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索漠の遺跡に雨鳥宿らず

#ブルーアルカディア #戦後

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#ブルーアルカディア
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#戦後


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 この滅びた地は、元々は雨雲を纏う島であった。
 吉兆とされる雨鳥。
 雨鳥が大きな樹木で翼を休めれば、鳥の長い長い尾が枝垂れ、大きな翼を振るえば長い長い羽がぱらりぱらりと水を零す。
 ひと鳴きすれば気流は動く。羽ばたけば雲粒が発生した。
 樹木が吸った水は清廉なもの。
 島から流れ広がった水もまた魔力を含めていて、他の地を様々な面で潤した。
 そんな雨纏いの文明を滅ぼしたのは美しい花々。
 この地を花たちは侵食し、覆いつくし、自身が咲き誇り咲き乱れる楽園としてしまったのだ。


「アルカディア争奪戦、お疲れさまでした! 皆さん、ゆっくりしている頃かしら?」
 ポノ・エトランゼ(ウルのリコ・f00385)が声を掛けながら猟兵たちを迎えている。
「ところで、アルカディアの玉座を隠していた『雲と土の迷宮』、『雲海の聖域』は消え去ったと思ってたんだけど、まだ少し残滓が存在しているみたいなの」
 拒絶の雲海を構築していたこれらは、さらに点在する浮島を隠しているようだ。
「まー、私はこれでアックス&ウィザーズで群竜大陸を探している時のことを思い出したりしちゃったワケなんだけど、それはともかく、今回は浮島にはびこる残党を皆さんに払っていただきたいのよ」
 敵は『アルカディア・オブリビオン』の群れだ。
「全身を花々で彩ったアルカディア・オブリビオンと、そのボスよ。浮島の地に元々あった文明は花々に覆われて滅びちゃったんだけど、この花、オブリビオンにも力を与えるらしくてね。厄介だからオブリビオンごと花にも焼き払ったりするなどの攻撃をして、根絶やしにして欲しいのよ」
 虚神アルカディアの言葉を思い出せば、ろくでもない植物群だろうと思われる。
 ポノの説明によればダイヤフィッシュというオブリビオンが花々を纏っているようだ。植物と敵を倒していけば、浮島の本来の遺跡部分が見えてくるかもしれない。
「処理していくと、この敵群を率いるボスも見えてくると思うわ。だって浮島を覆っている樹木だから」
 つまり、敵である樹木も花々に覆われているということ。
「敵ばかりだから思いっきりやっちゃって! 樹木……島喰い樹は幽鬼の如き『アルカディアの衣』を纏っていて、ちょっと厄介そうだから油断なくね」
 ポノの予知によれば、アルカディアが使った数多ある戦法のうちの一つを使ってくるようだ。どのような戦いを挑まれるのか、それは実際に現場に行ってみなければ分からないだろうと彼女は言った。
「浮島は、花によって滅ぼされた文明の遺跡……生きた時は還らないけれども、少しずつ、今に帰してあげていきたいわね」
 まずはひとつめ。よろしくね、とポノは言い、猟兵たちを送り出すのだった。


ねこあじ
 ねこあじです。
 全身を花々で彩った「アルカディア・オブリビオン」の群れの集団戦&花の駆除。
 それを率いるボス戦の二章仕立てです。
 そこそこまったり進行予定です。

 第二章の『アルカディアの衣』を纏う樹は、アルカディア争奪戦「㉗アルカディアの玉座」にある「剣戟戦〜技能戦」のどれかひとつの戦法で挑んできます(第二章の断章あたりで決めます……)
 狂乱戦か悪夢戦か、技能戦になるかなぁという感じです。
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第1章 集団戦 『ダイヤフィッシュ』

POW   :    もぐもぐ
【弱点を狙った体当たり】が命中した敵から剥ぎ取った部位を喰らう事で、敵の弱点に対応した形状の【もっと大きな体】に変身する。
SPD   :    ぱくぱく
【食らいつき】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【食感や味】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ   :    ぴかぴか
【視線】を向けた対象に、【ダイヤ型の模様から放たれる魔力の矢】でダメージを与える。命中率が高い。

イラスト:かりん

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 色とりどりの花々が咲き乱れている。
 久しぶりに出た青空の下で、嬉しそうに花たちは花弁をめいっぱいに開き、咲き誇っている。
 ――陽光の祝福を、この地の代わりに受ける葉っぱ。
 この地を喰らい、根差した力はいずれ種をブルーアルカディアへと少しずつ蒔いていくかもしれない。
 浮島の地にあった文明を滅ぼした花々。それを纏うオブリビオン、ダイヤフィッシュはさながらフラワーフィッシュ。
 今は浮島内を泳いでいるが、いずれブルーアルカディアの大陸とすれ違った時はその大陸へと寄生してしまうかもしれない。
 滅びの外来種はここで断たねば。
 アルカディア・オブリビオンはその花の生命力で保護されているかのようにしぶとそうだ。油断せずに撃破していこう。
鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎

他の大陸に被害は出させないぞ!
これが無害な存在であったなら良かったのだけど…

まずは飛翔衣を身に纏い【空中戦】
自身の周囲へ【結界術】で認識阻害の結界を張っておく
そうする事で相手から直視されにくくなるはずだ
空中より火【属性攻撃】の護符を【乱れ撃ち】し、地上の一角へ安全に着地可能な場所を確保しよう

確保出来た場所へ降り立ったらUCを発動
闇の波動に【目潰し】効果を付与、そうする事で周囲の敵がこちらを目視出来なくする
万一被弾しても光の波動でその場で回復だ

その後【オーラ防御】を刀に纏わせ【武器改造】
長刀と化し火【属性攻撃】と【破魔】の力を纏わせ、【なぎ払い】による【範囲攻撃】で纏めて倒していこう



 飛翔衣を纏い、ふわり空をゆく鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)の視界いっぱいに咲き広がっている花々。
 『雲と土の迷宮』、『雲海の聖域』に隠されていた島は今この時に息を吹き返したかのようにブルーアルカディアの陽射しを受けて、花たちは燦々と誇らしく咲いている。
 いつもならば――そう、何も知らぬままならばこの風景は長閑で心癒されるものであったかもしれない。
 だが、
「これが虚神アルカディアの言っていた植物たちだろうか……? ……、無害な存在であったなら良かったのだけど」
 ひりょが呟く。
 衣の裾をたなびかせて飛ぶひりょの眼下には花の海から這い出しては飛び、また潜っていく花塊。魚の尾が見えるのであれがダイヤフィッシュなのだろう。
 結界術を施すひりょの存在に、彼らは気付くこともなく。
「花の……丘? 足場になるだろうか」
 ある一点を見つけたひりょはその場所めがけて火精霊の加護を宿した護符を放った。
 乱れ撃つ符は、花に触れた瞬間に僅かに燃え広がり、周囲を灰へと変えていく。
 はびこる根へと到達すれば、まるで波紋のように刹那にパッと輝く燐の赤。
 範囲を拡げた結界術により音なく、燃え消えていく植物たち。
 剥き出しになった岩場へとひりょは降り立った。大小の岩が転がるここは昔、水が流れていく沢だったのかもしれない。
 その時、ざん、と花を掻き分ける音がした。
 何事かを感じ取ったダイヤフィッシュが花の海を泳ぎ向かっているのだろう。
「光と闇の疑似精霊よ、力を貸してくれ」
 燦々とした光は蜃気楼の如きゆらぎに。
 岩に花にと落ちていた影が、燐光ならぬ燐闇を舞わせふわり上がってくる。
 現れた花塊たちが一瞬ぴかぴかっと光る。
 彼らの向いている方向はあべこべであったのだろう。放たれたのは魔力の矢の乱れ撃ち。狙いもままならぬそれは、ひりょを見つけ出せていないことを物語っている。
 ひりょの摘んだ一枚の精霊の護符が赤い燐光を残滓にフッと消える。
 破魔刀を抜けば、刀身の破魔の文字は赤き輝きを宿していた。
 敵を探すかのように、飛び回っている花塊向けて刀を振れば、刀身に比例しない範囲の熱風が衝撃波となり空を震わせる。
 花塊へと当たった瞬間、熱風は火炎を発して花を燃え散らした。本体が露わになるダイヤフィッシュの群れ。
『!』
 叩かれた風に、身を焦がす火炎に、空に向かってまるで踊るように泳ぐダイヤフィッシュに再びひりょの追撃が掛かる。
 今度はより鋭利な風。
 オブリビオンを切り裂く風が一閃へと至れば瞬時に鎌鼬となり、ダイヤフィッシュの身を開き散らしていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

リュカ・エンキアンサス
…植物っていうのは、ああ見えて強くてしぶとくて、恐ろしいところがあるよね…
俺も旅人として、助けられたこともあれば、酷い目にあわされたこともある
…もちろん、見た目がかわいい謎の生き物に酷い目にあわされたこともあるから、油断せずに行こう

基本は灯り木で攻撃
端から順番に倒していこう
魔力の矢も一緒に撃ち落とせるように、手早くやっていく…んだけど、
しぶとすぎて倒しきれないようなら、敵の攻撃対応を優先しつつ撃ちながら動いて一か所にまとめて蒼天で焼く(撃つ)
どうしても倒しきれない場合は鎚にして叩くけど、それはなるべくやりたくない

…(好奇心があのやたらてろんとしたな生き物の羽を毟ってみたいと言っているけど、我慢



 噎せ返る花の香。
 今この時代、ブルーアルカディアにて息を吹き返した島は、島本来の叡智を滅ぼした植物に覆われていた。
 鬱蒼とした花々を掻き分けるようにして、身を潜ませるリュカ・エンキアンサス(蒼炎の旅人・f02586)。
(「……花に覆われているとは聞いたけど、これは……」)
 まるで花の海だ。空に向かって咲き伸びて、リュカの足が感じる大地には根がはびこっているのが分かる。
 虫一匹、生かさない侵略。
 既に長く、旅人として生きてきたリュカは植物に助けられたことがある。けれども酷い目にあわされたこともある。
 恵みの日陰、断崖絶壁に這う根、行先を狂わす樹海、廃屋を支える樹木下での一夜、戦場においては潜伏に長け、遮蔽にも長け。薬にもなり、毒をも提供する植物などなど。様々な記憶がリュカの頭に甦ってきた。
(「……植物っていうのは、ああ見えて強くてしぶとくて、恐ろしいところもあるから……」)
 狙撃手はこの華やかな風景に少しでも馴染めるよう気配を鎮め、観察を繰り返す。
 花の海を掻き分ける音――ざん、と天に向かって飛び出した花塊が再び花海に潜っていった。ゆらりたなびく尾が続いている。
 あれがアルカディア・オブリビオン。花を纏うダイヤフィッシュだろう。す、と身を屈めたリュカは灯り木の銃砲を上向けて耳を澄ませる。
「…………」
 ざ、ざ、ざ――泳ぐ。
 ざっと一度深く潜る。
 ざざざ、と上昇する音は刹那。
 再び天へ向かった花塊を捉えた時には、既に銃口から銃弾が放たれている。
 息をするかのように自然な狙撃。空に広がる凶星の如き花塊たちを次々と撃っていくリュカであったが――どの初撃も手応えとして散るのは花たち。
 一撃目に花を散らし、剥き出しになったオブリビオンを通る追撃はダイヤフィッシュのてろんとした肉身を貫通していく。
「……」
 陽射しのなかてらてらと温かみあるかのような柔らかな輝き。
 ダイヤフィッシュの羽をちらりと視認するリュカ。……ちょっと毟ってみたい気もするが、まあここは我慢だ。うずうずとした好奇心を抑え、リュカは引き続き仕事をすることにした。
 一射、二射と撃つ手の間は他のダイヤフィッシュの動きを阻害しない。
 索敵に成功したらしきダイヤフィッシュが狙撃元であるリュカの方に向かって額をぴかぴか。放たれた魔力の矢は素直な射線を描かず、自由に飛翔してリュカの元へと至らんとしていた。
 心の中で舌打ちをしたリュカが飛び退く。
 花海を掻き分ける後退が痕跡を残していく。ダイヤフィッシュたちが追い、リュカは右に左にと移動してはあらぬ方向を撃つ――それは敵の泳ぐ方向を促し決めるものだった。
(「……ここだね」)
 リュカを扇元に。向かい来るダイヤフィッシュたちが集中する場所を見極めたリュカは、背にした蒼天のスリングを引き、肩に乗った砲身を更に滑らせて構え。ここで一、二。
 三の呼吸で引鉄を弾けば放たれ着弾した砲弾がダイヤフィッシュたちを焼き上げていく。
 硝煙の向こう側。
「…………」
 一瞬にして身を焦がすが如き砲弾の衝撃は、若干の焼き魚な匂いを残滓に。

成功 🔵​🔵​🔴​

木元・杏
雨鳥…、一度見てみたかった

浮島に足をつければ花畑
…こんなに綺麗なのに、文明を消失させた張本人だなんて

少し複雑な気持ちのまま前を見れば
いた、フラワーフィッシュ
可愛い姿には騙されないで倒していこう

肉の味覚えさせると危険
ふわふわ浮くフィッシュは捉えにくい
肩にうさみん☆を乗せ、オーラで防御しつつダッシュの逃げ足でわざと注目を引き付ける

食らいついてきたら動線把握
ん、今
うさみん☆の真正面からストレートパンチ&【鎌鼬】でカウンター攻撃
そしてわたしもダッシュで飛び込み、怪力ふるぱわー
可愛いに敬意を表し、目一杯の女子力(物理)を込めたパンチをおみまいしよう

覚えてて?わたしは食らいつかれるより食らう方が好き



 ほのかな甘い香りに満ちている。
 木元・杏(アルカイックドヤ顔・f16565)が降り立った場所は一面に花、花、花。
 風に揺れながら杏の脚をくすぐる花たちは隠されていた空間から再び時の流れる今へと放たれて、陽射しの恩恵を、吹く風を謳歌しているかのようだ。
 何も知らなければ、花が咲き誇る美しい島だと思ったに違いない。
 だが……、
(「……こんなに綺麗なのに、文明を消失させた張本人だなんて」)
 高く、塔のようなものを覆う蔓や花たちを見上げて杏は想いを馳せた。
 存在していたとされる雨鳥が垂らす雨滴の尾を想像する。
「雨鳥……、一度見てみたかった」
 今をはびこる美しい植物達は共生を許さず、侵略していった。
 雨鳥はいつか再び宿ってくれるだろうか?
 そんなことを思いながら「行こう、うさみん☆」とうさ耳付メイドさん人形を肩に乗せて踵を返した。

 背高の植物が混ざる花の海のような場所。
 杏が駆ける音と同時に、ざ、ざざざ、ざ、と花の海を掻き分け泳ぐような音。
 ざん! と花弁を散らし空に向かってジャンプする花塊――否、ダイヤフィッシュ。
「……見つけた」
 うさみん☆を肩に姿を現わす花塊たちの方へと駆け寄ってく杏。
「ここ!」
 と一声あげれば、花塊たちの意識が杏に集中し始めて少女は踵を返す。
 間近に一体、遠くに一体、泳ぐような音はまだいくつかあってそれらを耳に捉えながら杏は駆けを加速させた。
 凹凸のある場所ではジャンプしてみせれば、その姿は活き活きと花海を泳ぐものに見えたかもしれない。追ってくる花塊――その一体がぎゅっと身を縮めたかと思うと突如放たれたかのように身を伸ばし、加速した。特攻だ。
 彼我の距離をはかる。
(「ん、見えた」)
 うさみん☆が杏の肩から弾丸の如き跳躍。花塊を真正面から捉えた拳が花塊を打ち、同時に杏の身を捻った接敵。弾ませた足は鋭き跳躍。
 護身刀振り上げれば花々を散らすダイヤフィッシュの身へ刃が到達した。アッパーカットを見舞うように振り切れば、ダイヤフィッシュのゼリーのような身体は切り開かれた。
「うさみん☆」
 飛来する次敵を打つうさみん☆の後を追って、護身刀を持ち替えた杏が振るうは自身の拳。
 うさみん☆の一撃で花を散らしながら飛んできたダイヤフィッシュを叩き飛ばす。
「これが女子力(物理)」
 怪力杏とうさみん☆の破壊力高めな女子力フルパワーアタックにダイヤフィッシュもイチコロである。……ぶち当たった敵は破裂した……。
「覚えてて? わたしは食らいつかれるより食らう方が好き」
 軽やかなうさみん☆のアタックの数々に花々を散らすダイヤフィッシュ。
 ダッシュが伴う剛拳な杏の拳に潰れ散るダイヤフィッシュ。
 高嶺の花に告白(という名の食らいつき)するのも容易ではない。
 可愛らしい少女たちが奮う華麗な攻撃の数々に打ちのめされ死屍累々となっていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

四十物・寧々(サポート)
※サポートプレイング

多少の怪我や失敗は厭わず積極的に行動し、他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。

その上で現在の状況に対応できる人格で行動します。
シナリオ進行に必要な言動など青丸稼ぎに役立てて下さい。

使用ユーベルコードの指定はありません。
「成功」の結果で書けそうなものを一つステータス画面からお選び下さい。フラグメント次第で不使用も可です。

アイテムもご自由にお使い下さい。
服装系は提案の一例として装備せず公開設定としております。

あとはお任せ致します。
宜しくお願い致します。



「ここが……隠されていた浮島ですか」
 四十物・寧々(あいもの・ねね・f28377)の視界いっぱいにひろがる花々。花畑という規模ではない。島の表も裏も覆い尽くす大量の花たち。かつてこの地にあった文明を滅ぼしたとされる植物群。
 今この時代、ブルーアルカディアにて息を吹き返した島は、島本来の叡智を滅ぼした植物に覆われていた。
「まるで花の海のようですね」
 ここがただの平穏な花の浮島であったならどれほどよかったことだろう。
 その時、ざざざざ、ざっ、と花を掻き分け泳ぐような音。
「――」
 怪しく思った寧々が耳を澄ませた瞬間に、「ざん!」と天に向かって跳ぶ花塊。
(「あれがアルカディア・オブリビオン」)
 アルカディアの植物を纏い、島外へと飛び出そうとするオブリビオン。
 文明を滅ぼした花、植物、種が島外へと撒かれてしまうと被害は拡大するだろう。
 それを防ぐために、
「『私』たちを呼びましょう。悲しみの私、怒りの私」
 ポンポンヴァッフェを手にして寧々たちを召喚すれば、ひとりの寧々は悲哀に目を潤ませた表情で、もうひとりの寧々は怒りに目を潤ませた表情で。
 切なげな、苛烈な、感情を語る色鮮やかなピンクの瞳たち。
 彼女たち――寧々の手から攻撃力を上げたポンポンが花塊に向かって放たれる。
 花とそう変わらない形状の武器はポンと花塊にくっついて、即座に発生した触手が鋭く動き侵食している花を刈りとってゆく。
 現れるオブリビオンはダイヤフィッシュ。
 てろんとした身体へ続き貫く光条は寧々のポンポンから放たれたもの。
 光線に千々となったダイヤフィッシュとは違う方向に、新たな花塊。
「次敵ですか――よろしくお願い致しますね、『私』」
 くすりと微笑む寧々。
 三人の寧々は力を合わせ、アルカディア・オブリビオンを撃破してくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

木元・祭莉
アルカディア、戦争中あんまし行けなかったからなあー。
ちょっと頑張ろーっと♪

あ、お花を纏うと力が増すかも?
(ちょいっと頭に挿してみる)
違った、何かキモチ悪いや。やめとこ(ぺしぺし)。

うっわ、この魚、口小さいのに吸い付いてくる!
(べしっと如意な棒ではたいて、正拳を口に突っ込む)
よっし、反撃。出でよ、メカたまこー!(コケコケ126体)

いけー、突っつき返せー!
そうそう、その縫い目のトコ?(尾の青い模様に)
高速連打ツッコミだー!(きゃっきゃ応援中)

華麗なクチバシが第二の縫い目を描いたゾ♪(満足げ)
ついでにお花も踏み荒らしておこうね♪(コケコケ大行進)

さ、アンちゃんがお魚に喰い付き返す前に見つけなきゃ!



 花のほのかに甘い香りが木元・祭莉(まつりん♪@sanhurawaaaaaa・f16554)の鼻をくすぐり、祭莉はふわふわな狼耳をぴくぴくさせた。
「花畑? あ、違う、花島? うーん……」
 島を覆い尽くす一面の花たちによって、滅びた文明。
 一見のどかな景色ではあったが、実情を知るとだいぶ不穏な景色である。
「お花を纏うと力が増すんだっけ……?」
 ヒナゲシのようなオレンジ色の花を摘み取り、ちょいっと髪に挿してみる祭莉。ふわふわな癖っ毛にすんなりとのってアラ可愛い――しかし祭莉は眉を顰めた。
 挿した花を取ってぺしり。
「違った、何かキモチ悪いや。やめとこ」
 端的な口調が心底そう思ったことを表している。本能が拒否したのだろう。
「えーとアンちゃんは何処にいったかな??」
 そう呟いて花の海を駆けていこうとすると、ざざ、ざっと花を掻き分け泳ぐような音が複数。
 捉えた耳が音の方向に向かって動いた。
 狼の挙動で一瞬にして身を屈めた祭莉が様子を窺っていると、ざん! と花海から飛び出してくる花塊。
 くねくねと動く長い尾がついており、それが複数体。
「……? 花束が生きてる? えー。これもキモチ悪いね」
 あっけらかんと声を放った祭莉へ、近くにいた一体が突撃してくる。花がなびいて、先端に見えたのはゼリーのようなオレンジ色と、ダイヤ型に開いた吸い口。
 咄嗟に如意な棒でべしっと叩いて、バウンドした敵口めがけて正拳突きをすれば花が一斉に散った。中身のダイヤフィッシュはその身を波打たせて弾き飛ぶ。
 ざ、ざざざ! と花海が大きく揺れ、数多の殺気が祭莉へと向かった。
「たぜいにぶぜー! 出でよ、メカタマコー!」
 守護神と書いて天敵と読むタマコのロボットが『『『コケー!』』』と鳴いて飛び立った。
 進路に邪魔な花を踏み散らし、または翼で叩き、見つけた花塊に飛び乗って啄む、啄む、啄む!
 これはたまらんとダイヤフィッシュたちは身をクネクネさせながらメカタマコたちを払い落とそうした。その光景は踊っているかのよう。
 目前で繰り広げられる踊りに祭莉の声は一層弾んだ。
「いけー、突っつき返せー!」
『コケ!』
『コケケ!!』
 メカタマコ一体に捕捉されてしまえば後はもうクチバシの連打に耐えられず地に落ちて、違うメカタマコたちが集っている。
 パッチワークみたいな模様のダイヤを啄み、メカタマコは移動しながら尾へ到達すれば青い目を見つける。
「そうそう、その縫い目のトコ? 高速連打ツッコミだー!」
 にぎやかにはやしたてる祭莉の応援に、俄然やる気をだすメカタマコたち。
『コッコッコッ……!』
 ダン、ダダダダ、と地面に縫い付ける勢いで啄むメカタマコ。ぶちぶちと青い部分に穴が開いて、貫通したクチバシが下にある花たちを引きずりだしている。
 ダイヤフィッシュの身体を貫通し、新たに、違った意味で花たちが咲き誇る。アートだ。
 まあ、その花たちも啄んでは駆除していくメカタマコたちですが。
「ついでにお花も踏み荒らしておこうね♪」
 126体ものメカタマコ軍が駆け回っては踏み荒らし、翔け回っては翼で切断し、啄んでは根から引っこ抜き、ブルーアルカディアの青い空の下、自由な蹂躙を繰り広げていった。
「さーて、おいらはアンちゃんを探しに行こうっと」
 祭莉が駆け出せば、メカタマコたちも当然ついてくる。
 鶏海戦術。花を根絶やしにする自由な蹂躙が行なわれていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

箒星・仄々
文明が滅ぶ前にお助けしたかったです
残念です

植物さんのことは大好きですけれども
命や今という時を喰らうオブリビオンさんならば
海へと還しましょう

指笛で影から召喚したランさんに
立ち乗りで竪琴を奏でます

シンフォニアの旋律を
浮島や空間そのものに共鳴させ
滅びた文明さんにそっと囁きかけます
どうぞ力をお貸し下さい

そうすればほら
地から霧が立ち込め
微かな雨雲がもくもくして陽光を遮り
小雨が降り出します

清廉なる水の魔力に
ダイヤさんやお花さんの力が弱まるでしょう

そして逆にランさんは水を得た魚として
すいすいーと速度や機動が高まります

霧やランさんの速度に
ダイヤさんは視線が定まらないでしょう

魔力を拝借して矢と成し連射します
敵さんしかいないのは
確かにやりやすいですね

水流で花弁を散らし
水圧の刃で根元断ち切り
お花さんを撃破し
その攻撃でそのままダイヤさんを倒します

ダイヤさんもお花さんに寄生された
犠牲者なのでしょうね
お可哀想に
海でどうか静かな眠りを

終幕
そのまま霧雨の中で演奏を続けて
鎮魂の調べとします



 一面、色とりどりの花畑のような場所。
 美しい花たちが絢爛と咲く風景は幾度となく邂逅し、そのどれもが異なる佳景を奏でていた――ブルーアルカディアの浮島に降り立った箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)は、ほぅと感嘆の息を零し、新たに広がる花の海を眺めた。
 風吹けば揺れる花たち。花弁の擦れる音。まさしく花の海のような場所。
 仄々は自身の胴や頬をくすぐる植物たちに微笑み目を細めた。
「植物さんのことは大好きですけれども……あなたがたは滅びの原因となってしまったのですね」
 いえ、と仄々は頭を振った。
「原因としたのはきっと虚神アルカディア……」
 この島にはどんな文明があったのだろう。
 雨鳥が宿ったとされる島は、きっとこんな晴れの恩恵を受ける花たちとは無縁の世界。むせかえる雨の匂い、薄らと霧がたちこめて、ぱたぱたと雨雫が打つ葉っぱや石畳の音が奏でられる世界。
 文明が滅び、遠く過ぎ去り、忘れ去られてしまった時間。
 ぴゅい、と指笛を響かせれば仄々の影から細い槍――否、目旗魚のランさんが現れた。ランさんの背に立ち、仄々は竪琴を奏で始める。
 ケットシーの冒険心が失われた時間へと歩み寄り、シンフォニアの奏でが滅びた文明へと語りかけた。
(「どうぞ力をお貸しください」)
 そう祈って紡ぐ歌声は、そっとそっと囁くもの。
 かつてあった雨の音を決して阻害しない、優しい声と言葉。
 奏でるものに世界が従い、時には天変地異をも発生させるシンフォニアの力が、刹那を繋いで薄く蜃気楼を顕現していった。
 水の気配などない、水の魔力。
 滅びた文明。枯れた水源。けれども世界は仄々という『シンフォニア』に呼ばれた。
 繋ぐことができそうな縁を見失わないように響かせる弦音――仄々の魔力はいつになく繊細に練られてゆく。
 ランさんが少しずつ浮上すれば、それに着いていくように大地から霧の帳が上昇していった。
 緩やかな上昇気流が起こり、陽射しを遮る霧は少しずつ氷粒を形成し厚みを増していく。――けれども世界が応えるのはこれが限界だったのだろう。ランさんがかき混ぜていく微かな雨雲。
 仄々が謳い発現した水の魔力が周囲に解ければ、ぱらり、と降り始める小雨。
 ぱたっと雨雫は花弁に弾け、地面に散り落ちていく。
 ランさんの尾がかき混ぜる雨雲は薄い薄い紗の如き雨。その軌跡はふと目にすれば虚空に雨の尾がたなびいているようにも見えた。
(「遺跡は、島の亡き文明は、再び感じ取ってくれるでしょうか?」)
 長く乾燥した天気のあとの、最初の雨にともなう心地良い土の匂い――ペトリコールを。
 水を呼べば、雨が呼ばれる。
 雨乞いの儀式によって呼ばれた雨たちは、清廉な魔力を含むもので。
 島にはびこる花たちの力を弱らせていき、花の海を泳いだり飛翔しているダイヤフィッシュの纏う花を散らしていった。
 少しずつ、少しずつ。
 丁寧に竪琴を奏で続けるための指使いや集中力に比例して、仄々の精神力が削れていく。黒い毛並みの下は汗がびっしょりだ。
 逆にランさんは、そのままの意味で水を得た魚。すいすいっと滑らかな泳ぎとなり、迫るダイヤフィッシュから彼我の距離を広げていく。
(「……ここまで、ですね……」)
 はっ、と吐き出した息が熱い。
 ぱらりぱらりと降る雨空のなか、仄々はその清廉な冷たき恩恵を受ける。
 雨を呼べば、再び雨鳥はこの島に宿ってくれるだろうか――。微かな希望が枝垂れるように雫となり降り注ぐ。
 
 休んでいる暇はないという風にランさんが降下しはじめて、仄々は思わず苦笑してしまう。
「ええ、まだ終わりではないですよね」
 自身に在る炎の魔力は使わない。すいすいっとダイヤフィッシュの間を縫っていくランさんに出遅れないようにお仕事だ。
 弦を爪弾いて放たれる魔力矢は蒼の奔流。数多き蒼の軌道を鋭角に滑らせていくのは翠の矢であった。
 龍の如き蒼矢の奔流は周囲の花たちを根元から断ち切り、潰し、捻りを加えた上昇の軌道がダイヤフィッシュたちを天へと叩き上げた。
「……すごい」
 思わずといった呟きが零れる。
 島が本来内包している魔力を引出し、ちょっとお借りした仄々が唖然として天を見上げた。
 ブルーアルカディアの上空でのたうちまわるはめになったオレンジ色の魚たちが次々と消失していく。

 ――彼らも、かつては命だった。

 骸の海へと還っていくダイヤフィッシュ。
 彼らも花に寄生されたモノである。花の犠牲となった存在。
(「骸の海で、どうか静かな眠りを」)
 生命もたらす霧雨の降る中、祈りの調べを鎮魂に。奏であげていく仄々だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『島喰い樹』

POW   :    緑の巨龍
自身の【枝や種子】を代償に、1〜12体の【島を打ち砕き、飲み込むほど巨大な植物の龍】を召喚する。戦闘力は高いが、召喚数に応じた量の代償が必要。
SPD   :    強蝕樹
非戦闘行為に没頭している間、自身の【無限にあらゆるエネルギーを吸い上げる根】が【際限無く浮遊大陸を浸蝕成長していき】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
WIZ   :    悠久の時、失われし緑の大地
戦場全体に、【外界より百万倍時間が早く進む果て無き樹海】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。

イラスト:すずや

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はロニ・グィーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵の手によって花が一掃されていくと、見えてくるのは大きな長い長い根。
 根が重なりあった場所は丘のように盛り上がり、逆に根のない場所は島の一部が見えている。
 高くそびえる山だと思っていた場所は、大樹が枝葉を広げる部分であった。
 雲海の如きものをたなびかせている大樹――きっとあの纏っているものが『アルカディアの衣』なのだろう。

 大樹が纏う『衣』から噴出した拒絶の雲海は、猟兵たちに悪夢を見せる。
 『生命ある者の苦悩、欲望、憎悪』を求める雲海は猟兵たちにとって『最悪の光景』を映し出す。これに呑まれてしまえば消滅の危機が待ち受けていることは、虚神アルカディアとの戦いによって判明している。
 故に拒絶の雲海の対応を猟兵たちは知っていた。
 映し出される光景に真正面から相対し、それを乗り越える圧倒的な「意志」を示して戦えば、アルカディア・オブリビオンなるものは強き意志に砕けてしまうことだろう。
 その一瞬が勝負だ。
 猟兵の強き意志に圧倒された大樹は――纏う衣は、拒絶の雲海の噴出を止めてしまう。
 大樹自体の攻撃が届く前に、噴出を止めた隙を突いて、自身の攻撃を届けよう。


【悪夢戦】
 プレイングボーナス:自身にとっての「最悪の光景」を描写し、それを振り払う/雲海の噴出が止む一瞬を突く。
https://tw6.jp/html/world/event/032war/032_setumei_5d4f7rt8.htm
木元・杏
綺麗過ぎて少し怖い、雲海の衣
初見のものでのある程度は第六感働かせて逃げ足で回避していくけど、全ては無理そう
…何処かで双子の兄の声が聞こえた気がする

呑まれ、すぅと目を開けば、目の前には…塊肉のステーキ
んん?
これは、腹が減っては戦が出来ない的な?
ま、美味しいは正義なのでいただきます、と近付けばそれらは一瞬で消え
戸惑う目に映るのは兄の姿
思わず名を呼び駆け寄ってもどんどん離れていくし、友達も皆いなくなる

…さびしい

けど、わたしは乗り越え方も知ってる
お肉はまた狩ればいいし、皆とは離れても絆でちゃんと結ばれている
だから、一人でも平気

灯る陽光で雲を切り裂き、【花魂鎮め】
大樹に突撃し噴出口に衝撃波を浴びせよう



 かつて力を吸ってきたものだからかもしれない。
 近し時、虚神アルカディアが纏っていたからかもしれない。
 陽の光を映しとり時にきらきらと、時に雲影が作られては島を喰らう大樹の根に深き闇を宿す。
 木元・杏の見る雲海の衣はとても綺麗なものであった。
 けれども真珠のような雲の光沢は交錯律を奏でているようにも思えて、果て無き佳景にほんの少し身を震わせた。うさみん☆をぎゅっと抱く。
 島を覆うほどの大樹とその根をどう倒せばいいのだろう。
 炎で焼けばいいのか。それとも浄化すればいいのか。
 根に足を捕らわれないように、ぴょんぴょんと跳ねるように移動しながら杏は策を練る。
 その間にも雲海の衣は迫り――、その時ふと、杏は足を止めた。けたたましい鶏の鳴き声と、双子の兄の声が聞こえた気がしたのだ。
 ぱちりと目を瞬く。

「まつりん……?」

 ひとたび耳をすませば、自身の名を呼ぶ様々な声があることに気付く。
 血縁者、友人、知人――そのどれもが愛情や親しみをこめた声で杏を呼び、雰囲気は楽し気なもの。賑やかにはしゃぐ声、じゅうじゅうと何かを焼いているような音。
「ん……これはよく知ってる音」
 バーベキューだ。炭火に脂が落ちて盛った火が鮮度の良い肉を炙っている。
 もはや反射だろう。杏のお腹がくぅと鳴った。
「油断大敵」
 しかしここは戦場。むむっと警戒を高めて杏が辺りを見回そうとすれば、目の前に塊肉のステーキが現れた!
「……んん?」
 杏の意識が一瞬にしてもっていかれ、視界が固定された。
 ステーキはまずは強火で表面を焼き固めたかのような色合いで、横に見える肉筋からその後じっくりと中を焼きこんだのであろうことが分かる。旨みが逃げることなく凝縮している香り。
 滲みだした脂と肉汁を丁寧にすくってはかけたようなステーキの照り。
 杏は知っている。美味の部類のステーキだ。
「これは、腹が減っては戦が出来ない……的な?」
 呟きながらも杏の喉は鳴る。こくり。
「うさみん☆、どう思う……?」
 抱えているうさみみメイドさん人形に話しかけて、
『美味しいは正義!』
 なんて腹話術をしてみたり。杏はうんうんと頷いた。なら、と決意して。
「いただきます」
 そう言って一歩、二歩と近付けば、大きなステーキはぱっと消失した。
「『え』」
 杏とうさみん☆(腹話術)の声がダブる。
 美味しい物が、大好きなお肉が目の前から突然消失する絶望。杏の表情が強張った。
 目の前のお肉だけでなく、何故か、世界中から塊肉という塊肉が消え失せた気がしたのだ。
「アンちゃん、どーしたのー」
 と兄が姿を見せて、いつもの声、いつもの表情で問われるも、彼の足は後退のステップ。
「あ。まつりん、お肉が。……まつりん……?」
 杏は名を呼んで駆け寄っていくのだが、祭莉はどんどんと遠ざかっていく。たまこが杏を抜き去って祭莉を追い、楽しそうだったみんなの声も少しずつ遠くに溶けていった。
 音が去って、辺りは静まり返る。
「まつりん?」
 兄弟の名を呼んでも、両親の名を呼んでも、友達の名を呼んでも応えは返ってこない。自身の声は静寂に呑まれていって、届いていないということも分かった。
「…………」
 いつの間にか、抱えていたうさみん☆もいなくなっている。落としてしまったのだろうか――杏は視線を彷徨わせた。
 気付けば幽けき雲海のなか、独り。
(「……さびしい」)
 その気持ちが胸に湧いて、いっぱいになって、しくしくと痛んだ。
「さびしい」
 反響すらしない自身の声。
 ――思わず胸に手をやれば懐に入れている折り紙のウサギがかさりと音を立てる。
 はっとして手のひらを上向ければ白銀の光が剣を象り、杏の手に収まった。
 誓いに一歩近づくように、はらり一枚、花弁のようなオーラが舞い落ちる。
 ふわりと何かが肩に乗る――見なくても分かる。うさみん☆だ。
 杏は深呼吸をした。
 そこになくても、
「お肉はまた狩ればいいし……」
 触れることができなくても、目に見えなくても、
「離れても、皆とは絆でちゃんと結ばれている」
 杏の心のなかにあるページを捲ればたくさんの思い出。ページ一枚一枚を括る糸は、きっと杏が紡いでいる縁。
 独りじゃない。
 夏の星空観察、秋の紅葉狩り、冬の雪遊びと日々に綴ってきたもの。
 さびしさに満ちていた胸は、灯りを宿したようにぽかぽかだ。春の柔らかな陽射しを覚え、杏はふんわりと微笑んだ。
「だから、一人でも平気」

 アルカディア・オブリビオンである大樹の広げる葉がざわざわと揺れ動いた。雲海の衣に構築されゆく硬化は、大気を繰ることができず、拒絶の雲海の放出が止まる。
 大地に接する下段から遥か上空へと一条の光が閃いたその源には杏。雲海を切る白銀からはらりはらりとオーラの花弁が舞い落ちた瞬間、ざんと大樹の落葉。
 木の葉に紛れ、大樹に向かって高速移動する杏の姿は銀風の如し。
「霊導へ還れ」
 雲海の衣を追った細き鋭き斬撃は、同時に小さき幾多もの白銀を放出する。大樹の枝葉から幹に根にと駆けた花魂鎮めが、島に蔓延る闇を剥ぎ取っていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳳凰院・ひりょ
くっ、これは…虚神が使ったという悪夢を見せる力か…
だが、負けはしない
俺を必要としてくれる人がいる限り!

…、いら…ない?俺の助力など、必要、ない?
(悪夢の中で周りの皆に拒絶され)
じゃあ、俺は何のためにここにいるんだ…
苦悩の中で、ふと触れた腕のミサンガ

しっかりと気持ちを落ち着ける
確かに、最初は「誰かの力になりたい」という他人に必要とされたいという気持ちからだったかもしれない
猟兵となって、幾多の経験を経てもその部分は否定出来ないだろう

でも、今の俺は、俺の意思で戦ってる
誰かに必要とされたいから、じゃない!
俺がそうありたいから、なんだ!

真の姿を解放し、詠唱しながら迷路を進む
目一杯高めた力でUC発動!



 アルカディア・オブリビオン。島に根をはり、その大幹から枝葉広げる島喰い樹はかつて虚神が纏っていたとされる雲海の衣を漂わせている。
 噴出するものは靄のようなもので、けれども放っておけばどんどんと厚みを増していくもので。
 大気を繰り、もくもくと構築されていく拒絶の雲海。
 風吹けば雲動く。
 ブルーアルカディアという島地において、その勢いは鳳凰院・ひりょの身体をさらいそうなほど。
 さらわれてしまえば行きつく先は歴史を屍人として蘇らせる雲海か、すなわち躯の海か。
 向かい風がひりょの身を叩き、くっ、と彼は呻いた。
「これは……」
 風は人の手形をしていた。人影がひりょの前に佇む。
「虚神が使ったという悪夢を見せる力か……」
 とうに知れたアルカディアの能力は、ひりょの脳内で答えとしていとも簡単に出された。
「ならば簡単なことだ。俺は負けはしない。俺を必要としてくれる人がいる限り!」
「――ああ、でもね? ひりょ」
 そう掛けられた声にひりょはぎくりと強張った。子供の頃、否、成人となるまで世話になった街の人の声だった。
「おじさん……?」
「お前はいなくてもよかったんだよ」
 覚えているかい? とおじさんは言葉を紡ぐ。
 人助けをしながら親の影を探しているようなひりょが哀れで、仕事を与えてやったのだと。
 一度の否定がなされれば、次々と街の人の姿が現れてひりょを同情するような目で見つめる。
「おにいちゃんはあっちにいって!」
 どん! と胸の辺りを子供に突き飛ばされてひりょがよろめく。
 猟兵となったひりょが救出した子供。顔は見えないがひりょを否定する態度がありありと出ている。いや恨んでいるのか。
「おにいちゃんじゃなくてもきっと誰かがたすけにきてくれたわ」
「そうすればわたしは×××××になれたかもしれないのに」
「……、そう……なのか……」
 ――そうだろう。俺じゃなくても、きっと誰かが俺のかわりに皆を助けた。
 街の皆には――ひりょと同じように孤児もいたけれど――大切な人がいた。居場所があった。
 ひりょはその大切な場所を時々借りていたに過ぎない。――ひりょが孤児で、独りで、何も持っていなかったから。かわいそうだったから。街の者がそんなことを告げる。
「……じゃあ、俺は何のためにここにいるんだ……」
 温かな思い出の裏で、そんなことを思われていたのだろうか。疑心がひりょの胸に飛来して、ひりょはひりょであった過去の少年にその存在を問う。自身の今に存在を問う。
「俺の助力なんて、いらなかったんだろ」
 自身が今まで成してきたことはすべていらなかった。築かれた虚構なのかもしれない。
 がしがしと頭をかいたひりょは息を吐いた。黒曜石のような彼の瞳は、今や曇っている。瞼がいやに重い。
(「俺の助けがなければ、その人には違う道が開かれていたのかもしれない」)
 死線をくぐった事件を思い起こす。
 未来閉ざされた箱庭。死の安寧。それらはきっと、当事者が実際に経験すれば幸せの終焉となったのかもしれない。
「――」
 そうして視界に端に映った彩りにふと触れれば、その編みを指先が辿った。
 気付けばいつもやっているしぐさだったのだろう。桃、黄緑、黒を編み込んだミサンガのリボンは指触りが良いのだ。優しさに触れた気がした。
 それを編んでくれた少女の指先は柔らかく、願いが叶いますようにと歌うようにひりょの未来を紡ぎ結んだ。
 ……ああ……、「あの時」、ひりょはそこに自身の居場所と思えたことを思い出した。
 ひりょはいてもいい存在なのだ。
 彩結祭の三色リボンで結ばれたミサンガは彼の行く先を願うもの。
 彼が成したことを歓ぶもの。
(「確かに、最初は『誰かの力になりたい』という……他人に……必要とされたいという気持ちからだったかもしれない」)
 猟兵となって、幾多の経験を経てもその部分は否定出来ないだろう――そうひりょは考える。
「でも」
 それは起点。
 顔をあげれば、目前にいた人たちの雰囲気は一変していた。
 否定するものだった空気は、ひとたび目線を変えれば、ひりょを受け入れようとしているものにも感じる。
「でも、今の俺は、俺の意思で戦ってる」
 過去は確かに、必要とされたかった。その人の喜ぶ顔が見たかった。皆に安堵してほしかった。
 けれども今は、
「誰かに必要とされたいから、じゃない! 俺がそうありたいから、なんだ!」
 ひりょがそう言えば、ざあっと風が吹き人影たちが消えていく。
 ひりょ自身がそうありたいと願ったから、彼の足は軽やかな一歩を踏む。
 風を切る飛翔を得たのは黒と白の翼があるから――彼の意思はきっと晴れ渡った青い空の如く、澄み切ったもの。
 彼の言葉は、行動は、きっと誰かの身を暖める陽射しとなるであろう。
 ひりょを起点に紡がれゆく誰かの想いは、きっと時のコントレイルとなるであろう。
「疑似精霊達の力を今、一つに!」
 集束した力が七色の光条となり大樹を撃ち貫く。
 ひりょの決意は、未来、誰かの力となるであろう――そう思わせる虹の道がブルーアルカディアの空を駆けていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木元・祭莉
お花散ってまた一雲。ってカンジ?

苦悩、欲望、憎悪な、最悪の光景かー。
暗くて、おなかすいて、たまこに蹴られる、とか?

最悪って、それよか悪いコトないって意味。
じゃあ、おいらが無くなること、かな?

よしっ。無くなったおいら、出てこいっ。
透明で、触れなくて、聞こえない、おいら。
このへんにいるかな?

やほ、おいら。元気ないね。
失くなっちゃったら、誰にも見えない、わかってもらえない。

でも、ほら。
感じるでしょ、アンちゃんの気配。
焼いてるお肉の匂いもしてきたよ。

それならさ。
おいら失くなっても、まあいいんじゃない?

おいらがいなくても、世界はきっと続いていく。
だからね、きっと最悪なんかじゃ、ないよね!

(一歩踏み出して、正拳突き)

ばいばい、何もないおいら。
やっぱコワイものもちょっとないと、つまんないよねー♪
(次々とばきばき折っていく)
(背後から聞こえる何かの声に首をちぢこませながら)



 ほやぁと赤子の泣く声はひとつだけだった。
 ほやぁ、ふや、ふやぁ。柔らかなその声はきっと女の子。
 その時の声を、木元・祭莉の狼耳は覚えていなかったけれど心は覚えていたようだ。
『アンちゃん……?』
 反射的に呟いた声は自身の耳にすら届かない。ただ空虚に自身の喉を震わせただけ。
「どしたのー、杏~?」
 お腹すいちゃった? と双子の妹に話しかけた大人の声はよく聞きなれた人もの。母の声だ。耳をピンとたてて祭莉は辺りを見回した。
 祭莉は生まれ育った家にいた。目をぱちくりとさせて、においをかぐ……においは違うトコロ。青空と雲の澄んだ匂いを含む嫌な雲の匂い。
『だよね? おいら、ブルーアルカディアにいたのにねぇ』
 呟く少年の声はどこまでも穏やかで伸び伸びとしている。
 生家という目前の光景と、戦場を知らせる嗅覚が祭莉の意識を『祭莉』から剝離させた。
 どうやら自分は仰向けに寝転がっていたようだ。ぱっと起きれば、敷布が手に触れた。
 母も、赤ん坊の妹も祭莉には気づいていないようだ。
 うーん、と頭をかけば、ふわふわの髪が指に絡まる。
「……拒絶の雲海のなか?」
 先程、花が散っていくなか迫りくる雲に様々なものが映り込んでいたのを思い出す。それらは祭莉にとっての悪いモノが多かった。
 祭莉は苦悩という苦悩を知らない。
 軽く例えれば。
 あれもこれも、どれから食べようと悩む妹がいれば、これがいいんじゃない? あれがいいんじゃない? おいらとはんぶんこしようか。と導くようにテキパキと助ける。
 それは自身にも適用されるのだろう。ちょっとは悩むこともあるけれど、テキパキと本能的にやることを片づけていけば自ずと先が見えてくる。見えてしまえばあとは突き進むだけ。後悔は……まあちょっと反省する時もあるけれど、後悔は経験として受け止めていく。純粋に生き、野性的に学ぶ。
 ゆえに今も本能的に自身のいる場所を理解できているのかもしれない。
 違和感のある生家にて、『祭莉』がいない。そのことに気付いて毛並みが逆立った気がした。
「……えーと?」
 怖いことはご飯にありつけずお腹を空かせたままにすること。これは元気がなくなるし、妹のことも心配になる。だから屋台も備えているし、狩りも積極的にやる。
 あとたまこに蹴られることも怖い。これはまあ全力で逃げるのみ。
 怖いものは暗いところ。だからいつもおひさま笑顔で、物理的には白炎で辺りを照らす。
 木元家の長男坊は芯がしっかりとしていた。
 だからこそ、今いるココが不思議でならない。
 母が抱えるおくるみには女の子。もうひとつは地面に落ちているけれど……。
「アンちゃんがいるなら、隣にはおいらもいるよね」
 母の抱える女の子は少しずつ育って大きくなっていくのに、誰も隣にいるはずの祭莉に意識を向けない。まるで透明人間にでもなっているかのようだ。
 現実の祭莉はココにいるのだから、ココが現実でないことは分かる。けれども現実でないココに妹がいるのなら、ココには祭莉もいなければいけない。
「この辺かなぁ……」
 屈んだ祭莉がおくるみの辺りに手を這わせると、生家の光景が消え、妹が消え、母が消え――まるで灯を落とされた静寂が辺りに満ちた。
 落ちていたおくるみを拾い上げ、祭莉はにこりと微笑んだ。
「やほ、おいら。なくなっちゃった?」
 元気ないね。と声を掛けても何の反応もない。
「……失くなっちゃったら、誰にも見えない、わかってもらえないね。……さみしいね」
 でもね。と励ますように告げる。
「感じるでしょ、アンちゃんの気配」
 いつだって隣に感じる杏の気配。彼女が声をあげれば誰かが話しかけてくるし、彼女がお腹を空かせれば様々な料理が食卓にのってくる。
「ほら、焼いてるお肉の匂いもしてきたよ」
 彼女の大好物だ。もちろん祭莉も大好物だ。
 好きを足して、苦手を分け合って、いつだって一緒に過ごしてきた存在。
「アンちゃんはそこにいるよ。それならさ。おいら失くなっても、まあいいんじゃない?」
 あたたかい、陽射しのような声で祭莉は言った。
 双子のどちらかが失われてしまうのは、きっと悪夢のような、そう、それこそ最悪なことなのではないかと祭莉は思ったけれど……。
 でも彼女が生きていけるのなら僥倖だ。だって杏の見る世界は、祭莉が夢見る世界だ。
 朝起きて、たまこたちに餌をあげて、とれたての卵を調理して。
 村人に、友達にと挨拶をしておしゃべりをして。
 悪者はやっつけて、誰かの笑顔を咲かせて。杏が行くであろう道は祭莉も行く道。
「おいらがいなくても、世界はきっと続いていくよ」
 そこは明るい未来。
 重ねる日常は思い出として、杏の絆の糸で括って。その始まりの糸を同じくする祭莉は笑顔になる。過去として置いて行かれるけれども、杏が在れば光繋がることを知っているから。

「だからね、きっと最悪なんかじゃ、ないよね!」

 祭莉が一歩踏み込み、虚空を真胴に捉えた正拳突きを放てば――ざあっと雲が払われ、青い空と光降り注ぐブルーアルカディアの世界が視界に広がった。
「ばいばい、何もないおいら!」
 拳が大樹にのめり込み、バキバキと幹を鳴らして亀裂が入っていく。
「ん! やっぱコワイものもちょっとないと、つまんないよねー♪」
 なんて言って、そんな自身も受け入れる。それが祭莉だ。
 衝撃に枝が揺れ、大量の葉が落ちるなか、白銀の花弁が混じる。
 いつだって存在を感じとれる双子の妹。
 あ、と声上げて祭莉が笑顔になったかと思えば、次の瞬間には天敵の声が聞こえてきてその表情は強張った。――いつもいつも、すかさず割り込んでくるのだ。……たまこの声が。
「あーっ、やっぱりコワイ!!」
 首をちぢこませて、たまらず祭莉は叫ぶ。

 ここにいるよ、というように。少年の声が響き渡っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ネロ・ディアンガ
煮え立つ海、紫の空。呪いに蝕まれた木はどす黒く染まり、あっけなくその生を散らした。また一つ、また一つと命の光が消えていく。
「……悪夢をみせると聞いていたが…なかなかのものだな」
しかしたかが幻。かまう必要はない。

………

もし、世界がいつか終わる日が来るのなら。安寧のために尽くし、それでも自然が破壊されてしまうのならば。
その時、私はどうする?私は………おれは、


「チュウ?」


タム…ああ、何をやっているのだ私は。そんなの決まっているではないか。
(ダン!と一つ蹄をならす)

「最後の命が途絶えるまで、私は生命を守り続ける。それが、私の使命なのだから」

霧は晴れた。氷雪の嵐よ、あの大樹を飲み込みたまえ。



 アルカディア・オブリビオンである巨樹の葉擦れが耳障りなほどに大きくなれば、それは波の如く絶え間なく寄せてくる。
 雲海の衣が空に広がって、陽射しを遮る――浮島を覆うのはじとりとした影だ。
 変わりゆく景色にネロ・ディアンガ(緑と生きる大精霊・f38613)は鹿首をもたげ、ゆっくりと辺りを見回した。ソーダ水の体は景色の様々なイロを内包していく。
 長く永く生きてきた彼にはそれが時の流れのようにも感じた。……今や走馬灯とはこのようなものなのだろうかとも思える光景が、ネロの前に広がり始めている。
 熱波にさらされる世界、なかなか落ちぬ海水温にすっかり海は煮え立っている。
 それにより発生した気流は途方もなく厚い雲の層を作り上げて、青かった空を紫のものへと染め上げてしまっていた。
 光も、水も、土も浸食されてしまえば木は容易く呪いに蝕まれてしまう。
 次なる生命となる芽も出ていない。
 ネロが木を見上げれば、葉無き枝が乾いた音を立てて揺れ、根から蝕んできた黒に染まって散っていく。
 生が失われていく。
 木が林が、森が。
 吸い上げる水がない、それすなわち大地の枯渇である。
 森の恵みが失われてしまえば、動植物たちもまた絶えていく……それが自然の理だ。
 また一つ、また一つと命の光が消えていく。
「……悪夢をみせると聞いていたが……なかなかのものだな」
 思わず零した呟きは、敢えて他人事めいたもの……に留めたかった。だがネロは出来なかった。
 たかが幻だと理解している。
 構う必要はない、と心得ている。
「…………」
 セイレーンのその身に被さってくる大気は汚染されたもので。
 ネロが都度邪気を祓うも祓い切れぬ底のなさを突き付けてくる。――そう、まるで、いつか来るかもしれない未来を暗示しているかのように……。
 災禍は少しの弾みで未来を灼き尽くす。
 だから、もし、と脳裏に過ぎる考え。
「世界がいつか終わる日が来るのなら。安寧のために尽くし、それでも自然が破壊されてしまうのならば……」
 ある世界は緑が管理されている。決められた土地で育てられ、癒しを与えるものとして囲われている。
 ある世界の緑は少しずつ汚染されていく最中。汚染から救おうと人の手は努力しているけれども、一度手綱を誤れば加速度的に淘汰されてしまう。
 ある世界は自然がない。空気は汚れており、清浄機が必要な世界。
 ネロが知る世界だけで、自然を虐げる惨状はそこらじゅうに転がっている。
 もし、救えない時が到来すれば……。
(「その時、私はどうする? 私は………、おれは――」)
 悪夢に侵される世界のなかで、ネロの思考が昏く深みを増した瞬間、

「チュウ?」

 と、チンチラネズミの火精霊の声。
 頭が下がったネロを見て、どうしたの、と不思議そうにこちらを見ていた。
「タム……ああ、何をやっているのだ私は。そんなの決まっているではないか」
 脚を振り、ダン! と蹄をひとつ鳴らせば、彼の祈りが波紋のように広がっていく。
「最後の命が途絶えるまで、私は生命を守り続ける。それが、私の使命なのだから」
 清浄なる願いを、力を世界にもたらしてゆくセイレーンの力。
 この蹄、届かぬならば響かせれば良いのだ。
 彼の意志や言葉がブルーアルカディア世界を渡り、同化して自然の力を汲み上げていく。
 どうなるかわからない未来。
 今この時は過程の一つで、道を作る礎の一つで、だからこそ重ねていかねばならぬもの。
 ネロの確固たる決意に、揺らいだ拒絶のそれが薄らいでいく。
「霧は晴れた」
 朗々としたネロの声が大気を震わせてゆく。
 ネロを中心に冷たき風が集束し次々と結んでいく。
「氷雪の嵐よ、あの大樹を飲み込みたまえ」
 氷塊に雪にと吹雪く嵐が島喰い樹を喰らうように発生し、彼の祈り宿る力は雨鳥の失われた地に再び恵みの水をもたらしていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

箒星・仄々
元々はきっと沢山の実りや癒しを届けてくれた
存在だった筈
歪んだお姿がお労しいです
海へとお還しします

いつの間にか水中にいます
見渡す限り只々水が広がっています

やがて36個の光があることに気づきます
そう私たち猟兵がこれまで巡り
そしてこれから訪ねるであろう世界です

その一つ
ブルーアルカディアから巨大な根や枝が伸びてきて
世界を侵食します
次から次へと緑が広がっていきます

島喰いならぬ世界喰いの樹により
36世界から輝きが消え
無数の骸の上を根が覆います

…そんなこと絶対にさせません!

竪琴を奏で
命と命が産む未来を守るとの意志を込めて
旋律を響かせます

再び文明さんの力をお借りしましょう
静かに雨が降り始めます

雨の紗幕で
悪夢の風景がかき消されて
元の光や彩を取り戻します

そして36世界が光を取り戻すと共に
悪夢の風景は砕け散ります

今がチャンスです
除草の状態異常を込めた旋律で弱らせましたら
攻撃力強化へ変更
ランさんに立ち乗りで突撃して
樹さんに穴を空けて
海へと還します

終幕
文明さんの方々や樹さんへ鎮魂の調べ
静かにお休みください



 巨樹の纏う雲海の衣は、小さな箒星・仄々から見れば果て無く広がっていく存在にも思えた。
 雲一粒一粒が反射して作り上げる誰かの悪夢……ほのかな光が発生し昇っていくのを仄々は見つめる。まるで泡沫のような――ならば、ここは水の中だろうか?
 はっとそう気付いた時にはすでに、彼の身は何処かの水中に在った。
(「ここは」)
 自身の手や衣服には濡れた感じはなく、奇妙な浮遊感。けれども耳が痛く感じるほどの静寂や泡が昇っていく光景は、ここが水中なのだと告げていた。息はできるようだ。ほっとした。
(「ランさんは……いませんね」)
 マントをゆらゆら泳がせながら周囲を見回して、ランさんの姿を探すのだがあいにく近くにはいないようだ。もしかしたら雲に吞み込まれてしまったのかもしれない。
(「と、とりあえず進みましょう」)
 水をかき分けて泳ぎ進めば光がひとつ、ふたつと現れた。三つめの光はちょうど近くに現れたので何となく注視してみれば、何かの風景が揺らいでいることに気付いた。
 光の手前では歯車がきらりと煌めいていて、その奥には色々なドーム建築のあるアルダワ魔法学園が映されている。
 そうっと手をかざしてみれば、まるで触れたかのように光がくるりと回って――その様子に地球儀のようだと仄々は思う――海が映され、群島海域から精霊の森の地と、空を行く鳥の如き俯瞰図。
 そのまま光に手を入れてみれば、葉っぱに触れる。慌てて引っ込めた手には植物の匂いがしっかりと付着していた。
(「ここはアルダワ。ではあちらの光は……?」)
 湿った荒野の匂いのダークセイヴァー。
 潮の香に満ちたグリードオーシャン。
 周囲にある光の数を数えて、仄々は「あ」と声を上げた。
「36……私たち猟兵がこれまで巡り、そしてこれから訪ねるであろう世界、でしょうか」
 ぱち、ぱちとガラス玉のように輝く目を瞬かせて、仄々はまだ見ぬ世界を見ようとして件の光を探そうとする。
 ちらちらと赤が駆ける光はきっとデビルキングワールド。
 薄い黒煙を纏う光は、骸の雨降るサイバーザナドゥ。
 ブルーアルカディアの空、蒼に染まった光もある。仄々が今いるであろう世界だ。
「ここから戻れたりしますでしょうか……あれ??」
 蒼い光に触れようとした仄々であったが、その光から巨大な根が降りてきて、そして枝が伸びていく。ブルーアルカディアの光を中心に浸食していく大樹。
 隣にあった光へと入ったかと思えば、そこで糧を得たかのようにしてさらに広がっていく。
 いつしか仄々のいた水中は枝葉と根が蔓延る場所へと変化していた。自由に泳ぎ回れた空間での行動が制限されている。
 糧とされた光は徐々に輝きを失っていき、大樹が世界を覆う様子が露わとなっていく。
(「……島喰いならぬ世界喰いの樹」)
 アルカディア・オブリビオンとしての力がのれば、まさにこの浸食は虚神アルカディアが願った状態ともいえるだろう。
 光から染み出た時間が水中に漂い始めて昏く染め上げていく。
 その染み出た時間は、その世界で生きるものの死であることを仄々は悟る。
 無数の時間の骸を大樹の根が捉え、集めて、覆っていく。
 仄々の眼前に広がる光景は各世界の滅びだった。息をのむ。
「……そんなことは――絶対にさせません!」
 ポロン。
 抱いたカッツェンリートの弦を弾いて。
 ポロロン。
 音を響かせて。

 先程はシンフォニアが繋げた過去の時間を想う奏で。
 今は、命と命が産む未来を守るとの意志を込めて。
 仄々は旋律を響かせる。
 原初の雨よと歌う竪琴の音色は、この地にあった文明の力を引き出していく。その時、仄々の響きと奏で合う仲間の猟兵の力が同時に感じられた。
 落ちてくる雫は祈り願うもの。波紋が混ざり合って、深淵に眠る息吹を呼び起こす。
 やがて降り始めた雨は辺りをけぶらせる小さな粒。
 しとしととくすんだ雨の匂い。
 水中を、覆う枝葉を、雨が紗幕として覆っていけばその悪夢の風景は遮られ、仄々の前が晴れ渡っていく。
 悪夢がかき消されていけば、ブルーアルカディアの陽射しや光、島の持つ彩が再び彼の元へと戻ってきた。
 ほぅ、と仄々は安堵の息を零す。
 恵みの雨に触れて、生き生きとした輝きを取り戻す36の光たちはここに在る。今はまだ難題を抱える世界も多く、けれども、だからこそ、未来を切り開いていける無限の可能性に満ちた光たち。
「ランさん」
 呼べば、仄々の影から現れたランさんが、彼を乗せて空へ浮上する。
 通り過ぎていく光に視線で挨拶をして。仄々は魔力を込めて竪琴を奏でた。
 島喰い樹に降らせる音の雨。トリニティ・エンハンスは、除草の状態異常の力を込めたもの。
 容赦なく『雨』『音』が大樹の枝葉を叩くなか、仄々はランさんに合図を送る。変えた向きはサーフィンの要領――旋回したランさんが吻を突き出し、大樹の幹へと突進した。
 竪琴の激しい旋律は一撃を鼓舞するもの。
 猟兵たちが重ねた攻撃によって、弱体化していた島喰い樹はランさんと仄々の突撃を受けてその身に亀裂を走らせた。
 途端、稲妻が駆けるが如き破裂音。
 バリリリッと真っ二つに裂けた巨樹は徐々に朽ち――島を解放していくのだった。

(「元々はきっと沢山の実りや癒しを届けてくれた存在だったはず」)
 島喰い樹となる前のことを思い、仄々は心を痛める。ポロロンと爪弾く竪琴の音色は優しいものに。
 歪んでしまった姿が労しい。
「慰めに……眠りの旅路に奏でましょう。静かにお休みくださいますよう」
 鎮魂の調べは島喰い樹、そしてこの地で果ててしまった文明に。


 その島はぱらぱらと雨が降っていることが多い。
 喰われた地はまるでスポンジであるかのように、その雨を吸い込んでいく。
 再び前のように雨の気配を纏うまで時間はかかることだろう。
 眠る遺跡は再び雨鳥を熾してくれるだろうか。
 未来のことは分からないが、猟兵たちに助けられた島はこの時に蘇った。
 少しずつ、少しずつ、穏やかな時の流れに生きていくことだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年11月05日


挿絵イラスト