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アルカディア争奪戦㉑〜終焉をも打ち砕いて

#ブルーアルカディア #アルカディア争奪戦 #天帝騎士団 #『天帝』冬のアスタルシャ #プレイング受付中

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 『天帝騎士団』。此度の戦いにてアルカディアに手を伸ばす六大屍人帝国の一つであるこの国は今日も絶え間なく雪が降り積もっていた。
「俺の創造した『飛空氷塊アリステラ』が、猟兵と飛空艇艦隊ガレオンフリートに制圧されたか」
 そしてこの国の長である天帝『アスタルシャ』は部下からの報告を受けるとしばし目を瞑る。
「……いや、問題ない。些か迅速ではあるが予知の通りだ」
 そして、既に分かっている様な口ぶりで天帝はハッキリとそう言い切った。
 そう、分かっている様では無く分かっていたのだ。彼は己の未来――悲劇のみを詠む力を持っているから。
「これが吉と出るか凶と出るか……新たな悲劇をの引き金となるかはまだ分からん。だが、やる事は変わらない」
 そして悲劇が来ようともそれを受け入れ、打ち砕く力をも。
「天帝騎士団よ、敵の襲来に備え武装せよ。
 アルカディアを手に入れる。俺達の願いを、誰にも邪魔させるな……!」
 アスタルシャがゆっくりと眼を開き、部下たちへと高らかに宣言する。それとほぼ同時、雪を蹂躙し、地を割らんばかりの咆哮が響き渡った。
 この選択が更なる引き金と成ろうとも。決められた運命だろうとも。そんなものは天帝の、天帝騎士団の|悲願《悲劇の連鎖を断ち切る事》を止める理由にはならない。

 それは絶え間なく降り続ける。
 音を、色を、温もりを――全てを奪う雪が。


「悲劇をも打ち砕く国の王を討ち取らんとする勇士はいるか?」
 そう言いながらエドワード・ベアトリクス(運命の王子様(くま)・f28411)は集まった猟兵へをみやる。
「天帝騎士団。此度のアルカディア争奪戦に参加する六大屍人帝国の一つだな。
 皆の活躍のおかげでつい先ほどこの国へと進むことが可能となった。
 そこで君たちには天帝騎士団を率いる王――正確には天帝『アスタルシャ』の首を取ってきて欲しい」
 天帝『アスタルシャ』。背中に二対の翼を持つ偉丈夫である彼は剣技はもちろんのこと凍気を操り攻撃してくる。
 しかし、彼の特徴はこれだけではないとエドワードは言葉を続ける。
「彼の最大の特徴は『予知能力』だ。と言っても予知できるのは自身に振りかぶる悲劇のみの様だがな」
 だがこの力が戦闘に使われれば話は別だ。現にアスタルシャは己に降りかかる悲劇――つまりは猟兵達の攻撃も先読みして行動してくる。何も考え無しに行動すれば攻撃は見切られ、反撃を喰らうだろう。
「しかし予知できると言っても回避できるとは限らん。もしくは搦手を使い余地を掻い潜るか……どう対処するかは君たちに任せよう。
 何にしても彼はかつての空全てを手にするとまで言われた天空騎士団の長。予知能力なくとも実力は本物だ。決して気を抜くではないぞ」
 説明を終えると、エドワードはグリモアを起動させ猟兵をかの雪が降る王国へと誘う準備を始めたのだった。


遭去

 遭去です。天帝騎士団の天帝『アスタルシャ』戦をお送りいたします。

●戦闘
 天帝騎士団の城の一角での戦闘です。雪が積もり現在進行形で降り続いていますが視界が悪くなるほどではありません。また、障害物と成りそうなものは雪以外ありません。

●プレイングボーナス
『敵の予知能力と先制攻撃に対処する。』を満たすプレイングであれば判定時にボーナスが得られます。

●採用人数
 👑が達成できる4~6人で終了予定。全員採用の保証は出来かねますのでご了承ください。

それでは皆様の熱いプレイングお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『『天帝』冬のアスタルシャ』

POW   :    絶凍剣
【自身の持つ絶凍剣】からレベルmまでの直線上に「神殺しの【天帝の凍気】」を放つ。自身よりレベルが高い敵には2倍ダメージ。
SPD   :    白雪剣舞
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【氷属性の魔法剣】で包囲攻撃する。
WIZ   :    氷獄凍土
戦場全体に【五感を奪う魔の吹雪】を発生させる。敵にはダメージを、味方には【吹雪と共に飛来する幻想武装群】による攻撃力と防御力の強化を与える。

イラスト:仁吉

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 天帝騎士団、王城の一角。今日も変わらずに雪が深々と降り注ぐ。
 いつもと違うのはそこに一人の男が地面に剣を突き立てじっと誰かが来るのを待っている事だろうか。
『……来たか、猟兵』
 雪を踏みしめる音に反応し、男――天帝『冬のアスタルシャ』はゆっくりと瞼を開けた。
 『私はアスタルシャ。我らが願い、我らが悲願を果たすべく私はアルカディアへと至る。お前達にも邪魔はさせない』
 強く、深みのある声で言い切るとアスタルシャは剣を引き抜き、そのっま剣先を猟兵へと向けた。
スミス・ガランティア
……悲劇を打ち砕く、か。
だが、我は悲劇を生まないようにと心がける者の1人だ……だからこそ、立ちはだかろう。この世界の悲劇を回避するために……!!!

先制攻撃は猛吹雪か……なれば、あれが使えるな。【氷結耐性】【寒冷適応】で耐えつつ、【天候操作】で吹雪を逆に操作して我らへの被害を抑えよう。 だが、我は完全には攻撃を避けぬ。

……【コールド・ドレイン】、発動。
吹雪を受ければ受けるほど、我は進む力を得るし、お前達は力を失っていく。だが、それでもお前たちは止まれないだろう?

敵を上回る氷の【全力魔法】を叩きつける……!
その強き願いに、我も相応の力で応えよう……!!




『さぁ行くぞ猟兵達。私は、お前たちという障害を踏み越え、打ち砕く』
 アスタルシャの誓い声に従うように、誰も乗っていない|白いソリ《幻想武装群》が雪を引き連れて上空から現れる。
 ソリの軌道と共に雪が、冷たき風が猟兵へと降り注いでゆく。
「……悲劇を打ち砕く、か」
 雪と冷気に晒されながらスミス・ガランティア(春望む氷雪のおうさま・f17217)がゆるりと呟く。
 悲劇に際見えたのならその悲劇を打ち砕くいていく。アスタルシャの生き方、考え方というのもありなのだろう。
「だが、我は悲劇を生まないようにと心がける者の1人だ……だからこそ、立ちはだかろう」
 持ち前の耐性で寒さに耐えながらスミスが杖を掲げれば空から降る雪がいくらか治まったがそれもほんのわずか。すぐさまそれを埋めるように白きソリが引き連れてきた五感を奪う程の間の吹雪が吹きつけ先とあまり変わらない状況となる。
 だが、スミスの顔に浮かぶ笑みは崩れる事は無い。
 スミスは氷と冷気を司る神であるから。
「こうなる事も、『分かって』いたのだろう?」
 そうして神は力を解放させた。
 ――ユーベルコード『コールド・ドレイン』。それは雪の幻影で自身を覆い、氷属性の攻撃に比例して生命力を得る埒外の力。
 それまで吹き付けていた雪が、風が徐々に治まっていく。それと比例するようにスミスの力は満ち満ちていく。
『もちろんだ。だが私はそれを踏み越えてきたのだ』
 アスタルシャは距離を一気に詰め、手にした大剣を振りかぶる。
『おまえがいくら力を得ようとも、私が悲願を止める事は叶わない!』
「その強き願いに、我も相応の力で応えよう……!!」
 スミスは真っ直ぐに来るアスタルシャを認めると、雪の結晶を象る大杖を構えた。
 天帝騎士団に降りかかる悲劇を壊し進むアスタルシャ。
 世界の悲劇を生まないように猟兵の一人として立ちはだかるスミス。
 二人の曲がらない、曲げられない意志は軌跡と、魔法となりぶつかり合うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

国栖ヶ谷・鈴鹿
◎アドリブ連携OKです

回避出来るとは言っていない……ね。

ユーベルコヲド、厭穢欣浄パラダヰムシフト。

改変内容は限定領域内の真空化。
つまりは酸素を0にすること。

まぁ、種明かしはしないけどね。
真空化することで氷属性も沸点が下がってる影響で威力も落ちるはず……オーラ防御や結界術は展開しておくけどね。

そうなれば、結界術で防いで、攻撃に転じるよ。

鎧を通す弾幕や制圧射撃で動きを封じて行くけど、掠めれば、ネタがわかっちゃうかな?

でも、そうなっても『何処が』『どの厚さで』そうなってるかまではわからないだろう?
見えない罠に囲まれて、どこまでいけるかな?




 冷気による爆発、天帝アスタルシャは煙を引き裂きながら現れる。
 体の一部が凍り付き、天使の羽が数本抜けるなど目に見えるが未だ健全である。
『――おまえと相対した際、我が冷気が中々届かないと予知で詠った』
 男が目の前の少女を認めると、彼の周りに凄まじい冷気を放つ魔法剣を展開する。その数、千本以上はあるだろう。
 遠くからでも分かるその冷気、それはさながら吹雪の中に置いていかれたかのようで。
「いけ」
 命に従い魔法剣は複雑な幾何学模様を描きながら少女へと襲い掛かる!
「回避できるとは言っていない……かぁ」
 天帝は限定的とはいえ自身に降りかかる攻撃を予知することができると言ったグリモア猟兵の言葉を反芻し、国栖ヶ谷・鈴鹿(命短し恋せよ|乙女《ハイカラさん》・f23254)はしばし思案し――やがて手を目の前にかざす。
 瞬間。全ての音が消え失せ、深々と積もっていた雪が霙へと変わっていくではないか。
 飛翔する氷属性の魔法剣から発せられていた冷気もやや収まり鈴鹿はひらりひらりと回避していく。
『――……、、』
 声を発しても聞こえない、聞こえづらい事に何か察したのかアスタルシャは幾何学模様を描きながら飛翔する魔法剣の剣先を全て鈴鹿へと向ける。
(「ネタ晴らしをするつもりは無いけど、分かってるんだろうね」)
 ――ユーベルコード『|厭穢欣浄パラダヰムシフト《プレヰング・ヱデン》』。彼女が発するハイカラさん後光の照らす領域は全て彼女の領域へと変革され、この領域に不要と判断された酸素は姿を消した。
 真空状態になると水の沸点が下がる。富士山の上で水を沸かすと麓で沸かした時より低い温度で沸騰すると言えば分かりやすいだろうか。この効果を活かし氷属性魔法の威力を減衰させることができたのだ。
 さすがのアスタルシャも真空は知っていても、真空状態の空間に閉じ込められることは初めてか。領域展開する前、知らず冷気に頼っていた部分が分からないまま魔法剣を操っているようで。
 その隙を逃がさず鈴鹿は二丁の機関銃を構え、一斉掃射。
 一丁からは無数の弾幕による制圧射撃、もう片方からはかの幻想を纏う鎧をも砕く徹甲弾。
 それらの多くは飛翔する魔法剣に、アスタルシャにより弾かれる。しかし、それらを潜り抜けた数発の弾は確実にかの男を捉え、体に傷を負わせていく!
「見えない罠に囲まれて、どこまでいけるかな?」
 オブリビオンが生きていく上で酸素は生命活動に必要なのか、そこは不明だが少なくとも氷を操るアスタルシャには真空状態は不利な状態であろう。
 だが、かの天帝の顔に焦りはない。むしろ適応していくかのように魔法剣の精度はどんどんと上がっていく。
 鈴鹿は可愛らしく、それでいて少し意地悪に。そんな笑みを浮かべながら空になった愛銃の弾倉を吐き出した。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

七那原・望
第六感で敵と幻想武装群の動きを見切り対処を。

周囲に炎と浄化属性の結界を展開し魔の吹雪を無力化。

幻想武装群は可能な限りオラトリオで奪い、こちら側の武器として利用。奪えなかった分はプレストの武器受けで受け止めてからオラトリオで奪います。

鏡映変性・ウィッシーズミラーを発動したら即座に氷獄凍土発動。

悲劇を予知できても、防ぐ手立てがないならこの吹雪はどうしようもないでしょう?
もうお前は未来を知ることは出来ても現在を知ることは出来ない。

自身の周囲に展開しているものと同様の結界を多数展開。その中にアマービレでねこさんをたくさん呼んだら幻想武装を渡し全力魔法で強化。
みんなで逃げ場がない密度の乱れ撃ちで蹂躙を。




 風が、吹きすさぶ。
 先の猟兵が展開した真空状態の領域の影響からか多少の寒さの威力はやや減ったが、それでも凍てつく風が、霙が目の前に炎の防御壁を張った七那原・望(封印されし果実・f04836)の肢体を無遠慮に撫でつける。
 一方アスタルシャは吹雪と同時に姿を現していた幻想武装――不死鳥の羽で編まれた天衣によって先の戦いで負った傷を癒す。
 形勢はアスタルシャが有利。だが彼の目からは油断はない。
「――」
 現に炎の結界を貼ってなお吹き付ける吹雪の力に切り裂かれても、望はただじっと吹雪の元凶、アスタルシャを目隠しごとに見つめて『時』を待っている。
「あなたは未来を見るあまり、現在を疎かにしているのね」
『――なんだと?』
 ごう、アスタルシャの物とは違う吹雪が辺りの雪を巻き上げる。
 雪煙が晴れ、そこにいたのは白い翼を生やした少女ではない。
 天帝アスタルシャ、その人だ。
 ――ユーベルコード『|鏡映変性・ウィッシーズミラー《リフレクト・ウィッシーズミラー》』。それは彼女が望んだ姿へと変わり、技を行使する埒外の力。
「それを乗り越えるその気概、素晴らしいわ。
 でも現在を疎かにしている。未来が来る前に、そう、今しがた私を討てばよかったのに」
 声は青年男性で、口調は少女。ちぐはぐな印象を纏う男――望は手にした大剣を地面へと穿つと、剣先より吹き荒れるは五感を奪う猛吹雪!
『――っ!』
 アスタルシャが自身が放っていた技を受けている間に、望はタクトを取り出す。
「さぁ、おいで」
 氷獄凍土を展開する傍らタクトを振る。ちりんちりん、と音を鳴らして振るわれれば音に誘われる様に沢山の猫が姿を現す。
「皆で踊ろう?」
 冷気と共に現れた幻想武装――不死鳥の天衣を猫たちに纏わせると、猫たちはにゃあんと一鳴きして体を望へと体を擦り付けた。
 そして猫たちは猟兵達を鼓舞するように戦場を踊るように駆けまわる。

成功 🔵​🔵​🔴​

黒城・魅夜
先制攻撃には呪詛を満たした結界を全周囲に展開
呪詛により魔法剣の魔力を侵食中和してその威力と精度を落としつつ
オーラで防御
さらに早業で鎖を舞わせることにより衝撃を発生させます
衝撃波は結界内で無限に反響を続けその威力を増して
あなたを全方向から襲います
たとえ未来が見えていてもかわせますか?

ほう、凍気で衝撃波を防ぎましたか
お見事です
そして……あなたの打てる手はそこまで
無限衝撃波は当然私自身をも襲い全身から血を噴出させました
「私への悲劇」なのですからあなたには読めなかった
血は霧となり結界内で濃度を増しあなたを包み込んでいます
あなたを体内から引き裂く鎖を導く死の霧がね

では御機嫌よう
なかなかの……喜劇でしたよ




 戦いはまだまだ終わらない。多彩な攻撃により確実にダメージは与えられているが、今だかの男の足取りに迷いは無い。
『――いけ』
 アスタルシャの命に従う様に千を越える魔法剣が宙を舞う。
 踊りに誘うように、冷気を纏った数多の魔法剣が黒を基調とした煽情的な服を纏う、黒城・魅夜(悪夢の滴・f03522)を刺し貫こうと襲い掛かる。
「まぁ、情熱的なお誘いだこと」
 攻撃が来ると分かったや否や。魅夜はすぐさま呪詛を展開し魔法剣の力を奪えば魔法剣は冷気を、スピードをがくりと落とす。
 そこですかさず108本の鎖が振るわれれば、雪を巻き上げながら衝撃波が生まれる。
 無限とも思える衝撃波は主である魅夜を傷つける事も厭わず戦場全てを巻き込んだ。波は降り注ぐ魔法剣を叩き落としていくだけではなく、そのままアスタルシャへと襲い掛かっていく…が。
『――それは既に、視えている』
 男は踏み固められた雪面へと剣を突き立てた。
 凍気が吹きすさび辺りの空気を凍らせながら衝撃波を迎え入れた。凍気は対面から襲い掛かる衝撃波を一つ、また一つ氷が砕ける音を発しながら打ち消していく。
 自傷しながらの捨て身の攻撃はいとも簡単に防がれたかに見えたそれは、魅夜本人の表情によって否を突きつけられた。
「お見事です。そして……あなたの打てる手はそこまで」
『――なんだと?』
 白磁の肌に赤が伝うその姿は、痛々しさの中にどこか妖艶さを纏っていて。そして笑う笑う魅夜にアスタルシャは怪訝そうな顔で問う。
「だって、あなたが視れるのは『自身への悲劇』だけ、でしょう?」
 くすりくすり。女の周り、否、既に戦場の宙を漂う赤は濃度を増していく。
『口ぶりからして自傷によって発動する技か』
 アスタルシャは気付き、一気に距離を詰めようと雪面を蹴るが――もう遅い。
「では御機嫌よう。
 なかなかの……喜劇でしたよ」
 次の瞬間、アスタルシャの内側より数多の鎖が引き裂きながら現れた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヴィクトル・サリヴァン
未来視…抗えば変えられる未来か。
抗う意志は尊重したいけれど、こっちも譲る訳に行かないしね。
…にしても、その未来は星に定められたものなのかな?

先制の吹雪に対しては高速詠唱で水の魔法使用し俺を包む水球を生成、更にオーラ通し防御力高めつつ熱属性魔法で加温。
吹雪の影響で五感鈍らされてるだろうから杖の精霊に語り掛けて術式の補助をお願いしつつUC準備。
…その未来は予測してるだろうから早めに詠唱止めに来るだろう。
攻撃が命中する直前、凍結魔法に切り替え水球を冷却、凍結させ攻撃の軌道をずらし、衝撃でわざと吹き飛ばさせて距離を取る。
凌いだら炎と竜巻合成、方向制御は精霊に任せ全力で叩きつける!

※アドリブ絡み等お任せ




 雪が、霙が吹き付ける中、ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)は水球に身を包まれていた。否、包んでいると言った方が正しいか。
 ヴィクトル自身がを召喚した水球に体を包ませ、凍り付かないように炎の術式を混ぜたその防御法は優れた効果を発揮していた。水中でも呼吸できる体であるためできる技と言えよう。
『厄介な……』
 雪風と共に宙を舞う幻想武装『不死鳥の天衣』の煌めきを持って先の戦いの傷を癒すアスタルシャは独り言ちた。
(「それはこっちのセリフなんだよね……」)
 それに対しヴィクトルは心の中で言葉を返す。
 先の攻撃で腹を裂かれたアスタルシャに追撃しようとしたら猛吹雪によって距離を取られてしまった。ヴィクトルは遠距離攻撃は得意な身とは言え今はこの吹雪を防ぐのに精一杯だ。
(「しかし彼は未来が視えるっていう話だけど……その未来は星に定められたものなのかな?」)
 彼の未来視が未来を知っている者から情報を受け取っているとしたら。それはこの世界からか、神からか。
 いずれにせよ天帝はかの能力にてこれからヴィクトルが仕掛ける技を知っているだろう。
 そして、かの傷が癒えたらば仕掛けてくるはず。
「……精霊君、補助よろしくね」
 ゆえに彼は召喚した一柱の精霊に展開している魔術の補助を頼むと別の術式を組むべく、瞼を閉じ、呼吸を整えた。

 腹から血を流しながらアスタルシャは剣を構えた。
 不死鳥の天衣の煌めきにより多少は治癒されているも不完全に塞がれたそこからは再び地が溢れ出す。
 しかし、彼はそんな事を気にしている場合ではなかった。
 視えたのは目の前のシャチのような男から繰り出される魔法と飲み込まれる自分の姿。これ以上遅くなればかの未来が待ち受ける。
(『貴様の動きは、|詠えて《み》いる――!』)
 そして天帝は血の軌跡を描きながら踏み込み、一閃。
「――!」
 凄まじい風圧と共に繰り出された一撃は水球の壁をあっさりと打ち砕いた!
 水をまき散らしながらヴィクトルの巨体は重さを感じさせない動きで吹き飛ばされる。
 未来を変えた。そうアスタルシャが確信した時、彼は見た。
 ヴィクトルの顔からは勝利を確信する笑みが浮かぶのを!
「未来に抗う意志、それは尊重したいけど……こっちにも譲れない物があるのでね!」
 ヴィクトルが持つ杖が赤と緑の光を輝かせる。
 それと同時、アスタルシャを中心に炎の竜巻が巻き起こり、彼のことごとくを飲み込んでいった。

成功 🔵​🔵​🔴​

御簾森・藍夜
【雨侠】

面倒な役任せやがって
だが受けたからには熟すのみ
俺はただ狙撃手として約束の時までしっかり生き残る
必ず

まず雪を利用して(地形利用)
(乱れ撃ち)(騙し討ち)(誘導弾)(スナイパー)性能フル活用
おっさんが一発でも食らう可能性を減らし、雪に不意打ちで集中を乱し、天帝掠めプレッシャーを

おっさんがドス抜くまで
あれは合図だ

“おっさんがぶっ倒れたら即天帝を撃て”ってな
騙し討ち?違うな、計算と言っていただこう

俺“達”は詰将棋をしにきた
全ての|行為《駒》には意味がある

こんなもん先見が無くとも戦場じゃ罷り通る、だろ?
自分の全部フル活用して必ず撃つ

その不幸の連鎖を風穴開けてやる
星詠みに憑かれたド頭ぶち抜いてな!


ドルデンザ・ガラリエグス
【雨侠】
開戦同時でUCの発動
今回は囮役です派手に生きましょう?

可能性を知ってしまうことの悲劇にたった一人で耐えた|貴方《アスタルシャ》へ敬意を
私なら疾うに――……ああやめましょう、こんな話

純粋に|殺し合い《殴り合い》を
私も貴方も加減をしないのが一番

鎧ごと金鬼手甲で殴打
刃は極力打ち上げ射線逸らすように

貴方もご存じのはずだ、近距離には近距離の戦い方がある
そう、至近距離だからこそ―
足元が疎かですよ、と私が言って不意打ちを喰らった貴方が転びながらも私に刃を突き立てる―
なんて可能性は、視ましたか?
今の気分は踏み込んで思い切り|これ《菊華謐貌》で切り込めば

貴方、私を斬るでしょう?
ねえ藍夜くん、後頼みますよ




 炎の嵐を剣の一薙ぎで切り裂き男――天帝アスタルシャが姿を現す。
 肌の一部が凍てつき、あるいは焼き付き。腹が抉れたその姿は満身創痍。
 しかしかの男が膝をつくことは無い。ここまで多くの犠牲を払ってきた。全てはかの|悲劇の連鎖を断ち切る事《悲願》のため。ゆえに倒れる事は、できない。
 瞬間。飛来した銃弾を弾き、弾丸が如き速さで肉薄してきた男の攻撃を剣で受け止め、押しのける!
「弾いたか」
「はっはっは。手負いとはいえ流石一国の王ですね」
 悔しそうに魔弾の射手、御簾森・藍夜(雨の濫觴・f35359)は言葉を紡ぐ。その一方で肉薄したドルデンザ・ガラリエグス(拳盤・f36930)は強面の顔に浮かべる穏やかな笑みを崩さない。
 さて、とドルデンザは改めて目の前のアスタルシャへと向き直る。
「可能性を知ってしまうことの悲劇にたった一人で耐えた|貴方《アスタルシャ》へ敬意を。私なら疾うに――……」
 例えば至る悲劇に絶望して。
 例えば迎える終焉に憤怒して。
 例えば来る結末に涙して。
 例えば―……
『御託は要らぬ』
「――そうですね。やめましょう、こんな話」
 確定した悲劇を乗り越えた来たアスタルシャに、天帝騎士団にそんな例え話は不要。
 そして――これより始まるはそんな語り合いではない。血が飛び、魂のをぶつけ合う|殺し合い《殴り合い》である。
 ドルデンザは上半身の服を脱ぎ捨てた。彼の背後には菊鬼がしゃ髑髏がけたけたと笑っていた。
 
 ドルデンザの金鬼手甲で殴打された腹部分が湿った音を立てる。
 対する天帝は自身の血が飛び散るのも構わず剣を振り下ろす。
『――っ!』
 ――その直前に無理やり体を捻り後ろへと避ければ正確無比な銃弾が襲い掛かる。
 剣から放たれるは絶対冷凍度の光線を藍夜は回避、ドルデンザは――そのまま攻撃を受けながら男を蹴り上げた!
『しぶといな』
「ふふっ恐縮です――ところで貴方もご存じのはずだ、近距離には近距離の戦い方があるという事を」
 その言葉に天帝は態度に出さず反応する。
 視えたのは目の前の男が自身の足を払い体勢を崩したところを追撃する光景。この時、この時を待っていた。
 体勢を崩された位では自身を止める事はできない。それにはそれ用の技の返し方がある。そう切り返し方を考えていた。
「足元が疎かですよ」
 そしてドルデンザは左足でアスタルシャの足を払――わずにそのまま踏み込んだ。
『なっ――』
「不意打ちを喰らった貴方が転びながらも私に刃を突き立てる――なんて可能性は、視ましたか? 残念、今の気分はこうなのです」
 予知には無かった行動にアスタルシャの動きが一瞬止まるのをドルデンザは見逃さない。そのまま|菊華謐貌《美しき短刀》を抜き、心の臓へ突き立てる!
『――!』
 致命的一撃。だが、それでも、かの騎士団長、天帝アスタルシャは止まらない。
 短刀が突き刺さったままドルデンザの体を突き放すように蹴ると、そのまま凍気を纏う剣でドルデンザを斬り捨てる!
「ははっ、痛い痛い――さて、藍夜君。後は任せましたよ」
 ドルデンザの崩れ落ちた体の先。そこには銃口を向ける藍夜の姿。
 天帝が彼の姿を認めるとほぼ同時に飛来したそれ――青白い炎を纏った絶対冷凍の弾丸がアスタルシャの眉間へと吸い込まれた。


 雪に紛れる様に弾を撃ちながら藍夜が思い浮かべるはグリモアベースでの話。
『藍夜くん、私が倒れたら天帝を撃ってください』
『はぁ?』
『ああ私が倒れるだけじゃ分かりませんか。じゃあこの菊華謐貌を突き立てたらってことで』
『そこに対してのはぁ?じゃないんだが?』

「全くあのオッサンはよぉ……」
 なんて会話をしたのがほんの少し前。
 藍夜は一発の弾を握りしめる。心音を、体温をそして月光の魔力を込め――藍夜の冷静にその時を待った。
 そして、来た。
 ドルデンザが|菊華謐貌を突き立て《合図をした》のを。
 直ぐさま狙撃銃に入っていた通常弾を抜き、先の弾を装填。蔦の紋様が描かれる銃身を真っ直ぐに彼らへと向けた。
「俺は騎士様みたいな試合なんてできないししない。
 俺“達”は詰将棋をしにきたんでね」
 ドルデンザの崩れ落ちた体の先。そこには銃口を向ける藍夜の姿。
「その不幸の連鎖を風穴開けてやる……星詠みに憑かれたド頭ぶち抜いてな!」
 そして標準をかの騎士団長の眉間に定め――引き金を引いた。



 幾重もの悲劇を乗り越え、攻撃に耐え、斬り伏せてきた天帝『アスタルシャ』。だが、遂にその膝を地面につけた。
 顔を起点凍り付いていくのが分かる。そして、もう終わりだと。
(『――思えば遠くまで来たものだ』)
 その顔に浮かぶは多くの犠牲を払ってまでもアルカディアへ到達できなかった悔しさ、何もできずに骸の海へ還る無念。そして……|猟兵《兵》たちと剣を交えれた事への喜びが入り混じる。
 最初の生で志半ばで斃れてからどの位経ったか。あの時を繰り返しても彼岸は達成できず。此度の生も無為に生きてまた骸の海へ還るだけ。
(『だが――良い』)
 どこか満足気に笑みを浮かべた瞬間、氷結部分がどんどんと広がり――氷が全身を包み込んだ。
 天帝アスタルシャ。天帝騎士団のトップにして己に来る運命を知り、乗り越えてきた男。
 その男は雪深き春を迎える事はなく、雪の一部となって消えていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2022年09月29日


挿絵イラスト