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今年の夏も終わるから、全ての衣服を水着にしてやろうぜ!

#UDCアース #水着結界シリーズ

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#UDCアース
#水着結界シリーズ


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 UDCアース世界。極東の島国、日本。

「畜生、畜生め……ッ!!」

 その首都圏に並び立つ超高層ビルの屋上に、怒りを湛えた男の声が響く。
 年の頃は四十代を超えた辺りか。中肉中背、スーツ姿。何やら古びた本と棒状の何かを携えている事以外、コレといった外見特徴の無い男である。極々一般的な中年男、といった風体だ。
 だが当然、この男が極々普通の中年男であるはずが無い。

「夏が、終わっちまう! 女の子の水着姿が、見納めになっちまう……!」

 男は、変質者であった。夏の水辺で女子の水着を舐めるように眺める事を生甲斐とする様な変態であった。
 そんな男にとって、夏の終わりとは絶望を意味する言葉である。女子の艶やかな水着姿を拝めなくなる、この世の終わりを告げる言葉であった。
 ──グラビアとかあるだろ、とか。温水プールとかもあるだろ、とか。そういった意見が出るのは当然だと思うが……その辺りの事を思い浮かべる事が出来ぬ程、男は悲嘆にくれてしまっていた。
 男の思考回路は、実に残念な造りであった。

「だが……くくっ……!」

 |閑話休題《それはともかく》。
 そんな悲嘆にくれていた男の、様子が変わる。
 くつくつと嗤う男の足元には、何かが描かれていた。
 それは、魔法陣だ。素人が描いたにしては、随分と本格的な魔法陣だ。
 ……見る者が見れば、見抜けるだろう。
 この魔方陣は、世界を書き換え邪神を喚び出す。そんな禁呪の陣であると。

「この力があれば、そんな絶望は消える……!」

 狂気に浮かされた表情のまま、男が棒状の何かを掲げあげる。
 それは、所謂『物干し竿』だった。細く長い竹で出来た、古式ゆかしい竿竹であった。
 振り上げられた竿竹。括られた布が、ひらりひらりと靡いて揺れて──。

「邪神よ! この地に降り立ち、我が願いを聞き届け給え──!」

 そのまま地へと、突き立てられた。
 瞬間、迸る白光が世界を染める。

 ──そなたの願い、聞き届けたぞ。

 己の身体を溶かすような光の中で、男はその声を聞く。
 威厳に満ち溢れた、男の声だ。きっと凄まじい力を秘めているのだろう。
 ああ、この邪神ならば。俺の願いを……全ての衣服を水着としたいという、その願いを叶えてくれる。
 どこか満足げな思いを遺して、男の意識は闇へと消え──。

 ──此度の現界こそ、水着1000枚の収集を果たしてみせようぞ!

「はっ? ちょっと待て手ェ出すのはアウ」

 ──る、その直前。響いた邪神の声に思わず抗議をあげるが、時すでに遅し。
 男の身体と魂は降り立った邪神の存在に塗り潰されて……完全に、消滅してしまったのだった。



「お集まり頂きまして、ありがとうございます」

 グリモアベースに集まる猟兵達を迎え入れる、銀の髪のグリモア猟兵。
 ヴィクトリア・アイニッヒ(陽光の信徒・f00408)の表情に浮かぶのは、常の微笑みであった。
 ……だが良く見ると、その表情の端々に困惑というか呆れというか、そんな色合いが垣間見える様な気もするだろう。
 そんなヴィクトリアの表情を見れば、彼女と付き合いのある猟兵ならば判るだろう。
 ──あっ。コレいつものトンチキなヤツだ、と。

「今回赴いて頂きますのは、UDCアース世界。極東の島国、日本国。その首都にある、高層ビルです」

 そんな何かを察した猟兵達を横において、ヴィクトリアが言葉を紡ぐ。
 今回の舞台は、UDCアースの日本国。その首都の高層ビルである。地下から低層階はショッピング施設が、中層から高層はアミューズメント施設や飲食店が多く入る、複合商業ビルである。

「そんなビルの屋上で、邪神の降臨儀式が為されてしまったようなのです」

 今回の猟兵達の任務は、その降臨したという邪神の討伐である。
 現地に降り立った猟兵達は、ビルの入り口から内部へ突入。それぞれに最上階を目指して、進軍して貰う事になる。
 ……直接、儀式の現場に降り立つ事は出来ないのか? と猟兵が問えば。

「……その、儀式に付随して『厄介な結界』が展開しているようでして。直接皆さんを送り届ける事は、出来ないのです」

 それは出来ないと、ヴィクトリアは答えるだろう。
 ヴィクトリアのその答えを聞けば、幾人かの猟兵の表情が更に歪むだろう。
 ……表情を歪ませた猟兵達は、結界の正体を予測出来ていた。

「結界の名は……『水着結界』。過去何度か、私達を苦しめている結界です」

 そしてその予測は、正しかった。
 高層ビルに展開されているという、『水着結界』。それは、『内部に踏み込んだ存在が纏う衣服を強制的に水着へと替える』という結界である。
 その効力の程は、強力無比。どんな対策も無視し、性別も種族もお構いなしに効果を発揮するのだという。
 着替えさせられる事になる水着は、ランダムだ。比較的落ち着いた物から露出過多な物、それは水着かと疑いたくなるような物まで、多種多彩である。
 ……ヴィクトリアが語る通り。過去何度か猟兵達の前にその牙を剥いたその結界が、今回もまた猟兵達の前に顕れたのだ。

「既にビル内にその結界が展開されている為、内部に踏み込めば……皆さんも、必然そういうことになります」

 申し訳なさげなヴィクトリアの言葉。
 彼女の言う通り、結界は既に展開済み。内部に踏み込めば、猟兵達も水着姿を晒す事は避けられないだろう。つまり今回この依頼に臨むのであれば、その辺りの事を覚悟して臨まなければならないのだ。
 とは言え過去の例の通り、衣服を水着に変えられる以外の実害はほぼ無しだ。戦闘に支障を来す事はほぼ無いはずなので、その辺りは一安心と言った所か。
 またヴィクトリアによると、邪神と結界以外に視える範囲で障害となる要素も無さそうだとの事である。道中で変な障害や妨害が生じる事も無いはずだ。

「現地には私も入り、皆さんをサポート致します」

 とは言え、万一という事もある。念には念を入れ、今回はヴィクトリアも現地入りしてサポートに動いてくれるそうである。
 現場が現場であるので、ビル内には多くの一般人がいるだろう。そんな市民の保護と誘導は、彼女が担当してくれるらしい。
 直接戦闘に携わる事は出来ないが、現地組織と協力して事態を収拾に当ってくれるので、猟兵達には安心して前へと突き進み……事態の解決を図って貰いたい。

「……何にせよ。世を混沌に落とそうとする邪神の現界を赦す訳にはいきません」

 皆さんの御力を、お貸し下さい。
 いつものように、丁寧な礼をして。ヴィクトリアは、猟兵達を現地へと送り出すのだった。


月城祐一
 今年もあと3ヶ月。
 どうも、月城祐一です。嘘でしょ22年ってもうそんだけなの……?(困惑)

 今回の依頼は、UDCアース。
 邪神討伐という名の、いつものアレをお届けいたします。
 なお、あくまでもコメディ。あくまでもコメディです(大事な事なので二回)

 参考までに、過去の『水着結界』関連の依頼は ↓ こちら ↓ になります。
(【20年夏】 https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=28085 )
(【20年冬】 https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=30171 )
(【21年夏】 https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=36493 )
(【22年春】 https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=41784 )
 読まずにご参加頂いても問題ありませんが、宜しければ是非ご一読を。
 以下、補足となります。

 第一章は、冒険章。
 高層ビルをとにかく上へ上へと、突き進んで頂きます。

 OPにもある通り、今回の道中で障害が発生する事はありません。
 基本的には、楽勝で進める事でしょう。

 但し、結界の影響か『エレベーター』等は使用出来ないようです。
 ですので基本的に、どなたも徒歩移動となります。
 体力だけにはお気をつけ下さい。

 第二章はボス戦。詳細は進行時に開示となります。
 ……ヒントは一応、OPにありますとだけ。

 また第三章も、現時点では情報公開はありません。
 こちらも章の進行時に開示となりますので、ご了承下さい。
 ヒントは、『複合商業ビル』。舞台となっているこの場所です。

○今回の特殊ルール

 OPの通り、今回の戦場には『強制的に水着になる』という結界が展開中です。
 その効力・効果の程はOPの通り、非常に強力です。
 着ることになる水着は、ランダム。
 月城が1d40を振って、手元の水着表(非公開)からチョイスされる形になります。
 どんな水着が出るかは、過去依頼を参照下さい。
 全てはダイスの神の御心のままに。当依頼に参加される際は、徳を積み上げた状態でご参加下さい。
 勿論、グリモア猟兵の分も振ります。どんな水着が来ることやら。

 混沌に包まれる、高層ビル。
 猟兵よ。邪神を討ち、混乱する市民を救え!
 皆様の熱いプレイング、お待ちしております!
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第1章 冒険 『遥か高き導』

POW   :    壁を壊したり板を渡し道を作り上げる。敵をなぎ倒し進む。

SPD   :    障害物をよじ登ったり潜り抜ける。ダクトなどを使い秘密裏に潜入する。

WIZ   :    道具やシステムなど使い道を開く。事前に構造や警備を調べ最適なルートを選択する。

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




 グリモア猟兵の導きを受け、猟兵達が現地へ降り立つ。
 眼の前に聳え立つのは、天を衝くかのような高さの高層ビル。数多の店を内部に抱える、複合商業ビルである。
 今このビルの屋上には、一柱の邪神が降りている。そしてその邪神はその力で、このビルに不可思議な結界を張り巡らしているのだという。

 ……その結界の効果を思い出し、躊躇を覚える猟兵達。
 だがその躊躇は、一瞬だ。直ぐに意を決してビルへと突入すれば……瞬間、その身を包む衣服は光に解け、各々の身をキュッと絞る、水着に替わる。

 ──それぞれが着る事になった水着がどんなものになったのかは、後々に触れる事として。

 周囲を見渡せば、来客なのかスタッフなのかは定かではないが……多くの人々が、水着姿を晒している。
 もし事態の解決に時間が掛かれば、この結界の力が外部へと漏れ出すかもしれない。そしてそうなれば、より多くの人々が結界の力に飲み込まれて衣服を変えられ……大混乱へと至るだろう。
 そんな未来を引き起こす訳には、いかない。顕れた邪神は、疾く早く仕留めねばならないだろう。
 現地組織を手配し、市民の保護活動へと映るグリモア猟兵(首の後ろに紐を引っ掛ける『ホルターネック』タイプのビキニ水着へと姿を変えられていた)をその場に残し、猟兵達はビルの頂上を目指すのだった。
ラピーヌ・シュドウエスト
●POW

以前は陰ながらお嬢様をお見守りしていたからそうは思わなかったけど、実際に矢面に立てば水着邪神の趣味は良いとは言えないね
執事服は水着に変わったが、執事手袋を残すとは…コメントに困るね

ボクは半獣の時計ウサギだから毛が生えていない人間の気持ちを汲もうとはしないけど、流石に水着の姿で表の通りを突き進んでいくのは正直はしたないからスタッフ専用のバックヤードを通っていくけどね?

ここは治安に優れた日本だから分かっていたけど、カードキーにパスコード入力のロックが掛けられた扉か
誰も水着になってると見分けがつかないし、一々説明する手間もあるから…こうだ

糸が仕込まれた手袋、これを消さなかった邪神に呆れるね





 今回の舞台となった、高層ビル。複合商業ビルというだけあって、ビル内には多くのテナントが入り店を構えていた。
 当然それだけの店舗があるならば、そこに務めるスタッフも数多い。他のショップに負けぬ様に、その練度も相応に高いはず。
 ……だがそんな彼らも、今のこの状況となっては。数多の来客と同じ様に困惑し、右往左往するばかりであった。

「──やれやれ」

 そんなスタッフと思しき人々の隙間を縫うようにして、一人の女が物陰へと辿り着く。
 名を、ラピーヌ・シュドウエスト(叛逆未遂続きの闇執事ウサギ・f31917)。兎の特徴を色濃く持つ、『時計ウサギ』と呼ばれる獣人種族の猟兵である。

「……やっぱりカードキーに、パスコードの二重ロックか」

 ラピーヌが辿り着いた物陰にあったのは、一枚の鉄扉だった。
 『STAFF ONLY』と注意書きが張られたその扉は……|従業員用のスペース《バックヤード》へと通じる扉であった。
表立ったスペースは、今も数多の人がいる。混乱している彼らを縫っての行軍は、無駄な体力の消耗に繋がりかねない。それは出来るだけ避けたい所であるし、水着姿で突き進んでいくのは正直はしたない所である。
 それ故にラピーヌは、あまり人目に付かない裏道を進軍路として見定めたのだ。
 だが、ガチャリガチャリとドアノブを動かしてはみるが、扉が開くことはない。結界によりビル内は混乱し、エレベーター等は使えなくなっている様だが……この辺りの警備用の装備は、まだ機能しているようである。

「……ふぅ。全く、それにしても」

 開かぬドアから一度手を外し、溜息を零すラピーヌ。その目が自身の纏う装束に向かえば……また一度、大きな溜息が零れ出た。
 実はこのラピーヌという女は、以前にも『水着結界』案件と関わった事がある猟兵である。
 あれは、確か去年の夏の頃だっただろうか。とある地方都市の浜辺で、ダイスの力を振るう悪魔みてーな女邪神との戦いだったはずだ。まるでグラサイが振られてるかのようにマイクロ○○水着が乱舞する中、猟兵達は何とかダ女神を打倒して、事件を解決へと導いていた。
 ……正確に言えば、ラピーヌはその戦いとは直接関わってはいない。関わったのはラピーヌが仕える主であり、ラピーヌ自身は主の戦いを陰ながら見守り、余暇を共に過ごした程度しか関わりは持ってはいなかった。
 とは言え、水着結界の厄介さ自体は一応は経験済みである。どんな水着が出てこようがある程度なら動揺する事は無いだろうと、|事前説明《ブリーフィング》の段階では思っていたのだが。

「──これは少々、コメントに困るね」

 いざ自分が矢面に立ち、その衣装を変えられてしまえば。結界の独特なセンスに、思わず溜息も零れ出ようと言うものである。
 さて、ここでラピーヌが着せられた水着について解説していこう。
 彼女が着せられたのは、所謂ワンピースタイプの水着であった。その中でも、近年流行りの洋服のような装飾の多いタイプでは無く、レオタードの様な古式ゆかしいシンプルなデザインであった。
 色合いは、ラピーヌが普段纏う執事服を彷彿とさせる様な配色。背面デザインや股下のカットも無難なデザインの、文字通りの安定重視なデザインであった。
 ……うん。水着は、まぁ良い。面白みに欠けてはいるが、問題は無い。では何故、ラピーヌは今の姿を『コメントに困る』と評しているのだろうか。

「……まさか、手袋はそのまま残すとはね」

 その原因は、水着以外の要素にあった。ラピーヌのその言葉の通り、彼女の手を飾る白手袋がそのまま残されていたのだ。
 ……つまり今のラピーヌは、シンプルなデザインのワンピース水着と、白手袋のみという状態。その姿を想像すれば、彼女がコメントに困ると宣ったその理由も判るだろうか?

(まぁ、『これ』が残ったのは良いことだけどね)

 呆れた様に息を吐き出し……次の瞬間には、その意識を切り替える。
 確かに、今の格好は少々不格好。様にならない姿ではある。
 ──だが。

「フッ──!」

 その様にならない格好こそが、このビルを進む為の『鍵』となろうとは。
 呼気も鋭くラピーヌがその手を振れば。一瞬飛び出た閃きが瞬いて、消える。
 直後、響いたのは金属と金属が擦れ合った様な高く細い音。その音を確認して、ラピーヌがドアノブを再び捻れば……。

 ──ギィィ……。

 重い音を立てて、鉄扉が開かれた。

「やはり、この手に限るね」

 ふんっ、と小さく鼻で笑ったラピーヌの手袋から伸びるのは……細く靭やかで鋭い、鋼の糸だった。
 そう。ラピーヌの手袋はただの手袋では無かった。
 彼女の手袋は、特別製。鋼糸をその内側に仕込んだ、所謂『仕込み手袋』と言うべき存在であった。
 ラピーヌは今、その鋼糸を振るったのだ。そして振るった鋼糸で、ドアに掛けられた鍵を断ち切ってみせたのだ。
 電子的なロックを掛けられていようと、物理的に鍵を破壊してしまえば意味をなさない。
 ……ラピーヌでは無いが。面倒な鍵を手早く突破するには、やはり『この手に限る』というものだ。

「全く。これを消さなかった邪神に呆れるね……」

 そうして扉の中へとするりとその身を潜らせて、ラピーヌは|裏道《バックヤード》を突き進む。
 一般来客者の居ない通路をゆくその旅路は、非常に快適で……屋上へと辿り着いた時、かなりの体力を温存する事に繋がるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

緋奈森・鈴音
セフィリカ(f00633)と!

この結界初めてだけどセフィリカは慣れてるわねー。
そうよねー。恥ずかしがるからダメなのよねー。
おねーさんも自信ある方だし見習って……エグいのって何!? 水着の評価じゃない気が!?
(邪)神様、セフィリカとシェル姉に本人も仰天する分類:ギリギリ水着が当たりますように……。

道中は施設の案内図など見て最上階を目指すわ。
途中の休憩場所とかも確認して無理せず行こー。
所でセフィリカは何見てるの?
へー、熱心ねー。
えっ、こんなアングル必要なの?
画面保存もできるの?
すごいわね……あれ? おねーさんの画像も多くない?


……おねーさんに似合わないような可愛すぎる水着とかは流石に来ないわよね?


セフィリカ・ランブレイ
鈴音ちゃんと

どんな水着に変わろうが私が美少女なのは不変
無闇に恥じらえば隙が生まれるからね、堂々としてよう
それに鈴音ちゃんならどんなエグいの来ても着こなせそう!

ん?邪神印の水着はヤバいよ?過激な出版社かって感じ
大丈夫だよ鈴音ちゃんなら。可愛いからね!

『街角の誰彼』
小型ドローンで周辺の情報を獲得して慎重に進む

『所で見当違いの場所に数機飛んでるけど?』

シェル姉、アレは結界の影響を受けるのに現地入りするリリアのモニターをしてくれてるの
懸命にお仕事するリリアを余す所なく撮影する意図はないよ?
道中のカメラでも可愛い水着姿の子が撮れないかって意図もないよ?

同行者の鈴音ちゃんの水着姿が記録に残るのは不可抗力!





「……うーん」

 時は少し遡る。猟兵達が現地に降り立ち、天高く聳える高層複合商業ビルを見上げた頃の事である。
 それぞれに決意と戦意を高める一行の中で、緋奈森・鈴音(火に願う華・f03767)が悩ましげな息を零していた。

「ん? 鈴音ちゃん、どーかした?」
「やー。おねーさん、この結界初めてなんだけど……」

 そんな鈴音の様子に目敏く気付いたのは、セフィリカ・ランブレイ(鉄エルフの蒼鋼姫・f00633)であった。
 掛けられたその声に、鈴音がセフィリカを見やる。常の通りの、気負いのない表情である。

「……セフィリカは、慣れてそうねー?」

 そんな彼女の表情に、溢れ出たのは羨ましげな声だった。
 『水着結界』。過去幾度か猟兵達の前に顕れ、苦しめてきた結界である。
 その力を制御する事は、不可能。対策する事も、不可能。その場の流れに身を任せるしか出来ない、天災の様な空間であった。
 ……一体何処の誰が、こんな悪魔みたいな物を生み出したのか。問い詰めてやりたい所だが。

「ん、まーね。もう何度も受けたってのもあるし?」

 |閑話休題《それはそれとして》。
 鈴音の羨ましげな声に対して、セフィリカが得心した様に頷く。
 セフィリカは過去、水着結界案件のその殆どに関わってきた猟兵。謂わば、『常連』である。
 そんなセフィリカであるから、もうこの結界のトンチキ具合には慣れっこである。
 ……そして慣れた結果、セフィリカは一つの真理へと辿り着いていた。

「でもね鈴音ちゃん。大事なのは、慣れじゃないんだよ」

 その真理を、鈴音にも伝えなければならない。
 無闇に恥じらえば、隙が生まれる。そうして生じた隙を狙われれば、対処が遅れる。その果てに待つ結果は……『生き恥』で済めば、御の字だろう。
 そう。この結界に於いて最も重要なのは『平常心』。どんな水着を着せられても狼狽えない、確固たる自我が重要なのだ。

「どんな水着に変わろうが、私は美少女。鈴音ちゃんも、堂々としてようよ?」
「堂々と……なるほど、そうよねー。恥ずかしがるからダメなのよねー」

 セフィリカのその教えに一理を見出し、鈴音が頷く。
 あぁ、確かにこの結界は奇妙であるのは事実。どんな水着を着せられるか判らないのは、地味に恐怖を覚えなくも無い。
 だが、鈴音だって己の体付きには自信がある。どんな水着が来ようが着こなせるという、自負がある。
 ここはセフィリカを見習って、意識を切り替え──。

「……それに鈴音ちゃんなら、どんなエグいの来ても着こなせそうだし!」
「待って? エグいって何っ!?」

 ──る、その直前。セフィリカの口から飛び出た爆弾発言に、鈴音が慄く。

 えぐい【えぐ・い】
 1:あくが強くて、いがらっぽい感じがする。えがらっぽい。
 2:俗に、むごたらしいさま。また、どぎついさま。
 3:我が強くて思いやりのないさま。きつい。
 (小学館:デジタル大辞泉より抜粋)

 ……この場合、当て嵌まるのは多分2番の表現だろうけど。
 コレ明らかに、水着に対する評価で使う言葉では無いような……?

「え? 邪神印の水着はヤバいよ?」

 だがそんな鈴音の一縷の望みを込めた疑問に対し、セフィリカの答えは無慈悲であった。その上で、『過激な出版社か、って感じ』と言う補足情報を伝えられ、ガクリと鈴音の肩が落ちる。
 ……今回の依頼を受けたの、もしかして早まったかしら?

「まー大丈夫だよ。鈴音ちゃんなら、可愛いからね!」
「ア、アハハー。ソウネー……」

 真理を得て気楽なセフィリカのその言葉に、慄きながら鈴音は思う。

 ──神様。セフィリカに、本人も仰天するような『分類:ギリギリ水着』が当たりますように……!

 ……と。



 ……そして、時は戻って現在。
 セフィリカと鈴音の二人はビル内部に突入し、現在中層の辺りを行動中であった。

「まぁ急ぎすぎても疲れるし。無理せず行こー」
「だねー」

 途中に設置されていた自販機でドリンクを購入し一息入れつつ、緩めに言葉を交わす二人。その姿は当然、水着姿であった。
 さて。そろそろ二人が着せられた水着がどんな物になったのか。解説をしていくとしよう。
 まずは、鈴音だ。
 彼女が着せられたのは、彼女の濡羽色をした髪と同色のツーピースタイプ。いわゆる、黒ビキニであった。
 だが当然、それがただのビキニ水着であるはずが無い。
 鈴音のビキニは、布面積が削りに削られていた。俗に言う、『マイクロビキニ』と呼ばれるヤツであったのだ。
 僅かでもズレれば豊満な鈴音の双丘がまろび出てしまいそうな、実に頼りない水着であるが……彼女が生来持つ色気もあってか、これを着るのが天命と思える程のジャストフィット具合を見せていた。
 なお着せられた鈴音本人としては、可愛らしさ全振りな子供っぽい水着で無くて良かったと思うべきか、誰がここまでセクシー路線に振れと言ったと怒るべきか。判断に迷う所であったが。
 ……とは言え、これはまだ『ギリ水着クラス』の中では、比較的穏当なタイプである。
 水着結界が用意した『ギリ水着クラス』の中には、もっとやべーやつらが犇めき合っているのだ。

「ふんふふ~ん♪」

 その『やべーやつら』の内の一着を引き当てたのが……リラックスムードで鼻歌を口遊む、セフィリカであった。
 セフィリカが着せられた水着も、鈴音と同じくツーピースタイプであった。
 トップスは、肩紐の無いタイプ。胸を包む布地が眼帯のような長方形となった、『眼帯ビキニ』等と呼称される形である。
 こうしてみると、どこがやべーやつなのかと思うだろう。当然、そう言われる所以はある。
 実はこの眼帯ビキニ、水着と呼ばれはするが水着としての実用性はほぼ皆無である。デザインの都合上、ホールド力が極端に弱く(=すぐズレる)、グラビア撮影やその特殊性自体を目的とした使用以外には向かないという、そんな水着であるのだ。
 ……そんな(欠陥品と呼ばれても仕方ない)水着を着せられても、セフィリカが動じる気配は無い。今も鼻歌を口遊みつつ、何やら手元のタブレットを弄っているくらいである。

「セフィリカ、良くそんな水着を動じないで着てられるわねー……?」

 泰然としたセフィリカの様子に、おずおずと鈴音が訪ねてみるが。

「ん? やー、これくらいならまだ大人しい方だし……」
「嘘でしょ……これで?」

 返ってきた答えを聞けば、鈴音の背筋に再びの戦慄が走る。
 馬鹿な。過激な出版社のソレとは聞いたけど、まだコレ以上が存在するだと……!?

「そ。これくらいなら、まだ大人しいんだよ……」

 どこか遠く懐かしい風景を思い返す様に、セフィリカが呟く。
 そう、セフィリカは識っている。二人が着せられた水着が、どれだけマシな物であるかと。
 何せ今回着せられたのは、比較的布地がある方である。ほぼヒモと同義の水着だったり、水着とは名ばかりのアレとかコレとかじゃ無いのだから。
 瞼の裏に見えた、かつて共に夏の結界に挑んだ友人の艶姿を思い返しつつ。セフィリカがまた手元のタブレットを操作する。

「……ところで、セフィリカ? さっきから何を見てるの?」
「え、これ? 小型のドローンで、ちょっとね?」

 そんなセフィリカの動きに何やら不審な物を感じた鈴音がちらとタブレットを覗いてみれば……そこに映るのは、幾つかに分割された映像の数々。セフィリカの言葉を信じるならば、各地に送ったドローンから送信されてきた映像なのだろう。

(なるほど、これでルートとかその他諸々の情報を……ん?)

 その画面を見て、その手があったか得心し……直後、妙な違和感を感じて画面を注視する。
 映るのは、この高層複合商業ビルの内部の映像だ。見覚えのある光景だから、間違いない。
 だがその画面の内の幾つかが、見慣れた人物を注視している様なアングルの様な……?

『……所でセリカ? 何機が見当違いの所を飛んでるけど?』

 直後、響いたのは第三者の声。セフィリカが腰に佩く|意思持つ魔剣《シェルファ》の声だった。
 その声色には、少々棘があった。
 ……|意思持つ魔剣《シェルファ》は、セフィリカの姉代わりである。故に、彼女には判るのだ。セフィリカが、何をしようとしているのかを。

「シェル姉。アレは結界の影響を受けるのに現地入りしてくれた、リリアのモニター担当だよ」

 そんな魔剣の詰問に対し、セフィリカの答えはまさに想像通りの物だった。
 今回猟兵達をこの地に導いたグリモア猟兵は、セフィリカにとっては同じ師に学んだ姉弟子である。
 そんな姉弟子は、今回は一般人対策の為に現場に踏み込んでいる。結界の影響を確実に受ける事になることを承知の上で、だ。
 万が一、彼女の身に何かがあれば。それだけは、防がねばならない。
 ……決して、彼女の水着姿を余すこと無く撮影する意図は無い。あと序でに、道中で他の猟兵や一般人の可愛い姿を撮ったりしようなどという意図も無い。

「──これは、必要な事。みんなの安全を護る為に、必要な事なんだよ!!」
『アンタねぇ……』

 ドヤァ、という音が聞こえそうな程に胸を張るセフィリカに対し、魔剣の反応は完全な呆れ一色である。
 そんな姉妹漫才を横目に見つつも、鈴音の画像のチェックは止まらない。
 鈴音が妙な違和感を感じたのは、グリモア猟兵の姿では無い。もっと見慣れた姿の数々が、その原因であった。
 具体的に言えばその姿とは、毎日鏡の前で見る姿。
 則ち──鈴音の姿の数々であった。

「ねぇ、セフィリカ? おねーさんの画像、多くない?」
「……ど、同行者の鈴音ちゃんが記録に残るのは、不可抗力ジャナイカナ?」

 その事実を問うてみれば、途端に挙動不審となるセフィリカ。
 ああ、確かに多少記録に残るのは不可抗力だろう。それを咎めるつもりは、鈴音には無い。
 けれど、映像を見る限り……鈴音を映しているのは、上下左右至る所からの視点である。
 ……どう考えても、幾つか|要らない《ちょっと過激な》アングルがあるのは明白である。

「……セフィリカ?」
「ア、アハハー……」

 狐火を幾つか浮かばせながら笑顔を浮かべる鈴音の圧に、セフィリカの答えは乾いた笑い。
 直後、手元のタブレットからは幾つかの怪しいアングルの画面が消える。

「……さて。それじゃそろそろ、進みましょうかー?」
「ソ、ソウダネー」

 その様子に満足げに一つ頷き鈴音が促せば、ガクガクと震えたままセフィリカも歩き出す。
 親しき仲にも、礼儀あり。無断撮影、ダメ絶対。
 学びを得たセフィリカの腰からは、魔剣の呆れたような溜息が響くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
ひょっとしてまたアイツなのか
二度と鉢合わせたくない類の輩だけど
被害を放置する訳にもいかないし
やるしかないか

前回の水着に比べたら大抵はマシなはず
それだけが救いかなぁ
ふりじゃないからね
天丼も勘弁だよ

他に考えられる悲惨な状況は
こういう時に限って
男性判定されて男性用水着になる事故くらいか
恥ずかしい上に手が使えないとか最悪だし
流石に無いと信じたいけど複雑な気分だよ

衣装変更するUC使ったらましになったりしないかな
酷い水着だった時はフリフリの水着の方が
精神衛生上ましかもしれない

どのみちこんな所を水着で歩いて登らなければいけない時点で
かなり恥ずかしいし殺意が湧いてくるよ
こんな状況にした奴には報いを与えないとね





 佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は、邪神に魅入られた存在である。
 極々普通の男性であった彼は、登山中に不思議な石像に触れた事で邪神と融合。|人格《魂》こそ乗っ取られる事は防いだものの……肉体は完全に奪われ、邪神本来の姿である少女の姿へと変化してしまったという経歴を持つ。
 そんな経歴を持つからだろうか。晶はその肌に、ピリピリと感じる『何か』を感じていた。

(これは……)

 その感覚は、どこか覚えのある物だった。
 あれは、高層ホテルでの水着結界案件の時だったか。野外プールに降り立った変態……もとい、邪神から感じた気配に良く似ている様な気がした。

(ひょっとして、またアイツなのか……?)

 脳裏を過るその姿に、我知らず晶の表情が歪む。
 その邪神は、実にアクの強い邪神であった。女性用水着を集めることに執着し、その果てに『理想の男の娘になる』という妄執を抱いた邪神であった。
 ……正直に言えば、二度と鉢合わせしたくない類の輩ではある。
 だからと言って、そんな理由でこの場を後にする事もしたくは無い。猟兵として、そしてUDC組織に色々と世話になっている身として、邪神関連案件で生じるかもしれない被害を放置する訳にはいかないのだ。

 ──やるしか、ない。

 良心。責任感。そして、報恩の念。
 ヒトの心を正しき方向に導く幾つかの燃料が、晶の決意を支えていた。。

「──前回と比べると、水着も随分とマシだしね」

 そんな決意を燃やしつつ、晶の目がちらと自身の身を包む水着を見やる。
 晶が着せられたのは、飾り気の無い白の三角ビキニとホットパンツという組み合わせであった。活動的な少女という雰囲気を持つ晶の身体に、不思議なほどにマッチする組み合わせであった。
 実に健全なその組み合わせに、晶の口から思わず溜息が零れ出るが……。

(まさか、持ち上げてから落とす、みたいな事は無いよな……?)

 ふと感じた不安に、思わず全身を弄ってみるが……不可解な点は無い。どこまでも健全で普通の水着が、そこにあるだけである。
 高層ホテルでの案件の際、晶が着せられたのは世に『ブラジリアンビキニ』と呼ばれる様な過激過ぎる物であった。
 また同じ様な物を着せられる事は無かろう、とは思ってはいたが。だがこの結界を一度経験した身としては、悲惨な状況を想定して考えてしまいがちである。
 具体的に言えば、前回の水着と同格か、より酷い物を引いてしまうパターン。
 露出が酷い水着なら、まだ良い。だが万一、他の猟兵が着せられていたあんな物やこんな物を引いてしまったなら……動くに動けなくなってしまうだろう。
 そして、考え得るもう一つの悲惨な状況は……。

(こういう時に限って、『男性判定』されてしまう事だけど……)

 先に触れた通り、晶は邪神に魅入られてその肉体を変質させられた者である。
 つまり、肉体は少女、女性であるが……彼の魂それ自体は、男性であるのだ。
 その男性である魂を見て、結界が男性用水着を晶に宛がう事故が起きる可能性を、晶は僅かに危惧していたのだが。
 だが流石に、そんな事は──。

 ──ぞわっ。

 瞬間、晶の背に過る悪寒。そして同時に、体の内側で蠢く『何か』の力。
 胸元に視線を移せば、三角ビキニのトップスが薄い輝きを放って……砂のような粒子となって、虚空へ消えだそうとしている様子が目に入るだろう。

「──ッ!? なぁっ!?」

 慌てて胸元を手で隠し、物陰に飛び込みしゃがみ込む。
 何度かの繰り返しとなるが、晶は邪神に魅入られた存在である。つまり、邪神の力とは親和性が高い存在である。
 故に、晶が頭で一瞬浮かべた危惧を、結界の力は過敏に感じ取り……対応する性別へと、水着を修正しようという働きが生じたのだ。

「ふ、ふざけるなよっ!?」

 突然の事態に狼狽え、そして同時に怒りを吐き出しつつ考える。
 水着の崩壊は、止まらない。このままでは遠からず、トップレス状態となってしまうのは避けられない。
 ……そうなってしまえば、手で胸を隠し続けねばならない。行動に支障を来すだろうし、何より恥ずかしいにも程がある。
 そんな状況を避けるには、どうすれば……?

(……待てよ?)

 瞬間、晶の頭に天啓が過る。
 この結界は、邪神の力による物であるらしい。
 で、あるならば。同じ邪神の力を持って、流出した分を補填すれば……喪った分を繕う事が、能うのではなかろうか?
 幸いな事に、『邪神の力で衣装を形成する』というのは晶の得手とする|異能《ユーベルコード》の一つである。
 ……試してみる価値は、ある!

「──小っ恥ずかしいけど、我慢、我慢……!」

 砂の様に崩れていくトップスを、邪神の力を秘めた掌で撫で付ける。
 イメージするのは、真の姿。黒を基調色とした、フリルドレスだ。
 解けた水着を埋める様に。そのイメージを宿した『力』を流し込めば……!

「……なんとか、なった、かな?」

 崩壊しかけていた白い三角ビキニのトップスは、黒いフリルをあしらった姿に変わって何とか維持される事となる。
 晶の試みは、成功したのだ。

「危なかった……!」

 溜息を、一つ。
 そしてふつふつと湧き上がる怒りを胸に、立ち上がる。
 こんな所を水着で闊歩させ、あまつさえ今のような辱めを与えてくれるとは。
 降臨したという邪神に対して、しっかりと報いを与えねばならないだろう。

「やってやろうじゃないか──!」

 ゆっくりと歩みを進め、上り階段を進んでいく。
 晶の胸に宿る戦意は……更に一段と強く、燃え上がっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルメリー・マレフィカールム
……すぐに怪我をしたりする人が居なさそうなのは、一安心?
……でも、ずっとこのままかは分からない。とにかく、今は屋上に向かわなきゃ。

私は階段を登って屋上に向かう。
念のため罠が無いか【走馬灯視】で[情報収集]しながら、全力で走って上へ上へ。
戦うときの体力が残るように、必要な分だけは休憩を挟みながら進む。

……前に似たような事件を起こした邪神は、おとこのこ(?)になるのが目的だったけど。
……いま屋上にいる邪神は、どうしてこんなことをしたんだろう。

【アドリブ・協力歓迎】


メディア・フィール
POW選択
他PCとの絡みOK
プレイング改変・アドリブOK

水着に変えられても気にせず、立ちふさがるものすべてを破壊し、ちから押しで道を作って進んでいきます。

「うわ! 本当に水着に変わった! でも、いったいどうしてこんなことをするんだろ?」
「うっわぁ! 他のみんなも、巻き込まれた人たちも水着だ…。海かプールみたい。たしかに水着は薄着だけど、そんなにいいものなのかな?」
「来たな! 水着だからって負けないぞ! えい! やあ! 水着キック! 水着パンチ!」
「それ! 水着大じゃーんぷ! 下から見えるって? そ、そんなの気にならないよ! たしかにスク水を着たときは、みんなから見られて恥ずかしかったけど」





「はっ、はっ──んんっ、ふぅ……」

 階段を駆け上がり、ルメリー・マレフィカールム(黄泉歩き・f23530)が息を整える。
 ここは、高層ビルの上層階。飲食店が並ぶフロアである。
 周囲を見渡す。食事時からは時間がズレているのか、フロアに一般人は多くない。僅かに居る一般人も、今の状況に混乱してはいるようだが……パニックにまでは陥ってはいないようである。

(……すぐに怪我をしたりする人が居なさそうなのは、一安心)

 そんな一般人の様子に、ルメリーの息が安堵のそれと変わる。
 水着結界。その珍妙な存在を、ルメリーは過去に体験していた。故にこの結界が、一般人の生命に直接的な危害を及ぼす事は無い事も識っていた。
 だからといって、甘く見てはいられない。直接的な危害は無いとは言え、これが邪神の力の発露である事には変わりは無いのだから。
 もし、過激すぎる水着を一般人が着せられてしまったら? そしてそれが原因で、パニックに陥ってしまったら? 更にそのパニックを起こした場所が、多くの人々が集まる場所であったなら?
 ……悲しい事故が起きないという保証は、どこにも無いのだ。
 一歩踏み間違えれば、多くの命が喪われるかもしれない。
 そんな未来は、絶対に防がねばならない。
 いつも通りの無表情の内側で、ルメリーは静かに戦意を高めていた。

(……それにしても)

 そんな、息を整え決意を新たにするルメリーであったが……ふと頭に、疑問が過る。
 ルメリーが疑問に思ったのは、この事件の根本。降り立ったという、邪神の事だ。
 ルメリーが以前遭遇した水着結界案件では、その力を振るった邪神には一つの目的があった。『女性物の水着を集め、『理想の男の娘』に至る』と言う目的が。
 ……実は今でも、相手が何を言っているのかルメリーにはよく理解出来ていなかったりするのだが、それはそれとして。
 以前の邪神は、そんな目的を持っていた。では今回の邪神は、どうなのだろうか?

(……どうして、こんな事をしたんだろう──っ!)

 滔々と思考を廻らせ……瞬間、聞こえた足音にルメリーが太腿に手を伸ばす。
 ルメリーの太腿には、ナイフホルダーが巻かれていた。以前の水着結界案件で得た教訓を活かし、愛用の軍用ナイフを其処に固定し持ち込んだのだ。
 迫る、足音。随分と騒々しいそれは、階下の階段を一気に駆け上がって迫ってくる。
 一般人では、無い。この状況で上を目指してくる一般人などそうは居ないだろうし、何より聞こえる足音は騒々しくとも一人分だけなのだ。
 ……グリモア猟兵は、大した障害は無いとは言っていた。けれど、不測の事態はいつでも起き得る。
 敵か、味方か……ナイフの柄を握るルメリーの警戒心が最高潮に達し──。
 
「──水着、大じゃーんぷっ!!」

 その警戒心は、すぐに霧散した。飛び出てきた人影を見て、味方だと判断したからだ。
 賑やかな声と共に飛び出てきたのは、赤髪の少女猟兵……メディア・フィール(人間の姫おうじ武闘勇者・f37585)であった。
 メディアが着せられていたのは、スポーティーなシルエットのワンピース水着。俗に『競泳水着』と呼ばれる物だった。
 『競泳水着』と言うだけあって、この水着はアスリート向けにデザインされた水着である。泳ぐ疾さを極める為に、撥水性と密着性、伸縮性を高めつつ、装着者の身体にぴっちりと張り付く極薄構造である事が特徴的な水着であった。
 ボーイッシュであり、体を動かす事を苦としない。まさにメディアの為にある様な水着を着せられて……メディアの気分は浮かれ、そのテンションは常よりも高くなってしまっていた。

「……っと。キミも、上に行くのかい?」
「うん。今は少し、休憩していたところ」

 そんな大騒ぎをしながら飛び出してきたメディアであったが、ルメリーの視線に気付いて頬を僅かに染めつつ居住まいを正す。
 水着姿を見られたのが、恥ずかしい訳では無い。だがちょっとはしゃぎ過ぎた自覚があり……それを見るからに年下なルメリーに見られた事が、羞恥の念を刺激したのだ。
 ……尤も、ルメリーはそんなメディアの行動を『楽しそう……』くらいにしか思っていなかったのだが。

「……息は、整った。もう行ける」
「それなら、ボクも一緒に行っても構わないかな?」
「ん、問題ない」

 ともあれ、ここでいつまでも会話をしてもいられない。
 ルメリーがゆっくりと階段の先へと視線をやれば、メディアが同行を申し出て……即席パーティーの出来上がりである。

「それじゃあ、行こう」

 そうして話が纏まれば、先導するようにルメリーが前に出る。
 そんなルメリーの後ろへ並ぶように、メディアが位置を取り──。

「──ゔぇっ!?」

 ──吹き出した。そして、変な声が出た。

「……なに?」

 背後からのそんな反応に、足を止めてルメリーが振り返る。
 ルメリーのその表情に、変化は無い。初対面のメディアでも判る程の、淡々っぷりである。

「なな、なにってっ!?」

 そんなルメリーに反比例するかの様に、メディアの狼狽っぷりは止まらない。それだけ衝撃的な物を、メディアの目は目撃したのだ。
 メディアが目撃したもの。それは──。

「キミの水着っ! それじゃ──」

 ルメリーが着せられた、水着であった。
 ……という訳で、ここまで避けていたルメリーの水着の紹介をさせていただこう。
 ルメリーが着せられた水着は、普段ルメリーが羽織るジャケットと同色のビキニ水着であった。
 形状としては、首の後ろで紐を固定する『ホルターネックビキニ』と呼ばれるタイプ。固定位置の関係上、胸と水着の隙間が生じづらく、ズレ難い安定性の高さが特徴的な水着である。
 さて、これだけならば全然問題が無いと思うであろうが、然に非ず。問題となる部分は、他にある。

「──お尻が、丸出しじゃないかっ!?」

 その問題とは、メディアが指摘したその通り。ボトムスのバック部分にあった。
 ルメリーの水着のボトムスは、バック部分の布面積が極端に少ない構造となっていたのだ。
 タンガ、と呼ばれる形状の衣服がある。
 元は南米はブラジルに住まう先住民族の腰巻きであるとされ、『リオのカーニバル』と呼ばれて世界的にも有名な|謝肉祭《カーニバル》でよく見かける衣装ともなっている。
 ルメリーが穿かされたのは、そんなタンガの様な露出度の高いボトムスであった。
 バック部分の露出度の高さでは、Tバックなどのいわゆる『紐パン』と呼ばれるタイプの物が思い浮かぶだろうが……ルメリーのそれも、負けてはいない。メディアが言う通り、ほぼ丸出しであるのだから。
 ……一見普通の水着の癖して、よくよく見るとヤバい。メディアの反応は、当然の物と言えるだろう。

「……?」

 だがそんな指摘に対し、ルメリーの反応は今一つ。何が問題なのか判らないというかのように、小首を傾げるばかりである。
 ルメリーは常のその表情の通り、無愛想で端的、淡々と活動する少女である。
 とは言えその内面は、素朴な子供らしい所もあるのだが……こと猟兵としての任務の場に於いては、そんな甘さを見せる事は無い。危険に晒される事になる弱き人々を、護るべき人を護りたいという、正義感のみがルメリーを突き動かすのだ。
 故に下半身が中々ヤバい水着を着せられても、ルメリーが動じる事は無かった。むしろ『武器の持ち込み制限はあるけど、動き易い』と思っていたほどである。
 ……とは言え前回も思ったことだが、もうちょっとくらいは恥ずかしがってもと思わなくも無いが。まぁそこは、ルメリーらしいと思う所だろう。

「だいじょうぶ。問題ない」
「えぇー……?」

 そんな訳で、小首を傾げるルメリーの表情は変わらない。
 淡々と返される答えに、メディアは一瞬ドン引きし……。

(──いや、待てよ?)

 瞬間、メディアの頭に天啓に似た閃きが過る。
 お尻が丸出しな水着。はっきり言って、恥ずかしいにも程がある水着である。
 けれど、そこで思考を止める事無く。恥ずかしさに打ち克ち、何事にも動じぬ精神力を手に入れる事が出来るのならば……猟兵として、更に高みに登れるのでは無かろうか?
 ……幸い(?)、メディアが着せられた水着も動き易いは動き易いが、ぴっちり張り付きボディラインは丸見えだ。見方によっては、これも中々恥ずかしい水着と言えなくも無いだろうか。

(そう思ったら、ちょっと恥ずかしくなってきたぞ。けど……!)

 意識を切り替えれば、メディアの心に羞恥の念が浮かび上がる。
 けれど、そんな物に負けられない。眼の前の少女の様に、何事にも動じぬ強い精神力を手に入れなくては……!

「よっ、よし! それじゃあ、行こう!」
「……? わかった」

 やや声に動揺を浮かばせながらも、メディアが意気を示して見せれば。そんなメディアの心境の変化は理解していないが、ルメリーも頷きその後に続く。
 階段を駆け上がる、ルメリーとメディア。
 やがて二人は『立入禁止』と張り紙が張られた扉の前まで辿り着き……その扉を、勢いよく開くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『水着弁慶』

POW   :    水着簒奪杖術
【手にした水着物干し竿】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    わたしこうなりたいんだ
【理想の緑髪の男の娘聖騎士】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    水着は食べ物
【女性用水着が欲しい】という願いを【有無も言わせぬ気迫で周囲】に呼びかけ、「賛同人数÷願いの荒唐無稽さ」の度合いに応じた範囲で実現する。

イラスト:くらりん

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は山梨・玄信です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




 『立ち入った者の衣服を強制的に水着に替える』。そんな頭の悪い結界に覆われた、都内某所の高層複合商業ビル。猟兵達はそのビルを地道に駆け上り……遂に最上階へと辿り着いた。
 『立入禁止』と張り紙が張られた扉を開き、勢いのままに屋上へ踏み込めば……。

『──やはり来たか、|猟兵《イェーガー》どもめ!』

 そこに居たのは、一体の邪神だった。
 大柄で、筋骨隆々の男性体である。滲ませ滾る覇気は、並み居る猟兵達が気圧される程である。
 ……だが、その身に纏うのは『女性用』の競泳水着。携えた棒(古式ゆかしい竹竿だ)には幾つもの女性用水着が翻えり、背負う籠の中にも以下略。
 その姿を識り、覚えている者もいるだろう。
 この男邪神は、かつて高級ホテルでの水着結界案件を引き起こした邪神。
 千着の女性用水着を集め、『理想の男の娘』に至る事を目指す……変態である。

『誰が変態か! 失礼な!!』

 憤慨する男。だがその姿は、どこからどう見ても変態以外の何者でもない。
 ……なんだか以前も同じやり取りをしたような気がするが。気を切り替えて。
 何故、再び現界したのか。そして何故、この地に降り立ったのか。猟兵達が訪ねてみれば。

『知れたことよ! この世の全てを水着とするという願い、それは我が目的と合致するからよ!』

 恥じ入ることなど何も無いとでも言うかのように。男──『水着弁慶』は、胸を張って答えるだろう。
 男の目的。それはもう、聞かずとも判る。『水着を集め、理想の男の娘に至る』という妄執である。
 ……一度は敗れた、その妄執。『骸の海』にその存在を叩き返されてなお、諦めてなどいなかったようである。

『我が目的を果たす為! 理想たる『緑髪の男の娘聖騎士』となる、手始めに! 貴様らの水着を、奪って──!』

 竿を振り、見得を切る『水着弁慶』。
 その見得を切る度に、男の全身の筋肉が膨張する。纏う競泳水着の記事が押し広げられ、ミチミチという音が聞こえてくるかのようだ。
 ……だが、しかし。

『──み゛っ゛!!!!』

 そんな見せ場は、直ぐに終わった。
 突如奇妙な声を上げ、竿を取り落として蹲る男。よくよく見れば、その手は腰に当てられて……その額からは、滝のような脂汗が流れているのが判るだろう。
 これは、一体……?

『こ、こしが……!?』

 その正解は男の呟きで察する事が出来るだろう。
 男は今、|腰を痛めた《ぎっくり腰を発症した》のだ。
 ……その原因は、降臨時に魂を掻き消し肉体を乗っ取った男にあった。
 四十代男性。それは、身体のあちこちにガタが来る世代である。そんな肉体を素体としたのだから、耐久力などお察しである。
 勿論、降臨時に邪神パゥワーで強化はしているのだろうが、それにだって限度はある。その限度を、今の動きで越えてしまったのだ。

『……し、仕切り直しを要求するッ!?』

 |閑話休題《それはそれとして》。
 痛めた腰を庇うように手を添えつつ、プルプルと震える膝を竿で支えて立ち上がりつつ、何やら要求する男。
 だが、そんな要求に応える義理が猟兵達にある筈も無い。それぞれに武器を構えて、猟兵達は臨戦態勢を整える。 

 降臨した邪神『水着弁慶』。
 妄執を抱き再びこの世界に降り立ったその邪神との決戦の幕が、上がろうとしていた──。

 ====================

●第ニ章、補足

 第ニ章はボス戦。
 高層複合商業ビルの屋上に降臨した邪神『水着弁慶』との決戦となります。

 非常にアクの強い見た目と野望と秘めた、邪神です。
 但し、腐っても『弁慶』の名を持つ男。厄介な結界の事も含めて、その戦闘力は、中々のもの……でした。
 過去形な理由は、断章の通り。今回の敵は、その戦闘力を大きく減じた状態となります。

 戦場となるのは、高層ビルの屋上。
 空調の室外機を始めとした、メンテナンス用の機材が並ぶ他はあまり多くの物は置かれてはいません。
 ただ立地上、風はそれなりに強いようです。その辺りだけ、お気をつけください。

 また、第二章中も皆さんの衣装は水着のままです。
 一章参加者の方はそのまま。二章から参加の方もこちらでランダムダイスを振らせて頂きます。
 途中参加をご希望の方は、徳を積み上げた状態でご参加下されば幸いです。

 遂に始まる、邪神との決戦。
 妄執を抱きつつも弱体化した変t……邪神に、猟兵達が挑む。
 皆様の熱いプレイング、お待ちしております。

 ==================== 
佐伯・晶
やっぱりこいつだったか
街中でガトリングガンが使えないのが口惜しいよ
でもまあ、殺る事は1つだからね

何故男物の水着着せられそうになって人目を気にして隠れる
なんて事をしなければならないのか
理不尽にも程がある

この変態だけが原因ではないけど
聖人だって助走をつけて殴るのを許してくれると思うよ

弱ってるけど水着への執着は無くならないんだろうね
人目はないし他の猟兵は女性だけ
何よりこいつは中身に興味なさそうだから
避け損ねたふりをしてトップスを奪わせよう

手にしたとこで邪神の力を切れば消えていくはずだから
混乱している隙にUCを使い全力でぶん殴ろう
屋上に罅が入るかもしれないけど
重量物が倒れたで済むと思うよ

硬い方が威力がでるから拳を先に石化させ
一撃の後に完全に石化する速度で力を解放
周囲を停滞させて身構える猶予を与えず殴ろう

体が完全に石化しても封印の縛めを使った時みたいに
物理攻撃でどうにかできる硬さでは無いし
暫く待てば動けるから
もうこれで終わってもいい
ありったけをぶちこむよ

何より石になった水着を奪う事はできないからね





「やっぱり、お前だったか……!」

 ぷるぷると震える変態……もとい、『水着弁慶』。
 晶が道中で予期した通り、この地に降り立っていたのは常人には理解出来ない(というかしたくない)妄執を抱えるその邪神であった。
 ……どうやらヤツは、今回もその妄執を掲げて多くの女性用水着を掻き集めようとしているようである。

(街中じゃガトリングガンが使えないのが口惜しいけど)

 背筋を走る怖気……生理的嫌悪感に、晶の表情が歪む。
 先にも触れたが、晶は二度と鉢合わせしたくはないと思う程にこの邪神の事を忌みていた。
 だが、こうして相対してしまったのならば仕方ない。疾く討ち倒してやろうと思うのだが……得手とする武器は、こんな街中では使い難い物である。

(でもまぁ、|殺《ヤ》る事は一つだからね)

 ならば、致し方ない。この拳で、殴り倒すだけである。
 幸い(?)、晶の心は強い闘志に燃えていた。魂は男であるが身体は少女の身であるというのに男物の水着を着せられかけ、人目を気にして隠れたりと……道中降り掛かった理不尽に、強い怒りを感じていたのだ。
 この強い怒りは、きっと拳に力をくれるだろう。そしてその怒りを発散する事は……きっと聖人と呼ばれる類の人々も、赦してくれるはず。むしろ助走をつけて殴り倒す事すら推奨してくれるかもしれない。

「──ハァッ!」

 気合一声。コンクリートを踏み割る勢いで地を蹴り、駆ける。
 その速さは、まるで地を滑るかのようであった。
 事実、今の晶の身体は浮いていた。そして滑る様に、一直線に……邪神との距離を、詰めたのだ。

『ぐぅっ──!』

 その間、まさに一瞬。
 一息の間に、晶と邪神の距離が埋まる。
 圧倒的な晶のその速さに、邪神が驚き目を見開くが……。

『ぬぅぅぅんっ!』

 驚く心と裏腹に、身体は動くものらしい。
 竿を手繰り、翻し……フリル付き三角ビキニと化した晶の水着の僅かな隙間へと潜り込ませて。

『──獲ったぞぉ!』

 晶の水着を、剥ぎ取る。
 快哉を上げる邪神。痛む腰に本来の実力を発揮できぬ状況だというのに、なんという技の冴えだろうか。
 だが……。

『……ぬっ!?』

 喜色満面なその表情は、一瞬で凍りつく。
 剥ぎ取ったはずの水着が、滑り落ちる砂の如く解けて崩壊しはじめたからだ。
 突然の現象に、目を白黒させて狼狽を隠さぬ邪神。

(計算、どおり!)

 その姿を見て、晶の表情にしてやったりと言う笑みが浮かぶ。
 晶の水着は、一度崩壊していた。その水着を、晶に宿る邪神の力で補強したのが今の水着である。
 ……では、今の水着に宿る邪神の力の供給を止めてしまえば、どうなるだろうか。
 その答えが、今起きた現象であった。

『わ、我が水着が! 面妖な……!?』

 手にした筈のお宝が、掌から消える。邪神の困惑は、深まるばかり。
 その目は、トップレスとなってしまった晶の方へは向いていない。
 やはりこいつが興味を抱くのは、水着のみ。水着の中身には、どこまでも興味が無いようである。
 ……別に見られたい訳じゃないが、これはこれで何かムカつく。

「お前の水着じゃないって、言ってるだろう──!」

 そんな晶の身体に宿る邪神の意思も反映したのか、漏れ出す神気が周囲の空間を染める。
 瞬間、動きを止める邪神。周囲を見渡せば、取り囲む様に構える猟兵達の動きもまた止まっている事が判るだろう。
 |【邪神の領域】《スタグナント・フィールド》。晶が振るう、|異能《ユーベルコード》である。
 その効力は、周囲の存在の停滞と固定。動きを止める事で、擬似的に時間停止現象を引き起こすのだ。
(一応もう一つの効力として、先程見せた滑空の様な飛行能力も含まれるが……今回そちらは重要ではないので、置いておく事とする)

『──ぬおっ!? 貴様、いつの間に!』

 動きを止めて隙だらけとなった邪神の懐へ飛び込む晶。
 次の瞬間、縛めが解かれて邪神は意識を取り戻すが……もう、遅い。
 晶は既に、拳を大きく振りかぶり。

「フッ──!」

 その拳を振り抜いて、邪神の頬に突き刺していたのだから。
 晶の拳は、硬質化していた。宿す邪神の呪いによって、硬い岩と変じていた。
 石化という現象は、デメリットである。完全にそうなってしまえば、身動きを取る事も叶わなくなるのだから。
 だが、そのデメリットも使い方次第ではメリットに変わる。
 その具体例が、今の一撃だ。拳だけを岩と変えたことで、硬さと質量を増して……拳打の威力を、跳ね上げてみせたのだ。

『おぶ────ッ!?!?!!!』

 もうこれで終わっても良い。ありったけの力を込める。
 そんな心積もりで放った晶の一撃が見事に決まり、奇妙な悲鳴を上げながら邪神が吹っ飛ぶ。
 見事なまでの、|会心の一撃《クリーンヒット》だ。身構える事も出来なかったその一撃は、邪神の身に大きなダメージを与えたことだろう。
 ……だがそれだけの力を振るえば、代償もいる。
 石像へと変じていく、晶の身体。だが晶の表情に、怯みは無かった。時間が経てばその呪いも効果を喪い、また動ける様になる事を識っているからだ。

「……後は、任せたよ!」

 一息に邪神を仕留めるまでは叶わなかったが、だが強烈な一撃を浴びせる事は出来た。後は仲間に任せれば、討伐は果たせるだろう。
 後事を仲間たちに託しつつ……晶の意識は、石像の中へと飲み込まれていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

祓崎・千早
邪神が現れたって聞いて駆け付けたわっ!
この『対邪神決戦兵器【機神兵】』に搭乗してプロペラユニットを展開し、高層ビルの屋上上空に飛行しながら参上よっ!っていきなり服装が水着になったっ!?
ま、まあいいわ。さあ、邪神は何処っ!
…何処にも居ないじゃない。居るのは腰を痛めてるっぽいおじさんだけ…まさかアレじゃないわよね?
よく見たら女性水着着てる変態だし、そんな訳ないか。………嘘よね?

と、取り敢えず屋上の周りを旋回しながら『ガトリングキャノン【呪雨】』で屋上に弾幕を叩き込むわ。さらに『大型ミサイル【彗獣】』も。
きっと油断させる為の演技に違いないしね。油断せず空中から蹂躙してやるわっ!


【アドリブ歓迎】





『おご、おごごっ……!』

 殴り飛ばされ、邪神が苦悶に悶える。
 殴り飛ばした猟兵が石像へと完全に変じる程の時間が経っても、彼は未だに立てずにいた。受けたダメージがよっぽど重かったのか、はたまた|腰の具合《ぎっくり腰》が相当キツイのか……多分どちらもなのだろう。

 ──バババババッ!

 そんな中、突如として響く風切り音。悶える邪神の身体に、大きな影が差す。
 何事かとその場に集まる者たちが視線を向ければ……戦場となった高層ビルの屋上を、ヘリコプターの様なプロペラを展開して浮遊する巨兵が見下ろしていた。

「こちら『機神兵』! 目標ポイントに到着したわ!」

 その巨兵──対邪神決戦兵器『機神兵』のコクピットに、響く羽音に負けぬ程に大きく響く少女の声。
 名を、祓崎・千早(魔を断ち闇を砕く少女・f38100)。
 古くから邪神を狩る一族の血を引く者である千早は、邪神出現の報を聞きつけ、愛機を駆って空からこの場に参上したのだ。
 だが、忘れてはいないだろうか。
 今このビルには、踏み入る者の衣服を水着に替えるという奇妙な結界が展開されている事を。
 千早が駆る『機神兵』は、ビルの地には触れてはいない。だが、戦場の地に飛び込んだことには変わらない。
 で、あるならば──その結界の力に捉われるのは、自明の理であろう。

「──っ!?」

 突如として、コクピットに。そして機体全体に満ちる光。
 光の発信源は、千早が纏う衣服。肌にぴったり張り付きボディラインが浮き出る、ニンジャスーツだ。
 その発光と共に、千早は己の身体を締め付ける感覚が一旦解かれたのを感じ……。

「服が、水着になったっ!?」

 直後、違う種類の締め付けへと変じて、声を上げる。
 さて、千早が着る事になった水着について解説していこう。
 千早が着せられたのは、クリスクロス・ビキニと呼ばれるタイプのビキニ水着だった。
 このタイプの水着の特徴は、トップのバスト下やボトムスのウェスト部に『紐』が交差されている事。
 交差するその紐は、水着の機能を為すものではない。水着としては、必要のないものではある。
 だが不思議な事にその紐は、剥き出しとなった肌を飾るリボンの様に。纏う者を彩り飾り、その魅力を高める力を秘めていた。
 ……とは言え、肌を締め付ける要素の多いその水着は、着慣れぬ者には大いに違和感を与えてしまうが……。

「……ま、まぁ良いわ! さあ、邪神は何処っ!」

 その辺りをバッサリ切って捨て、千早は戦場へと意識を向ける。
 千早にとっては、肌を締め付けるタイプの衣服は着慣れたもの。特に違和感を感じる様な事も無い。
 それに、彼女は今はコクピットに座した状態。つまり外部とは遮断された状態である。
 この姿を外部に晒す事も(基本的には)無いのだから、動揺する事などありはしないのだ。
 だが──。

「……何処にも居ないじゃない?」

 別の理由で、千早の戦意は削がれる事になる。
 機体のメインカメラ越しに千早が見たのは、ビルを駆け上がってきたと思しき猟兵達が作る輪。そしてその輪の中心で、何やら蹲り身悶えしている中年男性の姿であった。

(……まさか、アレじゃないわよね?)

 疑念を抱きつつも、もうちょっと観察してみて……直ぐに、後悔を覚える。
 その理由は、モニタに映る中年男性のその姿。
 何故だかは知らないが、その男は女性用の競泳水着を着込んでいたのだ。
 ……その姿はどこからどう見ても、変態以外の何者でもなかった。

「嘘よね……?」

 思わず呟きが漏れ出るが、現実は非情である。
 邪神対策の専門家である千早には、理解ってしまった。
 確かにアレな格好ではあるが……あの変態も、立派な邪神の一柱であると。

「……はっ! そうか、きっとこちらを油断させる為の演技なんだわ!」

 そしてその事実に気付いた瞬間、千早の頭に天啓が過る。
 そうだ。アレはきっと、擬態なのだ。変質者のフリをしてこちらを油断させる、演技なのだ。
 そうでなければ、邪神があんな変質者みたいな格好をする理由がない!

 なお事実は、千早の想像の正反対で。あれこそが、あの邪神の素の状態であるのだが。
 それを指摘する者は残念ながら、ここにはいなかった。

「なら、油断せず──」

 |閑話休題《それはともかく》。
 そういう事ならば、と。萎えかけた闘志を再び燃え上がらせて機体の操作桿を握り締めれば、千早の意思に応える様に機体が動く。プロペラユニットの出力が上がり、機体の高度が上がって……左手に据え付けられた、銃器を構える。
 その銃器の名は、|『呪雨』《のろいあめ》。質量を持った邪神の呪詛を弾丸として放つ、ガトリングキャノンである。
 『機神兵』のコアには、邪神が封印され動力として利用されている。
 その邪神から滲み出る呪詛がある限り……『呪雨』の残弾は、実質無限である。

「──蹂躙してやるわ!」

 その無尽蔵の弾丸を撃ち尽くさんと言わんばかりに、裂帛の気合と共にトリガーを押し込む。
 瞬間、けたたましい音と共にビルの屋上へと降り注ぐ呪詛の雨。
 驟雨の如きその弾丸を、腰を痛めた中年邪神が避けられる道理など無い──。

『──!!』

 だが次の瞬間、千早の目に飛び込んだのは予想外の光景。
 降り注ぐ弾丸に向けて、男が何事かを乞い願えば……彼の眼の前の空間が歪み、一体の人影が姿を見せたのだ。

「緑の髪の……騎士っ!?」

 それは、白銀の軽鎧に身を包む、緑髪の騎士であった。
 顕れた騎士は、その場で剣を引き抜き仁王立つ。そして次の瞬間、その身に呪詛の弾丸が突き刺さり……その全てを、弾き返していくでは無いか!

「嘘っ!?」

 その光景に、思わず声を上げる千早。
 これは全て、騎士の元となった存在が振るう力に依存する現象だ。他者を護る|聖なる騎士《パラディン》の、力の発露である。
 ……とは言え、恐らくはユーベルコードによる模倣品のはずだ。
 であるならば、その力にも限度があるはず!

「|【彗獣】《スイジュウ》、発射ッ!」

 その限界を破る為に、千早が選んだのはより強力な武器の使用であった。
 機体から放たれたのは、内蔵式の大型誘導弾だ。
 強力な火力を秘めたこの一撃は、呪詛の弾丸のソレとは比較にならない。
 この一撃なら、あの鉄壁の防御も崩せるはず──!

 ──カッ!!

 千早のその期待は、叶えられる。
 放たれた誘導弾は、猛烈な勢いで突き進み護りの構えを固めた騎士と接触し、爆発する。
 華開く、紅蓮の火球。
 その熱がビルの屋上から霧散すれば……そこに立つ者は、何もいない。

「目標、撃破……!」

 眼下のその様子を確認して、千早が操作桿を手繰って機体を操る。
 屋上は、それなりに広い。メンテナンス用の機材が色々と置いてはあるが、機体を駐機するスペースくらいは取れるだろう。
 ゆっくりと屋上に降り立つ、『機神兵』。その姿は実に勇壮で、歴戦の風格を漂わせるものであった。
 ……なお、『機神兵』にも自身と同じタイプの水着を着せられている事実に気づいた千早がドン引きするのは、数分後の事である。

『──ぶはっ!? 死ぬかと思うた……あだだっ!』

 なお、肝心の『水着弁慶』はと言えば。
 今の爆風を受けてまた吹き飛ばされ、少なくない傷を負いはしたが……まだ、斃れてはいないようであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キョウジ・コケーシ
道中はゆるキャラっぽく堂々とここまで登ってきました。
所で着ぐるみでこの結界に入ると、着ぐるみも服と認識されて着ぐるみが無くなって水着になるのか着ぐるみの上から水着になるのでしょうか?

水着姿のことは気に留めず、上空を高速で飛行しつつ空からこけし守護神を降らせます。
彼らに下す命令は一つ、
「女性水着を奪おうとする弁慶から盾になりなさい」と。
私も水着なら守護神も水着、
常に弁慶をマンマークして、敵の魔手には自ら飛び込んでいきましょう。
ついでに高速で飛び続けて風を起こして集めた水着を飛ばしたり、弁慶が体勢を崩したりしないか狙ってみましょう。
「ハハハ、紳士的に貴方の行いは見逃せません」


メディア・フィール
WIZ選択
他PCとの絡みOK
プレイング改変・アドリブOK

第1章で少し自分の水着姿が恥ずかしいのではないかと思ってしまいましたが、めげずに相手を倒すために頑張ります。
相手の格好に思わず絶叫してしまいますが、率直な疑問をぶつけつつ竜闘死連撃で戦います。しかし、おかしな格好とは裏腹に思わぬ強敵に苦戦してしまうかもしれません。もしかしたらマッパになってしまうかも(ギャグシナリオですし特にエロとかは求めていません)。

「うう…これは運動用だから恥ずかしくない! 恥ずかしくないんだ!」
「そんなに女性用の水着が欲しいなら、お金を出して買えばいいじゃないか!」
「竜闘死連撃! あ、あれ、意外に当たらないぞ!?」





「──なっ、なぁっ!?」

 時は少し遡り、猟兵達が屋上へ突入した頃の事である。
 待ち構えていた変態……『水着弁慶』のその姿に、メディアは強い衝撃を受けていた。
 メディアの常識からすれば、この邪神の姿は理解の範疇の外である。何せ自分と同じ様なピチピチの競泳水着を、筋骨隆々と言っても良い男が着込んでいるのだから。色々パツパツだし、鼠径部の辺りはちょっと……だし。
 はっきり言って、目の毒以外の何者でもない絵面である。

「なんで、こんな……!?」

 そんな混乱した頭で、必死に考える。相手が何を考えているのか、どうしてそんな水着を着ているのかを。
 ……考えれば考える程、判らなくなる。
 なんだ、『理緑髪男の娘聖騎士』って。なんだ、それに『なる』って。
 そして結局、なんで女性用競泳水着を着ているのか。その辺りにはまるで触れられていないのだ。

「えぇぇ……?」

 メディアが思わず困惑の息を零すのも、無理はない事であった。

『──ぶはっ!? 死ぬかと思うた……あだだっ!』

 そんなメディアの視界の端で、何やら呻きながら立ち上がる邪神。
 どうやら思考を巡らしている間(放心していた、とも言う)に、なんやかんで邪神はあそこまで吹っ飛ばされていたらしい。

(いけない、いけない。今は集中、集中……!)

 その邪神の姿を見やり、メディアは己の頬を軽く叩いて意識を切り替える。
 そうだ、今は戦闘中。邪神を討ち祓い、この地の平和を取り戻す事が先決だ。

「──よしっ! 行くぞっ!」

 そうして気を引き締めれば、気合一声。メディアの脚が屋上を蹴り、駆ける。
 身体に違和感は、無い。競泳水着は実に動き易く、メディアの動きをサポートしてくれていた。

(……そういえば)

 瞬間、ふとメディアの頭に浮かぶ思考。
 メディアが着る水着は、競泳水着。薄手で肌にぴっちり張り付く、アスリート向けの水着である。
 ……そう。あの邪神の様に、着る者の体型が浮き出てしまう様な。

(うっ……!)

 それを意識した途端、メディアの頭に過る羞恥。
 今の自分の姿も、あんな風に見えているのだろうか。ぴっちりと浮き上がり、色々と判ってしまう状態になっているのだろうか。

(お、落ち着けー。これは運動用だから恥ずかしくない、恥ずかしくないんだ──!)

 そんな動揺を鎮める様に、努めて念じるメディア。
 ……その僅かな雑念が、遅れを生んだ。

『ふ、再び参られよ! 我が理想の、『男の娘聖騎士』よ!』

 再び響く、邪神の請願。
 その求めに応じる様に、再び空間が歪み……邪神を護る様に顕れ出たのは、緑髪の聖騎士であった。

「ちぃ──ええい!」

 顕れ出たその存在に、メディアは一瞬舌を打ち掛けて、止める。
 もし、あそこで雑念を浮かべずに殴り込めていたら。召喚させる暇も無く、邪神を殴り飛ばせていたかもしれない。
 だが、所詮それは『たられば』の話。起きてしまった事は、変えられないのだ。
 ならば、舌を打つよりも。このまま一気に、仕留めてしまうべき──!

「受けてみろ! ボクの秘奥義──!」

 軽快なステップと共に振るわれるのは、炎を纏う拳撃の連打。四連撃を浴びせれば確実に相手を打ち倒す、|【竜闘死連撃】《リュウトウシレンゲキ》である。
 一撃目、右のジャブ。騎士のガードの隙間に無理やり捩じ込み、ガードを崩す。
 二撃目、左のストレート。崩れたガードの穴を更に押し広げる。
 三撃目、右のアッパー。顎を狙い放ったその一撃が、騎士の頭を揺らして行動を封じる。
 四撃目、左のバックブロー。ふらつく相手の側頭部に、その一撃が──。

『やらせはせんわぁっ!』

 入る、その直前。割って入ったのは邪神が振るう竹竿だった。
 竹竿の狙いは……メディアの水着!

(しまっ──!)

 あの竹竿が水着に触れれば、なんやかんやで水着を剥かれてしまいかねない。
 メディアは武闘家で、猟兵だ。だが同時に、一国の姫でもある。
 仮にも一国の姫が、こんな公衆の面前で肌を曝け出してしまうなど……断じて許される事では無い。
 けれど、現実は非情だ。
 勝負を決めにいったメディアは、その一撃を躱せない。拳を引き戻す事は出来ず、防御する事も叶わない。
 このまま、水着を奪われてしまうのか──!

 ──ギィンッ!

 だが、しかし。最悪の未来は、訪れなかった。
 メディアの日頃の行いか、土壇場の所で救いの手が伸ばされたのだ。

「ハハハ。それ以上の狼藉は、赦しませんよ」

 朗々と響くその声は、頭上から。
 メディアが、邪神が、その視線をその声の方へと向ければ……。

「……えっ、なに?」
『何と、面妖な……!?』

 その反応は、似通った物であった。
 二人の視線の先を飛んでいたのは、|小芥子《こけし》の様な一体のゆるキャラ……では無く。着ぐるみを着込んだ一人の猟兵であった。
 名を、キョウジ・コケーシ(コケーシの後継者・f30177)。ロボットヘッドと呼ばれる種族の、猟兵である。
 キョウジもまた、ビルを駆け上ってきた猟兵であった。着ぐるみを着込み、堂々とビル内を闊歩して屋上へと進み、上空へと浮き上がっていた。
 ……なお、そんな彼も当然水着姿(ブーメランパンツ装備)である。
 だが、その水着の着せられ方は一風変わっていた。着ぐるみの上から水着を着せられる、そんな珍妙な姿であったのだ。
 恐らく、ロボットヘッドという種族の特徴がアレしたりコレしたりして、結界の認識がバグったりしたのかもしれないが……その真実は、定かではない。
 ──|閑話休題《話を戻して》。

「邪神『水着弁慶』。紳士的に、貴方の行いは見逃せません」

 ──ゆけ、こけし守護神!
 高らかにキョウジがその名を呼べば、応えるようにその場に顕れる何か。
 それは、紛うこと無き『こけし』であった。弱者を護るために力を振るう、こけしの守護神であった。
 先程メディアに振るわれた竹竿を弾いたのは、このこけし守護神。上空から戦況を見つめていたキョウジがメディアのピンチを救うべく、喚び出していたのだ。
 守護神に下された命令は、『女性陣の盾』となれという、ただ一つ。
 こけし守護神はその命令を愚直に護り、メディアの身(と水着)を見事に守ってみせたのだ。

「護りはこちらが。さぁ!」
「う、うんっ!」

 促す様に告げるキョウジの言葉を受け、メディアが改めて拳を構えて騎士へと向き直る。
 振るわれる拳が、一撃、二撃、三撃。先程とは違う組み立てが、騎士の身体へと次々に吸い込まれる。
 残されたのは、あと一撃。

『ぬうぅんっ!!』

 だが、やらせはしないと。再び閃く、邪神の竹竿。腰を痛めたはずだが、その閃きの鋭さは見事の一言である。
 しかし、その一閃も。

 ──ギッ、ギィン!!

 再びこけし守護神が弾き、メディアの身体へは触れさせない。
 しかも、その上で。

「とうっ──!」

 空を舞うキョウジ本人も、時折邪神に激しいチェックにあたる。
 吹き荒れる強風。そして衝撃。竹竿が激しくしなり、邪神が背負う籠に詰められた水着が零れ出る。

『ぬぅぅッ! 我の水着が……!』

 屋上に散る女性用水着の数々。邪神に生じる明らかな隙。
 その隙を見逃す程、メディアは甘くはない。

「やぁぁぁぁぁっ!!!」

 轟く咆哮。そして閃く拳撃。
 空間を切り裂く様な閃光の一撃が、|『想像から創造された麗しき理想の男の娘聖騎士』《どこかで見た気がする緑髪の男の娘グリモア猟兵》の身体を叩き……その存在を、無へと還す。
 メディアの秘奥義、その四撃目が入ったのだ。
 吹き飛ばされた騎士の身体が、崩壊して塵へと変わる。

『あぁっ! 我が理想が……おのれぇ、赦さヌ゛ッ゛!?』

 そんな消えゆく騎士の姿に、邪神が怒りの声をあげるが……やはり腰が痛むのか、最後まで言葉を発する事も出来ずに悶絶する。
 何とも締まらない形だが、邪神の余力は確かに削げたはず。そう信じたい所である。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルメリー・マレフィカールム
……あれは、あの時のオブリビオン? 目的も前と同じ……なら、私のすることも変わらない。
……やっぱり、あなたに恨みはないけど。巻き込まれる人が出る前に、倒させてもらう。

腰を痛めてるなら好都合。あの状態なら、物干し竿を手繰る動きも制限されるはず。
けど、相手はオブリビオン。油断せず不用意に近づくのは避けて、『死者の瞳』で[情報収集]をしながら、十分な隙を見つけたら一気に懐に踏み込むことにする。

そうして物干し竿の間合いの内側……ナイフの距離まで近づけたら、【幽刃】で急所を狙う。
[早業]のフェイントを交えて、避けても無理な姿勢になるように誘導する。そうすれば、もし攻撃が当たらなくても腰の痛みで行動不能に追い込めると思う。

【アドリブ・協力歓迎】





 怒りを顕わとしながらも、腰の痛みに悶絶する邪神。
 何とも締まらぬ情けないその姿を……ルメリーの光の薄い紅の瞳が、じっと注視していた。

(あの時と同じ、オブリビオン……)

 外見特徴は、あの時──二年ほど前の高級ホテルで遭遇した存在と瓜二つ。その目的も、前回と変わりは無いようだ。
 水着を千枚集めて、『理想の男の娘』に至る。
 男の語るその|野望《ユメ》は、やっぱりルメリーにはピンとは来ない。
 けれども、その目標果たそうとするその行動力だけは素敵な事だと、ルメリーは思う。

(でも、他の人を巻き込むのはダメ)

 しかし、それはあくまでも他人に迷惑を掛けない範囲での話である。
 どれだけ綺麗な夢を掲げようとも、他人を巻き込み踏み躙って良いはずが無いのだから。
 この邪神個人には、別段恨みを抱いている訳では無いけれど……。

「……巻き込まれる人が出る前に、斃させてもらう」

 |現在と未来《いまとあした》を生きる人々を護る、その為に。|過去からの侵略者《オブリビオン》は、討ち果たす。
 淡々とした表情のまま、ルメリーが一歩前へと進み出る。
 その胸には、猟兵としての矜持と使命感が燃え滾っていた。

『むぐっ、ぐ……! 吠えおったな、小娘!』

 そんなルメリーの姿に、苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべながら邪神が唸る。
 隆々とした筋肉、滲む覇気。対峙して感じ取れる気配も、前回のそれと非常に近い。
 けれど……。

(──やっぱり、『腰』を痛めてる)

 ルメリーの目は、相手のその瑕疵を見逃さない。
 素体の影響か、邪神の腰は非常に脆い。今も酷い痛みを感じているようで、重心の掛け方も腰を庇う様な形である。
 ……つまり、今。この邪神は、動きを大きく制限されているという事。ならばあの物干し竿を手繰る動きも、常より鈍いと見て良いだろう。

(でも、相手はオブリビオン)

 だが、しかし。そこで不用意に踏み込む様な事はしてはいけない。
 相手は、オブリビオン。猟兵と同じく、『生命の埒外』の存在である。常識をひっくり返す様な鬼手の一つや二つは、あるかもしれない。
 ここは、しっかりと見極めて……隙を、突くべき。

「……」
『ぐっ、ぬぅ……!』

 ルメリーと邪神。方や太腿のナイフホルダーに手を掛けて、方や物干し竿を構えながら。お互いがお互いを睨み、躙り寄る。
 じりじりと高まる緊張感。焦らす様な時間が、どれ程掛かっただろうか。

『──キェェェイッ!!』

 その空気に耐えきれず、先に動いたのは邪神であった。
 迸る気合。迫る物干し竿。狙われたのは、ルメリーが纏うホルターネックビキニの首紐部分か。
 鋭いその一撃は、下手な槍のそれを遥かに凌駕する威力を秘めている。下手に掠りでもしたら、風圧だけで水着を持っていかれてしまいかねない一撃だ。
 だが……。

(大丈夫、視えてる)

 その竿の全てが、ルメリーには視えていた。
 邪神の竿は、確かに疾い。だが、その一撃は万全の状態で放たれたソレとは程遠い一撃であった。
 恐らくは、腰の痛みの影響もあったのだろう。古強者には似付かわしくない、拙速で単調な一撃であったのだ。
 ……ルメリーは過去、万全に近い状態のこの邪神の竿を見切って躱している。
 その時と比べれば、この一撃を躱すことは……難しくはない!

『グゥ──ッ!』

 ホルターネックの首紐を狙ったその一撃をナイフで叩いて逸す。
 瞬間、聞こえたのは邪神の呻き。竿を叩かれた衝撃が伝わり、腰に響いたのだろうか。
 引き戻そうとする動きは、遅い。
 ──隙が、生じた。

「──見つけた」

 一歩、二歩。邪神の懐へと潜り込み、行き違い……擦違様に、白刃を振るう!

『ぐあっ!?』

 響く、邪神の悲鳴。吹き出す鮮血がコンクリートの床を濡らす。
 ルメリーが斬り裂いたのは、槍を突き出した事で無防備となった右脇腹だった。
 相手の状況を見極め、的確な一撃を見舞う。観察力に優れたルメリーらしい、見事な一撃である。

『おっ、がぁ……!』

 だが、ルメリーの一撃が与えた効果はそれだけに留まらない。
 脇腹を斬りつけられた事で、邪神は腰回りに余計に意識を向けざるを得なくなった。
 その結果、邪神は腰の痛みをより意識して……その動きを、より鈍らせる事に繋がる事になる。

「……やっぱり、あなたに恨みは無いけれど。倒させてもらう」

 背後で苦しむ邪神へと向き直り、淡々と呟くルメリー。
 その言葉は奇しくも、二年前にこの邪神に投げかけたものと同じ言葉であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・クイン
水着結界の元凶の邪神が出張ってきてるかもしれないし
クロエ(f19295)にお願いして一緒に退治しにきたわ

(ちらっと親友の水着を見て)風邪引く前にさっさと終わらせましょ!

邪神を見てためいき一つ、ぐるりと戦場である屋上を見渡してから、こっちも作戦立てるわよ

【ガラスのラビリンス】で敵を惑わせて誘き出して、追いかけっこといきましょう!
アタシもそんなに足は速くないけど腰ヤッてるなら逃げ切れるはず

ガラスの階段を登らせて、ギリギリのところでスロープに飛び込むわ
追いかけてきた邪神が飛び込んだら、出口に待つのはバットを構えたクロエって寸法よ!

あっ、あたしが先に飛び出てくるけど……
そこは見分けてくれるわよ、ね?


クロエ・アスティン
で、出遅れましたがアリス様(f24161)と邪神退治であります!
(こうやって水着邪神を倒して回れば、いつかアリス様の呪いも解けるはずであります)

とはいえ、あれである。
今度はどんなアレな水着を着せられてしまうのか心配ではあります。
ちらりと親友の着せられた水着をチェックしたりして……

HENTAIはアリス様と協力しておかえり願うであります!
滑り落ちてきたところを【ほーむらんであります!】でがつーんと打ち返します。
ふぅ、いい仕事をしたであります!
(ビキニとかきわどい水着だと大きく動いたせいで水着がずれたりするかもしれない)

※アドリブ・連携も歓迎





 戦いは、一方的な形で進んでいた。猟兵達の猛攻の前に、邪神は押し込まれるばかりであった。
 そんな戦場の片隅で……。

「ウァァァァ……」

 アリス・クイン(ビビり屋毒吐き姫・f24161)が、ハイライトが家出した目で膝を抱えて座り込んでいた。
 詳細は省くが、アリスはこの『水着結界』という非常に頭の悪い結界と縁深い猟兵である。その影響で生じた呪いのせいで、ここ数年来は夏の服装選択の自由を剥奪されてもいる猟兵である。
 そんな彼女が、この場に挑んだその理由。それは偏に、『水着結界からの決別』である。自身に呪いを掛けた元凶をブチ倒し、憎っくき呪いを解く為である。
 その為に、アリスは親友であるクロエ・アスティン(ハーフドワーフのロリ神官戦士・f19295)と共に過去数度の水着結界依頼に挑んでいるのだが……。

「コンカイハコッチナノネ……ウゥゥ……」

 その結果、アリスがこうして痴態を晒すのはほぼ恒例行事と化している感があった。
 さて、アリスが着せられた水着を解説しよう。
 アリスが着せられたのは、数多ある結界チョイス水着の内、二枠あるネタ枠の片割れ。デリケートゾーンを覆う貝殻と、それを繋ぐ紐で構成された、『貝殻ビキニ』と呼ばれるヤツであった。
 ……都合五度目の、水着結界案件。その中でアリスは二度ネタ枠の洗礼を浴びている訳だが、今回で三度目の体験となる。しかも今回のコレで、両ネタ枠のコンプリート実績も開放というおまけ付きだ。
 ここまで来ると、もうこの娘は|『水着結界の申し子』《ミス・水着結界》と呼んでも良いのでは無かろうか……そんな気がする、今日この頃である。

(か、掛ける言葉が見つからないであります……!)

 そんなしゃがみ込んで項垂れるアリスの姿に、クロエは掛ける言葉が見つからずに狼狽えるばかりである。
 クロエが着せられた水着は、俗に|『紐ビキニ』《タイサイド・ビキニ》と呼ばれるタイプのものだった。
 今年の水着コンテストで着たそれと非常に似通ったその水着であるが……その着心地を楽しむ余裕は、クロエには無かった。
 何せここで下手に喜んでしまえば、逆上した親友の手によりエライことになるだろう事を、クロエは過去の経験からよーく識っているからだ。

「あ、アリス様? とりあえず、ほら、邪神退治でありますから……!」

 とは言え、いつまでも狼狽えてばかりもいられない。
 邪神の苦悶の声を後ろに聞きながら、クロエがアリスを促せば……今もハイライトさんが帰ってこない瞳のまま、ゆっくりとアリスがその視線を邪神に向けて。

「──ハァァァァァァァァ~~~……」

 地の底から響くようなクソでか溜息を零し、ゆっくりと立ち上がる。
 過去の経験から、アリスにはよーく判っていた。この水着から開放されたいのであれば、あの邪神をヤるしか無いと。
 ぶっちゃけ、この状態から動きたくなど無いけれど。でも動かなければ、いつまで経ってもこのままなのだ。
 ならば、一秒でも早く。あの腐れHENTAI邪神をブチのめして、事態の収拾を図らねば。

「判ったわよ、やってやるわよ……クロエ!」
「了解、であります!」

 交わす言葉。アイコンタクトは、一瞬だけ。だがそれだけで、お互いが何を為すべきか……二人には、判る。
 だって二人は、『親友』なのだから!

「来なさい、【ガラスのラビリンス】──!」

 戦意を示す様に手を掲げたアリスが喚んだのは、自身に宿るアリス適合者としての力であった。
 戦場全体に張り巡らせる、ガラスの迷路。複雑に入り混じったその迷路の中心に──。

『……どういう、つもりだ』

 ──残されたのはアリスと、『水着弁慶』だけであった。
 そう。アリスは迷路の中で、邪神と一対一の状況を創り出したのだ。

「はっ、はははハンっ! アンタみたいなHENTAIなんざ、アタシ一人で充分だって言ってるのよ!」

 腰の痛みと受けた傷の痛みに呻きながらも、怪訝そうな視線を向けてくる邪神。そんな彼に向けて、アリスが吐き出すのは精一杯の挑発だ。
 正直、怖い。本質的にビビリなアリスであるから、こんな状況となればその声に震えも混じる。
 けれど、これは全て必要な事。そして勝算があっての事である。

『震えておるぞ、小娘。ならば希望通り、その水着を奪って進ぜようぞ!』

 そんなアリスの震えを看破し、呵々と嗤いながら邪神が動く。
 一瞬感じたのは、水着が引っ張られる様な感覚。邪神の願いが、水着を吸い込もうとしたのだろう。当然そんな願いに賛同する者など居ないから、その力は微々たる物であったが。
 だが、敵の行動はそれだけでは終わらない。本命はこちらと言わんばかりに、その手の竿竹を振り上げて……アリスへ向けて、突き出す様に振るう。

「──ひっ!?」

 空気を切り裂き迫るその一閃。
 だがアリスとて、それなりに(思い出したくない類のモノが多い)経験を重ねてきた猟兵だ。
 腰を痛め、また度重なるダメージを受け、全力を出しきれないその一撃ならば。躱すことは、難しくは無い。
 ……いや、だいぶ話を盛った。悲鳴が出たしかなりギリギリでの回避であった。

「……はっ、フンっ! 遅いわよ、HENTAI!」

 まぁともあれ、躱せた事は間違いない。
 冷や汗混じりのドヤ顔を浮かべつつ、次にアリスがしたことは……。

「悔しかったら、追いついてみなさい!」

 ……全力での逃走であった。

『我を虚仮にするか、小娘! 乗ってやろうではないか!』

 踵を返して駆け出すアリス。その後姿を追って、邪神も駆ける。
 ガラスの迷宮に響く、ドタバタとした足音。二人の距離は、縮まりそうで縮まらない。
 アリスは元来、運動が得意な方ではない。普段であれば、逃げ切る事など出来ずに直ぐに捕まり水着(という名のナニカ)を奪われた事だろう。
 けれど今回に限って言えば、相手も状況が悪くない。腰をヤッて、本来なら動くのにも難儀するような状況なのだ。
 そんな状態の敵を相手とすれば……幾ら運動が苦手であっても、逃げる事は出来るはず。

「ぜーっ、はーっ……!」

 そう信じたアリスは駆けて、駆けて。息を大いに乱しながら迷宮内のガラスの階段を駆け上り、遂に迷宮の出口へと辿り着く。
 そのまま、脱出用のスロープに飛び込んで、迷宮を飛び出せば。

「──クロエぇっ! あとは任せたわぁ!」

 何とかそれだけ言葉を紡いで、その場にバタリと倒れ込む。

(任されました、であります!)

 そんな親友に、頷きを返して。クロエが愛用の戦鎚を振り被る。
 睨むのは、迷宮の出口。アリスを追って来たヤツが、飛び出てくる瞬間を待つ。
 ……その瞬間は、そう待つこと無く訪れた。

『ぬぉおおおおおっ!?』

 転げ落ちる様に飛び出てきたのは、邪神であった。
 どうやら階段とスロープのアップダウンで、バランスを崩してしまったようである。
 つまり、相手は身を守る事が出来ない状態だ。クロエとしては、まさに千載一遇の好機であった。

「全力で、叩くでありますっ!!」

 迫りくる邪神の身体に向けて、振り被った戦鎚を叩き込む。
 腰を撚る様に振るわれたその軌道は、若干アッパースイング気味。奇しくも野球で打者がバットを振るうのに似た軌道であった。
 そんな打棒が、直撃すればどうなるだろうか?

『なっ──ごばぁっ!?』

 めきっ、ごぎぎぎ……ッ!
 鈍く響く音と手応えを、クロエは感じる。
 そして同時に邪神の悲鳴が響き、戦鎚から伝わる重みが消える。
 邪神の身体が、軽やかに宙を舞って吹き飛ばされて……コンクリートの床へと、叩きつけられたのだ。

「HENTAIには、おかえり願うであります──!」

 ぴくりぴくりと震える邪神。その姿を見下ろし、クロエが見得を切る。

「……っ!? く、クロエっ! 前っ! 前っ!!」

 そんな決めポーズのクロエの様子に、何かに気づいたアリスが叫べば……次の瞬間、クロエの悲鳴がビルの屋上に響くだろう。
 アリスのその指摘が一体何を指していたのかは、クロエの名誉の為にも触れない方が良いだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セフィリカ・ランブレイ
鈴音ちゃんと

大きなピンチだ
『そこまでの相手?』

じゃシェル姉戦ってよ
『絶対に嫌よ出た瞬間水着じゃない』

そう!
この姿で剣を振ればぷりんっ☆とかぽろん♪(漫画的表現の擬音)が発生する

シェル姉はアテにならないし…
『ご自慢のマシンでなんとかしたら?』
絶対に嫌
格好いいゴーレムやキャバリアの水着姿とか解釈違い!

つまり鈴音ちゃんに全てを委ねたいんだけど
こう、映えるアクションで激しく動いて揺らして頂ければ

私は動かないように魔法で援護するよ

ッ!鈴音ちゃん、まさか強風を味方につけて?!
わーっ、精神集中が乱れて強水圧の水鉄砲が鈴音ちゃんにー(棒

死なば諸共っていい言葉だよね
一人で夏のメモリーには、ならないッ!!


緋奈森・鈴音
セフィリカとー。
そんなに危ない相手なの!?
シェル姉の手も借りないと!
お願いシェル姉!

えっ?
おねーさん?
おねーさんもあんまり動きたくないからなー。危険だし。
近付かれないよう自分の周囲を風の魔力で防御して、巨大手甲の彼岸花を炎の魔力で強化して操って攻撃ー。
上から叩き潰すように攻撃して避けても受け止めても腰にダメージが行くように!

あっ、動かなくても風が凄く強いから、セフィリカの内部圧力+限界ギリギリホールド力だとすごく危険じゃ……おねーさんの心のメモリーに最高の一瞬が保存されました。
あれ? なんでおねーさんの方を素敵な笑顔で見つめて……?
「自然現象の所為でおねーさん、自分を守ってただけなのに!?」





 猟兵達の猛攻の前に、為す術もなくズタボロにされる邪神。
 今も小柄な少女猟兵の戦鎚の直撃を受け、吹き飛ばされて……地へと堕ち、ピクピクと痙攣する姿を晒していた。
 最早、虫の息と。そう呼んでも差し付けはない状態だろう。

「……大きなピンチだ」

 だがそんな敵の姿を眺めながら、セフィリカの口から零れ出たのは彼女らしくない弱気な言葉であった。
 セフィリカは、有り体に言って天才である。そしてそれを自負する女である。
 そんな彼女の口から、こんな言葉が溢れるのには理由がある。

(この水着で下手に剣でも振るおうものなら、|『ぷりんっ☆』とか『ぽろんっ♪』《漫画的な擬音表現》が発生するからなー……!)

 その理由とは、今セフィリカが着せられている水着、眼帯ビキニにあった。
 先にも触れた通り、眼帯ビキニはホールド力が非常に弱い水着である。
 そんな水着を着た状態で、激しい戦闘行動を行えばどうなるか。そんな事は、小学生にだって判りそうなものだ。故にセフィリカとしては、この姿での白兵戦は断じてノー! の構えであった。
 ……他人のサービスショットは見たいけど、自分のサービスショットは見せたくない。
 セフィリカという女は、そんな自分本位なところのある女であった。

「ねぇシェル姉、戦ってよー」
「! そうね、危ない相手なら、シェル姉の手も借りないと! お願いシェル姉!」

 とは言え、戦う為の手なら幾つかある。
 その一つである、腰に佩く|姉代わりの魔剣《魔剣シェルファ》へとセフィリカが声を掛ければ、その意図を瞬時に理解した鈴音も乗っかるように言葉を紡ぐ。

『絶対に嫌よ。出た瞬間水着じゃない』

 だが二人のその懇願に対し、魔剣の反応は取り付く島もない様な物だった。
 魔剣もかつて、水着結界の犠牲になった経験がある。
 その時の事を鑑みれば……ここで現界した場合どうなるかは、容易に想像が出来ようと言うものである。
 セフィリカが柄に手を掛けてはみるが、魔剣から伝わるのは断固とした意思。絶対に出ないという、鋼の様な意思が伝わるのみである。
 これはもう、今回の御出座は諦めたほうが良さそうである。

「はー……もう、シェル姉は肝心な時にアテにならないし」
『うっさいわね。ご自慢のマシンでなんとかしたら?』

 とは言えセフィリカの拗ねたような呟きに対して即座にツッコミを入れつつアドバイスもする辺り、保護者としての務めは果たすつもりではあるようだが。

「は? 絶対にヤだけど???」

 しかしそんな姉のアドバイスを、今度はセフィリカが真顔で拒絶する。
 セフィリカが所有するゴーレム、そしてキャバリアは、彼女の自慢の種である。
 そんな私のカッコいい機体に、こんなトンチキ結界製の水着を着せる?
 ──解釈違い以外の、何者でも無い。

「……もうこうなったら、鈴音ちゃんに全てを委ねるしか!」
「えっ、おねーさん?」

 そんなこんなで、万策尽きたセフィリカが鈴音に全てを丸投げる。
 唐突なその暴挙に、鈴音は僅かに目を見開いて……。

「おねーさんも、あんまり動きたく無いんだけどなー……」

 投げつけられたボールを、受け流す。
 ……いやまぁ、鈴音の『動きたくない』という言い分ももっともだ。セフィリカよりはナンボかマシとは言え、鈴音が着せられているマイクロビキニだって大概アレなのだから。

「えぇーっ!? 私としてはこう、鈴音ちゃんには映えるアクションで激しく動いて揺らして「セフィリカ?」はい……」

 そんな鈴音の主張を受けて、セフィリカが一瞬欲望を暴走させかけるが……その暴走は冷水を浴びせられて強制冷却である。
 何というか……『雉も鳴かずば撃たれまい』という言葉の通りだなぁ、とかなんとか。

『……で、結局どうするの?』

 ともあれ、このままわちゃわちゃとしていても話は進まぬのは事実。軌道修正を図る様に魔剣が問えば……。

「んー、そうねー」

 答え、動いたのは鈴音であった。
 鼻歌を響かせながら印を切れば、鈴音の身に宿る魔力が高まり溢れ出る。
 そうして、高まるその魔力で……。

「動きたく無いなら、それなりの戦い方をするわねー」

 自身と敵とを遮る、結界を構築する。

(ッ! なるほど。鈴音ちゃん、強風を味方につけて!)

 具現化する結界。そこに流れる魔力を見て、セフィリカは鈴音の考えを把握する。
 結界に込められたのは、『風』の属性だ。
 この地は、高層ビルの屋上。立地上、強い風が吹くことの多い場所である。
 鈴音はその吹き荒れる風の力を取り込んで、結界の強度を増そうと考えたのだ。

 ──ガッ! ガガ……!

 瞬間、構築された結界に響く衝撃音。
 何かがぶつかったというような形跡は見られないが……二人には、判るだろう。
 今の音は、邪神が紡いだ水着を求める真言が結界にぶつかり阻まれた音であると。

「──お願い、彼岸花」

 反撃とばかりに、鈴音が喚んだのは巨大な手甲。花弁のように花開いた指先を持つそれは、鈴音の意思を受け独りでに宙を駆け、敵を穿つ武器である。
 そんな武器が、鈴音の意思を受けて上空高くへ舞い上がり……そのまま邪神を叩き潰す勢いで、圧し掛かる!

『~~~~~っ!!!』

 轟く風の圧に阻まれ、邪神の苦悶は聞こえない。だが手甲の圧を受け歯を食いしばり耐えるその様子を見るに……余力の方は、もう殆ど残されていないようである。
 このままの調子で圧し続ければ……!

「……きゃっ!?」
「セフィリカ、どうかし、た……?」

 瞬間、鈴音の耳に聞こえたのはセフィリカの悲鳴。
 絹を裂く様なその声に、慌てて鈴音が視線を向ければ……そこには水着が【自主規制】して【自主規制】な事になったセフィリカの姿がっ!!

(……あー。内部圧力で限界ギリギリのホールド力だったのに、風の圧が加わったせいでー……)

 その原因を、鈴音は即座に理解する。
 そう、全ては鈴音の推察の通りだった。
 只でさえホールド力の怪しいセフィリカの水着は、彼女自身の恵まれた身体故にデフォで相当危ない状態であった。
 そんな状態で、水着に風の結界の圧が更に追加され……結果、セフィリカの水着は【自主規制】して、セフィリカは【自主規制】してしまう事となってしまったのだ。

(まー、なんにせよ。おねーさんの心のメモリーに最高の一瞬が保存されたわ!)

 その『最高の一瞬』が、果たしてどんなものだったのかは各自の想像におまかせするとして。

「──ふっ、フフフ……」

 唐突に生じたハプニングに、セフィリカが浮かべたのは『笑顔』であった。
 だが、それは笑顔であって笑顔では無い。目元の笑っていない、獲物を狙う肉食獣のソレであった。

「あ、あれ? なんでおねーさんの方を素敵な笑顔で見つめて……」

 その笑顔を前に、僅かに声を震わせて鈴音が尋ねるが、答えが返ってくることは無い。
 目元の笑っていないその笑顔のまま、セフィリカはその身の魔力を練り上げて……。

「──わぁーっとぉ、精神集中が乱れて強水圧の水鉄砲が鈴音ちゃんにぃー!」

 あからさまな棒読みと共に、水精霊の力を凝縮した強烈な水鉄砲をぶっ放した。

「わぷっ!? ちょっ、セフィリカーっ!」
「死ねば諸共っていい言葉だよね! 一人で夏のメモリーには、ならないッ!!」

 強水圧と言うだけあって、その威力は中々の物。直撃を受けた鈴音の肌は水に滴り、その肌を覆うマイクロビキニが【自主規制】。その様子を見て、我が意成れりとばかりにセフィリカが吼える。
 ……こうなってしまっては、邪神退治どころでは無い。セフィリカと鈴音による、仁義なき戦いの幕開けだ。

『……はぁぁぁぁぁぁぁぁ』

 きゃいきゃいと響く、二人の楽しげ(?)な声。
 その渦中で、保護者である|意思持つ魔剣《シェルファ》が心の底から吐いたクソでか溜息は、誰の耳にも届かなかった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ラピーヌ・シュドウエスト
●SPD

いやはや、またコメントに困るね
水着手袋フェチの邪神とはどんな物か興味があったけど…自爆ったぁザマァねぇな!
おっと、失礼
ついうっかり、はしたない言葉が出て…ハハハハッ!
我慢できるわけねぇだろ、このブザマな姿を見せられてはよぉ!

仕切り直しだぁ?
ハッ、ゴメンだね
卑怯だの卑劣だのと言われても褒め言葉には過ぎないさ
このプレデトリー・ラビット様にはなぁ?

自分が動けないからと召喚してきたね
そんなの予想の範疇さ
ビル風が吹き荒ぼうとも物さえあれば【目立たない】糸は張れる
そこに追い込めばご覧の通り
『Twine Round』で【捕縛】さ
さて、そう蹲っていては辛かろう
ボクの糸で体全体を『整体』して差し上げよう





 なにやら身内でやり合い始めた猟兵達の事は置いておいて。
 腰を痛めての登場という出オチみたいな登場をした邪神は、既に満身創痍であった。全身に浅くない傷を負い、消耗の度合いは明らかであった。

「いやはや。コメントに困るね」

 そんな邪神の姿を眺めて、ラピーヌがボヤくように言葉を零す。
 ラピーヌの表情には、呆れの色が色濃く浮かんでいた。

「水着手袋フェチの邪神とは、どんなものか興味があったけど──」

 ……だが、見る人が見れば判るだろう。彼女のその表情は、表向きの物だけであると。
 ラピーヌが抱えた、真の感情の名。それは──。

「──自爆ったらザマァねぇなぁっ!」

 ──『侮蔑』であった。
 とある猟兵に仕える|新人従僕《ニュービー・フットマン》。それがラピーヌの肩書だが、それはあくまでも表の顔。彼女には、裏の顔がある。
 その裏の顔とは、ヒーローと敵対する存在。『プレデトリー・ラビット』を名乗る慇懃無礼なヴィランとしての顔が、ラピーヌの本性である。

「おっと、失礼。ついうっかりはしたない言葉が出て……ハッ! ハハハハッ!!」

 そんな一度飛び出た本性を引っ込めようとはしてみるが、すぐに諦めて開き直る。

「我慢できるわけねぇだろ! このブザマな姿を見せられてはよぉ!」

 だって、そうだろう?
 こんなおバカな結界を張り巡らせ、多くの一般人を水着姿として。
 その目的は、水着を千着集めて『理想の男の娘』になりたいときた。
 そんな、手段も目的も意味が判らないトンチキ野郎だというのに、選んだ依代のせいで|腰を痛める《ぎっくり腰》とかいう出オチまで用意してくるとは。
 嘲笑うのを我慢するなんて、不可能じゃないか!

『ぐっ、ぅぅ……我を、嘲笑うか! 全力さえ出せれば、即全裸に剥いてやるものを……』

 響くラピーヌの哄笑。その声を聞き、悔しげに邪神が呻く。
 邪神には、自信があった。万全の状態で正々堂々と勝負をすれば、負けるはずが無いという自負が。
 故に、彼は猟兵達に向けて恨みを向ける。『正々堂々と戦わぬ卑怯者』と、怒りを向ける。

「ハッ! 『卑怯者』だとでも言いたそうだなぁ? だが、お生憎様だ!」

 そんな邪神の視線を浴びて……ラピーヌの哄笑は、更に高まる。
 既に触れたが、ラピーヌはヴィランである。今の主人であるヒーローに破れ、その保護観察下に置かれはしたが、その本質はヴィランのままである。
 故に、その言葉は……卑怯卑劣と謗るその言葉は。

「この『プレデトリー・ラビット』様には、褒め言葉に過ぎないのさ!」

 彼女を飾る勲章代わり以外には、成り得ぬ言葉である。

『ぐっ、ぐぐぐぐぅぅぅ! 騎士殿! 我が理想の、騎士殿よ!!』

 止まらぬラピーヌの哄笑に、万策尽きたと言わんばかりに邪神が唸るが……そこで諦めるのであれば、邪神などと呼ばれる存在とは成り得ない。
 往生際悪く邪神が喚び出すのは、既に二度打ち払われた彼の理想の騎士の幻影だ。
 ……だが、しかし。

『……騎士殿? 騎士殿!! 何故だ、何故応えてくれぬのだ!』

 その喚び声に応える者は、現れない。喚び声は虚しくビル風に呑まれるばかりである。
 ……召喚術とは、得てして扱いの難しい術である。術者の制御能力や体力精神力の余裕に大きくその出来を左右され、更に喚び出される存在の格でもその精度が左右される術であるからだ。
 既に二度、邪神は騎士の幻影を喚び出し、その都度討ち倒されていた。召喚される存在は大きく疲弊し、術者である邪神の側も度重なる猛攻で既に虫の息である。
 そんな状態で、他者を喚び出してその行動を制御など……出来る筈が無いのだ。

「くっ、ハハハハッ!!! 此処に来て、一番の笑いどころを見せてくれるとはなぁ!」

 虚しく声を響かせ続ける邪神のその様子に、ラピーヌの嘲笑は止まらない。
 元から無様な振る舞いではあったが、まさか更にその上を見せてくれるとはと、大いに愉しげである。
 ……が、いつまでも遊んでは居られない。サクッと片を付けて『表の仕事』に戻らなければ、上役にお小言を頂くことになりかねないのだ。

「……くくくっ。さて、そう蹲っては辛かろう?」

 くつくつと嗤うラピーヌが、その腕を振るえば……閃く白線が邪神の身体に絡みつく。
 それは、先程も使った鋼糸。|裏道《バックヤード》への通用扉を無力化した、鋼糸であった。

「ボクの糸で、体全体を『整体』してあげよう──!」

 邪神へと絡みついたその糸を、指を手繰って操作すれば。

 ──グキッ! ボキキ……ッ!!

 響くのは、小気味いい……と言うには些か物騒が過ぎる音。邪神の全身の身体が鋼糸により強制的に締め上げられ、全身の骨が悲鳴を上げているのだ。
 そして、その悲鳴はやがて限界を迎え──。

 ──バキィィィィッ!

 破滅を知らせる様な、音へと変わる。
 それは、鋼糸の圧に邪神の骨が敗れた証左。全身の骨が折られ、粉砕された音である。
 邪神はどうなったかとその顔を覗いてみれば、白目を剥き泡を吹いて意識を喪っていた。
 そしてこの一撃が、致命傷となった。

「いやはや、感謝したまえよ……っと、もう聞こえないか」

 慇懃な態度を崩さぬままに言葉を紡ぐラピーヌのその足元で、邪神がその全身を塵へと変えて消えていく。
 大志を抱き、その成就を果たさんと目論んだ邪神『水着弁慶』。その再臨は、こうして阻まれたのだった。

 ……だが猟兵達の頭には、達成感は無かった。
 一同の頭にあったのは、『早く結界の力から開放されないか』という、徒労感に似た何かであった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『ストレス発散で狂気を拭い去る』

POW   :    スポーツや大食いなどで、ストレス発散

SPD   :    ショッピングやゲームなどで、ストレス発散

WIZ   :    読書や映画鑑賞などで、ストレス発散

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




 都内の高層複合商業ビルに降り立った邪神。そして彼の力で生じた、『水着結界』案件は、猟兵達の活躍により終わりを迎えた。
 邪神は討たれ、『骸の海』へと叩き返されたのだ。

 ──カッ!

 そうして邪神の残滓が完全に消えれば、結界の力も無に帰る。
 光に包まれる猟兵達の身体。その光が収まれば、一同の衣服は常のそれへと戻っている事だろう。
 ……ともあれ、これで依頼は終了。後はそれぞれの暮らしへ帰るのみ……。

 ──はぁ。

 瞬間、誰かの口から零れ出る溜息。
 その息を聞けば、猟兵達もそれぞれに自身の体に疲労が刻まれた事を意識する。

 邪神との戦いは、狂気との戦いでもある。特に今回のようなアレなタイプの邪神を相手とすれば、身体を蝕む狂気の量は常のソレとは比較にならないだろう。
 そんな狂気を祓うのに有効な手段は、『日常を謳歌』する事である。
 幸い、この地は多くの施設を抱える複合商業ビル。猟兵達が求めるような施設や店舗は、探せば見つかる事だろう。

 さて、どんな時間を過ごそうか。
 一仕事を終えた猟兵達の癒やしの時間が、始まろうとしていた。

 ====================

●第三章、補足

 第三章は、日常章。
 戦闘後のちょっとしたお楽しみの時間です。

 舞台となるのは、猟兵達が踏破した高層ビル。
 低層階はショッピングモール、中層から高層階はアミューズメント設備や飲食店がテナントを構える、複合商業ビルとなります。

 時刻は夕方過ぎ。
 巻き込まれた一般人や従業員は、グリモア猟兵や現地組織の面々が記憶処置を始めとした各種の処置を行った為、日常の通りに行動しています。
 皆さんもお気兼ねなく、時間を過ごして頂ければと思います。

 出来る事は、フラグメントの内容を参考に。
 またそれ以外でも、やりたいことがあればプレイングにどうぞ。
 但し、公序良俗に反する行為は描写出来ませんので、ご了承ください。

 なお事件の経過観察の為、三章ではヴィクトリアも待機しています。
 特にお声掛けが掛からなければ、現地組織の面々と事後処理に当たっております。
 もし何か声を掛けたい事がある方がいらっしゃいましたら、ご遠慮なくどうぞ。

 事件が終わり、日常を取り戻し始めた高層ビル。
 狂気に冒されかけた猟兵達は、日常に何を求めるか。
 皆さんの楽しいプレイング、お待ちしております!

 ====================
祓崎・千早
何はともあれ、無事邪神の撃破完了ね。
さてと、屋上には『機神兵』に乗って直接来たから高層ビル内を見てないのよね。
せっかくだから機神兵はこのまま屋上に置いてちょっと覗いていこうかな。

ここは、ショッピングモールかぁ。色々売ってるわね。
…水着も売ってる、私が着たやつにそっくりなの。クリスクロス・ビキニね。
ここに来た時はいきなり水着姿に変わって意味が分からなかったけど、水着自体は結構可愛かったのよね。
夏は終わっちゃったけどせっかくだから買っていこうかな。

ショッピングモールを巡って水着の他にも色々買っちゃった♪
それじゃ、そろそろ帰ろっかな。
(プロペラユニットを展開し屋上を発進する機神兵。)


【アドリブ歓迎】





「ふぅー……何はともあれ、邪神の撃破完了ね」

 対邪神決戦兵器『機神兵』から降りて、千早がぐっと背を伸ばす。
 何だかんだとあったが、千早の言う通りに邪神は撃破された。猟兵達の本来の務めは、果たされたのだ。

「さて、と……」

 だが、だからと言って即座に日常に戻るのもどうかと言った所である。
 邪神対策の専門家である千早は、識っている。邪神と相対する者は、知らずその身を邪神の狂気に冒されている事を。その狂気が閾値を超えれば、ヒトは容易くその意識を狂わされてしまう事を。
 そんな狂気を拭い去る特効薬。それは、日常を謳歌する事だ。
 その為の手段は、問われない。
 例えば、ショッピング。例えば、アクティビティ。
 とにかく日常を満喫し、楽しむ事。それこそが、邪神の狂気を拭い去る為に必要な事なのだ。
 お誂え向きにこのビルには、多くの施設が入っている。日常を楽しむのに、不足は無いだろう。

(私、『機神兵』で直接来たから、ビル内を見てないのよね)

 だが千早は、ビルの中を見ていない。外部から直接戦場に乗り込んできたからだ。
 話に聞くに、このビルは低層はショッピングモール、中層から高層は各種アミューズメント施設やレストランなどの飲食店がテナントを構える複合商業施設なのだという。
 ……これはちょっと、直接見てみないことには判断できないだろう。

「せっかくだし。ちょっと、覗いていこうかしら?」

 屋上に一般人が立ち入る事など、そうはない。少しの間、愛機を駐機しておいても問題はないだろう。
 どこかそわそわとした様子で、千早はビル内へと降りていき……。

 ………

 ……

 …

「ここは、ショッピングモールかぁ」

 辿り着いたのは、ビルの低層。多くのブティックが軒を並べる、ショッピングモールエリアだった。
 ……従業員や来客者の様子に、妙な所は見られない。どうやらその辺りの処置は、現地組織の面々が頑張ってくれたようである。

「色々売ってるわね」

 そんな一般人の様子に安堵の息を漏らしつつ、つらつらと見て回る。
 時節のせいか、各店舗が多く取り扱うのは秋冬物が中心だ。
 今年のトレンドを抑えた商品の数々が、千早の目を楽しませるが……。

「……ん?」

 そんな千早の目が、止まる。
 千早が目を留めたのは、多くの水着が並ぶ専門店。その数あるマネキンの内の一体に着せられた、一着の水着だった。
 誘われる様にふらふらと店に足を踏み入れて、マネキンの前に立つ。

(これ、私が着せられていたのにそっくり……)

 その水着が着せられていたのは、クリスクロス・ビキニ。千早が結界の力で着せられた水着と、良く似た水着であった。
 着せられたあの水着を、千早は割りと気に入っていた。
 いきなり水着に着せ替えられた事は、正直今でも意味が判らない。けれど、水着自体は結構可愛いじゃないかと思っていたくらいだ。
 ……そう。水着それ自体に、罪は無いのだ。

「……せっかくだから、買っていこうかな」

 夏はもう、終わる。水着を着る様な事も、しばらくは無いかもしれない。
 けれどきっと、これも何かの縁。こんな時期だからこそ巡り合ったこの水着をお迎えするのも、悪くはないだろう。
 そっと撫でる様に水着に手を伸ばし……千早は、店員を呼んだ。

 …

 ……

 ………

「──ふふっ。色々買っちゃった♪」

 それから、暫しの時間が経って。千早の姿は、愛機のコクピットの中にあった。
 シートに腰掛け、機体を起動する。僅かに揺れる機体の振動を受け、買い物袋の数々がガサガサと音を立てて揺れる。どうやらあの水着以外にも、色々と良い物と出逢えたようである。

「それじゃ、そろそろ帰ろっかな」

 ゆっくりと立ち上がる『機神兵』。その背に展開されたプロペラユニットが唸りを上げて起動すれば……機体はゆっくりと宙へと舞い上がる。
 機体を操る千早の表情、綻び緩む。
 その表情はどこからどう見ても、年頃の少女の面影であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

緋奈森・鈴音
セフィリカと!

一仕事終えたのでフードコートでドリンク片手にテーブルにだらーっと。
運動したしお腹空いたし疲れたしー。
水着結界おそるべし……

セフィリカ、なんでそんなに楽しそうなの?
眼帯ブラバーストアウト事件がショック過ぎた?
……あっ、そうじゃないのね……って、いつの間にこんなに!?
おねーさんのカットもなんでそんなにあるの!?
悲しいけど思い出だし、その比較的大人しめのデータだけコピーしてもらおう……。(送ってもらう)

ヴィクトリア可愛い……そうねー。趣があるわねー。
後ろから覗かれる谷間も趣が有るのかしら?

……あれ?
このデータって背景のセフィリカだけ拡大するとものすごく……(そっと静かにデータを保存)


セフィリカ・ランブレイ
鈴音ちゃんと

お疲れさま!
フードコートでジャンクフード片手に余韻に浸る
お城勤めはこういう食べ物が恋しくなる身体に良くないカロリーの味!

(食べつつモバイル端末を弄る)

あの邪神はよく働いてくれたよ我が計画の糧として……!
最後に笑うのはエルフ様よ
水着の皆の姿を集めた写真がたっぷりと
ほら鈴音ちゃんのいい感じのカットも残ってる

ドローンが死ぬ前にクラウドに映像データは送ってくれてるね
『アンタ暇なの?』

ほら鈴音ちゃん、リリアのこんなカットもあるよ
上から覗く谷間って趣があるよね
このマスターデータが死なない限りメモリーは永遠よ!
自分の分はまあいい感じに編集をと……

『所で気配察知を忘れてるけど後ろは御覧になった?』





「鈴音ちゃん、お疲れ様ー!」
「はーい、おつかれさまー」

 低層階、ショッピングモール。その一角に設けられたフードコートに、セフィリカと鈴音がいた。
 ドリンクを片手にだらんと机に凭れる鈴音。その様子は、見るからに消耗している様子である。
 ……事実、鈴音は消耗していた。マイクロビキニ姿でビルを踏破し、屋上では高水圧を浴びながらの仁義なき戦い……消耗しない方がおかしいだろう。

「運動したしお腹空いたし疲れたしー。水着結界、恐るべし……」

 それもこれも、全ては水着結界のせいである。
 直接的に人命に影響を与える事は無いとは言え、そのトンチキ具合で多くの人を狂わせる。
 その力の、何と恐ろしい事か……。

「んぐんぐ……ぷはっ!」

 そんなたれ鈴音を横目に、セフィリカは健啖であった。
 彼女の前に置かれたのは、フードコートで買い求めた食事の数々。いわゆる、ジャンクフードの類であった。
 最近のセフィリカは、郷里である母国で生活をしている。
 王族、姫であるセフィリカは、国の政治を差配する立場であるのだ。
 故に、普段の食事は豪華だが……だがそれだけでは、心は満たされない。
 ヒトというのは不思議な物で。時に贅を尽くした豪華な食事などよりも、健康に悪いと判っていてもカロリーな味を求めてしまう生き物なのだ。

「……セフィリカ、よくそんなに食べられるわねー?」
「んっ? まーね?」

 そんなセフィリカの様子に僅かに引き気味な鈴音の問いに、セフィリカから明確な答えは返らない。忙しなくカロリーなお味を補給しつつ、何やら手元の端末をイジり続けている。
 その様子に、何やら不穏な空気を感じて。

「セフィリカ、なんでそんなに楽しそうなの……はっ!?」

 鈴音がセフィリカに重ねて問うが、直ぐに何かに気づいたように目を見開く。
 セフィリカと鈴音との間で行われた、仁義なき戦い。そのキッカケとなったのは、セフィリカの眼帯ビキニが【自主規制】したからである。
 まさか、その出来事がショック過ぎた? 心の均衡を崩して、笑うことしか出来なくなった……?

「や、そんな事は無いんだけど」
「あっ、そうじゃないのね? ……なら、どうして?」

 そんな鈴音の推論は、セフィリカ自身の口から否定された。
 他人のサービスショットは見たいけど、自分のサービスショットは見せたくない。セフィリカとは、そんな自己本位な女である。
 だが、それはそれ。起こってしまった事は仕方ないと、セフィリカはそう割り切りが出来る女でもある。
 だから、水着が【自主規制】してしまった事は仕方ない。その損失の分の収穫を得て差し引きをプラスと出来れば、それで良いのだ。

「ふふっ……ふふふっ」

 零れ出るセフィリカの含み笑い。その視線は、手元の端末に注がれていた。

(あの邪神は、水着結界は良く働いてくれたよ。我が計画の糧としてね……!)

 端末に映されるのは、水着姿の美女美少女の数々。今回の務めに挑んだ猟兵達の、艶姿であった。
 収集されたそれらは、まさに絶品。稀代の美術品と呼んでも差し支えのない物ばかりである。
 これだけの物を、収拾出来たのだ。最後に笑うのは、やはりエルフ様なのだ。

「セフィリカ? って、うわぁ……」

 そんなセフィリカの動作を不審に思った鈴音が端末を覗き込み、声をあげる。
 撮影をしていたのは、知っていた。それが目的では無いと嘯きながら、実際には撮影もしてるんだろうなー、とは思ってた。
 けれど、まさかこれだけの数をとは……。

「……って、おねーさんのカットもこんなに!?」

 だがその驚きはそれだけに留まらず、更に襲い掛かる。
 並ぶ艶姿の中に、自身の姿が多く並んでいたからだ。

「ふふふ。バレてしまっちゃあ仕方ない。ほら鈴音ちゃん、いい感じのカットも残ってるよぉ?」
『アンタ、暇なの?』

 鈴音のその反応、セフィリカは悪びれない。
 むしろ堂々と鈴音のカットを抽出して見せていくその姿勢に、|セフィリカが姉と慕う意志持つ魔剣《魔剣シェルファ》の呆れ声が響く。

「せ、セフィリカ? さっき消して……」
「や、ドローンが死ぬ前にクラウドにデータ送ってくれてたみたいでね?」
「セフィリカ?」
「ア、ハイ」

 そんな魔剣のツッコミは置いておいて。震える声で問えば、帰ってきたセフィリカの答えに思わず真顔となる鈴音。スンッ……としたその顔には、流石のセフィリカも冷や汗である。

(ま、まぁマスターデータが死なない限りはメモリーは永遠だけどね!)

 だが、その心の内ではペロッと舌を出す。
 この端末のデータがいくら消えても、クラウドに逃したマスターデータが無事なら取り返しは効くのだ。
 データの分散保管は基本。それが重要であれば、尚更だ。
 セフィリカにとってこのデータは、まさにそういった類のデータという扱いであった。

「……おっ。ほら鈴音ちゃん。リリアのこんなカットもあるよ?」
「あら、ホント。可愛いわー」

 そんな内心を悟られまいと、誤魔化す様にセフィリカが並べたのは……一行をこの場に送り込んだグリモア猟兵のデータだった。
 四方八方から彼女の姿を捉えたその映像は、普段見れない様な角度からの物も網羅している。
 その中でも、特に……。

「……この、上から覗く谷間! 趣があるよねー」
「そうねー。趣、あるわねー」

 彼女の頭上から見下ろした、その一枚だった。
 普段肌を晒さない服装の多い彼女が、ホルターネック・ビキニという露出の多い服を着て、普段は隠された豊満な母性の象徴を晒す姿。それを見下ろし覗くという、稀有な体験。生命の輝きという趣を感じさせる一枚では無かろうか。

「あと、この後ろから覗かれるのも趣が……」

 つらつらとデータを手繰る鈴音が、そこまで呟いた瞬間……何かに気づいた様に、息を呑む
 こちらに向けて近づいてくるのは、微笑みを浮かべる一人の女。
 だが、何故だろう。彼女のその笑顔が、今は妙に恐ろしいと思えるのは……?

「んー、それも中々趣あるねー。流石鈴音ちゃん、目の付け所が違う!」

 そんな鈴音の様子に、セフィリカは気づかない。集めたお宝の吟味に、完全に意識が行ってしまっているからだ。
 ……その迂闊さが、セフィリカの命運を決した。

『──ところで、気配察知を忘れてるけど。後ろはご覧になった?』

 ボヤく様な|魔剣《姉》の指摘。
 その指摘と、セフィリカの身に謎の圧が注ぐ。
 ぎぎぎ、と。油の切れた機会の様な音を立てながら、セフィリカが後ろを振り返れば──そこに居たのは、セフィリカが良く知る人だった。
 浮かべる表情は、いつもの微笑み。だがその圧は、なんだかとんでもない事になっているような……!

(……あれ? このデータって……)

 現れた人物に笑顔で圧を掛けられるセフィリカを見捨てつつ。端末を覗いていた鈴音が、何かに気づく。
 それは、何の変哲も無い一枚。背後にセフィリカの姿が見切れているくらいが特徴の一枚だ。
 だが、拡大してよくよく見ると……?

(……保存、保存っと)

 そのデータを、こっそりと自分の端末へと保存する。
 やられるだけでは無い。反撃の材料は、しっかりと集めておく。
 このあたりの抜け目の無さが、鈴音がセフィリカと付き合えている要因であるのかもしれない。

 ……フードコートでの、賑やかな時間は続く。
 その時間の中で、セフィリカと鈴音は自身を冒す狂気が確かに祓われていく事を感じていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ラピーヌ・シュドウエスト
いやぁ、実におマヌケな邪神だったよ
昔みたいに派手な事が出来ないから思った以上にストレスを抱えていたようだが、お陰で晴れ晴れとした気分さ
折角だし何かを楽しもうかと思ったけども、ボクのお眼鏡に叶う店舗は無さそうだし、映画もパッとしない邦画や胸糞悪いヒーロー物ばかりだと、ね?

こうも庶民向けな場所はボクには…うん?
三歳児ぐらいの子どもが泣いているようだね
ははーん…さては水着結界の混乱での迷子か
ま、ボクには関係ないけど、今は気分が良いからね
糸でちょっとした手品を披露して泣き止ませたら、一緒にご両親を探してあげよう

無事にエスコートしたらお礼に食事を誘われたが、断る理由はないさ
たまには良い事をするものだね





(いやぁ、実におマヌケな邪神だったね)

 ラピーヌは、高層ビルの各所を見て回る様に練り歩いていた。
 昔──ヴィランとして表立って活動していたあの頃と比べ、昨今は中々派手な事が出来ていないラピーヌである。その身に蓄積したストレスは中々の物であり、その事をラピーヌ自身も認識していた。

(だが、お陰様で晴れ晴れとした気分だ)

 しかし、そのストレスは晴れた。ラピーヌが指すところの、おマヌケ邪神……『水着弁慶』の無様な姿で、大いに解消されたのだ。その一点だけなら、感謝をしても良いくらいである。
 だがストレスは減じたが、代わりに狂気に冒されたのは事実である。
 今はその狂気を祓うべく、こうしてビル内を見て回っている訳なのだが……。

(中々、ボクのお眼鏡に叶う店舗は無さそうだね)

 このビルにテナントを構える店舗とは、ラピーヌの感性は合わないようであった。
 ショッピングは、ダメ。では、アミューズメントなら……具体的には、映画ならばどうだろうかと。階を移動して、映画館へと赴いてみれば。

「……うーん」

 その映画館で取り扱っている上映ラインナップも、どうもラピーヌの好みに合わないものばかりであった。
 恋愛物に、パニックホラー、ドキュメンタリー……邦画はどれも、パッとしない。
 人気アニメの劇場版に、ヒーロー物……ヴィランであるラピーヌからすれば、胸糞が悪い代物だ。

「……ったく」

 場を離れ、息を吐く。
 複合商業ビルとは言え、このビルの客層は庶民層が多い。そういった庶民層が求めるような物は、ラピーヌの趣味とは噛み合わない。

「こうも庶民向けな場所は……うん?」

 溜息混じりに愚痴を零し……瞬間、何かに気づいてラピーヌは耳をそばだてる。
 今、何か聞こえたような。具体的には、子供の鳴き声が。

「ふむ……」

 聞こえたその声の下へと歩みを進めてみれば、果たしてそこにいたのは小さな子供であった。
 年の頃は、三歳児といったところだろうか。周囲に大人の姿は、無い。

(ははーん? さては結界の混乱で逸れたか?)

 その様子に、どうしてこうなったのかと推測する。
 今回の事件は、多くの一般人が巻き込まれてしまっていた。当然、それなりの混乱も生まれてしまっていた。
 その混乱が事故に至らなかったのは、偏に猟兵や現地組織による迅速な行動の結果であったが……こういった小さな事件にまでは、中々手が回りづらいと見えた。
 ……本来なら、放置しても構わない。ラピーヌには、関係のない事だからだ。
 だが、しかし。

「ま、いいさ。今は機嫌がいいからね」

 一つ嘯き、泣きじゃくる子供の前に進み出る。
 不審そうにこちらを見やる子供。そんな子と、視線を合わせる様にしゃがみ込み……。

「ほーら、よく見てごらん。種も仕掛けも御座いません、ってね」

 手袋に仕込まれた糸を操り、ちょっとした手品を見せてみる。
 目を見開き、驚きを顕わとする子供。その目からはもう、涙は消え失せていた。
 ……泣いたカラスがもう笑うとはこの事か、と。一つ息を零しつつ。

「さてさて、ご両親を探してあげようかね」

 ゆっくり立ち上がり、子供の手をとって歩き出す。
 まずはどこを当たるべきか……確実なのは、ビルのインフォメーションか。それともグリモア猟兵に連絡して、現地組織を動かして貰うべきか。
 さてさて、どうしたものかなと。心中でボヤくように呟きつつも、ラピーヌの表情はどこか穏やかであった。

 ……なお、その数分後。
 大慌てで子供を探す両親とばったり遭遇し、お礼に食事をご馳走されたのは余談である。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・クイン
よし水着の季節は終わったわ!イヤなことはさっさと忘れる!
クロエ(f19295)とショッピングに……

あらあらクロエ、映画館に興味あるの?
映画館はね、大きい画面で音響効果がすごくてロマンチックなやつよ!

あと、ポップコーンを買わなきゃね!あとコーラ!これは必須なの!
(クロエがホラー映画のチケットを買ったことに気付かず)

わー、でっか…………(初体験)
あれ?この話なんか……イヤな予感がしてきたんだけ、ど……ひぃぃんん!?

あっあっ、ポップコーンが……お、音立てちゃダメなのよね?
そーっととらなきゃ、そーっと、クロエ、ちょっとくっついてるポップコーンとるわよー?あっ、声出しちゃだめ!もう、奥に入っちゃう……


クロエ・アスティン
はぁ……今回も大変だったであります。

ヴィクトリア様の勧めでアリス様(f24161)と二人お店を見て回っていたら、
「えいがかん」なる施設にたどり着きました。
あの「てれび」というもののとても大きなものなのですか。
せ、せっかくですし、一緒に見ていきましょう!

券売機を慣れない手つきで操作して、無事チケットを購入。
二人なのでこのペアシートというのでいいのでしょうか?(カップル用)

最初は画面の大きさに圧倒されていましたが、
画面演出と急にアリス様が抱き着いてきたせいで小さな悲鳴を上げてしまいました。
周りに迷惑をかけてしまったでしょうかと、見渡すと……
そっちも上手くやりなさいよ!ってどういう意味ですか!?





 夏は過ぎ去り、季節は秋。水着の季節は、もう終わり。
 ……そう。アリスにとっての忌まわしき季節は終わりを迎えたのだ。

 ──さぁ、イヤなことはさっさと忘れるわよ!
 ──はい、アリス様!

 一夏の呪い(と、今回のアレ)から解放されたその歓びのままに、ビルを降りてショッピングモールエリアをウィンドウショッピングと洒落込むアリスの隣には、いつものように大親友のクロエの姿が。
 今年のトレンドを抑えた秋冬物の衣服、可愛い小物、日常生活で役立つ雑貨、よくわからない謎のアイテム……ビルを隈なく練り歩いた二人は、気づけばビルの中層辺りに到達していた。

「ふぅーん。ここから上は、アミューズメントエリアなのね」

 設置された案内表示をしげしげと眺めるアリス。
 そんなアリスの隣で、クロエも案内表示を覗き込み……。

「|シネマコンプレックス《えいがかん》、でありますか……?」

 その文言に、首を傾げる。
 シネマ・コンプレックス。同一の施設内に複数のスクリーンを掲げ、またそれに付随する設備を持つ映画館のことである。
 |この国《日本》でシネコンと呼ばれる場合、大体の施設で7~13スクリーンを一つの映画館に集約している事が多いらしい。
 このビルに入っているシネコンも、その例に漏れず。極々一般的と評して良いシネコンであった。

「あらっ、あらあら? クロエったら、映画館に興味があるの?」

 |閑話休題《それはともかく》。
 クロエの呟きを耳聡く聞きつけたアリスの表情に、どこか悪戯な色が浮かぶ。
 クロエは、ファンタジーな世界の生まれである。庶子であるとは言え貴族の生まれであり、それでいて奉じる戦女神の敬虔な信徒でもある生真面目な少女である。
 そんなクロエであるから、遊びにはあまり詳しくはない。
 アリスは、思うのだ。そんな異世界人であるクロエに、この世界の娯楽の何たるかを教えなければ、と。
 そしてあわよくば、その驚く様を一番近くで眺めてやりたいのだ。

「映画館ってのはね、大きい画面で、音響効果がすごくて、ロマンチックなやつよ!」

 なので、クロエの興味を更に擽る様にプレゼンをしてみるが……クロエの反応は、イマイチであった。
 おおきいがめん? おんきょうこうか?
 ロマンチック、という言葉の意味はわかるが、前者二つはやはりいまいちピンと来ない様子である。
 これはもっと、わかりやすい言葉で伝えなくては意味が伝わらないか。アリスの頭が考えを巡らして……。

「……あっ。アレよ、クロエの家にもテレビあるでしょ? あれのデッカイのよ!」

 思いついた例えは、極々ありきたりなものだった。
 クロエの家……彼女が下宿している家は、この地に二人を送り込んだグリモア猟兵の家である。
 その家の所在地は、|剣と魔法と竜の世界《アックス&ウィザーズ》であるのだが……実はその家、アース系世界からの文化侵略の影響もあって、生活水準がこちらで言う所の平成初期程度のレベルに達していたりする。

「なっ、成程。『てれび』の……!」

 となれば、当然テレビも置いてあるわけで。心当たりのある言葉を聞けば、クロエもピンと来るだろう。
 まるで箱の中に人が入っている様に、様々な催しを見せてくれるもの。クロエにとっての『てれび』とは、そんな存在である。
 その『てれび』の、デッカイやつ。いったい、どれほどのものなのか。

「せ、せっかくですし、一緒に見ていきましょう!」
「そうね! 映画館は、えーっと……あっちね!」

 手と手を取り合い、小走りで駆けて、駆けて……。

 ………

 ……

 …

 二人は、劇場の中にいた。
 お供としたのは、アリスが購入してきたポップコーンとコーラ。
 この二点はアリス曰く、映画には必須なアイテムである。

(わー、でっかー……)

 そのアリスは、目の前のスクリーンの巨大さに放心状態であった。
 実はアリス、映画館のスクリーンは初体験であった。
 アリスは、陰キャのインドア派。|他人《ヒト》が多く集まる様な場所は、敵地に等しい生態の生き物である。
 ……要はアリス、クロエの前で見栄を張っていただけなのだ。

「ほぁー……!」

 そんなアリスの隣では、クロエも巨大なスクリーンから流れる(本編上映前の予告編)映像と音声に感じ入ったような声を上げていた。
 二人の距離は、近い。それこそ、『肩が触れ合う』というほどの距離である。
 それもその筈、二人が座ったのはいわゆる『ペアシート』とか『カップルシート』と呼ばれる席であった。
 実はこの席、クロエが購入したチケットのものである。
 アリスが映画のお供を購入する一方、映画のチケット購入はクロエの担当であった。
 だが当然、クロエは券売機のシステムに慣れていない。そんな中で『ペア』という言葉についつい反応して購入してしまったのが、この席なのであった。

「……あ、クロエ。そろそろ始まるわよ」
「はっ、はい……!」

 だが幸いなのか不幸なのか、その事に突っ込む者はこの場には居ない。
 映画館初体験のアリスは『こういうものなのか』と思っていたし、クロエは言わずもがなである。
 不幸中の幸いは、周囲がそんな二人の様子を見て『仲良しな友達だ』としか思っていない事であるが……二人の距離感がもうちょっと近かったりしたら、奇異な目で見られていたかもしれない。

(……あれ? この話、なんか……)

 そんなこんなで始まった、映画本編であるが……開始5分も経たずして、アリスが異変に気付く。
 おどろおどろしいBGM、全体的に昏い映像、そして不穏なセリフの数々。
 ……これってもしかして、『ホラー映画』ってやつなのでは???

 ──はぁー……今回も大変だったでありますねぇ。

 嫌な予感に、ポップコーンの器を抱えたままさぁっと顔を青ざめるアリス。
 アリスの頭に過っていたのは、チケット購入時に二手に分かれる直前のクロエの様子だ。
 思えばクロエは、消耗している様子であった。ちょっとしたうっかりミスをしてしまいそうなほどに、疲れている様子であった。
 しかもそもそも、クロエは『映画館』という場所が初体験なのだ。映画のジャンルとか、その辺りもきっと不確かなはず。
 つまりこんなミスなど、起きて然るべきとして考えねばならなかったのだ。

(ああ、アタシのバカァ! ちゃんと付いててあげれば──)

 ──キャァァァァァァァッッッ!!!

「「ひぃぃぃんっ!?!?!?」」

 過る後悔に歯噛みをした瞬間、銀幕から響く絹を裂く悲鳴。そして同時に鈍い水音に似たSEが響き、画面が紅く暗転する。
 スプラッタなシーンを目の当たりにし、思わず抱きつき合う二人。

(……はっ! いけない、周りに迷惑をかけてしまったでしょうか……!)

 ぎゅーっと抱き合う中で、先に平静を取り戻したのはクロエであった。神官としての鍛錬で、耐性があったのだろう。
 そーっと周囲を伺ってみれば……こちらを見る目は、無い。ほっと小さな胸を撫で下ろす。

(……あっ、あっ。ぽ、ポップコーンが……!)

 そんなクロエと対象的に、アリスも平静を取り戻し……また直ぐに、別の焦りを覚えていた。
 二人が抱きしめあった、その瞬間。アリスが抱えていたポップコーンの器が、二人に挟まれて変形してしまっていた。そしてそこからこぼれたポップコーンが、クロエの胸元へ飛び込んで……服の中へと、潜り込もうとしているのを見てしまったのだ。

「……く、クロエ! 動かないで……!」
「アリス様? ひぅっ!?」

 安堵の息を零すクロエの胸に向けて、アリスがその手を伸ばす。唐突なその行動に、思わず小さな悲鳴を上げてクロエが身動ぐ。
 肝心のポップコーンはと言えば……身動いだその衝撃を受け、ぽろりとクロエの服の中へ。

「あぁっ……! も、もうっ! じっとしてなさいよ!」
「な、なんででありますかぁっ……ひぃっ!?」

 地団駄を踏むアリスに、クロエは羞恥と動揺を浮かべるが……今度は遠慮なく突っ込んできた手に、引きつったような声を出しかけて、既の所で止める。
 そうだ。今は映画の真っ最中。ここで声を出しては、周りの人の迷惑になってしまう……!

(ひぃぃぃぃ……!)

 なので、悲鳴を上げるのは心の内でだけ。もぞもぞと動くアリスの手に、クロエは歯を食いしばって耐える以外に選択肢はない。ただただ、アリスの奇行が早く終わってくれるのを祈るだけである。
 ……当然、そんな状況であるから。映画の内容など、クロエの頭に入るはずは無かった。ポップコーンを取り除いて冷静さを取り戻したアリスも当然、である。
 映画が終わり、二人揃って外へと出てきた二人の距離感は……なんだかとっても、奇妙な事になっていたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
結界が解かれた時に石化していたから水着のままとか
ゲームのバグみたいにならない事を祈るよ

邪神の聖域に避難して着替えるとか
対処法はあるから何とかなりはするけど

職員さん達が事後処理にあたっているなら
手伝いたいとこではあるけれど
石化が解ける頃には概ね片付いてるかもね

気分転換って事だけどどうしようかな
飲食店街を歩きながら考えよう

精神的なダメージが大きいから
呑むという選択もあるけれど
目立つのも面倒なんだよね
UDC組織に頼んで免許証は作ってるから
説明すれば大丈夫なんだけど

疲れてるなら甘いものもありかな
書店で最近出た小説でも買ってきて
喫茶店でケーキやパフェでも食べつつ読もうか
気分転換であって現実逃避ではないよ





「ふぅん……?」

 飲食店のテナントが軒を連ねる、ビルの高層階。
 食事時も近くなってきたのだろうか。一般客の数も増え始めたその空間を、晶はのんびりと見て回っていた。

「イタリアンに、フレンチ。焼肉に……おっ、居酒屋なんかもあるのか」

 日常を謳歌し、邪神の狂気を祓う。平たく言うと、『気分転換』という事である。
 その為の手段として晶が見出したのが、食事であった。

(精神的なダメージの事を考えれば、『食事』よりも『呑み』という選択も有りか?)

 目に飛び込んできた居酒屋の姿に、頭を過るそんな考え。
 今回の晶は、随分と気疲れのする立場へと追い込まれていた。幸い対処は出来たが、もうちょっと反応が遅れていたりしたら随分とお労しい姿を衆目に晒しかねない状況であった。

(気疲れ、と言えば……)

 そんな中、ふと思い出した様に自身の衣服を撫でる。
 いま晶が着る服は、このビルに突入する前に着ていた服である。撫で回してみても、特に変わった所は無い。完全無欠、元通りの服に戻っていた。
 ……屋上での戦いで石像に意識を落とした晶であったが、実は一つ懸念があった。戦いが終わり結界が解かれた時、自身の衣服はどうなるのか、という懸念が。
 晶の水着は、トップス部分がなんやかんやで消失してしまっていた。その消失分、元の衣服も変わってしまわないだろうかという懸念があったのだ。
 幸いな事に、その懸念は杞憂だったようで。色々とやらかしに定評のある結界さんだが、流石に平和な時間まで侵食してくる様な空気の読めない存在では無いようだった。


(っと。今は店選び、っと)

 |閑話休題《それはそれとして》。
 ともかくこの身に蓄積した気疲れを癒やす事を優先するのなら、食事よりもアルコールというのは正直『あり』な選択ではあるのだが……。

(この体だと、目立つからなぁ……)

 その選択を、今回は泣く泣く諦める。
 今の晶の身体は先にも触れた通り、|彼《彼女》の物であって|彼女《彼》の物では無い。その身体の容姿は、邪神の容姿そのものなのだ。
 贔屓目に見ても、女子中学生程度の体付きの身体だ。そんな身なりで飲み屋に独り足を踏み入れれば、ちょっとした騒ぎとなってしまうのは避けられない。
 勿論、そういった事態に備えて|運転免許証《身分証明証》は用意してあるから、法的な問題は無い。
 だがそれでも、出来るだけ悪目立ちするような事はしたくないと考えるのは……晶の人間性が善性の物であるという事実を示す証明なのだろう。

「──ん?」

 しかしそうなると、一体どうするべきか。
 思考が堂々巡りになりかけたその瞬間、視線に飛び込んできた店に晶の愁眉が開く。

「喫茶店、か……」

 それは、一軒の喫茶店だった。それも街中で良く見るチェーン店では無く、レトロかつ小洒落た雰囲気の漂う店であった。
 店頭のショーケースに並ぶサンプルを眺める。コーヒー、軽食、ケーキにパフェ……メニューの方も奇を衒わないオーソドックスな物であるようだ。

(成程、悪くない)

 疲れた時には甘い物、というのも一つの鉄板である。
 ケーキやパフェを楽しみながら、穏やかな時間を過ごす。奇妙奇天烈な結界に翻弄された心身を癒やすには、うってつけな時間の使い方では無いだろうか。
 ……お誂え向きに、低層階のショッピングモールエリアには書店もあった筈。あそこで最近出た小説でも買ってくれば、より優雅な時間が過ごせるだろう。

(そうと決まれば、善は急げってね)

 一つ頷くと、踵を返してエレベーターへと晶は向かう。
 目指すは低層階、ショッピングモールの書店である。
 これから迎える事になるだろう優雅な一時への期待に、晶のその脚は随分と軽やかだった。

 猟兵達の身を蝕む邪気は洗い流され、その身に生気が満ちていく。
 そうして心身ともに充足すれば、事件の舞台となったその地からも邪神の痕跡が完全に祓われるだろう。
 その時が訪れるまで……猟兵達は、思い思いの一時を過ごすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年10月20日
宿敵 『水着弁慶』 を撃破!


挿絵イラスト