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銀河帝国攻略戦㉕～逆迎撃を食い破れ！

作者：柊透胡

　『アゴニーフェイス』艦隊を突破した事により、『解放軍』と帝国旗艦『インペリウム』の戦闘の火蓋が切って落とされた。
　この宇宙戦と同時に、『解放軍』は猟兵の転移によるインペリウム強襲作戦を開始。内部を破壊し、帝国旗艦『インペリウム』の戦闘力を削ぐ援護作戦だ。
　インぺリウムには、『皇帝親衛隊』と呼ばれる精鋭がいるという。
「はっきり言うて、『皇帝親衛隊』は強敵やさかい……なるたけ、戦わずに済めばええんやけどな」
　転移の際、各務・瞳子（トンボ眼鏡のグリモア猟兵・f02599）は浮かぬ表情で猟兵達を見送ったのだが――。
　転移先は、インぺリウムにあるドックの１つだろうか。天井高い広々とした空間に在って、猟兵達は油断なく周囲を窺う。
　向こうの方に、自動扉が見えた。あそこからインペリアルの中枢を目指すか、それともドックの設備を破壊するか……。
「……！　散れ！」
　――よもや、突如レーザーに強襲されようとは。
「告、『餓狼無道』侵入者発見。第六猟兵と判断――」
　機械音声が響き渡るや、滲むように現れた人型はドラゴニアンのような、否、もっと不気味で、不定形な危うさを漂わせていた。
「速やかに迎撃、殲滅を開始する」
　猟兵達は悟る――強襲作戦の筈が、待ち伏せされていた事を。そして、敵の正体こそ判然としないが、『皇帝親衛隊』の１体であろうと。
　――――！！
　今しも、ひん曲げられた鉄骨が雪崩落ちて、自動扉を塞ぐ。敵がいる状況で転移は出来ない。退路も断たれたならば、戦うのみ！

第1章 ボス戦 『餓狼無道』

POW   :    ライクアヒュドラ 自身の身体部位ひとつを【ドラゴン】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。 SPD   :    キリングイカロス 【高速演算による正確な未来予測】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【急所を撃ち抜くレーザー】で攻撃する。 WIZ   :    デウス・エクス・マキナ 見えない【遠隔操作型ナノマシン】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

「退路を断たれた、ね。こういう状況、嫌いじゃねーぜ」
「望むところよ。待ち伏せしたくらいでいい気になってる連中に、目に物見せてやるわ！」
　坂上・半（羅刹の妖剣士・f06254）とステラ・チェスロック（リトル・ディーラー・f12374）、まだ幼げな少年少女は強かな笑みを浮かべている。
「それじゃ、ステラ。今回も突っ込んで……ん？」
（「あのレーザー、急所を狙うみたい」）
　初見の敵のレーザーを見て取り、命中すれば拙いと判断するステラ。戦闘用トランプを１枚、半の服に滑り込ませる。
「お守りよ、いざって時の為にね」
「……あぁ、『お守り』、ね。こいつぁ効きそうだ」
　半は妖剣士。その持ち味は接近戦だ。だが、レーザーといい鉄骨を触れずに崩した業といい、敵は遠距離攻撃が得意な様子。
「しょうがないわね、アンタにベットしてあげる。損させたらタダじゃ済まないわよ」
「ベット？？？　あー……寝具だっけか？」
「違うわよ！」
　ドックにあった鋼材が音も無く飛来する。その軌道を見切りながら首を傾げる半に怒鳴り返すステラ。会話だけはじゃれ合いの呈だが、双方結構命懸け。
「……まぁ、わかんねーけど、損はさせねーぜ。きっちり仕事を果たしてくらぁ」
「ホントにもう……上手なカットは、レディーの嗜みよ？」
　言い合いから一転、ステラはユーベルコード「Shuffle time」を発動――自らのトランプを複製するや、バラバラに敵の視界を塞ぐように念力で操作する。
「んじゃぁ、ちょっくらいってくるわ……俺は真面目な仕事人、ってね」
　妖刀を構え、半はトランプ弾幕に突入する。忍び足を駆使して気配を殺すが、敵の狙撃は五感に依らず。高速演算による正確な未来予測だ。
　――――！！
　湾曲したレーザーが、的確に半の胸を貫く。もし隠しに『お守り』が無ければ、膝を突いたかもしれない。
「道理も摂理も踏み越える――！！」
　次の瞬間、半の像が消えた。仙術による縮地――刹那で間合いを詰め切り、少年の刃が斬り払う。
「ステラが囮ってよく判ったな……けど」
　敵が半の間合いを見誤った隙を突き、だまし討ちめいた一撃を喰らわせた。尚もトランプ弾幕に身を紛らわせ、少年は不敵にニヤリとした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

　時にレーザーが奔り、時にドックの設備を盾の如く拳の如く――猟兵達が奮戦するも、敵は中々近付けさせない。重撃に歯を食い縛り、フェル・ドラグニエル（蒼翼の竜騎士見習い・f01060）はチラと肩越しに。
「ここは一気に切り伏せるしかないね。エーリカさん、準備は良いかな？」
「あたしはいつだってクライマックスよ！」
　フリントロック式二丁精霊銃「メテオール・EBｍ」を構え、エーリカ・バルシュタット（シュテルンドラッヘ・フロイライン・f03435）は声も高らかに。
「熱烈に歓迎してくれたけれど、お生憎様！　舞台の主役はあたし、端役はあなた！　あたしの華麗な舞い、見せ付けてあげる！」
　銃声と共に、ドックの光景が激変する。豪華絢爛な舞踏場に立ち、すぐさま愛剣「マルス・EBｍ」に持ち替えるエーリカ。
「痺れて踊りなさい！」
　雷気纏う怒涛の剣舞は攻撃に振り切っていながら、エーリカの余裕は崩れない。
「だって今日は、素敵な騎士が守ってくれるものね？」
　期待に応え、フェルは竜腕の籠手より防壁たる盾を展開する。
「やる……！　けど！　私はまだ倒れてないからねっ！」
「行くわよ、フェル！」
「今度は私たちの番！　敵を断ち切るっ！」
　掛け声に応じ、ドラゴニアンの竜騎士は「永遠の蒼」と銘した蒼き愛剣を構える。
「一気に決めるわよっ！」
　エーリカの精霊銃による援護射撃――にしては、重い魔法弾に敵の注意が逸れたのを見逃さず、力強く地を蹴るフェル。
　――我が刃は天空舞う竜の牙の如く……立ちふさがる壁を、敵を切り断ち道を切り開く！
「天竜牙斬ッ！」
　一気に間合いを詰め、力強く跳躍しながら切り上げ切り下げる――二連の斬撃が敵を両断する。
「行けたかしら……？」
「……っ！？　まだ！」
　手応えは確か――否。じわりと芯がぶれたような感触に、フェルが警戒を叫ぶ暇があればこそ。
　――――！！
　盾をも噛み砕かんばかりに、竜の大顎が竜騎士に食らい付く。
「フェル！？」
「……大丈、夫」
　咄嗟のカウンターで間合いを取れた重畳。荒い息を吐きながらも、彼女はエーリカに頷いて見せる。
「告、迎撃続行」
　警戒を強める猟兵達の前で、敵の負傷が癒えていく――その右腕は、ドラゴンの頭部に変じていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

「噛みついて攻撃してくるのね」
　禍々しく変じた敵の姿にも、ルビィ・リオネッタ（小さな暗殺蝶・f01944）は怯まない。それは、彼女の相棒にして恋人の六道・紫音（剣聖・f01807）も同じ。
（「強大な敵、良いだろう……それでこそ戦う意味がある、そうでなくては剣を競う意味もない！」）
「やるぞルビィ、銀河帝国に俺達の力と絆を示すのだ！」
「ええ！　さあ、踊りましょう♪」
　紫音に笑み零れ、ルビィが踊るのは死の舞踏――ワルツを踊るように閃くダガーは、狙い過たず敵の右腕、ドラゴンの口中に素早く突き立てられる。
「食らいなさい！」
　刃より麻痺性の猛毒が滴る。これで、敵も口を狙う攻撃を警戒して、噛みつき攻撃を簡単に出せなくなる筈。
（「シオンも強力な一撃をしっかり入れられるわ」）
　敵が血の通う生体であったなら、オブリビオンであってもルビィの狙い通りとなっただろう。
　だが、竜頭より零れ落ちたのは、正にポリゴン粒子――かつて、帝国工作員の中にも「餓狼無道」がいた。その正体は、密かに宇宙船に侵入しコアマシンをクラックする「プログラム生命体」。１と０で成り立つ体に、痛みや恐怖はあろうか？
「っ！」
　第六感と見切りを駆使し、紫音は辛うじて噛みつきを回避する。もし、麻痺毒で敵の動きが鈍っていなければ、一足飛びに間合いを詰めた紫音を待ち構えていた竜の大顎が捕らえていただろう。
「当たらなければどうという事はない！」
　だが、強気を崩さず、紫音はあらん限りの武威込めた捨て身の一撃を繰り出す。
「壱之太刀……斬鋼！」
　堅牢なる刃が２度閃き、敵の右腕を切断したと同時――レーザーが体勢立て直す前の紫音を貫く。
「シオン！」
　蝶の羽が空を叩く。片膝突く恋人へ翔け寄るルビィ。
「告、『ライクアヒュドラ』部位移行」
　機械音声が淡々と響き、今度は敵の左腕がドラゴンの頭部に変じる。
「よくもシオンを！」
　フェアリーが怒りの声を上げた次の瞬間、銃声が響き渡った。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

「ヤハリ、滅ボセテナド無カッタカ……『ガロンド』」
　頭部に傷跡のあるテレビウムだった。大型宇宙バイクに乗ったまま、アサルトウェポンを構えての呟きは古めかしい合成音声だ。
「お知合い？」
　黒木・摩那（冥界の迷い子・f06233）の問いに、エクサ・カラーヌド（テレビウムのスターライダー・f02365）は大仰に肩を竦めるのみ。
（「……兎に角、こちらが押しているとはいえ、帝国は強敵。侮れないわ」）
　敢えてエクサに深入りせず、摩那は敵に向き直る。これまでの戦いで、敵は右腕を喪い、左腕がドラゴンの頭に変じている。だが、プログラム生命体故に己のダメージにも無頓着なのか、表情に乏しい。
（「なんとかダメージを与えて、ここを逃げ切らないと」）
「ウロボロス起動……励起。昇圧、集束を確認……」
　偃月招雷――ルーンソードにサイキックエナジーを込める摩那。
「……帯電完了」
　一気に飛び出し、得物を振るう。自分が囮になって構わない。他の攻撃が当たれば。
「『高速演算による未来予測』ナド、タカガ知レテイル」
　冷ややかな音声が、聞こえた。摩那を掻っ攫うように宇宙バイクが走り抜け、残像をレーザーがかき消す。
「え……！？」
「ソコニイロ、巻キ込マレテモ知ランゾ」
　無造作に摩那を投げ出し、エクサは宇宙バイクを急ターン。再び、敵に接近する。
「実体ダロウガ映像ダロウガ、全テ呑ミ込メバ関係ナイ」
　モノクロの砂嵐が、爆ぜた――無差別攻撃に、猟兵達が飛び退くように退避して暫し。
「告、構成するポリゴン量が下限値より減少」
　全身を欠損して尚、敵はまだ動く。
「回復、回復――」
「させない！」
　摩那の念動力が周囲に散らばる資材をぶつける。衝撃でぐらりと傾いだ、その瞬間こそが致命的。
「ソレデツイテキタツモリカ……？」
　我影掴不能――再び巻き起こったモノクロの砂嵐は、今度こそ敵の姿が失せるまで止まなかった。

　斯くて、オブリビオンでありプログラム生命体「餓狼無道」――ガロンドは潰える。
　次なる敵の襲撃の前に、猟兵達は転移を果たして帰還した。
　当初の目的である『インペリウムの内部攻撃』を行う余裕はなかったが、皇帝親衛隊の撃破は充分な戦果と言えよう。
　そして――１つの宿縁を骸の海に帰せしめた事を、特記しておく事とする。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年02月17日 宿敵 『餓狼無道』 を撃破！