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紺碧に夢見る

#キマイラフューチャー #戦後 #【Q】

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#キマイラフューチャー
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#戦後
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#【Q】


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●マリンブルーの憧憬
 こぽこぽと零れる泡。
 水中を惑い、揺れながら海面を目指し昇っていく。
 洋上から注ぐ嫋やかな光のカーテンがサンゴ礁を照らし、
 隙間から顔を出したクマノミと目が合った。

 光あふれるあたたかな海。
 ため息をつき、慌てて口元を覆ったが溺れる心配はない事を思い出す。
 ここは浮力の働く仮想現実の海。
 キマイラたちが思い描く、人類の愛した母なる故郷。

 息のできる海。泡の音が響き、浮力も働き泳げる海。
 キマイラ特有のなんだかすごい技術で再現した海は、
 泳ぎの苦手な人でもいくつものエリアを楽しむことができる。

 サンゴ礁のあたたかな海。潮の流れに富み、渦潮の発生する岬。
 イルカたちの棲む外洋でフィンを漕げば、彼らが並んで泳いでくれる。
 本来生身で潜る事のできない深海エリアでなら、
 降るマリンスノウを仰ぐように眺め、海底に横たわる事もできるだろう。

 友達と、恋人と、一人で。
 キマイラたちはここを訪れ、海へと潜る。
 そして彼らは夢を見る。
 人間たちの愛した海の、母なる懐に抱かれる夢を見る。

●海のテーマパークへ
 グリモアベースに立つリグの表情に、あなたたちは楽しい遊びの誘いを予感した。
 果たして予感は正しく、リグは手にチケットをひらつかせてこう告げた。
「夏の間に海に行きそびれた方もいるんじゃないかしら。キマイラフューチャーで、仮想現実の海にダイビングしてみない?」
 キマイラの超技術で作られた海のテーマパークでは水中の浮力が再現され、水に濡れる事なく泳ぎを楽しめるという。
 VRゴーグルや水中装備のような煩わしい装着物はいらないが、雰囲気を楽しむために水着やダイビングスーツの貸し出しも行っている。
「実際の海と違って溺れる事はないから、泳ぎが苦手な方でも安心してね! 海はいくつものエリアに分かれていて、エリアごとに違う景色を楽しめるみたいなの」
 嬉々として語りながら、リグはパンフレットを開く。誌面いっぱいに描かれた各エリアの魅力は、要約すると次のようなものだった。

 群生するサンゴ礁のエリアでは、熱帯魚たちが泳ぐ姿を間近に見れる。魚は本物ではないので触ると透けてしまうが、こちらの動きにある程度反応してくれる。
 外海エリアではウミガメが見られるほか、泳いでいると併走するようにイルカやシャチが集う。魚と違って彼らは実体を持っているため、望むなら背に乗せてもらう事もできる。
 潮目の早い岬エリアでは、魚たちが渦を巻き銀の腹を煌めかせる。時折発生する疑似的な渦潮に乗り、彼らを追う事もできるだろう。
 そして、深き海を再現したエリア。マリンスノウが降り注ぐ海の底は生物こそ少ないが、光るウリクラゲやマッコウクジラ、鯨骨に群がる魚たちなど普段目にできない生き物と出会う事ができる。

 一通り海を楽しみ終えたら、やはり怪人が来るので退治してほしいとの事。
 現れるのは縁切り怪人の『キリ』。どんな縁でも一刀両断する縁切りの神様――という設定を拗らせた面倒そうな性格の怪人だ。
「怪人さんはリゾートを乗っ取ろうとしてくるけど、施設内でたっぷり遊んだなら地の利は皆にあるはずよ! なんなら海の浮力や地形を利用したって構わないわ! なんだか微妙にデジャヴ感あるけど……そこは気にせず、ちゅどーん! ってしちゃいましょ!」
 空気を読むことに長けた怪人のこと、やられる時は後腐れなく消えてくれるだろう。

 説明を終えたリグはチケットを配り、あなたたちをグリモアの転送光に包んでいく。
「いってらっしゃい、楽しいお土産話を聞かせてね!」
 手を振るリグの姿が次第に滲み、あなたたちの意識はキマイラたちの楽園へと向かっていった。


晴海悠
 お世話になっております、晴海悠です!
 仮想現実の海で、ダイビングを楽しみませんかのお誘いです。
 溺れる心配のない海で魚と戯れるもよし、イルカの背にだって乗れちゃいます。
 夏の間に遊びそびれたあなたも、ぜひぜひお越しください!

『シナリオについて』
 二章構成のシナリオです。
 ペアやグループでの参加も歓迎いたしますので、お誘いあわせの上お越し下さい!
 迷子防止のため、送信する日・合言葉などを決めてご参加頂けると助かります!

『一章 日常』
 海を再現したテーマパークでの一日。
 サンゴ礁、外洋、岬、深海の四つのエリアに分かれているので、メインで楽しみたい場所をお書き添え下さい。お腹が空いたらコンコンコン! ホントの海の中ではないので、ふわっと食べ物が浮かんできます。

 描写の都合上、やりたい事一点特化で書くことをおすすめします! あまり複数エリアにまたがると描写が浅くなるので、一番やりたいのはこれ! と決めて頂けると幸いです。

『二章 ボス戦』
 キリ。自称縁切りの神様、この海を縁切りテーマパークにしようと企んでます。
 倒せば空気読んでぽわんと消えます!
 二章は短期間で終える予定です、楽しくカッコよくヒーローショーみたいにやっつけちゃってください!

『水着の描写』
 水着イラストをお持ちの方は、ご指定がなければ最新のイラストを元に描写します。複数お持ちで着たい水着が決まっている方、イラストはないけどこんな水着が着たい! という方はぜひ、簡単にでもお書き添え下さい!

『その他』
 小さなお子様が目にできないような描写はマスタリング対象となります。またそれ以外の公共の場で相応しくない行動も不採用とする場合があります(仲間内で軽く騒ぐのは全然OK!)。
 安心してお読み頂けるリプレイをお届けしたいので、ご協力をお願いします。

 それではどうぞ楽しい一日を! 晴海悠でした。
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第1章 日常 『うみあそび!』

POW   :    ぼうけんだー!素敵なものを探すぞー!

SPD   :    おあそびだー!魚と泳ぐよ!

WIZ   :    のーんびり。きれいなところでお喋り!

イラスト:シロタマゴ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 普段着、水着、ダイビングスーツ。
 思い思いの装いに着替え、人工の浮力に身を委ねるあなたを静謐が満たす。
 ここは海だ。海水はなくともゆらめく波模様が真下までを照らし、
 どこまでも深く潜っていけそうに感じる。

 水面下で繰り広げられる、海の生き物たちの共同生活。
 いつの間に輪に迎え入れられたのか、足のフィンをつつく熱帯魚に口元が綻ぶ。
 大洋をゆくウミガメ。海よりも青いルリスズメダイ。
 それら魚たちの営みを珊瑚が見守り、小さな魚に棲家を提供する。

 ところ変われば表情変える海は、岬に近付けば、
 寄せては返す荒波の音が海面下まで届きそう。
 群れを成す魚が餌を求めて過ぎり、やがて散ったと思えば
 出現した渦潮が海をかき混ぜ、栄養に富む海底の砂を洋上へと運ぶ。
 そして再び魚たちが戻り、待ちわびたように口を開けて泳ぐ。

 幻想の海の果てにまで至れば、そこは暗く静かな海底世界。
 雪の降る中、魚たちの喧騒もここまでは届かず、
 役目を負えたクジラの骨が次世代の命を育んでいる。
 死と、生。物寂しく思える深海も、やがては深層海流に乗って海洋を巡る。
 そうして洋上へ運ばれた彼らの亡骸は、また新たな命を育む。

 珊瑚の海、果てなき外洋。岬の海流、深き海。
 どこへ潜るべきかは、あなたの心が教えてくれるだろう。

 あなたの飛び込む、深い群青の海の中。
 生まれ出づるあぶくの音が、赤子をあやすように足元で弾けた。
夜鳥・藍
今年の水着、オフショルダーのオールインワンタイプ

この世界って本当に不思議。以前時計を購入した時もホログラムや立体映像のすごさを目の当たりにしましたが、浮力まで再現した仮想現実とは。
エリアもどこも気になるわ。でも一番気になるのは深い深い海の底かしら。
勝手にだけどなんとなく宇宙みたいなイメージを持ってるけどどうなのかしらね。
生き物はいないわけじゃないけど出会う事はとても稀で。音もないわけじゃない、ただ私たちの耳に届くようになる伝達物質がないだけ。息もできないわね。
一通り海底を歩きまわってどんな生き物たちがいるのか見て回ったら、あとは海底に座って舞い降りるマリンスノーの景色を眺め続けましょうか。



 青薔薇を模したショールがたなびき、彗星の尾のように上へと伸びている。
 遥か天上、微かに見ゆる光を見つめながら、夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)はどこまでも沈みゆく感覚に身を委ねた。
(「……ほんとうに、不思議」)
 栄えた未来文明の成す技術。時計展覧会の見上げる程の頭上、ホログラムの時計の投影技術にすら肝を抜かした。今度は映像どころでなく全身を包む感覚、水の浮力まで再現したとあっては夢か幻と見紛う程だ。
 水着を纏い、水を模した揺らめきの中に足先をつけたのも今では半信半疑だ。ただこぽこぽと耳の奥、響む音だけが意識を揺り動かす。
 未知なるものへの好奇心に負け、やってきたのは深き海。暗黒の中に時折照明光が浮かび、頭上へと見送る光だけが沈んでいく自分の在り処を告げてくれる。
 息ができる。圧し潰される苦しさも感じない。この闇黒の海が仮想現実だとわかっていても、やはり現実感は奪われたままだ。
(「……そうだわ、音」)
 水底では伝う空気がない、とばかり思っていた。空想の中にあった無音の深海を塗り替える、多様な音。水は思っていた以上に多くの情報を運び、教えてくれるのだと知った。
(「こんな水の底にも、たくさんの音があるのね」)
 海上をゆく船の汽笛。遠く何処かで鳴る地響きの音。それらに混ざり、オォォン……と繰り返し響く、何かの鳴き声。出どころを確かめようとしたところで、砂地に足がついた。

 照明の光が射し、海底の砂地を照らす。鯨の骨を模したオブジェが横たわり、海の底の命を育んでいる。
 海底に座り、藍は降りしきる白きものを見た。海の雪は音もなく降り、時折巻き上がる海流に舞ってはまた別の所に降り積もる。
 この雪の音を言い表すなら、なんとするのが相応しいだろう。しんしんという言葉も似合わぬ気がして、浮かばぬ事に人の言葉の限界を知る。
 小さな海老、ホヤのような生き物。海底に集うホログラムの命は鯨の亡骸を囲み、予想に反して活発に揺れ動く。
 少し前までなら孤独な鯨の骨にしか目がいかなかっただろうと、己を顧みる。
 どこか遠くより音の鳴り響く海底。死より紡がれる生命。どれだけ孤独を望もうとも繋がりは必ず生まれ、連綿と続いていくこの世の真実。
(「……これじゃ、寂しく一人眠らせてはくれなさそうね?」)
 笑っているのか呆れているのか、暗い海に浮かべた表情を知る者は藍以外にいない。はるか上方に浮かぶ鯨の影が、誰かを呼ぶような声で鼓膜を揺らした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天道・あや
☆(水着は2021年のを)

ようは…バーチャル水族館? うん、その認識で間違ってない筈!(よく分かってないがうんうんと頷く女、天道・あや。今日は友達と一緒)
いやあ、まさか潜らずに深海に行けるとは、バーチャル技術って凄いね、リコリス

ではでは、早速、バーチャルな海中を楽しませて貰いまショータイム!待ってろよ深海魚!(泳いで移動。そして着いたらはぐれないように手を繋いで)


ーーおお、ここが深海

お、ねえねえ、あれじゃない?リコリスが見たかった、海中の雪、マリンスノウってやつ

(海中に降る雪、そしてその中を泳ぐ魚達の光景に女は魅力され、黙って静かに眺めるのだった)

いえいえ、こちらこそ付き合ってくれてありがとっ


リコリス・ミトライユ
あやさん(f12190)と一緒に行きますね
水着は一着しか持ってませんし、そちらを

海なんてめったに行きませんし
水族館なんて、ホントに初めてですから
しっかりあやさんについていかないと
雪、好きですし……海の中でも見られるなら、見てみたいです

ゆっくりと沈んでいって、だんだんお空から離れてくみたいで、寂しいかもです
暗いのですから、海底に着いたらしっかり手を繋いでいましょう


海の中でも、こんな風に雪が降っていて
それから、その灯りがおさかなに反射して綺麗です
あんな風に、キラキラしててお星さまみたいですよね
連れてきてくれて、ありがとうございます

降りしきる雪には少しだけ、お祈りを
また遊びに行けますように、なんて



 他にない経験ができるとあって、深海エリアは人気スポットの一つ。眼下に開ける暗黒の空間にも怖気づく事なく、キマイラたちは次々と身を躍らせていく。
 係員からの説明に、天道・あや(スタァーライト・f12190)が示したのはざっくりとした理解。
「ようは……バーチャル水族館?」
「ま、そんなもんニャ」
 ネコ科キマイラの係員の適当な相槌に「流石あたし、あってた!」とあや、ガッツポーズ。現実世界に投射した海は厳密には拡張現実の訳が相応しいが、余計な知識は楽しい気分に水を差すだけだ。
「いやあ、まさか潜らずに深海に行けるとは。バーチャル技術ってすごいね、リコリス」
 名を呼ばれ歩み出たリコリス・ミトライユ(曙光に舞う薔薇・f02296)は、鮮やかなマリンボーダーの水着と裏腹に気恥ずかしそうだ。その理由を「海なんてめったに行きませんし」と答えた彼女の事、友達の誘いとはいえここに来るだけでも一大決心だった事を窺わせる。
「しっかりあやさんについていかないと。水族館なんて、ホントに初めてですから」
 ダンスの舞台と違う緊張に、喉がこくりと鳴る。未知への興味は持ってはいても、不安が枷のように纏わり、跳べずにいる。
「どうする? 怖いなら他にする?」
「いえ……雪、好きですし。海の中でも見られるなら、見てみたいです」
「なら決まりだね! せーのでいこっか」
 躊躇わず差し出す、怖いもの知らずの友の手を一拍遅れて握り返す。
「せー、のっ……!」
 立体映像の海が波打ち、続いて全身が浮力に包まれる。息ができるのが不思議だが、飛び込んでしまえばあとは緩やかな自由落下を楽しむだけだ。
「バーチャルな海中、楽しませて貰いまショータイム! 待ってろよ、深海魚!」
 元気な声が、次第に係員の耳から遠ざかる。手を振るキマイラたちの姿がだんだんと遠のき、視界は暗黒に包まれた。

   ◇    ◇    ◇

 ぶくぶくとあぶくの音を見送り、どれだけの距離を落ちただろう。一度大陸棚らしき海底に跳ねた二人は、海淵を模した更なる深みへと落ちていく。
(「ほんとうに、真っ暗……だんだんお空から離れてくみたいで、寂しいかもです」)
 握る手に力が籠もったのを感じ、あやがリコリスの手を握り返す。何か励まそうと口を開きかけた時、足が砂地につく感触がした。
「……おお、ここが深海」
 時折照明の光が射すほかは静かな、海底世界。けれど闇に慣れてよく目を凝らせば、長く伸びたヒレを突き立てて泳ぐ三脚魚の姿があった。
「……あっ、逃げちゃいましたね」
 人の動きを感知してリアルに動くプログラムなのだろう。手を差し伸べれば、立体映像の魚は俊敏な動きで闇の向こうへと姿を消した。
「お、ねえねえ、あれじゃない? リコリスが見たかった海中の雪、マリンスノウってやつ」
「わ……ホント、ですね」
 魚に気を取られていた二人の周囲が照らされ、白い粒状のものが浮かび上がる。
 流れに乗って流れる、海の雪。頬過ぎる雪は嫋やかで、吹雪のような冷たさを感じさせない。
「海の中でもこんな風に雪が降って……それに、時々舞い上がるなんて」
「ホントだ、あたしたちの知ってる雪は上がんないもんね!」
 海流に乗って運ばれる雪の正体は、有機物の塊だ。微生物の亡骸などが集まって降り注ぎ、光射さぬ海底の生き物たちの命を繋ぐ。
「おさかなも、灯りに照らされてて……綺麗です」
 煌めくのを、お星さまのようだとリコリスは思った。星に願いをかけるように、両の手は無意識に祈りの形に組まれていた。
「連れてきてくれて、ありがとうございます」
「んーん、いいってことよ! こちらこそ付き合ってくれてありがとっ」
 幻想めいた眺めの中でも、肩に触れた友の手の温もりは現実のものだ。穏やかに降りしきる雪の中、リコリスはまた遊びに行けるようにと、夢の続きを願った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

真宮・律
久しぶりに一人でゆっくりしたくてな。俺一人で来た。家族に買って貰った黒いダイビングスーツで外海エリアで。

家族の話だと海の中でイルカとシャチと並んで泳ぐのは凄く爽快で、楽しいという。生憎俺は海でゆっくり過ごした経験がない。これから世界を巡ってく中で色々体験しないとな。

俺の図体では乗せて貰うにはちょっと荷が重いだろうから、一緒に泳がないか?ああ、気持ちいいな。溢れる生命が生き生きと息づいている。

存分に泳いだらイルカやシャチを撫ででお礼をする。俺の気紛れに付き合ってくれてありがとな。これからも存分に好きなだけ泳いでくれ。生きるものはありのままが一番だ。



 浮力に満ちた立体映像の海面に、ざぶりと一人の男が顔を出した。
 短く切り揃えた白髪が風に撫でられ、さわさわと揺れる。海をよく知らないという真宮・律(黄昏の雷鳴・f38364)は、家族に贈られた黒のダイビングスーツで外洋を模したエリアを訪れていた。
 大空での戦いを終えての、久方ぶりの休暇。屋内に再現された青空は眩しく、睫毛の裏に淡い虹の輪を作る。
「海……か。生憎、こうした場所であまりゆっくり過ごした事はなかったな」
 魂人として第二の生を受けて以来、律の目に映るのはこれまでにない景色ばかりだ。陰鬱で血腥い戦場を離れ、こうして何の警戒もなく過ごせている事が、彼にとってはまだ異常事態とも言えよう。
 妻や娘は、律を失った悲しみを埋めるように世界中を旅してきたのだろう。戦以外の事を教えるにあたっては、自分は父親としてまだ力不足を感じる。
「これから世界を巡ってく中で、色々体験しないとな」
 願わくば、世界の素晴らしさを信じ、子らに伝えられるように。息を吸い込み仮想の海面下へ潜りこめば、遠くにヒレを打たせて泳ぐ数頭の影が見えた。

 フィンを大きく力強くかけば、魚になったように律の体はぐん、と勢いを得る。そうやって暫く泳いでいれば、遠くにあった影はいつの間にか彼の真横を泳いでいた。
「一緒に泳がないか? 俺の図体では乗せてもらうには重いだろうからな」
 言葉の代わり、イルカたちの吐き出す泡が彼を取りまき、ピィピィと興奮したような甲高い鳴き声が聞こえだした。愛らしい鼻先を突き出して行きたい方を指し示し、イルカたちは黒い仲間を引き連れ泳いでいく。
 腹ばいになって真下を泳ぐイルカが、握手のようにヒレを差し出した。硬くすべすべしたヒレをしっかりと握れば、イルカは律を更なる沖へと誘っていく。
(「ああ、気持ちいいな。この海は……溢れる生命が生き生きと息づいている」)
 海の生命の吐き出したあぶくが、瞬く間に後方へと流れ去る。浅瀬だった海の眺めは大洋に代わり、海中に垂れた光の帯を遊びのように潜り抜ける。
「俺の気紛れに付き合ってくれてありがとな」
 何にも縛られずあるがままに、行きたい場所へ行く命へ。そっとひと撫でして礼を告げれば、愛らしき友は海の彼方を目指して消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御簾森・藍夜
【朱雨】

深海って未知の域の塊だ
うん、俺も…初めて

―きれい
不思議だ
話したいことがいっぱいあったはずなのに、何も話せない

でもどうしてか
漠然と胸に沸いた不安からつい暁の手を握ってしまった
すまない

…夜みたいだな、ここ
|海雪《雪夜》、ウリクラゲの光は遠目だと星のよう
上も下も無い夜海に、隣の暁を信じて



そう呼んだら|暁《明け色の眸》がいる
なんだろうな、穏やかな気持ちだ
この縁が、紲が、切れないといいなと願ってしまう
絲縒り結んで継なぐよう―…|翦《きら》れぬ|紲《きずな》よ|永《とこしえ》 |縞《しろぎぬ》紡ぐは朝鳥が|嚶《ない》た♪

ああ、これか?このうた、昔の魔女の唄なんだと
面白いよな何となく思い出したんだ


楊・暁
【朱雨】

藍夜
深海エリア、行かねぇか?
潜れる機会なんて早々ねぇだろうし
ふふ、どんな所だろうな

並んで海底に横たわり青仰ぐ
ウリクラゲの光
マッコウクジラの影
しんと静まる世界

降る海雪へ手を伸ばし
指の隙間を毀れる白を唯見つめ

(…綺麗

いつもなら初めて見るもんはわくわくして騒いじまうけど
ここは見入っちまって口数も減る
気づけば昏い夜に独りきりの様でふと心細くも
触れられた掌からのぬくもりに安堵して握り返す
だから…謝るな、って

ああ…同じ事、思ってた

夜空見ながら返し
呼ばれれば藍夜へと視線を向け、きょとりと瞬き
独りじゃないのだと勇気づけられ、柔く笑う

俺も…お前との縁と紲、残してぇ

…それは?
魔女の唄…もっと、聴いててぇな



 心と経歴に傷を残した火遊びから早数週間。或いは誘ってくれたお礼に、との意図もあったのかもしれない。その日、誘いを持ちかけたのは楊・暁(うたかたの花・f36185)の側だった。
『深海、行ってみねぇか? モチロン本物じゃねぇけど』
 パンフレットを見せがてら、海の底に潜れる機会なんて然う然うないと言われ、まったくだと頷いた時には御簾森・藍夜(雨の濫觴・f35359)の心も決まっていた。
『深海か……未知の域の塊だ。うん、俺も……初めて』
『ふふ、どんな所だろうな』
 そんな言葉を交わしたプールサイドも、今は遥か頭上。微かに覗く光のゆらめきも、あれが水面から射し込む光なのかも定かでない。
 潜りゆく間、藍夜の深い黒の瞳はずっと見開かれたままだった。海に沈む疑似体験は猟兵であってもそうできるものではない。水の色を表す照明が次第にグラデーションのように変わり、紺碧よりも深い闇黒に包まれてからは、自らが追い越した気泡と海の雪だけが落下速度を知る唯一の手掛かりだった。
 だから、どれだけ深くに潜っているのかも測りようがない。元の世界とどれほど隔絶された場所なのか、見当もつかなくなっていた。

   ◇    ◇    ◇

 たなびく微細な光が、目の端を過ぎる。ゆっくりと浮かび上がるシルエットは辛うじて、それがクラゲか何かの発する光だと報せてくれる。
 降りしきる、かつては生命だった海の雪。海流が時折風向きを変えるたび雪は舞い、水底の大地と一続きになるべき地点を品定めするように別のところへと落ちていく。
 彼方より響く、何かの音。それ以外は静寂に包まれた中で、海の底に息づく命。マッコウクジラと思しき影がゆったりと潜り、やがて海面へ向け再浮上していくのが二人の目に映り込む。
(「……綺麗」)
 降るマリンスノウに指先を伸べても、それらは触れる前に解けて海中に溶けていく。人の熱を拒む、ぼたん雪よりも柔い雪。この世の不可思議を見つめる赤子のように、暁の眼差しは降る雪の破片へと注がれる。
(「……不思議だ。話したいことはいっぱいあったはずなのに、な」)
 暁よりは世界を知る藍夜も、ここにあっては惚けたように雪を見つめたままで。自分達の智慧や支配の及ばぬ大海の、質量すら伴う圧倒的神秘。意識さえも呑まれてしまいそうに感じ、細い指先は無自覚のうちに体温を求めた。
「藍夜?」
「……すまない」
 唇のぎこちなさに、長らく押し黙ったままだった事を自覚する。確かな温もり、握り締められた手の体温に安堵したから、「謝るなって」と答えを寄越した。
「……夜みたいだな、ここ」
「ああ……俺も同じ事、思ってた」
 水に覆われた、長い夜。ウリクラゲが泳ぐ姿は、さながら遊星。全天に於いて位置の変わらぬポラリスは見当たらぬが、それでも星ならば目指せばいつかは空に辿り着けよう。夜であるならば、いつかは朝も迎えよう。
「暁」
 明け色の眸が、こちらを向く。瞬きをする目に白昼の明るさは無くとも、曙色に移り変わる時の仄かな、暖かな光がいまは愛おしい。
「……藍夜?」
 呼び返された名に何かを告げるよりも早く、海満たす粒子を静かな歌声が揺らがした。

 ♪絲縒り結んで継なぐよう |翦《きら》れぬ|紲《きずな》よ |永《とこしえ》――。

 海の雪は、聴いているだろうか。いまは底から吹き上げる上昇海流に乗り、歌声を運んでいく。

 ♪縞《しろぎぬ》紡ぐは 朝鳥が|嚶《ない》た――。

 歌い終えた藍夜が隣を見ても、暁は突如歌い出した己を奇異な目では見ていない。ただ孤独の和らいだいつもの笑みで、こちらを見つめ問いかけるだけ。
「……それは?」
「ああ、これか? このうた、昔の魔女の唄なんだと」
「へぇ、魔女……か」
「面白いよな。なんとなく思い出したんだ」
 旧い言葉で歌われるそれがどのような願い、或いは呪いを籠めたものか、今となっては分からない。ただ、遥か昔の誰かが遺したその歌が。時を越え、今の自分達と共鳴する不思議を、いまは必然的な事として受け入れられる。
「……穏やかな気持ちだ。この縁が、紲が。切れないといいなと願ってしまう」
「魔女の唄……もっと、聴いててぇな。それから、俺も……お前との縁と紲、残してぇ」
 二人を繋ぐのは決して揺るぎなき鎖ではない。か細く、今にも切れそうな糸の繋がり。
 それでいい。紡ぎ、縒り合わせ、織り衣となる時間がかかる程――縁は、尊く得難いものとなっていくのだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『キリ』

POW   :    縁切断(物理)
【手刀】が命中した対象を切断する。
SPD   :    縁消去(物理)
【何らかプラス】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【狛犬のような自動砲台】から、高命中力の【その感情を抱いた時の記憶を消す光線】を飛ばす。
WIZ   :    ただの八つ当たり
【なんかムカついた】から【強烈なビンタ】を放ち、【あまりの理不尽さからくる動揺】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:華月拓

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠カスミ・アナスタシアです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 テーマパークの全エリアに、赤いランプの点滅が異常を知らせる。
 泳ぎに夢中だったキマイラたちが足を止め、静かになった海に響くのは慌てふためく係員の声。
『大変ですっ! たった今、怪人がこのテーマパークを乗っ取ろうと……みぎゃっ!』
 べちん。ざざっ。ノイズがアナウンスを遮る。

 次に響いたのは、世事への無関心さを漂わせる冷めた少女の声だった。
『……ん。ボク、キリ。今からここはボクのテーマパーク。あんた達には出て行ってもらうよ』
 モニターに堂々と姿を映す、一角獣の縁切り怪人。ご丁寧に水着姿(スクールタイプ)に着替えているのは様式美なので気にしないでおこう。

 取り押さえようとする係員を手刀とビンタではっ倒し、キリは顧みる事なく自説を展開する。
『海の生き物の絆だの、親睦を深めるだの、くだらない事してるから。ボクが縁という縁を切る様を放送すれば、きっとバカキマイラたちも恐れおののいて言う事聞くでしょ?』
 話しながら視線を彷徨わせるキリは、恐らく管制室のカメラから確認していたのだろう。
 こちらが動じないのを見ると、彼女は強行手段に出た。
『まだ分からないやつ、いるみたいだから。今からボクが直接出向いて分からせてあげる』
 言うが早いか、彼女は姿を消した。どうやらこちらに向かってくる気らしい。

 幸いにもここは溺れる事のない、疑似的な海。
 水中活動の経験は役に立ちこそすれ、窒息するなどの極端な不都合は生じない。
 ただ人工浮力の働く場所である以上、普段と違う環境での動き方は考えた方がいいだろう。
 このまま待ち受けるのも、或いは戦場とするに相応しい場所へ移動するのも、すべては策次第だ。

 エリアを出入りするハッチが大きく開き、ざぶんと音が聞こえる。
 さあ、無粋な客を追い返そう。怪人の計画が、如何に直情的でお粗末なものであれ。
 ――ここにいる者たちの大切な時間が、台無しにされていい筈がないのだから。
真宮・律
まあ、人の感じ方はそれぞれだからな?楽しそうな雰囲気を不快に思う捻くれた奴もいるだろうさ。

ただ、その感情を人に押し付けて迷惑かけるなら話は別だ。こんないい所を個人の感情で壊されたくないので何とかするか。

水中での戦闘にも慣れておきたいしな。水中で戦うか。【世界知識】で場所の仕組みを把握、立ちにくさは【足場習熟】で何とかしたい。

剣は使いにくいだろうから抜かず、【戦闘知識】で敵の動きを見ながら【迷彩】で姿を消しながら、接近、【重量攻撃】【気絶攻撃】【貫通撃】を込めた【力溜め】した雷槌の拳で殴り飛ばす。

やんちゃが過ぎる子はお仕置きしないとな。親父の拳を喰らいやがれ!



 外洋の碧き仮想の水面に太い水柱が立った。
 勢いよく飛び込んだキリはすぐさま猟兵の姿を探すが、見当たらない。
「……隠れたの。どこ」
「隠れちゃいないさ。ちゃんと探したか?」
 振り向きざま、咄嗟に身をよじるキリの頬を拳が掠め、風切り音を奏でる。真宮・律は次の拳を撃ち込もうとしてキリが身構えたのを見、深追いは禁物と飛びずさる。
 鋭い手刀が鼻先を掠め、千切れた髪が風の中に舞う。縁切りの神を自称するだけあり、あの手は優れた切断力を秘めているらしい。見目が可愛くとも油断ならないと、気を引き締めるように唇の端を噛みしめた。
「人の感じ方はそれぞれだからな。楽しげな雰囲気を不快に思う捻くれた奴が一人くらいいても、気にはしないさ」
「なら、さっさとやられて。言う事とやってる事が違う」
「違わないさ。感情を押し付けて迷惑かけるなら話は別って事だ」
 非常事態のアナウンスが流れた拍子、イルカたちは海の彼方へ逃げてしまった。海の生き物は有事には観客の避難を誘うようプログラムされているらしい。いずれにせよ、個人の羽休めだけでなくキマイラたちの時間を台無しにされたとあっては、お灸を据えねば気が収まらぬ。
 海中深くに潜るキリを追い、自身も仮想海面に飛び込み見えない水を掻く。キリはこちらから逃げるように見えたが、岩を模したオブジェでターンを決め、果敢にも真っ向勝負を挑んできた。
(「剣は……抜けそうにないな。だが感覚は掴めたぞ」)
 海中に噴き出る湧水の力を利用し、一度大きく身を沈める。そのまま弾力を活かすように大きく跳ね、キリの手刀を躱す。
 追い縋るキリを横目に見ながら、律は迎え撃つのに適した場所へと移動する。水中戦の心得があるわけではないが、売られた喧嘩を買うなら真っ向からと決めていた。
 水面近く、誰かの置き忘れたサーフボードが目に入る。幸いと足場代わりに鮮やかなターンを決め、手に握りこめる拳に雷電を滾らせる。
「悪戯の後始末、させられなかったのか? お袋さんの躾を思い出しな」
 猛き雷神を思わす眩き閃光。キリが目を見開くも、間に合わない。
「やんちゃが過ぎる子はお仕置きしないとな。親父の拳、喰らいやがれ!」
 撃ち込まれた拳より、背に衝撃波が突き抜ける。吹き飛ばされる少女キマイラとの間に、太い電流の残滓がばちばちと弾けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

バジル・サラザール(サポート)
『毒を盛って毒で制す、なんてね』
『大丈夫!?』
『あまり無理はしないでね』

年齢 32歳 女 7月25日生まれ
外見 167.6cm 青い瞳 緑髪 普通の肌
特徴 手足が長い 長髪 面倒見がいい 爬虫類が好き 胸が小さい
口調 女性的 私、相手の名前+ちゃん、ね、よ、なの、かしら?

下半身が蛇とのキマイラな闇医者×UDCエージェント
いわゆるラミア
バジリスク型UDCを宿しているらしい
表の顔は薬剤師、本人曰く薬剤師が本業
その割には大抵変な薬を作っている
毒の扱いに長け、毒を扱う戦闘を得意とする
医術の心得で簡単な治療も可能
マッドサイエンティストだが、怪我した人をほおっておけない一面も

アドリブ、連携歓迎



 海原に電流の網が伝い、やがて縁切り怪人がこちらへ弾き飛ばされるのが見えた。
 後から駆けつけたバジル・サラザール(猛毒系女史・f01544)は近づく喧騒に眉をひそめ、「できるならバカンスの時から楽しみたかったのだけれど」と独り言ちた。
「キマイラのよしみで許してあげたいけど、けが人を出すようなら見逃せないわね」
 薬剤の調合に長ける彼女の本分は癒し。治療対象を増やす事は好まないが、求められれば戦わざるを得ないのが猟兵の辛い所だ。
「いいわ。毒を以て、あなたのおイタを制しましょう」
 宙返りをして飛び込むキリの、まっすぐに見返す琥珀の瞳。次は自分だと告げられたなら、手加減は無用だ。
「……邪魔、するなら。縁も、綺麗な思い出も、全部消してあげる」
 狛犬の砲台が光線を放ち、バジルめがけて突き進む。光はそのまま射抜くかに見えたが、届く間際に何か俊敏なものが遮り、光を散らせた。
「蛇が出るのは藪の中だけだと思って? 下手につつくと噛みつくわよ」
 バジルに付き従う蛇の使い魔、『にょろざーる』。得体の知れぬ蛇は毒牙の隙間から舌をちらつかせ、大口を開けて威嚇した。
 身をくねらせて泳ぎ、キリの方へ向かう蛇。逃げ惑うキリの退路を記憶消去銃の光線が断ち、じりじりと逃げ場を奪っていく。
「これに懲りたら、骸の海でしばらく安静にしてなさい。勿論、反省も込みでね」
 一度大きく身を屈めた蛇の動きは、後は殆ど見えなかった。ただ足首にじんと疼く痛みと熱さだけが、己が身に何が起こったかを知らせていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

天道・あや


うーん、この世界らしからぬような| オブリビオン 《 怪人 》
ま、久しぶりのバトルには丁度いいかな?後腐れなさそうだし

じゃ、リコリス、さっき話した作戦通りに行きましょうぜ?

(友へとウインクをした後、大きく息を吸って、吐く。そして久しぶりに口へと出す)

ーー作戦よし!リコリスよし!……あたしよし!

敵が到着したら、UCを発動して空間内を跳び回ってホログラムとかに隠れたりしながら相手を錯乱させながら出方を伺う
ある程度経過したら、敵の前へと姿を見せる

そして敵の放つ攻撃を【覚悟】を持って【見切り】、拳で【ジャストガード】!

そうして敵を引き付けてる間にーー頼んだよ、リコリーーおっと、あたしも?

ーー了解!


リコリス・ミトライユ


うん、わるいことするのはダメですよ
特に、仲良くなったひとを離れ離れにするなんて、ぜったいダメですし

作戦……えっと、いっぱい動いて隠れる、のですよね
よし、って返事を合わせてー

あやさんが素早く動くなら、あたしは変則的に行きましょう
【イノセントプレア】で、祈りのダンスを舞いながら、キラキラを振りまいて
どれが本物のマリンスノウで、どれがほろぐらむのお魚で、どれがあたしの花びらかなんて
全部見分けるのはわからないでしょうし

それに、海の中も、お空と似ていますから
上も下もなくって、ぜんぶ見えてますし

って、あたしに任せないで、せーのでいきましょうよっ
あやさんと合わせて、あたしも思いっきり、左ストレート、ですっ



 碧き外洋で針の筵となったキリは、明るい浅海を嫌うように深海エリアへと飛び込んだ。
 これまでより多くの猟兵の視線が突き刺さるが、鋭い眼差しを跳ね返すように一角獣の少女は悪態をつく。
「きらい……みんな、きらい。真っ暗な海で、切り離して、散り散りになってしまえばいい」
 宙をかいてこちらへ潜行してくるキリの姿を認め、天道・あやの口からは素直な感想が漏れた。
「うーん、この世界らしからぬオブリビオン。あのコ本当に怪人?」
 あやの知る怪人はもっとヘンテコ頭で癖があって、存在自体がふざけてるようなものだ。バトルオブフラワーズで相手取った怪人の親玉も曲者ぞろいで、それに比べ、キリはいまひとつパンチが足りなくも思えた。
「ま、久しぶりのバトルには丁度いいかな? 後腐れなさそうだし!」
「うん、やっつけちゃいましょう」
 隣で頷くリコリス・ミトライユも縁の大事さは重々承知だ。
「わるいことするのはダメです。特に……仲良くなったひとを離れ離れにする、なんて」
 柘榴の瞳に、少女は出会った人々の姿を浮かべる。いつの間にか友と呼べる人が増え、憧れとする人も両の手では足らぬほど。同じ時は二度と巡らぬが故に、その縁を反故とされるなど見過ごせない。
「じゃ、リコリス、さっき話した作戦通りに行きましょうぜ?」
「作戦……えっと、あれですよね」
 敵が迫り、二人は目配せを交わして各々の方へ散る。すう、と大きく胸に空気を溜め、紡ぎ出すのは久方ぶりの口上。
「作戦よし! リコリス、よし! ……あたしよし!」
「……よしっ」
「見せてやりまショータイム☆」
 海中に見え隠れするホログラムの影に、二人の姿はすぐに紛れた。

   ◇    ◇    ◇

 空の|階《きざはし》を駆け昇り、跳躍した少女の影が頭上を大きく跨いでいく。
「……隠れてばかり。こわいの?」
「まっさかー」
 降る声の元へ光線を放てば、水中にあったオブジェが弾けて消え。散りゆく光の何処にもあやの姿が見当たらぬのを見て、キリの頬はぷくりと膨れっ面だ。
 あやが鬼ごっこなら、リコリスは堂々と姿を現して祈りの舞を繰り広げる。見えている筈なのに攻撃の当たらぬ理屈は、彼女の舞にあった。
 跳び、蹴り、肢体をくねらせ、アクロバティックに宙を舞う。伸ばした足の先から軽やかに着地、半身に軸を残して旋風脚を見舞う。芸術の域までに鍛え抜かれたマーシャルアーツの技巧に光の薔薇が咲き誇り、見えているはずのリコリスの姿を覆い隠す。
(「どれが本物のマリンスノウで、ほろぐらむのお魚で……あたしの花びらか、なんて」)
 きっと、分かりませんから――リコリスが自負するだけあり、海中に入り乱れる光のイルミネーションはキリの目を欺いた。
 無論、それは彼女が弛まず舞い続ければの話。冷たい疑似深海の世界といえ、踊りを止めぬリコリスの髪から汗の滴が散り出した。
「……不快。ボクの目の前をうろちょろと。それで、勝てるつもり?」
 痺れを切らしたキリが狛犬砲台から光線を放ち、光は一直線にリコリスへと向かう。射抜く寸前で飛び込む黒い影、あやが拳で光を受け止めていた。
「ふう、間に合った!」
 記憶を持っていかれそうなのを持ち堪え、黒の指ぬきグローブに力を籠めて引き千切る。
「よーし、頼んだよリコリ――」
「あたしに任せないで、せーのでいきましょうよっ」
「――おっと、あたしも? 了解!」
 どちらを相手取るか逡巡する、その僅かな惑いが命取りだった。前からリコリス、後方からあや。それぞれの利き腕に力を籠め、二人の拳が交錯する。
「いきます、思いっきり……!」
 突き上げるように繰り出す、左ストレート。逃げ場を失った拳圧が体内を巡り、キリの顔が悶絶に歪んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夜鳥・藍
……ちょっとおっしゃってる意味が解りませんね。言う事を聞かせるつもりなら十分縁はあるのではないでしょうか?
縁がないというのは一方通行ですらないと思いますので。

場所はこのままで良いかしら?
なかなかに物騒な手刀ですから距離を取りましょう。
鳴神を投擲、そのまま念動力で操作し命中させます。多少水の抵抗のようなものはあってうまく鳴神を動かせないとしても、その分こちらが派手に動いて目を引くようにしましょう。掠る程度でも構いません。それでも当たった事には変わりませんから。
あとはやってきた竜王さんの雷撃でしびれていただきましょう。

自分の縁はいいけれど他人の縁は気に入らないと言う事なのかしら?



 挟撃から逃れ出たキリは、上空で体勢を立て直しながらこちらを睥睨する。
「どいつも、こいつも、くだらないものに縋って。黙って言う事を聞けばいいのに」
 所詮、歪んだ思想では理解できないのだろう。玩具を独占したがる幼子のように、キリの主張は言う事を聞けの一点張りだ。
「……ちょっと、おっしゃってる意味が解りませんね。言う事を聞かせるつもりなら、十分縁はあるのではないでしょうか?」
 駄々をこねる少女へ冷めた眼差しを寄越す、夜鳥・藍。占い師の彼女にすれば縁も扱いの範疇だけに、細やかな矛盾も聞き捨てならない。
「縁がないというのは、一方通行ですらないと思いますので」
 ある教えでは、縁は何も互いに結ばれるものだけには限らない。誰かが何かに影響を及ぼそうとする時、はたまた唯『視た』時。縁は既に生じているのだと云う。
「……訳、分からない。もういいや……アンタから、切ってあげる」
 泳ぎ向かってくるキリとの接近を嫌い、藍は黒光りする三鈷剣を稲妻のように投げた。
 水の浮力で突進を躱し、慣れない水かきで姿勢を整える。投げた鳴神は水の抵抗で思ったより進まなかったが、念力で届く範囲ならば好都合だ。
 一度は過ぎった剣を念力で呼び寄せ、敵の背を狙って再び飛来さす。気付いたキリには躱されたが、脇を掠めただけでも確かに『縁』は結ばれた。
「ふん……それだけ? じゃあ、ボクの番――」
「ええ、私はそれだけです……あとはあの方がやって下さいますから」
 誰が、と呼ばう声を大気揺らがす雷鳴が呑み込んだ。太い稲光が海上から降り注ぎ、それら束ねた光の柱の中に嵐の申し子が現れる。
「な……」
「――竜王、招来。自分の縁はよくて他人の縁は気に入らないなら、逃れ得ぬ縁で結ばれていただきましょう」
 藍珠輝く黒竜の喉元、駆け巡る|閃光《ブレス》の素となる光が集う。今更この縁を反故にせよなどと、泣き喚いてももう遅い。
 咆哮と共に海底の泥土が震え、辺りを舞う。地震とも見紛う雷撃の中に、キリの小さな体躯は飲み込まれていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

楊・暁
【朱雨】

縁がくだらねぇ、か
…俺は、そうは思わねぇ

その理由、今から証明してやるよ

命中率重視でUC発動しながら功夫で先制攻撃
藍夜の攻撃は、俺には絶対当たらねぇって分かってる
…それに、お前の考えも、動きもな
だからこそ、戦闘だって楽しめる

深海適応はお手の物
水中戦の知識と地形の利用もしつつ
軽業とジャンプを駆使して、機敏に軽やかに水中機動を
当たらねぇかと見せかけて尻尾を伸ばして、フェイントかけつつ不意打ち狙い
なぎ払い、吹き飛ばし、魔力溜めた拳や脚や尾での
鎧無視攻撃の一撃をお見舞いしてやる

藍夜の声と同時に反応
阿吽の呼吸で
敵の攻撃は見切り、無理なら受け流し

どうだ?
お前の言う"くだらない"縁で、やられる気分は?


御簾森・藍夜
【朱雨】
主義の自由はある
が、それは人を巻き込んでまですることか?

くだらないな

叫ぶなら主義の裏打ちを
信頼が欲しいなら努力を

分からない?
ああ――学ぶ期の無い一人ぼっち、だからか

憐れなものだ

暁の隙間を縫うようにUC
暁に当たりそうな攻撃や挙動を【誘導弾でずらし【スナイパー又はUCで当てる弾も挟む
全て暁の攻撃の合間を縫い間断を失くす

暁の呼吸は分かる
【援護射撃【騙し討ち【不意打ち
全ての合間を縫おう
勿論暁が俺に合わせてくれているのも分かるとも
こういうのも楽しいな
手刀の一撃はスナイパーで撃ちずらしながら
「暁、来るぞ!
離れているからこそ見えるものがある
近ければ何でもいい訳ではない

俺は常に全て見えればそれでいい



 ゆめいろカールだった少女の髪は千々に乱れ、既に肩で息をする有様だ。それほどになっても縁切りに拘るキリの心は、誰も理解できまい。
「成程。主義の自由は万人にある……が、それは人を巻き込んでまですることか?」
 見かねた御簾森・藍夜の至極真っ当な問いにも、少女の答えは子どもじみた利己的なものだった。
「当ったり前でしょ……ボク以外の奴が結ばれて仲良くしてるの、見てるだけで腹が立つ」
「……くだらないな。叫ぶなら主義の裏打ちを。信頼が欲しいなら努力を……それが分からないか?」
 それ以上の問答をする気もないのか。黙ってこちらを睨め付けるキリを、藍夜は冷徹な眼差しで押し返す。
「ああ……分からないのも道理だ。学ぶ期の無い一人ぼっちか、憐れなものだ」
 音を立て迫る平手の手首を掴み、藍夜はすぐに突き放す。挨拶がわりの一撃といえ、この手の我儘少女は要求を通したが最後、エスカレートするだけだと知っている。
「縁がくだらねぇ、か。……俺は、そうは思わねぇ」
 吐き捨てるように言いながら、楊・暁は昔の己なら嫌った台詞だとも回顧した。脳裏に寒の戻った或る夜の景色、神社の境内の眺めがふと過ぎる。
 己を逃がす為散った、鎖で結ばれた四つの花。己を正しく生かす為に捕らえた、叫ぶ誰かの声。
 ――世界なんざ、全部一緒だッ。
 どこまで拒絶しようと、離さず捕らえたあの執念。縒り合わさった糸のどれ一つ欠けても、今ここに己は立ってはいまい。
「――その理由、今から証明してやるよ」
 少年の口元は、知らずの内に不敵に笑んでいた。開いた黎明の瞳が妖力を帯び、架空の水底に揺らめいて光った。

   ◇    ◇    ◇

 弛まず挑み続けた鍛錬の証は、|技能《アビリティ》であったものを|罪深き刃《ユーベルコード》の域へ押し上げた。瞬く間に生えた妖狐の尾の尖端が独りでに伸び、怨敵を刺し穿つ針となって敵へと向かう。
 一、二――五。妖力の高まりに応えて尾は数を増やし、互いに絡まる事なく、群れ成す生き物のようにキリを襲う。それら全てを、時に手刀で切って逃れながら少女は海の中を逃げ惑う。
「そうだ、逃げ場はこっちだぞ、と」
 攻撃の止む間をカバーするよう撃たれる、藍夜の銃弾。黒装の狙撃銃から放たれる弾は深海の闇に紛れ、不可視の弾丸となりて少女を襲う。
「……しつこいの、きらい」
 突如方角を変えて撒こうと試みるも、海の中に逃げ場はない。互いの呼吸の分かる者が、息を合わせて放っているのだから、攻撃の網は途切れる間もなくキリに降り注ぐ。
「もう、いい。このまま、消えちゃえ」
 首元を掠める手刀を身を捩って躱し、暁は一度海底に潜って砂地を蹴る。旋回を決め、仕返しにと尾獣の刺突を見舞えば、尾は少女の喉元を掠めるだけに留まった。
「当たらねぇか……」
「ふん、ノーコンだね。なら、次はボクの――」
「……なんて言うと思ったか?」
 ざすっ。妖力を帯びた禍々しい尾はいつの間にか舞い戻り、鋭いカーブを描いてキリの背に突き立っていた。
「な……んで」
「生憎だな。計略と騙し討ちは妖狐の十八番なんだよ」
 反撃に転じる少女の射程圏内から逃れ、暁は海底を模した岩盤の上で迎撃態勢を整える。
「……きらい」
 正念場と見たのだろう。力の全てを振り絞り、キリの獣の角が光を集めるのが遠目に見えた。
「ボクの言う事聞かないやつ。ボクのする事邪魔するやつは……みんなみんな、だいきらいっ」
 海底の泥砂を撒き散らし、その中を突き進むキリの姿は見えない。居所を見失った暁の耳に、危機を知らせる藍夜の声が微かに届く。
「……暁、来るぞ!」
 銃弾が海底の砂地を跳ね、突き進む何かを撃ち貫いて彼方へ過ぎる。次々と伸ばした暁の尾は八を数え、その中の一つが柔い手応えを返した。
「……っ、手加減っ、なんざっ……!!」
 泥にまみれた何かを、尾が次々と刺し貫く。動きを止めて尚も藻掻くそれを貫く尾が縫い止め、海底に無数の穴が穿たれた。
 訪れた静寂。泥は粉塵のように視界を漂い、決したはずの雌雄を覆い隠す。
「……ほんとは、ボク、だって……」
 やがて聞こえる微かな声。どさりと噴き上がる、新たな海底の砂。
 それら全てを見届けた後に、暁は遠くに控える藍夜を見た。手を上げ首を振る彼のその動作だけが、戦いの終わりを報せてくれた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


 危難の去った海のテーマパークに、アナウンスの音声が舞い戻る。
『……え、えー、皆さん! ご覧になりましたでしょうか、我らがヒーローの大活躍!』
 上ずった声の係員の声、どうやら事の顛末を見守っていたらしい。
『|猟兵《イェーガー》の皆さんのおかげで、この海には再び平和が戻りましたっ!』
 瞬間。ここが海の中だという設定を無視するかのように、見守るキマイラたちから万雷の拍手が降り注ぐ。
 休暇中の所申し訳ないが、残念な報せだ。猟兵が大活躍したとあっては、最早バカンスどころではない。これから待ち受けるのはサインと無限握手会、何せ皆は憧れのヒーローなのだ。
『あっ、そこ、ちゃんと順番守って! ほら、一列に……みぎゃーー!?』
 どうやら管制室も騒乱と無縁ではいられなかったらしい。以降音声は途切れ、程なくしてあなたたちは音声の主(ちゃっかり色紙持ち)とも見えるだろう。

   ◇    ◇    ◇

 外洋も、深海も。静謐の保たれていたのが嘘のように、海は喧騒で満ちていた。
 引っ張り凧は当分止まないだろうが、求めれば常連客の彼らはおすすめの穴場スポットを紹介してくれるだろう。まだまだ海は深く広く、行った事のない場所ばかりだ。

 魚が舞い戻り、それらを追うキマイラが色とりどりのフィンをなびかせる。時にはイルカたちの力を借り、珊瑚の海の果てまでも駆けていく。
 海の冒険はまだ、始まったばかりだ。これからもう少しだけ遊んでみるのも、怪人の魔の手を振り払った対価としてはお釣りがくるだろう。

 目を輝かせて海の底まで潜り、好奇心のままに駆けていく、その背中を。

 ――ゆったりと泳ぐマッコウクジラの円らな瞳が、慈しむように見つめていた。

最終結果:成功

完成日:2022年10月22日


挿絵イラスト