●
「中津・水穂さん、当遊園地を魔物から守っていただき、どうもありがとうございました」
私が守った遊園地の支配人さんがお礼を言ってきてくれます。
けれど、どこか暗い表情です。まだ何か問題が残っているのでしょうか?
「アイドルですので、魔物をやっつけるのは当然です。お気になさらないでください。――ところで、まだ何か心配事があるのですか?」
「ええ、実は――」
――支配人さんが語ってくれたのは、遊園地でカップル用イベントの企画をしていること。
そして、魔物の襲撃の影響でしばらく人々が遊園地に来てくれなくなるのではないかということでした。
「このままでは、当遊園地はカップルイベントの準備が無駄になって大赤字です……。何とかならないでしょうか……」
沈んだ声で語ってくる支配人さん。
ここはアイドルとして協力するしかありません。
「任せてください! 私がカップルイベントを成功させてみせます!」
●
「――というわけで、私とカップル役になって、遊園地で遊んでくださる方はいらっしゃいませんか?」
新人アイドルである私、中津・水穂は、|猟兵《ファン》の皆さんに向かってお願いをします。
「遊園地のカップルイベントを成功させるためには、人々に遊園地が安全であることをアピールする必要があります。そのためには、アイドルである私が遊園地で楽しく遊んでみせるのが一番です」
――ですが、カップル用のイベントとなると、私一人ではどうしようもありません。皆さんに協力をお願いするしかなかったのです。
「なお、カップルイベントと言っても、恋人同士だけではなく、お友達同士でも大丈夫な企画だそうですから、男性でも女性でもどちらでも問題ないそうです」
私としても、|猟兵《ファン》の皆さんといきなり恋人役なんて恥ずかしくて無理ですから、お友達同士という関係で遊べるのは助かります。
「ショッピングモールも併設されている遊園地には、様々なアトラクションやお店があります。アトラクションやお店を色々回ってみるのもいいですし、どれか一箇所で集中的に遊ぶのも楽しいのではないでしょうか。――えっと、私はあんまり遊園地に詳しくなくて、遊びのプランを考えられないので、プランは皆さんにお任せになってしまうのですが……」
私の実家の近くには大きな遊園地なんてなかったので、どうやって遊べばいいのか想像もつきません。支配人さんの言葉では、大抵の遊園地やアミューズメントパーク、ショッピングモールにあるものは揃っていて、様々なカップル向けイベントを用意しているとのことですが――。
「カップルイベントの期間は数日間あります。私は毎日、遊園地に行きますので、皆さんは交代で私のお相手をしていただけると助かります。数時間だけでも、丸一日でも大丈夫ですので」
私は|猟兵《ファン》の皆さんに頭を下げてお願いするのでした。
高天原御雷
新人アイドルの中津・水穂です。
こちらはPBWアライアンス『コネクト・ハート』のシナリオです。
公式サイト【https://sites.google.com/view/connect-hearts/】
今回は日常パートです。
遊園地のカップルイベントを盛り上げるために、私と一緒に遊んでいただけませんか。
私は遊園地などに疎くて、どうやって遊べばいいのかわかりません。
皆さんにプランを立てていただけるとありがたいです。
遊園地のイベント期間は何日もあります。皆さんには一人当たり、数時間から丸一日くらい、お付き合いいただけますと助かります。
●遊園地
ショッピングモールも併設された大規模な遊園地です。一般的にありそうな設備は何でもあるらしいです。
また、カップルイベントが行われています。これも様々な企画があるとのことです。
(プレイングで指定いただけば、その施設やイベントがあることになります)
●好感度について
私と一緒に遊んでいただけますと、私からの好感度がアップします。
●新システムについて
新システムのお出かけシステム、アイドル育成システムが実装されました。
詳細は公式サイトをご参照ください。
オープニング公開後、断章なしでプレイング募集を開始します。
どうぞよろしくお願いします。
第1章 日常
『プレイング』
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POW : 肉体や気合で挑戦できる行動
SPD : 速さや技量で挑戦できる行動
WIZ : 魔力や賢さで挑戦できる行動
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ルゥ・アイシテ
カップ類弁当 誤爆したわ。
カップルイベントのリハーサルね。水穂ちゃん、今日の予定あいてる?早速行きましょう。
カップル専用の相席チケットやフードとグッズなどを見て回るコースが鉄板かしらね。
昼から夕・夜にかけて、ムーディーな物を探しましょう!
お年頃な子は、どんな物に興味惹かれるのかしら?
所々でカップル専用スペースは確保してあげないと、すべてのカップルが人目を気にせずに、いちゃラブできるわけじゃないわ。遊園地側が配慮してあげないとね。
せっかくだから、楽しい思い出を一杯作りましょう。水穂ちゃんを独り占めできる時間は好きよ。
最後は、花火とパレードを見ましょう!門限大丈夫?何なら私から電話してあげるわよ?
●
遊園地のカップルイベントの宣伝役。果たして遊園地初デビューの私に、そんな大役が務まるでしょうか?
――いいえ、悩んでなんていられません。アイドルたるもの、困った人々を助けるのが義務です。そのためにも何としてもこの任務、達成しないと……。
そんな風に緊張している私に、ルゥ・アイシテさんが声をかけてきてくれました。
「カップ類弁当って、どんなお弁当なのかしらね?」
――カップ類弁当っ!?
「あら、間違っちゃったかしら? けど、そんなお弁当を売ってるカップルイベントがあっても人気が出そうじゃない?」
「ふふっ、そうですね。それは楽しいイベントかもしれませんね」
アイシテさんの言葉に、思わず笑みがこぼれてしまいます。
「そうそう、水穂ちゃんは緊張しているより、そういう笑顔の方が似合うわよ。水穂ちゃん、今日の予定あいてる? 良ければ早速遊園地に行きましょう」
「はいっ、よろこんでっ!」
アイシテさんからのお誘いを受ける私は、いつの間にか自然な笑顔を浮かべていたのでした。
●
「わぁ、ここが遊園地!」
先日、魔物が現れたときには周囲をゆっくりと眺める余裕はありませんでしたが、改めて見ると……広いです!
こんなに広いところ、どうやって回ればいいのでしょう!?
「ほらほら、水穂ちゃん、こっち見て」
「これは……案内板!」
「んー、カップル専用の相席チケットや、フードとグッズとかを見て回るコースが鉄板かしらね?」
アイシテさんが、案内板上のアトラクションやショッピングモールを指差していきます。
「水穂ちゃんは、行きたい場所ある?」
「ええっ、わ、私ですかっ!? いっぱいありすぎてわからないので……アイシテさんにお任せしますっ!」
「じゃあ、水穂ちゃんが好みそうなムーディーなものを探すわね。お年頃な子はどんなものに興味惹かれるのかしら……?」
こうして、アイシテさんが立ててくださったプランに従って、広大な遊園地への挑戦が始まります!
「ほら、水穂ちゃん、また肩に力が入ってるわよ?」
――アイシテさんに苦笑されてしまいました。しゅん。
●
私とアイシテさんは、プランに従って遊園地内を回っていきます。
アトラクションコーナーでは、二人で並んで座れるカップル専用シートが用意された乗り物などを存分に楽しみます。
さらにショッピングモールへ移動して、カップル用の個室で食事を食べたり、グッズコーナーでペアグッズを見たりして――。
ちょっと疲れた私とアイシテさんは、パーティションで区切られた休憩スペースで一休み。
「カップル専用コーナー、いろいろなところに用意されているんですね」
「そうね。カップルが人目を気にせずに、いちゃラブできるように、遊園地側が配慮してくれてるのね。これがカップルイベントということね」
「い、いちゃラブですかっ!?」
えええっ、私とアイシテさんも傍から見たらそういう風に見えるのでしょうかっ!?
意識した途端に、私の頬が熱くなってきます。きっとアイシテさんには私の顔が真っ赤になっているのがバレバレでしょう。
けれど、アイシテさんは嬉しそうに微笑み――。
「せっかくだから、楽しい思い出をいっぱい作りましょう。水穂ちゃんを独り占めできる時間は好きよ」
まっすぐに向けられた好意に、私も笑顔で答えます。
「私も今日はとっても楽しかったです。ありがとうございます、アイシテさん」
「あら、まだ最後のイベントが残ってるわよ? ――そろそろかしら、行きましょ、水穂ちゃん」
ウィンクをするアイシテさんに促され、私たちは大通りへと向かいます。
「わあ、パレード!」
そこに繰り広げられていたのは、色とりどりの明かりに照らされた幻想的なパレードでした。
「それだけじゃないわよ、ほら、空を見て」
「おっきな花火!」
轟音とともに夜空を覆う大輪の花。
花火の光に照らし出される遊園地は、まるでおとぎの国のよう。
「アイシテさん、私のためにこんなに素敵なイベントを見せてくださって、どうもありがとうございます」
ですが、スマホの時計を見ると、もうすっかり遅い時間になっていました。
そろそろ帰らないと――。
「水穂ちゃん、門限は大丈夫? ――何なら、私からお家の人に電話してあげるわよ?」
時計を気にしたのに気づいたのか、アイシテさんが言ってきてくれます。
「あ、私、アイドルになるために上京してきて、アパートで一人暮らしをしているので、門限はないのですが――」
実家に居た時は、部活で遅くなって門限を破ってしまって、パパに怒られたりもしてましたっけ。
――けど、今は別の理由で帰らなければいけません。
「実は、事務所から|お仕事《ファン交流》の時間に制限をされてまして。アイシテさんともっと楽しんでいたいのですが、申し訳ありませんが、今日はこれで失礼しますね。またぜひご一緒できると嬉しいです」
私はぺこりと頭を下げると、事務所の車が待つ駐車場へと急いだのでした。
大成功
🔵🔵🔵
エリアス・アーデルハイト
(アドリブ連携歓迎)
「話は聞かせて貰ったわ!「|アイドル的オフ会《カップルイベント》」を盛り上げれば良いのね☆」
――という訳で、|子役《義妹系》になって、|お姉ちゃん《水穂ちゃん》と遊びに行くよ♪
|アトラクション《乗り物》は基本二人乗りできるもので、写真撮れるなら尚グッド♪
(ジェットコースターとかに、写真サービスあったかも?)
休憩時はスイーツ系、二人で食べ合えばそれっぽいんじゃない?
(大丈夫だよ、傍から見たら義姉妹?にしか見えないんだし♪)
後半はアイドルらしく、デュエットのど自慢系のイベントに参加できればいいかな♪勿論、水穂お姉ちゃんがメインだけど、エリィと一緒に最後まで盛り上げちゃお♪
(心の声)
……カップルイベントって聞いたが、恋人いない相手に難題じゃねぇか?
ともかく此処は「デュエット」で盛り上げるが、水穂がセンター維持
できるようにカメラキープはしとかねぇと。
――それにアトラクション回ると体力使うしな、くたびれない様に
タイミングよく|休憩を入れて《スイーツ食べに》いかねぇとな。
●
「お待たせ、|お姉ちゃん《水穂ちゃん》☆」
「アーデルハイトさん! お手伝いくださるとのこと、どうもありがとうございます」
待ち合わせ場所である遊園地の入り口に来てくれたのは、先日の事件もお手伝いしてくださったエリアス・アーデルハイトさんです。
まだ小学生になるかならないかといった年齢の女の子のアーデルハイトさん。茶色い長髪をツインテールにして、可愛らしい服を着た格好はとっても愛らしいものです。
さすがはこの年で生ライバーをやっているだけのことはありますね。私もアイドルとして負けないようにがんばらなきゃっ!
「それで、私、あんまり遊園地には詳しくないのですが……」
「そういうことなら任せて、水穂ちゃん。エリィが「|アイドル的オフ会《カップルイベント》」を盛り上げて上げるね☆」
自信満々のアーデルハイトさん。申し訳ありませんが、ここは頼りにさせていただきましょう。
――いきなりアイドル力でアーデルハイトさんに負けているような気もしますが、この遊園地を盛り上げるというお仕事の達成が優先です!
「さ、行こ? 水穂ちゃん」
「はいっ」
私は差し出してくれた手を取って、アーデルハイトさんと二人で遊園地のゲートをくぐっていったのでした。
「水穂ちゃん、あれ乗ろうよー♪」
「ジェットコースターですね、行きましょう!」
「やったー!」
ぴょんぴょんと飛び跳ねて全身で喜びを表すアーデルハイトさんに引っ張られるようにジェットコースターに向かいます。
遊園地の代名詞ともいうべきジェットコースター。ですが、先日の魔物の襲撃の影響か、お客さんが少なく、待つこと無く私たちの順番が来てしまいます。
早く人々に遊園地が安全になったことを実感してもらわなくては。そう考えながらジャットコースターに乗り込もうとしたとき――。
「あ、お嬢ちゃん、このジェットコースターは身長130cm以上ないと乗れない規則なんだよ。ごめんね」
「えー、そんなぁ~」
ジェットコースターの係員さんに身長を測られたアーデルハイトさんが、悲しそうな瞳を私に向けてきました。
アーデルハイトさんが大人っぽい一面を見せることがあったので忘れていましたが、まだ幼い年齢なんですよね。もっと私が気を使ってあげるべきでした。
「ア、アーデルハイトさん、ジェットコースターじゃなくて、あっちに乗りません?」
「|ウォーター系ライドアトラクション《ずぶ濡れお約束イベント》? うん、あっち乗ろう、水穂ちゃん!」
よかったです、アーデルハイトさんは機嫌を直してくれたようで、嬉しそうにアトラクションに向かって走っていきました。このアトラクションなら水際を走るだけなので、私の付き添いがあれば身長制限なしで乗れるみたいです。
受付の係員のお姉さんも私たちに優しく微笑みかけてきてくれます。
「お姉さんは妹さんが落ちないようにしっかりと手を繋いでいてくださいね。――あと、レインコートの貸出は無くて大丈夫ですか?」
「へ? レインコート……?」
「なにしてるのー、早く行くよー、水穂ちゃーん!」
レインコートを受け取る間もなくアーデルハイトさんに乗り物に引っ張っていかれ、乗り込んだ乗り物がプールに向かって全速で突っ込んでいき――。
「あー、楽しかったね、水穂ちゃん!」
「――そ、そうですね。アーデルハイトさんが楽しそうで何よりです」
アトラクションから降りた私は、ずぶ濡れになった全身の上からタオルをかぶって、スカートの裾を絞っていたのでした。
●
「ほら見て、水穂ちゃん。ツーショットの写真だよー」
「あ、さっきのアトラクション、乗ってるところを写真にしてくれるんですね」
アーデルハイトさんから手渡されたのは、水上を疾走するアトラクションと、その上で水をかぶってずぶ濡れになっている私の姿でした。なお、アーデルハイトさんは器用に水しぶきを全部避けたので、まったく濡れていません。
それにしても、楽しそうなアーデルハイトさんを見ていると、私も楽しくなってくるから不思議ですね。
「――これが、カップルイベントというものの効果なのでしょうか?」
思わず笑みを浮かべながら写真を見ていると、アーデルハイトさんが楽しげに宣言してきます。
「さあ、乗り物を楽しんだ後は、スイーツだよ♪」
「スイーツ! 早く行きましょう、アーデルハイトさん!」
「あっ、ちょっと待ってよ、水穂ちゃん! お店の場所わかるの~?」
駆け出した私を、今度はアーデルハイトさんが追いかける番でした。
●
「あー、スイーツ美味しかったですね~」
「水穂ちゃん、ケーキ食べ放題だからって、さすがに食べ過ぎじゃない?」
「だって、あんなに美味しそうなケーキがいっぱいあったら、食べたくなるじゃないですか」
アーデルハイトさんと二人で入ったケーキバイキングのお店で、心いくまでケーキを堪能しました。幸せです……。特に高級チョコレートを使ったケーキの数々が絶品でしたね。
「水穂ちゃん~、そんなにケーキ食べると体重増えるよ~?」
「はぅっ、そ、そういえば事務所からも、アイドルとして体調管理には気をつけるように言われているんでした……」
重く苦しい現実を突きつけられます。そんな私に、アーデルハイトさんは一枚のチラシを差し出してきました。
「のど自慢……大会?」
「そ。これにエリィとデュエットで出場して、ケーキのカロリーを消費しちゃお♪」
これはどうやら、アイドルとしての本気を出すしかないようですね!
私はケーキ分のカロリーを消費するために、全力をだすことを決意し――。
「やりましたよ、アーデルハイトさん! 私たちの優勝です!」
「ねえ……水穂ちゃん。なんか、戦闘のときよりも鬼気迫る勢いで歌ってなかった……?」
「気のせいです♪」
大成功
🔵🔵🔵
ベルカ・スノードロップ
丸一日コース
朝、一緒にゲートを潜って、カップルイベントに参加
午前は、絶叫系
要所で写真を撮ってくれるみたいです
ランチは、園内のカジュアルなレストラン
カップルイベント用のメニューを注文
「あーんしあうと、特典が貰えるそうですよ?」
ということで、こちらからは「あーん」と差し出します
カップルイベント用の料理やスイーツは
蜂蜜を使っているものが多いです
「蜂蜜って、昔は、媚薬とされていたみたいですよ」
蜜月やハネムーンも、蜂蜜由来ですしね?
午後は、園内に造られた河のクルーズや、観覧車といった穏やかなアトラクションを一緒に楽しみます
ここでも、ドキドキさせる演出が多いですね
最後は、遊園地敷地内のホテル
最上階のスイート
「イベントでカップルだと約7割引らしいですよ」
アロマキャンドルやムードライトも、カップルを盛り上げる演出みたいです
恋人ではないので、ベッドはツインにしました
恋人(役)なら、もっと『恋人同士でする事、全部』したのですけど
※年下に好かれる/女性に好かれる/【コミュ力】【礼儀作法】
演出・アドリブお任せ
●
「おはようございます、スノードロップさん。お待たせしちゃいましたか?」
「いえいえ、今来たところですよ、水穂さん。それでは行きましょうか」
朝早くから遊園地前で待ち合わせしていた相手は、緑色の綺麗な長髪を陽光に反射させる、女性とも見紛うばかりの美しい外見をしたベルカ・スノードロップさんです。
その中性的な雰囲気は、まるで優しいお姉さんと一緒にいるかのよう。思わず男性と二人きりという事実を忘れてしまい――。
「それでは行きましょうか、スノードロップさん」
私は自然とスノードロップさんの手を取って、遊園地のゲートをくぐったのでした。
●
「きゃっ、きゃああああっ!?」
全身を前後左右に激しく揺さぶられる感覚に、私は思わず悲鳴をあげながら隣の席のスノードロップさんの腕にしがみついていました。
「お、落ちちゃいますーっ!?」
「大丈夫ですよ、水穂さん。ジェットコースターは安全にできていますから、落ちたりしませんよ」
上下逆さまになりながらループ状になったコースを一回転したコースター。涙目になりながら絶叫する私とは対照的に、スノードロップさんは落ち着いて平然と笑顔を浮かべています。
「そ、そうですよね……。きちんと安全設計されてますよね……」
自分自身に言い聞かせ、深呼吸して心を落ち着けます。
アイドルたるもの、どんなときでも平常心を保てるようにしないといけないですよねっ!
ですが――。
「あ、次は3回転するみたいですね~」
「きゃわああああっ!?」
「水穂さん、ジェットコースター楽しかったですね」
「はい、少し……というか、かなり怖かったですけど――スノードロップさんがいてくださったおかげで、最後の方は楽しかった……かも?」
コースターから降りて、素直な感想を言います。
まだ地面が揺れている感覚があって心臓もドキドキしていますが、さすがは遊園地の代名詞ともいうべきジェットコースターです。これはきっとカップルの皆さんも楽しんでくれるはずです。
「で、水穂さん。カップルイベントということで、ジェットコースターに乗ってるときの写真を撮ってくれたみたいですよ?」
係員さんからサービスとして渡された数枚の写真を見せてくれるスノードロップさん。そこには――。
「はわわわっ、その写真は没収ですーっ!」
「だーめでーす」
スノードロップさんが懐にしまってしまった写真には――涙目で悲鳴をあげる私の姿がばっちり映っていたのでした。
●
「あ、スノードロップさん、ランチはここにしましょう!」
「水穂さん、ここでいいんですか?」
「はいっ!」
私の視線は店頭のメニューに書かれた、はちみつたっぷりなパンケーキに注がれています。
べ、別に、甘いものに釣られてお店を選んだわけじゃないですからねっ!
お店に入ると、店員さんがカップル用の二人席に案内してくれて――。
「いらっしゃいませ、ご注文は……」
「このパンケーキをおねがいしますっ!」
「はい、カップル専用パンケーキ、お二人様ですね。かしこまりました」
――カップル専用?
よくメニューを見ると、そこには『カップル専用あま~いハニーパンケーキ』という文字が。
「あっ、スノードロップさん、勝手に二人分決めてしまってごめんなさいっ!」
「いえいえ、私はいいですよ。――けど、水穂さん、これでよかったんですか?」
「へ?」
スノードロップさんが指差すのは、メニューに書かれた『カップル特典』の文字。
そこには、カップルであ~んして食べさせ合うと、特典がもらえると書いてありました。
――ええっ、あ~んですかっ!?
「お待たせいたしました。カップル専用あま~いハニーパンケーキになります」
店員さんが持ってきたのは、はちみつがたっぷりかかった、おいしそうなパンケーキ。
二人分なのでサイズが大きいですが!
「それでは、お二人であ~んしているところを写真に撮らせていただきますね」
「しゃ、写真撮るんですかっ!?」
にっこり微笑む店員さんにカメラを向けられて、私は顔が熱くなってしまうのを感じます。
ですが、スノードロップさんは平然とした顔で。
「それでは水穂さん、どうぞ。あーん」
なんてパンケーキを切ってフォークで差し出してきてますし!?
うう、あ~んなんてするだけでも抵抗があるのに、さらに記念撮影までされてしまうなんて恥ずかしすぎますっ!
「あ、そうそう。水穂さん、知ってますか? 蜂蜜って昔は媚薬とされていたらしいですよ。蜜月とかハネムーンという言葉も蜂蜜由来ですしね」
いたずらっぽく笑うスノードロップさんの言葉に、私の頭から、ぼふん、という音が聞こえた気がしました。
「さあ、カノジョさん。早くあ~んしないと、特典なしになりますよ~?」
「わ、わかりましたっ!」
私は覚悟を決めると、思い切ってスノードロップさんが差し出すフォークに向かってあ~ん、と口を開け。
デジカメのシャッター音を聞きながら、ふわっふわであま~いパンケーキの味を噛みしめるのでした。
「さあ、次はカノジョさんからカレシさんに、あ~んです」
「ええっ、こ、今度は私からですかっ!?」
「もちろんです。カノジョさんからもやらないと、特典なしですからね~」
楽しそうにカメラを構えてくる店員さん。
私は慣れないシチュエーションに、恥ずかしさで真っ赤になって。上目遣いで向かいの席のスノードロップさんを見つめ――。
「無理しなくていいですよ、水穂さん。もともと、特典目当てではなく、水穂さんが食べたそうにしてるパンケーキのために入ったお店ですしね」
穏やかに微笑みながら、スノードロップさんはそう言ってくれます。
――けど。
「だ、大丈夫ですっ! パンケーキ頼んだのも私ですしっ!」
動揺で震える手にナイフとフォークを握り、パンケーキを一口サイズに切り分けると――。
「は、はい、スノードロップさん。あ~ん……」
「はいっ、いただきますね」
ぱくっ、とパンケーキにかじりつき、美味しそうに微笑むスノードロップさん。
その様子を店員さんがパシャパシャとカメラに収めていきます。
「それでは、ラブラブカップルのお二人には、こちらのミツバチ人形をプレゼントです~」
「わぁっ、かわいい」
私は思わず、可愛らしいミツバチの人形に笑みをこぼし――。
「それにしても、カノジョさん。自分があ~んして食べたフォークでカレシさんにあ~んするなんて、恥ずかしがってたわりにらぶらぶですね~?」
「――へっ!?」
耳元で囁いた店員さんの言葉に、私は凍りついたのでした。
●
ランチのあと、スノードロップさんに案内されて園内のアトラクションを巡っていきます。
午前中のジェットコースターとは打って変わり、午後はメリーゴーラウンドや河のクルーズなどの穏やかなアトラクションを楽しんでいきます。
――そして時間はあっという間に過ぎ。
空が夕日で茜色に染まり出したころ、スノードロップさんと二人で観覧車に乗り込みました。
「こういう、のんびりしたアトラクションもいいですね」
観覧車から地上を眺めながら、ぽつりと呟きます。
「水穂さんは、派手なものより、こういう方が好きですか?」
「そうかもしれません。――変ですよね、魔物と戦うアイドルが、のんびりしたアトラクションの方が好きだなんて」
うつむきながら、思わず内心の悩みを打ち明けてしまいました。
運動が得意というわけでもないのに、アイドル――魔物と戦う力に目覚めた私。人々を守るためなら、どんな凶悪な魔物にも立ち向かおうと心に決めていたのに。
先日の戦いでは、皆さんの力を借りないと魔物に立ち向かえないことを痛感させられました。こんな私が、これからもアイドルを続けていけるのでしょうか?
ですが、そこにスノードロップさんの優しい声が響きます。
「変じゃないですよ。アイドルだろうと水穂さんは水穂さんです」
「私は――私……」
――そう、ですね。
私は私なりに精一杯頑張ればいいんですよね!
「ありがとうございます、スノードロップさん」
夕日に照らされたゴンドラの中、私は心からの笑顔をスノードロップさんに向けたのでした。
●
「さて、暗くなってしまいましたね。――この遊園地のホテル、カップルだと7割引らしいですよ」
スノードロップさんの言葉に釣られて見上げた先には豪華なホテル。
遊園地のホテルだけに、きっと夢いっぱいな体験ができるのでしょう。
――けれど、私はシンデレラの魔法が解ける時間です。
「もっと楽しみたいところなのですが、アイドル事務所から、夜は|お仕事《ファン交流》しちゃダメだって言われていまして。今日はこれで失礼しますね」
スノードロップさんに頭を下げると、私は後ろ髪を引かれる思いで帰路につきました。
大成功
🔵🔵🔵
ラクリマ・トランクィッルス
え、えと。
まだ水穂さんとしっかりお話しできていなかったですし、
先輩であり、目指す人でもある水穂さんと、
この機会にごいっしょできたらいいなって思いました。
え? で、でーとなんですか!?
わ、わたしはもちろん構いませんけど、
その……ありがとうございます……(真っ赤
遊園地を散策しながら、いろんなお話をしつつ、
目指すはカップルイベント開催中のゲームセンターです。
水穂さん、ここでダンスゲームのイベントがあるんです。
カップルでの参加は無料なんですけど、いかがでしょうか?
水穂さんもわたしも、ダンスはしっかり練習メニューですから、
きっと上位入賞間違いなしですよね。
……わたしが転んだりしなければ、ですけど。
●
「ラクリマさん、来てくださったのですね」
「え、えと。まだ水穂さんとしっかりお話しできていなかったですし、先輩であり、目指す人でもある水穂さんと、この機会にごいっしょできたらいいなって思いました」
私の呼びかけに応えてくれたのは、同じアイドルをしているラクリマ・トランクィッルスさんでした。
「それでは、早速、遊園地デートをしましょう」
「え? で、でーとなんですか!? わ、わたしはもちろん構いませんけど、その……ありがとうございます……」
「いえ、こちらこそ、ありがとうございます」
真っ赤になるラクリマさんの手を取り、私たちは遊園地に入っていったのでした。
遊園地を散策しながら、ラクリマさんと色々なお話をします。
お互いの夢とか、将来どんなアイドルになりたいのかとかを話しながら歩いていると――。
行く手に見えてきたゲームセンターを、ラクリマさんが指さしました。
「水穂さん、ここでダンスゲームのイベントがあるんです。カップルでの参加は無料なんですけど、いかがでしょうか?」
「わあ、いいですね!」
「水穂さんもわたしも、ダンスはしっかり練習メニューですから、きっと上位入賞間違いなしですよね」
自信満々な表情を浮かべるラクリマさん。
私もうなずき返しながらダンスゲームイベントにエントリー。
――そして、転びかけながらも頑張ってダンスゲームをするラクリマさんと、なんとか最後まで踊りきり。
「参加賞ですか……残念です」
「わたしは楽しかったです、水穂さん」
ラクリマさんの笑顔が一番の賞品でした。
大成功
🔵🔵🔵