●
休日の遊園地。
そこでは、大勢の家族連れや恋人たちが、あふれる笑顔を浮かべながら思い思いに過ごしていた。
――だが、遊園地の広場に平穏を打ち壊す邪悪な声が響き渡った。
『ケケケ、人間ども、俺たち魔物の恐ろしさを味わわせてやるぜ!』
声の主は、二足歩行のトカゲ人間たちだ。
この世界で魔物と呼ばれる存在――オブリビオンである。
「きゃあ、魔物よ!」
「た、助けてくれー!」
「ママー、怖いよー!」
トカゲ人間たちの群れに囲まれた人々は、パニックになり逃げ出そうとするが、魔物たちがそれを許すはずもない。
――こうして、平穏な遊園地は、地獄へと姿を変えるのだった。
●CONNECT
「遊園地が魔物の群れに襲われる事件が起こると予知されました。このままでは大きな被害が出ると予想されます」
中津・水穂(新人アイドル・f37923)が猟兵たちに向かって呼びかけた。
水穂を始めとするアイドルたちは、このアイドル・アース世界で魔物と戦う存在である。
アイドルたちは、支援組織である『アイドル事務所CONNECT』に所属しており、事件を予知したCONNECTによって事件現場に派遣されるのだ。
「――けど、私はまだアイドルになりたてで、これが初めての戦いです……」
水穂は瞳を伏せ、自信なさげに言葉を紡ぐ。
新人アイドルである水穂は、魔物と戦う力である魔力――ユーベルコードを使うことはできるものの、圧倒的に経験不足だ。
だが、この世界で魔物に対抗できるアイドルの数は多くない。新人でも魔物と戦い、人々を助ける義務がある。
「そこで……皆さん、私に力を貸してください!」
水穂の瞳に強い光が宿る。
人々に希望を与える強い心――アイドルが持つオーラの輝きだ。
猟兵たちは、アイドル・アース世界では、アイドルを応援しサポートする『ファン』である。
魔物と戦うアイドルである水穂を助けたいと思ってくれる猟兵は、ぜひ彼女のファンとして力を貸してあげて欲しい。
「皆さんが手伝ってくれるなら、魔物もやっつけられるはずです! ――私と一緒に遊園地を魔物から守りましょう!」
水穂は猟兵――ファンたちに力強く呼びかけるのだった。
高天原御雷
コネクトハートの世界へようこそ。
こちらはPBWアライアンスの一つ、コネクトハートの世界です。
詳細は公式サイトをご参照ください。
https://sites.google.com/view/connect-hearts/
今回は私、新人アイドル中津水穂の初陣です。
私が魔物と戦うのに力を貸してください!
猟兵である皆さんは、この世界ではアイドルのファンと呼ばれますが、普段通りの力を発揮できますし、ユーベルコードも使用できます。
その力で私と一緒に魔物と戦っていただければと思います。
私は自分が使用出来る魔力(UC)のうち、指定していただいたものを使用します。(指定がなければ任意の魔力で戦います)
●戦闘(集団戦):リザードマン
遊園地に現れるのは、人型の二足歩行タイプの魔物、リザードマンです。
リザードマンは以下の手段で攻撃してきます。
POW:鉤爪攻撃
鋭い鉤爪で斬り裂いて攻撃してきます。
鋼鉄すら切断する威力をもっているらしいです。
SPD:連携攻撃
複数のリザードマンたちで連携をとって攻撃してきます。
数が多いので気をつけてください。
WIZ:人質攻撃
遊園地にいる一般人を人質にしようとしてきます。
さすが魔物、卑怯です!
●好感度について
私と一緒に戦っていただけた場合、私からの好感度がアップします。
好感度が上がると、今後、私との関係性も変化していきます。
さらに、できることが増える場合も……?
第1章 日常
『プレイング』
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POW : 肉体や気合で挑戦できる行動
SPD : 速さや技量で挑戦できる行動
WIZ : 魔力や賢さで挑戦できる行動
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
『ケケケ、人間ども、俺たち魔物の恐ろしさを味わわせてやるぜ!』
「ママー、怖いよー!」
遊園地の広場で、トカゲ人間型の魔物が鋭い爪を振り上げ、泣き叫ぶ子供にむかって振り下ろそうとしていました。
――私はとっさに、大声をあげて魔物の注意を引き付けます。
「待ちなさい、トカゲの魔物! あなたはアイドルである私が相手をします!」
『ほう、アイドル……か』
アイドルという言葉を聞き、トカゲ人間が私の方に向き直りました。
その隙に子供は両親の元に走っていきます。これでひとまず安心です。
「なあ、あの子のこと知ってるか?」
「いや、初めて見るアイドルだな」
周囲の人々が私を見て、小さな声で囁くのが聞こえます。
それもそのはず。これが私のアイドルとしての初めての仕事なんですから。
「お、CONNECTの所属アイドル一覧ページ見てみろよ、最近入った新人アイドルの中津水穂ちゃん、15歳だってよ!」
「がんばれー、水穂ちゃんー!」
人々の声援を受け――私の中に不思議な力が湧き上がってくるのを感じます。
私たちアイドルは、こうしてファンの応援によって得た力で戦うのです。
「任せてください、私が皆さんには指一本触れさせません!」
私は手に持った剣とマイクを握りしめ、魔物を睨みつけたのでした。
西行寺・銀治郎
●心情
「ふむ、ここがアイドル・アースか……。
異世界訪問の先の遊園地で早速、事件に巻き込まれたな」
相手は、リザードマンか。
ゲームとかでもよくいる魔物だが、数がいて厄介だ。
俺は奴らの数を減らす役でいこうか。
●行動
戦闘は、大道芸のジャグリングボールを魔物共へ投擲する。
手数を補う為、UCヴァリアブル・ウェポンを発揮して攻撃回数を増やす。
「当たれぇ、俺の必殺の魔球!」
それと、水穂ちゃんにも支援を頼もう。
アイドルの歌謡曲(歌のUC)で俺のパワーアップを頼む!
「うぉおおお! 力が出る歌だ……!?
ありがとう、水穂ちゃん! これで俺はまだまだ戦える!!」
適当に球を数投げて当てたら俺はひとまず退却だ。
●
「くっ、きゃああっ」
『ククク、どうやらアイドルと言っても、まだ新米のようだな。これなら俺たちでも勝てそうだぜ』
手にした剣で魔物の一撃を受け止めますが、大きく吹き飛ばされ、建物の壁に背中を強打してしまいました。
トカゲ人間の魔物たちが、その口から細い舌を出してしゅるしゅるという音を立てています。これは魔物たちの笑い声なのかもしれません。
やはり私一人では、魔物たちと戦うのは無理だったのでしょうか。
『さあ、アイドルにとどめを刺してやるぜえ!』
私の近くまで寄ってきた一体の魔物が鋭い爪を振り下ろしてきて、私は敗北を覚悟し――。
――その瞬間。赤、青、黄色といったカラフルなボールが飛んできて、私を斬り裂こうとした魔物を吹き飛ばしました。
あれは――ジャグリングで使うボール!?
「ふむ、相手はリザードマンか。ゲームとかでもよくいる魔物だが、数がいて厄介だな」
「あ、あなたは一体――」
ジャグリングボールを放ったのは、爽やかな笑みを浮かべた私と同じくらいの年の男性でした。白のスラックスと紺色のシャツという学校の制服のような格好に、校章のようなものを身に着けています。
「俺は西行寺・銀治郎。希望峰アースからアイドルアースへ異世界訪問に来たんだが……早速、事件にまきこまれたらしいな」
西行寺さんは再び、どこからともなくジャグリングボールを取り出すと、私に向かって語りかけてきます。
「水穂ちゃんと呼ばれていたね。俺が奴らの数を減らすから、サポートを頼む」
「は、はいっ、任せてくださいっ!」
私は西行寺さんの隣に立つと、魔物たちへと向き直ったのでした。
●
『くっ、そんな程度の攻撃で俺たち全員をやれると思ってるのか!? 一斉にかかるぞっ!』
何体もの魔物たちが、私と西行寺さんに向かって突撃してきます。
これでは、さっきのようにジャグリングボールで攻撃しても、すべての魔物を同時に倒すのは不可能です!
「こ、こうなったら、私が前に出て敵を足止めします――。西行寺さんは、その隙に魔物を各個撃破してください」
西行寺さんでも魔物を倒し切るには時間が掛かるでしょう。その間に私は魔物たちに群がられて爪に斬り裂かれるのが目に見えています。
ですが、この遊園地の平和を守るには、それしか方法が――。
「いや、その必要はないよ、水穂ちゃん。それより水穂ちゃんにはアイドルの歌謡曲で俺のパワーアップを頼む」
「……なにか考えがあるんですね、西行寺さん。――わかりました!」
西行寺さんの黒い瞳には一片の迷いもありませんでした。私は西行寺さんを信じると決め、大きく息を吸い込みます。
歌うのは【サウンド・オブ・パワー】。アイドルの歌を聞いてもらうことで、皆さんに力を与える能力です。
私の歌を聞いた西行寺さんの身体から、あふれんばかりの魔力がほとばしるのを感じます。
――普通のファンの皆さんは、ここまでの魔力は持たないはずですが、西行寺さんは一体!?
「うぉおおおお! 力が出る歌だ! ありがとう、水穂ちゃん!」
西行寺さんは全身から無数のジャグリングボールを出現させると、それを慣れた手付きで|お手玉《ジャグリング》していきます。
――すごい、あんなに多くのボールを一個も地面に落とさないなんて!
「当たれぇ、俺の必殺の魔球!」
『ぐぎゃああっ』
空中にあるボールを次々と全力投球していく西行寺さん。魔物たちは顔面に直撃を受けたり、壁に跳ね返ったボールを後頭部から受けたりして、次々と気絶していきました。
一般人の皆さんからも歓声が上がります。
「これで、このあたりのリザードマンたちは片付いたみたいだな。――だけど、遊園地内には、まだ多くのリザードマンが残っている。俺はこのあたりの一般人を守るから、水穂ちゃんは自分の役目を全うするんだ」
「は、はいっ! 西行寺さん、ここはおまかせしますね!」
私は西行寺さんに一般人の皆さんのことをまかせて、別の魔物の気配の元に向かったのでした。
大成功
🔵🔵🔵
ルゥ・アイシテ
WIZ
世界の垣根を越え出したら、私のアイドル好きも病気の域ね。
トカゲは、お化け屋敷にでも引っ込んでなさい。世界の平和は、水穂ちゃんが守るわ。中津・水穂ちゃんがね!
さあ、行きなさい。初陣での被弾率は高いらしいから、きっといい絵が取れるわ。
っと、茶番はこれくらいでつかみはOK。コンサートタイムよ。
UCで歌って、水穂ちゃんも一緒にユニゾン決めるわよ!
歌で敵の動きを止めてる隙きに人質を[レアカード触手魔獣]で救出。
さらに此処ぞと[SSRカード愛の大精霊]召喚。
アイドルパワーで、一気に押し切ってあげましょう!
トカゲは、触手魔獣がやっつけてたみたいだけど。きっと、水穂ちゃんのサウンド・オブ・パワーの力よ。
●
「きゃああっ」
『グヘヘ、人間たちは皆殺しにしてやるぜえ!』
魔物の気配を頼りに野外ステージにやってきましたが――。
そこにはトカゲ型の魔物たちに今にも襲われそうな一般人の皆さんの姿が。早く助けないと!
魔物たちに囲まれた一般人の皆さんを助けるために観客席に駆け寄ろうとしますが、そこに可愛らしい声が響きました。
「トカゲは暗いお化け屋敷にでも引っ込んでなさい!」
『グケッ!? 俺たちを邪魔しようとは何者だ!』
トカゲ人間たちの視線が、声の主――ステージの上に立つ少女へと向かいます。
そこには黒い長髪にウサギをモチーフにしたヘアバンドをつけた女の子が立っていました。白いミニスカートに黒い上着を着こなした姿からは、まるでアイドルのオーラが見えるかのようです。
「私はルゥ・アイシテ! トカゲたちは覚悟することね! 世界の平和は水穂ちゃんが守るわ。アイドルの中津・水穂ちゃんがね!」
「ええっ、わ、私なんですかっ!?」
突然、私に振ってくるアイシテさん。その言葉を聞いてトカゲ人間の魔物たちが一斉にこちらを振り向きます。
『ほほう、アイドルか。それなら相手にとって不足はねえ』
『見たところ、まだ新人みたいだぜぇ』
『グケケ、そんなヒラヒラした服で俺たちの爪を防げるかなぁ?』
鋭い爪を見せつけてくるトカゲ人間たち。
で、ですが、負けるわけにはいきません!
私も剣を構えてトカゲ人間たちと対峙します。
「さあ、行きなさい水穂ちゃん! ――あ、初陣での被弾率は高いらしいから気をつけてね。まあ、被弾したら被弾したで、いい絵が撮れて人質の皆さんがファンになってくれるかも?」
「不吉なこと言わないでくださーいっ!」
ほらっ、アイシテさんが変なこと言うから、なんか人質の皆さんがスマホで撮影し始めちゃったじゃないですかーっ!
『あ、そういや、こいつらを人質にすれば、アイドルは手出しできねえんじゃねえ?』
「くっ、トカゲのくせに人質を取るなんて、意外と知能が高いわね!」
「いや、アイシテさんが人質とか言うからじゃないですかーっ!?」
「ウワー、タスケテクレー」
「人質の皆さんも、めちゃくちゃ棒読みですーっ!?」
トカゲ人間たちは一般人の皆さんに爪を突きつけ、人質にしてきました。
『さあ、武器を捨てるんだなぁ、アイドルさんよぅ』
――くっ、これでは戦うことはできません。
私は仕方なく、手に持っていた剣を床に放り投げます。――なんとか隙をついて、人質を助け出さないと……。
――そこに、アイシテさんの楽しそうな声が聞こえてきます。
まるで、ここまでのやり取りはコンサートの前座だとでも言うような口調。――いえ、彼女にとっては、まさにそうだったのでしょう。
「茶番はこれくらいでつかみはOKね。さあ水穂ちゃん、コンサートタイムよ! ステージに上がって!」
「はっ、はいっ!」
ステージに響き始めるのは、アイシテさんの綺麗な歌声。
人質をとった魔物たちも、その歌に聞き惚れて動きを止めていて、誰も私の妨害をしてきません。
ステージに上った私もマイクを取り出し、アイシテさんと一緒に歌い始めます。
「さあ、今のうちに人質を解放しちゃうわよ」
アイシテさんが取り出したのは数枚のカード。
それを空中に放り投げると――そこから触手を生やした魔獣が無数に現れて!?
『な、なんだ、この魔物はっ!?』
触手魔獣たちはトカゲ人間たちに殺到すると、その身体を拘束していきます。
「さらに――これもプレゼントよっ!」
アイシテさんが放ったカードから光とともに現れたのは――神々しい天使のような存在でした。
天使は魔物たちに光を放つと、その聖なる力で魔物を浄化していきます。
「水穂ちゃん、フィニッシュよ!」
「はい、アイシテさんっ!」
私とアイシテさんは、歌を最後まで力強く歌いきり――。
『ぎゃっ、ぎゃあああっ』
トカゲ人間たちは触手魔獣と天使の力によって完全に消え去っていたのでした。
「アイシテさん、どうもありがとうございました。お陰様で一般人の皆さんも無事でした」
「いいのよ、私も水穂ちゃんとのユニゾン、楽しかったわ。さ、ここの人たちは私が守っておくから、水穂ちゃんは他の人たちを助けてきてあげてね」
「任せてくださいっ!」
私はアイシテさんの言葉に強く頷くと、次の魔物の気配の方向へと駆け出しました。
「それにしても、世界の垣根まで越えるなんて、私のアイドル好きも病気の域ね――」
大成功
🔵🔵🔵
ベルカ・スノードロップ
アイドルですか。なるほど…
どんな世界でも、人々を救うというのは、変わりませんよね
人々の笑顔を護るのも、アイドルの笑顔を護るのも
我々"|猟兵《ファン》"の役目、なのですよね。この世界では
【救助活動】です
《選択UC》で召喚するのは、小型の投擲武器としましょう
人質に危害が出たら問題ですからね
【投擲】だけでなく【誘導弾】を乗せて狙い穿ちますよ(【スナイパー】)
【コミュ力】を駆使した【集団戦術】を【瞬間思考力】で組み上げて
水穂さんのサポートをしつつ、戦っていきます
●
『オラオラ、この人質たちに被害が出てもいいのか!?』
「くっ、卑怯な……」
私が駆けつけた先――遊園地のレストランに、トカゲ人間型の魔物たちが立て籠もっていました。
魔物は居合わせた一般人たちを人質にしているため、無理に店内に踏み込むことも出来ません。
『ヒャハハ、これでアイドル様は手出しできないだろう! おとなしく嬲り殺されるんだな!』
「ひいっ、た、助けてくれぇっ」
人質の男性に鋭い爪を突きつけながら店から出てきたトカゲ人間が、ゆっくりと私に迫ってきます。人々を救うべきアイドルである私は、抵抗するわけにはいきません。
魔物の爪が私に向かって振り下ろされ――。
「常世、現世、幽世と数多ある世界より、来たれ。ここには、過去も架空も無い。我が血、我が声に応え、顕現せよ――|三千世界の二千本桜《ドゥミールス・フルール・デ・チェリスター》」
『ぎゃああっ』
鈴のような声の詠唱が朗々と響くと、レストランの店内からナイフやフォークが飛び出してきて、私に襲いかかろうとしていた魔物の手に深々と突き刺さりました。
腕を抑えて魔物がのたうち回っている今がチャンスです!
私は人質の安全を確保すると、腰からルーンソードを抜き放ち、トカゲ人間を斬り伏せます。
『ぐっ、ぐわあああっ』
斬り裂かれた魔物は、黒い霧になって消滅していきました。
――ひとまずの危機は乗り越えられたみたいです。
「さっきの詠唱は……?」
周囲を見回すと、そこには美しい少女――いえ、男の人が立っていました。まるで聖職者のような神々しい服装の人物は、私に笑顔を向けて語りかけてきます。
「ご無事でしたか、水穂さん?」
「は、はいっ、おかげさまで……。あなたは……?」
美しい容姿に思わずどぎまぎしながら問いかけると、柔らかな声音で答えが返ってきました。
「私はベルカ・スノードロップです。人々の笑顔を護るのも、アイドルの笑顔を護るのも、我々|猟兵《ファン》の役目、ですからね」
ええっ、ファンですかっ!?
まだ新人な私は、ファンという言葉に嬉しさのあまり舞い上がってしまいそうになりますが……。
――い、いけません。まだ店内には人質を取った魔物たちがたくさんいるんでした。
「さあ、水穂さん、私も手伝いますから、人々を救うために救助活動といきましょう」
「はいっ、よろしくお願いします、ベルカさんっ!」
私はルーンソードを握り直し、ベルカさんの横に並び立つのでした。
『くっ、ファンだかなんだか知らないが、それ以上抵抗するなら人質を一人づつ殺していくぞっ!?』
「そうですか、やれるものならやってみるのですね。水穂さん、今です」
「はいっ!」
私はベルカさんの指示通り、魔物が痺れを切らしてレストランの扉を開けた瞬間を狙い、店に向かって駆け出しました。
――同時に店内から魔物の悲鳴が聞こえてきます。
『うわっ、なんだ!? 皿が勝手に飛んでくるぞ!』
『こっちは包丁がっ!?』
ベルカさんが店内の器物を精密にコントロールして魔物を混乱させ、人質から注意がそれたところで――私がルーンソードを手に店に飛び込みます。
「人々に危害を加える魔物たち、許しませんっ!」
店内を飛び交う食器や包丁、ナイフにフォーク。それらは私や人質たちを器用に避けながら、魔物たちにだけ複雑な軌道で襲いかかっています。
混乱の極みにある魔物たちは、もはや人質を取ることも、私に注意を払うこともできず――。
『ぎゃああっ』
『ぐわあああっ!』
ベルカさんの攻撃で隙だらけになった魔物たちを、私が一体づつ倒していきました。
「ベルカさん、どうもありがとうございました。ベルカさんがいなければ、私は魔物にやられているところでした」
「気にしないでください、水穂さん。どんな世界でも、人々を救う――それは変わりませんから」
微笑むベルカさんは、油断なく周囲の気配を探りながら私に声をかけてきます。
「このあたりの魔物は片付いたみたいですけど、念のため私が一般人の皆さんを保護して安全な場所まで避難させますね。水穂さんは自分のすべきことをしてください」
「はい、皆さんのこと、よろしくお願いしますね、ベルカさん」
私はベルカさんの言葉に背中を押され、他の魔物の気配がする場所へ向かうのでした。
大成功
🔵🔵🔵
ルンバ・ダイソン
平和を乱す者はこの俺が許さん! だが俺がニュークリアミサイルやら、プラズマクラスターキャノンやらをつかえば遊園地ごと吹き飛んでしまう......。ここはアイドルと協力し、人質を救出しよう。
さて、この世界では猟兵はアイドルと呼ばれるのだったな。あいにくだが俺はサイリウムは持っていない。悪いが、これで我慢してくれ。
【レフトアーム・ビームソード】を水穂に貸与し、囮になってもらう。ユーベルコードはトリニティ・エンハウンスがいいだろう。自身は超電磁迷彩で姿を隠し、背後か【ファンネルンバ】を操ってリザードマンたちを攻撃し、人質を救出しよう。
●
「うわーん、たすけてー」
「ままー、こわいよー」
『ケケケ、ガキども! 泣き叫んでアイドルをおびき出す餌になるんだな!』
私が駆けつけた先はヒーローショーのステージでした。
そこでは逃げ遅れた子どもたちが、トカゲ人間の魔物に取り囲まれています。
「早く助けないと――」
身を隠している物陰から飛び出そうとした瞬間――。
「君がアイドルの中津水穂だな?」
「は、はい、そうですが――って、えええっ!?」
声をかけられて振り向いた先にいたのは――パンダ型のロボット!?
い、いえ、きっと着ぐるみですよね、これ……。
「俺はルンバ・ダイソン! 平和を乱すものはこの俺が許さん!」
つぶらな瞳をきりっとさせたルンバさんが、正義に燃える丸い瞳を魔物に向けながら宣言しました。
――これはもう、私たちと同じようなアイドル的存在と言えるのかもしれません。
熱く正義を語るルンバさんですが、ここで残念そうに呟きます。
「子どもたちを泣かせる悪しき魔物は、俺のニュークリアミサイルやプラズマクラスターキャノンで吹き飛ばしてやりたいが――それでは、この遊園地ごとこの世から消滅してしまう」
「えええっ!? ル、ルンバさん、もっと穏便な方法はないんですかっ!?」
「穏便に済ませるには、中津水穂。アイドルである君の協力が必要だ」
私は遊園地を消滅させないためにも、ルンバさんへの協力を喜んで受け入れました。
「ええと、これは……?」
「ああ、あいにくだが、俺はアイドルに似合いそうなサイリウムは持っていない。代わりにこれを使ってくれ」
ルンバさんが自分の左腕の肘から下をパカっと外して手渡してきました。
着ぐるみ(?)の腕を外したにも関わらず、そこに生身の腕は見えません。こ、この着ぐるみ(?)、一体どうやって動いているのでしょうかっ!?
「そんなにこの武器が珍しいか? これは俺の左腕から展開されるレフトアーム・ビームソードだ。水穂が持つには少し重いだろうから、トリニティエンハンスで身体能力を強化しておくといい」
驚いてるのはそこじゃないのですが――ですが、ビームソードという武器にも驚きです。このような兵器、魔物と戦うアイドル支援機関CONNECTでも、まだ実用化されていないはずです。
この着ぐるみ(?)のルンバさん、一体何者なのでしょうか……。
「それで、作戦だが――」
「――なるほど、わかりました! 任せてください!」
私はルンバさんと作戦を打ち合わせ、魔物が待つヒーローショーのステージへと向かったのでした。
「そこまでです、魔物たちっ! あなたたちは、このアイドル、中津水穂がやっつけます!」
「わー、あいどるだー」
「わるものなんか、やっつけちゃってー!」
喜ぶ子どもたちですが、周囲にいる魔物たちを何とかしないと助け出すことができません。
『ククク、飛んで火にいる夏のアイドルだな。ガキどもを人質にされて戦うことができるかな?』
トカゲ人間の鋭い爪が子どもたちに向けられます。
魔物たちの言う通り、この状況では私に勝ち目はありません。
――そう、私一人ならば。
「なら、試してみるのですね!」
私はトリニティ・エンハンスで強化された身体能力で、ルンバさんの左腕を構えます。そこから伸びるのは青白く光るビームソード。
『いいか、抵抗したらガキどもを一人づつ殺す! やっちまえ、お前らっ!』
リーダー格のトカゲ人間の指示で、魔物たちが鋭い爪を振りかざしながら私に向かってきて――。
「はあっ!」
私が振るったビームソードがトカゲ人間の一体を両断しました。
『ほう、アイドルのくせにガキを見捨てるとはいい度胸だ! なら、お望み通り、ガキを殺してやるぜえ!』
トカゲ人間の爪が子どもたちに向かって振り下ろされ――。
「――か弱い子どもを人質に取る悪は、この俺が許さん! 行けっ、ファンネルンバ!」
『なっ、てめえ、一体どこからっ!?』
超電磁迷彩によって姿を隠していたルンバさんが、パンダ型ラジコンを操作し、空中から無数のビームを魔物に浴びせます。
『ぐわああっ』
六機のラジコンからの一斉射撃でトカゲ人間を倒したルンバさんは、ステージ上で叫びました。
「中津水穂、子どもたちは救出した! あとは思いっきりやってくれ!」
「はいっ!」
私は周囲の魔物たちに向かってビームソードを振り回し、次々と斬り裂いて消滅させていきました。
「ルンバさん、どうもありがとうございました。助かりました」
「なに、気にするな。俺も悪は許せんからな」
私が返した左腕をきゅぽん、と嵌めながら、ルンバさんはニヒルな笑みを浮かべたっぽい雰囲気を醸し出します。パンダ顔なのでよく分からなかったですが。
「この子どもたちは、俺が責任をもって守り抜こう」
「わー、くまさんだー」
「かわいいー」
「待て、子どもたちよ。俺はクマではなくパンダだ。あと可愛くないぞ、強力無比な兵器を装備した戦闘用ロボットだ」
子どもたちによじ登られているルンバさんを見て、私は安心してこの場を任せることにしました。
「アイドルの私よりも、子どもたちにとっては、ルンバさんがアイドルみたいですね。では、私は他の魔物を倒しに行ってきます」
「ま、待て、俺は戦闘用ロボットだー!」
ルンバさんの声と子どもたちの歓声を背に、私は次の魔物の気配へと向かったのでした。
大成功
🔵🔵🔵
藤見・エスカ
魔物たちが、笑顔で過ごしている人たちを…!
戦いに赴かれる水穂様共々、お守りし、助けていかなくては!
皆様をお守りしながら、避難を援助し
襲ってくる敵を迎撃していきます!
特に、敵が人質を取ろうとする動きには警戒して、水穂様とも協力して阻止します!
万が一誰かが人質として囚われてしまったら、「月が彩る、藤花の舞」を使い、敵だけを花吹雪で狙いながら
強化されたスピードを活かして救出します!
敵が連携してきたら、こちらも水穂様と協力、連携して立ち向かいます!
ここは力を合わせてまいりましょう!
もしもの時は、私が全力でお守りいたしましのでっ!
と、水穂様を狙う敵の迎撃を優先しながら各個撃破していきます!
●
「魔物の気配は――この建物の中からですか!?」
私は目の前の建物を見上げ――そのおどろおどろしい外見に思わず足を止めてしまいました。
和風の平屋建ての建物。あちこちがぼろぼろになったような装飾をほどこされたそこは――紛れもなくお化け屋敷。
私は背中に冷や汗が流れるのを感じ――。
「あなたが水穂様ですね?」
「ひゃ、ひゃいっ!?」
突如、背後からかけられた声にびっくりして、裏返った悲鳴で返事をしてしまいます。
振り返ったそこに立っていたのは、黒と白を基調としたメイド服のような衣服をまとった女の子でした。
よかった、お化けじゃありませんでした。
――いえ、そうじゃなくって。
「べ、別に、お化けが怖くて足がすくんでいたわけではないですからね! えっと、そ、そう。どうやって侵入しようか策を練っていたんです」
苦し紛れの言い訳をする私の言葉を、女の子は疑うこと無く信じてくれたようで――。
「そうなのですね! それでしたら、私、藤見・エスカも戦いに赴かれる水穂様にお供いたします! 水穂様のことは全力でお守りし、助けてまいりますので! さあ、早く人々を救助しに向かいましょう!」
「ま、待ってください、まだ心の準備ができてないので、背中押さないでくださーいっ」
藤見さんに背中を押されながら、私たちはお化け屋敷の入り口へと入っていったのでした。
「うう、暗いですね……」
びくびくしながら周囲を見回します。まるで今にもお化けがでてきそうな雰囲気です。――お化け屋敷なので当然ですが。
「そうですね、これだけ暗いと、どこに敵が潜んで待ち伏せているかわかりません。ご注意ください、水穂様」
藤見さんの言葉の直後――。私の背中に、なにか冷たいものが当たる感触が!?
「ひゃっ、ひゃあっ!」
「大丈夫ですか、水穂様!」
藤見さんが背後へと軽機関銃を向け――敵がいないことを確認して武器を下ろします。
そして、思わず藤見さんに抱きついてしまっていた私の洋服の背中に手をいれると、そこからぬるぬるしたものを取り出して――。
「ご安心ください。ただのこんにゃくのようです、水穂様」
「魔物たち、なんでこんな建物に潜んでるんですかぁ」
私の抗議の声がむなしく響くのでした。
そして、お化けが出てくるたびに悲鳴を上げて藤見さんに抱きつくということを何度も繰り返した末、私たちは開けた広場に出ました。
「ここは……野原?」
周囲にはススキが生えて、天井には月が描かれています。
うっすらとした明かりに照らされた広場には、無数の鎧武者のお化け――の人形たちが立っていました。
どうやら、古戦場をイメージした区画のようです。
「水穂様、どうやらいるのは人形たちだけではないようです」
「なるほど、この広場なら私たちを包囲して戦うことができるというわけですか……」
藤見さんの言葉に目をこらすと、鎧武者に混ざってトカゲ人間たちの影が隠れているのが見えました。
お化け屋敷の狭い通路では囲まれる心配はありませんでしたが、ここなら魔物たちは数の有利を活かせるというわけですね。
『ケケケ、来たな、アイドル。待ち伏せしていた甲斐があったぜ』
待ち伏せに気づかれたと知った魔物たちは、物陰から次々と姿を現しました。
――く、思ったよりも数が多いです。
ですが、アイドルとして魔物に遅れをとるわけにはいきません!
|剣《ルーンソード》を抜いて構える私の隣で、藤見さんも銃剣付きの軽機関銃を構えました。
しかし、そこに呑気な声が響いてきます。
「おー、安物の仕掛けしかないかと思ったら、妖怪トカゲ人間とか、意外と本格的じゃんか」
「なにあれー、なんかリアルでキモいんですけどー」
広場に入ってきたのは、若い男女のカップルでした。一般人がまだ建物内に!?
魔物たちが、一般人を見て放っておくわけがありません。
『ククク、一般人が何も知らずにノコノコと。人質にしてアイドルが抵抗できないようにしてやれ!』
リーダー格の魔物の指示で、トカゲ人間たちが一般人カップルを人質に取ろうとした瞬間――。
「月と藤のもとで、どうか安らかに……」
藤見さんの声とともに、彼女の全身から藤の花びらが舞い上がりました。――これは幻!?
幻の藤の花は、月の描かれた室内に満ちて、花吹雪となってトカゲ人間たちに襲いかかります。
『ぐっ、ぐわあああっ』
『ぎゃあああ!』
藤の花吹雪によって貫かれたトカゲ人間たちは全身から血を流して倒れ、霧となって消滅していきました。
これでひとまず、カップルは安全です。心置きなく戦うことが出来ます。
「水穂様、ここは力を合わせてまいりましょう!」
「はい、藤見さん!」
私と藤見さんは背中合わせに立つと、周囲を取り囲むトカゲ人間たちに連携して対処していきます。
藤見さんは幻の花吹雪で魔物を倒しつつ、さらに信じられないような速度で銃剣を振るっていました。
「――綺麗」
まるで月夜の下で踊るかのような藤見さんに、思わず見とれてしまいます。
――いえ、見とれている場合ではありません。私も魔物を倒さなくては!
『ひ、ひいっ、なんだ、こいつらっ!?』
次々と魔物たちを倒していく私と藤見さんを見て、リーダー格の魔物が逃げ出そうとしますが、そうはいきません。
藤見さんの藤の花が魔物の足を貫き、その動きを止め――。
「水穂様、今です!」
「はあああっ!」
私の剣が魔物を両断し、消滅させたのでした。
「よ、ようやく、外に出られました……」
「お疲れ様でした、水穂様」
あの後、結局私たちは、逃げ遅れた人が残っていないか確認するために、お化け屋敷内を隅々まで探索するはめになりました。
――その間、何回、私が悲鳴をあげたかは……聞かないでください。
「本当でしたら、このまま水穂様の援護をするためについていきたいのですが……」
「藤見さんは、この人たちを安全なところまで避難させてあげてください。あとは――アイドルである私の仕事です!」
お化け屋敷内に取り残されていた人々のことを藤見さんに任せ、私は次の魔物の気配へと向かうのでした。
大成功
🔵🔵🔵
彩波・いちご
世界は違えど、私もアイドルの端くれですし…温泉郷のローカルアイドルですけど…(目逸らし
と、それはそれとして、いきましょうか、水穂さん!
水穂さんはみんなのために全力で歌ってあげてください
そのためのステージは私が用意します
【幻想よりきたる魔法の演者】発動!
彼女の歌声と歌詞に合わせて、演出用のエフェクト…🎵や♥、☄や🌈などなど様々なイメージがステージを演出します
…この演出用のオブジェ、魔力でできてるのでリザードマンに当たったら花火のように爆発するんですけどね
こうして演出しながら…私もバックコーラス、あるいはデュエットとして一緒にステージに上がって歌いましょう
演出もどんどん派手にしていきますよー
●
『ケケケ、人間たちよ、大人しくするんだなぁ』
「う、うわぁ、魔物だっ!?」
「きゃあああっ!」
私が駆けつけた先、野外ステージの客席で、一般人の皆さんがトカゲ人間の魔物に襲われていました。
――早く助けないと!
「私もサポートしますから、水穂さんはみんなのために全力で歌ってあげてください! そのためのステージは私が用意します」
声をかけてきてくれたのは、青い髪をした少女でした。アイドル風の服を着て、狐の付け耳と付け尻尾でケモノっ娘のコスプレをしています。
「あなたもアイドルなのですか?」
「ええ、私は彩波・いちご、世界は違いますがアイドルの端くれです。――まあ、温泉郷のローカルアイドルですけど……」
目を逸しながらも自己紹介してくださる彩波さん。
なるほど、異世界の温泉郷に住むケモノっ娘という設定のアイドルというわけですね。
私が所属するアイドル事務所CONNECTも新人に魔物退治を任せる無茶な事務所ですが、彩波さんの事務所も異世界温泉ケモノっ娘設定という無茶振りをしてくる事務所みたいです。
「お互い、事務所の指示には苦労しますよね」
「……はい?」
「けど彩波さん、その格好とっても可愛くて似合ってますから、きっと人気出ますよ! 自信を持ってくださいね!」
「は、はぁ……」
私の励ましの言葉に、首をかしげて曖昧な返事をしてくる彩波さんでした。
「と、それはそれとして、いきましょうか、水穂さん!」
「はい!」
私と彩波さんはステージに上がると、一般人を襲おうとしているトカゲ人間たちに呼びかけて注意を引きます。
「魔物たち、アイドルの私たちが相手です! ――彩波さん、お願いします!」
「任せてください。ここからは私の魔法のステージです! Object Stand-up!!」
マイクを持った私が【サウンド・オブ・パワー】を歌うのにあわせて、彩波さんが生み出した音符マークやハートマークのエフェクトがリズムに合わせて舞い踊ります。ステージの上空には流れ星が走り、さらに七色に輝く虹が、デュエットで歌う私と彩波さんを照らし出します。
『ちいっ、耳障りな歌だ! やめさせるぞ!』
客席のトカゲ人間たちは、ステージ上で歌う私と彩波さんに向かって殺到してきて、その鋭い爪を振りかぶり――。
『ぎゃああっ』
――エフェクトの音符やハートに魔物たちが触れた途端、まるで花火のような派手な音と光を放ち爆発しました。
「あ、言い忘れましたけど、私の演出用のオブジェ、魔力でできているので当たったら爆発しますから注意してくださいね、魔物の皆さん」
『そ、そういうことは先にいいやがれっ!』
エフェクトに当たらずに無事だった魔物たちが彩波さんに文句を言います。
ですが、ステージ上はすでに彩波さんのエフェクトで埋め尽くされています。このエフェクトの群れを突破して私たちの元に辿り着くのは不可能です。
『へっ、これで俺たちを足止めしたつもりだろうが――これならどうだっ!』
「なっ、ジャンプしましたっ!?」
一斉に跳躍する魔物たち。
いけません! 彩波さんが展開した音符やハートのエフェクトは、あくまで客席の観客に向けてのものなので、ステージ上の低いところを漂っているに過ぎません。ジャンプされたら――!?
『ケケケ、頭上がお留守だぜぇ!』
上空から私たちに襲いかかろうとするトカゲ人間たち。
このタイミングでは、もう避けることもできません!
――ですが、彩波さんは涼しい顔でトカゲ人間たちを見上げていました。
「あ、ステージ上空の流れ星や虹も、当たると爆発しますから、気をつけてくださいね?」
『は、早く言えぇっ! ぎゃああああっ』
まばゆい閃光とともに大爆発を起こす流れ星や虹のエフェクトたち。
黒焦げになったトカゲ人間たちがステージに落ちてきて、そのまま消滅していきました。
「さあ、水穂さん! クライマックスです! どんどん演出も派手にしていきますよ!」
「は、はいっ!」
私と彩波さんのデュエットも最高潮。それに合わせてエフェクトも派手になっていき、ステージ上を埋め尽くすかのような勢いです。
それは残った魔物たちを、まるで光の洪水のように飲み込んでいき――。
『ぐわあああっ』
『ぎゃあああっ』
魔力の爆発による花火とともに魔物たちは消滅していき。
――連鎖する花火の中で、歌い終わった私と彩波さんはポーズを決めるのでした。
「アンコール! アンコール!」
客席の一般人たちは、魔物に襲われていた恐怖も忘れ、私と彩波さんのステージにすっかり見とれていたようです。
「それじゃあ、水穂さん、もう一曲いきましょうか」
「はいっ、彩波さん!」
即席コンビのデュエットは、客席の皆さんを大いに盛り上げたのでした。
大成功
🔵🔵🔵
エリアス・アーデルハイト
(アドリブ連携歓迎)
※見た目6歳ロリ、中身(思考回路)40のオッサン
「新人アイドルの初陣って聞いて来ちゃいました♪」
今日のエリィは「端役」、「主役」は水穂お姉ちゃん。
でも水穂お姉ちゃんが、トカゲの毒牙に掛かっちゃけないから
エリィがアイドルらしい、「映え」のある戦い方を教えてあげないと♪
(心の内、方針)
……世知辛いが、アイドルは「ファン(猟兵でもそれ以外でも)」がいねぇと廃れるからな、【UC】(POW)を介して水穂のファン候補にリクエストを取って応えさせながら、一緒に戦うとするか……。
キーとなるのは
「ファンの気と視線を引く魅せ方」
「ちょっとしたピンチ演出からの反撃」
「フィニッシュ、そしてキメポーズ」辺りか。
(※表舞台なので、アウトなリクはBAN☆する)
とはいえ命には代えられねぇ、危険と判断したら救出優先だ。
(台詞)
「……え~、子ども扱いするんですかぁ?これでも「生ライバー」で、猟兵なんですよぉ?(クルンとマワってウィンク☆)」
「はいそこでポーズ☆後ろの敵を撃つ時もクルンと綺麗に回って♪」
●
「新人アイドルの初陣って聞いて、来ちゃいました♪」
俺様――エリィことエリアス・アーデルハイトは、見た目6歳の美少女としてロリガールの口調で目の前のアイドルに話しかける。確か中津水穂とかいう新人アイドルだったよな。
ふむふむ、ちょっと地味な印象だが素材は悪くねぇ。これは清純派のイメージで売っていけば人気が出るかもな。
「お嬢ちゃん、魔物との戦闘になって危ないから、避難しててね?」
水穂がしゃがんで、俺様に目線をあわせながら言い聞かせてくるが、こっちは|巨大企業群《メガコーポ》『サキュパシィ』所属のカンパニーガールだ。これくらいの修羅場は日常茶飯事だぜ。
「え~、水穂お姉ちゃん、エリィのこと子ども扱いするんですかぁ? これでも生ライバーで、|猟兵《ファン》なんですよぉ?」
あざとさを強調するようにクルンと回ってウィンク。ファンだって言えばアイドルも無下に断ることはできねぇはずだ。
案の定、水穂は困ったような顔をして答えてきた。
「……仕方ないですね、エリィちゃんのことは絶対に守りますから、危険なことはしないでくださいね」
「はーい、今日の主役は水穂お姉ちゃんだから、エリィは端役として応援してるね! でも、水穂お姉ちゃんがトカゲの毒牙に掛かっちゃいけないから、エリィがアイドルらしい映えある戦い方を教えてあげる♪」
世知辛いが、アイドルは「ファン」がいねぇと廃れるからな。俺様が動画映えするコツを教えてやるとするぜ。
「とゆーわけで、エリィ'sライブ、はっじまっるよー☆ 今日はアイドルの水穂お姉ちゃんが魔物と戦うところを大迫力で生中継しちゃうよ♪」
「えっ、ちょっと、エリィちゃん!? 生中継ってどういうことですかっ!?」
水穂が慌てた声を上げてきた。どうやら新人だけあって、まだカメラに慣れてねぇみたいだな。
「もちろん、水穂お姉ちゃんの活躍を大勢のファンに見てもらうための生ライブだよ? さあ、かっこよく魔物たちをやっつけてきてね!」
「はっ、はいっ――!」
水穂が魔物たちの群れに向かって突っ込んでいこうとするが、そこに俺様がインカムを通してダメ出しをする。
「――水穂お姉ちゃん、登場シーンはファンの気を引く魅せ方にしてね」
「ええっ、そんな、登場シーンなんてどうすれば――!?」
「ほら、あそこに給水塔があるでしょ? あそこの上から名乗りを上げればファンの注目度もアップ間違いなしだよ☆」
俺様のアドバイスに従って、水穂が給水塔に登っていく。
「魔物たち! 人々を傷つけるあなた達は、アイドルの中津水穂が許しませんっ!」
給水塔の上から魔物たちに言い放つ水穂の映像を見て、視聴者たちからの熱狂的なコメントが流れてくる。
――具体的には、ローアングルから見上げる構図になってる水穂のミニスカートに、視聴者のコメントがヒートアップしてるな。もちろん、スカートの中は見えないように絶妙な角度を計算済みだ。あくまで清純派アイドルとしての価値が落ちないようにしねぇとな。
「水穂お姉ちゃん、バッチリファンの視線を集めてるよ! グッドだね♪」
「は、はぁ……、これでいいんですか?」
「もちろん! さあ、魔物との戦闘だよ♪」
水穂はルーンソードを鞘から引き抜き、給水塔の上から飛び降りながらリザードマンたちに斬りつける。
「えっ、身体が……軽い!?」
「そう! これがエリィの|Liver's Creed《ライバーズ・クリード》! ファンからのリクエストに応えることで身体能力が強化されるんだよ♪」
ファン受けする登場をした水穂は、強化された身体能力でリザードマンの群れに飛び込み、素早い動きで次々と魔物たちに斬りつけ、また鋭い爪の攻撃を回避していく。
「これなら、魔物たちなんかに負けません――!」
――ちっ、これはちょっとまずい展開だぜ。
「えっ、なんだか身体が……!?」
機敏に動いていた水穂の動きが急に緩慢になる。いや、強化されていた身体能力が元に戻ったから、動きが遅くなったように見えただけだ。
コメントを確認すると、水穂の圧勝ペースに視聴者たちが飽きてきているのが分かる。あからさまにアウトなコメントをしてくるヤツもいるが、そういうヤツは速やかにBANしておくぜ。
「水穂お姉ちゃん、一方的な勝利じゃ盛り上がらないよ! ピンチ演出も挟んでいかないと!」
「えええっ、ピンチ演出って、どうすればいいんですかぁっ!?」
俺様の指示に理解が追いつかない水穂。その動きに隙ができて、リザードマンの爪を受け止め損ない――。
「きゃっ、きゃあああっ!」
「ああっ、水穂お姉ちゃんのスカートに――切れ目がっ!」
爪がスカートに掠って出来た小さな切れ目。そこから健康的な太ももがチラリと見えて――。視聴者たちからは猛烈なコメントの嵐だぜ。
「いいよ、水穂お姉ちゃん! これなら超パワーアップできるはず! いっちゃえーっ♪」
「と、とにかく、速攻で倒しますっ!」
ピンチからの反撃という王道展開は視聴者たちが望んだものと完全に一致していた。そうなればLiver's Creedによって身体能力が強化された水穂に負けはねぇ。
水穂が振るうルーンソードがリザードマンたちを斬り伏せていき――。
「はい、そこでクルンと綺麗に回って後ろの敵をやっつけて、フィニッシュのポーズだよ☆」
「はぁっ!」
ミニスカートを翻しながら振り向きざまに振るわれた水穂の剣で最後のリザードマンも両断され――。
魔物が黒い霧になって消滅する中、ただ一人、水穂が美しい決めポーズで立っていた。
「今日のエリィ'sライブは、アイドルの中津水穂お姉ちゃんの戦闘シーンの生中継でした♪ 皆も水穂お姉ちゃんのファンになってあげてね☆」
俺様のライブも大好評で終了したぜ。
●エピローグ
「皆さんのおかげで、遊園地から魔物を撃退することができました。どうもありがとうございます」
遊園地に駆けつけてくださった皆さんにお礼を言います。
皆さんが来てくれなかったら、きっと私は魔物たちに勝てなかったことでしょう。
自身の未熟さを思い知りながらも――皆さんと力を合わせて戦うことの心強さも感じます。
「皆さんが応援して助けてくださるなら……私、これからも戦っていける気がします!」
魔物と戦い、人々に希望を与えるアイドル。
――ですが、そのアイドルには、支えてくれる|猟兵《ファン》の皆さんの存在が不可欠であること。
私は初陣でそのことを深く理解したのでした。
「これからも、どうかよろしくおねがいしますね!」
大成功
🔵🔵🔵