アルカディア争奪戦⑲〜熾火は『赤』く昌盛・フオーコ
●オーデュボン
「『戦いに際しては心に平和を』というのならば、これは戦いですらない」
屍人帝国『オーデュボン』の『皇帝』たるパッセンジャーは静かに佇む。
彼の望みは『己自身を殺す事』。
他の屍人帝国が何を望んでいるのかなど知らないし、知ったことではない。己が求めているのは敵だ。
だが、彼は強大すぎた。
恐らく六大屍人帝国のいずれもが、彼を殺すことができただろう。
『アルカディアの玉座』なくとも叶う願いであった。
けれど、それを許さぬものがある。
一点。ただの一点において、彼を殺せぬ理由がある。
己に繋がれた『無敵機械』――あらゆる生命、エネルギーをただ存在するだけで吸い上げ続ける異形の機械。
「『己の闇を恐れよ。されど恐れるな、その力』……今の俺には意味のない言葉だ。ああ、意味がない。俺が此処に在る理由になってない」
「我が主、パッセンジャーにご報告申し上げます」
空より飛来するのは翼在る魔獣を狩る皇帝親衛隊オブリビオン。
皇帝親衛隊と彼らが勝手に名乗っているだけに過ぎず、パッセンジャーは彼らのことを何ら認めていない。
生命と見ていない。
彼らの魔獣が降り立った場所。そこにパッセンジャーは視線を向ける。
「――アンタ」
「ハッ!」
「花を踏んだ」
ただ、その一言であった。パッセンジャーは瞬時に移動すると、皇帝親衛隊オブリビオンの首を掴み上げる。
「花を踏んだ。俺の前で花を踏んだんだ」
「ち、違います! 私は! 貴方様の……! 皇帝親衛隊です! 御身のために……!」
「理由になってない」
己の配下たるオブリビオンすら、パッセンジャーは顧みない。彼の前に立つ者は理不尽に相対しているかのように錯覚しただろう。
生命力を吸い上げられ、崩れていくオブリビオンの姿に皇帝親衛隊オブリビオンたちは恐怖に駆られるように飛散する。
彼らにとってパッセンジャーは嵐そのものであった。
嵐に目的はない。理由はない。善悪などない。
ただ理不尽として存在し続けるのである。
だが、ただ一つ嵐に負けぬものがある。
それは荒野に咲く花のように――。
●赤
|光の渦《サイキックロード》が開かれる。
そこにあったのは赤い鎧の巨人。
知ある者は、それを『セラフィムV』と呼ぶだろう。また、別の者は『セラフィム・エイル』とも呼ぶ。
鋼鉄の巨人たる赤き存在は、その三面たる六対の瞳で『オーデュボン』を見下ろす。
言葉を発することはなかった。
ただ見下ろしていた。
『飛空艇艦隊』に『遺骸兵器』をもたらし、猟兵たちに与したこともあった。だが、そうであるのならば『オーデュボン』は敵である。
けれど、かの赤い鎧の巨人は動かない。
光背を輝かせ、見据えるのだ。
あの『無敵機械』を――。
●アルカディア争奪戦
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。ついに六大屍人帝国『オーデュボン』との先端が開かれました」
ナイアルテはこれまで多くの『オーデュボン』に関連する予知をしてきた。
漸くにして、その戦いに幕を下ろす時がきたのだ。
だが、首魁たる『皇帝』パッセンジャーの力は言うまでもなく強大そのもの。『|強襲作戦《ファーストアタック》』に参加した猟兵達ならば理解できただろう。
『無敵機械』と呼ばれる異形の機械に接続された女人と見紛うほどの美しき存在。
極めて強力な皇帝。
それに加えて皇帝親衛隊たるオブリビオン軍団が翼ある魔獣を駆り、空より猟兵たちに殺到する。
「この皇帝親衛隊をはねのけられなければ、パッセンジャーに攻撃を届かせることなどできません」
さらに悪いことにパッセンジャーは先制攻撃を仕掛けてくる。
猟兵たちは皇帝親衛隊のオブリビオン軍団とパッセンジャーのユーベルコードの両方に対応しなければならないのだ。
「……ですが、先立って『|強襲作戦《ファーストアタック》』に参加した皆さんならば、パッセンジャーの『隠されていた弱点』をご存知かもしれません」
パッセンジャーはある行動を取らない。
まとめられた情報はすでに多くの猟兵達が目を通しているかもしれない。ならば、その弱点を突くことは戦いを有意に運ぶことに役立つだろう。
「パッセンジャーの望みは『自身が死ぬ事』。何故自死を望むのか、私にはわかりません。いえ、誰にも理解できないのかも……」
ナイアルテは自然を尊ぶ。
自ら造られた存在であるからこそ、自然に生み出されたものを愛する。
パッセンジャーもまた同様である。草花を見る瞳は慈しみ、愛に満ちている。けれど、それ以外に対するものには冷淡そのものだ。
いや、冷淡ですらない。
何も感じていない。
己の部下であるオブリビオンたちにでさえ、このブルーアルカディアに生きる人々にも、なんの感情も抱いていない。
草花だけが彼の心を揺らすものであるのならば。
「彼の中には相反するものがいくつかあるのでしょう。そのバランスが崩れているからこそ……」
討たねばならない。
切実なる願いであったとしても――。
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『アルカディア争奪戦』の戦争シナリオとなります。
六大屍人帝国の一つ『オーデュボン』の『皇帝』パッセンジャーとの戦いになります。
ですが、戦場には皇帝親衛隊の強力なオブリビオン軍団が翼ある魔獣に騎乗し上空から皆さんに殺到しています。
これを倒し、攻撃を届かせなければパッセンジャーを倒すことなどできません。
さらにパッセンジャーは皆さんに先制攻撃を仕掛けてきます。
パッセンジャー自身も『無敵機械』に繋がっており、強力なオブリビオンです。
ですが、彼には『隠された弱点』があります。
それを知ることができれば、利用することができるかもしれません。
シナリオタグ『#オーデュボン』で検索していただけると、それがわかるえでしょう。
プレイングボーナス………皇帝親衛隊を倒しつつ、敵の先制攻撃に対処する/敵の『隠されていた弱点』を突いて戦う。
それでは『アルカディア争奪戦』、屍人帝国の野望を打ち砕くべく雲海を進む皆さんの冒険と戦いの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 ボス戦
『『皇帝』パッセンジャー』
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POW : パッセンジャー・ケイジ
レベルm半径内を【急激に狭くなる光の檻】で覆い、[急激に狭くなる光の檻]に触れた敵から【檻を構成するエネルギー】を吸収する。
SPD : パッセンジャー・レイ
着弾点からレベルm半径内を爆破する【魔導砲撃】を放つ。着弾後、範囲内に【攻撃型魔導ドローン】が現れ継続ダメージを与える。
WIZ : インビンシブル・チェンジ
自身の【無敵機械】を【抹殺形態】に変形する。攻撃力・攻撃回数・射程・装甲・移動力のうち、ひとつを5倍、ひとつを半分にする。
イラスト:ふじ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
山吹・慧
彼が草花を愛するのは、
その無慈悲な無敵機械故でしょうか?
孤独である事は理解できますが
……考えても詮無い事ですね。
親衛隊に対しては炸裂弾をばら撒いて
爆発と光の【目潰し】で混乱を誘い突破。
なおも寄ってくる敵は【グラップル】で
捕まえて敵が固まっている箇所にブン投げます。
皇帝の先制攻撃に対しては
「これは僕からの献上品です」
と薔薇の花束を放って隙を作り
【ジャストガード】からの【受け流し】で対応。
先制を凌いだら【聖天覚醒】により真の姿を解放。
飛翔して【残像】を伴う動きと【フェイント】で
攪乱しながら接近戦に持ち込み【功夫】と
【衝撃波】による【乱れ撃ち】を放ちましょう。
その真意を知る為にも勝たねばなりません。
屍人帝国『オーデュボン』の『皇帝』パッセンジャーは自然を愛する。
草花を愛でる瞳は慈愛に満ちていた。
その慈愛を何故他の生命に向けることができないのかと問われたとしても、それに満足の行く答えはきっとでないだろう。
迫りくる自然の驚異を前に人の道徳や倫理を説いた所で意味がないように。
『皇帝』パッセンジャーとはそう云う存在であった。
「彼が草花を愛するのは、その無慈悲な『無敵機械』故でしょうか?」
生命を吸い上げるという『無敵機械』。
ただ存在するだけど、自動的に生命を吸い上げ、どんな傷すらも癒やしていく。
死ぬことができない存在。
故にオブリビオン。
過去の化身たる存在を前に山吹・慧(人間の玄武拳士・f35371)は一定の理解を重ねながらも、それが考えても詮無きことであるのを知るだろう。
迫る皇帝親衛隊のオブリビオンたち。
翼在る魔獣を駆り、己達の『皇帝』を守らんとしている。
いや、本来なら守りなど必要なかったはずだ。だが、それでも『オーデュボン』のオブリビオンたちはそうしなければならないと思っていた。
しなければ、滅ぼされる。
猟兵に滅ぼされるのか、それともパッセンジャーに滅ぼされるのか。
ならば後者ならばまだ生きる道はある。
逆鱗がなんであるかも理解しないまま、怯えて生きるほうがまだマシだと思ったのかも知れない。
「我らが『皇帝』に仇成すものを!」
迫る魔獣を狩る皇帝親衛隊たち。
それに対し、慧は炸裂弾を投げ放ち、凄まじい光と爆発でもって彼らの目を潰す。
「――ッ、光っ、これは……!」
迫る敵を慧は拳でもって混乱する魔獣をかち上げ、その巨体を掴む。
「少しでも数を減らします!」
投げ放つ魔獣の巨体が防御を固めようとした皇帝親衛隊たちに放たれ、まとめて吹き飛ばす。
「意味のないことだ」
だが、そこに瞬時に迫っているのは『無敵機械』。異形なる人型。王冠の如き装飾を戴くが故にかろうじて人型であるとわかるシルエット。
怖気が走るほどの強大な力の塊が慧に迫っていると理解できたのは幸いであった。
振るわれる異形の拳。
その一撃は確実に己を絶命せしめるものであっただろう。
けれど、慧は拳ではなく、その手にしたものを向ける。
攻撃の意思などない。
だが、舞い散る赤い花弁がパッセンジャーの視界を染める。
「これは僕からの献上品です」
慧が差し向けたのは拳でもなければ炸裂弾でもない。
その手にあったのは赤い薔薇の花束。
拳が止まる。異形の機械がきしむように腕を止めたのだ。花が何なのだというのかもしれない。皇帝親衛隊のオブリビオンたちならば、そんなものなど関係なく慧を切り裂いただろう。
けれど、パッセンジャーは違う。
「――」
その美しさに。
赤の鮮烈さに。
茎断ち切られてもなお、今だ瑞々しく輝くような煌めきそのものたる姿に腕を止めたのだ。
魂すら奪われるような時間。
その瞬間に慧は拳を受けながらし、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
「あなたが無敵だというのなら、全てを乗り越えましょう……」
聖天覚醒(セイテンカクセイ)たる真の姿の発露に寄って、闘気が満ちる。
これが逆境であるというのならば、そのとおりであろう。
光の翼が噴出するように飛翔し、慧の姿が薔薇の花束に目を奪われたパッセンジャーの視界から消える。
落ちる花束をパッセンジャーは追う。
異形の腕は、その花束に触れた瞬間、残された生命の残滓すら吸い上げ、薔薇を枯らしていく。
「……その真意がどうであれ。あなたが草花を愛するのならば」
勝たねばならない。
枯れる薔薇を前に隙だらけのパッセンジャーに内kマレル拳や蹴撃は実に一瞬にして数百を超える。
打ち込まれた拳が異形機械を砕き、破片を飛び散らせながらパッセンジャーを大地に叩き落とす。
勝たねばならない。
どんなに目の前のパッセンジャーが孤独であったのだとしても。
望むのならば、それを与えなければならないと慧は己の拳でもって『皇帝』を下すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。
確か『草花、木に当たるような攻撃をしようとしない』のだったかしら?
ならば、|化術肉体改造、リミッター解除、限界突破、封印を解く、オーバーロード《世界樹としての真の姿を解放しよう》。
『幼年期の夢で見た魅惑つきせぬ領域。時間と空間を超越するただ一つの窮極的かつ永遠の“アリス”』
円滑洒脱、|物事をうまく処理する《さてどう料理する》としましょうか。
|多重詠唱結界術《タイムフォールダウン》、|高速詠唱早業先制攻撃《自身を加速し》、|マヒ攻撃、気絶攻撃《敵の時を停滞させる》。
皇帝親衛隊もオブリビオン、ならば【サイキックヴァンパイア式戦闘料理】で食材化できる。そして、食材の中には草花そのものも多い。ならばこれをパッセンジャー・レイへの盾とできる。
そして、我が根は【|『夜』の料理《デモンズキッチン》】。これそのものが捕食器であると同時に調理器具である。根を伸ばし捕縛し突き刺し|大食い、早食い、エネルギー充填《エナジードレイン》よ。
えっちなのうみそおいしいです❤
真の姿を超克の果てに見せるのがオーバーロードであるというのならば、アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の混沌魔術師艶魔王少女・f05202)が見せたのは世界樹としての真の姿であった。
『草花、木にあたるような攻撃をしようとしない』というのが『|強襲作戦《ファーストアタック》』によって得られた情報である。
それを弱点と呼んで良いのかわからない。
けれど、たしかに『皇帝』パッセンジャーは、草花に僅かでも攻撃があたると判断した瞬間、その異形なる『無敵機械』の動きを止める。
きしむ骨身は、どう考えても肉体に負荷をかけるものであった。
けれど、それなど些事。
己の肉体などパッセンジャーにとってはあまり意味のあるものではなかったのだ。
「幼年期の夢で見た魅惑つきせぬ領域。時間と空間を超越する唯一つの窮極かつ永遠の“アリス”……円滑洒脱、|物事をうまく処理する《さてどう料理する》としましょうか」
彼女の言葉にパッセンジャーは興味を惹かれることはなかったようである。
生命力を吸い上げる機械。
それが『無敵機械』の本質である。
生命であれ、エネルギーであれ、あらゆる力を吸収し、己の体を癒やす。
さらに迫るは皇帝親衛隊のオブリビオンたち。
彼らは一斉にアリスに襲いかかる。
だが、空に展開する|多重詠唱結界術《タイムフォールダウン》が、自身を加速させ、敵を停滞させる。
どれだけ皇帝親衛隊のオブリビオンが強大であったのだとしても、彼女にとって彼らは調理の食材でしかない。
「じっくりコトコト料理してあげる♥」
微笑むアリスの手から放たれるユーベルコード。
魔獣とオブリビオンたちが次々と食材という名の塊へと変わっていく。
真の姿。
オーバーロードに至りし猟兵の前に皇帝親衛隊と言えど無力であった。
デモンズキッチンは此処にあり、迫るは満漢全席の如き享楽の宴。
食材そのものに草花を用い、アリスはパッセンジャーに迫る。いや、これ事態が盾であった。
「――……」
パッセンジャーは動かない。
異形の腕はバスターライフルのように砲身を形作っていたが、それは何の意味も持たなかった。
アリスは情報通りだと思ったことだろう。
草花があるのならば攻撃しない。
一切手を出すことをしない。それが『皇帝』パッセンジャーの弱点らしい弱点。
故に彼女は己の世界樹としての姿、その足たる根を走らせる。
「……樹そのものが猟兵……ならば、滅ぼさなければならないな。これは生命。これは人。人の形が変じたもの」
パッセンジャーの瞳が輝く。
放たれようとした光条は、しかして光を失っていく。
「――……!?」
「ええ、それは捕縛するための根。けれど、そのものが捕食器であると同時に調理器具でもあるのよ」
突き立てられた根の先は鋭い針のようであった。
管に絡め取られるように異形機械に繋がれたパッセンジャーの肉体にささる根は、急速に蓄えられたであろう生命力を吸い上げていく。
いや、拮抗している。
共に生命を啜るモノ。
ならばこそ、互いの力が拮抗し、綱引きのように引いては押すかのように膠着状態に陥っている。
けれど、混沌魔術・円転滑脱(ケイオスマジック・バーサティリティ)の本領は手数の多さである。
一撃は軽く、毎秒吸い上げていく生命力すらも『無敵機械』には及ばない。
彼女は時間と空間を超越する唯一つの窮極的かつ永遠の“アリス”。
故に彼女の永遠と無限にも似たものとは根本的に異なるものであった。
「ああ、美味しい♥」
恍惚とした表情。
生命を奪うことに対してなんら感情を動かさないパッセンジャーと、悦びに満ちて生命を啜る彼女とでは決定的に違うものがある。
ただ吸うのではない。
『夜の料理』、サイキックヴァンパイア式戦闘料理、ウォー・アイ・満漢全席!
それらの全てを組み合わせ、あらゆる至高を目指して迫る圧倒的調理は、例え同じ量を吸引するものであったとしても、得られる恍惚、その感情の差こそが上回る。
「えっちなのうみそおいしいです♥」
アリスは、根を振り払ったパッセンジャーを見やり恍惚のままに笑む
無限にも終わりは在る。
そう示すように永遠の象徴たる少女は世界樹そのものとして嫣然一笑するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
アレクサンドル・バジル
何だかんだでオーデュボンとも付き合いが長いねえ。
これで最後かと思うと、ちょっと寂しく……はねえな、別に。
先制&親衛隊対策
親衛隊は魔力の波動(衝撃波×範囲攻撃)で吹っ飛ばし、皇帝の攻撃は見極めて回避。(見切り×第六感×瞬間思考力)
それじゃあ、こっちも行くぜ?
『神魔審判』を発動。親衛隊を消滅させ、皇帝にも継続ダメージを与えつつ、ゴッドハンドの本領発揮の接近戦を。傷は瞬く間に癒えています。
隙が出来るまでじっくり戦って、機会があれば渾身の一撃を。(貫通攻撃×怪力)
ちなみに飛んでます。(空中浮遊×空中戦)UCも草木を傷つけず。
敵の嫌がることをするのが戦いだが……まあ、最期だしねえ。
屍人帝国『オーデュボン』は多くの事件でもって猟兵との接点を持ってきた。
けれど、その全容は知られることはなかった。
『皇帝』たるパッセンジャーの名すら『アルカディア争奪戦』が始まるまで知られてはいなかったのだ。
だから、というわけではないが、アレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)は小さく呟く。
「これで最後かと思うと、ちょっと寂しく……」
はならなねぇな、と彼は迫る皇帝親衛隊のオブリビオンたちを見据える。
敵の先制攻撃も厄介であるが、迫る皇帝親衛隊もまた厄介である。
翼ある魔獣を駆る騎士のごときオブリビオンたち。
だが、パッセンジャー自体にはこれらを己の味方と感じる情けはなかった。ただ周囲を飛んでいるなにかでしかないのだ。
「お邪魔のようだぜ、お前らは」
アレクサンドルの魔力の波動が皇帝親衛隊のオブリビオンたちを吹き飛ばす。
「おおおお――!?」
「俺にとっても、『皇帝』さんにとってもな」
アレクサンドルの拳が皇帝親衛隊のオブリビオンを打ち据え、吹き飛ばす。
だが、そこに飛ぶのは、異形の『無敵機械』の拳。
かろうじて人型であると思える程度の変形。
王冠の如き装飾を戴いているからわかる人型。
「――……羽虫のはアンタもだ」
パッセンジャーの瞳は感情に揺れない。あるのはただ周囲を飛ぶ鬱陶しい羽蟲がどこかへと飛ばされたくらいの感情でしかない。
放たれる異形の拳を見極める。
拳の軌道。
ただ徒に強大な拳を振るっているのではないと理解ることができる。
術理と実利を組み上げたかのような異形機械の拳をアレクサンドルは既の所で躱す。ただそれだけで己の生命力が奪われていくのを感じただろう。
どれだけ見切り、第六感に頼り、瞬間思考で切り抜けるのだとしても接近すれば分が悪いと感じるだろう。
だからこそ、アレクサンドルは瞳をユーベルコードに輝かさえる。
「味方には生を、敵には死をってヤツだ。そうしなきゃな、『皇帝』サンよ!」
神魔審判(テキカミカタデオオチガイ)。
それは周囲に絶大な破壊消滅魔力を解き放つユーベルコード。
走る消滅魔力が周囲の皇帝親衛隊オブリビオンたちを霧消させていく。無論、それを一身に受けるパッセンジャーもまた破壊消滅魔力によって甚大なダメージを被るだろう。
だが、傷は瞬く間に言えていく。
溢れるような無限の如き生命力。
「それじゃあ、こっちも行くぜ?」
アレクサンドルは走る。
破壊消滅魔力はあらゆるものを破壊する。だが、アレクサンドルは草木を傷つけようとはしなかった。
もし、そうしようとしていたのならばパッセンジャーはその『弱点』故に、己の生命力でもって草花を守ったかもしれない。
そうすれば、パッセンジャーはさらなる苦境に陥らされていたことだろう。
「アンタ……」
「敵の嫌がることをするのが戦いだが……まあ、最期だしねえ。なら、思いっきりやるのが、男ってモンだろう!」
放つ拳。
ゴッドハンドたる本領は接近戦。
打ち合う拳と異形の機械。
砕けて散るのは異形の機械の腕。破片が飛び散り、アレクサンドルの拳が砕ける。
だが、強力な再生復元魔力が覆っていく。
共に同じ極地にいる。
ならばこそ、先に隙を見せた者が敗北するのは必定。
「自死を願うやつが首魁ってのはな!」
「それが俺の望みだからだ。俺の生命に意味などない」
放つ拳と拳が激突し、力の奔流を撒き散らす。周囲には誰も近づけないだろう。
それほどの戦い。
彼らは空中にありて戦う。草花を散らすことなく、木々をなぎ倒すことなく。
ただの拳で戦う。
そこに一定のシンパシーはない。あるのは互いを滅ぼさなければならないという本能めいたものだけ。
故に、アレクサンドルの拳は『皇帝』パッセンジャーの頬を打つ。
叩きつけた破壊消滅魔力の一撃が、渾身でもって叩きつけられたのだ。
落ちる『皇帝』を見やり、アレクサンドルは己の拳が砕けたのをみるだろう。それは復元される。
けれど、この戦いが無意味であったとは言わせない。
意味ならばあったのだ。
あの青い熾火を見た。あれこそが人の営み。人の生命など無意味と言った『皇帝』に見せる唯一つの光――。
大成功
🔵🔵🔵
リーヴァルディ・カーライル
…周囲のエネルギーを吸収される以上、長期戦は此方が不利
…ならばいつも通り、有象無象を突破して全力の一撃を叩き込むまでね
乱気流を発生させる「嵐の精霊結晶」を乱れ撃ちして親衛隊の空中機動を乱し、
地面に墜ちた親衛隊を大鎌でなぎ払いつつ陽光を遮る「影精霊装」を纏う吸血鬼化を行い、
敵UCを蝙蝠に変化する肉体改造の早業で光の檻から抜けて人化して切り込みUCを発動
六種の精霊結晶と自身の全ての血の魔力を溜め限界突破した混沌の光波を放ち、
昏光のオーラで防御を無視して対象を消滅させる混沌属性攻撃を行う
…我が手に宿れ、原初の理。全魔解放…ヘプタ・グラマトン
…避けても構わないけど、避けるとお前の背後の木に当たるわよ?
屍人帝国『オーデュボン』の『皇帝』パッセンジャー。
その力の根幹にあるのは接続された『無敵機械』の能力にある。
ただ其処に在るだけで周囲の生命力やエネルギーを吸い上げる力。それによって『皇帝』は『皇帝』足るものであり、恐怖でもってオブリビオンを隷属させる。
彼は何一つ命じることはなかった。
皇帝親衛隊とオブリビオンたちが名乗っているのも、ただ彼の歓心を買うために編成された者たちである。
だが、パッセンジャーにとって、それらは意味のないものであった。
周囲にありし生命と同じ。
否、生命とすら見ていない。
ただの塵芥と同じである。だからこそ、猟兵たちに彼らが討たれたとて何も感じないし、何かを取り繕うこともない。
「最初から俺は俺一人だ。仲間など存在しない。部下など必要としていない」
パッセンジャーの言葉を遮るように『嵐の精霊結晶』によって発生した乱気流が魔獣を駆る皇帝親衛隊のオブリビオンたちを乱す。
「気流が……! 編隊を組み直せ! 我らが『皇帝』を守るのだ!」
彼らの献身すら意味のないことだとリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は理解していた。
長期戦は不向き。
周囲のエネルギーの全てを吸収される医女う、長期戦になることは即ち敗北を示す。
ならばこそ、いつもどおりであると彼女は一気に飛ぶ。
乱気流によって乱された皇帝親衛隊オブリビオンたちを大鎌の一閃で薙ぎ払いつつ、空よりパッセンジャーに迫る。
身にまとうは闇。
陽光を遮る霊装によってリーヴァルディは吸血鬼化を行い、おのれに迫る光の檻を躱す。だが、急速に狭まる光の檻は彼女の速度を持ってしても振り切れない。
「……間に合う……」
彼女の体が蝙蝠へと変わり、一斉に檻の隙まから飛び出す。
再び蝙蝠が集合し人型へと戻れば、彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
「……六色の精霊の息吹と、我が血の魔力を以て、来たれよ混沌」
限定解放・血の混沌(リミテッド・ブラッドカオス)――それは彼女の手にした六種の精霊結晶を砕き、己の全ての血の魔力を籠めた刃の一撃。
己の全てを掛けた一撃は、極大にまで膨れ上がっていく。
ただ目の前の嵐の如き理不尽の体現者『皇帝』を滅ぼすために力を振るう。
問答は意味をなさないとリーヴァルディは知っている。
オブリビオンである以前の問題だ。
下手に人型をしているから、人の言葉を手繰るからこそ理解できると思ってしまう。理解できたと錯覚してしまう。
目の前の存在は嵐。
自然そのもの。
ならばこそ、彼女の瞳は嵐の暗闇の中でもひときわ輝く。
「……我が手に宿れ、原初の理。全魔解放……ヘプタ・グラマトン」
放たれた一撃はパッセンジャーへと迫る。
躱すこともできただろう。
けれど、無敵機械を纏うパッセンジャーはかわさない。真っ向から放たれる一撃を前に拳を振るうのだ。
そうするとリーヴァルディは分かっていた。
混沌の属性へと変容した己の魔力の刃は、たしかにパッセンジャーを傷つける。だが、躱すことだってできたはずなのだ。
だというのに、あの『皇帝』はそれをしない。
なぜなら。
「……避けるとお前の背後の樹に当たるわ……だから、お前は避けないのよね」
それこそが『弱点』。
強大無比たる『皇帝』にありて、唯一にして最大。者によっては無意味たる弱点。
けれど、この『皇帝』パッセンジャーにとって、それだけが逆鱗。
「――……!」
混沌の刃は無敵機械の腕部を切り裂きながら、しかし消滅する。
腕一本を落とした、と見るべきか。
ただ樹を守るためだけに腕を一つ失うことを厭わぬパッセンジャー。
けれど、それでいい。
リーヴァルディは無敵たる一角を今まさに突き崩したのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
リアラ・アリルアンナ
それが幸福だと言うのなら、貴方が死を望むのは自由です
しかしそれに世界や無辜の市民を許可なく巻き込む事は決して許されない!
よってリアラが処罰します!
エネルギーを無限に吸収するというのは厄介ですが、
それが「装置」である以上付け入る隙はあります
ハッキングによるシステム改竄と膨大なデータ攻撃による過負荷で装置を機能不全に陥らせ、ついでに装甲を半分にする様に仕向けましょう
続けてUCを皇帝親衛隊と植物に対して放ち、親衛隊は皇帝に刃を向けるように、植物はリアラを守るように操ります
後は彼が持ち直す前に、操った親衛隊も含めた持てる全ての火力を叩き込みます!
混沌の刃の一撃が屍人帝国『オーデュボン』の『皇帝』パッセンジャーの片腕を落とす。
無敵機械と呼ばれた異形。
されど、その名は今や地に失墜する。
それを前にパッセンジャーの顔は歪むことはなかった。
ただ事実を目の当たりにしている。
彼にとって猟兵は生命ではない。生命とは認めていない。生命の埒外たる存在である猟兵を彼は生命と認めていない。
同時に彼を守らんと魔獣を駆る皇帝親衛隊のオブリビオンたちもまた生命と認めていない。
「『皇帝』陛下を守れ! 我らの生命をとしてでもだ!!」
彼らは魔獣を駆り、空を舞う。
それを前にリアラ・アリルアンナ(リアライズユアハピネス・f36743)は現れる。
バーチャルキャラクターたる彼女は幸福を望む者の隣人である。
自死を望む『皇帝』パッセンジャー。
彼がそれを望むことで幸せになるというのならば、それを彼女は否定しない。
自由なのだから、その手助けだってしたっていいと彼女は思っただろう。
けれど、たった一点に置いて彼女はパッセンジャーの望みを肯定できないのだ。
「世界や無辜の市民を許可なく巻き込むことは決して許されない! よってリアラが処罰します!」
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
「市民の幸福の為、強制的に奉仕していただきます!」
緊急奉仕令(ライトニング・キュロス)。
それは炸裂する稲妻の鎖。
放たれた鎖が彼女に迫る皇帝親衛隊のオブリビオンたちに繋がれる。同時にリアラはパッセンジャーの無敵機械を見据える。
「エネルギーを無限に吸収するというのは厄介ですが!」
それが『装置』であるというのならば、付け入る隙がある。何せ彼女はバーチャルキャラクターである。
電子の海より生み出され、ネットワークの中に生きてきた種族である。
ならばこそ、彼女は『無敵機械』にハッキングを仕掛ける。
電光石火。
火花散るは電流よりも疾き情報の奔流。
データを流し込み、過負荷によって樹の不全に陥らせるのだ。変形していく『無敵機械』。内部に入り込んだ情報を排除しようとして、装甲を廃しているのだ。
「……電脳の海より生まれた者……それだ。それこそが俺の求めたもの。だが……アンタは猟兵だな? ならば、俺は滅ぼさなければならない。惜しいことをしているという実感はある」
膨れ上がる力。
片腕を失ってなお、その力は健在である。
放たれる拳の一撃。
それは圧倒的な一撃となってリアラに迫る。だが、それを阻むのは稲妻の鎖に寄って操作された皇帝親衛隊オブリビオンたちであった。
一撃に滅びていくオブリビオンたち。
「だからなんだというのだ。壁が霧散しただけだ」
パッセンジャーの瞳に陰りはない。
意味のないことだと。壁を一枚壊しただけだと彼は言う。だが、次の瞬間、彼の瞳が見開かれる。
そこにあったのは植物。
稲妻の鎖は植物すら操るのだ。
「これなら貴方は攻撃できない。貴方が貴方であるがための理由。それが貴方を縛る弱点となるのです」
植物の壁を前にパッセンジャーの動きが止まる。
己の部下を自称する親衛隊たちですら構うこと無く霧消させた拳は、しかして今止まる。
これが『弱点』。
逆鱗そのものと言ってもいいだろう。
拳はナタれず、隙だらけのパッセンジャーに皇帝親衛隊オブリビオンたちとリアラのもつ力のすべてが叩き込まれる。
爆風の中にパッセンジャーが消えていく。
リアラは植物で出来た壁に立ち、己の処断した『皇帝』の行く末を見やるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
リーベ・ヴァンパイア
久しぶり……という程でもないが、また会えたな、皇帝よ
前に会った時は貴方がどんな人物で何を思ってたか、知らなかったが……成る程、死を求めていたのか
……俺には長寿や不死の者の苦しさは分からない。ゆえにそこをどうこう言うつもりはない
……だが、他の者の命を脅かすというのなら、話は変わる
ーー阻止させて貰う。貴方を終わらせる事で
作戦
皇帝親衛隊、……利用させて貰おう【戦闘知識】
親衛隊の攻撃をシールドガントレットで防ぎながら、神封じの鎖を放って魔獣に取り付く
地上で戦う訳にはいかないからな。悪いが的になって貰うぞ
親衛隊の間を【ジャンプ】で渡りながら皇帝に接近し全てを合体させた【swordparty】で攻撃する
『|強襲作戦《ファーストアタック》』においてリーベ・ヴァンパイア( Notwendigkeit ・f37208)は屍人帝国『オーデュボン』の『皇帝』パッセンジャーと接触した猟兵の一人である。
いや、正確には見たことのある猟兵である、というのが正しいだろう。
あの時、あれ以上近づかなかったことの意味を知る。
近づけば生命を吸われ、己は滅びていただろう。
猟兵に寄って操られ『皇帝』に刃を向けた皇帝親衛隊のオブリビオンたちが次々と霧消していく。
周囲に在るもの全ての生命を吸い上げる異形の『無敵機械』。
砕けた拳は吸い上げられたオブリビオンの生命力によって補填されていく。組み上がる拳の具合を確かめるようにしながらパッセンジャーは瞳を向ける。
あの日、あの時と同じだった。
「久しぶり……という程でもないが、また会えたな、『皇帝』よ」
「アンタのことを俺は記憶していない。アンタたちは猟兵だろう。なら、アンタたちは生命じゃあない。生命の埒外たる存在。俺にとって、アンタたちは滅ぼすしか価値のないものだ」
「死を求めていたか」
リーベは知る由もなかったのだ。
先立っての強襲。
あのときには彼が何を思い、何を求めていたのか知らなかったのだ。
リーベはわからない。
長寿や不死たる者の苦しみ。
だからこそ、リーベはそこをどうこう言うつもりはなかった。
「……だが、他の者の生命を脅かすというのなら、話は変わる」
己たちのことを生命の埒外であるからこそ生命として見ていない。
彼が慈しみ愛でるのは草花のみ。
人も、オブリビオンも関係ない。生命とすら見ていないのだから。それは同時に問答の無意味さを知るものであった。
かの『皇帝』は嵐そのもの。
理不尽の体現者。
「――阻止させてもらう。貴方を終わらせることで」
迫る皇帝親衛隊たちの攻撃をガントレットで防ぎながら、放たれた神封じの鎖で彼らが駆る魔獣に取り付く。
バスターライフルの如き魔導砲となった腕部を砲身に見立て放たれる光条。
その一撃をリーベは皇帝親衛隊たちを盾にして、空に舞い上がる。
「悪いが的になってもらうぞ」
だが、それはパッセンジャーにとって意味のないものであった。
彼にとって敵とは周囲にあるもの。
己に恭順を示す者であるオブリビオンたちであっても関係ない。味方であるとすら思っていない。
周囲を飛び回る羽虫そのもの。
リーベは皇帝親衛隊オブリビオンの駆る魔獣たちを足場ににして飛ぶ。
「数で押させて貰う――!」
swordparty(ツルギヨマエ)たる剣身が空に浮かぶ。
赤い剣は一斉に飛び立ち、空で束ねられていく。
強大な剣。
赤い剣はパッセンジャーに向かって振り落とされるようにして放たれる。
こちらへの攻撃全てが致命傷。
しかし近づけない。近づけば生命を吸い上げられてしまう。ならばこそ、リーベはこの一撃に全てを駆ける。
「終わりを齎す。貴方が自死によって何を得るのかはわからない。嵐そのものたる貴方の胸中など誰が知れようか」
リーベは、それでも守らねばならぬ。
理不尽から人々を守るのがヒーローであるのならば、彼はまさに今、ヒーローそのものとしてパッセンジャーの前に立っている。
放たれた極大の赤い剣が、まるで墓標のように異形たる機械を貫く――。
大成功
🔵🔵🔵
国栖ヶ谷・鈴鹿
◎アドリブ連携OKです
あの機体は……!
いや、今はこっちが先だ!
阿穹羅、ワイヤーアンカー射出!
敵を盾にして防いで、きこやん、結界術とオーラ防御で防御陣形成!
ユーベルコヲド、厭穢欣浄パラダヰムシフト!
桜の樹の盾を形成し、皇帝の攻撃を防いで!
改変で植物の爆発的な成長で、親衛隊を退けて、同時に皇帝へ生命吸収を仕掛ける!
桜のアーチを形成してパッセンジャーと一対一にしたら、最後に仕掛けるのはこの弾薬。
植物属性の弾丸に生命吸収逆転を改変付与、蔦と花に覆われるように撃ち込もう!
最後は生命吸収の桜の花吹雪と共に……皇帝との戦いに終止符を打とう。
……あの機体……一体……?
終わった後も動向を見据えて。
空に浮かぶは赤い鎧の巨人。
ただ屍人帝国『オーデュボン』の版図を見下ろすだけの存在。
動かない。発することもない。
ただ、そこに在る。
何かを待っているようでもあり、何かを望むようでもあった。
国栖ヶ谷・鈴鹿(命短し恋せよ乙女・f23254)は、それに気がついていた。あの赤い機体。
雲海の中で見た赤い鎧の巨人とは違う。
そして、彼女が知る青い鎧の巨人とも異なる。
理解が及ばないこともあるかもしれない。
けれど、鈴鹿は優先すべきことを理解している。
それは即ち『皇帝』パッセンジャーの排除である。あのパッセンジャーを打倒しない限り、周囲の生命という生命は吸い上げられ続け、世界は滅びる。
「ワイヤーアンカー射出!」
鈴鹿の駆るキャバリアより放たれたワイアーアンカーが、パッセンジャーの周囲に打ち込まれる。
それはアーチを作るように放たれ、囲う。
「きこやん、結界術とオーラ防御で防御陣形成!」
彼女の耳としっぽに宿る稲荷狐の力が発露し、キャバリアの周囲に光が満ちていく。
放たれる魔導法の砲撃がキャバリアをかすめる。
機体の肩部を撃ち抜く光条。さらに魔導ドローンが現れ、鈴鹿たちを取り囲む。
圧倒的な砲撃に加えて、魔導ドローンによるオールレンジ攻撃。躱す術などなかった。
けれど、防ぐ術ならばあったのだ。
「ユーベルエコヲド、厭穢欣浄パラダヰムシフト(プレヰング・ヱデン)!」
彼女の後光は、理想世界を構築する力。
理想世界に改変された彼女の光の中にあるのは桜の樹の盾。
それを認識したパッセンジャーの動きが止まり、魔導ドローンが次々と失墜していく。
まるで攻撃の意志を失ったかのようであった。
「――その花、その花の名前……」
パッセンジャーの翡翠の瞳が桜の樹の盾を見やる。
見る者の心を奪う美しき色。
その色彩にパッセンジャーもまた同じ様に心を奪われる。
ワイヤーアンカーで囲われた周囲にまた桜の木々が咲き乱れる。吹き荒れるは桜花嵐。
「さくら、というんだよ。ここは僕の領域、さあ、君の魂をあるべき姿へ」
放たれる弾丸が無敵機械に打ち込まれる。
植物による生命吸収を逆転する改変。
それは鋼鉄の体を蔓と花で覆う一撃。
吸い上げられる生命力が桜の花弁を舞い散らせる。
吹雪そのもの。
彼が嵐そのものであるというのならば、その光景こそがふさわしかったのかも知れない。
けれど、鈴鹿は知っている。
彼の中にある生命力が膨大であることを。
無敵たる所以は、その無限にも思える生命力があればこそ。鈴鹿の一撃は楔。
「君との戦いに終止符を撃てたらよかったんだけれど……まだ、君は、それでも滅びることも、死ぬこともできないんだね……」
桜の花弁が渦を巻いていく。
その中心にパッセンジャーはいる。
此処までしてもなお、赤い鎧の巨人は光背を輝かせながら、空に座し続ける。
何故動かないのか。
理由があるのか。それさえもわからぬまま鈴鹿はパッセンジャーの身の内に溜め込んだ生命力の発露を見やり、おのれのユーベルコヲドが消えるその時まで見守るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
榊・霊爾
近付くだけで人殺し...なるほど偏屈で精神的引き籠りになるワケだ
親衛隊は白鶺鴒と背黒鶺鴒の【見切り・早業・闇に紛れる】抜刀術ですれ違い様に切り伏せる
光の檻は形成が完了する前に鴉羽笠ので【存在感】を消し【ダッシュ】で一気に抜け、皇帝に間合いを詰める
『白状』の簪を皇帝の額に串刺しし、強引に詰問を行う
...殺す前に聞きたい事がある
誰が君を魂食らいの化物にした?
黙秘権は無い
黙ろうが喋ろうが、君は内側からの崩壊は止められない
黙っても自壊、喋っても自壊、君は死から逃れられない
狂った無敵機械は君なぞ餌を食わせる傀儡にしか見ていないのさ
最後は一思いに小夜啼鳥の【暗殺】抜刀で首を撥ねてやる
桜花嵐が吹き荒れる。
その中心にあるのは屍人帝国『オーデュボン』の『皇帝』パッセンジャーであった。
彼の身の内に宿る無尽蔵ともいえる生命力が桜の花弁となって吹き荒れているのである。猟兵のはなったユーベルコードは、その生命力を吐き出させた。
けれど、かの『無敵機械』は唯其処に在るだけで生命力を吸い上げ続ける。
周囲にある皇帝親衛隊のオブリビオンですら、ただの生命のタンクでしかない。
いや、『皇帝』パッセンジャーは、彼らすら同じ生命であると認めていない。
同時に猟兵たちも生命と見ていない。
生命の埒外たる存在。
それが猟兵であるのならば、頷ける部分もあったのかもしれない。
「近づくだけで人殺し……なるほど偏屈で精神的引きこもりになるワケだ」
榊・霊爾(あなたの隣の榊不動産・f31608)は居合刀の斬撃でもって皇帝親衛隊オブリビオンたちを切り裂く。
すれ違いざまの斬撃は過たず、彼らの首を跳ねるだろう。
其処に打ち込まれるは光の檻。
パッセンジャーのユーベルコードだと即座に理解できただろう。
生命を吸う光の檻。
急速に狭まり、己を圧殺せんとせまるそれを前にして彼は三度笠を傾け、疾駆する。
一気に光の檻の中を駆け抜ける。
「……――さくら……なんと可憐な響きか」
己の生命力によって咲き誇る桜の木々。
それが見える吹雪の如き花弁の乱舞にパッセンジャーは見惚れるようであった。隙だらけだった。
だが、霊璽は構わなかった。
瞳がユーベルコードに輝く。自白の呪詛を籠めて放たれた簪の一撃がパッセンジャーの額に突き刺さる。
翡翠の瞳が霊璽を見据えていた。
呪縛『白状』(マアト)は、自白を強要するユーベルコードである。
体内に巡っていく呪詛は棘となってパッセンジャーの肉体を内側から貫いていくだろう。
同時に霊璽は己の生命力が吸い上げられていくのを感じる。
近づくだけでこれなのだ。
意識して行っているわけでもないのに、これだけの力。
「……殺す前に聞きたいことが在る。誰が君を魂喰らいの化け物にした?」
その言葉にパッセンジャーは表情を変えずに言う。
「アンタは嵐を前にして、何故、嵐は嵐なのだと問うのか? 果たして、それに意味があるのか? 俺には到底思えない。過去は過去のままだ。歪み、変わることはあっても、過去、躯の海ある全ては変わることはない」
故に、己はパッセンジャーであると告げる。
理不尽の体現者。自然の権化。同じオブリビオンを生命としてみておらず、また生命の埒外たる猟兵もまた同じ。
嵐は対話などしない。
霊璽にとって、それは納得の行く答えであっただろうか。
黙っていようとも喋ろうともどちらにせよ、霊璽のユーベルコードは既に発動している。
自白を強要しながら滅ぼす力。
パッセンジャーの内側から棘が噴出し、その体を崩壊に導く。
「君は死から逃れられない。狂った無敵機械は君なぞ餌を食わせる傀儡にしか見ていないのさ」
放たれる抜刀の一撃がパッセンジャーの首を狙う。
だが、その一撃は『無敵機械』の腕部が僅かに軌道をずらす。首の皮一枚で繋がるパッセンジャーの首が再びふさがっていく。
吸い上げた生命は、瞬く間にパッセンジャーの体を修復していくだろう。
意味のないことなのかもしれない。
嵐に斬りかかる行為と同じであったのかもしれない。
けれど、これは猟兵とオブリビオンとの戦いである。繋ぎ、紡ぐからこそ光明に手を伸ばす戦いなのだ。
ならばこそ、その一撃は楔となってパッセンジャーの滅びへと導くのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
鵜飼・章
ふうん
殺さないと苦しむなら
普段は放っておくんだけど
植物系の魔獣に協力を仰いで
僕の肩や頭に乗っておいて貰うね
服を草花で覆ってくれるかな
それも無理矢理乱獲した魔獣かな
早業と投擲で親衛隊だけ狙い撃ち
魔獣達は極力解放しよう
本体の砲撃やドローンも同様に
目視し次第撃墜する
親衛隊を爆発に巻き込めるとより良い
凌いだらUC使用
虚無の笛の音を無敵機械に吸わせ
一時的にでも動きを停止させる
その上で住処を荒らされた魔獣達に
彼への怒りをぶつけてもらうね
魔獣無法地帯から来てくれた子達
先程まで隷属させられていた子達
無理なら図鑑から幻影だけでも召喚するよ
喜んで死なせてあげる訳ないでしょ
きみが踏み躙った命と尊厳の重さも
知るといい
無神論(ニヒリズム)は、鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)が持つ己のための倫理であったことだろう。
屍人帝国『オーデュボン』の『皇帝』パッセンジャー。
その周囲にあるのは皇帝親衛隊オブリビオンの駆る翼ある魔獣たち。
あの戦力があるかぎり、猟兵は容易にはパッセンジャーに近づくことができない。魔獣はともかく『自死を望む』パッセンジャーなど、章は普段ならば放っておくべきだと思っていた。
救ってやる必要などない。
殺さないと苦しむというのなら、そのままにしておいてやるのがもっとも良いと彼は思っただろう。
植物を根幹にした魔獣たちが章の足元にある。
いや、彼が彼らの肩に立っていると言ったほうが正しいだろう。蔦が章の体に張っていく。
虚無の笛の音は、彼らを味方にする。
パッセンジャーの弱点が『草花、木に当たるような攻撃をしない』というのなら、今の自分は攻撃できないと理解できる。
「『皇帝』陛下のために!」
皇帝親衛隊オブリビオンたちが章に迫る。
攻撃できないパッセンジャーの変わりとでも言うかのようであった。翼在る魔獣たちを章は見上げる。
彼らに使役されていなければ、今も大空の世界の何処かで暮らしていたのかもしれないと章は思った。
「無理矢理乱獲した魔獣かな……」
放つ一撃が魔獣ではなく皇帝親衛隊オブリビオンを貫く。
魔獣は傷つけない。
どれだけ自分に敵意を持っているのだとしても、それは自然の仲の出来事でしかない。
パッセンジャーはまだこちらに攻撃してこない。
いくらでも隙はあったはずだ。
あの無敵機械たる異形の力があれば、如何用にも出来たはずだ。なのに攻撃してこない。
やはり、あのオブリビオンは植物を攻撃しないのだ。
例え、それが己に不利になることであってもいとわない。
「知っているか、猟兵」
初めてだったのかもしれない。パッセンジャーから誰かに声を掛けることは。彼の周囲にあるのは猟兵のユーベルコードに寄って生命力を吸収する力を僅かな時間であっても反転させられ、その生命力を桜の木々として放出した残滓。
即ち、桜花嵐の花弁。
その薄紅色の花弁をパッセンジャーは異形の腕でひとつまみして言うのだ。
笑っている。
これだけのおぞましき力を持ちながら、花弁の一枚を手にとって微笑んだのだ。
「この花の名は、さくらと言うそうだ。初めて知ったが、善き名だな」
「きみが踏み躙った生命と尊厳の重さを知らずに、そんな顔をするのか」
章にとって、それはあまりにも理不尽なことであったのかもしれない。
魔獣の猛攻がパッセンジャーに迫る。
魔獣無法地帯から来てくれた魔獣や、皇帝親衛隊に隷属されていた魔獣、さらには図鑑から幻影となって走る魔獣の影。
それら全てがパッセンジャーに飛び込んでいく。
怒りをぶつけるように、異形の機械に突進していくのだ。
鋼鉄の機械がひしゃげる音がした。
それほどまでの怒り。
「だというのに、まだ笑うのか。その怒りを知りながら」
喜んで死なせてやるつもりなどなかった。
けれど、花の名を聞いて微笑むパッセンジャーの姿が、その理不尽が章の心に影を落とす。
己は欠けたるものを埋めるように人より人らしくなろうと決めた。
なのに、目の前のパッセンジャーはヒトの姿をして、ヒトのようにわらいながら、ヒトならざる理不尽を体現する。
何もかもがパッセンジャーは章にとって対極。
故に、章は虚無の笛を、その音色でもって押しつぶすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
フォルク・リア
「オーデュボンの皇帝。遂に戦う時が来たか。
しかし、あれを倒さなければそこに辿り着く事さえ
できないか。」
親衛隊を眺め。
親衛隊をパッセンジャーとの間に入れる事を心掛け
パッセンジャーから攻撃が来た場合盾とする。
親衛隊は呪装銃「カオスエンペラー」で地上から迎撃し
幻覚、マヒで隊列を乱す。
あくまで主敵であるパッセンジャーの動きを見逃さず
攻撃を【見切り】
【残像】を使っての回避。親衛隊や他の物品を盾にする。
【オーラ防御】、ファントムレギオンでのダメージ軽減
等でしのぐ。
攻撃後の隙を逃さず魔草剣舞陣を発動。
剣神カズラを飛行させ親衛隊と戦わせ
自身の迎撃と合わせて殲滅。
剣神カズラにパッセンジャーを包囲させて
戦いながらも敵のユーベルコードの詳細を観察し
上昇能力に警戒し低下能力を突く様に攻撃。
敵が自身を狙ったら剣神カズラを盾とし
攻撃されないかその攻撃を軽減。
剣神カズラの剣の様な枝を突き立てて攻撃させる。
「これは冥府の植物。通常の物じゃない。
これも守りたいと思うか分らないがやる事は一つ。
弱みがあるなら突かせて貰う。」
「『オーデュボン』の『皇帝』」
フォルク・リア(黄泉への導・f05375)は、魔獣の突進によって蹂躙されるパッセンジャーの姿を見た。
鋼鉄の機械がひしゃげ、壊れる音を聞く。
だが、それで終わるわけではないことを彼は理解していただろう。
それほどまでにパッセンジャーというオブリビオンは強大であった。
ただ、そこに在るだけで生命を吸い上げる『無敵機械』。それ故に彼は死ねない。だからこそ望むのだ。
己の自死を。
だが、それは叶わない。
彼に突進する魔獣は尽くが生命力を吸い上げられ、絶命していく。
周囲に飛ぶ皇帝親衛隊オブリビオンたちは、その光景に怖気走る思いであったことだろう。自分たちも逆らえばああなると理解しているのだ。
だからこそ、彼らは勇猛果敢であることを『皇帝』に示すように猟兵たちに迫る。
「しかし、あれを倒さなければ其処に辿り着くことさえ出来ないか」
フォルクは迫りくる皇帝親衛隊オブリビオンたちを見やる。
敵は打倒しなければならない。
魔獣の亡骸の中からパッセンジャーが立ち上がる。
砕かれたはずの『無敵機械』が復元している。多くの生命力を放出されながらも、なお、その力は健在であった。
消耗させているはずなのだ。
けれど、それでも周囲にありし生命を吸い上げ続けている。
これが、自死を望む者の行いなのかとフォルクは思ったかも知れない。放たれる魔導砲の一撃は、皇帝親衛隊オブリビオンごとフォルクを撃ち抜いてくる。
元より盾にするつもりであったが、何の呵責も生むことはなかった。
パッセンジャーにとって皇帝親衛隊を自称する彼らすら生命としてみていなかったのである。
なんたる理不尽であろうか。
「あくまで標的は俺たちだけ、というわけか」
魔導砲の一撃に滅ぼされるオブリビオンたち。
その姿を躱しながら、フォルクはパッセンジャーを見据える。『|強襲作戦《ファーストアタック》』において見えた時とは状況が違う。
放たれた魔導砲の光条から魔導ドローンがフォルクに迫る。
「冥府の徒たる魔の物をも討ち果たす剣神葛。冥空を越えてその姿を現し我が敵を切り裂く刃となれ」
迫る魔導ドローンの攻勢にフォルクはフードの奥の瞳をユーベルコードに輝かせる。
冥府の植物たる剣神カズラ。
それを招来せしめた上で、翼のように進化させた広葉と幻惑の力齎す花を生やし、飛び立たせる。
それは皇帝親衛隊オブリビオンたちを惑わし、また同時に己の身を守るためのものであった。
魔導ドローンが止まる。
空中で静止したかと思った瞬間、次々と失墜していくのだ。
これが『弱点』。
彼らが『強襲作戦』の折に得た情報。
『皇帝』パッセンジャーは『草花、木に当たるような攻撃をしない』のだ。
「それはなんだ」
パッセンジャーが問いかける。
その言葉にフォルクは違和感を覚えるかもしれない。最初に見えた時ですら言葉を発することのなかったパッセンジャー。
彼が今まさに空を舞う剣神カズラを見て言うのだ。
なんなのだ、と。
名を知りたいと言うかのような気軽さ。
敵に相対している気がしない。それほどまでに理不尽であった。味方であろう皇帝親衛隊オブリビオンもろともに己を狙う残酷さを持ちながら、草花に興味を示す純真さ。
チグハグであり、また同時に怖気が走る。
だが、フォルクはひるまないだろう。
己がなんのために此処に居るのかを理解しているからだ。
パッセンジャーを放置すれば、彼の望むものが叶おうとも叶うことがなくとも、世界は滅びる。
自死を願う者が世界そのものを道連れにして滅びるか、もしくは彼に世界が滅ぼされるかのどちらかだからだ。
「これは冥府の植物。通常のものじゃない」
「冥府にもあるのか、こうした草花が。面白いな。ああ、それが知れただけでも俺は、アンタに意味を見いだせる」
薄く笑むパッセンジャーの姿にフォルクは、その剣神カズラの剣のような枝を突き立てる。
生身の部分から赤い血潮が噴き出す。
『弱点』を突いている。
確かに今突いているのだ。平時であればフォルクであっても躊躇いはあったかもしれない。
けれど、今はその時ではないのだ。
「これも護りたいと思うか」
「ああ、冥府に咲く花であってお、人の生命よりは価値がある。意味がある」
「何故、その思いを人に向けられない」
誰にも護りたいと思うものがあるはずだ。
パッセンジャーにとっては草花がそうであるように。猟兵たちにとっては世界であるように。
同じ方向を向いているのに、見ているものが違いすぎる。
これがオブリビオンであるということ。
過去に歪んだ者の末路。
フォルクの放った一撃は、ヒトならざるヒトの形をしたヒトではないなにかを貫き、されどヒトを証明する赤き血潮を噴出させるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
勝守・利司郎
ほーん?死にたいのに死ねない感じか?難儀なやつだな。
ま、なら…報告書も読んだし。遠慮なくってやつだな。
親衛隊の攻撃は『黄薄絹』の効果で目測を誤らせる。
そんで、パッセンジャー自身のは…ああ、卑怯って言うなよ。『鬱金香の葉』を見せよう。…まあ、鬱金香事態ももちこんで、見せるんだが。
そうして、その隙に破砕拳を。…草花や木を愛でる皇帝には、その草花の名を関する武器での攻撃をってな。
惨いのか慈悲なのか、わかんねぇな、これ…。
オレ自身は、そんなに関わってないけどな。
なんとなく、相対したくなったんだよ。
屍人帝国『オーデュボン』。
それは強大な屍人帝国の一つに数えられる。
『皇帝』パッセンジャー座す大地は肥沃そのもの。自然が満ちている。だが、文明の残滓は僅かに残るばかり。
その戦場たる大陸にあって猟兵たちはパッセンジャーを打倒せんとしている。
六大屍人帝国の首魁の誰もが望みを持っている。
そのために『アルカディアの玉座』を目指す。
『オーデュボン』の『皇帝』パッセンジャーが望むのは自死。
己自身を殺すことが望みであるという。
「ほーん? 死にたいのに死ねない感じか? 難儀なやつだな」
勝守・利司郎(元側近NPC・f36279)は、それならば遠慮はいらないと転移した直後、迫る皇帝親衛隊オブリビオンたちを薄絹を翻し、その攻撃を躱す。
目測を誤らせる黄色き薄絹は、彼らを幻惑するのだ。
パッセンジャーは猟兵たちの攻撃を受けて消耗しているはずだ。
けれど、周囲の生命力を奪い続ける『無敵機械』の力によって傷が癒えていく。これが自死を望む理由かと利司郎は理解した。
そして、同時に彼は知っている。
『弱点』というやつだ。
けれど、それは『弱点』と呼ぶにはあまりにも些細なことだった。
「……ああ、卑怯って言うなよ」
彼の手から放たれるのは黄色のチューリップの形をした宝石。そこより放たれる葉の式神。
その姿は、まさに花そのもの。
そう、パッセンジャーは『草花、木々に当たる攻撃をしない』のだ。
こちらの手札はそれだけでいい。
これだけでパッセンジャーの動きは止まる。止まってしまうのだ。だから、利司郎は卑怯だとそしるなと言ったのだ。
力の差は歴然。
けれど、倒さなければならない。
「その問いかけは意味を成さない」
パッセンジャーにとって、卑怯であろうと正攻法であろうと、関係ない。
互いに滅ぼすだけの間柄であるからだ。そして、その花の美しさは何物にも代えがたいものであると彼は思っている。
花を愛でる『皇帝』。
その皇帝に放つ一撃は、草花の名を冠するユーベルコード。
名を、花蝶神術:破砕拳(カチョウシンジュツハサイケン)。
瞬間的に間合いを詰める。
一瞬出会った。
縮地法とも言われる圧倒的な歩法。速度という概念など存在しないかのようにパッセンジャーの眼前に迫る利司郎の拳。
防御など意味をなさない。
彼の拳は的確に撃ち出され、パッセンジャーの『無敵機械』の防御すら貫くだろう。
けれど、パッセンジャーは利司郎を見ていない。
彼が、彼の翡翠の瞳が見るのは、花。
黄のチューリップ。
それだけを見ている。
「惨いのか慈悲なのか、わかんねぇな、これ……」
戸惑いがある。放たれた拳はパッセンジャーの胸に打ち込まれる。
骨が折れる音が響く。
肉を穿つ音が聞こえる。
この一撃さえも消耗にしかならないのかもしれない。
しかし、利司郎は思ったのだ。
例え、関わりがなくとも。それでも花を愛で、それだけのために存在するかのようなオブリビオン。
彼の前に立ちたかったのだ。
放たれた拳の痛みは利司郎にもあるだろうか。
オブリビオンでなかったのならば。
猟兵でなかったのならば。
なにか理解しえたものがあったのだろうか。考えても詮無きことが胸から溢れるかも知れない。
打ち込まれた拳はパッセンジャーを吹き飛ばす。
撒き散らされた桜の花びらが舞う中、利司郎は、己の手にしたチューリップを手向けのように投げ放つのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
飛鉢法で屍人帝国『オーデュボン』へ。
皇帝親衛隊を名乗るオブリビオンは、大小の紅水陣に封じて先を急ぐ。
初めまして、可愛らしい皇帝陛下。
その無敵機械を壊せたら、あたしのものになってくれないかしら? この際、オトコノコでも構わないわよ? 愛してあげる。
さて先手ね。「式神使い」で偶神兵装『鎧装豪腕』を呼び出し、「盾受け」「受け流し」をさせる。ただの物理攻撃ならこれで十分。
その隙に、いつものように。
「結界術」「全力魔法」酸の「全力攻撃」「範囲攻撃」「呪詛」「仙術」「道術」で紅水陣!
結界で生命エネルギーの吸収範囲を限定し、常時続く酸の雨で皇帝と無敵機械を蝕む。機械の自己修復はないでしょ。自由になれるよ。
鉄鉢が飛ぶ。
空の世界であるブルーアルカディアにおいて、空を飛ぶことは当然のことである。
大陸すら雲海の上に浮かんでいるのだ。
雲海に沈めば滅びがあり、そして世界を手に入れようとする屍人帝国がある。
『オーデュボン』とは、まさにそうした屍人帝国の一つであった。
けれど、『オーデュボン』の首魁たる『皇帝』パッセンジャーは己を守ろうと猟兵と戦う皇帝親衛隊オブリビオンたちすら生命とみなしていなかった。
猟兵も同様であった。
生命ではない。
彼にとって、生命の埒外たる猟兵は生命ではなく、ただの敵だった。しかし、それが己の望みを叶えるのかどうかわからない。
殺しきれるのか。
「わからないのならば、俺はアンタたちを滅ぼして、もっとも確実な手段を手に入れるだけだ」
これまで幾度となく猟兵たちの攻勢にさらされたパッセンジャーであったが、その身に吸い上げ続けた生命力が肉体を癒やしていく。
それどころか『無敵機械』の破損すらも修復していくのだ。
これが『自死を望む』パッセンジャーの力。
それを鉄鉢に乗り、村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)はまざまざと見せつけられていた。
彼女のユーベルコードは、紅水陣(コウスイジン)。
真っ赤な血のような、全てを蝕む強酸性の雨によってあらゆるものを腐食させる陣である。
皇帝親衛隊オブリビオンたちも、尽く滅ぼし彼女はパッセンジャーの元に迫る。
「始めまして、可愛らしい皇帝陛下。その『無敵機械』を壊せたら、あたしのものになってくれないかしら? この際、オトコノコでも構わないわよ? 愛してあげる」
「理由になってない」
ゆかりの誘いに切り返す言葉。
鋭さもなにもない。
無感情のままに返す言葉。同時に彼の肉体は消耗してもなお、その肉体を癒やしていく。苛烈な猟兵の攻勢を前にしてもなお、健在足らしめているのは、周囲の生命を吸い上げているからであろう。
「俺はアンタたちを生命と認めていない。そして、俺は」
迫る無敵機械。
異形の機械はかろうじて人がを成して、一瞬でゆかりとの距離を詰める。
速さに特化し、手数で迫るつもりなのだろう。
けれど、ゆかりはその瞳をユーベルコードに輝かせる。
放つ一撃を『鎧装豪腕』でもって受け流す。だが、その一撃で持って砕かれる式神。物理ならば、と思ったのだが、近づかれた瞬間に生命力を吸い上げられる。
エネルギーであろうとなんであろうと、『無敵機械』は全てを吸い上げる。そこにパッセンジャーの意志など介在しない。
「俺の愛は、荒野に咲く花に捧げられている。アンタに贈るものはない」
ゆかりは見ただろう。
迫る異形の腕。
それが己を貫くだろうと。けれど、その拳は阻まれる。結界術。
全力で編み上げてよかったとゆかりは思った。だが、己を守るために結界を張ったのではない。
敵を囲うためにはなったのだ。
「いつものように、とは言われたくはないのだけれど――これが効果的なのよね」
展開された結界がパッセンジャーを囲う。
それだけではない。
彼女のユーベルコードが結界の中に満ちていく。
あらゆるものを腐食させる赤い靄。
その中でパッセンジャーの身を覆う『無敵機械』を腐食させていく。常に続く酸の雨。
だが、生命力は『無敵機械』すら修復していく。
これは消耗戦だ。
自分のユーベルコードが尽きるのが先か、それともパッセンジャーの生命力が尽きるのが先か。
「その『無敵機械』さえ壊せれば、自由になれるよ」
「そうであったのならばな。だが、俺は望む。俺は自らの死を。アンタたちにはわからないことかもしれないが」
那由多に続く灰色に意味はない。
刹那に輝く虹色にこそ、彼は意味を見出す。解放など必要ない。自由などもいらない。
ただ、己の死をこそ望む。
赤い靄の中、『皇帝』パッセンジャーは、ゆかりの差し伸べた自由への誘いを振り払う。
草花を愛する者。
それがパッセンジャーであるというのならば、彼に相対する者すべてが理不尽に相対するものと同義。
ゆかりは、その意味を悟り己の絶陣の中で朽ちゆく『皇帝』を見やるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メサイア・エルネイジェ
いやー!すっぽんぽんですわー!
対象年齢が上がってしまう前にご退場願いますわ
ヴリちゃん!リグ・ヴェーダモード!
頭におライドですわ〜!
あら?あそこに座すはいつぞやの赤いキャバリアモドキ!
やっぱり見覚えがあるような…セラ…セラフィ…むむむ…思い出せませんわ〜!
突っ立ってないで手伝ってくださいましー!
…やる気ねぇですわね!ご立派なカカシですこと!
隠された弱点なんて存じませんわ〜!なので物理で殴…
なんですヴリちゃん?おパッセンジャーは草花に命中するような攻撃をしてこない?
ではお花畑の真上で留まるのですわ
お砲撃は翼に化けたラージシールドで受けるのですわ
ぶっ放せば余波でお花畑が焼け野原になってしまいますわよ〜!
おビットだって雑に使えば同じでしてよ!
こちらもお花畑を吹っ飛ばす訳にはまいりませんわね
そんな時はベルセルクシャウトですわ!
お花は友達!適当にぶっ放してもヴリちゃんに仇なす者共にしか当たらないので安心ですわ〜!
ばうばうばう!
落下してお花を踏み荒らしてもそれはわたくしの責任ではございませんわ〜!
異形なる機械に繋がれた少年の体躯を覆い隠すものはない。
その姿を見たメサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)は顔を赤らめていただろうか。
レーティングが上がってしまうことに危機感を覚えただろうか。
恐らく後者だったのではないかと勝手に思っている次第ではあるのだが、彼女はそんなことなどおかまいなしと言わんばかりにオーバーロードによって真の姿を晒す。
いや、真の姿を晒すのは暴竜たる『ヴリトラ』。
破滅の化身の如き姿。
「ヴリちゃん! リグ・ヴェーダモード! 頭におライドですわ~!」
空に舞う真の姿を晒した『ヴリトラ』。メサイアはその頭部に座し、空に浮かぶ赤い鎧の巨人を見やる。
見た覚えがあるような、ないような。
曖昧な記憶の中で彼女は大いに記憶細胞を叩き起こす。
ここで思い出せなかったら、後もうずっと思い出せないような気がしたからだ。なんか赤いキャバリアモドキだったような。
「やっぱり見覚えがあるような……セラ……セラフィ……」
はいだめー。
「むむむ……思い出せませんわ~! 突っ立ってないで手伝ってくださいましー!」
だが、そんな彼女の言葉を無視するように赤い鎧の巨人は光背輝かせ、空に浮かぶのみ。
ただ『オーデュボン』を見つめるのみである。
これではカカシのほうがまだ役に立つというものである。なんということでしょう。本当にもう、最近のキャバリアモドキはどうなってますの! と憤慨するメサイア。
それでも動かない。
「……やる気ねぇですわね! ご立派なカカシですこと!」
いいですものいいですもの、わたくしがやってやりますわ! とメサイアは『ヴリトラ』と共に皇帝親衛隊オブリビオンたちを蹴り飛ばす。
もう容赦などない。
突っ立ってるあの赤いキャバリアモドキに突っかかればいいものを、こちらにばっかりオブリビオンはやってくる。
それはもう本当にとさかに来ますわよ!
だが、正攻法で強大なオブリビオンであるパッセンジャーを相手取るのは難しい。
猟兵達が打撃を与えていてもなお、かのパッセンジャーは健在である。
周囲にある生命を吸い上げ続けているからだ。
「なんです、ヴリちゃん? ふんふん、なるほどなるほど? おパッセンジャーは草花に命中するような攻撃をしてこない?」
それが弱点ってなんですの?
メサイアはそんなふうに思ったが、それが事実であるのならばと花園の上にとどまる。『ヴリトラ』に迫る魔導砲撃の一撃が直撃する。
だが、その一撃を受け止めたのは翼だった。
もとを正せばラージシールド。変化した翼の強度は魔導砲撃の一撃に耐えうる。
だが、その砲撃の余波が花園を揺らす。
「――……そこに陣取るか」
「ええ、ですが、おビットであっても同じことでしてよ!」
草花に当たる攻撃をしないのならば、メサイアたちは地の利を得たも同然である。放たれる砲撃は、それだけで花々を散らす。
飛び散る火の粉は燃やしてしまうかもしれない。
故にパッセンジャーの動きが止まる。
「動きを止めましたわね! ヴリちゃん! 吼えるのですわ!」
狂竜咆哮(ベルセルクシャウト)の一撃がパッセンジャーを撃つ。己たちに仇を為す者にしか影響を与えないユーベルコードの咆哮は、パッセンジャーだけを打ち据えるだろう。
「ばうばうばう!」
「よく吠える……犬にしては」
「い、犬ぅ!? どう見ても、おドラゴンでしょうに!」
迫るパッセンジャーに『ヴリトラ』は安い挑発だと言うようにスマッシャーテイルで異形なる『無敵機械』を打ち据える。
近づけばそれだけで生命を吸収される。
距離を離す。咆哮が轟き、周囲にあった皇帝親衛隊オブリビオンたちが恐慌状態へと陥る。
暴走した魔獣達が荒れ狂う。
次々に彼らは空を飛ぶことができなくなり、花園に下りるだろう。
それがパッセンジャーの逆鱗に触れる。
「花を踏んだ」
理由にならぬ理由。パッセンジャーがメサイアたちに完全に背を向ける。放たれた衝撃波さえもいとわず、パッセンジャーは花を踏んだオブリビオンたちを滅ぼしていく。
まさに理不尽。
己の背に敵がいようとも構わなぬ暴挙。
故にメサイアは見逃さない。放つ衝撃波でもってパッセンジャーを押しつぶす。
「お花はお友達ですわ~! このユーベルコードなら雑にぶっぱなしても安心ですわ~! 落下したお配下の皆さんの責任はわたくしにはありませんので、ばうばうばうっといきますわよ~!」
放たれ続ける衝撃波。
軋む『無敵機械』。パッセンジャーは己が何よりも草花を優先するが故に、それを弱点とし、『ヴリトラ』の齎す圧倒的な破壊の前に膝を突くしかないのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
オーバーロードで真の姿に
「植物を司る女神として、植物を傷つけなかった事に感謝します。
ありがとうございます。」とにこやかにお礼を。
親衛隊は神罰・衝撃波・範囲攻撃にて、彼と同じく植物を傷つけないよう吹き飛ばして撃破する。
彼の先制攻撃は第六感で予測し、空中浮遊・自身への念動力・空中戦・見切り・ダンスにて宙を舞うように躱したり、オーラ防御を纏った天耀鏡の盾受けで防いだり、衝撃波や結界術で相殺したりで対応します。
(植物を盾にはしません。)
天候操作で雨を降らして《神域創造》発動。
無敵機械を停止させます。襲ってくる親衛隊も同様に。
彼に「貴方は御自分が嫌いなのですね。境遇を思うと判る気もいたしますが…、でも貴方がいなければこの大陸の植物はどうなっていたか判りません。
貴方の命に意味は無く、多くの命を奪った罪が有るとしても、貴方の生涯には意味がありますよ。
それは忘れません。」
と、多重詠唱による光と雷の属性攻撃・全力魔法・高速詠唱で生み出した輝く雷にて、彼をスナイパー・貫通攻撃で撃ち抜きます。
どうか安らかに。
「植物を司る女神として、植物を傷つけなかったことに感謝します。ありがとうございます」
その言葉は戦場に似つかわしいものであった。
ともすれば、それは友人に語りかけるような言葉でもあった。
神性発露するは、大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)。
彼女は大空の世界ブルーアルカディア、屍人帝国『オーデュボン』の空に浮かび、真の姿である神としての姿を顕にする。
神名『アシカビヒメ』。
羽衣まとう女神は『皇帝』パッセンジャーを見下ろす。
彼の弱点は『草花、木を傷つけるような攻撃をしない』ということであった。植物と活力を司る女神である詩乃にとって、それは本来であれば喜ばしいことであっただろう。
けれど、相手はオブリビオンである。
にこやかな笑顔は、敵対する者とは思えないほどであった。
対するパッセンジャーの表情は何の感情も浮かんでいない。そこにあるのは神性であろうが、人であろうが、獣であろうが、変わることのない表情。
「礼を言われる理由などない」
その言葉とともに皇帝親衛隊オブリビオンたちが詩乃に殺到する。
だが、即座に詩乃は神罰宿る衝撃波でもって彼らを迎撃し、吹き飛ばす。同じ様に植物を傷つけることのない一撃であった。
さらにそこに迫るのはパッセンジャー。
『無敵機械』を変形させ、凄まじまでの拳の殴打が迫る。手数を増やしてきているのだ。疾風怒濤と呼ぶにふさわしい。
空中に浮かぶ詩乃はそれを念動力を駆使し、舞うように躱す。
だが、躱しきれるものではなかった。
鏡を盾にして受け止めるも、その一撃だけで体が吹き飛ばされる。真の姿を晒してもなお、その力は圧倒的であった。
「そうだ。理由などない。俺がアンタたちを滅ぼすのに、理由などない。アンタたちを俺は生命とは認めていない。神であったとしても、猟兵である以上生命の埒外にあるもの。故に、生命ではない」
打ち込まれる拳を結界術と衝撃波で相殺するのがやっとだった。
「貴方にとって、生命とはなんなのです」
その問いかけにパッセンジャーは拳の一撃で詩乃を吹き飛ばす。
「俺が、俺の体をつなぐ、『|これ《無敵機械》』が貪るものだ。お前たちは、生命でありながら生命の埒外に立つ。故に俺の敵だ。滅ぼすべき敵だ」
そして、それ故に彼は己を殺すものを求めている。
青き鎧の巨人と少年に求めたのもそれだ。あれは己を殺す潜在性を秘めていた。だから、欲したのだ。
「貴方はご自分が斬らないのですね。境遇を思うと判る気がいたしますが……」
「アンタは嵐にも同じことを言うのか」
「でも貴方がいなければこの大陸の植物はどうなっていたかわかりません。貴方の生命に意味はなく、多く生命を奪った罪があるとしても、貴方の生涯には意味がありますよ」
詩乃の指先が天に向けられる。
彼女の天候操作の力が雨を降らせる。
雨は植物にとって生命の源。成長にはなくてはならないもの。水がなければ枯れ果てて行くしかない。
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
迫る拳。
しかし、その拳は彼女の眼前で止まる。
「それを忘れません」
神域創造(シンイキソウゾウ)。
それは慈雨によって戦場を詩乃が絶対支配権を持つ神域に変える。此処は既に彼女の領域。
屍人帝国『オーデュボン』ではない。
彼女の言葉に止まる『無敵機械』。
だが、その支配すら振り切るように軋む『無敵機械』。
パッセンジャーの顔にあるのは、怒りでも哀しみでもなかった。
ましてや喜びもなければ、楽しさを見出すものでもなかった。あるのは虚無。ただ、己の死を望む者には似合いの感情であった。
「干天の慈雨を以って私はこの地を治めましょう。従う者には恵みを、抗う者には滅びを、それがこの地の定めとなる。貴方は刹那の虹を美しいと思う。那由多の灰色を厭うように」
詩乃の掲げた指先。
天より放たれるは、編み上げた雷。
輝くそれは、パッセンジャーを撃つ。
紫電が周囲に満ち、その鋼鉄の機械を破壊する。
「どうか安らかに」
詩乃は願うしかない。
パッセンジャーが霧消した処で還らぬものがある。
けれど、詩乃は言ったのだ。忘れないと。
意味のない生涯などない。理由なき生命などな一つない。だからこそ、詩乃は己の神性でもって示してみせるのだ。
荒野に咲く百合の花が、嵐にも耐えるのだとすれば。
その花を慈しみ、虹の架け橋を絆ぐのが人の思いなのだと――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステラさんと】
うわ……。
あの(はぁと)、この世界にやべー影響を及ぼす前に、
わたしの音符で撃ち落とさないといけないでしょうか。
って、えぇ……。
いまさら(キリッ)とかしても、
やべーのは消えないっていうかもう|標準装備《なかったことにはできない》ですよ?
ま、まぁ、『旅人』が、世界を超えて旅する者なら、
わたしたちも似たようなものではありますね。
……愛が極まりすぎているのは、ちょっと置いておきますが。
弱点、と言っていいのかは解らないのと、
あなたの『愛』を利用するみたいになってしまうのは、
勇者としてちょっと申し訳ないですが、
自然を傷つけないというのは、わたしとしても望むところです。
草木の側で先制攻撃を防いだら、
ステラさんに乗って突撃、いきますね!
ステラさんの攻撃で親衛隊の壁を突破したら、
わたしは皇帝さんに直接打撃、いきますよ!
草も木も花も、この世界に在るべきものならば、
わたしの音叉が傷つけることはありません。
ですので、安心して当たってくれていいですよ!
あなたがいるべき場所へ、還してあげます!
ステラ・タタリクス
【ルクス様と】
セラフィムキタァァァァッ!!
|V《ヴィー》様ー!フュンフ様ー!
こっちこっちー!!(両手ぶんぶん
ああんもう、ガン無視萌え(はぁと
後はエイル様を|メイド《犬》の嗅覚で見つけないと
というわけでルクス様戦いますよ(キリッ
誰がやべーメイドですか
さて、と
これまでの戦いとか予知予兆とかを振り返って推測してみたのですが
かの皇帝は文字通り|パッセンジャー《何かに乗って此処に訪れた旅人》なのでしょう
おそらく世界を越えて
なら|V《ヴィー》様が来たのもきっと
そして無敵機械はおそらく植物の命を吸い上げない
なら草木や花こそがパッセンジャーと常に共に在れるモノなのでしょう
それを踏みにじる者滅ぶべし
愛が極まっています
何故か共感できますね?
ルクス様
彼の『草木や花を巻き込まない』弱点、活用しますよ!
草木の側に在れば先制攻撃そのものがこないはずです!
【ガレオンチェンジ】で飛空艇に変身
ルクス様を乗せてオーデュボンの大地近くを低空飛行しつつ
親衛隊には【エールプティオー・プルウィア】で攻撃
ルクス様合わせてください!
「セラフィムキタァァァァッ!」
其の叫びは雄叫び。
いや、わりとマジで喉が潰れるほどの声であったのかもしれない。
「『|V《ヴィー》』様ー!『フュンフ』様ー! こっちこっちー!!」
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は両手をぶんぶん振って、空に座す赤い鎧の巨人に猛烈にアピールする。
それは推し事であった。
メイドにはやらねばならぬことがある。それがこれであるというのならば、恐らく全世界メイド協会からクレームどころか刺客を送られかねないので、一応断っておく。
このメイドは特殊な訓練を受けています。
「うわ……」
ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)はそういうステラの姿をこれまで何度か見てきた。
もう取り繕うことなど出来ないレベルであれな感じなのを見てきた。
だから、そう呟くことしかできなかった。
けれど、ステラの猛烈アピールを前にしても空に光背と共に浮かぶ赤い鎧の巨人は動かなかった。反応すらしていない。
「ああんもう、ガン無視萌え」
はぁとマークが見える。
「あの(はぁと)、この世界にやべー影響を及ぼす前にわたしの音符で撃ち落とさないといけないでしょうか」
勇者の役目でしょ。
しかし、ステラはめげない。
どれだけ塩対応されても、忠犬狂犬メイドのステラは何処までも行くのである。世界だってまたぐのである。猟兵って、え、そういう?
「後は『エイル』様を|メイド《嗅覚》で見つけないと。というわけでルクス様戦いますよ」
「って、えぇ……いまさらキリっとかしても、やべーのはもう消えないっていうかもう|標準装備《なかったことにできない》ですよ?」
「誰がやべーメイドですか」
しかしステラはキリっとしたままである。
まるで何事もなかったかのように振る舞う。あれ、ルクスのほうがおかしなこと言ってるって空気を出している。
迫る皇帝親衛隊オブリビオンたちにとっては、どっちだっていい。
彼らにとっては後門の『皇帝』、前門の猟兵なのである。彼らが生き残るには猟兵を滅ぼしていく道しかないのだ。
「かの皇帝は文字通り|パッセンジャー《何かに乗って此処に訪れた旅人》なのでしょう。恐らく世界を超えて。なら|『V』《ヴィー》様がきたのもきっと」
「ま、まぁ『旅人』が世界を超えて旅する者なら、わたしたちも似たようなものではありますね」
愛が極まり過ぎてヤベーメイドであるのは、ちょっと置いておく。
ガレオンチェンジで飛空艇に変身したステラにルクスは乗り、皇帝親衛隊オブリビオンを躱す。
目指すのは『皇帝』パッセンジャーのみ。
かのオブリビオンは強大そのもの。
『無敵機械』から放たれる光の檻。
それを飛空艇は躱す。
「『無敵機械』はおそらく植物の生命を吸い上げない。それを生命と認識していないから。なら、草木や花こそがパッセンジャーと常に共に在れるものなのでしょう。それを踏みにじる者滅ぶべし、愛が極まっています。何故か共感できますね」
あ、其処につがるんだ、とルクスは思った。
というより、その草木を利用して近づくのは利用するみたいで気が引ける。
愛を利用しているような気がするのだ。
勇者としてそれは、申し訳ないと思ってしまう。
「自然を傷つけないというのは、わたしとしても望むところです」
「俺はアンタたちを生命と認めていない。生命の埒外たる猟兵。理屈じゃあない。俺はアンタたちを滅ぼす。アンタたちをこそ滅ぼさなければならない」
翡翠の瞳がユーベルコードに輝く。
パッセンジャーはこれまで猟兵たちの攻勢を受け止め続けてきた。
神罰の如き雷の一撃であっても、その身は死なず。
吸い上げる生命力に寄って、その『無敵機械』すら修復して十全たる姿でルクスやステラを迎え撃つのだ。
「『弱点』は活用してこそ! いきますよ、ルクス様!」
「いきます!」
飛空艇が『オーデュボン』の大地をスレスレに飛ぶ。
これならば『草花や木を傷つけるような攻撃をしない』パッセンジャーには如何に『無敵機械』を変貌させようとも攻め手に欠ける。
恐らく速度も威力も何もかもがパッセンジャーの方が上だ。
『オーデュボン』のオブリビオンたちを恐怖で束ねているのも頷ける。恐怖かられて皇帝親衛隊とうそぶくオブリビオンたち。
そんなオブリビオンすらパッセンジャーは生命として見ていない。
ただの羽虫。
例え、猟兵に倒されたとしても、一切の感情を動かさないだろう。
「草も木も花も、この世界に在るべきものならば」
「天使核誘導弾、装填。さあ、サーカスの開幕です!」
ステラのユーベルコードに寄って、天使核がミサイルへと変貌し、複雑に空を飛ぶ。それらは、パッセンジャーを助けようと集まる皇帝親衛隊オブリビオンたちを撃ち落としていく。
あのオブリビオンたちが近くに居るだけで、彼らの生命はパッセンジャーの生命のタンクになってしまうからだ。
エールプティオー・プルウィアは、そんな皇帝親衛隊オブリビオンを撃ち落としていく。
大地をギリギリに飛ぶステラは見ただろう。
パッセンジャーの顔を。
何の感情も浮かんでいない。怒りもない。哀しみもない。
ただ、ただ、目の前の存在を滅ぼすためにだけある。
「わたしの音叉が傷つけることはりません。あなたが慈しむもの全て!」
「嵐を前にして、何の心配をしている。俺は嵐そのもの。理不尽の体現者。お前たち人間の言う言葉に、耳を傾ける必要などない。俺は、俺の守るべきものを……守るべきもの?」
パッセンジャーの動きが止まる。
世界調律(セカイチョウリツ)の音が歪を正す。
音叉が輝く。
それはルクスのユーベルコード。
飛空艇の船首に立ち、ルクスの掲げる巨大音叉剣が光を放つ。
「あなたがいるべき場所へ、還してあげます!」
過去は過去に戻るしかない。
終わりは見えず。
されど、見果てぬものを見る。それは夢想の如き悪性。人の悪性そのものであった。悪癖と言ってもいいだろう。
あるように見える物を見ているから、そうなるのである。
パッセンジャーは、世界を正す音を聞く。
それは歪み果てた彼の耳に響き、振り落とされた巨大な光の剣によって視界を埋め尽くされる――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヴィクトリア・ノウェム
屍人帝国って以上の恨みはないけど、首を突っ込んだ以上、放置するのも寝覚めが悪いです
……いくです、皇帝
前提として、エンジェルの力でちょっと空中浮遊をして、草花は踏まないようにしとくです
最初から全開出力で空中から強襲、Dアヴェンジャーからのガム・ボム弾ばら撒きで自称親衛隊を飛べなくしてやりつつ降下、足元の草花を巻き込むような範囲攻撃を躊躇させるです
で、その間にCファングでさっきの親衛隊を捕まえて怪力で投げつけ、UCでエル・セプスを小型化、攻撃回数|↓《ダウン》、移動速度|↑《アップ》して再展開される前に突っ込み『Eガントレット』での水属性パンチ+追撃の『ミスリルセイバー』を叩き込んでやるです……!
屍人帝国『オーデュボン』は多くの浮遊大陸を力でもって蹂躙してきた。
それは全てが『皇帝』パッセンジャーの望みを叶えるためである。己の死。そのためだけに多くの人々を虐げてきた。
そこに人間の倫理など存在しない。
あるのは理不尽そのもの。
体現したものは嵐そのもの。
パッセンジャーにとって、それは自然なことであった。
今も空を飛ぶ皇帝親衛隊オブリビオンたちすら羽虫程度にしか思っていない。生命と認めていない。
目の前の猟兵たちもそうだ。
「生命の埒外たる猟兵。アンタたちは、やはり俺の敵だ」
パッセンジャーの言葉にヴィクトリア・ノウェム(はらぺこ空戦天使・f33941)は、屍人帝国であるという以上の恨みなどなかったが、一度首を突っ込んだのならば、それを放置するのは目覚めが悪いと思った。
だから、パッセンジャーの言葉にもただこう返すだけなのだ。
「……いくです、『皇帝』」
彼女の飛空艇『エル・セプス』は外装形態となってヴィクトリアの体を覆う。
外装となった彼女の飛空艇は、炉を燃やしながら飛ぶ。
草花を踏むこと無く、この自然豊かな『オーデュボン』の大地を駆け抜けるのだ。
出力を全開にした空中からの強襲。
ガム弾とボム弾をばらまきながら、皇帝親衛隊オブリビオンたちの動きを止める。牽制のための射撃。
さらに彼女はケルベロスファングで皇帝親衛隊オブリビオンたちを繋ぎ、パッセンジャーへと投げ放つ。
これで動きをさらに止め、広範囲の攻撃を躊躇わせようというのだ。
それは確かにパッセンジャーの動きを止めた。
けれど、同時に皇帝親衛隊オブリビオンは、パッセンジャーにとっては羽虫が落ちた程度でしかなく、またその生命力を吸い上げ、己の身に刻まれた光の剣の一撃の傷跡を癒やすのだ。
これが自死を望む理由。
他者を虐げる理由なのだ。
生命力を吸い上げられ、ボロボロになって崩れていくオブリビオンたち。
その瞳は恐怖に染まっていた。恐怖だけが、彼らをパッセンジャーに従わせる理由であったのだ。
「猟兵。アンタは、俺に死を齎すか。それとも齎さないのか。どちらだ」
その言葉にヴィクトリアは怖気が走る。
部下を己の生命力のタンク、いや、それ以下にしか見ていない。
「フォームシフト、です」
ヴィクトリアの瞳がユーベルコードに輝く。
手数は捨てる。
この際速度で勝るしかない。敵の攻撃は光の檻。これに囚われれば、次に皇帝親衛隊オブリビオンたちのようになるのはヴィクトリアだった。
だからこそ、速度を得る。
攻撃に回していた出力のすべてを速度に載せ、圧倒的な速度で光の檻を躱す。
一直線に走るヴィクトリアはまるで矢のようであった。
「このエル・セプスをただの可変型飛空艇だと思ったら……大間違い、です」
水纏う『エル・セプス』の外装たるガントレット。
その一撃がパッセンジャーの生身の肉体へと叩き込まれる。
さらにそこに叩き込まれるのは、魔法剣。
四つの剣がパッセンジャーの肉体を貫く。激痛が走っているだろう。けれど、ヴィクトリアは見ただろう。
パッセンジャーの顔には何も浮かんでいない。
痛みも苦しみも悲しも怒りも。
何も。
これが嵐を体現する理不尽そのもの。
けれど、それらを超えていくからこそヴィクトリアは勇士であり、猟兵なのだ。
四つの魔法剣を打ち込み、さらに水纏うガントレットの一撃をヴィクトリアは叩き込み、『無敵機械』たる中枢、その核へと己の力を届かせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
…パッセンジャー…乗客か『お荷物』か…
どちらにせよ無敵機械を考えると皇帝に付ける名前としては皮肉だね…
…まずは親衛隊か…一度に相手するのは面倒だな…
…現影強化術式【ファンタズマゴリア】で濃霧の幻影を展開…
…邪魔になる親衛隊を術式装填銃【アヌエヌエ】で撃ち抜いて処理していこう…
抹殺形態は…草花を巻き込む攻撃は出来ない…と言う点を利用して
攻撃方向を限定…障壁で防ぎつつパッセンジャーの周囲に遅発連動術式【クロノス】の印を刻んで【夜空染め咲く星の華】を発動
…草花を巻き込まずに攻撃をするよ…
…そしてダメージから回復する前に無敵機械をハッキング…生命吸収機能を『逆転』させて周囲にエネルギーを放出させるよ…
「……パッセンジャー……乗客か『お荷物』か……どちらにせよ『無敵機械』を考えると『皇帝』につける名としては皮肉だね」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は、その言葉の意味を知る。
パッセンジャー。
それは屍人帝国『オーデュボン』の『皇帝』の呼び名である。
かの『皇帝』は理不尽の体現者。
まるで嵐そのもののように人間に対して苛烈。
己の自死を望む存在であり、『無敵機械』は周囲の生命力を吸い上げ続ける。
認識の齟齬があると思っただろう。
「……まずは皇帝親衛隊か……」
パッセンジャーの周囲に展開する皇帝親衛隊オブリビオンたち。
彼らはそう名付けられたのではない。己たちで名乗っているだけに過ぎない。何故ならば、パッセンジャーは皇帝親衛隊オブリビオンたちですら生命としてみていない。
ただの羽虫程度にしか思っていない。
守られる必要など無く。
ただ、周囲にあるだけでその生命を吸い上げるタンクか、それ以下でしかないのだ。
「……一度に相手するのは面倒だな……」
現影強化術式『ファンタズマゴリア』によって濃霧の現影を展開し、メンカルは術式蒼天獣で皇帝親衛隊オブリビオンたちを撃ち落としていく。
敵を撹乱する目的もあったが、同時に今パッセンジャーに回復される隙を造られるのは厄介であったからだ。
猟兵たちの苛烈なる攻勢によって確実にパッセンジャーは消耗している。
ならばこそ、皇帝親衛隊オブリビオンたちはパッセンジャーにとって、生命力を吸い上げるものとなるだろう。
回復されてしまうのだ。
今でも十二分に蓄えられた生命力で持って猟兵の攻勢を躱してきているのだ。
「……『草花を巻き込む攻撃は出来ない』……んだったね……」
メンカルは迫るパッセンジャーを見る。
無敵機械が変形し、その一撃をふるいあげている。
到底防げない。
けれど、メンカルの瞳はユーベルコードに輝いていた。
彼女がこれまで皇帝親衛隊オブリビオンを相手にしていたのは、障害を排除するためだけではなかった。
そう、彼女の術式蒼天獣が放っていたのは遅発連動術式『クロノス』。
その印を刻み込んでいたのだ。
「天の耀きよ、咲け、放て。汝は光芒、汝は落輝。魔女が望むは闇夜を穿つ星月の矢」
詠唱と共に空に刻まれるは巨大魔法陣。
それは『クロノス』によってパッセンジャーを囲う。打ち込まれる拳が障壁を砕く。
だが、その一撃はメンカルの目前で止まる。
彼女の背後にある草木をパッセンジャーは見ていた。
「……嵐の体現者と言いながら、それだけを生命と見ている……オブリビオンも人も、お前にとっては生命ですらない。その『無敵機械』だけが、それらを生命とみなし、草花を生命として見ていない……皮肉だね……」
夜空染め咲く星の華(ダイ・ザ・スカイ)が空より数多の星の力を宿した光柱をパッセンジャーに打ち込む。
「アンタたち猟兵は生命の埒外。俺にとってアンタたちは生命ではない。だからこそ、俺はアンタたちを滅ぼさなければならない」
その星の光柱を甘んじてパッセンジャーは受け止めるだろう。
砕ける『無敵機械』。
ほころびはそこにしかない。メンカルは『無敵機械』にハッキングする。生命吸収機能を反転させる。
エラーを吐き出させるのだ。
正常に戻るかも知れないが、それでも放出された生命力はパッセンジャーを追い込むだろう。
溢れる生命力がメンカルや周囲の草花へと噴出していく。
煌めく生命。
これだけの輝きを見ながら、パッセンジャーの瞳には虚無しかない。
怒りも悲しも、喜びも楽しさも。
何もかも置き去りにしてきたように、輝く生命の奔流に佇むパッセンジャーをメンカルは、光の柱を落とし、さらに追い込むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
どんな事情があるのかは知らないけど
今を生きる人を害して良い理由にはならないね
親衛隊は神気で攻撃を防ぎつつ
ガトリングガンの範囲攻撃で迎撃しようか
草花の近くを通って行けば
敵の攻撃方向を読みやすいかな
同様に魔導砲撃を撃ったら
草花を巻き込みそうな場所を通る事で直撃を避けつつ
余波は神気で防ごうか
あの時の癖を利用させて貰うよ
ドローンは範囲攻撃と神気で何とかしよう
子機を出してくるメカはそれなりに相手した事あるしね
後は我慢比べだね
相手の攻撃をできるだけ躱し防ぎながら
ガトリングガンで無敵機械を削っていこう
草花を思う気持ちを他の人に向けれたら別の道もあったのかな
オブビリオンだから言っても仕方ないのかもしれないけど
存在には理由がある。
存在しうるだけの理由が。
屍人帝国『オーデュボン』の『皇帝』パッセンジャーにとって、それは己の自死であった。
それを叶えるためにあらゆる浮遊大陸を蹂躙してきた。
ときに魔獣を、時に人を。
彼にとって、それらは生命ではない。彼にとっての生命とは草花だけである。故に他のものは生命ではない。
猟兵も例外ではない。
「アンタたちこそが生命の埒外。もっとも生命から遠きもの」
故に己の敵だとパッセンジャーは星の光受けた柱を受けてなお、その身に溢れる生命力で持って傷を癒やしながら『無敵機械』の腕を砲身に見立て、向ける。
「どんな事情があるのかは知らないけど、今を生きる人を害していい理由にはならないね」
佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は走る。
神気を放ち、皇帝親衛隊オブリビオンたちを止め、ガトリングガンで撃ち落としていく。
草花の近くを走るのは『皇帝』パッセンジャーが『草花や木に当たるような攻撃をしない』からである。
敵の攻撃がこれだけで十分に読みやすくなる。
自分を狙う魔導砲の砲口。
それが見えるのだ。僅かに草花に当たると、害を為すと判断されれば、攻撃が来ない。だからこそ、晶は皇帝親衛隊オブリビオンたちの猛攻を凌ぐことができたのだ。
だが、皇帝親衛隊オブリビオンたちを相手どっていれば、いずれ草花に影響がでない瞬間が訪れる。
「アンタたちは滅ぼす。生命のガワをかぶった埒外たる存在。消えろ――」
そこにあるのは激情でもなんでも無かった。
翡翠の瞳には虚無しかない。
放たれる一撃が晶に伸びる。
展開された神気が光条を固定する。だが、それを超えて魔導ドローンが飛び、晶に襲いかかる。
けれど、それを晶は神気で固定する。
これまで戦い続けてきた。
猟兵として。
決して晶は自身を天才だと思っていない。実力ある猟兵であるとも思っていない。
凡庸なる者だと思っているだろう。
邪神を身に宿しながら、庸人の錬磨(ヒューマン・エクスペリエンス)をたゆまず行うことができたことこそが晶の凡庸ならざる事柄である。
「あの時の経験が活かせる……!」
培ってきた経験がある。
子機によってオールレンジ攻撃を仕掛けてくる敵。
それは晶の経験の中にある。ならばこそ、晶は地上を走る。草花を傷つけないのならば、状況こそが晶を生かす。
「草花を思う気持ちを他の人に向けられた別の道もあったのかな」
「そんなものなどない。何故生命でもないものに俺が気を割かなければならない」
「……オブリビオンだから言っても仕方ないのかもしれないけれど……後は我慢比べだね」
理解には程遠く。
相互にはなお遠く。
故に晶は猟兵である。そしてパッセンジャーはオブリビオンである。
滅ぼし、滅ぼされる間柄でしかない。
放つ弾丸の音と砲撃の音が浮遊大陸に響く。戦禍の音など気にもとめず、大地覆う草花は風に揺れ続けている。
そこには戦いと無縁の光景があった。
晶はガトリングガンの銃身が焼け落ちるその時まで、パッセンジャーの『無敵機械』の持つ生命力を削り続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
●ごうごうびゅうびゅう
●ごうごうびゅうびゅう
んもー
こういうのって救ってくれちゃう系と並んでめんどうなやつだよねー
●風は全てを与える
●風は全てを奪う
●風は全てを運ぶ
●結論:風はただいつも吹いているだけ
ボクの【第六感】が冴え渡る!
なんちゃら親衛隊も狭まる檻も全てすり抜けてあの子に迫る最適ルートを!
とUC『暴風の化身』で嵐となってビューッと吹いていこう!
大陸の草木を嵐に巻き込もうがお構いなしでね!
だって敢えて巻き込まないようにうするのもめんどくさい!
風が吹いて、花が散り、種子を飛ばす
そんな風に生命も運ばれ流されていくものさ
実を成す前に散るものもあるって?クスッ、そうだね!
暴風の化身(ゴッドウィンド)は戦場に降り立つ。
肉体そのものを肉を削ぎ骨を削り有形無形を粉砕する神砂嵐へと変異させ、ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は吹きすさぶ神として存在する。
空を飛ぶ皇帝親衛隊オブリビオンたちも暴風の前には無意味である。
ロニは荒ぶ風そのものとなりながら、憤慨していたのかもしれない。
オブリビオンの中には『救ってくれちゃう系』がいる。
それは彼にとって迷惑きわまりないものであった。面倒だと言ってもいい。
屍人帝国『オーデュボン』の『皇帝』パッセンジャー。
彼の望みは自死。
己の死を望むオブリビオンである。
彼に接続された『無敵機械』は周囲の生命を吸い上げる。全ての命あるものと認識したものを奪い続ける。
パッセンジャーにとって生命とは草花だけであった。人も魔獣もオブリビオンも猟兵も彼にとっては生命ではない。
けれど『無敵機械』は違う。
草花以外の全てが生命。
故に奪う。吸い上げる。
その有り様はまさに嵐そのもの。理不尽そのもの。
故に相対するロニもまた風を持ってふきし荒ぶ。
風は全てを与える。
風は全てを奪う。
風は全てを運ぶ。
「結論! 風はただいつも吹いているだけ」
「当たり前のことだ」
パッセンジャーはロニの風と相対しながら言う。彼にとって、それは当然のことだったからだ。
ロニの風はあらゆるものをなぎ倒す。
木々であろうとも草花であろうとも。何もかも。
「だって、あえて巻き込まないようにするのもめんどくさい!」
それに風は吹いて、花が散り、種子を飛ばす。
そんなふうにして生命は運ばれて流されていく。そうして繁栄していくのだ。
「実を為す前に散るものもあるって、知ってる?」
「知らない」
放たれる光の檻。
荒ぶ風には、それは無意味である。
傲慢なる風と理不尽なる嵐。
その2つは似ているようでいて、まったく異なるものであった。
ロニにとって、それは同様であっただろう。自分には意味のないことだった。笑うしかない。
そうだね、と肯定することしかできない。
ただただ、それしかできないのだ。
有形無形全てを粉砕する嵐がパッセンジャーの体を切り裂いていく。
血潮は赤く。
人の体そのもの。
けれど、その内側にあるのはむしろ人より遠く。そして神からも遠く、忌み嫌うようであった。
「クスッ、そうだね! 君はボクのこと嫌いそうだものね!」
ロニは笑った。
笑って暴風そのものとなってパッセンジャーを切り裂き続ける。
吸い上げられる生命力を上回る勢いで放たれる風が、命を奪っていく。
ごうごうびゅうびゅう。
ごうごうびゅうびゅう。
風の音だけが世界に満ちていく。ロニはそれを笑う。
こんな嵐にあっても人は立ち向かっていくのだ。愚かしいと笑う者もいるかもしれない。
けれど、その愚かしさこそロニは愛おしいと思うだろう。
故に、ロニは自死を願うパッセンジャーに満ちる生命を削り取り続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィクトル・サリヴァン
…虫とか小動物も気をつけた方がいいかな?
何となく救命用のベッドに見えるけども…まあまずは親衛隊をどうにかしないと!
高速、多重詠唱で風と重力、そして水の魔法をそれぞれ行使。
空の親衛隊に重圧かけつつ暴風叩きつけ二重に動きを制限しよう。
この程度で落ちるとは思わない、けど狙い易いのは確実だ。
水魔法の水弾を翼の魔獣に叩きつけ地面の無い場所へ撃墜していこう。
その間も周囲を観察、草花のある場所に算段を。
皇帝本人来たら踏まぬように注意しつつ草花の近くへ移動。
水魔法で水壁作り凌ぎつつUC準備、できたら雷属性と落雷合成して強化雷撃を皇帝にぶち当てる!
本当は竜巻がいいけど…草花は守らないとね。
※アドリブ絡み等お任せ
『草花や木に当たるような攻撃をしない』。
それが|『強襲作戦』《ファーストアタック》によって得られた屍人帝国『オーデュボン』の『皇帝』パッセンジャーの弱点であった。
言葉にすれば、それは理解し難いものであったことだろう。
なぜなら、草花や木々といったものは、戦いの中でじゃまになることはあれど、それを傷つけることを厭うオブリビオンが居る事自体が稀有であったからだ。
ましてや敵は強大な屍人帝国を統べる存在である。
繋がれた『無敵機械』。
そのさまをヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)は救命用のベッドにも思えた。
「……虫とか小動物にも気をつけた方がいいかな?」
ともあれ、ヴィクトルは高速詠唱によって風と重力、そして水の魔法をそれぞれ行使し、迫る皇帝親衛隊オブリビオンたちを相手取る。
敵の数は多い。
けれど、それを『皇帝』パッセンジャーは気にも止めていない。
生命とすら見ていない。
彼にとって生命ではないのだ。猟兵も魔獣も、人も、同じオブリビオンですらも。
彼にとっての生命は草花だけ。
だから、傷つけないというのか。
放たれる水弾の魔法を魔獣の翼に叩きつけ、雲海へと叩き落とす。
さらにヴィクトルは周囲を見回す。草花を傷つけないというのならば、そこに行けば攻撃がこない。
だが、それを上回る速度で迫る者があった。
「アンタたち猟兵は生命の埒外。俺にとって生命ではなく、滅ぼすべき者たちだ。だから」
振るわれる拳。
その一撃は重たく。
防御が間に合おうとも間に合わずともヴィクトルの生命を絶命させる力であった。
けれど、ヴィクトルは理解していた。
己たちを生命とみなさず。
草花を生命と見なすパッセンジャーならば。
「――……」
「そうなるよね」
水壁の魔法が動きを止めたパッセンジャーに当たり、飛び散る。
パッセンジャーは厭う。
草花をわずかにも攻撃する可能性があることを。ヴィクトルの目前に迫った拳が止まったのは、そのためだ。
ヴィクトルの瞳がユーベルコードに輝く。
本当は竜巻がよかった。雷と竜巻を合わせたユーベルコード。エレメンタル・ファンタジアの一撃は、それでパッセンジャーを吹き飛ばしただろう。
けれど、草花を守らねばと思うのはパッセンジャーだけではなかった。
ヴィクトルもまたそうであったのだ。
だからこそ、ヴィクトルの瞳はユーベルコードに輝く。
「雷を組み合わせて――!」
落ちる雷。
満ちるは雷。
雷鳴は嵐の中に轟く。雷と雷を掛け合わせたユーベルコードの一撃が『無敵機械』たるパッセンジャーに繋がれし、異形機械を穿つ。
その一撃は強烈無比。
視界が白く染まるほどの一撃。
ヴィクトルは水の壁でもって草花を守りながら雷撃に撃たれ沈むパッセンジャーを見やる。
彼が守ろうとしたもの、奪おうとしたもの。
それは相対する者全てに理不尽を感じさせるものであったことだろう。
だからこそ、ヴィクトルは思うのだ。
生命を生命と感じられなくなる病の如き価値観は、決して『今』と交わることがないであろうと――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
さてと、いつかは逃げ帰るだけだったけど今回は全力で殴らせて貰おうか!
悪いけど使えるものは何でも使わせて貰うからね
『草花、木に当たるような攻撃をしようとしない』…か
難儀な縛りプレイをしているようで
親衛隊とやらも、気を使うだろうなあ
超克…オーバーロード
外装展開、模造神器全抜刀
さて、折角情報があるんだ思う存分使わせて貰おう
けれど一応敬意を払って、なるべく踏まないように草花が咲いている場所に立って陣取ろう
そして『天候操作』、暴風を空に発生させて親衛隊のバランスを崩させて『斬撃波』で適宜撃ち落としていこう
あとは皇帝のみ!
盾に取るようで悪いけど、ここを砲撃出来るかな?
この足元の草花ごと攻撃できるのなら、どうぞ
これで少なくとも直撃は狙ってこないだろうから…後は念の為、『オーラ防御』で余波をカットしておこう
さて、こっちからいくよ
【剣技・蒼嵐剣】起動
その場から動かず、4連の斬撃と風の刃で切り刻む!
嵐を切り刻む蒼い嵐ってね
…さて、あそこで眺めてるのはあの時消えたセラフィムなのかな
異世界へまで家出とは驚くなあ
極大の如き雷撃が屍人帝国『オーデュボン』の『皇帝』パッセンジャーを撃つ。
その一撃は凄まじく、パッセンジャーの肉体を焼き焦がす。
だが、身に溢れる生命力が彼に死を齎さない。
燃えるように肌が復元されていく。満ちる生命力は周囲にあった皇帝親衛隊オブリビオンたちからも吸い上げられている。
強大無比。
それを感じるのは、月夜・玲(頂の探究者・f01605)にとって二度目だった。
「いつかは逃げ帰るだけだったけど、今回は全力で殴らせてもらおうか!」
彼女に恐れはない。
皇帝親衛隊オブリビオンたちですら、パッセンジャーに恐れを抱く。
一度目の邂逅に感じた重圧を玲ははねのけて走る。
「超克……オーバーロード。外装展開――」
彼女の瞳が超克に輝く。
満ちる光はあの日を振り払う。重圧も恐怖も、何もかも彼女は振り払うことができる。人とはそういうものだ。
あらゆる困難を理性という灯火と、知性という剣でもって振り払う。
「――模造神器全抜刀」
振り抜いた蒼き刀身がきらめいた瞬間、周囲を暴風が包み込む。
天候操作によって周囲の気圧をいじり、玲は暴風でもって皇帝親衛隊オブリビオンたちの翼ある魔獣たちのコントロールを奪う。
バランスの崩れた騎乗する者など、玲にとっては敵ですらない。
放つ斬撃波がオブリビオンを叩き落としていく。
「親衛隊とやらも、気を使うだろうなあ……ご愁傷さま」
彼らにとって、パッセンジャーは恐怖に寄って従う存在である。
謂わば、この状況自体が詰み。
前門の猟兵、後門のパッセンジャー。
どちらにせよ、彼らに未来などないのである。振るう斬撃波のままに玲は使えるものはなんでも使うと嘯きながら走る。
足元に草花がそよいでいる。
猟兵たちの戦いなどつゆ知らず、ただ風に揺れている。
その花の可憐さは言うまでもない。これまで猟兵達が戦った残滓であろう、さくらの花弁も、ただ戦いの場には似つかわしくなく。
けれど、『皇帝』パッセンジャーは、雷撃に撃たれ消耗させられながらも、その薄紅色の花弁を異形の腕、その爪先でひとつまみして笑む。
「……――」
その姿を玲は捉える。
どれだけ草花を愛でようとも、敵は敵である。
皇帝親衛隊オブリビオンたちを叩き落としながら、玲はパッセンジャーに迫る。
「俺はとても気に入った。この花。この花弁。さくら、というそうだ。この花は順列を決めるわけではないが……とても良い」
異形の腕から風に攫われていく花弁を見送りパッセンジャーは異形の腕を玲に向ける。
あの日、放つことのなかった魔導砲の一撃が玲は来ると確信する。
同時に、理解もしていた。
決して、あの『皇帝』は己に砲撃を浴びせないだろうと。いや、打ち込めぬと知っている。
なぜなら、彼女の足元には草花が揺れていたからだ。
「盾に取るようで悪いけど!」
だが、放たれる。
その一撃は草花を傷つけず玲をかすめるように放たれていた。
念のために、と張り巡らせていたオーラがなければ彼女の頭は吹き飛んでいたことだろう。
だが、これでわかった。
直撃を狙わない。
頭を狙ったのは射線の都合だ。ならば、と彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
迫る魔導ドローンもオールレンジ攻撃であれど、足元に草花があるのならば結局、警戒すべきは背後と上のみ。
故に、彼女は問題としない。
彼女の手繰る剣技・蒼嵐剣(プログラム・ストームソード)は、剣速をもって音速を超える。
斬撃は空気の壁をぶち抜き、嵐の如き雷鳴を轟かせる。
放つ風の刃は魔導ドローンを切り裂き、吹き飛ばすだろう。
「君が嵐の体現者、理不尽そのもの、自然の化身だというのなら! 嵐を切り刻む蒼い嵐がある!」
放つ斬撃は蒼き竜巻となってパッセンジャーに迫る。
四振りの模造神器が煌めく度に、嵐の体現者パッセンジャーへと迫る。花弁が舞い散る中、蒼い嵐だけがパッセンジャーの肉体を切り刻む。
肉体を癒やし続ける生命力。
それを枯渇させるまで切り刻むことによってしか猟兵たちはパッセンジャーを打倒できない。
これまで多くの猟兵達が消耗させてきた。
その軌跡を玲は知っているし、繋ぎ、紡ぐからこそ勝利を得るのだ。
「――……」
玲は空に座す光背持つ赤い鎧の巨人の姿を視界の端に捉える。
こちらを眺めるばかりの赤い鎧の巨人。
あれは、あの時消えた『セラフィム』であったのならば、難儀なことだと彼女は嘆息する。
家出とは驚くなぁ、となんでもないようにつぶやく。
けれど、そのつぶやきは蒼き嵐の中に消えゆく。
副腕を含めた腕が引きちぎれそうな感覚を覚える。それほどまでに彼女の振るう斬撃は重たく鋭い。
その限界を超えた肉体の行使は、負荷となって現れる。
だが、止まらない。
「嵐そのものたる俺を切り裂くか、猟兵」
「どれだけ暗闇に見えるのだとしても、そこにある輝き目指すのが人ってものでしょ。嵐の中を進むように、人は星だってぐるりと征することだってできるんだから」
蒼き嵐が嵐を切り刻む。
それはパッセンジャーという嵐そのものを切り裂く叡智の輝きとなって、戦場に輝き、理不尽を押しのけるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵