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アルカディア争奪戦⑫〜樹海に廻る水車

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「たす……け……」
 全身を蔦や枝葉で縛られ、木の枝に吊るされた男が微かに呻いた。水車の廻る音と深い樹海。水と緑にあふれる美しい光景はしかし、ジェード王国に支配された水の都トリリアの悲惨なる現状であった。
「うぐッ」
 男に絡みついた蔦の主は巨大な『樹』のオブリビオンである。物言わずとも、その要求は明らかであった。
 ――命が惜しくば、天使核水車を我らの思うがままに駆動せよ。

 仰木・弥鶴(人間の白燐蟲使い・f35356)は集まった猟兵を上目遣いに見つめつつ、こんな風に話を切り出した。
「アスレチックって好き? それも、こちらをやっつけようとして勝手に足場が動いたり、迷路みたいに入り組んだ水路が行く手をはばむようなやつ」

 なんでもこの浮遊大陸は無限に水が湧き出すらしい。その水路を利用した天使核水車で浮遊大陸自体を動し、水の交易都市として名を馳せたという。
「そこに目をつけたジェード王国が天使核水車の作動権限を持つ島主を捕えて無理やり天使核水車を動かしているみたいなんだ。皆にはオブリビオンに捕まった島主を解放し、天使核水車を奪い返してほしいという依頼なんだけど……」

 問題は、この無限に湧き出す水と敵に奪われた天使核水車がこちらの邪魔をしてくることだ。
 オブリビオンの『島喰い樹』がいる浮遊大陸の奥地には入り組んだ水路を遡ることでたどり着けるのだが、猟兵の襲撃を察したオブリビオンは水路の水量や水流をいじってこちらを押し流してしまおうと考えている。
「場所によっては滝みたいになってたり、浮石をジャンプで渡るような難所があったり、あるいは落とし穴の水路バージョンみたいな罠も仕掛けられている。各所で稼働中の水車は足場になる一方で、水車を動力とするからくりが侵入者を振り落とそうとしてくるだろう」
 からくりってたとえばどんな、という疑問に対して弥鶴は身振りをくわえて説明する。
「こう、足場の悪い場所で左右から棒みたいな突起が一定の間隔で回りながらぶつかってきたりとか……タイミングを合わせて飛び移らないと乗れない昇降装置とか?」
 ただし、これらは順序を守ってクリアしていくことでオブリビオンの居場所にたどり着ける正解のルートでもあった。

「うまく利用すれば強行突破よりもスムーズに進めるはずだよ。島長はかなり弱っているみたいだけど、命には別条ない。天使核水車奪還のためにも、水路の突破とからくり仕掛けの攻略を頼むよ」


ツヅキ
 プレイングが送れる間は受付中です。

●第1章
 天使核水車の作動権限を持つ島長を拘束している大樹型のオブリビオンを倒し、天使核水車をオブリビオンの手から奪還しましょう。
 戦場を取り囲む『水路やからくり』を利用して戦うとプレイングボーナスです。
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第1章 ボス戦 『島喰い樹』

POW   :    緑の巨龍
自身の【枝や種子】を代償に、1〜12体の【島を打ち砕き、飲み込むほど巨大な植物の龍】を召喚する。戦闘力は高いが、召喚数に応じた量の代償が必要。
SPD   :    強蝕樹
非戦闘行為に没頭している間、自身の【無限にあらゆるエネルギーを吸い上げる根】が【際限無く浮遊大陸を浸蝕成長していき】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
WIZ   :    悠久の時、失われし緑の大地
戦場全体に、【外界より百万倍時間が早く進む果て無き樹海】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。

イラスト:すずや

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はロニ・グィーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

フォー・トラン
なるほど、ゲームや映画で見たことあるやつだ。
こういったアクションは苦手じゃない。([軽業])
苦手じゃないのだが、保険は掛けさせてもらう。
猿が木から落ちることもあれば河童が川に流されることだってあるのだ。
そうならないように落ちた時に安全に復帰できるよう[フック付きワイヤー]を引っ掛けて命綱代わりにしながら進む。
敵の元へ辿り着く前に、ユーベルコード【賦活魔法】も使っておこう。
これをやると元気が出るのだ。
敵を魔法の射程内に捉えることのできる位置まで登り切ったら、全身全霊の電撃をお見舞いしてやる。([全力魔法])
万が一を考えて、なるべく島長から遠いところへ撃ち込もう。
これでも喰らえ!



 びん、っと張り詰めるロープの感触がそれを掴むフォー・トラン(精霊術士・f12608)の手から二の腕、肩にかけて順番に伝わってくる。
「ふう、危ない危ない」
 ワイヤーロープの先に括りつけられたフックは水車を回す軸の部分にしっかりと引っかかり、フォーの体を水路に落ちる寸前の高さに吊り上げていた。フォーは前後に身体を振って勢いをつけ、手近な足場へ飛び移る。
 やっぱり保険って大事だな、と。
 猿も木から落ちる。
 河童も川に流される。
 ――人狼もうっかり足を滑らせる?
 濡れて滑りやすい足場を今度は慎重に飛び渡る。ゲームならうっかり落ちても一機減るだけで済むだろうし、映画の撮影ならば「カーット!」とか監督がメガホンで叫ぶところ。
「猟兵の場合は命がけだよなこれ。命綱は必須だってば」
 しっかりとフックを引っかけていたおかげで命拾いしたフォーは、深呼吸して息を整えながら昇降機が前後に動くタイミングを身体に覚え込ませる。
「いち、に、さん……そこだ!」
 空中では尻尾で器用にバランスをとって、ひょいと昇降機に乗り込むことに成功。軽く手を打ち鳴らしながら気合を入れ直す。強烈な稲妻めいた電撃がフォーの体を打ち据え、静電気のように身に纏えば活性化した肉体にあふれんばかりの力がみなぎった。
「絶好調!」
 天高く上昇する昇降機が最高地点にまで達した時、フォーはためらうことなく電撃を宿した指先を巨大なる敵に向かって構えた。
 それは水の都トリリアのかなりの部分を侵食する大樹のオブリビオンである。フォーは枝から吊るされた島長とは反対の側面に狙いをつけ、超特大の電撃を放った。
「っし!」
 これでも喰らえ、とぶちかました初撃がオブリビオンの枝葉を貫いて幹本体に亀裂を与える。確かな手ごたえにフォーは短い快哉を叫んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菱川・彌三八
此れ此れ、こういうのだよ
お誂え向きってな
一度、二度軽く跳ねりゃ己の万全なぞ直ぐ分かる
うんと体を伸ばして、いざ

彼方此方跳び移るのも、確と均衡を保つのも、壁を駆け登んのも泳ぐのも大得意
要は体使うなァ俺の領分ってえこった
壁が斜めでも問題なし
水に足ぃ取られっちまうならちいと鳳凰で飛ぼうか
少しくれェの水なら心地良い程だゼ
水車の上でも棒を飛び越え、出っ張りを掴み上がり、時にひらりと後ろに宙返り
兎に角身体能力の限り先へ先へと進もう

いやすれにしてもすげェな
一体ェどんな仕掛けなんだか
此れで一儲け出来そうだ

さぁて、奥迄辿りつきゃ丁度体が温まった頃合いだ
渾身の拳叩き込んで、全部潰して仕舞いにしちやるぜ



 その場で軽く飛び跳ねる。それから、ぷらぷらと指先まで力を抜いて軽く揺らす。肘で反対側の腕を胸元に引き付け、丹念に関節を伸ばしながら菱川・彌三八(彌栄・f12195)はにやりと笑った。
 なにしろ、彌三八は喧嘩っ早い男である。
 果たして殴り倒した相手と絵筆で倒した相手とどちらが多いか知れない。いずれにしたってお誂え向きな戦場に自然と笑みがこぼれるのであった。しかも己の状態は万全とくる。
「さァて、いくとするかい」
 浮石を飛び移るのは序の口で、流れ落ちる瀑布も構わず剥き出しの岩石が突き出す足場の不確かな崖を駆け登り、水路をゆくのが近道だと判断するや見事な飛び込みで水中へ潜って玄人ばりの泳ぎを披露する。
 心置きなく運動して火照った身体に流水のつめたさが快く、まるで鯉みたいに急流を遡った。
 水面から顔を出した彌三八は空になった肺いっぱいに空気を吸い込むと、水滴を払いながら地上に上がる。
 そびえる断崖は垂直を越えてこちら側にせり出していた。少しだけ思案した彌三八は一歩、二歩と助走をつけるように後ずさる。濡れた肌に浮かび上がる刺青は雄大に翼を広げる鳳凰、空を馳せるための力を発現した彌三八にとってこの程度の登坂などまるで問題ない。
「よ、ッと」
 頬に落ちる雫をくすぐったそうに指でぬぐい、水車の真上まで一気に跳んだ。動く水車の羽根の上を歩くように進み、こちらに向かって迫る突き出した棒状のからくりをひょいひょいと身を屈めて避けたり今度は飛び越えたりとまるで遊ぶみたいな身のこなしであった。
 最後は出っ張りを掴んで後ろ向きに宙返り、うまく距離を稼いで隣の水車へ乗り移る。
「すれにしてもすげェな」
 高台から周囲一帯を眺め渡した彌三八は感心して言った。誰が造ったか知らないが、これらの仕掛けには並々ならぬ粋が施されている。これだけのからくりならばきっとたくさんの人を呼べるに違いない。その中には彌三八みたいに己の肉体ひとつで腕試しを望むやつらだっているだろう。
「一儲け出来そうなくらいだぜ。此の水車とからくりはそんくれェの価値があらァな」
 で、と横目で自らは動かぬ元凶を見やる。
「丁度体が温まった頃合いだ、全部潰して仕舞いにしちやるぜ」
 彌三八が思いっきり拳を奮うさまは鳳凰が羽ばたくが如き力強さであった。殴り飛ばされた方の大樹は地面に食い込んだ根が浮かび上がるほどの衝撃を受け、幹をひしゃげながらゆっくりと仰向けに傾いでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レモン・セノサキ
アドリブ他◎

「ジェットシューズ」で水上を滑るように高速移動
げ、往復ハンマーじゃん昔テレビで見たぞ
宙返りでも打ってタイミング合わせて駆け抜けるか!
え、サーカス?
いや見世物じゃないんだが

ちょっと待って目の前に水の壁が……
水路のツマリは大量の水でスッキリ作戦?
あー、洗面台とか効果覿面よねー
って誰がパイプの詰まりか!
律儀に付き合ってやるのも腹が立つ
ってわけで【時告の魔弾】!
これで水路の水からカラクリまで私の味方っ★
怒濤の勢いで水を逆流させて一気に敵の場所まで移動!
更にカラクリも流して運ばせよう
――
また凄い量の水が集まっちゃったな?!
激流+漂流物をぶつけた上で「Forte.50」の発砲斬撃をお見舞いだ!



 懐かしいな、と思いながらレモン・セノサキ(Gun's Magus魔砲使い・f29870)は容赦なく迫るからくりこと往復ハンマーもどきを颯爽と飛び越える。軽く助走をつけた後、軽い身のこなしの宙返りで複数本をまとめてクリア。
 たんッ、という軽快な足音と共に着地の衝撃をいなしてくれるのは水上すらも滑走できる特製のジェットシューズだ。
「悪いけど、見世物じゃないんだよねー」
 傍から見ればサーカスも同然の曲芸かもしれないが、こちとら|本気《マジ》も|真剣《マジ》の道中なので悪しからず。
「うげっ」
 ここまで順調に進んできたレモンの前に水の壁がそそり立つ。見れば上方から流れ落ちる滝が元凶のようだ。しかもみるみるうちに水量が増えてゆく。
 わかったぞ、と理解完了。
 こいつはつまり――水路の|邪魔者《ツマリ》を大量の水で押し流してスッキリさせようって作戦ですか。
「って、私は洗面台のパイプの詰まりか! よーし、いいだろう。その挑戦受け取った。ただし、律儀に付き合ってやるのも腹が立つのでこうしてやるわ!」
 レモンが構えるアサルトライフルは特徴的な銃身が目を引く愛用の代物で、なんとその弾丸のみならず銃声だけでも侮れない効果を発動するのだ。
 ――ドン!
 銃声が轟いた範囲のあらゆる水、からくり、水車及びそれらに準じる存在が一斉に動きを変えた。
「さあ、私を乗せていって!」
 からくりに飛び乗ったレモンをさっきまで逆流していたはずの水流が一気に島の奥地を目指して流れ始める。途中で合流した支流も合わせるとまるで津波のような水量であった。
「ちょ、やり過ぎちゃったかな!? まあいいや、くらえー!」
 ようやく見えてきたオブリビオンの大樹は枝や蔦を伸ばしてこちらの行方を阻もうとするが、これだけの激流を相手に間に合うわけがない。
 レモンは敵とぶつかる直前で飛び退き、乗って来た漂流物を激流と共にぶち当てる。衝撃がさめやらぬ中、今度は当てるために銃のトリガーを引いた。
 瞬く間に大樹の枝葉や幹の部分に無数の穴が穿たれ、作りかけの迷路が委縮し始める。

大成功 🔵​🔵​🔵​

九十九・静香
なるほど、浮石にからくりにそして滝……これは間違いありません
UDCアースにて筋肉を競うサスなんたらというものとあまりにそっくり!
つまり、ここの敵は相手の筋肉を試しに来ている
ならば挑むしかありませんわね

全身の筋肉を隆起した姿に変異
筋肉による◆ジャンプで素早く飛び移り
握力で手を離さずに乗り移ったりと筋肉を活かしからくりを突破
滝はパラドクスで◆氷属性を筋肉に付与
触れた水を凍らせて駆けあがって行きます
これこそ筋肉の可能性!

樹との戦いでも同じく氷属性の拳や蹴りで植物龍を次々と凍らせ
続けての攻撃で粉砕
炎属性を付与した刃亜部流と氷の拳を敵本体に叩きこみますわ

いい鍛錬にもなりましたわね
また来ましょうか



 戦場では戦いの理を見抜き、適応できた者が勝者となるのは自明の理。その点において九十九・静香(怪奇!筋肉令嬢・f22751)は炯眼であった。なにしろ静香を待つ手の込んだ絡繰りはどこからどう見ても筋肉を競い合うための某サス|(以下自主規制)《ピーッ》としかいいようのない様相を呈しており、静香のためのステージといっても過言ではなかったからである。
「ならば挑むしかありませんわね。全力で当たらせてもらいますわ!」
 みるみるうちに全身の筋肉を隆起させた静香は見事に鍛えられた大腿四頭筋を漲らせ、浮石が沈む前に踏み抜いて次の浮石へ跳躍する。すごい水柱を上げながらからくりを攻略する姿は疾風怒濤の如くであった。
 浮石につづいて行く手を阻むのは一定の間隔で回転する突起の数々。静香は悠然と微笑み、真っ向から突起を握り潰すように掴んで動きを止めながら堂々と先へ進んだ。
「さすが、浮遊大陸を動かせるほどの水車とからくりですわね。よくぞここまでの仕掛けを用意なさったものですわ。けれど――!」
 静香の示す筋肉の可能性は単純な力押しには留まらない。自慢の握力で棒を掴んだまま反動をつけ、向かいに見える水車の足場へ跳び移る。
 激しく流れ落ちる大型の滝が相手ならば筋肉は自然すらも従えるのだと証明してみせよう。
 コォゥ……白い靄のような冷気が静香の筋肉から発され、その指先が滝へ触れた途端に水を凍りつかせた。
 岩のように固まったでっぱりを掴んで体を引き上げる。足をかけた場所が同じく凍っていった。
 あっという間に瀑布を昇りきった静香はそびえ立つ大樹を見上げ、筋肉を見せつけるような構えをとる。
「では、お相手してもらいますわよ」
 島喰の樹は全身を震わせて撒いた種から巨大な龍を呼び出した。植物で構成された新緑の龍に向かい、静香は渾身の突きで鱗に包まれた腹を穿つ。拳がめり込んだ場所から徐々に凍り付いてゆく龍に膝蹴りで追い打ちをかけ、そこからも氷が広がっていった。
 背後から迫る別の竜は後ろ回し蹴りで地面に叩きつけ、やはり凍結させた後で粉砕する。
「頃合いですわね?」
 あとは炎を纏わせた異形の槍たる『刃亜部流』を振り回し、温度差による一撃を与えれてやれば綺麗に燃え盛る。
 静香の清楚な唇に満足そうな笑みが浮かんだ。
「いい鍛錬にもなって満足ですわ。機会があればまた来ましょうか」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロラン・ヒュッテンブレナー
・アドリブ絡みOK

アスレチック?
えと、オブリビオンにたどり着くまでにそういうのをクリアする必要があるんだね?
んー、ちょっと、ズルするけど、がんばってみるの

なるほど、巨大な迷路になってるんだね
じゃ、ぼくも、ちょっと調べさせてもらっちゃうね?
UC発動、おねえちゃん、手伝って?

迷路の壁に手を当てて魔力で接続、電脳空間側からハッキングして迷宮の経路とアスレチックの情報を引き出すの
ん、覚えたよ
おねえちゃん、ガイド、よろしくね?

狼の身体能力と、重力制御の魔術でどんどんクリアしていくよ
滝や流れは凍らせて、駆け抜けるの

出口が見えた!
相手を見つけたら冷凍の魔術で凍らせにかかるの
島長さんたちを返してもらうよ?



「えっと……この辺かな?」
 ロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)が水路の壁に手を触れた途端、電脳空間と繋がった魔法陣から出現したニーナそっくりのAIがにっこりと笑ってハッキングから持ち帰ったデータをロランに渡した。
「おっきいね。こんなに広いんだ」
 それは主に地図の形で中空に表示される。ロランはじっと見つめ、内容を素早く頭に叩き込んだ。
 水車の仕掛けは蜘蛛の巣みたいに浮島大陸の中心部から外側に向かって少しずつ広がっていた。
 もちろん、中心部には例の大樹が待っている。
『どう? いけそう?』
 ニーナAIにロランは頷いた。
「うん、大丈夫。いこう、おねえちゃん!」
 ロランの武器はまず、その小柄な体と狼に由来する身の軽さだった。素早く走り抜ければほとんど浮石が沈む間もなく越えてゆき、足場のないところでは属性魔法を発動して瞬く間に水場を凍らせてしまう。
 あとは滑らないように重力制御の魔法を細かく調整しながら島長が捕まっているはずの場所を目指した。いくら命に別条がなくとも、がんじがらめにされて捕まっているのは苦しいはずだから。
『もうちょっとだよ、次の角を右!』
 ナビゲーションしてくれるニーナAIが示す道をロランはまるで風そのものみたいに走り抜ける。
「あの昇降機に乗れば、出口にいけるんだね?」
『タイミングをよく見てね! いち、にい……さんっ!』
 ニーナAIの合図に合わせ、思いきってロランは跳んだ。
 ちょうど昇降機が目の前に来たタイミングで無事乗り込めば大樹のいる場所まで一直線だ。
「う……」
 呻く島長を安心させるようにロランが声を張り上げた。
「いま助けるからね! あとちょっとだけ待っててちょうだい」
 そして紡ぎあげるとっておきの冷凍魔術。ナノマシンを点眼したロランの瞳が電脳と魔術を融合しながら絶対零度の氷雪で大樹を包み込んで凍らせてしまう。木々はあっという間に枯れ始め、ようやく解放された島長は神妙な顔で礼を言った。
「すまない、おかげで助かった……」
「よかったの。ちょっと離れててね」
 ロランが気合を込めて呪文を唱えれば、冷気はさらに気温を下げて完全に大樹を氷柱の中に閉じ込めてしまった。やがて結晶のように砕け散るそれを見届けたロランはニーナAIとアスレチック攻略及び敵を撃破した喜びを分かち合ったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年09月14日


挿絵イラスト