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希望を喰らう永遠の晩餐

#ダークセイヴァー #ダークセイヴァー上層 #第三層 #グリモアエフェクト

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「今宵はお招きいただき、ありがとうございます」
「まあ。こちらこそ、わざわざ足をお運びいただきまして……」

 月明かりに照らされた豪奢な屋敷で、その主人と来客が挨拶を交わす。
 美しく飾り付けられたホールには、楽団による演奏が響き、使用人らが行き交う。
 それはどの世界にもありふれた貴族達による晩餐会。ただ1つ異常であったのは、主催も来賓もみな、人ならざる異形の者であること。

「卿の催される晩餐はいつも素晴らしい。食材からして物が違いますからな」
「そう仰っていただけて光栄ですわ。あら、丁度来たようですわね」

 そして、厨房から「料理」が運ばれてくると、この場の"異常"がもう1つ増える。
 副菜と共に皿の上に丁寧に盛り付けられた"それ"は――生きた人間だ。何らかの措置で身動きを封じられているが、意識はあるようで目の動きだけで辺りを見回している。

「ほら、ご覧ください。この意志の強そうな赤い瞳。とても美味しそうでしょう」
「自分はこちらのしなやかな指が気になりますな。柔らかそうで骨ごと頂けそうだ」

 好奇と食欲に満ちた闇の種族達の視線が、今宵のメインディッシュに突き刺さる。
 これより始まるのは永遠の晩餐。憐れな食材が狂い果てるまで終わらぬ永劫回帰の宴。
 楽団の演奏に混ざる悲鳴のコーラスが、この忌まわしき催しの開幕を告げた――。


「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
 グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「ダークセイヴァー上層で、闇の種族による『永遠の晩餐』の開催を予知しました」
 下層で亡くなった人間が魂人として転生するこの階層では、支配層である|闇の種族《オブリビオン》が様々な嗜好を凝らして、生前にも勝る苦しみと絶望を人々に与え続けている。今回予知された晩餐は、その中でも特に悪辣なものと言えるだろう。

「この催しは主催者となる闇の種族の邸宅に数多の魂人が捕らわれ、晩餐会の『賓客』達に生きたまま貪り喰われるというものです」
 "食材"とされた魂人達は強制的に【永劫回帰】を使わされ、死ぬ事も許されぬまま延々と喰われ続ける。自らの幸福な記憶を|心的外傷《トラウマ》に変換して、賓客達の舌を喜ばせるためだけに無限地獄を味わうのだ。
「幸いなことに今回はグリモアエフェクトによって予知が早まり、この晩餐会が始まるよりいくらか早く現地に乗り込むチャンスが巡ってきました」
 多数の闇の種族が集まる晩餐会に直接乗り込んで魂人を救うのは、恐らく無謀である。
 そこで今回は晩餐が始まる前に敵の邸宅に潜入し、囚われている魂人達を救い出すのが依頼となる。

「予知によれば近い内に、闇の種族は『食材調達』のために、配下に命じてとある魂人の村を襲わせます。まずはここを訪れて、襲撃してきた連中にわざと攫われてください」
 この時、なるべく怪しまれないように正体を隠しつつ、「晩餐会の新鮮な食材」としてふさわしいと印象付けられれば、危険を避けつつ敵の邸宅に潜入する事ができるだろう。
「どうやら今回の晩餐会の主催者が、食材に求めているものは『希望』だそうです」
 過酷な上層の暮らしにおいても生きる気力を失わず、困難に立ち向かいながら前向きに日々を過ごす者。そうした『希望』に満ち溢れた魂人が自分達に喰われ続ける永劫回帰の果てで、『絶望』に染まるのを見たいというのが今回の晩餐の趣旨だそうだ。

「悪趣味としか言いようのない嗜好ですが……つまり、猟兵が村で『希望』を持って生活している所を見せれば、敵は皆様を食材として選ぶ可能性が高くなります」
 村の住民達により自然に溶け込む工夫があればなお良し。あちらも「食材」になるべく傷をつけずに確保したいだろうから、首尾よく上質な食材として見初められれば、さほど手荒な真似はされずに邸宅まで連行されるかもしれない。
「ですが本番は潜入した後です。強力な闇の種族の御膝元で、食材置き場と言う名の牢獄から囚われている魂人達を救出し、晩餐会が始まるまでに脱出しなければなりません」
 邸宅の敷地内には主催者の他にも招待客として集められたオブリビオンが何人もおり、その全員が強大な闇の種族達である。逃げ出す途中で迂闊に騒ぎを起こし、彼らに見つかってしまえば一巻の終わりだと思ったほうが良い。

「さらに『食材置き場』の周辺には脱走防止の罠として、有害な瘴気が充満しています。直ちに生命を奪う類ではありませんが、心身に強い苦痛を与えて抵抗の気力を削ぐことを目的としたもののようです」
 或いはこの瘴気も晩餐前の「下拵え」を兼ねているのかもしれない。食材として連れて来られた猟兵にもこの瘴気は有害なため、何らかの対策を考えておかなければミイラ取りがミイラになりかねない。
「首尾よく全ての監視や罠をかい潜って邸宅から脱出できても、まだ油断はできません。食材が逃げたと分かれば確実に追っ手がかかるでしょうから、最後まで警戒を怠らないようにお願いします」
 食材として囚われていた魂人達も、いざとなればある程度の戦力としては数えられる。
 もし猟兵を含む誰かが窮地に陥るような事があれば、【永劫回帰】の使用も躊躇わないだろう。そうしなければこの地で生き延びられないと、彼らは身を以て知っているから。

「追っ手を退けて、ひとまずは安全と思われる距離まで逃げ切ることができれば、目標は達成です。危険の多い依頼となりますが、どうかよろしくお願いします」
 説明を終えたリミティアは手のひらの上にグリモアを浮かべ、ダークセイヴァー上層への道を開く。希望を喰らう悪辣な『永遠の晩餐』に供されようとしている、憐れな魂人達を救い出すために。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 今回のシナリオはダークセイヴァー上層にて、闇の種族が開催する『永遠の晩餐』から魂人達を救出する依頼です。

 1章はとある魂人の村に潜伏し、晩餐の「食材」として敵に攫われる作戦です。
 晩餐会の主催は上質な食材として『希望を失っていない者』を求めて品定めを行っているため、敵の襲撃が来るまでに村に溶け込み、村人を励ますなどして希望を持っているところをアピールすれば、食材に選ばれる確率が高くなるでしょう。

 首尾よく食材として敵の邸宅に潜入した後は、2章で魂人の救出および脱出を目指します。
 魂人達が囚われている「食材置き場」には有害な瘴気が充満しており、心身に苦痛をもたらします。無対策だと猟兵でも危険です。
 また、邸宅の敷地内には招待客の闇の種族達が、晩餐が始まるまでの暇つぶしに歩き回っているため、彼らに見つからないよう気をつける必要もあります。

 脱出後の3章では、闇の種族が差し向けた追っ手との戦闘になります。
 詳細については実際に章が移行してから説明しますが、この追っ手も蹴散らして逃げ延びることができれば、今回の依頼は成功です。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 日常 『追憶と希望と』

POW   :    お祭り騒ぎで楽しさを思い出させる

SPD   :    絵や音楽、詩や建築など物作りで喜びを思い出させる

WIZ   :    あえて過去を見つめ、それを乗り越えて勇気を思い出させる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

桐府田・丈華
【心情】
希望を食らうなんて悪趣味だね〜…
でもボクたちで阻止するよ!
【行動】
村に着いたら村人のみんなに
「お祭り騒ぎで楽しさを思い出させる」
行動をします
バトルキャラクター達を出し楽しく歌い、踊ったりしたりします
明るく笑顔で振る舞い、溶け込めるように
品定めする屋敷の人間にわざと見せ付けるように行動します
確保されそうになったらちょっとおどけるように
のらりくらりかわしながら抵抗したりして希望を失ってない感じで
最後は捕まって「確保」されます
軽く拘束されたりします



「希望を食らうなんて悪趣味だね~……」
 闇の種族達が行おうとしている『永遠の晩餐』の話を聞いて、桐府田・丈華(カードバトルゲーマー・f01937)は顔をしかめる。ただの娯楽のために希望を持った人間を絶望に落とし、行きたまま貪り喰らう――まさに、悪趣味としか言いようのない所業だ。
「でもボクたちで阻止するよ!」
 そんな強い意気込みと共に、彼女は予知で伝えられた魂人の村に向かう。晩餐が始まる前に会場に潜入するためには、まずはここで希望を持った『新鮮な食材』として認められる必要があった。

「ねえみんな! これを見て!」
 村に到着すると丈華はまず、得意のカードゲームを通じて村人達に楽しさを思い出させようとする。デバイス「マイデッキ」に収められた魂のカードから、コミカルな【バトルキャラクターズ】を召喚し、愉快な歌や踊りを行わせる。
「おおっ?」「なにこれ?」「ちょっとカワイイかも……」
 突然現れたキャラクター達に魂人達は驚いたものの、それが害意のあるもので無いことはすぐに分かった。陽気なメロディに合わせて飛んだり跳ねたりする不思議な生き物と、その中心に立つ笑顔の少女に、みなの視線は釘付けになっていた。

「みんなも一緒に歌って踊ろうよ!」
 明るく笑顔で振る舞い、皆をお祭り騒ぎの輪に誘う丈華。その光景に魂人達はかつての記憶――まだ上層に転生する前にあったささやかな幸福を思い出したのか、1人、また1人と踊り始める。
「いいねっ」「うん、楽しくなってきた!」
 たとえ踊りが下手でもリズムに合わせて身体を動かしていれば、自然と心が弾みだす。
 バトルキャラクター達と一緒に手を取り合って踊ったり、合唱したり、そうしている内に村人に笑顔が戻ってくる様子を、丈華は嬉しそうに眺めていた。

「――……ほう。随分楽しそうにしているな、貴様ら」
「げっ?!」「な、なんでお前らがここに!」
 だが、そのお祭り騒ぎに水を差す輩は唐突に現れた。邪悪な笑みを口元に浮かべた異形の怪物ども。主人である闇の種族の命令を受けて「食材調達」にやって来たオブリビオン達だ。
「まずい、逃げろ!」
 彼らの凶悪さを身を以て知っている魂人達は、すぐさま蜘蛛の子を散らすように逃げていく。バトルキャラクター達も姿を消して、せっかくの楽しいムードは台無しに――だが、1人だけその場に残った者がいた。

「貴様は逃げないのか?」
「だって、ぜんぜん怖くないもん。キミ達のことなんて」
 逃げださない少女に高圧的な態度で問いを投げかける闇の種族の配下達。対する丈華は一歩も怯まず笑顔でおどけるように、簡単には屈さないぞという意志を全身で表明する。
「良い態度だ。それだけ『希望』に溢れていれば、主様もきっとお喜びになるだろう」
 お祭り騒ぎにすっかり溶け込んでいた彼女のことを、村の一員ではないと疑うオブリビオンはいない。宴会の食材として丁重に「確保」すべく、武器を抜かずに取り囲んできた。

「逃げられると思うなよ」
「くうっ、放してよっ!」
 丈華は暫くはのらりくらりとかわしながら抵抗していたが、最後には捕まってしまう。
 このレベルの配下だけなら、本気で戦えば倒せないことは無いかもしれない。だが今回の目的はあえて確保されて屋敷に潜入する事。必要以上に消耗するのは避けたい。
「その威勢が、いつまで続くか見ものだな」
 横柄極まりない態度のまま「食材」を屋敷まで連行していくオブリビオン達。彼らに表情を見られないよう、丈華はうつむいて肩を震わせながら――これで良し、と静かに笑みを浮かべるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒城・魅夜
希望の紡ぎ手にして希望の依り代たるこの私の前で希望を弄ぶ愚か者
いずれたっぷりと後悔させてあげましょう

さて、そのためにも美味しいお料理になりませんとね
基本的に私は捕食者の側ですけれど、ふふ

エクトプラズムで姿を変え
この牙を隠して普通の人間に成りすましましょう

ちなみに今月の末は私の誕生日なのです──これは本当のことですけれどね
お誕生日になったら美味しいお料理を作って
綺麗な服を着て、お友達を呼んでパーティを開きましょう
きっと楽しい一日になることでしょう……と
村の皆さんに声を掛け、浮かれてみせましょう

ええ、本当に楽しい誕生日にするために……
今回の敵を血祭りにあげることが自分へのプレゼントです、ふふ



「希望の紡ぎ手にして希望の依り代たるこの私の前で希望を弄ぶ愚か者」
 希望を踏み躙ることを楽しむかのような今回の『永遠の晩餐』に、黒城・魅夜(悪夢の滴・f03522)は怒りと嫌悪感を抑えられなかった。晩餐を主催する闇の種族も、よくもこんなふざけた趣向を思いついたものだ。
「いずれたっぷりと後悔させてあげましょう」
 今回の目的は晩餐の阻止であって闇の種族の打倒ではない。が、いつの日か必ずや後悔させてくれようと決意する。彼女は希望の繋ぎ手にして悪夢を引き裂く者――敵も大変な相手の怒りを買ったものだ。

(さて、そのためにも美味しいお料理になりませんとね。基本的に私は捕食者の側ですけれど、ふふ)
 魅夜は【解き放たれよ漆黒の質料、撃ち砕け形相の器】を発動して自分の肉体を再構成可能なエクトプラズム化し、秘めたる牙を隠して姿を変え、普通の人間に成りすます。そうして魂人の村に入り込むと、「食材」として敵の目を欺く活動を始める。
(ちなみに今月の末は私の誕生日なのです──これは本当のことですけれどね)
 死後の世界であるこの上層では、誕生日を祝う風習など薄れているかもしれないし、そもそも祝う余裕がないだろう。だからこそそれを祝うことは「希望」を抱いている何よりの証明になる。

「お誕生日になったら美味しいお料理を作って、綺麗な服を着て、お友達を呼んでパーティを開きましょう」
 魅夜は村人達にもそのパーティに来てくれませんかと、にこやかな笑顔で声をかける。
 終わりのない苦境に立たされている彼らからすれば、「誕生日パーティ」という響きは、さぞ新鮮な言葉に聞こえただろう。
「誕生日か……もうずっとそんな事考えてなかったな」
「パーティやお祝いごとだって"こっち"に来てからやってないし」
 そんな余裕があるのかという現実的な考えもあるだろう。だが多くの村人は魅夜の呼びかけに好意的だった。幸福な想い出を少しずつ失いながら生きていく日々に、ささやかな新しい幸せを求めたくなる、その気持はようく理解できたために。

「きっと楽しい一日になることでしょう……」
 心から誕生日を待ちわびている浮かれた様子を、魂人達の前で披露する魅夜。その想いは周囲に伝播して村の雰囲気を少しだけ明るくする。これだけ「希望」を振りまいていれば、晩餐の食材を品定めしている連中の目にもきっと留まるだろう。
「いいね!」「あたしも参加していいの?」
「ええ、もちろんです」
 穏やかな表情で村人達と語らいながら、彼女は心の内で見えない牙を研ぐ。蝋燭つきの甘いケーキや綺麗な服もいいが、今年の誕生日に向けての"プレゼント"は何か、すでにお目当ては決まっている。

(ええ、本当に楽しい誕生日にするために……今回の敵を血祭りにあげることが自分へのプレゼントです、ふふ)
 牙は秘めることでより鋭さを増す。無害な村人を装う魅夜の笑顔の裏には猛毒がある。
 この後、彼女はやって来たオブリビオンの襲撃により「食材」として確保されるが――極上の食材のはずがとんだ劇物を運び込んでしまったと、連中が気付くのにそう時間はかかるまい。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エリン・エーテリオン
蘇芳f04899と行動
ブラッドムーン擬人化…黒髪、赤い目
青いTシャツ
エキドゥーマ擬人化…白髪の長髪、黒い蝶の髪飾り、黒いワンピース
村に入る前にUCで姿はを変える
ここが例の村です、蘇芳さん
元気がない時は美味しい物を食べましょう!
じゃーん!ベビーカステラの材料と器材〜
『私達も用意しているからブラッドムーンも一緒に作ろう!』
『アッハイ』
ブラッドムーンやエキドゥーマが人間の姿になり私も村人達にベビーカステラを笑顔で振る舞う
諦めて生きていたら死んでいるのと同じだぜ?ほら!綺麗な花達を見てみろよ!
少しでも元気になって欲しいな…
…トゥントゥン
…何か言ったか?
『私は何も言ってないよー』
おかしいな…まっいっか!


真木・蘇芳
エリンと同行

励ませってもな、俺はメンタルケアサービスはやってねぇぞ?
仕方ねぇな、そういえば幸せな宗教団体の邪神が居たな。
共に幸せであることを監視しあう宗教。
幸せで無いなら幸せにする洗脳をする邪神。
三角に目玉の監視者
さあ覚悟はいいか?監視者の前で悲しみや絶望に潰れていたら、脳味噌こねくり回されるぞ
あぁ、幸せですか?幸せです!
幸せです、死遭わせです!
死合わせです!
あぁ、なんて日だ道化師の劇は台無しだ。
観客席から飛び降りる、お前等に俺の幸せはやらねぇよ?
│道化師《クラウン》は高笑いを上げて偶像を爆破する
そうだ、爆発、破壊、渾沌、恐慌、それこそが楽しいんだ
誰もが一度はするだろう?
蟻の巣に指を入れるのを



「ここが例の村です、蘇芳さん」
「話にゃ聞いてたが、辛気臭い雰囲気だな」
 敵の襲撃が予知された魂人の村に、連れ立ってやって来たのはエリン・エーテリオン(転生し邪神龍と共に世界を駆ける元ヤンの新米猟兵・f38063)と真木・蘇芳(Verrater・f04899)。彼女らの目的は「食材」として敵地に潜入するために、ここで人々の前に希望を示すことだ。
「励ませってもな、俺はメンタルケアサービスはやってねぇぞ?」
 しかし言葉で言うのは容易くとも実行するのは楽じゃない。特に、希望のカケラさえも踏み躙られるような日々を強いられるダークセイヴァーの上層においては。村人の一員として潜り込んだはいいものの、どうしたもんかねと蘇芳は首をひねる。

「元気がない時は美味しい物を食べましょう!」
 一方でエリンにはもう考えがあるようで、用意してきたものをさっと取り出す。それは牛乳に卵、はちみつ、砂糖、薄力粉にベーキングパウダー、バター等に加えて、お菓子作りに使われる各種の調理器具だ。
「じゃーん! ベビーカステラの材料と器材~」
 彼女はベビーカステラが大の好物で、村のみんなにもそれを振る舞って広めようということらしい。実際、甘い物を食べる機会などほとんど無いであろう魂人の村では、希望を与えるいいアイデアかもしれない。

『私達も用意しているからブラッドムーンも一緒に作ろう!』
『アッハイ』
 魔界から一緒について来たエリンの仲間達も、人間の姿になってお菓子作りを手伝う。
 白髪の長髪で黒い蝶の髪飾りと黒いワンピースを身に着けた「邪神スマホ龍エキドゥーマ(擬人化)」が材料をふるいにかけ、黒髪に赤い目をした青いTシャツ姿の「邪神龍ブラッドムーン」がそれを混ぜ合わせていく。
『コンナモンカ?』
「うん、いい感じ!」
 生地が出来上がったら型取り用の器材にそれを流し込んで焼く。ほどなくして甘い香りが村にただよい始め、それに惹かれて魂人達が「なんだいこれは」とやって来る。恐らく生前を含めても彼らが始めて見るであろうベビーカステラだ。

「諦めて生きていたら死んでいるのと同じだぜ? これでも食べて元気出しな!」
 エリンは完成した焼き立てのベビーカステラを、村人達に笑顔で振る舞う。小さくてまん丸なそれを皆は最初不思議そうに見ていたが、美味しそうな香りに空腹感を刺激され、口に運ぶ。
「うわ……甘いっ」「ふわふわだぁ」
 その途端、口いっぱいに広がる甘さと柔らかな食感。これまでの人生で味わったことのないものに、皆の目がまん丸になる。それを見たエリンは満足そうにニコリと笑うと、村の外にある荒れ地を指さした。

「ほら! 綺麗な花達を見てみろよ!」
「花? そんなのどこにも……えっ?」
 魂人達がつられて振り返った先には、色とりどりの花々が咲き乱れている。こんな所に花畑なんて無かったはずなのに――これはエリンが【虹炎武装・自然王の鉄壁】の能力で大地に生命を与え、生成したものだ。
(少しでも元気になって欲しいな……)
 という想いをこめた彼女の心遣いはどうやら上手くいったようで、みんな「いつの間に花なんて?」と不思議そうにしながらも、その美しさに見入っている。甘くておいしいベビーカステラを食べながら眺める花は、ささやかながらも「希望」の色をしていただろう。


「仕方ねぇな、そういえば幸せな宗教団体の邪神が居たな」
 エリンが順調に希望を披露してる一方で、蘇芳のほうも何やら策を思いついたらしい。
 発動するのは【外道、神憑】。異世界UDCアースで邂逅した異教徒神や死者を呼び寄せるユーベルコードだが、今回召喚するものとは――。
(共に幸せであることを監視しあう宗教。幸せで無いなら幸せにする洗脳をする邪神)
 三角に目玉という異形の外見をした監視者が、魂人の村に降臨する。それを目撃した魂人達は「うわっ、なんだ!?」と驚きと警戒を示した。彼らの知識に照らしてみれば、それは闇の種族の仲間か危険な異端の神にしか見えなかったのだろう。そしてその認識は間違いとも言えない。

「さあ覚悟はいいか? 監視者の前で悲しみや絶望に潰れていたら、脳味噌こねくり回されるぞ」
「こ、こねっ……?!」
 目玉の監視者を村人達に遣わせて、さながら伝道師の如く蘇芳は語る。その内容は子供に言い聞かせる訓話のように。大げさな身振り手振りを交えた演説は、舞台に上がった役者も連想させる。
「あぁ、幸せですか? 幸せです! 幸せです、死遭わせです! 死合わせです!」
 狂気的に「しあわせ」を連呼する彼女の言動に、魂人達の目は釘付けになって離せない。
 果たしてこれが本当の「希望」なのか。疑問を抱く間もない強烈な展開に、ただただ困惑するばかりだ。

「あぁ、なんて日だ道化師の劇は台無しだ」
 だが蘇芳の舞台はこれで終わりではなかった。ひょいと皆のいる場所に飛び降りてきたかと思うと、腕を覆う縛霊手「パンツァーパトローネ」を振りかぶり――目玉の監視者に殴り掛かる。
「お前等に俺の幸せはやらねぇよ?」
『ギャァ!!』
 自らが呼び出した偶像を自らの手で破壊し、|道化師《クラウン》は高笑いを上げる。いくら世の中不幸に満ちていたって、幸福を強要するのは誤りだ。邪教を改宗させて正しい宗教の在り方を求めるのが、最近の彼女の趣味なのである。

「そうだ、爆発、破壊、渾沌、恐慌、それこそが楽しいんだ」
 監視者を完膚なきまでに消滅させてから、蘇芳は心から楽しそうな笑顔でそう語る。
 彼女の思想は一般的な人間の常識からは外れているかもしれないが、しかし「希望」に満ちあふれているのは間違いなかった。
「誰もが一度はするだろう? 蟻の巣に指を入れるのを」
「よ、よく分からないけど……」「ちょっとスカッとした、かも?」
 どうやら村人達は一連の流れを芝居か何かだと解釈したらしく、パチパチと拍手を送る。
 生前から力による抑圧と支配を受け続けてきた彼らにとっては、何者にも囚われず縛られない自由な振る舞いには、憧れと希望を抱いたようだ。



「上手くいきましたか? 蘇芳さん」
「どうだろうな。そっちは?」
「たぶん、良くなったと思います」
 それぞれのやり方で村人達に希望をもたらした後、エリンと蘇芳は合流して語り合う。
 エリンは自分の成果を話しながらベビーカステラの残りを差し出し、一芝居を終えた蘇芳はけだるげに肩をすくめつつそれを受け取る。そんな暫しの休憩時間中――。
「少しでも元気になって欲しいな……」
『……トゥントゥン』
 ぽつりと呟いたエリンの耳元で奇妙な声、あるいは音が聞こえてくる。はっと振り返ってみても声の主らしき者は誰もいない。離れた場所にカステラを食べていたり、先程の芝居の真似をしている村人達がいるくらいだ。

「……何か言ったか?」
『私は何も言ってないよー』
「俺も」
 邪神龍達や蘇芳に聞いてみても、誰も心当たりはないという。やはり空耳だったのだろうか、それにしては妙に気になる。なぜ気になるのかと逆に問われれば、答えられないくらいの些細な違和感なのだが。
「おかしいな……まっいっか!」
 結局、深く考えることはやめにして、エリンは最後のベビーカステラを口に放り込む。
 予知された襲撃の時間まで後少し。この分なら自分達は「上質な食材」として、無事に闇の種族の邸宅に潜入することができるだろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ポーラリア・ベル
カビの駄ー菓子ぃ!カビの駄ー菓子ぃはいらんかねー!
ユーベルコード(カビパンお姉ちゃん)とお菓子を詰めた箱を乗せた台車で村のどこからへんに転がってきますはポーラなの。
所々カビが生えてる様に見えるけど、食べてごらん?食べてごらん!
グミだよ。甘かったりするお菓子にしゅわぱちが入ってくよ。
おねえちゃんを食べる人はいないかしらー!いない?雪女ですけどー!
晩餐会の人達が食べるのね。体に駄菓子盛り合わせちゃれんじとかして食べやすいようにアピールしたりするわ!
きっとシュークリームの味がするのよ!するのよ!
でも覚えておいて。
北海道にシュークリームは存在しないのよ……(過去



「カビの駄ー菓子ぃ! カビの駄ー菓子ぃはいらんかねー!」
 辛気臭い雰囲気に包まれた魂人の村に、底抜けに明るい声が響き渡る。その声の主の名はポーラリア・ベル(冬告精・f06947)。【冬を告げに来たよ(ねぇよ)】で召喚した悪霊雪女の「カビパン」と、お菓子を詰めた箱を乗せた台車で村の片隅に転がっている。
「だがし……?」「お菓子なの?」
 この世界の人間は駄菓子など食べたことも聞いたこともあるまい。だが興味はあるのか、単に軽快な売り子の文句に引き寄せられたのか、ぞろぞろと台車の周りに集まってくる。ポーラリアは彼らに満面の笑顔を振りまきつつ、駄菓子屋さんをオープンした。

「所々カビが生えてる様に見えるけど、食べてごらん? 食べてごらん!」
「た、食べて大丈夫なの?」「い、いただきます……」
 ところどころ不安になる売り口上を気にしつつも、村人達はポーラリアの押しに負けて箱の中身を口に運ぶ。すると口内に広がったのは、今までにまったく味わったことのない、不思議な食感と刺激だった。
「んっ? なにこれ、甘……すっぱ……?!」
「グミだよ。甘かったりするお菓子にしゅわぱちが入ってくよ」
 販売元のUDCアースでは安価な商品だが、ここより遥かに進んだ製菓技術で作り出されたお菓子である。さぞや魂人達には驚きが強かっただろう。目をまん丸くしている彼らに向けて、ポーラリアはどんどん次のお菓子を差し出していく。

「おねえちゃんを食べる人はいないかしらー! いない? 雪女ですけどー!」
「いや、流石にそれは……」「でも、こっちは美味しいよ!」
 雪女を食べようとする奇特な人間までは居なかったものの、カビの駄菓子はおおむね好評のようだ。甘味をもらった村人の表情も、特に子供たちを中心に明るくなってきて、忘れられかけていた「希望」を取り戻しつつあった――。
「……貴様ら、何をしている?」
 そこに水を差すようにやって来たのは、闇の種族に仕えるオブリビオン達。晩餐会に提供する「食材」確保のために遣わされた部隊である。彼らから見れば、虐げられるべき魂人どもが謎の食物を口にして楽しんでいる様子は、奇行としか映らないだろう。

「晩餐会の人達が食べるのね」
 悪意に満ちみちたオブリビオンに対しても、ポーラリアは全力で営業努力を怠らない。
 まずは雪女カビパンの体で駄菓子盛り合わせチャレンジとかやって見て、食べやすいようにアピールしてみる。
「きっとシュークリームの味がするのよ! するのよ!」
「何を言っているのかさっぱり分からん……が、貴様がこの騒ぎの元らしいな」
 敵からすればカビパンや駄菓子よりも、それを売り捌くポーラリアのほうから「希望」を強く感じたようだ。小さなフェアリーなので可食部はちょっと少なそうだが、それこそメインディッシュの後の|お菓子《デザート》にすれば丁度よさそうだ。

「さあ、我等とともに来るがいい」
「あ~れ~」
 乱暴な闇の種族の配下共によって、駄菓子と一緒にあっさり捕らえられるポーラリア。
 もともと敵の邸宅に「食材」として潜入するのが目的だったのだから、何も問題はない。逆にもっとカビの駄菓子を売り込むチャンスである。
「でも覚えておいて。北海道にシュークリームは存在しないのよ……」
「何処なのだホッカイドウとは……」
 シュークリーム要素は特にない駄菓子の台車に乗せられて、ドナドナと運ばれていくポーラリア。悲しき(?)過去に消えた北海道シュークリームは、果たしてこの異郷の地で復権できるのか。未来の希望は彼女に託された――かもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヘルガ・リープフラウ
❄花狼

死ぬことも許されず、生きたまま食われ続ける苦痛と恐怖
それが永劫に続くだなんて、なんて悍ましい
わたくしたちの手で、これ以上の悲劇を食い止めましょう

ヴォルフと二人、ごく最近この村に住み着いた若い夫婦を装い
村人たちに溶け込めるように、仕事を手伝ったり世間話に興じてみましょう

下層では色々と辛い思いをしたわ
だけど今は、こうしてこの村で
あの時望んでやまなかった平穏な暮らしを送れる
これ以上の幸せはないわ
将来は子供たちと共に、幸せな家庭を築いて……

頭では理解している
この「平穏な暮らし」は、全て敵が仕組んだまやかしなのだと
だけどこの胸にある「未来への希望」は本物
この想いは決して手放しはしない


ヴォルフガング・エアレーザー
❄花狼

人々を永劫の苦痛と恐怖と狂気で苛み
その姿を眺め享楽と愉しむ愉悦
何という悪辣

ああ、勿論だ
斯様な悪魔の所業、断じて許すわけにはいかん
奴らの思惑、俺たちの手で打ち砕こう

ヘルガと共に村に越してきた夫婦を装う
村では本物の村人たちと共に野良仕事を手伝いながら
妻のこと、将来のことなど「希望に満ちた未来」を語ろう

下層でも、ここに来てからも
ヘルガと過ごした日々は、心を温めてくれた
彼女の幸せこそが、俺の幸せ
そのためならば、俺は命を懸けて彼女の笑顔を守ろう

だが、本当に希望を抱いて、幸せに生きるべきなのは
他ならぬ彼ら村人たちの方なのだ
たとえそれが茨の道だとしても
俺たちはその道を切り開いて生きてゆく



「死ぬことも許されず、生きたまま食われ続ける苦痛と恐怖。それが永劫に続くだなんて、なんて悍ましい」
 耳を疑うような狂気の趣向、闇の種族による『永遠の晩餐』の話を聞いたヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)は、体の震えを抑えきれなかった。それは恐怖からではなく、人を人とさえ扱わぬ悪辣な行為に対する怒りによるものだ。
「人々を永劫の苦痛と恐怖と狂気で苛み、その姿を眺め享楽と愉しむ愉悦。何という悪辣」
 その怒りは、彼女の伴侶であるヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)も同様だった。このような非道を耳にして立ち上がらずにおれば、猟兵と騎士の名が廃るというものだ。

「わたくしたちの手で、これ以上の悲劇を食い止めましょう」
「ああ、勿論だ。斯様な悪魔の所業、断じて許すわけにはいかん。奴らの思惑、俺たちの手で打ち砕こう」
 白雪のように儚げな容姿とは裏腹に、強固な信念を言葉ににじませるヘルガ。その想いにヴォルフガングも力強く同意し、二人は敵の襲撃が予知された魂人の村へとやって来る。
「まずは、この村で敵が来るのを待つ」
「怪しまれないようにしませんとね」
 彼らが用意したカバーシナリオは「ごく最近この村に住み着いたばかりの若い夫婦」というものだ。実際に二人は婚姻を結んでいるので虚偽という程でもない。一人で行動するよりも誰かと一緒に居たほうが、より村に溶け込みやすくなるだろう。

「はじめまして。先日こちらに越してきた者です」
「今日はご挨拶も兼ねて、何か仕事を手伝わせていただけないかと」
「まあまあ、ご夫婦で? ようこそいらっしゃいました」
 村に溶け込めるように、ヘルガとヴォルフガングは積極的に村人との交流を持ち、挨拶回りから野良仕事の手伝いを買って出たり、世間話に興じたりする。元より小さな村のコミュニティにおいて、彼らの顔と名前が広まるのにさほど時間はかからなかった。
「"こちら"に来たということは、おふたりともつらい目に合われたのでしょう?」
「でも、ご一緒にこちらに来れたのは救いだったかしら」
 気立てもよく仲睦まじい若夫婦に村人達も気を許し、何かあれば頼ってくれるようにと言う。下層にも勝る闇の種族の脅威に晒されるこの上層では、互いに助け合うことが必要なのだろう。

「下層でも、ここに来てからも。ヘルガと過ごした日々は、心を温めてくれた」
 村人達と共に野良仕事に精を出しながら、ヴォルフガングは妻のこと、将来のことなど希望に満ちた未来を語る。土汚れにまみれた彼の表情は精悍で、ただの死者にはない魂の熱量を感じられた。
「彼女の幸せこそが、俺の幸せ。そのためならば、俺は命を懸けて彼女の笑顔を守ろう」
「そんなに大切に想ってもらえて、あの奥さんも幸せ者だなあ」
 ストイックな彼が情熱的に妻への愛を語る姿には、村人達も心揺さぶられるものがあった。
 愛する者を守り抜くという誓い。過酷な暮らしの中ですり減っていった希望を、まだ彼は失わずに持っている。

「下層では色々と辛い思いをしたわ。だけど今は、こうしてこの村で、あの時望んでやまなかった平穏な暮らしを送れる」
 別の場所ではヘルガが村の女衆と共に水仕事をしながら、井戸端で自分達夫婦の話をしていた。素性がばれるような部分はぼかしているが、内容そのものに大きな誇張はない。
 彼女が下層で多くの過酷を味わい、ヴォルフガングによって救われ、彼と共に生きる事に幸福を感じているのは事実だ。
「これ以上の幸せはないわ。将来は子供たちと共に、幸せな家庭を築いて……」
「ふふ、お熱いわねえ」「なんだか、こっちが照れてきちゃうわ」
 語るほどに仲睦まじさを感じさせる彼女の話に、村人達は「お幸せに」と心からの祝福を送る。まだここに来て短い間に、彼女ら夫婦はすっかり村の一員として溶け込み、その素朴で平穏な暮らしに馴染みつつあった。

(この「平穏な暮らし」は、全て敵が仕組んだまやかし)
 だが、ヘルガも頭では理解している。この仮初めの生活が長くは続かないことを。今、村が平穏を享受できているのも、闇の種族が「食材調達」をやりやすくするための仕込みに過ぎないのであろうことも。自分達はまだ、強大な敵の魔の手から逃れられてはいない。
(だけどこの胸にある「未来への希望」は本物)
 この想いは決して手放しはしないと、彼女は胸の前でぎゅっと拳を握りしめる。今はまだ遠くとも、いつの日かきっと希望は現実にしてみせる。未来を見据える紺碧の双眸は、まるで太陽に照らされた青空のように輝いていた。

(本当に希望を抱いて、幸せに生きるべきなのは、他ならぬ彼ら村人たちの方なのだ)
 そしてヴォルフガングもまた、村での暮らしを経るうちに、自らの希望と使命をより強く自覚していた。自分達夫婦だけが幸せであれば良いなどと、狭量な考えは欠片もない。死してなお苦しみ続け、理不尽に耐え続ける人々を守ること。それは彼が自分自身に課した使命である。
(たとえそれが茨の道だとしても、俺たちはその道を切り開いて生きてゆく)
 自分一人であれば道半ばで斃れてしまうやもしれない。だがヘルガと二人で歩んでいく道だと思えば、どれほど過酷だろうと折れる気はしなかった。彼女から受け取り、彼女と共に紡いできた希望が、胸の奥で燦然と煌めいていた。



「……来たか」
「ええ」
 そして予知された襲撃の日は訪れる。村の外から迫るオブリビオンの群れを、ヴォルフガングとヘルガは身を寄せ合って見つめていた。
 これから自分達は「食材」としてあの輩に捕らえられる。村人の中でも特に強い「希望」を抱いて生活してきた若い夫婦は、さぞや闇の種族の目に極上のディナーとして映るだろう――だが、それは敗北ではなく未来を掴み取るための雌伏。
「必ず救い出そう、俺たちの手で」
「ええ。永遠の晩餐なんて開かせない」
 既に囚われの身となった魂人達を救出するために、二人はあえて激しい抵抗を行わずに捕まり、闇の種族の邸宅に連行される。無事に潜入を成した後、そこからが戦いの本番だ――花狼の夫婦の瞳には、目指すべき未来への道程がはっきりと見えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リュカシオン・カーネーション
<皆の者我々の話を聞いてほしい>×無限(増殖中)
《あのシオンさん(小声)》
何?(小声)
《あの神々しいツチノコさんってシオンさんのユーベルコードですか?》
知らん
『ぐうぐう』
《アズリエルさんは放っておきましょう》(小声)
<この世界は悲しみに満ちている…これからずっと下を向き、全てを諦めて過ごすか?>×無限(増殖中)
《どうしましょう…増殖しているせいで話が入って来ません。》
つーか誰だよこいつら
<…安心するといい、虹炎の神という絶望から人々を救いに現れる神が…>×無限(増殖中)
ん?
《何かカルト宗教の様な話を始めてますね…》
私は衝撃波と神罰と焼却と電撃を混ぜた一撃を増殖中のクソツチノコ達に浴びせまくった



〈皆の者我々の話を聞いてほしい〉
猟兵達が作戦のためにそれぞれの活動を行う中、魂人の村の一角では奇妙な光景があった。
 流暢に人の言葉を操り、村人に向かって演説を呼びかけるのは、奇妙に膨らんだ胴体を持つヘビの群れ――地球で言うところのUMAの一種、ツチノコであった。
《あのシオンさん》
「何?」
《あの神々しいツチノコさんってシオンさんのユーベルコードですか?》
「知らん」
 それを遠巻きに眺めながらひそひとと小声で話し合うのは、精霊王アロナフィナとリュカシオン・カーネーション(転生したハジケる妖狐と精霊王とカオスな仲間たち・f38237)。どうやらこのツチノコは彼女らにも身に覚えのない存在のようだが――実のところ、ソレがリュカシオンの無意識なユーベルコードによるものなのは間違いなかった。

〈この世界は悲しみに満ちている……これからずっと下を向き、全てを諦めて過ごすか?〉
 闇の種族による抑圧下で過酷な日々を過ごす魂人達に、ツチノコ達は真摯に語りかける。
 言っている事は普通に良いことなのだが、その最中もポコポコと新しいツチノコが何処からともかく湧いて増えてくるので、辺りがツチノコだらけになっている。
《どうしましょう……増殖しているせいで話が入って来ません》
「つーか誰だよこいつら」
 無限増殖する謎のツチノコ集団の演説を、リュカシオンとアロナフィナはただ困惑して見ている事しかできない。二人がこの有様なのだから、村人達においては言うまでもなく。「えっ、何……なに???」と頭の上に疑問符が飛び交いまくっていた。

『ぐうぐう』
〈アズリエルさんは放っておきましょう〉
 この状況下でも呑気に寝ている「天災邪神鎌龍アズリエル」は置いておいて、【無限の意味不明なツチノコ】達の話はそれからも長く続いた。よく分からなくても触れたらヤバそうな気配はひしひしと伝わってきたので、誰も止めるに止められなかったのだ。
〈……安心するといい、虹炎の神という絶望から人々を救いに現れる神が……〉
「ん?」
《何かカルト宗教の様な話を始めてますね……》
 それを良いことにエスカレートしだした演説は、熱を帯びて周囲を巻き込んでいく。
 謎のツチノコの言う事など誰が聞くのかと思うかもしれないが、何も知らない村人たちの中には、その言葉に耳を傾けだす人も現れ始めていた。

「よ、よく分かりませんが、その虹炎の神様というのが現れたら、私達は助かるのですか……?」
〈無論〉
 目の前の状況はなにひとつ理解できなくても、言っていることは確かに「希望」だった。明日をも知れない暮らしの中、救いを求める魂人達によって、ツチノコ達は徐々に信奉を集めていき――。
「これ以上は放っとくとマズい気がする」
 そこでリュカシオンはおもむろに右手に電撃を、左手に虹色の炎を宿し、2つを混ぜ合わせて増殖中のツチノコ達に放った。それは衝撃波を伴った神罰の一撃と化し、敵(?)集団を吹き飛ばす。

〈ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!!〉
 どれだけ偉そうにしていても所詮はツチノコ。ちょっと本気を出したリュカシオンに敵う相手ではなく、炎と電撃に焼かれてあっという間に駆逐されていく。これで村には平穏が戻った――と思われたのだが。
「今の攻撃……まさか貴女が虹炎の神様?!」
「いや、そういうんじゃないけど……」
 ツチノコを消し去ったその劇的な活躍ぶりが、新たな「希望」として一部の村人には認識されてしまい。若干ややこしい事になったものの、今回の作戦を考えれば結果オーライだろう。あとは、この騒動をきっかけに闇の種族の目に留まるのを待つだけだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
相も変わらず、闇の種族どもは悪趣味極まりない……
階層をひとつ隔てただけでこの力の差
いったい何故、奴らはここまで過剰に強いのでしょうか……

シスターとして集落に入る
過酷な上層での生活、傷付いている人は絶えない筈
【奉仕】や医療(絶対看護)により人々を【慰め】【鼓舞】する

【祈り】や歌(歌唱)を以って希望を語る
状況は確実に変化しています
永劫に思える闇の支配も、いつか必ず打ち砕かれる
それまで希望を絶やさず、心を強く持ってください



「相も変わらず、闇の種族どもは悪趣味極まりない……」
 以前にも上層での依頼を引き受けた事のあるオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)は、人を人とも思わぬ闇の種族の悪辣さに溜息を吐く。下層のオブリビオンと比べても強大な力を持つ故か、連中の所業はとかく目に余るものがあった。
「階層をひとつ隔てただけでこの力の差。いったい何故、奴らはここまで過剰に強いのでしょうか……」
 4層と5層の間でも、支配層のオブリビオンにここまで圧倒的な実力差はなかった。
 上層の闇の種族を絶対的強者たらしめている理由は何なのか――その答えは見いだせず、今はただ人々の犠牲を阻止することに全力を費やすほか無かった。

「はじめまして。旅の者ですが、暫くこちらに逗留させていただけないでしょうか」
「おや、珍しい。もちろん構いませんとも」
 オリヴィアは戦闘用にスリットの入った修道服を纏い、シスターとして件の集落に入る。
 住人達も決して楽な暮らし向きでは無いだろうが、この地では助け合わねば生きていけない事を自覚しているようで、快く受け入れてくれた。
(過酷な上層での生活、傷付いている人は絶えない筈)
 人々の信頼を得て「希望」となるために、彼女はまず医療や奉仕の知識に基づいた【絶対看護】を始めた。村で怪我人や病人の話を聞けばその人の元に向かい、何分でも何時間でも付きっきりで看護を行うのだ。

「大丈夫です、あなたは必ず治ります」
「ああ……ありがとう、シスターさん」
 患者の手をそっと握って、慰めや励ましの言葉をかけるオリヴィア。ユーベルコードに昇華された彼女の看護には対象に自然治癒を超えた回復力を付与し、怪我や病を癒やす効果があった。
「他にも傷ついている方がいましたら、私に診せてください」
「助かります。医者も薬もまるで足りていない有様でして……」
 積極的な看護活動を通して、彼女は下層以上に困窮した上層の現実を目の当たりにする事となる。逃げ場のない現実で、終わりのない圧政と理不尽に苛まれ続ける日々。これでは希望を持てなくなるのも無理はない。

「状況は確実に変化しています。永劫に思える闇の支配も、いつか必ず打ち砕かれる」
 それでもオリヴィアは人々に向けて希望を語る。ただ言葉で訴えるだけではなく、祈りや歌に乗せて。敬虔な想いをこめて奏でられる彼女の歌声には、聞く者の心を震わせる力があった。
「癒えない傷がないように、この絶望の日々にも必ず終わりが来ます」
「ほんとうに……?」「私達、救われるの?」
 歌声に惹かれて一人、また一人と集まってくる魂人達。死すらも救いにならない世界で忘れかけていた想いが、胸の奥で再び光を灯す。昏く沈んでいた皆の目の色が、少しだけ変わるのが分かった。

「不思議ですね。貴女の話を聞いていると、そんな気がしてきます」
 永劫回帰の苦しみに打ちのめされていた魂人達の心に、オリヴィアの看護と励ましは力を与えた。それは理不尽に屈さない力、絶望に溺れない力――希望と呼ばれる、この世界ではもっとも大切な力だ。
「それまで希望を絶やさず、心を強く持ってください」
 穏やかな微笑をたたえたシスターの言葉に、人々は「はいっ」と明るい調子で答えた。
 これで、この集落の未来はきっと良くなるだろう。そして同時に、この希望をもたらしたオリヴィアが、闇の種族の「食材」として目をつけられたのも、恐らく間違いなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ソラウ・エクステリア
ライズサン人化…金髪の黒服でマント装着
エミリアーノ人化…銀髪で長髪、青い花の髪飾り
(ライズサンがライブのチラシを配ってくれて、エミリアーノがライブの場所も食料を交渉材料に場所確保した。)

皆!こんにちは!僕は時空騎士のソラウ!
今から僕のゲリラライブをするよ!
この歌で皆に希望と元気を思い出してほしいんだ!
さあ!ライブの始まりだ!

ソラウは元気が出るオリジナル曲を村人達の前で歌い、最初は困惑していた村人達は徐々にソラウの曲に引き込まれていき、希望を思い出させる曲を歌う事で村人の心を掴む。最後は村人皆が盛り上がっていた。
アンコールの声もあがる。
皆!ありがとう!じゃあアンコール行くよー!



『ソラウ、やるじゃないか!』
『うん、いい曲ね♪』



『さて…さっきからソラウを見ているオブリビオン達はどう出るのかな?』エミリアーノがそう呟き【情報収集と視力】
『ソラウに手を出せばどうなるか…直接体で教えてやりたいんだがな…はあ。』ライズサンはため息をついた。

(よーし!これで僕を攫いたくなったはずだ!にししし!)



「皆! こんにちは! 僕は時空騎士のソラウ!」
 暗い雰囲気に包まれた村に、突如として響き渡る底抜けに明るい声。何事だろうと魂人達が振り返れば、そこにはマイク機能付きの「時空騎士銃槍」を構えた少女――ソラウ・エクステリアが立っていた。
「今から僕のゲリラライブをするよ!」
 村の中央広場を即席のライブステージにした彼女は、無邪気な笑顔で皆に呼びかける。
 自分の歌声を全世界に伝えたいという夢を抱いて、故郷クロノドラグマ星を飛び出してきたソラウ。その想いは、闇と絶望が支配するダークセイヴァー上層に来ても変わってはいなかった。

「ライブ……って、なんだ?」
『まあまあ、騙されたと思って聞いてみてくれよ』
 村のあちこちでライブのチラシを配り、村人を呼び込むのは「時空龍ライズサン」。ソラウの相棒であり強大なパワーを秘めたドラゴンだが、今は金髪の黒服でマント装着を装着した人間の姿に化けている。
『会場の提供、ありがとうございます』
「いえいえ、これくらいならお安い御用ですとも。場所代も頂いておりますしね」
 他方では、青い花飾りを着けた長い銀髪の少女に変身した「時空龍エミリアーノ」が、村長らしき初老の魂人に頭を下げている。他世界から持ち込んだ食糧を交渉材料にして、ソラウのライブ場所の確保を取り付けたのは彼女だ。

「この歌で皆に希望と元気を思い出してほしいんだ!」
 二人の時空龍の助力もあってライブ開催にこぎつけたソラウは、集まってくれた村人達の前で堂々としたマイクパフォーマンスを披露する。観客はまだ興味半分困惑半分といった様子だが、ここから如何にライブに惹き込んでいくかは彼女の力次第だ。
「さあ! ライブの始まりだ!」
 開幕の宣言が上がると機材から軽快なサウンドが流れ始め、音圧が人々の鼓膜を打つ。
 胸の中で昂ぶる気持ちを思いっきり吐き出すように、ソラウは力いっぱい歌いだした。

「なに、この歌?」「初めて聞く……けど、なんだか気持ちいい」
 ソラウが歌うのは、皆に元気を出してもらおうと考えて作ったオリジナル曲。最初は困惑していた村人達も徐々に彼女の曲に引き込まれていき、リズムに合わせて身体を揺らすようになる。
「みんな、ノッてきたかな? じゃあ、次の曲いくよ!」
 会場が温まってきたところで、続けて歌うのは「希望」をテーマにした曲。絶望的な現実に打ちのめされ、忘れかけていた希望を思い出してもらおうと想いを込めた歌声は、村人達の心をしっかりと掴んだ。

「いいぞー!」「最高だ!」
 困惑から始まったライブは、最後には村人皆が気持ちをひとつにして盛り上がる、最高のステージとなっていた。割れんばかりの拍手と喝采に混じって「アンコール!」の声も上がる。
「皆! ありがとう! じゃあアンコール行くよー!」
「「わぁぁぁぁぁーーーっ!!!」」
 これが時空を股にかける歌姫の力か。地底世界で新たに生まれたファンに向けて、元気よく歌声を届けるソラウ。その姿は、まるで地底に降りてきた太陽のようにキラキラと輝いていた。

『ソラウ、やるじゃないか!』
『うん、いい曲ね♪』
 裏方としてライブを支えた二体の時空龍――ライズサンとエミリアーノも、これには大満足の様子。観客からはやや離れた場所でステージを眺めつつ、ソラウの晴れ姿を微笑ましそうに見守っていた。
『さて……さっきからソラウを見ているオブリビオン達はどう出るのかな?』
 ふとエミリアーノがそう呟き、村外れの方角に視線を向ける。彼女らは単に村人を励ます為だけにライブを開いた訳ではない。この村が「食材調達」を行うオブリビオンの監視対象に含まれているのなら、この件で間違いなくソラウはターゲットに入ったはずだ。

『ソラウに手を出せばどうなるか……直接体で教えてやりたいんだがな……はあ』
 残念そうにため息を吐くのはライズサン。本気を出して反撃すれば、食材調達に遣わされる程度の下っ端如きは蹴散らせるだろうが、それでは本命の目的が果たせない。今回の依頼は闇の種族に囚われた魂人達を、『永遠の晩餐』が始まる前に救い出す事なのだから。
(よーし! これで僕を攫いたくなったはずだ! にししし!)
 気を揉んでいる時空龍達とは対照的に、ステージ上のソラウには自分を囮とすることに一切躊躇はなかった。ここで自分がターゲットになれば、他の村人達も襲われないし、消耗せずに敵の邸宅に潜り込める。彼女からすれば良い事ずくめの作戦だ。

 ――かくして計画通り、「希望」を与えたソラウ達は最上級の食事として認められる。
 闇とともに密やかに忍び寄る、オブリビオンの魔の手。だが、それを待ち受ける彼女らの表情に、恐れや不安の色は微塵もなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『瘴気満ちたる領域』

POW   :    気合で影響を抑え込む

SPD   :    影響が出る前に素早く目的を達成する

WIZ   :    影響を逃れる為に何らかの備えを用意する

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 魂人の村に潜伏し、それぞれの形で闇の種族が好む「希望」を披露してみせた猟兵達。
 食材調達に訪れたオブリビオンから「上等な食材」として目をつけられた彼らは、計画通り捕らえられることとなる。

『喜ぶが良い。偉大なる方々の食卓に並び、その舌を喜ばせる事のできる栄誉を』

 村を襲ったオブリビオン達はそう言って猟兵を縛り上げ、檻付きの馬車に放り込んで、有無を言わさず連行していく。
 荷台で揺られながら運ばれていった先は、威圧的で荘厳な佇まいをした大きな屋敷。この辺り一帯を支配する闇の種族の邸宅だ。

『晩餐が始まるまで間もなくだ。それまで此処で大人しくしていろ』

 屋敷の門をくぐった猟兵達は、その地下にある「食材置き場」に直行で閉じ込められる。
 頑丈な鉄格子がはめられた牢獄の内部は瘴気で満たされており、強い息苦しさと共に気力が削がれていくのを感じる。晩餐が始まる前に「食材」が暴れたり、逃げ出すのを防ぐ措置だろう。猟兵であっても辛いのだから、一般の魂人にとってはなお苦しい環境のはずだ。

 猟兵達よりも先に食材として攫われてきた魂人は、この牢獄のどこかに居るとみていい。
 彼らを救出して、屋敷から脱出する。言うは易いが行うは難しだ。邸宅のあちこちには警備のオブリビオンや、晩餐の招待客としてやって来た闇の種族がうろうろしているのだから。

 口惜しいが今の猟兵達にはまだ、複数の闇の種族を同時に相手取れるほどの力はない。
 誰にも気付かれずに邸宅を抜け出すことができれば、それが最良――タイムリミットは晩餐会の始まるまでだ。

 永遠の晩餐を開かんとする敵の胃袋の中から、果たして猟兵達は無事に脱出できるのか。
 瘴気満ちたる牢獄から、彼らの逃避行は始まった。
ソラウ・エクステリア
シオンf38237と共闘
さて、どうしようかな?
『浄化魔法…』
『これで苦しくは無いな…』
魂人発見!大丈夫?!
『回復魔法も…』
よかった!元気になった!えっ?さっきのライブ楽しかった?ありがとう!
「フハーハハハハ!当然だ!俺達の娘だか…むぐっ」
「貴方、ソラウ、静かに」
あっ…お母さん!お父さん!どうしてここに?
「時空騎士の任務よ。後、ライブ良かったわ。」
…うん
『脱出手順は確保してます!』【情報収集+ハッキング】
「ええ…では行動を開始しましょう」
お父さん苦しそうだよ?
「ごめんなさい!貴方」
「げほ…気にするな魂人は10人なら俺が担げる。」
「私は浄化魔法をエミリアーノさんと使いながら進むわ」
じゃあ、脱出だ!


リュカシオン・カーネーション
ソラウf38698
【情報収集+視力+索敵】状況を把握し、敵に見つからない様に行動
脱出ルートを見つける
医術で魂人を回復するアロナちゃんの魔法で回復

《瘴気は私には効かないです…》
こっそり結界術にオーラ防御で瘴気を防いだ状態で侵入出来た
助けた魂人達には虹炎の神って言われ続けている
【UC+迷彩+範囲攻撃+属性攻撃】
迷彩に熱と音を消す、範囲を広げて動ける様になった魂人達も見えないこれで完璧
アロナちゃんが魂人を出口に案内する
ん?あれは…ソラウ?
あっそうだ悪戯しよう☆
変装(闇の種族)
貴様、一体どうやって抜け出した?(変声)
『え?あっ…むぐっ?!』
貴様…他に仲間がいるな…言え(ふふ…可愛い☆)
『んーんー!』
まずその指を折ってみるか?爪を剥がすのも悪くないな(何かに目覚めそうでござる☆)
『んー…おい、シオン悪ふざけは大概にしろ』(シオンを払った後、衝撃波と電撃を混ぜた攻撃)
ぎゃあぁぁぁ!ライズサ…ン(UCで声は消えている)
『ったくこんな時にふざけるなよ』
そのまま出口にウチは引っ張られ、皆に怒られた。トホホ



「さて、どうしようかな?」
 瘴気が充満した檻の中に、他の仲間達と一緒に押し込められたソラウ。食材として敵地に潜入するという作戦は上手くいったものの、次はこの「食材置き場」から無事に抜け出さないといけない。
『浄化魔法……』
『これで苦しくは無いな……』
 幸いにしてソラウの仲間には、瘴気を中和できるエミリアーノがいた。彼女の魔法で体調を維持しつつ、ライズサンの力で檻を抜け出し、他に囚われている人を探す。この場所には自分達以外にも運ばれてきた魂人達が、大勢いるはずだ。

「魂人発見! 大丈夫?!」
「う、うぅ……」
 捜索開始からほどなくして、ソラウは牢獄の端にうずくまっている1人の魂人を見つける。だが、その者は瘴気の影響で見るからに衰弱しきっており、声を発する気力すらない様子だった。
『回復魔法も……』
 すぐさまエミリアーノが魔法をかけて、魂人の心身を治療する。屍人のように蒼白だった顔に血の気が戻り、虚ろだった瞳に光が灯る。時空さえも操る龍の魔力にかかれば、この程度の瘴気の対処はさほど難しいものでは無かった。

「うぅ……あれ、息が楽に……」
「よかった! 元気になった!」
 魂人が無事に回復したのを確認して、ぱっと笑顔を浮かべるソラウ。
 よく見ればその魂人の顔には覚えがある。村でライブを開催していた時、観客として聴いてくれていた村人の一人だ。あの後、どうやら一緒に捕まってしまっていたらしい。
「あっ、貴女はさっきのライブの! すごく楽しかったです!」
「えっ? ほんと? ありがとう!」
 胸の中に希望として今も残っているあの感動を、魂人は素直に伝える。それを聞いたソラウも心から嬉しそうに笑って――その時、背後でがたりと音がしたかと思うと、牢獄中に響きそうな大きな笑い声が聞こえてきた。

「フハーハハハハ! 当然だ! 俺達の娘だか……むぐっ」
「貴方、ソラウ、静かに」
「あっ……お母さん! お父さん!」
 ぱっとソラウが後ろを振り返ってみると、そこには口を塞がれている壮年の男性と、どこかソラウに似た面影のある妙齢の女性が。この二人の名はホロギアスとソルティア。何を隠そう、ソラウの両親である。
「どうしてここに?」
「時空騎士の任務よ。後、ライブ良かったわ」
 宇宙の秩序を守るクロノドラグマ星の騎士として――そして、可愛い娘の晴れ舞台とあらば、この二人は時空を超えて何処からともなく駆けつける。一体いつから見守られていたのかは分からないが、母親からの率直な感想に娘は「……うん」と照れながら返すしかできなかった。

『脱出手順は確保してます!』
「ええ……では行動を開始しましょう」
 この間にもエミリアーノは邸宅の情報収集を行い、敵に見つからずに外に出られるルートを検索していた。それを受けて【時空騎士の夫婦見参】したソラウの母こと時空魔導騎士ソルティアが、脱出開始を宣言する。
「お父さん苦しそうだよ?」
「あっ、ごめんなさい! 貴方」
「げほ……気にするな」
 その間も口を塞がれていた、父にして夫ことホロギアスの顔が青ざめていたりもしたが。
 それはさておき熟練の時空騎士二人の助太刀は、この場において非常に有り難い。戦力としても勿論、魂人の救助もこれで大いに捗るだろう。

「魂人は10人なら俺が担げる」
「私は浄化魔法をエミリアーノさんと使いながら進むわ」
「じゃあ、脱出だ!」
 エクステリア家の騎士達とその仲間は、それぞれ役割を分担して魂人を救助しながら邸宅の外を目指す。
 衰弱した魂人の治療はソルティアが、運搬はホロギアスが。先導と警戒はソラウが行い、徘徊する闇の種族の連中に見つからないよう、慎重かつ迅速に進んでいく――。



《瘴気は私には効かないです……》
「ありがとアロナちゃん」
 一方その頃、リュカシオンとアロナフィナのコンビも魂人救出の為に牢獄で活動中だった。
 瘴気を防ぐオーラと結界術をこっそり纏ったまま侵入を果たした彼女らは、苦しんでいる魂人を見つけると、医術と精霊王の魔法を駆使して治療にあたる。
「あ、ありがとうございます、虹炎の神様……!」
 回復した魂人のうち村で面識のできた者からは、彼女は相変わらず神様と言われ続けていた。事実、闇の種族の住まう屋敷まで助けに来てくれたのだ、彼らにとっては救いの神以外の何者でもないだろう。

「少し本気で行くぞ……」
 治療を終えたリュカシオンは【虹炎覇王・原初の自由】を発動。虹色の炎で陽炎のように光を歪め、熱や音すらも消し去る特殊な迷彩を作り上げる。効果範囲を広げてやれば、動けるようになった魂人達も同時に見えなくすることも可能だ。
「これで完璧」
《さあ、こちらです》
 姿の消えた魂人達を、アロナフィナが出口まで案内する。事前に情報収集や索敵を行って脱出ルートは把握済みだ。あとは敵に見つからないように、慎重を期してゆっくりと移動する。

「ん? あれは……ソラウ?」
 その道中、リュカシオンは偶然にも見知った相手に出会う。自分達と同様、魂人を救出して脱出中のソラウだ。どうやら他の仲間とは分かれて先行偵察中のようで、迷彩を張っているこちらの事にはまだ気付いていないらしい。
(あっそうだ悪戯しよう☆)
 悪戯心の芽生えたリュカシオンはおもむろに虹の炎で身を包み、闇の種族の姿に変装する。
 そして音もなく背後から忍び寄ると、ソラウの口を手で塞ぎ、ドスのきいた声で囁きかけた。

「貴様、一体どうやって抜け出した?」
「え? あっ……むぐっ?!」
 声色も変えているので、ソラウには相手がリュカシオンだとは分からない。本当に敵に見つかってしまったと勘違いして焦り、青ざめている。この脱出作戦において一番避けなければいけなかった闇の種族との遭遇――その最悪が起きてしまったのだから無理もない。
「貴様……他に仲間がいるな……言え」
「んーんー!」
 その反応を内心で(ふふ……可愛い☆)と面白がりながら、リュカシオンはソラウを脅迫する。
 もちろんソラウはそんな脅しには屈しない。口を塞がれていても目つきだけで反抗の意志を示す彼女は、年若くとも一端の騎士なのだ。

「まずその指を折ってみるか? 爪を剥がすのも悪くないな」
 ソラウが折れないのを良いことに、リュカシオンの悪ノリはエスカレート。いかにも闇の種族が言いそうな脅し文句をぽんぽん口にしては、ビクリと微かに相手が反応するたびニヤケた顔を抑えきれていない。
(何かに目覚めそうでござる☆)
『んー……おい、シオン悪ふざけは大概にしろ』
 彼女の暴走を止めたのは、ソラウと一緒にいたライズサンだった。力ずくで腕を払い除けると、虹炎の迷彩に向かって電撃と衝撃波を放射。たとえ正体を隠していても、時空龍である彼には全部お見通しだったようだ。

「ぎゃあぁぁぁ! ライズサ……ン」
 ふっ飛ばされたリュカシオンの悲鳴は、自らのユーベルコードの効果で何処にも響かない。
 変装が解けて正体を現した彼女を見て、ソラウは目を丸くし、ライズサンは呆れた顔でため息を吐く。
「あっ、あなたは?!」
『ったくこんな時にふざけるなよ』
 すぐにはっちゃけたがるリュカシオンの性癖はいつもの事だが、流石に今回は冗談では済まない。余計な事をしている間に本物の闇の種族に見つかってしまったら、自分達だけでなく魂人達まで危険に晒されるのだから、悪ふざけの度を越していると言わざるをえないだろう。

《来るのが遅いと思ったら、まったく何をやってるんですか》
 その後、ソラウ達の手によって出口まで引っ張られていったリュカシオンは、合流したアロナフィナも含めた全員に怒られた。逆に「怒られる」だけで済んでいるあたり、何だかんだで彼女のことを皆信頼しているのかもしれない。
「トホホ」
 リュカシオンも流石に懲りただろうか? ともあれ、脱出自体は無事に成功。このまま何事もなく逃げ切れるようにと、一行は改めて気を引き締めて行動を再開するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

真木・蘇芳
エリンと同行、アドリブOK
運ばれながら大声で話す
あぁ、喰われるならどんな料理が良いか
まるでウミガメのスープの話を嬉々としながら思い出す
ステーキかそれともスープか、あぁ燻製も面白そうだ
塩蒸焼きも捨てがたい、風味を閉じ込めるからな
まあ食べられる気は毛頭ないからこそ話す
気が狂ってると思われてもそれはそれだ
今回は晩餐、なら食べ物の話でもしなけりゃ話に箔も付かない
だがやたらと手を掛けた料理を上げる理由は
生食は嫌いだからだ、あれは誰が考えたんだ?
よっぽど卑しいぜ、素材を食べるようなものだ
エリンにも食べ物の話をする
好きな物は何か
馬車の運転手が黙れと言うまで、黙れが合図位に抜け出そうか
まあエリンの新技見たいし


エリン・エーテリオン
蘇芳f04899
二人は擬人化したままだが、
ブラッドムーンは連行されないように立ち回る。食べ物関連でエキドゥーマが騒ぐ。隙を見てエリンは隠れる
『アーエリンノフリハタイヘンデスネアイツウマクカクレタヨウダナ』
『マスターは外道相手に3分も待ってられないからね…大丈夫?回復魔法!』
『ミナサンコッチヘ!』
『速く!』
ブラッドムーンは魂人を1箇所に集める
エキドゥーマは鏡を床に置く
〜森の中〜
情報収集と視力と索敵で状況判断し、
虹炎…武装!虹炎鏡姫!
エキドゥーマがこっそり鏡を持ってあるのでその辺の木を鏡にして鏡の世界へGO
エキドゥーマ達が入っている檻に繋がっているな、おーい
『マスター!皆、助けが来たよ。』
鏡の世界に魂人を引き込んだ
さて蘇芳さんとも合流出来たし…
ん?ある場所の鏡から闇の種族達の声が聞こえる

この日は謎の敵に闇の一族が大量虐殺された上に奴隷が大量に逃げた日らしい。その敵の名は…虹炎の神アルコイリス
へぇー同じ虹炎使いにこんな強い猟兵がいるのか…
よ〜し、まずは脱出だ!








我々がUCの具現化に壊滅など…恥だ



「あぁ、喰われるならどんな料理が良いか。ステーキかそれともスープか、あぁ燻製も面白そうだ」
『この瘴気の煙で燻製に? あるかもね』
 瘴気に満ちた「食材置き場」に運ばれながら、大声でそんな話をするのは蘇芳と擬人化中の邪神龍エキドゥーマ。檻つきの馬車で揺られながら、彼女らはずっとこの調子で会話を繰り広げていた。
「塩蒸焼きも捨てがたい、風味を閉じ込めるからな」
 以前聞いたウミガメのスープの話を嬉々として思い出し、飄々と笑いながら語る蘇芳。
 実際に食べられる気は毛頭ないからこその発言だが、傍目には恐怖で気が狂ってしまったと思われても仕方ないだろう。だが、それはそれで問題はない。

「今回は晩餐、なら食べ物の話でもしなけりゃ話に箔も付かない」
『どうせなら手をかけて貰いたいよね』
 蘇芳達がこんな話をしているのには勿論理由がある。食べ物関連で騒いで敵の気を引いている隙に、エキドゥーマの仲間であるエリンは身を隠し、皆を脱出させるための準備を整える作戦なのだ。
『アーエリンノフリハタイヘンデスネ アイツウマクカクレタヨウダナ』
『マスターは外道相手に3分も待ってられないからね……』
 この作戦で一番大変だったのは、悪者を即殴り飛ばしたいエリンを宥める事だったかもしれない。もう一人の邪神龍であるブラッドムーンも、彼女が連行されないように立ち回るのは大変だったと小声でぼやいた。

「お前は何がいい?」
『そうね、新鮮なままいただくならお刺身とか?』
 檻付きの馬車が邸宅の敷地内に入ってからも、蘇芳とエキドゥーマはまだ呑気に話を続けている。
 喰われたい調理法を聞かれたエキドゥーマは適当に答えるが、それを聞いた蘇芳はちょっと顔をしかめる。彼女がさっきからやたらと手を掛けた料理を上げる理由は、生食が嫌いだったかららしい。
「あれは誰が考えたんだ? よっぽど卑しいぜ、素材を食べるようなものだ」
「おい、そろそろ黙れ、狂人ども」
 そこで彼女らの話を遮ったのは、馬車の運転手だった。いい加減に五月蝿くて我慢の限界だったのだろう、その眉間には青筋が寄っている。余計なことを考えずに大人しくしていれば良いのだと、彼としては警告するつもりだったのだろうが――。

「んじゃ、そろそろ抜け出そうか」
 その言葉がまるで合図だったかのように、蘇芳はおもむろに【戦車への鉄拳】を発動。
 腕を覆う「パンツァーパトローネ」を起動させ、その推進力で加速させた必殺の拳を、運転手目掛けて撃ち込んだ。
「排撃の、パンツァーファウスト!!」
「なに……ぐはッ?!」
 突然の「食材」からの反抗に相手は反応できず、一撃のもとに息絶える。
 此処まで来れば蘇芳達に大人しくしている理由はない。騒ぎが広がる前に魂人達を救い出し、さっさと脱出するつもりだ。

『大丈夫? 回復魔法!』
『ミナサンコッチヘ!』
 地下にある「食材置き場」にやって来ると、エキドゥーマがすぐさま治療を施し、ブラッドムーンが誘導を行う。有害な瘴気で弱らされ、晩餐の食卓に並ぶのを待つばかりだった魂人達は、一も二もなく彼女らに従った。
『速く!』
「は、はいっ」
 獄中の一箇所に魂人達を集めると、その中央あたりの床にエキドゥーマが鏡を置く。
 闇の種族の配下に捕まる前に、こっそり懐に隠し持っていたものだ。何の変哲もない普通の鏡だが、これこそが皆を敵地から脱出させるためのカギだった。


「みんな、そろそろ牢屋についたかな?」
 その頃エリンは邸宅からほど近くにある森の中に身を潜め、遠目に様子を窺っていた。
 仲間達を乗せた馬車が邸宅に入っていくのを見送って、待機すること少々。そろそろ頃合いかと判断すると、準備していたユーベルコードを発動させる。
「虹炎……武装! 虹炎鏡姫!」
 彼女の髪が金色に染まり、その身体から放たれた虹色の炎が、近くに立っていた樹木を鏡に変化させる。
 この【虹炎武装・虹炎鏡姫】はあらゆる物質を鏡に変える力と、鏡を通じて次元を移動する力、2つの能力を持っていた。

「ちゃんとエキドゥーマ達が入っている檻に繋がっているな」
 鏡の世界に飛び込んだエリンは、エキドゥーマに持たせておいた鏡の出口を見つけ出すと、中から「おーい」と声をかける。すると向こうも気が付いたようで、見慣れた少女の笑顔がぱっと映し出された。
『マスター! 皆、助けが来たよ』
「ほ、本当ですかっ」
 鏡を通じて邸宅の中と外が繋がれば、あとは簡単。エリンは魂人達を次々に鏡の世界に引き込んで保護していく。ここなら瘴気も入ってこれないし、屋内を普通に移動するよりも敵に見つかる確率は格段に低い。

「へえ、これがエリンの新技か」
 エキドゥーマ達に同行していた蘇芳も、一番最後に鏡の世界に入ってくる。彼女がこの作戦に手を貸した理由のひとつには、エリンの新たなユーベルコードを見てみたいという興味もあったようだ。実際、その力は次元さえも跳び越える驚異的なものであった。
「そういやエリンは好きな物あるか?」
「え、私ですか? そうだなあ……」
 道中の会話をまだ少し引きずっているのか、エリンに対しても食べ物の話題を振ってみたり。そんな他愛無い話をする余裕さえ今の彼女らにはあった。まだ油断はできないものの、鏡の世界を通っていけば邸宅から森までは一直線だ。

「さて蘇芳さんとも合流出来たし……ん?」
 いざ脱出と思ったところで、エリンは邸宅のある場所から、闇の種族達の声が漏れてきているのに気付く。こっそりと耳を澄ませてみれば、なにやら神妙そうな会話が聞こえてきた。
『それにしても、敢えてこの日に宴を行うとは、あの方も何をお考えなのでしょう』
『我らの同族が虐殺され、大量の奴隷どもに逃げられたあの事件……忘れたくとも忘れられぬ』
 この晩餐に集まった闇の種族達は、かつて出現した謎の敵によって大きな被害を受けたらしい。人ならざる彼らの時間感覚では、それが何十年、何百年前の事なのかは分からないが――それが丁度今日と同じ日付だったらしい。

「忌まわしき虹炎の神、アルコイリスめ……」
(へぇー同じ虹炎使いにこんな強い猟兵がいるのか……)
 その名前に親近感を抱くと同時に、エリンは心強さを感じた。もし闇の種族達の話が真実ならば、連中にとっても脅威になる者がこの世には存在する事になる。今はまだ打倒叶わずとも、いつの日か自分も同じ高みに立てるかもしれない。
「よ~し、まずは脱出だ!」
「なんだ随分機嫌がいいな」
『でも賛成、早く移動しよう!』
 士気の上がった彼女は蘇芳やエキドゥーマ達と一緒に魂人を連れて、鏡の世界を移動する。
 彼女らが去っていった後、邸内の闇の種族がぽつりと零した言葉が、鏡に反響する――だが、それを聞いて真意を理解する者は、誰もいなかった。

『我々がユーベルコードの具現化に壊滅など……恥だ』

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒城・魅夜
悪霊たるこの私に対してこんな瘴気が役に立つと思わぬことです
呪詛を満たした結界を展開し逆に瘴気を喰らい
吸血にも似た効果として力を満たさせてもらいましょう
アイテムでもある私の髪「殺め髪」をもって
拘束を斬り裂き自由の身となります
鉄格子なども紙切れ同然ですね、ふふ

闇に紛れて行動しつつUCを発動
胡蝶の追跡指定対象はこの牢獄全体
無数に感覚を増幅し捕われた人々を見つけましょう

発見したら捕虜の方々を優しさを込めたオーラで包み込み
瘴気の影響から守りつつ気配も隠し脱出です

……ああ、忘れていました
ちゃんと礼儀は守りませんとね
牢獄の壁に一筆残しておきましょう

「家畜ですら牧場を去る時期を知るが
愚者は貪欲の限度を知らぬ」



「悪霊たるこの私に対してこんな瘴気が役に立つと思わぬことです」
 しょせんは生物を想定した罠など、魅夜にとってはなんの痛痒もない。「食材置き場」に押し込められた彼女は、呪詛で満たした結界を展開し、逆に瘴気を喰らって自らの力に還元しつつあった。
「力を満たさせてもらいましょう」
 さながら吸血鬼が血を啜るかの如く、呪いの類は彼女の糧となる。十分に力を蓄えるのを待ってから、魅夜は自分の髪の毛を刃物のように硬質化させ、拘束を斬り裂き自由の身となった。

「鉄格子なども紙切れ同然ですね」
 自らの「殺め髪」をもって牢を抜け出した魅夜は、そのまま地下の闇に紛れて魂人の捜索を行う。
 その為に発動するのは【紅き胡蝶は赤き闇夜に舞い狂う】。自らの血から生まれる紅い蝶を偵察に放ち、身一つでは探しきれない範囲をカバーする。
「無慈悲なる鮮血よ漆黒の胎に恍惚の翅を解き放て」
 牢獄全体を追跡対象として散っていった蝶の群れは、全て本体と五感を共有している。
 無数に増幅された感覚を活かして、彼女は隅々まで牢獄を調べ上げ、捕らわれた人々を見つけだしていった。

「ご無事で何よりです」
「貴女は……」
 魅夜はすぐに発見した魂人達の元に向かうと、自分の時と同じ方法で彼らの拘束を解き、檻から解放する。瘴気の影響でみな衰弱しているものの、まだ晩餐会に供された者はいないようだ。
「大丈夫です、ここからは私が付いていますから」
 彼女は優しさを込めたオーラで魂人達をそっと包み込み、瘴気の影響を受けないように保護する。すると皆の顔色が多少良くなった。
 このオーラの帳には気配隠しの効果もあり、物音なども多少は誤魔化してくれる。怪物ひしめく邸内ではまさに命綱となるだろう。

「さあ、脱出です」
「は、はいっ」「ありがとうっ」
 魅夜の導きによって「食材置き場」を抜け出した魂人達は、闇の種族に見つからないよう息をひそめて移動を開始する。捜索時に活用された紅蝶の群れは、安全なルートを確認するための索敵要員として、この時も役に立っていた。
 そして魅夜自身も彼らの後に続こうとして――ふと、何かを思い出したように振り返る。
「……ああ、忘れていました。ちゃんと礼儀は守りませんとね、一筆残しておきましょう」
 鋭く尖らせた毛先で牢獄の壁を削り、文字を刻む。それは後ほど「食材」の確認に来るであろう連中に向けたメッセージだ。急ぎとは思えない達筆さで、そこにはこう書かれていた。

「家畜ですら牧場を去る時期を知るが 愚者は貪欲の限度を知らぬ」

 愚かな「永遠の晩餐」を繰り広げる闇の種族に対する、痛烈な罵倒を込めた別れの言葉。
 これを読んだ時の連中の顔を想像して、魅夜は仄かな微笑みを浮かべながら牢獄を立ち去るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヘルガ・リープフラウ
❄花狼

無事屋敷に忍び込むことは出来ましたね
でもここからが本番です
決して油断せず、一人でも多くの人質を救い出しましょう

自身とヴォルフに浄化のオーラを張り巡らせ
防ぎきれない分は毒耐性で抵抗

囚われた魂人たちを見つけたら、弱っている人に応急手当を施し
そっと「四季彩の箱庭」を触れさせ【ティル・ナ・ノーグの箱庭】へ収納
瘴気の毒も、異空間の内部にまでは及ばないでしょう
楽園の清浄な空気を吸えば、少しは瘴気の影響も薄れるはず
ここにいる間に、どうか少しでも体を休めて

牢獄を脱出したらヴォルフのUCで姿を消し、
音を立てたり目立たないよう注意しながら忍び足で脱出を試みる
信じて。まだ希望は残っているから。


ヴォルフガング・エアレーザー
❄花狼
敵を欺き屋敷内部に忍び込む。ここまでは作戦通り
だが、ここでしくじれば今までの努力が水の泡だ
油断せず、慎重に事を進めよう

内部に満ちる瘴気は気合いと集中力で気力を保ち、毒耐性で耐えつつ浄化
ヘルガの「箱庭」に魂人たちを限界まで収納したら
【黒き森の狩人】で自身とヘルガの姿を消す
監視が手薄になった頃を見計らって鍵開けで牢屋の鍵を開け脱出
野生の勘で敵の気配を察知しながらルート確保し
目立たないように息を殺し、物音や気配で悟られないよう注意しながら
忍び足で慎重に歩を進める

諦めるな
君たちにはまだ待つ人が、帰る場所がある
必ず皆で生きて帰るんだ
いつの日か、邪悪なる支配の軛を断ち、反撃の狼煙を上げるために



「無事屋敷に忍び込むことは出来ましたね。でもここからが本番です」
「ここまでは作戦通り。だが、ここでしくじれば今までの努力が水の泡だ」
 希望に満ちた村人を演じる事で、夫婦揃って「食材」として連行されたヘルガとヴォルフガング。敵を欺き屋敷内部に潜入するという第一目標は達成されたが、本人達は安堵する事なく気を引き締めていた。
「油断せず、慎重に事を進めよう」
「ええ。一人でも多くの人質を救い出しましょう」
 二人が押し込められたのは「食材置き場」という名の地下牢獄。同じように攫われてきた魂人達も、この何処かにいるはずだ。互いに意思統一と作戦確認を行ったのち、彼らは行動を開始する。

「これで暫くは保つはずです」
「助かる。ならば今のうちに」
 まずはヘルガが自身とヴォルフに浄化のオーラを張り巡らせ、獄中に満ちる瘴気を中和する。
 それでも防ぎきれない分は各自耐性や気合いで凌ぎ、気力を奪われないよう集中を維持しながら、囚われた魂人達の捜索に掛かる。
「……居ました。ご無事ですか」
「う、うぅ……」
 広いとはいっても地下での話だ、探すのはさほど難しくはない。だが、ヘルガ達よりも長くこの場所に居たためか、見つかった魂人達はみな衰弱しており、逃げる気力を失っていた。

「すぐに手当を。ヴォルフ、見張りが来ないか外を見ていて」
「心得た」
 ヴォルフガングが周囲を警戒している間に、ヘルガは弱っている魂人に手早く応急処置を施し、持ってきたハーバリウムペンダント「四季彩の箱庭」にそっと触れさせる。このペンダントは彼女のユーベルコードで創造された【ティル・ナ・ノーグの箱庭】への入り口であり、抵抗しない対象を任意に収納することができる。
「瘴気の毒も、異空間の内部にまでは及ばないでしょう」
 箱庭に吸い込まれていった人々を迎えるのは咲き誇る花々、暖かな陽だまり、透き通った空気、遥かなる歌声。どれも上層では望むことさえ烏滸がましかった、美しき楽園が広がっていた。

「綺麗……」「ここは、天国か……?」
 先程まで暗い牢獄に押し込められ、瘴気の毒に苦しんでいた魂人達は、夢でも見ているのかと辺りを見回す。だが、肌に受ける日差しも花々の感触もどれも幻覚ではない、異空間にある現実だ。
「ここにいる間に、どうか少しでも体を休めて」
「あ……ありがとうございますっ」
 楽園の清浄な空気を吸えば、少しは瘴気の影響も薄れるはず。優しい声でヘルガが呼びかけると、魂人達は感極まって涙ぐみながら礼を伝えた。食材として喰い殺されるのを待つ時間は、どれだけ恐ろしく、心細く――それゆえに救われた感謝も深かったのだろう。

「ここに居た方々は、全員保護できました」
「よし。では脱出しよう」
 ヘルガの「箱庭」に魂人達を限界まで収納すると、ヴォルフガングが【黒き森の狩人】を発動する。これは自分自身と装備に加えて、身体に「ユルの徴」を描いた対象1人を透明化させるユーベルコードだ。
「射干玉の暗き森に棲む姿なき狩人よ。汝の加護を、我と我が同胞に」
 狼騎士の右肩に刻まれたルーンが魔力を発し、ヘルガの身体に描かれた同様のルーンが共鳴する。これによって二人の姿は誰の視界にも捉えられなくなるが、まだ油断はできない。このユーベルコードは体温や物音まで消してくれるほど便利な代物ではないからだ。

(丁度監視も手薄になっている。脱出するなら今が頃合いだ)
 ヴォルフガングは針金を使って素早く牢屋の鍵を開けると、息を殺して「食材置き場」を脱出し、野生の勘を研ぎ澄ませて気配を探る。付近に敵がいないと確認できれば、ハンドサインでヘルガに付いてくるよう指示を送った。
(まだ、ここで見つかるわけにはいかない)
 牢を出てからも邸内には多くの闇の種族がうろついており、その中の1人にでも見つかれば脱出計画は全てが水泡に帰す。音を立てたり目立たないよう細心の注意を払いながら、ヘルガは先導する夫の背中を追った。

(この先から敵の気配がする。少し遠回りになるが、迂回するぞ)
(ええ。焦りは禁物ですから)
 安全第一でルートを確保し、敵に気配を悟られないよう忍び足で邸内を移動する二人。
 ひりつくような緊張感の中で脱出路を模索する彼らの耳に、ふとペンダントから声が聞こえてくる。
「……私達、ほんとうに助かるのかな」
 それは箱庭に収納された魂人の呟き。牢を出られたとはいえ楽観できないのは彼らも同じだろう。もし脱走したのがバレて捕まれば、もっと酷い仕打ちが待っているに違いない――過酷な投獄によって、彼らの希望は折れかけていた。

「諦めるな。君たちにはまだ待つ人が、帰る場所がある」
 そんな魂人達の心を鼓舞するように、ヴォルフガングは小声で、だが力強く声をかける。
 この過酷な上層においても人々はまだ全てを失ったわけではない。待っている者達の元に必ず帰してみせると、彼は断言した。
「必ず皆で生きて帰るんだ。いつの日か、邪悪なる支配の軛を断ち、反撃の狼煙を上げるために」
「反撃って……そんな事が」「でも、もしかしたら」
 蒼き狼騎士の視線はここを無事に脱出するだけでなく、さらに先の事まで見据えていた。
 今はまだ、強大な闇の種族に対する反撃の目処は立たない。それでも諦める事なく抵抗を続ければ、絶対に希望は切り拓ける――それは楽観ではなく、彼自身の戦歴から導きだされた事実だ。強固な意志の宿った言葉が、魂人達の心を揺さぶる。

「信じて。まだ希望は残っているから」
 ヘルガもヴォルフガングの言葉を後押しするように、優しくも芯のある声で呼びかける。
 二人の励ましによって、魂人達は幾分か気力を取り戻したようだ。じたばたと喚いて不安を訴えるよりも、おとなしく箱庭で待機することを選ぶ。
「信じます。あなた達の事を」
「ああ」「ええ」
 この信頼を決して裏切る訳にはいかないと、二人はこれまで以上に慎重に慎重を期して歩を進める。邪悪なる者達の目をかいくぐり、屋敷の外を目指す――息の詰まるような脱出口は、少しずつゴールに近付きつつあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

桐府田・丈華
【心情】
うーん、流石にがっちり縛られるてると何もできないや…
早いところ脱出する準備もしておかないとだね
【行動】
バトルキャラクターズで拘束を解いて行動します
影響が出る前に脱出準備をしておきます
人がいる場所、脱出経路、相手の戦力や行動範囲等
素早く動いて確認
他の猟兵さんとも連携できるなら連携して行動します
ある程度準備が出来たら事を起こすまで耐えておきます
(他のプレイヤーさんとの連携OKです)


ポーラリア・ベル
カビパンお姉ちゃ…んは村の方でゴロゴロしてるわ!しまった
ここは冬より闇っぽい瘴気で正気が危ないわ…!ふらふらする…

見張りが視線を逸らす隙を狙って【怪力】と【属性攻撃】の氷で縛ったのを凍らせて破壊
素早く【アート】で縛られたポーラの氷像を作ってごまかし。
(セクシーで美味しそうなポーズ)

牢屋の隙間からこっそり小さな体と【怪力】でねじ逃げて
あっちこっちの牢屋を、床這ったり天井飛んだりベルも鳴らさず隠れながら向かうよ。【地形の利用】
魂人さんの牢屋の隙間に【フェアリーランド】の壺を差し込んで触る様に促し。
【アート】で魂人さんの氷像を代わりに作り置いときつつ、どんどん魂人さんを壺に入れて隠れて脱出するよ!



「うーん、流石にがっちり縛られるてると何もできないや……」
 拘束されたまま地下の「食材置き場」に放り込まれた丈華は、軽く身をよじりながら辺りを見回す。ここまでは大人しく連行されざるを得なかったが、計画通り敵地に潜入することは出来た。
「早いところ脱出する準備もしておかないとだね」
 拘束のほうはユーベルコードを使えば何とかなる。だが、同じように捕まっている人達を助け出し、誰にも見つからないように脱出するには下調べも必要だ。充満する瘴気の問題もある――焦らず、されど迅速に彼女は行動を開始する。

「カビパンお姉ちゃ……んは村の方でゴロゴロしてるわ! しまった」
 一方こちらはポーラリア。一緒にいた仲間とは離れ離れになってしまい、一人で牢屋に閉じ込められてしまった彼女はちょっとピンチな様子である。小さなフェアリーの身体を闇の種族の瘴気が容赦なく侵蝕する。
「ここは冬より闇っぽい瘴気で正気が危ないわ……! ふらふらする……」
 しれっと発言で韻を踏んでいる辺り、まだちょっとは余裕があるのかもしれないが。このまま長居すればアウトなのは間違いない。まだ体力も気力も残っているうちに、彼女は氷の魔力を身体にみなぎらせた。

(こっちを見てる人はいないね。よし!)
 見張りが視線を逸らす隙を狙い、ポーラリアは自分を縛っているものを凍らせて、力任せに破壊する。
 フェアリー離れした怪力によって拘束はパリンと砕け、ひとまず自由の身を取り戻す事には成功した。
(このままじゃバレちゃうから、これで)
 さらに彼女は縛られた自分の氷像を素早く作りだし、脱出をごまかすために牢屋の中に置いておく。本人のアート性が発揮されたそれは精巧かつセクシーで美味しそうなポーズをしており、遠目に本物と区別するのは難しいだろう。

「ねえ、それボクのも作ってくれない?」
「いいよ!」
 同じ頃、【バトルキャラクターズ】を召喚して拘束を解いた丈華は、ポーラリアの作った氷像を見て声をかける。まだ力の余っていた冬の妖精は二つ返事でそれに応えると、鉄格子の隙間からこっそり小さな体をねじこんで牢屋を抜け出した。
「こんな感じでいい?」
「うん、バッチリ」
 合流を果たした二人は丈華の身代わり氷像を置いて、本格的に邸宅を脱出する準備を始める。
 一人より二人、二人よりたくさん。丈華が召喚したバトルキャラクターズは、偵察や情報収集にも大いに力を発揮するはずだ。

「人がいる場所、脱出経路、相手の戦力や行動範囲……分かる範囲で確認してきたよ」
 瘴気の影響が出始める前に、素早く動いて情報を集める丈華。ここまで分かれば事を起こすのに支障はないだろう。床にカードを並べて簡単な図面を描き、救出及び脱出までのルートを考える。
「魂人のみんなが捕まってるのは、こことここと、ここ」
「わかったわ、行ってくる!」
 それを元にしてポーラリアはあっちこっちの牢屋を飛び回り、床を這ったり天井スレスレを飛んだりして、羽音もベルの音も鳴らさぬよう慎重に隠れながら魂人の元に向かう。見張りの目がこちらに向く前に、急いで救出を済まさなければ。

「ねえ、ここから出たかったら、これに触って」
「えっ……あなた、誰?」
 囚われの魂人を発見すると、ポーラリアは牢屋の隙間に【フェアリーランド】に繋がる壺を差し込んで触るように促す。この中に入っておけばこれ以上は瘴気に蝕まれることも無いし、ひとまずは安全なはずだ。
「急いで!」
「う、うんっ」
 このまま此処に居ても喰われるのを待つだけならと、皆は一も二もなく壺に触れ、妖精の世界に吸い込まれていく。誰も居なくなった牢の中には、自分達と同じように氷像を代わりに作り置きつつ、彼女はこの調子でどんどん魂人を救い出していった。

「ただいまー」
「おかえり。上手くいったみたいだね」
 程なくしてポーラリアが壺を抱えて戻ってくると、丈華が笑顔で迎える。無事に魂人達の保護が済めば、後はいよいよここから逃げるだけ――並べたカードの図面を再確認後、二人は連携して「食材置き場」を脱出する。
(出口は?)(こっち!)
 徘徊する闇の種族や警備に見つからないよう、密やかに邸内を駆けていく人間と妖精の少女達。入念な準備に加えて幸運にも恵まれた彼女らは、誰にも気付かれることなく外に出ることに成功したのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
なるほど、私は頑丈な方(毒耐性・環境耐性・呪詛耐性)ですが、それでも身体が重い
早くしなければ、魂人たちが逃げる気力すら失ってしまう

魂人たちは衰弱している筈
あらかじめ治療に特化したナースの姿に変身しておく
牢屋の格子を【怪力】で捻じ曲げ脱出

【目立たない】よう足音を立てず、魂人たちの苦悶の声を辿って(情報収集)探し出す
見つければ再度【怪力】を以って格子を抉じ開けて【救助活動】
大丈夫ですか、皆さんを助けに来ました

食事ができる人には携帯保存食、濃い味付けが気付けになる筈
衰弱の程度が酷い人には簡易救急セットで【癒天使の治療】を施す(医術・薬品調合)
まずは賦活と治療を、それから脱出します



「なるほど、私は頑丈な方ですが、それでも身体が重い」
 数々の冒険で過酷な環境にも耐え、毒や呪詛にも耐性のあるオリヴィアでさえ、この「食材置き場」に充満する瘴気には負荷を感じていた。作戦の都合上、ここに放り込まれるまでは大人しくしていたが、これは急いだほうが良さそうだ。
「早くしなければ、魂人たちが逃げる気力すら失ってしまう」
 自分でもこの状態なら、より長く収監されている魂人達はもっと衰弱している筈。早急な救護が行えるようにと、彼女は治療に特化したナースの姿にあらかじめ変身してから、牢屋の格子に手をかけた。

「普通の魂人を捕らえておくには十分でしょうが、私には……」
 オリヴィアが両手に力を込めると、常人離れした怪力によって鉄格子が捻じ曲げられていく。
 容易く牢から脱出した彼女は、目立たないよう足音を立てずに「食材置き場」を移動し、辺りの物音に聞き耳を立てる。すると、近くから啜り泣きと苦悶の声が聞こえてきた。
「うぅ……誰か、助けて……」「ぐすっ……食べられるなんて、嫌だよぉ……」
 食材として攫われ、瘴気により抵抗の気力を奪われた者達の、弱々しく、微かな声をオリヴィアは聞き逃さない。気取られぬように最新の注意を払いながら、声を辿って彼らの囚われている牢を探し出す。

「大丈夫ですか、皆さんを助けに来ました」
「えっ……誰?!」
 格子越しにオリヴィアが声をかけると、牢の中でうずくまっていた魂人達がぱっと顔を上げる。
 予想通り衰弱しているが、幸いにも目立った外傷などは見られない。晩餐会の食卓に並べられる都合上、これでも闇の種族の基準では"大事に"扱われていたようだ。
「少し離れてください。今、ここから出られるようにします」
 自分が脱出した時と同じように、再度怪力を以って鉄格子を抉じ開ける。頑丈な鉄の棒がぐにゃりと捻じ曲がるのには皆驚いていたが、その表情はすぐに喜びへと変わった。闇の種族が支配するこの場所まで、本当に助けが来るのは諦めかけていたのだろう。

「何か食べられそうですか? こちらをどうぞ」
「あ、ありがとう……おいしい」
 オリヴィアは牢から助け出した者の中で、食事ができる者に携帯保存食を配る。日持ちするように濃い味付けがされた干し肉やチーズなどは、栄養補給と同時に丁度いい気付けにもなる。
 問題は食べる気力もないほどに衰弱の程度が酷い者達だ。死にはしなくともこの状態での脱走は困難だろう。一刻も早い治療が必要だ。
「天来せよ、癒しを司る大天使。我が手に汝の権能を宿し賜え――!」
 オリヴィアは用意していた簡易救急セットによる【癒天使の治療】を施し、瘴気の毒を高速回復させていく。
 ナース服をまとった乙女が献身的な看護と医術の知識によって、人々を癒やしていく姿はまさに白衣の天使であった。

(まずは賦活と治療を、それから脱出します)
 最低限、自分の足で立って歩けるようになれば、ここから逃げ出すための目処も立つ。
 代償による疲労も押してオリヴィアは迅速な治療を行い、皆の回復を待ってから脱出の指揮を取る。
「皆さん、私に付いてきてください」
「は、はい……っ」
 警戒を厳にして先行するオリヴィアに続いて、息をひそめながら牢獄を抜け出す魂人達。
 無事に「食材置き場」から出られてもまだ油断はできない。敵の目をかいくぐり、いずれ来るであろう追っ手に備える――何が起きても対処できるように、彼女は神経を研ぎ澄ませていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 集団戦 『狂忠のヴァンパイアバトラー』

POW   :    ブラッドサッカー
噛み付きが命中した部位を捕食し、【血液と生命エネルギー】を得る。
SPD   :    ヘモイドミスト
レベルm半径内に【自身の血から生み出した赤い霧】を放ち、命中した敵から【体力や魔力】を奪う。範囲内が暗闇なら威力3倍。
WIZ   :    ゴアフェスト
【一定以上のダメージを受けた際】に覚醒して【コウモリの翼と獣の頭を持つ悪魔じみた姿】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。

イラスト:あさぎあきら

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 地下の「食材置き場」から囚われの魂人達を救い出し、脱走に成功した猟兵達。
 敵の目をかい潜ってどうにか外に出て、ほどなくすると先程まで居た邸宅の中から騒ぎが聞こえてくる。どうやら、自分達が逃げたことにあちらも気付いたらしい。

『食材共が消えている……だと?』
『馬鹿な。誰も気が付かなかったのか?!』

 あちらも黙って「食材」の脱走を許すはずがない。特に邸宅の主には晩餐の主催者としての面子もある。来賓達の前で恥をかかされる訳にはいくまいと、本気で捕まえにくるはずだ。
 対して、こちらは体調が万全ではない魂人達を大勢引き連れている状態。逃げ足のペースを上げようとしても限度はあり、いずれ追いつかれるであろう事は明らかだった。

「……見つけましたよ、脱走者の皆様」

 やがて猟兵と魂人達の前に姿を現したのは、執事服に身を包んだ吸血鬼の集団だった。
 その名を『狂忠のヴァンパイアバトラー』。主たる闇の種族に絶対的忠誠を誓った吸血鬼の執事だ。その職務に違わぬ丁寧な物腰と慇懃な態度で、彼らは脱走者に宣告する。

「どうか速やかに、我らと共にお戻りを。このままでは晩餐に間に合わなくなると、主はいたくお怒りです」

 主から与えられた仕事を果たすことが彼らの存在意義。その為ならば己の身命を平然となげうち、いかなる危険で残忍な行為も淡々とこなす。交渉や妥協の余地は一切なく、逃げ延びたくば倒すしか道はない。

「反抗するのであれば、致し方ありません。本来なら無傷で連れ戻すのが望ましいのですが、手足の一本や二本はもいでも構わないと、主から許可をいただいております」

 物騒な物言いを平然と放ちながら、ヴァンパイアバトラー達は臨戦態勢に入る。
 闇の種族の部下とは言っても、彼らの戦闘力は1人1人が下層では領主クラスの吸血鬼と同格――あるいはそれ以上だろう。主より下僕の証たる『紋章』を与えられ、強化された力は侮れるものではない。

 この追っ手を魂人達と共に見事突破して逃げ切るか。それとも「永遠の晩餐」に逆戻りか。
 困難続きだった猟兵達の救出行は、いよいよクライマックスの時を迎えようとしていた――。
真木・蘇芳
エリンと同行
なんだろうな、今まで一人だった筈が
気が付いたら後輩が出来て…

エリンと二人して執事を嗤ってやる、お前食材無しに何作るんだってな
食材選びってのは料理人やその弟子達が探して責任持って取ってくるもの
それをそこいらの唐変木に選ばせりゃこんな結果になるんだ
猟兵と区別も出来ないやつに
│道化師《クラウン》は腹を抱えて笑い転げる
勿論これも相手の冷静さを殺ぐ為、UCはカウンター
相手が仕掛けてこなけりゃ意味がない

エリン、おまえは何か成し遂げたい事はないのか?
そうだな、不釣り合いに家族を作るとか
なあ、正直狂った世界におまえは何か見えたかい?
夢や希望はあったかい?
教えてくれよ、でなければ俺は笑っていられない


エリン・エーテリオン
主は理を馬鹿にした力を持つ虹炎の神は完全にこの世から消えたのだと知らしめるため、この日を選んだ
ふと夜景の方へ目をやる
雲が無く満点の星空、大きい虹
動悸が止まらないあれは…
虹色の髪、腰2つと背中に1つの羽衣
周りに星型の虹炎があるあの姿は…
その存在と目が合った時、発狂した
アハハハ!


そうか、守れたか…私は致命傷だ
庇ったんだ私は魂人を守るためにいつもの状況把握をしていて良かった

ブラッド…ムーン蘇芳さんなら作戦通り敵を集めた…ら
『エリン!シャベルナ!』
蘇芳さ…ん後は

『えっ?マスター?ねぇ…』

『…ヤルゾ』
範囲攻撃+電撃+神罰相手を一箇所に集めるが上手く行かない二人共に動揺している




❛兄弟!俺が言う事は1つ!お前の自由の力でボコボコにしろ!行け!❜


トゥントゥン……







鳴り響け!魂の音!




あっ敵発見!
天候操作雨!虹炎の槍雨!
敵は雨の槍に貫かれる

ん?ええ!敵が一斉に攻撃してくる
罠使いとカウンターと衝撃波…
虹炎の罠!派手に吹き飛べ!


蘇芳さん!一緒に派手に同時攻撃だぜ!

私はパーンチ!
流石は蘇芳さんだぜ!…あれ?意識が…



(なんだろうな、今まで一人だった筈が、気が付いたら後輩が出来て……)
 強敵と対峙する最中でも、蘇芳の心は不思議な落ち着きと感慨に包まれていた。追っ手に追いつかれてしまった窮地だと言うのに、まるで不安を感じない。それは隣にいる仲間――エリンの存在があるからだろう。
「やりましょう、蘇芳さん!」
 まっすぐな正義感を燃やして、敵を睨み付けながら叫ぶエリン。ここでヤツらを倒し、魂人達を守り抜くという意志がひしひしと感じられる。先輩としてはこの純粋さは好ましく感じるし、支えてやりたいと思う。やる気を高める理由としては十分だった。

「お前ら食材無しに何作るんだ?」
「そうだ!」
 蘇芳はエリンと二人して、追っ手のヴァンパイアバトラー達を嗤ってやる。今回の晩餐で連中がメインディッシュにしていたのは「希望に満ちた魂人」。それを食材置き場から丸ごと奪われて、心中さぞ穏やかではないだろう。
「食材選びってのは料理人やその弟子達が探して責任持って取ってくるもの。それをそこいらの唐変木に選ばせりゃこんな結果になるんだ。猟兵と区別も出来ないやつに」
 きちんと確保の段階で「食材」を吟味していれば、邸内に猟兵の侵入を許すようなヘマはそもそもしなかったはず。相手の落ち度と神経を逆撫でするように、|道化師《クラウン》の蘇芳は腹を抱えて笑い転げる。勿論これも相手の冷静さを殺ぐ為――彼女の構えるユーベルコードはカウンター技だ、相手が仕掛けてこなければ意味がない。

「最もかつ厳しいご指摘です。食材調達を担当した者には、主から厳罰が下されるでしょう」
「ですが我々の今の役目は、盗まれた食材を取り返すことのみ」
 しかし敵はその挑発に乗って怒りのままに襲ってくる事はなかった。主君に対する狂気じみた忠誠心と職務への忠実さが、彼らの精神を支えている。その視線の中心にいるのは、あくまで猟兵ではなく魂人達だ。
「我々の狙いを引き付けるのが目的だったのでしょう」「ですが……」
 ヴァンパイアバトラー達は自らの血から赤い霧を生み出し、魂人達を包み込むように放つ。
 これは生命から魔力や体力を奪う【ヘモイドミスト】。常に暗闇に覆われたダークセイヴァーにおいては威力が倍増するユーベルコードである。瘴気で衰弱している魂人が、こんなものを喰らってしまったら――。

「危ない!」
「え……きゃっ」
 気がつけば、考えるよりも前にエリンは体が動いていた。普段から自然体で行っていた状況把握が役に立ったのだろう、誰よりも先に敵の行動を予測し、赤い霧の範囲から魂人を突き飛ばす。引き換えに自らが霧に呑み込まれながら。
「ぐ、ああぁぁぁっ!!」
「エリン!」『ムチャシヤガッテ!』
 紋章の力で強化された吸血執事のユーベルコードは、猟兵からも根こそぎ力を奪い取る。
 慌てて蘇芳と邪神龍ブラッドムーンが霧を吹き飛ばすが、その時にはすでにエリンは甚大なダメージを負った後だった。

「ええ。そうくると思いました」「貴方がたなら必ず、我が身に代えてその者達を守ると」
 至極冷静にヴァンパイアバトラー達が言う。だが、それに返事をする余裕は誰にもなかった。
 倒れ込んだエリンの元にブラッドムーンとエキドゥーマ――多くの戦いを共にした二体の邪神龍が駆け寄る。蘇芳は、その場から動くことができなかった。
「そうか、守れたか……私は致命傷だ」
『エリン!』『マスター!』
 身を挺して魂人を守った代償は重かったが、それでも「良かった」とエリンは思っていた。
 ここで彼らを守りきれなかったら自分は一生後悔するだろう。それに比べればこの程度どうってことはない、なにせ一度は死んで転生した身だ。

「ブラッド……ムーン蘇芳さんなら作戦通り敵を集めた……ら」
『エリン! シャベルナ!』
 今にも途切れそうな浅い呼吸を繰り返しながら、エリンは作戦を続行するようにと伝える。
 ブラッドムーンは必死に呼びかけるが、果たして彼女には聞こえているのか。焦点が虚ろな瞳は、ただ空だけを見上げている。
「蘇芳さ……ん後は」
 そして、止まる。ぼんやりと瞼を開いたまま、瞳から生気が消える。猟兵であっても、邪神龍の力を得た魔王であっても、決して不死の存在ではない――戦いの中で生命を落とす事だって、ありうる。

『えっ? マスター? ねぇ……』
『……ヤルゾ』
 動かなくなった主を前に、エキドゥーマが呆然と呼びかける。だが、エリンが応える事はない。
 いち早く思考を切り替えたのはブラッドムーンだ。刺し殺すような眼光で執事どもを睨み付け、拳に稲妻をスパークさせる。
『スオウモ、テハズドオリニ!』
「分かってるさ」
 蘇芳は冷静に、拳を構えて待機している。「後は……」に続くエリンの言葉を、彼女はおそらく予想できていた。だからこそ自分はここで取り乱すべきではない。それは託された役目を果たしてからだ。

(エリン、おまえは何か成し遂げたい事はないのか? そうだな、不釣り合いに家族を作るとか)
 心の中で後輩に呼びかけながら、蘇芳はブラッドムーンとエキドゥーマの戦いを静観する。二人とも電撃を浴びせて敵を一箇所に集めようとしているが、主が倒れた動揺から抜けきれておらず、誘導が上手くいっていない。
(なあ、正直狂った世界におまえは何か見えたかい? 夢や希望はあったかい?)
 動揺を見てとった敵は反転攻勢に移り、【ブラッドサッカー】の牙が邪神龍達の血肉を捕食せんとする。悪い流れが続く中、蘇芳はまだ動かない。それは諦めか――あるいは、まだ信じているのか。彼女が再び立ち上がることを。

「教えてくれよ、でなければ俺は笑っていられない」

 夜の戦場に響く蘇芳の言葉。それを朧げに聞きながら、エリンは夜景を見上げていた。
 雲ひとつない満天の星空に、大きな虹がかかっている。あんな虹、ここに来た時にはあっただろうかと、今にも消えそうな意識でふと考える。
(動悸が止まらない、あれは……)
 肉体は着実に死に近づいているのが分かるのに、胸の奥だけが奇妙に熱い。瞼を閉じる力さえ失われた彼女には、目を逸らすこともできず――夜空の虹から「何か」が姿を現すのを、ただ見ていた。

(あの姿は……)
 虹色の髪、腰に2つと背中に1つの羽衣。周りに星型の虹炎を灯した、強大な力を持つ何か。
 それは、今際の際のエリンにだけ見えた幻なのかもしれない。事実、他の誰も気付いた様子はない。それは何をするでもなく、地上で横たわっているエリンに視線を向け――。
"兄弟! 俺が言う事は1つ! お前の自由の力でボコボコにしろ! 行け!"
 頭の中で声がした、ような気がした。トゥントゥンと自分の中から聞こえる音は、いつしか心臓ではなく心の奥から響いていた。こちらの理解が及ばない、圧倒的で強大な存在――それと目があった時、彼女の正気は吹き飛んだ。

「アハハハ! 鳴り響け! 魂の音!」

 轟ッ、とこれまでにない勢いで噴き上がる虹色の輝き。天をも焦がさんばかりに燃え上がる炎の中から、エリンは立ち上がった。それを見た蘇芳も、邪神龍達も、敵であるヴァンパイアバトラー達も――誰もが驚愕する。
「やっぱりな。おまえはここで終わるやつじゃない」
『エリン!』『マスター!』
「馬鹿な、確実に息の根は止めたはず!」
 【ヘモイドミスト】に奪われたはずの体力や魔力が完全に回復している。そればかりか倒れる前を遥かに上回るパワーが満ち満ちているのがわかる。死の瀬戸際に追い込まれた事で、あるいは先程の謎の存在との邂逅が、エリンに新たな力を覚醒めさせたのだ。

「あっ敵発見! 天候操作雨! 虹炎の槍雨!」
 【虹炎の神・estrella・arcoiris】の力を手に入れたエリンは、昂ぶる気持ちのままにそれを行使する。指を振るだけで夜空は一面の暗雲に覆われ、虹色の炎でできた槍が雨のように敵に降り注ぐ。
「がは……ッ! この力はまるで……!」「主から聞いたことがある……虹炎の神エストレジャ・アルコイリス……!」
 虹色の槍雨にその身を貫かれながら、ヴァンパイアバトラー達はふと主人の話を思い出す。
 今回の『永遠の晩餐』は、かの理を馬鹿にした力を持つ虹炎の神は、完全にこの世から消えたのだと知らしめるため、あえて日取りを選んだという――だが、まさか再び現れたというのか? かつて闇の種族をも恐れさせた脅威の力を、継承する者が?

「あり得ない……!」「この力、主に向かわせる訳には!」
 ヴァンパイアバトラー達が信じようが信じまいが、目の前にいるエリンの強さは事実だった。
 もはや無事に確保すべき「食材」ではなく、生命にかえてでも倒すべき「敵」。そう判断した彼らは刺し違える覚悟で、新たな虹炎の神に襲い掛かる。
「ん? ええ! 敵が一斉に攻撃してくる」
「慌てるな。問題ないさ」
 鬼気迫る敵の総攻撃にはエリンも一瞬動揺したが、落ち着くように蘇芳がアドバイスを送る。
 色々と予想外なことは起こったが、結果的に「冷静さを失った敵が突っ込んでくる」という展開は当初の予定通り。つまり作戦はまだ継続できるという事だ。

「これが俺の自慢の拳だ!!」
「ぐはっ?!」
 ヴァンパイアバトラーの噛みつきに合わせて、蘇芳は【戦場の死神】を発動。自慢の拳で敵を殴り飛ばすと同時に、受け止めた【ブラッドサッカー】の力をコピーし、一時的に我が物とする。
「虹炎の罠! 派手に吹き飛べ!」
 同時にエリンは地面に這わせた虹炎をカウンタートラップとして利用し、踏み込んできた敵の足元で爆発させる。「ぐがぁっ?!」と獣のような絶叫を上げながら、炎に焼かれた吸血鬼共が吹き飛んでいく。

「蘇芳さん! 一緒に派手に同時攻撃だぜ!」
「ああ、いいさ」
 先程まで死の淵にいたとは思えない快活さでエリンが拳を握り、それに合わせて蘇芳も笑いながら身構える。覚醒した虹炎の神の力と、敵から奪い取ったユーベルコードの力。ふたつの力を拳に込めて、体勢を崩した敵群に全力疾走し――。
「パーンチ!」「終わりだ!」
「「馬鹿、な……ぐああぁぁぁぁッ!!?」」
 呼吸を合わせたふたりの同時攻撃が、ヴァンパイアバトラー達を骸の海まで吹き飛ばす。
 その後に残るのは燃え尽きた塵芥のみ。それさえも風に吹かれて、すぐに跡形もなくなる。

「流石は蘇芳さんだぜ! ……あれ? 意識が……」
 見事な逆転を収めたエリンであったが、やはりその力は相応に負担のあるものだったのだろう。
 蘇芳と勝利を称え合う間もなく、その姿はいつもの格好に戻り、糸が切れた人形のように崩れ落ちる。
「やれやれ」
 無茶をする後輩をそっと受け止めて、蘇芳は苦笑する。何が起こったのか彼女も全てを把握している訳では無いが――それは後から聞くのでも良いだろう。こちらも質問したい事は山ほどある。
 心の中でしか聞けなかった問いを、改めて投げかけてみるのも良いか。そんなことを思いながら、再び晴れた夜空を見上げるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
いたくお怒り、か
まぁ、それはそうだろう
闇の種族とは言え、罪人とされれば下層に追放されてしまうからな!

最も避けたいのは、私を無視して魂人たちを連れ戻すのを最優先とされてしまうこと
なので主を虚仮にして挑発、怒りの矛先を自身に向ける

冷静(落ち着き)に攻撃を【見切る】
【受け流し】ながら【足払い】で【体勢を崩させ】、【カウンター】の肘を打ち込む(功夫)

流石に強敵、噛みつきからの吸血を喰らい――しかし永劫回帰は不要です
超至近距離、これも私の間合いですから
拳に纏う【覇気】が稲妻(電撃・全力魔法)を帯びる
【怪力】を以って【雷迅拳】を叩き込む!



「いたくお怒り、か。まぁ、それはそうだろう。闇の種族とは言え、罪人とされれば下層に追放されてしまうからな!」
 自分達を捕まえに来た「狂忠のヴァンパイアバトラー」に対して、オリヴィアは嘲りを込めて言い放つ。定命の者からすれば等しく邪悪な怪物たる闇の種族だが、その内部にも秩序や法はあり、時には罪人として裁かれる者がいることを彼女は知っていた。
「……我らの主が罪人になるなどあり得ません」「ですが、その名誉は守らせて頂く」
 食材風情に逃げられるような失態を、大勢の招待客の前で演じたとなれば、名誉の失墜は必至。支配者たるに相応しくないと断じられる事もあり得ない話ではない。敵はそれを認めようとはしないが、表情にはありありと怒りと不快感が滲んでいた。

「どうした、図星を突かれたか?」
 鉄面皮の崩れたヴァンパイアバトラーを、なおも挑発するオリヴィア。"狂忠"とまで呼ばれる連中が主を虚仮にされればどんな反応をするかは予想できた事だ。彼女の目的は怒りの矛先を自分に向けさせる事にある。
(最も避けたいのは、私を無視して魂人たちを連れ戻すのを最優先とされてしまうこと)
 職務に忠実な連中だが、それ以上に主への侮辱は看過できまい。案の定、ヴァンパイアバトラー達は先にこちらを始末すると決めたのか、殺意の籠もった眼差しで牙を剥き出しにする。

「……どうやらその生命、惜しくはないようだ」
 取り繕った礼儀をかなぐり捨てて、吸血鬼の本性を露わにし。人間を遥かに超えた運動能力で噛みつき攻撃を仕掛けてくるヴァンパイアバトラー達。おぞましき【ブラッドサッカー】の一撃には、獲物の血肉と生命エネルギーを根こそぎ奪い取る力がある。
「そうだ、来るがいい」
 オリヴィアは落ち着いて聖槍を構え、柄を使って敵の爪牙を受け流す。冷静に対処すれば見切れない攻撃ではない――逸らすと同時に柄尻で相手の足を払い、体勢を崩させたところにカウンターの肘を打ち込む。

「ぐっ……!」「やってくれる!」
 顔面に肘打ちをくらったヴァンパイアバトラーは鼻血を吹いて仰け反るが、その間隙に別の吸血執事が襲い掛かる。今度こそ防御の暇は与えないと、研ぎ澄まされた牙がオリヴィアの肌に突き刺さる!
「お、オリヴィアさん!」
 それを見た魂人のひとりが、咄嗟に【永劫回帰】を発動しようとする。取り返しのつかない代償はあれど、ここで猟兵に死なれては自分達も破滅することは決まっている。それに、命掛けで牢獄まで助けに来てくれた人を、見捨てられるわけがない。

「流石に強敵――しかし永劫回帰は不要です」
「えっ?」
 だがオリヴィアは冷静なまま魂人を制止する。敵の吸血攻撃を喰らっても、まだ死ぬと確定した訳では無い。むしろ彼女は、この状況を窮地であると同時に好機であると捉えていた。
「超至近距離、これも私の間合いですから」
「なにを……ッ?!」
 片腕を犠牲に噛みつきを受け、残したほうの腕に力を込める。拳に纏った覇気が稲妻を帯び、バチバチと音を立てて雷光を散らす――それを見て敵が驚愕してももう遅い。槍だけが彼女の武器だと思い込んだ、その侮りが運の尽きだ。

「煌めく雷霆よ、打ち砕け――!」
 密着寸前の間合いから放たれた【雷迅拳】が、ヴァンパイアバトラーの土手っ腹に叩き込まれる。
 腰の捻りと腕力にものを言わせた一撃は、本物の稲妻にも劣らぬ速度に到達し、轟音と共に標的を吹き飛ばした。
「ぐはぁッ!!!?」
 その打撃で致命傷を負ったヴァンパイアバトラーはごろごろと地べたを転がり、二度と起き上がってくることは無かった。腕に残った牙を引き抜き、すぐにまた拳を構え直すオリヴィア。
 その隙のない振る舞いは、まだ残っている連中に驚きと危機感を与え、彼女が「食材」でも「目障りな邪魔者」でもなく、「敵」なのだと認識させるには十分なものだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴォルフガング・エアレーザー
❄花狼

雑魚とはいえ、敵の実力は下層でのそれ以上に強化されている
何よりこちらは、ヘルガが「箱庭」に収容させた者以外にも大勢の魂人を連れている
ここまでの努力を無駄にするわけにはいかない

敵の攻撃は野生の勘で見切り、鉄塊剣で反撃しなぎ払う
ただし敵の攻撃が魂人たちに向かいそうになったら
自らが食らうことも厭わず彼らを「かばう」ことを優先

敵に噛みつかれたと同時に傷口から【ブレイズフレイム】の炎を吹き出し
そのまま口内へと延焼させ、地獄の業火で臓腑まで焼き尽くす

ヘルガの援護と激痛耐性で傷に耐えようと試みる
魂人たちが【永劫回帰】を使う機会が最小限で済むように
生きろ
こんな世界でも、君たちにはまだ未来があるのだから


ヘルガ・リープフラウ
❄花狼

ここまで来て追いつかれるなんて…
貴方たちを犠牲になどしない
必ず皆で生きて帰りましょう

「箱庭」たるペンダントを壊されないように懐に入れて守り
祈り込め紡ぐ聖歌【涙の日】
味方には癒しを、敵には神罰を
いくら強化されようと、この歌が、祈りが、命が続く限り、
裁きの光は貴奴らを焼き滅ぼすまで追い詰める

回復の手は決して緩めない
ヴォルフの力は、彼自身の血を媒介に発揮するもの
人々も彼も、わたくし自身も、決してここで死ぬわけにはいかない
出来るだけ【永劫回帰】に頼らずに、致命傷を負わずに済むように

自らの心を犠牲にして生きる力
でもそれは決して、邪悪の輩を喜ばせるためのものじゃない
いつか「本当の幸せ」を掴むために



「ここまで来て追いつかれるなんて……」
 あと一歩という所で現れた「狂忠のヴァンパイアバトラー」を睨み、悔しげに言うのはヘルガ。
 即座に魂人達を守るように前に出て戦闘態勢に移る。それは彼女の夫であるヴォルフガングも同様であった。
(雑魚とはいえ、敵の実力は下層でのそれ以上に強化されている。何よりこちらは、ヘルガが「箱庭」に収容させた者以外にも大勢の魂人を連れている)
 背を向けて逃げれば必ず犠牲者が出る。全員で逃げ延びるには、戦って突破するしかない――蒼き狼騎士は鉄塊剣を担いで敵の前に立ちはだかる。自らの身を敵を遮る城壁とするように。

「わ、私達が足手まといなら、置いていっても……」
 魂人達の中にはそう申し出る者も何人かいた。闇の種族の配下相手に、誰の犠牲も出さずに逃げ切る事なんてできない。だったら他を生かすために自分達が犠牲に――と考えた者達だ。
「ここまでの努力を無駄にするわけにはいかない」
「貴方たちを犠牲になどしない。必ず皆で生きて帰りましょう」
 しかしヴォルフガングもヘルガも、迷わずそれを断る。小を殺して大が生き延びるような選択を是とするのなら、最初から助けたりしなかった。二人の表情は既に、全員で勝って生き延びることしか考えていない。

「……どうやら、我等は侮られているようだ」
「主から追跡を任された我々が、敗れるとでもお思いですか?」
 ヴァンパイアバトラー達にはその態度が不快だったようで、爪牙を武器に襲い掛かってくる。
 特に警戒すべきは血肉と生命を貪る【ブラッドサッカー】。事ここに至っては「食材」を何人か駄目にしてもやむを得ないという判断か。前回捕らえられた時のように甘くはない。
「貴様達こそ、俺達を甘く見るな」
 ヴォルフガングは野性の勘でその動きを読み、鉄塊剣を盾にして受け止め、反撃を繰り出す。
 騎士として培った技量と膂力を活かした斬撃は吸血執事共を薙ぎ払い、その攻勢をよく押し留めていた。

「主よ。御身が流せし清き憐れみの涙が、この地上より諸々の罪穢れを濯ぎ、善き人々に恵みの慈雨をもたらさんことを……」
 狼騎士を援護するために、ヘルガも祈りを込めて聖歌【涙の日】を紡ぐ。「箱庭」たるペンダントは壊されないように懐に入れて守りつつ、静謐なる歌声を響かせて、戦場に眩く白い光をもたらす。
「助かった、ヘルガ」
「くっ……小癪な」
 この光は味方を癒やす慈愛の光にして、敵を裁く神罰の光。前線でヴォルフガングが負った傷は即座に治癒され、逆にヴァンパイアバトラー達のダメージは増していく。何度となく窮地を乗り切ってきた二人の連携に隙はない。

「どうやら、少し本気を出さねばならないようですね……」
 予想以上のダメージを受けたヴァンパイアバトラーは、そう言って【ゴアフェスト】を発動。
 コウモリの翼と獣の頭を持つ、吸血鬼と言うよりは悪魔じみた姿に変貌を遂げ、爆発的に戦闘力を増大させる。これが本気になった彼らの本性ということだろう。
「分かっているぞ。貴様らがその食材共を守ろうとすることは」
「……卑劣な」
 その異形の力の矛先を、彼らは躊躇なく魂人に向ける。こうすれば猟兵達が身を挺して守るであろう事を予想したうえで。事実、ヴォルフガングは歯噛みしながらも即断で魂人達をかばうことを優先し、敵の攻撃の前にその身を晒した。

「ぐっ……だが」
 獣と化した吸血執事の牙が、板金鎧を貫いて肉に突き刺さる。しかしヴォルフガングもただではやられない。鮮血と同時に傷口から吹き出したのは、【ブレイズフレイム】の炎だった。
「なっ……ぐごがあああッ?!!」
 血よりも紅い地獄の業火が、血を吸おうとしたヴァンパイアバトラーの口内へと延焼し、臓腑まで焼き尽くす。いかに屈強な姿に化けたところで、体内の強度まではさして変わるまい。獣じみた苦悶の絶叫が戦場に轟いた。

「こんなもので良ければ、幾らでも吸わせてやる」
「き……貴様ッ!!」
 斃れた敵の牙を引き抜き、獄炎を纏いながら身構えるヴォルフガング。その態度に激昂した敵は次々に変身して襲い掛かるが、彼は一歩も退かず、剣と炎を武器として大立ち回りを演じる。
「いくら強化されようと、この歌が、祈りが、命が続く限り、裁きの光は貴奴らを焼き滅ぼすまで追い詰める」
 そしてヘルガも聖歌の祈りを紡ぎ続け、戦場を光で満たし続ける。敵味方にもたらされる継続的なダメージと回復、それが現在の戦線を支えている最大の要因だ。逆に彼女の援護がなければ、狼騎士は立ち続けていられなかっただろう。

(ヴォルフの力は、彼自身の血を媒介に発揮するもの。人々も彼も、わたくし自身も、決してここで死ぬわけにはいかない)
 自分達にはまだ生きて成さねばならぬ事がある。死力を尽くすのではなく、必ず生き延びるという強い決意が、ヘルガの歌声に力を与える。出来るだけ【永劫回帰】に頼らずに、致命傷を負わずに済むように、回復の手は決して緩めない。
「お二人共……やっぱり私達も、力を」
「まだやれる、問題はない」
 ヴォルフガングも彼女の想いを受け取ったうえで、傷の痛みに耐えて戦い続ける。最後の手段である【永劫回帰】を使う機会は、最小限で済むようにしたい。騎士は人の生命だけてなく心をも守るもの――生命を長らえたとしても、心に傷を背負わせるのは、あまりに酷だ。

「自らの心を犠牲にして生きる力。でもそれは決して、邪悪の輩を喜ばせるためのものじゃない」
 そうやってこの世界の民達が生きるために足掻く姿を、あの晩餐会に招かれた者達は嘲笑うのだろう。その思惑を覆してやるために自分達は来た。だから彼らにも自分の身と心を大切にしてほしい――これは、ヘルガとヴォルフガングの偽りのない想いである。
「いつか『本当の幸せ』を掴むために」
「生きろ。こんな世界でも、君たちにはまだ未来があるのだから」
「ヘルガさん……ヴォルフガングさん……」
 聖歌姫と狼騎士の言葉を受け止めて、魂人達は使いかけた【永劫回帰】を取りやめる。
 この人達は心配いらない。きっと生きて、あの怪物達にも勝つ。そんな信頼と希望が彼らの中に芽生え始めていた。

「行かせて貰うぞ」
「邪なる者達よ、退きなさい」
「おのれ……おのれぇッ!!」
 獄炎纏いし鉄塊剣と、聖歌が導く神罰の光が、狂忠のヴァンパイアバトラー達を焼き焦がす。
 敵の攻勢は今だに激しいが、道は切り拓かれつつあった。この窮地を乗り越え、希望を明日に繋げるために、二人はなおも戦い続ける――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ポーラリア・ベル
見つけたわ!カビパンお姉ちゃん(ユーベルコード)!
(なんかひとりでに走ってる台車の上でお菓子を貪りながら)やってきてくれたのね!
そんなめんどくさいとか言わずに……そういえばお菓子って、世間はハロウィンだわ。
この場にはコウモリの仮装した人がいるし!
お食事と晩餐をにぎやかす為にもこの場をもっと明るくしましょう!
領主さまもきっとそう言ってるわ!
具体的にはもっとお菓子が欲しいのだわ。もっと、お菓子!持ってるでしょたまの休憩の一服にシガレットとかー

そう言ってわいのわいの、お姉ちゃんと一緒にウザ絡みし、逃げてく魂人達から全力で気を逸らし続けます。
敵とか…トドメとか…きっと別の人がやってくれるはず!



「見つけたわ! カビパンお姉ちゃん!」
 闇の種族の邸宅から逃げ出したポーラリアは、離れ離れになっていたカビパンと無事に合流を果たしていた。【冬を告げに来たよ(ねぇよ)】で召喚されてから彼女がどうしていたのか、まあそこまで心配はしていなかったが。
「やってきてくれたのね!」
「いや、なんかこの車が勝手に」
 何故かひとりでに走る台車の上で、ぼりぼりとお菓子を貪りながら返事をするカビパン。結構ピンチだったポーラリアとは対照的に呑気なものである。追っ手のオブリビオンがすぐ近くにいる状況でも変わらない態度には、一周回って安心感さえある。

「本当はめんどくさかったんだけどね」
「そんなこと言わずに……そういえばお菓子って、世間はハロウィンだわ」
 カビパンと話しているとポーラリアも気分がほぐれたのか、そんな事をふと思い出す。
 折しも時節は10月の暮れ。このダークセイヴァー上層では季節の変化はあまり実感がないし、祭りをする余裕もないだろうが、下層や他の世界では様々な催しが準備されている。
「この場にはコウモリの仮装した人がいるし! お食事と晩餐をにぎやかす為にもこの場をもっと明るくしましょう!」
「なっ……我々のこの姿は仮装ではありませんが」
 【ゴアフェスト】で変身したヴァンパイアバトラー達を指さして言うと、連中は露骨に不快感を示した。これから行われるのは魂人達を「食材」にした凄惨なる永遠の晩餐。聴きたいのは悲鳴と絶望であり、明るい賑やかしなどお呼びではない。

「領主さまもきっとそう言ってるわ!」
「いえ、まったく伺っておりませんが??」
 領主と執事の意向をガン無視して、ポーラリアはこの場でハロウィン晩餐会の企画を立て始める。それを聞いたカビパンまで「いいじゃない」と乗っかってきたので、シリアスだった場の雰囲気はもうメチャクチャだ。
「具体的にはもっとお菓子が欲しいのだわ。もっと、お菓子!」
「そうね、おかわりは必要だわ」
 そう言ってわいのわいの、勝手に案を立てては二人一緒に敵にウザ絡みを仕掛けていく。
 ある意味で希望に満ち溢れていると言えなくはないが、こういうのは闇の種族も求めてない。甘いやつではなくて苦くて悲壮感に満ちたやつが欲しいのだ、あっちは。

「持ってるでしょたまの休憩の一服にシガレットとかー」
「や、やめなさい……やめろ!」「何なんだこいつらは!」
 いい加減にウザったくなったヴァンパイアバトラー達は、獣化した爪牙を振るって邪魔者を引き裂こうとするが。ポーラリアはその小さな身体を活かしてひょいひょいと攻撃を躱し、ぱたぱたと飛び回り続ける。
「ほらほらー、ポケットの中みせてー」
「ええい、このっ!」
 親戚のおじさんから小遣いをねだるようなノリで、ひたすら粘着しまくる妖精と雪女。
 あまりのウザさに躍起になるあまり、狂忠なる執事達はひととき使命の事を忘れてしまった。

(ほら、今のうちに逃げて!)
(妖精さん……!)
 逃げていく魂人達から全力で敵の気を逸らし続けることが、ポーラリアの目的だった。
 キレた執事達の攻撃を避けるのに全身全霊を費やしながら、その苦労をおくびにも出さずウザい言動を繰り返す冬の妖精。その働きの甲斐もあって、魂人達はどんどん戦場から離れていく。
(敵とか……トドメとか……きっと別の人がやってくれるはず!)
 流石にそこまで考える余裕はなかったが、ここには他にも沢山猟兵がいるのだ、きっと大丈夫。
 ある意味で仲間を信頼していなければできない彼女の立ち回りは、魂人の安全確保と時間稼ぎという点では、大きな貢献を果たしたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒城・魅夜
これはこれはご丁寧に
私のバースデープレゼントのみなさんが
そちらからおいでいただけるとは、ふふ
では始めましょう……血祭りをね

私はともかく魂人さんに霧が届くのは好ましくありませんね
鎖を舞わせ範囲攻撃の衝撃波を放って霧を吹きとばしつつ
結界で護りましょう

私自身が陽動となるために攻撃は私に集中するでしょうが構いません
永劫回帰も最低限で大丈夫ですよ、ふふ
体内にオーラを満たし傷を表面で止めていますし
それに…
この傷自体が我が勝利への布石

ふふ、その程度の血の霧で得意顔とは笑止な
今、周囲を包む霧は、既に「私の血霧」です
そう、これこそが私のUC
あなたたちを残らず体内から引き裂きます
言ったでしょう、血祭りだと


桐府田・丈華
【心情】
「ここまで来たからには奪還なんてさせない!
一気に行くよ!」
と気合を入れて臨みます
【行動】
バンパイヤバトラー達を確認したら戦闘開始
バトルキャラクターズ達を召喚し
守るように戦闘します
他の猟兵さんと連携しつつ
突破する形で一気に駆け抜けます
「どいてどいてー!」
敵を撃破するより救出対象を守り通すように行動します
(連携OK)



「これはこれはご丁寧に。私のバースデープレゼントのみなさんが、そちらからおいでいただけるとは、ふふ」
 追っ手として現れた「狂忠のヴァンパイアバトラー」達を見て、魅夜は優雅な微笑みを浮かべる。
 もうじきに迫ったハロウィンの祭りの日は、彼女の誕生日でもある。パーティを彩ってくれる引き出物としてなら、盛大に歓迎してくれようではないか。
「では始めましょう……血祭りをね」
「宜しい。どちらの血で染まるかは分かりませんが」
 開催を宣言する魅夜に対し、吸血執事は相変わらず慇懃な応答。こちらも晩餐会の時間が迫っている以上、食材確保のために手段を選ぶつもりは無かった。どちらも一歩も譲るつもりはなく――流血にて彩られる宴の幕開けだ。

「ここまで来たからには奪還なんてさせない! 一気に行くよ!」
 一方で丈華はまっすぐな眼差しで追っ手を睨み付け、魂人達を守るように立ちはだかる。
 危険な「食材置き場」から脱出し、あと一歩で逃げきれる所まで来たのだ。皆のためにも諦めるわけにはいかないと、気合いを入れて戦いに臨む。
「どうやら素直にお戻りになってくれる方はいないようですね……致し方ありません」
 強硬手段もやむを得ずとみたヴァンパイアバトラー達は【ヘモイドミスト】を発動。自身の血から生み出した赤い霧を放って、戦場を包み込む。この霧には触れた者から体力や魔力を奪う性質があり、牢獄の瘴気とは比べ物にならないほどの危険性を誇る。

「私はともかく魂人さんに霧が届くのは好ましくありませんね」
 魅夜は主武装である108本の「呪いと絆」の鎖を舞わせ、衝撃波で周囲の霧を吹き飛ばしつつ結界を編む。強い「悪夢」の力を宿したこの鎖で囲えば、吸血鬼の魔霧も遮断できるだろう。
「みんなには指一本……ううん、霧ひとつ触れさせないよ!」
 その鎖の結界を取り囲むように、丈華が【バトルキャラクターズ】を召喚。結界内に保護された魂人達を守るための防御陣形を敷く。ドローしたカードに合わせて具現化された様々なキャラクター達が、強固な壁として敵の前に立ちはだかった。

「面倒な事を」「どうやら先に貴女達を排除せねばならないようですね」
 このままでは魂人達を回収できないと判断すると、ヴァンパイアバトラー達は防衛線を敷く猟兵達に集中攻撃を仕掛ける。たとえ霧を吹き散らされても、純粋な身体能力だけで吸血鬼は人類の脅威たり得る。この世界の住人なら誰もが知っていることだ。
「これで構いません」
「来るならこーい!」
 結果として陽動の役を担う事となった魅夜と丈華は、望むところとばかりに各々の武器を構える。
 攻撃がこちらに集中すれば、そのぶん魂人達の危険は減る。あとは自分達が耐えられればいいだけの話だ。

「みんな、力を貸して!」
 バトルキャラクターズと連携して、防御を主体とした立ち回りを取る丈華。レガリアスシューズの機動性を活かしてヴァンパイアバトラーの爪牙を避け、魂のカードたちによる効果で反撃を行う。
「あら、この程度ですか?」
 一方の魅夜は結界の構築に鎖を割いているぶん、敵の攻撃を捌ききるには手数が足りずに負傷している。しかし体内にオーラを満たすことで傷を表面で止めており、派手に出血している割にはダメージは深くない。

「永劫回帰も最低限で大丈夫ですよ、ふふ」
「は、はいっ」
 この程度で無闇に記憶を失わせる必要もないと、魅夜は魂人達に優しく微笑みかける。
 戦闘の最中とは思えない余裕の態度は、護られる者達に安堵をもたらし、敵には不快感を与える。
「……その余裕、いつまで続くでしょうか」
 声色に苛立ちを滲ませつつ、ヴァンパイアバトラーは散らされた霧を再収束。標的を1人に絞り込むことで、その生気と魔力を根こそぎ奪い尽くさんとする――だが、その試みを見た瞬間、彼女の笑みは深まった。

「ふふ、その程度の血の霧で得意顔とは笑止な。今、周囲を包む霧は、既に『私の血霧』です」
「なに……?!」
 敵の攻撃を引き付けてあえてダメージを負った、その傷自体が魅夜の勝利への布石。
 彼女の身体から流れ出た血は霧となって周囲を漂い、ヴァンパイアバトラーの生み出した霧を密かに駆逐していたのだ。
「そう、これこそが私のユーベルコード」
 その名は【|血に霞みし世界に祝福を捧げよ硝子の心臓《ミスティック・ミスティーク》】。戦場を包み込んだ鮮血の濃霧は、敵対者の五感を鈍らせる。目はかすみ、耳は遠くなり、鼻も利かなくなった状態で敵は無様に右往左往していた。

「今だ! みんな、ボクに付いてきて!」
「は、はいっ!」
 これをチャンスとみた丈華は、まだ生き残っているバトルキャラクターズを合体させて超強化。
 1体の強力なモンスターに変化させると、大きな声で魂人達に呼びかけつつ戦線の突破を図った。
「どいてどいてー!」
「なっ……ぐわあッ!!」
 濃霧で五感を鈍らされたヴァンパイアバトラー達は、この強襲で完全に不意を突かれた。一点突破の破壊力で戦線をこじ開けた丈華は、そのまま一気に駆け抜けていく。彼女らに護られていた多くの魂人達と共に。

「ボクはみんなを安全な場所まで! 後はお願い!」
「ま、待ちなさい……!」
「あら、何処へ行かれるおつもりですか?」
 丈華に導かれて逃げる「食材」を、ヴァンパイアバトラー達は慌てて追いかけようとするが、そうはいかないと魅夜が呼び止めるの。魂人達が離脱に成功したことで、鎖の結界を維持している必要もなくなった。つまりは彼女もこれから全力が出せるということだ。
「鮮血の屍衣を纏いし呪いの鋼、喰らい尽くせ汚濁の魂」
 彼女のユーベルコードのもう1つの効果、それは霧の中にいる対象の内部に鎖を転移させる能力だった。
 この力の前ではいかなる防御や回避の手段があろうと関係ない。歌うように詠唱を紡いだ瞬間、吸血鬼共の身体から鎖が飛び出した。

「言ったでしょう、血祭りだと」
「「が、ぐああぁぁぁぁッ!!!?!」」
 数多の鎖に体内から引き裂かれ、おぞましい断末魔を上げるヴァンパイアバトラー達。
 その悲鳴のコーラスと舞い散る血飛沫は、悪夢よりいでし魅夜の生誕を祝福するかのようで。この素晴らしき殺戮の宴を堪能するように、彼女はすうっと目を細めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リュカシオン・カーネーション
ソラウと罠に嵌める
吸血鬼達、自分達が罠にかかっているなんて思いもしないだろうな…
ん?私が何でここに居るって?2章の私は偽物だよ。あの場面でふざけないよ…普通。説明しないとねツチノコ事件の後まで遡るっと
村長にめっちゃ怒られた…当然か、許可なくやったしあのツチノコもっと殴れば良かったわ…おい、誰だ隠れているのは分かっているぞ。私に何のようだ?アルコイリス?何のこ…ぐはっ
オブリビオンらしき相手に不意打ちされて胸を刺された…
「ふざけんな!それで俺が刺されたのか!ハジケリストじゃなかったら死んでたわ!ガブッ」
いでぇ!悪かった!
《あ!シオンさんとサメさん!》
アロナちゃんに事情を説明した。
《今朝の虹炎の神の話ですよね…ここまで来るとツチノコの妄想話では無いようですね。…あのシオンさんも偽物ですね》
アロナちゃんと相談して偽物を泳がせておくことにした
ちなみに偽物は私の原初の自由をコピーして変装しているからライズサンにも知らせた














【情報収集・戦闘知識・視力・衝撃波・神罰・焼却・斬撃波・演技・変装・スナイパー】


ソラウ・エクステリア
シオンf38237
ライズサン、シオンが変だったよ『シオンが食材の回収前に襲われたらしい』?!『虹炎の神の話が出た直後だ。けどシオンは無事だ』

…エリンの大切な人を侮辱するなんて
《あの人は戦争の時には他人を助ける事を優先していましたからね…ふふっ》
偽者をシオンが罠を仕掛けた場所へ誘導した(魂人には少しずつ避難してもらう)
待ち構えていた敵が現れて偽者がアロナを人質に取る
《ふふっ…やっと殺れますね》姿が変わり偽者の頭を鷲掴みにしUC発動
偽者は突然炎に包まれた
《あの人は適当な所はありますが責任放棄する人じゃないんですよ!》
罠が発動。敵の翼が破壊されていく
シオンの知り合いに借りたそう

シオンは遠くから狙撃中


来い!僕の切り札!歌の魔王!
敵は僕を攻撃しても時空の力で反撃される
敵は3つの顔を攻撃し始めた
ああ…不味いな
3つの顔が破壊させて身体が崩壊していく
倒したと相手が思ったその顔は絶望に染まっていた
前よりパワーアップして復活していたからだ
歌魔王と憤怒の精霊王に蹂躙された



歌魔王の存在を認識したらもう倒せないよ



「ライズサン、シオンが変だったよ」
『シオンが食材の回収前に襲われたらしい』
「?!」
 追っ手に見つかる少し前、ソラウは先程のシオンの奇行について、仲間の時空龍達と話をしていた。
 幾らおふざけが好きにしても、決める時は決める彼女にしては「らしくない」行動。それについて明らかとなったのは驚くべき新事実だった。
『虹炎の神の話が出た直後だ。けどシオンは無事だ』
「ど、どういうこと?」
 ライズサンの話にソラウは目を丸くしながら、リュカシオンの方をぱっと振り返る。今この場にいる彼女は、いつも通りの「リュカシオン・カーネーション」に見える――だが、既に襲われていたと言うのなら、ここにいる彼女は一体?

「吸血鬼達、自分達が罠にかかっているなんて思いもしないだろうな……」
 一方のリュカシオンは不敵な笑みを浮かべて、近付いてくる追っ手の吸血鬼共を眺めていた。
 笑ってはいても気配は張り詰めていて隙はない。確かに、さっきソラウがイタズラされた時のリュカシオンとは違うように感じる。
「ん? 私が何でここに居るって? あの私は偽物だよ。あの場面でふざけないよ……普通」
 順を追って説明しないとねと、リュカシオンの話は一旦村に潜伏していた時まで遡る。
 突如出現した謎のツチノコの群れを相手に大立ち回りを演じていた頃の話だ。増殖する連中をなんとか駆逐しきった後に、実はこんな事があったという――。



「村長にめっちゃ怒られた……当然か、許可なくやったしあのツチノコもっと殴れば良かったわ……」
 希望をアピールするための一芝居とはいえ、妥当といえば妥当なお叱りを受けて、とぼとぼと村長宅から帰還するリュカシオン。一応目的自体は達成できたので、あとは襲撃が来るのを待つだけだが。
「……おい、誰だ。隠れているのは分かっているぞ」
 だが、ふいに彼女は真顔になって鋭い視線を送る。猟兵でも魂人でもない異質な気配が村に紛れ込んでいるのを、それが自分を密かに監視していたことを、彼女は気付いていた。大方、食材の質を見極めるために闇の種族に遣わされた連中だろう。

「……貴様、虹炎の神アルコイリスに連なる者か?」
「私に何のようだ? アルコイリス? 何のこ……ぐはっ」
 建物の暗がりから姿を現したオブリビオンは、リュカシオンに奇妙な問いを投げかける。
 それに首をかしげた直後――背後に潜んでいた別のオブリビオンが、彼女に不意打ちを仕掛けた。
「答えはいい。疑わしきは排除するに限る」「その顔だけは利用させてもらおう」
「お前ら、なにを……」
 胸を刺されて痛みと共に、意識が遠のいていく。ばたりと倒れた標的にはもはや一瞥すら送らずに、オブリビオン達は去っていった。最後に彼女が見たものは、そいつらの姿が自分と同じ顔に変わっていくところ――。

「ふざけんな! それで俺が刺されたのか! ハジケリストじゃなかったら死んでたわ」
「いでぇ! 悪かった!」
 ――と、敵が完全に去ったのを確認してから、リュカシオンは仲間の「カオスシャーク」にガブッと元気に噛みつかれていた。
 怪しい気配を感じた時点で、彼女はこのサメを自分に変身させて囮にしていたのだ。結果的には正解だったわけだが、身代わりで刺されたサメはそりゃ怒る。
《今朝の虹炎の神の話ですよね……ここまで来るとツチノコの妄想話では無いようですね》
 サメとリュカシオンの喧嘩はさておき、真面目に思案するのは精霊王アロナフィナ。
 あれはツチノコ達が信仰を集めるためにでっち上げた創作上の神だと思っていたが、それと同じ名をオブリビオン達までもが口にした以上、気に留めておく必要がありそうだ。

《あの人達の後を追って侵入しましょう》
「賛成」
 かくして自らの死を偽装したリュカシオンとその仲間達は、誰にも知られぬまま敵地に潜り込んだ。
 そこで彼女らが見たのは、自分の名前と姿を騙る何者かが、ソラウと行動を共にしている所だった。
《……あのシオンさんも偽物ですね》
「だね。でもここは様子を見よう」
 アロナフィナとリュカシオンは相談して、その偽物をわざと泳がせておくことにした。
 あれはどうやらリュカシオンの持つ原初の自由の力をコピーして変装しているようだ。仲間に危険が及ばないよう、ソラウの身近な誰かにはこの事を知らせておくべきだろう――。



『という訳だ』
 以上がライズサンが本物のリュカシオンから聞いた話である。この地の闇の種族が警戒する虹炎の神アルコイリス。その関係者と疑われたことが、今回の偽物騒動の切っ掛けだったようだ。
「……エリンの大切な人を侮辱するなんて」
《あの人は戦争の時には他人を助ける事を優先していましたからね……ふふっ》
 ソラウも、そして伝令としてこの真実をもたらしたアロナフィナも、敵の陰湿な策略に激しい怒りを覚えていた。少なくともリュカシオンになりすましていたあの偽物だけは、絶対に生かしておかない。この点において全員の意見は一致した。

「ちょっとみんな。こっちに気になるものがあるんだけど」
 そうとは知らない偽物のリュカシオンは、ちょっと真面目そうな顔をして皆に呼びかける。
 おおかた仲間のフリをして罠に誘い込もうと考えているのだろう。彼女らはあえてこの策に乗り、逆に偽物を罠に嵌めることにした。
《どうしたんですかシオンさん》
 気付いてないフリをしてアロナフィナが偽リュカシオンに付いていき、その間にソラウ達は魂人達に少しずつ避難してもらう。これから起こる事に彼らを巻き込むわけにはいかない――あらゆる意味で。

「かかったなバカめ!」
 人気のない森の近くまで誘われると、ついに偽物は本性を現し、待ち構えていた「狂忠のヴァンパイアバトラー」が姿を現した。
 彼らはアロナフィナの腕や首を掴んで拘束すると、淡々とした口調でソラウ達に脅しをかける。
「この娘の生命が惜しければ、我々と共に屋敷にお戻り下さい」
 単純な実力行使では猟兵を捕らえるのは難しいと考えた彼らは、人質を取って言うことを聞かせる作戦にシフトしたようだ。他の猟兵らも各自が追っ手と共に戦っており、救援を求める事は難しい。これまでの布石を利用した、悪辣ながらも見事な作戦であった。

《ふふっ……やっと殺れますね》
「なに……ぐっ?!」
 誤算だったのは既に偽物がバレていたこと、そして人質にしたのがアロナフィナだったことだ。
 彼女は不気味なほど穏やかな微笑で拘束を振りほどくと、偽物の頭をがしりと鷲掴みにし、ユーベルコード【天災王操】を発動する。
《あの人は適当な所はありますが責任放棄する人じゃないんですよ!》
「ぐ、ぎゃああぁぁぁぁっ!!?!」
 偽物の全身が突如として炎に包まれ、耳をつんざくような絶叫が上がる。周囲の敵が「なんだと……?」と動揺する中、アロナフィナの服装は黒いドレスに変わり、虹色の長髪が夜風になびく。これが彼女の本気の姿、【憤怒の天災の精霊王】だ。

「バレていましたか……こうなれば仕方ありません」
 人質作戦の失敗を悟ると、ヴァンパイアバトラー達は使えない偽物には即座に見切りをつけて【ゴアフェスト】を発動。コウモリの翼と獣の頭を持つ悪魔じみた姿に変身し、全力をもって主命を果たさんとする。
「我々もここで退くわけには参りません」「一人でも食材を確保しなければ」
《できるとお思いですか!》
 一喝と共に憤怒の精霊王がパンと手を打ち合わせると、仕掛けてあった罠が発動する。
 リュカシオンの知り合いから借りたというソレは、地面から飛び出して敵の翼に突き刺さった。

「くっ。翼が……がッ!?」
 翼を破壊され飛行能力を失ったヴァンパイアバトラーの眉間に、炎を圧縮した弾丸が突き刺さる。
 弾丸を放ったのは、遠隔地で待機していた本物のリュカシオンだ。敵の偽物作戦を逆手に取るためにギリギリまで表に姿は見せず、仕掛けるタイミングを見計らっていたのである。
「アロナちゃん、怒ってるなー」
 彼女のいる狙撃ポイントからも、憤怒の炎を燃え上がらせるアロナフィナの姿は容易に視認できた。
 精霊王の怒りを買った連中はご愁傷さまと思うが、同情はしない。こっちだって杜撰な偽物に危うく名誉毀損される所だったのだ。凝縮した「虹神炎覇気」の弾丸を、恨みを込めて撃ち放つ。

「来い! 僕の切り札! 歌の魔王!」
 リュカシオン達が反撃開始したのと時を同じくして、ソラウは【時空歌・mourir・impossible】を発動。天に向かって高々と掲げた時空騎士銃槍から、大いなる歌の魔王を召喚する。
〈#@$%€£№¢©©†&*#$@%!〉
 ソレは鷲とピエロと龍骨の3つの頭、獅子の四肢やピアノの鍵盤の腕、巨大な翼を持つ異形の怪物であった。発する咆哮はヒトには理解できない音の羅列でありながら、何らかのメロディをもった「歌」のようにも聞こえる。およそ人智を超えた存在である事は確かだった。

「あれは……不味いですね」「ならば術者を仕留めましょう」
「無駄だよ」
 歌魔王の危険性を一目で理解したヴァンパイアバトラー達は、召喚者であるソラウを抹殺して退去させようとするが。彼女に対する攻撃は全て魔王が操る時空魔法によって防がれ、逆に反撃を喰らう。
「くっ。そう上手くはいきませんか」「であれば直接ご退場願うしか……!」
 術者への攻撃が無効と分かれば、やむを得ず敵は攻撃の矛先を変える。主から授かった紋章の力とユーベルコードで強化された爪牙が、歌い続ける魔王『mourir・impossible』に殺到する。

「ああ……不味いな」
 さしもの魔王も闇の種族の眷属らに集中攻撃されては保たないか。3つの頭が破壊されると、続いて全身が崩壊していく。その光景を見てソラウはぽつりと呟いたが、声色に焦りや危機感は含まれていない。
「やりましたか……ッ!?」
 なんとか倒したとヴァンパイアバトラー達が思った直後、その顔は絶望に染まっていた。
 これまでの光景が夢だったかのように、彼らの目の前には完全復活した歌の魔王が立っていたからだ。いや、元通りになった訳では無い――感じられる魔力は明らかに前よりパワーアップしている。

「歌魔王の存在を認識したらもう倒せないよ」
 特定の条件を満たさない限り、歌魔王を撃破することはできない。そして連中が条件を満たすことは絶対にないとソラウには確信があった。時空の守護者である彼女が「切り札」とまで豪語する存在が、そう安々と攻略できるはずがない。
《骸の海に還りなさい!》
「ぐ、がはぁっ!!?」
 絶望に追い討ちをかけるように、アロナフィナの攻撃も激しさを増す。あらゆる気象や自然を自在に操る彼女のユーベルコードは、まさしく天災の体現、精霊王の名に恥じないものだ。
 歌の魔王と憤怒の精霊王によって、ヴァンパイアバトラー達は為す術もなく蹂躙されていき――。

「我らが主よ……申し訳、ありませ……」

 謝罪の言葉と共に消滅したその一体が、「食材」を追ってきた最後のヴァンパイアバトラーだった。
 新らたな追っ手がやって来る気配もない。あの危険に満ちた邸宅から、ついに猟兵と魂人達は逃げ切ったのだ。


 かくして闇の種族による『永遠の晩餐』は阻止され、猟兵達は食材にされるはずの魂人を救い出した。
 この反抗は小さな一歩に過ぎないかもしれないが、その積み重ねが明日への希望を繋いでいく。上層に闇の救済をもたらす日まで、猟兵の戦いは終わらない――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年10月27日


挿絵イラスト