5
はじまりは千葉県 〜 第三章

#試練の洞窟 -the Cave of Ordeal-

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#試練の洞窟 -the Cave of Ordeal-


0




●現代神秘世界 - アジア - 日本 - 千葉県 - 小規模な「試練の洞窟」 - 簡易拠点
「っ! 今のは……|安曇《あずみ》?」
「ア、アンジェにも見えましたか?」
 突然起きた現象に困惑する|如月《きさらぎ》・アンジェ(退魔師)と|中島《なかじま》・|碧《あおい》(宮内庁霊害対策課戦闘員)の二人。
 周りを見渡せば、簡易拠点の人々が皆、一様に困惑しているのを見えて、先程見えた光景がほとんどの人間に見えたものであるらしいことが分かる。
「おそらく、今のは第三視点でしょう」
 困惑する一同の元に冷静に説明しながら現れるのは仮面をつけたローブの女性、英国の魔女(高速記述者)だ。
「魔女、今回の作戦には参加しないと言っていたのでは?」
 碧が鋭く魔女を睨みながら尋ねる。英国の魔女は今は「試練の探求者」の一員ではあるのだが、日本においては登録魔術師ではなく、宮内庁霊害対策課所属の碧からすれば本来なら敵である存在のため、このような対応になる。
「そのつもりでしたが、300人委員会から、攻略が完了する瞬間だけは見届けるように、と決定されてしまいまして」
 300人委員会は英国の魔女が所属している秘密組織だ。厳密にどのような組織なのかは碧も知らないが、神秘の世界においては、国連の神秘部門やヨーロッパのインクィジターに匹敵する影響力を持っている。
「それで、第三視点と言いましたか? それは神や一部の特異な才能を持つ人間だけが使える能力のはずでは?」
 「試練の探求者」が結成される前から公然の秘密として英国の魔女と共闘してきたアンジェは碧を宥めつつ英国の魔女に尋ねる。
 第三視点は世界を俯瞰し、本来なら見えるはずのないものを見る能力の事を言う。基本的には神に属する存在が持っている力だが、人間が扱える場合もあることをアンジェは知っている。まさに第三視点を行使出来る知り合いがいるのだ。
「いえ、そもそも世界を俯瞰する能力は誰もが厳密には持っています、ただ扱えないだけ。多くの未来視や過去視、千里眼といった魔術もそういった本来持っている第三視点を一時的に励起させるものですしね」
「なるほど……、しかし私達は魔術は使っていませんが……」
「えぇ、ですがこの場所には魔術と並ぶ不思議な力があるでしょう?」
「そうか、マナ現象!」
「その通り。おそらくマナは人間の持つ潜在能力を引き出す性能を持っています。それが第三視点を引き起こしたのでしょう」
 碧が閃いた、と声を上げると、英国の魔女は我が意を得たりと頷く。
「つまり、この場所であればマナ現象として誰もが第三視点を使える、ということですか」
「えぇ、もっとも、多くの第三視点能力者がその能力の制御に呻くように、我々も自由には扱えないようですが」
「なるほど、確かに」
 アンジェには二人の第三視点を扱える知り合いがいるが、それぞれ能力の制御が出来ず困っていた。自分たちが思うように扱えないのも納得がいく。
「そんなことより、私の監視のルーンが確かなら、最深部への道が開かれたはずです。最深部へ向かいましょう」
「いつの間にそんなものを……」
 しれっと言う英国の魔女に碧が複雑そうに呻いた。

●現代神秘世界 - アジア - 日本 - 千葉県 - 小規模な「試練の洞窟」 - 最深部
 「探求者」の一人が発見した隠し階段。そこを降りた先は、青空の広がる花畑であった。
「ここは……「試練の洞窟」の地下……ですよね……?」
「これまで幾つかの「洞窟」を偵察した結果、「洞窟」の中は空間を無視した広さで、その中身も土壁の洞窟とも決まっていませんでした。このような不可思議な現象も起こりうるのでしょう。そんなことより、来ましたよ」
 英国の魔女がそう言って、自身のイチイの木で出来たチョークくらいのサイズの杖で指し示した先には、赤い西洋風のドラゴンが翼を羽ばたかせて飛んでいた。額に青い結晶がついているのが特徴的だ。
「あ、あの巨体をあんな翼で持ち上げられるものなのですか……」
「おそらく何かしらの魔術……いえ、マナ現象の賜物なのでしょうね」
 驚愕する碧に英国の魔女は分析する。
「"赤き龍"、ですね」
「いえ、龍だと西洋風か東洋風か区別が付きません、"レッドドラゴン"にしましょう」
 碧と英国の魔女が命名で言い合う。二人は日本語で言い合っているが、どうせ、レポートは英語で書くのでどっちもほぼ同じなのだが。
 レッドドラゴンは一行を補足し、一斉に翼の後ろからオレンジ色の歪曲する熱線を放つ。
「防御は私が!」
 アンジェが白い光を体から放出し、一行を包み込んで、熱線を防ぐ。本来魔力を分解する能力であるその白い光は、マナ現象により、マナによって構成された任意の物質を消去できる能力となっている。
「では攻撃は私の担当ですね」
 刀を抜き、構える碧。
「では、サポートはこちらにお任せ下さい」
 イチイの杖の先端で巾着から取り出したイチイの実を潰して、杖の先端に果汁をつける英国の魔女。
 今こそ、この「洞窟」を攻略する最後の戦いが始まる。


メリーさんのアモル
 こんばんは、『試練の洞窟-The Cave of Ordeal-』へようこそ。
 マスターを努めます、メリーさんのアモルです。
 第一章から引き続き見ていらっしゃる方は、ありがとうございます。今回もよろしければ参加ご検討ください。

 早速ですが、今回の敵、レッドドラゴンの情報は下記リンクから確認できます。

●レッドドラゴン
https://www.anotherworlds06.com/coo/creature.html#reddragon

 また、冒頭で言及されている「予兆」については下記アドレスから確認できます。
https://www.anotherworlds06.com/coo/o_azumi_001.html

 今回の戦いは「ボス戦」です。全員で一体のボスの体力を削り、最後の一人がトドメを差します。
 自分がトドメを刺したい! と言う場合にはオーバーロードをご利用の上「トドメ希望」と添えてプレイングを送って下さい。
 トドメ希望は先着一名です。既に希望者がいる場合はタグに「トドメ希望を受け付けました」と表記しますので参考にして下さい。

 今回の戦いは、アンジェ、碧、英国の魔女がそれぞれ戦いに加わります。必要であれば声をかければ支援してくれます。

●如月・アンジェ
 白い光を放出しての防御(連発は出来ない)。その他三種類のマナ現象。(キャラクターシート参照)
https://www.anotherworlds06.com/coo/npc_anje.html

●中島・碧
 刀を使っての近接攻撃。その他三種類のマナ現象。(キャラクターシート参照)
https://www.anotherworlds06.com/coo/npc_aoi.html

●英国の魔女
 ルーンを使っての支援。(キャラクターシート参照)
https://www.anotherworlds06.com/coo/npc_witch.html

 説明は以上です。
 これを乗り切れば今回の「洞窟」は攻略完了。何が起きるのか、見届けて下さい。
23




第1章 日常 『プレイング』

POW   :    肉体や気合で挑戦できる行動

SPD   :    速さや技量で挑戦できる行動

WIZ   :    魔力や賢さで挑戦できる行動

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

天見・瑠衣
資料確認
「重い……大振り? 避けやすいし合わせやすい かなぁ」
「叩き付けの勢いも使えば 先端ぐらいなら?」
「斬れたらいい かなぁ……」
実状確認
「いやいやいやまって思ってたより地面大変なことになってるもんあれは無理だよ!?」
「死んじゃうよ!! 視えてても無理だよぅ!」
「あぁぁぁ来てる! 来ちゃってるよぉぉ!!!」

邪を憂う瞳(POW)で挑戦
泣き喚く無自覚【挑発】で引き付け【残像】で敵攻撃位置をズラしつつ 予見で斬撃を叩き付けに合わせて尻尾にぶつけます
【サバイバル】により足場の不自由さにはある程度耐性あり



 三人がレッドドラゴンの攻撃に対して防御策を実行した時、一人だけそれを予見して回避し、前に踏み込んだ少女がいた。涙を湛える時、その瞳に未来を映し出す特異体質の持ち主、天見・瑠衣(泣き虫の刀使い・f37969)である。
 彼女はレッドドラゴンを一目見た時から涙目であり、彼女の視界には無数のレッドドラゴンの攻撃パターンが映し出されていた。
「重い……大振り? 避けやすいし合わせやすい、かなぁ」
 その中で一つ、対処できそうな技があった。それは後にテイル・スマッシュと呼称されることになる、シンプルな尻尾の一撃。重く大振りな一撃は避けやすく、合わせやすいように思えた。それに。
「叩き付けの勢いも使えば、先端ぐらいなら? 斬れたらいい、かなぁ……」
 強烈な一撃の勢い。それは逆に利用することも出来る。瑠衣はそう考えたのである。
 ただ……。
「いやいやいやまって思ってたより地面大変なことになってるもんあれは無理だよ!?」
 ただ、視界に写ったアンジェやアオイが戦っているのを遠目で見ていた光景と。
 いざ接近して実際に目の前にしたテイル・スマッシュは恐ろしい風切り音とともに振り下ろされる光景は違う。あまりの風切り音と迫る尻尾に瑠衣は堪らず当初の予定を破棄して、回避。
 テイル・スマッシュが地面を破壊し、思わず先程の悲鳴が飛び出した、というわけだ。
「死んじゃうよ!! 視えてても無理だよぅ!」
 テイル・スマッシュを残像も活かして、何度となく回避する瑠衣。
 それがレッドドラゴンにとって挑発行為となっており、レッドドラゴンをより怒らせているとは、瑠衣は考えもしないが。
 そして、とうとうその時が訪れる。
「あぁぁぁ来てる! 来ちゃってるよぉぉ!!!」
 残像で敵攻撃位置をズラすという、これまでと同じ手法で回避を試みるが、彼女の濡れた瞳が映す未来は、地面を破壊した余波で自分が転倒し、とうとうトドメの一撃が自分の真上に振り下ろされる光景であった。
 生き残る道はたった一つ。当初の予定をここで達成すること。
 瑠衣は否応無しに覚悟を決めることを余儀なくされる。
「はああああああああああっ!」
 破れかぶれの裂帛一つ。
 瑠衣の視界に映し出される未来を元に、刀の一撃が決まる。
 それは振り下ろされる尻尾の勢いと合わさり、その尻尾を見事切断してみせた。
 『レッドドラゴンの尻尾は切断され、やや短くなった』。
 さて、問題は怒り狂ったレッドドラゴン。
 先程までの比ではないほどに連続してテイル・スマッシュを連発する。
 流石の瑠衣の予見でも回避しきれない連続攻撃に、堪らず、瑠衣は後退する。
「いいですよ、一度下がって下さい。瑠衣さん、このまま波状攻撃で仕留めましょう」
 後退してきた瑠衣をアンジェが迎える。
 初撃は十分すぎるほどに明確に決まった。次に続く探求者は誰だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天星・雲雀

次の探求者は自分です!
お宝を守護する主と言ったら、ドラゴンですね!
ボス戦大物狩りなら、こっちも助っ人呼んじゃいます。
絶無!洞窟の中ですが、ドラゴンが飛べる程度には開けた空間が在るので来てください!

亜空間から次元を砕いて姿を表す[絶無]。

ざっくり紹介しますね、サイキックキャバリアと呼ばれるゴーレム的存在の絶無です。
自我があるっぽいですが、騎乗できますから、今回は一緒に戦ってもらいます。
いざボスの間へ!

マナ現象は、今日の気分は水遊び(WIZ)で、洞窟の深層を水中に沈めて、ドラゴンの熱線と炎を無効化です!
対するこちらは、[海遊装備]装着モードの絶無で戦いますよ!

引きずり込んでぎったんばったんです!



「次の探求者は自分です!」
 そう言って、洞窟の最奥、青空の広がる花畑に降り立ったのは天星・雲雀(妖狐のシャーマン・f27361)だ。
「お宝を守護する主と言ったら、ドラゴンですね!」
 目の前に立ちふさがるドラゴンを相手に嬉しそうな雲雀。
「ボス戦大物狩りなら、こっちも助っ人呼んじゃいます。絶無! 洞窟の中ですが、ドラゴンが飛べる程度には開けた空間が在るので来てください!」
 そして、亜空間より次元を砕いてそれは現れる。サイキックキャバリアの絶無だ。
「い、今のは、コード・アリスの異世界転移能力?」
 その様子に驚愕する三人。実際に同じ理屈かは分からないが、似たようなものを見たことがあるらしい。
「ざっくり紹介しますね、サイキックキャバリアと呼ばれるゴーレム的存在の絶無です。自我があるっぽいですが、騎乗できますから、今回は一緒に戦ってもらいます」
 絶無を三人に紹介する雲雀。
「これもまた、異世界のロボット、ということですか……」
 アンジェとアオイはかつて、異世界に行ったことがあり、そこでDEMと呼ばれる種類のロボットとコマンドギアと呼ばれる種類のロボットを見たことがあったが、そのどちらとも違うロボットのように二人は感じた。
「では、いざ! あ、危ないのでお三方は一度ここを出たほうがよろしいかと」
 そう言って、絶夢に乗り込む雲雀。
「水飛沫と共に舞い散りなさい」
 同時に、マナ現象を発動する。
 晴天の広がる花畑に大嵐の暴風と豪雨が発生する。
 窪地になっている戦闘エリアにどんどん水が溜まっていく。
「戦場全体を水中に変えるほどのマナ現象ですか……!」
「こ、これは確かに一度退いたほうが良さそうです。雲雀さん、後は任せました」
 三人がフロアから離脱すると、ますます水位は上昇していき、とうとう戦闘エリアは水中同然のエリアとなった。
「ドラゴンの熱線と炎を無効化です!」
 そう言う雲雀の絶無は古代魔法文明の耐水モジュールである海遊装備を装着しており、水中での機動力も申し分ない。
「さぁ、引きずり込んでぎったんばったんです!」
 絶無は嵐を纏って飛び上がり、ドラゴンの切断され短くなった尻尾をひっつかみ、水中に引きずり込む。
 ドラゴンは反撃とばかりに無数の熱線を放つが、水中ではその性能は十全には発揮できない。
 ドラゴンは大きさという優位性も得意技であるブレスと熱線攻撃を封じられ、ただ絶無に殴られるのみとなった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

騙者・真理
水位が下がった。
「どのような事象があろうと私は此処に存在しえない。はたしてそうだろうか?」
|悪魔の証明《証明は不可能だ》
女の声が響く。
「ならば私は此処に居る。|悪魔《私》が|証明する《認めよう》」
いつのまに、どのようにして現れたか、悪魔の女が一人。
「狙い通り、誰も居ないな」

「ドラゴンの一撃は必中の一撃。はたしてそうだろうか?」
水面を掻き分けドラゴンに近付く悪魔。
「ならば私に当たりはしない。|悪魔《私》が|証明する《認めよう》」

「その鱗は全てを弾く。はたしてそうだろうか?」
何処からか現れる歪な太矢。

――

「ならば我が身は既に此処に在らず。|悪魔《私》が|証明する《認めよう》」



 水位が下がり始めた直後の『洞窟』の最深部。
 なんとか体勢を立て直したレッドドラゴンだけが、その青空広がる平原にいる。
「どのような事象があろうと私は此処に存在しえない。はたしてそうだろうか?」
 突如、どこからか女性の声が響く。それは|悪魔の証明《証明は不可能だ》だ、と。
「ならば私は此処に居る。|悪魔《私》が|証明する《認めよう》」
 瞬きの一瞬、いつの間にかその場には顔の見えぬ女の悪魔が立っていた。証明の悪魔、騙者・真理(騙り部・f39704)だ。
「狙い通り、誰も居ないな」
 姿を見られたくない事情があるのか、単に誰にも見られたくないだけか、そう言いながら真理は歩き始める。
 水面を掻き分けレッドドラゴンに近づく。
「ドラゴンの一撃は必中の一撃。はたしてそうだろうか?」
 敵を視認した、レッドドラゴンは顔をもたげ、額の結晶を輝かせて口に炎を溜める。
 そして真理に向けて炎が放たれる。
「ならば私に当たりはしない。|悪魔《私》が|証明する《認めよう》」
 しかし、炎が真理を飲み込もうとした直後、再び女の姿が消える。
 気がつけば真理は別の場所に移動していた。
 先程ここに現れたのと同じ手段か。単なる視覚欺瞞か、はたまた言葉による認知魔術か、あるいは言葉でロアを制御しているのか。ここに英国の魔女がいればその様子を興味深く分析したことだろうが、残念ながらここにはレッドドラゴンと真理しかいない。
 九度、レッドドラゴンのブレスが放たれるが、そのいずれも真理には命中しない。
「その鱗は全てを弾く。はたしてそうだろうか?」
 攻撃が止まったタイミングで、再び真理が口を開く。
「|悪魔《私》が|証明する《認めよう》。お前の死地は此処であると」
 突如、歪な太矢が真理の手元に出現する。歪だが、しかし、真理が手に持つ漆黒のクロスボウ、『デビルズ・ファクター』に装填可能。真理はそれを『デビルズ・ファクター』に装填し、レッドドラゴンに向ける。
 放たれた|矢《ボルト》はレッドドラゴンの体を構成するマナを蝕み、存在を揺らす。
 たった一発の|矢《ボルト》はその特性によってレッドドラゴンに無視できないダメージを与える。
 存在を揺らされながらも、レッドドラゴンは反撃のために顔を攻撃してきた方向に向けるが。
「ならば我が身は既に此処に在らず。|悪魔《私》が|証明する《認めよう》」
 そこには誰もおらず、それどころか、もはや洞窟内には誰も存在しなかった。
 ただ、レッドドラゴンに与えられた一撃のみが彼女の存在を示し、そのダメージを知ることの出来ない余人にとってはまるで先の探求者が去って以降、誰も立ち入らなかったかのようだった。
 真理という証明の悪魔がこの場にいた事を証明できる存在は、ごく僅かな観測者を除いて誰もいない。

成功 🔵​🔵​🔴​

騙者・真理
一軒家の一室にて

「あー…。 疲れた」
ゴシックドレスを着た紫眼の女性がベッドに倒れこむ。
それから暫し後、誰かに話しかけられたかのように顔を上げる。
「えー…。 もう戻ってきたの? 仕方ないなぁ…。 来て」
布団から立ち上がると、その場にはもう顔が見えない悪魔しかいなかった。

「彼の者は勇者と成り得ない。 はたしてそうだろうか?」
|悪魔の証明《証明は不可能だ》
「ならば勇者――いや、こう言うべきだろうか?
この軸でも主人公であって良い。 そうだろう? アンジェ」

――

「決め台詞を持って勇者の舞台は終幕する」

悪魔はベッドに倒れる。
「もうやだ。 悪魔なんて居ない。 私は認めない…」
紫眼の女性はベッドで項垂れる。



 アンジェ、碧、英国の魔女の三人が最深部に戻ってくる。
 だが、後続の探求者が来る様子はない。ここに来て、探求者達による波状攻撃が途切れようとしていた。
「どうしますか、アンジェ」
 碧が尋ねる。
「……」
 アンジェは沈黙し、思案する。三人には探求者をこの場所まで移動させるルートを確保し、案内するという役目も負っている。その上、――苦々しいことだが――、三人は|プレイヤーキャラクター《他の多くの探求者》達ほどマナ現象を使いこなせていない現実があった。
 迂闊に敵のボスに挑み、負傷しては役目を果たせない。

●現代神秘世界 - アジア - 日本 - どこかの一軒家の一室
「あー……。 疲れた」
 紫の瞳をしたゴシックドレスの女性がベッドに倒れ込む。顔が見えている事を考えなければ、その服装は証明の悪魔、騙者・真理(騙り部・f39704)によく似ている。
 しばらくそうしていた女性はふと顔を上げる。
「えー……。もう戻ってきたの? 仕方ないなぁ……。来て」
 ゆっくりと、女性が立ち上がる。
 いつの間にかその女性の顔は見えず、そこに立っていたのはまさに証明の悪魔、騙者・真理(騙り部・f39704)であった。
「彼の者は勇者と成り得ない。はたしてそうだろうか?」
 真理は口を開く。
 |悪魔の証明《証明は不可能だ》、と。
「ならば勇者――いや、こう言うべきだろうか? この|軸《・》でも|主《・》|人《・》|公《・》であって良い。そうだろう? アンジェ」
 真理のマナ現象が発動する。否、マナ現象はマナの満ちる「試練の洞窟」の内部でしか使えない。ならばこれは、証明の悪魔たる真理の持つ、何かしらの能力か。

●現代神秘世界 - アジア - 日本 - 千葉県 - 小規模な「試練の洞窟」 - 最深部
「|や《・》|り《・》|ま《・》|し《・》|ょ《・》|う《・》」
 アンジェが口を開いた。
「アンジェ……?」
 その言葉からはえも言われぬ強者感が漂う。
 ――アンジェを取り巻く魔力とマナが活性化してる? 何者かがアンジェを支援をした?
 その様子を油断なく見つめるのは英国の魔女だ。
 ――まぁ、アンジェは昔から変なのに好かれるからねぇ。
 その「変なの」の一人である英国の魔女はとはいえ、それはアンジェに害意あるものではないと判断し、結局アンジェにも碧にも伝えない事を選んだ。
「行きます!」
 アンジェは自身を白い粒子で覆い、その身体能力を向上させる。
 白い粒子の性質自体がマナで変質しているとはいえ、厳密にはマナ現象ではない。学生の頃から使っていたアンジェの持つ切り札の一つ『退魔纏い』だ。
 アンジェは得物の『|如月一ツ太刀《きさらぎひとつのたち》』を構え一気に前進する。
 レッドドラゴンが額の結晶を輝かせ、炎のブレスを吐く。
 アンジェはこれを自身を覆っているマナ現象によりマナを分解する効果も持つ事になった白い粒子でもって炎を分解して受け止め、太刀を一振りする。
 すると、まるで斬撃そのものが飛んだかのように、白い光の円弧が炎をかき分けながら突き進み、レッドドラゴンに命中し、怯ませる。
 それだけに留まらず、白い粒子はレッドドラゴンを構築するマナをも分解し、ダメージを与えていく。
 レッドドラゴンが怯んだ隙を見逃さず、アンジェは自身の身長の何倍も飛び上がり、レッドドラゴンの顔の正面に肉薄する。
「光明剣、三段突きぃっ!」
 アンジェ必殺の白い粒子を伴った三連続の突きが放たれる。
 それはレッドドラゴンの両の目と額の結晶にそれぞれ命中し、レッドドラゴンを大いに悶絶させた。
「よし、あと一撃浴びせれば……」
 だが。

●現代神秘世界 - アジア - 日本 - どこかの一軒家の一室
「その決め台詞を持って勇者の舞台は終幕する」
 ただ、その声が発せられる。

●現代神秘世界 - アジア - 日本 - 千葉県 - 小規模な「試練の洞窟」 - 最深部
「っ……」
 直後、アンジェの体に、激痛が走り、着地に失敗し、転倒する。
「アンジェ!」
 碧が駆け寄り、アンジェの体を支える。
「力の使いすぎです、一度解除して下さい」
 圧倒的な強さを発揮する『退魔纏い』だが、多用しないことには理由がある。それは、魔を分解し退ける白い粒子が半妖であるアンジェ自身を蝕む事だ。
 幸い、ドラゴンは両の目と額の結晶にダメージが入ったことがよほど苦しかったらしく、まだ悶絶している。
 碧は英国の魔女に殿を任せつつ、アンジェを一度簡易拠点まで撤退させることにした。
 だが、アンジェの頑張りもあって、レッドドラゴンはかなり弱っている。もう後ひと押しだ。

●現代神秘世界 - アジア - 日本 - どこかの一軒家の一室
 真理はベッドに倒れた。
「もうやだ。悪魔なんて居ない。私は認めない……」
 真理は消え、紫眼の女性がそう呟きながらベッドで項垂れていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

宮藤・貴志
【徳川・翠/f37954】◎
「如月と中島に借りを作らない……」
翠のため妖刀を手に奮戦する
「って言ってもなぁ!!?」
無数の熱線に逃げ惑う。熱線がかすって火傷する

【UC】
ボレアリア(以下、ボ)「ナデナデ、シテ?」
彼女の力を借りるには、行使する力が大きいほど大胆な要求に応える必要がある
頭をなでる
凍てつくオーロラのカーテンが熱線を和らげるも完全には止まらない

ボ「ギュッ、トシテ?」
背後からやさしく抱擁
オーロラが強まり熱線を遮断

ドラゴンがブレス連続照射。オーロラを突き破る
ボ「チュー、シテ?」
「いや、さすがにそれは……」
躊躇う

神性を纏い強化されたオーロラが北極星から降り注ぎブレスと熱線ごとドラゴンを凍らせる


徳川・翠
【宮藤・貴志/f37981】◎
物陰から戦況を把握し、こっそり貴志を支援することにする

「(ボレアリアちゃんはオーロラの悪魔。北風、北を意味するborealisの名を持つ)」
「(北極星を象徴とする東照大権現の加護を与え、その神性を身に宿らせれば、彼女を北辰の座に至らせて格を高められるはず)」

【UC】
ボレアリアに|北極星《東照大権現》の加護がもたらされ、北天の中心たる格を纏い、オーロラが強化される

ついでに魂を操作し、貴志への要求より邪魔者の排除を優先させる
ボレアリアが神性を纏ったオーロラを放つ

「ボレアリアちゃんには悪いけど……恋は焦らずにね?」
手柄を貴志に譲り、そっとその場を去る



「如月と中島に借りを作らない……」
 簡易拠点を切り開くための作戦で如月アンジェの力を借りてしまったがために、翠――の背後にいる討魔組や宮内庁に借りを作りたくない徳川勢――から良い評価を受けることが出来なかった宮藤・貴志(“見える人”・f37981)は、今度は一人で全てを決するべく、『妖刀・緋雨』を構える。
「って言ってもなぁ!!?」
 レッドドラゴンが無数の熱線を放ち、貴志を追いかける。
 必死で貴志はこれを妖刀で受け止めたり回避したりと、立ち回るが、まだまだ未熟な彼に複雑な幾何学模様を描き飛翔し、包囲攻撃してくるオールレンジ・レーザーを回避することは難しい。
 避けそこねた熱線が頬を掠め、火傷を作ったのを認識し、これ以上は命に関わると判断した貴志はとうとう観念して、ポケットから一つの鍵を取り出す。
 それは、彼が住む「グリーンヴェルデ翠」の鍵。
 そして。
「出来るなら頼りたくなかったけど、背に腹は代えられないかぁ……。ボレアリアさん、お願いします!」
 その言葉に呼応し、鍵から一人の悪魔が姿を表す。
 オーロラを操る能力を持つ、女性敵な上級悪魔。たまたま貴志と同じ日に「グリーンヴェルデ翠」入居した悪魔であり、それが縁となり、他の魔以上に貴志に執着している。
 それは彼の持つ『妖怪アパートの鍵』を契約の証としていつでも彼女を召喚できるほどに。
 とりあえず、敵の攻撃を防いでくれ、と訴える貴志に対し、ボレアリアは一言。
「ナデナデ、シテ?」
 多くの場合、悪魔は無条件で召喚者には従わない。悪魔は自らの|遊戯《ゲーム》に有利になると判断して人間に一時的に与するに過ぎないからだ。故に多くの場合、何かしらの代償を求められる。
 それは、一方的に向こうから惚れられている貴志に対しても変わらないようだ。
 彼女が求めるのは自分を愛すること。
 貴志はやむなくボレアリアを撫でる。
 すると、美しき凍てつくオーロラのカーテンが展開され、熱線を軽減する。
 しかし、完全に軽減するには至らない。
「ギュッ、トシテ?」
 もっと、全力で、と訴える貴志に、ボレアリアはさらなる要求を重ねる。
 逡巡は一瞬。貴志は背後からボレアリアを抱擁する。
 オーロラがより一層美しくきらめき、今度こそ放たれる熱線の全てを遮断する。
 貴志はようやくこれでほっと一息……。とはいかなかった。
 攻撃を防がれたことを理解したレッドドラゴンが、今度は、額の結晶を輝かせ、強烈なブレスを放ったのだ。
 強烈なブレス連射の前に、オーロラのカーテンが軋む。
 貴志は、大いに慌て、さらなる防御の展開を要求する。
「チュー、シテ?」
 そして、それに対するボレアリアの要求はこれだった。
「いや、さすがにそれは……」
 思わず躊躇する、貴志。
 まだキスもしたことない青年である。初めては恋慕する徳川・翠(妖怪アパートの大家さん・f37954)に捧げたい。
 だが、オーロラの壁がいよいよ限界を迎えようと軋む。
 どうすればいいんだ、と焦る貴志。

 一方、徳川・翠(妖怪アパートの大家さん・f37954)本人が密かにその様子を最深部への入り口から見守っていた。
 自身の店子であり、その関係から徳川勢からは自らの一員と見なされている貴志を心配しているのだ。もちろん、うっかり討魔組や宮内庁の手を借りられると自分が怒られるからというのもある。
 ――ボレアリアちゃんはオーロラの悪魔。北風、北を意味するborealisの名を持つ。
 冷静に、自身の神秘知識を総動員する。妖怪アパートの大家である翠は店子についてはそのほとんどを把握していると言っても過言ではない。
 ――北極星を象徴とする東照大権現の加護を与え、その神性を身に宿らせれば、彼女を北辰の座に至らせて格を高められるはず。
 そして、翠は"弟"を殺すために父親から与えられたその力を応用したマナ現象を発動する。
 それはボレアリアの魂に干渉し、ボレアリアに東照大権現の加護を与える。
 
 貴志からすれば突如、オーロラの壁が強度を増す。
 ブレスに対して軋んでいたのが嘘のように安定を始める。
 翠のマナ現象によりボレアリアの能力に神性が付与されたため、神性でもってそのブレスに耐えているのだ。
 ボレアリアが更にオーロラの数を増やし、熱線もブレスも、全ての攻撃を弾き返し、そして、レッドドラゴンを飲み込んでいく。
 貴志は困惑する。自分はまだ何も捧げていないのに、ボレアリアが過去類を見ないほどに全力を出している。

 その最深部入り口の影で翠が呟く。
「ボレアリアちゃんには悪いけど……恋は焦らずにね?」
 そう、マナ現象で魂に干渉した際、一時的にレッドドラゴンの排除の優先順位を最大にまで引き上げたのだ。
 今のボレアリアは自身の大切なものである貴志をあと一歩で失うところだったと錯覚しており、それゆえ、容赦のない一撃をレッドドラゴンに放つ。
 そのままレッドドラゴンはオーロラの力で凍結され、そのまま砕けて消えた。

 レッドドラゴンが消失すると同時、最深部の円形の空間の中心に、一つの宝箱が出現する。
「見事な戦いでした。宮藤・貴志」
 その様子を見ていた英国の魔女が密かに立ち去る翠に気付かない振りをして貴志に称賛の声を送るとともに歩み寄る。
「その宝箱の中身はトドメを刺したあなたのものです。もちろん、あなたが望むなら「試練の探求者」に寄贈してくれても構いません」
 英国の魔女が説明する。まぁ要は他の宝箱と扱いは同じ、ということだ。
 貴志は翠に今度こそ褒められることを想像しながら、宝箱の中のアイテムを取り出す。

 直後、貴志の、英国の魔女の、そして離脱途中の翠の、その他千葉県のこの「洞窟」内にいた全ての人間の視界が白く染まる。
 そして、気がつけば、「洞窟」の外、入り口の前に立っていた。
 一同が困惑しながら周囲を見回していると、さらなる変化が続く。
 洞窟が極彩色の粒子へと変じ、空中に溶けるように消えていく。

「やった、やりました!」
 それを見て、傷だらけのアンジェが拳を握る。
「えぇ、「洞窟」は最深部のアイテムを回収すると消滅する。これは極めて重要な情報です」
 英国の魔女もその言葉に頷く。
 この世界を永遠に変えてしまうかと思われた「試練の洞窟」の問題。しかし、それは今、解決可能な問題であると示された。
 とはいえ、世界中に「試練の洞窟」はまだ無数にある。今回の件が国連に報告されると同時、国連は「試練の探求者」にいくつかの「試練の洞窟」を攻略候補として提示するだろう。
 「試練の探求者」はその総意(と言う名の多数決)によって、次に攻略する「試練の洞窟」を選ぶことになる。
 「試練の探求者」の戦いは、始まったばかりだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2023年02月07日


挿絵イラスト