アルカディア争奪戦㉗〜伽藍洞の|理想郷《アルカディア》
●満たされない、満たされない
ブルーアルカディア、『アルカディアの玉座』
そこに座するは灰色の幽鬼の如き存在。
強者の生命を喰らわなければ進化できず、進化できなければいつまでも揺蕩う虚無のまま。
――強者が必要だ。
強者を選別する為に毒で世界を満たすしもべたる植物をばら撒き、生まれた強者と戦い屠る。
長い、長い時をそう過ごし、それでも血も舌も皮膚もない未完成。
――吾は肉体が欲しい。生命になりたいのだ。
――玉座へ集え、その生命をくれ。生命ある者の苦悩、欲望、憎悪を見せてくれ。
ただ己の進化の為に全世界を苦しめる諸悪の根源は、名を『虚神アルカディア』と言った。
「アルカディア争奪戦もいよいよアルカディアの玉座を残すだけになったね。ラストまで頑張っていこうか」
シャチのキマイラ、ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)は集まった猟兵達にそう切り出す。
「アルカディアの玉座にいるのは大量の天使核に守られた黄金の玉座という場には似つかわしくない姿の等身大の幽鬼……虚神アルカディアと言う名の存在だ。猟兵が近づくと周囲の大気が変化して、一振りの剣を携えて現れる。ヤツの目的は強者の生命を奪う事、猟兵を標的に死合いを挑んでくるだろう」
何より厄介なのは戦闘手段なのだとヴィクトルは言う。
「とにかく手札が異常に多い。接近戦遠距離戦は当然の事、艦隊戦や大量の魔獣を召喚した集団戦に拒絶の雲海を利用した迷宮の作成、更には虚ろな顔に相手を映しだして相手と同じユーベルコードも追加で使ってきたり逆にユーベルコードを互いに封印した上で相手の得意とする技能で勝負を挑んできたり、本当に色々できる。ただ、向こうとしては強者を倒さねばならないからこちらの得意分野で挑めばそれに対応して打ち負かしに来るだろう。そこを返り討ちにして、どうにか撃破して欲しい」
因みに虚神アルカディアは性質的に生命に憧れていて、猟兵が圧倒的な願いや意志、感情や覚悟を示す事ができればそれに怯んで隙が生まれる事もある、とヴィクトルは説明する。
「確かにこの力の噂を聞いただけならどんな願いもかなえる力がある……そう思ってしまうのも無理はないけども、ここにいるのは願いを叶える訳もない邪悪だ。どうにか倒して、溢れ出す|拒絶の雲海《アルカディア・エフェクト》を止めてきてほしい」
相手は強力だけど、皆なら勝ってくれると信じてる――そうヴィクトルは締め括り、猟兵達をアルカディアの玉座へと送り出したのであった。
寅杜柳
オープニングをお読み頂き有難うございます。
こいつ……動いてる!
このシナリオはブルーアルカディアの『アルカディアの玉座』で『虚神アルカディア』と戦うシナリオとなります。
アルカディアは多彩な戦闘手段を持ち、猟兵に合わせ適宜切り替えて攻撃してきます。
具体的な戦闘手段は『剣戟戦』『狙撃戦』『鏡戟戦』『艦隊戦』『狂乱戦』『悪夢戦』『音響戦』『迷宮戦』『狩猟戦』『片翼戦』『技能戦』とありますが、それぞれでプレイングボーナスは異なるため戦争説明の戦場説明をご確認ください。
艦隊戦と迷宮戦では|飛空艇艦隊《ガレオンフリート》の援護があり、指定があれば過去に自分が出した勇士の援護を受けられます。
下記の特別なプレイングボーナスがある為、それに基づく行動があると判定が有利になりますので狙ってみるのもいいかもしれません。
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プレイングボーナス……「戦闘手段」をひとつ選び、それに対抗する。
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それではご武運を。
皆様のご参加をお待ちしております。
第1章 ボス戦
『虚神アルカディア』
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POW : アルカディア・エフェクト
レベルm半径内を【|拒絶の雲海《アルカディア・エフェクト》】で覆い、範囲内のあらゆる物質を【爆発気流】で加速、もしくは【猛毒気流】で減速できる。
SPD : アルカディア・インフェルノ
【石の剣】から、戦場全体に「敵味方を識別する【無限増殖植物群】」を放ち、ダメージと【呼吸不能】の状態異常を与える。
WIZ : アルカディア・ヴォイド
【万物を消滅させる虚無】を宿した【見えざる完全球体】を射出する。[見えざる完全球体]は合計レベル回まで、加速・減速・軌道変更する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
レン・ランフォード
人格:錬
上手い話で釣って食う…質の悪い提灯鮟鱇だな
大体長い事やってその程度なら方法が間違えてるんじゃねーの
この戦争の連中どいつもこいつも
切実な願いなのかもしれねぇけど人様に迷惑をかけやがって
戦争も何もかもこれで終わらせてやる
剣戟戦
瞬時に間合いに入られてもそこから剣から攻撃がでて着弾するまでの刹那を
「第六感」も用いて「見切り」「残像」も残し回避
避けきれなかったら「激痛耐性」と「気合」で我慢
設置していた「結界術」で自分と虚神を閉じ込め植物の背後からの追撃を防ぐ「罠使い」
虚神の追撃がくるより早くこちらのUCを叩き込む「カウンター」「早業」
次はまともな姿で生まれて来い
●忍びと虚神
黄金に輝く玉座にて、やってきた猟兵は極めて異様な風体の虚神アルカディアと対峙する。
未完成の身体は幽鬼の如き佇まいに見えるが、その背に担いだ石の剣や植物群でどれほど多くの生命を啜ってきたのだろう。
「上手い話で釣って食う……質の悪い提灯鮟鱇だな」
吐き捨てるようにレン・ランフォード(|近接忍術師《ニンジャフォーサー》・f00762)――今は男性口調の錬が言う。
この戦争の屍人帝国の支配者は誰もがこの虚神アルカディアへの願いを抱えていた。それはどれもが切実なものなのかもしれないが、人様に迷惑をかけるような行いであるものは頂けない。
ましてや彼らが辿り着いていたとしてもこの虚神アルカディアが願いを叶えるはずもないだろう。
「大体長い事やってその程度なら方法が間違えてるんじゃねーの」
――このような手段をどれだけの年月重ねてきたのかは不明だが、本当に植物をばら撒いたのであれば人類の歴史どころか生物の歴史の大半に干渉しているはずだ。
「戦争も何もかもこれで終わらせてやる」
錬が愛用の翠の光刃の光線式斬撃兵装を抜いて、虚ろなる神が唯一の得物である石剣を構える。
そして、次の瞬間。
「危ねえ!?」
瞬きしたつもりもない、ほんの一瞬の間に虚神アルカディアは錬を石剣の間合いに捉える位置に近づいてきていた。
レンの優れた見切りの技術でもその移動の過程は全く認識できない瞬間移動の如き業。
至近に迫った虚神は無造作に石剣を横薙ぎに振るい、レンを両断しようとするが、その剣が振るわれるまでの間に彼女は第六感、或いは生きる為の本能で即座に回避行動、潜るようにし難を逃れる。
残した残像が切り裂かれる間にアルカディアの後方に回り込んだレン、だが虚神はその石の剣から植物の群を解き放ち周囲どころか戦場全体を覆い蹂躙せんとする。
植物から逃れんとバックステップで距離を取る。しかし植物全てを回避する事は出来ず、その呼吸が封じられてしまう。
多少呼吸ができずとも力は発揮できるが、虚神は更に瞬時に間合いを詰め石剣を振るおうとする。
ギリギリで両断を避けるが、レンの肩が切り裂かれ激痛が走る。それでも錬は痛みを気合で押し殺し、この位置に予め準備していた結界を展開する。
無限増殖する植物群も結界に一瞬阻まれる――今が反撃の時だ。
「リミッターカット、オーヴァーブースト! 刎ねろ、『童子切』!!」
石剣の軌道は二度見た、三度目が振るわれる前にユーベルコードを起動したレンの手の翠の刃が制限解除され、
「次はまともな姿で生まれて来い」
告げると共に石剣の刃が届く前に光の奔流を虚神に叩き込む。神殺しの力を宿すその一撃をまともに受けた虚神は吹き飛ばされ、黄金の玉座へと叩きつけられる。
しかし、虚神は何事もなかったかのように立ち上がり、剣を構え直す。そう簡単に倒し切れるほどに易くはない相手だ。
だがこの虚神を打倒さねばブルーアルカディアは拒絶の雲海に呑み込まれてしまう。その未来を阻止するため、多重人格の化身忍者は翠光の刃放つ黒き柄を握る手に力を籠めるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
七那原・望
技能戦
舞台は『アルカディアの玉座』
第六感、奉仕、優しさ、コミュ力、鼓舞が重要となる戦場。
人々の願いにただ寄り添い、見返りを求めず希望へ導く。カウンセリング勝負です。
お前に出来ますか?餌を前に、ただ希望だけを与えることが。
国民を護りたいですか。敵があまりに強大で時間もないならみんなで逃げるのは?
土地はなくても国民と指導者が生きていれば帝国は不滅なのですから。
生身の肉体が欲しいなら非人道的かもですけど人工的に作って意識を移植するのは?
探せばきっとそういうユーベルコードの持ち主だっていますよ。
もしくは願いを叶えてくれる何かを探すとか、ね。
他者に犠牲を強いなくても手段は探せばいくらでもあるのです。
●アネモネの少女と虚神
剣を携えた虚神アルカディアは無造作に現れた猟兵達をスキャンする。
七那原・望(封印されし果実・f04836)というアネモネの少女は、その観察に何も感じるものはない。
――悪意さえも。
ただ、相対する敵を上回るという目的の為だけに相手の得意分野を観察した虚神が石剣で玉座の床を小突くと、周囲の景色が一変する。
新たに生まれた大技能戦場は医務室のような形状、ただし極端に大きなそこには、多くの人々――この戦争で巡り合ったオブリビオンにも似た姿の影が幾つも見える。
だが彼らは幻影のようなものなのだろう。その強い願いが形どった残留思念のような――そんな彼らの願いに寄り添い希望に導くことがこの大技能戦場でのカギになるのだと、望は判断する。
ユーベルコードを使える手応えはこの場ではない。ただ、望の持てる技術で為すべきことを為せばあのアルカディアにダメージを与えられるという直感があった。
ただでさえ幽鬼の如き姿の虚神アルカディアは、いつの間にか石剣をどこかにやって医者のような白衣に着替えて何をすべきか少々迷っているようだ。
「お前に出来ますか? 餌を前に、ただ希望だけを与えることが」
『――それが強者の生命を奪う為ならば』
虚神は望の言葉にそう返し、世にも珍しいカウンセリング対決が開始された。
『国民の幸福を、いえ民を守りたいのですが私は非力で……』
「国民を護りたいですか。敵があまりに強大で時間もないならみんなで逃げるのは?」
どこかの教皇のような姿の女に望は寄り添いつつ、代案を離す。
土地はなくても国民と指導者が生きていれば帝国は不滅なのですから――浮遊大陸の住民全てを移動させる事ができるのかはともかく、その言葉を受けた女の幻影は納得したように消失する。
何人も何人も、悩みに寄り添いよかれと思える案を望は告げていく。それらすべてが実現可能か、それでいいのかまでは不明だが、彼女と話した幻影は暴れる事もなく消失していく。
そして巨大すぎる戦艦や騎士団団長のような男の悩みを聞き届け、幻影全てが消失した後に残るのは白衣姿の虚神。
「生身の肉体が欲しいなら非人道的かもですけど人工的に作って意識を移植するのは? 探せばきっとそういうユーベルコードの持ち主だっていますよ」
実際生命を想像するユーベルコード等もあったりする。虚神の望み通りの肉体が得られるのかはともかくとして、その手段が有り得ないとまでは言い切れないだろう。
「……もしくは願いを叶えてくれる何かを探すとか、ね」
願いを叶えるという虚神にそう望が言うと、
『……成程、考えておこう』
「他者に犠牲を強いなくても手段は探せばいくらでもあるのです」
そう呟いたアルカディアにオラトリオの少女が告げると、大技能戦場の形が崩れ元の黄金の玉座へと変化していく。
納得したのかは不明だが、少なくともカウンセリングでは上回れたのだろうと望は何となく手応えを感じる。
しかし虚神は再び石剣を手に取り、抗う意欲を見せている。
完全なる撃破は次の猟兵に託し、望みは一旦アルカディアの玉座から撤退するのであった。
成功
🔵🔵🔴
ステラ・リデル
【剣戟戦】
虚神アルカディア。諸悪の根源を自称する進化を望む者。
生命を喰らえば進化するというのは真実なのでしょうか?
何故、そう考えたのか気になりますが――世界の危機は放置できません。
倒させていただきます。
石剣による先制攻撃を直感と戦闘経験を元に見極めて回避。
(第六感×見切り×戦闘知識×瞬間思考力)
敵SPDUCの植物群からの攻撃は『消滅の斬撃波』(属性攻撃×斬撃波×範囲攻撃)を放って散らしつつ呼吸困難に対しては魔力障壁(オーラ防御×結界術)を張って影響を排除。
しかる後に剣戟の間合いで虚神とオーラセイバーで打ち合い、必殺の間合いで『魔力解放』を行って痛撃を与えます。
●魔神と虚神
再び石剣を取った虚神の前に、青髪のスペースノイドが前に出る。
「生命を喰らえば進化するというのは真実なのでしょうか?」
彼女、ステラ・リデル(ウルブス・ノウムの管理者・f13273)は純粋に抱いた疑問を虚神へと投げかけた。
諸悪の根源を自称し進化を望む者――本人の言葉に嘘がないならば真なのだろうが、進化を続け未だ不完全な姿であるように見える虚神の姿を見るに、真実と断ずるのは少々難しく思える。
虚神アルカディアはその疑問に応えない。それこそが彼にとっては紛れもない真実、それを補足するような言葉など不要といったところか。
「何故、そう考えたのか気になりますが――世界の危機は放置できません」
オーラの刃を構えるステラに対し、無造作に石剣を構える虚神。
「――倒させていただきます」
ステラの言葉と同時、アルカディアの姿が消失する。
一瞬と間を置かずステラの眼前に出現したアルカディアは、いきなり至近距離から無限増殖植物群を解き放つ。
洪水の如き植物群――だが戦闘経験で読んでいたステラはその植物群を見切り瞬間的に最善手を思考、バックステップで回避すると同時に消滅の斬撃波を放つ。
無限に等しい植物群を物理的に消し去っていき、更に展開した魔力障壁で呼吸不能の影響を排除するステラに、植物を切り裂いて石剣が振るわれる。
三連斬、それを加速させた思考で見切り辛うじて回避する。
そして四度目の斬撃にステラはオーラの刃を合わせ鍔迫り合いに持ち込む。
この間合いは虚神アルカディアにとっての剣撃の間合い、そしてステラにとっては必殺の間合い。
「消え去りなさい」
ユーベルコード【魔力解放】、発動させたステラの全身から消滅の魔力が放たれ虚神アルカディアへと襲い掛かる。
石剣から放たれる無限植物群を壁にアルカディアは後退するが、消滅の魔力はそれよりも早く障害を消し去りながら広がってアルカディアを呑み込む。
――魔力の奔流が止まり、ステラの眼前には傷ついた虚神の姿。
消滅の魔力と言えど、あの虚神をまだ完全に消滅させる事はできなかったようだ。
確実にダメージは重ねられている。だが、このままではこれ以上の追撃は難しいともステラは冷静に判断。
後は後続の猟兵に任せ、ステラは戦場を離脱したのであった。
大成功
🔵🔵🔵
蛇塚・レモン
【狂乱戦】
寅杜柳マスターにおまかせします。かっこいい蛇塚・レモンをお願いします!
いつも元気で優しく快活な性格
その身に蛇神と妹の魂を宿す21歳の娘
霊能力と技能及びアイテムを駆使して事件解決を試みます
普段の口調は語尾に『っ』を多用します
時々「蛇神オロチヒメ(裏人格)」
老人口調NG
尊大な態度でレモンの母親を自負
UCで召喚されると巨大な白蛇として顕在化
戦闘スタイル
武器は蛇腹剣と指鉄砲から放つオーラガン
基本的に脳筋
でも魔法や天候操作での属性攻撃など融通も利く
念動力で行動不能にさせたり呪詛での絡め手も得意
真の姿は【旭日の黄金竜神】
姿はイラスト参照
叫ぶエゴは【蛇神様や妹のライム、そして仲間達と農園ライフを満喫するために、虚神に勝ちたい】
黄金霊波動を最大限に噴出してオーラ防御+結界術で完全球体を受け止め、衝撃波で破壊
虚神をUCで封じて蛇腹剣の乱れ斬りで仕留めます
多少の怪我は厭わず積極的に行動
また、例え依頼の成功のためでも、他の猟兵に迷惑をかけたり、公序良俗に反する行動はしません
あとはお任せ
お願いします!
●蛇神と虚神
石剣を手にした幽鬼の身から、禍々しき赤き霧が噴き出す。
実体を持つかのようなそれは狂気――赤き狂気を噴き出した幽鬼は獣の如き異形の様相へと変身、眼前に現れた蛇塚・レモン(白き蛇神憑きのシャーマンクイーン・f05152)へと言語と思えぬ咆哮を叩きつけた。
強き生命を喰らうという衝動に満ちた声は、並みの心構えで臨んだのならば威圧されて大きな隙を晒す事になってしまっただろう。
だが、狂気に当てられ蛇神を宿すに相応しき黄金の龍神の如き真の姿を曝け出したレモンは、その額に開眼した緑の蛇眼を含む三つの眼でまっすぐ荒ぶる虚神を見据え、金の龍尾で床を叩く
「――あたいは蛇神様や妹のライム、そして仲間達と農園ライフを満喫したいんだっ!」
強き生命を喰らうという、虚神の妄執をも吹き飛ばすような勢いで叫ぶ。
レモンの欲望――大切な者たちと過ごす明日をこそ望む生命力に溢れたその叫びは酷く眩しく、強いもの。
これまでに大切な人たちと繋いだ絆は、虚神の妄執に負けるような易しいものではないのだ。
「そのためなら……虚神にすら勝ってみせるっ!」
そう言い切るレモンに、狂気を溢れさせる虚神も僅かにたじろいでしまう。
それを打ち消すように虚神は異形化した腕を振るい不可視の完全球体を放つ。
変幻自在の軌道であらゆるものを消失させる虚無球体はレモンの死角へと回り込み彼女を消し去らんとする。
だが、遅い。最大噴出されたレモンの黄金霊波動は彼女の全周を覆うように守り、速度軌道自在不可視の虚無球の突撃を阻んだ。
レモンが得手とする霊能力を守りに特化させ準備万端に迎え撃てば、万物を消滅させるという虚無球体と言えどほんの僅かに速度が緩む。
そして黄金波動の消滅する位置で虚無球体の位置を看破し、そこに波動を集中させて強引に動きを止めて衝撃波で虚無球体を破壊する。
だが狂える異形の虚神は虚無球と同時に恐ろしき獣腕を以て直に殴りつけんと襲い掛かってきていた。
虚神が眼前に迫るその瞬間、虚神と黄金龍神との間の空間に光の魔法陣が描き出され、その内から霊体の白蛇が飛び出して突撃する虚神を弾き飛ばした。
「紹介するね! こちら、あたいの親友の蛇神様だよ!」
レモンの純白の勾玉が仄かに光を放っている。彼女の最初のユーベルコードにより、彼女がその身に宿す蛇神を巨大な白蛇の霊体として顕現させたのだ。
「お願い、蛇神様っ! あいつ、悪い奴だから懲らしめちゃってっ!』
愛しき娘の号令に、巨大な蛇神の呪詛と念動力が狂気の虚神を縛り上げ、ほんの僅かの間その動きを食い止め更にユーベルコードを禁じた。
虚神は狂気に呪縛に抗い振りほどこうとするが、その前にレモンの愛用の蛇腹剣の斬撃の嵐が襲い掛かる。
束縛されるままに異形の腕が薙ぎ払わんとするが、霊力により手足の如く操られる刃の群れは巧みにそれを躱し幽鬼を無数に切り刻んだ。
そして斬撃の嵐の後に赤き狂気の噴出は止んで、虚神は白き襤褸を纏った元の姿へと還っていく。
だが、虚神はまだ倒れない。
渇望はそう簡単に断ち切られるようなものではないと示すかのように。
成功
🔵🔵🔴
蛇塚・ライム
【音響戦】
虚神が空気に溶けたですって?
こうなってしまうと、私の拳もユーベルコードも虚神には通じませんわね
猛毒気流の影響を避けるために、相棒の巨大ロボ『カマドG』に乗り込んで勝負に挑みます!
私自身も毒耐性はありますの
そう簡単に動きは鈍りません
攻撃手段は歌唱で
私はアイドル!
私の熱いパトスが籠められた歌をカマドGの外部スピーカーで増幅させて周囲に叩き付けますわ!
(持ち歌のカラオケを流して歌い出す)
(ロック調の楽曲)
♪燃えろ! 命ある限り!
♪願い叶えるために 戦え!
♪可能性は無限大!
♪拳を握り 叫べ!
持てる全ての技能を振り絞り、空気に溶けた虚神を歌声で攻撃するわ!
♪私の歌声は最強!
♪神すら恐れないわ!
●炎の鋼神と虚神
次いで金属の轟音を立てて戦場に現れたのは炎の力を宿せし真紅の鋼神『カマドG』、搭乗しているのは蛇塚・ライム(その罪名は『憤怒』/IGNITE POP DiVA・f30196)と言う名の少女。
黄金の龍神の如き娘に全身を切り刻まれた虚神は鋼神を視認するや否や、輪郭を揺らがせてその身を変じさせていく。
「……虚神が空気に溶けたですって?」
揺蕩う虚無へと変わり大気に溶け込んだ虚神は帝竜にも似た実体のない、触れる事もできないという恐るべき存在だ。
「こうなったら私の拳もユーベルコードも虚神には通じませんわね」
ライムが呟くように、彼女の愛機もユーベルコードもこの大気そのものとなったような虚神を物理的に傷つける手段はない。
そしてそれどころか大気と化した虚神は爆発気流、或いは猛毒の気流としてライムへと襲い掛かる。
スーパーロボットであるカマドGならば多少の爆発気流は耐えられて、猛毒も通用しないだろう。
だが、空気である以上完全に機体を覆われてしまえばどこかの隙間から侵入して搭乗しているライムへと害を与える、或いは換気を封じて窒息を狙ってくる可能性はあるだろう。
元より毒の耐性はあるから多少吸った所で動きこそ鈍らないだろうが、大量に吸ってしまえばどうなるかは分からない。
いずれにせよ長期戦は向こうに有利、故にライムは勝負に出る。
カマドGの外部スピーカーから拡声されたライムの声、そしてロック調の音楽が戦場に響き渡る。
「♪燃えろ! 命ある限り! 願い叶えるために 戦え!」
――ライムはアイドルだ。
この大気そのものである虚神を打倒すにはその強い感情を籠めた叫び、歌声が効果的。
ならばライム自身の魂の歌声を、持てる技量全てを尽くして響かせる事が彼女にとって最善の攻撃で。
「♪可能性は無限大! 拳を握り 叫べ!」
バックミュージックは大気を殴りつけるように激しい曲調、そしてそれを上回る喉を嗄らさんばかりのライムの激しい歌声が戦場に響き渡る。
アイドルとは歌とパフォーマンスで自己を表現する存在であり、その道のプロである。その彼女が持てる限りの凄まじい覇気と歌唱の技量、そして魂を籠めた激しい熱量の歌声は、アルカディアの玉座を覆う大気を圧倒するように隅々にまで届き。
猛毒と爆発の激しい気流が不規則に渦巻いていく。
まるで歌声を拒絶するかのように、歌声に干渉されているかのように。
だが、鋼神より響く歌声は更に熱量を増し、より高らかに戦場を熱狂へと導いていく。
「♪私の歌声は最強!」
――神すら恐れないわ!
そのフレーズがトドメになったか、大気が揺らぎ玉座へと収束し、虚神は揺蕩う虚無から元の傷だらけの幽鬼のような姿へと戻っていく。
あと一押し、ただ全力で歌い上げたライムはもう限界で、それを押し切るには少々厳しい。
後を他の猟兵に任せる事にしたライムは、炎の鋼神を操りアルカディアの玉座の戦場を離脱したのであった。
成功
🔵🔵🔴
紫・藍
【藍九十】
『片翼戦』
藍する九十のおねーさんと!
不思議なのでっす!
おねーさんが傍らにいらっしゃるのに、神様さんがおねーさんに思えてならないのでっす!
おねーさんも神様なのですが!
やや、おねーさんを殺す、でっすかー。
考えたこともなかったのでっす!
思いつくこともできなかったのでっす。
藍ちゃんくんよりもずっと長生きするおねーさん。
愛するヒトを独りにしないというのなら。
一緒に死ぬために殺めるというのも、一つの愛なのでっしょう。
敵だからではなく愛してるからでも倒せちゃうのでっす。
でっすが。
それは藍ではないのでっす!
ごめんなさいなのでっす。
藍ちゃんくんはおねーさんを殺さないのでっす!
繋いだ手から伝わるおねーさんの生命の歌に、藍ちゃんくんも魂の歌を重ねるのでっす!
響け、全空に!
届け、“二人の神様”へ!
虚無が虚無でいられない程の藍の歌よ!
藍ちゃんくんは!
おねーさんを!
藍してるのでっす!
これが生命ある者の苦悩で、欲望で、憎しみとだって裏表とさえ言われる――あい、なのでっす。
望み通り神様さんを魅せれましたか?
末代之光・九十
【藍九十】
片翼戦
藍と一緒に。
藍が二人居るー!?
あれ?あれあれあれ!?(藍と虚神を見比べて普通にパニック)
いや普通に考えてあっちが虚神何だろうけども…
…藍。あの。
(ちょっと照れてオズオズと手を差し出す)
うん…
握った手の温もり。淡く聞こえる鼓動…これは。生きている人間にしかないもの。
ねえ?アルカディア。君だって分かってるだろ?
限りが在ってこそ輝く生命。どれだけ完璧に写し取っても『僕ら』には無いものだ。
こうして繋がっている限り……もう惑わない(ギュッ)
繋いだ手から【生命の氾濫】を藍に。
虚無がどれだけ削り消そうとも。生命は尽きない。その輝きは消えない。
だから君も憧れたんでしょ?
藍にはどんな小さな傷も残さない。どんな些細な疲弊も許さない。
藍が藍のままに全力の全開で藍をやってのける事が僕の望みだから。
それをね。見ていたいんだ。僕は。
時が尽きても。ずっとずっと。
…共に消えれないのは少し……凄く残念だけど。
藍が『それは藍じゃない』って言うなら。それで良い。
きっとそれで良い。だから今は……ただ。この歌を…
●虚神の座、煌星の道
歌声に傷つきし虚神の頭部を、拒絶の雲海の残滓が覆う。
そこに二人の猟兵がやってきて、雲の残滓が薄れ再び虚神の顔が視認できるようになる。
「あれ? あれあれあれ!?」
現れた虚神の顔を見、隣の猟兵の姿を末代之光・九十(|何時かまた出会う物語《ぺてん》・f27635)は何度も見比べて、
「藍が二人居るー!?」
そんな驚きの声をあげたのは、姿形は全く違うのにも拘わらず、眼前にいる存在が共にやって来た紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)に感じられてならないからだ。
「不思議なのでっす! おねーさんが傍らにいらっしゃるのに、神様さんがおねーさんに思えてならないのでっす!」
華やかに女物の意匠で着飾った藍の方はいつも通りのハイテンション、九十とは真逆だけれども似たような事を言った。
同じ虚神を見ているのに、二人が抱く印象はそれぞれ別。
「いやおねーさんも神様なのですが!」
半ばパニックになりかけていた九十だったが、そんな藍の普段通りの調子に少し落ち着きを取り戻す。
「いや普通に考えてあっちが虚神何だろうけども……」
流石に一緒にやって来たのに何故か玉座に先にいる、等とはいくらなんでも無理がある。分裂したのでもあるまいし。
そして藍にとって九十であるように見えて仕方がない虚神は、藍に語り掛ける。
『隣の偽物を。殺して』
「やや、おねーさんを殺す、でっすかー。考えたこともなかったのでっす!」
それは藍にとって思いつくこともできなかった事。猟兵ではあるがただの人間である藍にとって、神である九十はずっと長生きするおねーさんという認識だ。
考えたことはない、考えたことはないけれども。
――愛するヒトを独りにしないというのなら。
「一緒に死ぬために殺めるというのも、一つの愛なのでっしょう」
敵だからではなく、愛ゆえに討つ事もあるのだから。
「でっすが」
愛故にその命を奪う――それが”愛”であったとしても、"藍”ではない。
「ごめんなさいなのでっす。藍ちゃんくんはおねーさんを殺さないのでっす!」
大袈裟にも見える振る舞いで、だがはっきりと虚神の言葉を藍は跳ねのけた。
「……藍。あの」
そんな藍に九十が藍におずおずと手を差し出す。
少し控えめに――照れたように。
それは触れ合いを望む神の望みであり、差し出された手を藍はぎゅっと握り返した。
握った手、眼前に神を名乗る強大な存在がいるというのに、不思議と藍の気分は高揚してきて。
『その横のは偽物でっすよ!』
今度は藍そっくりの声で虚神は九十に呼びかけるが、しかし九十は手に伝わる熱をこそ真実として虚神の言葉は彼女を揺らがせない。
「うん……これは。生きている人間にしかないもの」
握った手から伝わる温もりと、淡く聞こえる鼓動。いずれも生者のみが有するもので、それを間違えるなど在り得ない。
「ねえ? アルカディア。君だって分かってるだろ? 限りが在ってこそ輝く生命。どれだけ完璧に写し取っても『僕ら』には無いものだ」
本来名も無いといえども神の一柱である九十は、『虚』といえども神とされるアルカディアへと言葉を向ける。
けれど、その対話を拒絶するように虚神は頭を振って、
『僕がホンモノ。ニセモノに騙される藍なんて / 藍ちゃんの手を取ってくれないおねーさんなんて』
――藍 / おねーさんじゃない。
二つの声で二人に告げた虚神は、虚無の球体を放つ。
虚神の放つ虚無球体――それを前に九十に怯えはなく、ぎゅっと藍の手を握る。
(「こうして繋がっている限り……もう惑わない」)
ユーベルコードを彼女が起動した直後、藍の衣装と肩が不可視の球体に削り飛ばされる。
そして、一瞬遅れて血が――|吹き出さない《・・・・・・》。
ユーベルコード【生命の氾濫】、九十が起動したそれは、彼女から漏れ出る生命の概念がほぼ無制御に藍の身体を治療し続けているのだ。
九十による回復を微塵も疑っていなかったように、藍はすう、と大きく息を吸って、
「藍ちゃんくんでっすよー!」
リモコンを操作し、専用にカスタマイズした楽器やマイクから音が溢れ出す。
「天を覆う闇も障害も吹き飛ばして! 青空に藍ちゃんくんの歌を響かせるのでっす!」
バックミュージックに重ね、高らかに藍はユーベルコードを発動し歌を始める。
澄み渡った青空のような透明感のある魂の歌声に、虚神は渇望以外の感情を呼び起こされたかのように戸惑ってしまう。
先に鋼神が音圧で瓦礫を吹き飛ばして平坦になった戦場はさながらステージのよう。アイドルのように、踊るように二人は音も大気も消し飛ばしながら襲い掛かる軌道速度変幻自在の虚無球体を凌ぐ。
回避しきれず虚無の球体が体を削り消滅させようとも、九十から溢れる尽きない生命は藍の輝きを消させはしない。
どころか小さな傷も些細な疲弊も許しはせず、重なる疲労も無視して藍を高速で治療していくのが九十の役目。
――いくら消しても消しても輝きが失われぬように。
「……だから君も憧れたんでしょ?」
虚神の渇望、強者の生命を欲しがるというそれは、九十にも心当たりはある。
あなたもあの子も皆が欲しくて、繋がり一つになりたい、そんな我儘と甘え。
その問いを突き付けられた虚神は頭を振り、その力量を示すかのように何度も虚無球体の軌道を変えさせながら二人を抉り消滅させんとする。
「響け、全空に!」
それに怯まずに藍は歌を止めない。
「届け、“二人の神様”へ!」
感情を呼び起こす魂の歌――虚無が虚無のままに居られない程の"藍"の歌。
九十がつないだ手から伝わってくるのは生命の奔流であり、九十の生命の歌だ。
それに藍の魂の歌を重ね、高らかに歌う。
歌う、歌う。
澄み渡る空のような魂の歌は、虚神の感情を呼び起こすようにダメージを重ねていく。
"藍"する九十をつないだ手の先に感じながら、少年は高らかに歌い上げる。
眩しく輝くような少年のステージを、手を繋ぐ九十は疲労を無視して生命の奔流で癒し続ける。
どんな輝きもいつか終わりは来てしまう。神である九十とダンピールの藍の生きる時間は異なっていて、共に消えられない。
それが九十には少し――凄く、残念ではあるのだけれども。
藍が藍のままに全力で愛をやってのけて、輝くその様をただ見ていたい。
いつまでも、いつまでも。時が尽きてもずっと。
それは、どこか祈りにも似ていて。
「それをね。見ていたいんだ。僕は」
――それこそがこの九十という神の望み。
永遠は藍じゃないと、そういうのであれば、それでいい。
きっとそれで良いのだ。繋いだ藍の手に生命を流し続け、光り輝くような藍の歌声に九十は浸る。
(「だから今は……ただ。この歌を……」)
藍専用のスピーカーから奏でられる演奏は最高潮、いつしか虚神はその輝きの前に虚無球体の操作を止め、聞き入っていた。
身に付けている勾玉のお守りの存在を藍は感じながら、終幕に突き進むメロディを背に叫ぶ。
「藍ちゃんくんは!」
少年は自身たっぷりにギザ歯をのぞかせながらいつものように騒々しく、
「おねーさんを!」
一つ一つの言葉をキラキラと輝くような生命に満ち溢れさせて、
「――藍してるのでっす!」
きらきら満天の星のように輝く藍の歌。
その歌に込められたれた魂こそが生命ある者の苦悩で、欲望で、憎しみとだって裏表とさえ言われる――、
「あい、なのでっす」
――歌い終えた時、アルカディアの玉座から虚神の姿はすっかりと消え失せて。
そのあとに残るのはどこまでも広がる夜闇の空。
まるで未来を示すかのように月と星々の仄かな輝きが主を失った玉座と二人を照らしていた。
かくしてアルカディア争奪戦は虚神の最期と共に終焉を迎え、猟兵や|飛空艇艦隊《ガレオンフリート》の勇士達の歓声が、空の世界に響き渡ったのであった。
大成功
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