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アルカディア争奪戦⑪〜熾火は赫く昌盛・グラーヴェ

#ブルーアルカディア #アルカディア争奪戦

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●希望の聖地オーンブル
『名もなき大樹』の枝葉に生えるのは水晶。
 太陽の光を受けて煌めく姿は、ブルーアルカディアにおいても美しい光景の一つに数えられたことだろう。
 だが、そこに悠然と浮かぶのはこの世界に非ざりし技術でもって建造されたかのような飛空艇であった。
 他世界を知る猟兵であったのならば、それが宇宙戦艦のようにも思えただろう。
「『大天魔怪獣アーク』か。嘗ての天使戦争の折に造られたと言われる怪獣。だが、この歌はなんだ」
『|帝国継承軍《サクセション・フォース》』の機械化オブリビオンは、体長60mを超える『大天魔怪獣アーク』から聞こえてくる歌声に顔をしかめた。

 彼らは確かに高度に発達した科学技術を持っている。
 時としてそれは魔法の如き力に映っただろう。
 けれど『大天魔怪獣アーク』から聞こえる歌声に理解を示さなかった。それは戦いに必要のないものであったからだ。
「まあいい。どちらにせよ、『大天魔怪獣アーク』がこの場に鎮座しているのならば、この浮遊大陸の護りは案ずることはないだろうよ」
 彼らは、彼らにとって不可解であり不快である歌声を背に去っていく。

 残された『大天魔怪獣アーク』は歌う。
 体長60mの巨躯。
 その黄金の翼を広げ、頭上にありし光輪を輝かせる。
 翼に包まれていた胴体、その胸の中心にあるのはかつて素体とされた天使の姿が彫像となって存在している。
「Lha――」
 これを『帝国継承軍』の機械化オブリビオンたちは不快な音として感じた。
 だが、これと対峙した猟兵たちはどのように思っただろか。

 悲しみに満ちた声。
 歌にもならぬ声。
 生命の讃歌は響かず。あるのは悲しみだけ。どんなにあがいても、どんなに苦しんでも、どれだけの時間が過ぎ去ったのだとしても、決して終わることのない悲しみだけが響き続ける。
 過去に歪んだ存在が、悲しみに歪み果てた時、終わりなき永劫の如き痛みが世界を壊す歌声を響かせ続けている――。

●アルカディア争奪戦
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。ブルーアルカディアにおける『アルカディア争奪戦』……この戦いにおいて『天帝騎士団』と同盟関係にあると思われる『帝国継承軍』の飛空艇の動向が僅かながら知られるようになりました」
 ナイアルテが示すのは希望の聖地オーンブルと呼ばれる浮遊大陸である。
 この地は今『帝国継承軍』を名乗る機械化オブリビオンたちによって占拠され、一体の強大なオブリビオンによって守られている。

 幸いに『帝国継承軍』の駆る宇宙戦艦のような飛空艇はどこかに出払っているようである。
 この隙にこの無人の浮遊大陸を守っている体長60mにも及ぶ巨大なオブリビオン『大天魔怪獣アーク』を倒し、取り戻さなければならない。
「ですが、この『大天魔怪獣アーク』は巨体以上に強力なオブリビオンです。『帝国継承軍』がこの地の守護を、この一体に守らせるに足る力を持っていのです」
 強大そのもの。
 並のオブリビオンではない。
 猟兵であっても苦戦を強いられるだろう。
 だが、ナイアルテは希望の芽が摘み取られたわけではないことを告げる。

「この地には『名もなき大樹』があります。この大樹は皆さんの『己の希望』によって答えてくれるのです」
『名もなき大樹』。
 それはこの浮遊大陸の中心にある水晶の生える大樹である。
 猟兵たちの希望が高らかに語られれば、その希望の強さに応じた射程と威力をもった『光の武装』を皆に与えてくれるのだという。
「悲しみに満ちる歌声を響かせ続ける『大天魔怪獣アーク』。それに対を成す皆さんの持つ『己の希望』。これによって、過去の化身たるオブリビオンを打倒してほしいのです」
 それは希望を力に変えるということ。

 誰もが生きている。
 生命の讃歌は、その胸に響いている。
 ならば、その胸に在る輝きは希望であろう。猟兵たちは語らなければならない。『今』を生きるにたる希望を。
 その希望に応えるものがある。

 故に響け、生命の讃歌――。


海鶴
 マスターの海鶴です。

 ※これは1章構成の『アルカディア争奪戦』の戦争シナリオとなります。

 希望の聖地オーンブルを占拠した『帝国継承軍』。
 彼らは屍人帝国『天帝騎士団』と同盟関係にあるとされていますが、一体の強大なオブリビオン『大天魔怪獣アーク』にこの地の守護を任せて、今はオーンブルには存在していません。
 この隙を逃さず、この浮遊大陸を取り戻すシナリオになります。

 強大なオブリビオン『大天魔怪獣アーク』は、皆さんでも苦戦するほどの相手です。
 ですが、『己の希望』を語ることによって、この浮遊大陸の中心に存在する『名もなき大樹』が、皆さんの語る希望の強さに応じた『光の武装』を与えてくれます。
 これを用いいて、強敵を打倒しましょう。

 プレイングボーナス……自身の「希望」を語り、光の武装を得て戦う。

 それでは『アルカディア争奪戦』、屍人帝国の野望を打ち砕くべく雲海を進む皆さんの冒険と戦いの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 ボス戦 『大天魔怪獣アーク』

POW   :    エアリアルクラッシュ
【飛行しながら横回転し翼】から、戦場全体に「敵味方を識別する【強烈な爆風と衝撃波】」を放ち、ダメージと【飛行能力弱体化】の状態異常を与える。
SPD   :    ウルトラサウンドハウル
【何処からか物体と共振させ破壊する超音波】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    ギガアークブラスト
【羽】から【膨大な破壊力を込めた複数の破壊光弾】を放ち、【急速に拡大する破壊エネルギー】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:滄。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はビードット・ワイワイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リーヴァルディ・カーライル
…かつての私は、私を救ってくれた彼女達から託された救世の誓いに囚われいた

…ただ誓いを果たす為に戦って、戦って、戦い続けて、
そこに込められた意味も遺志も理解しようとはしなかった

…だけどね。大切な人と出逢い、諭され、私はこの誓いの本当の意味を知った

…遺志を託されたからじゃない。私は私自身の意志でこの|誓い《希望》を完遂する

…たとえどれほどの絶望、どれほどの修羅場が訪れようと、その度に私はこう言うわ

"…人類に今一度の繁栄を。そして、この世界に救済を…"とね

銃型の光の武装に限界突破した魔力を溜めて魔法陣を展開しUCを発動
魔力が尽きるまで照射し続ける光熱属性攻撃のオーラが防御ごと敵を貫く荷電粒子砲を放つ



 希望の聖地に響くは悲しげな旋律。
 それを旋律であると理解できた者は『今』を生きる者であろう。過去に生きる者にとって、その悲しみは理解できるものではなかったからだ。
『大天魔怪獣アーク』。
 その胸の中心にあるのは素体となった天使の彫像の如き姿。
 彼女の意志はない。
 魂はない。
 あるのは彼女の体が奏でる悲しみの旋律のみ。重々しくのしかかる悲しみは、ただそれだけで相対する者の心を縛る。

 だが、その悲しみに相対してなお、燦然と輝くものがある。
 己の希望。
 それだけが自身を前に歩ませるものであると知っているリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)にとって、その旋律は悲しいだけだった。
「……かつての私は、私を救ってくれた彼女たちから託された救世の誓いに因われていた」
 彼女にとって、それが戦う理由だった。
 オブリビオンとの戦い。
 常闇の世界。
 闇に覆われた空を払うことこそが彼女に託されたものであると理解していた。いや、今となっては、それが誤解であったと正しく理解している。

「……ただ誓いを果たす為に戦って、戦って、戦い続けて、其処に込められた意味も遺志も理解しようとはしなかった」
 生きるのは辛いことだからだ。
 苦しみが生きている限り体を攻め立てる。どうしようもない痛みだ。
 だが、その痛みが紡ぐ縁がある。
『大天魔怪獣アーク』の悲しみの旋律、その歌が響き、体長60mにも至る巨体が空に舞う。
 黄金の翼から放たれる暴風がリーヴァルディを撃つ。
 凄まじい暴風。
 抗えぬほどの力。
「……だけどね。大切な人と出逢い、諭され、私はこの地下のほんとうの意味を知った」
 本当に出会った者に別れはこない。

 どれだけ心を打ちのめすことがあろうとも、紡がれた縁は消えない。
 彼女たちがそうであったように今もリーヴァルディの中に、その遺志と共に生きている。そして、彼女は。
「……遺志を託されたからじゃない。私は私自身の意志でこの|誓い《希望》を完遂する」
 瞳に輝くのはユーベルコード。
 顕現せよ。
 その光は全てを滅ぼす裁き。

 吸血鬼狩りの業・殲光の型(カーライル)は希望の光を受けて煌めく。
 眼前に展開された粒子加速魔法陣が広がっていく。
「……例えどれほどの絶望、どれほどの修羅場が訪れようと、その度に私はこう言うわ」
「Lha――」
 その歌が響く。
 悲しみだけを紡ぐ歌は讃歌たり得ず。
 生命の音は、その悲しみだけを内包するものではないことを知っている。
 故に彼女は常闇の世界に生きる者たちを思う。

「"……人類に今一度の繁栄を。そして、この世界に救済を……"とね」
 放たれる荷電粒子砲の一撃。
 希望を語る言葉は、『名もなき大樹』より放たれた光条を受けて輝く。
 燦然と輝く力は、リーヴァルディの中にある魔力のことごとくを吸い上げていく。光は加速し、さらなる光条となって『大天魔怪獣アーク』をつらぬく。
 例え、どんなに強固な護りを敷いているのだとしても、問題になどなりはしない。

 防御があるのならば、それごと貫く。
 彼女の放つ意志は、遺志ならざり。
 故に、希望となるのだ。いつだって暗闇の如き未来を照らすのは希望だ。それ以外の一切合財を失ったとしても、なお輝き続ける。
 人の心にある希望。
 その輝きを見せるようにリーヴァルディは光条の一撃でもって、悲しみだけの旋律を奏でる『大天魔怪獣アーク』を浮遊大陸に失墜させるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊だけど、今回関係ない

UC使用な陰海月「ぷっきゅ!」
…陰海月語を翻訳します…

ぼくだって、戦えるんだ!親友・霹靂の故郷だから、なおさらだよ!
希望はね、『毎日のご飯が美味しい(食いしん坊)』『霹靂と遊ぶの楽しい』『おじーちゃんたちと過ごすの楽しい』だよ!
だから、ぼくはそれらを守るためにも戦えるんだ!

うわっ、眩しい(光の武器)のだ!えーと、これは…スリングショットだっけ?
弾を打ち出し用のゴムと一緒につかんで…パチーン!(怪力陰海月さん)
光弾破壊用に光珠(貫通呪詛)をぽいぽい投げてもいるから、途中でそれと合体するかもね?

あと、ぼくを止めても。輝くのは止まらないからね!そのままだよ!



 四悪霊・『虹』(ゲーミングカゲクラゲノツヨサヲミヨ)によって『陰海月』と合体した馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の四柱の悪霊としての意識はなりを潜めた。
 揺らめく万色の輝き。
 巨大なクラゲとしての姿は、空に揺蕩うように。
 希望の聖地オーンブル。
 その地にあってもなお、輝きはましていく。
『大天魔怪獣アーク』の黄金の翼が失墜した大地に羽ばたく。
 猛烈な強風が吹き荒れ、その体長60mにも及ぶ巨体が再び浮かび上がるのだ。
「Lha――!」
 歌声が響く。

 それを歌声と認識できたのは『陰海月』が今を生きているからだろう
 彼が懸命になっているのは、友である『霹靂』の故郷がブルーアルカディアであるからだ。
 そして、自分自身もまた戦えるのだという意気込みが、今の彼を突き動かすものであった。
「ぷっきゅ!」
 鳴き声が響く。
 だが、そんな懸命な思いなど必要としないというかのように『大天魔怪獣アーク』の黄金の翼が破壊的なエネルギーを充填していく。
 凄まじいまでの力。

 彼にとっての希望とはなにか。
 悲しみだけの旋律。
 その歌にもならぬ声を聞きながら『陰海月』は希望を語る。
『毎日のご飯が美味しい』
『霹靂と遊ぶの楽しい』
『おじーちゃんたちと過ごす楽しい』

 全てがポジティヴな想いばかりであった。
 誰も彼もが傷つき倒れていくだろう。それが戦いの常である。ならばこそ、『陰海月』は楽しいという思いを、嬉しいという思いを抱く。
 それこそが彼の心に宿る希望であるからだ。
『だから、ぼくはそれらを護るためにも戦えるんだ!』
 言葉持たぬ者にも希望は宿る。放たれる破滅的な破壊光球が迫っている。だが、その光さえも遮るように『名もなき大樹』より放たれる光。

『うわっ、眩しいのだ!』
『陰海月』は己がまとう1680万色もの光を遥かに凌駕する輝度の光を受ける。
 その手にあったのはスリングショット。
『光の武装』とはこれのことかと理解する。
 球は1680万色に輝く光珠。
 ゴムと一緒に掴んで、万力の如き力で引き絞る。放たれた光珠が破壊光弾と激突し、それを打ち砕いていく。
「Lha、Lha、Lha――」
 悲しみだけがまた募っていく。

 あの『大天魔怪獣アーク』の胸にある彫像の如き天使。
 あれが悲しみの元であると『陰海月』は理解した。あの悲しみは怪物に成り果てたからではない。
 過去に歪んだからだと理解できる。
 破壊したいわけじゃない。
 ただ、悲しいままではいたくないという切なる願いが、あの歌声に悲しみを湛えさせているのだ。

 破壊光弾を砕いた1680万色の光珠が合体し飛ぶ。
 それは流星のように『大天魔怪獣アーク』へと走る。
『ぼくを止めても。輝くのは止まらないからね! そのままだよ! どんなに悲しくても、希望が灯れば涙もいつかは悲しみじゃない何かを宿すはずだから』
 だから、その悲しみを今は受け止めようと『陰海月』は合体した光珠の一撃を『大天魔怪獣アーク』へと叩き込む。

 巨体が傾ぐ。
 希望の光はいつだって心のなかにこそある。
 それが未来という暗闇を照らす唯一の明かり。
 そして、それは篝火のように絶望と悲しみ暮れる者の心にもまた優しい光となって灯ることを示すのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴェルンド・ラスリス
※アドリブ共闘歓迎

俺の希望か。
それは復讐。己の全てが歪んだあの日の精算をしなければ俺は前には進めない。
そしてその先にある、この世界から俺のような復讐鬼が生まれない世界。これこそが俺の希望だ。

せめて、あのデカブツに傷つけれるような大型武装で来いよ!

UC『覚醒する怨嗟の復讐鬼』を発動させ、武装を使う準備を整えておこう。



「俺の希望か」
 ヴェルンド・ラスリス(獄炎の復讐鬼・f35125)は小さく呟く。
 希望の聖地オーンブル。
 その地にありし『名もなき大樹』より光が放たれ、猟兵たちに『光の武装』を齎すのを見た。
 生まれながらにして人間と吸血鬼、双方からの迫害を受けていたダンピールである自身にとって、希望とは縁遠いものであったのかもしれない。
 身を焦がすような復讐心が心の中を占めている。
 己の血は獄炎。
 ならば、その復讐の心こそが己の希望そのものであるといえるだろう。

 己の全てが歪んだあの日の精算をしなければならない。
 そうしなければ己は前には進めない。
「Lha、Lha――」
 歌声が響いている。
 今も響いている。悲しみだけが宿る歌声。聞く者にとっては歌声ですらない不快な音であったことだろう。
 何もできない。
 何も変わらない。
 何も得られない。

 そんな悲しみが『大天魔怪獣アーク』の体を突き動かしている。
 胸に宿る彫像の如き天使。それが素体と成った者の末路であろう。これ以上の悲しみを増やさぬためにこそ彼女は身を投じたのかもしれない。
 けれど、その悲しみが過去に歪む。
 体長60mもの巨大な体が空へと舞い上がり、黄金の翼を羽撃かせる。
 強烈な爆風と衝撃波がヴェルンドを襲う。

 痛みが走る。
 その痛みすら己の復讐を燃え上がらせる風となるだろう。
「そうだよな。その悲しみが全てを歪める。だから俺は復讐こそが己の希望であると知る。復讐の炎が宿る限り、俺は戦うことができる。この道の先が在ることを知ることができる」
 この先。
 未来という名の暗闇の中に輝く灯火がある。
 それは幻視とでも言うべきものであったことだろう。見果てぬ夢であったかもしれない。

「この世界から俺のような復讐鬼が生まれない未来。これこそが俺の復讐の先にある、俺の希望だ」
 その言葉に呼応するように『名もなき大樹』より光が放たれる。
 手にする大剣にまとう光の刀身。
 極大にまで伸びる刀身は、ヴェルンドの望むものであったことだろう。
 荒ぶ爆風を受けながら彼は振り上げる。
 己の希望を。
 己が切り裂くべき絶望を見据えて、その力を振るうと決めたのだ。

「全制御解除…復讐のためなら明日はいらねぇ!」
 その叫びは、ともすれば希望のためにこそ明日を望むことであっただろう。
 獄炎の血が体の内側から爆ぜるようにして吹き荒れる。光の刀身が膨れ上がり、振り下ろした瞬間に爆発的な威力と成って『大天魔怪獣アーク』へと振り下ろされる。
 覚醒する怨嗟の復讐鬼(デッドライン・アヴェンジャー)は見据える。武装の全てを持って、敵を切り裂く。

 確かに『大天魔怪獣アーク』の悲しき旋律は聞こえている。
 だが、その悲しさは伝播するものだ。
 風よりも速く、雷よりも遠くに広がっていく。遅かれ早かれ、こんな悲しみが満ちていくのかも知れない。
 けれど、誰かの悲しみに寄り添う優しさを人は持っている。
 人の憂いに寄り添うからこそ、優しさなのだ。ならばこそ、ヴェルンドは、己の中にも誰かを思う心があることを知る。
「その絶望と悲しみを、|俺の希望《復讐》で切り裂く!」

 爆風を切り裂き、衝撃波を吹き飛ばしながら放たれた光の刀身の一撃が『大天魔怪獣アーク』を袈裟懸けに切り裂く。
 巨体を打ち据え、ヴェルンドは渾身の力を発露し、己の体の内側を焼く獄炎の血、その痛みに胸を抑える。
 寿命を削る覚醒。
 ヴェルンドは光の武装が消えていくのを見やり、己の中にあるものに手を伸ばすように胸を抑える。

 痛みは捨て置くことができる。
 けれど、己の言葉に彼は燃えるような衝動を感じたことだろう。
 己のような復讐鬼が生まれない世界。
 それを望み、手をのばすことこそが、希望であるのだと自覚したのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
希望、希望ね。
大した希望は持ってないわ。今で十分幸せだから。ニコルやアヤメや羅睺達と愛し愛され、爛れた愛欲に溺れながら、時にこうして猟兵として死地に立つ。
願わくば、そんな毎日がずっと続きますように。

薙刀に光が宿った。これで戦えってことね。
「精神攻撃」の魂喰召喚。これで大天魔怪獣の魂魄を断つ。

かつての大型恐竜には、効率よく動くために身体の各部に神経の塊――副脳を持つものがいたと聞く。この体軀の怪獣なら、同じ仕組みを持っているんじゃないかしら。
どちらにしろ、物理攻撃よりは精神攻撃の方が効果ありそう。
飛鉢法で「空中戦」をしながら、怪獣の体幹を狙って薙刀の一撃をお見舞いする。
さあ、大地に墜ちなさい! 



「希望、希望ね」
 村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は二度、希望という言葉を繰り返した。
 彼女にとって希望は、そう大したものではない。
 仮に彼女の胸に抱く希望を見出したとしても、彼女にとってそれは声に出して言うほどのものでもなかったからだ。
 今でも十分幸せであるから。
 愛し、愛される者。
 時として猟兵として死地におもむく。

「願うのならば、そんな毎日がずっと続きますように」
 それが彼女の希望であった。
 彼女にとってはささやかなものであったし、取り立てて言うべきことではない。けれど、言葉にしてみれば存外しっくり来るものであった。
 別にそうであると確信していたわけでもない。
 手にした薙刀に『名もなき大樹』から放たれた光がまとわれる。
「これで戦えってことね」
 だが、彼女の言うところの大した希望でもない言葉ですら抱けぬ者がいる。

 それが『大天魔怪獣アーク』である。
 胸に配された彫像の如き天使。
 彼女の歌声が悲しみに満ちている。猟兵たちの攻撃は『光の武装』によって強化され、体長60mもあろうかという巨躯に有効打を与え続けている。
 黄金の翼が羽ばたく。
 放たれる爆風と衝撃波。
 それをゆかりの手にした薙刀の一閃が薙ぎ払う。
「急急如律令! 汝は我が敵の心を砕き、抵抗の牙をへし折るものなり!」
 魂喰召喚(タマクイショウカン)によって式神の宿りし薙刀の一撃が『大天魔怪獣アーク』に刻まれる。

 いや、その斬撃は肉体を傷つけるものではない。
 その斬撃を見舞った対象の戦闘意欲や抵抗心を支える魂魄だけを切り裂く一撃。
「かつての大型恐竜には、効率よく動くために身体の各部に神経の塊――副脳を持つものが居たと聞く。この体躯の怪獣なら」
 同じ仕組みがあってもおかしくはない。
 核たる天使。
 素体と成った天使は胸部に存在している。

「Lha――、LhaLhala――」
 歌声が響く。
 悲しげな声色。悲しいと感じるのはゆかりの心が豊かであったからであろう。人の心は千差万別。
 であればこそ『大天魔怪獣アーク』の歌声は、生命の讃歌を厭うものであった。
 過去に歪みしオブリビオンだからこそ。
「その怪獣の身体、仕組みがどうあれ、その体感を狙わせてもらうわ!」
 ゆかりは鉄鉢で空を舞い、『大天魔怪獣アーク』が怯むその隙に巨体の腰部をへと『光の武装』によって強化された薙刀を叩き込む。

「さあ、大地に墜ちなさい!」
 放たれた一撃が『大天魔怪獣アーク』を打ち据える。
 見上げるほどの巨躯。凄まじいまでの巨体。
 だが、希望の聖地オーンブルにそびえる『名もなき大樹』は、希望に応じた力を与える。

 暗闇の如き見通せぬ未来を前にしながら、確かな幸せを知るゆかりにとって、その希望の光は意識せずとも大きなものであったことだろう。
 故に、その斬撃の一撃から『大天魔怪獣アーク』の内部に走る『光の武装』の一撃が、次々と炸裂するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
「オブリビオンがこれ程悲しみに満ちた歌を響かせるとは。
その声を聞くとこの世界にも、他の世界にも
悲しみを背負いながら生きている人がいる事を思い出させる。
でもそれ以上に俺の心に響くのは例え悲しみに満ちても
生きる限りはそれを乗り越える希望があるという事。
命を落としてしまえば悲しむ事もできなくなる。
ならば俺が望むのは、生を摘み取る存在に抗する為の武器。」

手にしたのは己の魔力に比例して力を発揮する光の錫杖。
錫杖とデモニックロッドを手に光の波動と闇の魔弾を放って
破壊光弾に対抗。光弾の回避と相殺、羽への攻撃を行う。
敵の光弾を退けたら敵本体を蒼霊焔視で攻撃。
「俺が戦う理由を思い出させてくれた事、感謝するよ。」



 歌が響いている。
 その歌を聞いた機械化オブリビオンたちは、不快な音であると断じた。
 悲しげな音だとすら理解しなかった。感じなかったのだ。
 過去に歪む者たちは悲しみを理解しないのか。だが、『今』を生きる猟兵にとって、その音は、歌声であり、そして悲しげでもあったのだ。
「オブリビオンがこれほど悲しみに満ちた歌を響かせるとは」
 フォルク・リア(黄泉への導・f05375)は『大天魔怪獣アーク』の胸部に彫像の如き天使が埋め込まれているのを見る。

 歌声はそこから響いてきている。
 悲しい歌だとフォルクは思った。
 この世界にも、他の世界にも。悲しみを背負いながら生きている人がいることをフォルクは思い出すだろう。
「どうしようもなかったのだろう。素体となったこと、兵器となったこと、怪獣と成り果てたこと。それらの全てに因果がある。そして」
 フォルクは人々の悲しみを見てきた。
 苦しみを理解してきた。
 どれもが己の力では取り払えぬものであると思い知らされてきた。

 故に彼の心に響くのはたとえ悲しみに満ちていたとしても、決して変わらぬもの。
 そう、人間の讃歌は暗闇の如き未来を進むための勇気を持って歌われるものである。
「生きる限りはそれを乗り越える希望があるということ。生命を落としてしまえば、悲しむこともできなくなる」
 そう、生きてこそなのだ。
 フォルクの胸に抱く希望は生きてこそいだき続ける事のできるものである。
「ならば俺が望むのは、生を摘み取る存在に対抗するための武器」
「Lha、Lhalala――」
 声が、歌が、響く。
 絶望と悲しみ、苦しみに満ちた歌がフォルクの耳朶を打ち、『大天魔怪獣アーク』の黄金の翼が羽ばたく。

 ユーベルコードの煌めきを見た。
 放たれる複数の破壊光弾。
 それらは一気にフォルクに迫っている。
「応えろ――!」
 掲げたフォルクの手にあるのは『光の武装』。『名もなき大樹』より放たれた光が、錫杖となって彼の手の中にある。
 みなぎる魔力を注ぎ込み、力を発揮する錫杖が光の波動と闇の魔弾によって煌めく。
 織りなされる光と闇。
 迫る破壊光弾と激突する波動と魔弾が力の奔流を巻き起こし、周囲に暴風を走らせる。

「Lha――!」
 羽ばたく黄金の翼をフォルクは見た。
 あの力は悲しみを源泉としている。己の悲しみ。変えようのない過去。どうしようもない未来。
 暗闇から真っ逆さまに頭から奈落に墜ちているかのような悲鳴じみた悲しみの歌声。
「俺が戦う理由を思い出させてくれた」
 フォルクは己の中に希望があるからこそ戦うことを決めたのだと自覚する。
 悲しみに暮れる人々がいる。
 そんな人々の隣に添いたいと思ったのだ。例え悲しみが満ちていても、それを乗り越えるたくましさが人にはあることを信じたい。

 そして、その信じた彼らの生き方を護りたいと思ったのだ。
 光弾を退け、フォルクの瞳がユーベルコードに輝く。
「感謝するよ」
 フォルクの視線が『大天魔怪獣アーク』の黄金の翼に向けられる。
 蒼霊焔視(ファントムアイズ)は視線を向けた先にあるものに、突如として起こる魂を焼く蒼炎を齎す。
 あの悲しげな歌声の主を救うことはできない。

 けれど、その歌声を二度と響かせないようにすることはできる。
 フォルクは己の胸に抱いた希望の光が膨れ上がるのを感じるだろう。迸る蒼炎が、あの悲しき巨躯を燃やす。
 今は、それだけでいいのだと言うようにフォルクは未来を希望という灯火を持って進むのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクトリア・ノウェム
そんなの簡単です、借金全部返して、ばか両親を見つけ出して、ひとこと文句を言ってやるです
どの屍人帝国が相手だったかは知らないけど、あの二人がそう簡単に死ぬ訳ないです
だから屍人帝国の連中を全部叩いていけばそのうち見つかるです

それを阻むなら、皇帝でも天帝でも帝竜でも、
誰だろうと|全て打ち破って《Destroy them All》、私の晩御飯代にしてやる、です

エンジェリックドライブ出力全開、
私の魔力も光の武器(火砲系)とA.F.C.に込め、全力の【G.A.F.C.】をぶっ放すです

どうせこれを撃てば「何とか浮かんでる」程度まで弱化するです
なら、この一発で全部撃ち抜いてやるだけ、です



 歌が聞こえる。
 悲しい歌であると理解できたのは、数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)が多くを取りこぼしてきたからであったのかもしれない。
 オブリビオンと化した友を見送った。
 だからこそ、その悲しげな旋律のような『大天魔怪獣アーク』の胸に抱かれた天使の歌声を、心から悲しいと思えたのだ。
「この音……この声、魂の底から何かを叫びあげるような歌……?」
 多喜は、おのれの魂が震えるのを感じただろう。

 歌声は心の琴線に触れて音を奏でる。
 故に彼女は目の前の巨体。体長60mにも及ぶ巨大な怪獣を前にして、荒ぶように放たれる反響音を真っ向から受け止める。
「まさかコイツ、哭いているのか!?」
「Lha――」
 響く音は誰にも理解されぬ声。
 だが、今に生きる多喜だけは理解するだろう。
 
 己の境遇を嘆いている。
 どうしようもなく止めようもない怪獣としての身体。オブリビオンとして歪み果てた魂。
 異形なる怪物。
 その姿を見ることすら叶わずとも、その力の発露があらゆるものを破壊することを知る。
「だから自ら諸共、全てを滅ぼそうってのか!?」
「Lha――」
 答えない。応えられないのだ。
『大天魔怪獣アーク』は嘆く。悲しい音色そのものたる歌を響かせながら、迫るのだ。

「そんな絶望と結末、許せるかってんだよ……ああ、アタシが此処で望む希望はハッキリ分かった。アーク、アンタの歪んだ有様を正し……穏やかな終わりへ導きたい!」
 それが手前勝手な願望であることなど多喜には分かっていた。
 だが、望まずには居られない。
 あんな悲しい歌声を世界に響かせてはならない。
 ただ、それだけが彼女の心の中を占めていた。猟兵たちの攻勢によって『大天魔怪獣アーク』は消耗している。

 それだけでは足りない。
「だから歌え、アーク。だから叫べ、アーク」
 聞かせて欲しい。
 悲しみと絶望に染まった歌声を。もう二度と響かせなくて良いように。無念の想いを彼女は受け止める。
 オーラの防御も気休めにしかない。
 吹きすさぶハウリングの衝撃波が無差別に放たれ、周囲のあらゆるものを破壊していく。

 痛みが走り抜ける。
 全身をしたたかに打ち据えたかのような痛み。
 どうしようもない痛みだ。共有できて、引き受けることができたのならば引き受けてやりたいと思うほどであった。
 なんで彼女ばかりが苦しみによって、悲しみを奏でなければならないのか。
 それがどうにも多喜には理解できなかった。
 苦しみを分かつのならば、その痛みは半分になるはずだ。けれど、『大天魔怪獣アーク』の胸にいだいた素体と成った天使の嘆きはますばかりであった。

「『光の武装』よ、アタシのなけなしの浄化の力をアイツに届かせておくれ!」
 彼女の涙溢れる瞳がユーベルコードに煌めき、『名もなき大樹』より光が放たれる。
 それは『光の武装』であったが、何かを傷つけるものではなかった。
 深層心理に、存在の本質に届く思念の波。
 光の波動のように放たれたそれは、多喜の中にある心を打ち出す。
 襲い来る過去。
 歪み果てた肉体と魂。
 終わりを告げてなお過去に歪みにじみ出なければならない悲哀。

 それら全てを受け止め、多喜のユーベルコードは発露する。
 謂わば、過去に抗う腕(カウンターパスト)。
 過去の濁流の如き波をかき分け、彼女は手をのばす。光の波動は手の形となって『大天魔怪獣アーク』へと伸びるだろう。
 触れる。
 触れてはならない物に触れた感触があった。
「Lha――」
 歌声だけが多喜の中に満ちていく。
 痛みも、苦しみも、悲しみも。

 どんなものさえも希望が乗り越えていく。途方に暮れる悲しみだって、希望の篝火によって導かれるべきなのだ。
 差し伸べた手は『大天魔怪獣アーク』の誰かを徒に傷つける悲しみをこそ封じる。
 それが今の多喜のできる唯一つのことであるというように、光の腕が『大天魔怪獣アーク』を包み込む。
 そして、その光の腕が消えた時、そこにはかの巨大な怪獣の姿はない。
 霧消して消えていったのだ。

 涙はいつかは乾き、そして希望は涙の痕をこそ輝かせる――。

大成功 🔵​🔵​🔵​


 希望という名の光が人の前にあるのならば、その形は影法師のように千差万別であったことだろう。
 生きていく上で必要なものはいくつかある。
 綺麗事を言うのならば理由であるし、綺麗事を省くのならば世知辛いものである。
 故にヴィクトリア・ノウェム(はらぺこ空戦天使・f33941)は語る。
 そんなのは簡単だと。
「借金全部返して、ばか両親を見つけ出して、ひとこと文句を言ってやるです」
 彼女が今もたくましく生きている理由はそれだ。
 自分に飛空艇を建造するための資金、その借金を押し付けてどこかに消えた両親。
 彼らを見つけ出して文句を言いたい。
 ついでに借金も全て返済してきれいな身体で会いたいと思うのだろう。

 そんでもって、両親と共に食卓を囲みたい。
 食べることが大好きだ。
 その時ばかりは借金という頭痛の種を忘れることができる。そして、そこにあのばかな両親二人がいたのならば、それでいいと思うのだろう。
 どの屍人帝国が相手だったのかは知らない。
 けれど、あの二人が。
 自分の記憶の中にある二人が簡単に死ぬわけがないと彼女は思っていた。
「だから、屍人帝国の連中全部叩いていけばいいです」
 そのうち見つかる。
 だが、それを阻むものがある。彼女の希望を阻むものがある。ならば!

「『皇帝』でも『天帝』でも『帝竜』でも、誰だろうと|全て打ち破って《Destroy them All》、私の晩御飯代にしてやる、です」
 彼女の飛空艇が外装へと変形し、その手にしたG.A.F.C.(ギガ・エンジェリック・フォース・キャノン)に天使核のエネルギーが流入していく。
「エンジェリックドライブ出力全開。限界チャージ……!」
『名もなき大樹』から放たれた光が手にした巨大砲塔をさらに長大なものへと変えていく。

 示す先にあるのは『大天魔怪獣アーク』。
 その威容は凄まじいものであった。だが、猟兵たちの攻勢によって消耗している今ならば、捉えられる。
「Lha、Lha、Lha――」
 悲しげな音が響く。それは歌であると理解できただろう。けれど、ヴィクトリアは止まらない。
 瞳に輝くはユーベルコード。
 どれだけ悲しみに過去が沈むのだとしても、ヴィクトリアの語る希望は決して潰えることはない。
 それがたくましさだというのならば、簡単なことであっただろう。ただ両親と会いたい。その切なる願いは、彼女の言葉を借りるのならば『文句を言う』、それだけに支えられている。

「耐えられるものなら、耐えてみればいい、です……!」
 放たれる光条は、極大にまで膨れ上がる。
 あらゆる防護と障壁を貫通し無視する光線。『光の武装』によって追加されたロングバレルが焼けただれるようにして自壊していく。
 それほどまでの一撃。
 空に光条が一閃する。

 黄金の翼を貫く。
 悲しげな歌はまだ聞こえる。けれど、ヴィクトリアの胸にある希望は、その悲しみこそを撃ち抜く。
 失墜していく『大天魔怪獣アーク』。
「あの二人を見つけ出すまで立ち止まってなんていられない、です」
 燃えるような希望。
 それがヴィクトリアを前に、前に、どんなに暗闇に満ちているであろう未来であっても進ませるのであった――。
ルクス・アルブス
【ステラさんと】

ここは師匠の匂いがしませんね。
そのかわりに綺麗な歌が聞こえますが……。
ちょっとさみしい感じですね。

……ステラさんの、溢れるやべー力はちょっと羨ましいです。

とりあえず、せっかくですからわたしがセッションして、
明るく元気にしてさしあげちゃ痛ぁ!

ステラさん、何するんですか!?

え? 今回は時間がないから演奏とかできないんですか?
それならしかたないですね。

大樹には、光の勇者として、この世界があるべき姿を取り戻せるよう、
わたしの【光の音叉】に力を貸してもらいましょう。

って、ステラさんそれ……いえ、いいです。
予想はしていましたけど、さらに斜め上だったもので。

……さすがは『やべーメイド』です!


ステラ・タタリクス
【ルクス(f32689)様】と
|エイル様《主人様》に!!会いたいです!!

おっと希望ではなく|欲望《願望》を言ってしまいました
誰がやべーメイドですか
そしてさせるかぁっ!!(すぱーん)
油断も隙もないですねこの勇者

さて
敵が強大といえど臆する……なんかすごく勇者してますね?
どうしていつもそうならないのですか?

私の希望
それはもちろんエイル様と添い遂げること以外になく
さらに言うならショタでも成人でもどちらでも可
あ、V様は無しで
そんな幸せ家族計画を実現するためにも
アレを一撃で屠りたいのですが
何か良いアイテムはありませんか
名もなき大樹様!!
(ここまで一呼吸)

よしそれでは倒しましょう
おや?ルクス様どうしました?



 願いとは希望と結び付けられるものであったことだろう。
 生きている以上、誰にもあるのが願いである。欲望と言い換えることもできただろう。どちらにせよ、人にはそれらが必要なのである。
 今という時間を生きて、前に進むためには。

 だからこそ、ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は叫んだ。力の限り叫んだ。
 あらん限りの声を振り絞って叫んだのだ。
 ご主人様を探し求める献身的なメイド(ホンニンハソウオモッテイル)の希望は迸るようであった。
「|『エイル』様《ご主人様》に!! 会いたいです!!」
 その叫びにルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は特に反応することなく、師匠の匂いがしないなーと思っていた。
 それに『大天魔怪獣アーク』の奏でる悲しげな歌。
 きれいではあるが、寂しい。
 そう感じるのはルクスもまた師匠とはぐれて寂しいという想いがあるからだろう。どこに行ったのだろう。シチューはまだちゃんと冷凍保存しているのに。みたいな。そんな感じであった。

 二人の温度差が酷い。
「おっと希望ではなく|欲望《願望》を言ってしまいました」
「……ステラさんの、溢れるやべー力はちょっとうらやましいです」
 こんなふうに色々あけすけに出来たら人生楽だろうな、とルクスは思ったかもしれない。けれど、今の彼女は勇者である。
 悲しげな歌が響いているのならば、その歌を明るいものにしたいと願うのだ。
「あの『大天魔怪獣アーク』が、この悲しい歌を響かせているのなら、せっかくですからわたしがセッションして、明るく元気にしてさしあげちゃ痛ぁ!」
 そんなルクスの後頭部をスリッパがぶち抜く。

 困惑する。
 今わたし、すごいいい感じでしたけど!? とルクスは抗議の瞳を向ける。
 マジで何してるんだと言わんばかりであったが、ステラの目がつり上がっていた。
「誰がやべーメイドですか。そして、させません。油断も隙もないですねこの勇者」
 ルクスの演奏は独演会そのものである。
 不協和音そのもの。
 マジで精神がこう、あれしてしまう感じの演奏なのである。あれをもう一度聞けとか拷問であると思ったのだろう。

「今は時間がないのです。ささっと終わらせなければなりません」
「え、演奏とかできないんですか? それなら仕方ないですね……なら! この世界があるべき姿を取り戻せるように! 私の光の音叉に力を貸してください!」
 ルクスが音叉を掲げる。
 彼女の希望は唯一つ。
 勇者として世界を在るべき姿に戻すこと。
 オブリビオンという過去の化身に侵されることなく、人の営みに世界を任せる在るべき姿にすることである。

『名もなき大樹』から光が放たれ、音叉に宿る。
『光の武装』は巨大な刀身。光輝く波動は、ステラの瞳にもはっきりとわかったことだろう。
「……なんかすごく勇者していますね? どうしていつもそうならないんですか?」
「いつもこんな感じですけど!?」
「――え」
「え」
 二人が顔を見合わせている間、『大天魔怪獣アーク』が撃ち抜かれ、もがれた黄金の片翼をもって爆風を巻き起こす。

 歌声はまだ響いている。
 衝撃波が二人を襲うだろう。だが、その衝撃波をルクスの光の音叉剣が一閃する。
 衝撃波すら切り裂いて進む刀身。その極大な一撃が『大天魔怪獣アーク』を打ち据える。
「私の希望。それはもちろん『エイル』様と添い遂げる事以外になく。さらにいうならショタでも成人でもどちらでも可。あ、V様は無しで。そんな幸せ家族計画を実現するためにもアレを一撃で屠りたいのですが何か良いアイテムはりませんか『名もなき大樹』様!!」
 ここまで一呼吸である。
 文面の為に句読点などは打ってある。これを早口言葉も斯くやとばかりに隣でまくしたてられたルクスの心境を述べよ。

「って、ステラさんそれ……いえ、いいです。予想はしていましたけど、さらに斜め上だったもので」
「なにか?」
「いえ、なんでも」
 二人はちょっとまっていた。『名もなき大樹』から光が飛び出してくると思ったのだ。だがしかし、いくら待てでも光は来ない。
 だって、それ自分で行っていたけど、希望じゃなく欲望だし願望だし! 願いを叶える龍珠的なあれじゃないのである。

 あれ!? とステラは驚愕する。
 これで一発逆転の光の武装で明日に向かって大勝利! のはずだったのだ。
「……さすがは『やべーメイド』です!」
「納得がいきませんが!?」
 二人は迫る衝撃波から逃れるようにして走る。
 ルクスの手にした光の音叉剣がなければ、そのままぶっ飛ばされていたことだが、しかし、ルクスの世界を想う希望が彼女たちを護るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
希望を語る、か
ならこれを言っておく必要があるよね
必ず元の体に戻る

いくつもある世界のどこかには
それを実現する技術や魔術がきっとあるはず
絶対に見つけてみせるよ

だからオブビリオンによる
カタストロフは絶対に阻止たいんだ

あら、つれないですの
私達は一心同体ですのに

折角ですから私も希望を述べますの
無為に喪われる者の居ない
優しく穏やかで苦しみのない
世界をいつかもたらせてみせますの

物は言いようとしかコメントしようが無いね

理解して貰えなくて悲しいですの
それはそれとしてあの歌声は
永遠とするには少し物悲しいですの

それについては同意かな

光の武装を貸して貰えたら
飛行で破壊光弾を躱しつつ
ガトリングガンや光の武装で攻撃するよ



 佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)にとって、元の体に戻るということは、決して譲れぬ一点の希望であった。
 一変した人生。
 それをやり直す。
 邪神と融合することに寄って変化した肉体。
 元は男性の体であったのに、肉体は女性へと変貌した。封印は未だ邪神を閉じ込めるものであり、晶が諦めることがなければ、その封印は辛うじて維持されるか細いタイトロープ。

「必ず元の体に戻る」
 それが晶の希望であった。
 世界がいくつもあるのならば、どこかに必ず己の希望を実現する技術や魔術がきっとあるはずなのだ。
 だからこそ、それを見つけてみせる。その時まで晶は歩みを止めrうわけにはいかないのだ。
「オブリビオンによるカタストロフは絶対に阻止したいんだ」
 語る希望に『名もなき大樹』が応える。
 光が飛び出し晶の手にした携行式ガトリングガンに宿る。
 繋がるのは巨大なポッド。ベルトリンクがガトリングガンに装着され、膨大な光の弾丸を撃ち放つ。

『大天魔怪獣アーク』の歌声と共に放たれる黄金の片翼に寄る爆風。
 衝撃波があらゆるものを破壊せんと迫る。
 だが、今や『大天魔怪獣アーク』は大地に失墜している。空を飛ぶ力を失わされ、その巨体は浮遊大陸に釘付けにされているのだ。
 ならばこそ、晶の手にしたガトリングガンより放たれる光の弾丸が爆風すら押しのけて、その巨体に殺到するのだ。
「あら、つれないですの。私達は一心同体ですのに」
 ガトリングガンの斉射の轟音の合間に内なる邪神が晶に語りかける。

 邪神にとって晶はどんな存在であったのだろうか。
 そして、彼女の語る希望とは晶にとってどのような意味を持つだろうか。
「無為に喪われる者の居ない、優しく穏やかで苦しみのない世界をいつかもたらしてみせますの」
「物は言いようとしかコメントしようがないね」
「理解してもらえなくて悲しいですの。それはそれとしてあの歌声は、永遠にするには――」
 光の弾丸を打ち込み続ける。
 その合間に響くは『大天魔怪獣アーク』の核にして素体であった天使の声。
 悲しみに染まる歌声は、過去に沈むことによって永遠にも親しい辛苦を与えられたがゆえであろうか。
 それとも過去に在りし悲しみを引きずっているからだろうか。

 どちらにせよ、邪神はそれを永遠にするつもりはないようであった。
「少し物悲しいですの」
「それについては同意かな」
 ガトリングガンの斉射の勢いに負けないように晶は足を踏ん張る。
「Lha――」
 歌声は悲しく。
 打ち込む弾丸は切なさを胸に訪れさせる。それでも止まらない。引き金にかけた指を緩めるわけにはいかないのだ。

 絶対にオブリビオンによるカタストロフを阻止したいという希望が、晶の指に力を与える。
「君は苦しんで、悲しんで、そして、その歌を歌うのだろうけれど。なら、悲しみを止めるのではなく、その歌声を響かせないようにすることが僕らの務めで、使命だ」
 だから、と晶は前を向く。
 可憐なドレス姿を身にまとい、その力は女神降臨(ドレスアップ・ガッデス)如く輝く。
 ガトリングガンの威力が上がる。
 光の弾丸は嵐のように暴風を霧消させながら『大天魔怪獣アーク』へと撃ち込まれ続ける。

 過去は変えられない。
 悲しみに染まった過去は、滅ぼすしかない。
『今』に迫り、『今』を壊す悲しみなんてあってはならないのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

―――意志持つ飛空艇、自称”世界一速い”ボロ船[ミレニアムドラゴン号]の|航海《後悔》日誌より抜粋
「ぬあああああああーーーー!死ぬうウウウ!!死ぬ!!今日こそ死ぬぅううあああーーーっ!くるんじゃなかったぁあーーーっ!!」

●きぼう
この後は勇士や猟兵のみんなとやったね!とハイタッチッ
杯、高らかに掲げて打ち合わせて飲み交わし!
ごうちそうたべて!
踊って、歌う!

●ひかりの
これは…光の[ミレニアムドラゴン号]くん!
そうか…ボクのためにあの世から戻ってきてくれたんだね!
「いや別に死んでn」
アハハハハハハッ!飛べ飛べゴーゴー!

そして【第六感】で隙を読み、UC『神撃』でドーーーンッ!!



「ぬあああああああーーーー!死ぬうウウウ!!死ぬ!!今日こそ死ぬぅううあああーーーっ!くるんじゃなかったぁあーーーっ!!」
 そんな声が希望の聖地オーンブルに響き渡る。
 意志持つ飛空艇、自称”世界一速い”ボロ船『みレミアムドラ号』が飛ぶ。
 暴風荒ぶかのように『大天魔怪獣アーク』が解き放った爆風と衝撃波に翻弄されているからだ。
 その船首の先に立つのはロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)であった。
 彼は笑っていた。
 こんな状況でも笑っていたのだ。

 希望を語るのならば、笑顔でなければならないと彼は思っていたし、この『アルカディア争奪戦』が終わったのならば全てまるっと笑顔で過ごしたいと思うのだ。
 勇士や猟兵のみんなとやったね、とハイタッチしたい。
「杯、高らかに掲げて打ち合わせて飲み交わし! ごちそうたべて! 踊って、歌う!」
 それが人の営み。
 なにか一つの大きなことを成し遂げたのならば、笑いあうのがいい。
 そんな未来を夢想のままに終わらせない。終わらせてなんかやるものかとロニは笑って飛び出す。

 爆風の中に巻き込まれて空高くに打ち上げられる『ミレニアムドラゴン号』。
「ああああ――!!!」
 叫び声を背にロニはそれでも笑って『大天魔怪獣アーク』へと飛び込む。
 片翼を失って、身に数多の打撃の痕を残されながらも、それでも響く悲しい歌声。その歌声は途切れない。
「Lha――」
 打ち込む拳を残された片翼が防ぐ。
 巨体は大地にありながら、それでもなお抵抗する。

「そんな悲しい歌を歌ってないでさ! 喜びの歌を歌おうよ!! きっとその方が楽しいよ!!」
 それが希望。
 ロニがほしいと願う未来。
 希望を受けて『名もなき大樹』が光を放つ。
 その光は空高く舞い上げられた『ミレニアムドラゴン号』へと放たれ、その船体を光で包み込む。
「これは……光の『ミレニアムドラゴン号』くん!」
 ロニは見上げただろう。
 悠然と空を飛ぶ……いや、まるで急降下するように突っ込んでくる光の飛空艇を。
「そうか……ボクのためにあの世から戻ってきてくれたんだね!」
「いや別に死んで」
 ない、と言わせてくれないのがロニである。

 ロニは『ミレニアムドラゴン号』へと飛び乗ると、旋回して『大天魔怪獣アーク』へと迫る。
「アハハハハハハッ! 飛べ飛べゴーゴー!」
 加速する飛空艇。
 まるで制御の聞かない暴れ馬。
 それほどまでの出力を得てロニは船首に再び立つ。握りしめた拳がユーベルコードの輝きを解き放つ。

 放たれる爆風を躱しながら、一直線に――矢のように飛ぶ『ミレニアムドラゴン号』。その加速と彼の神撃(ゴッドブロー)が合わされば体長60mの巨体であろうとも関係ない。
 放つ一撃は光条のように大空の世界に刻まれることだろう。
「ド――ンッ!!」
 凄まじい轟音が響き渡りロニの拳は『大天魔怪獣アーク』を打ち据える。
 悲しい歌はこれでおしまいだと言うように。
 希望満ちる明日には、似つかわしいというように。
 ロニは己の拳でもって『大天魔怪獣アーク』を吹き飛ばすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

数宮・多喜
この音……この声、
魂の底から何かを叫びあげるような歌……?
まさかコイツ、哭いているのか!?
自分の境遇を、
歪められた存在となった今の姿を嘆くように。
だから自ら諸共、全てを滅ぼそうってのか!?
そんな悲しい絶望と結末、許せるかってんだよ……
ああ、アタシがここで望む希望はハッキリ分かった。
アーク、アンタの歪んだ在り様を正し……穏やかな終わりへ導きたい!

だから歌え、アーク。
だから叫べ、アーク。
アタシと名も無き大樹に、その無念の想いを聞かせてくれ。
オーラの防御も気休め程度にしかならないだろうけど、
コイツの受けた苦しみに比べれば……!

光の武装よ、アタシのなけなしの浄化の力をアイツへ届かせておくれ!



 歌が聞こえる。
 悲しい歌であると理解できたのは、数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)が多くを取りこぼしてきたからであったのかもしれない。
 オブリビオンと化した友を見送った。
 だからこそ、その悲しげな旋律のような『大天魔怪獣アーク』の胸に抱かれた天使の歌声を、心から悲しいと思えたのだ。
「この音……この声、魂の底から何かを叫びあげるような歌……?」
 多喜は、おのれの魂が震えるのを感じただろう。

 歌声は心の琴線に触れて音を奏でる。
 故に彼女は目の前の巨体。体長60mにも及ぶ巨大な怪獣を前にして、荒ぶように放たれる反響音を真っ向から受け止める。
「まさかコイツ、哭いているのか!?」
「Lha――」
 響く音は誰にも理解されぬ声。
 だが、今に生きる多喜だけは理解するだろう。
 
 己の境遇を嘆いている。
 どうしようもなく止めようもない怪獣としての身体。オブリビオンとして歪み果てた魂。
 異形なる怪物。
 その姿を見ることすら叶わずとも、その力の発露があらゆるものを破壊することを知る。
「だから自ら諸共、全てを滅ぼそうってのか!?」
「Lha――」
 答えない。応えられないのだ。
『大天魔怪獣アーク』は嘆く。悲しい音色そのものたる歌を響かせながら、迫るのだ。

「そんな絶望と結末、許せるかってんだよ……ああ、アタシが此処で望む希望はハッキリ分かった。アーク、アンタの歪んだ有様を正し……穏やかな終わりへ導きたい!」
 それが手前勝手な願望であることなど多喜には分かっていた。
 だが、望まずには居られない。
 あんな悲しい歌声を世界に響かせてはならない。
 ただ、それだけが彼女の心の中を占めていた。猟兵たちの攻勢によって『大天魔怪獣アーク』は消耗している。

 それだけでは足りない。
「だから歌え、アーク。だから叫べ、アーク」
 聞かせて欲しい。
 悲しみと絶望に染まった歌声を。もう二度と響かせなくて良いように。無念の想いを彼女は受け止める。
 オーラの防御も気休めにしかない。
 吹きすさぶハウリングの衝撃波が無差別に放たれ、周囲のあらゆるものを破壊していく。

 痛みが走り抜ける。
 全身をしたたかに打ち据えたかのような痛み。
 どうしようもない痛みだ。共有できて、引き受けることができたのならば引き受けてやりたいと思うほどであった。
 なんで彼女ばかりが苦しみによって、悲しみを奏でなければならないのか。
 それがどうにも多喜には理解できなかった。
 苦しみを分かつのならば、その痛みは半分になるはずだ。けれど、『大天魔怪獣アーク』の胸にいだいた素体と成った天使の嘆きはますばかりであった。

「『光の武装』よ、アタシのなけなしの浄化の力をアイツに届かせておくれ!」
 彼女の涙溢れる瞳がユーベルコードに煌めき、『名もなき大樹』より光が放たれる。
 それは『光の武装』であったが、何かを傷つけるものではなかった。
 深層心理に、存在の本質に届く思念の波。
 光の波動のように放たれたそれは、多喜の中にある心を打ち出す。
 襲い来る過去。
 歪み果てた肉体と魂。
 終わりを告げてなお過去に歪みにじみ出なければならない悲哀。

 それら全てを受け止め、多喜のユーベルコードは発露する。
 謂わば、過去に抗う腕(カウンターパスト)。
 過去の濁流の如き波をかき分け、彼女は手をのばす。光の波動は手の形となって『大天魔怪獣アーク』へと伸びるだろう。
 触れる。
 触れてはならない物に触れた感触があった。
「Lha――」
 歌声だけが多喜の中に満ちていく。
 痛みも、苦しみも、悲しみも。

 どんなものさえも希望が乗り越えていく。途方に暮れる悲しみだって、希望の篝火によって導かれるべきなのだ。
 差し伸べた手は『大天魔怪獣アーク』の誰かを徒に傷つける悲しみをこそ封じる。
 それが今の多喜のできる唯一つのことであるというように、光の腕が『大天魔怪獣アーク』を包み込む。
 そして、その光の腕が消えた時、そこにはかの巨大な怪獣の姿はない。
 霧消して消えていったのだ。

 涙はいつかは乾き、そして希望は涙の痕をこそ輝かせる――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年09月10日


挿絵イラスト