アルカディア争奪戦㉓〜Op.Laplace
●確率を超えた絶対
「私が幸運に恵まれているとはいえ、何事も思い通りに行くものではないか」
ミドガルズオルム召喚儀式の失敗を、レプリゼンタ・カンギはそう評した。彼自身は幸運の星の下に生まれたものだが、それでも幸運が全てを彼に都合の良い方向に運ぶわけではない。幸運は「絶対」ではないのだ。
「猟兵というのは、どうやら私の幸運を容易く凌ぐ存在のようだな。厄介なことに」
それはそれで構わない、とレプリゼンタ・カンギは頷く。自分がこの場に招かれるほどの強力無比な存在、猟兵。一度戦ってみたかった、という彼の興味もあった。
「幸運を凌駕する絶対があれば見てみたいものだな。神はサイコロを振らない……か。面白い。このレプリゼンタ・カンギへの挑戦は確率論への挑戦と捉えた。もしも確率を超えた絶対を実現できるのであれば──」
カンギは自分を打倒しうる存在を、こう定義する。
「──それは決定論に依拠した『悪魔』に他ならないのでは無いか?」
●オペレーション・ラプラス
「仮にある瞬間における全ての物質の力学的状態と力を知ること、及びそれらのデータを解析できるだけの能力の知性が存在するとすれば、この知性にとっては、不確実なことは何もなくなり、その目には未来も過去と同じく全て見えているであろう」
グリモアベースに集まった猟兵たちを前に、缶コーヒーを飲みながらUDCアースの物理学者、ピエール=シモン・ラプラスの著書の一節を諳んじるグリモア猟兵、アレクセイ・マキシモフ(|歴戦のもふもふ傭兵《ファーリー・ラット》・f36415)。モーラットが小難しいことを喋るシュールな光景がそこにはあった。
「この物理学者が仮想した『悪魔』の存在はすでに否定されているんだがな。量子力学の登場で不確実性が生じるようになったわけだ。そして既存の物理学は古典物理学と呼ばれるようになった」
さて、とアレクセイは咳払いする。
「今回のミッションはレプリゼンタ・カンギの排除。だが奴は『超幸運』に守られている。直接攻撃をしようにも幸運が味方をするというわけだ。例えば……」
アレクセイは拳銃を抜くと、飲み干した缶コーヒーの空き缶を置き、至近距離で一発弾丸を撃つ。銃声とともに空き缶には風穴が空き、吹き飛んだ。
「俺は今銃で空き缶を撃った。空き缶は吹き飛んだな。だがこの空き缶に超幸運がついていた場合どうなるか。至近距離で外しようがない場合だ」
吹き飛んだ空き缶を拾い上げ、再び置く。そこへアレクセイはレプリゼンタ・カンギの顔写真がついた紙を貼り付けた。アレクセイ曰く、知人に頼んで作ってもらったレプリゼンタ・カンギの超幸運を限定的に再現したもののようだ。アレクセイは再び空き缶を撃ち抜くべく、弾倉に弾丸を送り込もうとして──スライドが後退したまま止まっている様子を指差す。
「どうやら『偶然』弾が切れてしまったらしい」
弾倉を交換して再びカンギの写真が貼り付けられた空き缶の、かなりの至近距離で銃を撃とうとする。外しようがない。だが──引き金を引こうとすると弾丸は出ない。
「今度は『偶然』|ジャム《給弾不良》ったな」
アレクセイは肩をすくめて主導での排莢動作を行った。そして、様子を見守る猟兵たちに向き直る。
「これが奴の特殊能力、超幸運。何万分の1の幸運が発生して自らへの危害を防ぐというものだ。言っておくが、自動拳銃|《オートマチック》の給弾不良|《ジャム》はリボルバーと比べて発生しやすいとは言え数千発に1回未満だ。それ以上の頻度で発生すれば余程整備をサボっている馬鹿が使ったかその銃が不良品かのどちらかということになる」
俺がその馬鹿に見えるか、この銃が余程のポンコツに見えるかどうかはお前らの判断に任せよう、と続けて、彼は説明を続けた。
「カンギには銃弾は当たらない。まず弾道や狙いが安定せずに外れる。かと言って至近距離で撃とうとすればさっきのように『偶然』弾切れや給弾不良が発生する。ナイフや剣で斬撃を仕掛けようにも、そのナイフや剣が『偶然』折れたり、あるいは何らかの邪魔が『偶然』入って攻撃が届かなかったりするだろう」
魔法の詠唱をしようとすれば詠唱ミスや魔力不足が発生し、AIに攻撃させればAIが原因不明のバグや処理落ちを起こす。それが凄まじい高確率で起きるのがレプリゼンタ・カンギという存在なのだ、とアレクセイは語った。
「ならば、攻略方法は唯一つ。偶然の要素を極限まで排除しろ。想定を覆す|致命の一撃《クリティカルヒット》を、完膚なきまでの必然を以て奴に食らわせるんだ。幸運では覆せない、絶対に回避しようがない一撃を与えればいい。幸いなことに、黄金ピラミッドの中は崩壊している上に、無限増殖する植物群が群生している。障害物は多く、隠れ場所は豊富だ。だが超遠距離からの狙撃は難しいな。射線を切る要素も多い。工夫が必要だ」
偶然の要素を極限まで排除すれば、超幸運が働く余地がなくなる。絶対にサイコロを振らせてはならない。絶対に賭けを行う余地を与えてはいけない。必然を以て致命打を与える。それこそが、猟兵が勝利する鍵となる。
「では、これより『オペレーション・ラプラス』の開始を宣言する。俺たちは偶然を許さない、必然を齎す理論上の『知性』……ラプラスの悪魔となる!!」
力強く宣告したアレクセイはグリモアに接続されたINT-BOYを操作、ポータルを開く。ラプラスの悪魔、その存在の再証明を開始するために。
バートレット
どうも、バートレットです。
今回は戦争シナリオ、レプリゼンタ・カンギのシナリオをお届けします。
まずは今回のシナリオのプレイングボーナスをご紹介しましょう。
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プレイングボーナス……|致命的な一撃《クリティカルヒット》を放つための作戦を考え、実行する。
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レプリゼンタ・カンギは超幸運によって通常の攻撃、及び対策を行わないユーベルコードの攻撃はすべて回避します。偶然の要素が絡む攻撃は避けたほうが無難でしょう。呪文の詠唱は「偶然」舌がもつれて詠唱ができず、銃は「偶然」給弾不良を起こすなどして故障し、剣は「偶然」折れ、格闘も「偶然」転ぶなどして技が空を切ります。偶然の要素を排除した、「偶然の要素が一切入り込まない必然の攻撃」や「緻密な作戦によって実現する、何がどう転ぼうとも最終的に敵の急所に当たる攻撃」などを仕掛けることでプレイングボーナスを満たしたこととします。致命打さえ当たれば、たとえそれがユーベルコードを介さない攻撃であったとしてもレプリゼンタ・カンギは致命傷を負うでしょう。
OP公開後即座にプレイング募集を開始します。タグにて募集状況をお知らせしますのでご確認ください。また、諸注意はMSページをご覧いただけますと幸いです。
それでは、皆様からのアツいプレイングをお待ちしております!
第1章 ボス戦
『レプリゼンタ・カンギ』
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POW : 歓喜天聖雷衝
自身が装備する【金剛杖アンクーシャ】から【放電】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【パラライズ】の状態異常を与える。
SPD : 歓喜自在鼻
自身の【自在に伸びる象の鼻】に【超重力】を宿し、攻撃力と吹き飛ばし力を最大9倍まで強化する(敗北や死の危機に比例する)。
WIZ : 歓喜攻性蓮華
【蓮華の花】を纏わせた対象1体に「攻撃力強化」「装甲強化」「敵対者に【肉体の植物化と世界樹への忠誠心】を誘発する効果」を付与する。
イラスト:桜木バンビ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
リーヴァルディ・カーライル
…超常の幸運の恐ろしい点は不可視不可知。何が起こるか分わからないから恐ろしい
…ならば対処法は自ずと決まってくるわ。敵の超幸運を可視化すれば良いだけよ
幸運の精霊を降霊した「精霊石の耳飾り」により超幸運のオーラによる防御を暗視して捉え、
「炎の精霊結晶」を銃撃して敵の超幸運が消費して薄れる瞬間や箇所を見切り、
歴戦の戦闘知識と第六感から敵の攻撃を回避して受け流しつつUCを発動
…捉えた。ならば後は反撃の時間ね
…来たれ、世界を照らす大いなる炎よ
自身を火の精霊化する肉体改造術式を施して再び「火の精霊結晶」を乱れ撃ち、
敵の超幸運が弱まる瞬間に周囲の延焼した火に魔力を溜めて操り死角から火属性攻撃を試みるわ
御形・菘
はっはっは、お主のようなエモき者とバトれるとは実に素晴らしい!
ならば妾も魅せてやろう!
左腕よ、桜となって戦場に満ちるがよい!
まあこの程度の物量であれば当たりはせんだろうな
だがのう、妾の『武器』はこれだけではない!
エモいシチュにアガってパワーアップしている諸々のオーラも!
そして…妾の肉体は全身が武器だからのう?
ただでさえ肉体が植物化しつつありイイ感じだし、ギリギリまで花弁に変える!
妾はただ世界樹への忠誠心に全力で抗えばよい!
さて、分かるかのう?
妾の周囲百数十メートルすべて、妾という花弁で完璧に飽和させれば、もはや偶然が介入する余地は存在せん!
お主は此度、ボコられるのではなく捻り圧し潰されるのだ!
●幸運の護りを突破せよ
「……超常の幸運の恐ろしい点は不可視不可知。何が起こるか分わからないから恐ろしい」
リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は超幸運の最大の利点をこう分析する。「見えない」上に「感知不能」。それが超幸運の護りによるものなのか、単に自分の不運や失策が原因なのか判断がつかないのが厄介なところ。だからこそグリモア猟兵も言ったのだろう。「偶然は排除せよ」と。
「ならば対処法は自ずと決まってくるわ。敵の超幸運を可視化すれば良いだけよ」
逆転の発想である。リーヴァルディは「超幸運の護りを可視化することが超幸運の働く余地を排除し、必然性を持たせられる手段である」という考えに至ったのだ。
「ほほう、面白いのう。確かに『幸運の護り』が見えれば対処の仕様はあるか」
その考えに感心したように声をかけるのは、御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)。
「えぇ、『幸運の護り』で守られているところを狙うから攻撃が失敗する。こんな風に」
試しに「炎の精霊結晶」を使った一撃を浴びせようと、物陰から銃撃するリーヴァルディ。しかし銃撃の瞬間、精霊結晶は砕け散る。
「ほらね。でも超幸運の護りが見えれば、その護りの薄い部分が見えてくる。そこをつけばいい」
「それは妾でも見えるようになるものなのか?」
できれば視界を共有したいのだが、と頼む菘だが、リーヴァルディはごめんなさい、と謝罪する。
「精霊石の耳飾りに幸運を司る精霊を宿すことで可能になるから……視界の共有は難しいわね」
「ふむ、やはり自力で突破してこそか。よい、気にするでない。妾にも策がある。あのようなエモき者とバトれるとは実に素晴らしい機会であるからには、妾も存分に魅せてやらねばなるまいて」
鷹揚に頷き、笑みを見せる菘。しゅるりとその長い蛇舌を覗かせた彼女は左手を構えると力を込める。
「さぁ、左腕よ、桜となって戦場に満ちるがよい!」
左腕を地面に叩きつけると、たちまちその左腕が植物化し、地を這い、すでにそこにいた無限増殖する植物群の中に潜り込み、桜となって周囲の空間を満たしていく。
「……そうか、飽和攻撃!」
「妾の桜の花弁は攻撃力を持つ。そしてこの桜の花弁が舞い散る中でどうなるか……エモいシチュにアガってパワーアップしている諸々のオーラも含め、妾の肉体は全身が武器! さぁ、桜吹雪を魅せてやろうぞ!」
徐々に全身を桜に変えていく菘。植物群の中にあった蓮華の花にふれることで世界樹への忠誠心が入り込んでくるが、菘はこれに全力で抗う。その間にも舞い散る桜の花びらは増えていく。
そして、桜吹雪が舞い散る中、リーヴァルディは確かに捉えていた。幸運の護りが、桜吹雪を避けていることを。
「やはり全身に球形に纏っている! ……しかし、穴は確実にあるはず!」
可視化された幸運の護り、その状況をりーヴァルディの目が捉える。全身を覆うように球形に纏われた超幸運の護りは、桜吹雪を自らに降りかかる災厄として跳ね除けている。その度に超幸運の護りが狭まっていくのを見逃さない。
「そうか、偶然の要素が無くなりつつある……桜の花びらが戦場全体を満たす中、『偶然』は効果を発揮しなくなってきている!」
「空間全体が奴にとっての害悪となるからのう。この場に身を置く事、それ自体がカンギの害悪となるのならば、もはや偶然が介入する余地は存在せん!」
ならば、とリーヴァルディは炎の属性結晶を次々と撃っていく。
「空間そのものが害悪となりつつある……貴様達の仕業か、猟兵!」
「えぇ、この空間に身を置く事自体が貴方への害となる。そして、それは偶然を一切許さない攻撃となる!」
「させるものかぁ!!」
カンギは身の危険を察知、その長い鼻でリーヴァルディと桜の花をまとめて風圧で薙ぎ払おうとする。その威力は自身に迫る危機に応じて上昇するが、今のカンギにとってはこの状況そのものが絶体絶命。威力が格段に跳ね上がった風がリーヴァルディに降りかかる。
「リーヴァルディ!」
「構わず攻撃を!! 今、私たちはアイツを追い詰めているのよ!」
リーヴァルディに迫る危機に菘が声をかけるが、リーヴァルディは構わず攻撃を続けることを要請。そして、その攻撃はチャンスであった。長い鼻が伸びた瞬間、その鼻が超幸運の加護の外へと出たことを、リーヴァルディは見逃さない。
「そこだ……! 来たれ、世界を照らす大いなる炎よ!」
火の精霊として自らを定義し、炎の属性結晶を撃ち込む。果たして、長い鼻が引き込む前に炎が獲物を見つけた肉食獣のように襲いかかっていった。
「ぬ、おぉぉっ!?」
さらに炎は周囲の桜吹雪に延焼。舞い散る桜吹雪と火の粉を全て回避するという、偶然の要素はここに排除されたのである。
「お主は此度、ボコられるのではなく捻り圧し潰され……炎の中で果てるのだ!!」
「そこに偶然は介入しない……貴方の振るサイコロはないのよ」
炎の中、並び立つ2人。全身を焼かれようとするカンギは、自らを討ち果たさんとする2人の猟兵の姿を見つめてただ呟く。
「必然をこうも簡単に齎すか……これだから猟兵は面白いのだ……!」
大成功
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リリスフィア・スターライト
妖艶でお嬢様風な闇人格の|星闇《せいや》で参加
漆黒聖女による苦痛をカンギにプレゼントしますわね。
私自身はカンギからの攻撃を防御する事に専念しますわ。
それと同時にカンギを徹底的に挑発して敵意を抱かせますわね。
向こうの攻撃そのものには幸運は働かないようですし
その点を突いて侮った態度を見せましょう。
見かけの割に運頼みだんなんてハリボテと変わりませんわね。
凄いのは運だけなのかしら?
それで向こうが敵意を持って攻撃してきたら漆黒聖女で
苦痛によるダメージを確実に与えますわ。
間違っても好意なんか抱かせませんわよ。
「感情に偶然はあり得ませんわよね」
「貴方の勝利はあり得ない。それは必然ですわ」
フィロメーラ・アステール
このラッキー妖精を敵に回してしまうとはね!
それがヤツの最大のアンラッキーよ……。
ラッキー勝負じゃなく弱みを把握してる的な意味で!
ここは【星界式光速魔法術】の出番だ!
魔法を光に変換して放つ技!
空気の無い宇宙で魔法を撃つためのテクニックだから、基本的に詠唱を必要としない!
偶然に突然死でもしない限りは撃てるはず!
見えていれば射線になるから遮蔽にも強い!
もちろん光速だから、この距離で間に何かが挟まる猶予はない!
つまりサイコロを振る暇がない!
地形を利用して身を隠しつつ、聞き耳で敵の位置を把握して、いい感じの所から攻撃するぞ!
全力魔法パワーを込めた光属性攻撃!
直撃しなくても目潰しでアシストできるのでは!?
●光と闇
「見かけの割に運頼みだんなんてハリボテと変わりませんわね。凄いのは運だけなのかしら?」
「挑発のつもりか? だが、乗ってやるのも悪くはない。その運が高き壁となってお前達猟兵の高き壁となるのだから!」
すでに交戦状態に入っているレプリゼンタ・カンギとリリスフィア・スターライト(プリズムジョーカー・f02074)。りリスフィアは現在、闇人格の|星闇《せいや》が表出している。蓮の花を周囲の植物群に纏わせることで根や幹をしならせた攻撃を仕掛けるが、星闇はこれを回避して見せる。幸運は攻撃には働かない、その一点を突いた策略であった。
カンギが星闇に注意を向けている間、身を潜める1人のフェアリーがいる。
「このラッキー妖精を敵に回してしまうとはね! それがヤツの最大のアンラッキーよ……」
不敵に笑みを浮かべるそのフェアリーはフィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)。幸運の流れ星を自称する彼女だが、別に幸運での勝負を仕掛けようとしたわけではない。彼女にはカンギに対する勝機があった。
「まぁそのためには不測の事態が起こらないように位置取りする必要があるんだけどね」
移動しながら「星界式光速魔法術」の準備を行う。偶然の要素を介さない一手だ。宇宙空間での使用を想定しているため詠唱はなく、文字通り光速の光を放つために放つ一手だ。
しかし、偶然の要素は一つだけ、たった一つだけ残っていた。「戦術そのものを誤る」という偶然が。
「っ、しまっ、そっちじゃない!」
本来の予定とは異なり、発動したのは「|下天あらたむ五行の星守《キャラクター・ミューテーション》」。周囲の植物群が動物に変わり、成長してカンギ目掛けて襲いかかる。
「煩わしい……!」
すでに交戦していた星闇含めて敵意を抱いたその瞬間、星闇の目が光る。
「そう、感情に偶然はあり得ませんわよね」
感情自体は本人が明確に意思を持って抱くもの。そこには偶然は存在しない。そして、その感情をトリガーに発動するのが、「|漆黒聖女《ダークプリースト》」。星闇のユーベルコードである。自身に敵意を抱いた相手は苦痛に襲われるという、受け身でありながら攻撃的な能力だ。
「っ、ぐぅっ……!?」
「フィロメーラさん、貴方が作った好機で敵意を増幅できましたわ」
どうやら、結果オーライだったのか、と呆然とするフィロメーラだったが、我に返る。
「なるほど……どうやら本当に幸運の星にあったのは私の方だね! 結果的にラッキー勝負になっちゃったけど……今度こそは!」
再び必殺の意思を込めて放つ星界式光速魔法術。急所を的確に光が射抜き、カンギは崩れ落ちていく。
「何故……幸運ですら上を行かれるというのか……!?」
「いいや、これは必然だよ!」
「貴方の勝利はあり得ない……という必然の結果ですわ」
2人はカンギに告げる。オブリビオンは猟兵に討たれるのが世界の理、という必然を。
大成功
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終夜・日明
【アドリブ連携歓迎】
天運程、一番不確かで人類が持ち得る技術ではどうにもできないものはない。
ラプラスの悪魔になれとは中々無茶を仰ってくれますが……
戦争に無茶の一つや二つはつきもの。
因果の絡まぬ100%を、僕のこの手に再び引き寄せてみせましょう。
超幸運の存在がある以上、下手に防御しては逆に追い詰められる。
防戦意識は捨て致命傷のみを【見切り】、後は【激痛耐性/継戦能力】で戦闘継続します。
まずは【情報収集】、戦場の特徴の詳細を把握しつつ、
【レーザー射撃】の【乱れ撃ち】で【地形破壊】して射線を開きつつ【時間稼ぎ】。
一応、カンギも射線上に入るように【砲撃】。
当てれたとしてもかすめる程度でしょうが、少しでも掠れば《蠱毒》で
【継続ダメージ】を与えられますから充分です。
内部からの蓄積ダメージは超幸運でさえも簡単に対処はできないハズ。
オーバーロードと同時に【指定UC】を発動。
《蠱毒》の力を最大限引き出して一気に距離を詰め、急所目掛けて【串刺し】、
【零距離射撃】で【傷口をえぐる】未来を確定させる!
禍神塚・鏡吾
「目には目を、幸運には幸運を、ですね」
カンギは幸運であらゆる攻撃を回避しますが、「攻撃」でなければそれを妨害することはできない筈
そこで、カンギの鏡像から複製を作って戦わせます
私自身は周囲の障害物とミラーシェイダーによる光学迷彩で姿を隠しながら
戦況を伺います
あらゆる攻撃を回避する幸運の持ち主同士が戦った場合何が起こるのか、見てみたいので
プレイヤー注
鏡吾は知らない話ですが、TW5に登場したレプリゼンタの超幸運は「その種族の最後の一人」になる事で発現する能力でした
すなわち、レプリゼンタ・カンギの能力を全てコピーした複製体が現れれば、その時点で本体、複製体共に一時的に超幸運を失うものと考えます
●Laplace's Demon & Representer
「天運程、一番不確かで人類が持ち得る技術ではどうにもできないものはない」
終夜・日明(終わりの夜明けの先導者・f28722)は策を練る。相手はその天運を味方につけた者。そして、想定される対抗策は「必然」。
「ラプラスの悪魔になれとは中々無茶を仰ってくれますが……戦争に無茶の一つや二つはつきもの」
グリモア猟兵の言葉を思い出して思わず苦笑が漏れる。通常ならば無茶と断じられても仕方がない。だが、今はその無茶が求められている状況でもあるのだ。因果の絡まぬ100%を引き寄せる、それが日明の仕事だ。
一方、この場に現れたもう一人の猟兵は全く違ったアプローチでの攻略を思案していた。
「目には目を、幸運には幸運を、ですね」
禍神塚・鏡吾(魔法の鏡・f04789)である。彼はカンギの超幸運が働く条件が「相手からの攻撃を受けた時」であることに着目していた。
「『攻撃』でなければそれを妨害することはできない筈。であれば、私が攻撃をしなければいい。そして、超幸運の持ち主には超幸運をぶつければ良い」
果たして、2人の猟兵の策が動き出す。
まず仕掛けるのは日明。愛機オルトロスのビームライフルを撃ち込み、地形を切り開く。カンギは周囲の植物に蓮の花を咲かせ、日明にけしかけていく。
「機械仕掛けの絡繰りで私に対抗するか……!」
「下手に防御しては逆に追い詰められる……!」
致命的な攻撃を見切り、回避。カンギにも攻撃を仕掛けるが、その尽くの狙いは反れていく。
「流石に厳しいか……!」
「無駄だ! 我が幸運の前では如何なる攻撃も無力!」
その時、地響きが鳴り響く。日明とカンギは等しくそちらを見て──驚愕する。レプリゼンタ・カンギがもう1体出現していた。
「なっ……!?」
「私、だと!?」
その正体は鏡吾が鏡のヤドリガミとしての権能により生み出した鏡像だった。ユーベルコード「|松山鏡《テイル・オブ・ミラー・イン・トレジャーボックス》」は、鏡像を実体化することが可能。これによりカンギを鏡に映し出し、その鏡像を具現化させてしまったのだ。
「あらゆる攻撃を回避する幸運の持ち主同士が戦った場合何が起こるのか、見てみたいと思いませんか?」
オルトロスの近傍に来た鏡吾が、日明に話しかける。
「なるほど、面白い。鏡像と連携して攻撃を仕掛けます」
「援軍としては申し分ないでしょう、ご武運を」
鏡像のカンギが長鼻に超重力を宿して叩きつける。奇しくも本物のカンギも同じ手を取った。鞭のように振るわれた鼻同士がぶつかり合い、両者は仰け反る。
「これは……!」
「なるほど……超幸運同士がぶつかり合って相殺されましたか?」
日明と鏡吾はカンギ同士の初撃がもたらした結果を見て目を見開く。そこで日明は考える。鏡像のカンギは猟兵が生み出したもの、即ち友軍勢力。であれば、自分は超幸運の範囲内に存在するということ。
「では、超幸運のおこぼれに預かりましょうか……!」
再びビームライフルを斉射。超幸運の能力はまだ若干生きているのか、照準がブレて狙いが反れる。だが、それでもかすり傷を与えた。
「一発でも掠めれば蠱毒は発動する! 内部からの蓄積ダメージは流石の超幸運でも無視はできない……!」
これが日明の狙いであった。徐々に本物のカンギの動きが緩慢になっていく。
「何をした……!?」
「蠱毒、ですよ。生まれつき厄介な体質を持っていましてね」
そして、と日明はここでついに切り札の行使を決断。
「オーバーロード……! ご覧いただきましょうか、決定論に依拠した『悪魔』の顕現を!」
|知性という名の魔物《シモン・ラプラス・フォンノイマン》。それが切り札の名。そう、まさに日明はこの瞬間「ラプラスの悪魔」となる。因果の絡まない100%の結果を確定させる、理論上の存在がここに出現したのだ。
「これが……ラプラスの、悪魔……ッ!」
カンギは驚愕する。自らの超幸運が一切通用しない存在が出現した。あと数秒もしないうちに、この存在は自らを殺すだろう。一切の偶然が絡まぬ、100%の必然を以て。
「その目に焼き付けろ、レプリゼンタ・カンギ……! 100%の必然が齎す『結果』を……!」
接近し、急所を刺し貫く。まるで吸い寄せられるような軌道で、カンギの脳天にオルトロスのビームサイスが突き刺さり、そしてビームサイスと一体化したビームライフルが連射される。
カンギは断末魔の一瞬、喜びにも似た感情に襲われた。それは、自身の超幸運を凌駕する存在を見ることができた、という達成感のようでもあった。
かくして、ラプラスの悪魔は、100%の必然によって超幸運の持ち主を打ち倒したのである。
大成功
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