アルカディア争奪戦⑲〜絡繰ノイズ
「アルカディア争奪戦、お疲れさま!」
ポノ・エトランゼ(ウルのリコ・f00385)が猟兵たちへと声を掛けた。
佳境へと入ってきた頃合だろうか。激戦が繰り広げられるブルーアルカディアへ、猟兵たちは今日も身を投じていく。
「今回皆さんには皇帝『パッセンジャー』との戦いへ赴いてもらいたいの」
アルカディアの玉座を目指す『六大屍人帝国』のひとつ、オーデュボン。
「ここの指導者である皇帝は自身が死ぬことを目的としていたのだけど、その目的を皆さん――猟兵に阻止されちゃったのね。彼は今、アルカディアの玉座、あるいは他の屍人帝国の皇帝に望みを託しているわけだけど……その願い、私たちの方でも叶えられるわよね?」
自身を殺すこと、それが彼の望みだ。
結局のところパッセンジャーは『勝つ』のかもしれない。
皇帝の勝ち、と、猟兵の勝ち、という道は決して交わることがない。
「……質疑にすらならないわね。私には理解できないんだけど。まあ私たちにできることをやっていきましょう」
気持ちを切り替えるようにポノはパンと手を叩いた。
「皇帝の元へ辿り着くまでに、翼ある魔獣に騎乗した、皇帝親衛隊である強力なオブリビオンの軍団が次々と襲ってくるわ。軍団を排除しないとパッセンジャーの元には辿り着けないの。
でも、眼前に迫る敵ばかりに対処するわけにもいかないのが、戦場よね」
油断大敵。
パッセンジャー自身も自身と繋がる無敵機械を使った先制攻撃を猟兵に向けて放ってくるのだ。
「その攻撃されることを避けるには、パッセンジャーの『隠されていた弱点』が利用できるらしいんだけど……」
誰か知っているかしら? とポノは尋ねる。尋ねながらも、言葉を続けた。
「あとは皇帝親衛隊を倒しながら、パッセンジャーの先制攻撃に対処していくか、ね。戦法としてはどちらもイケると思うから、どう戦っていくのかは皆さんにお任せするわ」
皇帝親衛隊――土壌が、翼ある魔獣を中心とした屈強な屍人帝国だ。軍勢もまた油断はできない。
「皇帝へと近付いて、一撃でも当てれば――きっと皆さんの勝利に繋がっていくわ。あなたひとりじゃないもの。どうか、仲間を信じて戦ってみてね――じゃ、気を付けて」
そう言って、ポノは猟兵たちを送り出すのだった。
ねこあじ
ねこあじです。
皇帝パッセンジャー戦、よろしくお願いします。
プレイングボーナスは、ふたつ。
皇帝親衛隊を倒しつつ、敵の先制攻撃に対処する/敵の『隠されていた弱点』を突いて戦う。こととなっています。
第1章 ボス戦
『『皇帝』パッセンジャー』
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POW : パッセンジャー・ケイジ
レベルm半径内を【急激に狭くなる光の檻】で覆い、[急激に狭くなる光の檻]に触れた敵から【檻を構成するエネルギー】を吸収する。
SPD : パッセンジャー・レイ
着弾点からレベルm半径内を爆破する【魔導砲撃】を放つ。着弾後、範囲内に【攻撃型魔導ドローン】が現れ継続ダメージを与える。
WIZ : インビンシブル・チェンジ
自身の【無敵機械】を【抹殺形態】に変形する。攻撃力・攻撃回数・射程・装甲・移動力のうち、ひとつを5倍、ひとつを半分にする。
イラスト:ふじ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
リアラ・アリルアンナ
別に貴方の勝ちで構いませんよ?
ただし一連の馬鹿げた自殺ショーに世界や無関係な市民を巻き込み、その幸福を脅かした罪は重い!
故に、抹殺する!
周囲の生命力を無限に吸収するというのは厄介ですが、
それが「装置」である以上は付け入る隙があります
ハッキングによるシステム改竄と膨大なデータ攻撃による過負荷で装置を機能不全に陥らせ、可能ならついでに親衛隊や自分自身を撃つように仕向けましょう
一連の作業は周辺の植物を盾とするように行い、うっかり荒らした親衛隊に怒った皇帝が彼らを処してくれればベストですが、
少なくとも攻撃の手が鈍る位は期待できるでしょう
後は残った反逆者に対し、UCを含めた持てる火力を全て叩き込みます
国栖ヶ谷・鈴鹿
◎アドリブ連携OKです
あぶない!
阿穹羅、ワイヤーアンカー射出!
敵を盾にして防いで、きこやん、結界術とオーラ防御で防御陣形成!
ユーベルコヲド、厭穢欣浄パラダヰムシフト!
桜の樹を盾にして展開……アーチのように並木道へ改変して行くよ!
親衛隊は改変による植物の爆発的な成長で、距離をとって逸らして、パッセンジャーとぼくを一対一になるように桜のドームで覆って攻撃を遮断するよ!
パッセンジャーへは、改変で弾丸に植物属性を付与、蔦と花に覆われる植物の弾丸で生命吸収に反撃するよ!
生命吸収が健在なら、最後に改変で、植物以外の吸収を禁止、桜のドームに皇帝への生命吸収を与えて、満開の花を咲かせて終わりにしよう。
四宮・かごめ
※アドリブ連携OK
四宮忍群、ここに見参!
徒花とはいずれ萎み落ちるもの。
しかし待つのも気鬱ゆえ。
皆々様よろしくにんにん。
親衛隊を相手しながら敵将を目指しまする。
魔獣も生物。手裏剣と思わせ煙玉を顔面に叩きつければ、目潰しになるし親衛隊の武器にも弾かれにくいのでは。
敵将が先制攻撃を仕掛けて来たら、UCを発動。怯むと同時に鉈で一撃でござる。
その後はゲリラ戦。敵UCは成り行き任せでござる。
迷宮内では植物を庇うため、射程以外を伸ばし易い筈。
こちらは逃げながら手裏剣で遠距離攻撃を仕掛けたり、手近な竹に攻撃を押し付けたりして翻弄したいところ。
装甲伸ばされたら攻撃が通らないので撤退でござる。
すたこらさっさ
屍人帝国オーデュボン。
ブルーアルカディアの空はどんな大陸があろうとも等しく青く、または赤く、白い雲は時とともに染まりゆく美しい佳景。
その佳景の恩恵をオーデュボンは受けるにふさわしき帝国であった。調えられた美しき庭園。
この空には今、膨大な数のオブリビオン軍団が駆けている。
「皇帝へと仇なす者を排除せよ!」
「お手を煩わせるな!」
魔獣に騎乗した親衛隊は猟兵を発見すると、伝達号令そして鯨波とともに襲撃せんとしていた。
聴力へわんと劈く敵声にリアラ・アリルアンナ(リアライズユアハピネス・f36743)は同じ戦線に立った国栖ヶ谷・鈴鹿(命短し恋せよ|乙女《ハイカラ》さん・f23254)たちと声を掛ける。
「少しの間、時間稼ぎをお願いできますか?」
「ん、わかったよ! ぼくに任せて」
接続された無敵機械により、自動的に周囲のあらゆる生命やエネルギーを吸い上げ、無限に生命力を回復し続ける皇帝パッセンジャーに決定的な一撃を重ねていくには、まず親衛隊をどうにかしなければならない。
敢えて草木ある大陸に立つリアラたちを、パッセンジャーは冴え冴えとした視線で見下ろすだけだ。親衛隊の動きにも注視しているようでもある。
キャバリア――SR-ARX01 阿穹羅に乗った鈴鹿が展開するは、
「ユーベルコヲド、厭穢欣浄パラダヰムシフト! ――ここはぼくの領域、さぁ、君の魂をあるべき姿へ」
祝詞のように、謳うように鈴鹿がユーベルコードを繰れば、ハイカラさん御光が放たれて、ブルーアルカディアの光とはまた違う燦々とした光が大陸に降り注いだ。
それはまるで光のシャワーだ。
柔らかな光のヴェールに紛れて、リアラは低木へと飛び込んだ。……戦場となっているオーデュボンの植物たちが疲弊しているのが分かる。瑞々しい草木は絶えずパッセンジャーへと注がれているのだ。
「幸福ではありませんね」
そっとリアラは呟いて、葉から枝、土と大地、大陸を構築している機械回路へと意識を向けた。バーチャルキャラクターであるリアラは電子の精霊として、無敵機械の駆動音……否、旋律を割り出していく。
「然らば、露払いはお任せにんにん」
鈴鹿の力が近辺の草木に渡り始めた頃、伸びた樹木を台にして跳躍する四宮・かごめ(たけのこ忍者・f12455)。
皇帝親衛隊は皇帝の意を汲んでもいるのだろう。鈴鹿の創りだす並木に一時的後退をしていたが、虚空へと現れたかごめを発見するや否や、かごめが目的のバーゲンセールであるかのように詰め寄ろうとしている。
「ようやく出てきたか猟兵! 正々堂々と、勝負!」
「…………」
親衛隊の熱き請う宣言に、しかしかごめは乗らなかった。かわりに彼らが乗る魔獣たちの顔面向かって煙玉を投げつければ、着弾と同時に視界を覆う煙。
煙幕に悲鳴をあげたのは魔獣たちだ。魔獣も急には止まれない。終着としていたかごめが場を離脱すれば、後に続くのは当然、重々しい肉がぶつかりあう事故の音。親衛隊の悲鳴。
「忍法四宮流・逢犬術」
新たな襲撃者を踏み台にして、皇帝に向かって果敢に進んでいくかごめ。
パッセンジャーは儚き容貌にどこか皮肉げな笑みを浮かべた。
「俺のための死神として推挙してやろうか?」
そう言って放たれたのは鉄矢だ。抹殺形態となった無敵機械から絶え間なく放たれる矢が空を裂き、耳を劈く音と共に飛来する。大陸を刹那に影で染め上げた。
「……、徒花とはいずれ萎み落ちるもの」
かごめのかわらぬ表情、淡々とした声は「お断り」という言葉が潜んでいる。
「忍法四宮流・大竹林峠」
発現されたユーベルコードは、一瞬にして場を竹林の青々とした景色へと塗り替えた。身を屈めかごめが密集する竹林へと飛びこめば、連打する破竹音。
一方。
パッセンジャーの纏う無敵機械の隙間から細く延びるは柔らかな淡竹。
「――!」
芳しい竹たちが無機質な皇帝の身体へと何事かを訴えているのか――彼が怯んだ隙を、かごめは逃さなかった。
腰の飄風鉈を抜き様一刀。生身と思わしき皇帝の胴を逆袈裟に振り切って、対峙は一瞬に留め駆け去る。竹林の迷宮。そこはかごめの身を隠し、皇帝の動きを阻害する戦場と化していた。
(「茂林修竹は戦乱の陰にして寂滅、四宮流が一大秘奥これが籠目の竹林陣」)
まさしく籠目。竹林に交差するかのように、今や鈴鹿の桜並木が皇帝の座する場へと到達しようとしていた。
屍人帝国オーデュボンに和の庭園が構築される。
戦の風吹けば、竹の葉が桜花弁を絡めるようにくるくると舞い落ちていく。
「ああ、美しき、儚いものだ。如何に絢爛と咲こうとも、俺が在れば俺のための糧となってしまう。……植生の淘汰は俺の願いではない。俺の願いは俺が死ぬこと」
パッセンジャーの裂かれた生身。かごめの手裏剣が複数放たれるなか、後半は弾く金属音。無敵機械がパッセンジャーを覆い、厚き装甲となっていた。
竹林、桜並木の光景に怯んだ皇帝に、されど無敵機械は抗うように明滅した。
「さあ、猟兵たちよ、俺に勝ちを与えてくれ。ともすればアンタ等の勝ちだ」
「別に貴方の勝ちで構いませんよ?」
颯爽と、朗らかに返答したのはリアラだった。無敵機械へとアクセスしながら膨大なデータを放ち続け、侵入を試みている。和の風景に皇帝の防衛力も緩んでいるのか、少しずつリアラの電子が侵食していく。
ただしですねぇ、と続けるリアラ。
「一連の馬鹿げた自殺ショーに世界や無関係な市民を巻き込み、その幸福を脅かした罪は重い! 故に、抹殺する!」
鈴鹿の光――理想世界を再構築し続ける桜吹雪に、ほんの少し、ジャミングを混ぜてもらって。今なお成長する桜並木は親衛隊をも囲うドームになっていた。
リアラにハッキングされ機械騎兵が崩れ落ちた瞬間、彼女は告げる。
「市民の幸福をおびやかす反逆者に裁きを!」
掲げた手のひらから断罪の雷が放たれればそこは春嵐。断罪の雷霆が轟き駆け抜けていく。
世界を灼くような衝撃が敵すべてを貫き、追光が駆けていく――その正体は阿穹羅だ。
射出したワイヤーアンカーで敵を捉え、初動にして持続する瞬発力を得ての接敵。しなやかな駆動は竹と桜の並木を抜けていき、最初から彼我の距離など無かったかのように皇帝パッセンジャーへと肉迫した。その肩にはかごめが乗っている。
皇帝への斬撃。一閃する鉈から光条の如き鋭風が放たれ、同時に外の親衛隊を吹き飛ばす一手ののち、鈴鹿は死角寄り必中の間合いへと入った。
阿穹羅の照準には無敵機械を駆動するための基点。
阿穹羅が携行する双式機関銃ナアサテイヤを皇帝へと向けた。
撃ち放つは植物属性の弾丸だ。生命力に満ちた蔦と花に覆われる植物の弾丸が無敵機械を穿ち、縛りあげていくかのように急速に成長していく。
「満開の桜を咲かせてあげるよ、皇帝」
鈴鹿の理想世界改変が注がれていく。
皇帝パッセンジャーが『潤い満ちる』ことはないかもしれない。彼の生命力吸収能力は、常にエネルギーを必要とし枯渇し続けているということ。
桜の満開など夢のまた夢。平時であれば花咲くことなく枯れ木の世界。
故に、鈴鹿の理想世界は刹那の現実。
青き林の桜花見にて、一瞬だけ、皇帝は満ちた笑みを見せた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
真宮・律
望みは自らの死ね・・・詳しく事情を知らないが、それを望む程辛い目に遭ったんだろうな。一度死んだ身で説得力ないと思うが、苦しみを終わらせてやる事が出来る事だろう。
先制攻撃は【空中浮遊】【空中戦】【空中機動】範囲外から外れるように動き周り、【オーラ防御】でダメージを軽減。
【戦闘知識】で攻撃主の位置を探り、【集中】してしっかり狙い、体内に秘められた生体電流をフル動員して、【気絶攻撃】【貫通撃】を併せた全力のライトニングフォーミュラで召喚物ごと巻き込んで攻撃!!
花や植物を攻撃しない性質をつけばいいという話は聞いたが、死を望む程追い詰められてる奴にこれ以上酷な仕打ちはできないんでな。
屍人帝国オーデュボン。
ブルーアルカディアの空はどんな大陸があろうとも等しく青く、または赤く、白い雲は時とともに染まりゆく美しい佳景。
その佳景の恩恵をオーデュボンは受けるにふさわしき帝国であった。調えられた美しき庭園。
だが戦場となり荒れ果てた浮遊大陸にて、真宮・律(黄昏の雷鳴・f38364)はどこか達観した想いを抱いていた。
皇帝の在り方、皇帝の願い、彼を取り巻くものは僅かなズレが生じてまるで螺旋のように交わらぬ運命を律は見出したような、そんな気がした。
「望みは自らの死、ね……」
思考しようとも、皇帝の詳しい事情を律は知らない。だが――、
「それを望む程辛い目に遭ったんだろうな」
魂人である律は一度死んでいる。だがなんの因果か、魂人として時を再び紡ぎ、そして家族の元へと戻った。
律の憂いを識る瞳が皇帝に通じるかは分からない。
「彼が勝ちたいというのなら……苦しみを終わらせたいというのなら……俺たちが叶えてやることはできるだろう」
――皇帝パッセンジャーの弱点は、知っている。
それでも敢えて律は真っ向から勝負を挑むべく駆け始めた。
「勝ちに来い! 猟兵! さすれば俺が勝つことだろう」
皇帝の声が轟くなか、空の圧を踏み込むようにして律は空中へと駆け上がった。漆黒のコートがまるで竜の飛膜のように風を含み、彼の身体を虚空へと押し上げる。
羽撃ち。
「猟兵よ! 覚悟!!」
そう叫び襲撃してくるのは魔獣に騎乗した親衛隊だ。
突撃してきた魔獣へクレプスキュルを叩きこみ、魔獣の首を落とす――そのまま逆袈裟に、甲冑を着込んだ兵へ斬撃が到達した。
柄を回すように握った律は、掛けた遠心、敵甲冑へ喰いこんだ剣身を視点に身を捻った。刹那の空中移動を機に次の敵へ。
その時、パッセンジャーの魔導砲撃が放たれ、敵を咄嗟の土台にして律はさらに跳んだ。皇帝の砲撃を見極めての回避は成功したようで、爆風を背に方向転換する。
爆風に煽られ親衛隊を落としてしまったのだろう、暴れる魔獣に乗りながら律が皇帝へと意識を向ける。
体内に秘められた生体電流を駆動、集束させ――覇気を放った。
光条の如き拡散、剣の如き鋭光、ライトニングフォーミュラは貫く流星であるかのように親衛隊、そして皇帝の生身を貫いた。魔導ドローンが撃墜されていく。
敵数故に広範に及んだ攻撃は、オーデュボンを、無敵機械に覆われた皇帝を骸の海へと寄せていくもの。
――そう、律は皇帝パッセンジャーの弱点を知っているのだ。
なのになぜ、それを彼は利用しなかったのか。
皇帝は花や植物を攻撃しない。それには計り知れないたくさんの理由があるのだろう。
生命力を吸収するとされる皇帝パッセンジャー。望む望まないと、そういう運命に在るオブリビオン。
螺旋のように交わらぬ願いは、律にしてみれば切ないものにも見えて。
(「……。死を望むほど、追い詰められてる奴にこれ以上酷な仕打ちはできないんでな」)
そう思ってしまうのは彼なりの信条、騎士道であるのかもしれない。
成功
🔵🔵🔴
ステラ・タタリクス
オーデュボン皇帝パッセンジャー
親衛隊がいるとは
さすがの求心力というべきか
あるいはそこまで人材がいてなお
望みが叶わないと嘆くべきか
ですが終わりが見えてきたようです
1年に渡る因縁に終止符を打ちましょう!
『|強襲作戦《ファーストアタック》』の際に垣間見た行動
パッセンジャーは『草木や花を傷つける行動をしない』
これはパターンではなく
揺るぎない信念のようなものとみました
ならば突かせてもらいましょう!
【ガレオンチェンジ】で飛空艇形態に
オーデュボンの大地を低空飛行して突撃です
大地に咲く草木や花をパッセンジャーはもちろん親衛隊も攻撃しないはず
肉薄したら足元から急上昇気味の
【テンペスタース・クリス】いきますよ!!
親衛隊の影が空を覆っている。
空はどんな大陸があろうともひとしく青く、または赤く、白い雲は時とともに染まりゆくブルーアルカディアの美しい佳景。この恩恵を屍人帝国オーデュボンは受けるにふさわしき帝国であった。
庭園は植生豊か――だが今は戦場となり荒れ果てた浮遊大陸。そのことをオーデュボン皇帝パッセンジャーは心内で憂いていることだろう――ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)はそう思うのだ。
(「親衛隊についてはさすがの求心力というべきか……あるいはそこまで人材がいてなお、望みが叶わないと嘆くべきか」)
飛空艇の形態をとるステラはオーデュボンの大地に広範の影を落とす。
彼女の飛行に煽られる草花たちは元より生命力が減少しているのだろう。力なく揺れていた。
(「パッセンジャーは『草木や花を傷つける行動をしない』――これはパターンではなく、揺るぎない信念のようなもの」)
ステラの考えは大当たりというもの。
傷付いた大陸をパッセンジャーは時折痛ましく見つめている。
親衛隊は皇帝の意も汲んでいるのだろう。一度はステラの甲板に乗り込んできた親衛隊だったが、ステラが船体を傾けた途端、慌てたように離れていった。
今は人質よろしく大地を低空飛行するステラを囲うようにして警戒している。いざとなれば皇帝の盾にもなる動きだ。
「皇帝パッセンジャー。一年に渡る因縁に終止符を打ちましょう」
「――、どちらにしろ俺が勝つのだ」
パッセンジャーの声が降りてきたその瞬間、ステラは上方向へと急速発進した。我が身の舵は天使核。翼広げたかのように風の盾が展開されての飛翔に推進力が増す。
「今だ!」
「突撃ィ!」
親衛隊が魔獣を駆って突撃してくる。雷気を纏う槍がステラを突こうとするも、ウェントス・スクートゥムの風圧が穂先を明後日方向へと弾く。
風に押し上げられるように飛空艇が面を使った突進。虚空にてパッセンジャーが避けようとするも、突き抜ける風に船首を乗せて。
「皇帝をお守りしろ!!」
親衛隊の激が陣を作ろうとしているが、ステラが生み出す気流が魔獣の動きを阻害する。
「その信念、突かせていただきますよ!!」
馬首を返すが如くの素早い方向転換でパッセンジャーの全身に大きな打撃を与えるのだった。
成功
🔵🔵🔴
クラリス・シドルヴァニス
愛馬エクレールに騎乗して、まずは皇帝親衛隊に挑みます。
蒸気ガントレットを作動させ、《怪力》で手綱をしっかり握って《空中戦》を。エクレールと《動物と話す》能力で心を通わせ、鞭で《鼓舞》して
《切り込み》《ランスチャージ》!パッセンジャーの本陣まで近づいて、彼が抹殺形態に変わったら【ドレスアップ・プリンセス】を発動。
恐らくは魔導砲による射撃がくるわね、《空中機動》で避ける準備をしましょう。彼は草花や木に当たるような攻撃を行わないというけど、何か理由があるのかしら。舞い散る花弁でも効果があるかはわからないけど…
プリンセスハートを彼に飛ばして、愛と聖の属性の《精神攻撃》で
彼の闘争心を低下させてみるわ。
鐙に掛けた足。愛馬エクレールの腹へかかとを添えれば、きちんと伝達を受け取ったエクレールがペガサスの翼を広げ、新たな風を捉えた。
青々とした空のなか、翔けていく白き愛馬はまるでコントレイルのようだ。
平時であればこの佳景に見惚れていたいところだけれども――、今は戦時。警戒の目を走らせて、クラリス・シドルヴァニス(天翔ける騎士・f27359)は僅かに傾き飛行するエクレールの姿勢に添う。
視界には同じく傾いた空と大地。屍人帝国オーデュボンには、ブルーアルカディアの空の恩恵を活かす美しい庭園。その虚空に皇帝パッセンジャーがいる。
「……いきましょう、エクレール」
静かでありながら凛としたクラリスの声に、エクレールはいななき翔ける。蒸気ガントレットを作動し、動きの強くなった馬首を引かぬように気を付けながらクラリスは手綱を握った。
鞭を鳴らせばエクレールの脚は風を切り、どこまでも伸びてゆく軌跡。
「止まれ!」
「陛下には近付けさせぬ!!」
親衛隊が槍を振るえば、横撃ちの稲妻が。
親衛隊が剣を振るえば、空が凍え雲が発生した。
それは刹那に襲い来る障害の数々――クラリスが前傾姿勢をとれば、エクレールが跳ねる。
襲い来る魔獣たちを十分に引きつけて。
エクレールが馬首を上げると同時にクラリスが手綱に力を込めれば、愛馬は急上昇して鷹の如き弧を空に描いた。
人馬の後方では急停止できなかった魔獣たちがぶつかりあう音。
やったわね!
クラリスとエクレールの歓喜の声が重なり、続けて上機嫌でヒヒンと歌い鳴くエクレール。
魔獣に乗る親衛隊たちを翻弄して突き進む人馬一体。息の合ったコンビネーションにパッセンジャーの本陣が眼前にと迫る。
「来たか、新たな猟兵。勝ち進め、さすれば俺も勝利をおさめるだろう」
クラリスに気付いたパッセンジャーの無敵機械が滑らかに動き、抹殺形態となった。エクレールより下方向へと降下したパッセンジャーが放つ魔導砲撃。砲撃数は多く、だが小さなもの。射撃ともとれる光の鏃が数多にクラリスたちに向かって上昇してくる。
そこには蒸気巻き上げ式ドレスから豪華絢爛なドレスへとドレスアップしたクラリスの姿。エクレールが右に左にと、相手の照準に揺さぶりを掛ければドレスの裾がひらりとたなびく。美しき紗が空の青を映しこんでいた。
そうしてパッセンジャーへと降り始めるのは艶やかな花びら。
「……!」
パッセンジャーが息を呑み、攻撃を停止した。
無敵機械の小さな翼たちを動かして、まるで空へ送るように花びらを散らそうとしている。
「――、皇帝。あなたは草花や木に当たるような攻撃を行わないと聞いたのだけれど、何か理由があるのかしら」
風に影響されないプリンセスハートを花びらのように飛ばしながらクラリスは問う。
「俺が在れば、花を咲かせることなく生命力が尽きて散ってしまう」
陽射しにあたってすくすくと育つ草木も、容易く皇帝の持つ生命力吸収の能力の糧となってしまう。
皇帝の瞳に宿るのは憐憫だろうか――。
「そう……。美しいものが喪われゆく景色はもの悲しさを感じるものね」
クラリスの言葉は憐みによるものだろうか――。
愛と聖なる力が宿るクラリスのプリンセスハートは、フラワーシャワーの如く。
皇帝パッセンジャーへと柔らかく落ちていって、彼の力、闘争心を削いでいくのであった。
大成功
🔵🔵🔵
箒星・仄々
他のオブリビオンさんも
心では海での安らぎを
望んでいるのでしょうか
ポノさんの仰る通り
私たちが叶えましょう
私も植物さんのことは大好きです
花咲く高原にて迎え撃ちます
…生きている植物さんを盾にするのは
猟兵として
余り誉められたことではありませんが…
もし砲撃が来たら
魔力の流れを毛皮とお髭で察知し直撃を避け
にゃんぱらりっと爆風に乗って跳んで距離をとりつつ
くるくるっと回転っしながらドローン攻撃を回避し草影に潜みます
先制をいなしましたら
影から召喚したランさんに騎乗
花びらを散らしながら宙へ躍り出ます
親衛隊さんを
摩擦減の超速で突破したり
すれ違いざまペロして
翼の空気抵抗を奪い飛べなくしたり
武装をすっぽ抜けたりさせます
そして皇帝さんもペロして
無敵機械の摩擦を奪ってバラバラに
…辛かったですね
もう大丈夫です
終幕
鎮魂の調べ
どうか海で静かな眠りを
皇帝パッセンジャーの望みは自分自身が死ぬこと。
(「仰る通り、私たちで叶えてあげられる望みですね」)
この大陸へと案内された際の言葉を思い出し、箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)はブルーアルカディアに進撃する屍人帝国オーデュボンの大陸を見渡した。
戦場となった大地はすっかり荒れ果てていたものの、オーデュボンの叡智が練られたと思わしき皇帝の庭園。けれども仄々が知る本来の美しく強い草木たちは、この地では儚げな印象だ。
「無敵機械の皇帝パッセンジャー……無限に生命力を吸収しているとも聞きましたが……」
『俺を殺す事』
そう言ったパッセンジャーの真意は計り知れないが、仄々が自身の心で彼の言葉を感じ取れば、なんとなく彼の気持ちが分かる気がした。
「私も植物さんのことは大好きなのですよ」
遠く、帝国の玉座付近に滞空するパッセンジャーを見上げて呟いた。
(「……生きている植物さんを盾にするのは猟兵として……余り誉められたことではありませんが……」)
仄々の心は騎士そのものだ。けれども強敵へと対峙するためには、手を抜くことはできない。
穂先が枯れた背高の植物群の間を抜けて、仄々は皇帝の近くまで駆けていく。
「くそう! あの小さな猟兵め! 陛下の愛する植物を盾にするとは!」
親衛隊が襲撃しようと飛んでくるが、植物の間に見え隠れしているケットシーの姿に手を出すことはできないようだ。親衛隊は皇帝の意を汲むもの。彼らもまた安易に草木を傷付けることはしなかった。
――とはいえ、そう罵られるたびに仄々の心はずきずきと痛む……。
激が飛んでくるたびにすみません、すみませんと心の中で謝って髭をしおしおっとさせた。
その時。
「あっ」
背高植物の原を突っ切ってしまったのか、仄々の姿はあらわになり、親衛隊の槍が「今だ!」と突いてくる。
「わ、わっ!?」
にゃんぱらりっと猫の滑らかで軽やかな身のこなしで突出した穂先を避けて、「ランさん!」と目旗魚のランさんを召喚する。影からちゃぷんっと跳ねたランさんの背には騎乗する仄々。
「助かりました、ランさん」
くるりと優雅に旋回したランさん。
今だ草木近くにいる仄々に対してパッセンジャーが攻撃を仕掛けてくることはなかった。変わりに、一筋の光。
流れ星のように落ちてきた光は、槍を振るった親衛隊へと落されて弾けた。
ぱちちっとした静電気が仄々の毛並みを逆立たせる。
「――行きましょう!」
仄々の声に呼応し、剣の如き吻を空に向けて飛ぶランさん。
穂先の枯れた実りを撒き散らし、猫の毛にオナモミをくっつけて。植物と思わぬ連携を取る仄々の姿を皇帝はじっと見つめている。細やかな部分に気付かず反応するのは親衛隊だ。
「近付けさせるものか!」
「止めろ!」
上昇する仄々たちに対し、降下してくる親衛隊の勢いは恐ろしいものがあった。ランさんの体にしがみつく仄々――その時、ランさんが回った。ぐるぐると自転して螺旋の如き吻の突きを魔獣へと向ける。
寸前に回避する魔獣だが、ランさんの高速回転の最中に仄々は魔獣から親衛隊へと猫の毛づくろい。ぺろっと舐めてしまえば、摩擦抵抗を極限まで減らされた彼らは滑りに滑って果て無き空へと落ちていった。
「アンタが俺を殺すのか」
「――そうなるのでしょうね」
皮肉げな、何処か安堵さえも感じる皇帝の笑みに、オナモミをつけたままの仄々はにっこり笑顔で応えた。
無敵機械に猫の毛づくろい。
皇帝の近くにいるからか、緑色のオナモミは茶へと変色していく。
複雑に構築された無敵機械。その絡繰同士の繋ぎの駆動が、猫の毛づくろいにより度を過ぎて滑らかとなった。
固く組まれた場所が部分的な異常が起これば、無敵機械全体にエラーが走っていく。
がたり。ごとり。ぼとり。大きな機械が落ちて、小さなものがぽろり、ぽろりと零れてゆく。
それは機械の涙のようにも見えた。
「……辛かったですね。もう大丈夫ですよ」
仄々の声を耳にした皇帝の表情は――、
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(「他のオブリビオンさんも、心では海での安らぎを望んでいるのでしょうか」)
と、思わせるもの。
骸の海へと還る。
それは屍人帝国の延々と続く凋落の、僅かな安寧を辿る時間。
奏でるカッツェンリートの音色がブルーアルカディアの空に渡る。
(「どうか海で静かな眠りを」)
と想い込められる仄々の魔力が、鎮魂の調べにのって、雲海に零れ落ちていくのであった。
大成功
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