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アルカディア争奪戦⑯〜熾火は赫く昌盛・プレスト

#ブルーアルカディア #アルカディア争奪戦

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#アルカディア争奪戦


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●アルカディア・スカイゲート
 資格無き者を拒むのが『|拒絶の雲海《アルカディア・エフェクト》』であるというのならば、この空域はまさにそのとおりであった。
『アルカディアの玉座』を隠していた『雲海の聖域』。
 それがこの『アルカディア・スカイゲート』である。
 この空気に存在するオブリビオンは全てが『アルカディア・オブリビオン』である。

 不規則に濃度と分布を変える雲海。
 まるで生きているかのように『拒絶の雲海』はうねり、空域を満たしていく。
 全てを雲海に包もうとするかのように、これまで一定まで高度を下げなければ影響のなかった雲海が忽ちの内に脅威へとなるのだ。
 六大屍人帝国の一つ『オーデュボン』。
 この空域は『オーデュボン』が発見した『アルカディアの玉座』を隠していた『雲海の聖域』の一つである。

 皇帝『パッセンジャー』は、『アルカディア・オブリビオン』に興味を示さない。
 彼にとってそれは意味のないものであったからだ。
 彼にとって意味ある者は己の望みを叶えるモノだけである。故に、雲海の聖域に存在する『拒絶の雲海』を放つ『アルカディア・オブリビオン』のことを彼は記憶しない。

「――」
『それ』は、ただ静かに『オーデュボン』に従う。
『拒絶の雲海』を解き放ち、全てを飲み込む。
 ただそれだけのために存在し、この空域に迫る者全ての障害となるのだ。だが、『それ』はそこから動くことはなかった。
 赤い鎧の巨人。
 体高5mほどであろうか。
 その鋼鉄の巨人は、静かに座し続ける。動かないのではない。動けないのだ。

 鋼鉄の体はすでにあちこちが錆びて、朽ちている。
「――」
 灯る瞳に輝きはない。
 もはやそこから動くことはない。ただ『拒絶の雲海』を発生せしめる装置と化した『それ』は、しかして己の手足のように『拒絶の雲海』を操り、全てを雲海に包み込もうとしている。
 もはやそれだけが己の存在意義であると知るかのように。

『それ』が僅かに頭部をもたげる。
 この空域に何者か侵入してきたのを感知したのだろう。
 もはや輝き灯さぬ|瞳《アイセンサー》が見るのは色濃く広がる雲海の白のみ。
 己が朽ちるその時まで、『それ』は名を思い出すことはないだろう。
 けれど、その鋼鉄の鎧に刻まれた文字の羅列を知ある者ならば理解しただろう。

『それ』――其の名は『セラフィム』。
 刻まれたるは『Ⅵ』――。

●アルカディア争奪戦
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。『雲海の聖域』の一つである『アルカディア・スカイゲート』へと繋がる『空の道』が繋がりました。ですが、この『雲海の聖域』は『アルカディア・オブリビオン』と呼ばれる存在が守護している領域でもあります」
『拒絶の雲海』――『アルカディア・エフェクト』と呼ばれるあらゆるものを拒絶し、包み込む雲海そのもの。

 大空の世界ブルーアルカディアに置いて、雲海に沈むことはすなわち滅びである。
 その『拒絶の雲海』そのものを放出することのできる『アルカディア・オブリビオン』の存在は脅威であると言わざるを得ないだろう。
「ですが、今回みなさんが向かって頂く空域に存在する『アルカディア・オブリビオン』は自身では動くことができないようなのです。その場に固定されているのか、はたまた動くことが出来ないのかは定かではありませんが、迅速に進軍しなければならない以上、この状況を利用しない手はありません」
 ナイアルテの言うことも尤もであった。
『アルカディア争奪戦』は6つの屍人帝国が相争う戦いでもある。
 如何に勇士達『飛空艇艦隊』と共同戦線を張っているとは言え、いつまでも戦い続けることはできないだろう。

 早急に六大屍人帝国を打ち倒すためには、この空域を進軍しなければならない。
「『アルカディア・オブリビオン』は無視できるのですが、『拒絶の雲海』を放出し続ける能力だけは捨て置くことができません」
 その言葉通り、この空域全域を雲海に包もうとしている。
 だが、全てを埋め尽くすことは能力的に出来ないのだろう。不規則に濃度と分布を変える雲海となっている。
 それはチャンスであり、同時にピンチでもある。

 すべてを包むことができず不規則に、それこそ『アルカディア・オブリビオン』の手足のようにうごめく雲海を躱すのは至難の業。
「それも雲海に沈まぬように高度を保ちながら『拒絶の雲海』を躱さなければならず、また共同戦線を張っている『飛空艇艦隊』をも誘導しなければならないのです」
 猟兵がやらなければならないことは二つ。
 一つは不規則な濃度と分布によってうごめく『拒絶の雲海』を躱し、変形し続ける『空の道』を探して通ること。
 もう一つは『飛空艇艦隊』を安全に見つけた『空の道』へと誘導することである。

「やるべきことは二つだけですが、それが困難なことはご理解いただけたかと思います。ですが、それでもこの空域を抜け、『飛空艇艦隊』を安全に誘導することができれば屍人帝国『オーデュボン』との戦いが有利になることは言うまでもありません」
 どうか、とナイアルテは頭を下げ、猟兵たちの転移を準備するのであった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。

 ※これは1章構成の『アルカディア争奪戦』の戦争シナリオとなります。

『拒絶の雲海』を放出し続ける『アルカディア・オブリビオン』。
 その赤い鎧の巨人は動くことはありませんが、代わりに手足のように『拒絶の雲海』を放出し、皆さんの道を阻むことでしょう。
 この『拒絶の雲海』に触れれば例外なく滅びます。
 雲海に沈むのと同じことであると思っていただければよいかと思います。

 皆さんは、この不規則に変化し続ける『空の道』の安全なルートを行き、また『飛空艇艦隊』をも無事に誘導させなければなりません。

 幸いに『アルカディア・オブリビオン』は動かないので戦闘になることはありません。

 プレイングボーナス……変形し続ける「空の道」を探して通る。

 それでは『アルカディア争奪戦』、屍人帝国の野望を打ち砕くべく雲海を進む皆さんの冒険と戦いの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 冒険 『空の道を探せ』

POW   :    雲海の影響に耐え、最短距離を強引に移動する

SPD   :    雲海の薄い箇所を見つけ出し、迅速に移動する

WIZ   :    雲海の動きを読み、最適なルートを導き出す

イラスト:真夜中二時過ぎ

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

エゼル・ベストウィッシュ
※連携、アドリブ歓迎

勇士の大きめの飛空艇に
自前の機体ごと同乗させてもらうね

拒絶の雲海の観察から入ろう
濃度も分布も不規則となると
晴らしちゃった方が話が早いかな

僕が先導するから
勇士の皆は後に続いてね
って伝達しておいてから
具体的な行動開始

まずは愛用のセイルフローターと
僕の身体をロープで結ぶ

次にUC発動
セイルフローターを持ち上げ
雲海の濃度が高かった箇所が
薄くなったタイミングでその一点を狙い
勢いを付け
機体を一直線に
『怪力』任せにぶん投げる!

機体の重量と射出速度から
生まれるエネルギーで
一時的に雲海の薄い道を作り出すよ
物理的にね

僕?ロープに引っ張られてくけど
たぶん大丈夫じゃない?
召喚獣だし
それなりに頑丈だし



『アルカディア・スカイゲート』の空域に立ち込めるのは『拒絶の雲海』。
 資格無き者を拒絶する『アルカディア・エフェクト』は、その名の通り、雲海に触れた物を滅ぼす。
 オブリビオンであろうと猟兵であろうと浮遊大陸であろうと。
 なんであれ雲海に沈むものは滅びる定め。
 それがこの大空の世界ブルーアルカディアの理である。

 だからこそ、エゼル・ベストウィッシュ(召喚獣「ガミジン」の飛空艇パイロット・f38531)はヒトを知りたいと願ったし、護りたいと思った。
 召喚獣である彼女にとって、この世界は何もわからないに等しかった。
 けれど、自分を保護してくれた人々は優しかったのだ。
 善意が生命を育むのだと知った。
 何も知らなかった彼女にとって、それは同時に喪失を恐れさせる至るには十分な暖かさであったことだろう。

 だからこそ、彼女は『飛空艇艦隊』の飛空艇に自身の駆る一人乗り用の飛空艇と共に乗り込む。
「『拒絶の雲海』……濃度と分布が不規則……」
「そうなんだよな。どう見たってこれ、法則性が見いだせない」
 勇士たちもお手上げ状態である。
 だが、この『アルカディア・スカイゲート』の空域を疾く切り抜けなければ、屍人帝国との戦いは遅れ、多くの人々が犠牲になるかもしれない。
 それはエゼルにとっても望むものではない。

「となるともう晴らしちゃった方が話が早いかな」
 エゼルは一人乗り用の飛空艇『セイルフローター』で『飛空艇艦隊』から飛び立つ。
「おい、大丈夫なのか!?」
「僕が先導するから後に続いてね」
 エゼルは雲海に対する恐怖よりも、人々の笑顔や営みが喪われることのほうに恐れを抱く。
 だからこそ、彼女は自身の体と『セイルフローター』をロープで繋ぐ。
 この『拒絶の雲海』の動きが不規則であるというのならば、風まとう飛空艇がそれを吹き飛ばせばいい。

 そして、彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
 ロープで飛空艇と己を繋いだのには理由がある。ロープを掴む。とん、と軽く『セイルフローター』の登場席を蹴って彼女は空に飛ぶ。
 びったんびったんと本来ならば、そのユーベルコードは敵を掴んで叩きつけるためにある。だが、彼女は己の飛空艇をロープで繋がれたまま一直線に投げ放つのだ。
 風の力を纏った飛空艇の質量が、『拒絶の雲海』を風と共に吹き飛ばしながら一直線に飛ぶ。

「これで道が出来るよ」
 放ったエネルギーにより、一時的にだが薄い空の道が刻まれるように生み出される。
 だが、勇士たちはそれよりエゼルに何事かを叫んでいる。
 何? とエゼルは首をかしげる。
 ああ、と彼女は気がつく。
 自身と『セイルフローター』を繋ぐロープのたわみがもうない。つまり、一直線に飛ぶ『セイルフローター』にこの後彼女は引っ張られるということだ。それも怪力でぶん投げた加速度のままに。

「多分大丈夫じゃない?」
 特に恐れなくエゼルは『セイルフローター』に引っ張り込まれるようにして刻まれた薄い空の道を飛ぶ。
 彼女の体は召喚獣のもの。
 それなりに頑丈であったことが幸いした。
 けれど、勇士たちはそんな事関係ない。慌てて勇士達『飛空艇艦隊』も刻まれるように生み出された空の道をたどり、『セイルフローター』に引っ張られたエゼルを救出するために進むのだ。

「あんな無茶して!」
「もっとちゃんと検証しようぜ!?」
「いや、本当に助かったけどさ!?」
 口々に勇士達が『セイルフローター』を収容した『飛空艇艦隊』の甲板上でエゼルに詰め寄る。
 助かったことは事実なのだから、いいじゃないとエゼルは思ったかも知れない。
 けれど、彼らの言葉が詰問ではなく優しさからでていることを理解できるからこそ、エゼルは彼らの言葉を甘んじて受け入れ、そして彼らの優しさにこころが温まるのだ。

「ほんと、あんな無茶は今回だけにしてくれよ」
「……」
 約束はできないなと思ったかも知れない。
 だって、自分が恐れるのは彼らのような優しい心を持つ者たちの営みが喪われること。
 きっとそのために彼女はこれからも無茶をし続けるのだろうから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクトル・サリヴァン
最後の最後に厄介な力持ってるオブリビオンだえ。
勇士達を守る為に先導頑張ろうかな。

予め作戦を勇士達に伝えておく。
UCで空シャチ召喚。
空シャチ達の野生の勘や反響定位、それに加えて俺の音魔法で雲の濃度の薄い雲の道を見極める。
また、数体の空シャチは陽動を。
濃度薄い雲の道とやや離れた所かつ移動できる場所を泳ぎ、其方に敵の注意を向けさせて飛空艇の狙う道から意識を逸らす。
全部を一度に埋め尽くせないならどこかに隙はできるもの。空シャチ達が十分気を惹いたら勇士達に全速力での突破をお願いする。
その際風の精霊に語り掛け飛空艇が加速し易いように、できれば雲の濃度も薄いまま保つよう気流操作し補助。

※アドリブ絡み等お任せ



『アルカディア・スカイゲート』は要衝空域の一つである。
 雲海の聖域とも呼ばれる一つ。
 屍人帝国『オーデュボン』によって、今は『アルカディア・オブリビオン』が『拒絶の雲海』を放ち、猟兵と勇士達の道を阻んでいる。
 雲海は言うまでもなく、沈めば滅びる。
 この大空の世界にある絶対の理だ。
 それを放出し続ける『アルカディア・オブリビオン』が動かないというのは朗報であったものの、しかし、この不規則に濃度を変え、分布を変化させる『拒絶の雲海』は厄介極まりないものだった。

「最後の最後に厄介な力を持っているオブリビオンだね」
 ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)は『飛空艇艦隊』の飛空艇の甲板上から広がる雲海を見やる。
 ヴィクトルは音魔法によって雲の濃度を見極めようとするが、難しいかもしれないと理解していた。
 だからこそ、彼は空泳ぎたちの狂宴(スカイ・オルカ)によって召喚した空中を泳ぐシャチたちを持って雲海の上を飛行させる。

 そして、反響定位によって全てのシャチたちの位置と雲海の濃度を割り出す。
 数体のシャチが空を泳ぎ、この『拒絶の雲海』を放出し続けている『アルカディア・オブリビオン』の注意を引く。
「やっぱりだね。敵は動けないけれど、こちらの位置を理解している。すでに俺らが空域に入り込んでいることも委細承知というわけだ」
 ヴィクトルは『飛空艇艦隊』の勇士たちに作戦を伝えている。
 陽動のシャチたちが飛び、それを追うようにして『拒絶の雲海』が手足のように伸びている。
 敵の注意をそらし、ヴィクトルは他のシャチたちを楔にして得られるエコーロケーションによって空の道を探し出す。

「全部を一度に埋め尽くせないから、手足のように『拒絶の雲海』を操って補足しようとしている……なら、面でこちらが翔べば必ず全てを捉えようとして隙が生まれるものさ」
「そこを突けってことだよな。よぉーし! 天使核の出力を上げろ! 全速力で抜けるぞ!」
 勇士たちの声が聞こえる。
 ヴィクトルは甲板上に立ち、さらに精霊に語りかける。
 彼らの力を持って、飛空艇が加速しやすいように気流を操作し、追い風でもって『飛空艇艦隊』全体の速度を上げる。

 迅速にことを進めなければならない。 
 屍人帝国の戦力は圧倒的であるし、要衝はこうして『アルカディア・オブリビオン』が妨害してくる。
 ヴィクトルは己の反響定位によって雲海の中を知るだろう。
 一体の巨人がいる。
 金属で構成されているから生物ではないだろう。ゴーレムかそれに類する存在。
 今は『オーデュボン』に従っているようであるが、かの巨人が何を意味するのかはわからない。

「けどまあ、俺たちの道を邪魔するっていうことだけはわかっているよな」
 動かない、動けない。
『アルカディア・オブリビオン』を打倒する必要がないのはありがたいことである。ヴィクトルはかの巨人を刺激することなくシャチたちの陽動で持って『飛空艇艦隊』に『拒絶の雲海』が及ぶのを避けながら、カ細い空の道を征く。

 風がヴィクトルの頬を撫でるだろう。
 空の旅路も悪くはないと思うかも知れない。空も海と等しく道行きを太陽で照らされている。
「もう一息だ。雲の濃度は薄いままに……そうそう上手だ」
 ヴィクトルは精霊たちに語りかけ、補助に務める。
 この先に在るのはさらなる激戦。
 六大屍人帝国を打倒し、『アルカディアの玉座』に至らなければ『アルカディア争奪戦』は終わらない。

 戦いが長引けばブルーアルカディアの人々の営みは滞り続ける。
 滅びの雲海を眼下にしながら、ヴィクトルは『飛空艇艦隊』の多くを安全に空域を抜けるための道へと導くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
「拒絶の雲海とはよく言ったものだね。
全てを拒む様に白く塗り込められた空。
此方を受け入れろとは言わないが、通して貰う。
何としてもね。」

アンノウンブレスを発動し現れた幽霊を飛空艇周辺に
展開し幽霊の超感覚で周囲の状況を把握。
「最も恐れなければいけないのは
脱出口の無い地点で雲海に囲まれる事。」
と出来るだけ広範囲の状況を読み取り
【読心術】によりアルカディア・オブリビオンが
次に雲をどう動かすか予測。
「ただの自然現象ではなく何者かの意思が
介在しているなら逆にそれを読むことも可能と言う事。」
詰将棋の様に進路を決めていく。
また、幽霊のテレパシーにより雲海の情報は即座に
船員たちに伝達し船の制御遅れが無い様にする。



 それは白き雲。
 他世界を知る者であれば、それは何の変哲もないものであったことだろう。
 だが、大空の世界ブルーアルカディアにおいては恐怖の象徴でもあり、破滅の象徴でもあった。
 雲海に落ちた者は須らく滅ぶ。
 例え、それがオブリビオンであろうと魔獣であろうと勇士であろうと。
 関係なく拒絶されるかのように滅びて消える。
 浮遊大陸もそうだ。
 沈み、再び浮かび上がった時、それは最早元の浮遊大陸ではない。過去の化身たるオブリビオンが満載された屍人帝国となって浮かび上がるのだ。

「『拒絶の雲海』とはよく言ったものだね。全てを拒む様に白く塗り込められた空。此方を受け入れととは言わないば、通してもらう。何としてもね」
 フォルク・リア(黄泉への導・f05375)の瞳がフードの奥でユーベルコードに輝いている。
 超感覚を備え、強力な念動力やテレパシーと言った能力を保つ実体を掴ませぬ正体不明の幽霊たちが『飛空艇艦隊』の飛空艇の四方八方に散るようにして飛ぶ。
 彼らはフォルクに寄って使役されるものたちであり、棺の群れとなって飛び立っていくのだ。
「あれは……?」
「彼らを介して周囲の状況を探ろうというのさ」
 フォルクは勇士たちにそう告げる。
 幽霊たちの保つ超感覚であれば、不規則にうごめく白き『拒絶の雲海』を知覚することができる。

「最も恐れなければいけないのは、脱出口のない地点で雲海に囲まれる事」
 フォルクはこの不規則な動きに一定の法則性を見出すのならば、この『拒絶の雲海』を放出し続けているという『アルカディア・オブリビオン』に意志のようなものが介在しているかどうかであった。
 もしも、『アルカディア・オブリビオン』に意志が在るのならば、この不規則な『拒絶の雲海』の動きも法則性が見える。

 だが、フォルクは気がついただろう。
 この雲海は近づく者を捉えようとするだけの反射的なものである。
 ならばこそ、フォルクはこれが自然現象ではないと確信する。
「ただの自然幻想ではない。これを『アルカディア・オブリビオン』がなしているとうのなら、敵が動かないのは幸いだったな」
 自在に動くオブリビオンであったのならば、この道程は困難を極めただろう。
 だが、それは恐らくない。
 ある一定の地点だけを守るように『拒絶の雲海』を放ち続けているのだ。

「後は詰めていくだけだ」
 フォルクは見定める。
 周囲に展開した幽霊たちが搭載された棺群を手繰り、雲海の動きを見定める。
 濃淡、分布。
 どれもが些細な情報かもしれない。
 けれどフォルクにとっては値千金の情報だ。逐一情報は幽霊たちとテレパシーでやり取りし、『飛空艇艦隊』の進路を示していく。

 他の猟兵が開いた道は、次々と雲海が埋めていく。
 ならば、埋めた雲海は何処からか補填しているということだ。その補填してきた部分は薄くなり、道となるだろう。
「空の道はこっちだ。迅速に行動しよう。いいかい、ロス無く伝達することこそがこういう時に強みになる」
 フォルクは幽霊たちが使うテレパシーで船員たちに情報を伝える。
 制御が遅れることなどあってはならない。
 少しの遅れが今回は命取りになるのだ。

「ああ、任せてくれ。信じているぜ!」
 勇士達の言葉にフォルクは頷く。
 雪崩のように流れ込んでくる情報を整理し、フォルクは見出すだろう。
 安全な道を。
 そして、彼らが疾くこの『アルカディア・スカイゲート』から脱し、新たなる戦場に辿り着くためにフォルクは多くの情報を処理し続けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…触れれば消滅する厄介な代物だけど、どうやら雲としての性質に変わりないみたい

…それならば、雲の道を見極めるより作った方が速いかもしれないわ

…私が合図をしたら、正面に飛空艇を進ませて

飛空艇に同乗してUCを発動し自身に「風雲の呪詛」を付与して風精の魔力を溜め、
●天候操作術式により強風を操り周囲の拒絶の雲海を散らし、
飛空艇艦隊が通れる雲の道を作れないか試みる

…これから先、更なる強敵が控えている以上、消耗は最小限に抑えないと…。

…それにしても、アルカディア・オブリビオンね

…攻めてこないのは助かるけど、油断はできないわね

…叶うなら、今のうちに武装や能力の1つでも見極めておきたい処だけど…難しいか



『拒絶の雲海』は厄介極まりないものであった。
 この大空の世界ブルーアルカディアの浮遊大陸の眼下に立ち込める雲海は、尽く沈むものを滅ぼす。
『アルカディア・オブリビオン』は、その『拒絶の雲海』そのものを放出し、『アルカディア・スカイゲート』から向かう六大屍人帝国との戦いの場を隔てている。
『飛空艇艦隊』は猟兵達にとって得難き戦力であり、同時に足場でもあるのだ。
 雲海に沈めば滅ぶのは猟兵も変わらない。
 それどころかオブリビオンでさえ沈めば滅びてしまうのだ。
「……触れれば消滅する厄介な代物だけど、どうやら雲としての性質に変わりはないみたい」
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は他の猟兵が切り開いた薄い雲の道を見やる。

 この不規則に濃淡を変え、分布を変える『拒絶の雲海』。
 ならば、そのか細く、いつ形を変えるかわからない空の道を見極めるよりも作ったほうが早いと判断するのは当然のことだった。
「俺達はどうしたらいい? このまま待機か?」
「……いいえ、私が合図をした正面に飛空艇を進ませて」
「どうするんだ? 空の道は、この雲海が晴れなければ見えないはずだ」
「……それを待っている時間に敵はこちらを雲海で飲み込むからよ」
 リーヴァルディは勇士たちと打ち合わせ、甲板上に立つ。
 その瞳がユーベルコードに輝き、彼女の術式を換装する。
 風雲の呪詛と呼ばれる風精の力を魔力に溜めて、その発露する力でもって周囲の風を操るのだ。

 次第に大きくなっていく風。
 それは突風にも近しいものであったことだろう。彼女の手に集まる風は魔力を帯びて、球体へと変わっていく。
 渦巻く風は今か今かと荒れ狂うようであった。
「……ここから先、さらなる強敵が控えている以上、消耗は最低限に抑えないと……」
 手繰る魔力は最小に。
 手にした風が形を変え、槍のように一気に『飛空艇艦隊』の眼前に迫る『拒絶の雲海』を吹き飛ばす。

 それは一本道。
 最短距離を走ることができると考えれば、それが合理的であろう。
 放たれた風が雲海を穿つ。
「合図ってのはこれか! よし、行くぜ!」
『飛空艇艦隊』の勇士達がリーヴァルディの合図たる風の槍の一撃に寄って生み出された空の道を飛空艇でもって進む。
「……長くは保たない。迅速にね」
 リーヴァルディの言葉に勇士達が応える。
 飛空艇は最大速度で雲の道を突き進んでいく。

 しかし、とリーヴァルディは思うのだ。
 この『拒絶の雲海』を放出し続けているという『アルカディア・オブリビオン』。
 今回は動かないようであるが、もしも、『アルカディア・オブリビオン』が自由自在に動き『拒絶の雲海』を放出してくるのならば、『飛空艇艦隊』はこの空域を抜けることができなかっただろう。
「……攻めてこないのは助かるけど、油断できないわね」
 彼女は飛空艇の甲板上に立ち、周囲を見わす。
 風の槍によって薄まった雲海の彼方に、赤い色を見る。

 それはヒトの形をしていた。
 いや、遠目に見えるということはサイズがおかしいと気がつくだろう。
「……あれが?」
『アルカディア・オブリビオン』。
 名も無き、名を忘れられた鋼鉄の巨人。
 しかし、動かない。
 リーヴァルディは、それが最早動くこと無くただ朽ちていく存在であることを見るだろう。
 敵ではあるけれど、もはや打ち倒すまでもない。
 時がかの『アルカディア・オブリビオン』を滅ぼすというのは皮肉なものであった。

 けれど、戦わずに済むのならばリーヴァルディの言う通り消耗を最低限に抑えられたことを喜ぶべきだろう。
 この先に控えるのは六大屍人帝国。
 そして、『アルカディアの玉座』の前に鎮座する何かなのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

国栖ヶ谷・鈴鹿
◎アドリブ連携OKです

アレは……!

ヨナ、天候操作引き続きよろしく!阿穹羅、あのオブリビヲンに出来るだけ近づいて!

……違う、アレは|V《ヴィー》じゃない……。
きこやん、通信用の式神を出して!
「エイル!中にいるのは君かい?」

……呼びかけ応じるか反応を見て。
応えれば、もしそれがオブリビヲンマシンなら、いつか助けにいく!

ないなら……今は撤退!
雲の進路を確保することが優先だ。

……あの時、助けに行けなかった……ぼくが行けば……なんて驕りはないけど……ぼくにとっては、唯一の後悔だ……だから、今は無理でもその時を待つよ……!

ヨナ、おまたせ。
進路引き続きオーデュボン帝国へ……!



 他の猟兵が放った風の槍のごとき一撃が『アルカディア・スカイゲート』に立ち込める『拒絶の雲海』を吹き飛ばし、道を作る。
 それは雲海の濃度を晴らすものであり、同時にこの『拒絶の雲海』を放出し続けている『アルカディア・オブリビオン』の姿を視認させるものであった。
 僅かな時間。
 振り払われた雲海はすぐに元に戻り、発生源たる『アルカディア・オブリビオン』を雲海の奥にひた隠すだろう。

 だからこそ、国栖ヶ谷・鈴鹿(命短し恋せよ乙女・f23254)は思わずうめいていた。
「アレは……!」
 超万能制御式・付喪(ツクモガミ・インテグレヰトサアキツト)によって自動制御されたスカイクルーザーが周囲の天候を操作し、風を操り続けて雲海が迫るのを押し留め続ける。
 鈴鹿は己のキャバリアに乗り飛び出す。
「あっ、おい! やめろ! 雲海が……!」
 勇士たちの静止の声を無視して鈴鹿はキャバリアと共に『アルカディア・オブリビオン』へと近づく。

 赤い鎧の巨人。
 その姿は彼女にとって見覚えのないものであった。
 かろうじて彼女の知るモノと姿形が似通っている、という共通点は見出すことができる。
「……違う、アレは|『V《ヴィー》』じゃない……」
 鈴鹿は己の思い違いであったかと思った。いや、思い違いであったほうがいいと思った。
 もしも、色が違えどあれが青い鎧の巨人『セラフィムV』であり、その胸部に座すのが少年『エイル』であったのならば。
『アルカディア・オブリビオン』になっていたのだとしたら。
 彼女の脳裏に浮かぶ彼らの姿。
 悔やんでも悔やみきれない。
「きこやん、通信用の式神出して!」
 鈴鹿は居ても立っても居られない。確かめなければならない。あの中にいるのか。過去の化身と成ってしまったものが。

 そうだとしたら、彼女は。
「『エイル』! 中にいるのは君かい?」
 式神を介して伝えられる言葉。 
 だが、反応が帰ってこない。ただ『拒絶の雲海』を放出し続けるだけだった。
 もしも、あの青い鎧の巨人がオブリビオンマシンとなってしまったのならば、鈴鹿はいつか必ず彼らを助けに行くつもりだったのだ。

 けれど、反応が帰ってこない。
 そして見ただろう。あの赤い鎧の巨人の装甲に刻まれている文言を。
『セラフィムⅥ』。
 違う。あれは『V』と書かれていたはずだ。そう呼ぶ少年がいた。応えぬのならば、あの中に人は乗っていないのだ。
「危険だ!『拒絶の雲海』が迫ってる! おい!」
 勇士たちの声が聞こえる。
 鈴鹿はキャバリアと共にスカイクルーザーへと舞い戻る。

「ごめんね、心配かけた」
 勇士たちに謝り、鈴鹿は己がすべきことに専念する。今は空の道を確保することが最優先だ。
 感情にかられて動いたことを反省しながらも、けれど鈴鹿は思うのだ。
「……あの時、助けに行けなかった……ぼくが行けば……」
 などという驕りはない。
 こればかりは運命だ。そういうめぐり合わせだったのだ。
 けれど、鈴鹿にとっての後悔は、ただそれだけだ。
 彼らの窮地に駆けつけられなかったこと。

 今は無理である。
 そして、あの赤い鎧の巨人はそうではない。けれど、無関係であるとも思えない。
 ならば、あの熾火の向こうに消えた青い鎧の巨人と少年は今も何処かで窮地に陥っているのかもしれない。
「だから、今は無理でもその時を待つよ……!」
 今度こそ手を差し伸べる事ができるように。
 鈴鹿はスカイクルーザーと『飛空艇艦隊』と共に空の道をゆく。
 目指す先は屍人帝国『オーデュボン』。

 そこに真実が待ち受けるのかもわからない。
 けれど、願いによって世界を滅ぼさんとする存在がいるのならば、鈴鹿はためらうことなく戦うだろう。
 きっとそうし続けることこそが、あの日の後悔を後悔のままにしない一つの方法なのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
空の探索をするなら任せてちょうだい。これでも手札は十分にあるんだから。

一揃えの白紙のトランプカードを頭上に投げて、黒鴉召喚。
さあ、黒鴉達、立体的に展開して連携をとりながら、雲海の隙間を見つけ出してちょうだい。
雲海に飲まれるのは絶対回避。わざわざオブリビオンを増やすわけにはいかない。
数羽単位でユニットを組んで、それでユニットごとの死角をフォローし合う。
全体を見る式も必要ね。

式が手に入れた情報を元に、あたしは船首に立って船の針路を飛空艇艦隊に示す。
雲海は常に形を変えてるわ。通過できるうちに急いで通過して。こんなところで脱落するわけにはいかないでしょ?
他の船にも伝達用の黒鴉を止まらせておきましょう。



『アルカディア・スカイゲート』は雲海に寄って隠されていた聖地の一つである。
 雲海はブルーアルカディアにおいて滅びの象徴そのもの。
 どんなものであれ、雲海に沈んだものは再び空に戻ってきた時、別物となってしまう。
 浮遊大陸であれば屍人帝国に。
 魔獣や人であればオブリビオンに。
 どれもが不可逆なものであるからこそ、人々は滅びと同義に捉えるだろう。

「空の探索をするなら任せてちょうだい。これでも手札は十分にあるんだから」
 そう言って白紙のトランプを広げるのは、村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)だった。
 彼女の一揃えのトランプカードが頭上に放り投げられる。
「急急如律令! 汝は我が目、我が耳なり!」
 黒鴉召喚(コクアショウカン)によって召喚されたカラスに似た鳥形の式神が飛ぶ。
 それらは立体的に展開し、この空気に満ちる『拒絶の雲海』の合間を縫って飛ぶのだ。
「やはり強引に道を作るだけでは限界があるな……。どうだ、道はありそうか」
 勇士達の言葉にゆかりは頷く。

 黒鴉の式神たちはゆかりと五感を共有している。
 雲海は次々と形を変えているが、どうやら空を飛ぶものに反応して追従を始めるようであった。
 即ち、飛空艇にも反応するのだろう。
 となれば、この『拒絶の雲海』を放出し続けている『アルカディア・オブリビオン』が今回はその場から動かず固定しているというのが幸いであった。
「これは……全体を見る式も必要ね」
 ゆかりは複数羽でユニットを組んで黒鴉たちを飛ばす。互いの死角をフォローしあっているのだ。

 例え、式神と言えど雲海に飲まれれば滅び、オブリビオンの手駒となる可能性も捨てきれない。
 だからこそ、ゆかりは雲海に触れることを絶対に回避しようとしていた。
 そのためには俯瞰して状況を見やることのできる式神も必要だと考えたのだろう。
「高度を上げて……と、俯瞰し見えればこれはこれでわかりやすいわね」
 ゆかりは飛空艇の甲板上で集中する。
『アルカディア・オブリビオン』の放つ『拒絶の雲海』は手足のようにうごめいている。
 他の猟兵のゆに強引に道を作ることも可能だが、それは僅かな時間しか保たない。

 だからこそ、不規則にうごめく雲海の様子をつぶさに観察する。
 そこから導き出されるのは囮を持って雲海の濃度を薄めさせ、薄まった箇所を『飛空艇艦隊』が行くという方策だった。
「あたしが船首に立って進路を示すわ。それにしたがってちょうだい」
「危なくはないか? あんたが雲海に触れてもいかんだろう?」
「誰に言ってるのよ。こんなことろで脱落なんてしてられないわ。それはあなたたちも同じでしょう?」
 共に戦うからこその気遣い。
 けれど、ゆかりはそれを不要だと言う。今必要なのは気遣いではなく信頼である。

 ゆかりが示した道先を確実に飛空艇で進むという信頼。
 それこそがこの『アルカディア・スカイゲート』を迅速に抜けるために必要なことであった。
「……そうだな、そのとおりだ。なら、もうひとつ。あのカラスのやつを他の飛空艇にも付けてくれ。情報の伝達は早いほうがいい」
「そうね、それはあたしも考えていたところ。ロスなく情報が伝わる重要性は言うまでもないわね」
 それじゃあ、行くわよ、とゆかりは船首に立ち雲海の向こうを見据える。

 この空域を抜ければ後は六大屍人帝国との戦場。そして『アルカディアの玉座』を隔てる聖域。
「どんな敵が待ち受けているのだとしても、進まなければ変わらないっていうのなら進むまでよね。それが勇気ある者の務め。道を切り拓く者なのだから」
 ゆかりは集中して式神たちから伝わる情報を飛空艇に伝えていく。
 たった一隻たりとて脱落させない。
 その強固な意志で彼女は『飛空艇艦隊』と共に空の道を見極め、進むのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ゾーヤ・ヴィルコラカ
 『空の道』を探すこと、そして皆を導くこと。とっても難しいけれどこの先で強敵が待っているんだもの、やり遂げてみせるわ!

 先頭の飛空艇に乗せて貰って、舳先に立って【WIZ:雲海の動きを読み、最適なルートを導き出す】ことにするわね。〈野生の勘〉で風を読んで通り道を見つけたり、魔力を感じる〈結界術〉でこっちに接近する雲を避けるよう伝えたりするわ。焦らず確実に進んで、いざという時には【UC:絶凍魔弾】を発動して、雲海を凍り付かせて通り抜ける隙を作るわね。

 一歩間違えればみんな消えちゃう危険な道だけど、歴戦の勇士さん達ならきっと切り抜けられるって信じてるわ。さぁ、進みましょう!

(アドリブ等々大歓迎)



『アルカディア・スカイゲート』は雲海の聖域の一つである。
『拒絶の雲海』を放出し続ける『アルカディア・オブリビオン』の存在は捨て置くことのできないものであったが、それが今座して動かぬというのならば『飛空艇艦隊』はこの空域を抜けなければならない。

 飛空艇は大空の世界にあって猟兵たちの足場であり共に戦ってくれる頼もしき仲間たちである。
「『空の道』を探すこと。そして皆を導くこと」
 それがとても難しいことであることをゾーヤ・ヴィルコラカ(氷華纏いし人狼聖者・f29247)は理解していた。
 けれど、この先猟兵達だけの力ではとてもではないが戦えない。
『アルカディア・スカイゲート』の先に待つのは六大屍人帝国の首魁たち。
 その力は言うまでもなく強大である。

 そんな時、『飛空艇艦隊』の力が必要になるのだ。
 ならばこそ、ゾーヤは奮起するのだ。この世界のため、共に戦ってくれる勇士たちのために。
「雲海は不規則に動いている……けれど、領域に入ってきたものを追いかけてる」
 ゾーヤは雲海の動きを観察する。
 他の猟兵達が強引に道を作ったり、不規則な中にも規則性を見出そうとしていたのと同じ様に彼女もまた雲海を見極める。
 飛空艇の先に達、見つめる。
 風が吹いている。このブルーアルカディアにおいては当たり前みたいな風。

 ならば、あらゆるものを計算に入れなければならない。
 ゾーヤは飛空艇のまわりに結界を張り巡らせる。
 魔力を感知する結界は、『拒絶の雲海』が『アルカディア・オブリビオン』から放出されているのならば何らかの魔力を帯びていると思ったのだ。
 意志を持っているかのように、手足のように動き、領空を侵犯するものを追う雲海。
 それをゾーヤは見る。
「やっぱりそうなのね。いいかしら、ルートはゾーヤさんが示すわ!」
 勇士たちは頷く。
 この空域を抜けるためにはどうあれ互いのことを信じるしかない。ゾーヤは勇士たちの飛空艇を手繰る技術を。勇士たちはゾーヤの示すルートを。

 どちらかが駆けても踏破することはできないのだ。
「一歩間違えればみんな消えちゃう危険な道だけど」
 ゾーヤの瞳がユーベルコードに輝く。
 どんなにがんばってみても、風を読んでみても、どうしようもないほどの雲海の腕が迫る。
 自分たちの行く末を阻もうとしている。
 それが『アルカディア・オブリビオン』の意志なのかはわからない。
 けれど、その行く手を阻むものがあるのならば、ゾーヤは切り拓くのだ。

「絶凍魔弾(フリージング・バレット)! 凍らせるから急上昇!」
 ゾーヤの言葉に飛空艇が飛び上がるようにして急上昇する。ゾーヤは氷属性の魔法攻撃を放ち、雲海を氷漬けにする。
 雲が水分と大気中の塵でできているのならば彼女のユーベルコードは雲事態を凍りつかせる。
 腕のような形で凍りついた雲海が飛空艇の前に迫る。
 艦首をかすめるようにしながら飛空艇は上昇し、雲海の腕を逃れる。
「歴戦の勇士さんたちならきっとできるって信じてたわ!」
「期待されちゃあな! 応えないわけにはいかんだろうって!」
 間一髪危機を乗り越えたゾーヤと勇士たちが甲板上で手を叩き合う。

 短い時間ではあれど互いに信頼していなければできない芸当であった。
 だが、勇士たちは更に目を向くだろう。周囲から迫る雲海。
 この飛空艇を飲み込もうとしているかのようだった。
 けれど、ゾーヤに取ってそれは願ってもないことであった。周囲から迫る雲海は無尽蔵ではない。放出され続けて入るものの、不規則に濃度と分布を変える。

 つまり、自分たちを逃さぬと雲海を集中させているのならば。
「ほかは薄くなっているってことでしょ! そして!」
 放たれる魔法の弾丸が迫る雲海を凍りつかす。
 まるで海を切り拓くかのように雲海が氷漬けに成って左右にそそり立つ壁のように固まる。
「さあ、進みましょう!」
 ゾーヤは何も恐れることはないと闊達に笑いながら、この危険な道行きを勇士たちと共に行進するように進むのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィア・シュヴァルツ
「む、感じるぞ……!
これは鉄板の匂い!」
『匂いなのでございますか!?』

我は飛空艇艦隊の飛空艇から飛び出すと、箒の上に仁王立ちしながら飛んでいくぞ。
もちろん、飛空艇から生肉を持っていくのは忘れんからな。

『フィア様、なにナチュラルに肉を盗んでいっているのでございますか!?
それに、この雲海を箒一つで渡るおつもりですか!?』
「ふっ、無論よ!
この程度の雲で、我の鉄板への道を妨げられるものか!
【竜滅陣】!!」

極大魔術で行く手を阻む雲を吹き飛ばし、雲の中央――鉄板の匂いがする方向へ箒で飛んでいくとしよう!

「さあ、鉄板よ、今熱してやるので、この肉をこんがりジューシーに焼くのだ!」
『無茶苦茶でございますね!?』



「む、感じるぞ……! これは鉄板の匂い!!」
『匂いなのでございますか!?』
 開幕一番この人何言ってんだろうと使い魔である『フギン』は思った。
 鉄板の匂いっていうか、鉄の匂いって言えばいいのではないかとも思ったし、同時に嫌な予感しかしなかった。
 こういう時のフィア・シュヴァルツ(宿無しの漆黒の魔女・f31665)はたいていろくでもないことをしでかすのが相場で決まっているのである。

 どう考えたって面倒なことになる。
「ふん、ふんふん! こっちか!」
 フィアは『飛空艇艦隊』にあいのりさせてもらっていた形になっていたが、その一つの飛空艇から飛び出す。
 取り出した箒の柄の上に仁王立ちしながら空を往く。
 眼下には雲海。
 落ちれば滅びるしかない。それがブルーアルカディアの理であったが、フィアは恐ろしさを感じていないようであった。

『フィア様、なにナチュアラルに肉を盗んでいっているのでございますか!?』
 びっくりした。
『フギン』でなければ見逃しちゃうねっていうくらいのナチュラルさでフィアはしれっと『飛空艇艦隊』の備蓄である魔獣のお肉を失敬していたのである。
 早業っていうレベルではない。
 恐らく『フギン』が突っ込まなかったら、そのままだっただろう。
『それにこの雲海を箒一つで渡るおつもりですか!?』
 危険極まりない行為である。
 しかも此処は『雲海の聖域』の一つ。

『アルカディア・オブリビオン』は座して動かぬとは言え、この雲海は意志を保つかのように空を飛ぶものを追うのだ。
「ふっ、無論よ!」
 その自信は何処からやってくるのか『フギン』は不思議でしかたなかった。
 今の今まで自分の主が無事であったのには理屈ではない何かが関与しているのではないかと思うほどであった。
 世界観が違うとしか言いようがない。
「この程度の雲で」
 迫る腕のような雲海。

 それはあらゆるものを雲海に飲み込み滅ぼさんとする意志をもっているかのようでもあった。
 だが、恐れはない。
 フィアにとって結局の所、『拒絶の雲海』と言えど、綿あめみたいだなーとか、綿あめで腹が膨れるか! とかそんなことくらいしかなかったのかもしれない。
 そのくそ度胸があるおかげであろう。
 フィアはためらわなかった。
 いや、単純にぶっぱ癖というだけなのかもしれないが、まあ、ともかくユーベルコードが煌めく。

「我の鉄板への道を妨げられるものか! 竜滅陣(ドラゴン・スレイヤー)!!」
 ほらー!
 やっぱりぶっぱじゃねーか! と誰もが思っただろう。
 行く手を阻む雲海をぶっ飛ばすドラゴンすら消し飛ばすほどの大規模破壊魔法。
 それは確かに雲海を吹き飛ばす。
 けれど、同時にフィアの思う鉄板の匂いもまた吹き飛ばすのだ。

「……」
『フィア様、もしかして匂いを見失いましたか?』
「さあ、鉄板よ、今熱してやるので、この肉をこんがりジューシーに焼くのだ! 待っておれ!」
 フィアは意気揚々と箒に仁王立ちしたまま雲海を眼下にしながら飛ぶ。
 あ、これごまかしたなと『フギン』も思った。
 けれど、フィアの目は本気である。
 何処までも、何処までもお肉を美味しく焼く為にこの空を駆け抜けるのだ。ともすれば、それは『迷子』ってやつなのかもしれなかった。

「ええい! 早く出てこんとここら一帯をぶっ飛ばしてくれよう!」
『無茶苦茶でございますね――!?』
 いつもことである――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ステラ・タタリクス
【ルクス様と】
|セラフィムの《ご主人様っぽい》!香りがします!!
|メイド《犬》に不可能はありません

予知で垣間見えたあれは……セラフィム?『Ⅵ』?
そういえば|V《ヴィー》様がクロムキャバリアで
第五世代とか言っていたような?

さて雲海の薄い箇所を一気に通り抜ける方が効率的ですね
小回りが利いた方がよさそうですね
私は『アンゲールス・アラース』を使って
人型で空を飛べるようにしておきます
ルクス様は飛空艇の甲板から支援を
というか演奏で|拒絶の雲海《アルカディア・エフェクト》吹っ飛ばしたりはできませんか?
進軍時は|飛空艇艦隊《ガレオンフリート》の先頭で
誘導する導きの星となりましょう
メイドに不可能はありませんので


ルクス・アルブス
【ステラさんと】

っぽい……?
ステラさん、いよいよわんこ系メイドに……。

っていうか、何度聞いてもヤバさがあがるばかりですね。
そのうち頬ずりとか……あ、もうしてたかも?

それにしても、セラフィムはいっぱいありますね。
まぁ、鉄板にも種類はありますし、
青がお肉用なら、赤はお魚用とかなんでしょうか?

どっちも手に入れておけば安心ですし、
ここはステラさんに乗せてもらっていくことにしますね。

って、|拒絶の雲海《アルカディア・エフェクト》を散らすんですか?

雲なら音波でなんとかなるかもしれないですし、
ここはやってみることにしましょう!

【Canon】の音波魔法で破壊の波を生み出して、
雲を霧散させちゃいますよー!



「|『セラフィムの《ご主人様っぽい》! 香りがします!!」
 いつものやつである。
 もうご存知なんだろうと思われるが、一応説明しておく。
 ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)の叫びが大空に木霊する。
 正直に行って、ここまで行くと一種のユーベルコードなのではないかと疑いの眼差しを向けられても仕方のないことであったのかもしれない。
 というか、なんなのだろう。
 その嗅覚。
 本当に?

「|メイド《犬》に不可能はありません」
 すまし顔でしれっとこんな事を言うから怖い。
「っぽい……? ステラさん、いよいよわんこ系メイドに……っていうか、何度聞いてもヤバさが上がるばかりですね」
 ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は、そんなステラの様子にも慣れたものである。
 いや、慣れては困る。
 ちゃんとツッコミを入れて欲しい。足らんのである。みんなボケ倒すから! ツッコミが!!
 しかし、ルクスはそんなことより、そのうち頬ずりとかするんだろうなぁって思いながらも、記憶をひっくり返したらもう大体のことはやってたなと思い出す。

「予知で垣間見えたあれは……『セラフィム』?『Ⅵ』?」
 ステラには思い当たる点があった。
 クロムキャバリア。
 鋼鉄の巨人が跋扈する戦場、戦乱渦巻く世界で『第五世代』と呼ばれた機体を彼女は見ていた。
 それに関連するのかどうかはわからない。
「それにしても『セラフィム』はいっぱいありますね。まあ、鉄板にも種類はありますし、青がお肉用なら赤はお魚用とかなんでしょうか?」
 ルクスの言葉にステラはツッコまなかった。
 ほらぁ! そういうところぉ! ボケ倒して、それで放置するとかさぁ!
 今のステラにとって大切なのはツッコミではなく『エイル』である。主人の香りを探してくんかくんかするのに忙しいのである。

「ええ、しませんね。あれは関係在るようで関係ないような。でもちょっと関係在るみたいなそんなものでしょう」
「どちらも手に入れておけば安心ですし、ステラさん。あとそんなラー油みたいなこと言わないでください」
 噛み合ってないなぁ会話ぁ!
 だが、二人の方針は一致している。
 どのみちこの空域を抜けなければならないのだ。
「私は人型でいきますから」
 ステラは空を飛び、さらっと『飛べないただの勇者』を『飛空艇艦隊』の甲板上に置いてけぼりにする。

「って、なんで置いていくんです!?」
「ルクス様はそこから支援を。というか、演奏で『拒絶の雲海』をぶっ飛ばしたりできませんか?」
「え、演奏で雲海を散らすんですか?」
「できないのですか?」
「で、できますよ!」
 多分! とルクスは自信なさげであったが、ステラには確信があった。ルクスの演奏は、それはもう旋律という概念をぶっ飛ばすほどの演奏なのである。

 耳栓をステラは密かにしていた。
『飛空艇艦隊』の飛空艇の勇士たちはなになに演奏? って顔をしていたが、ステラは特に何も言わなかった。
 すぐにわかるからだ。
「では、やってみることにしましょう!」
 奏でられるはCanon(カノン)。
 バイオリンの旋律が……いや、旋律じゃないなこれ!? 音波。いやまあ、わかる。音だって。
 けれど、酷い。
 不協和音。
 破壊音波。
「ひ、ひでぇ……!」
「う、わぁ……! 耳が、なんかわんわん言っている……!」

「不協和音じゃないです! 魔法ですから!」
 ルクスの言葉が響く。
 彼女の奏でる音は雲海すら退けるのだ。
 霧散した雲海の先、そこに輝ける星のようにステラは飛ぶ。耳栓をしているおかげで快適である。
 いやしかし、星のように輝くってメイドが出来ることなのだろうか。
 できるのである。
 メイドズ・ホワイト。
 メイドはなんでもできるし、してくれるのである。メイド万歳! メイド万歳!

「ええ、メイドに不可能はありませんので」
 そんなふうにメイドたるステラはたおやかに微笑む。
 けれど、その眼下にある雲海吹き飛ばした空の道を進む飛空艇の甲板上で悶える勇士たちの姿をステラは見なかったことにしたし、なんかルクスが叫んでいたが耳栓していたので聞こえなかった。
 今のステラは空の道を示す星なのだから、眼下のことなど今の所無関係なのである――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
……ふむ……拒絶の雲海にまかれれば後が無い…ものの…
拒絶の雲海も不規則に変形し続けはするが…急速にこちらを包み込むような変化をするような物では無さそうだな…
…それでは…暫くは飛空挺に同乗させて貰って慎重に進みつつ…拒絶の雲海の分布や濃度が変化するときの風向きや湿度…気温、(通常の)雲の流れの変化等を自作のガジェットや飛空挺の計器類を利用して勇士達と共に記録していこう…
…それらを元に【数理導く知性の眼】を発動…拒絶の雲海の動きを完全に予測して雲海図に安全なルートとタイミングを記載……それを共有することで突破を図るとしようか…



 雲海の聖域の一つと言われる『アルカディア・スカイゲート』を征く『飛空艇艦隊』。
 その悠々たる行進は途絶えることはなかった。
 猟兵たちの活躍に寄って、迫る雲海は退けられ空の道を辿る彼らは十全の状態で、この先にあるであろう六大屍人帝国との戦場に辿り着こうとしていた。
「……ふむ……」
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は頷く。
 ここまでは順調だ。
 けれど、このままで『拒絶の雲海』を放出しつづける『アルカディア・オブリビオン』が黙って自分たちをゆかせてくれるだろうかと疑問も抱く。

『拒絶の雲海』とは、この大空の世界ブルーアルカディアの眼下に立ち込める雲海そのもの。
 落ちれば全てが滅びる。
 魔獣であろうと勇士であろうと、浮遊大陸であろうと須らく滅びるのだ。
 だからこそ、恐ろしい。
 そして、『アルカディア・オブリビオン』は座して動かないまでも『拒絶の雲海』を手足のように動かし、自分たちの道行きを阻もうとしている。
 囲まれてしまえば雲海故に逃げ場などない。

「……これまでの動きを見るに、『拒絶の雲海』も不規則に変形し続けはするが……急速に此方を包み込むような変化をするようなものではなさそうだな……」
 メンカルは『飛空艇艦隊』の飛空艇の甲板上から雲海の様子を見やる。
 これまで何度かの危機はあれど猟兵たちの尽力に寄って、これは退けられている。
「……データが必要だ。頼んだよ、ガジェット」
 メンカルの作り出したガジェットが飛ぶ。
 雲海のデータを取りたい。そして、勇士たちにも飛空艇を操縦する際にあるであろうメータや計器などのデータをこちらに回すように伝える。

「確かに雲海の濃度は一定じゃないが、法則性が見いだせないんだよ。腕みたいに伸びてきたと思ったら網みたいに広がることもある」
「……雲海の分布や濃度が変化する時、風向きや気温、湿度……普通の雲は風に流れていくし、気圧に影響を受ける……」
「こっちの方は、影響を受けて入るけど強引に放出されて押し出されているようにも感じるんだよ。ほら、手足を伸ばすのはいいけど、俺達の体みたいに一定まで筋肉が伸びると、筋繊維が無理をして切れるだろ? あれみたいに雲海も途切れる」
「……途切れた後の雲海は、制御を失って性質そのままに漂う……」
 メンカルは一つ頷く。

 彼女は自分の観察眼と勇士たちのもたらした情報を信じる。
 数理導く知性の眼(ラプラス・ガイスト)は輝く。
 全ての情報が出揃えば、真理は導き出される。そこに浪漫という不確定要素はない。あらゆる要素を詳らかにし、そして確定しないものを確定させていく。
「不規則、完全なランダム性、混沌は説明がつかないなんてことはない。普く力よ、測れ、導け。汝は結実、汝は予見。魔女が望むは因果を結ぶ全知の理」
 瞳の先にメンカルの人差し指が添えられる。

 見つめる先にあるのは空の道。
「……他の飛空艇にも情報を共有して。ロスなく伝えられる術なら他の猟兵ももっているだろうから……」
 メンカルは勇士たちに指示を出す。
 完全な不規則などない。
 また逆も然りだ。誰も予想できない不規則さなど完全とは程遠い。ゆらぎはあれど、そこに法則性が見いだせる。

「『アルカディア・オブリビオン』は雲海を放出する。けれど、それは一度に吐き出す量に限界がある。だから、伸ばしきってしまえば濃度が薄くなってちぎれて制御を失う。効果自体は変わらなくても」
「……そう、全速力で道を走る。敵の放出する速度をこちらの飛空艇の速度が上回れば……例え、雲海の腕を伸ばしても、振り切れる。信じて。この飛空艇艦隊の飛空艇の出せる速度なら」
 メンカルの輝く瞳に、『飛空艇艦隊』の勇士たちは光明を見ただろう。
 踏破できぬと思われていた道にも道はあるのだ。

 勇気だけでは足りない。
 また知を持って理を成しても足りない。
 両方を保たなければならず、そして、ここにはそれらが合わさっている。
「……征こう。この先はもう六大屍人帝国の戦場だ……」
 メンカルは知性輝く瞳をもって照らす。
 この道行き暗き世界の未来を。
 人の心にはまだ篝火が燃え盛っている。ならば、何一つ諦める必要はないのだと、高らかに人の性を歌うように『飛空艇艦隊』は全速力で過去の化身放つ『拒絶の雲海』を振り切るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年09月16日


挿絵イラスト