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アルカディア争奪戦⑰~亡国の女王は猛毒を満たす

#ブルーアルカディア #アルカディア争奪戦 #コルディリネ #『大天使』エンケロニエル #金のコインの

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 かつて雲海に沈んだ島『コルディリネ』。
 エンジェルが統治していた穏やかで平和だったその国は、屍人帝国となって蘇り、『大天使エンケロニエル』に支配されていた。
 そしてエンケロニエルは、他の5つの屍人帝国と同様、『アルカディアの玉座』を目指す。主と仰ぐ、アルカディアにまみえるそのために。

「コルディリネとの決着の時、かね……」
 九瀬・夏梅(白鷺は塵土の穢れを禁ぜず・f06453)は、集まってくれた猟兵達に複雑な苦笑を浮かべて見せた。
 その存在を永く追い続けていた屍人帝国。
 ようやくその実情が見えてきて。そして、支配者との戦いにまで至ったから。
 夏梅は一度、目を伏せて。
 気持ちを切り替えたように、真っ直ぐに顔を上げた。
「コルディリネの支配者は『大天使エンケロニエル』。
 かつてはデビルキングワールドの3rdKINGだった存在だそうだ。
 その目的は『植物怪獣軍団』の無限増殖であり、そのために、天使戦争の残滓である天使核の製造法までも手にしたらしい」
 夏梅の説明に、コルディリネの庇護下にあったエンケロニ帝国を思い出した者もいただろう。数多のエンジェルを攫い、捕えていた牢獄。そこには、エンジェルを天使核に改造している、という噂があったから。
 その真偽はともかくとして。
 エンケロニエルが多くの天使核を手にしていたことは間違いないのだろう。
 しかし、植物怪獣軍団の無限増殖は、思わぬ横槍で阻止される。
 7htKING候補、東のラスボス『スーパーカオスドラゴン』。ひょんな『悪魔契約書』によってブルーアルカディアに飛ばされてしまった、暴走前の段取りと挨拶回りに定評のある悪魔の中の悪魔が、その『混沌魔法』でエンケロニエルを妨害してくれていたのだ。
 またこれで、スーパーカオスドラゴンの大好評な暴走の逸話が1つ、増えました。
 とはいえ、違う世界で万全でないスーパーカオスドラゴン。エンケロニエルを完全に抑えるまでには至らなかったのだが。
 彼は、得意げに笑う。
『これから、お前の眼前にも現れるゼぇ?
 あのガチデビルさえも駆逐した無敗の『7thKING』!
 オレタチの王にして世界最強の群体、『猟兵』サマがナぁ!』
 と。
「エンケロニエルの元まで向かう道は作られた。
 だが、未だエンケロニエルが操る植物は大量でね。自身の周囲を『濃密すぎる酸素と植物毒で満たされた、猛毒の領域』へと変えて、その身を守っている」
 近づく者を無差別に殺す、殺戮女王となったエンケロニエルの傍に、いかに猟兵といえども長く留まることは危険だろう。
 ゆえに求められるのは。
「一撃離脱の速攻。もしくは、猛毒の領域への対処、だね」
 夏梅は戦略の一端を示してから。
「必要なら、飛空艇『ラウレア号』が手を貸してくれる。
 攻撃力は及ばないだろうが、その飛行能力は役立つだろうよ」
 馴染みとなった勇士の飛空艇の名を挙げて。
 夏梅は、真剣な面持ちで信頼の笑みを向けた。
「頼んだよ、猟兵」


佐和
 こんにちは。サワです。
 コルディリネがすごいことになってました。

 戦場は、浮遊大陸コルディリネです。
 基本的には『大天使エンケロニエル』と対峙した状態から戦えます。
 コルディリネには乗り込み済としていただいて大丈夫です。

 コルディリネに縁のある勇士の飛空艇『ラウレア号』も近くにいます。
 戦いの行方を見届けようとしているのですが、必要とあれば協力してくれます。
 ラウレア号は全長100m近い大型飛空艇ですが、小型飛空艇も艦載していますので、そちらを借りることも可能です。
 自分では飛べないけど空から一撃離脱したい、とか、折角だから小型飛空艇を操縦したい、とか、やりたいことがある時のみ、お声がけください。

 尚、ラウレアはガレオノイドの女性。船長はエンジェルの翔剣士イオ。
 詳しく知りたい方は、#コルディリネ タグから過去作をどうぞ。
 今回はエンケロニエルを倒せばいいだけなので、未読で何の問題もありません。

 また、当シナリオには以下の特別なプレイングボーナスが設定されています。
 それに基づく行動をすると判定が有利になります。

 【プレイングボーナス】☆
 一撃離脱の速攻を仕掛ける。/濃すぎる酸素と植物毒に対処する。

 それでは、屍人帝国コルディリネを、どうぞ。
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第1章 ボス戦 『『大天使』エンケロニエル・殺戮女王形態』

POW   :    進化を拒むものを皆殺しにする酸素毒
戦場内に「ルール:【呼吸するなかれ】」を宣言し、違反者を【超高濃度酸素ボール】に閉じ込める。敵味方に公平なルールなら威力強化。
SPD   :    終末を告げる天使の暴走
【全身にまとった天使核】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ   :    生存拒絶楽園の創造
自身からレベルm半径内の無機物を【植物毒噴出植物の森】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。

イラスト:Anenecca

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 混沌魔法『カオスヘッダー』……何という能力!
 増殖し続けるスーパーカオスドラゴンが、私の植物怪獣を喰らい尽くしていく。
 差し向けた討伐部隊との戦いで、万全ではないだろうというのに。

 ……いいえ、まだです。
 まだ、全ての植物怪獣が食べ尽くされたわけではない。
 私の植物怪獣軍団の無限増殖を完全に止められたわけではない。
 その為に私は、天使戦争の残滓を……天使核の製造法を見つけたのです。
 このコルディリネを雲海に沈め、屍人帝国とし、支配したのです。
 数多のエンジェルを集めたのです。
 そう、全ては……わが主アルカディアにまみえるため。

 ですから私は、酸素毒で、植物毒で、辺りを満たし、迎え撃ちましょう。
 スーパーカオスドラゴンをKING候補者に留めたという存在を。
 デビルキングワールドの7thKING……
 あのスーパーカオスドラゴンに世界最強の群体と言わしめた『猟兵』を。

 ああ、わが主アルカディアよ。
 私はすぐに玉座へと参ります。
 その御元に辿り着くべきは、この私をおいて他にないのですから。
 
ロラン・ヒュッテンブレナー
・アドリブOK単独希望

猛毒と高濃度酸素の領域・・・
まるで生命を拒絶してるみたいな場所だね
いや、動物を、かな?


キャバリアのフィルターで少しは保つはずなの
それにこの作戦ならアルターギアの本分を活かせるの
ここには殲禍炎剣がないんだから、ね

魔力接続、システムオールグリーン
ブースターフルドライブ
アルターギア、行くの

発進と同時にセンサーと魔力感知で索敵
敵位置を把握しながらUC発動
高速飛行形態になって真上に上昇しつつ攻撃を回避しながら、
左腕にドッキングしたインフェルノランチャーに魔力をチャージ
完了したら反転して突撃
広域を灼き浄化する魔力の炎を撃ち込むの

着弾確認したらフルブーストで一気に飛び上がって離脱なの



「猛毒と高濃度酸素の領域……」
 クロムキャバリアの内部で、センサーからの情報を確認していたロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)は、コルディリネの現状をぽつりと零した。
「まるで生命を拒絶してるみたいな場所だね。
 いや、動物を、かな?」
 浮島が豊かな緑に覆われているように見えたから言い直したけれど。その緑色のほとんどは、恐らく『大天使エンケロニエル』が増殖させた植物怪獣軍団だろうと思われる。
 それに、浮島に満ちた猛毒を生み出しているのは植物だけれども。そんな植物が普通の生命とは言い難いから。
 生命の拒絶。それはあながち間違いではないのかもしれない。
 そんなことを考えながら、ロランはキャバリアのシステムをチェックする。
 機動力と魔術に特化した空戦用外骨格『アルター・ギア』。
 ロランの身体を完全に覆う機械鎧には、フィルターもついているから。
 猛毒を完全に除去するのは難しいかもしれないけれど、生身よりは保つはず。
 それに、狙うは空からの一撃離脱。
「この作戦ならアルターギアの本分を活かせるの。
 ここには殲禍炎剣がないんだから、ね」
 本来アルターギアが翔けるクロムキャバリアの空との違いに苦笑を見せながらも。
 思う存分飛べる空の世界に、心を弾ませたロランは。
「魔力接続、システムオールグリーン。ブースターフルドライブ。
 ……アルターギア、行くの」
 センサーと魔力探知とで把握したエンケロニエルの居る方向へと発進した。
 接近するにつれて濃くなる植物毒と酸素毒。それをセンサーの数値で確認しつつ。
 互いの相対位置をしっかり把握して。
「頭部・腕部格納。各種抵抗相殺術式、および、魔術回路励起。
 オペレーション・スタート」
 ここと判断した地点で、アルターギアを高速飛行形態に変形させると、一気に真上へと急上昇する。
 同時に、エンケロニエルが全身にまとっていた天使核が巨大化し、寸前までロランが居た地点へ攻撃を放ってきた。
「……避けましたか」
 少しだけ煩わしそうに呟くエンケロニエル。その意思に従うかのように、天使核がロランへ手を伸ばすような形となって追うけれども。
 ロランは、空中でくるりと反転。
 飛行用から砲撃用の形態へと再度の変形を見せたアルターギアの左腕には、専用装備である魔導式プラズマ砲『インフェルノランチャーMg』がドッキングしていて。
「チャージ完了なの」
 広域を灼き浄化する魔力の炎を撃ち込む。
 そしてロランは、破魔の火焔が、巨大化した天使核を飲み込み、焼き尽くしたのを確認すると。
 フルブーストで一気に飛び上がり、毒の漂う空域から離脱した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神臣・薙人
葛城さん(f35294)と

確かに
最近よく遭遇する気がしますね
花や植物を使う敵
怖いと思う気持ちは
ぎゅっと閉じ込めて笑顔を
はい
私達で打ち倒しましょう

ラウレア号から小型飛空艇をお借りします
きちんと無事にお返ししますので…!
敵が射程に入ったら
葛城さんとタイミングを合わせて
リアライズ・バロックを使用
その際は息を止め
酸素と植物毒を吸わないよう留意します

こちらの攻撃が当たれば
すぐに離脱行動に移ります
植物の森に囲まれた場合は
再度リアライズ・バロックを使用し
森の植物をなぎ倒し離脱
少し心は痛みますが
毒に付き合う訳には行きませんので

完全に離脱出来るまで
敵の行動には注意
動きを見せた際には
声を上げて葛城さんに知らせます


葛城・時人
神臣(f35429)と

この頃多くない?花とか植物使って悪さする奴

強敵相手だからこそ、気負いこみすぎないよう
わざと少し軽く共に往く大切な友人に話す
俺達で駆逐しよう、と

禍々しい…聖性も美も俺は感じない
我欲しか見えない
俺は認めない!

一撃、見敵必殺の意志持ち往く
「飛空艇借りるね!必ず返すよ!」

攻撃は技能をフル活用し飛空艇を制御し躱す

神臣と同時に光蟲の槍詠唱
強く強く強く、堕天使に絶対に負けない
俺が強く憧れた光とククルカンを想起

至近到達の瞬間に放ち即時Uターン
着弾は眩く輝く俺の光と蟲が教えてくれる!

毒は技能の結界術・毒耐性でやり過ごす

植物や花、森の邪魔は
ククルカンの群れを常に神臣と呼応させ
突撃させ喰い破る



 空からコルディリネを見下ろした葛城・時人(光望護花・f35294)は、だが戦いを前にして、少しお道化たようにひょいと肩を竦めて見せた。
「この頃多くない? 花とか植物使って悪さする奴」
 軽い口調で、淡い苦笑を浮かべて。強敵相手に緊張感に欠ける、と言われてしまいそうな雰囲気の時人だけれども。
 それは、気負い込みすぎないように、と思ったから。強敵だからこそ、肩の力を程よく抜いていこうと、自分自身に、そして共に往く大切な友人に伝えるためだから。
 ちゃんと気付いていた神臣・薙人(落花幻夢・f35429)は、マフラーのような白布で隠した口元に、小さな笑みを浮かべて返す。
「確かに、最近よく遭遇する気がしますね」
 雑談を楽しむような、気楽な声色。
 でもその胸中には、花や植物を使う敵を怖いと思ってしまう、桜の精だからこその気持ちが渦巻いていた。樹木医としても、どこか嫌悪感のようなものを覚えていたけれども。
 俯きがちな顔を上げれば、そこには大切な友人がいてくれる。
 安心できる笑顔を浮かべてくれているから。
 薙人は、渦巻く気持ちをぎゅっと閉じ込めて。
「俺達で駆逐しよう」
「はい。私達で打ち倒しましょう」
 2人は笑みを交わし、頷き合った。
 そう。2人でなら、そして猟兵達なら、きっとできるから。
 改めてコルディリネを見た時人と薙人は。
 どちらからともなく、大型飛空艇『ラウレア号』の甲板を駆ける。
 目指す先に並んでいたのは小型の飛空艇。
「飛空艇借りるね! 必ず返すよ!」
「きちんと無事にお返ししますので……!」
 真面目な時人と薙人は律儀に一声かけると、空へと舞い上がった。
『ご武運を』
「返しにこなかったら取り立てにいくからな」
 信頼が伝わる穏やかな女性の声と、笑い合う2人に合わせたような冗談交じりの船長の声が、その背中を見送ってくれる。
 どちらも、貸した飛空艇がではなく、2人が無事に帰ってくるようにと願ってくれているものだったから。
 時人と薙人は真っ直ぐに、コルディリネへ向かって、飛んだ。
 小型ゆえの機動力で、2人の飛空艇は一気にコルディリネに近付いていく。
 緑に覆われた浮島に。いや、そこに立つ『大天使エンケロニエル』に。
 植物怪獣軍団に囲まれ、数多の天使核を身につけた姿に、時人は青い瞳を歪めた。
(「禍々しい……」)
 その背から広がる白い翼も。長く揺らめく金の髪も。
 艶やかな肌を魅せる身体も。微笑みを湛えた顔も。
 大天使に相応しい造形を持ってはいたけれども。
 時人は、そこに聖性を感じられなくて。
 我欲しか見えないその姿を、美しいとも思えなくて。
(「俺は認めない!」)
 見敵必殺の意志をさらに強くして、時人は飛空艇を駆る。
「神臣!」
「ええ、葛城さん」
 名を呼び合った2機は、一気にエンケロニエルへと突っ込んでいった。
 途端、爽やかで心地よかった風に、青空を満たす清々しい空気に、猛毒が混じる。
 植物怪獣軍団が生み出す植物毒と酸素毒。
 エンケロニエルの周囲に満ちたそれは、拒絶と、敵意そのもので。
 猟兵ですら蝕んでくる強力なものだったから。
(「狙うのは、一撃」)
 時人は詠唱と共に、その一瞬に集中する。
 強く強く強く、想起するのは、憧れた光と白燐蟲『ククルカン』。
 絶対に負けないという、強い気持ちも高めていって。
 そして、これがギリギリだと判断した、可能な限りの至近距離で。
 時人はエンケロニエルへ『光蟲の槍』を撃ち放った。
 同時に、薙人がバロックレギオンを召喚。その猜疑心や恐怖心を体現した怪物は、エンケロニエルに纏わりつくかのように迫り、手を伸ばし、追い縋る。
 それらの効果を見届けることなく。
 2機の小型飛空艇は即座にUターン。
 突撃した時と変わらぬ勢いでその場を離脱した。
 眩く輝く光が、ククルカンが、エンケロニエルに攻撃が当たったことは教えてくれたから。それ以上を確認せず、時人は、今度は危険な空域を離れることに集中する。
 エンケロニエルと戦う猟兵は自分達だけではないし。
 必ず返すと、約束したから。
 自身が成すと決めた一撃。それを成功とさせるために。
 時人は迷わず、離脱を選ぶ。
 薙人も、息を止めた口元を白布で覆い、猛毒の影響と、エンケロニエルが強いたルールに対抗していて。長時間の活動は現実的ではないと冷静に判断していたから。
 時人と同じ動きを見せていた。
 しかし、エンケロニエルは、自身を傷つけた者を黙って見逃す気はないようで。
 突然現れた植物の森に、2人は囲まれる。
 もちろん普通の森ではない。植物毒を噴出し続ける、猛毒の森。
 創造された生存拒絶楽園に、薙人は茶瞳を苦々しく細め。
 再び喚び出すバロックレギオン。
 次々と木々が倒され、枝が折られ、緑の葉が落とされていくのは、それが猛毒を生み出すと知ってはいても、あまり見たくはない光景だったけれど。
(「少し心は痛みますが、毒に付き合う訳には行きませんので」)
 薙人は、口元を覆う白布を引き上げ、迷わないと茶瞳に力を込めて。
 行く手を遮る植物毒を打ち払っていく。
 必ず帰ると、約束したから。
 こんなところで終われないから。
 その動きに呼応するように、純白の羽毛と翼持つ蛇の形をした蟲が、緑を白で埋め尽くそうとするかのように現れて。バロックレギオンと共に、森を食い破り、道を切り開いてくれるから。
 振り向いた薙人に、時人がしっかりと頷いて見せて。
 それに応えるように、また白布の下に淡い笑みが浮かんで。
 2機の小型飛空艇は、コルディリネから青空へと飛び去っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

日野・尚人
【ドヴェルグ】
大天使エンケロニエル・・・
前に戦ったブラキエルもだったけどお前等何で裸なんだよっ!?服着ろよっ!?

と、ともあれ俺もサラと一緒に≪シルフィードボード≫で出撃だ!
風に乗る空中<サーフィン>で一気に<ダッシュ>!
敵の攻撃を<見切り>、<軽業>と<ジャンプ>を駆使したテクで回避!
酸素毒と植物毒は魔力障壁(<オーラ防御+環境耐性+毒耐性>)で防ぐぜ。
あーちゃんとラウラは援護サンキュー♪
俺も中々やるだろ、サラ♪

とはいえ経験上そろそろ・・・来た!けど今回の場合は良い追い風だ!
あーちゃんの嵐に合わせ俺も嵐(UC)を巻き起こす!
超加速した斬撃と銃撃の<乱れ撃ち>!
へへ♪どんなもんだよ、あーちゃん♪


アイシャ・ソルラフィス
【ドヴェルグ】

……尚くん。ツッコむとこ、そこ?(汗 >服着ろよ!

ボクはダメージを出す能力が乏しいので、みんなが全力を出せるようサポートに徹します
小型飛空艇を借りて、後方から
全力魔法+属性攻撃で牽制や陽動したり
全力魔法+医術で回復魔法を飛ばしたり
全力魔法+盾受けで魔法障壁を展開したり

風属性のエレメンタル・ファンタジアで竜巻か暴風を放とうとして制御に失敗!
尚くんとサラちゃんをエンケロニエルさんに向けて吹っ飛ばしたり

Σ二人とも、ごめぇん!
あ、でも結果的に暴風で猛毒の領域が切り裂けた上に、二人ともすごい勢いで飛んでったから、あの勢いなら一撃離脱する事が出来るかも?


ラウラ・シュトラウス
【ドヴェルグ】

大天使、ねぇ……
酸素濃度を上げて猛毒を周囲に撒き散らしてるとは厄介な相手だ
さっさと片付けてしまうに限る

あたしはみんなと一緒に激しい攻撃を仕掛けるよ
飛行とかはできないから、ラウレア号に相乗りさせてもらっての一撃離脱を基本にしよう
最初に『Air Support』を要請して、短い時間だけど敵への支援爆撃と無いよりはマシな回復ガスを味方へ撒いて援護する

ラウレア号には長くて1,2分でいいから近辺に留まってもらおう
武器は2つ、MGLの〈爆破〉で植物への攻撃
”Gungnir”で本体へ連射しつつの〈スナイパー〉で精密な狙撃を加える
倒せても倒せなくても、時間が来るか弾が尽きれば離脱だ
あとは任せるよ


カラー・モーティマー
【ドヴェルグ】【POW】
※アドリブ他大歓迎
※猟兵の自認はあるが異能者の自覚皆無

ドラゴンの兄貴はイイヤツらしいし一肌脱ぐぜ
スポーツ以外の戦いは苦手でも駆け抜けるのは得意だしな!

◆行動
※【オーシャン・スプライト】が無意識発動

ラウラはお疲れさん、オレはナオト共々
ラウレア号から《セルリアン・スライダー》で
空中サーフィンをキメるぜっ

…オウッ!アイシャにブッ飛ばされた!?
でも風に乗れるボードで強風を掴まえて結果オーライ♪
コレなら変な酸素を吸わずにダイブも余裕だ!

ボードから《プリドヴェン・トルネード》のビーム刃を伸ばし突撃
巧く切り裂いたら上昇気流に乗って急上昇、一撃離脱だ!
ヒュー、ナオトもやるじゃねえかっ♪



 大型飛空艇『ラウレア号』から、近づくコルディリネを見つめる日野・尚人(あーちゃんの早朝襲撃に断固抵抗する会終身(?)会長・f01298)は。
 緑多き浮島に佇む白い姿を見つけ、茶色の瞳を細めた。
「大天使エンケロニエル……」
 それは、コルディリネを支配していると伝えられた大天使。かつてデビルキングワールドの3rdKINGでもあったという強大な敵。
 その身を隠すことなく尊大に立ち、向かってくる猟兵達に怯むこともない、大天使の名に相応しい程に堂々たる強者の姿を、尚人は油断なく睨み据えて。
「前に戦ったブラキエルもだったけど……
 お前等何で裸なんだよっ!? 服着ろよっ!?」
「尚くん。ツッコむとこ、そこ?」
 思わず上げた感想に、アイシャ・ソルラフィス(隣ん家の尚くんを毎朝起こす当番終身名誉顧問(願望)・f06524)が困惑顔を見せた。
 確かにエンケロニエルは一糸纏わぬ姿で、その美しく艶やかな白い肌を魅せている。
 艶めかしい首筋も、豊かな胸も、綺麗にくびれた腰も、柔らかそうな太腿も。
 彫像になりそうな程見事な、円熟したプロポーション。
 それはどれも、まだ少女なアイシャにはないものだったから。
「……尚くんのエッチ」
「いや? 気になるだろ、普通?」
「えちー!」
 何だかデレデレしてる気がする大切な幼馴染の姿に、ずっと想い続ける恋心からの嫉妬も幾分込めて、アイシャは叫んでいた。
 といっても、尚人はアイシャが思う程には見惚れてなくて。普通の少年らしく、裸の女性相手は困ったなと思っている程度。当然、アイシャの微妙な乙女心になど気付きもしておらず、素直にそのぷんすかしている様子を受け止めてしまうから。
 分かってもらえないアイシャの頬は膨らむばかり。
 そんな、ある意味いつも通りな2人の様子に。
「アイシャとナオトはこんなトコでも仲いいな♪」
「緊張しすぎないのはいいことだよ」
 カラー・モーティマー(|BigWed《水曜日の風光と大波》に奔るサラさん・f17248)が楽し気にけらけらと笑い。ラウラ・シュトラウス(|放浪者《ワンダラー》・f32573)も口元にあるかなきかの笑みを浮かべて見守った。
 ぽかぽかと尚人を叩き始めたアイシャに、カラーがまた笑い声を上げる中で。
 ラウラは改めて、コルディリネへと、その静かな眼差しを向ける。
「大天使、ねぇ……」
 まだまだ遠いその姿を、尚人とは違う視線で見つめ。
 大天使を守るように周囲に生い茂る緑色を、紫色の瞳に映した。
 植物毒を生み出し、酸素濃度を上げて毒とする、エンケロニエルの防御。
「ドラゴンの兄貴はイイヤツらしいし、オレも一肌脱ぐぜ」
 じっとそれを見るラウラの後ろから、カラーがひょいっと顔を出し、今度はラウラに向けてにかっと笑いかけてくる。
 ドラゴンの兄貴。それは、デビルキングワールドから飛ばされてきたという、東のラスボス『スーパーカオスドラゴン』のこと。
 7htKING候補であった、暴走前の段取りと挨拶回りに定評のある彼のドラゴンが、エンケロニエルが無限増殖させた植物を混沌魔法で妨害してくれたから、ラウラ達はこうしてエンケロニエルの元に辿り着くことができていた。
 カラーもその話を聞いたのだろう。一見するとワルなドラゴンの姿に首を傾げていたこともあったけれども、今ではすっかり仲間と思っているようで。
 オレも行くぜ兄貴! と言わんばかりの勢いを見せていたから。
 ラウラはまた、口元に小さな小さな笑みを刻み。
「厄介な相手だ。さっさと片付けてしまうに限る」
 それでも油断なく、エンケロニエルへの対策を口にすれば。
「スポーツ以外の戦いは苦手でも駆け抜けるのは得意だしな!」
 カラーは、サーフィンアスリートらしくサーフボード『セルリアン・スライダー』を掲げるように見せながら、にかっと笑いかけた。
「お、俺も! 俺もサラと一緒に行くぜ!」
 そこに尚人も慌てたようにやってきて、シルフィードボードを見せて主張する。
 後ろでは、置いていかれたアイシャがまだふくれているようですが。
 ラウラは表情を変えずに淡々と頷いてから。
 こちらの様子を見ていた船長らしき白銀色の髪の青年に話しかけた。
「ラウレア号でコルディリネに……
 大天使エンケロニエルに近付いてもらうことはできるかな?」
 急に向けられた視線に、そして投げかけられた提案に、青年は少し驚いたように緑色の瞳を見開いて。じっとラウラの意図を伺うかのように見つめてくるから。
「長くて1~2分でいい。近辺に留まってもらえれば」
 50口径の対物ライフル『XM-109 “Gungnir”』と、リボルバー式グレネードランチャー『MGL』を手にして見せる。
 幼いころから紛争に巻き込まれ、父から射撃術を教わったラウラは、当然、銃を使用した戦闘を得意とする。だが、近接武器に比べて射程が広いとはいえ、今のこの位置からでは銃は役に立たない。
 そして、単独での飛翔能力を持たない、普通の人間のラウラには、目標まで近づいてくれる『狙撃場所』が必須だったから。
 それをラウラは、ラウレアに願った。
 グリモア猟兵が信頼して猟兵達を送り届けた、この大型飛空艇を、ラウラも信じて。
 真っ直ぐに向けられた紫色の眼差しを受け、青年の緑瞳に何故か逡巡の色が揺れる。
 けれども。
『行きましょう』
「ラウレア」
 青年より先に、飛空艇そのものから女性の声が響き、応え。
 青年が反射的に抗議のようにその名を呼ぶ。
 しかし青年は、ぐっと言葉を飲み込むようにしてから、襟足だけが尻尾のように長い白銀色の短髪をがしがしと乱暴に掻いて。
「……分かった。
 他の猟兵達にも伝えておいた方がいいな。戦わない者は、船室に入ってもらおう」
 次にラウラに向けた緑瞳に、迷いはなかった。
『すぐに伝え、準備します』
 そして、女性の静かな声が船内放送のように広く響いて。
 コルディリネへの接近に向けて、動いていく中で。
 ラウラはユーベルコードを発動させる。
「支援を要請する。さぁ、仕事の時間だ」
 発生するのは、大型AIドローン群による航空支援エリア。ラウラの周囲に、つまりラウレア号の周辺に展開したドローンは、『Air Support』という能力の名の通り、支援爆撃の準備を整える。
「あっ、ボクは小型飛空艇を借りていいかな。後方からみんなをサポートするよ」
 その様子を見たアイシャも、機嫌が直ったというよりも、怒っていたのを忘れたかのように笑顔で元気に、はいっと手を挙げて。
 青年の案内で、小型飛空艇へと向けて走り出した。
 緑色のリボンで1つに纏めた長い金髪が、尻尾のように揺れながら、やる気満々に遠ざかっていくのを眺めた尚人は。
「サポートかぁ……」
「ん? どうかしたのかナオト?」
 思わず零れた呟きに、首を傾げるカラー。
 でも、尚人は、感じた嫌な予感を打ち消すように首を振り。何でもないとカラーに笑いかけて。サーフィン組も準備を進めていく。
 そして。
『行きます』
 静かに響いた女性の声と共に、ラウレア号が巨体に似合わぬ加速を見せた。
 コルディリネへの急接近。
 それは、酸素毒と植物毒の中へ突っ込んでいくのと同義だから。
 小型飛空艇からアイシャは次々と魔法を放ち、陽動と牽制をしつつ。ラウレア号へは回復魔法を飛ばしていく。
 ラウラも、無いよりはマシだろうと、ドローンから回復ガスを振り撒いて。少しでも毒の影響が及ばないようにと手を尽くしていく。
 そして、射程まであと少し、というところで。
「行くぜ、ナオト!」
「おう!」
 2人のサーファーがラウレア号を飛び出した。
 波の代わりに風に乗る、空中サーフィン。
 その波は、荒れる上に、毒を纏っているけれど。
「いいぜいいぜ、キメてやるぜっ!」
 カラーはその荒波に嬉々として挑み、太陽光に水飛沫を煌めかせた。
 もちろん、風が水を含んでいたわけではない。
 サーフィンとしては当たり前だが、空中ではあり得ないその美しい煌めきは、無意識に発動したカラーのユーベルコード『Ocean Sprite』。
 テンション高く、そしてサーフィンを喜べば喜ぶ程に、カラーの戦闘力を上昇させ、飛翔能力を与える水飛沫だった。
 そして、尚人が扱うサーフボードは、風の妖精の加護が乗ったもの。
 ゆえに2人のサーファーは、空でも海と同じ機動力を見せて。
「俺も中々やるだろ、サラ♪」
「まだまだっ♪」
 植物怪獣軍団や天使核の攻撃を躱していく。
 そこに、ラウラの射撃も加わった。
 まずは大型の『MGL』で植物を爆破。植物怪獣と呼ばれるそれは、普通の植物より頑丈そうだったが、高威力ゆえに難なくなぎ倒していく。それで道を切り開き、ついでに辺りを漂う植物毒を減らせればと考え。ラウラは、華奢ではないが女性らしいしなやかな身体で、大型故に強い反動を上手く逃がしながら、弾を撃ち続ける。
 そして、本体――エンケロニエルへの道が視えたところで。
 ラウラは銃を“Gungnir”に持ち替えると、精密狙撃の連射を繰り出した。
 50口径の特殊弾が、大天使へと降り注ぐ。
 その間も、ドローン群からの絶え間ない爆撃と回復ガスが敵味方へと撃ち放たれ。
 アイシャの操る魔法も混じっていけば。
「あーちゃん、ラウラ。援護サンキュー♪」
 サーフボードが刻む2本の軌跡が、空を彩る。
 さすがに煩わしそうにこちらへ視線を向けたエンケロニエルは、その身にまとった天使核を巨大化させ。尚人に、カラーに、ラウレア号に向けてきた。
 ビックウェーブ到来かと、カラーが身構えたところで。
(「多分、そろそろ……」)
 尚人は慣れた予感ににっと笑みを浮かべ。
 そこに後ろから、荒れ狂う風がやってきた。
「オウッ!?」
 驚くカラーに届いたのは。
「2人とも、ごめぇん!」
 慌てたようなアイシャの声。
 それで何となくカラーは理解する。こちらを援護しようと風属性の魔法を、多分竜巻か暴風かを放とうとしたアイシャが、その制御に失敗して、毒や植物ではなく、カラーと尚人を吹っ飛ばしたのだと。
 不意打ちの、思わぬ方向からの風。
 けれどもそれは、アイシャとの付き合いの長い尚人には予想の範囲内だったから。
「来た!」
 むしろ待っていたとばかりに、風に乗る。
 いつもはとんでもない方向に飛ばされているけれども、今日は丁度いい追い風。小型飛空艇の位置からそれすらも見越していた尚人は、さらにそこに、自分でも嵐の魔法を巻き起こして。
「俺の『領域』で全部ぶっとばしてやるぜ!」
 自身とカラーとを巻き込み、加速する。
 そしてカラーは。状況への理解が追いつくよりも早く、身体が風を捉えていたから。
「結果オーライ♪」
 植物毒も酸素毒も吸う間もなく、エンケロニエルへダイブ!
 サーフボードと見せかけて、実は大型剣であった『セルリアン・スライダー』から、超科学機構『プリドヴェン・トルネード』のビーム刃を至近距離で撃ち込んだ。
 辺りに舞い散る、白い羽根。
 それを見ながら、だがカラーは追撃は狙わず、上昇気流に乗って急上昇。
 一撃離脱で離れながら、ちらりと後ろを見れば。
 続いて飛び込んだ尚人も、嵐での超加速に乗せて、エンケロニエルの傍をすり抜けながら、コンバットナイフの斬撃とハンドガンの銃撃を乱れ撃ったから。
「ヒュー、ナオトもやるじゃねえかっ♪」
「尚くんもサラちゃんもすごいっ!」
「へへ♪ どんなもんだよ、あーちゃん♪」
 賞賛の声を送り合いながら、3人はそれぞれに離脱していく。
 その動きを照準器越しに見ていたラウラは、だが構えていた銃を下ろし。
 遠ざかっていくエンケロニエルの姿を、何も通さず、直接紫瞳で見つめる。
 頼んだ時間はもう過ぎている。
 これ以上の滞在は危険と判断したのだろう、ラウレア号もコルディリネから離れるように、そして尚人とカラーを迎えに行くように、その進路を変えていたから。
 ――いくらかの手傷は与えられた。
 その手応えを感じながら、だがまだ立ち続ける大天使の姿をラウラは見据え。
「あとは任せるよ」
 肩までの銀髪を風に乱されながら、次へ続く者へと思いを送った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セシル・バーナード
さていよいよ『コルディリネ』の攻略戦だね。
カラーレス・エンジェルのお出迎えは無しかな?

それじゃあ、相手をしてもらおう、『大天使』!

速攻なら任せてもらおうか。隙のある場所を「見切り」、空間転移で敵の死角に飛んで、「貫通攻撃」の貫手を突き刺して「暗殺」狙い。
攻撃の成否にかかわらず、一撃仕掛けたらすぐに空間転移で離脱する。
これをひたすら繰り返す。
高濃度の酸素や植物毒なんかは、「激痛耐性」で耐え抜くよ。
撤退ラインは、毒素でまともに動けなくなってきた時。それまで付き合ってもらう。
リミットが近づくにつれて転移の速度を上げて、「ダンス」のように出現と離脱を繰り返そう。

『コルディリネ』も、もう一度雲海に沈め。



「さて、いよいよ『コルディリネ』の攻略戦だね」
 幾度も聞いた名の浮島に、ようやくその足を踏み入れて。セシル・バーナード(サイレーン・f01207)は感慨深い言葉を、特に思い入れもないようにさらりと呟いた。
 リモナイア島。オレンジ船。アリーズ島。そして、名すら失った無人の浮島。
 幾つもの場所で、幾つもの戦いで、聞いたその名を。
 実際に踏みしめて。
 セシルは変わらぬ妖艶な笑みを浮かべる。
「カラーレス・エンジェルのお出迎えは無しかな?」
 ふと思い出したのは、よく先兵として出て来ていたオブリビオン。壊れたような機械天使は、いつも子供をコルディリネに攫おうとしていたから。コルディリネでは逆に出てこないのかな、なんて気楽に考えて。
 それよりも、とセシルは目の前の天使に集中する。
 コルディリネの支配者『大天使エンケロニエル』。
 緑深き中に佇み、その周囲を猛毒で覆った殺戮女王。
 一糸纏わぬ姿を遠目に見たセシルは、艶やかな笑みを浮かべて。
「それじゃあ、相手をしてもらおう、『大天使』!」
 宣言したセシルの姿が、消えた。
 空間のひび割れを利用した、空間転移。それを用いて、瞬時にエンケロニエルの背後に現れたセシルは、振り向く間も与えずその貫手を突き出す。
 完全に死角を取った一撃は、エンケロニエルの身にまとわれた天使核の1つを破壊したけれど。その白い肌には触れられぬまま。
 天使核が身を挺して護ったかのような結果に、セシルは残念そうに肩を竦め。
 気付いたエンケロニエルが、長い金髪を翻し、振り向こうとしたところで。
 再び、姿を消す。
 手が届かないどころか、猛毒すらもない場所まで一気に退避すると。
 セシルはまた、エンケロニエルの様子を遠目に伺い、空間を飛ぶ。
 一撃だけ、一瞬だけの接敵。
 それをひたすら繰り返す
 隙を見ながら飛び込むけれど、さすがに2度目以降は警戒されたようで。空振りになる攻撃も多々あったし。一瞬とはいえ猛毒の中にいることを繰り返せば、じわじわとその影響が感じられてくる。
 それでもセシルは、動けなくなってくるまで、自身のリミットギリギリまで、エンケロニエルを狙い続けて。残り時間が少なくなってきたことを感じれば、攻撃の感覚を狭め、速度を上げて、まるでダンスを踊るかのようにステップを魅せる。
 次元断層をまとった手刀が、幾度か白い肌を赤く染め。
 舞い散る白い羽根も一緒に踊りながら。
 セシルは、毒の苦しさを見せない笑顔と共に、最後の貫手を放って。
「『コルディリネ』も、もう一度雲海に沈め」
 その結末を願うように、告げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクトル・サリヴァン
大天使…やっぱり厄介な能力持ちだね。
長期戦は明らかに不利だし、最速での一撃離脱でいくとしよう。

小型飛空艇借りて全速力でエンケロニエルへ突撃。
オーラ防御で飛空艇ごと包み込むバリアを形成。気休め程度かもしれないけど毒を防御。
植物毒の領域に入ったらUC起動、炎属性と竜巻合成で森を一気に燃やしつつ毒を熱で分解しつつ空へ吹き飛ばし希釈してしまおう。
触れた部分から浸透してくる可能性もあるし、吹き飛ばせなかった分はオーラのバリアでトラップ。
そのまま炎の竜巻をエンケロニエルへと向かわせ焼き尽くすと同時、炎属性のせた銛を全力で投擲し串刺しにしてしまおう。
攻撃後はそのまま飛空艇加速し即離脱。

※アドリブ絡み等お任せ



「大天使……やっぱり厄介な能力持ちだね」
 借り受けた小型飛空艇の上から『大天使エンケロニエル』の姿を遠目に見たヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)は、その周囲を覆う猛毒の領域も確認しながら辺りを少しうろうろして、動きを確認していく。
 縦にも横にも広いシャチな身体が、飛空艇からはみ出てる気がしますが、何とか重量オーバーにはならなかった模様。飛空艇の操作に慣れながら、その挙動に問題ないことを体感して。
「長期戦は明らかに不利だし、最速での一撃離脱でいくとしよう」
 ヴィクトルは、全速力でエンケロニエルへの突撃コースを取った。
 気休めかと思いながら、オーラ防御で飛空艇ごと包み込み。
 植物毒を噴出する植物が創り上げた、森のような緑の中へと突っ込んでいく。
 と同時にヴィクトルの傍に、炎の竜巻が現れる。
 ユーベルコード『エレメンタル・ファンタジア』。
 植物相手ならと選んだ炎属性と、毒を巻き込み吹き飛ばせる竜巻を合成し。森を一気に燃やしながら、生み出された毒を熱で分解、空へと吹き飛ばして希釈。
 オーラ防御とは比べ物にならない効果で、辺りの植物毒に対応するけれど。
 やはり、全ての毒を焼き消すことはできず。
 薄まったとはいえ、その影響はじわりとヴィクトルに浸透し、蝕もうとするから。
 ヴィクトルは当初の狙いを変えず。
 森を焼くのはそこそこに、急接近したエンケロニエルへ、炎の竜巻を向かわせた。
「ああ……私の楽園が……」
 炎の中から、消えていく森を嘆くような声が聞こえる。
 そこへ、ヴィクトルは全力で銛を投げ放った。
 炎属性を乗せた三又銛は、雑な扱いにも耐える頑丈さと、ヴィクトルに似合った巨大さゆえの重量とで、『勇魚狩り』の銘に相応しく、一直線に大天使へ向かい。
 竜巻ごと串刺しにする勢いで、炎に突き刺さったのを横目に見ながら。
 一撃離脱。短期決戦。
 最初に決めたその通りに、ヴィクトルは小型飛空艇の舵を切り、植物毒の領域を即座に離脱した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

乱獅子・梓
【不死蝶】
以前バレンシアがオブリビオンに狙われた際に
別の黒幕がいるんじゃないかと思ったわけだが…
いやぁ、想像以上にでっかい黒幕がいたな

アタッカーは綾に任せ、俺は綾を最大限サポート
俺は焔、綾は零の背に乗り移動開始
そしてUC発動、炎属性と風属性のドラゴンを最大数召喚
俺達の周囲を囲むように一緒に飛んでいく

炎のドラゴンは、周囲の植物をブレスで燃やし、少しでも毒の効果を抑える
風のドラゴンは、周囲の毒気を羽ばたきで外側へ飛ばす担当と
ダメージの無い風のブレスを俺達に浴びせる担当に分かれる
つまり換気の役割を果たしてもらう

敵に近付けたら
あとは全力で飛んで行け、零!
そしてその勢いで綾を敵のもとへと吹っ飛ばす!


灰神楽・綾
【不死蝶】
うんうん、流石にこれは予想出来なかったね
虫も殺せなさそうな慈悲深そうな顔しておいて殺戮の女王かぁ
なら遠慮なく殺り合えるね

梓の愛竜の零の背中に乗せてもらい、いざ出発
梓のドラゴンが毒を和らげてくれるけど
俺もクロークの黒揚羽を全身を覆うように身に纏い
少しでも毒をダイレクトに喰らわないようにしておこう
毒を吸わないように余計なことは喋らず
敵の方角をじっと見据え、精神を研ぎ澄ます
俺には大事なお仕事があるからね

よーし、零。遠慮なく俺を吹っ飛ばしちゃって
空中でUC発動し、Emperorを構え
飛ばされた勢いのままに敵へ突っ込んで強襲
超強化した渾身の一撃をお見舞い

あとは梓が俺を回収して撤収するはず



 コルディリネへと近づく手段は、飛空艇だけではない。空間転移やクロムキャバリアなど、自身の能力や装備で空を飛び、駆ける者達もいる。
 乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)もその1人。
 普段はその肩に乗せている相棒の仔ドラゴン、炎竜の焔を成竜の姿にして、いつもとは逆にその背に乗って、コルディリネを見下ろしていた。
「以前、バレンシアがオブリビオンに狙われた際に、別の黒幕がいるんじゃないかと思ったわけだが……いやぁ、想像以上にでっかい黒幕がいたな」
 サングラスの下で苦い笑みを見せる梓。
 その脳裏に浮かぶのは、オレンジ船での戦いのこと。1人の女性を狙ってきたオブリビオンは、誰かにそれを頼まれたような口ぶりだったから。
「うんうん。流石にこれは予想出来なかったね」
 黒幕がいたのは予想通り。でもその正体は予想以上と。こちらも成竜となった氷竜・零の背で、灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)はむしろにこやかに笑う。
 何しろ、コルディリネの支配者として現れたのは『大天使』エンケロニエル。
 デビルキングワールドの3rdKINGでもあった堕天使だという。
「虫も殺せなさそうな慈悲深そうな顔しておいて、殺戮の女王かぁ」
 情報として聞いた、相手の強大さと。そしてその周囲に広がる植物、生み出され続けている猛毒の領域を確認した綾は。
「なら遠慮なく殺り合えるね」
 嬉しそうに声を弾ませた。
 その様子に、梓は、綾の戦闘狂な一面を垣間見る。2人で行動するようになって、大分普通の人のようになってきた綾だけれども、その本質にはまだまだ血腥い姿が残っているから。
 呆れたようにため息をつきながら、しかし、そんな綾の姿に頼もしさも覚え。
 不安と期待がないまぜになった複雑な胸中を、梓は表に出さないまま。
「行くぞ、綾」
「おっけー、梓。いつでも」
 声をかければ陽気な頷きが返ってくる。
 そして、焔と零が羽ばたいた。
 コルディリネに――そこに立つエンケロニエルに向かって飛び行く2頭の成竜。
 その焔の背で、梓は、広がる植物毒の領域を、生存拒絶楽園を見据えると。
「数多無双なる竜よ、此処に集いてその威を成せ」
 自分達の周囲に、炎属性と風属性のドラゴンを多数召喚した。
 喚べるだけ喚んだその数は軽く百を超え。
 梓の意思を汲んですぐに動き出す。
 炎のドラゴンは、植物毒を噴出する植物へそのブレスを放ち、森を燃やすことで、毒が濃くなっていくのを防ぎ、その影響を抑えて。
 風のドラゴンは、周囲に漂う植物毒をその翼の羽ばたきで散らし飛ばす個体と、ダメージのない風のブレスを梓と綾に吹きつける個体とに別れ、それぞれの担当の働きで安全な空気への換気を行っていく。
 全ての植物は燃やせないし、全ての毒は吹き散らせないけれど。
 少しでも、と梓が対策を重ねる中で。
 綾はにこにこと零の背中に乗って、ただただ運んでもらう。
「俺には大事なお仕事があるからね」
 変わらぬ気楽な口調で、堂々とサボっているように見せながら。
 赤いサングラスの下の糸目は、静かにエンケロニエルの方向をじっと見据えていて。
 移動と毒への対策は任せて、精神を研ぎ澄ませていた。
 とはいえ、全てを預けっぱなしなのもと思い、エナジークロークである黒揚羽の群れを全身に纏うようにして、ダイレクトに毒を喰らわないようにする。
 しかし、その効果は綾だけに与えられ。
 梓のドラゴンも含め、全てが綾のために整えられていく。
 その理由は、ただ1つ。
「よーし、零。遠慮なく吹っ飛ばしちゃって」
「全力で飛んで行け、零!」
 ここと判断した地点で綾が氷竜に声をかけると同時、梓も相棒に命令を飛ばした。
 急加速した零は、その勢いで背中の綾を振り落とし。
 エンケロニエルに向けて吹っ飛ばす。
 空中に投げ出された綾は、だが変わらぬ笑みを浮かべたまま、己のヴァンパイアの血を一時的に増強して。
「楽しい殺し合いの時間だよ」
 ユーベルコード『エフェメラル・タイラント』で6倍となった能力で、愛用のハルバードを構えたまま、振り向きかけたエンケロニエルへと突っ込んだ。
 超強化された渾身の一撃が、身構える間もなく、エンケロニエルの白い肌を深く深く斬り裂いて。叩きつけるかのような勢いに圧され、よろめく。
 舞い散る赤に、綾はにやりとその口元を歪め。
 美しき大天使の表情が、険しいものに変わるのを確かめながら。
 着地と同時に地を蹴って、エンケロニエルに正対したまま後ろに飛び退く。
 すぐさまその足元から新たな植物が生え、その毒で綾を捉えようとするけれども。
 そこに、赤い影が、横切る。
 炎竜の焔を駆った梓が、かっさらうようにして綾を回収。そのまま後ろを振り向かずに猛毒の空域を離脱した。
 零も、そして召喚したドラゴン達も、安全な空まで逃れたのを確認して。
 梓は大きく息を吐き。
 ユーベルコードの代償で昏睡状態に陥った綾を、複雑な表情で見下ろした。
(「……よくやった、なんて言ってやらないからな」)

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユディト・イェシュア
いよいよコルディリネとの決着の時ですね
まさかエンケロニエルが元3rdKINGだったとは驚きですが
彼女の願いを叶えるわけにはいきません
アルカディア…また謎は増えましたが
きっとこの先に答があるはずです
イオさん、ラウレアさん、心してかかりましょう

一撃離脱の速攻を仕掛けるには小型飛空艇が良さそうですね
どなたかに運転してもらえると助かりますが
無理そうなら自分で

植物毒の影響を受ける前に飛空艇で近づき
UCでダメージとイオさんや仲間たちへ援護を

イオさん
そのペンダントには願いと希望が込められているはず
コルディリネに関わった人たちの想いを
ぶつけてやってください
これからを生きる人たちのために
これで終わりにしましょう



「いよいよコルディリネとの決着の時ですね」
 馴染みとなった『ラウレア号』の甲板上からコルディリネを遠目に眺めて、ユディト・イェシュア(暁天の月・f05453)は少し緊張した声色で呟いた。
 ずっと気になって追いかけてきた屍人帝国。
 このアルカディア争奪戦でようやくその存在が見えて。エンジェルを捉えていたエンケロニ帝国での戦いを経て、ついに辿り着いた緑深き浮島。
 その支配者であるオブリビオンが、まさかデビルキングワールドの元3rdKING『大天使エンケロニエル』だったというのは、ユディトにとっても驚きだったが。
「エンケロニエルの願いを叶えるわけにはいきません」
 かつて雲海に沈んだコルディリネのために。
 そして、このブルーアルカディアのカタストロフを防ぐために。
 戦いは避けられないもので。
 コルディリネの現状という謎が解けても。エンケロニエルが『わが主』と仰ぎ、強大な屍人帝国がその王座を目指す、『アルカディア』という存在が出てくるなど、謎がまた増えているけれども。
 その答えも、きっとこの先にあるはずだから。
 ユディトは真っ直ぐに、コルディリネに立つ大天使の白い姿を見つめて。
 風を受け揺れる柔らかな茶髪の下で、茶色の瞳に決意を込めた。
「ラウレア号でコルディリネに……
 大天使エンケロニエルに近付いてもらうことはできるかな?」
 そこに聞こえてきたのは、凛とした女性の猟兵の声。銃を手にした彼女は、ラウレア号の船長である翔剣士のイオへ、支援の依頼をしているようで。
 提案を受けたイオが迷っているのがユディトにも分かった。
 エンケロニエルの周囲には、猛毒の領域が広がっている。
 例え飛空艇形態でも、ガレオノイドである以上、ラウレアにとっても危険な場所。
 そこへ向かうことに、躊躇いがあったのだろう。
 けれども。
『行きましょう』
「ラウレア」
 快諾したのはラウレア自身。すぐにイオが、抗議するようにその名を呼ぶ。
 でもイオは、続く言葉を口にできない。
 大切な人を危険に晒したくないから、止めたいと思う気持ちと。
 コルディリネの生き残りとしてその行く末を見届けたいと願っているのを知っているから、行かせてやりたい気持ち。
 その葛藤が、しばし、イオの中でせめぎ合って。
 でも、心配したユディトが声をかけるより早く。
「……分かった」
 イオは、答えを出した。
 全てを納得したわけではないだろう。イオにとってラウレアの存在がどれほど大切か、幾度か行動を共にしただけのユディトにも分かるほどだったから。
 それでも。いやだからこそ。ラウレアの思いを優先した決断。
 そして、決めたからにはと迷いを見せず、コルディリネへの突入準備を進めるイオに、ユディトはふわりと微笑んで。
(「小型飛空艇をお借りしようと思っていましたが……」)
 共に行こうと、考えを改めると。
「イオさん」
 船室に犬を誘導し、避難させていたイオへと、穏やかに声をかけた。
 見知った仲であるユディトに、先ほどまでの逡巡は一切見せず、いつもの笑みを浮かべて応えてくれるイオだから。
 ユディトも、柔らかないつもの微笑を向けて。
 服の下に隠されていると知っている、鷹の絵が刻まれた古い金のコインのペンダントがある位置へ、そっと手を伸ばす。
「そのペンダントには願いと希望が込められているはず」
 かつてコルディリネのエンジェルに与えられていたというそれは。
 イオが祖父から譲り受けた、ただの骨董品だけれども。
 数多の思いの象徴でもあると、ユディトは知っているから。
「コルディリネに関わった人たちの想いを、ぶつけてやってください。
 これからを生きる人たちのために……」
 イオ自身もコルディリネに行きたいと思っているのだと分かっているから。
 その背を押すように。不安な心を支えるように。
 ユディトは微笑み、頷いて見せる。
「これで終わりにしましょう」
 イオは、緑瞳を少しだけ見開いて。微かな驚きと共にユディトを見返すと。
 ふっと一瞬、苦笑を零してから。
「そうだな」
 陽気な笑みを取り戻して、力強く頷き返した。
『行きます』
 そして、ラウレアの静かに決意の込められた声が響くと共に。
 大型飛空艇はコルディリネへと突撃する。
 長年の思いを遂げるための刹那の戦い。
 でもそれが危険なものであることは確かなので。
「この光は悪しきものを滅し、善なるものを救う光明……」
 その助けとなるべく、ユディトは破魔と浄化の効果を宿した光の奔流を、戦場全体に広げていく。
 ユーベルコード『神々の恩寵』。
 エンケロニエルへダメージを与えると共に。
 味方に神の加護を与え、攻撃力と防御力の強化を図る。
 植物毒の影響が、少しでも和らぐようにと。
 イオが大事に思っているラウレアが。
 そして、ラウレアが大切にしているイオが。
 無事に、抱えた想いを遂げられるように、と。
 ユディトはただひたすらに祈り。
 ラウレア号から翼を広げて飛び立ったイオの背中も見ながら。
 仲間へ援護の光を届け続けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​


 不自然な程の緑に囲まれた『大天使エンケロニエル』の姿が近づいてくる。
 飛空艇『ラウレア号』の甲板からそれを見据え。
 猟兵達の攻撃が続くのを感じながら。
 イオは、その手にスカイソードを握りしめた。
 探し続けていた『コルディリネ』。
 かつて雲海に沈み、しかし今、屍人帝国として蘇ってしまった、失われし国。
 エンジェルを攫い、天使核に改造しているという噂も耳にして。
 その行く末を見届けたいと思っていた、見知らぬ故郷。
 でも、イオには迷いもあった。
 ラウレアは、沈みゆくコルディリネから逃げる事ができたガレオノイド。
 でも、ラウレアが助けられたのは祖父だけで。コルディリネは、他にも沢山いたであろうラウレアの大切な人達を、ラウレアが助けられなかった地でもあるから。
(「ラウレアは本当はコルディリネに来たくなかったんじゃないのか?」)
 祖父の元を飛び出した時、ラウレアは自分についてきてくれたけれど。
 それを後悔しているのではないかと思うことがあった。
 自分の身勝手な思いに、無理矢理巻き込んでしまっているのではないかと。
 例えば、祖父が亡くなった時に。
 獅子の刻印を持つ若き金髪の騎士を見送った時に。
 そして、コルディリネを見つけた時に。
 イオは考えて。不安になって。
 でも、ラウレアに聞くことはできなかった。
 そのままここまで来てしまったと、思っていたけれども。
『行きましょう』
 迷いのない、ラウレアの凛とした声に。
「これで終わりにしましょう」
 幾度も助けてくれた、柔らかな茶髪の青年の声に。
 優しく、背中を押されて。
 イオは迷いなく、甲板を蹴り、空へ飛び出した。
(「俺はコルディリネのイオ」)
 祖父から譲り受けた名を強く胸に抱いて。
 エンジェルの証のように、その背に大きく白い翼を広げて。
 空中でステップを刻み、エンケロニエルへと斬りかかる。
 漂う植物毒に顔を顰めるけれども、思っていたほどの濃度がないのは、猟兵達のおかげだろう。今も、植物の増殖に勝る勢いで、それを燃やす炎が増え続けているのを頼もしく感じながら。イオは真っ直ぐにエンケロニエルに向かい。
 脳裏に、幾つもの顔が思い浮かぶ。
 片方だけになった緑瞳で、空の向こうを遠く遠く眺めていた祖父。
 母親の傍で屈託なく笑う、焦げ茶色の髪の女の子と。
 商船の料理番として腕を振るう、オレンジ色にも見える明るい茶髪の女性。
 島の皆に見守られながら巻雲羊を追う、ふわふわくるくる髪の男の子。
 ありがとうと笑って逝った、金髪の若き騎士。
 そして……ラウレアが時折見せる、憂いの表情も、過って……
「終わりにしよう」
 炎に囲まれ、猟兵達に傷を負わされ、白い肌を赤く染め上げた大天使へ。
 在りし日のコルディリネを墜としたその元凶へ。
 自身に、祖父達に、そしてラウレアに、纏わりつく過去を切り裂いて。
 これからもラウレアと共に空を翔けるために。
 イオは、数多の思いを乗せた刃を、振り抜いた。
 
青和・イチ
コルディリネ…ずっと気になってたけど
随分大ごとだった
裏に、こんなやつがいたとは…ね

ていうか…何で天使って服着ないんだよ…(溜息つきつつ目逸らし
…見ない訳にも、いかないし…心の中で服着せよう…
やっぱり、天使を名乗る奴って…(再び溜息

今回、くろ丸は留守番ね
ラウレア号さんに載せて貰って、安全な所に居て

高濃度酸素と、植物毒か…確かに、長居はできないね
『オーラ防御』と共に『毒耐性』を纏って緩和しよう
『空中浮遊』で小回りきかせて、植物を避けつつ…
一撃離脱しようかな

【迷星】を『範囲攻撃』で広範囲に放ち、大天使と植物を焼き払う
火を放ったら離脱

…一撃、と言っても、一瞬ではないよ
濃い酸素は、燃え易く、拡がり易く…爆発しやすい
周囲が酸素と植物、なんて…ちょっと迂闊なんじゃない?

変な植物が無限に増えるなら、こっちも火は絶やさない
ずっと燃えてるといい

アンタの目的が何でも…どんなに崇高でも……関係ない
その為に、コルディリネの人達を踏み躙り…歪ませて…
その末裔たちまで苦しめたのが、アンタなら…
僕は許さない



「コルディリネ」
 見下ろした浮遊大陸の名を、ぽつりと青和・イチ(藍色夜灯・f05526)は呟く。
 アルカディア争奪戦を起こした六大屍人帝国の1つとして、幾度も聞いた名だけれど。イチがその名を初めて聞いたのは、もう少し前。
 温泉に惹かれて受けた依頼。訪れたレモンの浮島で、子供を攫おうと襲ってきたオブリビオンが口にしていたのが、この名前だった。
「ずっと気になってたけど……」
 ただの襲撃じゃない。事件の背後に何らかの物語がありそうだと。
 レモネードと温泉を楽しみながらも思ったことを思い出したのだけれども。
 突如としてブルーアルカディアに溢れ出した『拒絶の雲海』。
 そこに眠るとされる『アルカディアの玉座』。
 そして、アルカディアを『わが主』と仰ぎ、玉座へ向かおうとする『大天使エンケロニエル』こそが屍人帝国『コルディリネ』の支配者で。デビルキングワールドの3rdKINGでもあったというのだから。
「裏に、こんなやつがいたとは……ね」
 想像以上な大ごとに、半ばびっくりしながらも。
 元々変化に乏しい表情は、いつもの物静かな無表情のままで。
 緑深き浮島を、眼鏡越しに見下ろし続けた。
 そこに佇む白い姿こそが、大天使エンケロニエル。
 長い金髪を緩く揺らめかせ。白い翼を大きく広げ。堂々と立つその姿は。
「ていうか……何で天使って服着ないんだよ……」
 見事なまでの曲線美と、艶やかな白い肌を見せつける大天使に。
 イチは溜息をつきつつ、目を逸らした。
 無表情はそのままですが、心なしか、困っているようにも見えます。
(「……見ない訳にも、いかないし……」)
 とはいえ、このまま目を逸らしては戦えないから。
 どうしたものかとイチは考えて。
(「心の中で服着せよう……」)
 思いついて、想像の翼を広げていく。
 天使というとやっぱり白い服だろうか。シンプルなワンピースとか、ロングドレス。彫像なんかを思い浮かべると、ゆったりと布を巻き付けたような格好も、天使っぽいかもしれない。どちらにしろ布はたっぷり、多めに多めに。
 浴衣コンテストもあったから、浴衣姿なんてのもありだろうか。でも、和装はスタイルのいい西洋人には合いにくいと聞いた気がする。胸元とか苦しそうだし、動きに慣れないからすぐに足元がはだけそう。ってそう考えるのはいけないいけない。
 大分早いけど、ハロウィンなんて行事も聞こえてきてる。もこもこの着ぐるみなんかだったら全身覆えていいのではないだろうか。下手な仮装を選ぶと露出が高くなったり危ないかもだけど。
 そういえば、今年の水着コンテストはこのブルーアルカディアで行われていた。これ泳げないんじゃないだろうかと思うくらいに装飾が盛られたドレスのような水着とか、それぞれの個性を反映させた特徴的な水着などが集まって、今年も盛り上がったお祭り。でもやっぱり水着だから、脚とか胸元とかが開いてるのが多くて……ああ、これも着せる服としてはよくないか。
 ぐるぐる考えてから、イチは再び溜息を、さっきよりも深く、ついた。
「やっぱり、天使を名乗る奴って……」
 その様子を、相棒犬の『くろ丸』が、般若顔をさらに険しくして見上げている。怒っている様な厳つい顔だけれど、どちらかというと、主人の様子に困惑している様子。
 だからイチは、ふっと小さく微笑を零して。
 くろ丸の頭をそっと撫でて、大丈夫、と伝えると。
『本船はこれよりコルディリネへと進路をとります。非戦闘員は船内へ退避を』
 飛空艇『ラウレア号』全体に響いた女性の声に、イチは顔を上げた。
 続く案内に耳を傾けると、どうやらラウレア号でエンケロニエルへの一撃離脱の攻撃チャンスを作ってくれるらしい。
 空中浮遊で何とかなるかな、と思っていたイチだけれど、それならと相乗りさせてもらうことにして。
 ふと、足元でこちらを見上げ、尻尾を振る般若顔を見下ろす。
「くろ丸は安全な所に居て」
 さすがのくろ丸でも空中戦はできないし。遠距離攻撃の手段もないから。
 留守番ね、と告げると。くろ丸は大人しく踵を返して。
 船室の入り口へと近づけば、船長だっただろうか、白銀色の髪の青年が、くろ丸を案内するように扉を開けてくれていた。
 これで大丈夫、と安堵すると。
『行きます』
 また女性の声が響いて、ラウレア号が加速した。
 イチの視界にコルディリネの緑が一気に広がり。
 そして、エンケロニエルの白い姿がぐんぐんと大きくなっていく。
 そこへ猟兵達の攻撃が向かって行くのを見ながら。
「アンタの目的が何でも……どんなに崇高でも……関係ない」
 イチは静かに、エンケロニエルへと語りかけていた。
 緑の中の裸身から目を逸らすことももうない。
 ただ真っ直ぐに。
 敵としてだけ認識して。
 眼鏡の下の藍色の瞳を、じっと向ける。
「その為に、コルディリネの人達を踏み躙り……歪ませて……
 その末裔たちまで苦しめたのが、アンタなら……」
 藍瞳に浮かぶ顔がある。
 リモナイア島の襲撃に怯えた顔をしていた女の子。
 雲海に沈みゆくコルディリネから逃れた子供の子孫というだけで狙われて。
 イチ達がいなければ、平凡で幸せな日常を奪われてしまっていた子供。
 最後はイチに笑顔を見せてくれたけれども。
 あの恐怖の顔は忘れられないし。
 その子を本当は助けようとしていたけれど、オブリビオンとなってしまったせいで想いを歪められ、悲劇を引き起こそうとしてしまっていた、過去の箱舟も。
 そして、コルディリネと縁があると聞いたこのラウレア号と船長も。
 思い起こして。
「僕は許さない」
 イチは静かに、青色の炎を放った。
 百を超える数の『迷星』は、その名の通り迷うようにイチの周囲を飛び立つと。
「……迷子の光。行き先は、あっち」
 イチが指し示した先へとそれぞれに飛んで行く。
 狙うはエンケロニエル。そして、その周囲の植物怪獣軍団。
 広範囲に広がった青い炎は、植物を焼き払い、エンケロニエルを包み囲んだ。
 放ったのはその一撃で。
 ラウレア号はもう離脱の動きを取っている。
 続けての攻撃はもう届かない。
 だけれども。
 一撃は、一瞬ではない。
 青い炎はその高熱をどんどんと広げ、燃え上がっていく。
 何しろ、エンケロニエルが生み出す毒は、酸素毒と植物毒。
「周囲が酸素と植物、なんて……ちょっと迂闊なんじゃない?」
 濃い酸素は、燃え易く、拡がり易く、そして。
 爆発しやすいから。
 追撃のように爆発を起こした炎は、尚も青く、青く。
「ずっと燃えてるといい」
 イチの意思に応えるように、燃え続けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふええ、何で大天使さんはみんな服を着てないんですか!
しかも、それが当たり前のように、
って、あれ?私なんでこんなボールの中に閉じ込められているのですか?
ふえ?あれだけ大声で叫んでいれば呼吸をして当たり前って、アヒルさんは何で外なんですか?
ふえ、アヒルさんが呼吸している訳ないって、そういえばそうでしたね。
ふえ?それと早く無酸素詠唱にしないと死ぬって、
ふええ、そうでした。
それにしても、進化を拒むものを皆殺しにする酸素毒って服を着るという進化を拒んでいるのは何処の何方たちなんでしょうね。
ふわ、そういう事だったんですね。
ルールが平等なら、アヒルさんエンケロニエルさんをくすぐって呼吸をさせてください。
私もサイコキネシスで手伝います。
素肌を直接くすぐられるのは流石にキツイですよね?
確かに進化を拒むものを『皆』殺しにしてしまいましたね。



「ふええ、何で大天使さんはみんな服を着てないんですか!
 しかも、それが当たり前のように、恥ずかしがったりもしないのは何でですか!」
 コルディリネで『大天使エンケロニエル』の姿を目の当たりにしたフリル・インレアン(大きな|帽子の物語《👒 🦆 》はまだ終わらない・f19557)は、大きな帽子のつばをいつも以上に強く引き寄せて、顔を隠すというよりも視界を塞ぐようにして俯く。
 でも今回は、つばの陰から少しだけとはいえエンケロニエルの姿をチラ見できるのは、この大天使がフリルと同性だったからだろうか。
 アックス&ウィザーズで対峙した『大天使ブラキエル』の時は、『ブラキオンの鎧』を纏うまで、真っ赤な顔を反らしたまま全然相手を見れませんでしたから。ものすごい先制攻撃でしたと困り果てる、純情で気弱でお年頃な乙女です。
「とりあえず、何か着てください。
 天使核は着ているうちに入りません」
 今回も、多少の余裕はありつつも、やっぱりあわあわしながら必死に訴えるフリルだけれども。エンケロニエルの裸身はそのまま変わらず。
 騒がしさに少し煩わしそうな視線をちらりと向けると、それを黙らせるかのように、戦場内にルールを宣言した。
 呼吸するなかれ、と。
「……って、あれ? 私なんでこんなボールの中に閉じ込められているのですか?」
 途端に、フリルの周囲を超高濃度酸素ボールが覆う。
 ルールに違反した者を閉じ込めるユーベルコード『進化を拒むものを皆殺しにする酸素毒』の効果を全然理解していない様子のフリルに、アヒルちゃん型のガジェットが、冷静に今の状況を、があ、と伝えた。
「ふえ? あれだけ大声で叫んでいれば呼吸をして当たり前、って……
 それじゃ、アヒルさんは何で外なんですか?」
 ちゃっかりボールの外にいるガジェットに、フリルは首を傾げるけれど。
 ガジェットはまた、フリルにしか理解できない鳴き声を、淡々と響かせる。
「ふえ、アヒルさんが呼吸している訳ない、ってそういえばそうでしたね」
 まあ、アヒルの形をしているとはいえ、ガジェットですから。空気を取り込んでいたとしても、排熱とか推進力とかで、呼吸ではありませんよね。
 ようやく納得して、落ち着いたフリルだけれども。
 ガジェットは、呆れたような視線を向けて、また一声。
「ふえ? それと早く酸素毒に対応しないと死ぬ?
 ふええ、そうでし……た……」
 指摘されて思い出す。
 フリルの周囲を囲むのは、超高濃度の酸素。普段呼吸している酸素と同じとは思えないほどの、毒の域にまで達する濃さだったから。
 ようやく息を止めるフリルだけれども。
 じわりと酸素毒に蝕まれ、フリルはボールの中でへたり込んだ。
(「ふええ。酸素があるのに酸素を吸えないって、どうしたらいいんですか」)
 声を出すこともできず、技能で何とか対抗したいと思うけれども、ユーベルコードというより大きな力の前では抗いきることはできず。他の手段も思いつかず、フリルはぐるぐると思考だけを巡らせる。
(「それにしても、『進化を拒むものを皆殺しにする酸素毒』って……
 服を着るという進化を拒んでいるのは何処の何方たちなんでしょうね」)
 追い詰められて、妙な方向に考えが反れている気もしますが。
 エンケロニエルもブラキエルもお願いだから進化して服を着てくださいと、自身の窮状から目を逸らすように、願ってしまったりなんかしているうちに。
 ふと顔を上げると、エンケロニエルに突撃していくガジェットの姿が見えた。
(「アヒルさん……」)
 フリルの両手に乗る程の大きさのガジェットである。エンケロニエルに向かって行ってもそれは豆鉄砲程度のようで。相手もさほど注意を払っていない様子。
 フリルを助けるために動いてくれているのだろうと、嬉しくはなるけれども、全く以ってダメージを与えられていないから、何の役にも……
(「……ふええ?」)
 と、見ていたフリルは気付く。ガジェットが狙っているのは攻撃ではなく。
(「エンケロニエルさんをくすぐって、ます?」)
 察した瞬間、フリルもサイコキネシスを飛ばし、ガジェットと動きを合わせる。
 強い攻撃ではない。逆に弱い力で、こしょこしょと狙うのは。
(「素肌を直接くすぐられるのは流石にキツイですよね?」)
「ふふ……っ!?」
 エンケロニエルを笑わせることで、呼吸をさせること。
 周囲に敷かれたルール『呼吸するなかれ』が、その威力を上げるために、エンケロニエル自身にも適用されるようになっていることを利用しての『進化を拒むものを皆殺しにする酸素毒』対策。
 服を着る進化を拒むエンケロニエルも殺そうと、超高濃度酸素ボールがその裸身を包み込んだが。
 その酸素毒の影響を振り切るために、エンケロニエルはユーベルコードを解除する。
 途端、フリルを閉じ込めていたボールも消えて。
 何とか猛毒から解放されたけれども。
 それまでのダメージで、その場に倒れてしまうフリル。
 何とか顔を上げて視線を向けた先で、ボールの形状を解いた超高濃度酸素を逆に利用した数多の炎が燃え上がり、エンケロニエルが包み込まれていくのを見ながら。
(「お役に立てたのでしょうか……」)
 フリルの意識は遠のいて。
(「アヒル、さん……」)
 戻ってきたガジェットがフリルの上にちょこんと乗ったところで。
 作戦行動を終え、偶然そこを通りがかった青い氷竜が、足でがっしりフリルを掴み、戦場から離脱してくれた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木霊・ウタ
心情
コルディリネの支配者が
3rdKINGだったとは驚きだぜ
何にせよ支配者との決着の時だ
骸の海へ還してやろうぜ

戦闘
濃厚すぎる酸素か
おあつらえ向きってヤツだ
良く燃えそうだもんな(にっ

ラウレアの力を貸してもらう
ラウレアに搭乗

一旦後退してもらったら
最大船速で全力前進
頼んだぜ、イオ

猛毒の領域のギリギリの所
(ちゃんと停止できるくらいの距離
で急停止してもらう

俺はその勢いを借りて宙へ飛び出し
迦楼羅の炎翼をはためかせ
ラウレアの加速を上乗せした速さで領域へ突入

一撃離脱の僅かな間なら
息を止めるくらい何ともないぜ

突入しざま
翼や身から放たれる炎で
酸素ボールや猛毒領域へ地獄の炎を延焼させていく

これだけの酸素濃度だ
いい具合に広がって
あっという間に領域全体が火の海だ
猛毒も植物もいいカンジで焼却浄化だ

そして火達磨の大天使さまへ
すれ違いざま大焔摩天の光刃で一閃

植物怪獣軍団なんてお呼びじゃないぜ
命を弄ぶものにこの世界に居場所はない
紅蓮に抱かれて海へ還れ

終幕
此れまでの犠牲者と大天使へ
鎮魂の調べを奏でる
安らかに



『行きます』
 覚悟を決めたような女性の声が響くと同時に、飛空艇『ラウレア号』がその進路を変えてスピードを増す。
 向かう先は、屍人帝国『コルディリネ』。
 そして、その支配者である『大天使エンケロニエル』の佇む緑に覆われた地。
 近づいてくる光景を、木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は、飛空艇の甲板で巨大剣『焔摩天』を手に見据えた。
「コルディリネの支配者が3rdKINGだったとは驚きだぜ」
 明かされたその正体に、だがウタは不敵な笑みを深くして。
 相手がどんなに強大であれ、ずっと関わってきた様々な事件の黒幕とやっと相対することができた、その事実にぐっと愛剣を握りしめて。
「決着の時だ。骸の海へ還してやろうぜ」
 宣言するように告げ、真っ直ぐにコルディリネに……そこに立つエンケロニエルの白い姿に、向かい合った。
 長い金の髪を揺らめかせ、白い翼を背に広げ、天使核を纏った裸身の大天使。
 慈悲深い笑みを浮かべながらも、その慈愛が向けられるのは『わが主』と仰ぐ『アルカディア』にのみであり。その玉座へ至るために、コルディリネを雲海に沈め、数多のエンジェルを攫ってきた、無慈悲な女王。
 キャバリアから、小型飛空艇から、ドラゴンから。猟兵達の攻撃が飛び交い。
 そして接近するラウレア号からも攻撃が届き始めるのを見て。
 ウタも、ブレイズキャリバーたる『地獄の炎』を生み出した。
「濃厚すぎる酸素、か」
 エンケロニエルの周囲を囲む植物怪獣軍団。その生長を促すためでもあるのかもしれないが、毒と言える程の濃度の酸素が辺りに広がり。ゆえに、猟兵といえども長く留まることはできない、と言われていたのだが。
「おあつらえ向きってヤツだ」
 ウタが操る力は、炎。
 酸素が多ければより良く燃えそうだと、にっと笑みを浮かべて。
 猟兵達を援護するように炎を飛ばした。
 同じことを考えている者が他にもいたのだろう。エンケロニエルの周囲の緑が次々と焼き払われていき、炎の勢いは弱まるどころかどんどん強くなって。
 延焼により猛毒が幾分薄まっていく中へ。
 白銀色の髪を靡かせた白い翼が飛び出した。
(「イオ」)
 雲海に堕ちるコルディリネから逃れたエンジェル。その名を継いだ血縁者。
 屍人帝国となってしまったコルディリネを見届けたいと言っていた翔剣士の青年が、過去を清算するかのように、エンケロニエルへ向かって行く。
 覚悟の背中が、ウタの視界でどんどん小さくなる。
 それはイオがラウレア号を離れたから、だけでなく。
 ラウレア号が猛毒の広がる領域から離れ始めたから。
 辺りに満ちた植物毒や酸素毒は、多少薄まってはいるけれども、まだまだ危険な濃度であり。ガレオノイドであるラウレアにとっても、長く留まれない場所である。ゆえに、ラウレア号は最初から、一撃離脱の動きを取っていた。
 それを理解した上で、イオは離れたはずで。
 飛空艇に乗っているのはイオだけではないから。
 動きを変えることは、乗員全ての安全を脅かすことになるから。
 イオを戦場に置き去りにする形であっても、ラウレア号の進路は変えられない。
(「心配だろうな」)
 迷いなく見える飛空艇の動きだが、その胸中は違うだろうと、ウタは察し。
 それでも予定通りの動きを取るラウレアの苦しい覚悟を思い。
 猛毒の領域を抜けたところで。
 ウタは、声をかけた。
「頼むぜ、ラウレア」
『はい』
 それは、突撃前にラウレアに頼んでいたこと。
 一撃離脱で離れた後、再突入するようにまたコルディリネへ向かってもらって。猛毒が届くギリギリのところでウタを放り出して欲しい、と。
 安全と判断した領域でもう1つの動きを、とお願いしていたもの。
 ウタの指示通り、ラウレア号はコルディリネへとまた進路を取り。
 最大船速でまたエンケロニエルへ迫るような動きを見せて。
 エンケロニエルの注意を引き付けると共に。
『今です』
「おう!」
 ウタが意図した通りの位置で、ウタだけを放り出すように急旋回。
 飛空艇の勢いも借りて飛び出したウタは、その背から炎を噴出させるようにして迦楼羅の炎翼をはためかせ、炎とラウレア号の加速、双方を生かした速さで翔んだ。
 火矢を思わせる勢いで真っ直ぐにエンケロニエルへと向かい行くウタ。
 その途中で、離脱するイオとすれ違う。
(「ちゃんとラウレアのところに帰るんだぜ」)
 きっとラウレアは、自分を放り出した動きを生かしてイオを迎えに来ているだろうと、後ろの動きも見ずに確信して。にっと笑顔を送ってから。
 すぐにまた前へと視線を戻し。
 急接近するエンケロニエルを見据える。
 そして、翼やその身に纏う炎を、撃ち出すように先に放てば。
 エンケロニエルの姿が燃え上がる炎に包まれた。
 元々、周囲に様々な炎が延焼し、火の海の中にいたエンケロニエルだが。度重なる様々な炎の攻撃と、何よりエンケロニエル自身が広げた酸素毒の影響で、植物怪獣軍団だけでなくエンケロニエルの裸身も火達磨になっていく。
「いいカンジで焼却浄化だ」
 だが、相手はデビルキングワールドの3rdKINGでもあった大天使。
 炎に顔を顰めながらも、ただ受け身でいるわけもなく。
 その身に纏った天使核を巨大化して周囲を攻撃してきた。
 天使が膝を抱えてその身を丸めたような形をしていた小さな天使核は、人間サイズに巨大化すると共に身体を広げ、両手を差し出すようにしてウタへ向かってくる。
 一糸纏わぬ姿で、背に翼を広げ、虚ろな笑みを浮かべた天使に、生命は感じられず。
 どうやってその天使核が創られたのかを考えると、ウタの表情が微かに歪む。
 けれども。過去はどうあれ、今は行く手を遮る敵の攻撃。
「お前達も海へ還れ」
 炎を纏った焔摩天を振り抜いて、胸元に薔薇の花を刻んだ天使核を斬り伏せると。
 ウタは、エンケロニエルに迫り。
「命を弄ぶものに、この世界に居場所はない」
 その怒りを炎として燃やし、焔摩天を大焔摩天に強化して。
 巨大な光刃で、エンケロニエルをすれ違いざまに一閃した。
「紅蓮に抱かれて海へ還れ」
 炎の中で、驚愕に見開かれる瞳。
 他の猟兵達が1撃ずつ刻み続けた傷に、ウタの刃も深く深く加わって。
 周囲を守っていた植物も燃やし尽くされたエンケロニエルは。
「ああ……わが主、アルカディアよ……私は……」
 未だ見ぬその姿を幻視してか、虚ろな瞳を空へ向けて。
 遠く響いた銃撃音に、最後を刻むと。
 頽れ、その姿を消していく。
 傍を通り抜けたそのままに離れていたウタは、エンケロニエルの最期を見て。
 辺りに漂っていた毒も消えていくのを確認しながら、舞い戻ると。
 一際炎が燃え盛った辺りを見下ろし。
 黒く焼け焦げた大地に、そっと降りた。
「終わった、な」
 失われし国、コルディリネ。
 そこに想いを寄せていた生き残りや末裔の者たちを思い。
 国と共に失われた平穏な日々と、犠牲となった者たちを。
 そして、屍人帝国となってから狙われ、襲われた者たちを、思い。
 ウタは、巨大剣を愛用のギターに持ち替える。
 奏でるは鎮魂の調べ。
 コルディリネに関わる全ての思いが昇華するようにと願いを込めて。
「安らかに」
 ウタの紡ぐ音色は、ブルーアルカディアへ静かに響いていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​


 蘇った浮遊大陸コルディリネを目前にして。
 望郷の念が薄いことに、誰よりもラウレア自身が驚いていた。
 探し求めていた祖国。その変貌を確かめたいと思っていた地。
 けれどもそこに、戻りたい、と思う気持ちが欠片もなかったことに、コルディリネのガレオノイドであるラウレアはようやく気付いて。
(「そう、ですか……」)
 コルディリネの行く末を見届けたいと思ったその理由を。自身の本当の気持ちを。
 ようやく、理解した。
(「私が望んでいたのは……」)
 後悔があったのは本当。雲海に沈み行くコルディリネから助けられなかったエンジェルの子供達。仕えていた国も、親しかった仲間も、襲撃によって全て失って。あの時、もっと何かできたのではないかと、今でも思うことがある。
 けれども。
 リオナに託されたイオを助けることができて。新たな家族との幸せな時間を見守り、そしてその穏やかな最期を知ることができた。
 ヒパの子供から、ヒパが幸せに暮らしたことを聞くことができて。元気に巻雲羊を追いかけるメリノに会えた。
 ベルナが。バレンシアが。リコが。コルディリネのことは知らないけれど、家族に囲まれて幸せに過ごしているのを知った。
 そして……
(「イオ……」)
 亡きイオの名と覚悟を継いだ愛し子が。
 傍にいてくれて。笑ってくれて。慈しんでくれる。
 本当に大切なものは。
 コルディリネを失った後に得たものばかりで。
 今、この時が大切だからこそ。
(「私の中のコルディリネを、終わらせないといけないのですね」)
 そのためにラウレアは、コルディリネへと舵を取る。
 戦いに赴いてくれる猟兵達の要望に応えるために。
 そして、ラウレア自身の心の決着のために。
 猛毒の広がる領域へと、全速力で飛び込んでいった。
 猟兵達の攻撃が続き、島に広がる緑色が次々と炎に飲み込まれていく。
 火に包まれるコルディリネと、佇む『大天使エンケロニエル』。
 祖国が堕ちたその元凶を、ラウレアは見据えて。
 そこに、白銀色の髪と白い翼が、舞った。
「終わりにしよう」
 イオが振り抜いたスカイソードが、エンケロニエルを捉える。
 しかし、その先は炎に阻まれ、見えなくなり。
 そして猟兵とイオと約束した時間が過ぎ、ラウレアはその場から離脱した。
 イオを助けに行きたい。無事を確かめたい。
 そう願う気持ちを必死に抑えて。
 猛毒の領域から離れた、その時。
「頼むぜ、ラウレア」
 優しく声をかけたのは、幾度か共に戦った、大剣を携えし黒髪の猟兵。
 コルディリネに接近、離脱した後。再突入するような動きをして欲しいと、そっと頼んできていた少年との約束を、ラウレアは思い出し。
 それが、イオを迎えに行く動きになると気付いて。
『はい』
 ラウレアはしっかりと頷いた。
 転回してコルディリネにまた進路を向け。突入と見せかけ、猛毒の領域に入る直前に転進。その勢いも乗せて少年が飛び出したのを確認してから。
 ラウレアは、イオを探す。
 すぐに、少年とすれ違うようにしてこちらへ戻って来る白い翼を見つけて。
 ほっとしてその進路を合わせる、最中。
 猟兵の少年が振るう炎の大剣の先に、両手を広げた姿の天使核が、見えた。
 緩やかなウェーブのかかった髪。小さな薔薇の花の刻印を刻んだ胸元。
 そして、振り下ろされる大剣を望んで受け入れるかのような姿に。
 虚ろなその顔に、穏やかな笑みが浮かんでいる幻視を見て。
(「ロケ……」)
 そこに、オブリビオンとなったリオナの最期の笑みが、重なる。
 ――見届けたかったのは、かつてのコルディリネ。
 助けられなかったエンジェルの子供達のその後。
 ――知りたかったのは、屍人帝国『コルディリネ』。
 その存在が、今のラウレアの幸せを脅かすものであるか否か。
 望んでいた全ての答えを、ラウレアは得て。
 そして、イオが、大切な愛し子が戻ってきてくれたのを、迎える。
「ただいま、ラウレア」
 エンケロニエルを倒すという決着は猟兵に委ねたからだろうか、イオの笑みは、少し気まずそうなものだったけれども。彼の中でも、1つの終わりが迎えられたのだろうと、その様子から感じられたから。
 ラウレアも、酷く落ち着いた心のままに応え……
『おかえりなさい、グラリス』
 久しぶりに呼んだ名に、翔剣士は緑瞳を見開いて驚き。
 でもすぐに、嬉しそうに笑ってくれた。
 
シリン・カービン
「一隻お借りします」
船長に告げて小型艇を借り受け戦場へ。
猛毒の領域はさすがに10㎞も無いでしょう。
酸素と植物毒の影響範囲外に艇を止め、狙撃体勢を取ります。

精霊語を呟き額の双星に触れると、
封印を解くように外れるサークレット。
額の真ん中に第三の目が現れ、肌の色が褐色へと変わり、
|ダークエルフ《真の姿》に変わります。
(衣装は|精霊護衣《ビキニアーマー》)

エンケロニエルの天使核が巨大化を始めたら、
順に火の精霊弾で狙い撃ちます。
酸素が濃い分、燃焼効率が上がって破壊力が増すはず。
攻撃が薄い部分が出来れば、仲間も取りつきやすくなるでしょう。

そしてここからが本番。
天使核の本体との接続部位は恐らく他の部分より弱い。
天使核が外れて露出したそこを次の天使核が現れる前に狙い撃ち、
内部から破壊します。

船員は驚くでしょうね。
10kmも離れているし、目標が小さすぎると。

ーー問題ありません。
「針の穴よりは、大きいのでしょう?」

私の目からは逃れられない。

「あなたは、私の獲物」



『本船はこれよりコルディリネへと進路をとります。非戦闘員は船内へ退避を』
 飛空艇『ラウレア号』に響いた女性の声に、シリン・カービン(緑の狩り人・f04146)は、甲板を歩いていた足を止めた。
 向かおうとしていた先にあったのは、小型飛空艇。
 それを借りて戦場へ出ようと思っていたのだが。
 ラウレア号からの攻撃が届くように、そして、攻撃の後にすぐ退避できるように、一撃離脱の動きをしてくれるというのなら。
(「それに合わせてみるのもいいかもしれませんね」)
 シリンは考えていた作戦を組み立て直しながら、大剣を持つ黒髪の少年がラウレアと話しているのも聞き、続くように声をかける。
「ラウレア。私からも1つ、お願いしたいのですが……」
 そして、作戦行動が始まった。
 コルディリネへと急接近するラウレア号から、ドローン群が飛び立ち、サーファー達が風に乗って飛び出す。そして射程に入るや否や、銃撃や炎が次々と放たれた。
 そんな猟兵の動きに同調するように、シリンも精霊猟銃を構え。
 火の精霊弾を込めたボルトアクションライフルを幾度も操作し、撃ち続ける。
 狙うは『大天使エンケロニエル』の周囲。浮島を緑色に覆う程増殖した、毒を生み出す植物を、シリンは次々と燃やしていく。
 何しろ、辺りに広がるのは、毒と言える程の濃度の酸素。その濃さの分、燃焼効率は上がっているし、植物という可燃物も揃えられているのだから。精霊弾の破壊力も増すというもの。
 そうして、防御と攻撃に蠢く植物が減っていけば、仲間がコルディリネに取りつきやすくなり、それぞれが狙う攻撃が通り易くなるだろうと。
 まずは援護に、とシリンは動く。
 どんどん炎に包まれていくエンケロニエルに、ラウレア号から、小型飛空艇から、ドラゴンから、はたまたコルディリネに降りて直接、重ねられていく猟兵達の攻撃が、少しずつだが着実に効果を上げているのを見て。
 白銀色の髪のエンジェルが、その背に白い翼を広げて飛び立つのも支援すると。
 そこでラウレア号は転進し、離脱の動きに移る。
 猛毒の領域での活動限界とラウレアが判断した時間が過ぎたのだろう。短い時間でしかなかったが、飛空艇に乗る者達の、そしてガレオノイドであるラウレア号自身の安全を考慮すれば妥当なところだと思うし。短いと分かっていたからこそ、猟兵達はそれぞれに出来得る一撃を一気に叩き込んでいたから。
 充分以上の戦果が挙げられたと、シリンは評価する。
 だがしかし。未だコルディリネにエンケロニエルは佇み。炎に囲まれ、傷を負いながらも尚、植物を増殖させようとしているから。
 未だ決着はついていない。
 ゆえに、ラウレア号は頼まれていた2つ目の動きに移る。
 コルディリネへの再突入と見せかけて、猛毒の領域に至る直前での急転回。
 猛攻をした大型飛空艇だからこそ、エンケロニエルの注意を引き付け。構えたエンケロニエルの警戒を裏切るように転進して離脱する、囮の動き。
 そして囮に目を奪われている間に、ラウレア号から、大剣を携えた少年が炎の翼を広げて飛び立つ。
 タイミングを外しての波状攻撃。
 そしてその動きの先で、ラウレア号は、先ほど飛び立ったエンジェルを回収して。
「ただいま、ラウレア」
 スカイソードを収めた翔剣士との、安堵したようなやり取りを聞いてから。
「お願いできますか? ラウレア」
『ええ、もちろん』
 2人の間に割り込むことを少し申し訳なく思いながらも声をかけると。先ほどより少し穏やかに聞こえる女性の声が返ってきた。
 その声色に、シリンは静かに微笑んで。頼んでいた通り、ラウレア号が速度を落とし、空中に静止した状態となってくれたのを感じると。
 改めて、精霊猟銃を手にコルディリネを見据える。
「さすがに遠すぎないか?」
 飛空艇に戻ってきたばかりの翔剣士が、心配したように声をかけてくれた。
 それもそのはず。ラウレア号の位置は、猛毒の領域の外。コルディリネから相当離れた場所だったのだから。普通に考えたら銃で狙える位置ではない。
 けれども。シリンは元々、ラウレアに、近づいて欲しいとは頼んでいなかったから。
「問題ありません」
 この超遠距離は想定内と、落ち着いて頷き返し。
 小さく精霊語を呟きながら、額に手を触れた。
 途端、そこに飾られていた、宝石を2つ連ねたサークレット『双星』が、まるで封印を解かれたかのように外れて。
 シリンの姿が、変わる。
 白い肌は褐色へ。ハンターとしてのチュニックやマントは、必要最低限の部位の身を保護するビキニアーマー『精霊護衣』へ。そして、サークレットがなくなり露わになった額の真ん中に、第三の目が現れて。
 ダークエルフ……真の姿へと変貌を遂げて。
「針の穴よりは、大きいのでしょう?」
 驚く翔剣士の前で、小さくも自信に満ちた笑みを零すと、シリンは狙撃体制を取った。
 炎に包まれたコルディリネで、猟兵と戦うエンケロニエルの姿を、3つの瞳で視て。
 エンケロニエルが纏っていた天使核が巨大化して離れ、近づく猟兵に襲い掛かる動きを冷静に見極める。
 何かを求めるように両手を広げたエンジェルの姿に似た天使核は、炎を纏った少年の巨大剣に斬り消されていくから。シリンが狙うのは、その先。
 天使核が纏われていた――つまり、天使核が外れて露出した部分。
(「天使核と本体……違うものの接続部位は、他の部分より弱いでしょう」)
 遠すぎて、エンケロニエルを狙うだけでも目標が小さすぎるのに。
 さらにその特定部位だけを狙った超精密射撃。
 誰もが無理だと口を揃えるであろう条件だけれども。
(「私の目からは逃れられない」)
 シリンはしっかりと緑瞳を、特に第三の目を見開いて。
 エンケロニエルや、近くで相対する猟兵の動きを、しっかり見通して。
「あなたは、私の獲物」
 引き金を、引く。
 放たれた精霊弾は、宣言通り針の穴をも通す正確さで、シリンが狙った通りにエンケロニエルを撃ち抜き。内部から破壊の力を解き放ち。
 感心したような翔剣士の口笛の音が響く中で。
 コルディリネを支配した大天使は、静かに頽れ、炎と共に消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年10月05日


挿絵イラスト