アルカディア争奪戦㉒〜蒼穹が落ちてくる
雲間を切り裂いて抜けてくるそれは何だろう。
明けの空を染め上げるは明星か。
蒼穹を背景に扇ぎ躍るは朝靄か。
否、否である。
それは島であり、意志であり、王であった。
ジェード王国はその『大戦艦』ジェイダイト。
それは国そのもの、島そのものが大戦艦。そして、この世界で意志ある船は、こう呼ばれる。
ガレオノイド。
彼こそが大地であり、彼こそが王。そして彼こそがジェード王国である。
一人の意志で飛行し、一人の意志で反応し、そして一人の意志で攻撃する。
その巨大な意思。神にも迫る自意識を、いかなる手立てで攻略し得るだろうか。
もはや人の手に余る空飛ぶ大地を、いかにして止めようというのか。
「とまぁ、とんでもない相手が現れたもんさ。巨大な島そのものが意思ある船だっていうんだからな」
グリモアベースはその一角、ファーハットに青灰色の板金コートがトレードマークのリリィ・リリウムは嘆息する。
彼女の見た予知に依れば、ジェード王国の首魁、その正体は国土である浮遊島そのものが本体、大戦艦とした世界最大のガレオノイド・ジェイダイトだという。
言うなれば、広大な国土、補給線、軍事力……その全てを一体で担うだけの規模がある。その途方も無さたるや。大海に小舟一つで漕ぎ出すかのようだ。
「相手の規模の大きさは、もはや説明の必要はないだろう。言うに事欠いて、島を相手にしろと言っているのだからな。だが、相手が巨大だからこそ、通用する戦術もある筈だ」
ジェイダイトのサイズ、総戦力。それはもうけた外れの規模を誇るが、それでも今回の戦争に限っては、猟兵たちも小規模ではない。
|飛空艇艦隊《ガレオンフリート》に参加する勇士達は、一騎当千の猟兵とはまた異なる強みがある筈だ。
「空を飛ぶ術を持たぬものは、彼等を頼るといい。しかし、相手が島だからとて、直接乗り込んで地上戦を挑むのは、あまりお勧めしない。
彼の大地は、奴の領域だ。一時ならまだしも、そこを主軸として戦場にするなら、すぐさま検知され、そこに戦力を注がれてはひとたまりもない」
やるならば空中戦。絶望的なサイズ差と渡り合うためには、人一人の手では足りぬ。
だがしかし、活路を作るのはあくまでも猟兵。
ホルスターにしまった拳銃。その輪胴から銃弾を引っ張り出すと、リリィはそれを爪弾き、音を鳴らして掴み取る。
「奴に比べれば、我々は小さなものだろう。だが、小さくとも巨大を打ち破る銃弾になり得ると、私は信じているよ」
みろりじ
どうもこんばんは、流浪の文書書きみろりじと申します。
島そのものが敵。誰もが思いついて、途方もないのでやめるような強敵。でもやっぱり出てきた!
今回はけた外れの相手ですので、難易度はちょっと高めだそうですよ。
リリィさんもちらっと話しておりますが、プレイングボーナスは、空中戦で挑む事のようですね。
デ〇スターみたいな、アレはダメなんだろうか……。などと考えてしまいますが、よく考えればあれも空中戦と言えばそうなるのかもしれませんね。本シナリオでそのような展開になるかどうかはまだわかりませんが。
毎度おなじみ、このシナリオは戦争シナリオとなっておりますので、1章完結となっております。
断章及び、プレイング受付期間は用意しないので、お好きなタイミングでお送りくださいませ。
それでは、皆さんと一緒に楽しいリプレイを作ってまいりましょう。
第1章 ボス戦
『『大戦艦』ジェイダイト』
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POW : 超弩級魔導砲
詠唱時間に応じて無限に威力が上昇する【ライトニング 】属性の【魔導砲】を、レベル×5mの直線上に放つ。
SPD : 飛空艇部隊出撃
レベル×1体の【飛空艇部隊 】を召喚する。[飛空艇部隊 ]は【空中戦】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。
WIZ : 無敵バリア発生装置
【無敵バリア放出形態 】に変形し、自身の【バリア発生装置の露出】を代償に、自身の【あらゆる攻撃を無効化する『無敵バリア』】を強化する。
イラスト:del
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ロラン・ヒュッテンブレナー
・アドリブOK単騎
こういう拠点への強襲航空攻撃は、アルターギアの素体のコンセプトなの
もちろん、今もそれは活きてるの
一気に突撃して、ジャイアントキリングなの
魔力接続、システムオールグリーン
インフェルノランチャー、左腕とドッキング
頭部腕部格納、境界面抵抗結界展開ブースターチャージ開始
For Answer・・・
アルターギア、行くの!
UC発動、最大速度で一気に近づくよ
魔術陣4連展開、マジックミサイル斉射
光魔術のファランクスで迎撃
目標接近、ランチャーに魔力をチャージ開始
天使核反応補足、ターゲッティング
最大出力、インフェルノランチャーシュート!
切り裂く様に高密度な浄化の炎で灼き尽くすの
蒼穹に侵入する者あり。
雲海を切り裂く者あり。
何処までも続くかのような空の中に、島が浮く世界に在って、それでいながらかの島は異質であった。
航行する船であるかの如く雲を空を、波のように掻きわけて進むその威容。
崖のように切り立ったその隙間を明星の如く光らせるは、人工の輝き。
島であり、船であり、個人であり、国である。ガレオノイド・ジェイダイトとは、そのような|存在《オブリビオン》であった。
屈強なる空の勇士達。勇壮と居並ぶ飛空艇艦隊も、その存在感。圧倒的質量を前に、気圧されざるを得ない。
いかな頑丈さを誇る船であっても、島に対する離着陸には気を使う。
大地に対して、飛空艇はあまりにも矮小であり、仮に加減を間違えたなら、砕けるのは大地ではなく、船の方だ。
では、仮に大地そのものとも言うべきあの大戦艦が、加減無しにぶつかって来たならば。
それがわからぬ空の専門家は、この場にはいない。
だが、戦わずば……ここには明確な死があるのみ。
「どうやって戦う……。島を沈めるなんざ、それこそ、連中のやり方じゃねぇか……!」
屍人帝国という圧倒的な武力と、無尽蔵の兵力でこそ、それは成るのだろう。
或は、かの大戦艦にも、他の浮島と同様にあるのだろうか。
天使核が。
「だが、そいつは、むこうさんにとっても、織り込み済みだろうよ」
最も重要な天使核。もしくは、それに類する主要機関。仮にそんなものがあるとしても、心の臓腑ともいうべきそれを、容易く狙える位置に置くだろうか。
飛空艇艦隊は、空の勇士。そこいらのベテランとはわけが違う。
とはいえ、空の戦いに長けた者たちの中にも、最大級のガレオノイドの骨の髄を叩き折るほどの一点火力を持ち合わせている者は居ない。
いや、そういう突拍子もない実験も、本戦争中に無いわけではなかったが、それを維持できる旅でもなかった。
そう、もっと突出した何か。
それこそが、今、この時に求められていた。
『そう、今、なの!』
スピーカー越しのややくぐもった少年の声が、飛空艇艦隊を、その後ろから飛び越えるように先陣を切る。
この戦乱に於いて、何度も戦いの場に斬り込んできたその声に、勇士たちも覚えがあった。
ロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)。頼りないほど若々しくも、前へ向かう意志を感じさせるその少年の駆る、異質なる人型。
例えるならば、全身に鎧を纏った魔術師であろうか。
ロケットナイトという天使核ロケットを内蔵した空飛ぶ鎧を纏った、無謀なる者も、この空にはいくつか存在するが、それとは系統の異なる巨鎧、クロムキャバリア。
『アルター・ギア』は、ロランにとって魔術を増幅する鎧であり、空飛ぶ船でもあり、儀式の祭壇も担う。
『ロラン君、無茶だ! 単騎であれを引き受けるつもりか!』
勇士の船の誰かが、呼び掛けてくる音声を拾う。
強く、優しく、気のいい空の勇者たち。たとえ、圧倒的窮地に立たされていても、また、ロランが猟兵という規格外の存在であったとしても、少年として遇する気概を見せる男たち。
美しい世界。美しい心根を持つ人たちだからこそ、立ち上がる。
そして、それを肌身に感じるからこそ、ロランは矢面に立ち、戦うことができる。
「こういう拠点への強襲航空攻撃は、アルターギアの素体のコンセプトなの。もちろん、今もそれは活きているの」
『だが……! わかった! 援護する!』
ただ一人、単騎。それだけで、強襲をかける腹積もりであった。
それが機体コンセプト。ロランならば可能であろう。
一手で最大級のゲインを。そして、いかなる障害をも突き抜ける算段も立てていた。
孤独な覚悟を背負ったロランを止められる者は、もはやいなかった。
だというのに、この気持ちのいい回答と、その背に感じる頼もしさは何だろう。
『あの規模だ。陽動が無くてはいくら君でも無事では済まないだろう。しかし直掩までは面倒見切れん。打ち勝って見せてくれ! ロラン!』
「了解、一気に突撃して、ジャイアントキリングなの」
操縦モジュールにかけるその手が、わずかに震えを覚える。
身体にかかるのは恐怖ではない。これは期待。眩しいばかりのエールが、彼の心を震わせていた。
攻撃を散らすにしても、被害は出よう。だが、本気で挑まねば、あのガレオノイドの迎撃は並ではない。
今や直上。十分に距離を取って、アルターギアは、その長大な専用装備を出現させていた。
「魔力接続、システムオールグリーン
インフェルノランチャー、左腕とドッキング
頭部腕部格納、境界面抵抗結界展開ブースターチャージ開始
For Answer...」
クロムキャバリアでありながら、ロランの魔導によって稼働するアルターギア。その左腕と一体化し、腕部頭部を格納し、砲そのものと化したそれは、彼の魔導を増幅してエネルギーに変化する魔導式プラズマランチャー。
その浄化の炎は、たとえ非物質であろうとも焼き尽くすというが、やはり遠い。
規模が違い過ぎる相手を焼くには、射程距離に納めなくてはならない。
故に、機械的に詠唱を早口で刻むロランの目論見は、砲口に魔力を溜めつつ、機体背部のブースターにも同様に注力している。
今や、この戦場のどこにいても姿を捉えることができるジェイダイトであるが、その力の本質は、まだ見えない。
即ち、奴を動かしている天使核。それを見つけて、一直線に狙わねば、この戦いに決着はつかないのだ。
そのためには、もっと近づかねば。
最大限に足を溜めたアルターギアは、引き絞られた弓であった。
島の周囲に、戦火が舞い始めた。
散発的なそれらは、敵の戦力を図るかのような、鼻先を削る様な牽制であった。
周囲に注意を散らすための、飛空艇艦隊の陽動であった。
ぬるい叩き合い。お互いの出方を伺いながら目を合わせる。この瞬間。この時しかない。
横合いから殴りつけるような稲妻と化すには、今しかない。
「アルターギア、|行くの!《フルブースト》」
渾身のオーバードブースト展開により、アルターギアは光跡を引いて加速する。
ぐんっと巨大な島へと落ちていくように加速するアルターギアは、その索敵範囲を、いや狙いを絞る。
僅か数秒。ジェイダイトの防空範囲にまで侵害したキャバリアの存在に目ざとく反応できた直掩部隊は、まさしく驚異的であった。
「邪魔をしないでぇ!」
その身をぶつける勢いで迎撃に出てきた飛空艇部隊は、いずれもロランの機体より巨大であったが、事前に用意していた魔術陣4連から展開するマジックミサイル、そして迎撃の光魔法ファランクスでそれらの勢いを止め、或は撃ち落して、稲妻のように通り抜けていく。
散華するその黒煙の中に、ジェイダイトの地表。インフェルノランチャーと同期したスコープには、特定出力に反応するポイントを見出す。
「天使核反応確認、ターゲッティング」
赤熱する砲口。それを警戒して、いち早く島の前にオブリビオンの船が飛び出すが、もはやそれを躱している暇もない。
突き抜けるしかない。
「最大出力、インフェルノランチャーシュート!」
光線と化した浄化の炎が船を貫き、ジェイダイトの地表を焼き、それすらも突き抜ける。
岩盤を貫いた、そして天使核の反応も同時に焼き切った。
それを、地表すれすれを嘗めるように方向転換しつつ稲妻のように離脱していく中で、ロランは確認した。
「斬った……けど、一つじゃない、なの!」
ジェイダイトを支える天使核を確実に捉えた感触があったというのに、その攻勢が止む気配がない。
それと同時に、狙うべき核が一つでない事も、同時に検知していた。
しかし、確実に、ジェイダイトはその機速を落としていたのには、違いない。
大成功
🔵🔵🔵
国栖ヶ谷・鈴鹿
◎アドリブ連携OKです
この戦いは、この戦争に散った多くの船に捧げよう。
ヨナ、天候操作、状況、濃霧……全軍、この霧に乗じて攻める。
ユーベルコヲド、超弩級艦隊決戦!
電子戦支援用意!
撹乱から始める!
ビーム&バリア撹乱粒子を散布!
空対空、雷撃艇部隊!一斉射!
雷撃命中後、装甲中で爆破して!
ジェイダイト!
バリア機能がうまく使えないうちに直掩機はバリアシステムを損壊させて!
突破した爆撃機部隊は、高エネルギー反応地点を中心に爆破!徹甲爆撃で内部を露出させて!
このまま天使核の反応があれば、ヨナ!内部へ突撃!天使核のコア部に直接陽電子砲を撃ち込んで終わりにしよう!
夜久・灯火
【黒猫】
事前に情報で聞いてはいたけど…実際に見ると凄い大きさだねぇ。
でも、こういう巨大な敵が相手だと落としがいがあるね。
有栖ちゃんもよろしくね。
今回はスカイホエールに乗って出撃するよ。
サーチドローン11台、シールドドローン6台も周辺に展開。
敵も多いし、UCでガレオノイド型のゲームキャラ112体を召喚して対抗しよう。
ゲームキャラを飛空艇に変形させて数を利用した【集団戦術】と装備したレーザー砲の【レーザー射撃】で敵の飛行部隊や戦艦と【空中戦】をしてもらうよ。
有栖ちゃんが戦艦に近づけるように援護も忘れずにね。
こっちに来る敵はシールドドローンの【結界術】で防御し、サーチドローンの【弾幕】で迎撃。
結城・有栖
【黒猫】
あれがジェイダイトですか…。
戦艦というよりも、浮遊大陸ですね。
「あれだけ大きいと、並の攻撃は効き目が薄そうダネー」
なら、強力な攻撃をぶつけましょうか。
灯火さんも一緒ですし、頑張りますよ。
トラウムに搭乗し、シュトゥルムシステムで飛翔して出撃です。
戦艦に接近しつつ、シュトゥルムから風の渦を放ち、敵の飛空艇を巻き込んで攻撃です。
灯火さんや味方を巻き込まないように注意します。
敵の攻撃は【野生の勘で見切り】、【空中機動】で回避です。
戦艦に近づいたら雷の魔鳥さんを呼んで羽から雷を放って攻撃です。
そして、この攻撃で敵の特性を記憶し、強化して大きくなった雷の魔鳥さんを敵へと突っ込ませ【追撃】します。
空気を肌身に感じる瞬間。それはどんな時であろう。
冠婚葬祭に於いて、厳粛な空気を壊した瞬間だろうか。
草原に吹き抜ける風を感じたときだろうか。
この空には、いつだって空気が気流となって渦巻いている。
草木の匂いを運び、雨粒となった雲の甘い匂いを運び。
時にそれは、空気との摩擦で数珠つなぎとなった電子が雷光を伴い、反応を及ぼした湿った空気の中に、かすかな焦げ臭さ、イオン臭を残すかもしれない。
そこに世界を見出し、ロマンに夢馳せる。
そんな空もいい。
だが、今、この空を支配しているのは、圧倒的質量だった。
ただ動く、それだけで圧となるほどの質量。空気がぴりぴりと圧迫される異質な存在感。
それほどまでに強大で、肌身に感じぬ筈のモニター越しであっても、その圧力を肌身に感じる程。
それは圧倒的であった。
経緯すら抱くほどの巨大。敵とは言え、その威容には息を吞むものがある。
「あれが、ジェイダイトですか……戦艦というよりも、浮遊大陸ですね」
ガレオン船・スカイホエールの艦上。遠景と、モニター越しの映像が大差ないというほどの規模にある、今回の倒すべき敵の巨大さに、結城・有栖(狼の旅人・f34711)は、眠たげな瞳を精一杯大きく見開いて、その全景を把握しようと試みる。
遠くからでは仔細が見えず、また、近づけばその全てを視界に納める事すらできまい。
「事前に情報で聞いてはいたけど……実際に見ると凄い大きさだねぇ」
スカイホエールの操縦桿を手に、夜久・灯火(キマイラの電脳魔術士・f04331)は、いささか困ったように嘆息し、わしわしと頭を掻く。
電脳魔術士でありゲーマーでもある灯火は、ちょっぴり身の回りについてはガサツなのか、船の制御を半自動、もしくは携帯端末で操作できるほどの余裕を持たせているせいなのか、手癖であちこちいじってしまうようだった。
だがそんな彼女と仲良しの有栖は、灯火のそういった癖を嗜めることはしない。
無意識にそういった癖が出るときは、彼女のシンキングタイムでもある。
『なんだい、やっぱり帰るかい?』
電信越しに聞こえてくるのは、すぐ近くを飛んでいる、これもまた巨大なクジラを模した造りの航空巡航艇・ヨナに乗る国栖ヶ谷・鈴鹿(命短し恋せよ|乙女《ハイカラさん》・f23254)の声だった。
挑む様なその声色は、答えがわかっているようなものであったが、灯火は敢えてそれに乗るようにふっと鼻を鳴らす。
「とんでもない。こういう巨大な相手だと、かえって落とし甲斐があるね」
『ええ、それでこそ!』
ニヤリと、口の端に笑みを浮かべる灯火の声色を悟ったらしい鈴鹿からも力強い返答が返ってくる。
戦略、その展開の予想も、既に二人は頭の中に入れていた。
味方には飛空艇艦隊も多数いる。
敵は個人。数の差は歴然としている。
そう、これだけの数を以てしても、数的不利はこちら側にある。
相手は動く補給地点であり、前線基地でもある。移動要塞などと生易しいものではない。
移動する国なのだ。
こちらがどれだけ兵を用意しようと、数で優位に立つことはほぼ不可能であろう。
だが、まったく数で劣るからと言って、馬鹿正直に面と向かって単一の力で突撃を仕掛けるのは、いくらなんでも無謀だ。
それを成す剛の者も居るかもしれないが、実現可能な者は多くはない。
絶対的に手数が足りない。かといって、手数を捨てるというのも愚である。
故に、彼の者の大きな手に対抗するために、こちらも手に手に力を依り合わせて、匹敵するであろう力を編み出そうというのだ。
「この戦いは、この戦争に散った多くの船に捧げよう」
ヨナのブリッジの中で、静かにそう宣言すると、鈴鹿はクルーであるペンギンたちに指示を飛ばす。
「天候操作、状況、濃霧……全軍、この霧に乗じて攻める」
雲海とは異なる濃い霧を生み出し、一時的に飛空艇艦隊を含めた自分たちを覆い隠す。
この類の力を、ジェイダイトも所有していないとも限らないが、一時でいい。
相手に正確な数を把握させない内に、準備を終えなくてはならない。
「とにかく、ありったけの兵を用意して! ユーベルコヲド、|超弩級艦隊決戦・大戦略!《ドレッドノヲト・オペレヰシヨン》」
号令と共に、濃霧の中に、続々と船影が増えていく。
戦場全体に及ぶほどの大艦隊。それらは、この戦い。これ以前の戦い。多くの戦いの中で散って行った飛空艇の姿にも似ていた。
鈴鹿は、己が作り出した物だけには飽き足らず。ありとあらゆる造形物を愛している。
壊れ果てたものでも、役目を終えたものでも。戦い、散って行った艦船に涙すら見せる。
志半ばで倒れた者達に再起のチャンスを。その願いを持ち続け、スクラップから新たに役割を生み出す事もしてきた。
その真摯な願いが一つの奇跡を及ぼしたのかもしれない。
今や、濃霧から溢れ出んばかりの大軍勢。
そして、それらは全て、
「電子戦支援用意!
撹乱から始める!
ビーム&バリア撹乱粒子を散布!
空対空、雷撃艇部隊! 一斉射!
雷撃命中後、装甲中で爆破して!」
ブリッジに立ち、球のような汗を散らす鈴鹿の命のもとに、規律正しく布陣し、動き始める。
規模の大きな力には、それを運用するだけの差配、そして気力を要する。
大軍勢を一手に担う鈴鹿には、大きな負担であるが──、
「兄弟の動きが鈍い。こっちのクジラも、狩りを始めるよ。相手はクジラより大物だ」
司令塔のヨナが緩慢になるや、灯火はそれをフォローするかのように立ち回り、彼女もまた船外にドローンを放ち、防御シールドを持つシールド機、索敵と機銃で迎撃するサーチ機をそれぞれに展開。そして、【バーチャルキャラクターズ】を百数体も召喚する。
この空の世界で人型を空中に放り出すのはかなり過酷ではあるが、生憎とそれらはただの人ではなく、ゲームキャラクター。もっと言うならば、ガレオノイドであった。
いずれもが艦船に変身し、鈴鹿の指示とは別個に動くことで、彼女の意識の裏をフォローする。
かくして、戦線はかち合い、濃霧が戦場を混濁化させたのも一瞬の事。
戦端を切ったのは、雷雨の如き輝き。それらは、砲撃でもなんでもなく、ジェイダイトの地表を覆う膜のようなバリアに、何かしらの粒子がぶつかり、干渉し罅割れるものだった。
「バリア機能突破! 今のうちに直掩機バリア発生装置を破壊して!」
雪崩れ込む鈴鹿の部隊。爆撃機と、本艦を守備する直掩を攻撃に回し、ジェイダイトの強固なバリア発生装置の破壊を目論む。
しかし、防衛部隊が黙ってはいない。
ジェイダイト、その国土のあちこちから飛空艇部隊が迫ってくるのを、灯火とバーチャルキャラクター艦隊。
そして、一陣の風が防衛部隊を受け持つ。
「こっちの守りは十分だよ。だから、有栖、よろしくね」
「ええ、頑張りますよ」
消えかかる濃霧。炸裂する榴弾砲や散華し黒煙を引いて落ちていく飛空艇。
その戦火に塗れた空の中に、有栖の駆るキャバリアはあった。
魔女のようなシルエットを持ち、その身に風を帯びて空を駆けるシュトゥルムシステムによって、サイキックキャバリア・トラウムは竜巻の如く飛翔する。
人型を飛ばすのは難しい。だが、仮に飛べたならば、その運動性は、艦船とは比べ物にならない。
身を翻し、姿勢を変えるだけで、その軌道はまさに縦横無尽と変化する。彼女を捉えることができる艦船など、この場にはいないかのようだった。
そして、風を操るトラウムが通り過ぎた後には、風の渦が敵艦を巻き込み、その圧倒的暴風で捩じ切っていく。
華麗に見えるその動き。しかしコクピットの中は忙しなかった。
『ああ、そっちには味方がいるヨ! 高度を下げて! 狙い打ちされちゃうヨー!』
「わ、わかってますよ。落ち着いて。えっと、どっちでしたっけ?」
敵も味方も入り乱れる戦場の中で、目に見えぬ風の渦を操り続ける有栖と、その内なるオーガことオオカミさんは、しっちゃかめっちゃかになりながら、敵の侵攻を防ぎつつ、しかし確実に、敵陣に迫りつつあった。
『突破した爆撃機部隊は、高エネルギー反応地点を中心に爆破! 徹甲爆撃で内部を露出させて!』
張り詰めたような鈴鹿の声が聞こえてくる。
『レーザー砲を照射。囲ませるなよー! こっちもいいとこ見せないとねぇ』
ジェイダイト攻略に専念する鈴鹿を守るように、敵飛空艇を迎撃しつつ、進行を助ける灯火も、手勢でありながら善戦している。
だが、バーチャルキャラクターも幾つか落とされてしまった。
相手も無敵を名乗るだけはある。
だが、その甲斐あって有栖は比較的自由に動けていた。
敵陣をある程度切り拓いて抜ければ、バリアを抜けた地表までもう目の前であった。
『あれだけ大きいと、並の攻撃は効き目が薄そうダネー』
ふーっと一息ついたらしいオオカミさんが、いまだ決定打を下せていない鈴鹿の爆撃部隊を見やる。
地上施設を破壊する爆撃だけでは効果が中まで到達しない。その為の空挺魚雷。徹甲爆弾なのだが、高エネルギーを検知して爆撃し続けていても、この島自体が大きな施設だ。
今だ明確な標的を見いだせていないのだろう。
「なら、強力な攻撃をぶつけましょうか」
地表を削り続けるその攻撃のすさまじさとは裏腹に、あとワンポイントが届かないような攻撃を目の当たりに、有栖は一計を案じる。
その場で思いついたような出たとこ勝負ではあったが、【想像具現・雷の魔鳥】を呼び出し、想像の中から生まれ出でた雷で構成された翼ある腕、魔鳥ハーピーの雷を落としていく。
当て推量の雷は、地表に落ちる程にその狙いを限定し始める。
『どうするつもりなノ?』
「見えてきました。恐らく、私達の狙いである天使核にも、魂が宿る筈。ということは」
想像具現により生み出された魔鳥は、その魂を嗅ぎ付け、特性を理解し、より精度を上げていく。
「鈴鹿さん、灯火さん……こっちです」
そうして、それの存在をかぎ分けた雷の魔鳥は、特大の雷を落とした。
抉れた地面。その隙間から見える空洞の先には合金の防壁。それはまるで、大切な何かを守っているようにも思えた。
「ナイスだよ。ヨナを内部へ突入させる! 退路の確保と、対ショック!」
鈴鹿とその艦隊を守りに回っていた灯火が、ジェイダイトに生じた亀裂へと飛び込んでいく。
とっておきの一撃、陽電子砲を撃ち込み、この戦いにピリオドを打つために!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
栗花落・澪
巨大な敵は今までにも何度も見たけど
戦艦、というか島そのものが敵だなんてね
翼を用いての【空中戦】と
万一翼を負傷した場合の保険として
★Venti Alaに風魔法を宿しての【空中浮遊】の二段構え
更に【オーラ防御】で身を守り【指定UC】発動
ごめんね鳥達、僕の事守ってね
バリアを解除させるため発生装置の破壊を優先
それまでは回避を主体にしつつ
難しい場合のみ炎の鳥に一体ずつ盾になってもらい
装置は【高速詠唱】で雷魔法の【属性攻撃】
雷の衝撃で破壊狙い
バリアさえ解除出来れば
見た感じ船の上って緑が豊富そうに見えるし?
炎は燃え移るんだよ
残っている【破魔】の炎鳥達を全て戦艦に突撃させ
延焼による継続ダメージで攻撃
リューイン・ランサード
いくら大きい艦とはいえ中心の天使核ってあるんでしょうね。
そこをピンポイントで狙うか、そこに至る突破口を開いて後続に託すか。
やってみましょう、怖いけど<汗>。
自分の翼で飛行。
道術でジェイダイト周辺に風雨を呼んで攪乱(仲間には事前に伝える)。
敵攻撃はオーラ防御を展開しつつ、空中戦・見切りで攻撃を躱したり、ビームシールド盾受けで防いだりして対応。
仙術の千里眼と第六感・式神使い・失せ物探しで中心天使核に至る攻撃ポイントを掴んでのける。
即座に瞬間思考力・スナイパーで天使核をロックオン。
エネルギー充填・光の属性攻撃・全力魔法・高速詠唱で強化した収束側のUC:竜闘気波動砲発射!
発射後は千里眼を使って帰還。
まるで火でも焚いているかのように。
山火事でも起きているかのように、空に聞こえる風切り音は物騒な音色を上げていた。
大規模な衝突が、船同士の戦いが、空を茜に染めようとしていた。
激しく燃えながら落ちていく船、船。
それすらも上の空であるかのように、島そのものが国土であり、個人であり、船であるジェイダイトは、悠然と散華する飛空艇の花火の最中を突き抜ける。
数十人から成る乗組員を運ぶことができるガレオンが燃え落ちようと、それが味方であろうと敵であろうとも、ジェイダイトは凱歌を行くようにその身を晒している。
船が燃え落ちる事など些事である。それはそれほどに、巨大で圧倒的だった。
「巨大な敵は今までにも何度も見たけど……戦艦、というか島そのものが敵だなんてね」
敵味方入り乱れるジェイダイト上空にて、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は、一人その有様を見下ろす。
オラトリオである彼女……もとい、彼は空を飛行し、単身で潜り込めないかと観察に徹していた。
この混戦状況では、どさくさに紛れての行動も有効かもしれない。
一応飛行可能とは言え、激しい空戦の気流乱れる中でも自在に飛べるよう、翼の生えた魔法の靴『Venti Ala』に魔法を宿しているため、雲海に真っ逆さまとはいくまい。
だがしかし、相手はあまりにも巨大。
単身で何ができるものか。
島を破壊するにしても、規模が大きすぎていまいちピンとこない。
加えて、観察している内にその脅威を思い知るのは、散華したガレオン船の残骸の降り注ぐ先である。
破壊された残骸とはいえ、その大きさは澪の比ではない。そんなものが降り注げば、超巨大な船であるジェイダイトといえど地表に被害が出る筈だろう。
だというのに、雑魚に用はないとばかり悠然と海中を横切る鯱のように、ジェイダイトの装甲とも言うべきむき出しの大地に船の破片は届かない。
その表皮を覆うようにして、光を浴びた鱗のように燐光を放って障害物を弾くそれは、この大戦艦を無敵と言わしめるバリアであった。
「あれをどうにかしない限り、破壊どころの話じゃないよね……なんとかして……ん?」
艦隊同士の戦いに巻き込まれないよう注意しながら様子を伺っていた澪は、バリアの発生装置こそ発見したものの、その規模の全てを把握するのには難儀していた。
なにしろ相手が大きすぎる。
全体を把握しようとすればもう少し離れる必要があるだろうし、それができる位置まで下がったら、今度は近づくのがまた大変になる。それほどに相手が大きすぎるのだ。
バリアの効果範囲を的確に把握するような手立てでもあればいいのだが、飛空艇の破片を待っていたら、味方の飛空艇艦隊が損耗してしまうだろう。
そうこうあれこれと悩んでいる内に、ふとジェイダイトを覆う圧力が不意に消失したのを感じた。
あれほど厄介に感じたバリアを自分から止める? 妙だな。
と感じるのと同時に、ものすごい嫌な予感を覚えると共に、ジェイダイトのあちらこちらで輝きを湛えているのを散見する。
やばい。これは。
「あぶなーい!!」
誰かの声。そして、空に格子模様の雷光が照射されるのと、誰かと澪の身を護る防御魔術とが干渉して、空に思い切り弾き飛ばされた。
「うわわーっ!」
「あわわわっ!」
空中でぶつかり合ってエアホッケーのパックのように明後日の方向へ弾かれた二人は、しかしそのお陰でジェイダイトの主砲、超魔導砲の直撃を避けていた。
空を焼く眩い光線が、敵味方を問わず焼いていく。破壊していく。
圧倒的破壊力の前に、二人は身動きができないまま、それをやり過ごすしかない。
「うう、凄い威力だ……!!」
澪に体当たりをすることで射線から逸らした竜の翼を持つドラゴニアンの青年、リューイン・ランサード(|波濤踏破せし若龍《でもヘタレ》・f13950)は、その雷光の如き輝きを前に、果敢にも隙を見てジェイダイトに乗り込もうとするも、激しい衝撃に空中で流されて、思うように進めない。
バリアを自ら解いてまで使うのは、主砲がバリアと干渉しかねないからだろう。
腰から下をがくがくと震わせるほど情けない動揺を隠せないリューインであったが、その頭は冷静に敵の戦力を見ていた。
「ダメだぁ、バリアを張られちゃった。またあの主砲の撃つ瞬間を待つしかないのかな……」
そこへ、ついさっき弾かれた澪が、突撃のタイミングを逸して歯噛みをしながら近づいてくる。
「御無事でしたか! いやぁ、あの砲台の撃つ瞬間は、無理じゃないですかね……。怖いですよ」
「さっきはありがと。でも、じゃあどうやってバリアを突破する? バリアの発生装置を壊すにしても、そこを守らないわけがないよね。せめて範囲がわかればいいんだけど」
「バリアが可視化できればいい……。それですね!」
次の主砲にはまだ時間がある。次弾を撃たれてしまえば、自分たちはともかくとして飛空艇艦隊に大きな被害が出てしまうだろう。
もはや時間はない。
そこで、リューインは道術を用いて、雨雲を呼び寄せる。
「この風雨で、バリアの発生範囲は目に見える筈!」
肌にぶつかれば痛いほどの局地的な通り雨。それがジェイダイトの表皮を覆うバリアと反応し、その姿をくっきりと映し出す。
それだけ見えれば、あとは澪にとっては容易い作業であった。
「よく見える! やっぱり、全てを覆えるほど、万能のバリアなんかじゃないんだ」
【浄化と祝福】の祈りを捧げる澪の周囲に、ありとあらゆる種類の鳥類が、美しく燃える破魔の炎で以て象られていく。
風雨とその炎は、いくらなんでも目立ちすぎた。そして、もはや静観の時ではない。
ジェイダイトは巨大すぎるガレオノイドだ。その身全てを覆うようなバリアは、しかしながら蟻の子一匹、鳥の一羽とて入り込めないほど完璧……とは言い難いものであった。
「雨の中、ごめんね。さあ、行って!」
バリアの隙間を掻い潜り、鳥たちはその身を燃やしてバリア発生装置を破壊。
完全に破壊には至らなくとも、その出力が弱まったところを、すかさず雷魔法を高速詠唱で挟み込み、確実に発生装置を搭載した塔を破壊せしめた。
「バリアさえ解除出来れば!
見た感じ船の上って緑が豊富そうに見えるし?
炎は燃え移るんだよ」
風雨の中でも、ジェイダイトの大地に鬱蒼と茂る木々に向かって懸命に突撃する浄化の炎でできた鳥たちは激しく燃え広がって、延焼していく。
「そういえば、どうしてこんなに緑が豊かな大地を残しているんでしょうか……盛土を積むにしても、トーチカや砲台をもっと増やす事だって出来る筈……いや!」
燃え広がるジェイダイトの地表に、リューインの第六感と千里眼は何かを見出す。
「この巨体を浮かし、制御するには、きっと一つの天使核ではとても足りない筈。中心となっている天使核は確実に存在する筈ですが……そんな重要そうなものを無防備になんてするでしょうか」
大本の核をピンポイントで発見、もっといえばそれさえ破壊できれば勝ちではあるが、そんなに容易だろうか。
いいや、そんなはずはない。
守りの為の天使核も、確実に用意しているはずだ。
念のために式神を飛ばし、失せもの探しの占いの術式を込めて燃え盛る島の大地を精査すれば、出るわ出るわ、天使核の反応。
「これほどまで……!? これも、見えざるバリアだったんだ……まずいぞ。中心に向かった人たちの為に、突破口を開かないと!」
最早手段は選んでいられなかった。
ドラゴニアンの闘気を一身に集め、リューインはそれを脳天、いや両目に集約する。
竜の紋章は額には浮かばず、その代わりにその両目が爛爛と輝く。
正直、眩しくて目が見えない。
失せもの探しで探知した攻撃ポイントは無数にあった。それらを薙ぎ払うように、
「エネルギー充填120%! 発射ァー!」
両目に集約した闘気を一気に放つ【竜闘気波動砲】を、反応のあった一帯を薙ぎ払うように放つ。
燃える野を貫き、大地を割り、天使核を確実に破壊していく凄まじい闘気。であるが、あまり長時間の照射は、負担がかかる。
「う、ううう……目がぁ~~!!」
「ちょっと、大丈夫なの?」
「全然大丈夫じゃないですが……でも、千里眼が、ありますから」
目がくらんで涙をボロボロ流しながらこの場を離脱するリューインは、探知魔法を展開しているとはいえ、若干平衡感覚がおかしいのかふらふらするのを、澪に支えられながら戦場からひとまず引き上げるのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
【ドヴェルグ】
この飛行船で戦場に来るのは初めてね。よろしく頼むわよ、リオ。
これほどの化物を見るのは、帝竜戦役以来かしら。
折紙で折った猛禽を沢山用意しておいて、「式神使い」で式にして飛ばす。あなたたち、この船の護衛は任せたわよ。
あたしは飛鉢法で飛び出し「空中戦」。ある程度はポーラが引き受けてくれてるけど、こっちに狙い付けたガレオンは炎の「属性攻撃」で炎弾を放って落としましょう。
まったく、敵も味方も分からないような戦場ね。
「オーラ防御」を張り、攻防の間に詠唱して「全力魔法」衝撃の「属性攻撃」「範囲攻撃」「衝撃波」「仙術」「道術」で天絶陣!
天よりの鉄槌、喰らいなさい! その巨体をへし折ってあげるわ!
エミリオ・カリベ
【ドヴェルグ】
世界最大のガレオノイド……何もかもが規格外だね。
だけど……
まずはUCを発動して星霊王に変身。
船を守る魔力障壁【電撃耐性+結界術】を展開し、【戦闘知識】を活かした【飛空艇操作】でジェイダイトに【空中戦】を挑むよ。
僕はガレオノイドではないけれどドヴェルグは僕の一部みたいなもの。
簡単に墜とせるとは思わないでもらいたいかな?
みんなが出撃し、船への攻撃が落ち着いたら自動操縦に切り替えて船首へ移動。
魔法の威力を高めるよう【占星術】で星を読み、【多重詠唱+高速詠唱】で【雷撃+爆撃+焼却】の【全力魔法】を放つ。
¡Trueno rugiente!
ふふ、みんなと一緒なら負ける事なんて想像出来ないよ。
リリエル・エルヴィータ
【ドヴェルグ】
わ~♪速い速~い♪ドヴェルグ速~い♪
サラマンダーよりずっと速……
んんん?何で唐突に|火蜥蜴《サラマンダー》とか出て来たのかな?かな?
ともあれ我も頑張るんだよ!
普段は隠してる(神というより天使の)翼で船を飛び立ち【空中戦】。
敵の飛空艇部隊をゆかりとポーラと連携して【おびき寄せ】、我は魔法の矢の【弾幕】で【爆破】しながら魔導砲に接近!
力を溜める前に【先制攻撃】の「シューティングスター」でどっか~ん♪
あ、ポーラ♪我も(【怪力】での破壊を)お手伝いするんだよ♪
それにしても|あんなお船《ドヴェルグ》を造れちゃうくらい機械の知識も凄いのに、魔法の知識も凄いとかやっぱりエミリオは天才なんだよ♪
ポーラリア・ベル
【ドヴェルグ】アドリブ歓迎
ふぇぁぁ、なんだか凄いの!
団長にりりえーにゆかゆか!皆宜しくお願い!
団長のえみりおにーがお船をくっつけてくれるって!乗り込みだわー!
【空中戦】で普通に飛べるし、【天候操作】で風を味方にできるポーラは飛大丈夫!(フェアリー)
ユーベルコードは常に展開
先んじて戦艦に飛び込み、速さに物言わせ攻撃を気合回避。
囮になって引き付ける事で自陣のお船から攻撃を逸らし被害を抑えるわ
バリア発生装置を見つけ次第
【属性攻撃】の氷を纏った冬告げのベルを【怪力】で振り回し
ガンガン叩き壊していくよ!
飛ばされた人がいたら【怪力】でお船まで引き上げてくね!
おっきくたって、小さな風でたちまちなんだからー!
風が叫ぶように流れ、遥か空には蒼穹。遥か眼下には雲海が広がる空の世界に、幾重にも空震が響く。
猟兵たちを擁した飛空艇艦隊が、既に戦闘を繰り広げているのだ。
果てのない様にも見える空には茜が映える。散華する船は敵か、それとも味方の船だろうか。
出来損ないの花火のように、黒煙と火を吹いて雲海の彼方へと落ちていく。
或は、空気を切り裂くような圧倒的な存在感を誇る、この戦場の主役……ガレオノイド・ジェイダイト。
戦艦というにはあまりに大きく、個人と言うにもあまりにも大きく、ましてガレオノイドというよりかは、島であり、国であった。
燃え落ちるガレオンの残骸をその地表に受けるども、ジェイダイトの装甲は大地そのものであり、また、その地表を覆うように、無敵と名高いバリアが、さながら巨大生物の鱗のように光を照り返し、破片を弾いていく。
既に幾らかの猟兵がかの国へと突撃を試み、ジェイダイトの機能は十全とは言い難いだろう。
しかしながら、その巨大さに伴う力量はいまだ健在であり、今だ勝負は決していない。
かの国を、オブリビオンの総大将、その象徴たる大戦艦を破壊する、決定的な打撃を、今だに与えられていない以上、この勝敗は見えないのである。
戦闘が長引くほど、アルカディアの玉座を目指し、拒絶の雲海に乗り込んだ飛空艇艦隊の勇士達の横顔にも陰りが見え始める。
まだ墜ちないのか。いつまで戦えば、勝利となるのか。
この怪物に、いつまで挑み続ければいいのか。
密かな厭戦ムードが、空の勇士達の間に漂い始めていた。
そんな空気を切り裂くように、一隻の船が躍り出る。
『蒸気飛行船 -空中工房ドヴェルグ-』猟兵たちの旅団、その拠点としても活用される蒸気魔導により空を駆ける船は、満を持してこの戦場に切り込みを入れるべく参入したのであった。
「わ~♪速い速~い♪ドヴェルグ速~い♪
サラマンダーよりずっと速……」
甲板上で調子はずれな歌が風に乗る。よせ。それ以上いけない。よりによって、元ネタに忠実な文言はダメージが大きい。
「んんん?何で唐突に|火蜥蜴《サラマンダー》とか出て来たのかな? かな?」
リリエル・エルヴィータ(記憶喪失の彷徨う謎神・f32841)は、自ら口を突いて出た呪文の意味を解さない。世の中には、知らなくてもいいことだってあるのである。どうでもいいが、青春時代を敵国で過ごしたという背景込みであるならば心変わりもわからぬ話ではないが、問題は敵将と共に加入した後の(以下検閲につき)
「ふぇぁぁ、なんだか凄いの!」
いきなり奇妙な空気になりかかったところ、無邪気な声が上がり、乗組員もみなそちらに注目する。
冬を告げる小さな妖精、ポーラリア・ベル(冬告精・f06947)が、改めて目の当たりにするジェイダイトの威容に感嘆の声を漏らしたのだ。
国であり個人、戦艦というより島そのもの。その姿は、遠景からなかなか近づけないと思ってしまうほどに巨大である。
「世界最大のガレオノイド……何もかもが規格外だね。
だけど……」
見る者すべてに敬意を抱かせてしまうほどの巨大さ。それに圧倒されつつも、ドヴェルグのオーナーであるエミリオ・カリベ(星空と本の魔法使い・f07684)は、常に沈着冷静。熱くなりかける心根を鎮めるかのように胸いっぱいに戦場の空気を吸い込み、静かに決意を固める。
「これほどの化物を見るのは、帝竜戦役以来かしら。
思えば、この飛行船で戦場に来るのは初めてね。よろしく頼むわよ、リオ」
動く山。動く島。心臓にまで届くかのような圧力をその身に感じながらも、村崎・ゆかり(“|紫蘭《パープリッシュ・オーキッド》”/黒鴉遣い・f01658)は強い視線を崩さず、挑む様な調子でこの船の長に、号令を要求する。
目配せを受けたエミリオは、え、僕? というように意外そうな面持ちだったが、皆から視線を受けて、あ、自分がやるべきか。と、小さく嘆息。そのマイペースさに、ちょっと腰砕けそうになる一同であったが、この期に及んでなおいつもの調子である団長の様子に、緊迫しかけていた空気もいくらか和んだ。
「たしかに、この船で戦場に出ることは初めてかもしれない。たくさんの思い出が詰まった船だ。ダメにしたくないな。……だから、そうだな。僕たちでやろう」
言っていてちょっと恥ずかしくなったのか、困ったように笑いながら、終始穏やかに、しかしだからこそ、ここに乗員の結束は固まった。
「団長にりりえーにゆかゆか! 皆宜しくお願い!」
「我も頑張るんだよ!」
口々に決意を告げ、そうしてこのまま船で突撃……ではなく、ドヴェルグに乗り込んだ者たちは、それぞれの手筈のもと、行動を開始する。
手始めに、ゆかりは折り紙で作った猛禽類を放ち、それらに式神をつけると、折り紙の猛禽は命を得たかのように羽ばたき、船の周囲を旋回するように飛ぶ。
「あなたたち、この船の護衛は任せたわよ。それじゃあ、一足お先に」
そう告げると、どこからともなく呼び出したどでかい空飛ぶ鉢に乗り込んで、空へと飛んでいく。
「あたしも乗り込みだわー!」
「あー、待って! 我も行くから、ちょっとー!」
続けてポーラリアも小さな姿ながら、矢のように船から飛び出していく。
妖精であるポーラリアは、その超自然と親和性の高い力で、天候を操りその身に風を受けて加速するのである。
やや残される形で出遅れたリリエルは、普段はしまい込んでいる翼を展開する手間の分があったようだ。
小柄でいろいろとちっちゃいリリエル。こう見えて神である。ただし、記憶はない。
しかしながら、天使のような翼と、ハートと翼をあしらったボウガンを手にすれば、その姿はキューピッドのようにも見える。皆さん知ってますか。キューピッドって神様らしいですよ。
そうして、飛び去った三人の少女を見送り、エミリオは一人ドヴェルグに残り、操縦桿を握る。
三人はそれぞれ空に飛び立っていった。
それは、エミリオの乗る船から注意をそらすための陽動と、そして、ジェイダイトの機能をかく乱しながら潰す算段であった。
早くも、突出したドヴェルグに対して、ジェイダイトのあちらこちらから飛空艇部隊が展開し、その表皮にはバリアが、巨大な砲塔には光が湛え、発射体勢に入っていた。
「あちゃー、あの砲台はほっといちゃダメだね~♪ 大物貰っちゃっていいかな?」
「オーケー、任せた。艦隊はあたしと……ポーラはもう、行ってるわね」
「とやーっ! ぶっ壊すよー!」
艦隊、バリア発生装置、魔導砲。と、それぞれに明確な攻撃対象を設けつつ、連携してそれぞれにフォローしながら、削り落としていく。
東洋魔術の使い手のゆかりは、飛鉢に乗ったまま炎弾を放ち、艦隊に火を放って炎上させる。
その隙にポーラリアはその小さな体を利用して、艦隊を通り抜け様に、冬告げのベルで叩きつけ、ダメージを与えながらジェイダイト本体へと目指す。
いかなバリア発生装置とて、全域を満遍なく守っているわけではない。空気の通り道、それこそ、小鳥や人一人が、その鱗の隙間から入り込む隙間程度はあるようだ。
風の流れを読むポーラリアはそれを気合で見切り、入り込んでいく。
雪の結晶を引くような派手な飛行は、小さな姿ながら目立つが、無邪気に飛ぶ彼女の姿は、それこそが狙いでもあった。
誰もが目を見張るその軌跡に目を奪われた次の瞬間、超連射のハートの矢がガレオンを、敵部隊を貫いていた。
そして、冷たい風が通ったかと思いきや、そこにはいつの間にか火の手が上がっているのだ。
「うおー、バリア壊れろー!」
程なくして、【なかなかに冷たい現実】で当社比3倍にまで強化されたベルをむやみやたらに打ち付けられたバリア発生装置を搭載した塔は、涼しげな音と共に倒壊する。
「バリアが消えた! 今だ、どっか~ん♪
リリエルのボウガンにとっておきの一射を込めて撃ち出す【シューティング・スター】。いつものハート形よりもちょっとだけ物騒な星をつがえた矢は、巨大な魔導砲の砲口に飛び込んでいき、なんか星を吸い込みそうなアレによく似た感じで凄まじい爆発を起こして砲塔を潰す。
「まったくもう、敵も味方もわからないような戦場ね」
一方で、ガレオン部隊を適当に相手しながら陽動を繰り返していたゆかりは、割と大雑把場他の二人のフォローにまわっていた関係上、人一倍の疲労を抱えていた。
この戦場に味方はドヴェルグだけではないのである。
だが、大雑把にもいい事がある。下手に目立ってくれるお陰で、戦果がわかりやすい。
そして、肝心のドヴェルグについては、考えから外していた。
陽動は完璧ではないだろう。数が違い過ぎるし、こちらの手勢で受け持てる相手にも限度はある。
だがそれ以上に、エミリオを信じている。
そのエミリオも、ただ一人ドヴェルグを操作しながら、いくらか数を減らしたガレオン艦隊を相手取り、戦闘に突入していた。
とはいえ、もともと戦うための船ではない。だから、エミリオは大きな布石をあらかじめ打っていたのである。
「これは、光と闇、二人の王の物語……」
【Historia de dos reyes】その物語を紡ぎ、謳い上げるように魔術として再現すれば、船は白い光に包まれて、やがてその光は形状を変え、鎧のようにして人型を象り、物語に登場する『星霊王』の似姿と変ずる。
ガレオノイドとも、キャバリアともつかぬようなその姿のまま空を飛び、艦隊を蹴散らし、そのままジェイダイトへと肉薄する。
「僕はガレオノイドではないけれどドヴェルグは僕の一部みたいなもの。
簡単に墜とせるとは思わないでもらいたいかな?」
今や、護り手を蹴散らされ、魔導砲という牙をもがれ、無敵バリアという皮を剥がれたジェイダイトに、彼を止める手立てはない。
「リオ、こちらも続くわ!」
周囲を粗方片付けたゆかりが、エミリオへと追いつく。
むき出しとなったジェイダイトの地表目がけて、これまでの鬱憤を晴らすかのように、全力の魔法を展開する。
「天よりの鉄槌、喰らいなさい! その巨体をへし折ってあげるわ!」
【天絶陣】それは、戦場を覆うような広範囲に及ぶ光の雨。先触れの光の流星雨が降り注げば、それに合わせて隕石が次々と降ってくる。
燃え盛る隕石群。それはまさに、空が落ちてくるかのような光景である。
ジェイダイトの地表はその激突によりめくれ上がり、内部施設の合金のような壁面を晒し、いかにも重要部を守っていそうな装甲が露となっていく。
そこへ追い打ちをかけるは、ドヴェルグの船首へ移動したエミリオである。
船を極力戦わせぬよう、船ごとの変身はやはり負担が大きかったのか、その姿は人間サイズへと縮んでいるものの、彼の展開する星図の様な魔術式は、船を覆うようなものであった。
星詠みの魔術。気象、天体の流れをも利用し、効率的に魔術を組み立て、全力の魔法を生み出す。
数珠つなぎの様なその組み合わせは、一つの筋道となって、むき出しのジェイダイトへと打ち付けられる。
「¡Trueno rugiente!」
雷鳴轟く。わずか一瞬。しかし、眩い輝きは、気象の常識からはみ出すかのように天高く稲光を及ぼす。
貫けた。致命的な何かを砕いた感触。
それと共に、エミリオの身体から、自分を支える力の源が抜けていくような。そんな虚脱感があった。
いや、まだ立っていなくては。この場に於いて、決着は、相手が沈むまでの話であろう。
「お~い、怪我人拾った~」
「こっちもー。けっこういっぱいで、おっこちそう~♪」
表情には出さぬまでも、気丈に立っていようとするエミリオの背に、気の抜けるような明るい声がやってくる。
この戦いで空に落っこちかけた勇士たちを拾い上げたポーラリアやリリエルが戻ってきたのだ。
「いや~、それにしても|あんなお船《ドヴェルグ》を造れちゃうくらい機械の知識も凄いのに、魔法の知識も凄いとかやっぱりエミリオは天才なんだよ♪」
「まったくもう、調子のいいことだわ。はやく飛空艇艦隊と合流して、怪我人を届けてあげなくちゃね」
「ふふ、みんなと一緒なら負ける事なんて想像出来ないよ」
くたびれた様子で甲板に身体を預ける面々に、エミリオは静かに微笑み、安堵の息をつくのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
比喩ではなく、国土が丸ごと敵
圧倒的質量はただそれだけで脅威
しかし、負けるわけにはいかない――!
白き翼の姿に変身
飛翔(空中戦・空中機動)し、勇士たちと共に吶喊
征きましょう、皆さん!
飛空艇艦隊の砲撃は無敵のバリアで防がれるが、そのさまを注意深く観察(情報収集)し、発生装置の場所を探る
その間、延々と呪文の詠唱を続ける
勇士たちによる詠唱の【時間稼ぎ】、そして弱点部位の発見
お膳立ては整った、あとは彼らの献身に応えるのみ
溜めに溜めたすべての魔力を聖槍の穂先へ集中(全力魔法・限界突破)、全霊の【至高天極星砲】!
バリア発生装置を消し飛ばし、内側を【蹂躙】!
さらに勇士たちの艦砲射撃で追い討ちを!
夕凪・悠那
島一つが戦艦なんてわかりやすいレイドボスだね
墜とし甲斐があるよ
"|戦艦白鯨《モビーディック》"抜錨!
確かに大きさは負けてるけど、その巨体ならどう考えても小回り利かないでしょ
こっちは機動戦を意識して行動(空中戦+戦闘知識)
攻撃力を重視した[爆撃]機タイプの飛行眷属をありったけ生成
出てくるだろう敵飛行艇部隊は味方の飛行艇艦隊と連携しつつ、
命中率を重視した戦闘機タイプの眷属や武装での[対空戦闘](+集団戦術)
魔導砲は砲門を把握して射線上に立たないように警戒
逆にこっちの[砲撃]を叩き込んでやる
あちらこちらで火の手が上がる。
この空を染める蒼穹が、まるで最初から夕暮れであったかのような茜に色づく程に、飛ぶ船は爆炎を上げて墜落し、それが敵味方のどれであったかすら判別できないほどに、戦況は混迷を見せていた。
アルカディアの玉座を目指し、名乗りを上げた選りすぐりの勇士達によって構成された飛空艇艦隊はいずれも凄腕であったが、それでも物量の前にこの戦場にて脱落する者も少なくなかった。
何しろ、相手は島。国である浮遊島そのものが大戦艦であり個人。
ガレオノイド・ジェイダイト本人こそが、ジェード王国そのものなのである。
多量の攻勢、猟兵たちの大攻勢を前に、ジェイダイトの無敵にも、いくらか陰りが見えてきた。
しかしながら、その脅威、質量、軍勢は未だに健在であり、突入した部隊とも通信が取れない状況だ。
彼等の成功を祈り、この場で戦線を維持し、彼等への追撃を阻むのが賢いのか?
そういう考えもあるかもしれない。
しかし、一刻一刻と過ぎるうち、味方の被害も増え始めている。
このまま膠着を演出し続けるのならば、圧倒的に物量で勝るジェイダイトの勢力に飲み込まれてしまうだろう。
それにだ。
「そんなのは、性に合わないな」
遅滞戦術など、追われるものがとる行動だ。
夕凪・悠那(|電脳魔《Wizard》・f08384)は、コンソールを開き、それまで艦隊の守りに回っていたスタンスを解く。
今から攻勢に出るなど遅すぎるだろうか。
いいや、何事も遅すぎる事なんてのはない。
機を見て動く事こそが肝要。
現状を考えれば、ジェイダイトの損耗率は目に見えた感じでは半分を超えている。
無敵を誇っていたあの島が、もう半分も壊れかけなのである。
先陣を切った猟兵たちと、命を賭して前線に出向いた勇士たちの活躍であろう。
「──とはいえ、相手は比喩ではなく、国土が丸ごと敵。圧倒的質量はただそれだけで脅威。
攻め入るにしても、覚悟が必要でしょう」
悠那の船の上に立つのは、銀髪金眼のシスター、オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)が、忠告するように言葉を紡ぐが、風の強い船の上で呟くような言葉がちゃんと聞こえているのか。
悠那の船は、巨大な白いクジラを模した海空を征する鋼のサイボーグである。凄まじい再生能力と護衛機を搭載している、元レイドボスである。
電脳魔術士である悠那の手によって魔改造が施されているが、完全密封の艦内と艦上とでは流石に聞こえていないのではないかとも思われるが、それはこれ、接触回線とかソナーとかいろいろあるんだろう、たぶん。
「なに言ってるの。島一つが戦艦だなんて、わかりやすいレイドボスさ。
墜とし甲斐があるよ」
コクピットの中で誰が見てるでもない悠那の口元には、にやりと勝ち気な笑みが浮かぶ。
今こそ行動に出るべき。そう思ったのは、彼女だけではなかったようだ。
「それでは、二手に分かれましょうか」
「そうだね。この白鯨は目立つし、あの魔導砲が艦隊に向くのは避けた方がいいよね」
言うが早いか、オリヴィアは白鯨の艦上から空へと飛び出す。
清楚なシスターの装いにしてもちょっとセクシーさを隠しきれないオリヴィアは、ダンピールであるらしい。
その出自は不明であり、本人もよくは知らない。
ただ、その身に沸き立つ力は吸血鬼をはじめとした人の敵を憎み、神殺しの力は彼女を戦場に相応しい姿へと変貌させる。
軽鎧と、その背には白い翼を。
赫灼たる炎を吹く聖槍を手に、それを誘導灯の如く引いて、オリヴィアは飛空艇艦隊の前に出る。
「さあ、征きましょう皆さん!」
戦女神の如き姿を遠目に、あれはあれで目立ちそうだなー。などとぼんやり考えながら、悠那も自分の役割をこなすべく、船を進ませるスピードを上げる。
「“|戦艦白鯨《モビーディック》”抜錨!」
空を悠然と回遊するかの如く、いやかなりのスピードで、白鯨は飛ぶ。
悠那の公算では、ジェイダイト本体の攻撃力をそう高くは評価していない。
もちろん、あの主砲は脅威であるが、巨大であるがゆえに小回りは利かない。
白鯨も大型ではあるものの、浮遊島そのもののジェイダイトとは比べるべくもない。
そして魔改造を加えた白鯨の機動性は、容易には捉えさせることはないだろう。
邪魔に見えるだろうか。もっと邪魔に思うがいい。でかい魚を追うがいいさ。
オリヴィア率いる艦隊には見向きもせずに、ジェイダイトから飛空艇部隊が無数に出撃してくるのが見て取れる。
「……来たな。こっちも戦力を展開。爆撃機と……飛べる眷属をありったけだ」
護衛機と眷属を多数召喚し、艦隊の相手に当てる。
数の面では劣るが、その戦力では拮抗していると言っていいだろう。
いくつか攻撃を抜けて、白鯨にも被弾するが、
「嘗めてもらっちゃ困るな。この子の砲台は潰されてもすぐ再生する……スコア稼ぎに何度も潰したことがあるしね!」
激しい弾幕を躱し、延々と再生する砲台を潰してはスコアを稼いだ日々を思い出す。
バトルゲーマーだからこそ、白鯨の頑丈さには覚えがあるのであった。
「こっちからも反撃だ。目標、敵艦隊、及び、魔導砲。全砲門開け!」
護衛機の重爆、そして白鯨に積まれた艦砲の数々が赤熱とした咆哮を上げる。
「聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな……」
一方のオリヴィアは、その槍の示す先、ジェイダイトの地表目がけて艦隊と共に攻勢をかけていた。
飛空艇艦隊による水平射は、しかし無敵と言わしめるジェイダイトのバリアによって阻まれてしまう。
だが、それこそが狙い。
攻撃すればその姿を現すバリアフィールド。その光りものの魚の鱗じみた輝きが、榴弾の雨を中和して寄せ付けない。
だが、それによって明らかになる事もある。
バリアの範囲。そして、そのバリアを発生させている装置を積んだ複数の塔であった。
攻撃の成功を祈るかのように呪文を詠唱し続けていたオリヴィアのその目は、輝く燐光の先に攻撃目標を定めていた。
祈りをささげるのは、船旅の無事でもなく、勝利の祈願でもない。
それは戦いの祈りであった。戦いは祈り。祈れ。戦うために。
彼等の献身に報いるべく、練りに練り上げた呪文詠唱。その術式を開放する。
「輝かしきかな極光よ!」
【至高天極星砲】。槍の穂先へと溜めに溜めた魔力を全て空にする勢いで解き放った。
膨大な光と熱が、バリアを撃ち、それを破り、発生装置を、塔を砕き、地表を焼く。
ざざっと、波を打ったように無敵のバリアがさざめいて薄れていく。
「み、皆さん……追い討ちを……ッ!!」
飛空艇艦隊による艦砲射撃、そして別方向からの掃射とが交差し、ジェイダイトを砕いていく。
超弩級魔導砲が、バリアの発生装置が、敵艦隊が、勇士たちと悠那の部隊による十字砲火にさらされて総崩れになる。
いよいよもってジェイダイトの艦上とも言うべき地表には無数の爆炎が上がり、総攻撃による攻勢が功を奏したのか、いくつかの爆発が連鎖したのを契機に、その浮遊島に大きな亀裂が走った直後、崩壊は加速度を増した。
何か致命的なものが、ジェイダイトの崩壊を齎したようだった。
連続する爆発の中から、味方の艦隊が次々と脱出するのが見て取れた。
内部の天使核の破壊が成ったのだ。
大きく傾き、砕け、折れて、その巨大な姿を雲海に横たえて沈み込んでいく姿は、確信的な勝利を思わせるに十分であった。
蒼穹が落ちていく。
焦げた臭いのする空の中で、艦隊に連なる勇士達の胸中に芽生えるのは、勝利の高揚よりも、静かな寂寞であったという。
大成功
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