アルカディア争奪戦⑮〜驟雨を払いて
●屍人帝国砲撃部隊
「お、性懲りもなくまた来たなー?」
「この空域は俺達帝国艦隊がいただいた!」
絶対に通さないぞ、と息巻いて、オブリビオンの操る守護艦隊が、巨大な砲を次々に掲げる。彼方に見える敵船に向けて、ついでに言うなら弾幕代わりの適当な照準も含めて、一斉発射の準備に入った。
この特性の大砲の射程はでたらめな程に長く、阻む物のないこの空では圧倒的な一撃となるだろう。
「は~、一方的に砲撃するの気持ち良い~~」
恐ろしくでかい砲声に耳を塞ぎながら、下っ端のオブリビオン達はその快感に浸っていた。
●吶喊
アルカディアを巡るこの戦いも後半戦が見えてきた頃だろうか、猟兵と|飛空艇艦隊《ガレオンフリート》の合同軍は、立ち塞がる屍人帝国の兵達を次々と蹴散らし、戦況を優勢に進めてきた。
「だからこそ、ここで本格的に押し留めておきたいのだろうな」
拒絶の雲海の合間を縫う道筋の中で、ある一点を指で示す。グリモア猟兵の高峰・勇人(再発性頭痛・f37719)が示したそこ――本来ならば空白地帯であるはずの空域には、新たに島が一つ書き加えられていた。
要衝となるこの空域を封鎖するべく、『天帝騎士団』配下の屍人帝国が、浮遊島ごと大挙して集結しているのだと彼は言う。
「島一つ引っ張ってきただけあると言うべきか……集結した膨大な数の艦隊は、数に物を言わせて超火力、長射程の砲撃でこちらの行く手を阻んでくるだろう」
この守備艦隊を撃滅しなければ空域を制圧することは不可能だが、守備側の利点を最大限に活かした構えを取った彼等には、接近する事すら難しい。
「それでも、尻尾巻いて帰るわけにはいかないからな。|飛空艇艦隊《ガレオンフリート》には極力高速で飛べる船を出してもらえるよう打診しておいた」
腕利きの勇士達の操船技術があれば、最短ルートで敵に肉薄することができるだろう。しかしながら、彼等の力のみで砲撃の雨を無事越えられるかというと……分の悪い賭けになると言わざるを得ない。
「適材適所という言葉もある。互いに協力し、敵艦隊を打ち破る新たな道を拓いてほしい」
砲撃に特化している以上、敵の懐まで切り込み、接近戦に持ち込むことさえできれば、有利に事を運べるはず。オブリビオンの船員も迎撃に出てくるだろうが、勇士とてそれには劣らない。ましてや猟兵の協力もあるのだから、撃破は容易いだろう。
「そのため砲撃を掻い潜るのが最重要課題となるだろうな。砲弾を弾くなりして船を守るか、当たっても逸らせるように守りを固めるか、そもそも当たらぬように手を打つか……やり方は各自に任せる。各々得意な方法で挑んでくれ」
頼んだぞ、と付け加えて、グリモア猟兵は一同の前に道を開いた。
つじ
どうも、つじです。
こちらはアルカディア争奪戦のひとつ、一章構成の戦争シナリオになります。
屍人帝国の大艦隊の砲撃を切り抜け、敵を蹴散らしてください。
●砲撃の雨
砲弾や炸裂弾などが超遠距離から超高威力で飛んできます。通常の飛空艇では一発直撃を喰らうだけでも飛行に影響が出ると思ってください。二発は多分耐えられません。
敵船の近くまで寄ってしまえば、同士討ちを避けるために撃ってこなくなります。
●集団戦『バッドスクワイア・スクワッド』
接近後はガンシップに乗ったオブリビオン達と戦闘になります。砲撃艦も含めて、猟兵が接近してしまえば墜とすのは容易いでしょう。
●プレイングボーナス
|飛空艇艦隊《ガレオンフリート》の勇士達と協力して戦う/敵の超遠距離砲撃をかわし、接近戦に持ち込む。
別の戦争シナリオで出会った勇士と協力したい場合はその旨を書いておいてください。もしかしたら出てくるかもしれません。つじの戦争シナリオに出てきたNPCをご希望の場合は、プレイングに『☆』と一文字書いておいてくだされば大丈夫です。
第1章 集団戦
『バッドスクワイア・スクワッド』
|
POW : 「ターゲットローック!」「いっせいはっしゃー!」
【照準】を向けた対象に、【戦闘飛空艇からのミサイル一斉発射】でダメージを与える。命中率が高い。
SPD : 「囲め囲めー!」「追えー!」「落とせ落とせー!」
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【機銃斉射】で包囲攻撃する。
WIZ : 「弱い者イジメはたまんねーぜ!」「逃がすなー!」
敵より【自分たちの数が多い】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
イラスト:koharia
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
国栖ヶ谷・鈴鹿
◎アドリブ連携OKです
|阿穹羅《キャバリア》、出撃するよ!ヨナはサポートお願い!
接近するなら、ユーベルコヲド、叢雲展開!
周囲に金属粒子を撒いて砲弾の防楯に、ダメージには修理にして使うよ!
ヨナはダミーバルーン(残像)で相手を撹乱して!出し惜しみなくいっぱい撒いておいて!中には目眩しの煙幕が出てくるようにしてあるからね!
接近するまで、結界術とオーラバリアの二面展開で防ぎつつ接近、射程内に着いたらレーザー弾幕と制圧射撃、砲撃で一気に応戦して接近を援護しよう!
阿穹羅もぼくも遠くからちまちま撃たれて少し鬱憤が溜まってるんだ。
砲台はみんな破壊させてもらうよ!
●空に線を引く
「阿穹羅、出撃するよ!ヨナはサポートお願い!」
降り来る砲弾の雨へと向けて、クジラが空へと泳ぎ出す。桜色に染め上げられたスカイクルーザーと共に、国栖ヶ谷・鈴鹿(命短し恋せよ|乙女《ハイカラさん》・f23254)は向かう先の空を見上げた。雲霞の如く居並ぶ帝国艦隊から、終わりなき砲撃が続く。この先へ続く道を行くためには、砲火と共に流れる白煙と、一瞬だけ見える砲弾の黒が入り混じるそこを、どうにかして駆け抜ける必要があるだろう。
「ユーベルコヲド、叢雲展開!」
それならば、雨を凌げる傘が要る。キャバリアに乗った彼女は、砲弾対策として輝く金属粒子を展開する。微かに陽光を反射し、輝くそれは、彼女の用意した最新鋭のナノマシンユニットである。広く散布されたそれは、領域に踏み込んだ砲弾を弾き、蝕むことで行く手を阻む。これならば、金属面の薄い炸裂弾ならば耐え切れず着弾前に爆破できるだろう。
「ヨナはダミーバルーンで相手を撹乱して! 出し惜しみは要らないよ!」
キャバリアと船を模した、白銀と桜色のバルーンを撒き散らしながら、鈴鹿は速度を緩めることなくそこへと突入していった。
蒼穹に二色のバルーンと、銀色の粒子が鮮やかな線を引く。近距離ならば船と風船を見間違えることなどそうそうないが、超遠距離での射撃ならば、一瞬で見分けなど付きようもない。乱れた照準と金属粒子の楯の影響で、砲弾は自然と鈴鹿から逸れていく。代わりに貫かれたバルーンが一瞬にして弾け飛ぶが、その中に仕込まれていた煙幕をその場に広げ、さらに敵の照準を難しくしていく。
彼女のところから窺い知れることではないが、艦隊の一部の砲兵達は、度重なる目眩しに惑わされ、狙いを定められなくなっている。しかしながら、その辺りをあんまり気にしないで弾幕を張っている者も居るようで。
「……ッ!?」
数撃てば当たるとでも言うべきか、砲弾の一つが鈴鹿の張った結界に衝突する。勢いを減じられながらも壁を貫いたそれは、キャバリアの装甲の一部を一瞬で削り取っていった。
「これくらいは大丈夫! 行くよ!」
散布されたナノマシンは修復にだって使えるのだから。怯むことなく進んだ彼女は、ついに砲弾の乱れ飛ぶ空域から、敵艦の目前まで迫っていた。
「遠路はるばるご苦労さん!」
「囲んでボコってやるぜー!」
オブリビオンの駆るガンシップが迎撃のために発艦、鈴鹿を取り囲むように迫るが。
「丁度良い、阿穹羅もぼくも、遠くからちまちま撃たれて少し鬱憤が溜まってるんだ」
ここまでの道を乗り越えてきた彼女を、それで阻めるはずもない。機体の左右に据え付けられた砲塔が、重い音色と共に敵へと向いた。
「砲台はみんな破壊させてもらうよ!」
「あーーーーっ!?」
発射されたレーザーの光は敵を寄せ付けず、ガンシップを、そしてその先の砲撃艦を次々と貫いていった。
大成功
🔵🔵🔵
メーア・トロプフェン
【きつねこ】
全力の砲撃で大歓迎って感じ?
ここ落とされたらそれだけ困るってところかな!
でも、これじゃあ真っ直ぐ普通に進むとあっという間にハチの巣だよねえ。
これで何とか接近するにはどうする?
とりあえず視認性を下げるのは鉄板だよね!
まずはUC【シルフィード・クローク】で見つかりにくいようにしておこうかな!
竜巻のおかげで砲撃の威力もちょっとは軽減できるかもしれないね!
それにしてもあの飛空艇、レーダーとか付いてるのかな?
わかんないけど、とりあえずジャミングで妨害しとこう。
上手く接近出来たらエレクトロニック・ライフルで撃墜を狙っちゃえ!
多分全部は撃ち落とせないから打ち漏らした分は任せるよ!
武栖・陽音
【きつねこ】
大規模な戦闘は初めてだが、メーアやフィルートがいるので心強い。
戦場に向かう際、接近戦に備えて携帯食の干し肉を食べていると、勇士の方々に怪訝な顔をされたが、それがきっかけとなって自身の能力や船の性能などについて情報共有ができた。
船の操縦の事は詳しくないが、操船技術が高いことは船体の安定感からも理解できた。
戦場に入り、的確なルートで敵艦隊に近づいていく飛空艇の移動先を把握し、船に向かってくる必要最小限の敵の砲撃だけをUC【フォックスファイア】で迎撃していく。
このまま接近することができれば、あとは一気に制圧するだけだ。
フィルート・オフハート
【きつねこ】
「ちょっと久しぶりの戦いだけど、まあ何とかなるさ」
たまに一緒になるメーアに加えて、今日は武栖もいる
戦いにおいては人数は多いに越したことはない
「さてと、ボクは壁でも担当するかな」
船体を隠したとしても、弾幕をはられては全てを避けられる訳はない
それならば第二の策として壁というのは、無難な選択だろう
どうしても抜けてしまったぶんは、最終的に武栖やメーアが打ち落としてくれるはずだ
魔創剣のデバイスを持ち、巨大な刀身を形成し、UC次元斬で向かってくる砲撃に合わせて壁を作るように空を斬り、道を開くとしよう
上手く肉薄出来れば、あとは乗り込んで接近戦で撃破していくだけだ
●チームワーク
「こんなにも大規模な戦闘は初めてだわ」
敵艦隊の立ち塞がる空域を見上げて、武栖・陽音(妖狐の戦巫女・f36989)が呟く。視界に収まり切らない敵の数と、そこから放たれる無数の砲弾、ある意味戦争特有の光景ではあるだろう。
「ボクもちょっと久しぶりの戦いになるけど、まあ何とかなるさ」
勇気づけるようにそう言って、フィルート・オフハート(理を識る旅猫・f36752)が彼女に並ぶ。何しろ敵も多いが味方も多い。頭数もさることながら、特に今回は頼れる仲間が一緒なのだから。それを肯定するように、メーア・トロプフェン(バーチャルキャラクターのライブストリーマー・f36529)は早速敵の様子を探り始めた。驟雨の如く降り注ぐは、まるで来るもの全員を拒む絶対の壁のように見えるが。
「全力の砲撃で大歓迎って感じ? ここ落とされたらそれだけ困るってところかな!」
その抵抗はつまり、この空域を奪取することの重要性に繋がるだろう。とはいえ真っ直ぐ普通に進めば、あっという間にハチの巣だ。この雨を乗り越え、接近するためには、当然何かしら手を打つ必要がある。
「とりあえず視認性を下げるのは鉄板だよね!」
敵はかなり遠距離から撃ってきているようだが、当然接近する飛空艇という目標を定めているはずだ。砲撃手に捕捉されなければ、それだけで砲弾に晒される脅威は大きく減らすことが出来るはず。
メーアのそれに頷いて、フィルートがもう一つ、と付け加える。
「第二の策としては、壁かな。そっちはボクが担当できるよ」
狙撃を避けることは出来ても、弾幕を張られては当たってしまう可能性は消しきれない。もしもの時のそれを防ぐ、もしくは軽減する手段が必要となるだろう。
「なるほど……」
するすると出てくる的を射た対策に、陽音が頷く。知己と同行できるのは心強いと思っていたが、これは頼もしい。各々の可能なこと、そしてやるべきことを確認し、彼女等三人を乗せた飛空艇は戦場へ向けて滑り出した。
「それじゃいくよー!」
進軍する他の船と、爆発する炸裂弾の煙に紛れて、メーアはシルフィード・クロークを発動する。ユーベルコードによって引き起こされた竜巻は、流れる爆煙やたなびく雲を巻き込んで、進む船体を覆い隠す。ごうごうと音を立てて風が渦を巻く中で、フィルートは柄のみの剣を携え、迎撃の構えに入った。降り来る砲弾の雨がまばらな場所を抜けていくように、|飛空艇艦隊《ガレオンフリート》の勇士が操る船は進んでいく。
「……アンタは何をやってるんだ?」
最後に残った陽音の様子に、勇士の一人が怪訝な顔をする。命懸けの飛行に挑む飛空艇の中で、干し肉を食べているように見えるが。
「ええ、戦う前に腹ごしらえを、ね」
実際見ての通りの結果だったが、フードファイターとしての一面を持つ彼女としては、準備を万全にするために必要なことである。
「一応、この船の性能やクセを把握しようとはしてるのよ?」
「ああ、そうか。アンタの出番はここを切り抜けてからだもんな」
敵への接近を成せば、敵の護衛との戦闘になるだろう。それを踏まえてのことか、と納得はされたようだ。
「おっと――今のは危なかったね!」
会話ついでについでに情報交換を成している合間に、飛んできた砲弾の一つが船を掠める。竜巻の風が良い感じに作用し、行く手を逸らしてくれたようだが。
「次あたり危ないかも!」
「ああ、ここまで来れたら十分だよ」
メーアの声にフィルートが応じて、剣に魔力を流し込む。柄から生じた半透明の刃を振り上げ、彼女は船首に立ってそれを振り下ろした。
「あとは、ボクが道を作るからね」
斬撃が次元を斬り裂いて、竜巻をも両断する次元の断層が空に描かれる。超高威力の砲弾もそれを超えることは出来ず、生み出された『道』を、飛空艇は逸れぬように、速度を落とさぬように、確かな操縦技術に支えられて残りの道を駆け抜ける。それでもなお命中しそうな砲弾については陽音の狐火が迎撃し、一行を乗せた船は無事敵の砲撃区域を通過した。
「おいおい抜けてきちゃったじゃん!」
「迎撃だー! 囲め囲めー!」
巻き添えを恐れて砲撃がこちらを狙うことはなくなったが、代わりにオブリビオンの駆る護衛のガンシップが大挙してこちらに迫る。だがそれに対しては、メーアの銃が火を吹いた。
「さあ、ここからはどんどん撃墜を狙うよ!」
「ええ、一気に制圧していくわね」
エレクトロニック・ライフルから放たれた電撃が敵の小型船を射抜き、分かれた狐火が接近するガンシップの乗り手を脅かす。統制の取れた彼女等の動きに、オブリビオン達が接近戦で敵うはずもない。
「あとは乗り込んで撃破していくだけだね」
剣を手にしたフィルートが敵の砲撃艦へと降り立ち、なぎなたを携えた陽音も接舷したそこへ続く。混乱の中で迫る敵を蹴散らして、彼女等は順調に敵船を制圧していった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リダン・ムグルエギ
☆
ふっふっふ、量作るのに徹夜しちゃったわ
今回は砲撃手さんをはじめ、スタッフ全員の衣装を準備してきたの
お姫様風、バックダンサー風、王子様風、恥ずかしい人用の黒子…
ふふっ、どうかしら?
前もステキだったけれどより映える様になったわね
(撮りつつ
無論、伊達と酔狂だけでこの準備をしたわけじゃないわ
これらの衣装には特性の薬品を仕込んであるから
着たらしばらくの間皆の反応速度が跳ね上がるの
この間に一気に敵の弾幕を突破しちゃいましょ
船の限界ギリギリの速度を出せば、相手のキルゾーンを突っ切るくらい余裕でしょう、ディオ?
あっ、待って
スピード速すぎ
あっやばっ
あっ
あっ
(圧倒的速度の飛空挺の無茶な挙動の恐怖で削れていく寿命
●劇団飛空艇
何か今日ふらふらしてない? 二日酔い?
|飛空艇艦隊《ガレオンフリート》の勇士達にそう問われて、リダン・ムグルエギ(宇宙山羊のデザイナー・f03694)は怪しげな含み笑いを返した。
「ふっふっふ、量作るのに徹夜しちゃったわ……」
そう言って彼女が示したのは、ずらりと衣装のかけられたハンガーラックだ。そこには、先日ディオメディアの着たお姫様風の衣装はもちろん、バックダンサー風、王子様風といった種類を取り揃え、船員全員に生き渡る数が用意されていた。
「えっ俺らも着るの……?」
「なんで……?」
「こういうのが恥ずかしい人には黒子衣装も用意しておいたわよ」
抜かりがない。着ないという選択肢を事前に潰され、ついでに「私だけだと恥ずかしいから全員着ろ」という船長のお達しで、この飛空艇の乗員は皆やけに派手なキラキラした衣装に身を包むことになった。
「ふふっ、どうかしら?」
「どうもこうも……サイズはぴったりだけど……」
「芸人になった気分だわ」
半ば呆然としている彼等の感想を聞き流し、リダンは早速煌びやかになった飛空艇をカメラに収め始める。
「前もステキだったけれど、より映える様になったわね」
満足気に頷く彼女を乗せて、飛空艇はようやく戦いの空へと漕ぎ出した。
向かう先は帝国艦隊が展開するキルゾーン。無数の砲台から放たれる弾丸の雨が降り注ぐそこへ、決死の覚悟で飛空艇が飛び込んでいく。いかな勇士の船を言えど、そこに踏み込むことは死を意味するはずだが。
「ふふ……伊達と酔狂だけでこの準備をしたわけじゃないわ」
リダンの不敵な笑みを裏付けるように、彼女を乗せた船は絶妙な軌道で弾幕の中を滑り出す。
「なにこれ、どうなってんの……?」
一番派手な衣装の勇士が呟く。超遠距離から放たれる無数の砲弾、それら一つ一つの軌道が目に見え、どこを飛べば良いかが反射的に浮かんでくる。それはどうやら、他の船員達も同じようで。
「その衣装には特性の薬品を仕込んであるの。一時的なものだけど、皆の反応速度が跳ね上がっているはずよ」
まじで? それ後遺症とかない? そんな疑問が飛ぶがユーベルコード的に彼女等勇士達にデメリットは発生しない。というわけで。
「この間に一気に敵の弾幕を突破しちゃいましょ。今のアナタならそれくらい余裕でしょう、ディオ?」
「ハッ、良いじゃない! この船の実力、見せてやるわ!!」
やはりこの勇士は煽りに弱い。自らではなく周囲の力を高めるというリダンの策は的中し、ディオメディアの号令に従って、飛空艇は衣装の輝きを振りまきながら進んでいく。時に風を捕まえた鳥のように、そして時には空を裂く稲妻のように。あ、待ってその軌道お客を乗せながらやってもいいやつ?
「ね、スピード速すぎない?」
「なに? もっとスピード上げろって?」
「えっ違、あっ、あーーーっ!?」
人外の速度を発揮する飛空艇は、唯一強化の効いてないリダンの悲鳴を乗せて、バレルロールまで決めて砲撃地帯を突っ切っていった。
大成功
🔵🔵🔵
矢来・夕立
☆
●|応援《恫喝》
神経しt…繊細な方らしいので、脅しつk…まめな警告が有効なんじゃないでしょうか。
滅多なことでは死にません。死ぬとしてもアレなら一瞬で済みます。良かったですね。
攻勢に転じましょう。【紙技・冬幸守】。
見えてるヤツ全員に蝙蝠を嗾けます。
トドメを刺す気はなくてですね。あちらの攻め手が緩めばそれで構いません。
ふたつイイコトがあります。
まず単純に、避けるべき弾が減る。
それから、敵陣を混乱させられる。敵の醜態はよいものです。こちらに精神的な余裕を齎す。
戦場はウソをつきません。オレが何か言うより余程安心できるでしょうし、何を言わずとも進んでくれるでしょう。
前へ。
●鼓舞の才能
|飛空艇艦隊《ガレオンフリート》の一人の協力を取り付けて、矢来・夕立(|影《カゲ》・f14904)が帝国艦隊の待つ空へと上がる。いつぞやと同じ高速艇を操るのは、一度互いに命を預け、共に戦った勇士だ。
「さあ、スピード上げていきましょう」
そうして夕立の示した先には、艦隊から発射される弾幕、即死級の威力の砲弾が雨あられと降り注いでいた。
「でもこれ……当たったら死にますよね?」
「そういう見方もあります」
なるほど、彼は繊細な感性の持ち主らしい。そう頷いた夕立は、彼をやる気にさせる言葉を選ぶ。
「ですが、それも『当たったら』という話です。滅多なことでは死にませんよ」
さすがにこれは何の裏付けもないか。それに、こういうタイプに有効なのは、気休めではなく恫喝――もとい緊張感を呼び起こす適切な警告だろう。
「死ぬとしてもアレなら一瞬で済みます。良かったですね」
「えっ……もしかしてこのヒト性格悪い……?」
失礼な。こんなに気を遣って生存本能を煽ってあげているのに。
とはいえさすがにこれだけでは心許ない、舵を握る彼がしくじればこっちも巻き添えを喰らうわけだし、もう一つ手を打っておくべきだろう。
「こちらからも攻勢をかけます」
砲弾の雨の切れ間を見据え、夕立がその目を細める。少々遠いが敵の砲撃手に船員、とにかく視認できる者を片っ端から視界に捉えて、式を解き放った。
『紙技・冬幸守』、蝙蝠の形に折られた式が生じて、標的へ一斉に襲い掛かる。厳密な操作ができないため、確実な戦果は見込めないが、脅してしばらく気を逸らす程度はできるだろう。
この一手で成せることはその程度。しかし戦場は時に雄弁で、命の危機に瀕した者ほどそれを敏感に感じ取る。
夕立の見立て通り、この神経質な勇士もそういうタイプだったようで。
狙いを付けられず、発射にも取れかかれない者が出たことで、砲弾の雨は確実に鈍り、操舵手をやられた艦は隊列を崩す。未だ遠く、手が届かない場所での出来事だが、目指す敵が艦同士でぶつかりあうなど醜態を晒すのを見て取り、彼は緊張を笑みと共に吐き出した。
「ははッ、ザマァないな。これなら俺でもいけそうですよ」
こいつもしかして性格悪いな?
やる気を取り戻した彼の様子にそんなことを考えつつ、夕立は急速に近づく敵艦隊、そして護衛のガンシップを相手取るべく身構える。緩んだ雨脚の中を飛空艇が突き進み、掠める砲弾に僅かな悲鳴を交えながら、彼等は敵の眼前へと至った。
「こら、こっち来るんじゃない!」
「追っ払えー!」
「そっちから来てくれるとは、親切ですね」
明らかに練度の足りていないオブリビオンの群れへと飛び込んで、渡り歩いていくように、夕立は敵を仕留めていった。
大成功
🔵🔵🔵
菱川・彌三八
俺を中年扱いしゃがる生意気な若造に派手な喧嘩を見せてやれねェなァ残念だが、|此れ《画》が俺の真の道だってンだから仕方がねェ
まァ、見てな
筆…否、箒…
いや、布も良いな
一先ずいっち後ろに居るから、船にゃ好きに動いてもらう
速さにゃ自信があるんだろ
正面から弾幕が見えたら、横切る様に舵を切りな
したが如何なるって?
はためく布にたっぷり吸わせた墨が、宙に"一"と描く
あとァ世にも珍しい、空を飲み込む大津波の出来上がり
其の侭砲撃を飲み込んじまいな
奴らが波に気を取られてる隙に一気に近付け
案ずるな、箒を筆代わりにすりゃ多少の弾くれえ屁でもねェ
近付いたら飛び移り、後は得意の大暴れ
素でも喧嘩じゃ負けやしめえよ
☆
●空薙ぐ大浪
見上げたそこには敵の群れ。蒼穹を塞ぐ帝国艦隊の大軍勢が、猟兵達を通すまいと立ち塞がっていた。雲海の合間の空を切り取ったようなその光景、さらに砲塔から吐き出された黒鉄と鉛の色が空を裂く。
「なあオッサン、あれはさすがに無理じゃねえ?」
「あァ? 今更怖気づいたんかよ?」
菱川・彌三八(彌栄・f12195)がそう返すと、年若い勇士は悔しそうな顔で言葉を濁した。以前共に戦ったことで、操縦技術が確かなのはわかっているが、どうも若干こちらを舐めているのか、態度が悪い。どうせなら派手な喧嘩を見せれば覆してやれそうだが――どうも今回は筆仕事になりそうだ。
「とりあえず好きに飛べよ、速さにゃ自信があるんだろ」
「多少撹乱はできるだろうが、弾幕相手はちょっとなあ……」
渋る若者をわかったわかったとあしらって、彌三八は船に積まれていた箒を手に取る。まあ、これも悪くないかと吟味しながら。
「正面から弾幕が見えたら呼びな。そんで横切る様に舵を切れ」
「それで何とかなるのかよ」
「まァ、見てな」
お、これは帆布の余りか? などと船尾に回りつつ、彼はそう請け負って見せた。
布に先へとたっぷり墨を吸わせ、畳まれたそれの端を持つ。程なく飛空艇は弾幕の前へと至り、勇士から彌三八へと声がかかった。
「頼んだぜ、オッサン!」
「応よ」
船が高速旋回するのに合わせて、彌三八は上へと布を広げる。風を纏い、船尾に伸びて、空に大きく横一文字が描かれた。
喧嘩も良いが、|此れ《画》こそが彼にとっての本道。はためく布の絵筆で以て、描いたそれは『波濤』となる。黒々とした、水平線を押し上げるような津波となって、それは彌三八と敵艦隊の合間の空を呑み込んでいく。分厚い水の壁は砲弾でも貫くことは能わず、浪の行き過ぎたそこには、まっさらな空が広がることになった。
「はぁ……すっげえな」
「今の内だろ、見惚れてねェで一気に近づけ」
遮るもののなくなった空を、弾かれたように飛び出した高速艇が進んでいく。砲手が呆気にとられていたのか一瞬止んだ砲撃の合間に、ぐんとその間合いを詰めて、ついに船は砲撃の領域を突破した。
「近づかれちゃったじゃん!」
「ミサイルで撃ち落としてやれー!」
護衛のガンシップが慌ただしく飛び出して、飛空艇を狙ってくるが。
「そのまま飛びな、こんなもん屁でもねェよ」
今度は箒で空を突いて、彌三八は飛空艇の軌道に合わせ、うねる荒波を描き出す。先程までの弾幕には及ばぬ散発的なそれを押し流して、無防備を晒した敵に向かって。
「よーし、こっからは喧嘩だな!」
拳を固めた彌三八が飛び込んでいった。
大成功
🔵🔵🔵
メアリー・ベスレム
☆
さてさてどうしたものかしら
空を飛べないアリスのメアリ
避けたり耐えたりは得意だけれど
船を守るには向いていない
となると近付くまでは彼らに頑張って貰うしかないのだけれど……
流石の勇士サマ達も自信がない?
そうわざとらしく【挑発】してみせる
ふぅん……だったら
上手くいったらメアリのお尻を触らせてあげる
みんなずーっと見てたでしょう? 気付いてるんだから!
そう【誘惑】しながら【誘う獲物】を発動する
いつもは敵に欲望生やして復讐するために使っているけれど
こうやってスケベ心を刺激して戦闘能力を増加させてやれば
砲撃を掻い潜る事だってできるハズ!
一転、目の色を変えてやる気を出した勇士たち……これ触るだけで済むかしら?
そうして上手く敵に肉迫できたなら
【ジャンプ】【軽業】で跳び込んで
飛び石のように【踏みつけ】て
血滴子投げて絡め獲ったり首を刈る
安全な場所から一方的に嬲り殺せる
そう思っていた相手から復讐される気分はどうかしら!
……この後、散々振り回してるお仕置きに
お尻を思いっきり叩かれたりもしたけれど
それはまた別のお話
●全速力
帝国艦隊の待ち受ける戦場、でたらめな数の砲弾が飛び交うその空域を前にして、メアリー・ベスレム(WONDERLAND L/REAPER・f24749)は「どうしたものか」と頭を悩ませていた。敵は遥か遠く彼方、超遠距離な上に、こちらを見ないで雑に弾幕を形成している者も居る。この状況では得意の強襲も誘い受けも効果が薄い上、自分だけでなく飛空艇を守り切るとなると専門外も良いところだ。
「ということで、あなた達が頼りなわけだけど……」
そう言って、ちらりと『勇士達』に目を遣る。そこに居るのは勿論、先日戦いを共にした者達である。
「いやあれは死ぬだろ」
「もう帰って一杯やろうぜ」
さすがは酒場で飲んだくれていただけあると言うべきか、荒くれた見た目の割に見切りが早い。
「そう、流石の勇士サマも自信がないのね」
「見ればわかんだろ。腕試しというより運試しだぜこれは」
くすぶっていたところは先程のような煽りで何とかなったが、現物を前にされると効果が薄いか。尻を蹴飛ばしてもダメとなれば、仕方がない。後は目の前にニンジンをぶら下げるしかないだろう。
「……だったら、そうね。上手くいったらメアリのお尻を触らせてあげる」
「は??」
とぼけなくてもいいのよ? とメアリーは笑う。相手を誘い、挑発し、欲を持たせて操るのは彼女の得意とするところ。敵や捕食者に対して発揮されることが多い能力だが、こうして味方にエサを与える形でも使えるだろう。
「みんなずーっと見てたでしょう? 気付いてるんだから!」
そもそも、ここに居るのは安全地帯の酒場からメアリーの尻を追いかけてきた連中である。そんなもの無視できるはずもない。
「チッ……仕方ねえ。言ったことは守れよ」
「運試しなら上手くいく目もあるか……」
彼女のユーベルコードに煽られ、欲望を漲らせた彼等は、なんだか妙なオーラを纏いながら戦場への船出を選んだ。
飛空艇が軋むほどに加速して、限界に近い速度でその空域へと飛び込んでいく。危険な領域に居る時間を極力短くするための措置だが、当然制御の難易度は上がり、危険な砲弾を見極め躱すという行為もほぼほぼ勘頼りになってしまう。それでもメアリーの誘惑で戦闘力を向上させられた彼等は、その状況に何とか適応して見せた。
身を屈めていろという指示通り、凄まじい風圧に混じって頭上を砲弾の影が過っていく。
左舷に被弾、艦橋が半壊、などなど慌ただしく報告が飛び交う中、メアリーを乗せた飛空艇は嵐の海を超えるように空を行く。
しかし揃いもそろって、船員の目の色が違う。一歩間違えば命を落とすという状況が神経を昂らせているのもあるだろうが、やはり用意されたニンジンのおかげだろう。だがこうなってくると、「触るだけで済むのか」と言う別の心配が持ち上がってくるが。
「もう少しだ! 最後まで気を抜くんじゃねえぞ!」
「さっさと突破して、あの尻を思い切り引っ叩いてやるからな!!」
あれ? 何か思ってたのと違う。
ここまで散々振り回してきたせいだろうか、復讐に近いモチベーションで、勇士達は砲弾の雨の中を突破した。
「わー、一隻抜けてきたぞ!」
「迎撃しろー、とどめをさせー!」
砲弾がいくらか掠めて損傷した飛空艇に向けて、オブリビオンの駆るガンシップが緊急発進、取り囲むべく接近してくる。しかし、遠距離からの砲撃が終わればこちらのもの。既にそこは彼女にとっても間合いの中だ。
「ようやく届くところまできてくれたわね」
軽やかに跳躍し、宙を舞ったメアリーは、迫るガンシップに乗ったオブリビオン頭を踏みつけ、さらに上へと跳び上がる。
「何やってんだ、追いかけろー!」
などと言っていた一人の首に、彼女の放った鎖付きの輪――血滴子が嵌った。
首が思い切り引っ張られて、潰れた蛙のような声が出る。
「安全な場所から一方的に嬲り殺せる……そう思っていた相手から復讐される気分はどうかしら!」
絶望的、という答えを返すことは、喉を絞められたオブリビオンにはできなかった。代わりに、輪の内側に飛び出した刃が赤い花を吐き出させる。そして制御を失ったガンシップを蹴り付けて、次なる敵へと跳ぶメアリを、勇士達の飛空艇が復讐の砲撃を繰り返しながら追っていった。
大成功
🔵🔵🔵
シキ・ジルモント
☆
先は助かった
もう一つ仕事が出来た、また運び屋の手を貸して貰いたい
交戦開始直後は、砲撃が飛空艇に当たらないよう撃ち落とす
宇宙バイクを遠隔操作、装着したバイクブラスターを迫る砲弾に向けて射出する
飛空艇を守れたとしてもこのままでは攻撃が届かない
隙をついて一気に加速・弾幕を回避しての接近を勇士へ提案
少し戦えば敵の戦法や攻撃時の癖も見えてくる
ユーベルコードによって膠着状態の打開を試みる
この場での最適な行動は、飛空艇の速度を利用しての砲撃の回避だと判断
砲撃の撃ち出し方や発射間隔から弾幕の切れ目を探り隙とする、砲撃の切れ目や進行ルートは同行する勇士にも教える
情報さえ渡せば彼の技術で飛空艇を駆って切り抜けてくれる筈だ
先の戦闘で確信した、彼の腕は信頼出来る
接近後の反撃はこちらも砲撃を返す
砲台なら、ここにある
バイクをその場に固定しバイクブラスターの出力を上げ、高出力のレーザー砲撃で敵を薙ぎ払う
飛ぶ必要が無い今なら全出力をブラスターに回せる
ここまで運んでくれた勇士に報いる戦果を挙げる為、接近後も手を抜かない
●嵐を超える
帝国艦隊の布陣した船上からは、絶え間ない砲声と、致命的な砲弾の風切り音が響いている。こちらの船を一隻たりとも通さないと言わんばかりのでたらめな弾幕は、その意図通り勇士達の気勢を削ぐのに成功していた。命を惜しまぬ気概はあれども、無策での突入は自殺に等しい。あとに続くもののない無駄死には、さすがに皆避けたいだろう。
そんな中、一度戦場を共にした勇士を見つけて、シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)が声を掛ける。
「もう一つ仕事が出来たんだが、頼めるか?」
「だと思ったよ……」
苦笑交じりに答えた赤いゴーグルの運び屋は、彼方に見える帝国艦隊を見上げた。
「だがなぁ、今回ばっかりは運びきれるかわからんぜ?」
無事は保証しない、ということらしいが、それは同時に「引き受けはする」と言っているようなもの。一度背中を預けたことによる信頼感か、とにかくそれに応えるべく、シキは対策を練って戦いに挑んだ。
「危険な砲弾はこちらで撃ち落とす。最初は回避に専念してくれ」
飛空艇を操る運び屋へとそう告げて、シキは宇宙バイクを遠隔操作で浮き上がらせる。装着したバイクブラスターの火力を以てすれば、炸裂弾は事前に落とし、砲弾を事前に逸らすことも可能なはず。素早く照準を付けて飛空艇を守りつつ、シキはこちらを狙う敵の出方を窺っていた。
今のところ無傷では済んでいるが、こちらにも決め手はない。膠着状態とも言えるが、こちらが一手しくじるだけで終わるという綱渡りの状況でもある。
「こんなもん、いつまでもは続かんぞ」
「ああ、だが癖のようなものは見えてきた」
運び屋の声に、目を細めてシキが返す。攻撃に身を晒しつつ、じっくりと観察に徹したおかげで、敵の砲撃のリズムは読み解けていた。こちらをしっかり狙って撃ってくる者と、弾幕を形成する目的なのか、装填したら即撃ってくる者、それらの発射間隔を見切って、シキは進むべきルートを定める。
「つまり、弾幕の切れ目を狙い、高速飛行で敵の照準を乱してやれば良い」
「簡単に言ってくれるなァ!?」
それでも嵐の中に居る船乗りにとって、これは方角を定める星のように値千金な情報のはず。シキの見切ったそれを共有すれば、あとはそれをなぞれるかどうか、腕の問題だ。そして腕前に関しては、先の戦闘でシキは確信を持っている。
「できるだろう?」
「ああ、ああ。やってやるとも」
自暴自棄に見えなくもない笑みを浮かべて、運び屋はシキの言葉に乗る。船首を敵艦隊へと向けた高速艇は、不規則な軌道を描きながら砲撃の下へと飛び込んでいった。
極力速度を落とさぬまま、嵐に翻弄される木の葉のように船は進む。しかしそこには乗員の明確な意思があった。狙い来る砲弾を躱して、弾幕の降るタイミングを察知してやり過ごす。風と金属の奏でる轟音の中を突き進み、船はやがて嵐の波濤から凪の海へ。十分に接近したこの場所には、同士討ちを避けるため敵も砲弾を撃ち込んでは来れない。遠隔操作していた宇宙バイクを飛空艇へと着艦させ、シキは早速反撃に出た。
「今度はこちらからだ」
「つっても大した武器は積んでないぞ?」
あくまで運送業の船だからな、という勇士の声に応えて、シキはバイクの車体を船に固定した。飛行機能をカットすることで、全出力をブラスターに回す。
「砲台なら、ここにある。照準は任せるぞ」
なるほど、心得たとばかりに飛空艇が敵砲撃艦に接敵する。同時に敵もまた、護衛のガンシップを発進させてくるが。
「相手は小型だぞ、一気にやれー!」
「囲んで落とすぞー!」
幾何学模様を描くようにオブリビオン達が飛来する。迫るそれらを誘い込むように飛んだ飛空艇は、敵の目の前にレラの銃口を向けた。
「――墜ちろ!」
放たれた熱線がガンシップを貫き、飛空艇の急旋回に合わせて空を薙ぐ。赤い光は護衛のみならず敵船の装甲を熱で斬り裂き、その内側に仕舞われていたであろう大砲の火薬に火を付けた。空に大きな花火が上がって、敵艦が一つ沈み行く。当然それだけで終わるはずもなく、シキを乗せた船は、次なる敵艦へと突き進んでいった。
大成功
🔵🔵🔵
紫・藍
☆
藍ちゃんくんでっすよー!
やや、皆々様、驚きでっすかー?
いえいえ、藍ちゃんくんがここにいるのは何も不思議ではないのでっす!
何せ藍ちゃんくん、皆々様のファンでっすのでー!
特等席で皆々様の活躍を見せていただくのでっすよー!
でっすがでっすが、皆々様にとっても特等席でっすよー?
何せ藍ちゃんくんのライブも開催するのですから!
甲板の上で歌うのでっす!
砲撃音もなんのそのな大きな声で!
士気向上の為でっすかー?
いえいえ、藍ちゃんくんの歌は“皆様”へと向けた歌でっすのでー。
砲弾さえも誘惑しちゃうのでっす!
何せ藍ちゃんくんを撃墜しちゃうとライブが終わっちゃうのでっしてー。
弾は自然と逸れてくださるかと!
そして藍ちゃんくんが稼いだ時間は、ベテランの皆様にとっては十分過ぎる時間かと!
ところで藍ちゃんくんの歌、当然オブリビオンの皆様も聞いているのでっしてー。
何せ皆様、数が沢山でっすからねー!
ファンになられた方はいらっしゃるのではー?
自分が大丈夫でもお隣の方はいかがでしょうかー?
などと疑心暗鬼も起こしちゃうのでっす!
●船上ライブ
アルカディアの玉座を目指す空の一角、そこには嵐のように砲弾が降り注ぎ、帝国艦隊が道を遮る様に立ち塞がっていた。そうそう当たるものではない、などという楽観的な思考を封殺するような光景を前に、|飛空艇艦隊《ガレオンフリート》の勇士達が「うーん」と頭を悩ませていた。
この世界のため、勇気を持って立ち上がり、ここまで飛んでは来たのだが、さすがに快進撃もここまでか。ぱっと散るか引き返すか、そんな二択に至りそうになったところで、彼等の背から元気な声が響き渡った。
「藍ちゃんくんでっすよー!」
うお、と振り向く勇士達に、紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)軽い調子でひらひら手を振る。
「やや、皆々様、驚きでっすかー? それに何やらお悩みのご様子ー?」
居合わせた彼等は酒場でのひと時を共にした者達だ。新たな武勇伝を歌ってもらう、そんな願いをきっかけに戦場に踏み込んだ彼等は、まさかここで会うことになるとは、と苦笑する。
「おいおい何しに来たんだよ」
「土産話が待ちきれなかったか?」
「ええ、ええ! 何せ藍ちゃんくん、皆々様のファンでっすのでー!」
輝くほどの笑顔でそれに応じて、藍は彼等の飛空艇に乗り込んだ。これぞ戦場の特等席、勇士達が伝説を生み出すその時を、間近で見に来たのだと彼は言う。
「やめときなって、危ねえぞ?」
「それに今日は、天気が悪い」
そう言って、勇士は砲撃の雨が降り続く鉛色の空を指さした。このまま行っては武勇伝どころではない。半ば諦めた様子の彼等に向かって、藍は大げさに、残念そうな表情を浮かべてみせた。
「おやおや、皆様揃って最初の頃のようなお顔ですねー」
酒場でくすぶっていたあの日を思い出して、ふうと溜息を一つ。
「でっすがでっすが、皆々様に朗報でっす! こちらのお船は皆々様にとっても特等席! 何せ藍ちゃんくんのライブも開催するのですから!」
「……え?」
「なんて?」
堂々と言い放たれた藍の声に、一同は互いに顔を見合わせた。
「――ああもう、本気で行くんだな!? どうなっても知らねえぞ!」
「もっちろん! 藍ちゃんくんはいつでも本気でありますので!」
愛くるしく輝く星の瞳が、ばちーんとウインクを一つ。砲撃の続く空域へと進む飛空艇の上で、藍はいつものように歌い出した。
甲板の上を即席の舞台に、軽やかにステップを踏んで、笑顔を振りまく。飛空艇の速度に合わせてごうごうと唸る風に、彼方より響く重い砲声、そして飛び交う砲弾の風切り音、それら全てに負けない高らかな歌声は、勇士達の心を奮い立たせる。しかし、同じ船で戦う勇士のみならず、その歌は戦場に在る全ての者へと向けられていた。
「さあ、ライブはまだまだ続くのでっしてー! 道を開けていただくのでっす!」
藍の指さす進路の先には、帝国艦隊の誇る勇壮なる大砲群がある。遠距離から飛空艇を狙っていた砲手達は、たちまちその姿に魅了され、砲の照準が僅かに外される。そしてさらに、無機物である砲弾にまでその魅力は伝わって、藍のライブを邪魔しないよう、それらは自ら逸れていった。
眩いばかりのパフォーマンスで、台風の目のような無風地帯が形作られる。それは長くは続かないかもしれないが、勇士達にはそれで十分。藍の歌を途切れさせないため、彼等もまた実力以上の力を発揮して、危険空域を最大速度で突っ切っていった。
「や、やったぞ!」
「これで砲撃もできねえだろ!」
敵艦の懐に入ったおかげで、同士討ちを嫌った彼等は長距離砲を向けられなくなる。その代わりに、護衛のオブリビオンによるガンシップが何隻も飛び出してきた。単体では小さなそれも、数が揃えば脅威となるだろう。
「相手は一隻だ、逃がすなよー!」
「囲めばこっちのもんだ!」
「うおー、握手してくれー!」
なんか若干妙なのが混ざっている。速度を上げて突出する一部の者達に引っ張られ、彼等の隊列は途端に乱れた。
「喧嘩しないでー、ちゃんと並んでほしいのでっすよー」
こうなってしまえば頭数にはさほど意味はない。完全に先程のライブにやられた影響を消せないまま、オブリビオン達は勇士達によって撃ち落とされていった。
大成功
🔵🔵🔵
●帝国艦隊壊滅
猟兵達と勇士達、それぞれの協力のもと、彼等は共に力を振るい、立ち塞がる帝国艦隊を打ち破った。
要衝たるこの空域を取り戻し、一同は残り僅かとなった、玉座へと続く道のりを駆け上がる。