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アルカディア争奪戦㉗〜空の果て、キョムの王

#ブルーアルカディア #アルカディア争奪戦 #虚神アルカディア #アルカディアの玉座 #やや難

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●聖域の果て
 天の頂に、それは在る。
 数多の天使核に満ちた空間、玉座の主。
 究極の虚無。
 ただ一振りの石剣を携え、『それ』は待つ。
 強き生命が天上の高みへと至る、その時を。
 無という殻を脱ぎ捨て、完全なる生命へと進化する、その瞬間を。

●グリモアベース
 ヴェルタール・バトラー(ウォーマシンの鎧装騎兵・f05099)は、アルカディア争奪戦の戦場マップ、その最終地点を示した。
「皆様の尽力により、遂に『黄金の玉座』に到着いたしました。そこに待つ者こそ、『虚神アルカディア』でございます」
 玉座に辿りつく事は、強者の証明。
 アルカディアは、その生命を奪うため、死合を挑んでくる。
 虚無であるアルカディアは、そうすることで、望む存在への進化を果たそうとしているのだ。
「無である事は、翻って、全に通じると判断致します。ゆえにアルカディアは多彩な戦闘手段を持ち、猟兵ごとに相応しい攻撃に切り替えて対応してくることが可能なのでございます」
 ゆえに、猟兵も千変万化の方法にて、アルカディアに応じなければならない。

 先制するアルカディアの石剣に対し、剣戟の間合いで戦う、剣戟戦。

 先制するアルカディアの超遠距離射撃に対抗する、狙撃戦。

 猟兵自身の性格の裏をかき、アルカディアと猟兵、2つのユーベルコードに対抗する鏡戟戦。

 |飛空艇艦隊《ガレオンフリート》と協力して、敵空中戦力とアルカディアの先制攻撃に対処する、艦隊戦。

 猟兵の真の姿を晒し、自身の願いをアルカディアにぶつける、狂乱戦。

 |拒絶の雲海《アルカディア・エフェクト》に描写された、自身にとっての最悪の光景を振り払い、雲海の噴出が止む一瞬を突く、悪夢戦。

 虚無と化したアルカディアに対し、強い感情をこめて歌い、叫びながら戦う、音響戦。

 飛空艇艦隊と協力して、雲海の迷宮に身を隠したアルカディアを追いつめる、迷宮戦。

 アルカディアの召喚する魔獣たちの肉を喰らい、パワーアップして戦う、狩猟戦。

 大切な人を手にかける覚悟、もしくは大切な人本人と共に戦う、片翼戦。

 アルカディアが作り出した「その猟兵がもっとも得意とする技能を遺憾なく発揮できる場所」である「大技能戦場」の形状を指定し、技能勝負する技能戦。

「選ぶのは皆様自身。アルカディアが生命を得た先に望むものは不明ですが、我々猟兵や世界と相容れぬのは確定的。バシッと決断し、虚無を打ち破ろうではありませんか」
 十一の戦法を虚空に表示しながら、ヴェルタールが皆を鼓舞した。


七尾マサムネ
 当シナリオは、『アルカディア争奪戦』の戦争シナリオです。
 一章のみで完結します。

●プレイングボーナス
 「戦闘手段」を、以下よりひとつ選び、それに対抗する。

「剣戟戦」
 プレイングボーナス:剣戟間合いで戦う/敵の先制攻撃に対処する。
「狙撃戦」
 プレイングボーナス:超遠距離攻撃に対抗する/敵の先制攻撃に対処する。
「鏡戟戦」
 プレイングボーナス:あなた自身の性格の裏をかく/敵の多重先制攻撃に対抗する。
「艦隊戦」
 プレイングボーナス:飛空艇艦隊と協力して、敵の群れに対処する/アルカディアの先制攻撃に対処する。
「狂乱戦」
 プレイングボーナス:真の姿を晒して戦う/自らの願いを敵にぶつける。
「悪夢戦」
 プレイングボーナス:自身にとっての「最悪の光景」を描写し、それを振り払う/雲海の噴出が止む一瞬を突く。
「音響戦」
 プレイングボーナス:強い感情を籠めて歌う、または叫ぶ。
「迷宮戦」
 プレイングボーナス:飛空艇艦隊と協力して、迷宮内のアルカディアを追い詰める。
「狩猟戦」
 プレイングボーナス:魔獣の肉を喰らい、パワーアップして戦う。
「片翼戦」
 プレイングボーナス:大切な人を手にかける覚悟で戦う/大切な人本人と共に戦う。
「技能戦」
 プレイングボーナス:「大技能戦場」の形状を指定した後、技能勝負する。

 それぞれの戦闘の詳細に関しましては、戦争ページ(https://tw6.jp/html/world/event/032war/032_setumei_5d4f7rt8.htm)の「㉗アルカディアの玉座」の項目もご確認ください。
 戦闘手段がプレイングに記載されていない場合は、こちらで適宜選択させていただきますので、あらかじめご了承くださいませ。

 それでは、皆様の全力をお待ちしております!
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第1章 ボス戦 『虚神アルカディア』

POW   :    アルカディア・エフェクト
レベルm半径内を【|拒絶の雲海《アルカディア・エフェクト》】で覆い、範囲内のあらゆる物質を【爆発気流】で加速、もしくは【猛毒気流】で減速できる。
SPD   :    アルカディア・インフェルノ
【石の剣】から、戦場全体に「敵味方を識別する【無限増殖植物群】」を放ち、ダメージと【呼吸不能】の状態異常を与える。
WIZ   :    アルカディア・ヴォイド
【万物を消滅させる虚無】を宿した【見えざる完全球体】を射出する。[見えざる完全球体]は合計レベル回まで、加速・減速・軌道変更する。

イラスト:棘ナツ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アスカ・ユークレース
【技能戦】SPD

野原の射撃練習場
【スナイパー】勝負と。受けて立ちますよ

一戦目はシンプルに命中精度勝負
視力をこらし的の真ん中めがけ
貫通攻撃
離れていく距離にも落ち着いて対応
風向、弾速、風速を計算し最も最適な軌道を通るような入射角で撃ちだします(瞬間思考力使用)

二戦目は飛来する無数のUFOの無双戦
動体視力を活かしてしっかり捉えクイックドロウ、誘導弾の弾幕の範囲攻撃
トラップは見切り回避して

私の持ちうる全力でお相手しましょう、その上で思い切りこう言ってやりますよ
射撃勝負で私に勝てるとでも思いました?

アドリブ歓迎



 黄金の玉座。
 全空の争乱の元凶へ辿りついたアスカ・ユークレース(電子の射手・f03928)の前、風が吹く。
 大気が変調し、白き虚神が翼持つ人の形を成した。
「君が、吾の求める強者か」
 無造作にアルカディアから発せられた光が、アスカの全身をスキャニングする。
 景色が書き換えられる。聖域が、野原の射撃練習場と化す。アスカの望む戦場へと。
「これが君の価値、真髄という訳か」
 周囲を見渡したアルカディアは、いつの間にか、ギリースーツに身を包んでいた。神なりに選んだ、スナイパーの迷彩衣装という訳か。
 似合わない。
 それがアスカの偽りなき感想であった。
「ともあれ、スナイパー勝負と。受けて立ちますよ」
 まずアスカは、シンプルな命中精度勝負を挑んだ。
「私の持ちうる全力でお相手しましょう」
 構えるは、聖弩:照手紅。
 スナイパーゴーグルをかけ、視力をこらす。
 この戦場で頼みに出来るのは、自身に蓄えられた技能のみ。
 遙か向こう、動く標的が現れる。変動する距離にも、アスカは冷静に対応。
 風向、風速。そして弾速を複合的に計算。最善最適の軌道を目指して。
 的の真ん中めがけ、射る。
 撃ち抜いた。
「では、吾の番だな」
 アルカディアの手には、アスカの弩のコピー。条件を揃えようと言うつもりらしい。
 淡々とした動作で構え、そして射る。
「命中であるな」
 軽々とやってのけたように見えるのは、神の神たるゆえんか。
「なら二戦目です」
 ぱちん、とアスカが指を鳴らすと、空が動いた。
 いや、飛来した無数のUFOだ。
 不規則に飛び回る彼らは、アスカ達を挑発しているようにも見えた。
「なるほど、あれを撃ち落せばいいのだな」
「制限時間内に一機でも多く撃ち落した方の勝ちとしましょう。ただしあの色違いUFOは当てると減点ですので注意してくださいね」
「心得た」
 スタート。
 弩をフェイルノートに持ち替えたアスカが、空へと射かける。
 その動体視力を如何なく発揮して、常に動き回る標的をしかと捉え、速射する。
 更には、連射性能を生かして弾幕を形成。逃げるUFO。追う誘導弾。
 そのようすは、さながら、空中サーカスの趣。
 対するアルカディアも、無駄を排した動きで、一機一機、確実に撃墜していく。
 そして響くブザー音。タイムアップだ。
 空中に表示された|撃墜数《スコア》は、僅かにアスカが上回っていた。
「吾の負け、か」
「射撃勝負で私に勝てるとでも思いました?」
 電子の射手の名は、伊達ではない。
 得意げなアスカが見たアルカディアの表情は、残念ながら読み取れなかったけれど……どこかしょんぼりしているようでもあった。

成功 🔵​🔵​🔴​

土御門・泰花
【華胥】
「片翼戦」/大切な人本人と共に戦う

即座に【高速詠唱】で【オーラ防御/結界術】を私と燎さんに展開、護りを。
【式神使い】の本領を発揮、同時に呼吸可能な大気をこの白揚羽が成す防御結界の中に確保。

「あらあら…真横にご本人がいるのに私をそんな小細工で惑わそう等と、とんだ悪手ですね」
微笑みても、同じ目に遭っている彼を想えば、湧くのは激しい【義憤】。
【軽業/早業/地形の利用】を活かし、植物群や攻撃を回避。
避けられなければ防御結界で弾き、【呪詛】を纏わせた薙刀や黒揚羽で【咄嗟の一撃/カウンター/2回攻撃】。

燎さんとタイミングを合わせ『風に舞い散る菫の幻影』発動。
「この程度で揺らぐ間柄ではないのですよ」


蘇・燎
【華胥】

「片翼戦」/大切な人本人と共に戦う

なるほど、これは虚無の神と呼ぶに相応しい敵だな。
では、挑ませてもらう。

……これは泰花殿?
などと誤魔化されるものか!

俺の隣に本人がいる、そしてそれをこの魂が実感できている以上、
これは鏡像、幻の類だな。

【軽業】【早業】【見切り】【地形の利用】【オーラ防御】で植物群の影響を最小に抑えつつ、
呼吸不能の状態異常に対しては【仙術】の【功夫】による内功で対抗。

【戦闘知識】による【見切り】で攻撃の機を伺い、
[天眼神足撃]で攻撃を行う。

「この程度のまやかしに、俺の想いが揺らぐ事は無い」



 空の頂。
 幾体もの名だたるオブリビオンが目指したこの地で。
 土御門・泰花(風待月に芽吹いた菫は夜長月に咲く・f10833)と蘇・燎(西羌鉄騎・f32797)は、謁見を果たしていた。
 この空の王にして、全ての元凶。
 燎達の前に備えられた玉座の主。数多のオブリビオンが守り、求めたその姿は白く、無貌であった。
 アルカディア……何色にも染まらぬ、しかし、その正体は、空っぽの器の如し。
「なるほど、これは虚無の神と呼ぶに相応しい敵だな。では、挑ませてもらう」
 進み出る燎と並び、泰花が目前に見据えるアルカディア。
 ただ、並びの良い歯を誇示するだけのその顔は。
「泰花殿」
「!」
 何ものでもなかった白面に、容貌が出現していた。それも、泰花がよく見知った者の顔……燎のそれに。
 そして次の瞬間には、構えた燎が括目する番だった。
「……これは泰花殿?」
 燎を振り返った時、アルカディアの顔は、再びの変貌を遂げる。泰花のそれに。
 単に造作だけではない。その気配、雰囲気さえも、当人と変わらぬものを感じとる事が出来る。
「……などと誤魔化されるものか!」
 『泰花』を一喝し、傍らの本人と、視線をかわす燎。
 ならばと、再び燎の顔を偽った虚無は、なおも泰花へと語り掛ける。
「泰花殿、私に刃を向けるのか。それが星の定めし運命だとでもいうのか」
「あらあら……真横にご本人がいるのに私をそんな小細工で惑わそう等と、とんだ悪手ですね」
 道化の如き虚神に、微笑みで応じる泰花。
 だが、その表情は、感情とは裏腹。
 同じ目に遭っている燎を想えば、内より湧きたつのは、激しい義憤。
 実際、怒りに駆られる燎へと、『泰花』は、なおも訴えを続ける。
「どうしてそのように怖い顔をされるのです、燎さん。偉大にして虚ろなる王が、その権能によって心身を入れ替えたなどとは考えないのですか?」
「俺の隣に本人がいる、そしてそれをこの魂が実感できている以上、これは鏡像、幻の類だな」
 何より、肉体の交換などができるのであれば、こうも生命を渇望する事は無いだろうと、燎は看破していた。
 それでもなお、くるくると、入れ替わり続ける、虚ろなる顔。それが泰花達へと通じぬとわかると、アルカディアは、石剣を振り上げた。
 来るのは、斬撃ではない。
 蔦に覆い尽われた球状の核が出現したかと思うと、八方に植物の蔦が放たれた。
 景色を変える襲来者に、泰花は、即座に結界術を展開。自身と燎に、護りを結ぶる。
 まだまだ、泰花の式神使いとしての本領はここからだ。式神・白揚羽が為す防御結界の中に、呼吸を可能とする大気を確保する。
「この惑わしが効かぬならば、ともに吾が生命の糧となり、添い遂げるがいい」
 アルカディア・燎が、植物群を差し向ける。
 それらは迷い1つなく、玉座の周りを侵食するように、泰花へと襲い掛かった。
 聖域の遺跡を駆け抜け、敵の魔手より逃れゆく泰花。
 執拗に伸びてくる蔦を防御結界で弾くと、遺跡の壁を蹴って、アルカディアへとりかかった。
 虚神を狙うは、巴形薙刀【菫】。その刃がまとうは、濃密なる呪詛。
 呪詛を増幅する黒揚羽とともに、アルカディアを切り下ろし、返す刀で切り上げる。
「痛い……何故、何故だ泰花殿」
 よろめくアルカディア。
 燎の声で訴えかけるその道化に、泰花は、冷ややかな眼差しを注ぐ。
「強者の目だ……しかし、たとえ偽物とわかっていても、この顔に傷をつけるには自らの心を刻まねばなるまい」
 アルカディア・泰花が、攻性を発揮する。
 燎へと殺到する植物群。
 正面から迫る蔦をバク転でかわし、別方向からの攻撃を早業でつかみ、放り投げる。
 地面を這うように迫って来た植物の動きを見切って後退。
 さらには、聖域遺跡の後ろに回り込み、遮蔽とする。
「もう一方の守りから逃れてしまったようだな」
 アルカディアの指摘通り、泰花との距離が開いてしまっている。
 そこへ、増殖を遂げた植物群が殺到。
 棘や葉に紛れた呼吸不能の力が、燎に直接襲い掛かる。だが、自身の仙術、功夫による内功が、苦境を耐え凌ぐ。
 そして、燎は行く。泰花とタイミングを合わせて。
 アルカディアを挟撃すべく、先んじた泰花は、不意に薙刀を手放す。
 武器とした身体を、回す。仕込み草履を用いた、音速超過の蹴撃。
 鎧のごとく阻む植物群ごと、アルカディアの虚身を蹴り飛ばした。
「……!!」
「視覚のみならず心まで惑わそうとしたようですが……この程度で揺らぐ間柄ではないのですよ」
 聖域に舞い落ちる、あまたの菫の花びらの幻影に囲まれながら、泰花が告げた。
「その強さこそ吾の望むもの。その生命、差し出すが良い」
 植物群の一斉攻撃、全方位からの攻撃を見切ると、燎も仕掛ける。
 充分に彼我の距離は存在する。
 だが、次にアルカディアが捉えた燎の姿は、すぐその背に在った。
 距離があるならば、縮めればよい。
「あなどるな。この程度のまやかしに、俺の想いが揺らぐ事は無い」
 秘めたる輝きを刹那、発した宿星剣が、アルカディアを切り裂いた。
「ああ、なんと強き魂の、生命の輝きであることか……!」
 燎達の熾烈な双撃に、アルカディアはむしろ、歓喜すらしていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ジャスパー・ジャンブルジョルト
●音響戦
強い感情を込めて叫べばいいのか。そいつぁ、好都合だ。今、俺の中にはめちゃくちゃ強い感情が渦巻いてるからな。
その感情とは……空腹感! 今日はまだ一食しか食ってねえんだ!(JJは一日五食)

(ユーベルコードでむくむく巨大化)
体がデッカくなったから、声もデッカくなってるはず。いっくぜー。

「はらへった!」

「はらへったぁーっ!」

「は、ら、へっ、たぁぁぁーっ!」

ぜーぜー……や、やばい……敵に受けるダメージより先に空腹で死にそう……あー、腹が減りすぎて、敵が食い物に見えてきた。なんか骨張ってるけど、意外と美味いかも?

「はらへったぁーっ! おまえを食わせろー!」


※煮るな焼くなとご自由に扱ってください



 ジャスパー・ジャンブルジョルト(JJ・f08532)の周囲に漂う、不思議な気配。
 邪気と聖気の混じる大気が蠢き、ジャスパーの眼前に、虚神の姿を形作る。
「小さくも強き生命よ。吾との相対を望むか」
 容貌の欠落したアルカディア。
 しかしその体から発せられる気配は、それだけでジャスパーを押し潰そうとして来る。
 かと思えば、アルカディアは、再び大気へ溶けていく。
 揺蕩う虚無……周囲の大気と同化を遂げたのだ。
「斬撃、打撃、衝撃、熱気、雷撃、砲撃……今の吾には、森羅万象さえも届かぬ」
「さすがに神様だけあるな。けど……」
 存在そのものに押されながら、ジャスパーは声を上げた。
「強い感情を込めて叫べばいいのか。そいつぁ、好都合だ。今、俺の中にはめちゃくちゃ強い感情が渦巻いてるからな」
 ジャスパーは、びしっ、と虚無アルカディアを指さし、宣言する。
「その感情とは……空腹感!」
「空腹」
「今日はまだ一食しか食ってねえんだ!」
「食っているではないか」
 JJは一日五食だった。
「うう、鎮まれ、俺の食欲……!」
 お腹を押さえるジャスパー。
 しかし、抑えきれぬ空腹、そしてそれに起因する苛立ちが頂点に達した時。ジャスパーの肉体が、変化を始めた。
 むくむくと巨大化しだしたかと思うと、一般的ヒューマノイド程度のアルカディアなど、軽く見下ろすほどのサイズになったのだ。
「どうだアルカディア」
 虚無へと発したジャスパーの声量は、体の大きさに見合った大きさに変わっていた。
「いっくぜー」
 すうっ、と、聖域の大気を吸い込む。
 案外美味しい。
 だが、所詮は霞と同じ。これでは腹は膨れない。ゆえに、ジャスパーは思いのたけを発する。
「はらへった!」
 まだだ。
「はらへったぁーっ!」
 まだまだ。
「は、ら、へっ、たぁぁぁーっ!」
 ぐわっ!
 聖域を揺るがす大音声。
 虚無アルカディアは、それを止めるべく、展開した|拒絶の雲海《アルカディア・エフェクト》による加速で、遺跡のガレキをジャスパーに叩きつける。
 攻撃に抗いながらも、次第に、ぜーぜー、と息を切らすジャスパー。
「……や、やばい……ダメージより先に空腹で死にそう……」
 極まる空腹のためか、ジャスパーの視覚にも影響が出て来た。
 虚無アルカディアが食べ物……綿あめに見えてきたのだ。
「なんか骨張ってるけど、意外と美味いかも?」
 じりり。
 ジャスパーがにじりよると、虚無カディアは後退した。原初的な恐怖を覚えたかのように。
「はらへったぁーっ! おまえを食わせろー!」
 特大ジャスパーの大絶叫が、聖域とアルカディアを揺るがした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

荒谷・つかさ
「技能戦」

相手がどんなヤツだろうと、私のやることは決まってる。
そう、全力でぶん殴るのみよ!

挑むのは「怪力」による力比べ
鍛えに鍛えた肉体での原初の闘争……「殴り合い」での勝負を望むわ
場所は何でもいいけれど、広めの平地辺りがいいかしら

戦術は基本に忠実に、これまでの経験を活かした徒手格闘技を「怪力」を乗せて放っていくだけ
敵からの攻撃はきちんと見て、回避や打ち払っての捌き、防御を使い分けてダメージを抑えていく
私が持つアドバンテージは「肉体及び力の使い方」を知っていること
ただ放たれるだけの力は、どれだけ強くとも受け流されれば無力
故に私は「確実な攻防」を積み重ねての勝利を掴むわ



 混沌深める聖域に、荒谷・つかさ(|逸鬼闘閃《Irregular》・f02032)が足を踏み入れる。
 それを歓迎したのは、虚無の王、元凶・アルカディア。
「相手がどんなヤツだろうと、私のやることは決まってる。そう、全力でぶん殴るのみよ!」
 ぐっ、と、つかさが固めた拳を見て、アルカディアは、石剣を手放した。
 代わりに、アルカディアも構えを取った。拳で語る為に。
 瞬時に理解したのだ。つかさが、何を以て自身に挑むつもりであるのかを。
 怪力……シンプルな物理に裏打ちされた、力比べ。
 鍛えに鍛えた肉体での原初の闘争……それを人は「殴り合い」、と呼ぶ。
 景色が、一瞬にして書き換えられる。
 つかさが望んだフィールドは、遮蔽物のない、広大な平地だった。
 2人の決闘者を見守る観客は、大地、そして天に広がる空のみ。
「確かにこの方法ならば、君の生命の真価を発揮する事も出来よう」
 黒帯姿に転じたアルカディアが、全身に力をみなぎらせる。戦装束というわけらしい。
 虚空に溶けこんでいた下半身が、双の足を形作り、大地をしかと踏みしめる。
 対するつかさの取る戦術は、基本に忠実。これまでの経験を活かした徒手格闘技を、己が誇る怪力を乗せて放っていくだけだ。
「行くぞ」
 先に仕掛けたのは、アルカディアだった。
 まずは、シンプルなジャブが来る。
 存在が虚であるがゆえに、その気配も通常のオブリビオンより希薄に感じられた。
 だがつかさは、アルカディアの拳、一挙手一投足をしかと見る。
 かわすべきはかわし、牽制は打ち払って捌く。相手の攻撃の種別、強弱に応じた防御法を選択し、ダメージを極力抑えていく。
 地力に限れば、アルカディアの方が圧倒している。ユーベルコードを互いに封じた状態にあっては、つかさが間違いなく不利だ。
 つかさが上回っている部分……アドバンテージがあるとすれば、肉体及び力の使い方を知っていること。
 無造作に放たれるだけの力は、神のものであろうと、受け流す事さえできれば無力と化す。
 経験、蓄積……そこに試行錯誤を加えて編み上げられた技巧を駆使して、抗うつかさ。
 やがて、つかさの拳が、アルカディアを打つ回数が増えていく。
 アルカディアは、成長しない。出来ない。
 相手の技を見覚え、確実な攻防を積み重ねたつかさが、時間経過と共にアルカディアを圧倒していくのは、自明。
「これが私の全力……ッ!」
 アルカディアが態勢を崩した刹那。
 つかさ全身全霊の一打が、その腹部へと突き刺さった。
「ああ、強き生命、これぞ吾が求めしもの……!」
 吹き飛ばされ、地に伏したアルカディアは、つかさの示した強さに、歓喜すら浮かべていたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
【技能戦】

技能完全特化ってわけじゃないから
どこまで通用するかわからないけど
誘惑……遊戯場?とか?

見事に着こなしたバニー服(男だけどね
猟兵活動の中アイドル活動だって沢山して来たから
まるで【歌唱】のように巧みな言葉遣いと
【料理】で鍛えた手先の器用さ
目線の【誘惑】で客の目を惹き
ディーラーとしての仕事もしっかりこなします

ただ、アルカディアさんだって相応に強いだろうから
僕はポーカーやブラックジャックのお相手だって致しますよ
イカサマだって出来るけど、お客さんは勝ちたいだろうから
純粋に、素の僕で楽しむね

お客様、お強いですね
負けちゃったか…
でも、とっても楽しかったです
お相手ありがとうございました!(満面笑顔



 聖域にて、虚神と向き合うへ栗花落・澪(泡沫の花・f03165)。
 人を象ったアルカディアが、澪の身を神光でスキャンしたかと思うと、空が閉じ込められた。
 激戦で廃墟と化しつつあった聖域が、暗くもきらびやかな遊戯場へと、書き換えられたのだ。
「これが君の生命の輝きという訳か」
 アルカディアが、なぜか感心したようにうなずいた。
 自身を進化させるに相応しい強者、と判断したようだ。
 そして、澪の装いも変わっている。見事に着こなしたバニー服。
 アルカディアは、そんな澪に、頷く。永き時を過ごしながら、こうもバニー服に関心を持つ機会などなかったに違いない。
「お客様、今日はどのような趣向をお望みでしょうか?」
 流し目。
 プラス、唄う様な口調で、澪がアルカディアを誘う。猟兵の傍ら続けて来たアイドル活動によって磨き上げられている。
 そして、そのオーラに抗うアルカディアも、いつの間にかカジノ客的なスーツに身を包んでいた。それでいて形相は無貌のままだ。
 結果として、なんというか不釣り合いな……誤解を恐れず言えば、面白い客人が誕生していた。
 光量を抑え、大人の空間を演出するライティングの中、2人の闘いは既に始まっている。
 澪の提示したいくつかのゲームの中から、アルカディアは、ブラックジャックを選択。
 カードをシャッフルする澪。料理で鍛えられた手先の器用さの見せどころ。
 それだけで一種のショウのような、華麗なシャッフルテクが、アルカディアを魅了する。
 ディーラーである澪が、アルカディアをもてなすのは、当然の事。
「ルールはご存じですか?」
「知らぬがわかっている」
 澪をスキャンした時に、そうした知識を取り込んだのであろう。
 少し背を丸め、配られた手札とにらめっこする虚神は、どこか可愛らしくすらあったのだが、本人の名誉のためにもそれは伏せておこう。 
 イカサマはしていない。真剣勝負なのだから、純粋に、素の澪で挑むことにする。
 ヒット。
 スタンド。
 アルカディアが妙に慣れたカード裁きをするのに対し、澪もプロフェッショナル感漂う所作で応じていく。
 そしてゲームは決着する。
「……お客様、お強いですね」
 アルカディアの公開した手札を見て、澪が眉を下げた。
 アルカディアのカードは、21。
「負けちゃったか……でも、とっても楽しかったです」
「吾の勝利か」
「お相手ありがとうございました!」
 澪が満面の笑顔を披露すると、アルカディアは何故か吐血した。
「み、見事だ……!」
 2人の間で繰り広げられていた、戦いの本質。
 そう、澪の真骨頂とは、相手を征する運でもテクニックでもない。
 相手を魅了する、誘惑の力、なのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

夜刀神・鏡介
剣戟戦

願う事そのものは悪でなくとも。その願いを叶える手段は俺達にとって悪になる
だから、あんたの行いはここで止める

神刀の封印を解除。神気を纏う事で自身の身体能力を強化
敵が接近する気配を読んで、まずは後ろに飛んで剣による直接攻撃を回避。召喚された植物には斬撃波で切り飛ばして、襲ってくるのを一瞬遅らせて体勢を整えつつ、廻・壱の秘剣【銀流閃】を発動

周辺の植物は増殖する端から祓い続ける事で、アルカディアに集中して戦える状況を作ったならば、後は剣術勝負
相手の剣を確実に受け流しつつ、カウンターの要領のこちらの刀を叩き込む
此方は自身のUC効果で体力の回復もできるし、焦らず着実に少しずつ削っていけばいい



 夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)が、虚無なる神、その背負いし武器に視線を走らせる。
 石剣。
 全霊をかけ、剣戟戦を挑む相手としては、相応しい得物だ。
「願う事そのものは悪でなくとも。その願いを叶える手段は俺達にとって悪になる。だから、あんたの行いはここで止める」
「吾の憧れは、渇望は止められぬ。止めはさせぬ」
 すっ、と石剣を構えるアルカディア。
 封じの白鞘から、神刀【無仭】を抜く鏡介。
 施されていた封印が解き放たれ、神気が聖域に溢れ出す。
 それを我が身に纏い、アルカディアと睨み合う鏡介。
 虚無なる存在ゆえ、その剣気もまた読みとりにくい。
 だが、鏡介は極限まで感覚を研ぎ澄ませる。
 無音。
 アルカディアが遺跡を蹴って、鏡介に接近した。その現象は、瞬間移動というほかない、移動過程を排除した動きだ。
 だが鏡介は、かすかに発せられた気配を頼りに、バックステップ。
 標的を失った石剣は、床を打ち砕く。
 その威力は、凄まじかった。四方に走った亀裂が、構造物を塵に変えて舞い上げる。
「不完全とはいえ生命持つ者には理解できないだろう。吾の望みの果てしなさが」
 剣戟は止まらぬ。アルカディアの剣が、植物を吐き出す。
 剣気から咲いた花は、枝や蔦を振るって、鏡介へと襲い掛かる。
 ぶぅん!
 鏡介の斬撃波が、植物群を切り払う。命なき肉片となって、落下する成れの果て。
 アルカディアの攻撃タイミングが一拍ずれる。
 その隙に、鏡介は神刀を構え直した。
 振るう。
「これは……」
 聖域を、銀色の神気が駆け抜けた。
 双の渦が、戦場に溢れかえる植物群を、片っ端から祓っていく。それは、無限増殖の速度に追いつき、凌駕し、増殖する力自体を削いでいく。
 双の渦が、植物の無限増殖を食い止め、クリアになった戦場、アルカディアと鏡介の決戦場が仕立てられる。
 白銀を背に、自らは月白の力を浴び。
 鏡介が斬りかかった。
 アルカディアはそれを受けると、そのまま押し返し、反撃の剣を振るう。
 強じんな太刀筋だ。空っぽであるがゆえに、強い。余計なものが無いからだ。
 斬撃に伴う衝撃波が、鏡介の体を幾度もかすめていく。だが、月白の力がその傷を受けた傍から回復していく。
 アルカディアが繰り出した必殺剣を、鏡介は辛くも受け流すと、斬り返す。
 アルカディアの剣速は変わらぬ。一本調子であるそれを、鏡介を見切るのは時間の問題だった。
 必殺の一刀が、虚神の体を断ち切る。
「これだ、この強い輝きこそ、吾が欲する生命そのもの……!」
 鏡介を賞賛するアルカディアは、いよいよ体の形を保てなくなりつつあった。

成功 🔵​🔵​🔴​

アウグスト・アルトナー
【片翼戦】【アピィ(f13386)と】

遊色の瞳持つ大切な人が、攻撃してくる
けれど、ぼくが心を乱されることはない
なぜなら、本物の一番大切な人は、ぼくの隣にいるから

隣に手を差し伸べ
手をつなぎ
口づけに微笑む
「うん。行こう」

敵が放つ不可視の球体は、アピィが見えるようにしてくれる
「任せて」と一言
ぼくは球体を対象に【嘘から出た実】
「あの球体は止まります。その場に、留まります」
球体が止まったら、球体には絶対に触れないよう注意しつつ、虚神に接近

拳銃をクイックドロウ
アピィの様子を見つつ、必要に応じ援護射撃

敵の至近まで近づいたら
敵の顔に銃口を当て、零距離射撃

「ぼくの一番大切な人は、この世に一人しかいないんですよ」


アパラ・ルッサタイン
【片翼戦】【グスト(f23918)と】

相対するその姿は
黒ユリを冠する愛しの君の顔
落ち着いた声に微笑み
……ははあ
なるほど、確かにソックリだ

けれどもっと近しく
隣に居るあなたこそが真の君だと知っている
差し伸べられた手を確と繋ぎ
指先に口づけひとつ
さあ行こうか

『秘色』
アプサラス、来てくれるかい
広くに柔らかい糸雨を降らせておくれ
不可視の球体を浮きたたせるように
あすこだけ雨が途切れている
グスト、続きをお任せしていいかな

球体の動きが止まれば攻撃に転じよう
偽りでもグストの顔が傷ついていくのは、痛むものがあるね
とは言え、本当に守るべきを違えたりせん
2回攻撃で今度は氷柱を降らせる
なるたけ全力で疾く終わらせるとしよう



 互いに全霊をかけた蒼穹の王、虚無の神との戦い。
 その激しさの証明として崩れゆく聖域に、アパラ・ルッサタイン(水灯り・f13386)達が、足を踏み入れる。
 アウグスト・アルトナー(黒夜の白翼・f23918)達の侵入が、鍵を拓く。
 2人の目前で、流れる白き霧が、人型へと結晶する。
 虚神アルカディア。アウグスト達猟兵が討つべき、玉座の主。
 何ものでもないはずの、無貌の神。しかし、アパラ達が相対した虚神は、黒ユリを冠する愛しの君の顔をしていた。
 それは、寸分たがわぬ、アウグストのもの。
 そしてその口から発せられるは、想像通りの落ち着いた声に、見慣れた微笑み。
「愛しきアピィ。私にその命、委ねてはくれないかな?」
「……ははあ。なるほど、確かにソックリだ」
 蠱惑的、という形容すら当てはまる、アルカディア・アウグストの囁き。
 しかし、アパラは静かに首を振った。横に。
「けれどもっと近しく隣に居るあなたこそが真の君だと知っている」
 アパラの視線を受け止め、首肯したアウグストもまた、愛しき相手を見せつけられていた。
 容赦なく襲い掛かって来るのは、遊色の瞳持つ大切な人。
 同じ顔、同じ声。同じ口調で、アウグストに語り掛けてくる。私にその生命をくれないか、と。
 仮に本当に、アパラ自身の願いだったならば、応じていただろうか? 考えるのは無意味だ。
 アウグストもまた、心乱される事はなかったからだ。
 なぜなら、
「本物の一番大切な人は、ぼくの隣にいるから」
 後ろ髪ひかれることなく、アルカディア・アパラから目をそらすと、アウグストは、傍らに手を差し伸べる。
 アパラは、差し伸べられた手を、確と繋ぐと、その指先に口づけひとつ。
「さあ行こうか」
「うん。行こう」
 口づけに微笑みを咲かせると、アウグストは改めて、討つべき敵と向き合った。
偽物、まがいもの。
 アウグスト達からそう断じられたアルカディアは、その模倣の表情に、苦渋と怒りを浮かべると、石剣を背より引き抜いた。
 アパラを向く顔は、アウグストのまま。そして、声も。
「諸君らは滅びる。吾が生命の一部となり、永劫この空にて生き続けるのだ」
 アルカディアの石剣が、虚空に不可視を刻む。
 だがアパラは、おののくでもなく、ただ静かに求めるものの名を紡いだ。
「アプサラス、来てくれるかい」
 鉱石ランプの淡い輝きに、影が生まれる。招かれしは、悪魔。
「アプサラス、広くに柔らかい糸雨を降らせておくれ。不可視の球体を浮きたたせるように」
 水司る悪魔は、アパラのリクエストに応えた。
 滅びゆく聖域に、雨が降りだした。しとしと、と。
 それはアパラを、アルカディアを、そして全域を濡らしていく。
 そしてアパラは、すっ、と手を挙げ指し示す。
「あすこだけ雨が途切れている。グスト、続きをお任せしていいかな」
「任せて」
 応えた時には、アウグストは翼を羽ばたかせていた。
 不可視の球体。
 生けるもの、器物の類までもあまねく虚無へと導く滅びの結晶は、しかし今、アウグストにも『見えていた』。アパラが示してくれている。
 アウグストが向かうのは、アルカディア・アパラではなく、不可視を可視化された、完全球体。
「あの球体は止まります。その場に、留まります」
 アウグストの発した声、虚言は、虚ろの塊にも届いた。
 止まる。
 アルカディアの意思を反映するはずのその力は、今、その進行を止め、滞留することとなった。アウグストの意の元に。
 この時こそ、アパラ達の反撃の好機。
「偽りでもグストの顔が傷ついていくのは、痛むものがあるね」
 それこそが、アルカディアの狙い。
 喩え認識阻害を看破したとて、想う者の形をしたものを傷つけようとすれば、躊躇は必ず生まれる。
「とは言え、本当に守るべきを違えたりせん」
 迷いの萌芽を摘み取って。
 アパラは願った。アプサラスに。疾く、この戦いの終わりを。
 球体には絶対に触れないよう注意しつつ、虚神に接近するアウグスト。
 IX-03MNを速射する。
 距離が近づくほどに、雪の結晶が刻まれた銃は、その真価を発揮していく。
 アウグストが、敵の間合いを削り取っていく。球体の制御にリソースを裂いているためか、敵の石剣の斬撃力は、本来のものよりずっと乏しい。
 その時、アプラサスによって降り続いていた雨が、その在り様を変化させる。
 無数の水滴は、みぞれへと。そしてそれは、互いに寄り集まって凝固すると、氷柱を為す。
 疾く決着を。巨大な氷柱が、願いとともにアパラの振り下ろした手に従い、アルカディアへ降り注ぐ。
 雲海に似た肉体に、次々と大穴が刻まれる。
 ほころびゆくアルカディア、その顔へと、アウグストが銃口を当てる。
「この顔を撃つ事にためらいはないと言うのか」
 アルカディア・アパラが、疑問を投げかける。
 アウグストの答えなど、決まっている。
「ぼくの一番大切な人は、この世に一人しかいないんですよ」
 氷の輝きに煌めく、雪結晶の印。
 銃弾が、世界の敵を撃ち抜いた。

 天上の虚無が、雲の様に溶けていく。
「生命が……諸君らの持つその輝きがあれば、吾は……」
 空を統べながら、何一つ手にしていなかった王を迎えるのは、ただ、無のみ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年09月28日


挿絵イラスト