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銀河帝国攻略戦㉕~先制の後手者達

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦

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 猟兵たちの拠点、グリモアベースに一つの声が聞こえる。
「皆さん、次はこっちが破壊工作しますわよっ」
 ベースに響くのは、グリモア猟兵であるフォルティナ・シエロによるものだ。
「現場である世界は、スペースシップワールド。銀河帝国の旗艦『インペリウム』に破壊工作をしてほしいんですの」
 身振り手振りを交えながら、彼女は集まった猟兵たちに言葉を送る。
「予知した未来を説明しますわ。猟兵達の活躍によって、解放軍のスペースシップと『インペリウム』の間で戦闘が開始されますの」
 フォルティナは眉を立て猟兵を見回す。
「銀河帝国攻略戦。この戦いには『解放軍』の活躍が不可欠ですわ」
 彼らの活躍を助けるのはなにか。
「撹乱や陽動、つまり破壊工作ですの。砲でも艦載機でもなんでも、旗艦の内部を破壊して、『解放軍』の援護をして欲しいんですの」
 しかし、と言葉は続く。
「相手は帝国旗艦。内部には『皇帝親衛隊』という精鋭がいますわ。強敵なので、できるだけ戦わずに済ませられると良好ですわね」
「そのため、転移する場所は敵が少なさそうな位置にしますわね。転移した場所に敵がいて、増援呼ばれてそこから『親衛隊』と戦闘……。って感じになるのは避けたいですもの」
 転移後は各自、目的への破壊工作という流れでお願いしますわね? と付け加えながら、しかし念のため、と資料を広げる。
「『皇帝親衛隊』の一人、ファントム・ガンマンについて説明しておきますわね。名前の通り熱線銃での攻撃を得意としてますの」
「早撃ちによる弾幕や、相手の攻撃に対して的確な射撃を寄こして無効化といったガンマンとしての腕のみならず、熱線銃自体の取り扱いにも長けており、熱線の出力を増加させて燃焼といった技も出来ますわ。
 接近勝負に持ち込むか射撃に付き合うかは皆さん次第ですわね」
 猟兵たち一人ひとりの顔を確認しながら、フォルティナは言葉を続ける。
「まあ今回の依頼は破壊工作が主ですの! バレないように潜入、工作、脱出。基本はこんな感じでお願いしますわ。用心してくださいまし」
 全員の顔を見渡すと、フォルティナは眉を立て、口角を上げた。
「まぁ、皆さんならできますの! 私はそう信じていますわ! ――では転移、行きますわよ?」


 猟兵達が転移した先は、十分な広さと高さがあるホールだった。
 上階へ向かう階段やそれを支える柱、鎮座するモニュメント。そういった遮蔽物の影に転移したことを各々が確認すると、それぞれが手捌きやアイコンタクトで目的の場所へ向かい始める。
 物影から出た猟兵、その全てに向け、光線が同時といっていいタイミングで飛来した。
「――!」
 すんでのところで、それぞれが光線に向け回避や防御を行った。
 見る。光線の発生源をだ。
 ホール中央、そこに一人の男がいた。
「――遅かったな、猟兵」
 ホールを見渡すように言った男の右手、そこにあるブラスターが残光を散らしていた。
 グリモア猟兵による転移が読まれていたのだ。
 もはや破壊工作が難しいことを瞬時に理解した猟兵達は、各々持ち場につき、敵と相対していった。


シミレ
 シミレと申します。TW6から初めてマスターをします。
 今OPで4作目です。
 不慣れなところもあると思いますがよろしくお願いいたします。

 これ以上の戦争シナリオ執筆は難しいかもって雑記で言ってましたが、なんとか時間が取れそうなので、書こうと思います。
 そのため、リプレイ執筆の速度は普段よりさらに遅くなるかと思います。ご了承をお願いします。

 今回はスペースシップワールドの帝国旗艦『インペリウム』にある、ホールとかエントランスとか、まぁそんな場所での戦闘です。
 ソリッドでかっちりした印象を受ける銀河帝国なので、ホールには必要最低限の調度品しかないかもしれません。でも皇帝がイケメンなので、デザイナーズマンション系のファニチャーとか鉢植えとかインテリアとかシャンデリアとかそんな感じの物もあるかもしれません。自由ですね。

 敵が使うUC等の詳しくは他の資料で。今回のシナリオの特徴は敵がすでに待ち伏せていることですね。

 一作目、二作目、三作目ともにリプレイの文字数がある程度ありましたが、今回のリプレイは少し少な目にしようかなと思います。御了承をお願いします。
 プレイングやリプレイ等についての詳しいお話は、私の雑記を見ていただければ幸いです。

 皆さんの活発な相談やプレイングを待ってます!!(←毎回これ言ってますが、私からは相談見れないです。ですので、なおのこと好き勝手に相談してください)

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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第1章 ボス戦 『ファントム・ガンマン』

POW   :    ボムファイア
【ブラスター銃の最大出力放射】が命中した対象を燃やす。放たれた【ブラスター銃の熱線の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    クイックドロウ
レベル分の1秒で【熱線銃(ブラスター)】を発射できる。
WIZ   :    ブラストキャンセラー
対象のユーベルコードに対し【ブラスター銃の一斉射撃】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は麻生・大地です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

伊美砂・アクアノート
ーーー不覚。此方が先手を取れるという油断があったか。敵ながら、真に天晴れである……! 遮蔽物に身を隠しつつ、銃撃戦を開始。【見切り2】【援護射撃1】手持ち武器のマシンピストルをフルオートで連射、接近戦を試みる味方の接敵を援護する。 味方がガンマンに接敵したら、あえて身を晒し、敵の注意をこちらに向ける。……来いよ、ガンマン。早撃ち勝負だ。【羅漢銭・須臾打】【だまし討ち5、2回攻撃4、投擲2】 必殺のコイン投げで、正面からの不意打ちを敢行する。…騙して悪いが、ボクは銃を使うよりも、手品めいた小細工の方が得意でね。一撃だけなら……オートマチックピストルよりも、指先でコインを弾いた方が早いんだ。


カナタ・アマガ
内部に入った途端、これってひどくない!?と、とにかく【エレクトロレギオン】で【時間稼ぎ】しながら、安全なとこまでひとまず退避よ。危ないわね!まったく。

 まずは、あいつを倒さなきゃ進めないわね!ブラストキャンセラーは、厄介だけど、いろんなところから一斉に攻撃を仕掛けられたら、対応は無理でしょ?借りに全部撃墜されたとしても、それで味方が攻撃する隙をつくれるなら充分だわ。【援護射撃】
連携・アドリブ歓迎


筒石・トオル
【WIZ】
攻撃系でないUCも相殺されるのかな?
相手は強敵だが一人だ。複数の対象全てに対応出来るとは思えない。
小柄なので調度品を遮蔽物とし、熱線銃で【援護射撃】をしつつ、他の仲間へ対処している間にUCを使用して動きを止める。
そこを仲間に一斉攻撃して貰えば、勝機はあると思うんだ。

攻撃以外でも、敵のクイックドロウは僕も同じ武器を扱う者として、動作から動きを推測できるかも。
【見切り】【第六感】で察知して仲間に警告を発する。怪我や消耗は少ない方がいいもんね。

※アドリブ歓迎。出来れば他の仲間との連携重視でお願いします。



 
           ●
 
 戦闘は光線の射撃で始まった。
 ファントム・ガンマンによるものだ。ホールの中、幾つかの調度品が空気を焦がす焦熱音と共に削れていく。
「ちっ……!」
 アクアノートは足先から滑り込むように物影を移動して行き、光線を回避する
 不覚……!
 脳内を走る思考はその二文字だ。こちらの転移が読まれており、現状は出鼻をくじかれ、碌な抵抗が出来ていない時間だ。
「此方が先手を取れるという油断があったか……!」
 言葉と共に、再度飛来してきた光線を足先から滑り込むように回避していく。
 自分が今いる地点は吹き抜けのホールの二階部分。ファントム・ガンマンを中心とした回廊だ。
 他の猟兵も遮蔽物に釘付けとなってる現状、高所にいる自分が比較的仲間の中では優位だ。
「つまり、反撃開始は自分からやな……!」
 瞬間、片手で抜いたマシンピストルを遮蔽物の陰から突き出し、眼下の中央に連射を叩きこむ。
 弾倉に装填された硬直狙いの三十三発が、一瞬という時間で消費されるが、
「構わん……!」
 突き出したマシンピストルを戻し、弾倉を装填し直す頃には、眼下で一つの動きが生まれている。
 波だ。
 物影から染み出るように生まれた機械達が、波を作り、ファントム・ガンマンへ押し寄せて行く。
 
           ●
 
 カナタは上階を繋ぐ階段、その裏に身を隠していた。
 防壁として比較的厚いここなら、自分にとって適当だからだ。
「裏方専門ってね」
 階段の壁に背を付けた自身の姿は、目元をゴーグルで覆い、展開したホログラムキーボードを連打している。
 ゴーグルによって得る視界は、九十体の戦闘用機械兵器が寄こしてくるカメラ映像だ。それらをキーボードの上を走る高速の手さばきで指示して行く。
「九十機が生み出す弾幕……。防げるものなら防いでみなさいっ!」
 暴風。
 そう表現できる現象がホールで起こった。兵器たちがファントム・ガンマンを包囲し、周囲を回りながら荒れ狂うようにその力を送ったのだ。
 地上と空中。それら全ての位置から天球図のように囲み、鉄と光の荒れ狂う攻撃を浴びせ続ける。
 しかし、気付く。
「じわじわ減ってるわね……!」
 ゴーグルが鉄嵐の内部の視界を寄こしてくる。ファントム・ガンマンは依然存在している。 高速の手さばきが見えた瞬間には、ゴーグルの視界の中、幾つかの視界にノイズが走る。ファントム・ガンマンの射撃によってその数を減らしてるのだ。勢いは止まらない。
 このままじゃジリ貧……!
 損耗覚悟で行くにはこちらに決定力が無い。
 ならばどうするか、
「相手を封じればいいのよね!」
 鉄の嵐の外側、その位置から熱線銃によって援護射撃を送っている少年がいる。
 トオルだ。
 
           ●
 
 トオルは驚愕していた。
 九十機だよ……!?
 カナタによって召喚された機械兵器達が徐々にその数を減らしていってるのだ。
 数を減らしたがゆえに嵐が内部の断続的な視界を寄こしてくるが、ファントム・ガンマンは未だ倒れていない。
 損傷をその身に刻みながらも、遮蔽物を駆使し、熱線銃の連射で戦闘兵器達を撃墜しているのだ。
 さすがは親衛隊といったところかな……!
 内心舌を巻きながら、見る。ファントム・ガンマンではない、カナタだ。
 こちらへ、合図を送っている。
 今しかチャンスは無いね……!
 現状は膠着状態で、全てが撃墜されれば最初の状態に逆戻りだ。しかも初回である今回の攻撃こそ一番の隙を生み出せる。
 これを逃せば勝機は無いと、カナタから来た合図と共に自分は遮蔽物の影から身を出す。
 視界の先、随分と小さくなった嵐に向け、言う。
「――光よ」
 言葉は続く。
 詠唱だ。
「我が願いを叶えたまえ」
 兵器が地面に倒れる音が聞こえた。
 もはや嵐の収束は間近だ。
「聖なる力、邪なる者を」
 途切れがちとなった鉄の流れ、その隙間から、向こう側の存在を見つめ、告げる。
「――封じる力を力をここに!」
 言葉と同時、トオルの眼鏡に光が灯る。
 その直前、見えた。
 鉄の群れの向こう、ファントム・ガンマンがこちらに熱線銃を突きつけている姿をだ。
 相殺を狙う気か……!?
 光による催眠攻撃。こちらのそれを相殺するとなれば狙いは、
 眉間……!
 どちらも必死の攻撃。まさしく相殺狙いの一撃が互いに放たれようとしたその瞬間、
「――ガンマン。来いよ、早撃ち勝負だ」
 直上、その位置から声が聞こえた。
 見上げる。
 空中。その位置で、こちらを見下ろしている人影がいる、
 アクアノートだ。
 
           ●
 
 目立つならこれぐらいやらなくちゃね……!
 空中。徐々に落下して行く風景の中、動きは迅速だ。
 右手……!
 手を振り上げる動きを見せれば、眼下、その位置でファントム・ガンマンが先手の射撃を寄こそうとするが、
「――!?」
 光の明滅が起こる。トールの光による催眠だ。
 身体の支配を奪われたファントム・ガンマンが、その動きを途中で止める。
「……騙して悪いが。ボクは銃を使うよりも、手品めいた小細工の方が得意でね」
 重量を失った右手は振り上げの速度を加速させていく。
 すると、その袖から出てくるものがある。
 コインだ。掌で受け、指で捌く。
「射撃だけなら……オートマチックピストルよりも、指先でコインを弾いた方が早いんだ」
 言葉通りのことを行った。
 指で弾き飛ばされた指弾は空気を切り裂き、重力加速のまま突き抜けて行く。
 行った。
「――!」
 硬直した身体を突き抜ける痛みに、ファントム・ガンマンが苦悶の表情を見せる。
 そこに、
『動けないってことは、座標は決まったようなもんね!』
 いつの間にか包囲していた猫型の小型機体が、そのスピーカーから音声を出力しながら、一斉の砲火を与えた。
「――――!!」
 表情に叫びが加われば、催眠術の硬直が解けた合図だ。
 三人は再度、自分の持ち場へ戻っていく。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ルエリラ・ルエラ
【アドリブ改変・連携歓迎】
射撃戦だね。
そういうの得意だよ。
悪いけど通してもらうね。

誰かしら味方がいるなら『援護射撃』して協力したいとこだけど、味方があまりいないならそのまま突破狙おうかな。実際私一人じゃ難しいとは思うけど、やれるだけやろう。
遮蔽物を利用しながら、【ルエリラの勘】や『第六感・野生の勘』なんかで回避しながら弓で射撃戦するよ。当たらなければどうという事はない。ってどこかで聞いた事あるしね。
使えそうなら、持ち物の『ワイヤーフック』や『私のブーツ』も利用して上の空間も使って攻めていこう。
あ、こういう場所の定番。シャンデリア落としたら案外美味しい事にならないかな?狙ってみる価値あるよね。


三上・チモシー
びっくりしたなあ、もう
まあでも、破壊工作よりはわかりやすいし、自分的にはこっち(戦闘)の方がいいかな、なんて

【地形の利用】で遮蔽物に身を隠しつつ、【見切り】で攻撃をかわしながら接近
ある程度近付けたら、後は勇気を出して一気に距離をつめる
ボムファイアが当たっても【火炎耐性】で耐え、止まらずに急接近
こちとら鉄瓶だからね。直火は慣れっこなんだよ!
【グラップル】【怪力】で敵に掴み掛かり、確実に灰燼拳をおみまいするよ!

※アドリブ、連携歓迎


才堂・紅葉
光線銃のガンマンか。
早抜きで譲る気はありませんが、せめて10m圏内に入らないと勝負になりません。

「スマートにいくためには仕方ないか」
情報収集で確認。忍び足とジャンプで天井の高価なシャンデリアに潜みます。
戦況を見て、シャンデリアに掌を置いて、グラップルと怪力に封印を解いた衝撃で真下に吹き飛ばし。地形を利用してシャンデリアで下敷きを狙います。

もっとも、それで倒せる間抜けな相手でもないでしょう。
本命は一緒に落下しながら距離を詰め、野生の勘と見切りで飛び出し、空中戦での早打ち勝負をいどみます。
いかにブラスター相手でも、10m圏内の勝負で負ける訳にはいきません。

連携やアドリブは歓迎です。



 
           ●
 
 紅葉は疾走していた。
 身を低く屈め、膝を胸に近づけた姿勢でホールの螺旋回廊を上っていく。
 吹き抜けのホールは広く、高い。
 キッツいわね……!
 学園では病弱で通ってる自分を思い出し、苦笑代わりの息が歯から漏れる。
 速度と隠密の両立。そのことを念頭に行けば、今や階下ははるか下だ。
 あと一息……!
 気合いを入れ、再度、行く。
 
           ●
 
 ルエリラは跳ねるようにその身を動かしていた。
 ホール一階。その外周に点在する柱を影にしながら、反時計回りに回っていく。
「おっと危ない」
 敵がこちらへ射撃を寄こしてくるが、こちらはそれ当然のように速度や体捌きで回避し、
「お返し」
 矢を射返す。速射の二発だ。それらは風を切って進むが、熱線銃の射撃で迎撃される。
 光が砕け散る。
 やるね……。
 先ほどからこの繰り返しだ。こちらが周囲を回って敵の攻撃を誘い、それを直感で回避し、射返す。そして迎撃される。
 回避が直観頼りなのが自分でもどうかと思うが、出来るから仕方ない。バク宙を決めながら、
「なら、これはどう」
 言葉と同時、腰に備え付けた射出機からワイヤーフックが飛び出し、上階の壁が穿たれる。
 上階のフックをそのままにワイヤーを巻き取れば、自身が高速でフック側へ運ばれる。高速の機動で行く。
 行った。宙返りを決めながら、ブーツに生えた翼で軌道を調整しながら、空中から矢を射かける。
 それぞれ高度や射角が違う矢が、一斉の勢いでファントム・ガンマンに襲いかかる。
「――!」
 敵が迎撃するために熱線銃を構えたその瞬間、ホール中央へ突っ込んでいく姿が露わになる。
 チモシーだ。
 無手の少年が突き走っていく。
 
           ●
 
 隙が生まれた、とチモシーは悟った。
 現状、敵はルエリラの矢を射かけられ、対応に追われている。
 今までとは違う角度からの射撃に一瞬の迷いが生まれ、その反応がわずかに鈍い。
 つまり、自分が行くなら今だ。
 突撃を万全のものとするため、矢とは別の角度、ファントム・ガンマンの左手側から突撃を敢行する。
 しかし、
「――!」
 光の矢が砕け散った。熱線銃による迎撃が果たされたのだ。
 舞い散る鱗光の中、敵がこちらへ銃口を向けているのが見える。
「流石は親衛隊……!」
 こちらへ飛来する光線をすんでのところで見切り、遮蔽物に飛び込む。
 ルエリラが再度、射かけるが、先ほどより高速で散らされる。
 敵の迎撃精度はもはや完全だ。
 ホール中央。そこで全身を曝け出し、しかし強固である敵を遮蔽物の影から見ながら、思う。
 思う言葉は諦観ではない。
まだかな……!?
 待望だ。
 その時、光が揺れた。
 
           ●
 
 ……?
 ファントム・ガンマンは違和を感じた。
 自分は今、左手側の遮蔽物に隠れた少年と、自分の周囲を跳躍しながら射撃を寄こしてくる少女と相対中だ。
 いまや光の矢への迎撃射撃は完璧であり、左手側の少年が飛び出してきても確実に仕留められる。
 そんな万全の中、しかしだからこそ異変には敏感だ。
 光が……。
 揺れている。否、今も迎撃している光の矢のことではない。
 全てだ。ホール全体の光が揺らぎ、影が生まれては濃くなり、消え、また生まれる。
「――気付いた?」
 左手側から声が聞こえる。少年だ。
「僕たち二人に夢中になってくれてありがとう。準備が整ったよ」
 破壊工作よりは簡単な仕掛けだよねー。と言葉が続く。
「あんまり高く飛ぶとバレるから、ちょっとやり辛い」
 光の矢を絶えず射かけながら、少女も言葉を発する。
「……? まだ気付かないんだ? ――アレ、皇帝の趣味?」
 青髪の少女の視線に合わせ、見上げる。
 あれは……。
 光だ。ホール全体を照らす光源が、はるか上の高さにある。
 光源は揺れ、その照射を左右に振っていた。
 シャンデリア。吊り下げられたその照明器具の上面、その上に、
 何かが……。
 ある。逆光による影でよく窺えない。
 しかし、次の瞬間には別の光源が視界にやってきた。
 光の矢だ。視界の外から飛来した矢がシャンデリアの上部へ回り込み、その影を照らす。
 人だ。
 瞬間、断裂の音が鳴り響いた。
 光が、落ちてくる。
 
           ●
 
 ルエリラの矢で断裂したチェーンの横、紅葉は落下して行く。鎖の破片が頬を掠めた。
 重力加速に従い、一直線に落ちて行く。視界の中、何もかもが上へ流れ去っていく。
 自分の足裏。その位置にあるのはシャンデリアだ。一体となり、共に落ちて行く。
 眼下、煌めく光の間から敵が見える。表情は解らないが、上空を見上げている。
 眼下で二つの動きが生まれた。こちらへ狙いを定める敵と、少年の再突撃だ。
 屈む。自分の右掌をシャンデリアに押し付けて、念じる力は解放の一途だ。
 光る。手の甲だ。青白く光り輝く紋章は、由来も、原理も、不明の力だ。
 言う。八文字のコードが大気を震わせれば、紋章が輝きを強くさせる。
 突く。押し込むようにシャンデリアをだ。突いた。光が弾け、散る。
 
           ●
 
 上空。そこで轟音が鳴り響いた。
 重力加速に更なる重力が加わった威力は、絶大だ。
 急加速を得たシャンデリアが、落下してくる。
「――!?」
 チモシーの耳に敵の声が聞こえる。正気か、と。
 上空。そう言えるような位置から重量が落下している最中だ。
 しかし、
「――構わないよ!」
 行く。勇気を持って、落下地点へと。
 熱線銃が上空ではなく、突進を続けるこちらへに構え直された。
 銃口の集光が、緊急故の最大出力だということを周囲に知らせる。
 しかし構わず行く。光矢による援護射撃は、勇気の後押しだ。
 臆せず、無手のまま銃口の光に正面から行く。
 焦熱音が響き渡った。
 空気を焦がして突き進む光は、少年の頭へ一直線だ。
 当たる。
「―――!?」
 視界の先、その位置で目を見開いた敵がいる。
 向こうからすれば理解が出来ないだろう。
 最大出力を与えたはずなのに平然としているのだ。
 だって自分、鉄瓶だからね……!
 衝撃で飛んだ蓋を片手でキャッチし、頭に被り直す。
 高熱の照射など自分にとって親しいものだ。
 高熱が直撃した眉間を、指で撫で、しかし、それだけだ。
「――じゃあ、次はこっちの番だよね?」
 告げるのと、敵の懐へ飛び込むのは同時だ。
 全身をぶち当てるように右拳を突き込んだ。
「――灰燼拳!!」
 全力のアッパーカットだ。敵が打ち上がる。
 その勢いのまま、上空を見る。
 拳を振り上げた上空、シャンデリアから跳び出す姿が見えた。
 紅葉だ。
 
           ●
 
 狙う。自分の技術が通用する瞬間をだ。
 気付いた。敵もこちらを狙っている。
 打ち上げられた勢いそのままにだ。
 残り十五メートル。否、まだだ。
 残り十メートル。吐息を一つ。
 残り九メートル半。勝負だ。
 形見を引き抜き、構える。
 両者が引き金を絞った。
 ホールに銃声が響く。
 
           ●
 
 ルエリラはそれを高い位置から見ていた。
 シャンデリアの落下。それによって生じた轟音に包まれていたホールが、次第に静けさを取り戻していくのをだ。
 転がる破片が生み出す余韻は重奏だ。しかし、それも直に無くなる。
 見る。
 ホール中央。破損したシャンデリアが積み重なるそこに、人影はない。
 倒れ伏したファントム・ガンマンが、光へとその姿を変えているだけだ。
 紅葉の姿は、無い。
「――後のこと考えてた?」
 ルエリラは床を見ながら、言う。
「いやあ……」
 気まずそうな声は、紅葉だ。
 フックでぶら下がったルエリラに抱えられている姿だ。
 同時、シャンデリアの残骸が崩れる。
 そこから見えるのは、光の矢を円錐状に組み合わせることで出来た庵だ。
「チモシーも大丈夫?」
「ありがとー! でも、自分、鉄瓶だから、あのままでも多分いけたよ!」
「多分じゃ駄目だよ?」
 はぁ……。とため息をつきながら、思う。
 決着だ。
 周囲に聞き耳を立てれば、騒ぎを聞きつけた帝国兵達がこちらへ駆けよって来るのが解る。
 互いに無事を確認すると、三人でその場を後にした。
 当初の破壊工作は果たせなかったが、敵の親衛隊を撃破できたのは十分成果のあることだ。
 帝国への打撃を確かに感じながら、安全な場所を見つけ、インペリウムから転移によって退避した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年02月20日


挿絵イラスト