アルカディア争奪戦⑲〜きみは死神
「――全く、何で俺たちが死にたがりの壮大な心中計画に付き合ってやらなきゃならないんだ」
ただ、放置して世界が滅びるのも寝覚めが悪いし、止めに行くぞとユリエル・ミズハシ(ジキルの棘とハイドの誘惑・f36864)は集った猟兵たちを見遣る。
「叩きに行くのは今回の騒動を引き起こした犯人の一人だな。六代屍人帝国『オーデュボン』が皇帝――パッセンジャーだ。奴はアルカディアの玉座、もしくは他の皇帝どもに自らの死という望みを託し、今も玉座に迫っている」
それを悲願とする原因は、自身に接続された無敵機械の『無限吸収』にある。
これはパッセンジャーの意思とは無関係に、自動的に周囲のあらゆる生命ないし、生命活動に必要なエネルギーを吸い上げるものだ。人も、動物も、植物も、或いはパッセンジャーの生命に還元できるものなら、全て。
更に始末の悪いことには、無敵と言うだけあって破壊を試みても決して壊れない。故に、パッセンジャーも頭を悩ませていたのだろう。
死ねない――その苦しみは如何ばかりか。だが、その望みは多くの命とひとつの世界の終焉と引き換えに、叶えられるもの。
成就させてやるわけには、いかないものだ。
「で――対処法か? 回復吸収が間に合わないくらい、大技を叩き込みまくってやるしかないだろ」
力技である。もっと他にないんか探偵。
「仕方ないだろうが。小細工が通用する相手じゃない。それか、一部の猟兵たちが調べてきたって言う弱点……弱点と言うより行動制限のような気もするが。それを上手く利用できるなら、狙ってみるのもいいんじゃないか。報告書はここにある」
ばさりと関連のありそうな報告書を机に広げるユリエル。ただ、今から読んでいる余裕は余りないかも知れない。
――決戦の時は、すぐそこまで迫っているのだから。
絵琥れあ
お世話になっております、絵琥れあと申します。
それこそが望みであるならば。
戦争シナリオのため、今回は1章構成です。
第1章:ボス戦『『皇帝』パッセンジャー』
無敵機械の無限吸収に対処することでプレイングボーナスがつきます。
或いは、情報を読み解き敵の『隠されていた弱点』を突いて戦うことでも。
どちらを取られても構いません。打ち破るためであれば。
弱点についてはこれまでのオーデュボン関連|報告書《シナリオ》の中にヒントがあるようです。
作戦に参加された猟兵の方なら問題なく、報告書を読まれた方は伝え聞いたものとして情報を得ていても差し支えありません。
断章なし、公開された時点で受付開始です。
それでは、よろしくお願いいたします!
第1章 ボス戦
『『皇帝』パッセンジャー』
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POW : パッセンジャー・ケイジ
レベルm半径内を【急激に狭くなる光の檻】で覆い、[急激に狭くなる光の檻]に触れた敵から【檻を構成するエネルギー】を吸収する。
SPD : パッセンジャー・レイ
着弾点からレベルm半径内を爆破する【魔導砲撃】を放つ。着弾後、範囲内に【攻撃型魔導ドローン】が現れ継続ダメージを与える。
WIZ : インビンシブル・チェンジ
自身の【無敵機械】を【抹殺形態】に変形する。攻撃力・攻撃回数・射程・装甲・移動力のうち、ひとつを5倍、ひとつを半分にする。
イラスト:ふじ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
黒城・魅夜
私は悪夢の滴、殺し屠り滅ぼすもの
敵の意図に乗せられるのもいい気はしませんが
滅びたいのでしたらその望み聞き届けましょう
鎖で我が「殺め髪」を切り裁ち
髪を振り撒いて空間を覆います
魔導砲撃は「着弾点」を破壊し継続ダメージを与えるだけのもの
私に当たる前に髪の舞に当たってしまえばそこで効果は尽きるだけの話
問題は無敵機械のほうですね
まあそれもたいしたことはありません
既にUCは発動し世界の法則を作り変えています
構いませんよ、どんどん吸い込んでも
周囲に展開しているのは世界を崩壊させる負のエネルギーですから
それを取り込むということはすなわち
加速度的にあなたも機械も崩壊していくだけのこと
そう
これがお望みの死です
●
――かつ、と。
響く靴音に、目を伏せていた男がゆるり、顔を上げる。
その面は白皙の美少年。しかしてその正体は、絶対的な生命と、望まぬ暴虐をいっそ我が物とし全てを捻じ伏せる畏怖を以て君臨する『皇帝』。
「――鼠が紛れ込んだか」
ぎろりとソナー・オパールの瞳が睨んだ先にいたのは美しき魔性――黒城・魅夜(悪夢の滴・f03522)だった。
「私は悪夢の滴、殺し屠り滅ぼすもの。|敵《あなた》の意図に乗せられるのもいい気はしませんが――」
そう、死こそ|皇帝《かれ》の望むところ。
ここで命潰えるとも、その目的は果たされる――だが。
「滅びたいのでしたら、その望み聞き届けましょう」
皇帝のためでなく。この世界のために。
絶望の未来を、希望で塗り替えるために。
「面白い、殺して見せろ。出来るものならな――!」
緩慢に、皇帝の手が魅夜へと向く。
無敵機械の腕が、姿を見せた砲口が、魅夜を捉える。
火を吹くよりも疾く、魅夜は己の殺め髪を躊躇いなく、嘗て己を拘束していたその鎖で切り落とした。
放ち、皇帝の周囲を覆い、その間近で被弾させる。音の標にドローンが唸るも、撃ち墜とされるは魅夜の残滓のみ。
(「問題は無敵機械のほうですが。まあそれも――」)
魅夜にとっては些末なこと。
既にその身は真の姿。漆黒の翼で悪夢をも纏い、世界の法則を創り変えるもの。
間合いまで、踏み込む。
――刹那、全身から力を奪われる感覚。
「っ、」
「浅はかだな」
「いいえ、構いませんよ、どんどん吸い込んでも」
「虚勢を、――む?」
どうしたことか、皇帝もまた、その柳眉を顰める。
僅かにその瞳に、困惑の色が浮かぶ。
「周囲に展開しているのは世界を崩壊させる負のエネルギーですから。それを取り込むということはすなわち、加速度的にあなたも機械も崩壊していくだけのこと」
「――っ、」
因果は破壊された。最早森羅万象は全て、魅夜の意のまま思いのまま。
今の皇帝に流れ込むものは、命繋ぐ生命などではなく、命蝕む死毒に他ならない――!
「そう――これがお望みの死です」
舞い狂え悪夢、崩壊せよ世の理。
壊れた世界で吸い上げる蜜で、甘美な死へと向かい続けるがいい。
成功
🔵🔵🔴
アリス・フェアリィハート
アドリブ連携歓迎
ご自分が『死ぬ』為に…
貴方も
苦しいのでしょうけど…
多くの命と
ひとつの世界を道連れは
見過ごせません…
【WIZ】
味方と連携
自身の翼で飛翔
【空中機動】等
【空中戦】で
立体的に立回り
クイーンオブハートキーを持ち
【ハートのA(アリス)】も
展開
攻撃に
【破魔】の【属性攻撃】を込め
キーで【全力魔法】や
【ハートのA(アリス)】の
魔法【誘導弾】の【一斉発射】で攻撃し
UCで
【ハートのA】を
花々舞う衝嵐に変え
攻撃
(草花、木に当たる様な攻撃をしない…それを利用する様で…気が引けますし…私もお花は好きです…けど…)
『…ごめんなさい…』
敵の攻撃は
【第六感】【見切り】【残像】
【結界術】【オーラ防御】で
防御・回避
●
「――今日は、鼠が多いな」
気怠く顔を上げたのは、壊れぬ機械に繋がれた皇帝。
主の意思など省みず、永遠を与え続ける無限機構の囚人。
(「ご自分が『死ぬ』為に……」)
アリス・フェアリィハート(不思議の国の天司姫アリス・f01939)はその在り方に、心を痛める。
この世界を滅ぼしかねない存在であることは、理解している。それでも苦しんでいるのなら、すこしデモ和らげてあげたいと願わずにはいられない性分だった。
――だが、今回ばかりは。
「貴方も苦しいのでしょうけど……多くの命と、ひとつの世界を道連れは、見過ごせません……」
猟兵としての力を以て、止めるより他に道はない。
「ならば俺を殺して見せろ。俺はそれでも構わないのだからな――!」
無敵機械が、その姿を変質させてゆく。
主の生命を奪わんと向かい来る者を等しく屠る、抹殺形態へ。
元より回避の必要などないそれは、己の機動力を犠牲に純粋な破壊の力を増幅させる。砲撃のひとつでも喰らえば、猟兵の中でもトップクラスの力を持つアリスとて命が危うい。
だが、後に退けないのだ。世界の滅びを阻み――|皇帝《かれ》を、解放するためには。
翼を広げ、舞うように蒼空へ。高い機動力と深い空中戦の知識を以て、襲い来る砲弾をひらりひらりと躱し続ける。
|女王の名を冠する黄金の鍵《クイーンオブハートキー》を抜き放ち、同時にあらゆる輝けるものを内包したハートの|A《アリス》たちを展開。破魔の力を纏わせ機を窺う。
抹殺魔導砲が、砲弾を装填する――その僅かな隙を狙って、空中から聖なる魔弾を雨の如く、鍵からハートから、絶え間なく撃ち出して。
煩わしげに蒼空を仰いだ皇帝が、目を見開いたのは。
蒼空に、真白の花々が咲いていたからだ。
煌めく宝石たちは今、花へと姿を変えて皇帝の下へ降り注がんとしているのだから!
(「草花、木に当たる様な攻撃をしない……」)
そう、それこそが、皇帝の唯一にして絶対の『弱み』。
(「それを利用する様で…気が引けますし……私もお花は好きです……」)
アリス自身、花を愛し愛でる少女なのだ。
こうして花を纏うのも、愛ゆえに。
(「けど……」)
今は手向けの花となれ。
「……ごめんなさい……」
衝嵐纏う鈴蘭が、剥き身の皇帝の身体を裂いて巻き上がる。
アリスなりの、せめてもの餞。
大成功
🔵🔵🔵
ステラ・タタリクス
オーデュボンとの付き合いも長くなりましたが
ここいらで終止符を打つとしましょう
『|強襲作戦《ファーストアタック》』の時は不覚を取りましたが
今回はそうはいきません!
【メイドズ・ホワイト】でスピードと反応速度を超強化
命懸けのメイドの本領、お見せしましょう!
パッセンジャーの足元、草木の中を疾走して距離を詰めます
超強化したスピードと反応速度で【シーカ・サギッタ】を連射
威力の大きい一発だけが大技ではないと知りなさい!
無敵機械の抹殺形態は脅威ですが
装甲5倍でなければ押し通ります!
装甲強化なら攻撃に類する力が激減しているはず
その隙を狙ってパッセンジャーの生身まで飛翔
直接【シーカ・サギッタ】を叩き込みます!
●
――その顔には覚えがあった。
忘れもしない、畏怖すら与える美貌と、絶対的な捕食者と理解させられるほどの力の差。
だが――ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)に迷いはなかった。
(「オーデュボンとの付き合いも長くなりましたが、ここいらで終止符を打つとしましょう」)
その眼前へと至る。
皇帝は、さして興味もなさそうにステラを見遣った。
「続々と増えるものだな」
鼠の一匹や二匹。その程度の認識か。
ならば見せてやろう。捕食者へと立ち向かう、窮鼠の一噛みを!
「『|強襲作戦《ファーストアタック》』の時は不覚を取りましたが、今回はそうはいきません!」
「煩い鼠だ。少し黙れ」
無敵機械が、変貌する。
全てを抹殺する、そのための姿に。
砲口が、あの規模の装甲ではあり得ないほどずらりと並んだ。その分、機体がやや沈む。機動力が失われているようだ。
――ならば、押し通れる。
ステラはそう判断すると、スカートの裾を摘んで優雅に一礼した。
「それでは――命懸けのメイドの本領、お見せしましょう!」
宣言。掻き消すように、轟音が重なる。
砲弾は、流星群の如く降り注ぐ。それらを磨き上げられた反応速度で躱して見せると、その身を草木の中へと滑らせる。
思った通り。追撃の手が止んだ。
あの時も、これで難を逃れた――否、捨て置かれたが。ならば精々、利用させて貰うまでだ。
「威力の大きい一発だけが、大技ではないと知りなさい!」
緑の中から刃が迫る。
皇帝は舌打ちひとつ、機械の腕でそれを受ける。
その動作が生む、一瞬の隙。
そこを目掛けて、剥き出しの肉体へと接敵し。
活力が吸い上げられていく。それすらメイドの嗜みで、涼しい顔で装って見せて。
「機械の身体は無敵でも、生身であれば如何です?」
きらり光る、何物をも貫く刃。
その総数、五百を悠に超え――その全てが、無防備な皇帝へと突き刺さる!
「ぐ、っ」
皇帝が呻く。機械が、のろのろとステラから距離を取る。
飛ぶ鳥が墜ちる。皇帝の命を繋ぐべく、無敵機械はステラの排除よりも、生命吸収を優先する。
攻撃から少しでも逃れられればという判断か。逆に言えば、ステラの攻撃は確かに機械の回復吸収を凌駕している証だ。
「逃しはしません」
草木の護りを得て、ステラは追撃を開始する!
成功
🔵🔵🔴
四王天・燦
環境から生命力を喰われないよう不毛の荒野におびき寄せるよ
優しさと思しき弱点は突かない配慮さ
オーラ防御の符で迎撃しながらダッシュで距離を詰めるぜ
レイの爆破に皇帝様も巻き込む狙いだ
あわよくば魔導機械自体を利用して敵を盾にして凌ぐよ
野郎の裸が視界に入るのは気が滅入る…
無限吸収で奪われた精気を清薬で補充
継戦能力をドーピングで誤魔化すぜ
神鳴で殴って何処を叩けば無限吸収に変化があるか中核を見切る
鬱陶しいドローンを時限爆弾・カウントダウンの爆風で吹き飛ばし、土煙で目潰しして時間を稼ぐ
神鳴納刀、力溜め開始…
視界が回復したら断理の剣で吸収の要と思しき箇所を斬るぜ
せめてあの世では機械から解放されるよう祈ってやるよ
●
「――なあ、場所を変えないか?」
四王天・燦(|月夜の翼《ルナ・ウォーカー》・f04448)の提案に、皇帝はぴくりと僅かに眉を動かした。
燦が示したのは、オーデュボンの中でも草木の生えない不毛の荒野。
「何のつもりだ」
「環境から生命力を喰われないようにするためさ。そっちとしても遠慮なく戦える、悪い話じゃないだろ?」
優しさと思しき弱点は突かない、燦なりの配慮でもある。
「余程、己に自身があるらしいな。まあいい」
重い腰を動かすように、無限機械が動き出す。燦も吸収範囲に入らないよう駆け出し、目的の場所へと辿り着く。
(「あっさり誘い出せたな。それだけあの機械が絶対的に強力……ってことか」)
今から、これを打ち破らなければならない。
油断も加減も許されない。元よりするつもりもない。
「それじゃあ、」
符で防壁を張り、全力で駆け出す!
砲口が燦へと向けられる。距離を限界まで詰めて、敢えて被弾した。自身の身は符で護る。
動き出したドローン群の斉射を、無限機械そのものを盾にして防ぐ。皇帝の背後に回る形になり、その姿が一度視界から消える。
(「しっかし野郎の裸が視界に入るのは気が滅入る……」)
今も吸われ続ける己の生命力を補うべく、清薬を幾つか飲み下しながら、燦は辟易するように眉根を寄せた。
中性的な美少年――少年だ。男であることに変わりはない。せめて少女であったなら。
冗談はさておき、燦の姿を探し当てたドローンの攻撃を躱し、無限機械を殴りつけるように神鳴を一閃。位置を変え、機械の反応を確認しながら、紅雷を奔らせていく。
「いい加減鬱陶しい、なっ!」
追撃を続けるドローンを、箱型の|時限爆弾《カウントダウン》を地面に放って吹き飛ばした。爆風でドローンを墜落させると同時、土煙を上げて敵の視界を奪う。
「神鳴納刀、力溜め開始……」
吸収の要となる部分に当たりをつけて、神鳴の柄を確りと握り、時を待つ。
やがて視界はクリアになる。閉じた目を開けば、剣呑な輝きを放つ皇帝のそれと目が合った。
だが、後は両断するのみ!
「此れなるは森羅万象、即ち理を断つ剣。御狐・燦の全霊を込めて――斬る!」
「!」
壊れない筈の無敵機械。だが、世の理を無視するこの一太刀なら!
がしゃん、金属音ひとつ立てて損傷を知らせる。
皇帝の整った顔立ちが、苦しげに歪む。
「せめてあの世では、機械から解放されるよう祈ってやるよ」
大成功
🔵🔵🔵
国栖ヶ谷・鈴鹿
◎アドリブ連携OKです
もしかして!
ユーベルコヲド、新世界ユウトピア!改変、生まれて桜の樹!
(攻撃を防ぎつつ)
これで隙ができたら吸収を反転させる改変を施し、桜の樹に花が無限に咲くように転じさせて花吹雪を見せる。
綺麗だろう?
ぼくの住む世界には一年中、この花が咲いているんだ。
傷ついた影朧を慰めるようにね。
……どういった理由があるかはわからないけど、君をそうさせるのは利用させてもらうよ!
改変、植物属性、イバラと薔薇の弾薬……。植物と共に、その終端があるようにね。
(埋め込まれた弾薬が種子となり、花や蔦で覆うように)
●
報告書から得られた情報。
そして猟兵たちと戦う皇帝の動き。
(「――もしかして!」)
国栖ヶ谷・鈴鹿(命短し恋せよ|乙女《ハイカラさん》・f23254)の|天才的閃き《ジイニアス》が煌めく。
消耗分を補おうと生命を吸い上げ枯らし続ける無限機械の中心に座す皇帝の下へ、ひらり降り立つ。
「また一匹――」
「ユーベルコヲド、新世界ユウトピア!」
「っ!?」
無造作に、鈴鹿へと向かおうとした砲口が、軋むように止まる。
「改変、生まれて桜の樹!」
鈴鹿の背から放たれる、理想世界構築型ハイカラさん後光領域が。
皇帝にとって見慣れたオーデュボンの光景を、一面の桜の世界へと塗り替えたのだから!
はらりはらり、桜色散る。見慣れぬ花だが、皇帝にはそれが確かに花だと解った。あの皇帝が、心許なげに名も知らぬ花の世界を見渡している。
改変は、吸収の反転にも及んでいること知らぬまま。
「綺麗だろう? ぼくの住む世界には一年中、この花が咲いているんだ」
「………………」
傷ついた影朧を慰めるようにね、と。
もしかしたら、皇帝も傷つきすぎたのかも知れない。故に、彼の中の何かが彼自身を護るため、癒し切れないほどに、麻痺してしまったのかもとも。
それが何だったのかは、解らないけれど。
「……どういった理由があるかはわからないけど、君をそうさせるのは利用させてもらうよ!」
改変。己の武器さえも。
植物属性、弾薬は薔薇と荊棘に。
種子の弾丸は皇帝の胸に根を張り、芽吹いた。
ふわり、花開き匂い立つ。蔦が伸び、無敵機械ごと皇帝を覆っていく。
桜と薔薇に包まれて、理の反転した世界は、皇帝にではなく花々へと、その永遠の生命を還元していく。
「――嗚呼、」
蔦の合間から覗く、皇帝の顔は何処か、憑き物が落ちたかのように凪いでいた。
「これが死か」
初めて、それを知る。
最初にして、最期。
「これが俺の、本当の、|最期《おわり》なら、」
その口元すら、覆われてゆく。
ソナー・オパールの瞳に既に、光はない。
けれど、今までになく、この上なく、穏やかだった。
「今日まで、永らえて、来たのも――」
少しは、報われたのかも、知れない。
「……そう、だといいね」
掻き消えた呟きを、しかし鈴鹿は確かに聞き届けた。
今は春ではないけれど、満開の桜の下で死ねたのなら。
きっと、心穏やかに眠れるだろう――そう、信じて。
大成功
🔵🔵🔵