アルカディア争奪戦⑨〜海辺の街から空へと
●夏の終わりに空へと
「おー、空の世界では色んなのが見つかったり、戦果を上げてるみてーだな!」
戦争の状況を聞き及んだリョウガ・イグナイト(星海を目指す者・f26399)は、様々な発見や戦果に心を踊らせながらも、猟兵達に向き直ると話を切り出す。
「といっても、現地でも俺らに協力しようと声を上げてくれる奴もいるみてーだな。今回はそいつに会ってきて貰えねーかな、行き先は――」
と、タブレットを上機嫌で滑らせながら、リョウガは示す。
そこは『スーパーよいこランド』の中でもいわゆる海辺の街にあたる場所だった。
「そこの街で、『マグナ聖帝国』の侵略に対抗しようと、力になりたいって声を上げてくれた奴がいるんだ。そいつはアイゼンっていう……まぁ、メカニックみたいな奴だな。飛空艇だったり動力甲冑だったりもそうだけど、色んな機械の修理を請け負うちょっとした何でも屋をやってたみたいでさ」
そんな彼だが、猟兵達の戦果に感化されてか、自分に出来ることは無いか、と出立の意志を固めたらしい。それ故に今、海辺の街は夏の終わりにちょっとした騒ぎとなっている。
「騒ぎって言っても、アレだぞ? 壮行会っつーか、宴会。まぁ、海辺の街だから海水浴場で街の皆がはしゃいで景気づけしてるみたいな感じでさ。そこに混ざってきて欲しーんだ」
街の人々も例外なく『よいこ』故、見知らぬ猟兵達だろうと遠慮なく歓迎してくれるだろう。だが、ちょっとだけ懸念もあるという。
「単純な話だ。今まで外に出ないで居た奴が急に外に飛び出す決意を固めたんだ。外面では快活に振る舞ってても、色んな不安を抱えてる。……特に今回のやつ、割りと抱え込むクチみたいでさ。うまくその不安を解消してやったら、色々と良い方向に向かうかもだな」
折角、猟兵達に匹敵する力を持ち合わせる『よいこ』とはいえ、実態は普通の人間と変わりない所も多々ある。旅立つ為の心の支えはひとつでも多くあった方が良い。
「というわけで、なんだけど。楽しむついでに頼まれてくれないか? ……もしかしたら、肩を並べて戦う事になるかもしれないからさ」
そうして、リョウガは転送を開始する――
その先の海辺の街には、熱気が溢れて。その熱気が静まる頃には……一人の旅立ちの時が来る。
逢坂灰斗
悩んでたんですが、出しそびれる気配がしました。ので……
逢坂灰斗です。
今回は『スーパーよいこランド』から出立する『よいこ』の壮行会に参加して頂きます。
【MSより】
このシナリオは『アルカディア争奪戦』の戦争シナリオです。
戦争の該当エリアの戦況に影響を与えます。
以下のボーナスを踏まえてプレイングすると判定に有利になります。
プレイングボーナス……
よいこが勇士になれるよう応援する。
・このシナリオの『よいこ』
アイゼンと呼ばれています。街だと便利屋じみた感じで有名。
快活だが不安を内に仕舞っては吐露する事はあんまりない、メカニックの青年。
純粋に自分の機械が役に立てば……と思うタイプ。
種族は人間系のようですが詳しいことは不明です(配布になった場合その方が決めて下さい)
※
このシナリオで出てくる『よいこ』は一応猟兵化することが出来ます。
その場合はプレイング冒頭に『🍄猟兵化希望』とねじ込んでおいてください。
複数希望者が出た場合は抽選となりますが、
その場合、最終リプレイ文末で結果をご案内します。
戦争シナリオの為、早めの完結を目指しますが、なるべく採用できれば……とは思います。
それでは、お目に留まりましたら、宜しくお願いします。
第1章 日常
『天空の海水浴場!』
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POW : 体力の限り思いっ切り泳ぐ!
SPD : 小型飛空艇で海面ギリギリをカッ飛ばす!
WIZ : 砂浜でのんびり眺めを楽しむ!
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●不安を内に、最後の日がやってくる
「おばちゃんー、冷蔵庫直ったぜー」
「あらぁ、アイゼン君。ご苦労様。良いのかい? 明日には此処を立つんだろ?」
海辺の街は夏の終わりの熱気に満ち溢れていた。
熱気の原因は暑さだけではなく、一人の青年が勇士として旅立つ事を決めたからである。
「俺の為に盛り上がってくれるのは良いんですけどねぇ。でも俺が居なくなって困るって言い出されても大変じゃないですか。だから今のうちに全部――」
「そんなこと言って、主役が居ないとどうしようもないでしょ? ほら行っておいで!」
街のメカニックとして様々な修理を請け負っていた青年は、出立前日だというのにいつも通りで務めていようとしたし、何より、『やり残し』が無いかを気にするようにしていた。
街の人々は彼の気持ちを知ってか知らないでか。逸るように海辺で盛り上がっていた。
おばちゃんに背を押されて、海辺に向かった青年は、会場となっている場所へ一歩踏み込む前、少しばかり空を仰ぐ。
この街で見る最後の景色になるかもしれない、この空の向こうで、果たして自分は――
「……本当に、役に立てるんだろうか?」
成田・且胤
🍄猟兵化希望
WIZ
「むう、不安を内に貯め込む人物でござるか。俺とは真逆でござるな」
こう、俺は負けるとか失敗するとか考えずに挑んでゆくものでござるし
ともあれ、こうして考えていても始まらんでござるし、早速接触を試みるござるよ
「ドーモ、アイゼン=サン。且胤です」
「夏は終わったでござるが、(水着の女性を眺めて居られるし)こういうのも悪くないでござるな」
「うん? ティーダ=サン、何でござるか? 俺はただ景色を眺め、待、アバーッ!」
「と、こんな俺でも猟兵やれてるでござるしな? 案ずるより産むがやすしって言葉もあるでござる」
「何より出立を決意したのはアイゼン殿でござろう?」
「そんな自分を信じるでござるよ」
●自身で決めたことならば
「むう、不安を内に貯め込む人物でござるか。俺とは真逆でござるな」
成田・且胤(今邢道栄・f36853)の捉えたかの青年の人物観は、自身とは真逆という結論であった。
『よいこ』故に少し考え込んで。心配だからと、誰にも悟られずに表の快活さとは真逆のネガティブを抱えて、黙って傷ついていく。
負けるとか失敗するとか考えずに挑む者からすれば、逆の性質とも言える。踏み出そうとしても、全ての何処かに卑屈を抱える。
どこかで難儀さを覚えながらも、街を海岸へ向けて歩いていけば、件の青年はすぐに見つかった。
「ドーモ、アイゼン=サン。且胤です」
「えーと、お客さんかな? 今この大陸中、そういう騒ぎになってるみたいだし」
「そうそう、そんなものでござるよ。なんならアイゼン殿の先達――ということになるでござるな?」
そんなやりとりから切り出して見たが、ぴくりと身体を強張らせたように見えたのは気の所為にも感じなかった。
ああ、やはり、自信が足りないのか。覚悟を決めきれないのか。そんな気配を漂わせ――視線は浜辺に移る。
「夏は終わったでござるが……、こういうのも悪くないでござるな」
「そーですね……まぁ理由つけてはしゃぐの大好きですし、皆。お客さんでも関係なく輪に混ぜてくれるんじゃないですかね」
それっぽく会話をしているが、視線の先では波間ではしゃぐ街の『よいこ』達がその『よいこ』過ぎる肢体を水着姿で惜しげも無く披露しており、俗っていうか男子感ある事をしているだけである。
そうしみじみしてる振りしながら、実態は鼻の下伸ばしまくってる且胤の側に、ペガサスが寄ってきたと思ったら――あ、いきなり女サキュバスに変身した。
なんとなくアイゼンは察したような面をしたが、当の本人はというと……。
「うん? ティーダ=サン、何でござるか? 俺はただ景色を眺め、待、アバーッ!」
……アイゼンが見ている眼前で、且胤はお仕置きされた。そりゃそうだ、明らかに景色っつーか女を見てたわけだし。
「と、こんな俺でも猟兵やれてるでござるしな? 案ずるより産むがやすしって言葉もあるでござる」
未来の後輩の目の前で思いっきり醜態を晒した彼であるが、なんということも無さそうである。
「……あの、凄い壮絶な音がしたんですが。大丈夫なんですか、身体」
仕置された直後だというのに調子を変えること無く。視線だけを横にいるアイゼンの方へと変えて。
「まま、拙者は頑丈でござるしね? それより、何より出立を決意したのはアイゼン殿でござろう?」
虚を突かれたかのように、目を丸くした彼へ。にぃと笑いながら剣侠は大事な言葉を掛ける。
「そんな自分を信じるでござるよ」
自信とは、自分を信じるから、成り立つモノであるから。
少し、胸の内のを確かめるようにした彼の様子を見て、少しばかり満足げに笑って――
……また、女の子の方を見始めるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
久留米・圓太郎
🍄猟兵化希望
【WIZ】
仲間になってくれるというのは、有難いぜ
何とか心に響いてくれれば
壮行会とあっては[コミュ力、大食い]を発動して(アイゼンさんの覚醒まで発動)、賛歌することにするか
(お酒はダメだし、説得前にオレがこの雰囲気に飲まれすぎるのは、拙い)
■対・アイゼン
今度ここから出立するというのは、君ですか?
失礼があったら申し訳ない
先ずは。ちょっと歌ってみる?(【UC】と[鼓舞、情報収集]発動)
不安?オレなんか昔は、ただただ遊んで過ごしてきてたんだ。
人のために役立とう!と声を上げてくれるのは心強い事!
一歩を踏み出すのは皆怖いからなぁ……でも出せばあとは結果はついてくるって!
と、応援させていただく
●そして夏は終わりゆく
「仲間になってくれるというのは、有難いぜ。……何とか心に響いてくれれば」
久留米・圓太郎(自称魔法使いの一番弟子・f00447)が街にやってくる頃には、海岸の陽は沈みかけていた頃であった。
状況としては海遊びも見掛けた昼間に反して、BBQや花火などといった『砂浜の上での催し』に主軸が移行した感じもある。
そんな状況故か、圓太郎が来るのを見て、既にお酒が回っているんだか分からない住人も陽気に来客達を招いて来る始末である。
「ああ、その、酒はいいんで麦茶ぐらいで――と、そっちの肉焼けてるなら貰っていいか?」
「おう、にーちゃん『も』この後仕事とかか? 良いぜ。なら酒はなしでも精はいっぱい付けてきな!!」
海辺の街特有のBBQ故か、浜焼き屋台でも見掛けそうな新鮮な海産物も一通り揃いながらも、定番の肉などもあったりする形だ。
そんな中、酒を除いた料理が振る舞われつつ、圓太郎はそれを地元の人々の会話を楽しみながら――という状況だが。
やはり、気になるのは件の彼のことである。主役の筈なのだが。相も変わらず中心にいかないというか、普段通りなのだろう下支えに回っていっている。
「……あの人は、いつもあんななのか?」
「そうだなぁ、基本的に皆の役に立つこと、を考えがちだからさ、アイゼン。自分が主役だってのに、つい裏方回っちまうっていうか?」
良い奴なんだがな、と笑う街の人は、きっと彼の胸の内すら聞かされていないのであろう。けれども、知ってか知らずか、街の人々は声を揃えて言う。
「心配するこた無いんだがな。ま、確かにアイツが旅立つのは寂しいんだが……また元気に顔だしてくれるだけで充分さ」
どうやら、人々は彼が旅立つことに対して何か憂いているんじゃないか、とは知っていたかのような口振りだった。
それでは尚の事――彼の背を押すために必要なのはあと1つだけなんじゃ、無いだろうか。
「今度ここから出立するというのは、君ですか? 失礼があったら申し訳ない」
遠巻きに居て中心に立たないアイゼンの下へ、少し歩み寄るように声を掛けたならば。
「ああ、えっと……悪いね、一応主役だってのにこういうことしてて。どうも落ち着かなくてさ」
落ち着かない理由も、察しはつく。何せ、不安をなんとかしたいのに、不安が外に吐き出せないから。ならば、いっそ。
遠くのからの喧騒に合わせるように圓太郎が歌いだせば、アイゼンは馴染みがあるような顔で尋ねる。
「……その歌、何処で?」
「ほら、他の人達も歌ってたらそれっぽく歌えちゃうだろ? だから、さ?」
まるで壇上の手前にいる彼を手招くようなリードで、彼を誘うと。彼はぽつりぽつりと歌い始める。
声量が少しづつ聞こえるような形になるものの。街の人々がソレに気づくと、止めてしまったのだが。
「不安? 自分からやっぱり『踏み出す』の、後悔してたりするか?」
問いかけは核心を付くようで。バツの悪そうな顔をする顔を、気にするなと言わんばかりに圓太郎はニカッと笑う。
「オレなんか昔は、ただただ遊んで過ごしてきてたんだ。人のために役立とう!と声を上げてくれるのは心強い事!」
きっと街の人達も、そんな彼の思いを知ってるし、それが街でなく外の世界に向いただけなのも知っている。
だから、後は踏み出すだけなんだと、言外に告げながら。
「一歩を踏み出すのは皆怖いからなぁ……でも出せばあとは結果はついてくるって!」
再びリードをする形で歌い出すのは圓太郎だけでなく。気づけば、街の人々が、彼と最後に歌おうと集ってくる。
その様子をくるりと見回した彼は、ようやく堂々と歌い始めてくれた。
歌い終わった後に、拙かっただろ? と卑下するような言葉が帰ってきたものの。
それでも彼はちょっとだけ。それが必要な分だったけれど。一歩を踏み出した。
海辺の街から空の世界へ向けて――飛び立ったのだ。
【ごあんない】
アイゼンの猟兵化権利ですが、久留米・圓太郎(自称魔法使いの一番弟子・f00447)様に進呈させて頂きます。
改めてご参加有難うございました!
大成功
🔵🔵🔵