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アルカディア争奪戦⑱〜日輪喰らい

#ブルーアルカディア #アルカディア争奪戦 #日蝕帝国 #『帝竜』太陽を喰らうもの

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#『帝竜』太陽を喰らうもの


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●日を喰らう帝竜
 屍人帝国『|日蝕帝国《イクリプス》』。
 今は昏き闇夜に満たされたその屍人帝国に、巨大な帝竜『太陽を喰らうもの』がいた。
 その胴のあちこちからは黒き竜鱗に似合わぬ金の天使が生えており、そして全身から溢れ出す力はこれまでとはまるで別物。
 ――かつて、猟兵に打倒された太陽を喰らうものがいた。
 呪詛と共に骸の海に還ったかの竜は、全てを破壊する昏き闇夜の力を得てこの世に再び浸みだしてきたのだ。
『……まさか、我らが|日蝕帝国《イクリプス》が、「|強襲作戦《ファーストアタック》」を喰らうとはな』
 怒りを滲ませているようで、どうでもいいような声色で帝竜が呟く。
 弱点を暴かれたところで恐れる必要などないのだから。
『我の信奉者達よ。むしろ、嗤え。生きる為にあらゆる手段を講じる、その見苦しさ、浅ましさを』
 圧倒的に強靭な肉体を持つが故に、武器や小細工等を嗤う帝竜は、全ての|太陽《いのち》を醜悪で根絶やしにせねばならぬものと断ずる。
『我らが最終目的――全ての|太陽《いのち》を喰らうその先鞭として、『ヘリオス王国の蘇生と隷属化』を願わねばならぬ。あの光の王国を闇に堕する所から、我らの進撃は始まるのだ』
 集った信奉者に帝竜が呟き、|日蝕帝国《イクリプス》の大地をより一層濃い闇が包み込む。
 その闇に信奉者の狂喜の声は響き渡り、満足げに太陽を喰らうものは頷くのであった。

 グリモアベース。
「今攻略が進んでいるアルカディア争奪戦、六大屍人帝国の一つ『|日蝕帝国《イクリプス》』の主たる帝竜『太陽を喰らうもの』についての予知が見えた。できるならみなの力を貸してくれんか」
 老狼の猟師、ロー・シルバーマン(狛犬は一人月に吼え・f26164)はそう猟兵達に要請する。
「戦場は|日蝕帝国《イクリプス》となる。太陽を喰らうものはアックス&ウィザーズの伝説にも伝わる『帝竜』であり、かつての仇敵であった『ヘリオス王国の蘇生と隷属化』という望みを成就させるためにアルカディアの玉座を目指しておるようじゃ。一度倒されて骸の海で『何か』に出会い融合したようで、世界を破壊する『昏き闇夜の力』を掌握して強化復活している……極めて厄介じゃ」
 太陽を喰らうものはその能力で戦場全体を強烈な超重力で覆ってくるのだと、ローは説明する。
「光すら吸い込む超重力らしく、暗黒と重力で敵対者の身動きを封じ、先制攻撃を仕掛けてくる。対策せねばあっさり撃破されてしまうだけとなるじゃろう。攻撃自体は爪や尾、そして異常に高い身体能力を活かした突撃で、どれもシンプルに強い。……ただ、この戦いの前に幾人かの猟兵による|強襲作戦《ファーストアタック》で隠された弱点が判明しており、それを利用できれば超重力に対抗する手段を準備するのに劣らぬ位に有利に戦えると予想されておる」
 どちらを利用するかは皆に任せるとローは言い、転送の準備を開始する。
「敵は酷く強い、決して油断など出来ぬ相手じゃ。……それでも、皆なら撃破できると信じておる」
 そしてローは左腕の鈴のグリモアを鳴らし、ブルーアルカディアへの転送を開始する。
 鈴の音が遠くなり、次の瞬間猟兵達は昏き闇夜に覆われたかのような屍人帝国の上に立っていた。

 ――夜がくる。
 日輪を貶めん為に、|太陽《いのち》を喰らう為に。
 邪悪なる帝竜は憎き猟兵を討つ為に、新しく得た昏き闇夜の力を解放する――。


寅杜柳
 オープニングをお読み頂き有難うございます。
 天使は竜の相を持つとか。

 このシナリオはブルーアルカディアの『|日蝕帝国《イクリプス》』で『『帝竜』太陽を喰らうもの』と戦うシナリオとなります。
 骸の海を内包した極めて強大な存在であり、戦場を「光すら吸い込む超重力」で覆って暗黒と重力で猟兵の身動きを封じることで先制攻撃を仕掛けてくるため、何らかの対策を講じていなければ勝利は難しいと思われます。
 ただし『|強襲作戦《ファーストアタック》』によって暴かれた隠された弱点を知っているのであればそれを利用する事もできるでしょう。
 また、下記の特別なプレイングボーナスがある為、それに基づく行動があると判定が有利になりますので狙ってみるのもいいかもしれません。

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 プレイングボーナス……敵の先制攻撃に対処する/敵の『隠されていた弱点』を突いて戦う。
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 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『『帝竜』太陽を喰らうもの』

POW   :    暴虐の蹂躙
【『昏き闇夜』の放出】によりレベル×100km/hで飛翔し、【自身の負傷度(=傷を負うほど強化)】×【敵全員の生命力(=敵が強いと強化)】に比例した激突ダメージを与える。
SPD   :    グラビティ・クラッシュ
速度マッハ5.0以上の【超重力を帯びた黒爪】で攻撃する。軌跡にはしばらく【露出した骸の海】が残り、追撃や足場代わりに利用できる。
WIZ   :    太陽を砕く一撃
【太陽(いのち)への憎しみ】を向けた対象に、【無限に伸びる漆黒超鋼の尾撃】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

シーザー・ゴールドマン
|太陽《いのち》か。成程、君には全ての|生命《いのち》が太陽の様に輝いて見えている様だね。そして、その眩しさ故に憎悪する、か。厳めしい外見とは裏腹に随分と繊細だね。

魔力(空中浮遊×空中機動)により空中で対峙。
超重力の影響を魔力障壁(オーラ防御×結界術)で遮断、その上で敵WIZUCの一撃を見極めて躱しつつすれ違い様にオーラセイバーによるカウンター撃を入れましょう。(見切り×第六感×瞬間思考力)
『ヤーヌスの双顔』を発動。
絶え間ない破壊消滅の波動を与えつつ、自身も圧倒的な暴力と精緻な技巧で戦闘。(暴力×功夫)自らの傷は瞬間再生。
じっくりと戦い、時間切れの弱点が露呈した瞬間に渾身の一撃を叩き込みます。


久遠寺・遥翔
アドリブ連携歓迎
イグニシオンに[騎乗]し[空中戦]
[結界術]と[オーラ防御]によるフィールドで超重力をできる限り中和、[ダッシュ]で切り抜ける

これまで培った[戦闘知識]で敵の動きを予測し
その予備動作を研ぎ澄ました[視力]で[見切り]
予測外の軌道や追撃にも[第六感]による超反応で対応して[残像]で躱す

こちらからはUCを起動
敵を[焼却]し、味方を癒す焔の世界
太陽の内海とも呼べるような光景の中で
[生命力吸収]の太刀を振るい
とにかく生存重視で奴の周りを飛び回り斬り裂くぜ
奴が自身の力を使い過ぎて自滅するまでな
これがお前が侮り嗤ったちっぽけないのちの強かさだ


銀山・昭平
◆心情
全ての『太陽(いのち)』を食らうもの……仮にそれを叶えたとしても、他に食うもんがなけりゃ、迎える末路は悲惨なもんだろうべな。

◆行動
超重力対策には【蒸気機動式万能絡繰レンチ】で射程を代償に移動力を思いっきり上げた短剣形態に変形させてなるべく回避に専念できるようにするべ。
暗闇は【暗視】と【闇に紛れる】でこっちが利用できなくもなさそうだべ。

あとはどっちが先に倒れるかの根比べだべ。敵さんの爪も相当早い上にこの重力、骸の海による追撃も考えるとギリギリでの回避になるべ。
一撃もらえば間違いなくオダブツだがおらの【継戦能力】を信じて戦うべな。
敵さんがバテそうなら一気に近づいての【暗殺】も狙うべな。


国栖ヶ谷・鈴鹿
◎アドリブ連携OKです

あぶない!
|守護稲荷《きこやん》|ガレオン《ヨナ》!結界術とオーラ防御!受け流しの浄化噴水!
(ヨナに増設バルジを防具改造で施して置いてよかった!)

攻撃をやり過ごしたら、ユーベルコヲド、ハイカラさんは止まらない!

光輝く恒星になってヨナを包んで遊覧飛行といこう!

遊覧飛行の間は、これまでの思い出……アルカディアゲートをめぐる攻防や、雲クジラの雲海の迷宮の話……思い出はたくさんあるけど……いよいよ佳境……!

さぁ、竜帝、君はあんまり長期戦が得意じゃないって聞いたけど……もうそろそろ限界?
それじゃあ、こっちの番だね!
破魔光弾砲撃!レーザー弾幕各種光属性のオンパレードといこうか!


真宮・律
まあ、アンタの考えでは一度死んでまた蘇ってきた俺はまさしく嘲笑と唾棄すべき存在だろうな。

でも俺は今度こそ護る為に戦い抜くと決めている。生きる者の力を舐めるなよ。

まずは重力に耐えねばならないか・・・【怪力】で剣を地面に突き立て、地面に足を踏ん張って耐えると共に【足場習熟】で転倒しないよう体を固定。

本当に無茶な力だな・・でも強力過ぎて制御に難がある様だな?陽炎の揺らぎを発動、敵の強力な攻撃で受けた分を吸収して力にすることで耐久戦に持ち込む。勿論、出来るだけ【オーラ防御】【残像】で攻撃の回避とダメージ軽減に努める。

過ぎる力は必ず害になる。制御出来ない力で何か出来ると思ってるアンタこそが浅ましい。


箒星・仄々
命を喰らわせやしません
絶対に阻止しましょう

竪琴を奏でます
紡ぐ魔力の輝きが闇夜を打ち払い
暗黒と超重力を跳ね除けます

そしてこれが
世界に広がる旋律の波紋
音楽が生む皆さんの笑顔が
文字通り太陽の輝きに他なりません

超重力の攻撃も
音の振動をお髭と毛皮で察知して
さっと避けます

先制を凌ぎましたら
ペロっとして摩擦を減じて
帝竜さんの攻撃をすり抜けて
帝竜さんをぺろ

爪も尾も激突も
全てつるっと上滑りさせます
足場で転ぶかも

無力化しましたら
演奏を再開して
命の輝きたる音楽を響かせて
闇夜ごと帝竜さんを海へと還します

そのまま演奏を続けて鎮魂とします
海で静かな眠りを


カシム・ディーン
機神搭乗
「ご主人サマ☆帝竜がいるよ!」
上等だ
羽虫の恐ろしさ…たっぷりと味合わせてやるぞ

【情報収集・視力・戦闘知識】
黒爪の稼働領域と攻撃の癖を今までの経験も含め解析
特に此方の動きはどの感覚で把握しているか分析

対SPD
【念動力・空中戦・武器受け・弾幕・属性攻撃・迷彩】
機体を周囲の色に合わせて目立たなくして補足妨害
念動障壁展開
重力に抗う!
太陽属性のプラズマ弾の弾幕展開
黒爪の迎撃と回避
躯の海の破壊して追撃や足場妨害
こっちで利用できるか分からねーしな

基本回避と迎撃に努め時間を稼ぐ
弱体化後
UC発動
僕らのターンって奴だ
【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み】
超絶速度で飛び回りながら鎌剣で切り刻み
部位を強奪!!



●帝竜の落日
 転移してきた猟兵達を、帝竜『太陽を喰らうもの』は睨みつけていた。
 呼吸すら難しくなる重圧――これは超重力によるものではなく、単なる帝竜の圧倒的力量による圧によるものだろう。
「全ての『|太陽《いのち》』を喰らうもの……」
 帝竜はそう望んでいると、心優しきドワーフの銀山・昭平(田舎っぺからくり大好き親父・f01103)は聞いていた。
(「仮にそれを叶えたとしても、他に食うもんがなけりゃ、迎える末路は悲惨なもんだろうべな」)
 故にそうも思ってしまう。
「命を喰らわせやしません。絶対に阻止しましょう」
 夜闇に似た真っ黒な毛並みに浮かぶ緑の瞳を鋭くし、箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)は愛用の蒸気機関式の竪琴をぎゅっと握り構える。
「――|太陽《いのち》か。成程、君には全ての|生命《いのち》が太陽の様に輝いて見えている様だね」
 そして、その眩しさ故に憎悪する――シーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)という赤きダンピールは帝竜をそのように分析する。
「厳めしい外見とは裏腹に随分と繊細だね」
 シーザーの挑発に帝竜は鋭く睨みつけるだけ。その憎悪をこの場に集った猟兵達は、全身で感じていた。
「まあ、アンタの考えでは一度死んでまた蘇ってきた俺はまさしく嘲笑に値し唾棄すべき存在だろうな」
 一度死して魂人として舞い戻ってきた真宮・律(黄昏の雷鳴・f38364)は自嘲気味に言う。
「でも俺は今度こそ護る為に戦い抜くと決めている。生きる者の力を舐めるなよ」
『ほざくか!』
 律の言葉に対する帝竜の怒号、それを切っ掛けに戦場全体に闇と超重力が発生する。
 まずはこの重力に耐えねばあの帝竜を打倒する事など夢のまた夢、ただでさえ怪力の律はその全力で赤銅の両手剣を突き立てて倒れこまぬよう支えにする。
 一度倒れてしまえば立ち上がる事など叶わぬだろう超重力に体が軋む感覚――そこに太陽を喰らうものの|太陽《いのち》への憎しみの籠もった漆黒の尾が蹂躙するように伸びて彼を打ち据える。
 超重力に抗うのが精一杯で回避にまで手が回らなかったのだ。
「本当に無茶な力だな……!」
 辛うじてオーラを纏い直撃を避けるが、律の負傷は大きい。
 そして超重力の中、昭平はユーベルコードを起動しようとするが、太陽を喰らうものの超重力は先制攻撃へと繋げるものだ。昏き闇夜を放出せし帝竜は|日蝕帝国《イクリプス》の夜空を飛翔し、昭平へと襲い掛かる。
 暗視で闇夜の向こうから襲い掛かる竜の姿を認識し、昭平は咄嗟に身を縮めガードする。
 直後、激突――まったく負傷していないから威力の増強はないが、帝竜の体躯から繰り出される衝突は背の低く筋肉の詰まった昭平の身体を吹き飛ばすには十分。
 思わず苦悶の声が漏れてしまうが、このタイミングでユーベルコードが発動して愛用の蒸気機動式万能絡繰レンチが短剣型に変形する。
 追撃を喰らわせんと伸ばされた帝竜の手が昭平を捕えんとするが、昭平は超重力の中通常以上の速度で回避行動を取った。
「……十徳ナイフ、ならぬ十徳レンチだべ」
 探検に変形させたレンチは射程と引き換えに移動力を5倍に跳ねあげている。超重力と言えど、その強化された移動力を抑えきる事は出来ない。
 とはいえ一撃貰った昭平は、二度目を受ける訳にはいかないとも思う。
(「あんなのもう一撃貰えば間違いなくオダブツだべ」)
 体力の9割近くを持っていかれた感覚、この状態でどれだけ動けるかは分からないが、自身の力を信じて周囲の闇に溶け込むように身を隠す。
 一方、纏うオーラで結界の如き障壁を展開し超重力の影響を遮断したシーザーは、闇を貫く勢いで伸びてきた漆黒超鋼の尾撃を見極め空中に浮遊、伸ばされてきた尾をギリギリのタイミングで見切り回避する事に成功する。
 すれ違いざまに魔力で形成した光の剣で一撃食らわせる事が出来たのは彼の卓越した思考速度によるものだったが、太陽を喰らうものの鱗は強靭で肉まで切り裂くことは叶わなかった。
 それを気にも留めず、シーザーは高笑いしてユーベルコード【ヤーヌスの双顔】を発動、128メートル内の領域に不可視の魔力を展開する。
 不可視の魔力は敵に破壊、消滅を齎すもの。帝竜をも例外なく破壊していくが、今の帝竜はそれをもあふれ出る闇夜の力で抑え込みつつ竜尾でシーザーを打ち地に叩き落す。
 だがユーベルコードを起動しているシーザーの傷は不可視の魔力により瞬時に再生し、再び彼は空へと浮遊していく。
 光刃を卓越した技巧で振るう彼は、攻めのタイミングでは暴力的に帝竜へと斬りかかり、その身に傷を負わせていく。
 だが深追いはしない。じっくりと、じっくりと。その技巧で頑強な尾による殴打を躱しながら、時を待つかのように冷酷に帝竜を見据える。
 そして帝竜は埒が明かぬと判断したか、音速を遥かに超える速度の爪で猟兵達を引き裂かんと標的を切り替える。
 その標的は20メートルはあるスカイクルーザーと共に転移してきて、その甲板で重力に抗っている国栖ヶ谷・鈴鹿(命短し恋せよ|乙女《ハイカラさん》・f23254)。
「あぶない! |守護稲荷《きこやん》、|ガレオン《ヨナ》!」
 超重力の中、咄嗟に鈴鹿はその身に宿る稲荷狐と一緒に転移してきたヨナと言う名のスカイクルーザーに呼びかけ、防御態勢。
 稲荷狐の加護で展開したオーラの結界に、更にヨナから噴水が放たれ異形の竜の爪、そして突進の軌道を逸らす。
 それでも鈴鹿が爪を回避できたのはギリギリだ。予めヨナを改造しバルジの容量を拡張して噴水の勢いを増していなければ、あの爪は超重力に動きを縛られた彼女を容赦なく引き裂いた事だろう。
 それを避けられたことに鈴鹿は心の底からほっとしつつ、超重力に抗いながらユーベルコヲド【ハイカラさんは止まらない】を発動。すると彼女の後光が激しく輝きヨナを包み、そして飛翔する。
 鯨を模したヨナの姿は光に包まれている今、さながら光り輝く恒星のよう。術者たる鈴鹿がこの夜闇の景色の遊覧飛行に没頭している間、あらゆる外部からの攻撃――帝竜の放った超重力も遮断しているのだ。
 夜景に没頭する彼女の頭に過るのは、これまでのアルカディア争奪戦での戦いの数々。
 アルカディア・スカイゲートを巡る攻防や雲クジラの雲海の迷宮――一つ一つ挙げればキリがない位に思い出は数多く。
 一月に満たない期間ではあるが、激しい戦いもいよいよ佳境だ。
 空で輝く恒星を目にしたからか、地上で二機のキャバリアが動き出した。
 黒きクロムキャバリア『イグニシオン』は、操縦者である久遠寺・遥翔(焔の機神イグニシオン/『黒鋼』の騎士・f01190)。
 彼らはその全力で黒焔とオーラで結界の如く周囲にフィールドを展開、超重力をどうにか中和してスカイクルーザーを襲う帝竜へと跳躍し斬りかかる。
 これまで何度も太陽を喰らうものと対峙してきた彼の戦闘経験――その全てが役立つという訳ではないが、彼の優れた視力で把握できた範囲では予備動作に幾つか共通するものはある。
 それにより導き出したタイミングでの奇襲――漆黒の機神太刀"|迦具土《カグツチ》"で斬られ、その頑強な竜鱗を傷つけられた太陽を喰らうものは、落下していくキャバリアに即座に反撃にかかる。
 上空から墜落の勢いで迫ってくる闇夜の竜の動き――その爪で引き裂こうとしてくる事は読めている。
「次はこっちだ!」
 着地と同時に地を駆けるキャバリア、竜爪はその軌道変化に対応しきれず空を切り、骸の海を軌道上に露出させる。
 イグニシオンの黒焔の残像を残しながら遥翔は地を駆け帝竜の狙いを攪乱しながら爪の連撃を回避していく
 そして、もう一機のキャバリアと言うと。
『ご主人サマ☆ 帝竜がいるよ!』
「上等だ。羽虫の恐ろしさ…たっぷりと味合わせてやるぞ」
 鎌剣を得物とするサイキックキャバリアである界導神機『メルクリウス』に騎乗したカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は雄鶏の立体映像に返しつつ戦場の分析を行っていた。
 彼も遥翔と同様にこの帝竜と幾度も交戦してきた猟兵だ。その経験に基づき竜爪の攻撃範囲、そして攻撃の癖を解析している。
 周囲は闇夜の如き光景となっているが、その色合いに合わせ機体を迷彩し、目立たぬように隠蔽している
(「あの狙い方からすると視覚だけではなく聴覚にも相当頼っていそうですね……」)
 インテリ盗賊らしく分析する彼――だが、そんな気配を察したのか帝竜は標的をメルクリウスに切り替え突進してくる。
『気づかれちゃったみたいだよ☆』
「分かってる!」
 立体映像に怒鳴り返しながら、メルクリウスの周囲に念動障壁を展開し、超重力に抵抗するカシムはプラズマ弾の弾幕を展開、帝竜の眼前で炸裂させて一瞬視覚を奪うと同時に回避行動を取り、竜爪を回避。
 更に引き撃ちしながら竜爪の軌跡に露出した骸の海にプラズマ弾を放ち破壊せんとするが、あくまで空間が切り裂かれた残滓のようなものなのか、破壊はできない。
 猟兵側で利用できるかは不明だから破壊しておきたかったが、それを諦めせめて近づかないようにすると決めたカシムは太陽を喰らうものへとプラズマ弾をばら撒いていく。
 そしてカシムへと標的が切り替わったこのタイミングで、遥翔がユーベルコードを起動。
「|原初起動《イグニッション》。最先より在りし焔よ、醒めよ」
 詠唱と同時、太陽を喰らうものとの戦場全体に原初の真焔結界が発生。猟兵を癒す再誕の白焔と帝竜を焼く終焉の黒焔が燃え広がっていく。
 闇の力に満ちた帝竜の身はその炎では焼かれぬが、厭う様に上空へと飛翔し、遥翔に向けて高速で急降下を仕掛けてくる。
 空からの襲撃に遥翔の操るイグニシオンは漆黒の太刀で迎撃、太陽の内海の如き景色の中で竜と機神はせめぎ合い、そして別たれる。
 そんな機神を援護するように仄々は超重力の中、竪琴を爪弾き魔曲を奏でる。
 彼の紡ぐ旋律は、温かな魔力を乗せて闇夜を打ち払い暗黒と超重力を阻む結界を紡ぎあげる。
 ――闇の帝竜の力はすさまじく、完全に全てを遮断する事は叶わない。だが、
「……これが世界に広がる旋律の波紋。音楽が生む皆さんの笑顔が文字通り|太陽《いのち》の輝きに他なりません!」
『それがどうした! そんなもの滅ぼしてくれるわ!』
 憤怒に満ちた声で吼え、帝竜が仄々に襲い掛かる。
 超速度の爪の一閃、音より早く振るわれるその一撃を、全身の感覚を研ぎ澄ませた仄々はその軌道を見切り前方に飛び込むようにしてさっと回避しつつユーベルコードを起動。
 ペロっと体を舐めて摩擦を極限まで減らした仄々、彼を狙い竜爪が再び襲い掛かるが、それをするりと抜けて帝竜の鱗を尾の先までぺろりとする。
 そこで白焔に傷を癒された律が立ち上がり、抗するためのユーベルコード【陽炎の揺らぎ】を起動すれば、彼の全身に陽炎が揺らぐ。
『まだ立ち上がるか』
 再び帝竜の尾が彼を打たんと伸ばされる。だが、負傷に応じ戦闘力を強化するユーベルコードを発動し、超重力に対抗する程に強化された律は、剣で体を支えながらも伸ばされた竜尾を躱しに一撃を喰らわせ、その生命力を奪い取る。
「敵の攻撃も利用する。それが傭兵だ」
 残像で攪乱しながら尾を回避し生命力を奪い取っていく律、そして復帰した昭平も帝竜の攻撃を回避しつつ機会を伺っていた。
 回避がやり易くなっているのは偶然ではない。仄々により全身の摩擦抵抗を極限まで減らされその爪も突進も無限に伸びる尾も滑りやすくなり、直撃させる事が難しくなっているのだ。
『舐めるな……!』
 だが、爪の軌跡に残る露出した骸の海まではどうしようもない。その追撃を抑え込みながら猟兵達は時間を稼ぎつつ戦いを続ける。

 そして昭平が攻撃を躱し、戦場を白黒の焔で包み込む遥翔が唐竹割に帝竜に太刀を振るい一撃離脱する。
 即座に行われるだろう反撃――だが、そこで帝竜の身体がボロボロと崩壊を始める。
「……強力過ぎて制御に難がある様だな?」
 その様子に律が呟いた。
 隠されし弱点、力の使い過ぎによる自滅――それこそが猟兵達の狙いであった。
 いつの間にか帝竜を覆う闇はその濃度を薄れさせていて。
「さぁ、竜帝、君はあんまり長期戦が得意じゃないって聞いたけど……もうそろそろ限界?」
 そんな帝竜に、スカイクルーザーから鈴鹿が問い、力強い竪琴の旋律が一層強く戦場に響き始める。
 命の輝きたる音楽、魔力を乗せたその音色は温かな日差しの如く、闇を打ち払っていく。
『……この程度で倒れるか!』
 怒りを露にした太陽を喰らうものは吼え、上空のスカイクルーザーを狙い飛翔していく。
「それじゃあ、こっちの番だね!」
 それも読んでいた鈴鹿は双つの機関銃『ナアサテイヤ』と『ダスラ』を構え、太陽を喰らうものに一斉射撃。
 破魔の力を宿した弾丸に光線、夜を打ち払うかの如き怒涛の勢いで|乙女《ハイカラさん》は仕掛けて。
「僕らのターンって奴だ」
 更にカシムが告げて、ユーベルコード【神速戦闘機構『速足で駆ける者』】を起動。
「加速装置起動……メルクリウス……お前の力を見せてみろ……!」
『はーい☆』
 立体映像が返した瞬間、キャバリアが高速で飛翔。空で大きくターンして帝竜に鎌剣で斬りかかる。
 竜爪が反撃に振るわれるが、メルクリウスは更に加速しその爪が振るわれる前に連続で竜鱗を切り裂き、闇に黒く濁った血が周囲に散る。
 機神に合わせシーザーも攻撃に転ずる。不可視の魔力を全て帝竜の破壊の為に向けて、更に光の刃を手に帝竜に斬りかかる。
 機神の猛攻に合わせ的確に切り込むその様は侵略する火の如き暴力――不可視の魔力と光刃の連撃を受けた帝王竜の高度は下がっていく。
 更にメルクリウスが追撃、超速度の連撃は竜の翼の片割れを両断し強奪し、この|日蝕帝国《イクリプス》の守護竜とも謳われた太陽を喰らうものは墜落する。
 墜落直後に仕掛けたのは律と昭平。
「過ぎる力は必ず害になる。制御出来ない力で何か出来ると思ってるアンタこそが浅ましい」
 その律の言葉と共に、赤銅の両手剣が太陽を喰らうものの翼を斬り落とすと、昭平は短剣を竜の胴に突き立てた。
 射程がない以上ギリギリまで近づかねばならないが、この距離なら十分致命傷を与えられる。
 昭平の奇襲暗殺に帝竜は苦痛の咆哮、そしていつの間にか跳躍していたイグニシオンが終焉の黒焔を纏いし太刀を太陽を喰らうものの胸に真っすぐ突き立て深々と貫いた。
「これがお前が侮り嗤ったちっぽけな|いのち《太陽》の強かさだ」
 その遥翔の言葉に帝竜は怨嗟の言葉を撒き散らしながら、やがて闇に喰われるかのようにその身を消失させたのであった。

 帝竜は潰え、その鎮魂たる竪琴の演奏が|日蝕帝国《イクリプス》に響く。
「……海で静かな眠りを」
 骸の海に還った太陽を喰らうものへ、ケットシーの楽士は最後にそう呟く。
 こうして六大屍人帝国の一角は崩れ、アルカディアの玉座への道がまた一つ開かれた。
 それを確信しながら、猟兵達は|日蝕帝国《イクリプス》を後にしグリモアベースへと帰還したのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年09月23日


挿絵イラスト