の橙に、蝙蝠や魔女の黒。
 ハロウィンと言えばなイメージが強い、橙と黒の組み合わせ。この二つの色彩を取り入れたファッションは、これ以上に無い程ハロウィンの日にぴったりだろう。
 茶色がかった黒い洋装に、橙のチェーンやチェック柄の意匠がお洒落に感じられる。
 そんな、コントラストが鮮やかな燕尾服を身に纏って。ディル・ウェッジウイッター(人間のティーソムリエ・f37834)は、カフェーへと誘ってくれた目の前の人物に向かって礼を告げた。
「幸四郎さん、お誘い頂きありがとうございます」
 兎耳の生えたシルクハットに手を添えて、頭から落ちぬ様にしながら。軽く会釈したディルは、改めて目の前のカフェーの内装をじっくりと観察する。
 参考にできる様なものがあれば、と。観察してしまうのがティーソムリエの性質なのだ。
「私も店を持つ身ですが、これは良いカフェですね」
 興味津々な様子で内装やメニュー表の料理やお茶を分析しているディルの様子に、そっと表情を和らげながら。
 顔を覆っていた頭蓋骨の面を横に逸らして、御鏡・幸四郎(菓子職人は推理する・f35892)もまた、カフェーの様子を観察して自身の感想を言葉として零してみせた。
 かっちりとした黒い洋装に、赤いボタンをワンポイントとして。長い黒ローブに身を包んだ死神の仮装をする幸四郎もまた、創作菓子工房を経営する身。
 同業者であるからこそ分かる良し悪しを感じながら、メニュー表に目を通した。
「品揃えも豊富で色々目移りしてしまいます」
 店主の自信作である香草茶は勿論のこと、香草が素材に使われた各種菓子類は菓子工房を経営する身として気になってしまうし、料理も気になってしまう。
 ゆっくりとページを捲りながら。やがて、幸四郎は「夜明けの香草茶」のページに目を留めた。
「まずはお勧めの『夜明けのハーブティー』をいただきましょうか」
「幸四郎さんもですか。私も気になっていましてね。香草茶も気になりますが、ここは一番人気の『夜明けのハーブティー』と『気紛れ魔女のハロウィン料理』をいただきましょう」
 どうやら、お互いに「夜明けの香草茶」が気になっていたらしい。
 青から紫、やがてピンク色へ。まるで夜が明ける様に色彩が移り変わるという、何とも不思議なハーブティー。
 それは一体どのような味や香りがするのだろうと、思わず考えてしまうのはティーソムリエとして当然のこと。
 注文を終えたディルは、幸四郎と共に香草茶が運ばれてくるのを待った。
「食べたらどんな効果が出るのでしょうね」
 「気紛れ魔女のハロウィン料理」も気になるが、まずは食前の香草茶を楽しもう、と。
 ディルと幸四郎は共に、テーブルの上に置かれたポットとグラスに視線を向ける。
 薔薇ほど香りは強くないが、仄かに甘い花の香りが青い香草茶から漂ってきていた。
 夜が明けていくように、ゆっくりと青から紫へと変化していくその様。グラスに閉じ込められた小さな夜明けを眺めている様で、見栄えは美しいが、さて、味の方は。
「ふむ。花の香りはしますが、味は強くないですね」
 レモンシロップを垂らし、ピンク色へと明けきる過程を楽しんだ後。
 ゆっくりとグラスを傾けて茶の味を味わった幸四郎が、ディルに向かってそう告げる。
 ブルーマロウ自体の味はほんのりとしていて強くは無い。他の香草とブレンドしたり、ハチミツ等を入れたりして楽しんだ方が、味は深まるだろう。
「どうですディルさん。これに合うお菓子を選んでみませんか?」
「このお茶に合うお菓子、ですか」
 茶があるのなら、それに合う菓子を選びたくなるのが菓子職人や、ティーソムリエというもの。
 幸四郎の提案を聞いたディルは、ふむと顎に手を当てると、ブルーマロウに合う茶菓子を考え始める。
「そうですね……」
 ピンク色に染まりきった透明なグラスへと視線を落とし。少し思案した後に、ディルは纏まった考えを述べていく。
「夜明けの様に澄んだ色が特徴のお茶です。お菓子に合わせるならやはり同じく澄んだ色のお菓子、ハイビスカスのゼリーなどが合うと思います」
 レモンシロップを加えなくても飲むことはできるが、恐らく、殆どの人間がピンク色を楽しんだ後にお茶そのものを楽しむのだろう。
 澄んだ夜明け色と似た色彩のお菓子と言えば、明るい赤が鮮やかなハイビスカスのゼリーが思い浮かんだ。
 ハイビスカスの爽やかな酸味は、ブルーマロウともよく合うだろうから。
「あとはこちらのお茶はクセが無いので茶葉をブレンドすればまた違う組み合わせができるかと」
 組み合わせ次第で、色々な味を楽しめるはずだ。
 そう告げるディルに、「良い組み合わせですね」と幸四郎は柔らかに微笑む。
「私が選んだのは、『レアチーズケーキのオレンジコンポート添え』です」
 幸四郎が選んだのは、濃厚なレアチーズケーキと甘酸っぱいオレンジコンポートの組み合わせだった。
「元々柑橘系が合うお茶なので、酸味ベースで選びました。夜明けから朝を迎え、明るい日差しへと続くイメージですが、どうでしょう?」
 青から紫、それからピンクへと移り変わる香草茶。しかし、幸四郎の選んだレアチーズケーキとオレンジコンポートは、夜明けだけでは終わらずに、明るい日差しへと至る。
 味の相性でも、演出的な意味合いでも最高の組み合わせだろう。
「味の相性も良いですし、雰囲気作りという面でも素敵かと」
 ハイビスカスのゼリーと、レアチーズケーキのオレンジコンポート添え。
 それぞれが選んだ、お菓子と香草茶を楽しみながらテーブルを囲んでいたところ、ふと生じたのは、頭部への違和感で。
「……ネコ耳、ですね」
 味わっていると、何やら妙に頭がムズムズとする感覚に襲われた幸四郎。
 頭頂部に居座っていたそれが居なくなったかと思うと、頭から何かが突き出る感じがして。
 手鏡で自身の頭を確認してみれば、にょっきりと突き出た黒い三角が二つ。
「感覚もきちんとあるみたいです」
 動かそうと思えば動かせたし、触ってみるとふわふわしていて、触られているという感覚もある。
 幸四郎が猫耳を不思議がっている一方でまた、ディルの方にも変化が訪れようとしていた。
「幸四郎さん猫耳が…って私もウサギの耳が。シルクハット、要らなくなりました」
 ぴょこん! と。勢い良く突き出ていたのは、真っ直ぐに伸びた長い兎耳。
 突然目の前に座る幸四郎の頭に猫耳が生えたことに呆気に取られていたディルは、自身の変化に気付くことが少し遅れ――しかし、兎耳が生じた衝撃で空中を舞ったシルクハットは、しっかりとキャッチすることが出来た。
「少々不思議な茶会も、悪くはないものですね」
「これも今日だけの楽しみでしょうから」
 突き出たそれぞれの獣耳に、不思議な効果を齎したお菓子と夜明けの香草茶。
 このような茶会があっても、偶には良いだろうから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

城野・いばら
◆■
*去年の仮装衣装で雑貨屋さんへ
一千一夜物語の、
御話で夜を彩った聡明な女性に憧れて仕立てた衣装

わぁ…!なんてステキなお店かしら
摩訶不思議な雰囲気は
故郷の世界に何処となく似ていて
お気に入りの星空色の衣も馴染めているようで嬉しい

不思議で溢れる店内
どれも気になってしまうけれど…
狼さんのお耳と尻尾が生える飴を見つけて
じぃと、うーんと考える
ふわふわのお耳が在ったら、驚くかな?喜んでくれるかな?
想像してしまう、いとおしいアリスのお顔

白薔薇で在るコトに拘っていた頃からは考えられない
想像できなかった未来にね、今いるのね
また考えて
幸せに満ちて、一人そっと頬染め

飴さんを…何個か、頂きたいわ
あと「夜明けのハーブティー」さんも気になってて
茶葉が在れば貰いたいの
他にも、似た不思議な薬草が在ったら…
ううん、素敵なお品が多くって選びきれないっ
こんなに楽しいお店なのに
みんな知らないなんて勿体ないの
また是非ね、来たいわ…今度は彼も誘って




 ――その昔、御話で夜を彩った、聡明な女性が居た。
 妻の不貞を知り、女性不信となったとある国の王。それから彼は、夜毎に街の年若い娘達を宮殿に呼び出しては、翌朝には首を刎ねていって。
 街から年若い娘が次々に姿を消していく最中。自ら名乗り上げ、王の元で毎夜命懸けで物語を語る聡明な女性が居た。
 夜明けが近くなると毎夜、彼女は王に言い聞かせる――「続きはまた明日」と。
 彼女の語る話に興味を惹かれた王は、彼女の事を殺さなかった。
 そして、遂に彼女は王を改心させる事に成功する。
 『一千一夜物語』とは、要約するとその様なお話で。

「わぁ……! なんてステキなお店かしら」
 甘やかなもの、爽やかなもの、眠たくなってしまうものに、スパイシーなもの。様々な香草の香りに満たされた店内に、まるで春の芽吹きの様な明るい女性の声が木霊する。
 女性の身体の動きに合わせて、サラリと星々が囁く様な微かな物音を立てて翻るのは、夜空の様な長いヴェールで。
 ヴェールと同じ布で仕立てられた衣装の裾を揺らし、歩く様はお伽話の中から飛び出してきた登場人物の如く。
 『一千一夜物語』の語り部である、聡明な女性――シェヘラザードに憧れて。
 それをモチーフに仕立てたアラビアンな衣装を優雅に着こなした城野・いばら(白夜の魔女・f20406)は、店内の風景に呼吸をすることすら忘れて、翠玉の様な花緑青の瞳を輝かせている。
 いばらの動作に息を合わせるかの様にして。キラキラと布に宿った星空も、呼吸をするかの様に瞬いていた。
 いつもはお喋りな白薔薇の姫も、今日ばかりは異国情緒的な雰囲気に包まれた、妖しげな女性へと。
 いばらが手にした、物語が綴られた巻物を手繰り寄せれば。ほら、世界は極彩色に輝き始める。きっと、いばらの語りに合わせて、物語も生きているかの様に動き始めることだろう。
(「摩訶不思議な雰囲気は、故郷の世界に何処となく似ていて。お気に入りの星空色の衣も馴染めているようで嬉しい」)
 どの様な原理か、ケタケタと笑い続けているミニチュアの骸骨に、何故か羽根が生えて店中を飛び回っているお菓子の群れ。ごちゃっと乱雑に品物が積まれた、天井付近まで届く程の背の高い棚に。
 不調和が重なり合って、独特の調和を生み出している様な。一見すると共通点の無い物品の雑多な寄せ集めに見えるけれど、物品の間にも水面下では確かに共通点がある様な。
 魔女の実験室を思わせる店内。雑貨屋が放っている摩訶不思議な雰囲気は、いばらの故郷であるアリスラビリンスの世界の面影を感じさせるものがある。
 それに何より。深い夜が横たわっている様な落ち着いた店内に、お気に入りの星空色の衣が馴染めている様な気がして、嬉しかったから。
「不思議で溢れる店内。どれも気になってしまうけれど……」
 『白雪姫』に出てくる毒林檎の様に真っ赤な林檎飴。
 消えたり現れたりを繰り返している、気紛れな猫の様なゼリー。
 いばらの頭上で、意思を持っているかのように自由自在に飛び回っている蝙蝠や、羽根の生えた金貨の貯古齢糖は――同族である愉快な仲間達を思い出してしまって、少し複雑な気持ちにもなるけれど。
 不思議な原理で動いている普通のお菓子だと考えると、捕獲してしまう事への抵抗も、少しは減る様な。
 故郷の世界を連想させるお菓子の数々に、思わずにこり。いばらは微笑んで、個性的で何処か憎めないお菓子を一つ一つ手に取って回る。
「ふわふわのお耳が在ったら、驚くかな? 喜んでくれるかな?」
 それは全て、不思議の国を訪れるアリスを笑顔にする為に。
 何処にあるのかも分からない、自分の扉を探して。オウガに追われ続けて。
 そんな辛い日々を、一瞬でも忘れられる様に――少しでも、いばら達に出逢えて良かったと思える様に。
 そんな一心で、いばらはアリスに喜んで貰える様な、魔法のお菓子を探していく。
 幾つかの品を手に取った後、ふと、狼さんのお耳と尻尾が生える飴を見つけた。
 説明によると、ふわふわでもふもふの耳と尻尾が生えるらしい。
 いばらは狼さんになる飴をじぃっと眺めると、「うーん」と考え始める。
 想像してしまうのは、いとおしいアリスのお顔。
 ふわふわやもふもふが好きなアリスも多いから。急にいばらの身体に狼耳や狼尻尾が生えたら、悲しみも不安も忘れて、驚いてくれるだろうか。
 驚いてくれると良いな。それで――少しでも、笑顔になってくれたのなら。
 可愛くて危険な狼さん。決して悪い子では無いと思うのだけど。お伽話では悪役にされがちなのが、ちょっと不憫だ。
 隣にあった怖い吸血鬼やミイラ男に変身できる飴は、そっと見なかったことにして。
 だって、アリスを怖がらせるつもりは少しも無いのだから。
 アリスには、笑顔で居て欲しいもの。
(「白薔薇で在るコトに拘っていた頃からは考えられない。想像できなかった未来にね、今いるのね」)
 そう、それはお城の生垣を飾る白薔薇で在った時には考えられない程に、幸せな未来。
 紛うこと無きその未来に、いばらは今居るのだ。アリス達と同じ、二本の足で立って。
 実際にアリスとお喋りできて、同じ姿で、すぐ傍で寄り添うことが出来て。白薔薇で在った時からは考えられない、幸せなこと。
 幸せな未来のことを、そっとまた考えて。いばらは一人、満ち溢れた幸せに頬を薄紅色に染め上げた。
「飴さんを……何個か、頂きたいわ」
 考えて、いばらは狼さんになる飴を購入することに決めたらしい。
 悪い狼さんじゃなくて、アリスを怖い物から護って、笑顔に出来る様な。そんな、優しい狼さんになる為に。
「あと『夜明けのハーブティー』さんも気になってて、茶葉が在れば貰いたいの」
 青から紫、ピンク色へ。鮮やかにその色彩を変える香草茶は、自分で楽しんでも良いし、アリス達へのとびきり驚くサプライズにだってなる。夜明け色に包まれたのなら、誰だってたちまち笑顔になれるだろうから。
 在庫があるか問いかけたところ、在るとのことで。それも包んで貰って。それから、いばらは再び入り組んだ迷路の様な雑貨屋の中を歩み始める。
「他にも、似た不思議な薬草が在ったら……ううん、素敵なお品が多くって選びきれないっ」
 鮮やかな赤に染まるハイビスカスティーに、お湯を注げば水中で花がふわりと咲き誇る花入りの紅茶に。探し出したら、素敵な茶葉は本当に沢山在って。選びたくても、選びきれない程だった。
「こんなに楽しいお店なのに。みんな知らないなんて勿体ないの」
 不思議の国じゃないのに、不思議の国みたいで。いばらの心はワクワクして、高鳴って。
 こんなにも魅力的なお店を皆知らないなんて勿体ないし、一人で楽しむには惜しい様な気がしたから。
「また是非ね、来たいわ……今度は彼も誘って」
 いばらが柔らかく伏せた瞼の奥に描くのは、いばらにとって大切な人のこと。
 どんな商品を買おう。どんな品をお勧めしよう? 彼と共にこのお店を訪れる、その未来を想像して。
 いばらは優しく微笑むのだ。その頬に、そっと幸せを咲かせて。

大成功 🔵​🔵​🔵​

吉備・狐珀
【狐扇】

子供達と遊ぶなら動きやすい服装がいいですよね
狐のフードのついたパーカなら仮装にも見えるはず
あ、語さんのも用意したんですよ!(はい、と笑顔で差し出される白色狐パーカー)

では、と店内に入ればふわりと香るハーブや店内の装飾に心躍って
お願いするのは「気紛れ魔女のハロウィン料理」
限定メニューと言われると気になってしまって

不思議な変化の事をすっかり忘れてマシュマロお化けをパクリ
ふわふわで甘くて美味しいなんて思っていたら―

急に天井が高くなったような?
テーブルも高い?
語さんを見上げる角度がいつもより高い?とパニック(おろおろ半泣き状態)

膝の上に乗せられると落ち着いてきて
自分が子供になったのだと悟る
落ち着けば今度はお腹がくぅと
恥ずかしくてもじもじしていたら目の前にプリンののったスプーンが
照れ隠しにむぅとして見せながらもぱくり(美味しくて一瞬でご機嫌に)
もっととおねだりしては口に運んでもらう始末

語さん、お猫さまの瓶入りの飴とか雑貨も見たいです
(後で行ってもいい?と子供目線でおねだり)


落浜・語
【狐扇】
確かに、色々凝った仮装とかより、動きやすさ重視のほうが良さそうだな。……いや、狐珀が着るから可愛いんであって、俺が着ても……。たしかにパーカーは動きやすいな(笑顔には勝てなかった)

本当、ハーブとかの香りがいい香りだ。
俺は、ハーブティーと……あ、プリンがあるからそれにしようかな。限定メニューも気になるけど、あえて定番メニューで。

ハーブティーもプリンも美味しい、なんて思っていれば狐珀の姿が視界から消えて。
あれ、っと思って視線を下げれば、半泣きの狐珀(小さい)の姿。
そういえば、特別メニューは何かしら不思議な変化があるんだっけか。それで小さくなっちゃった?

半泣きでオロオロしているのを膝の上に乗せて、ゆっくり頭を撫でる。
落ち着いてきたようなら、よかった。なんて思ってたら、くぅ、と音が聞こえて。
お腹もすくよな。スプーンにプリンを掬って口元に。少し拗ねちゃったかな、とも思ったけれど照れ隠しだったかな?
ねだられるままにプリンを運んで。

俺も雑貨は気になってたし、見に行こうな。




 煌びやかな仮装や、気合いの入った衣装も良いけれど。
 グリモア猟兵の予知によれば、この後影朧の子供達がこのカフェーを襲撃する予定なのだという。
 遊んで貰えば満足して転生するらしい彼ら。折角一緒に遊ぶのなら、と。
 吉備・狐珀(狐像のヤドリガミ・f17210)は、子供達と遊ぶ時に動きやすいかどうかという目線で仮装を選んでいた。
 その結果――。
「子供達と遊ぶなら動きやすい服装がいいですよね。狐のフードのついたパーカなら仮装にも見えるはず」
 と、黒狐のフードに軽く頭を食まれたままの狐珀がにこやかに微笑んでみせる。
 萌え袖気味の袖と少しダボっとした裾を振りつつ、にこにこと笑っている狐珀はいつも通り可愛らしいのだけれども。
 落浜・語(ヤドリガミの天狗連・f03558)は、狐珀の手にしっかりと握りしめられた――狐珀が来ているパーカよりも少し大きいサイズの、白狐パーカばかりに先ほどから意識を奪われてしまっている。
 丁度、語が着ることを想定した様なサイズ。だがしかし、語は頭に浮かんだ仮説をふるふると首を振ることによって追い出した。
 動物パーカやふわふわな服装は、狐珀が着るからこそ可愛らしいのだから。
「確かに、色々凝った仮装とかより、動きやすさ重視のほうが良さそうだな」
 子供達の影朧には、未練無く転生して欲しいから。思いきり一緒に遊べる仮装の方が、良いはずだ。
 そんな訳で、動きやすさ重視の仮装を考えていた語だったが。
 語が仮装に着替える前に、そっと差し出される白い洋服の存在があった。
 白い服を差し出している手の先を辿っていけば、満面の笑みで「はいっ」と語に向かって笑いかけている狐珀の姿が目に入って。
「あ、語さんのも用意したんですよ!」
 断るのが心苦しくなってしまうくらいに、語に対してキラキラとした表情を向けている狐珀。
 狐珀の表情に思わず、「うっ」と気まずくなってしまうけれども。こういうのは、やはり狐珀の様な女子が着るから様になる訳で……。
「……いや、狐珀が着るから可愛いんであって、俺が着ても……」
「お揃いの仮装ですよ? カフェーも楽しみですよね」
「たしかにパーカーは動きやすいな」
 非常に気まずさを感じながら、狐珀の提案をやんわりと断ろうとした語だったが。
 純粋無垢な狐珀の笑顔には勝てなかった。
 苦笑いを浮かべつつお礼を告げて白狐パーカに着替えると、その場にはあっという間に黒狐と白狐が一人ずつ。
「お揃いですね」
「そうだな」
 心底嬉しそうに狐珀がそう言うものだから。
 語の可愛らしいパーカを身に着けているという少しの恥ずかしさは、あっという間に何処かへと飛んでいってしまった。
「では」
 ワクワクと心躍る気持ちを胸に抱いたまま、そっと押せば抵抗も無く軽やかに開く扉。
 この扉の先には、どの様な空間が広がっているのだろうか。
「良い香りがしますね。ハーブと、お茶と。後は、お菓子でしょうか」
「本当、ハーブとかの香りがいい香りだ」
 店内に入ったら途端、香ってくるのは仄かな香草の香りだった。
 眠気を感じる程に穏やかな香りに身を委ねながら内装を眺めてみれば、目に飛び込んでくるのは香草が用いられた店内の装飾。
 壁にかかったスワッグに、押し花で装飾されたフォトフレーム。窓際の花瓶には、ドライフラワーが飾られている。
 優しい空間と店内の装飾に、狐珀の胸は高鳴る一方だ。可愛らしい雑貨やインテリアの数々に胸を弾ませながら、語と共に案内されたテーブルへ。
「語さんはどうされますか?」
「俺は、ハーブティーと……あ、プリンがあるからそれにしようかな。限定メニューも気になるけど、あえて定番メニューで」
 ここはあえて定番メニューで、と語が指を指しているのは、ジャックオランタンのティーカップに入った、優しい橙色がハロウィンらしい南瓜プリンだ。生クリームとチョコペンで、オバケや蜘蛛の巣のデコレーションがされている。
 香草茶は、オレンジピールやレモンバームと言った数種類の香草がブレンドされている様で、仄かなオレンジ色に色付いていた。
「限定メニューと言われると気になってしまって」
 通常メニューを注文した語に対して、狐珀はハロウィン限定の「気紛れ魔女のハロウィン料理」の紹介ページを、キラキラと穴が開くほど見つめている。
 プリンアラモードに、魔女や狼の形をしたステンドグラスクッキーや、マシュマロお化け。狐珀の瞳が捉えているのは、可愛らしくてお洒落なスイーツの数々。
 狐珀はすっかり絵やイラストに夢中らしく、紹介文と共に書かれた「変化を引き起こす悪戯」に対する案内文は――多分、あまり気にしていない。
「美味しそうですね」
「狐珀のはそれ、マシュマロなんだな」
「はいっ。どこから食べましょうか」
 テーブルへと届けられたのは、語が頼んだプリンと香草茶と、狐珀が頼んだマシュマロお化け。
 大きくてふわっふわの、お化けを模した真っ白なマシュマロと、その下に香ばしいカカオの香り漂うブラウニーが隠れている。
 何処から食べていこうかとスプーンを片手に悩んでいる狐珀ににこりと微笑み、語もプリンを一口。
(「ハーブティーもプリンも美味しいな」)
 口いっぱいに広がるのは、なめらかな触感と南瓜の甘過ぎない風味。仄かな甘みのプリンに、甘酸っぱい香草茶はよく合う、と。語が食事を楽しんでいると。
「狐珀?」
 気が付けば、何故か無人になっている向かいの席。先ほどまでは、確かに狐珀が座っていて、マシュマロお化けを相手に幸せそうな表情を浮かべていたのに。
 テーブルの上には、頭の部分が欠けたマシュマロお化けがポツンと取り残されているだけで、狐珀当人の姿は見当たらなかった。
 語が首を傾げながら、狐珀の席周辺をキョロキョロと探してみると、テーブルの端から見覚えのある黒い狐耳がひょっこりと二つ覗いていることに気が付いて。
「あれ」
「か、語さん……!」
 そのまま視線を下してみれば、握り締めたスプーンをそのままにブンブンと振り回し、半泣きでパニックになっている狐珀と目が合った。
 心躍るハロウィン特別メニューに、不思議な変化の事をすっかりと忘れて。
 マシュマロお化けを少しずつ退治して、「ふわふわで甘くて美味しい」なんて思っていた狐珀。
 マシュマロお化けがとろける様な食感で、確かに美味しかったことだけは憶えている。でも、気が付けば何故か――テーブルが高くなっていたのだ。
(「急に天井が高くなったような? テーブルも高い? 語さんを見上げる角度がいつもより高い?」)
 自分の身に何が起こったのかも分からないまま。半泣きでオロオロしながら、狐珀は目線を合わせる様にしてしゃがみ込んだ語の元へ。
 相変わらず現状は掴みきれないままだけれども、語さんの傍にいると安心するから。
「そういえば、特別メニューは何かしら不思議な変化があるんだっけか。それで小さくなっちゃった?」
 うるうると目に涙を溜めてぎゅっと抱き着いてくる狐珀を受け止めながら、語は眉をハの字に下げて苦笑を浮かべる。
 そういえば、限定メニューには不思議な変化があったはず。料理に心躍らせていた狐珀は、きっとそのことを忘れてしまっていたのだろう。
 抱きしめられても未だに半泣きの狐珀を優しく抱き上げると、語はそっと膝の上に乗せて、ゆっくりと頭を撫で始めた。子供になってしまった狐珀が落ち着く様に、優しく。
(「語さんも大きい? 私、子供に?」)
 膝の上に乗せられて。ゆっくり撫でられる度に伝わってくるのは、頭を撫でる彼の体温。
 それに段々と狐珀の心も落ち着いてきて、それと同時に、思い出すのがメニュー表の案内文。
 そう言えば、不思議な効果があると書いてあった様な。そこで、その不思議な効果によって自分が子供になったのだと悟った。
「落ち着いてきたようなら、よかった」
 語を見上げ、控えめににこーっと微笑む狐珀。
 落ち着いてきた様で、目元に溜まった涙はもう増えてはいなかった。
 語が目元に溜まっていた涙を優しく拭い取って、微笑み返していたところ――「くぅ」と聞こえきたのは、妙に間の抜けた音で。
 突然鳴った空腹の音に、何よりも慌てたのは語の膝の上に乗ったままの狐珀。
 膝の上に乗っている以上、恥ずかしさのあまり隠れることも出来ないし、ワタワタと大きく動いて誤魔化すことも出来ないし。
 お腹の音を聞かれたのが恥ずかしくて。顔を赤くさせて。もじもじしていたら、目の前に現れたのはスプーンに乗った柔らかな橙色のプリン。
「お腹もすくよな」
 狐珀のお腹の音に、語はそっとスプーンでプリンを救うと彼女の口元に。
 あれだけ驚いて半泣きになったのなら、お腹も空くはず――と、差し出してみれば、狐珀はむぅっとしながらぱくりとスプーンに食らいついた。
(「少し拗ねちゃったかな、とも思ったけれど照れ隠しだったかな?」)
 どうやら、プイっとそっぽ向いたり、むぅっとしてみせたりしたのは、照れ隠しであったらしい。
 南瓜プリンの味は小さなお姫様のお気に召した様で、美味しくて一瞬でご機嫌に。
 周囲にふわふわと音符を飛ばしながら、狐珀はぎゅっと語の服の裾を掴んで「もっと」とプリンのおかわりをおねだりする始末。
 語が口にプリンを運ぶ度、とろける様な笑顔を浮かべる狐珀が可愛らしくて。
 小さくなってしまったのは狐珀本人にとっては驚きの出来事だっただろうけれども、偶にはこんな日も良いかもな、と思ったり。
 南瓜プリンを食べ終えて。ついでに、頭の部分だけ欠けていたマシュマロお化けも、食べさせて貰って。
 お腹いっぱいになった狐珀だったけど、気になる場所はもう一つある。
「語さん、お猫さまの瓶入りの飴とか雑貨も見たいです」
「俺も雑貨は気になってたし、見に行こうな」
 膝に乗ったまま、後ろを振り返る形で語の顔を見上げると。ぎゅっと語の服の袖を握って、狐珀は「後で行ってもいい?」と、子供目線でおねだり。
 普段ならあまり見ることのできない、幼い雰囲気のおねだりが可愛らしくて。
 狐珀のおねだりも優しく受け入れた語は、そっと狐珀の頭を撫でてやる。
 料理を食べ終えたのなら、二人で向かうのは摩訶不思議な雑貨屋さん。
 きっと、狐珀が気に入るお菓子や雑貨も沢山あるだろうから。
 不思議な品々を前に目を輝かせる狐珀を、語は柔らかな眼差しで見守っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レイラ・ピスキウム
【新夜】
仮装は9月29日完成のJC参照
3本尻尾の妖狐の姿
ノヴァさんとお揃いの合わせ衣装

普段は和やかな憩いの場、と思しき落ち着いた店内も
ハロウィンで浮かれ気分みたいだ
楽し気な雰囲気、ワクワクしますね

店内に漂う木とハーブの香りで早速心安らぎつつ
案内いただいた席へ

思ったよりもメニューが豊富です
何にしましょうか
ふふ。常にお腹空いてますからね、僕は
ジェノベーゼピザ なんてシェアしやすそう
ノヴァさんは何にします?
……夜明けのハーブティー、何だかあなたらしい素敵な一品だなと思ってたんです

折角だからノヴァさんにも食べてもらわないとね
いつもの癖で『半分』を分けようとするけれど
『少し』と聞いて、大体3ピース……くらいかな? 本当に足ります?

バジルの鮮やかな緑色がとても健康に良さそうで
罪悪感少ないですよね
何より好物なんです、ピーズのチザ
え?僕今何て言いました?

ここまでくると今日限りの特別なメニューも気になりますよね
誰かと一緒なら、より一層楽しめそう
試してみましょうか
(料理・変化の内容共にお任せ)


ノヴァ・フォルモント
【新夜】
仮装は9月29日完成の全身図
中国の幻獣、麒麟モチーフ
レイラとのお揃い合わせ衣装


店内に入ればふわりと漂うハーブの香り
様々な香りが混ざり合う
けれど不思議と落ち着く気もして

レイラは何を頼むの?
ふふ、君は育ち盛りなんだから
遠慮せずに沢山食べたほうがいい

…俺は、やっぱりコレが気になるかな
夜明けのハーブティー
味や香りもだけど、何よりどんな色をしているのかなって
実際に目にしたら飲むのがもったいなく思えてしまいそうだ

君からのお裾分けには柔く微笑んで
ありがとう、それじゃあ少し戴くね
…うん?もちろん十分だよ
爽やかなバジルの香りを楽しみつつ、味わって食べよう

へぇ、レイラはこういう食べ物が好みなんだ
……
ん?いや、おかしな事は言ってなかったと、思う
彼の天然な発言にはほんわり笑顔で流し

食事を一頻り楽しめば、限定のアレも気になってきた
小さな悪戯のオマケ、一体どんなものだろう
一人でなら試そうとはきっと思わなかったけれど
誰かと一緒なら、こういう遊びも楽しめると思って
(料理、変化の内容はお任せ)




(「普段は和やかな憩いの場、と思しき落ち着いた店内も、ハロウィンで浮かれ気分みたいだ」)
 扉を開けた出入り口で出迎えてくれた、怖い表情をした南瓜お化けの置物も、心なしか楽しそうにしている様にも見えてくる。
 窓にはお化けや魔女、蝙蝠やお城と言ったウィンドウスティッカーが貼られていて、そっと来店するお客達の事を眺めているかの様だった。
 普段通りのカフェーの落ち着いた雰囲気はそのままに、ハロウィンの日だけの楽しさをプラスして。
 猟兵達の来店によって賑わいつつあるカフェーの空気に、レイラ・ピスキウム(あの星の名で・f35748)は楽しげに瞳を細める。
 本日のレイラは、3本尻尾の妖狐の姿だ。
 濃淡が仄かに異なる、夜空を織ったかの様なお揃いの民族風の衣装に身を包んで。狐の髭と口が描かれた口当てに、中華と和を織り交ぜた様な装飾品の数々。
 腰で結われた大きな橙色の腰布が、深い夜に一筋の明かりを差し込ませている様にも感じられた。
「楽し気な雰囲気、ワクワクしますね」
 笑顔のままに、レイラがお揃いの合わせ衣装に身を包んだ傍らの彼――ノヴァ・フォルモント(月蝕・f32296)へと問いかければ、間を置かずに帰ってくる「そうだね」という、星月夜の竜による穏やかな声。
 レイラと同じ装いの民族風の衣装を身に纏いながら、ノヴァは静かに表情を和らげた。
 レイラのものよりも幾分か明るい様に見える、緑の交じる衣装をゆったりとした動作で翻しながら。
 螺旋状に捻じれた角を金と青のタッセル飾りで彩り、長い髭を模したフードの飾りを揺らして。ノヴァのそれは、中国の幻獣である麒麟モチーフの衣装だ。
 店内に入った途端、歓迎する様にふわっと自分達を包み込んだ木と香草の香りに、ノヴァも興味が惹かれたらしい。
 誘われるままにきょろりと店内を見渡せば、至る所に展示されている香草を用いた雑貨や小物達。スワッグにドライフラワーに、それからポプリに。香りの元は、カフェー内部に飾られたこれらと、それからキッチンの料理によるものだろう。
 香草の香りは種類様々で。様々な香りが混ざり合っているけれども、不思議と耐えきれない様な――不快感は襲ってこない。
 それぞれがただ、それぞれの在るがままを受け入れているかの様に。不思議な香りの調和が作り出されていた。
 不思議と落ち着く気がする香草の香りに、ノヴァが静かに深呼吸をしている横で。レイラは顎に手を当て、何やら香草の香りについて考え込んでいる様子。
「全部のハーブを混ぜたら、どんな味のハーブティーになるんですかね」
「凄い事になると思うけど、実際のところはどうなんだろう」
 香草や薬草の辞典には、数種類の調合やブレンド方法は記してあっても。全てを混ぜた時の結果なんて、載っていない訳で。
 香草の香りにふと芽生えたのは純粋な好奇心。知的好奇心から試してみたそうな表情をしているレイラに、ノヴァは苦笑を一つ。レイラの思い付きは――良くも悪くも、凄い事になりそうな予感しかしなかった。
「ブレンド比率とかも考え始めたら、割とまともな物が出来そうな気もしますね」
「正解や決まりは無いみたいだから、自分にあったものを作り出すのも良いかもしれないな」
 レイラの脳裏を、先の思い付きを提案したら全力で乗ってきそうな姉と、反対に盛大に止めてきそうなもう一人の姉の姿がそれぞれ走り去っていく。
 ノヴァの言う通り、香草茶のブレンドに正解や決まりは無い。けれども、真面目に考え始めたら途方も無い事になりそうだと結論付け、一端は意識の外に。
「これだけあると目移りしてしまうね」
「思ったよりもメニューが豊富です。何にしましょうか」
 案内されたテーブルに着席するなり、真っ先に目に留まったのはテーブルの上に用意されていたメニュー表。
 香草茶カフェーである以上、お茶やお菓子ばかりかと思ったが――軽食だってある。思いのほか、メニューは豊富らしい。
「レイラは何を頼むの?」
「ジェノベーゼピザなんてシェアしやすそう」
 やっぱり、と言うか。
 レイラが真っ先に開いたのは、香草がトッピングとして散らされた様々なピザのページで。
 その中の一つ、バジル風味のソースの上にチーズやベーコン、エビやトマトにバジルの葉が踊るピザを指差しながら。ノヴァの問いかけに笑ってレイラはそう答える。
「ふふ、君は育ち盛りなんだから、遠慮せずに沢山食べたほうがいい」
「ふふ。常にお腹空いてますからね、僕は」
 月色の髪を揺らしながら、言外に「もっと頼んでも良いよ」と伝えるノヴァ。
 彼はいつも腹ペコだから、ピザだけでは物足りないだろう。
 大きなピザもあっという間に完食してしまうだろう予感に、ノヴァはふふっと微笑を零した。
「ノヴァさんは何にします?」
「……俺は、やっぱりコレが気になるかな。夜明けのハーブティー」
 そしてこちらも、やはりと言うか。
 レイラの問いにノヴァが指差したのは、このカフェー一番の人気だと言う「夜明けの香草茶」だ。
 青から紫。そして、澄んだピンク色へ。小さな夜明けの風景が閉じ込められたかの様な香草茶に、ノヴァは確かに心惹かれていたから。
「……夜明けのハーブティー、何だかあなたらしい素敵な一品だなと思ってたんです」
「味や香りもだけど、何よりどんな色をしているのかなって。実際に目にしたら飲むのがもったいなく思えてしまいそうだ」
 それぞれの「らしい」に微笑み合いつつ。
 飲むのが勿体無くなってしまうだろう香草茶を心待ちにし、ノヴァは再び「夜明けの香草茶」のページに視線を落とす。
 実際に夜が明ける瞬間を、この手で創り出す事ができるのだ。「夜明け」が手を伸ばせば届く間近に運ばれてくる瞬間が、今から楽しみだった。
「折角だからノヴァさんにも食べてもらわないとね」
「ありがとう、それじゃあ少し戴くね」
 そして。やがてテーブルに運ばれてきたのは、緑色が特徴的な大きなジェノベーゼピザと、鮮やかな青が美しい「夜明けの香草茶」で。
 ジェノベーゼピザが目の前に置かれるなり、いつもの癖で『半分』に分けようとしてしまったレイラ。
 無意識のうちに染み込んでいたらしい癖に気付くと、『半分こ』しようとしていた手を止めて。
 少しだけ頬を薄紅色に染めつつ、改めてノヴァにどれくらい食べるか聞き直す。
「大体3ピース……くらいかな? 本当に足ります?」
「……うん? もちろん十分だよ」
 レイラのお裾分けに、ノヴァも柔く微笑んで。分けられた3ピース分のピザが乗った皿を受け取ると、お礼を告げる。
 と。受け取った直後に、それだけに本当に足りるのか、心配そうに尋ねるレイラの表情に気が付いて。
(「そういえば、空のカフェでも5段重ねのパンケーキを頼んでいたんだった」)
 思い返すのは、夏のこと。空のカフェで、山盛りのパンケーキを食べていた彼の姿を思い出す。
 相変わらず、というか。食欲の秋を楽しむように、夏頃よりも食欲が勢い付いた様なレイラに、ノヴァはゆるゆると首を振って「十分だよ」と繰り返し告げる。
「バジルの鮮やかな緑色がとても健康に良さそうで、罪悪感少ないですよね」
「へぇ、レイラはこういう食べ物が好みなんだ」
 健康に悪そうな大きなピザも、緑色があるから――と、食べ過ぎてしまう罪悪感も薄れてしまう様で。
 「幾らでも食べられます」と笑顔で語るレイラに、ノヴァも優しく相槌を打つ。
「ええ。何より好物なんです、ピーズのチザ」
「……?」
「……え? 僕今何て言いました?」
「ん? いや、おかしな事は言ってなかったと、思う」
 爽やかなバジルの香りを楽しみつつ、少しずつ味わって食べていたところ。
 ノヴァの耳に飛び込んできたのは、「ピーズのチザ」というパワーワードで。
 あまりにも自然な発言に、一瞬聞き流しそうになった程。「ピーズのチザ」という台詞に思わず固まってしまったノヴァを見て、レイラがきょとりと聞き返してくる。
 固まる事数秒。どうにか再起動したノヴァは、レイラの天然発言にはほんわり笑顔を浮かべ、やんわりと流した。
「へえ、時間が経つとこんな風になるんですね」
「本物の夜明けみたいだよ」
 ピザを食べ終えたノヴァの関心は、本命である「夜明けの香草茶」へと移る。
 ピザを楽しみながら、ゆったりと眺めていた色の移り変わり。鮮やかだった青寄りの水色は、やがて深い青に変わり。徐々にその暗さを増して。今では、落ち着いた紫色に染まりきっている。
 紫色に暮れたグラスに、レモンシロップを注げば――ふわふわとグラスの底に淡いピンク色の朝靄の様なものが発生して、あっという間にお茶全体をピンク色に塗りかえていく。
「仄かに甘い、かな? そこまで味は強くないかもしれないね」
 夜明けを迎えたピンク色の香草茶に蜂蜜を垂らし、クルクルと混ぜるとノヴァは一口。
 仄かに花の香りが漂うなか、すっきりとした甘さを楽しんで。
「ここまでくると今日限りの特別なメニューも気になりますよね」
「小さな悪戯のオマケ、一体どんなものだろう」
 食事とお茶を楽しんだのなら、気になってしまうのが、本日限定の魔女のメニュー。
 食事のデザートとして、と。二人一緒に頼むのは、その限定メニューだ。
「一人でなら試そうとはきっと思わなかったけれど。誰かと一緒なら、こういう遊びも楽しめると思って」
「誰かと一緒なら、より一層楽しめそうですからね。試してみましょうか」
 誰かと一緒なら、きっとより一層「悪戯」も楽しめるだろうから。
 ノヴァとレイラが頼んだのは、ハロウィンなお菓子の盛り合わせ。
 蝙蝠や吸血鬼、蜘蛛やお化けといったハロウィンモチーフのマカロンやクッキー、マフィンといった数種類のお菓子がお皿の上でキラキラと光り輝いている。
「ノヴァさんの髪、星色に輝いてません?」
「レイラも腰に小さな翼が生えているみたいだよ」
 マカロンやクッキーを味わえば、途端に訪れるのは不思議な悪戯で。
 月色はそのままに、キラリと星の瞬くノヴァの髪。時折確認できるのは、髪の上をサラリと流れる、流星の姿だ。
 腰に生えた小さな蝙蝠の翼をパタつかせつつ、レイラはノヴァと共に楽しそうに微笑み合う。
「マフィンはどう変化して……あ、尻尾が増えた?」
「これは爪が宝石みたいに輝くみたいだ」
 どうやら、お菓子の一つ一つに籠められた悪戯の効果は異なっている様で。
 次はどんな姿に変わるのか。予想を立てて、和やかに談笑しながら「悪戯」を楽しむ二人の一時は、緩やかに過ぎ去っていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『逃げるあいつを追いかけて』

POW   :    とにかく正攻法!背中に向かって走れ!

SPD   :    スピードを活かして追い込むのが得策だね。

WIZ   :    地形や状況を活かして足を止めようか。

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●Trick or Treat!
 ――そうして、猟兵達がそれぞれ思い思いにカフェーや雑貨屋を楽しんでいたところ。
 にわかに騒がしくなったのは、カフェーの出入り口で。
 「誰か来た?」と疑問を抱くと共に、盛大に開け放たれた玄関の扉。
 何の前触れも無く思いきり開け放たれた扉に、ドアベルも驚いた様にリンリンと抗議の音色を立てている。
「お菓子くれなきゃ悪戯するぞ!」
「お菓子くれても、悪戯するもんね!」
 賑やかに扉から飛び込んできたのは、小さな魔女にシーツお化け、吸血鬼にミイラ男に――思い思いの仮装に身を包んだ、子供達の影朧だった。
 突然現れた彼らは、雑貨屋のお菓子に目を付けると――一流の怪盗もかくやの鮮やかな手つきで、目につくお菓子を根こそぎ奪っていく。
「さあ、撤退しましょう!」
「逃げろ逃げろ~!!」
「帰る前に、悪戯もしていこうよ!」
 目につく限りのお菓子を奪い去った彼らは、さっさと逃げ出そうと、ハーブ畑と手入れされた花壇が広がるカフェーの広い庭へ走り出す者、悪戯を仕掛けようと店内に留まりちょこまかと走り回る者、「遊んで?」とかくれんぼや鬼ごっこを提案する者と実に様々だ。
「オレの手なんか見えない!?」
「うわぁ!? たっくんの手が消えたあぁぁぁ!!」
 突然透明になった腕に悲鳴を上げる子、生えた翼を悪戯に活用する子と。
 その一方で――一部では、早速「おかしなお菓子」を口にした事による騒動も起きている様で。
 庭を逃げ回る彼らを追うか、カフェーで悪戯を企む彼らを止めるか。遊びに誘う人懐こい彼らの誘いに乗るか。それとも、「おかしなお菓子」の影響で混乱したり、はしゃいでいる彼らを止めるか。
 正攻法で追いかけるか、策略を巡らせて捉えるか。「おかしなお菓子」で仲間や子共達に悪戯を仕掛けて騒ぎながら楽しむか。それぞれの、思うがままに。
 影朧の子供達は、一通り遊んで貰ったのなら――満足して、幻朧桜の花吹雪に包まれて転生の道を歩み始める。
 それまでの間、どうか、賑やかな彼らのお相手を。
乱獅子・梓
【不死蝶】◆
うわぁ、てんやわんやな惨状だな…
人に迷惑をかけるような悪戯はいけないな
ひっ捕まえて説教してやりたいところだが…

仕方ない、悪戯には目をつぶって鬼ごっこに付き合ってやろう
UC発動し、可愛い小型ドラゴン達を複数匹召喚
ドラゴン達が鬼になって子供達を追いかけるぞ
わざと遅めに飛行させて、ギリギリ捕まえられない距離を保つ
子供達を楽しませることが目的だからな

鬼ごっこ中は庭を荒らさないように注意!
子供達が花やハーブを踏みそうになったら
すかさずドラゴンが目の前に回り込んでガード

鬼ごっこを終えた後
お前達、店から勝手に取ったお菓子はちゃんと返すんだ
代わりに、これをやろう
手製のクッキー(アイテム)を差し出す


灰神楽・綾
【不死蝶】◆
※まだ子供の姿のまま

恐い顔する梓の服の袖を引っ張り
まぁまぁ梓。あの子達もハロウィンが楽しみで仕方なかったんだよ
その楽しみ方のパワーがちょっと振り切れちゃったというか
叱られてしょんぼりして転生するのは可哀想だよ

よーし、それじゃあ皆で鬼ごっこしようか
俺も梓のドラゴン達と一緒に鬼役をやるぞー
元気よく走り出すけど、子供の体だからいつもより走りにくい
たまに足がもつれて転んじゃったり(そしたら梓が慌ててた
それでもめげずに追いかける
走りながら眺めたお花やハーブ畑はすっごく綺麗だった

あ~~、楽しかった
皆も楽しかった?
梓のクッキーはね、すっごく美味しいんだよ
俺もあとで梓からクッキー貰おうっと




「うわぁ、てんやわんやな惨状だな……」
 目の前で好き放題を繰り広げている影朧の子供達による惨劇に、乱獅子・梓は引き攣った表情で呟いた。
 てんやわんやな惨状を見た梓の声音が若干強張っていたのは、恐らく気のせいでは無い。
「人に迷惑をかけるような悪戯はいけないな。ひっ捕まえて説教してやりたいところだが……」
 ハロウィンの日とは言え、流石に他人に迷惑をかける悪戯はいけない、と。
 意を決した梓が、子供達に説教をするべく向かいかけた――ところで。ちょいちょいと、梓の服の袖を掴んで引っ張る人物がひとり。
「まぁまぁ梓。あの子達もハロウィンが楽しみで仕方なかったんだよ」
 料理の効果が切れていない為、未だ七歳くらいの子供の姿を保ったままの灰神楽・綾であった。
 綾はにっこりと人懐こいいつもの笑みを――それでいて、妙に達観した大人の雰囲気を纏って――浮かべると、梓の服の袖を引っ張ったままこう続ける。
「その楽しみ方のパワーがちょっと振り切れちゃったというか。叱られてしょんぼりして転生するのは可哀想だよ」
 恐い顔をした梓もなんのその。幼子に諭す様に梓に言い聞かせる綾の姿は、いつもよりも遥かに大人びて見えた。
 綾の説得に、梓も「仕方ない」と渋々納得した様に息を吐き出す。
 楽しみだとか、転生だとかを持ち出されては、梓とて「仕方ないな」と済ますしか無かったのだから。
「仕方ない、悪戯には目をつぶって鬼ごっこに付き合ってやろう」
 苦笑交じりに紡がれた梓の「仕方ない」を聞いた綾はその途端、「やったー」と言いながら子供達の元へと駆けていく。
 思考回路は外見に引っ張られている様で、綾とて同年代に見える彼らと遊びたかったのだろう。
「よーし、それじゃあ皆で鬼ごっこしようか」
「綾、はしゃぎ過ぎるんじゃないぞ?」
「分かってるってー」
 既に子供達の中に溶け込んで鬼ごっこを楽しむ気満々の綾に釘を刺しつつ、梓は数匹の小型ドラゴン達を呼び出した。
 ぬいぐるみの様な見た目だったり、ふわふわだったり。
 怖がることが無い様に、と。梓が呼び出すドラゴン達は、皆総じて可愛らしい外見をしている。
「俺も梓のドラゴン達と一緒に鬼役をやるぞー」
『おー!』
『逃げろ逃げろ~!』
 綾の宣言を聞いた途端、瞳を煌めかせて元気良く庭に散っていく子供達。
 ドラゴン達と共にしっかり十秒数えた綾は、逃げる子供達を追いかけて勢い良くカフェーの庭へと駆け出していく。
「あれ、いつもより走りにくい?」
 手足の長さや背の高さが違うのだから、普段と同じ感覚で走ろうとしても、すっかり大人の身体慣れた梓にとって、子供の身体は動かし辛いもので。
 はしゃいで逃げる子供達を捕まえたと思ったら、寸前のところで逃げられたり、常よりも狭い視界に驚いたり。
 偶に足が縺れて、思いきり転んでしまう事もあった。
「大丈夫か! 綾!?」
「平気だよー」
 咄嗟に両手を突き出して転ぶ衝撃を和らげた綾。
 目の前まで迫った草の香りを新鮮に思いつつ、身体中に付いた土を払い落としながら立ち上がったところで――慌てた様子の梓が視界に飛び込んでくる。
「ケガは無いか? 痛いところも無いか? 我慢せずに言うんだぞ」
「大丈夫だよー」
 常よりもオカン気質を五割増しくらいにした梓が、綾の元に勢い良く駆けてきた。
 慌てた様子で矢継ぎ早に質問を投げつける梓に、ニコニコと笑顔を浮かべた綾は、いつもの様子で「本当に大丈夫だからー」と続ける。
 慌てていた梓も、いつもと変わらぬ様子の綾を見て、そこで漸く安心できたらしい。
 転んだ事も構わずに再び子供達を追いかけ始め様とする綾の頭に手を置くと、「気を付けるんだぞ?」と笑って送り出す。
(「子供達を楽しませることが目的だからな」)
 綾を見送った梓は、再びドラゴン達に指示を出し始める。
 子供達を楽しませて、未練無く送り出してやることが今回の目的だ。
 ドラゴン達をわざと遅めに飛行させて、ギリギリ捕まえられそうで捕まえられない距離を保つ。
 子供達にとってはそのハラハラドキドキなスリル感が楽しい様で、庭のあちこちで賑やかな歓声が上がっていた。
「おい、そっちは立ち入り禁止!」
 いつの間にやら、子供達全員のオカンと言っても過言では無い状況になっていた梓。
 子供達が花壇やハーブ畑に足を踏み入れそうになったら、即座にドラゴン達を子供達の前に回り込ませて花やハーブを踏まない様にガードさせる。
 梓の的確なフォローもあって、綾と子供達は自由気ままに庭を走り回って過ごすことが出来た。
「あ~~、楽しかった。走りながら眺めたお花やハーブ畑はすっごく綺麗だったよ」
「そうか。良かったな」
「皆も楽しかった?」
『うん、楽しかった!』
『また遊びたい!』
 濁流の様に向かっては消えていく、花々やハーブの色彩。それを思い出しながらにっこりと微笑む綾に、梓もまた自分の表情が和らぐのを感じていた。
 転んだり、無茶な動きをしたりと冷や冷やする事は何度かあったが……綾が楽しかったのなら、それが一番だろうから。
「お前達、店から勝手に取ったお菓子はちゃんと返すんだ。代わりに、これをやろう」
 今なら素直に返してくれるだろう。
 そう判断した梓は、『また遊びたい!』と頬を紅潮させたまま、無邪気に笑い合う子供達に視線を合わせて言い聞かせた。
 返して貰うお菓子の代わりに、と。梓が差し出すのは、梓お手製の桜型クッキーだ。
『……ごめんなさい』
『まあ、クッキーくれるのなら返しても良いかも?』
 口では何だかんだ言いつつも、子供達は皆に素直に雑貨屋のお菓子を返してくれた辺り、やはり構って欲しい・ハロウィンだから楽しみたいと言う気持ちが大きかったのかもしれない。
「梓のクッキーはね、すっごく美味しいんだよ」
 梓から受け取ったクッキーを興味津々で眺めている子供達に、綾が「すっごく美味しいんだよ」とにこやかに告げる。
「俺もあとで梓からクッキー貰おうっと」
 それから、おねだりも忘れずに。
 「どんなクッキーくれるかなー?」と綾が振り返れば、「仕方ないな」と苦笑交じりに肩を竦める梓と目が合った。
 今日はハロウィンの日なのだから、きっといつもと違ったクッキーを貰えるはず。
 梓の手作りクッキーに対する綾の期待は尽きない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

吉備・狐珀
【狐扇】

雑貨に夢中になっていたから
目当ての猫さまの瓶入り飴に黒猫もふもふぬいぐるみを抱えてすっかりご機嫌になっていたから
突然疾風のごとく現れた影朧に対応が遅れたのは当然のことで
出遅れたあげくお猫さまの瓶とぬいぐるみを「もーらい♪」なんて奪われて

それは狐珀が買うの!狐珀のなのー!(すっかり思考も子供)
なんて、影朧の子供達と追いかけっこ
返してと追いかけるもここまでおいでなんて揶揄われて
語さんのズボンを軽く握り、目に涙をためながら返してくれないと訴えていると
今度は泣いたことを揶揄われて

泣いてないもん!ともふもふ大辞典で呼び出した子犬軍団
牧羊犬のごとくお犬さまを引連れ追いかけっこ再開
狐珀は負けません!


落浜・語
【狐扇】
目当てのぬいぐるみやお菓子を抱えてにこにこする狐珀を見てたから、初動が遅れたとかそう言うわけじゃ……。
いや、うん。それで初動が遅れました。ハイ。
人の物を盗るんじゃないないと、言ったところで聞きはしないだろうしなぁ……。

涙目の狐珀を抱っこしてどうしようかとやや思案。
追いかけたところで逃げ回るし、このままにもできないしどうするか。

なんて思ってる間に、子供(+子犬)の追いかけっこが始まって。
はいはい、これ以上の追いかけっこは外行ってやろうなー。
中でやるのは危ないからなー。
言いながら進路をある程度先回りしながら塞いで外へ誘導。
子供(+子犬)だから、傍から見るとただただ微笑ましい長閑な光景だな。




 目の前の摩訶不思議な雑貨に夢中になっていたから。言ってしまえば、ただそれだけのことで。
 だから、あんなことになるなんて。思ってもいなかったのだ。
 まさか、影朧の子供達の襲撃に遭うなんて。吉備・狐珀自身だって、きっと予想できなかったに違いない――。

「猫さま、いました!」
「本当だ。隠れん坊していたな」
 背の高い棚が少しの隙間も無く立ち並ぶ雑貨屋は、まるで大きな迷路のよう。
 沢山ある雑貨屋の棚の一つからお目当てだった猫さまの瓶入り飴を見つけて、すっかりご機嫌な様子の狐珀。
 狐珀目当ての品は棚の高いところにあったから、代わりに落浜・語が猫さまの瓶入り飴を取ってあげたのだけど。
 語が瓶を一度手渡してから、狐珀はぎゅっと猫さまの瓶入り飴を大切そうに抱きしめてすっかり離そうとしなかった。
 右手には猫さまの瓶入り飴を、左手には黒猫もふもふぬいぐるみを抱えて。上機嫌でにこにこと微笑んでいる狐珀は、「とびきり可愛い」以外の何物でもない。
 語は可愛らしい狐珀の様子に、すっかり和んでいた。
 狐珀自身も、欲しかったものが見つかってすっかりご機嫌だったから。
『あ、猫ぬいぐるみ発見!』
『もーらい♪』
 ――突然。本当に突然、疾風の如く現れた影朧の子供達への対応が遅れたのは当然のことで。
「ふぇ?」
 目の前を目にも留まらぬ速さで何かが横切っていったのは、一瞬のこと。
 何が起きたのかって目をパチクリとしているうちに、あっという間に怪盗団によって、棚のお菓子だけが次々に無くなっていく。
 呆気に取られて突っ立っていた狐珀が大切に抱きしめていたお猫さまの瓶と黒猫ぬいぐるみも、良い標的だった様で。「もーらい♪」なんて子供達に奪われてしまう。
 気付いた時にはもう遅くて。
 腕の中が一瞬で空っぽになったことを不思議に思いながら、ぬいぐるみが何処に行ったのか探すと――。
「それは狐珀が買うの! 狐珀のなのー!」
 先程まで狐珀が抱えていた瓶とぬいぐるみをわざとらしく見せびらかしている、影朧の子供に気が付いた。
 どうやら、すっかり思考も子供に戻ってしまった様で。目元に薄っすらと涙を浮かべたまま、狐珀は「返して」と影朧の子供達を追いかけ始める。
(「目当てのぬいぐるみやお菓子を抱えてにこにこする狐珀を見てたから、初動が遅れたとかそう言うわけじゃ……」)
 涙目で影朧の子供達を追いかける狐珀に、それを揶揄っている影朧の子供達。
 それを見た語は思わず、現実逃避に思考の海へ。
 そう、狐珀が可愛らしかったから。ぎゅっとぬいぐるみやお菓子を抱えて、天使の様な笑みでにこにことしていたから。
 甘える様にして「語さん、語さん」と見上げてくる姿も愛らしかったから。だからつい見惚れてしまうのも、仕方が無いことで――。
(「いや、うん。それで初動が遅れました。ハイ」)
 反省会を開きながら、どうしたものかと語は思考を巡らせる。子供達は言い聞かせたところで、素直に返してくれる様子では無さそうだ。
「返してくれない……」
「人の物を盗るんじゃないないと、言ったところで聞きはしないだろうしなぁ……」
 影朧の子供達に良い様に遊ばれている狐珀を、「戻っておいで」と呼び戻して。
 ズボンを軽く握り、目に涙を溜めながら訴えてくる狐珀を慰める様に撫でながら作戦を考える語。
 ぎゅっと抱き着いてくる狐珀を抱き上げて優しく擦ってやれば、「泣いてる、泣いてる!」と即座に飛んでくるからかいの声。これは、一筋縄でいきそうにない。
「追いかけたところで逃げ回るし、このままにもできないしどうするか」
 影朧の子供達は逃げ足だけは無駄に早い。追いかけたところで逃げるのは彼らの方が一枚上手であり、だからと言って放置する訳にもいかず。
 良い作戦が浮かばないか、と。語が狐珀を抱っこしたまま悩んでいたところで。度重なるからかいの声に、狐珀が遂に動いた。
「泣いてないもん!」
 目元に涙を溜めつつ、それでも「負けたままは嫌だもん」ときりっとした表情でもふもふ大辞典を取り出した狐珀。
 そこから人懐こい子犬の群れを呼び出すと――語の腕の中から飛び出して、牧羊犬の如くお犬さまを引き連れ、追いかけっこ再開!
「狐珀は負けません!」
 遊んで欲しいさかりの子犬達は、遊んでくれそうな影朧の子供達の方へと一目散に駆けていき……次は、子供達が逃げる番となった。
「はいはい、これ以上の追いかけっこは外行ってやろうなー」
 語が作戦を考えているうちに、目の前で始まったのは子供と子犬による追いかけっこ。
 微笑ましい光景とは言え、室内で追いかけっこをするのは危ないので。
「中でやるのは危ないからなー。狐珀もこっちだぞ」
 子供達に言い聞かせながら、語は進路を先回りして外へ外へと誘導を行っていく。
 室内へのルートは先回りをして塞いで、家具や物にぶつかりそうな時は間に入って。
『ご、ごめんなさいぃぃぃ!!』
「許しません!」
 数匹では可愛らしい子犬も、数十匹となれば軽く圧も感じるもので。
 身体が小さな子供ともなれば、恐怖すら覚えることもあるだろう。
 形勢逆転! とばかりに子犬達に指示を出している狐珀に。すっかり遊んで貰っていると勘違いした子犬軍団が、元気良く影朧の子供達を追いかけまわしている。
 早くも子犬の襲撃にあったのか、数人は子犬達にペロペロと舐め回されてされてベタベタになってしまっていた。
「子供(+子犬)だから、傍から見るとただただ微笑ましい長閑な光景だな」
 本人達にとっては真剣そのものの追いかけっこも、傍から見れば、仲良く遊び回っている長閑な光景に見える。
 勢い良く庭を駆けまわる狐珀と子供達、それから子犬軍団の姿を眺めて。「ほどほどにな?」と声をかけながら、語は苦笑を浮かべる。
 狐珀主体による追いかけっこは、もう少しの間続きそうで。
 結局。すっかり子犬達に追いかけ回され、半泣きになった影朧の子供達から狐珀が瓶とぬいぐるみを返して貰ったのは、もう暫くした時分の事だった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

国栖ヶ谷・鈴鹿
【澪鈴】

ペンギン🐧カムパニー集合!
悪戯させないようにしっかりガードしてあげて(遊んであげて)!

ぼくは庭の子たちと遊ぼうか!
追いかけっこならペンギン🐧たちにも加わってペタペタ一緒に走り回ろうか!
鬼を澪と交代したら、数体のペンギン🐧と一緒に追いかけてみよう、他のペンギン🐧には、お庭のガードをお願いしておこう。

澪がうさぎさん🐇になるなら、ぼくも黒猫クッキーで黒猫になって、追いかけっこを楽しもうか!
子供の姿が元だから、こうして遊ぶのはなかなか出来なかったからすごく楽しい!

ペンギン🐧カムパニー、上手にこの様子も写真に収めてね、終わったらこのまま仮装行列でお店の宣伝しようね。


栗花落・澪
【澪鈴】

わぁ、可愛いペンギンさん達がいっぱい!
えへへ、なんだかとっても賑やかになったね
僕も庭の子たちと遊ぼうかな
鬼ごっこする?じゃあ最初は僕が鬼するね!

子供の姿でとてとて無邪気に走り回り
元々体力面弱いから、子供相手なら子供姿で丁度いいよね
※疲れやすいけど短距離なら足は速い

子供の頃は自分の足で外を走るなんて経験自体少なかったから
なんだかとっても新鮮な感じ

疲れてきたら国栖ヶ谷さんにタッチして鬼交代したり
【正義のうさもふ】で子兎に変身!
じゃれついたり子供達の方から構いに来るのを待ってみて
もふもふの小さい手足でぴょんっとタッチ

ふふ、捕まえた♪
ペンギンさん達、一緒に逃げよ!

(兎姿時は抱っこも歓迎)




 突然現れた、影朧の子供達による怪盗団。
 彼らは鮮やかな手つきでお菓子だけを奪い去ったかと思うと、置き土産に悪戯をして去って行こうとしたから。
 「そうはさせないよ!」と。子供達の悪戯を止めるべく、颯爽と立ちはだかった影がひとり。国栖ヶ谷・鈴鹿だ。
「ペンギンカムパニー集合!」
 ビシッ! と伸ばした人差し指を天井に向けて、鈴鹿がよく通る元気な声で集合を呼びかければ。
 鈴鹿の掛け声を聞いたペンギン達が、ぞろぞろとその姿を現し始める。
「悪戯させないようにしっかりガードしてあげて(遊んであげて)!」
 一列に並んだペンギン達は鈴鹿に向かってバッと一糸乱れぬ動きで敬礼を一つすると、自らの任務を遂行するべく、散り散りになって持ち場へと着いていく。
「わぁ、可愛いペンギンさん達がいっぱい!」
 ペンギンさん達本人は真剣そのものでも、きりっとした表情でペタペタ歩いていく様は傍から見るととても可愛らしいもので。
 ペンギンさん達のお仕事の邪魔にならない位置でそっと見守りながら、栗花落・澪はふんわりとした笑みを浮かべてペンギンさん達を見送った。
「えへへ、なんだかとっても賑やかになったね」
 影朧の子供達に、鈴鹿が召喚したペンギンさん達の群れ。
 そこには、閑古鳥が鳴いていた時の光景からは想像も出来ないような賑やかな空間が広がっていて。
 悪戯も襲撃もいけない事だけど、賑やかなのは良い事だから。
 庭へと向かう鈴鹿を追いかけて、澪も外へと向かい始める。
「ぼくは庭の子たちと遊ぼうか!」
「僕も庭の子たちと遊ぼうかな」
 突然現れたペタペタ歩くペンギンさんにおっかなびっくり驚きながらも、好奇心には勝てなかった様で。
 庭で好き放題をしていた影朧の子供達が、少しずつ鈴鹿と澪の周囲に集まってくる。
 「一緒に遊ばない?」と澪が子供達に誘いかければ、「遊ぼう!」と返ってくる元気いっぱいの返事。
「鬼ごっこする?」
『するするー!』
「じゃあ最初は僕が鬼するね! 二十数えるから、その間に逃げてね!」
 「僕が」と手を挙げて最初の鬼に立候補した澪。「いち、にー、さん」と早速澪が数を数え始めると、子供達ははしゃぎ声を上げながら庭のあちこちに走って行った。
「追いかけっこならペンギンたちにも加わってペタペタ一緒に走り回ろうか!」
 澪が数を数え始めるのを見ていた鈴鹿もまた、鬼に捕まってしまわぬ様にとペンギンと一緒に庭の方へ。
 鈴鹿と一緒に鬼ごっこをしている数体のペンギン以外の他のペンギンには、花壇や畑のガードをお願いしているから、庭を荒らしてしまうことも無いはずだ。
「あ、そこは入っちゃダメだよ?」
 と、早速うっかり花壇に入りそうになった子供達には、ペンギンと一緒に軽く注意を。
「元々体力面弱いから、子供相手なら子供姿で丁度いいよね」
 澪は元々体力面が弱く、無理ができない身体だけど、少し駆け回るくらいなら。
「はい、捕まえた!」
 確かに他の人と比べたら疲れやすい身体だけど、短距離で足の速さを競ったのなら、澪を追い抜かせる者はそう居ない。
 ふと振り返ったら、すぐ後ろに迫っていた鬼の存在。一瞬で距離を詰めてみせた澪を見て少し驚いた様な表情を浮かべていた鈴鹿に追いつくと、澪はにっこりと笑ってタッチ。
「子供の頃は自分の足で外を走るなんて経験自体少なかったから、なんだかとっても新鮮な感じ」
 小さい頃は、外を走る経験なんてあまりしてこなかったから。
 子供の姿で走り回る体験を新鮮に感じながらも、そろそろ疲れてきた頃合いで。
 だから国栖ヶ谷さんに、と。タッチして交代したのなら、今度は鈴鹿が鬼となる番だ。
「次はぼくが鬼だね。ペンギンと一緒に追いかけるから逃げてよ!」
 よちよち歩きの数体のペンギンと一緒に、鈴鹿は子供達を追いかけ始める。
 よちよち歩きで一生懸命追いかけてくるペンギンの姿は、可愛らしさが極限まで煮詰まっていて。
 つい「手加減してあげようかな」なんて。少し走るスピードを落とした子もいたけれど、どうやら、鈴鹿とペンギンの作戦には気づいていない様で。
 大きな花壇に。薔薇のアーチ。自由に駆けている様に見えて、その実一点に誘導されている。
 着実に追い詰められていることに――子供達は、直前になるまで気付かなかった。
「捕まえたよ!」
 前にもペンギン、横もペンギンが居て。後ろから不敵な笑みを浮かべた鈴鹿とペンギンが、子供達の身体にそっとタッチした。
「いっぱい甘やかしてくれていいんだぞ!」
 休憩を挟んで、鬼ごっこに再び参戦する澪。
 実は参戦してすぐにまた鬼になってしまったのだけど、それは伏せておいて――澪は桜色の垂れ耳を持つ子兎姿に変身してみせた。
「澪がうさぎさんになるなら、ぼくも黒猫クッキーで黒猫になって、追いかけっこを楽しもうか!」
 澪が子兎に変身したのを見て。鈴鹿もまた、黒猫クッキーを食べると黒猫へと姿を変身させる。
「子供の姿が元だから、こうして遊ぶのはなかなか出来なかったからすごく楽しい!」
 四本の足で器用に駆け回り、猫としての視線や感覚を楽しみながら、鈴鹿は俊敏な動きでぴょんぴょん跳ねて追いかけてくる子兎姿の澪から逃げていく。
 庭のガーデンチェアーやテーブルを足場代わりに駆け抜けたり、花壇と花壇の狭い隙間を忍び足で歩いたりするのは猫でしか体験できないことだったから、それがまた楽しかった。
「ふふ、捕まえた♪」
 桜色のもふもふな子兎姿に変化した澪は、子兎の可愛さを活かして子供達の方から構いに来るのを待っていた。
『兎だ、可愛い~!』
 と、そう間を置かずに駆け寄ってくる子供達。
 よしよしと撫でたり、優しく抱っこしたり――と、子供達が夢中になったところで、もふもふの小さな前足をそーっと伸ばして、ぴょんっとタッチ。
『あ、捕まちゃった!』
「ペンギンさん達、一緒に逃げよ!」
 「待て待て~」と楽しそうに追いかけてくる鬼になった子から跳ねて逃げながら。ペンギンさん達と澪は、庭を自由気ままに走り抜けていく。
「ペンギンカムパニー、上手にこの様子も写真に収めてね、終わったらこのまま仮装行列でお店の宣伝しようね」
 楽しそうな様子で庭を走り回る子供達を狙って。鈴鹿の合図を受けたペンギンは、絶好のチャンスを狙ってシャッターを切る。
 楽しい時間が終わったら、仮装行列で宣伝を。楽しいことはまだまだ沢山残っている。
 はしゃぎながらこちらに向かってくる澪とペンギンさん達を眺めて。仮装行列の時が待ち遠しいと、鈴鹿は笑みを浮かべた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エグゼ・シナバーローズ
【風祈】
クラシックメイドの仮装
子供姿
遊びに誘うチビ共と遊ぶ

よし、いい子だ
ちゃんと誘えるなんて偉いんだぞー(頭を撫でてやろうとする)
おっ、逃げるか、もしや遊びがもうはじまってんのか
おらおら待て待て、これは鬼ごっこかー!
(元気なテンションで追いかけまわす)

かーなたー
人を生贄にするとは感心しねーなー(ごごごご)
そーだよ、罠だよ、逃げろ蒼!

鬼ごっこにかくれんぼ
誘われた遊びにとことん付き合ってやる
かなたがけーどろ(ケイドロ)提案してるな
なあお前ら、けーどろ知ってるか?
知らないならルールをドヤ顔で教えてやる
知らない遊びを他にもいくつも教えてやりたい
遊びって無限大にあるんだぜ、お前らを全力で楽しませてやる!


神宮時・蒼
【花祈】
熊猫耳と尻尾のチャイナメイドの仮装
遊びの誘いを受けます

…折角の、ハロウィン
…はしゃぎたく、なる、気持ちも、わかり、ます
子供の遊びを知らないので、子供たちや他の方の提案に乗ります

…シナバーローズ様、何だか、慣れて、らっしゃい、ます
今の姿と、相まって、まるで、兄弟のよう、です

…嗚呼、ビノシュ様…、花降様の、魔の手に…!

…花降様?……秘密の、お話、とは…?…あれ、もしや、罠?

…遊び、とは、奥が、深い、です、ね
けーどろ、不思議な、響き、です
何とも、独特な、るーるが

ともあれ、こういうのは楽しんだもの勝ち、と聞きます
彼らが満足するまで遊びましょう
お別れの時が来たら、頭を撫でて
…また、いつか、と


花降・かなた
【風祈】
誘われた遊びは断らないわ!
さあ、遊ぶわよー!
全力で動くわよ!

ふっ。エグゼさん甘いわね。最初はエグゼさんが鬼よー!
ほら子供たちも、こっちこっち!
捕まりそうになったら
あっ。ジョゼさん、あんなところに面白おかしいものが!(生贄にする
鬼になったら
蒼さん蒼さん、ちょっと秘密のお話があるんだけど…(おいでおいで

よーし。次はけーどろしましょ
えーっとね、こんな感じで…
(時々自分に有利な嘘ルールを教えてエグゼさんに突っ込まれている
もう!いいのよ。私が最強ってことで!はいスタート!

はー。走った走った
そうだ。みんな(子供たち)はほかに何か遊ぶの知ってる?
よし、それやりましょう。まだまだ走れるわよー!


ジョゼ・ビノシュ
【風祈】
準備に時間がかかって遅れちゃったのよ!仮装はもうしたわ、紅茶メイド服!(南瓜SD参照)
鬼ごっこね?わかった。こっちよー!(ひょいと低空を飛んで逃げる…が花降さんに生贄にされて捕まる)……あら? これ捕まった人って鬼になるんだっけ? まてまてー食べちゃうぞー!(エグゼさんと一緒に元気に)
神宮時さんそれ花降さんの策略よ逃げてー!(被害者の叫び)

けーどろ? とけーどろの説明を子どもたちと一緒になって聞くし花降さんには普通に騙される(二回目)
私インドアだからカードゲームとハッキングしか知らないんだけど、他の遊びもぜひやってみたいわ!

また遊びましょうね。きっとまた会えるわ。




『お菓子も悪戯も楽しみたいんだもん!』
『遊んでくれたら、落書きしないんだけどなぁー?』
 鮮やかな手付きでお菓子を根こそぎ奪い去っていた影朧の子供達であったが、怪盗団としてカフェーを襲撃するだけでは終わらないらしい。
 去り際に悪戯する素振りを見せては、構って欲しそうにこちらを眺めている。
「誘われた遊びは断らないわ!」
 と、真っ先に猟兵達を見つめている子供達の輪の中に飛び込んで行ったのは、花降・かなただった。
 お誘いを断るなんて、あり得ない。楽しいことはめいっぱい楽しまないといけないわ! と言わんばかりに、子供達の方へと勢い良く走っていく。
「さあ、遊ぶわよー! 全力で動くわよ!」
『おー!』
『姉ちゃん遊んでくれるの!?』
 遊びを全力で楽しむつもりのかなた。子供達の輪に溶け込んだのも一瞬のことだった。
 早くも子供達のリーダー的存在と化したかなたに苦笑いを浮かべつつ、エグゼ・シナバーローズは、自身の服の袖を引っ張って『お兄ちゃんも遊んでくれる?』と誘いかけてきた少女の頭を優しく撫でる。
「よし、いい子だ。ちゃんと誘えるなんて偉いんだぞー」
 礼儀作法は大切だから。遊びに巻き込む前にちゃんと誘えた少女を、エグゼは思いきり褒めてあげる。
 メイド服姿で子供の姿を保ったままのエグゼと、エグゼよりも更に小さな少女の二人組は、傍から見ると仲の良い姉妹に見えなくもない。
 エグゼに褒められて嬉しそうに目を細める少女を、微笑ましく見守りながら。
 神宮時・蒼は、未だ生えたままのパンダ耳をピコピコさせつつ、聞こえてくる子供達の歓声にそっと微笑を浮かべた。
 一年に一度しかない特別な日。「ハロウィンだから遊びたい」という子供達の気持ちは、蒼とてよく理解できるものだから。
「……折角の、ハロウィン。……はしゃぎたく、なる、気持ちも、わかり、ます」
 特別な日にはしゃぎたくなってしまうのは、ある意味当然なこと。……勿論、悪戯や泥棒は駄目な事だけれども。
 遊びたいけれど、子供の遊びを知らない蒼。
 「どうやって、遊びましょう、か……」と、悩んでいたところで。駆け足でこちらに向かってくる人影が。
「準備に時間がかかって遅れちゃったのよ! 仮装はもうしたわ!」
 時間が経つのは驚く程に早くて。念入りに仮装の準備をしていたら、あっという間にこんな時間になってしまっていた。
 頭にはミルククラウンを模したクラウンを飾り。左右両側で結った深い赤のリボンと、クラシカルなデザインのメイド服をひらひらとはためかせながら。
 蒼達へと声をかけたのは、ジョゼ・ビノシュ(アイシイ・アンリアル・f06140)だ。
 何やら賑やかな雰囲気の子供達に瞳を瞬かせ、紅茶メイドなジョゼは、「もしかして、もう始まっちゃってる?」と疑問を一つ。
「いや、まだだと思うぜ?」
「そうなのね。間に合って良かったわ」
 少女と同じ様に、エグゼの傍に寄ってきた少年を撫でようとしたところで――少年の頭に着地する代わりに、宙を彷徨うエグゼの手。
 声のする方を見れば、いつの間にか傍に居たはずの少年が『ここまで来てよ!』と走り出してエグゼ達のことを呼んでいて。
「おっ、逃げるか、もしや遊びがもうはじまってんのか」
『そうかもしれないし、そうじゃないかも!』
「おらおら待て待て、これは鬼ごっこかー!」
『じゃあ、このまま鬼ごっこしよう!』
 エグゼが追いかけた分だけ、楽しそうなはしゃぎ声をあげて走って逃げ回る少年。
 元気なテンションで少年を追いかけ回すエグゼと、心底楽しんでいる様子の少年を眺めた蒼は、「……すごい、ですね」と感心した様子で呟きを漏らす。
「……シナバーローズ様、何だか、慣れて、らっしゃい、ます。今の姿と、相まって、まるで、兄弟のよう、です」
 遊び回る姿は、まるで本当の兄弟の様だったから。
 と、エグゼと少年のやり取りを聞いていたかなたが、「良いわね!」と何かを閃いた様な表情で思いつきを語り出して。
「そうだわ。鬼ごっこなんて良いアイデアね! 鬼ごっこしましょう!」
「鬼ごっこね? わかった。鬼ごっこする子はこっちへ集合よ」
「鬼ごっこする人、この指止まれー!」
 かなたとジョゼの掛け声に、『鬼ごっこだって!』『するする!』と一目散に二人の方を目指して一斉に向かい始める子供達。
 あっという間に周りがぐるりと取り囲まれるくらいに集まった子供達を前に、かなたが鬼ごっこの始まりを高らかに伝えた。
「お、このまま鬼ごっこ開始なんだな?」
「ふっ。エグゼさん甘いわね。最初はエグゼさんが鬼よー!」
「俺かよ!」
「逃げ、なくては……!」
「エグゼさんが鬼なのね。みんな、こっちよー!」
 かなたの手によってエグゼが鬼に任命されるなり、いち早くひょいっと空中に浮かんだのはジョゼであった。
 ジョゼはふわふわと低空を飛んで逃げつつ、何処へ逃げようか迷っている子供達に呼びかけて、一緒に遠くへ。
 ジョゼが子供達の逃走を先導している傍らで、かなたもまた、逃げ遅れていた子供達に呼びかけて走って逃げていく。
「ほら子供たちも、こっちこっち!」
 子供達と一緒にワイワイ賑やかに逃げるかなただったが、背後から鬼役のエグゼが迫って来ていて。
 皆で一斉に逃げるには、ちょっと無理のあるお庭の通路。
 ならば、と。
「あっ。ジョゼさん、あんなところに面白おかしいものが!」
「あら、どこどこ?」
 とても驚いた顔と共に、近くを飛んで逃げていたジョゼに大きな声で話しかけて――躊躇いなく、生贄にした。
 かなたが指差す方向には、当然何も無いのだが……そうとは知らずに、キョロキョロと周囲を見渡して。ジョゼは一生懸命に「面白おかしいもの」を探している。
「花降さん、面白おかしいものって何かしら?」
「よし、捕まえた!」
「……あら?」
 つい鬼ごっこの途中であることも忘れて、止まってしまったのが運の尽き。
 ジョゼの背後から迫って来ていたエグゼは、笑顔で捕まえた事をジョゼに告げる。
「……嗚呼、ビノシュ様……、花降様の、魔の手に……!」
 離れた所でかなたとジョゼの一部始終を見ていた蒼は、両手を頬に当ててあわあわと。
 鬼だけではなく、かなたにも気を付けないと行けないなんて……!
 魔の手にかかる前に、蒼は子供達と一緒に忍び足でそっと遠くへ。
「かーなたー。人を生贄にするとは感心しねーなー」
「これ捕まった人って鬼になるんだっけ? まてまてー食べちゃうぞー」
 お遊びとは言え、生贄は感心できない。
 ごごごごという擬音を背後に背負いかなたを追いかけるエグゼに、「まてまてー」と狼のフリをして、面白おかしくはしゃぎながら走っていくジョゼが続く。
 元から鬼だったエグゼに、そこにジョゼまで加わって。賑やかにこちらに向かってくる仲間達を見つめたかなたはというと……。
「え、こっち来ちゃうのね!?」
 ――それはもう、全力で逃げた。鬼になりたくない、その一心で。
 けれども、二手に分かれたエグゼとジョゼに挟み撃ちにされてしまえば、逃げ場も無くて。にっこり笑顔のジョゼに捕まってしまう。
「蒼さん蒼さん、ちょっと秘密のお話があるんだけど……」
「……花降様? ……秘密の、お話、とは……?」
 鬼になるなり、何を企んだのか、かなたはひそひそと声を潜め、内緒の秘密事。
 おいでおいでと手招くかなたに招かれて、つい、ふらりと行きかけた蒼だったけれども……。
「神宮時さんそれ花降さんの策略よ逃げてー!」
 蒼がふらりとかなたの方に向かいかけたのを発見したジョゼは、思いきり叫んだ。
 被害者の会代表として、新たな被害者を出すことは何としても避けなければ。
 なんたって、ジョゼは紛れもない、かなたの魔の手にかかった被害者第一号であるのだから……!
「……あれ、もしや、罠?」
「そーだよ、罠だよ、逃げろ蒼!」
 ニコニコと微笑むかなたに誘われていた蒼は、向かいかけたところではっと我に返った。
 はっと我に返った瞬間、ジョゼの声に続いて後方から飛んでくるのはエグゼの叫び。振り返れば、両手で大きくバツ印を作って蒼に合図している。
 二人の説得によって罠を疑い、警戒し始めた蒼にかなたは心の中だけで「バレたわね?」とか、そんな感想を漏らしつつ。
 秘密の話がダメならばと、次の作戦へ。
「ほら、とってもかわいい猫がここに……」
「猫、ですか……!」
「猫なんていないからー!」
 猫と言う言葉に、ぱあっと顔色が一変する蒼。
 キラキラと瞳を輝かせてかなたの方へと吸い寄せられる様に歩き始める蒼の背中に、ジョゼ渾身の叫びが重なる。
 全力で逃げて! と伝えたいところだけど、残念ながら猫一直線の蒼に、ジョゼの声は届いていない様で。
 そう、ジョゼの言う通り猫なんていない。
 もしかしたら、本当にかなただけに見えている猫が居るのかもしれないけれども、少なくとも、ジョゼの目にはニコニコと悪戯な笑みを浮かべて、パタパタと忙しなく象耳を動かしているかなたしか映っていないのだから……!
「ふふ、捕まえたわよ」
「……花降様? ……もしや、猫も、罠……?」
 キョロキョロと猫を探し求めて、かなたが指差した花壇の中を探すことに夢中だった蒼。
 背中にポンと何かが触れたことに気が付いて振り向けば、そこにあったのはかなたの両手で。
 遅れて、猫の話も罠だったことに気付いた蒼だった。
「よーし。次はけーどろしましょ」
 それから暫くの間鬼ごっこを楽しみ――時々襲い掛かるかなたの魔の手を掻い潜りつつ――「次は何をして遊ぼう?」となったところで、遊びを提案したのはかなただった。
 けーどろ。という聞きなれない言葉に、きょとりと瞳を瞬かせている子供達。
 蒼とジョゼも「ケイドロ」という遊びを知らない様で、子供達と一緒に首を傾げてかなたとエグゼの方を見つめている。
「……遊び、とは、奥が、深い、です、ね。けーどろ、不思議な、響き、です」
「けーどろ? どんな遊びかしら?」
 世界には自分の知らない遊びがまだまだ沢山在って。どんな遊びなのかと興味津々な蒼に、「けーどろ」という言葉の並びは、何を指しているのかと思案げなジョゼ。
「なあお前ら、けーどろ知ってるか?」
『知らなーい!』
『どんなルールなの?』
「警察と泥棒に別れて遊ぶ遊びなんだけどな」
 ケイドロを知らない子供達に、頼れる兄貴感を纏ったエグゼがドヤ顔でルールを教えていく。
 警察と泥棒に別れて遊ぶ鬼ごっこであること、警察が泥棒を全て捕まえられたら勝ちであること等のルールを伝えていけば、みるみるうちに子供達が『やってみたい!』とはしゃぎ始めて。
 蒼とジョゼも、ふむふむとエグゼの説明にしっかりと耳を傾けていた。
「何とも、独特な、るーるが」
「警察と泥棒に別れる鬼ごっこって、新鮮な感じだね」
「あとわね。えーっとね、こんな感じで……泥棒が高いところに上っている間は、警察は捕まえられないのよ」
「そんなルールないぞ、かなた?」
「もう! いいのよ。私が最強ってことで! はいスタート!」
 さり気なく混ぜ込まれた、かなたにとって有利な嘘ルール。さり気なく混ぜ込んだつもりだったけれども、目を光らせていたエグゼにはお見通しだった様で。間髪を入れずに突っ込まれた。
 突っ込まれたことを悔しがりつつ、やけっぱっちで叫んだかなたの宣言によってケイドロがスタート!
 泥棒として子供達と共に逃げるかなたを、警察となったジョゼが追いかけるのだが……。
「あっ。ジョゼさん、実は私私服警官で、泥棒じゃないのよ」
「あら? そうなの?」
「ええ、実はそうなのよ。警察側にも泥棒側がスパイとして一人紛れ込んでいるみたいだから、気を付けないといけないわね!」
「それは大変ね。見つけたら、捕まえないと」
 流れる様にスラスラと語られる、かなたによる本日二度目の罠。
 あまりにも自然に語られる「私服警官」と「スパイ」の嘘ルールに、ジョゼもつい普通に騙されてしまう。
「そういうことだから、私はスパイを探してくるわ!」
「ええ、いってらっしゃい!」
 お互いの健闘を祈り合って、笑顔でかなたと別れるジョゼ。
 と、そのやり取りを見守っていた蒼が不思議そうにこてりと首を傾げる。
「……すぱい、に、私服警官、なんて、るーる、さっきは、ありました……?」
「そんなローカルルール、今日は入れてないぞ?」
「え、嘘!?」
 先程の説明を回想しかなたの説明に疑問を抱いていた蒼に、すかさずエグゼが補足を入れる。
 蒼とエグゼの反応に、「嘘!?」と思いきり反応してしまったのはジョゼだ。
 一度ではなく、二度も。かなたの魔の手にかかってしまったジョゼ。ならば。
「花降さん、絶対に捕まえるわよ!」
 遠くでこそーっと事の成り行きを見守っていたかなたを発見するなり、追跡を始めるジョゼ。
 一直線に向かってくるジョゼに嘘がバレたと悟ったのか、かなたも慌てて逃げ始める。
 警察と泥棒と、時々噓ルールが交じったりなんかもして。ワイワイと賑やかに展開されるケイドロは、子供達にも大人気で終わっていた。
「はー。走った走った」
「……何度か、突っ込む、ことは、ありました、が。ともあれ、こういうのは楽しんだもの勝ち、と聞きます」
 主にかなたによって何度か登場した噓ルールと誤魔化しに、突っ込むことはあったが。きっと、それも遊びを面白くするスパイスのうち。
 彼らが満足するまで遊びましょう、と。穏やかな笑顔で子供達を見守る蒼の隣で、疲れ知らずなかなたが早速次の遊びに移るべく、子供達に問い掛けている。
「そうだ。みんなはほかに何か遊ぶの知ってる?」
『かくれんぼ!』
『色鬼!』
「よし、それやりましょう。まだまだ走れるわよー!」
「そうだな。かくれんぼが終わったら、色鬼をするか。遊びって無限大にあるんだぜ、お前らを全力で楽しませてやる!」
「私インドアだからカードゲームとハッキングしか知らないんだけど、他の遊びもぜひやってみたいわ!」
 その後も次々に提案される遊びに、子供達と過ごすとびきり楽しい一時。過ぎ去る時間はあっという間で。
 ――気が付けばもう、すっかり別れの時間に。
「……また、いつか」
 名残惜しそうに自分を見つめる少女に微笑みかけると、蒼は優しく「またね」を告げる。
 お別れは寂しいけれど。彼らにとっては、このお別れこそが次の人生の始まりで……だからきっと、これが本当のさよならになることは、無いのだから。
「また遊びましょうね。きっとまた会えるわ」
 ジョゼもまた、服の裾を掴んで目元に涙を浮かべている少年と目線を合わせる様にして屈むと、小指を絡めて「約束」を。きっと会えると、そう信じて。
「今度もいっぱい遊びましょうね。約束よ!」
「今日教えられなかった遊びも、次会った時に教えてやるからよ」
 かなたとエグゼが笑い掛けると、子供達の間から上がるのは『約束だよ!』という声で。
 幻朧桜の花吹雪に包まれて、転生の道へと歩みだす彼らのことを。四人は、最後まで静かに見送っていた。
 また会おうと、交わした約束を胸に抱いて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

コッペリウス・ソムヌス
【シンク】◆
引き続きマントの仮装に
悪戯魔法の影も動かせたら面白そうだなぁ
さて、楽しんだあとは一仕事するとしようか

手持ちの書物の頁を捲れば
悪戯をするのは何故か?と、
翼ある獣を呼び出せたら有難いけど其処はそれ
齧らせ過ぎないよう注意もしつつ
さぁ、影朧の子供達と追いかけっこだよ

オレ自身も後ろから着いて行って
揺らめく影での足止めや、挟み撃ちも必要かい
白焔てらす龍神サマと
すばしっこい黒猫な彼女とも協力してたら
遊んでいるのはどちらか分からないね

子どもの遊戯をするような機会が
巡るとは思いもよらなかったけれど
そうして転生の道を歩み始めるならば、
満足する手助けになって何よりだよ


邨戸・嵐
【シンク】◆

ひとと遊ぶのは楽しいよねえ
誰かの食べてるものこそ美味しそうなのもすっごく分かる
向こう側についても良いぐらいだ

騙し打ちが専門なんだけど
今日ばっかりはぴかぴかの神さまだからねえ
怖がらせ過ぎちゃだめなんだって、って
コッペリウスの遣いに声を掛けよう

俺の食事を奪おうだなんて良い度胸だ
付け焼刃の威厳ある風を装って
抑えたUCを子供たちへ
見た目ばっかりきれいでしょ
たくさんはしゃいで貰おうねえ

白焔の光で足元を眩ませるのがほんとの目的
追うみつきの支援にもなれば良いな
躓きでもしたら孤影で足を絡め取って
捕まえた相手にはからかいの声を

俺も悪戯は得意なんだ
飽きるまでだけ付き合ってあげる
今日は機嫌がいいからねえ


神白・みつき
【シンク】◆

図らずもそれぞれ仮装に見合った姿になりましたね
お二人とそんな話をしながら食事もひと段落、というところで
件の影朧達がやって来たようです

彼らの悪戯も戦場で見るものと比べれば可愛いもの
それでは、満足するまでお相手しましょう

UC『依代・剣』を加減して発動
複製した神剣の切っ先を彼らに向けるのでなく
行く手を塞ぐのに使います
今の私は黒猫ですので、足も多少速くなっているのでは?

とはいえ、鬼子事には不慣れですので
お二人にも存分に頼らせていただきますね
龍神様の白焔に目を眩ませた子も、
吸血鬼の影に驚いて足を止めた子も捕まえて
最後はお疲れ様でした、とお菓子をひとつずつ

笑顔で転生する姿を見送れたら何よりです




「図らずもそれぞれ仮装に見合った姿になりましたね」
 あっさりとした甘い味わいの「夜明けの香草茶」とラベンダー香る白ワインの香草酒は、それぞれ食後茶や食後酒として味わっても良いもので。
 目の前の龍神サマが空っぽにしたお皿の数に驚きながら、神白・みつきは改めて雰囲気の変わった仲間達の姿を眺めて、頬を桜色に染めるとふんわりと穏やかな笑みを浮かべた。
 それぞれの仮装に見合った姿になった、「悪戯」の効果。影を動かせないか興味深そうに試しているコッペリウス・ソムヌスもまた、みつきの言葉にこくりと頷いて。
「悪戯魔法の影も動かせたら面白そうだなぁ」
「コッペリウスなら動かせるんじゃないかなあ」
「そうだね。何となくコツは掴めたと思うよ」
「影まで動かせるようになるのですね」
 青く染まる影をゆらゆらと揺らめかせていたコッペリウスは、じっと影を見つめていた邨戸・嵐に向かって満足げな笑みを浮かべてみせた。
 気合と慣れがあれば、悪戯魔法の効果で生まれた変化は、存外に動かせるものが多そうだ。
 そんな風に、食事もひと段落して食後の会話を楽しんでいたところ。
 にわかに騒がしくなったカフェーの外の様子に一早く気付いたみつきが、猫耳をピンと立たせながら、勢い良く出入り口の方を振り返った。
「件の影朧達がやって来たようです」
「おや、お出ましかい? さて、楽しんだあとは一仕事するとしようか」
 みつきとコッペリウスが表情を引き締め、静かに頷き合ったその直後――遠慮の欠片も見せずに盛大に扉が開かれたかと思うと、影朧の子供達が濁流の様に流れ込んで来る。
 鮮やかな手つきで雑貨屋のお菓子だけを根こそぎ奪い去っていた小さな怪盗団は、それだけでは飽き足らず、カフェーの内外に悪戯を仕掛け始める始末。
 ハロウィンの日だからと、多少羽目を外したくなる気持ちは理解できるが、とは言え、他人に迷惑をかけるのはいただけない。
「彼らの悪戯も戦場で見るものと比べれば可愛いものです」
 他人に迷惑が掛かるとは言え、命の危険までは無い。戦場で見るものと比べれば、赤子の様に可愛いもの。
 満足するまで相手をして、それで彼らが未練無く転生の道へと歩むことが出来るのなら。
 「それでは、満足するまでお相手しましょう」と、動きやすいように髪を一つに結ったみつきの声に、妙に緊張感に欠けた、嵐の間延びした声が後を追った。
「ひとと遊ぶのは楽しいよねえ」
 テーブルの上にでろんと身体を預けたまま、「うんうん」と頷いている嵐。子供達の気持ちは、多分かなり理解できる。
 人と遊ぶのは楽しいし、ついテンションが高くなって羽目を外してしまうこともあり得る話なのだから。
「誰かの食べてるものこそ美味しそうなのもすっごく分かる。向こう側についても良いぐらいだ」
「え、向こう側につくのかい? それは厄介な事になりそうだよ」
 子供達への共感を積み重ねていく嵐に、飛んできたのが失笑を纏ったコッペリウスの言葉で。
 子供達側についてはしゃぎたい気持ちもあるけれども。今日の嵐は、これ以上悪戯をしない様に、子供達を導きながら遊んであげる龍神サマなのだから。
 多少の名残惜しさを抱いたまま、嵐はゆるりと椅子から立ち上がる。
 それに合わせて、コッペリウスもまた、こつりこつりとマントを翻しながら子供達へと近づいていくと。手持ちの書物の頁を優雅な動作で捲っていく。
「悪戯をするのは何故か?」
 問う。子供達が悪戯をする、その訳を。
『楽しいじゃん!』
『面白いから?』
『だってハロウィンだし!』
 翼ある獣を呼び出せたのならば、それが本望ではあるが。其処はそれだ。
 コッペリウスの問いかけに応える様にして、頁から飛び出してきたのは数体の蝙蝠だ。
 闇を凝縮したかの様な漆黒の翼で空気を打ちつつ、蝙蝠達は空中を飛び交い走って逃げる子供達を追いかけていく。
「さぁ、影朧の子供達と追いかけっこだよ」
「騙し打ちが専門なんだけど、今日ばっかりはぴかぴかの神さまだからねえ」
 楽しそうに頬を緩ませるコッペリウスとその遣いを眺めて、金ぴかな龍神サマは蝙蝠達に話しかける。
 騙し打ちが専門の神様も、今日ばかりは手加減をする日だ。だから。
「怖がらせ過ぎちゃだめなんだって」
 蝙蝠に話しかければ、「了解した」とばかりに一際大きな羽ばたきが生じた。
「今の私は黒猫ですので、足も多少速くなっているのでは?」
 蝙蝠やコッペリウス、それから何かを準備しているらしき嵐から、はしゃぎ声を上げながら逃げていく子供達。
 そんな彼らを追いかけるのは、花綻ぶ黒猫の化身と化したみつきだ。
 みつきは複製した神剣をその手に握り締めると、素早い身のこなしで障害物を避けて、子供達を追いかける。
 黒猫であるからか、多少足や動体視力も良くなっている様だ。
 小走りで駆け――勢いそのままに、子供達の前に躍り出たみつきは、神剣で子供達の行く手を塞いだ。
『すげー! 忍者みたい!』
『でも、俺らに追いつけるかな!』
 一瞬にして目の前に躍り出たみつきに反射的に立ち止まり、尊敬と驚きが合わさった眼差しで子供達がみつきを見上げたのも少しの事。
 次の瞬間にはニヤリと悪戯な笑みを浮かべると、みつきから逃れる様にして左右それぞれに別れて走り始める。
「俺の食事を奪おうだなんて良い度胸だ」
 と、二方向に別れたうち、左側に逃げた子供達を嵐が追いかけ始めた。
 今宵ばかりは名実共に竜神サマで在るのだ。ゆったりとした動作で歩むだけで威厳を感じられるが、もう一押し。
 付け焼刃とは言え、威厳のある風を装って。嵐が吹き荒れさせるのは、月光宿した凍てつく白焔。
 空間が揺れる感覚がしたかと思えば、次の瞬間、自身の脇を通り過ぎて行く、冷たい焔の奔流。
 まるで、焔が冬を纏って襲い掛かってきた様な。美しく、神秘的なその光景は、激しく子供達の興味を惹いたらしい。
 嵐の進行方向に向かって真っ直ぐに放たれるそれに、少年達は興奮で目を輝かせた。
『すげぇぇぇ!!』
『兄ちゃん、もしかして本物の龍神様!?』
「見た目ばっかりきれいでしょ。たくさんはしゃいで貰おうねえ」
 ちょこまかと駆けながらも早口で質問を投げかける数人の少年に、嵐は満更でもなさそうな笑みを浮かべた。
「揺らめく影での足止めや、挟み撃ちも必要かい」
 キラリ、と。床に星空が瞬いた。
 背後から忍び寄るそれに、少女は気が付いて居なかったらしい。
 ゆらゆらと妖しく揺らめくのは、床に散った深い星空で。次々に揺らめいては形を変えていく足元のそれに、すっかり我を忘れて魅入ってしまって居る。
 いつの間にか、伸びてきた影の一部が自身の足首を掴んでいることも気付かずに。影を眺める少女の向かいから、数体の蝙蝠達がやってくる。
 咄嗟に逃げようと足を動かしても、コッペリウスが操る魔法の影に捕らわれた少女は動けない。
 蝙蝠に襲られる、と。反射的に目を背けた先にも、大きな口を開けた影の怪物が迫っていて――。
「はい、捕まえた」
 近いうちに訪れるだろう衝撃に目を固く瞑った少女であったが、警戒した痛みは何時になっても訪れることは無くて。
 不審に思って瞼を開けたところ、頭に生じたのはむぎゅっとした柔らかい何か。見れば、蝙蝠があぐあぐと甘噛み程度に少女の頭に齧りついているところで。
 呆気に取られて床に座り込んだ少女に、コッペリウスは笑顔で「捕まえた」を告げるのだ。
「とはいえ、鬼子事には不慣れですので。お二人にも存分に頼らせていただきますね」
 にこにこと鬼子事途中とは思えぬほどに穏やかな微笑みを浮かべたみつきは、しかし、次々に子供達を捕まえていく。
 不慣れであるから、勿論嵐やコッペリウスとも協力して。
 みつきが手にした神剣に驚いて立ち止まってしまった少年は勿論のこと、嵐の白焔に目を眩ませて転びかけた子も、吸血鬼が操る影に思わず足を止めた子も、皆同様に。
「遊んでいるのはどちらか分からないね」
 素早いみつきの走りに追われて、背後を気にするあまり、前を見ていなかったのが運の尽き。
 正面から襲ってきた蝙蝠に遊ばれつつ甘噛みされている少年を見て、「遊んでいるのはどちらか」なんて。そんなことを呟いてしまうコッペリウス。
 嵐もみつきもコッペリウスも、恐らく子供達と同じくらいにはノリノリに違いなかったから。
「おっと、危ないよ」
 吸血鬼の影に驚いたらしい。足が縺れて転びかけた子供の足を、嵐はすかさず孤影で絡め取って支えてやった。
 ひとを真似た嵐の足元の影。ひとの影では出来ぬことも、孤影ならば。
「ぼんやりしてたら、龍神サマに食べられるかもねえ」
 と、捕まえた子供に大口を開いてからかいを。
「俺も悪戯は得意なんだ。飽きるまでだけ付き合ってあげる。今日は機嫌がいいからねえ」
 そう宣言した嵐は、捕まえた子供をみつきに預けて次のターゲットの元へ。
 白焔を活かして足止めしたり、龍神サマっぽく振舞ってみたり。そう、悪戯は得意なのだから。
「子どもの遊戯をするような機会が、巡るとは思いもよらなかったけれど」
 ――そうして、漸く三人と遊んでいた全員の子供達が捕まって。
 捕らえた子供達全員にお菓子を一つずつ配っていくみつきを眺めながら、コッペリウスは呟きを漏らす。
 子供に交じって遊戯をする機会が巡ってくるとは思わなかったけれども、それが彼らの為になるのならば。
(「そうして転生の道を歩み始めるならば、満足する手助けになって何よりだよ」)
 手助けになったのなら、それ以上に嬉しいことは無い。
「お疲れ様でした」
 一人一人に、目線を合わせて。そっとお菓子を手渡して、笑顔で「また何処かで」を告げていくみつき。
 これは始まりであって、終わりではない。子供達の新たな人生は、ここからまた、始まるのだから。
 どうか、転生した彼らの人生が幸せなものになりますように、と。手渡すお菓子に、祈りを込めて。
「また遊ぼうねえ」
「悪戯は程々に。約束ですよ?」
「約束を破ったら、きっと蝙蝠がまた齧りに行くことになると思うからね」
 幻朧桜の花弁に包まれて、少しずつ姿が薄くなっていく子供達。
 笑顔で手を振って別れを告げて、三人は彼らの人生の幸せを祈る。
 きっと忘れてしまうだろうけれども。今日のこの思い出が、子供達のこれからの人生の中で、彼らを導く灯りとなることを願って。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ヘルガ・リープフラウ
❄花狼

あらあら、悪戯好きな可愛いオバケちゃんたちのお出ましね
姿は見えないけど、気配はなんとなく感じるわ

ヴォルフったら、あまりにも分かりやす過ぎるんですもの
この子達も構ってほしいだけ。きっと悪気なんてないわ
だけど、悪戯もほどほどにしないと、他のお客様にご迷惑ですから
さあ、おとなしくして頂戴な

子供たちの姿は目には見えないけれど
床にはヴォルフが吐いた「愛の言の葉の花」がいっぱい
ドタバタと走り回る度に、小さな足跡が刻まれ花びらが舞う

……ほら、捕まえた

この子達を全員見つけられたのはヴォルフのおかげよ。大殊勲だわ。
さあ、おいたの時間が終わったら
待望のお菓子をあげましょうね


ヴォルフガング・エアレーザー
❄花狼

突然響き渡る子供たちの嬌声と、ドタバタした足音
だが声はすれども姿は見えず
これは、不思議なお菓子のせいで姿が消えたのをいいことに悪戯放題するつもりだな
そんなことを考えていると

「お姉さんとお兄さんはアッチッチだ!」と
どこからともなくはやし立てる声

🌸🌸🌸(こら!)
🌸🌸🌸🌸🌸🌸(あまり大人をからかうんじゃない!)

口から溢れるのは叱咤の言葉ではなく、やはり色とりどりの花ばかり
……くっ、こんな時になってまで、気まぐれ魔法の効果が切れないのか
何だか締まらないな

大殊勲って……俺は何もしていないが?
俺だって、別に本気で怒ってはいないさ
姿を現した子供たちの頭を撫でて
来世への旅立ちを見送ろう




 個性豊かな仮装に身を包み、カフェー内で好き勝手に悪戯を披露していく子供達に紛れる様にして。
 突然、自分のすぐ脇を何かが横切る様にカフェー内の空気が揺らいだかと思ったら、次いで聞こえてくるのは、ドタバタとした騒がしい足音と、ワイワイという子供達のはしゃぎ声で。
 パタパタと絶え間なく立てられる賑やかな物音を聞いて、ヘルガ・リープフラウは物音がする方を見ると、静かに微笑を湛えた。
「あらあら、悪戯好きな可愛いオバケちゃんたちのお出ましね。姿は見えないけど、気配はなんとなく感じるわ」
 これは多分、雑貨屋のお菓子を「つまみ食い」して、透明になってしまったに違いない。
 姿が見えないだけで、確かにこの場に存在している子供達の気配が感じられたから。
 ヘルガが透明な影朧の子供達に向かって話しかければ、『よく見つけたね!』とはしゃぐように、一際歓声が大きく上がった。
(「これは、不思議なお菓子のせいで姿が消えたのをいいことに悪戯放題するつもりだな」)
 だが、声はすれども姿は見えず。
 ペタペタと鬼ごっこをする様に、カフェー内を走り回っているばかり。
 ハロウィンの日であるせいか、どさくさに紛れて、雑貨屋のお菓子を再びつまみ食いしたり、ドンドンと窓硝子を叩いて外を歩く通行人を驚かせたり――と。そんな悪戯ばかりを繰り返している。
 姿が見えないせいで面倒事が増えたな、と。
 ヴォルフガング・エアレーザーがため息を吐いて、好き放題を繰り返している子供達が居ると思しき方向を眺めると、ヘルガが優しい眼差しで自分を見つめていることに気が付いた。
 「どうした?」と視線だけでヴォルフガングが問いかければ、ヘルガの笑みが一層深いものになって。
「ヴォルフったら、あまりにも分かりやす過ぎるんですもの」
 ヴォルフガングが何を考えているかなんて、彼と長い年月を共に過ごしてきたヘルガにとっては全てお見通しだ。
 眉を顰めて困った表情から、ヘルガの言葉に意外そうに瞳を瞬かせて。
 万華鏡の様に変わる彼の仕草や表情の一つ一つを愛おしく感じながら、ヴォルフガングに言い聞かせていく。
「この子達も構ってほしいだけ。きっと悪気なんてないわ」
 そう、子供達はきっと構って欲しいだけ。
 一緒にハロウィンを楽しみたいだけで、悪気なんて無い。
 けれど、それが他人に迷惑をかけて良い理由にはならないから。
「だけど、悪戯もほどほどにしないと、他のお客様にご迷惑ですから。さあ、おとなしくして頂戴な」
 「ダメよ」と。慈愛に満ちた微笑みで、パタパタと物音のする方向に優しく告げるヘルガ。
 やはり、目には見えないだけで子供達は確かに居る様で。ヘルガの声に、シンと物音が静かになった。
 子供達に寄り添って柔らかな表情で語り聞かせるヘルガは、地上に降り立った聖母の様にも見えた。
 ふんわりと髪に春が綻んだままのヘルガの横顔に、思わずヴォルフガングが魅入ってしまって居たところ――。
『お姉さんとお兄さんはアッチッチだ!』
『アッチッチ! アッチッチ!』
『熱くて火傷しちゃう!』
 シンと静まり返っていた空気が一変。
 何処からともなく、ヴォルフガングとヘルガを取り囲む様にして囃し立てる声が上がったかと思うと、あっという間に四方八方から揶揄う声が響いてきて。
 「あらあら」と困った様に頬に手を当ててゆるりと微笑んでいるヘルガとは反対に、ヴォルフガングの顔は熟れた林檎の様に真っ赤に染まっている。
「(こら! あまり大人をからかうんじゃない!)」
 揶揄われた恥ずかしさから、顔を真っ赤にしたまま半ば自棄になって子供達へと叱咤の言葉を送ったはずのヴォルフガングであったが――まだ、悪戯料理の効果がきれていない様で。
 叱咤の言葉の代わりにヴォルフガングの口から勢い良く溢れたのは、色とりどりの無数の花弁であった。
 勢い良く溢れた花弁の奔流は、ふわりと舞い上がるとふわふわと床に降り積もっていく。
 子供達とて、まさかヴォルフガングに悪戯料理の効果が表れているとは思ってもいなかった様で。
 まさかの出来事に沈黙が周囲を覆い隠すこと、たっぷり三秒。それからややあって、ドッと子供達の笑い声が店内の空間を揺らしていく。
『お兄ちゃん凄ーい!』
『手品? ねえねえ、さっきの手品!?』
 キャッキャと騒ぎ立て、どうやら子供達は自分を取り囲んでいるらしい。
 姿は見えないけれど、子供達の重さ分沈み込んだ花弁の絨毯の様子や、子供達が纏わりつく様にして背や腕にのしかかってくる重みを確かにヴォルフガングは感じていた。
(「……くっ、こんな時になってまで、気まぐれ魔法の効果が切れないのか。何だか締まらないな」)
 子供達のはしゃぎ声に隠れて微かに聞こえてくるのは、ヘルガが堪えきれずに零した小さな笑い声。
 見れば、ヘルガが口元に手を当てて小さく肩を震わせているところで。
 「ごめんなさい、ヴォルフ」と謝りながら目元に浮かんだ涙を拭って、どうにか笑いを殺そうとしている。
 慌てたり、驚いたり。コロコロと表情の変わるヴォルフガングの様子が愛らしくて、それから締まらない様子が面白くて。
 子供達の姿は目には見えないけれど。床には、ヴォルフガングがヘルガに向けて送った「愛の言の葉の花」がいっぱい積もっていたから。
 ドタバタと走り回る度に、小さな足跡が刻まれ花びらが舞う。
 子供達は隠れているつもりなのだけど、ヘルガには皆が何処に居るかお見通しで。
「……ほら、捕まえた」
 優しく頭や肩に触れて。鬼ごっこを続けるつもりだった子供達を、ヘルガは一人残らず見つけ出すと、優しく椅子に座らせてあげた。
 遊んで貰って楽しかったのだろう。ふわりと姿を現した子供達は、明るい笑顔でヘルガやヴォルフガングのことを見上げている。
「この子達を全員見つけられたのはヴォルフのおかげよ。大殊勲だわ」
「大殊勲って……俺は何もしていないが?」
 まだ気恥ずかしいのだろう。ヴォルフガングが頬をかいて気まずそうに視線を逸らせば、途端に子供達から揶揄いの声が上がった。
「さあ、おいたの時間が終わったら、待望のお菓子をあげましょうね」
「俺だって、別に本気で怒ってはいないさ」
 揶揄いに「こら」とヴォルフガングが形ばかり怒っている一方で。
 ヘルガは子供達と、幾つかの約束を結んでいく。他人に迷惑をかける悪戯はしないこと、散らかした物は自分達で片付けること――「おいたの時間」という表現とは裏腹に、ヘルガが子供達に向ける表情は優しい。
 そんなヘルガを穏やかな眼差しで見守りながら。ヴォルフガングもまた、子供達の頭を優しく撫でていく。
 ヘルガから受け取ったお菓子を大切そうに握り締めて。幻朧桜の花吹雪に抱かれて転生の道へと歩んでいく彼らのことを、二人は静かに見送った。
 この子達の来世が幸せに満ちたものになりますように、と。祈りを込めて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

御鏡・幸四郎
ディルさん(f37834)と悪戯っ子対策に。

仮装:黒ローブの死神姿

さて、来ましたね、悪戯っ子たち。
それではこちらも行きましょうか。

「皆さん、よろしくお願いします」
ハロウィン仕様の雑霊たちを召喚。
南瓜を被った雑霊が子供たちを追い立てます。

一つ所に集まったらディルさんに目配せし、
雑霊ごと子供たちを一網打尽。
外から子供たちに呼びかけます。
「美味しいお菓子が欲しい子は、ゴメンナサイして出ておいで」

素直に謝る子はすぐに解放。
強情な子も雑霊たちが消えてゆけば、
自分だけが取り残されることに気づくでしょう。
泣きべそかいて出てきたら、お茶会の席に案内します。
転生までのひと時、お茶とお菓子を楽しんで下さいね。


ディル・ウェッジウイッター
引き続き幸四郎(f35892)さんと一緒に行動
悪戯を企む子たちの対応に回ります

おや噂をすればお客様が。いえ今は私も客ですが
ではお出迎えしましょう

子供たちが危ない場所・物に近づこうとするのをそれとなく妨害しつつ…耳は引っ張らないでくださいな
とにかく、幸四郎さんから合図を貰ったらユーベルコードを発動、
子供たちをテーブルクロスの中へ閉じ込めます
好奇心擽られる物が多い場所ゆえ遊びたい気持ちはわかりますが
他の人の迷惑になる事はしてはいけませんよ

反省する子供たちが出てきたなら店内の掃除をし、店主に許可を取ってお茶会を開きます
お茶はこちらで購入した茶葉の物を使わせていただきましょう

ゆっくりお楽しみくださいね




 緩やかに過ぎていくティータイムを楽しんでいたところ、唐突に賑やかな騒ぎ声がカフェーの外から聞こえ始めて。
 それから間髪入れずに、思いきり扉が開かれたかと思うと――カフェーへと一斉に飛び込んできたのは、数十人近い影朧の子供達。
 彼らの辞書には「遠慮」なんて言葉は、きっと載っていないのだろう。好き勝手に店内を走り回ったかと思うと、雑貨屋のお菓子を根こそぎ奪い去っていくのだから!
「さて、来ましたね、悪戯っ子たち」
 予知されていた影朧の子供達の襲撃に、御鏡・幸四郎は顔を上げるとカフェー内を勝手気ままに走り回っている子供達を見つめて目を細める。
 ティータイムは終わりだ。これからは、悪戯を企む子供達を止めるお仕事の時間に入るのだから。
「おや噂をすればお客様が。いえ今は私も客ですが。ではお出迎えしましょう」
「ええ。それではこちらも行きましょうか」
 長い兎耳が生えたお陰で、不要となったシルクハットを丁寧にテーブルの上に置いて。
 ディル・ウェッジウイッターは、椅子から立ち上がりハロウィンカラーのジャケットを正すと、黒いローブを翻す幸四郎と顔を見合わせて、頷き合った。
 ハロウィンの日だから、多少の悪戯には目を瞑りたいところだが――他人のティータイムを邪魔したり、お菓子を粗末に扱ったりするのはいただけない。
 お茶会とは、皆が平等に楽しむ時間であるべきで。
 子供達の悪戯は、ティーソムリエとして、菓子職人として、見逃すことは出来なかったから。
 子供達の悪戯を止めるべく、ディルと幸四郎は影朧の子供達へと向かっていく。
「皆さん、よろしくお願いします」
 誠意を以て発せられた幸四郎の声に、応える存在があった。
 幸四郎が呼びかけた途端、一体、また一体と姿を現していくのは、コミカルなオバケ姿の雑霊達だ。
 子供が描いたポップな落書きの様に何だか憎めない姿をしている雑霊達は、ハロウィンの日にちなんで皆一様に、オレンジ色の南瓜を被っている。
『!? なんか出てきた!』
『あれって本物のオバケ?』
 幸四郎の指示のもと、次々に向かいくる雑霊に子供達は驚いた様に固まっていたが――次の瞬間には弾かれた様に駆けだして、ワイワイと騒ぎつつ雑霊から逃げ出した。
「こら、そちらは危険ですよ。窓から飛び出すのも怪我をしますので」
 ゆらゆらと左右に揺れながら、あえてギリギリ捕まえられない速度で追いかけたり、子供達が逃げる進路に先回りして驚かせたり。
 雑霊から逃げ回る為なら、子供達は手段を問わない様だ。テーブルによじ登ったり、窓から外に飛び出したりしようとするのだから!
 雑霊から逃げ回る子供達が危ない場所や物に近付かない様に、ディルはそれとなく妨害することで大忙しだ。
 キッチンに忍び込もうとした少女の手を引き、雑霊にお皿を投げつけようとした少年からそっとお皿を預かって。
『お兄ちゃんのこの耳、ほんもの? ほんもの!?』
『わー! 兎耳だぁー!』
「……耳は引っ張らないでくださいな」
 どうやら、子供達はそれとなく妨害するディルの事が気になったらしい。
 ワイワイと騒ぎながら逃げる傍らで、ディルの背によじ登って兎耳を引っ張ったり、腕を引いて一緒に遊ぼうと誘ったりしている。
 子供達の熱烈なお誘いに苦笑いを浮かべつつ、紳士的に一礼をすると、そっと纏わりついてくる彼らから距離を取った。
「どうやら今の様ですね」
「分かりましたよ、幸四郎さん」
 子供達がディルに群がった瞬間を、幸四郎は見逃さなかった。
 ディルが子供達から距離を取った瞬間を見逃さず、幸四郎はディルに目配せをして合図を送る。
 万一逃げ出す子が居た時の為に、一か所に集まった子供達を取り囲む様にして、雑霊が彷徨っているのだ。逃がすことはないだろう。
「それでは、少々失礼いたしますよ」
 幸四郎の合図を受けたディルは、目にも留まらぬ速さでテーブルクロスを取り出すと――ふわり、と。一か所に集まった子供達をそのまま、テーブルクロスの中に閉じ込めてしまう。
『なんだこれ!』
『どうなってるの!?』
「好奇心擽られる物が多い場所ゆえ遊びたい気持ちはわかりますが、他の人の迷惑になる事はしてはいけませんよ」
 突然、テーブルクロスの中に閉じ込められて驚きつつ騒いでいる子供達に、テーブルクロスの外側からディルが柔らかい声音で注意を送る。
「美味しいお菓子が欲しい子は、ゴメンナサイして出ておいで」
 幸四郎もまた、テーブルクロスに捕らえられて騒いでいる子供達に向かって、優しい声でそう語り掛けた。
 他人に迷惑をかけてはいけないけれど。ごめんなさいができるのなら、今回のことは大目に見てあげるから。
 ディルと幸四郎の声に、子供達の反応を待つ事少しの間。
 やがて、テーブルクロスの端が微かに揺れ動いたかと思うと――恐る恐ると言った表情で、不安げな表情をした子供達が顔を覗かせる。
『……ごめんなさい』
『さっきの悪戯は、オレ、やり過ぎたと思う……』
「よしよし、良い子ですね。ちゃんとゴメンナサイできたのですから」
 数人が出てきたのを皮切りに、それからぽつぽつと子供達が顔を覗かせる。
 だが、中には強情な子もいる様で。
『絶対に謝んねーし! わ、悪くねぇもん!』
 テーブルクロスの中に立てこもっている少年がそう叫んでいるが、その声をよく聞いてみれば、声の端々が何処か震えていて。
 次々に出ていく仲間達に、寂しくなったのだろう。結局、最後まで残っていた数人も泣きべそをかきながら出てきて「ごめんなさい」を告げた。
「よく謝れましたね。立派ですよ」
 泣かない様に必死で涙を堪えている少年の頭を撫でて、ディルは安心させる様に微笑みかける。
 そのまま一緒に店主である愛実にも謝る為に付き添って、子供達が謝る様を見守るディル。
 彼らが滅茶苦茶にした店内の片付けを手伝い、それが終われば。
「お茶はこちらで購入した茶葉の物を使わせていただきましょう。ゆっくりお楽しみくださいね」
 クスリと微笑んで、ディルは子供達を手招いた。
 これは、きちんと謝って片付けも出来たことに対する、ちょっとしたご褒美の様なもの。
 片付けを終えた子供達をお茶会の用意がされていたテーブルへと案内すれば、お茶と菓子の用意を終えた幸四郎がにこりと笑顔で出迎えてくれる。
『これ、なんて言うお茶!?』
『おいしそー!』
「転生までのひと時、お茶とお菓子を楽しんで下さいね」
 店主の許可を得て開いたお茶会は、ちょっと豪華なもので。
 見たことも無いお菓子やお茶の数々に、瞳を輝かせてテーブルを覗き込む子供達。
 そんな彼らの様子に幸四郎とディルは微笑んで、お茶会の始まりを告げる。
 転生までのひと時。彼らがこの細やかなお茶会を楽しめますようにと、そればかりを思って。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

城野・いばら
◆■
*引き続き、一千一夜物語の語り部さん衣装で
一気に賑やかになった店内に瞳ぱちくりするけれど
走ったら危ないわ
慌てて追いかけたコ達の前に広がるのはハーブ園
けれど、ダメ
お花さん達は、お化けさんを上手く躱せないのよ
皆が傷つく前に…
そうだわ、広いお庭をすこうしお借りして
悪戯お化けさん達がおもいきり遊べる場をご用意するの

【UC】の魔法の糸で創造するのは
大きなぬいぐるみ遊具
いつか体験した、跳ねて滑れるエアー遊具さんをヒントに
楽しんだ雑貨屋さんの、不思議で素敵なコ達をアイデアに

元気なコ達にも注目してもらえるようにね
【小さなうたごえ】の皆も手伝ってもらって歌唱でお誘い
♪歌いましょう 踊りましょう
星降る夜に 南瓜笑う夜に~♪
ふふ、合唱も楽しいよって手招いて
いっしょに遊びましょう
Trickはね、みーんなが楽しめる方が良い

一夜で消えてしまう魔法だけれど
楽しんでもらえたら
続きは――また、皆に出会えたその時に




 雑貨屋での茶葉選びに一度集中してしまえば、刻が経つのは本当にあっという間だった。
 心がとてもワクワクして、物語の続きや新たな登場人物との出逢いが楽しみで。『一千夜一夜物語』に出てくる王様だって、こんな気分だったに違いない、と。
 『一千夜一夜物語』の語り部さんの衣装をふわりと揺らしながら、城野・いばらは静かに微笑んだ。
 物語の人物と同じような気持ちになれるのは、何だかとっても不思議な気分。
 彼らと同じ気持ちになればなれた分だけ、本の中に住む彼らとの距離が近くなったみたいで――それが少し、嬉しかった。
 お茶の中に果物が沢山入ったフルーツティーに、物語や童話をモチーフにしたブレンドティー。
 茶葉を探す旅は、一度入ったら抜け出せない、不思議な魔法の国みたいで。
 「お茶のお供に」と各種茶葉やティーバッグの隣には、アリス達が本物の『不思議の国のアリス』になれる、「drink me」と綺麗な筆記体で書かれたラベルが特徴的な淡い空色のジュースに、「eat me」とカラフルな文字とイラストの踊るクッキーのパッケージといった、不思議なお茶菓子やジュースも置かれていた。
 素敵な品々に囲まれて、一秒だって立ち止まらずに過ぎ去っていく時間が惜しくって。
 そうやっていばらがお茶を巡る旅に思考を旅立たせていたところ、突然カフェーになだれ込んできたのは、沢山の影朧の子供達で。
 ノックも無ければ、「失礼します」の一声だってなかった。
 夜が突然明けて、昼になったかのように。一気に賑やかになった店内に、思わず商品を探す手を止めて瞳をぱちくりと瞬かせたけれど。
 子供達が目の前を走り去ったかと思ったら、次の瞬間には棚から綺麗にお菓子だけ消えていたことには、もっと瞳をぱちぱちとさせたけれど。
「走ったら危ないわ」
 お菓子を両手に抱えて走り去る子供達の行き先が、目の前に広がるハーブ園であることに気付いたいばらは、弾かれた様に慌てて子供達を追いかけ始めた。
 ワイワイと揶揄ったり、悪戯を仕掛けたりすることに夢中の子供達は、絶対に気付いていないに違いない。だって、前すらまともに見ずに走っているのだから。
「けれど、ダメ。お花さん達は、お化けさんを上手く躱せないのよ」
 目の前に障害物が現れるまで、子供達はきっと真っ直ぐに走り続けてしまうのだろう。テラス席へと続く扉は開け放たれていて、そこからそのままハーブ畑に降りられてしまうのだから。
 そうして、小さな花々が上げる声にも気付かないまま、ハーブを踏み荒らしてしまうのだろう。
 元はお城の生垣に咲いていた白薔薇であったいばら。仲間が傷つくのを見るのは、悲しいから。
「皆が傷つく前に……」
 どうにかして、傷つかないで済む方法を。
 そう思って、子供達を慌てて追いかけるいばらは彼らに向かって手を伸ばすけれど、悪戯と逃走に夢中な彼らはちっとも気付いてはくれない様子。
 届かぬ声に「どうしようかしら」と眉を下げて、困った様に悩んだのも一瞬のこと。
 「そうだわ」と頭の中で一気に芽吹いて花を咲かせた素敵なアイデアに、次の瞬間には素敵なアイデアを実行するべく、行動に移していた。
「広いお庭をすこうしお借りして、悪戯お化けさん達がおもいきり遊べる場をご用意するの」
 時計ウサギさんも子供達も、声をかけたってきっと立ち止まってはくれないだろうから。
 急いで駆けていく彼らも思わず驚いて立ち止まってしまう様な、楽しくて素敵なものを。
 驚きと夢を材料に。想像した光景を糸として編み込んで、創造して。
 いばらが魔法の糸で紡いでいくのは、大きな大きなぬいぐるみの遊具。
 楽しんだ雑貨屋さんの、不思議で素敵なコ達をアイデアに。いつか体験した、跳ねて滑れるエアー遊具さんをヒントにして。
 歌って踊れるオバケカボチャに、優雅な足取りでお庭を歩く猫又さんに、空を飛ぶ巨大な蝙蝠。これならきっと、子供達もとびきり喜んでくれるに違いない。
 今日のいばらは物語の語り部さんなのだから。どんな物語や想像だって、きっと現実のものとして創造できてしまうのだろう。
「元気なコ達にも注目してもらえるようにね」
 不思議で楽しい遊具を編み上げたのなら。後は、悪戯に夢中な元気なコ達にも注目して貰えるように、お誘いをかけるだけ。
 いばらが小さな箱を開いたのなら。そこに広がっているのは、小さな不思議な国の光景で。
 ぴょんぴょんと目的地を目指してひたすらに走っている時計ウサギさんも、顔のある花たちも、ひらひらと飛んでいるバタつきパン蝶も、皆仲良く歌い出す。
 花弁、蝶々、それから小さな愉快な仲間達。飛び出す絵本の皆にも手伝ってもらって。いばらは歌唱で、元気な子供達に遊びのお誘いを。
「♪歌いましょう 踊りましょう 星降る夜に 南瓜笑う夜に~♪」
 幾重にも重なり合って広い庭に響き渡っていく沢山の歌声に、悪戯をして走り回っていた子供達が足を止めて。ハーブ園や花壇に足を踏み入れる前に、歌唱に手招かれるまま、いばら達が居る場所を目指して――。
『これ、姉ちゃんが作ったの!?』
『すごい! おっきな猫がいる!』
『もしかして、これに乗れる!?』
 目を輝かせて見上げる先には、いばらが紡いで創造した大きな跳ねる遊具達の姿が。
 南瓜も蝙蝠も、猫やお化けも。皆一様に、遊ぼうよって誘いかけていて。
 そして、大きな遊具の中心にいるのは、飛び出す絵本を手にしたいばらだ。
「ふふ、合唱も楽しいよ。いっしょに遊びましょう」
 やって来た子供達に気が付いたいばらは、笑顔を浮かべると優しい歌声で手招いて、子供達に遊びのお誘いを持ちかける。
 悪戯も楽しいかもしれないけれど、と。子供達に目線を合わせる様にして、少しだけ屈みこんで。
「Trickはね、みーんなが楽しめる方が良い」
 折角のTrickなら、皆が笑顔になれるものを。
 ほら、先程まで踏み潰されるかもしれない恐怖に怯えていたハーブや花たちも――今は、大きな遊具を前に目を輝かせる子供達を、微笑ましそうに見守っているから。
『ふわふわしてるー! ぴょんぴょん出来て楽しい!』
『どっちが高く跳べる勝負しようぜ!』
「一夜で消えてしまう魔法だけれど、楽しんでもらえたら」
 跳んだり、上ったり、寝転がったり。跳ねて滑れるハロウィンな遊具で思い思いに遊び始めた子供達の目は、とても楽しそうで。
 一夜で消えてしまう、たった数刻だけの魔法。それでも、子供達が転生した先に歩む、彼らの長い“これから”にこの一夜の想い出が、ずっと傍で寄り添ってくれることを祈って。
「続きは――また、皆に出会えたその時に」
 思いきりはしゃいで遊んでいる子供達を眺め、いばらはふんわりと微笑みを浮かべると、そっと瞼を伏せた。
 今日のお話は、これでお終い。皆と再び出逢えることを願って。続きはまた「久しぶり」が交わせた、その後で。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アレクシス・ミラ

子供の姿継続

「レディをお見送りした後でよかったな…」
僕は庭へお菓子を取り戻しに行こう
今日がハロウィンとは言え…こちらからお菓子か悪戯をどうぞとはまだ言っていないからね
双方にとって楽しめるのが一番だと僕は思うんだ
それに…彼らが影朧であるのなら
心から楽しかったと言ってもらえるくらい、不思議で賑やかな夜にしよう

「楽しんでいる所失礼。それを全部持っていかれるのは困るんだ。返していただけるかい?」
追いかけっこなら勿論お受けしよう
ただ追いかけるだけではきっと捕まらないだろうから…魔法を使おうか
【夢幻の天衣】で透明に
光属性で妖精の光や星の鳥、南瓜花火を作って子供達が集まるよう誘導を
…おや。僕の体も元に戻ったな
兎も角集まれば…姿を現して確保だ
驚いていただけたかな?
「さて、改めてハロウィンの合言葉を問おうか」
ちゃんと言えたらラベンダーのシフォンケーキをどうぞ
ご安心を。これは僕が作って来たお菓子だよ
ハッピーハロウィン

(―親愛なる妖精のレディ、我が師よ
貴女が導く旅路の先にも…この桜のような光があらんことを)




 何の前触れも無く突然襲撃を仕掛けてきた影朧の子供達によって、カフェーや雑貨屋が滅茶苦茶にされてしまったのは、本当に一瞬のことであった。
 元気なのは良い事だが、その元気さを発揮する方向を間違ってはいけない、と。アレクシス・ミラは、あちこちではしゃぎ回っている子供達を眺め、静かにため息を吐く。
「レディをお見送りした後でよかったな……」
 本当に、彼女が帰った後で良かったと。つい先ほどまで小さなレディが座っていた席を見て、真っ先に込み上がってきたのは安堵の感情だ。
 子供達に見つかって良い玩具にされかけたのなら、それこそ黙っていないだろうし。
 終わりの見えぬ旅を続けて。最近は疲れている様子の彼女を、子供達が引き起こすどんちゃん騒ぎに巻き込みたくは無かったから。
 もし、子供達と鉢合わせしてしまっていたのなら。いずれにせよ、レディの手を煩わせてしまうことだけは確かだった。
 その時に、小さなレディが取るであろう反応の全てを脳裏に描き出した後――アレクシスは、困った様に苦笑を浮かべた。
 本当に、見送った後で良かった、と。心の底から、そう思うのだから。
 もう一度だけ彼女が座っていた席を一瞥した後、アレクシスは庭に向かって歩き出す。
 仲間の猟兵達がめいめいに影朧の子供達の相手をしているとはいえ、全員の相手をできる訳では無いのだから。
 先程奪い去られた雑貨屋のお菓子を取り戻すべく、庭の方へ。
「今日がハロウィンとは言え……こちらからお菓子か悪戯をどうぞとはまだ言っていないからね」
 歩幅も異なれば、視線の高さだって違う。料理の効果は未だ消えてはおらず、店内を子供の姿のままで歩むのは新鮮で。
 常とは異なる感覚を新鮮に思えど、アレクシスがすることは一つだ。
 今日がハロウィンとは言え、最低限の挨拶や礼儀は大切で。
 「トリック・オア・トリート」という魔法の言葉も聞いていなければ、返事もしていない。それに、諸々をすっ飛ばしてお菓子だけ奪っていくのも見過ごせなかった。
 今日がハロウィンで在るのならば、皆が笑顔になれるトリックを。誰も悲しむことのない、素敵で賑やかな夜を。
「双方にとって楽しめるのが一番だと僕は思うんだ」
 そう。きっとそれが、一番良い方法で。
 それに、と。アレクシスは影朧の子供達を見つめ、思うことがもう一つだけ。
「それに……彼らが影朧であるのなら。心から楽しかったと言ってもらえるくらい、不思議で賑やかな夜にしよう」
 何らかの未練を抱いていたり、虐げられたりしたことによって生まれる、不安定な存在。それが、影朧と言うもので。
 そう考えれば、余計に今日という日を心から楽しかったと言ってもらいたいと、そう思ってしまう。
 どうか、彼らの記憶に残る最高の一夜に。
 転生後には、今日のことを忘れてしまうのだとしても。前を向いて転生の道を歩める様な、素敵な日に。
「楽しんでいる所失礼。それを全部持っていかれるのは困るんだ。返していただけるかい?」
 ワイワイと庭で楽しそうにはしゃいでいる子供達に向かって、アレクシスは、にこやかに挨拶をすると、そのまま爽やかに言葉を続けた。
 お店の売り上げや、その商品を欲しいと思っている人々の為にも。全部持っていかれるのは、困る。心底困った様な表情で子供達に問い掛ければ、彼らは顔を見合わせて――。
『返してあげる?』
『えー。でもなぁ?』
『じゃあさ、こうしようよ! 君が追いかけっこで僕たちを捕まえることができたら、返してあげる!』
「追いかけっこか。それなら、勿論お受けしよう」
 アレクシスの見た目は、未だ可愛らしい少年だ。仲間である怪盗団以外の子供と遊べることが、純粋に嬉しかったのだろう。
 アレクシスに追いかけっこを提案した少年達は、アレクシスの快諾に目を輝かせると、『じゃあ、決まり!』と早速庭のあちこちへと散っていく。
 彼らが走り去った方向を確りと記憶に残しながら。アレクシスが展開するのは、魔法の術式だ。
「ただ追いかけるだけではきっと捕まらないだろうから……魔法を使おうか」
 逃げ足だけは早い子供達。きっと、普通に追いかけるだけでは、捕まえることは難しいだろうから。
 悪しきもの達から大切な存在を隠す様にして。祈りを捧げ、アレクシスが自身の身体に夢幻の加護を纏わせたのなら、あっという間に身体が透明になる。
 自身の身体が透明になったことを確認したのなら、次に行うことは一つだ。
 アレクシスが空に描くのは、溢れんばかりの光を放つ星の鳥や南瓜花火、キラキラとワルツを踊る様に不思議に揺らめく妖精の光と言った――不思議で美しい、光のパフォーマンス。
 子供達が集まる様に、この光景が目に焼き付く様に。アレクシスは次々と光属性の魔法を自由自在に操り、幻想的な光景を作り出していく。
 星光を身に纏う鳥を低空飛行させて、子供達の周りをぐるりと一周させたのなら。ほら、それだけで導かれる様にしてこちらへとやってくる。
 打ち上げられる南瓜花火に足を止める子もいれば、妖精の光に触れようと、恐る恐る手を伸ばす子だって。
 現実と空想の境界を曖昧にさせて、今日この日ばかりのパフォーマンスを披露していたのなら。
「……おや。僕の体も元に戻ったな」
 不意に、仰いだ空が近くなる感覚を覚えて。
 空へと向かって手を伸ばせば――すっかり見慣れた、いつもの姿の自分の手のひらがそこにあった。
 どうやら、魔法の料理の効果がきれ、普段の姿に戻ったらしい。
 漸く舞い戻った大人の感覚に、何度か拳を開いたり握ったりを繰り返して。それからアレクシスは、光の祭典に集まってきていた子供達の前で姿を現した。
「驚いていただけたかな?」
『え? ええぇぇ!!?』
『お兄ちゃん凄い!! 本物のまほーつかい!?』
『さっきのキラキラってなってぴかーってなるヤツ、どうやってやったんだよ!?』
 先ほどまでは確かに子供の姿だったのに。一瞬で大人の姿になり、光属性の魔法を自由に操るアレクシスに子供達は大はしゃぎだ。
 ワイワイと興奮も醒めぬままにアレクシスに近付くと、そのままぐるりと周囲を取り囲んでしまう。
「さて、改めてハロウィンの合言葉を問おうか」
 集まった子供達に向かって、アレクシスはにこやかに微笑みかける。
 ハロウィンの日には、無くてはならない大切な合言葉。それをまだ、今日は聞いていないのだから。
『えっと、トリック・オア・トリート?』
『うん、トリック・オア・トリート!』
「はい。ちゃんと言えたらラベンダーのシフォンケーキをどうぞ」
 アレクシスが優しく合言葉を促せば、何人かが恐る恐る、といった雰囲気で口にして。
 それを皮切りに、子供達の間から元気な「トリック・オア・トリート!」の声が次々に聞こえ始める。
 きちんと合言葉を言えた子から順番に。アレクシスは、可愛らしくラッピングされたシフォンケーキを手渡していった。
「ご安心を。これは僕が作って来たお菓子だよ。ハッピーハロウィン」
『わあ、美味しそう! ありがとう!』
『うん、ハッピーハロウィン!』
『僕らの事捕まえられたし、お店のお菓子は返すね!』
 アレクシスからお菓子を貰って、心底嬉しそうに笑い合う子供達。
 その光景を静かに眺めていたアレクシスもまた、ふっと表情を和らげると、頭上に舞う幻朧桜の花吹雪に視線を移した。
(「――親愛なる妖精のレディ、我が師よ。貴女が導く旅路の先にも……この桜のような光があらんことを」)
 どうかその旅路の終わりが、心安らぐ穏やかなものでありますように。
 旅路の先に見える景色が、今自分の目の前に広がる様な、光に満ちた幸せな光景でありますように、と。アレクシスはそう、願わずにはいられなかった。


 やがて。
 猟兵達と思いきり遊んで満足した影朧の子供達は――幻朧桜の花吹雪に導かれて、次なる生への道を歩み始める。
 その魂の奥底に、楽しかったハロウィンの日の想い出を、確かに抱いて。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年11月11日


挿絵イラスト