絶対凍結戦士は、赫く燃える
●次なる君へ
それは断片的な詩篇のように思えた。
少なくとも大航海時代の文明レベルまでしか持ち得ぬグリードオーシャンに住まう人々にはそう思えた。
小さな音を立てる箱。
島民たちは皆、それを神託であると思った時期もあったが、どうやらそうではないらしいということに気がつくと、何処から届いているのか、もしくはこの小さな箱の中にある何者かが言葉を発しているのかはわからないが、それを島の頂点に供えた。
己たちの理解の及ばぬものを天に近き場所に祀るというのは、ある意味理解できるものであったのかもしれない。
例え、それが氷山の最も高い場所であってもだ。
ここは氷結の島。
かつて銀河を往く船であったとも言われる逸話がほそぼそと残る島であった。どういう理屈か、ここは今氷結し氷で覆われている。
氷の大地の真下は、住人たちも知らぬことであったが、スペースシップワールドより落ちてきた宇宙船の残骸が基部として海水に沈んでいる。そこに氷結した氷が根を張るように広がり、一つの島となっているのだ。
その島の氷山の頂点にある小さな箱が思い出したかのように語り始める。
「君がこれを聞いているということは、僕は……いや、俺はもうこの世界にはいないということだろう。君が『これ』に出会ったのは運命だ。そう思うのがいい。もう逃げられないし、きっと多くの困難が君を襲うだろう」
その言葉はひどく穏やかなものであった。
聞く者を不安にさせないように、と腐心しているのがわかるようだった。
「君は多くを知るだろう。君を多くを見るだろう。君は多く傷つくだろう。けれど、それは俺も通ってきた道だ。だから、君をそれらから守ることはできなくても、手助けすることはできる。世界でたった一人だと思っていたけれど、そうじゃなかったみたいだと、そう思えることは、きっと君の心を守ってくれるだろうからね」
その言葉の主は言う。
それが誰に向けられたもので、如何なる運命によって、海洋の世界に在るのかさえ語らない。それはきっと重要なことではないからだろう。
もっと重要なことは、この言葉を向けられている者が今困難と不安を抱えていること。そして、それを如何にして切り抜けるかである。
だから、言葉の主は息を少し吐き出して告げる。
「君は一人じゃあない。安心して欲しい。俺の名前は『フュンフ・エイル』。君より前に『これ』に出会った者だ――」
●伝承
「結局の所、『それ』がなんなのかさーっぱりわかんねーってことなんだよな?」
コンキスタドールの一人が言う。
彼らは『武装商船団・雇われ船員』 たちであった。
一体なんのことを話しているのかはわからないが、彼が目指しているのは氷結した島である。そこにまつわるなにかを求めているようである。
「『世界のありようすら変える』っていう超古代兵器、『深海兵器』を見つけるのが俺らの目的だ。だけどよぉ、それが『武器』なのか、それとも船みてぇなもんなのか、一切合切わかんねーけど、見つけてこいっていうのが無理難題だよなぁ?」
「とは言え、やらにゃな。俺達三下が一花咲かせるには、それぐらいのもんがねーと」
「手当たりしだいに『深海兵器の伝承が伝わる島』を襲うっていうのは、それでも手間ってもんだぜ。そろそろ当たりを引きたいところだ」
『武装商船団・雇われ船員』たちは、辟易していた。
伝承らしきものが伝わる島は、どれもが外れであった。影らしい影もない。
「そもそも、昔々の連中がビビって『深海兵器』に触れたり研究したりするどころか、口にするのも禁じてるってのが眉唾なんだよ。じゃあなんで伝承が残ってんだっつー話だ」
「そういうのも含めて俺ら下っ端がやれってこったろ」
あーあ、と『雇われ船員』たちはやる気なさげに氷山の島へと接舷する。
やる気はなくとも彼らはコンキスタドール。
奪うことこそが本懐。
例え、それが品物や宝物でなくても、生命でなんであれ奪えるのなら奪うのである。
「最近伝承が残ってる島つって上陸してみれば、無人島ってのばっかだったしな。ここらで無駄足折らされたウサを晴らさせてもらうか――」
●深海兵器
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。グリードオーシャンにおいて、『深海兵器』と呼ばれる、ひとたびその力が振るわれれば『世界のありようすら変える』と言われる超古代兵器の実在が予知されました」
ナイアルテの言葉に猟兵たちは、それが一体どんなものであるのかを尋ねるだろう。
けれど、ナイアルテは首を横に振る。
確かに『実在している』ということは予知で理解できるのだが、それがどのような形状であり、どのような兵器なのかはわからないのだという。
この正体不明の兵器を求めてコンキスタドールが動き出すことが、その実在を証明するきっかけとなったのだ。
「コンキスタドールは氷結の島……かつてはスペースシップワールドの宇宙船であった残骸の上に如何なる理由からか凍結し大地として浮かぶ島を蹴撃しようとしています」
この地に『深海兵器』がある、というわけではなく、『深海兵器の伝承が伝わる島』を手当たりしだいに襲撃しようとしているだけなのだという。
つまり、コンキスタドールもまた当てずっぽうなのだ。
だが、そのまま放置もできない。
「この島に住まう人々は少数ですが、コンキスタドールの思うままにさせてしまえば、必ず殺されてしまうでしょう。これを防いでほしいのです」
もしかしたのならば、この島に残る伝承や、他の島を守ることに寄って『深海兵器』にまつわる詳細な予知が得られるようになるかもしれないのだ。
「この島は全てが凍結した凍土。戦いが終われば、オーロラなども見ることが叶うでしょう。島に伝わる『深海兵器』の伝承は断片的かつおぼろげでありますが、他に伝わる伝承と合わせていくことで見えてくることもあるかもしれません」
ナイアルテは猟兵たちに頭を下げてグリードオーシャンへと送り出す。
世界のありようすら変える。
その言葉は荒唐無稽のように思える。
けれど、猟兵たちはグリードオーシャンでの大きな戦い、『羅針盤戦争』で知ったであろう。世界一つを|『侵略形態』《大オーシャンボール》へと変えようとしていた七大海嘯『王笏』カルロス・グリードの力を。
もしも、『深海兵器』が世界のありようすら変えるというのならば、それを捨て置くことなどできないのだ――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はグリードオーシャンにおいて『世界のありようすら変える兵器』、『深海兵器』の伝承残る島を襲撃するコンキスタドールを打倒するシナリオとなっております。
※このシナリオは二章構成の戦後シナリオです。
舞台となる島は、凍土広がる氷結の島です。
この島は、かつてはスペースシップワールドにあったであろう宇宙船の残骸の上にあります。宇宙船の残骸部分は海中に沈み、その上に凍土が広がっているため、外側からそれと知ることはできません。
氷山が一つそびえ立っているのみです。
●第一章
集団戦です。
島を襲うコンキスタドール軍団『武装商船団・雇われ船員』たちとの戦いになります。
彼らは接舷した船から凍土に降り立ち、この島を制圧しようとしています。
無論、このまま彼らを放置すれば、島民たちは虐殺されてしまいます。これを迎え撃ち、阻止しましょう。
●第二章
日常です。
襲撃を防いだ凍結の島で、オーロラを楽しみましょう。
島に伝わる『深海兵器』の伝承は断片的であり、なおかつおぼろげです。手がかりらしい手がかりであるとは言えないでしょう。
ですが、伝承が残るのはこの島だけではありません。
一つ一つ欠片を集めるように皆さんが多くの島を救うことによって開ける道もあるかもしれません。
それはそれとして、オーロラを楽しむことも大切ですよね。
それでは超古代兵器『深海兵器』を伝える、在るはずのない伝承を求めるコンキスタドールを打倒し、島の人々を守る皆さんの物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
第1章 集団戦
『武装商船団・雇われ船員』
|
POW : 姑息なる武装「商品使用」
装備中のアイテム「【湾曲刀(商品)】」の効果・威力・射程を3倍に増幅する。
SPD : 偶然なる連携「十字砲火」
【好き勝手に動く船員達が銃撃】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ : 強欲なる叫び「士気高揚」
【誰よりも強い】という願いを【船員達】に呼びかけ、「賛同人数÷願いの荒唐無稽さ」の度合いに応じた範囲で実現する。
イラスト:Re;9
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
コンキスタドールたちは奪う。
奪うことこそが己たちであると示すように次々と接舷した凍土へと飛び降りていく。
「な、なんなんだ、お前たちは!? なんで……」
「よぉよぉ、あんたたち。『深海兵器』っていうのを聞いたことはないか? いや、口にするのも禁止されてんだっけ? なら、それっぽいモノならあるかもしれねぇよな?」
コンキスタドール『武装商船団・雇われ船員』は湾曲刀の背で肩をたたきながら、氷結の島の住人たちに尋ねる。
住人たちは何のことかわからないというように首を横に振る。
わからないのだ。
自分たちは此処で何代もひっそりと暮らしてきている。
漁をし、渡り鳥を射落とし、海獣の臓物で暖を取る。そんな暮らしを続けてきたのだ。
だから、彼らの言うところの『深海兵器』がなんであるのかわからなかった。
「わ、わからない……『それ』は一体何を指してるんだ?」
「だよな。悪い悪い。わからねぇことを聞いてしまった俺が悪い。けどよぉ、また空振りっていうのは気分よくねぇんだわ。だから、あんたらには何の恨みもないが」
その湾曲刀が剣呑な輝きを見せる。
住人たちは死を覚悟しただろう。
彼らは憂さ晴らしで己たちを殺すとわかってしまったからだ。
空振り、ということは目的のものがあるはずなのだ。だが、彼らは『雇われ船員』たちの言うところの『深海兵器』がわからない。
心当たりらしきものものない。
いや、もしかしたのならば、と一人の少年が、小さく「あ」と呟く。
その声を『雇われ船員』は耳にしていたが、もうどうでもよかった。フラストレーションが貯まりすぎていたのだ。そんな些細なつぶやき一つなどかまってはいられなかったのだ。
振り上げられる湾曲刀が煌めく。
無為に、無辜なる生命を奪わんと、その閃きが宙を走る――。
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第二『静かなる者』霊力使いの武士
一人称:私 冷静沈着
武器:白雪林
このグリードオーシャンも謎が多いですよね。
ですから、近づくためにも…行きましょうか。
早業でUCを使用。元々凍土ですから、変化は見られないでしょうね…本当に見た目だけですが。
コンキスタドールであるあなたたちにしか害のない凍土になっていますよ。
そこへ、私は白雪林から氷雪属性霊力矢の射かけを。全てここで凍り、終わっていきなさい。
あなたたちは、ここで終わるのです。
※
陰海月「ぷっきゅ!」
霹靂「クエ!」
ぼくたちが守るもん!え?刀?痛くないよ?
(氷結海月結界張ってる)
お宝の噂はロマン!
世界の有り様を変える。
それは言葉にすればなんとも陳腐なものであったことだろう。
この海洋の世界グリードオーシャンにおいては、世界そのものが世界を侵略する形態となることができる。
それを示唆したのが七大海嘯『王笏』であったカルロス・グリードであった。
ならば、『深海兵器』とは如何なるものか。
それが武器であるのか。はたまたそうではないのか。
何れも未だ判明せず、わかっているのは『それ』が確実に在るという予知のみ。
この氷結の島においても伝承のみが伝わり、また住人たちは、それが伝承であるという理解にすら及ぶところがない。
そんな島にありてコンキスタドール『武装商船団・雇われ船員』たちは、これまで空振りであったフラストレーションを晴らすべく、氷結の島の住人たちを蹂躙せんとしている。
振り下ろされる湾曲刀の一閃が無辜なる人々の生命を奪わんとした時、その湾曲刀の上に氷の羽が舞い落ちる。
「なんだぁ、これは……羽? 氷で出来た?}
彼らは訝しむ。
それはこの氷結の島においては珍しくない。氷など、どこにでもある。だが、その氷の羽根が示すのは、即ち滅び。
「水よ凍てつけ」
その言葉が馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『静かなる者』から放たれた瞬間、コンキスタドールたちは己の体が氷で蝕まれていくことを理解する。
「氷が、足元から……!」
放たれる斬撃を前に奇妙な生物が、いや、巨大な海月の触腕が防ぐ。
「ぷっきゅ!」
「クエ!」
ヒポグリフの羽が羽ばたき、凍らせた羽が乱舞する。
それは、『陰海月』と『霹靂』による住人を傷つけんとしていたコンキスタドールの攻撃を阻むもの。
「いつのまに……! こいつら、猟兵か!」
「ええ、そのとおりです。この氷原もユーベルコードによる発露などと理解できなかったでしょう。元々凍土ですが……これはあなたたちにしか害のない凍土になっていますよ」
彼の言葉に瞳がユーベルコードに輝く。
四悪霊・水(シアクリョウ・ミズ)は、オブリビオンのみを蝕むユーベルコード。
例え、コンキスタドールたちが住人たちを盾にとったところで、触れる氷の羽が住人たちに触れても何の害もない。
ただオブリビオンだけを殺す呪詛。
それが氷の羽となって待期散らされているだけなのだ。
「俺達ぁな! 誰よりも強くあるんだよ! そのためには!」
「ああ、お前ら全員ぶっ殺して……!」
その叫びは届かない。
射掛けられた霊力の矢が『雇われ船員』たちの体に射掛けられ、その体を凍りつかせていく。
「全てここで凍り終わっていきなさい」
そう、どれだけ最強を求め、謳うのだとしても。
ここにあるのは四悪霊。
オブリビオンの存在を決して許さず、その悪行を全て留める者。
故に、放たれた矢は次々とコンキスタドールたちの体を凍りつかせていく。
「あなたたちは、ここで終わるのです」
何も得られず。
何もなしえず。
何者にもなり得ぬままに過去の化身として骸の海に還る。放たれる霊力の矢が、その道行きを示すように放たれ、『武装商船団・雇われ船員』たちは、己たちの願望ごと凍りつき、砕け霧消していくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
魔法少女・マジカルガール
「ええ〜っ!!伝説の古代兵器だって!?もしそんな物が悪用されたら…この世界が大変な事になっちゃう!そんな事は絶対にさせないんだからっ!」
UC発動してタイトルコール!
『魔法少女マジカルガール!はっじまるよ〜♪』
物陰に隠れ早着替え
|変身《マジカルチェンジ》してから登場!
「そこまでだよ!」
「平和を乱す悪者は許さない!愛と正義の魔法少女マジカルガールただいま参上☆」
決め台詞とポーズで視聴者から応援を稼ぐよ!
魔力溜め
全力魔法
マジカルロッドを振り拘束魔法で捕縛して、邪悪な心を浄化する非殺傷マジカルハートビームでみ〜んな|強制改心し《よいこになっ》ちゃえ〜!
「さあ!まだまだ住民の人達を助けに行かなくちゃ!」
小さな少女は、転移した後に『深海兵器』を求めるコンキスタドールたちが占拠した凍結の島を見やる。
何処を見ても凍土ばかり。
こんな所に本当にそんなものがあるのかどうかなど怪しいものだ。
けれど、コンキスタドール『武装商船団・雇われ船員』たちは確かに、この島に『深海兵器』の伝承が残っていると理解して襲ってきている。
接舷された船から次々と雄々しい叫び声を上げて住人たちに襲いかかろうとしている彼らは、ただフラストレーションを発散するために虐殺を行おうとしている。
「伝説の古代兵器だって!?」
小さな少女は、彼らの横暴を許してはおけない。
だって彼女は、魔法少女・マジカルガール(Magical☆Girl・f38569)なのだから。
手にしたマジカルロッドを振るい、物陰で変身する。
マジカルドレスの詠唱と共に彼女の体は瞬間的に戦闘衣装に早変わりするのだ。
そのまま襲われそうに成っている住人たちの元へ急ぎ、叫ぶのだ。
「そこまでだよ!」
「あ? なんだぁ……? ガキ……いや、猟兵か!」
「『魔法少女マジカルガール! はっじまるよ~♪』」
それはタイトルコールであった。
グッドナイス・ブレイヴァー――いつのまにか動画撮影ドローンが周囲に飛び交い、彼女の活躍を映し出す。
生配信なのだろう。
コメントが次々と書き込まれていく。凍土にて走る魔法少女とコンキスタドール。悪役はどっちかなど言うまでもない。
「平和を乱す悪者は許さない! 愛と正義の魔法少女マジカルガールただいま参上☆」
決め台詞とポーズが動画撮影ドローンのカメラに映し出され、動画配信サイトは大盛りあがりである。
彼女の配信を楽しみにしているお友達がたくさんいるのだ。
そんな彼女への応援コメントは、そのままに彼女の力となり、戦闘能力をパワーアップさせていくのだ。
「な、なにがなんだかわからねぇが! 猟兵であるのなら、容赦はしねぇ!」
手にした湾曲刀を振りかぶり魔法少女マジカルガールへと襲いかかるコンキスタドール。だが、その動きは彼女にとって躱すのは容易いものであった。
それでは動画視聴者数は稼げない。
ドラマチックに。
そして、盛り上がりを意識しなければならない。マジカルロッドを振るって拘束魔法を放つ。
「てめえも『深海兵器』を狙ってやがるのか!」
「ううん、そんなものがもし、あったとして……あなたたちみたいな悪者が悪用したら……」
拘束魔法がコンキスタドールを締め上げていく。
さらに背後から襲いかかるコンキスタドールたちも同様に彼女は拘束する。
己の中に溜まっていく魔力を感じる。
同時に動画を見ているお友達みんなのコメントが彼女に力と勇気をくれるのだ。確かに彼女はまだ幼い。
けれど、世界が危機にひんしているのならば、それを捨て置くことなどできないのだ。
「この世界が大変なことになっちゃう! そんなことは絶対にさせないんだからっ!」
その言葉とともに放たれるのは、邪悪な心を浄化するマジカルハートビーム。
「み~んな|強制改心《よいこになっ》っちゃえ~!」
放たれるハートビーム。
それはあまりにもほんわかしたビームであった。
とてもじゃないが攻撃とは思えなかった。けれど、お友達のコメントによってパワーアップした彼女のハートビームは非殺傷型ビーム。
打ち込まれたコンキスタドールたちは邪心を浄化され、そのまま霧消していく。
断末魔の叫びすらなかった。
ただただ浄化されたハートマークの輝きが戦場凍土に刻まれるばかり。
魔法少女マジカルガールはカメラに向かって決めポーズを取り、そして言うのだ。まだまだコンキスタドールの猛威にさらされている住人たちがいると。
そして、それを救うために必要なのは言うまでもなくお友達のコメントなのだと。
「さあ! まだまだ住人の人たちを助けにいかなくちゃ! みんな、応援よろしくね――!」
大成功
🔵🔵🔵
アリスナイト・イマジネイション
騎乗して急降下踏み潰し!
「あ!だめよ、ジャバウォック!そんなもの食べちゃ…お腹壊しちゃうでしょ!ぺっ、しなさい!ぺっ!」
『バウォ』ゴクン
「あー!もうっ、言うこと聞きなさい!」ぺちぺち
パワーフードのクッキーとお肉をそれぞれ食べて力持ちの怪力を増強!
「さあ、行こっ!|想造具現術《アリスナイト・イマジネイション》!」
美しき白銀の無敵戦闘鎧を自分とジャバウォックに纏わせ、10m10tに巨大加重化したアリスランスとアリスシールドで、シールドバッシュとランスチャージ!
ジャバウォックは引き裂いたり噛み砕いたり青白い炎のブレス攻撃!
『バウォオオッ!!』
「味方を怪我させたら、おやつ抜きだからね!」
『バウォ!?』
「こいつら……! おいっ! 猟兵共が来たぞ!」
コンキスタドール『武装商船団・雇われ船員』たちは、転移してきた猟兵たちの姿に俄にたじろぐ。
けれど、場慣れしている彼らにとって、物事とはスムーズに行かぬものであっても、それを押し通す力を持っていることのほうが重要であった。
手にした湾曲刀は、その切れ味の鋭さを誇るように剣呑な輝きを見せる。
商品の一つであるが、そもそも彼らが猟兵に倒されてしまえば商品どころではない。
「猟兵の数はまだ多くはねぇ! 囲ってボコしてやりゃぁなぁ!」
だが、その威勢の良い言葉は、一瞬で踏み潰される。
アリスナイト・イマジネイション(Alice Knight Imagination・f38392)に取り付いたオウガの一踏みによってコンキスタドールの一人が押しつぶされる。
その押しつぶしたコンキスタドールの遺骸をアリスナイトのオウガは一飲みにしてしまう。
「あ! だめよ、ジャバウォック! そんなもの食べちゃ……お腹壊しちゃうでしょ! ぺっ、しなさい! ぺっ!」
彼女の言葉にオウガであるジャバウォックは一つ鳴いて飲み込む。
『バウォ』
「あー! もうっ、言うこと聞きなさい!」
またがる怪物竜の頭をはたきながらアリスナイトはどうして言うことを聞いてくれないのだと憤慨する。
だが、今はそれどころではない。
「竜……ッ、だからどうだってんだよ!」
「いくぜ、囲め囲め!!」
コンキスタドールたちがアリスナイトとジャバウォックの周囲を取り囲む。
だが、慌てることはない。
アリス無いとはパワーフードのクッキをお肉をそれぞれ頬張る。
自分は甘いクッキーを。
ジャバウォックには血の滴るお肉を。
そうすることによって得られるのは力持ちの怪力。パワーフードは自分に適した食べ物だ。それを食べた彼女たちは元気いっぱいに叫ぶのだ。
「さあ、行こっ!|想造具現術《アリスナイト・イマジネイション》!」
その言葉とともに輝くのはユーベルコード。
己の想像から創造される戦闘鎧。
それは自分が信じていれば、無敵なる鎧。
どんな攻撃も跳ね返し、千枚通しだって一つも通さない強固な鎧。彼女が手にしたアリスランスとシールドは、さながら騎兵隊のようでもあった。
「バウォオオッ!!」
ジャバウォックの咆哮が轟き、走り出す。
氷結の島の凍土は確かに冷たい。
奔れば風が頬を切り裂くみたいに吹き付けるだろう。けれど、アリスナイトはへっちゃらであった。
生み出された戦闘鎧は無敵の鎧。
自分が無敵だと信じるのならば、その力は能力に疑念を抱くことがない限り、強力無比そのもの。
振るわれる怪物竜の豪腕がコンキスタドールの体を引き裂き、その強靭な牙が噛み砕く。
放たれる青白い炎のブレスが凍土を溶かす勢いで放たれる。
「味方を怪我させたら、おやつ抜きだからね!」
暴力を暴力のままに、思うままにふるおうとするジャバウォックの足が彼女の言葉によって止まる。
ジャバウォックの強みは、その止められぬ暴力、暴威である。
だが、ともすればそれは暴走という憂き目。
故にアリスナイトは手綱を握る。
その手綱がおやつであるというのは、他者から見れば心配そのものであったけれど、
『バウォ!?』
だが、その言葉に怪物竜は敏感に反応する。
今でも食事制限をされているのだろうか、飼いならされた怪物竜は仕方なしというようにアリスナイトに従うだろう。
「さあ、行こっ! みんなを助けるんだよ、いいね!」
その言葉とともにコンキスタドールは己たちでは止められぬ怪物竜と、それを騎馬の如く操るアリスナイトの猛攻に蹴散らされるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
狼藉を働こうとするコンキスタドールを、黒鴉の式を襲いかからせて牽制。
あなたたち、相手を見間違うと死ぬことになるわよ。
黒鴉たちに牽制を任せておいて、その時間で祭文を詠唱。
「結界術」「全力魔法」氷の「属性攻撃」「範囲攻撃」「貫通攻撃」「串刺し」「仙術」「道術」で寒氷陣!
足下が最初から氷だからやりやすいわ。絶陣の氷柱に貫かれて、百舌の早贄にでもなるといいわ。
銃撃? この寒氷陣の中で? 動き回る氷柱が、一切の射線を遮る。飛ばした黒鴉の目で全域監視してるから、死角もない。
串刺しにならなかった奴らは、薙刀を振るってあたしの手で討滅する。
――あの『ハイランダー・ナイン』の悪魔の名が、どうしてこんなところで?
氷結の島に飛び込んでいくコンキスタドール『武装商船団・雇われ船員』たち。
彼らの手にあるのはフリントロック式の銃。
彼らに統率者はいない。
ただ己たちの欲望のままに振る舞う。即ち、彼らにもしも連携のようなものが見て取れるのならば、それはただの偶然だ。
「皆殺しだ! 全員な!」
略奪することは、殺すこと。
金品財宝だけではなく生命までも奪う。
それがコンキスタドールとしての彼らのあり方であった。
だが、その銃口の前に飛び込むのは大量の黒鴉たちであった。
「あなたたち、相手を見間違うと死ぬことになるわよ」
その言葉が黒鴉の羽が舞い散る向こう側から聞こえる。
「ああ?! なんだよ、これは! おい! 姿を見せろ!」
コンキスタドールの言葉に村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は応えなかった。応える義理がなかったからである。
彼女の唇が紡ぐのは、ユーベルコードの詠唱。
ただ静かに、黒鴉の式神の向こう側で彼女は力を振るう準備を整える。
「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。冷たく凍えし絶望の爪牙よ。地の底より目覚めて、大地を闊歩する傲慢なる衆愚を穿ち貫け。疾!」
きらめくユーベルコード。
瞳にあるのは、寒氷陣(カンピョウジン)。
戦場に地を破り、足元からコンキスタドールたちを次々と串刺しにする氷の柱。
「ぐおっ!」
「こいつは……! 足元から生えてやがる……!」
「足元が最初から氷だからやりやすいわ。絶陣の氷柱に貫かれて、百舌の早贄にでもなるといいわ」
ゆかりの言葉にフリントロック式の銃口が向けられる。
放たれる弾丸は、地より生えた氷の柱に阻まれる。それはどう見てもおかしな光景であった。
「今、氷の柱が動かなかったか……?」
「ええ、この戦場にあって氷柱はあたしの支配下。黒鴉の式神で全域を監視してるから、死角もない」
ゆかりは手にした薙刀をもってコンキスタドールを切り捨てる。
銃弾は蠢く氷の柱に防がれる。
視界はたしかに覆われるが、空にある黒鴉の式神によって俯瞰して知ることができる。
振るう薙刀がコンキスタドールたちを次々と霧消させていく。
ゆかりは、それにしても、と思う。
時折聞こえてくる音、声のようなものはなんだろうかと。
それはこの氷結の島のいただきに供えられた箱から響く声であった。時折こうして聞こえてくるのだということを氷結の島の住人たちから後で彼女は聞くことになる。
問題はそこではない。
確かに此処は『深海兵器』の伝承がおぼろげながら残っているという島だ。
それと関係しているのか、それともしていないのか。
しかしながら、その名前に彼女は聞き覚えがあった。
「――あの『ハイランダー・ナイン』の悪魔の名がどうしてこんなところで聞こえるというの?」
彼女は訝しむ。
海洋の世界は多くの世界の異物が存在する。
この氷結の島の基部となった宇宙船一つとってもそうだ。他世界の異物としてその名前が紛れ込んでいるのならば。
「なにか関係があるというのかしら――」
大成功
🔵🔵🔵
フォルク・リア
「そっちも『深海兵器』を探しているらしいね。
それで、何か掴めたのかな。」
と情報を得られる事を期待している風でもなく尋ねつつ
風雪に隠して拘束する闇の黒鎖を発動し敵の近くに伏せておく。
その答えによらず。
「まあ、こんなところで無益な時間を過ごしている位だ。
聞くだけ無駄というものか。
しかし、万が一と言う事もある。
最初で最後の話す機会を使うのも悪くないかな。」
話が打ち切られると共に【先制攻撃】、【範囲攻撃】で多くの敵を
巻き込んで黒鎖で攻撃して敵を絡め捕り、
魂を拘束する事により強欲なる叫びで願う事も封じる。
捕えた敵にはフレイムテイルから鎖を伝った炎を流して
攻撃し仕留める。
「お前達の非道の旅も此処までだ。」
『世界のありようすら変える』――それが『深海兵器』である、とされている。
これまで、そのような超古代兵器の存在は予知されていなかった。
けれど、コンキスタドールたちが伝承をたどって得ようとする動きが予知されたことによって、未だ明らかにならざりし『深海兵器』の像が点と点を結ぶようにして現れようとしていた。
猟兵たちにとって、それは捨て置くことのできない事実である。
仮に本当に『世界のありようすら変える』のならば、この海洋の世界が危ういことは言うまでもない。
だからこそ、こうしてコンキスタドールたちの目論見を一つ一つ潰していかねばならないのだ。
「ちくしょうが!『深海兵器』の情報をたどってきてみれば猟兵と鉢合わせかよ! ああ、もう本当にどうしようもねぇな。貧乏くじ引いてばっかりだ!」
だが、コンキスタドール『武装商船団・雇われ船員』たちにとっては、自分たちの立場を飛躍的に向上させるチャンスでもあった。
猟兵たちを退けることができるほどの実力を証明できたのならば、新たなる七大海嘯へと取り立てられることもあるのではないかと考えたからだ。
けれど、それは浅はかな考えであるとしか言えないだろう。
少なくともフォルク・リア(黄泉への導・f05375)にとってはそうだった。
「そっちも『深海兵器』を探しているらしいね。それで、何か掴めたのかな」
その言葉にコンキスタドールは忌々しげに呟く。
「空振りばっかりだぜ? アンタが何を期待しているのかわかるぜ。俺達から何か情報が得られやしないかと思っているんだろう!」
湾曲刀でもってフォルクに襲いかかるコンキスタドール。
だが、その湾曲刀がフォルクに届くことはなかった。
風雪に紛れた黒い影の鎖が彼らの体を絡め取る。
「まあ、こんなところで無益な時間を過ごしているくらいだ。聞くだけ無駄というものか」
「ハッ! 生憎だったな! こっちはな、『深海兵器』の伝承が残る島々っていうアドバンテージを持っているんだぜ? アンタら猟兵は、後手後手ってわけだ!!」
その言葉にフォルクは頷く。
「そうか、万が一ということもある、と思っていたが……最初で最後の話す機会を使うのも悪くない」
フォルクは理解する。
コンキスタドールたちは確かに『深海兵器』の存在を信じている。
口にすることも禁じられた『深海兵器』。
けれど、伝承は残っていて、その伝承をコンキスタドールは手繰り、手当たりしだいに襲っているのだという。
それだけで十分だった。
「お前たちの非道の旅も此処までだ」
拘束する闇の黒鎖(コウソクスルヤミノコクサ)は、コンキスタドールの魂ごと拘束する。
叫ぶ声も、言霊とならぬのならばユーベルコードとして輝くこともないだろう。
フォルクの手、その黒手袋から炎が走る。
それは一気に影の鎖を伝ってコンキスタドールを燃やすだろう。
「ぐああああ――!!」
断末魔の悲鳴が響く。
風雪の中に炎が揺らめく。それは、コンキスタドールたちがこれまで行ってきた非道を浄化する炎のようでもあったことだろう。
フォルクは燃える炎を見やり、フードの奥から氷結の島を見る。
この島一つとってみても、グリードオーシャン、海洋の世界は、他世界の様々な要因が紛れ込んでいる。
果たしてそれは、神隠しのように紛れ込んできた、というものなのだろうか。
かつて七大海嘯『王笏』カルロス・グリードは言った。
この世界そのものを『大侵略形態』に変えると。ならば、他世界の残滓は、侵略の痕か。
それさえも未だ明らかになっていない。
「ならば、『深海兵器』の謎を追うのもまた、これをたどる軌跡となるか」
フォルクはその断片の如き情報を一つ一つ手に、世界の真実というパズルを解き明かさんとするのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
杓原・潤
深海兵器がなんだか分かんないけど、憂さ晴らしで人を傷付けるなんて許せない!
骸の海に送り返してやるんだから!
まずは【高速詠唱】で雷の【属性攻撃】を閉じ込めた泡を閉じ込めて、敵に向けて飛ばそう。
雷が解き放たれればダメージになるし、雷鳴がうるさくて他の船員に願いを呼び掛けても聞こえないかも知れないしね。
そうやって【時間稼ぎ】したら【召喚術】のユーベルコードでサメを呼ぶぞ!
出て来いうるうのサメ達!
敵がお話なんか出来ないくらい音をたてて、そのノコギリを回すんだ!
そのまま噛ませてもよし、ノコギリで【切断】させてもよし。
今日は【暴力】的に暴れても許してあげるから、全力でやっつけちゃえ!
コンキスタドールたちが求めるものは『世界のありようすら変える』と言われる超古代兵器。
それが『深海兵器』である。
しかして、それが一体どのようなものであるのかを未だ誰も知らない。
コンキスタドールたちでさえわからないのだ。彼らにわかるのは、口にすることすら禁じられていながら、何故か残る伝承の断片がグリードオーシャンの島々に残っているということだけだ。
この氷結の島に彼らがやってきたのもまた、それが故であった。
だが、杓原・潤(鮫海の魔法使い・f28476)にとって、それはまったく関係のないことだった。
「『深海兵器』がなんだかわからんないけど、憂さ晴らしで人を傷つけるなんて許せない!」
彼女の怒りも尤もであった。
けれど、コンキスタドール『武装商船団・雇われ船員』たちは嘲笑う。
「だからなんだってんだよ! 俺達はコンキスタドールだぜ? 奪うのは金品だけじゃあねぇんだよ! 生命まで全部奪い取ってやってこそだろうが!」
叫ぶ声と共に彼らの力が強化されていく。
けれど、潤はその手にしたバブルワンドを振るう。
そこから噴出したのは泡。
だが、ただの泡ではない。その泡の中には雷が閉じ込められている。
触れればすぐに泡は弾けてしまう。
けれど、閉じ込められていた雷は迸り空気の壁を撃ち抜く轟音が響き渡る。
「うるせぇな!」
「これで誰に呼びかけても連携なんてできないでしょう! 骸の海に送り返してやるんだから!」
潤はバブルワンドの生み出す雷の泡でもって時を稼ぐ。
これで敵を倒せるとは思っていない。
コンキスタドールは一筋縄では行かない相手だ。だからこそ、泡は時間稼ぎである。
「こいつ、何をしていやがる! おい! てめえら! あいつを――」
「もう遅いのよ! 出て来い、うるうのサメ達!」
潤の言葉がコンキスタドールの声を遮る。
それ以上に響き渡るのは回転ノコギリの音であった。回転するのは、彼女が召喚したサメの頭部。
本来のサメの生態ではありえぬ光景。
回転ノコギリを供えたサメが一斉に空を飛ぶ。ここが氷結凍土であったとしても、潤のサメたちには全く関係がない。
どんなに風雪が荒ぶのだとしても、飛ぶことができる。
それが潤のユーベルコード、シャーク・トルネード。
「おしゃべりなんて出来ないくらい、そのノコギリを回すんだ!」
潤の号令と共にサメの嵐はコンキスタドールたちを飲み込んでいく。
その光景はあまりにも非現実的であった。風雪を巻き込むサメの嵐は、コンキスタドールたちに噛みつき、ノコギリで容赦なく切断していく。
どこかの映画の光景そのものであった。
「今日は暴力的に暴れても許してあげるから、全力でやっつけちゃえ!」
潤は容赦しない。
コンキスタドールである彼らは、氷結の島の人々を憂さ晴らしで殺そうとした。
何も殺す必要なんてないはずなのだ。
けれど、それがコンキスタドールとしての性質であるというのならば、潤は許せないのだ。
ただ、徒に奪われる生命などあっていいはずがない。
「だから、うるうは魔法使いとして! 本物の魔法使いとして、そういうのがよくないことだって! 骸の海に叩き還してあげるんだから!」
彼女の瞳がユーベルコードに煌めく。
吹き荒れるサメの嵐がコンキスタドールたちを飲み込み、尽くを霧消させていく。
嵐が過ぎ去る痕には、彼らの痕跡など何処にも残っていないだろう。
潤が望むのは、コンキスタドールたちによって襲われた人々の心のケアだろう。
ならば、彼らの痕跡など何一つ残してはならないと、その圧倒的なサメの暴力でもって根こそぎ削ぎ落とすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステラさんと】
あの雄叫び、なにか宿ってるんでしようか?
いやまぁ、宿ってるでしょうけども。
凍結戦士を凍結するとか、ヤバすぎですよね。
って、ステラさん、最近わたしの演奏に厳しくないですか?
せっかく耳栓無効できるようになったのに……。
しかたないので【カンパネラ】で叩き潰していきましょう。
島のみなさまの安全を守れば、ステラさんの雄叫びもなんとかごまかせ……。
常識?(国語辞典めくり)
どこにもやべーという記述はないんですが!
あとそのくんかくんか、みなさん引いてますから。
これが風邪なら新種ですね。パンデミックステラさんってことですね。
……そろそろわたし、危険物取り扱い(甲種)取れるんじゃないでしょうか。
ステラ・タタリクス
【ルクス様と】
|エイル様《主人様》の!香りがします!!
というわけで|メイド《犬》がまいりました!
さぁどこですか私のエイル様!!
という感じでUC【押しかけメイドの本気】発動です
ほら、ルクス様はやく
あの方々さくっと倒してください
あ、音以外でお願いします
いえ、まだ住民の皆様に聞かせるには早いかと(色んな意味で
さて突然失礼しました島の方々
パーティーの常識担当、メイドのステラと申します
何ですかルクス様?風邪ですか?
たまにルクス様の私への評価がわからなくなります
いえ、本当にエイル様の香りというか存在感はあるような気がします(くんくん)
誰がやべーメイドですか
ところで皆様、『私の』エイル様ご存じありませんか?
「猟兵共がなんだってんだよなぁ! 俺らがやることは変わらねぇ! 略奪鏖殺だ! だろう! なあ!! 俺達はコンキスタドールだ! 奪わねぇで――」
コンキスタドール『武装商船団・雇われ船員』たちの雄叫びが響く。
だが、完全に響き渡る前に氷結の島には轟くものがあった。
「|『エイル』様《ご主人様》の! 香りがします!!」
それは、はちゃめちゃにドでかい声であった。
宣言であるといえるし、事実無根のことも叫べば事実になるとでも言わんばかりの叫びであった。
コンキスタドールたちは皆一様に目を丸くした。
いや、何が? 香り?
ちょっとわかんないですね、とコンキスタドールたちは思った。どう考えても関わってはならない類の人種が目の前に来た、という顔すらしていた。
その叫びの主はご存知、ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)であった。
「というわけで|メイド《犬》がまいりしました! さぁどこですか私の『エイル』様!!」
そこになかったらないですね。
「あの雄叫び、なにか宿っているんでしょうか? いやまあ、宿ってるでしょうけども。ほら、みんな凍結してますよ、ヤバすぎですよね」
ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は、そんなステラの様子とコンキスタドールたちの動揺を見比べて頷く。
まあ、いいや、と思った。
これ以上追求したって得られるものはないし。
というか、それ以前に押しかけメイドの本気(マワリトノニンシキノチガイ)を見せつけられているのだ。
どっちがやべーかなど言うまでもない。
「ほら、ルクス様はやく。あの方々さくっと倒してください」
「みんなドン引きしてるんですが……では」
ルクスが楽器を取り出そうとした時、ステラが手で制する。まだなにか? とルクスは訝しむ。
「あ、音以外でお願いします」
「最近わたしの演奏に厳しくないですか? せっかく耳栓無効化できるようになったのに……」
それだよ、とステラは思ったが黙っていた。
「いえ、住民の皆様に聞かせるには早いかと」
色んな意味で。
ステラはその言葉を飲み込んだ。此処で問答しても事件は解決しないのである。事件はいつだって戦場で起こっているのである。
やべー勇者とメイドの珍道中はいつだって、そういうものなのである。
見敵必殺。
「しかたないですね。なら叩き潰していきましょう」
そうして、とてもざっくりとした活躍でルクスは勇者らしくコンキスタドールたちをぶっ飛ばしていく。
割愛させてもらったのは、まあ、なんていうか、その。ほら、いつもの感じなので。
「さて、突然失礼しました島の方々。パーティの常識担当、メイドのステラと申します」
「常識?」
ルクスは救い出した住人たちの前で国語辞典をめくる。鈍器は勇者の標準装備である。
常識。
どう考えてもステラには似つかわしいなぁって思っていたので。常識の欄を見ても、どこにもやべーという記述はない。どちらかというと対極の言葉じゃないかなって思う。在るとすれば、対義語のとこ。
そんなルクスをよそにステラは小さなお鼻をひくひくさせている。俗に言うくんかくんか。
「あとそのくんかくんか、皆さん引いてますから」
「いえ、本当に『エイル』様の香りというか存在感はあるような気がします」
「これが風邪なら新種ですね。パンデミックステラさんってとこですね」
「なんですかルクス様? 風邪ですか?」
二人のやり取りはいつもどおりである。
だがしかし、初見の住人の皆さんにとっては、大丈夫かなこの人達と不安になるやり取りである。大丈夫? 喧嘩始まらない?
「誰がやべーメイドですか」
いや、言ってない。言ってないです、と住人たちは首を横に振る。
「……そろそろわたし、危険物取り扱い(甲種)取れるんじゃないでしょうか」
触れるなやべーメイド。
ヒヤリハット活動である。指差し確認! ヨシッ! なんでヨシッ、したんですか。どうみてもヤベーじゃないですか! となるあれである。多分。
「ところで皆様、『私の』『エイル』様ご存知ありませんか?」
やっぱヤベーじゃねーか! と住人の皆さんは思った。なんでヨシって思ったんですか、と本当にルクスに詰め寄るところであった。
しかし、住人たちは、その『エイル』という言葉に聞き覚えがあるようであった。
「あの氷山の上に置いてある箱から偶に、そんな単語が聞こえることあるけど……」
その言葉が果たしてステラの求めるものと同じであるかはわからない。
空を見上げれば、そこにはオーロラがゆっくりと色彩のカーテンを見せる――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 日常
『オーロラが彩る氷結の島』
|
POW : オーロラの織り成す光景を楽しむ
SPD : オーロラの織り成す光景を楽しむ
WIZ : オーロラの織り成す光景を楽しむ
イラスト:みささぎ かなめ
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
コンキスタドールたちを退けた猟兵たちは氷結の島の住人たちにいたく歓迎されたことだろう。
生命の恩人であることに変わりはないのだから、歓待も頷けるものである。
けれど、猟兵たちは気になることがあった。
そう、『深海兵器』。
それはあまりに危険であるがゆえに、口にすることすら禁じられていた言葉。
だが、語ることを禁じていたのにも関わらず、何故『深海兵器』の伝承が残っているとコンキスタドールたちは知ることができたのだろうか。
謎は深まるばかりである。
この氷結の島に残る伝承もまたおぼろげであり、例え手がかりらしき断片が在るのだとしても『深海兵器』に繋がるそれであるかも定かではない。
けれど、空にはオーロラが煌めいている。
戦いの後のひととき。その憩いを満喫する時間くらいは残されているだろう。
氷結の島の住人たちに伝承のことを尋ねるのもいい。
自分の足で、目で地道に島を巡って調査するのもいいだろう。
どちらにせよ、残されている時間はひとときだ。その時間をどう使うかは猟兵たちの自由だ――。
村崎・ゆかり
不届き者はいなくなったわね。
じゃ、アヤメと羅睺、おいでなさいな。
この氷結の島を楽しみましょう。
オーロラウォッチングしながらね。
極光は、UDCアースでは地磁気の影響だけど、この世界ではまた違った原理が働いてるんでしょうね。
日本でも平安時代の『明月記』に、赤いオーロラのことが記されているわ。その原理はまだまだ謎が多い。浪漫よね。
難しい話なんてつまらない? たまにはいいでしょ。
島民の人たちと「コミュ力」で話をしつつ、この島に残る『深海兵器』の伝承を手繰ってみよう。こういうのは大学でのフィールドワークと同じこと。慣れてるわ。
十分働いた。後は好きに過ごさせてもらおう。一休み出来る空き家はあるかしら?
氷結の島の空に浮かぶオーロラ。
この島に住まう人々にとっては日常の光景。
されど、それは光のカーテンのように思えただろうし、またその光景を前に普段見ることのできない者たちは感嘆の声を上げる。
得てしてそういうものである。
UDCアース世界を知る村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)にとっても、オーロラは珍しいものであった。
極光。
それは地磁気の影響に寄るものであると彼女は理解している。
だが、このグリードオーシャンにおいてはまた違う理が働いているのかもしれない。先入観は捨てるべきだと彼女は頭を振る。
コンキスタドールたちは排除され、心置きなく異世界の現象を堪能することができる。
「じゃ、アヤメと羅喉、おいでなさいな。この氷結の島を楽しみましょう」
「オーロラか~あんまり見ることないよね」
「そもそもそんなに見られる現象ではないようですし……」
そう、科学技術の発展したUDCアースにおいても、その現象は未だ全てを解明されたわけではない。
太陽のプラズマが影響を及ぼすとは言われているが、グリードオーシャンにおいてもそうだとは限らない。
「日本でも平安時代に『明月記』に、赤いオーロラのことが記されてるわ」
原理についてもまだ分かっていないことが多い。それを人は浪漫と呼ぶのだろう。
ゆかりは空を見上げる。
氷結の島は凍土だ。基部にスペースシップワールドの宇宙船が沈んでいるのだとしても、如何なる原理で氷結した凍土が根を張っているのかわからない。
「難しい話はいいよ~」
羅喉の言葉にゆかりは苦笑いする。
「たまにはいいでしょ。ああ、そうだ。せっかくだし、この島に残る『深海兵器』の伝承を手繰ってみましょう」
ゆかりはフィールドワークの一貫であるというように住人たちに話しかける。
彼らはオーロラが空に浮かんでいても珍しく思わないようである。
「逆にオーロラがない空があることのほうが珍しい。あなた達は、あれが珍しい現象なのだと思っているんだな」
「ええ、それも稀なね。コンキスタドールの連中が襲ってきた理由だけど、やっぱり伝承に『深海兵器』の名は出てこない?」
ゆかりの言葉に住人たちは頷く。
そもそも『深海兵器』という単語を語ること事態を禁じられているのだ。
ならば伝承として残っているわけがない。
闇に葬られた存在。
だが、コンキスタドールは、その存在を知っていたし、伝承事態があることを理解していた。ならば、矛盾する。
本当に『深海兵器』は存在しているのか。
予知として存在することが分かっていても、未だ不透明な存在。武器なのか、それとも他のなにかなのか。
どんな形をしているのかもわからない。
「結局、あやふやなものっていうことだけがわかったっていう収穫ね。とは言え、検証するにはあんまりにも数が少ないわ」
コンキスタドールが伝承残る島を襲うというのならば、予知によって数が増えていくだろう。そうすれば、きっと断片として手に入れられる情報も多くなる。
「その時をどのみち待つしか無いってわけね。十分働いた。後は好きに過ごさせてもらうわ」
ゆかりは式神たちと連れ立って一息つける場所を探す。
空き家はなかったけれど、海とオーロラがよく見える場所は見つけられた。
凍土の冷たい風にさらされ、三人は睦まじく身を寄せ合って空を見上げる。あの色彩の美しい空のカーテンめいたオーロラは、極光と呼ばれるように人の目に映る光としては最上のものだろう。
この日もまた思い出として蘇る時が来るかもしれない。
その時は『深海兵器』という物騒なものとの思い出ではなく、隣り合う二人のぬくもりとともに思い出したい。
そんなふうにゆかりは思うのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
引き続き『静かなる者』にて
さて、その『深海兵器』の伝承ですか…。
本当に少しずつ聞き込みますか。猟兵は紡ぐものですから。
噂でもいいですから。海に関するものでもかまいませんよ。
なお、陰海月と霹靂はオーロラを見てその場に留まってますね。
珍しいので、存分に見ておこう、という形ですね。いい機会ですしね。
※
陰海月「ぷきゅ~♪ ぷき、ぷきゅきゅ」
霹靂「クエ~♪ …クエエ?」
オーロラ綺麗~♪×2
光り方、参考にしよう。
…参考にするの?
兵器の話は聞こえたらいいなー。
『世界のありようすら変える』と言われた超古代兵器。
それが『深海兵器』である。
コンキスタドールは、口にすることすら禁じられたそれを知っていた。
そして、それを求めて伝承残る島々を次々と襲わんとしていたのだ。
この氷結の島もまた同様である。
彼らにとってもまた『深海兵器』はどのようなものであるかを理解できぬものであった。
故にまだ間に合うとも言える。
猟兵たちもまだおぼろげな形見えぬ存在がたしかに在るということを知っている。
「さて、その『深海兵器』の伝承ですか……」
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『静かなる者』は、コンキスタドールから救出した人々を前に小さく頷く。
彼はどうやら『深海兵器』を知らぬようであった。
口伝で何か断片のようなものが残っているかもしれないと期待したが、どうやらそれも外れのようであった。
いや、そもそもが口にすることも禁じていたのならば口伝で残っていることのほうがおかしい。矛盾しているとも言えるだろう。
「ですが、本当に少しずつでもいいのです。猟兵は紡ぐものですから」
『静かなる者』は、構わないというように人々に訪ねていく。
噂でもいい。
海に関するものでもいい。
「繰り返し、あの氷山の上で言葉を紡ぐ箱ならあるけど……あれのこと、じゃないよね」
少年が告げる。
その言葉に『静かなる者』は確かめて見る必要があると礼を告げて氷山のいただきへと向かおうとする。
けれど、『陰海月』と『霹靂』は空に浮かぶオーロラを見ている。
此処に住まう人々にとっては珍しくないものであるが、彼らにとっては珍しいものである。存分に見ておこうというのも頷ける。
「ぷきゅ~♪ ぷき、ぷきゅきゅ」
「くえ~♪ クエエ?」
二匹はオーロラの美しさに心奪われているようである。どうやら光り方の参考にしようとしているようだ。
『霹靂』は参考にするんだ……と若干表情に現れている。
ならば、と『静かなる者』は彼らをそっとしておくことにしたのだ。
自分一人でも氷山のいただきに至ることは出来る。
ゆっくりと頂きに登りきれば、そこは社のように成っていた。黒い箱。それは静かに鎮座していた。
これが『深海兵器』なのだろうか。
いや、違うと理解できる。これではない。これは恐らくグリードオーシャンに落ちてきた宇宙船の一部だろうと推察できる。
明らかにこの世界の文明水準に似合わないものだった。
「――俺の名前は『フュンフ・エイル』。君より前に『これ』に出会った者だ。多くを失うことになるかもしれない。君は多くを奪われるかもしれない。それは君に相対する者もまた同様だろう」
その声は、ゆっくりと黒い箱から紡がれている。
音質はお世辞にも良いとは言えない。
けれど、切実ささえ感じるものであった。『静かなる者』は、その言葉の意味することを理解できなかったかもしれない。
それはまるで詩篇のようでもあったし、日記のようでもあった。
あとに続く者に少しでも助言をするようでもあった。
「奪われないためには奪うしかない。それが戦いというものなら、君は自分自身の力を過信してはならない。きっと君の周りには君を助ける者がいるはずだ。頼るといい。何も恥じることなんて無い――」
「これは……メッセージボックスような、もの、ですか。遠き日に紡がれた日誌のような、指南書のような」
『静かなる者』は、その音声を聞く。
『深海兵器』に連なるものではないにせよ、このグリードオーシャンという世界の有り様を考えれば、このようなこともあるだろう。
彼の前で黒い箱は沈黙する。
住人たちは時折、と言っていた。ならば、これ以上自分がこの前にいても語られることはないのかもしれない。
空を見上げる。
オーロラが空を彩っている。
プラズマと地磁気が織りなす光景。猟兵とオブリビオンもまたぶつかれば、世界に影響を与える。
それを示唆するように、それでもなお人の心を掴む色彩を放つ――。
大成功
🔵🔵🔵
フォルク・リア
島の人々の様子を見て
「巻き込まれて怪我をした人はいなかったかな。」
自分には日常でも普通の人にすれば
流れ弾が当たっただけでも大怪我になると
負傷者がいれば治療を手伝い。
術士の書斎を使用して人から
情報を聞き出す術を調べて。
「あんな奴らが来た後だ。
落ち着いた後で構わないからいくつか教えて貰いたい。」
と伝えて。
先ほどの敵の様子から
「さっきの奴らから何か聞かれなかったか?」
と尋ねて敵が情報を得られなかった様子から
それとは別のアプローチで『深海兵器』の情報を探る。
「そうだね。例えば古くから伝わる言い伝えとか。
不思議な事柄や物があれば教えて欲しい。」
何人かに尋ねて何かが有れば情報を総合して
その調査に向かう。
フォルク・リア(黄泉への導・f05375)は、コンキスタドールとの戦いを制して氷結の島の人々を救った。
彼らの様子を見れば、怪我をしている者はいなかっただろうかと問いかける。
「だ、大丈夫だ……危ないところを助けて頂いて……なんといっていいか……」
「巻き込まれて怪我をしていないのなら良い」
フォルクにとっては戦いとは日常である。
けれど、氷結の島の住人たちにとっては非日常だ。流れ弾が当たっただけでも大怪我となるだろう。
「すまない、こっちに来てくれないか! 薬でもなんでもいいんだ! 子供が……!」
住人の悲痛な声を聞いてフォルクは駆け寄る。
子供が怪我をしている。コンキスタドールによって斬りつけられたのだろう。深々と傷が刻まれている。
「大丈夫だ。何も心配いらない」
フォルクは少年の傷を塞ぎ、包帯を巻きつける。
こういう生傷の治療は手慣れたものだ。これで、大丈夫だとフォルクはうなずいて少年の治療を終える。
他には、とフォルクは精力的に住人たちのケアを行っていく。
空ではオーロラが輝いている。
「あんな奴らが来た後だ。落ち着かないのもかわる。だから、無理にとは言わない。幾つか教えてもらいたいことがあるんだが」
フォルクは、空間を超えて自分の書棚から本を取り出す。
術士の書斎(ジュツシノショサイ)。
それは彼のユーベルコードである。この島の住人たちのとのコミュニケーションは良好なものだ。
それは真摯にフォルクが人々のケアを行ったからにほかならない。
「あんたには恩がある。なんでも聞いてくれよ。遠慮なんてしなくていい」
「それならば……さっきの奴らからなにか聞かれなかったか?」
「『深海兵器』、とかなんとか……聞き慣れない言葉だった。俺達は何も知らないんだ。それが連中と関係在るのか?」
「そうだね。彼らはそれを求めて、此処までやってきたようだからな。間に合ってよかった、と言うべきか」
フォルクはフードの奥で眉根を寄せる。
やはり、というべきであった。
コンキスタドールは『深海兵器』のなんたるかを知らない。
だからこそ伝承が僅かでも残っている島々を襲おうとしている。つまり、確実に存在していることはわかっているが、コンキスタドールも所在おろか詳細すらまだ知らないのだろう。
「例えば、古くから伝わる言い伝えとか。不思議な事柄やものがあれば教えて欲しい」
「……あんたらの島にもあるのかはわからないが、この島の氷山のいただきに社があるんだが、そこに黒い箱が供えられている。その黒い箱から時折声が聞こえてくるんだよ」
「声?」
「ああ、若い男の声だと思うんだが……でも、一言も誰も『深海兵器』という言葉は聞いたことがない。多分、あんたたちの目的のものじゃないと思うが……」
フォルクは小さく首肯する。
確かに関係は薄いだろう。けれど、こうした情報が集まっていけば、情報の精査ができる。真偽も見分ける基準にできるだろう。
礼を告げてフォルクは氷山を登る。
確かに社が供えられている。黒い箱。明らかにグリードオーシャンの文明水準を越えているものである。
「――君を助けるものがいる。ときには二人であったし、ときには大勢であったりした。それは全部俺にとっての得難い思い出であるといえるだろう。君にもきっと、そんな者たちが現れるはずだ。その時は迷わず手を取れ。いや、迷ってもいい。自分にとって、彼らがそうであるのかを見極めることも大切だ」
「……これか」
フォルクはその声を聞く。
どうやら、いくつかの言葉のフレーズが紡がれているようである。誰かに対する助言のような、そんな言葉。
この黒い箱が恐らく機械であること、そしてスペースシップワールドやUDCアースにある技術に近しいことがフォルクには理解できるだろう。
「一つだけいえる事がある。『戦いに際しては心に平和を』。これを忘れてはならない。君は多くの傷を追うだろう。多く傷つけるだろうし、傷つけられる。だから、その言葉だけは忘れてはならないんだ――」
途切れるようにして声が消えていく。
フォルクはしばらく待ってみたが音が再生される気配はなかった。
空に浮かぶオーロラが輝いている。
この調査が無駄骨であったかどうかは関係ない。フォルクが来たからこそ救うことのできた生命がある。
島の人々の生命がそうだ。
あのオーロラは彼らにとて日常かもしれない。
けれど、得難き日常であることを知っている。その色彩がフォルクの心を掴む。替えがたきを得たと教えるように――。
大成功
🔵🔵🔵
杓原・潤
オーロラかぁ、初めて見るけど……きれいだなぁ。
これはうちのサメ達にも見せて上げなきゃ!
出ておいで、今回は戦いじゃないよ!
すっごく高い所まで行ったら、あのきれいなオーロラの中で飛べるのかな?
よーし、じゃあ皆!行くよ!
……あ、やっぱやめ!寒い!高くなるほど寒い!
後は……海の中から見てみるのもいいね。
シャークスーツの【深海適応】があれば、氷の下にだって潜れるはず。
わ、宇宙船が沈んでる!
宇宙船と氷とオーロラ、結構似合うかも!
深海兵器ってこれだったりして……まぁ今はそれはいいか、壊れてるから違うだろうし。
景色を楽しんだら、住民の人達のお店とかで温かいものでも頂いちゃおう。
サメ達のもあるといいな!
多くの世界を知る猟兵であっても、空に浮かぶオーロラを見るのは初めての者もいるだろう。
太陽のプラズマと地磁気によって生み出される色彩のカーテン。
その光景を見上げる杓原・潤(鮫海の魔法使い・f28476)は思わずつぶやいていた。
「……きれいだなぁ」
本当にそう思うのだ。
この氷結の島に生きる人々にとっては日常そのものであるのかもしれないけれど、潤にとっては特別な光景なのだ。
こんなにきれいなものなのならば、自分のサメたちにも見せてあげたいと思うのは当然であったことだろう。
彼女のユーベルコードに寄って呼び出されたサメたちは、またぁ? みたいな顔をしたかもしれない。
けれど、潤はそうじゃないと言い含めるのだ。
もう戦いは終わっている。
なら、なんだ、というサメたちの目を見て潤は微笑むのだ。
「今回は戦いじゃないよ! ほら、あの綺麗なオーロラの中で飛びたいって思わない?」
その言葉にサメたちは空に浮かぶオーロラを見やる。
確かに色彩は美しく、空に浮かぶカーテンの如き光は幻想的であった。そんな中で飛べたのなら、と潤が思うのもわかる。
だから、彼らは潤を背に乗せて空へと飛び上がっていく。
「……あ、やっぱやめ! 寒い! 高くなると寒い!」
びっくりするくらいに寒い。
潤は思わず涙目になってしまう。慌てて地上に戻ると、此処が凍土であったことを再認識されられてしまう。
やっぱり見上げるのが一番いいのだろうか。
潤は、どうしたものかな、と思う。せっかくのオーロラなのだから、他の誰もが見れないような特別な光景が見たいと思うのだ。
空はやっぱり駄目だ。
寒すぎる。
「なら、海の中だよね!」
彼女のが纏うシャークスーツなら、氷の下だって平気のはずだ。早速サメたちと共に潤は海の中から見上げるオーロラを求めて飛び込んでいく。
海の水は刺すように冷たかったけれど、シャークスーツのおかげで体が凍えるほどではない。
それじゃあ海の中から……と彼女は海中に潜って気がつく。
「わっ、宇宙船が沈んでる!」
そう、この氷結の島は、スペースシップワールドより落ちてきたであろう宇宙船を基部として凍土が広がり島となっている。
どういう理屈なのかはわからない。
けれど、潤はコンキスタドールたちの言葉を思い出す。
「『深海兵器』って言ってたよね……?」
もしかして、これのことなのだろうか。
しかし、これは宇宙船だ。壊れているであろうし、コンキスタドールが求めていたものとは違う。
そして、その基部となった宇宙船の先端……即ち、その船首が海底に突き刺さるようにして屹立している光景を彼女は見るだろう。
もしも、彼女の視力が海底の暗闇を見通す事ができたのならば、そこに氷結の源があることを理解しただろう。
けれど、それは『深海兵器』とは異なるもの。
この宇宙船ごと凍りつかせ、凍土を維持している何かは静かに海底に沈んだまま。
「今はこれでいいか、宇宙船壊れてるから違うだろうしね」
潤は海中から見るオーロラに満足すると凍土の上に這い上がる。堪能したし何か温かいものでももらえないかな、と住人たちに尋ねれば、待ってましたとばかりに海獣の肉やらスープやらを振る舞われる。
「わ、わわ、そんなにいっぺんには……あ、そうだ。この子たちにも上げていい?」
潤はサメたちを示す。
住人たちはもちろん、というようにサメたちにも多くの食料を与えてくれるだろう。
多くの謎が残る『深海兵器』。
けれど、潤は今はそれを忘れる。
空には光の色彩たるオーロラが輝き、その下では温かい食事を振る舞ってくれる親切な住人たちがいる。
今はそれで十分だと潤は笑む。住人たちもその笑顔を見て、微笑むだろう。
潤が守りたかったのは、そんな笑顔だ。
サメたちと共に潤は僅かであっても、たしかに人々の平穏を守ったのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステラさんと】
ステラさん待って!待ってください!!
気持ちは解りたくないけど解りますが、装備ぐらい整えてください!
いくらステラさんでも、雪山ダイレクトアタックは危険ですから!
あと、叫ぶのもなしですからね?
叫んだら雪崩れまっしぐらコースになっちゃいますからね?
ふぅ……わたしの回りって、無理無茶無策の人しかいないんでしょうか……。
『ルクス』ちゃーん。どうかな?
え? いけばなんとかなるんじゃないかな、って?
なんかすごいぶん投げてませんか……?
なるほどこれが『大人エイルさん』の肉声ですか。
ステラさん、涎拭いてください。あとナチュラルに箱をふところに……って!
叫んだらダメっていったじゃないですかー!?
ステラ・タタリクス
【ルクス様と】
|エイル様《主人様》が……|存在す《い》る……?
やはり|私《犬》の嗅覚は間違っていませんでした!!
どうして技能に嗅覚関係が無いのですか!
ルクス様ハリーアップ
1秒後に出発します、はい出発!!
えー……準備している間に私のエイル様成分が枯渇したら
どうしてくれるんですかルクス様に運ばせますよ?
というわけで
これが件の箱ですか?
さて……本当に……?
この声は、って私大人になったエイル様の声を聞いたことが無いのですが
しかしメイドの嗅覚が|エイル様《主人様》だと断言しております
ってことはあの方、また過去に|漂流《ドリフト》したのぉぉぉ!?
もぉぉぉ!!同じ時代に転移してくださいよぉぉぉぉ!!!
「ステラさん待って! 待ってください!!」
ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)の緊迫した声が氷結の島に響く。
住人たちはどうしたのだろうと思っていたが、あまりにも彼女たちが血相を変えているので呼び止めることなどできなかったのである。
「気持ちは解りたくないけど解りますが、装備ぐらい整えてください!」
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)を羽交い締めにしても尚引きずられる勢いにルクスは驚愕した。
でもでも師匠が見つかったらルクスさんもこんな感じになるのでは? と思わないでもない。誰が言ったかこのパーティにはツッコミが足りていない。足りていないからと言って補充する感じではないのが、こう、あれである。
黒い箱のことが『深海兵器』に関連しているとは考えにくい。
けれど、関連していないともまた言い切れない。しっかりと関係ないと断言できるのならば、捨て置くこともできただろう。
それをはっきりさせるために僅かな情報でも精査するのが猟兵たちの目的だ。
というのは多分ステラにはどうでもいいんだろうなぁってルクスは思った。
「|『エイル』様《主人様》が……|存在す《い》る……?」
あっ。
目がやばい、とみんな思ったであろう。
住人たちも皆そう思った。目をサッとそらした。
「やはり|私《犬》の嗅覚は間違っていませんでした!!」
自らを犬ってルビ打つのって大丈夫なんだろうか。いや、それでいいのかなぁ。だがしかし、ステラは止まらない。
技能に嗅覚関係があったのならば、カンストしているレベルである。ないのでないのである。
「いくらステラさんでも雪山ダイレクトアタックは危険ですか! あと叫ぶのも無しですからね? 叫んだら雪崩まっしぐらコースになっちゃいますからね?」
「ルクス様ハリーアップ。一秒後にしゅっぱつします、はいしゅっぱつ!!」
出発じゃないが。
ルクスはなんというか、どうしてこうも自分の周りには無理無茶無策の人しかいないのだろうかと嘆く。自分だけがちゃんとしていると思うのも無理なからぬことであるが、見つめ直そ?
あ、無理無茶無策は勇者の特権(ユウシャノトッケン)? あっはい。
だいじょうぶだいじょうぶ。いけるいける。雪山だろうがなんだろうが気合があればなんとでもなる。勇者ってそんなもの。毒沼だって魔法があれば大体どうにかなるのである。
そんな無茶をささやく勇者ルクスちゃん。
「え、なんかずいぶん投げてませんか……?}
もうこれアドバイスとかそういうんじゃなくて、単純に考えるの面倒になっているというやつではないだろうか。
「……準備している間に私の『エイル』様成分が枯渇したらどうしてくれるんですかルクス様に運ばせますよ?」
ルクスは頭が痛い思であった。味方なんていないのである。いな、ツッコミなどいないのである。
そんなステラの背中を押しやりながらルクスはどうにかこうにか雪山の頂きに辿り着く。ここまで長かった。
割愛しているが、それはもう大変な道程であった。
滑落しかけたり、なんやかんや。後から考えたらステラが飛空艇に変身してひとっ飛びすればよかったじゃんって思ったけれど、それは誰も言わないほうがいい。身のためである。
「というわけで、これが件の箱ですか?」
本当に? とステラが訝しむ。空にはオーロラの色彩。
かすれるような音が響き、黒い箱から声が紡ぎ出される。
「『戦いに際しては心に平和を』。これを忘れてはならない。君は多くの傷を追うだろう。多くを傷つけるだろうし、傷つけられる。だから、その言葉だけは忘れてはならないんだ。君の敵は目の前の敵じゃあない」
その声は、どこか懐かしさを感じさせるものであったかもしれない。
スエラにとって、それは変声期を終えた『エイル』の声のように思えたかもしれないし、そうでなかったかもしれない。
しかし、彼女の、ご主人様を探し求める献身的なメイド(ホンニンハソウオモッテイル)の、本能が、嗅覚が断言しているのだ。
これが『エイル』であると。
「なるほどこれが『大人エイル』さんの肉声ですか。ステラさん、涎吹いてください」
こういうときって涙吹いてくださいじゃないんだ。
言葉は続く。
「君の本当の敵は、己の中にある闇だ。誰もが心に闇を持っている。けれど、それは恐れるに値するものだ。けれど、君の中にあるのは闇だけじゃあない。力もまたある。それを恐れてはならない。力は力でしかない。恐れるのは己の闇だけでいい。敵も、味方も、誰もが闇を持っている。だから、恐れるな、その力――」
「……仮にもしこれが『エイル』さんだとしたら、おかしくないですか? 時間は逆巻くことはない。仮に神隠しだとしても過去に飛ぶことはないのでは?」
ていうか、ステラさん、ナチュラルに箱を懐にしまわないでください、とステラの手をはたき落とすルクス。
この氷結の島でこの黒い箱がこうやって社に祀られてるのならば、それって不信心者どころの騒ぎではない。
なので、ルクスは勇者としてしっかり止めるのだ。
「だとしても、どうして私の前に姿を現してはくれないのですかぁぁぁぁぁ!! もぉぉぉ!!!」
気持ちはわからんでもない。
けれど、その叫びは慟哭であった。ほとばしる思いであった。
だからこそ、ルクスは目を剥く。
「叫んだら駄目って言ったじゃないですか!?」
自分たちの足元が揺れる。揺れに揺れる。
あ、これやべーやつじゃないですか! ってルクスは思ったし、ステラはそんなことお構いなしである。
雪崩が起こったことなど言うまでもない。
ルクスとステラは這々の体でなんとか雪崩から逃れると、やっとの思いで戻った氷結の島の集落で暖かいスープをすすって温まる。
空には光の色彩。
オーロラが揺らめきながら煌めいている。それは新たな旅路への誘いか、それとも。
わからないけれど。
それでも雪崩で冷えた体に染み渡るスープの暖かさだけは本当だった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵