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農村の秋は、蜜柑と共に 〜侍の島国にて〜

#サムライエンパイア #グリードオーシャン #【Q】 #グリモアエフェクト #戦後

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「皆さん、折角の食欲の秋ですのに大変です! 是非、駿河国の農村にお力添えを願いたく存じます!」
 土御門・泰花(風待月に芽吹いた菫は夜長月に咲く・f10833)は、グリモアベースに集まってくれた猟兵たちがある程度の人数になったところで、幾らか慌てた様子で頭を下げた。

「実は、サムライエンパイアを囲む広大な海の果てからコンキスタドールがやってきまして、彼らがもたらした『外来種オブリビオン』により悲劇的な事態が起こってしまうという未来を予知しました。このままでは、汗水流して懸命に働く農村の皆さんが痛恨の打撃を受けてしまいます」
 泰花が切なそうに告げてから虚空へと映し出した光景は、たわわに蜜柑が実る畑の風景と、素朴な古き良き農村の日常。
 そこへ突然何者かが集団で現れ、村の人々を老若男女問わずに蹂躙し、蜜柑畑の木々も蜜柑も容赦なくへし折り、なぎ倒し、踏み潰し……なおも人々を襲い始めた。ちょうど収穫期を迎え、まさに今から多くの人の食卓に並ぶはずだった蜜柑は次々と傷つき、地へ、血溜まりへ、落とされていく……。
 残忍な敵たちの姿は皆どこか武士のようで、身を蒼い装束で覆い、僅かに防具を付け……手には、サムライエンパイアの平和な農村で見ることはなかなかないような、大きな口径の砲を抱えている。

「この砲はどうやら『ビームライフル【八咫烏】』という名の、メガリスの1種なのだそうです。それゆえに弾切れを起こすことも無いようなのです」
 また、このメガリスの使用者は強力で精密な高火力の攻撃が可能になり、自身を囲むように全方位に頑健なビームシールドを展開することができるようになるようだが……そこまで使いこなせるようになると、少なくない確率で使用者がオブリビオンと化してしまうリスクがあるという代物だ。

 そして悲しいことに、このビームシールドを抱えた蒼き衣の男たちは既にメガリスによってオブリビオンへの変質を完了してしまっている。救命はもう叶わない。
「ですから、皆さんには是非、この『ビームライフル【八咫烏】』が農村や農作物を荒らしてさらに勢力を広げてしまう前に、1体残らず撃破していただきたいのです」
 今の時点でオブリビオンたちの撃破が完了するならば、農村の人的被害はほぼ無くすことが可能だ。自分たちの判断で安全と思えた場所や屋内へ退避していってくれる為、無理に庇おうとする必要は無いようである。
 蜜柑畑ばかりは幾らかダメージを受けてはしまうが、長年の農家の知恵を駆使すれば再生は何とかなるだろう。
 そして、これ以上敵が無闇に増加してさらなる被害が広がるという悲劇も抑制できる。

 とはいえ、傷ついた蜜柑は商品にも献上品にもできない……そこで、と泰花は続ける。
「集団の敵を撃破してくださった後には、どうやらその場にそれぞれ『異世界の食材』である貯古齢糖なるもの……シルバーレインやUDCアースなどで申すところのチョコレートを、残して消えるようです」
 なんとも謎の現象ではあるが、さらに不思議なことにそのチョコレートは、律儀にも綺麗に丁寧に銀紙に包まれた状態で残されるらしい。敵を倒した後、さっさと回収してしまえば衛生面での不安は無いと見ていいようだ。
「そこで、もう商品にできない蜜柑の有効活用法として、また農村の皆さんに元気を取り戻していただくために、さらに皆さんの祝勝会も兼ねて……是非このチョコレートと蜜柑を活用したものを作って差し上げてはいただけないでしょうか?」
 きっと、知らない食材への警戒は猟兵への信頼と猟兵の豊かな知識や発想とで払拭されていくに違いない。
 蜜柑畑の再生という困難は残れども、「終わり良ければすべて良し」という言葉が示すように、猟兵たちが傷んだ蜜柑を活用するさまを見れば、農村の皆の絶望は希望へ、無力感は奮起へ、変わることだろう。
「戦いが終わり農村の安全確保が確認できましたなら、私もしばらくはチョコレートの回収や無事な蜜柑とそれ以外の蜜柑の仕分けをお手伝いしております。お呼びいただければそちらへ応じますゆえ、お気兼ねなくお声掛けくださいませ。……では、お支度の整いました方から転送致します。ご武運を」
 泰花は軽やかに手のひらへグリモアを浮かべ、手際よく転送陣を展開させると微笑んで一礼するのだった。


月影左京
 こんにちは、または初めまして。マスターの月影左京と申します。
 今回はサムライエンパイアでの【Q】に基づいたシナリオです。大いなる危機に至る前に察知することができた事件の1つを、是非皆さんに対処していただければと思います!

 ※私のシナリオに初参加なさる方や久しぶりにご参加くださいます方は、お手数をお掛けしますが、私のMSページをご一読くださいますようお願いします。

 今回のシナリオは、戦後シナリオですので2章構成です。それぞれ、ご案内致します。

●第1章「ビームライフル『八咫烏』」(集団戦)
 平和な農村を突然奇襲してくる、コンキスタドールがもたらした「外来種オブリビオン」です。猟兵の皆さんであれば撃破可能ですが、農村の皆さんは平和に暮らす一般人ですので立ち向かうことは困難です。
 幸い、農村の皆さんは自主避難して下さるため、退避する人々を庇いながら戦うプレイングでも、戦いに専念したプレイングでも、どちらでも構いません。

●第2章「ふぞろいのミカンたち」(日常)
 傷んでしまった蜜柑やサムライエンパイアの一般人にとっては「異世界の食材」であるチョコレートを活用して、お料理を作ったり、お菓子を作ったり、はたまた誰も予想しなかったような何かを作ったりして、農村の皆さんと共に思い切り楽しんでください!
 必要な道具は泰花から借り受けることができますし、ご自身で持ち込んだものを泰花に預けておいたことにしても大丈夫です。

 今回も特に断章を挟む予定はありません。
 オープニング公開時と新章突入時からプレイングを受け付けます。

 皆さんの創意工夫溢れるプレイングを心待ちにしております!
 私も精一杯、猟兵の皆さんの魅力や活躍を楽しんでいただけるようなリプレイを書けるよう、精進して参ります。
 どうぞよろしくお願いします。
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第1章 集団戦 『ビームライフル『八咫烏』』

POW   :    広範囲ビームグレネードランチャーモード
単純で重い【周囲を破壊するビームグレネード弾】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    高精度ディスプレイ付きスコープ&スナイパーモード
【空中に浮遊する高精度ディスプレイを覗く事】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【貫通力の高いビーム弾】で攻撃する。
WIZ   :    ビームシールド&アサルトライフルモード
【高い連射率を誇るアサルトライフルに変形】【全身を覆うビームシールド】【通常弾・延焼弾・凍結弾の何れかの銃弾】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。

イラスト:ゆりちかお

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

園守・風月
同僚の山立(f37635)と

一応生まれは農家だからな
継ぐことはなかったが、苦心して収穫を得ていることは理解しているつもりだ
実家ではないが、せめて今からでも『害獣駆除』くらいは手伝おう

今回は不本意だが攻め手は山立にほぼ一任する
敵が纏まっているところや、発射の構えを見せている相手を優先的に蕾・薔薇薔薇で絡め取っていく
発射自体を阻止は出来ないだろうが、発射までの時間稼ぎにはなる筈だ
一人ずつでも確実に仕留めていけ、山立
(無自覚な父親目線※10代以下の味方に対しては大体こう)

気持ちは解らんでもないが、冷静さを欠くな
敵に付け入る隙を与えればミイラ取りがミイラになるぞ

(※詠唱台詞は描写なしでお願いします)


山立・亨次
同僚の園守(f37224)と

(基本無表情で寡黙、但し今回やや苛立ち気味で時折眉間に皺有)

蜜柑とチョコレートも気にはなってるが
それよりも、だ
作物(食材)を駄目にしかねないことも平気でやる連中が気に食わねえ

敵の攻撃への対処は園守に任せる
どうしても発射されちまうモンはよく見て回避していくが
普通に『見て避ける』だけより速度は落ちてんだ、其処まで見切り回避の得意じゃない俺でも避けられる筈だ

(苛立ち気味で包丁を振るう手がやや乱雑で、園守の指摘で少し冷静になり)
……解ってるよ
俺がやられちゃ意味がねえ
守り抜く為にも、確実に敵の動きを読んで――仕留める!

(※詠唱台詞は描写なしでお願いします)



 グリモアの力で転送されてきたのは、まずは園守・風月(地に足を・f37224)と山立・亨次(人間の猟理師・f37635)、 2名の猟兵だ。どちらもここではない農村の生まれで、互いを同僚と認識している。
 農村で生まれたからこそ、跡を継いだかどうかに関わらず、2人は農村の人々が苦心して収穫を得ていることをよく理解している。
 さらに猟理師である亨次は、蜜柑もチョコレートも気にはなるものの、そもそもの「食材」を平気で傷めつける敵連中の暴挙が気に食わない。彼は時折眉間に皺を寄せるほど苛立ちながら、風月と共に敵の襲来する気配に神経を尖らせた。

 程なくして現れたのは、事前の情報で得た通りの見た目と得物を抱えた男たち。農村の人々の驚きや悲鳴が上がる頃には、風月も亨次も迎撃すべく躍り出ていた。
「実家ではないが、せめて今からでも『害獣駆除』くらいは手伝おう」
 そう告げたのは、風月。彼のユーベルコード【蕾、薔薇薔薇】が即座に敵群へと、網状になりし四色の薔薇の荊をもって絡みつき、その行動速度と攻撃速度を荊から吸収することで鈍らせ、妨害する。
 続いて亨次が自身のユーベルコード【狩猟神饌・直会】によって愛用の包丁にカケスの神霊を降ろし、敵をビームグレネードランチャーごと切り裂いた。
「……!!」
 敵はそれでも砲による攻撃を止めない。単純で重いビームグレネード弾がその風圧で周囲を破壊しながら、積極的に自分たちの邪魔をしてくる2人を木っ端微塵にせんと多方向から一気に迫り来る。
 だが、幸いにしてユーベルコードでできた薔薇の荊をも打ち破るのは敵群とて楽では無いようだ。風月が冷静に群れ固まっている場所や今にも発砲しようとしている個体目掛けて手際よく彩り豊かな薔薇の荊を絡みつかせていることもあり、発砲自体を妨害できなかったとしても見切り回避を得手とする訳では無い亨次でさえ、大した怪我を負うこと無くやり過ごせていた。
 とある民族における狩猟の女神の霊をまとった包丁は容赦なく敵を―― ビームライフル『八咫烏』を、その使用者にしてオブリビオンに成り果てた人ごと骸の海へ還して行く。
されど開戦前から募りに募っている苛立ちが、亨次の包丁使いを乱雑なものへ変えていく。
 怒りは強いエネルギーをもたらす感情であると同時に、不用意な隙を生み出してしまうリスクも孕む感情でもある。それに気が付いていた風月は、まるで戦士を育てる父親の如く諭した。
「気持ちは解らんでもないが、冷静さを欠くな。敵に付け入る隙を与えれば、ミイラ取りがミイラになるぞ」
 その言葉は、亨次の中で燃え盛る苛立ちを幾らか確かに鎮めた。ふぅと息を吐いて冷静さを取り戻した亨次は、改めて戦況を把握し包丁を構え直した。
「……解ってるよ。俺がやられちゃ意味がねえ」
「一人ずつでも確実に仕留めていけ、山立」
 風月の言葉と共に、再び移動も攻撃もままならない敵へ亨次は刃を振り下ろした。
「ああ……守り抜く為にも、確実に敵の動きを読んで――仕留める!」
 2人が次々と敵を捕らえ、仕留めていく中、農村の人々の悲鳴や騒ぎ声は小さくなっていた。多くの住人がそれぞれ身を守る行動を完了させたようだ。
 それでも集団で襲いかかって来る敵群は、猟兵たちへ標的を変えながらも蜜柑畑さえ戦略的に用いようとし、木々へ、実へ、多少なりとも傷をつけていく……。被害を最小限に抑える為には、未だ油断はならないのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リカルド・マスケラス
「サムライエンパイアにビームライフルっすか。コンキスドールはとんでもない物を置いていったっすね〜。さて、お掃除お掃除っすよ」
などと言っているキツめのお面がふわふわと

「ちょっと身体を借りるっすよ」
逃げ遅れた村人の身体を借りて戦わせてもらうっすよ。『ブラックコート』の効果でダメージはこっちが受け持つので、傷ひとつ負わせないっすよ
「ビームグレネードってビームなのかグレネードなのかはっきりさせて欲しいっすね〜」
などと軽口をたたきながら、こちらに狙いをつけた敵に対し【視力】を込めて【鏡魔眼の術】を放つ。うまくかかれば自爆、もしくは同士討ちっすね
「そのメガリスの威力、自分の身で味わうといいっすよ」


クロム・エルフェルト
ふむ、住処としている駿河国での事件とあらば。
見過ごすわけには行かない。ね。
此の地に生る蜜柑は緑茶に並ぶ名産。
冬の炬燵の伴を護る為、いざ――参る。

びーむらいふるの光条を、刀を鏡に見立て▲受け流し
避難する村民を▲かばう様に戦う

火縄と相対した時とは勝手が違うから
少しやり辛くはある……けれど
「流水紫電」を励起させ、▲残像曳きつつ不規則な軌道の▲ダッシュ
狙いを撹乱する足捌きで敵に肉薄
間合いに入れば【指定UC】を放ちたい
その面妖な|絡繰鉄砲《びーむらいふる》、手の内は見切った
空中のでぃすぷれいを▲切断、至近距離で斬撃を浴びせたい

貯古齢糖を拾い上げれば、一欠けを口へ
味見くらいは許されてもいい……よね。



「コンキスタドールはとんでもない物を置いていったっすね〜」
「ふむ、住処としている駿河国での事件とあらば。見過ごすわけには行かない。ね」
 次いで転送されてきたのは、ふわふわ浮かぶ白い狐のお面と、琥珀の髪が日に照らされて輝く蜜柑のように美しい妖狐の剣豪。リカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)とクロム・エルフェルト(縮地灼閃の剣狐・f09031)だ。
 リカルドは、ビームライフルなどこのサムライエンパイアという|武士《もののふ》たちの国にまるで似つかわしくない得物であると感じていた。もう片方のクロムは、駿河国が茶のみならず蜜柑の名産地でもあることから、「冬の炬燵の伴」をより多く護るために刀を振るうことを決めてやって来ている。

「……いざ、参る」
「あー、そこの人。ちょっと身体を借りるっすよ」
 2人は同時に臨戦態勢をとった。
 リカルドが借りた身体は逃げ遅れていた農村の人のものではあるが、「ヒーローコスチューム『ブラックコート』」を瞬時にその人へ纏わせ、受けるダメージのすべてをリカルド自身が引き受けられるように手筈を整えた。これで村人がその身その命を脅かされることは皆無となったわけである。

 やがて他の猟兵の包丁やら薔薇の荊やらを潜り抜けた個体が現れ始めた。そして彼らはリカルドとクロムが増援に来たと判断するなり、標的に追加した。
 単純で重いが故に直撃すればその地点を破壊するほどの威力を有するビームグレネード弾が、リカルドを被った住人目掛けて飛来する。
「ビームグレネードって、ビームなのかグレネードなのかはっきりさせて欲しいっすね〜」
 だがリカルドは軽口さえ叩きながら、優れた視力をもって【忍法・|鏡魔眼の術《キョウマガンノジュツ》】を発動させ痛烈なカウンターを見舞った。敵はその視線を受けるや否や、ある個体は同士討ちを始めて愚かにも自滅し、ある個体は自らを標的に定めてビームグレネード弾を撃ち、自爆した。
「そのメガリスの威力、自分の身で味わうといいっすよ」
 骸の海へ還りゆく敵へそう言い放ったリカルドは、きっと内心でドヤ顔をしていたのだろう。憑依した人の表情がまさにそのようなものだったのだから。

 一方その頃、クロムは逃げ遅れた他の住人たちの避難を支援し、かばいながら敵群と相対していた。
 玉鋼が鍛え上げられてできた、美しく、また妖しく輝くその刀身を鏡に見立て、貫通力の高いビーム弾を反射する。触れずして敵の身をビーム弾が貫通させ、骸の海へ還していった。
 さらに仙狐式抜刀術の要とも言える足捌の秘奥「流水紫電」にて地を蹴れば……敵はクロムの思惑通り、残像が生じるほど高速の疾走によって撹乱させられ、中には混乱に陥って自滅する個体までいた。
「火縄と相対した時とは勝手が違うから、少しやり辛くはある……けれど」
 火縄銃とは異なり、次の発砲までに大して手間を要することの無いビームライフルでは、如何に剣豪といえども同じ要領では対処できない。
 敵を撹乱する為に不規則な動きをするため、時には敢えて遠ざかることもあったが、クロムは遂に「本物」を見つけて嬉々としてビームライフルを構える敵群を自らの間合いに捕らえた。
「その面妖な|絡繰鉄砲《びーむらいふる》、手の内は見切った! 神速剣閃、参ノ太刀――微塵に断つ!」
 鮮やかな剣筋の煌めきと共に、【仙狐式|抜刀術・彼岸花《バットウジュツ・ヒガンバナ》】が空中に浮かぶディスプレイごと敵を切り裂き、僅かの後にさながら彼岸花が咲くように敵から血飛沫が舞った。巧みに加速させた3連の斬撃で敵を屠りながら、クロムは的確に敵の身体捌きの癖とそれ故に生じる弱点とを把握する。

 リカルドやクロムたちが敵を倒すたび、その跡に銀紙に包まれた|貯古齢糖《チョコレート》が落ちる。皆、交戦しながらも回収可能なものは回収しているようだが……ふと、クロムは拾い上げたそれを1つ僅かに解き、小さく割った一欠片を口へ含んだ。
(「味見くらいは許されてもいい……よね」)
 濃厚にして甘やかな風味が口の中や鼻へと広がりながら舌の上で溶けていく……何とも妙なる味わいであった。
 これと蜜柑とが合わさればどんなものが作れるかと思いつつ、その成果を無事に農村の人々へ披露して喜んでもらうために、クロムは改めて刀を構え、敵群へと挑んでいく。先ほど把握した身体捌きの癖と弱点とを活かしながら。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

鹿村・トーゴ
突然意思無く涌いて秋の収穫を台無しだと?
メガリスとやらの力に飲まれたか溺れたかは知らねーが人に戻れないのも自業自得だろーねェ
遠目に敢えて声で気を引き目視させ上に跳ぶフリで横に隠れ隠遁
木の枝を【念動力】で揺すり囮に

その裏で撃破準備に動く

殲滅せよとの任を得たり
然らば御意に…ってね
【地形の利用、忍び足】で樹幹で姿を隠しつつ軟らかい土を選んで奔り足音消し接近した上で
手裏剣、折れて尖った大枝、瓦礫を【念動力で投擲、毒使い】、敵に致命傷でなくても負傷させUCへ繋ぐ
敵UCへは【カウンター、武器受け】で可能な物を弾き【野生の勘】で躱し
或いは【激痛耐性】で凌ぐ
動ける敵はクナイでトドメを【串刺し、暗殺】

アドリブ可



「メガリスとやらの力に飲まれたか溺れたかは知らねーが、人に戻れないのも自業自得だろーねェ」
 鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)は遠目に敵群や他に戦っている猟兵たちを見ながら、敢えてそんな声を掛けて敵群の気を引いていた。そして思惑通りにトーゴへ狙いを変えた連中の意識が他へ逸れないようにしつつ、上へと跳躍したかのように見せ掛けて横へ跳び、木々の間に隠遁する。念動力も併用し、まさに上へ跳ぶ足場にされた木々が揺れる演出まで徹底した陽動だ。

(「殲滅せよとの任を得たり。然らば御意に……ってね」)
 忍びとして育ってきたトーゴには、敵を欺いて確実に仕留めるやり口はお手の物。まして今回は意志も持たぬ武骨な輩が、突然湧いては秋の貴重な収穫も人々の安寧をも台無しにしようとしているのだ。ならばむしろその目論見こそ台無しにしてやらねばならぬ。
 樹幹に身を隠しつつ、足音を吸収する様な柔らかな土を足場として、トーゴへと発砲すべく群がる敵へ接近していく。そして、手裏剣をはじめ、予め手早く毒を仕込んでおいた折れて尖った大枝や瓦礫等を奴等へ投擲する。
「……!?」
 敵の砲塔、または人の身のどこかにでも当たれば、最早そいつはトーゴのなすがまま。
「千鳥砂嘴ひと刺し浅しニワトコに 天地五感を掠め狩る──なに、些細なかすり傷さ」
【|千鳥庭《チドリノニワ》】……毒の扱いを得手とする師から学んだ技である。
 毒が回って三半規管をやられ、まさに千鳥足となった敵を焦らせ、転倒させ……遂には辺りにばら撒いた有毒の撒菱の「庭」へ、死の庭へ、導く。
 焦りもまた怒りのように冷静な判断力を鈍らせる感情の1つ。敵がとにかく身の安全を図ろうとビームシールドを展開させ、連射に向いたアサルトライフルへと形態変化させた八咫烏をもって自らの防御力を高めることで乗り切ろうとするも……無我夢中で放つ弾丸は通常弾・延焼弾・凍結弾のどれもトーゴを正確に射止めることは叶わなかった。
 対して冷静に敵の反撃を推測・分析するトーゴは、武器で受け止めてからのカウンター攻撃、優れた勘による回避、あるいは避けきれず受けた稀な弾丸は激痛に対する強い耐性をもって凌ぎきっていく。
「後先考えれねーんだわ、オレ。けど、まだ上には上がいるもんだ」
 トーゴの|忍術《ユーベルコード》を奇跡的に回避し、難なく動く敵へはクナイを急所へ突き立てて串刺しにし、殺す。暗殺もまた、忍びなら慣れたやり方なのだろう。手際よく一体、また一体と血溜まりへ沈め、骸の海へ還して行く。

 やがて、トーゴが最後に仕留めた個体で敵群の全滅が成った。タイミングを見計らってそれぞれが集めたチョコレートや、まだ銀紙に包まれたまま地面に残っていたチョコレートを集めると、猟兵それぞれが農家を行き巡り、安全確保が完了したこと、蜜柑の様子を確かめて欲しいことを告げて回る。
 住人たちは初めこそ安堵のため息や微笑みと共に退避していたところから出ては来たが……やはり、無傷とは行かなかった蜜柑たちを見て表情を曇らせた。
「……これでは、献上品になるものがどれほどあるやら」
「仮にお上へ献上する蜜柑が揃っても、商売にできる蜜柑は、足りないわ……」
 失意と絶望に飲まれゆく農村の皆へ、トーゴは彼らにとって「異世界の食材」となるチョコレートを見せて笑いかけた。
「心配すんなって! これ、珍しい食材だろ? ここの蜜柑と案外相性良い食材かもしれねーし、試しに色々やってみねーか? 目新しい新商品になるかもしれねーぞ!?」
 その言葉に、人々は幾らか驚き、まじまじとトーゴの手にあるチョコレートを見つめた。
「これを、蜜柑と……?」
「どんな食材なのかとんと分からんが、お助けくださった方々からのご提案じゃ。祝勝の宴も兼ねて、お勧めに従って試してみようじゃないか!」

 こうして、いよいよ蜜柑とチョコレートのコラボが始まることとなった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 日常 『ふぞろいのミカンたち』

POW   :    もったいないから、ぜーんぶ食べちゃおう。

SPD   :    加工して飲料や染料にしようか。

WIZ   :    皮もいろいろと使い道があるんだぞ。

👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

鹿村・トーゴ
ちょこと蜜柑で新商品つくろー!って威勢よく言ったはいいが…
どーしよ
ちょこって甘いぐらいしか解らん…しかも材料ってあんなおっさんだったのも初めて知った
UDCでちょこけーきにおれんじぴーる入ったやつ、があるってのは聞いたしおれんじってのが蜜柑の事らしいのは解るけど。けどー

とりあえず蜜柑は砂糖、それかはちみつ入れて煮詰めて日持ちするよーにするかい?
ん?あれ。ちょこって溶けやすいんだな…
えーと菓子だから…餅と求肥まぜてちょこ餅?チョコ団子?これにさっきの煮詰めた蜜柑かけるか詰めるかする?
もっと砂糖が手軽なら蜜柑も砂糖漬けにして干して、溶かしたちょこに混ぜただけでも行けそうだけどねェ

アドリブ可


山立・亨次
園守(f37224)と

変に奇をてらわずオランジェットにするか
本来は名前通りオレンジで作るし風味も変わるが……
これはこれで美味いぞ

……と、言ってもだ
普通に作ってたらこの時代なんかは特に日が暮れそうだしな
今回は手持ちの調理器具とユーベルコードでぱぱっと作っちまうぜ(量産!)

レシピはあるから書き留めて村人に渡す
オーブン使うところは飯盒で代用出来る筈だ
問題なのはチョコを固める工程だな
気温にもよるが常温で固めるとなると時間がかかるから
何かの作業の前に仕込んで、それが終わってからチョコが固まってるか確認するのが効率いいかもな

あとは村民が気に入るかどうかだな
好みの問題で、不味いことはない筈だが(料理145)


園守・風月
山立(f37635)と

……オランジェット
ああ、誰かが作っていたな
……誰だったか

しかし相変わらずの早業だな
視力には自身がある方だが、それでも手元が殆ど見えなかった
包丁裁きは刀剣の扱いに通じるものがあるからな
俺もまだまだ腕を磨かなければ

現代と違って冷凍保存の技術が発達していないからな
……飯盒もこの|世界《じだい》には俺の知る限りまだないんだが……それとなく村人に使い方を説明しつつ、予備のを幾つか渡しておくか
山立は学がないわけではないが、抜けているところがあるからな(ぽつりと)

実際にお前の調理技術は高いからな
猟理師を名乗るだけのことはある

(自分もひとつ貰い)
……ああ、懐かしい味だ
(何処か遠くを見て)



(「どーしよ……」)
 トーゴは完全に困惑していた。農村の皆を元気づける為にも、ちょこと蜜柑で新商品つくろー! と、威勢よく言ったはいいのだが……そもそもトーゴにはあまりチョコレートに関する知識がなかったのだ。ちょこは甘い、ということは知ってはいたが……。
「ちょこ、なー。しかも材料って、あんなおっさんだったのも初めて知った」
 トーゴが頭上に|?《はてな》マークをたくさん浮かべながらチョコレートと傷付いた蜜柑とを見比べていると、住民たちも顔を見合わせ始めた。
「確かに……猟兵様が警告なさらないならば良い食材には違いなかろうが……」
「色も、食材というよりは|厩肥《きゅうひ》みたいやねぇ。しかも、あの人の姿をした化けもんからできるだなんて知られたら……」
 そこへさりげなく訂正と解説を入れたのは、熟練の猟理師である亨次だ。
「安心しろ、見慣れないだろうがそれは安全で美味い食材だ。厩肥とは原材料も製造過程もまったく違う。とある植物の種子から作り出された、そのまま食しても良い菓子になる甘味だ。他の世界じゃ、『チョコレート』とか『チョコ』、『ショコラ』って呼び方で呼ばれることが多いぜ。想い人同士や仲の良い者同士で親愛の印に贈り合うこともある。2月……如月のバレンタインの日までは、チョコレートで世間が溢れかえることも少なくない」
 つらつらと澱みなく概要を説く姿に、隣で風月はすっかり感心し聞き入っていた。トーゴも農村の皆に混じって瞳をキラキラと輝かせている。
「なぁなぁ、それじゃあUDCアースできいた、ちょこけーきにおれんじぴーる入ったやつってどうだ!? えっと、ほら、『おれんじ』って蜜柑のことなんだろ?」
「ふーむ、それも良いな……。だが他にも、この村のもので作れて、味や見た目もできるだけ大衆受けするものも作っておきたいところだ」
 トーゴが提案したハイカラなチョコレートケーキに頷きつつも、亨次は最終的に追加でオランジェットも作ることにした。
「厳密には蜜柑はオレンジとは別物だし、オランジェットは本来なら名前通りオレンジで作るから多少の風味は変わるが……まぁ、美味いは美味い。間違いない」
「成程、オランジェット……ああ、誰かが作っていたな」
 テキパキと自前の調理道具から適切なものを選び出し、トーゴとともに住民たちにも声を掛けて土間やら釜戸やらを借りる手配まで進めていく亨次の傍らで、完成した品々を載せる|巨大な卓袱台《大きなテーブル》の設置を手伝う風月が表情を緩めてふと呟いた。
 だが、その「誰か」が誰だったのか……肝心なところが思い出せない。急に胸の中に虚しさが訪れる。
 しかしそれは、トーゴと亨次がやり取りする声や、住民たち――特にチョコレートの味見を許された子どもたちがはしゃぐ歓声で一旦退けられた。
「んー。とりあえず蜜柑は砂糖、それかはちみつ入れて煮詰めて、日持ちするよーにするかい?」
「チョコレートと掛け合わせるんなら、既にかなり糖分が使われているからな。使う量を考えないとひたすら甘ったるくなっちまうぞ」
「んまーい! すげーや! おら、これこのままお八つに食いたい!」
「こんな、食材にもお八つにも良いだなんて……うちらも1度は腹いっぱい食ってみたいねぇ」
 そんなこんなで賑やかにしているうち、やがて亨次の準備が整ったようだ。
「普通に作ってたらこの時代なんかは特に日が暮れそうだしな。まずは、ぱぱっと作っちまうぜ! ……無論そう言っても、即席でも手は抜かねえ。さあ、出来たぞ!」
「はぁーっ! はえーな!? すげー!」
亨次が【|戦場猟理・極《センジョウリョウリノキワメ》】を発揮すれば、極めに極めた料理の技能も相まって一瞬のうちに数え切れない程のオランジェットと、丁寧にひと口大に切り分けまで済まされたオレンジピールの香るチョコレートケーキが、畑のわきに置かれた仮設の|巨大な卓袱台《大きなテーブル》に並んだ。トーゴが素直な賞賛を口に出す。
「す、すげぇがこれは……おらたちでも作れるんだろうか?」
「何、調理器具と|手順《レシピ》さえありゃできるさ。後は慣れくらいのもんだ」
 驚嘆の声を上げて眺める大人たちへ、亨次はさらさらとオランジェット及びチョコレートケーキのレシピを書き記して手渡す。

「あとはそうだな……この時代にオーブンは無いだろうから、代わりに|飯盒《はんごう》を使えばいい」
「はん……? な、なんだ?」
 ふと、亨次の説明に住民たちが不思議そうに顔を見合わせた。
 そう、サムライエンパイアは徳川家光の代の江戸時代に相当する頃、その時代が久しく続いている世界なのである。そして|飯盒《はんごう》が日本人に伝わってきたのは明治の頃の兵隊たちが初めと言われている。さらに一般市民へそれが普及したのは昭和の戦後の頃というのだから、少なくともこの世界では「一般人が使える当たり前の調理器具」とは言いきれないものなのだ。
「ん? 何か変なことでも言ったか……?」
「変では無いが……まだ彼らの知らない道具のようだな、それは」
 首を傾げる亨次の代わりに、助け舟を出したのは風月だ。亨次はここまでで遺憾無くその学才を発揮した通りなのだが、油断すると時たまこうして抜けた面が顔を出す。風月はぽつりと言葉を漏らしつつ、自身が予備用にと携帯していた|飯盒《はんごう》の実物を見せ、使い方を補足説明してみせた。
「へぇ……! 身に付けて持ち歩けて、飯も炊ければ惣菜も作れるたぁ、こりゃあいい!」
「今見せたのは、予備に持ってたものだ。幾らかここに置いていくから、今後も活用してみてくれ」
「いいのかい!? ……ありがてぇ、ありがてぇ!」
「こりゃ村の宝さね! 使い終わったら村長の家に預けよう!」
 沸き立つ住民たちを見て、胸を撫で下ろす風月。どうやらずいぶん|飯盒《はんごう》は気に入られたようだ。
 |飯盒《はんごう》について、猟兵たちが渡り歩くことができる世界で言えば……現時点では、サクラミラージュの學徒兵やアポカリプスヘル、クロムキャバリアなどなどの軍人たちなら、配給されて活用しているかも知れない。一般市民が平和にキャンプを楽しむことが当たり前となったUDCアースや、その通称からは意外な程にキャンプ地に恵まれてもいるアスリートアースでなら、もうすっかり馴染みの調理器具であろう。
 亨次も風月も――もちろんトーゴも――そうした数々の世界の話をひっきりなしに聞く日常を過ごしているから、どこの世界に何が“無い"のかは、混乱しやすいのかも知れなかった。

「……となると、あと問題なのはチョコを固める工程だな」
 改めて亨次が話を切り出し、本題へ戻る。
 湿度や気温にもよるが、チョコレートを常温で固めるとなると時間がかかる。蜜柑と合わせるなら真夏にチョコレートを扱うことは少ないかも知れないが、この|世界《じだい》の氷は貴重品だ。流石に冷蔵庫なんて家電が存在しないのは、誰の目にも明らかである。
 亨次はしばらくの思案の末、何かの作業の前に仕込んで、それが終わってからチョコが固まってるか確認するのが効率いいかも知れないと提案した。
「そうさねぇ、溶かすのが楽なのは分かったけれど……このまま放っておいたら、固まるより先にアリや何かに食われちまいそうだ」
「冬なら雪の下にでも埋めておきゃあ固まるだろうが、秋はまだ雪の季節じゃねぇからなぁ……」
 住民たちも、互いに知恵を出し合いあーでもないこーでもないと案を練っている。
「と、とにかく今作ってみたの食べてみよーぜ! それこそ『ちょこ』が溶けちまうぞ!?」
はた、とトーゴが大きな声を出すと、同時に誰かのお腹の虫が盛大に鳴いた。トーゴのそれかなのは分からないが、どこからともなく聞こえてきた空腹の報せを耳にした一同は、祝勝と試食を兼ねて菓子を手に取っては口へ運んでいく。
「うめー! そーか、ちょこはこーいうもんなんだな」
 トーゴは住民たちと共にあれも美味い、これも美味いとパクパク食べて楽しんでいる。
「……ほら、園守」
「ああ……うん、懐かしい味だ」
 亨次が風月へオランジェットの1つを差し出せば、受け取った本人も目元を和らげた。
 懐かしいとて、具体的に何かを思い出せた訳では無い。ただ、目の前にいて珍しい甘味に騒ぐ|男子《をのこ》も|女子《をなご》も、大人たちも……風月の抜け落ちてしまった大切なモノたちを、懐かしいと、オランジェットの味と共に感じさせてくれるのだった。

 風月が不意に見やった遠くの山陰に、日が傾いていく。空が次第に茜に色付いていけば、住民たちの誰からともなく「今日は何だか、夕焼けも蜜柑の菓子みたいだぁ」と、そんな感想が出た。
「蜜柑は幾らか傷付いちまったが、猟兵様がくれた『ちょこれぃと』と『はんごー』とで、珍しい売りもんをこさえてみるさ!」
「そうだなぁ……この秋も冬も、猟兵様のお陰で良い季節になりそうだぁ」
 そう微笑み合う農村の皆によって、猟兵たちはこの後もしばらく、ずいぶん手厚くもてなされたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年10月28日


挿絵イラスト