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アルカディア争奪戦⑲〜熾火は『赤赤』く昌盛・フィーネ

#ブルーアルカディア #アルカディア争奪戦 #オーデュボン #『皇帝』パッセンジャー

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#『皇帝』パッセンジャー


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●荒野に咲く花のように。造られた虹だろうとも。
 屍人帝国『オーデュボン』の『皇帝』パッセンジャーは翡翠の如き瞳で見据える。
 その女人の如き美しき顔に表情はない。
 怒りも哀しみも喜びも楽しさを感じる心もある。
 嵐に心などあるわけがない。
 だが、彼は風に揺れる、さくらの花の美しさに目を奪われる。

 降り立つ大地は自然に満ちていた。
 己が愛するもの。草花や木々が咲き誇る。美しいと感じる。心からそう思うのだ。
「生命など、この美しい花の前には何の役にも立つまい。意味のないものだ。理由のないものだ。それに執着する理由になってない」
 異形たる『無敵機械』が唸りを上げる。

 猟兵たちの攻勢によって皇帝親衛隊のオブリビオンたちは全てが霧消した。
 だが、パッセンジャーは何も思わない。
 自分の周囲を飛んでいた何かが落ちた、程度にしか思っていない。依然、彼の無敵性は損なわれていない。
 ただ存在するだけで周囲の生命を吸い上げる『無敵機械』。
 己を縛るモノ。
 故に彼は自死を願う。
「那由多に続く灰色よりも、刹那に輝く虹色をこそ俺は美しいと思う」

 巡らぬ生命に意味はない。
「認めよう。猟兵。アンタ達が俺の望みを叶える者なのならば」
 故に己自身に意味などないとパッセンジャーは、滅ぼさねばならぬ者たちを前にして自然を愛する心をねじ伏せる科学の力が荒れ狂うのを感じる。
『無敵機械』が咆哮する。
 滅びなどありえないと。
 あらゆる生命を吸い上げ、滅ぼす。
 そのために在るものだ――。

●赫
 そして、もう一つの|光の渦《サイキックロード》が開かれる。
 光の翼を放ちながら大空の世界に降り立つ赤い鎧の巨人。三面六対のアイセンサーが煌めき、六腕たる内の二対が肩部アーマーに収納され、周囲を見回す。
 明らかに戸惑っているようだった。
「――……ここは、どういうことだ、『ヴィー』! 此処は空だ!」
「わかっているとも。此処が……空の世界。僕のようなものが郷愁を感じるなどとは」
「――」
 もう一つの『赤』い鎧の巨人が空に現れた瞬間、もう一つの赤い鎧の巨人が無言のまま新たに現れた赤い鎧の巨人に相対する。

「ブースターの噴射だけでは……! 陸地……どこか、下りる所は……!」
 急速に光の翼の輝きを失う新たな赤い鎧の巨人の手を掴む腕。光背が輝き、二体の巨人が手を取り合う。
「なんだ、なんの光だ。これは!『ヴィー』!」
「わからない……いや、知っている。これは、あの時と同じか。故郷をうしないたくない。奪われたくない。守りたい。己の生命を懸けてでもと願う心。これが祈り……!」
「――」
「なんで何も言わない! 君は一体なんだっていうんだ。いや、違うこれは……! 知っている。僕たちも同じように抱いたものだ、これは!」
 新たに現れた赤い鎧の巨人の内側から広がっていくものがある。それは青い熾火。目の雨の赤い鎧の巨人にはなく、新たに現れた巨人にはあるもの。
 青い熾火が二体の鎧の巨人を通して広がっていく。

 それは空を駆け抜けていく。
 遠く離れた大地にも、猟兵の後を進む『飛空艇艦隊』の飛空艇にも。あらゆるオブリビオンの災禍にさいなまれる者たちの元に駆け抜けて、巡っていく。

 人の思いを繋ぐのが、この鋼鉄の体。
 流れ込む多くの思いは願いであり、祈り。『飛空艇艦隊』のみならず、今もなおオブリビオンの脅威にさらされる者たちの思いが。
「人の思いを増幅させるのが、この僕なのならば」
「人の思いを絆ぐ……? これが、『|絆ぐ者《セラフィム》』……!」
「――」
 二体の赤い鎧の巨人は再び|光の渦《サイキックロード》の中へと消えていく。
 世界を震わせる音は、重奏となって満ちていく――。

●其の名は
 屍人帝国『オーデュボン』の『皇帝』パッセンジャーは見ただろう。
 あの青い熾火を。
「――それが俺の求めたモノ。俺を殺すモノ。俺が自然如き暴威であるというのならば。それを超えていくことができるのが人の祈りだ。だからこそ」
 そして、その音を聞いたからこそ、パッセンジャーは激情を発露させる。
 猟兵たちは見ただろう。絆ぎ、膨れ上がり、広がっていく祈り。誰もが明日を願っている。今日という今を生きている。

 その祈りにも似た熾火が広がっていく。
『皇帝』たるパッセンジャーを守ろうと集結しだした『オーデュボン』のオブリビオンたちを阻むように青い熾火がパッセンジャーと猟兵達を囲い燃え盛る。
 弾き飛ばされていくオブリビオンたち。
「歪み果てた音は終わりを告げる。歪む色は色褪せる。何事にも終わりは来る。俺に終わりをもたらしてくれ」
 終わることへの恐れはない。

 あるのは言葉だけだ。
 だが、その言葉を感じることができるのならば力となる。
「『戦いに際しては心に平和を』――何度聞いたかわからないが……だが、悪くない。今初めてそう思った」
『己の闇を恐れよ』と声がパッセンジャーの中にある。
『されど恐れるな、その力』と呼ぶ声があった。
 過去は過去に。
 ならばこそ、彼の瞳はこれまで以上に燦然と輝く。

 眠れる獅子を起こすように。あの青い熾火はこれまで虚無の如き感情しか見せなかったパッセンジャーに激情という名の撃鉄を引かせる。

 その瞳に満ちる光は闇を切り裂く、造られた虹の輝き――。


海鶴
 マスターの海鶴です。

 ※これは1章構成の『アルカディア争奪戦』の戦争シナリオとなります。

 六大屍人帝国の一つ『オーデュボン』の『皇帝』パッセンジャーとの決戦に突入ですう。

『皇帝』パッセンジャーと接続されている『無敵機械』は『自動的に周囲のあらゆる生命やエネルギーを吸い上げます』。
 これにより彼はただ存在しているだけで無限に生命力を回復し続け、傷を癒やします。
 これに対抗するには、これを上回る強力無比な攻撃を絶えず叩き込み続けるしかありません。

 あるいはパッセンジャーの『隠されていた弱点』を利用して戦うことで戦いを優位に進めることができるかもしれません。

 シナリオタグ『#オーデュボン』で検索していただけると、それがわかるえでしょう。

 プレイングボーナス………無敵機械の無限吸収に対処する/敵の『隠されていた弱点』を突いて戦う。

 それでは『アルカディア争奪戦』、屍人帝国の野望を打ち砕くべく雲海を進む皆さんの冒険と戦いの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 ボス戦 『『皇帝』パッセンジャー』

POW   :    パッセンジャー・ケイジ
レベルm半径内を【急激に狭くなる光の檻】で覆い、[急激に狭くなる光の檻]に触れた敵から【檻を構成するエネルギー】を吸収する。
SPD   :    パッセンジャー・レイ
着弾点からレベルm半径内を爆破する【魔導砲撃】を放つ。着弾後、範囲内に【攻撃型魔導ドローン】が現れ継続ダメージを与える。
WIZ   :    インビンシブル・チェンジ
自身の【無敵機械】を【抹殺形態】に変形する。攻撃力・攻撃回数・射程・装甲・移動力のうち、ひとつを5倍、ひとつを半分にする。

イラスト:ふじ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ガイ・レックウ
【POW】で判定
『さて皇帝よ…すべてをもっててめぇを倒す!それがてめぇの救いになるのなら!!』
機動戦艦『天龍』の上で愛機ととも仁王立ちで宣言すると【オーラ防御】を幾重にも纏わせ、ミサイルと艦砲、ハイペリオンランチャーでの【制圧射撃】を敢行、檻の迎撃と対照への飽和攻撃を仕掛け、チャージの時間を稼ぐぜ
『全てを出し切り、ぶち抜け!!』
動力を最大出力で回し、ユーベルコード【艦首超重力砲『竜王の咆哮』】を放ち、相手が無限吸収で再生しきれないほどのダメージを狙うぜ!!



 屍人帝国『オーデュボン』の『皇帝』パッセンジャーの虚の如き表情は崩れ落ちていく。
 そこにあるのは激情。
 秘めたものではなく、元よりあったものが発露しただけのこと。
 撃鉄を起こされた力は、その翡翠の瞳に虹の如きユーベルコードの輝きを放つ。
 異形たる『無敵機械』は唸りを上げる。
 滅びてなるものかと。
 あらゆる生命をすすり、殲すと叫ぶように王冠戴く異形が咆哮する。

「さて『皇帝』よ……すべてをいもって、てめぇを倒す! それがてめぇの救いになるのなら!!」
 キャバリアと共に空に浮かぶのは機動戦艦『天龍』。
 ガイ・レックウ(明日切り開く流浪人・f01997)は言う。
 だが、『皇帝』パッセンジャーはその言葉を真っ向から受け止め、異形たる力を発露する。
「救う? 何処までも度し難いな猟兵。アンタたちに救えぬ者はないと言わんばかりの傲慢さだ。人の手には五指がある。その間にあるものをアンタたちは知らぬわけではないだろう。取りこぼすものがあることなど承知しているはず。だというのに」
 それでもなお、自死を願う己を救うというのかと激情が迸る。

 機動戦艦を覆う光の檻。
 急速に狭まっていく檻の光が幾重にも纏わせたオーラを砕いていく。
 そればかりか、その内部に在るエネルギーを吸い上げていく。
 これが『皇帝』パッセンジャーを恐怖でもって屍人帝国のオブリビオンたちを束ねた力。
 生命力であれエネルギーであれ、そこにあるものを啜るのが『無敵機械』。

 放たれるミサイルと艦載砲、ハイペリオンランチャーで檻を管感とする。
 飽和攻撃そのもの。
 砕ける檻の中を機動戦艦が飛ぶ。
 愚直ともいえる直進。
 その先にあるのはパッセンジャー。周囲に囲うは青い熾火。
 人の明日を願う心が膨れ上がり、繋がることによって得られた火。篝火のように燃え盛るものがある。

 チャージに時間を要するが故に、機動戦艦『天龍』は、一切の攻撃ができない。
 けれど、キャバリアと接続したことにより艦首が首をもたげるように、顎を開くように変形していく。
「艦首展開…キャバリア接続完了。エネルギー充填…120%!!艦首超重力砲…発射ぁ!!!」
 全てを出し切り、ぶち抜けと叫ぶ声が聞こえる。
 その熱にも似た言葉をパッセンジャーは受け止めるだろう。

 その激情とは異なるもの。
 されど、迫るは巨大重力砲撃の一撃。
 生命吸収の力を上回るには、強力無比な攻撃を叩き込み続けなければならない。周囲にあった皇帝親衛隊オブリビオンたちは全て青い熾火によって弾かれ、この場にはいない。
 彼らがいるだけでパッセンジャーは生命力を補填していく。
「艦首超重力砲『竜王の咆哮』(カンシュチョウジュウリョクホウ・ドラゴニックロア)は、まだまだ――!」
 轟く。
 打ち込む重力砲の一撃が極大の光条となってパッセンジャーの『無敵機械』を貫き続ける。

 軋む体。
 避けようと思えば避けれたはずだ。 
 だというのにパッセンジャーはかわさない。その体で重力砲の一撃を受け止め続ける。
 その背後に合った草花を守るように、ただひたすらに己の体を盾にして、砲撃を受け止め続けるのだ。
「ぶち抜け!!」
 さらに上乗せされるキャバリアのエネルギーインゴットより流れ込む出力。
 インゴットが熱を持ち、機体の背面から焼け落ちる。
 打ち込まれた重力砲の一撃は、たしかにパッセンジャーの体を傷つける。けれど、その背後にあった草花は戦いなど知らぬように、今も風に揺れている――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

バルタン・ノーヴェ
POW アドリブ連携歓迎

なるほど……そういうことならば、このメガリスが効果的デショー。
戦場に持ち込んだこちらの『フローラの鉢植』!
こちらで植物を育てると急成長するのでありますよ!
葡萄に大根、彼岸花! いろいろ詰め込んできマシタヨ!
「六式武装展開、木の番!」

生い茂る葡萄が頭上を、彼岸花が地面を覆い尽くしマース!
光の檻で覆えば……巻き込んでしまうことになりマスネ!
草花、木に当たるような攻撃をしようとしない……それがアナタの弱点であり、優しさであります。
動きが止まったところを三倍威力の大根で一撃叩き込み、素早く撤収しマース!

なにせ……三分でこの植物たちは暴走するゆえに!
後処理は任せマース、皇帝陛下!



『皇帝』パッセンジャーの弱点。
 それは『|強襲作戦《ファーストアタック》』によって得られた情報である。
『草花や木に当たるような攻撃をしない』というのがパッセンジャーの弱点であるというのならば、それは与し易いものであったかもしれない。 
 猟兵にとって幸いだったのは、ここが自然豊かな屍人帝国『オーデュボン』であたっということ。

 パッセンジャーにとって猟兵は生命の埒外。
 そして人も、魔獣も、オブリビオンも生命とみなしていない。それらを生命とみなしているのは彼に接続された『無敵機械』のみである。
 生命を吸い上げ続ける。
 草花以外の全ての生命を吸い上げ、啜る。
 配下であるオブリビオンであっても例外ではないのだ。生命を吸収し続けるからこその不死性。
「なるほど……そういうことならば、このメガリスが効果的デショー」
 バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)が手にしていたのは、七色に輝く鉢植型のメガリス。
 それは植物を育てることによって急成長を促すものであった。
 バルタンはその鉢植えに種を蒔く。

「葡萄に大根、彼岸花! 色々詰め込んできマシタヨ!」
 彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
 同時に彼女の周囲に光の柱が打ち込まれる。
 それは檻。
 パッセンジャーの放つユーベルコードであり、急速に狭まることによって、その内部に在る生命を吸収する力。
 だが、バルタンの声が上がる。
「六式武装展開、木の番!」
 彼女の手にした鉢植型メガリスが唸りを上げる。

 メガリスの中に植えられた植物が次々と芽吹き、その枝を、葉を伸ばしていく。まるで倍速再生しているかのような異様な光景。
 蔓が這うように大地を走る。
 その光景を見たパッセンジャーは、その手を止めるだろう。
「……いびつな」
 光の檻が霧消する。
 パッセンジャーは、自身の意志でそれを止めたのだ。
 敵を前にして、滅ぼすべき生命の埒外たる者を前にして、彼は攻撃の手を止めた。
 それはともすれば優しさといえるものであったのかもしれない。
 少なくともバルタンにはそう感じられたのだ。

 攻撃を止めたのは、鉢植型メガリスから生える植物を巻き込んでしまうから。
『弱点』と言われた『草花、木に当たる攻撃をしようとしない』という特性。それによって中断された攻勢をバルタンは見逃さない。
「……それがアナタの弱点であり、優しさであります」
 動きを止めたパッセンジャーへと鉢植から引き抜いた大根を投擲する。
 立派に育った大根。
 打ち込む一撃をパッセンジャーは受け止めるだろう。
 だが、言ってしまえば、それはただの大根だ。食物そのもの。

 だからどうしたという話である。
 けれど、植物は、そのメガリスによって急速成長した植物は大地に根を張り、まるで自己顕示欲を発露するようにパッセンジャーの前に立ちふさがる。
「――……どこまでも」
「楽花流粋(ランニング・ベジタリアン)デース! このまま撤収させていただきマース! なにせ……三分でこの植物たちは暴走するゆえに! 後処理は任せマース、皇帝陛下!」
 バルタンは即座に撤退する。
 放たれた植物たちは、暴走を始めパッセンジャーに絡みつくだろう。
 その身に宿した生命力を吸い上げるように、『無敵機械』の隅々にまで入り込み、きしませる。

 膨れ上がった根は、関節を砕き、その場にパッセンジャーの膝をつかせる。
 自然の暴威そのものたる理不尽の化身は、おのれの愛する植物に寄って、今ここに屈するしかないのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
まだ終わってなかったのね。
『オーデュボン』皇帝パッセンジャー陛下。
『無敵機械』を破壊して、あなただけを連れ帰られたらいいのに。
そうしたら、生命の素晴らしさを骨の髄まで教えてあげる。

「結界術」「呪詛耐性」「環境耐性」で光の檻の収縮を支えつつ、絶陣を展開するわ。
「全力魔法」炎の「属性攻撃」「範囲攻撃」「竜脈使い」「衝撃波」「呪詛」「仙術」「道術」で烈焔陣。
この浮遊大陸を崩す勢いで、大地から溶岩を噴き上げさせる。溶岩のエネルギーも吸収できるかしら? それとも燃やされる?

あたしは「地形耐性」で効果範囲内を駆け抜け、皇帝陛下の細い身体に薙刀を突き刺すわ。
これが最後よ。一緒に行こう? 愛してあげるから。



 荒れ狂う暴威。
 嵐の化身の如き力を発露する『皇帝』パッセンジャーの瞳は激情の虹色に染まる。
 ユーベルコードは光の檻となって猟兵を囲う。
「まだ終わってなかったのね」
 村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は小さく呟く。
 彼女の目の前にあるのは自然の体現者、理不尽の極地たりえる存在。パッセンジャー。
 彼は自分を見ていない。
 見ているようで居て見ていない。
 生命とすらみなされていない。

 逆にパッセンジャーに接続されている『無敵機械』はこちらを正しく生命と認識している。
 その齟齬。
 近づくだけで生命力を吸い上げられる。
 ならば、その吸収を上回る攻撃を叩き込むしかない。
 関節を砕かれながら植物の蔦が急速に成長し枯れ果てるまでパッセンジャーは動かなかった。
『無敵機械』の動きを止めているようにも見えただろう。
「『オーデュボン』、『皇帝』パッセンジャー陛下。『無敵機械』を破壊して、あなただけを連れて帰られたらいいのに。そうしたら、生命の素晴らしさを骨の髄まで教えてあげる」
「要らない。アンタに教わるまでもなく、俺はすでに得ている。生命の素晴らしさを、その讃歌を」
 猟兵とパッセンジャーを囲う青い熾火。
 それは人の思いだ。

 明日を願う者たちの強き祈りにも似た力。
 それが皇帝親衛隊オブリビオンたちを弾き飛ばし、生命を吸収するためのタンクとしての役割すらさせない。
 ここが千載一遇の好機。
 あとは――。
「アンタたちだけだ。滅ぼせばいい。俺は『アルカディアの玉座』に至り、俺の望みを果たす」
 即ち自死。
 彼にとって、それだけが己の願望。
 理不尽だと言われるのだとしても、なんら感情が動くことはない。
 放たれる光の檻がゆかりを囲う。

 急速に狭まっていく光の檻は、触れるだけで生命力を奪われるだろう。
 展開する結界術が収縮を抑えようとするが、砕かれていく。圧倒的な力。これが『皇帝』と呼ばれた者の力である。
 だが、負けてなどいられないのだ。
 彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。汚濁に染まりし三昧真火よ。天帝の赦しを持って封印より解き放たれ、地上を劫火の海と為せ。疾!」
 開放される絶陣。
 烈焔陣(レツエンジン)は、戦場たる『オーデュボン』の浮遊大陸の地表を砕く。
 龍脈を読み取り、呪詛と仙術、道術の全てを掛け合わせてゆかりはユーベルコードを放つ。

 この大陸そのものを崩す勢いで大地から噴出するのは無数の火柱。
 走る炎はパッセンジャーに迫る。
「大地から噴き上がる溶岩のエネルギーは吸収できるかしら? それとも燃やされる?」
 放つ一撃は『無敵機械』の体躯を溶かし、焼け落とす。
 だが、溢れる生命力が機械すら復元していくのだ。
 これほどまでの激烈なる一撃を叩き込んでも、ゆかりのユーベルコードは終わらない。
 怨念に満ちた呪詛の炎は、消えることなく、その身を苛むだろう。
「だから、何だという。俺のこの胸にある激情は、この程度では燃え尽きることなど……ない」
 そこに駆け込む一陣の風があった。

 ゆかりは砕けて足場を崩した大地を駆け抜け、一気に薙刀の一撃をパッセンジャーの胸へと突き刺す。
 それをパッセンジャーは激情灯す瞳のまま見るばかりであった。
 ゆかりは手を差し伸べる。
 共に、と。
「これが最後よ。一緒に行こう? 愛してあげるから」
「俺にとっての愛とは、そういうものではない。差し出すものでもなければ、差し出されるものでもない」
 パッセンジャーの瞳見上げている。あるのは拒絶。
 絶陣の吹き荒れる力。
 突き立てた薙刀を抜き、ゆかりは飛ぶ。

 近くにいるだけで生命力を吸い上げていく。
 ゆかりも例外ではない。
「俺にとって、愛とは、即ち荒野に咲く白百合のような……造られた虹のような、そんな……ああ」
 そういうものであったのだとパッセンジャーは燃えて散りゆく花の花弁に手を伸ばし、溢れる溶岩にその体を焼かれるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アイン・セラフィナイト
とてつもない回復力ってなると、こちらも最大の攻撃で対処するしかなさそうだね。

地属性の魔法で周囲の植物、草木を活性化させて成長させておくよ。パッセンジャーは自然を大切にしてるみたいだしね。

UC発動、自分にその効果を適用させて、『境界術式:叡智ノ書架』を展開だ!

召喚される魔導書は2320冊、その全てからパッセンジャーに魔弾を発射!
さらにUC効果でその魔弾の数は実質千倍に跳ね上がる。
放射する魔弾にそれぞれ異なる地水火風の属性を乗せて装甲への突破力を上げておこう。
『属性攻撃・全力魔法・リミッター解除』の飽和する魔弾の豪雨、受けてもらうよ!



 屍人帝国『オーデュボン』の『皇帝』パッセンジャーを支えるのは接続された異形の『無敵機械』。
 ただ存在しているだけで周囲の生命力を吸い上げていく力。
 それによってどんな傷もたちどころに修復していく。とてつもない回復力。それによってパッセンジャーは死ぬことができない。
 己の滅びを望む。
 故に彼は『アルカディアの玉座』を目指すのだ。
「人の祈りだけが、俺を殺す。俺は過去の化身。過去よりにじみ出た者。『今』に必要のないものだ。だからこそ、俺は求めたのだ」
 己を殺すモノを。

 自然は愛すれど人は愛さない。
 アイン・セラフィナイト(全智の蒐集者・f15171)はパッセンジャーを理解している。『弱点』である『草花や木に当たるような攻撃をしない』という理由ならぬ理由が、パッセンジャーを追い込む手立ての一つ。
「こちらも最大の攻撃で対処するしかなさそうだね」
 地に干渉する魔法で周囲の植物、草木を活性化させていく。
 大地は砕け、われていても、たとえ溶岩が溢れ出していたとしても、そこに芽吹くものがあるのならば、再び大地は緑に覆われる。
 どれだけ人の手が入り、伐採され、砂漠になるのだとしてもだ。

 アインは、自身の周囲にある大地の力を汲み上げ活性化させていく。
「君は自然を大切にしているみたいだね」
「人間など何の役に立たないとは思わないか。この草木の美しさ、その生命力に溢れた輝きこそ、世界には必要だと」
 パッセンジャーは人を、魔獣を、オブリビオンを、猟兵を生命とみなしていない。彼が生命とみなしているのは草花だけだった。
『無敵機械』は、草花以外の全ての生命力を吸い上げる。
 その齟齬。
 それが彼の弱点となっている。

 アインに攻撃することもできただろう。
 対話する最中にはいくらでも異形機械の腕を振るう隙はあった。だというのにパッセンジャーは動かない。
 アインの周囲に草木が満ちているからだ。
「仮にそうだとしても、僕は人の叡智を信じている。人が生み出すものを信じている」
 アインの瞳がユーベルコードに輝く。
 彼の元に現れるのは次元を超えて現れる無数の魔書。
 その数実に二千を超える。その全ての頁が羽撃くように開かれ、光が満ちていく。魔力に寄る弾丸。魔弾は空を埋め尽くしていく。

 彼のユーベルコードは時の精霊の力によって、己の攻撃を千の連撃に変換する残像を生み出す。
「だから! 廻転を為せ、時の審神者よ(クロノス・マトリクス)」
 魔弾の数は千倍。
 満ちる光の煌きはブルーアルカディアの空を埋め尽くしていく。

 その光景を前にしてパッセンジャーは慄くでもなく、ただ相対する。
『無敵機械』は滅びてなるものかと、その魔弾の雨を前に拳を叩きつける。装甲を砕く魔弾は様々な属性を宿し、『無敵機械』へと激突する。
 飽和攻撃そのものであった。
 一発一発が重いのではなく、雨だれが石を穿つようにパッセンジャーの回復力を上回ればいい。
「魔弾の雨……いいや、魔弾の豪雨、受けてもらうよ!」
 満ちる光がパッセンジャーを飲み込んでいく。
 力の濁流。
 そう表現するのが正しいほどの攻勢。

 どれだけ回復しても、さらにそれを上回る速度で徹底的に打ちのめす。
 躱せばいいはずだ。
 でも、それをしないのは魔弾に草花が燃えることを厭うからであった。
 みなぎる力は、そのためにあるようにアインの魔弾を受け止め、迎え撃つ。だが、通常の千倍にもなる攻勢を前に無事で居られるはずがない。
 アインは見ただろう。

 魔弾の豪雨に撃たれ、そして、その雨より全ての草花を覆うことなどできるはずもないことを。
 猟兵とパッセンジャーを取り囲む青い熾火は、今も燃えている。
 人の祈りが猟兵達に味方するのならば、アインはただ一人の過去の化身によって世界がほろぼされるべきではないと示すのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御魂・神治
アンタは皇位継承の駒で、無敵機械こそが皇帝やったかもしれんな...
草木が好きなら望み通りの結末を迎えさせたる
生きているのか死んでいるのか、わからん様にな

森羅に【破魔】と【浄化】、加えて木【属性攻撃】を【エネルギー充填】させて【リミッター解除】
ダメ押しで【結界術】で魔導砲のエネルギーを受け止めエネルギー転換、【限界突破】の最大以上出力で『五行霊弾・万物』を、植物と皇帝目掛けてぶちかます
この浮遊大陸そのものも飲み込む程の世界樹に、無敵機械ごと皇帝を「作り替え」たる
望み通りの結果、アンタは物言わぬ大樹になって、この虚空を彷徨い続けるがええ



「アンタは皇位継承の駒で、『無敵機械』こそが『皇帝』やったかもしれんな……」
 御魂・神治(除霊(物理)・f28925)は、魔弾の豪雨にさらされ砕けていく屍人帝国『オーデュボン』の『皇帝』パッセンジャーを見やる。
 死ぬことのできない存在。
 ただ其処に在るというだけで周囲の生命を吸い上げ、回復してしまう。
 自死こそがパッセンジャーが『アルカディアの玉座』に望むものであった。

 彼にとって人は生命ではない。
 魔獣も、オブリビオンも生命とみなしていない。生命の埒外である猟兵に至って、もはやそれ自体が嫌悪の対象。
「アンタたちが俺に終わりを齎すのならば、それでもいいだろう。だが、俺の中の何かが言う。アンタたちは滅ぼさなければならない。理解ではない。本能が叫ぶ」
 異形の腕が砲身へと変貌を遂げる。
 魔導砲。
 その一撃の湛える光を神治は見ただろう。
 即座にハンドガンを構える。銃身に宿るのは破魔と浄化、そして木の属性。リミッターなどとうに外している。
 満ちる力はパッセンジャーの放つ魔導の光条に間に合わない。

 打ち込まれる光条を結界術で受け止める。
 僅かな時間しか防げない。
 砕けていく結界を彼は見ただろう。
 けれど、恐れはない。
 恐れる理由などない。目の前の過去の化身は、死にたがりだ。
「死んでいるように生きていたないと思わんか」
 その言葉にパッセンジャーは答えない。

 光条の一撃を受け止め、神治は砕けた結界術によってエネルギーをくるむように転換させ己のハンドガンに籠める。
 銃身が焼ける。
 熱がハンドガンを手にした腕から伝わっていく。尋常ならざる力。魔導砲の一撃だけではない。
 さらに魔導ドローンが迫る。
 限界を今超えなければならない。
 彼の瞳がユーベルコードに輝く。
「五行霊弾『万物』(ゴギョウレイダン・バンブツ)――草木が好きなら望み通りの結末迎えさせたる。生きているのか死んでいるのか、わからんようにな」
 放つ一撃は、砕けマグマによって焼け落ちた大地もろともにパッセンジャーを撃つ。

 彼のユーベルコードは木の属性を宿し、周囲の戦場を『作り替え』る。
 満ちたエネルギーが銃身に熱を宿すだろう。銃口は赤く燃えるようでもあった。
 大地に芽吹くは草木の芽。
 エネルギーを受けて急成長していく木々は、周囲を覆っていくだろう。

 如何に鋼鉄の機械と言えど、隙間があれば植物の種は入り込み、成長とともに隙間を押し広げていく。
 鋼鉄の四肢はそうして砕かれていく。
 木の根が張り巡らされるように、砕けた地表を縫い止めていくだろう。
「理不尽そのものか」
 神治は見ただろう。己の放つ一撃。
 ユーベルコードに寄って引き起こされた自然現象。

 それはパッセンジャーを覆い尽くす樹木。
 この浮遊大陸そのものが大樹そのものとなってパッセンジャーを囲うだろう。草花の生命を吸うことのできない『無敵機械』。
 草木しか生命とみなせないパッセンジャー。
 その終焉の地として、この上ないものであると彼は言う。
 故に、この終わりのない虚空をさまよい続けるがいいと、そう告げるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鵜飼・章
引き続き服を植物で覆い
真の姿解放で自身の虚構性を高め
吸収対策とする

現在の観察結果から推測するに
きみは『ぼく』が始末すべき輩だったようだ
鵜飼章はぼくという虚無を封じ込め
人間らしさを保証させる為の外殻に過ぎない
人間の練習は一時休止だ

解剖実習を使用
1秒に129回彼を解体し
死ぬ迄淡々と攻撃を続ける
麻酔は要らないだろう
懇願されても打たないが

きみに認められる低みに立った記憶は無いんだが
周囲に災厄を撒き続け
自ら終わらせる事も出来ない生命体が
一体何処から目線で誰に依頼をしているの
きみが何も省みないまま
如何してか綺麗な言葉を弄して
己の願いを叶える事だけをぼくらに要求するなら
ぼくは『救いようのない邪悪』という判断を下さざるを得ない

きみは歪み果てているから
恐怖も感じてくれないのだろうな
救いようのない邪悪
それは咎人
きみこそぼくが本当に滅ぼすべき魔獣だよ

何秒経ったかな
まだ死なないの
早く死んでよ
鵜飼章はトラックに轢かれて死ぬんだ
人間ごっこにも刻限がある

とどめは相応しい人に譲るよ
ぼくはきみに相応の罰を与えに来ただけだ



 ヒトの形をしているがヒトではないもの。ヒトではないが、ヒトの形をしているもの。
 欠落しているものを埋めるものがあるのならば、それは幸いであったのかもしれない。少なくとも、鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)は欠けたる所を自覚していたし、己が人間であることから逃げることをしなかった。
 酷薄たる心にあるのは好奇と想像。
 それによって彼は外殻を纏う。
 即ちヒトのガワ。

「現在の観察結果から推測するに、きみは『ぼく』が始末すべき敵だったようだ」
 虚無が人のガワを得ている。
 パッセンジャーはそう思ったかも知れない。あれは生命ではない。いや、彼にとって草花以外の全てが生命ではない。
 そういう点においては。
 否、その思考は存在しないものである。

 鵜飼章の中にある虚無。封じ込められたもの。人間でありながら酷薄たるものを取り繕うために、己という外殻をもって保証する。
 言ってみれば、普段の彼の立ち振舞は人より人であろうとした証左であったのかもしれない。
「人間の練習は一時休止だ」
 ユーベルコードが輝く。
 手にした解体器具は、一瞬で大地砕け、再び植物に寄って縫い留められた浮遊大陸を一閃する。
 放たれた一撃をパッセンジャーは復元された『無敵機械』の腕部で受け止める。
 次の瞬間、それはバラバラに分解され鉄くずへと成り果てる。

 一秒間に129回の解体作業。
 目にも止まらない速度で放たれる解体器具は、ただ一瞬でパッセンジャーの『無敵機械』、その腕部をバラすのだ。
「人間が人間のフリをする。アンタもこの熾火の一部だ。俺を殺すモノだ」
「きみに認められる低みに立った記憶はないんだが」
 章の放つ解剖実習(サイエンスフィクション)たる斬撃は、復元されていくパッセンジャーの『無敵機械』をその都度ばらしていく。
 解体する速度と復元する速度が同一。
 故に一進一退。

 立ち止まることは許されない。死ぬまで淡々と攻撃を続ける。
 麻酔などする必要などない。目の前に居るのはヒトの形をした嵐の権化だ。理不尽そのもの。自然の暴威そのもの。
 例え、頼まれたとしても打つ必要はなかったのだから、思考するだけ無駄だと章は、『人間性』を切り捨てる。
 解剖するように、その中身を理解しているつもりであったからだ。
「周囲に災厄を撒き続け、自ら終わらせる事も出来ない生命体が、一体何処から目線で誰に依頼しているの。きみが何も省みないまま、如何してか綺麗な言葉を弄して、己の願いを叶えることだけ『ぼく』らに要求するなら」
 放たれる光条が章に放たれる。

 だが、その光条さえもバラす。
 できないと思っているからできない。できると思うからできる。ただそれだけなのだというように、章は超克の道をひた走る。
 目の前にいるのは『救いようのない邪悪』だ。
 そう判断した。
「きみは歪み果てているから、恐怖を感じてくれないのだろうな」
「何故、そう感じる必要がある。恐怖とは即ち、己の中の闇だ。それを恐れるのならば理解できようが、アンタは俺の外にあるものだ。ならば、恐れる必要などない」
「救いようのない邪悪。それは咎人。きみこそがぼくが本当に滅ぼすべき魔獣だよ」
 互いの攻防は止まらない。

 一瞬たりとて気の緩まるところはなかった。
 どれだけ経ったのだろう。
 数分? それとも数秒?
 どうだっていいと章は思った。まだ死なないのかと呆れ果てる。これが邪悪。これが滅ぼすべきもの。
 互いに互いを嫌悪している。
 滅ぼすべきもの。
 その認識しかない。早く死んでほしいと章は思った。同時にパッセンジャーも思っただろう。

 目の前の悪性を。
 悪性ゆえに善性を感じられるように。
「鵜飼章はトラックに轢かれて死ぬんだ。人間ごっこにも刻限がある」
 解体の速度が上回る。
 生命力が、喪われてきている。周囲にある存在と言えば猟兵だけ。あの青い熾火はパッセンジャーの生命力タンクとしか見ていないオブリビオンたちを退けた。
 故に、これが好機。
 だが、章には、そんな意識すらない。
 ただ目の前の存在が許せない。存在しているという事実すら唾棄すべきものであったから。
 だからこそ、彼の速度は上がる。
 限界を超えているというのならばそうだろう。

「とどめはふさわしい人に譲るよ。ぼくはきみに相応の罰を与えに来ただけだ」
 痛みを痛みとして認識できるように。
 青い熾火が見せた人の祈りがパッセンジャーを真に殺すものであるのならば、それを届かせるために章はメスを振るう。

 章という外殻は、閉じゆく。
 隠されるべきもの。隠すべきもの。パッセンジャーの激情は、その瞳を見ればわかる。虚無しかなかった感情に立つさざなみを見やり、章は最後の一撃を持ってパッセンジャーの喉元を切り裂くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・律
いや、アンタが死んで全てが終わりってことにはならないぞ?例えアンタが死んでも、アンタが数多くの命の生きる意味を奪った罪は消えない。

俺はアンタが犠牲にした誇り高き命を幾つか見てきた。知らないとは言わせないぞ?

まずは攻撃に耐えねばならないか。【空中機動】【空中戦】【残像】【見切り】で兵器の攻撃を回避、回避しきれなかった分は【オーラ防御】でダメージを軽減。

後は全力のライトニングフォーミュラ!!【集中】でしっかり狙って、体内の生体電流をフル稼働させて全力で撃ち抜く。

俺は守れなくて一度死んだからな!!取りこぼす命がある事は身に染みて良く分かってるさ!!でも自分の願いの為に命を蹂躙するのは許せない!!



 振り抜かれた一撃が屍人帝国『オーデュボン』の『皇帝』パッセンジャーの喉元を切り裂く。
 溢れる血潮の色を赤。
 鮮烈なる赤色であった。猟兵とは入れ替わり立ち代わり戦う者たちである。個としての力はオブリビオンに叶うべくもない。
 強大な力をもとったオブリビオンと、これまで猟兵たちは戦い、これを制してきた。
 その要因が繋ぐ戦いである。
「俺が終わることが俺の望み。それで全てが終わる」
 喉の傷はふさがっていく。
 けれど、その速度は全盛のそれよりも確実に遅くなっていた。

「いや、アンタが死んで全てが終わりってことにはならないぞ? 例えアンタが死んでも、アンタが数多くの生命の生きる意味を奪った罪は消えない」
 真宮・律(黄昏の雷鳴・f38364)は放たれる魔導砲撃の一撃を躱す。
 熱線の如き膨大な砲撃の熱量はそれだけで律の体を焼くだろう。残像残す速度で空を駆け抜けてもなお、これである。
 どれだけパッセンジャーが強大な存在であるのかわかるだろう。
 オーラの防御すら砕いてくるのだ。
「罪なき者がこの世に存在しているのか? 人は生まれながらにして罪を負っているというのに。そして、生命奪わぬ生命など何処にある。アンタの言うところの罪とは結局の所なんだというのだ」
 パッセンジャーの言葉に律は応えるだろう。

 見てきたのだ。
 多くの惨禍を。屍人帝国が齎す今を生きる人々に仇為す行いの尽くを。
「俺はアンタが犠牲にしてきた誇り高き生命を幾つか見てきた。知らないとは言わせないぞ?」
「知らない。知る必要もない。アンタにとって、それは知る必要のあることなのかもしれないが、俺にとっては重要ではない。誇り高ければ生かし、誇りなければ生かさずというのか?」
 それで、一体何が守れるというのだとパッセンジャーの放った光条より魔導ドローンが飛ぶ。
 空中にありては律を取り囲む。
 砲撃が飛び交い、追い込まれていく律。けれど、彼の瞳に在るのは絶望ではなかった。ユーベルコードの輝きが満ちている。

 己の肉体に流れる生体電流が溢れ出るように満ちていく。
 これまで敵の攻撃を躱すことに徹していたのは、己の中に満ちる生体電流を溜め込むためであったのだ。
 集中する。
 全てを撃ち抜く。
 目の前の敵を穿つ。
 ただそれだけのために律は前を見据える。
 誇りで何が守れるのだとパッセンジャーは言った。

「ああ、俺は守れなくて一度死んだからな!!」
 咆哮する。
 それは事実であったし、覆しようのない、否定しようのない現実そのものであった。
 人の手は二本しかない。
 遍くすべてを救うことなど到底できようはずもない。そして、その二本の腕の掌からもこぼれ落ちていくものがある。
 自身が取りこぼしたものの大きさを律は知っている。その重さを知っている。
 だからこそ、目の前の理不尽の権化を見据える。

 あれは理不尽。人の倫理などもちあわせていない。あちらが己たちを生命としてみていないように。
「取りこぼす生命があることは身にしみてよく分かっているさ!! でも、自分の願いのために生命を蹂躙するのは許せない!!」
 迸るはライトニングフォーミュラ。
 刹那の明滅。
 紫電が空中を走り抜ける。目視できぬほどの高速。放たれたホーミングレーザーが空気の壁を撃ち抜く轟音が響いた時、すでのその一撃はパッセンジャーの肉体を貫いていた。

 無限に増加していく雷撃のごときホーミングレーザー。
 それはパッセンジャーの回復力を上回るように、そして律の失ったものへの慟哭を受け止めるように大空を染め上げていくのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

国栖ヶ谷・鈴鹿
◎アドリブ連携OKです

無限吸収を上回る火力、このユーベルコヲドに託すよ!
超弩級艦隊決戦!

ヨナ、きこやん、気術結界陣と受け流しのフィールドを!

……桜の花、気に入ってもらえて良かった……でも……その瞳に宿る赫灼の熾火……ぼくの本気で応えるよ。

特殊弾頭用意!
対機械パルサーミサイル、敵吸収兵器の動作を低下させて、効果発揮後、攻撃機部隊、集中砲火!派手に制圧射撃と行くよ!
敵の足止めをしている間……戦艦群は主砲、副砲をパッセンジャーへ!全ての火力を……撃て!

……『己の闇を恐れよ、されど恐れるな、その力……』

不思議だ……そんな感覚を誰かが囁いたような……。
今はまだ……全てを知る時じゃないか……。



 無限に生命を吸い上げるは『無敵機械』。
 屍人帝国『オーデュボン』の『皇帝』パッセンジャーの強さの源は、それであると言っても過言ではない。
 存在しているだけで生命啜る力。
 その異形たる力の発露は、パッセンジャーの意志では止められない。自身が自死を望んでいたとしても、接続された『無敵機械』はパッセンジャーを生かし続ける。
 例え、他の生命をどれだけ犠牲にしてもだ。
 打ち込まれた雷の如きレーザーを持ってしてもなお、パッセンジャーは健在であった。

 溜め込まれた生命力。
 それがどれほどのものであるかを国栖ヶ谷・鈴鹿(命短し恋せよ乙女・f23254)は理解しただろう。
 無限吸収を上回る火力でなければ、パッセンジャーを倒すことはできない。故に彼女の瞳は輝く。
 眠れる獅子を起こした、あの青い熾火。
 あれは人の祈りだ。
 明日を願う者たちの心をつなぎ、膨れ上がらせたがゆえの力。それによってパッセンジャーの配下であるオブリビオンたちは、生命力のタンクとしての役割を果たせなく成っている。
「なら、このユーベルコヲドに託すよ! 超弩級艦隊決戦・大戦略(ドレッドノヲト・オペレヰシヨン)、発動!!」
 鈴鹿のユーベルコヲドは、かの世界で超弩級戦力と呼ばれた彼女の力の中でも恐らく最大火力。

 生み出されるのは超高度に戦略を組まれた決戦艦隊。
「ヨナ、きこやん、気術結界と受け流しのフィールドを!」
 その言葉と共に展開されるフィールド。一瞬でも、展開が遅ければパッセンジャーの放つ魔導砲の一撃に寄って決戦艦隊は半壊していたことだろう。 
 フィールドも受け流すので精一杯だった。
 まともに受け止めていたら、あの砲撃はフィールドを撃ち抜いていた。
 さらに空を飛ぶ魔導ドローン。
 パッセンジャーの座す大地はすでに幾度目かの崩壊によってずたずたに引き裂かれていた。
 砕かれ、縫い留められ、さらに攻撃に寄って、豊かだった自然は壊れた。けれど、それすらも覆う緑がある。

 パッセンジャーは、草花をこそ生命と見なす。それ以外の全てを生命とみなさない。故に彼は命を守っているのだ。そのつもりなのだ。本人の中では。
 それが歪。
 自然の暴威そのもの。人の倫理など、そもそも持ち合わせていないのだ。
 けれど。

「……桜の花、気に入ってもらえてよかった……でも」
 鈴鹿は見ただろう。
 眠れる獅子そのものであったパッセンジャーの瞳に宿る赫灼の如き熾火。
 それは人の明日を願う青い熾火とは異なる輝き。
 自然の猛威を克服する事ができるのは人の祈りと叡智のみ。故に、パッセンジャーを殺すのは、その青い熾火の源たる人の心。
 一つ一つが小さくとも、繋がり膨れ上がるのならば。

「ぼくの本気で応えるよ」
「それでいい。あの花、さくらの花と同じ様に。散る様もまた美しい、あの花のように。儚くも、ああ、そうか。だから人の夢に寄り添う。人の憂いに寄り添うからこそ」
 パッセンジャーの瞳が見開かれる。
 其処に見た輝きを鈴鹿は受け止め、決戦艦隊から放たれるパルサーミサイルが『無敵機械』を穿つ。
 さらに艦隊は砲撃を加える。艦砲、雷撃、空爆、あらゆる攻撃をもってパッセンジャーに迫る。
 足止めにしかならないだろう。
 けれど、それだけでもいいのだ。こちらは直掩機の支援に寄ってパッセンジャーの位置を正確に把握している。
「それが優しさというのか。俺が持ち得なかったもの。俺が知らなかったもの」

「主砲、副砲をパッセンジャーへ! 全ての火力を……撃て!」
 鈴鹿の号令と共に放たれる砲撃。
 彼女の心にも響く言葉がある。
 不思議な感覚だと思った。誰かが、いつかの何処かで囁いたような、どこかに刻まれたような。
 そんな感覚。
 今はまだ全てを知る時じゃないのかもしれない。
 けれど、鈴鹿は恐れない。

 己の中にある闇は、敵の齎す闇ではない。
 内側にある言葉。
 それはただの言葉でしかない。ならば、恐れることなどないのだ。力がある。瞳に輝くユーベルコヲドがある。
 ならばこそ、鈴鹿は振り下ろした号令と共に放たれる主砲と副砲の砲弾がパッセンジャーへと着弾し、その身を持てる火力でもって焼くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステラさんと】

あ、あのステラさん……?

しなを作ってののじとか、
ヤバさのベクトルがいつもと違う方向に突き抜けてるんですがっ。

こ、これはだいぶ重症ですね。
とはいえー……。

ほらステラさん、いきますよ。
エイルさんの|メイド《犬》として、皇帝さんを倒しから、
あらためて追いかけましょう!
ステラさんの愛がブレなければ、きっとまた会えますから。

はい! やっつけちゃいましょう!!

……ヤバさ助長した感もありますが、ここはいかたないですよね。

『フュンフ』さんの言葉は矛盾しているようで、正しいです。
戦いの先にあるものは、平和でなければいけないんですよ。
それがたとえ理想論だとしても。

だって、その理想を叶えるのが『勇者』の役目ですからね!

ガレオン船に変身したステラさんに乗って、突撃です!

わたしは【ピーターイートン】を演奏して、
魔力での【オーラ防御】で、ステラさんの突撃を援護しますよ!

ジャンプ攻撃の射程圏内に入ったら、全身全霊の【世界調律】(打撃)で、
今度こそ皇帝さんを在るべきところへ還してあげます!


ステラ・タタリクス
【ルクス様と】
『ガン無視萌え』とかしているんじゃなかった!(本気の後悔
新しく現れた方が|V《ヴィー》様とフュンフ様なら
青い熾火が『|絆ぐ者《セラフィム》』の証なら先にいたあの赤い機体は!
|エイル様《主人様》待って行かないで!!

……(地面にのの字いじいじ
えールクス様戦うんですかー?ふて寝しましょうよー
ダメ?はふ

パッセンジャー、異世界からの旅人さん
『戦いに際しては心に平和を』…フュンフ・エイル様の言葉です
己の闇はサイキック…サスナー第一帝国でしたか?
そしてセラフィムの第六世代
いずれもクロムキャバリアの話、ですが
もしかして『憂国学徒兵』にもご縁があったり?

空の世界に留め置かれるのは酷でしょう
虹は大地から空を見上げてこそのもの
ルクス様最終決戦です
アレ、倒しますよ!!

【ガレオンチェンジ】で飛空艇形態へ
【テールム・アルカ】起動でデストロイドリル召喚&セット(装備)
突撃はドリルでって決まってるんです!
【テンペスタース・クリス】行きます!!
突撃するだけの簡単なお仕事です
ルクス様!今度こそ決めてください!



 砲撃がパッセンジャーの体を撃つ。
 圧倒的な火力を持ってしてもなお、パッセンジャーが接続された『無敵機械』は彼を生かす。
 生命力は今だ尽きない。
 そもそもただ存在しているだけで周囲の生命力を吸い上げていくのだ。
 それは猟兵であっても例外ではない。
 放たれる攻撃が重たく鋭いものでなければ、たちまちの内に生命力がそれを上回り復元していく。

 だが、猟兵の攻勢によってパッセンジャーの肉体にある生命力はすり減らされていくのだ。
 そんなパッセンジャーを他所にステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は呆然と空を見上げていた。
 ガン無視という名の塩対応に萌えている場合なんかじゃなかったのである。
 新たに現れた光の渦。
 その先にあったのは紛うことなき、『セラフィム・エイル』。
 ならば、あれはなんだということになる。先程から空に座していた赤い鎧の巨人。あれは彼女の知るものではなかった。
 けれど、あの青い熾火が『|絆ぐ者《セラフィム》』の証であるというのならば。
「|『エイル』様《ご主人様》、待って行かないで!!」

 その叫びは届かない。
 二体の鎧の巨人は|光の渦《サイキックロード》の向こう側へと消えていく。ステラの嗅覚が正しいのならば間違えるわけがない。
 していないのだ、匂いは。
 ならば、あの赤い鎧の巨人の中に『エイル』は存在していない。
 しかしながら、そんなことなどつゆ知らず。ステラはもう地面にののじを描いていじけていた。

「あ、あのステラさん……?」
 しなをつくってのの字を描いている場合ではないとルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)はたじろいだ。
 というか困惑していた。
 ヤバさのベクトルがいつもと違う方向に突き抜けている。
 いや、というか重症である。別の意味でやべー状態である。というか、さっきまで塩対応に喜んでいたのに、ついさっきのあれは堪えるとかよくわかんないなーって思わないでもなかった。
 けれど、まだ戦いは続いているのだ。
『皇帝』パッセンジャーを倒さなければならない。

「ほらステラさん、いきますよ。『エイル』さんの|メイド《犬》として、『皇帝』さんを倒してから、あらためて追いかけましょう!」
「えールクス様戦うんですかー? 不貞寝しましょうよー」
 思った以上にこれはやべー状態である。
 だから、ルクスは最初にやるべきことを決めた。
 戦うのはその後である。彼女はいいですか、とステラの肩を掴む。目を見据える。勇者としてやらなければならないことをしっかりと理解していた。
「ステラさんの愛がブレなければ、きっと会えますから」
 それは未来への展望。
 叶うかどうかじゃあない。叶えるのである。ステラたちはそうしてきたし、ルクスだってそういうものだと思う。

 ならば、どうすべきか。
 不貞寝ダメですか? はふ、とかやってる場合じゃあないのである。
 ルクスの真摯な瞳に彼女はついに頷く。
「わかりました。不貞寝などメイドらしからぬこと」
「はい! やっつけちゃいましょう!!」
 なんかこうヤバさを助長した気がしないでもないが、励ますにはこれしかないのである。愛が時に人を強くするのであればこそ。
 彼女たちは立つ。

「パッセンジャー、異世界からの旅人さん。『戦いに際しては心に平和を』……」
 それはステラにとって特別な言葉であったのかもしれない。
 数多の出会いがあった。
 幾度の別離があった。
 どんなに願っても叶わぬものがある。人の営みが見せるのは祈り。青い熾火は、そうした人々の願いが祈りと成って昇華したもの。
 明日を願う者たちが居る限り尽きることのない篝火。
「今は意味在る言葉だ。だが、それはただの言葉でしかない。俺はそれを知っている」
 光の檻がパッセンジャーから放たれる。
 それをステラは飛空艇へと変形し、ルクスを乗せて逃れる。

 先程までの勢いがない。
 だが、次々と生み出される檻が二人を囚えようと空に、大地に迫る。
「空の世界に留め置かれるのは酷でしょう」
 ステラは知る。
 世界は多く存在している。その世界の何処にでもオブリビオンの脅威はある。時が過去を排出して進むように、多くの時が前に進んでいく。
 その中で取り残される者もいれば、異なる世界に飛ぶ者もいる。
 いずれもが己の意志では為すことのできぬこと。唯一できるのは猟兵のみ。
 故に、オブリビオンの中には世界を渡ることを望む者もいる。

「アンタたちにはわからないさ。俺にとって、それはもうすでに決まっていることだ。すでに過去になったことだ。俺自身が過去そのもの。アンタたちは、それを歪んだというのだろうが」
 激情が、パッセンジャーの瞳を虹色に輝かせる。
 青い熾火が人の祈りであるというのならば、パッセンジャーは自然の猛威そのもの。
 理不尽の体現者。
「その虹は大地から空を見上げてこそのもの」
 ステラは飛ぶ。光の檻を躱しながら、高く、高く飛ぶ。

「『戦いに際しては心に平和』を……その言葉は矛盾しているようで、正しいです」
 ステラは虹色の輝き放つパッセンジャーの瞳を見つめる。
 戦いの先にあるのものは、平和でなければならない。
 そうであってほしいという願望であったのかもしれない。けれど、それを人は理想論だという。時には偽善であると呼ぶだろう。
 けれど、それでも。
「飽くなき理想を求めるか」
「だって、その理想を叶えるのが『勇者』の役目ですからね!」
 クラリネットの音が響く。

 ステラの飛空艇としての体が風の盾を纏う。
 近づけば近づくほどにパッセンジャーの『無敵機械』によって生命が吸われる。だが、それを上回るしかない。
 これまでの猟兵たちの戦いで消耗しているはずなのだ。
 ならばためらうことはできない。
 己の船体の船首に突撃衝角が出現する。
「突っ込むか」
「突撃はドリルでって、決まってるんです! テンペスタース・クリス、行きます!!」
 激突する『無敵機械』と突撃衝角。
 火花が散る。同時にステラは己の生命力が座れるのを理解しただろう。復元される。破壊していく後から『無敵機械』の装甲が復元されていくのだ。

 だが、己の甲板上を蹴るようにして走る者がいる。
 飛び込むのは死地。
 わかっている。けれど、彼女は勇気を持っている。勇士と呼ぶのではない。勇者と呼ぶのだからこそ。
「ルクス様! 今度こそ決めてください!」
 その声を背にルクスは走る。
 瞳に輝くのはユーベルコード。
 煌めく輝きは、虹を越えていく。造られた虹を、その先を見せるように世界調律(セカイチョウリツ)によって生み出された巨大音叉剣の一閃がパッセンジャーに振り下ろされる。
「今度こそ『皇帝』さんを在るべきところへ還してあげます!」
 その一撃は世界を整える。

 刻み込むのではなく。
 元ある形へと戻す一撃。
 輝く世界の光は、虹色を塗りつぶしていく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第三『侵す者』武の天才
一人称:わし 豪快古風
武器:黒燭炎

強力無比、となるとわしであるな。しかし、死にたがりのオブリビオンな…。

早業のダッシュで近づくが…うむ、陰海月が後ろからついてきておるな?
持っておるは…『疾き者』の差し金か。わしがやりやすくするための。

ああ、わしらの信念に何の支障も無い相手とはいえ、少しばかりは憐れな。
だからこそ、UCによる叩きつけをしよう。
こういうときには、全力で向かってこそ、であろう?


陰海月「ぷきゅ!」(自分で作った花束持ってる)
びゅーびゅーおじーちゃん(『疾き者』)が、これだって言ってた!
ぼくだって、親友のご協力守りたいんだ!



 幾度も極大の光が打ち込まれる。
 それはユーベルコードの輝き。猟兵の持てる最大火力を絶えず叩き込む。それが『皇帝』パッセンジャーの持つ力、無限吸収による生命力回復を上回る唯一。
 だが、それでもなお無尽蔵の如き生命の力を発露させる『無敵機械』。
 周囲にある生命の全ては、パッセンジャーを生かすため。
 生命尽きることなどない。
 世界に生命あるかぎりパッセンジャーは回復し続ける。どれだけ傷ついたのだとしても、それでも彼は咆哮する。

 眠れる獅子は、すでに起きた。
 激情は撃鉄を引き起こした。翡翠の瞳は今虹色に輝いている。
「強力無比、となるとわしであるな」
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は、地表くだけ、急速成長した草木でそれらが縫い留められる浮遊大陸を走る。
 後方に突いてくるのは『陰海月』。
 かの手にあるのは花束。そうか、と表層にある一柱『侵す者』は笑う。

『皇帝』パッセンジャーの弱点は『草花や木に当たるような攻撃』をしない、という点にある。
 それだけがパッセンジャーの唯一。
 かの『皇帝』は人を、魔獣を、オブリビオンを、猟兵を、生命として見ていない。彼にとっての生命とは草花だけだ。
 だからこそ、彼は傷つけない。
「しかし、死にたがりのオブリビオンな……」
「ぷきゅ!」
 花束をもつ触腕が『侵す者』の周囲にある。近づくだけでパッセンジャーは生命を啜る異形。
 だからこそ、攻撃させない。
 現にパッセンジャーは攻撃しようとしていない。

 束ねられた花を目で追っている。
 その美しさに心奪われるようであった。
「ああ、わしらの信念に何の支障も無い相手とは言え、少しばかりは憐れな」
『侵す者』は見た。
 死ねぬオブリビオンが望むは自死。
 自分たちはそんなオブリビオンたちに滅ぼされ、こうして悪霊として束ねられた。『陰海月』の持つ花束を見やる。
 色とりどりの花がある。

 自分たちと重ねることもできるだろう。
 束となっているのは自分たち。怨念によって裏付けされた存在。本来なら在りえぬ存在。けれど、今こうして自分たちは力を奮っている。
 ユーベルコードの輝きが満ちる。
 光の檻は自分たちを捉えない。
「憐れか。そうか。アンタたちにはそう見えるのか。俺が。俺は、ただそうあるだけだ。アンタたちの倫理に照らし合わせれば理不尽なのだろうが」
 だからそれがどうしたというのだとパッセンジャーは言う。
 嵐を前に懇願した所で消えるわけがない。
 進路を変えるわけがない。

 ただ嵐は荒ぶのみ。
 故に人の意志は、知恵は、祈りはそれを超え、それを殺しうる。
 それは火のように(シンリャクスルコトヒノゴトク)放たれる。槍の一撃。炎まとう一撃がパッセンジャーを穿つ。
 無敵機械を貫き、その周辺を破壊する。
 大地が砕け、木々が燃えていく。
「例え、嵐を前にしたところで、人は何もできない。俺に対してもそうだ。意味など無い」
「だが、こういうときには全力で向かってこそ、であろう?」
 それが人である。
 無意味であると突きつけられても何かをしないではいられない。
 行動せずには居られないのだ。

 祈ることもそうだ。
 人はそうして超えてきたのだ。
 どれだけ自然の猛威にさらされようとも。
 そうして連綿と紡がれてきた生命がある。だから、こうして今も在るのだ。生命失った怨念であろうとも、それは変わらないのだ。

 炎の槍はパッセンジャーを穿つ。
 殺しうるたった一つを籠めて――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクトリア・ノウェム
空気が変わった……いよいよ本気、って事です?
……上等、です。そっちが嵐だというのなら、それを越え空を行くのが勇士、です…!

エンジェリックドライブ、精霊機関出力上昇、それによって生じた精霊力の障壁でオーラ防御、
変形したエル・セプスで地面スレスレを高速飛翔して地面の草花を巻き込む先制UCを躊躇させつつ急速接近するです

そのままCファングを噛ませて突撃の勢いを生かしたまま遠心力で振り回して上空にぶん投げる!です!
……確かに空に投げ飛ばせばそっちは攻撃で草花を巻き込まなくなるです。でも、それは、こっちも同じです……!

機関出力限界突破(オーバーロード、ヴィクトリアの背から6枚の光の翼)、
おなかが減るのはこの際度外視です、
相手が空中で態勢を整えUCを本格展開するよりも前に【セラフィック・ブレイカー】……!
地面より飛び立って超高速突撃、速度と機体重量に加えて戦場の全天使核数とそっちの重量分威力上乗せしたエル・セプスの突撃とパンチを何度でも叩き込んでやる、です……!



 光が、炎が『皇帝』パッセンジャーの身を穿つ。
 何度も、何度も穿つ。
 猟兵の持てる最大火力を持って打ち込まれ続ける攻勢。通常のオブリビオンであれば、何度滅ぼすことができただろうか。
 しかし、パッセンジャーは滅びない。
 ただ其処に在るだけで生命を啜る異形は、周囲の生命を吸い上げ続けていた。
 
 これまで吸い上げてきた生命の量。
 それは容易く猟兵最大の一撃を受けてなお復元していく。
「空気が変わった……いよいよ本気、ってことです?」
 ヴィクトリア・ノウェム(はらぺこ空戦天使・f33941)は理解する。
 目の前のオブリビオンは尋常ならざる力を持っている。凄まじき力。放たれる光の檻。それを彼女は地面スレスレで持って飛空艇と共に駆け抜ける。

 すでに大地は猟兵の一撃で地表を砕かれ、さらには急速成長する植物に寄って縫い留められている。
 それも猟兵の一撃で幾度も砕かれる。
 余波だけでもこれである。戦いの激しさがわかるというものだ。だが、草花は戦いなど理解しない。
 どれだけ戦いの風が吹き荒れようとも、我関せずと揺れているばかりである。
「嵐の権化。理不尽の体現者。アンタたちの言葉でどれだけ俺を形作るのだとしても、それすら無意味。嵐に理解はない。嵐に慈悲はない。意志もなければ、アンタたちの倫理も必要ない」
 パッセンジャーはしかし、手を止める。
 そう、『草花や木に当たるような攻撃はしない』のだ。だからこそ、ヴィクトリアはすれすれを飛ぶ。

「……上等、です。そっちが嵐だというのなら、それを越えて空を征くのが勇士、です」
 ヴィクトリアは急速接近する。
 ただそれだけで生命が吸われる。ぐらりと頭が傾くのを感じた。
 けれど、止まらない。
 此処で止まる勇士は誰ひとりとしていない。
 自然の猛威に果敢に立ち向かうからこそ勇士。この大空の世界で人々が生きてこれたのは、自然にひるまぬたくましさがあったからだ。
 
 故に例え敵が嵐であろうとも止まらない。
 放つケルベロスファングがパッセンジャーの『無敵機械』へと食い込む。振り回す。怪力で持って、いや、飛空艇の速度を利用した遠心力で空へと投げ放つのだ。
 エンジェリックドライブも、精霊機関の出力も限界を越えている。
 それで漸くにしてできること。
 踏ん張る隙を与えず、空に投げ放たれたパッセンジャーをヴィクトリアは見る。パッセンジャーの瞳は翡翠から虹色に輝いている。
 眠れる獅子は起きた。
 激情を撃鉄に掛けている。故に、ここからは。

「空を戦場に選ぶんだな。アンタは」
「草花を巻き込まなくなるです。でも、それはこっちも同じです……!」
 ヴィクトリアの瞳が超克に輝く。
 機関が出力の限界、さらにその先へと至る。
 オーバーロード。
 超えていく。越える。昨日までの自分すら超えていくのが人だ。ならば、ヴィクトリアの背は光の翼が噴出するように出現する。
 三対六翼はエンジェリックドライブより発露する過剰エネルギーそのものであったのかもしれない。
 けれど、それは天使核を共鳴させる。

 戦場にある全ての天使核。
 目の前の無敵機械にも存在する。その共鳴に寄って得られるヴィクトリアの力は掛け合わされていく。
 限界など等に超えている。
 だからどうしたというのだ。越えることができる。超越していく。
 ヴィクトリアは己の体内にあるであろうエネルギーの尽くが目減りしていくのを感じたことだろう。
「ならば、超えてみせろ。人の祈りを受けて戦うのが、アンタたちだというのなら」
「エンジェリックドライブ、出力全開……!」
 みなぎるユーベルコードの輝き。
 大地を蹴ったヴィクトリアの体。
 残されるは砕け散った大地。飛ぶ彼女の速度は光を超えていたのかもしれない。

 それほどまでに圧倒的な速度でヴィクトリアは空に投げ飛ばしたパッセンジャーに肉薄する。
 近づけば近づくほどに生命力を吸収される。
 けれど、構わない。
 吸収されるより多く、己の拳を叩き込むだけだ。
「――セラフィック・ブレイカー……!」
 放つ一撃はパッセンジャーの肉体を穿つ。
 一度ではない。
 何度でも。何度でもだ。止まらない。止められるわけがない。外装形態となった彼女の飛空艇『エル・セプス』は出力の赴くままに、吹き荒れるままに嵐の権化を打ち据え続ける。

 空に輝きが明滅する。
 青空を埋めていく虹色。それはパッセンジャーの瞳に輝くものではなく、ヴィクトリアの、勇士の、人の見せる輝きそのものであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…何やら他所で状況が動いているみたいだけど、私の為すべきことに変わりは無い

…お前を討ち果たし、アルカディアの玉座への道を切り開くまでよ

歴戦の戦闘知識と第六感が捉えた殺気から敵の攻撃を先読みして見切りUCを発動
自身に闇精化の肉体改造術式を施して限界突破した闇の魔力を溜め、
敵UCの砲撃を自身の影から敵の影に転移する早業で回避しつつ切り込み、
"告死の呪詛"を纏う大鎌で敵を乱れ撃ちする闇属性項のカウンターを放つ

…|過去の残骸《オブリビオン》である以上、終わりは確実に存在している

…ならば、たとえ無限にエネルギーを吸収して回復するとしても、
問答無用の終焉を与えてやれば良い。例えば、こんな風にね



 空に在るは|光の渦《サイキックロード》。
 二体の赤い鎧の巨人は、猟兵たちの戦いに介入しない。あるのは、ただ人の願いを祈りに昇華し、絆ぐことだけである。
 青い熾火は『オーデュボン』を囲い、オブリビオンたちを近づけさえない。
 囲われた中にあるのは猟兵と『皇帝』パッセンジャーのみ。
 パッセンジャーが自然の猛威そのものであり、嵐の権化であるというのならば、それを殺しうるのは人の祈りと叡智のみ。

 故にリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は己が為すべきことは変わらないと理解する。
 何ら変わりないことだと、彼女はつぶやき走る。
 すでに戦場は猟兵に寄って砕かれ、焼かれ、そしてまた急成長する樹木でもって繋ぎ止められた。
 それすら砕かれてなお、『オーデュボン』は空に浮かぶ。
「……お前を討ち果たし、『アルカディアの玉座』への道を切り拓くまでよ」
「人の祈りが、願いが、アンタたちの背を押すか」
 放たれる光条。
 打ち込まれる魔導砲の一撃がリーヴァルディを狙う。

 リーヴァルディは知覚している。
 殺気。猟兵に対するパッセンジャーの感情は揺らぐことのないものであった。けれど、此度は違う。
 明確な殺意がある。
 眠れる獅子はすでに起きた。
 激情を撃鉄に掛け、引き金を引いたのだ。だからこそ、翡翠の瞳は今虹色に輝いている。
「……私は救世を誓っている。だから」
 負けることは許されない。立ち止まることも許されない。例え、目の前に嵐そのものが立ちふさがるのだとしても、彼女は決して立ち止まらない。

 放たれる魔導砲の一撃を彼女はユーベルコードの輝き満ちる瞳で見つめる。
 当たる、と直感的に理解した瞬間であった。
 光条の中にリーヴァルディの姿が消える。

 光条の後に彼女の姿はない。
「塵一つなく消えたか」
「……いいえ」
 その声はパッセンジャーの眼前に在る。リーヴァルディの瞳が虹色と相対する。肉薄している。
 それは、吸血鬼狩りの業・告死の型(カーライル)。
 彼女は闇と完全に同化することによって闇から闇へと転移する。

 空に陽光ありて、天頂。
 落ちる影はパッセンジャーの眼前。
 ならばこそ、彼女は魔導砲の光条を受けて自身の背にある影に飛び込み、パッセンジャーの眼前に一瞬で迫ったのだ。
「……さあ、おとなしく運命を受け入れなさい。滅びの運命」
 迫る魔導ドローンを一瞬で大鎌が切り裂く。
「運命だと?」
「……|過去の残骸《オブリビオン》である以上、終わりは確実に存在している」
 例え、嵐であろうとも。
 どんなものにも終わりは在るのだ。

 空に青空があるように。空に夕焼けがあるように。空に朝焼けが訪れるように。
 めぐる生命。
 故に。
「……ならば、例え無限にエネルギーを吸収して回復するとしても」
 振るう大鎌の斬撃が『無敵機械』の腕部を切り裂く。
 一撃目を凌がれた。
 けれど、構わなかった。
 ただの一撃でもパッセンジャーは理解した。これは生命を問答無用に削る斬撃。故に死の四連撃。
 更に振るわれる一撃がパッセンジャーの肉体を袈裟懸けに切り裂き、さらに続く一撃が十字傷を刻む。

 そして最後の一撃を彼は見ただろう。
「……問答無用の終焉を与えてやれば良い。例えばこんな風にね」
 最後の一撃が復元された『無敵機械』の腕によって防がれる。いや、それさえも無意味。腕ごとパッセンジャーを斬り伏せリーヴァルディは飛ぶ。
 大空の世界に舞う。
 闇から闇に。

 彼女の斬撃は実にパッセンジャーが有する生命力の総量を4分の1にまで削り切るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
うーむ、しぶとい
そして無限吸収ね
またこりゃ面倒臭い…
なら後はひたすら叩き込むだけかな

君の価値観何て知らないけれども、その価値観を押し付けて他の生命を否定するのは気に食わないな~
けれども無限の命に苦しむのなら、お望み通り滅ぼす手伝いをしてあげよう
それに、その機械は危険だしね

オーバーロード、外装再展開
《RE》IncarnationとBlue Bird抜刀
副腕、鉤爪モードに変更

まずは戦場を『情報収集』
パッセンジャーへ肉薄する為の道筋を付けよう
草花が少しでも生い茂る場所を選んで位置取りして、駆けよう
小賢しいと言われようとも、使える物は何でも使う!
草花や木々を盾に此方の剣が届く範囲まで近づく!

光の檻も草花を巻き込むとあれば出力は出せないはず
『オーラ防御』で全身を覆い無理矢理突破しよう

接近したら副腕で無敵機械の外腕を押さえつけ、手に持つ剣を皇帝に『串刺し』!
そして【断章・機神召喚〈極限熱量〉】起動
機械腕を皇帝の上部に召喚
そしてそのまま剣ごと…落とす!
さあ、巨大質量と蒼炎の合わせ技
どこまで耐えられる?



 しぶとい。 
 それが第一印象であったのかもしれない。
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)は、『皇帝』パッセンジャーの持つ無限吸収の力に舌を巻く。
 ただ其処に在るだけで生命を吸い上げる異形機。
 それがパッセンジャーに接続された『無敵機械』の力。
 どんな傷もたちどころに復元していく。
 故に死ねない。
 故に自死を望む。
 いびつな存在であると言わざるを得ない。同時に嵐の如き理不尽の権化。嵐は人に阿ることをしない。例え、人が嵐を崇拝するのだとしても、そんなものに意味など無い。

「またこりゃ面倒くさい……」
「そういうものだ。俺は。そういう存在だから、そうあるだけだ。意味など無い」
 パッセンジャーの言葉に玲は激高するでもなく、首をかしげる。
 嵐の人の倫理など持ち得る理由などないからだ。
「君の価値観なんて知らないけれども、その価値観を押し付けて他の生命を否定するのは気に食わないかな~」
「言ったはずだ。アンタたちは生命ですらない。俺はアンタたちを生命とみなしていない」
 彼にとっての生命とは草花だけ。
 人も魔獣もオブリビオンも猟兵も須らく生命とみなしていない。

 光の檻が玲を囲う。
 だが、その光の檻は即座に消えるだろう。
 なぜなら、彼女の足元に草花があるからだ。小賢しいと言われるかもしれないと玲は思った。けれど、パッセンジャーは何も言わない。そんなことを言う理由など一つもないからだ。
 これは彼が己であるためのたった一つであるからだ。
「けれども無限の生命に苦しむのなら、お望み通り滅ぼす手伝いをしてあげよう」
 走る。
 オーバーロードに寄って、外装が展開される。
 副腕が携えるは鉤爪。
 模造神器たる二刀は彼女の手の内にある。パッセンジャーは後退する。見たからだ。玲が草花茂る道を走っているからだ。

 盾にされている。
 謂わば、それは肉壁と同じであった。少なくともパッセンジャーにとっては。
 けれど、玲たち猟兵にとっては違う。
 使えるものは何でも使う。
「草花を木にしてるんなら、光の檻の出力は出せないでしょ!」
「アンタだけを囲むのなら、アンタだけを殺すのなら、これで十分だ」
 玲が大地を蹴った瞬間、彼女を取り囲む光の檻。
 空中であれば草花を傷つける心配はない。急速に狭まる光の檻。それに触れれば生命が吸われる。

 理解していたことだ。
 けれど、オーバーロードに寄って呼び出された副腕が鉤爪を蒼に輝きながら光の格子を強引に引きちぎる。
 生命が吸われる。
 頭が揺れる。
 視界が霞む。けれど、玲は己のオーラ防護がまるで無意味であることを知る。触れた以上、オーラですらエネルギーとみなして吸われる。砕かれる。

「やっぱり、その機械、危険……だね!」
 無理矢理突破する。
 光の格子は更に迫る。だが、蒼の鉤爪がそれらを切り裂きながら、揺れる視界のまま玲の瞳が輝く。
 対するは虹色。
 翡翠の瞳はもう虹色に染まっている。
 激情がそこにあった。目の前の存在を滅ぼさんとする激情。生命とみなさぬ生命の埒外が、己に迫っている。

 故に、殺す。
 
 理由など無い。
 目の前の存在を殺さなければならない。滅ぼさなければならないと、嵐の権化は本能で理解していた。
『無敵機械』の腕が振るわれる。
 だが、それを光子撒き散らしながら玲の外装の副腕が抑える。互いの腕が軋む音が響き渡る。
「生命の埒外が、生命を語る」
「そのつもりはないってば!」
 放たれる模造神器の刀身がパッセンジャーに突き立てられる。身を焼くは蒼炎。すすられるは生命。
 副腕も、己の両腕も使い果たした。

 もはや手はない。
 近づいただけで生命を吸われるのだ。すでに万策尽きた。
 けれど、最後に残るものがある。
 たった一つ。パッセンジャーには無く、玲にはあるもの。
「偽書・焔神継続起動。断章・機神召喚の章、深層領域閲覧。システム起動……どこまで耐えられる?」
 煌めく瞳はユーベルコードの輝き。
 頭上にあるは、巨大な機械腕。
 即ち、断章・機神召喚〈極限熱量〉(フラグメント・マキナアーム・インフェルノ)。

 蒼の炎が吹き荒れる。
 空に在りて、その色は空よりも濃く。
 そして、炎よりも熱を持つ。人の願いが祈りに昇華するよに。あの青い熾火がそうであるように。
 玲の瞳に輝くは、絶対的な意志。

 振り下ろされる機神の一撃が蒼炎と共にパッセンジャーに落とされ『無敵機械』ごと過去を断ち切るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
…草花だけは愛する…か…無敵機械に乗っていること…死ねない事と関係があるのだろうかね…
…ともあれ…オブリビオンである以上…全ては過去の話…倒すしかない…か…

…木々の間を抜けてパッセンジャーへと接近…
…抹殺形態による攻撃も攻撃方向が限定されていれば障壁を多重に張ることで防ぐことが出来る…
…近づいたら重奏強化術式【エコー】を重ね掛けして強化した【尽きる事なき暴食の大火】を無敵機械とパッセンジャーへと放つとしよう…
…その白い炎は全ての存在を燃料とする…周囲の生命を回復しようとも…
…炎の勢いがそれを上回ればやがては燃え尽きる…
…死が救いかどうかは議論の余地はあるけど…骸の海へと還ると良いよ…



 猟兵たちの果断なる攻勢は続く。
 すでに『皇帝』パッセンジャーの身の内に残る生命力は四分の一を切った。
 此処まで追い込まれることどな、彼には経験のないことであった。
 終わることのない無限。
 その無限にも底がある。否、無限ではなかったことを知るだろう。
 だが、それは恐怖を駆り立てるものではなかった。今だ彼の瞳にあるのは激情のみ。翡翠の瞳は今、撃鉄を起こす虹色の如き感情に支配されている。

「生命の埒外が、俺を此処まで……喜ばしいことであると思うはずなのに、どうしてだろうな。アンタたちをどうしたって俺は生命と見なすことができない」
 ゆえに滅ぼす。
『無敵機械』が形を変えていく。
 ただ殺す。
 殲す。滅ぼす。そのために再生していく。これは生命を啜る形。

 だが、草花だけが戦場にありて揺れている。戦いの余波などかんせずとばかりに揺れている。
「……草花だけは愛する……か……『無敵機械』に乗っていること……死ねないことと関係が在るのだろうかね……」
 生命とみなさぬからだ。
 無敵機械は、人、魔獣、オブリビオン、猟兵、あらゆる生命とエネルギーを吸い上げる。それは生命とみなしているから。
 けれど、草花だけは生命としてみなしていない。
 パッセンジャー自身だけが草花を生命としてみなしているがために、その齟齬が生まれている。

 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は理解しただろう。理解したとて、やることにかわりはない。
 オブリビオンである以上、全ては過去。故に滅ぼすしかないのだ。
 それが猟兵としての彼女の矜持だった。
 彼女は走る。木々の間を抜けて、蒼炎の一撃を受け断ち切られたパッセンジャーへと迫る。

 抹殺形態へと変形したパッセンジャー、『無敵機械』はその体躯を膨れ上がらせていく。
 ただ在るだけで生命を吸い上げていく力は近づけば近づくほどに猟兵であっても生命を吸われる。
 だからこそ、その吸収速度を上回る速度で攻撃を叩き込まなければならない。障壁を幾重にも張り巡らされても、攻撃は防げても生命啜る力だけは防げない。
「だから、無意味だ。アンタたちは。ただ近づくだけで枯れる。それを」
「……そうかもしれない。けれど、お前を滅ぼすのは」
 メンカルの瞳が輝くと同時に周囲に展開されるは重奏強化術式『エコー』。
 魔法陣が幾重にも展開し、その中を走る白い炎があった。

 それは、尽きる事なき暴食の大火(グラトニー・フレイム)。
 如何なる存在も燃料にする白色の炎。
 その性質は『無敵機械』に通じるものがあっただろう。『無敵機械』はあらゆる生命を吸収し続ける。
 だが、その暴食の大火はあらゆるものを燃やして膨れ上がっていく。
「白い、炎……これは、生命すら燃やす……」
「……その白い炎は全ての存在を燃料とする……周囲の生命を吸い上げて回復しようとも……」
 終わることはない。
 いや、終わることがあるのだとすれば、パッセンジャー自身の生命を全て燃やし尽くした時だ。

 燃える勢いは増していく。
 とどまる所をしらない。生命であろうと、有機的なものであろうと、無機物であろうと。
 暴食の大火は全てを燃やす。
「……死が救いかどうかは議論の余地があるけど……」
 メンカルはユーベルコードに輝く瞳で虹色を見る。
 それすら白色は塗りつぶしていく。
 終わりなき無限の如き停滞。
 それが過去の化身の求めるもの。されど、パッセンジャーは己の自死を望んだ。それが彼にとっての救いであったからだろうか。

 それとも。
「……躯の海に還ると良いよ……」
 それは詮無きことであったのかもしれない。メンカルは滅ぼすべきを滅ぼす。世界を巻き込む自死などあってはならない。
 空を囲うあの青い熾火は、今も燃えている。
 あれこそが人の祈り。
 明日を願う心。それだけがパッセンジャーを殺し得るもの。

 故に白色の大火は、轟々と燃え続ける――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクトル・サリヴァン
流石は皇帝しぶとい…というよりこっちが本領かな?
吸収能力は厄介だけども、越える手段はある。
今度こそ引導を渡さないとね!

UC起動、皮膚を金属の装甲に変え更に全身にオーラ纏い生命力吸収に抵抗しつつ挑む。
移動の補助に念動力、高速詠唱での風の魔法および精霊に呼びかけフォローお願い。
草花を踏まないよう注意しつつできるだけその近くを通り、皇帝から見て草花を背にした方向から攻める。
抹殺形態の攻撃は敢えて致命傷避けつつ受けてその衝撃で能力強化、思いっきり殴り返し生命力を奪ってやる。
お互い吸い合ってる状況で敵の急所…生身部分とかを見切り、不意討ちで一気に距離詰めて雷を纏わせた拳叩き込むよ。

※アドリブ絡み等お任せ



「流石は『皇帝』しぶとい……というよりこっちが本領かな?」
 ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)は、白色に燃える『皇帝』パッセンジャーの姿を見る。
 これまで多くの猟兵達が己の持てる最大の火力でもってパッセンジャーを攻撃してきた。
 無限吸収。
『無敵機械』に接続されたパッセンジャーが有する、自死を望む理由そのもの。
 ただ其処に在るだけで生命を啜る異形機。
 その生命力を絶えず超えていかねばならぬという連綿たる戦い。

 その楔となったユーベルコードの輝きが、空を染め上げる。パッセンジャーの瞳にある虹色さえも塗りつぶしていくほどであった。
 だというのに、今だパッセンジャーは立っている。滅びていない。
 恐るべき能力であるといえるだろう。
 だが、ヴィクトルは理解している。越える手段はあるのだ。これまで猟兵達が紡いできたものをつなぎとめるかのように鎹となってヴィクトルの瞳はユーベルコードを輝かせる。

 海王の装甲(オーシャンキング・クロス)は此処に。
 全身を柔軟で衝撃を吸収する金属の皮膚で覆う。
 さらにオーラを纏い、彼は走る。白色の炎は生命を燃やす。絶えず燃やされている。膨大な生命を吸い上げていた『無敵機械』の残量は四分の一をすでに切っている。
 残すは僅か。
 だからこそ、ヴィクトルは畳み掛けるために走るのだ。
 念動力で動きを補助し、さらに高速詠唱で風の魔法、精霊に呼びかけ、さらに走る。
「花を踏まないか」
「そりゃあね。けど、俺の背に花が見えるだろう。だったら!」
 攻勢はない。
 パッセンジャーが『草花や木を傷つけるような攻撃をしない』ことはわかっている。

 だからこそ飛び込む。
 オーラが忽ちに砕け、吸収されていく。
 あまりにも圧倒的な力。だが、勢いがない。消耗しているのだ。
「遅い……! これまでとは違う!」
 彼の背を押すのは風。
 されど、彼を走らせるのは人の願い。それが昇華した祈りが見せる青い熾火。
 パッセンジャーを殺し得るのは、人の祈りと叡智。
 自然そのものたる理不尽の権化を打倒するのはいつだって人の業である。打ち込まれる異形機の拳。
 打ち合う度に衝撃を吸収しきれず、衝撃がヴィクトルの骨身をきしませるだろう。

 だが、ヴィクトルの、海王たる装甲は生命を奪う。
 これは綱引きだ。
 自分の生命を吸い上げられるが先か、それとも此方の拳が奪うのが先か。
「ステゴロっていうのもたまにはね!」
 打ち合う。
 パッセンジャーの生身を打ち据える度に赤い血潮が吐き出される。
 けれど、無敵機械の拳もまたヴィクトルの内側をきしませるだろう。凌ぐ、耐えるではない。
 掴み取るために彼は拳を振るう。

 自死を願う者に明日は来ない。
 永遠ではないから、生命を懸ける者がいる。
 この大空の世界は自然の猛威との戦いの連続だ。逞しくなければ生きて行けず、勇気なければ無為に生命を散らす。
 けれど。
「優しくなければ生きている価値なんてないんだよ。人は、キミに、自然に殺されるかもしれないが」
 負けるようには出来ていないのだというようにヴィクトルは渾身の力を籠めてパッセンジャーへと叩きつける。

 乗り越えていくには勇気がいる。
 知恵も、強靭な肉体もいる。多くを手にとって人は乗り越えていくのだ。何度立ちふさがれようとも、何度屈するのだとしても。
 自分の手足で立って、前を進むからこそ、明日が得られるのだと示すように、その鋼鉄の拳がパッセンジャーを打ち倒すのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
「俺は俺の望みを叶える為に戦い。
お前はお前の望みを叶える為に戦う。
その意味では、俺達の間に大した違いは無いのかも知れない。」
争いが生じる以上互いに相反する望みを抱えている。
そんな当り前の事を思い起し。

「だが、これだけは言っておく。
俺は自分だけの為に誰かを踏み付けにしたりはしない。俺は守るべきものの為に戦う。」
伝わらずとも決意を込める様に呟き。

「だから、
よく見ておけ。これがお前の生命を刈り取る手向けの花だ。」
生命を喰らう漆黒の息吹を発動。
デモニックロッドから闇の魔弾を放ちながら鳳仙花の花びらに変化させ
自身の生命が奪われる前に相手の生命を喰らい尽くさんと花びらを周囲に纏い攻防一体の花吹雪の結界を成して接近。
全ての魔力を鳳仙花に注ぎ込んで無敵機械の一点に集中攻撃し装甲を削り。
そこを足掛かりに相手に攻撃の暇を与えない程に更に生命力を奪い続ける。
「生命を奪うのはお前の専売特許じゃない。冥界の鳳仙花は貪欲だ。
油断してると魂ごと喰らい尽くすぞ。」
言いながらも長期戦は分が悪い事は承知で攻撃を続ける。



 拳の一撃が『皇帝』パッセンジャーの体を打ち上げる。
 白色の炎が身を包み込んでいる。
 命を燃やしている。
 だが、フォルク・リア(黄泉への導・f05375)は見ただろう。
 あの翡翠の瞳に輝く虹色を。
 激情によって引き起こされた撃鉄。
 迸るような感情の嵐を。その一点において、『皇帝』パッセンジャーは自然の権化ではなかった。

 人の明日を願う心が、祈りに昇華するように。
 人の叡智が、自然すら打倒するように。
『皇帝』パッセンジャーという理不尽の権化を打ち倒すもの。殺し得るものは、やはり人の祈りだった。
「俺は俺の望みを叶えるために戦い。お前はお前の望みを叶えるために戦う。その意味では、俺達の間に大した違いは無いのかも知れない」
 告げる言葉は真意であった。
 覆い隠すことも、取り繕うこともない。
 何より、自然の権化たる嵐の体現者を前にして偽ることも取り繕うことも必要などしていなかった。

 争いが生じる以上、互いの相反する望みを抱えている。
 それは当たり前のことだったなとフォルクは想起し、そして頭を振る。
「だが、これだけは言っておく」
 彼にとって、それだけは譲れぬ一線であった。『皇帝』パッセンジャーが、『弱点』としてゆうする『草花や木を傷つける攻撃をしない』ことと同じ様に。
 フォルクにもまたあったのだ。
「俺は自分だけのために誰かを踏みつけにしたりしない。俺は守るべきもののために戦う」
「それは何だ。『守るべきもの』とはなんだ。守らなくていいものもあるというのか」
 伝わらないとフォルクは理解していた。
 けれど、それは決意でしかない。

 人が神に祈るのではなく、誓いを立てるように。
 フォルクはフードの奥の瞳をユーベルコードに輝かせる。だが、その輝きを塗りつぶすように『皇帝』パッセンジャーは『無敵機械』の変貌した殺戮形態となって、彼の体を打ち据える。
 肉体の耐久の限界まで打ちのめされるような痛みがフォルクの全身に走る。
 闇の魔弾を放ち、応戦する。
 けれど、それすらも弾き、また物ともせずにパッセンジャーは迫る。
「やはりアンタたちは滅ぼすべきものだ。俺の前にあるからじゃあない。俺の、中の、全てが、アンタたちを生命と認めていない。生命の埒外。アンタたちこそが」
 己の滅ぼすべき明確な敵意の向かう先だと、パッセンジャーは虹色の輝きを瞳に宿し、激情に駆られる。

「そうだ。結局の所、俺達は猟兵とオブリビオン。滅ぼし、滅ぼされる間柄でしかない。だから、よく見ておけ。これがお前の生命を刈り取る手向けの花だ」
 生命を喰らう漆黒の息吹(イノチヲクラウシッコクノイブキ)が吹き荒れる。
 全ての魔力を注ぎ込んで生まれる冥界の鳳仙花は、その彩りを誇るだろう。

 フォルクは自分の生命が全て奪われる前にと、その力を籠める。
 全ての魔力を籠める。
 鳳仙花。冥界にありて、その様は変わることはない。
 大きく弾けるように種子を飛ばす。
 花弁は舞うように周囲に飛び散るだろう。まるで『触れるな』と言うかのように。
「生命を奪うのはお前の専売特許じゃない。冥界の鳳仙花は貪欲だ。油断していると魂ごと喰らい尽くすぞ」
 人の業。
 この大空の世界に在りてもそうだ。
 人は、奪う。

 命を奪って生きながらえる。
 それは人でなくてもそうだ。自然に在りては、それが当然のこと。奪い、奪われながら己たちの種を存続させる。
 何も奪わぬ生命など無い。
 どんな生命にも奪うという原理はつきまとう。故にフォルクは認めるだろう。

 花弁が『無敵機械』の装甲を一点に削る。
 交差させた異形の腕すら貫く一点突破。全力でフォルクが籠めた魔力はこのためにある。
 長期戦は不利。
 己の生命すら吸い上げて、パッセンジャーは倒れない。
 だからこそ、彼は掛けたのだ。
 触れる者全ての生命を喰らう冥界の花。
「……美しいな。まるで『私に触れるな』と言われているようだ」
 パッセンジャーは、貪欲に己の生命を喰らう花弁に触れる。『触れるな』と言われていると感じながらも手を伸ばすことをやめられない。

 触れ得ぬものだけが美しいのではないことを知っている。
 草花の美しさは、いつだって灰色の如き那由多の時間を慰めてくれた。
 決して癒やすことがないのを知っている。
 フォルクは、その微笑みを見ただろう。鳳仙花の花弁に触れ、笑む。決して人に向けられることのない微笑み。

「……ッ!」
 フォルクは己の魔力の限界を超える。
 超克の先。
 オーバーロードに至りて、見るだろう。『皇帝』パッセンジャーは滅びる。
 生命の一欠片とて残さず、花に己の生命を奪わせる。
 激情に駆られたことも。
 生命を奪い続けたことも。
 何一つ、理由になっていないことも。

 されど、パッセンジャーは最期に笑む。
 己の望みが叶えられたことに微笑んだのではない。

「ああ、やはり美しいな。生命など、この美しさの前では何の役にも立たない」
「だが、その美しさを紡ぎ、知ることができるのもまた生命だ。それをお前は知らなかったんだな」
 フォルクは手向けの花と共に散りゆく者を送る。

 行く先が冥界かどうかはわからない。
 また骸の海に沈むだけなのかもしれない。
 けれど、ただ一つだけ確かなことがある。『皇帝』パッセンジャーの望みを叶えたのは、きっと。

 赫く昌盛する、この世界に生きとし生けるもの全ての明日への願いが結実した熾火なのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年09月21日


挿絵イラスト