アルカディア争奪戦⑨〜|仮面の勇士《マスカレイド》の卵
●前日譚:それは、Hey! Hoo! な勇士の卵たち。
どこまでも続く冒険の空。
雲海に無数の浮遊大陸が浮かぶ世界、ブルーアルカディア。
広大なこの世界を守るために、屍人帝国によってもたらされた災害『|拒絶の雲海《アルカディア・エフェクト》』を突き進み、猟兵たちは『アルカディア争奪戦』を各地で繰り広げていた。
そんな激しい戦禍の中、マグナ聖帝国の親交を受けている浮遊大陸がある。
きのこを食べて育った超人『スーパーよいこ』たちが住む、スーパーよいこランドである。
スーパーよいこはよいこであるが、猟兵に匹敵する強さとユーベルコードを持つ潜在能力の塊なのだ。
スーパーよいこランドのとある町にて、勇気あるスーパーよいこたちが集会を開いていた。
年齢性別趣味趣向、種族すら多種多様なスーパーよいこたちが、思い思いの装備を身に纏って意気軒昂と声を張り上げている。
「他の大陸の勇士たちが! そして、どこからか駆け付けてくれる猟兵さんたちが!
今も頑張って戦ってくれているんだ! だから、僕たちも立ちあがろう!」
「そうよ! この土地を守るだけじゃダメよ! 私たちだって戦えるんだから!」
「おれ、がんばる! そら、とぶの、とくい! ろけっとで、とべる!」
「へい、へい、ほー!」「へい、へい、ほー!」
勢い盛んなスーパーよいこたちが集まり、町を出てマグナ聖帝国の侵攻に抗う戦いに出立する決意を固める壮行会を開催しているようだ。
その中でも、ひと際優れたスーパーよいこ。
愛称『シャル』(年齢性別不明)は今まさに猟兵として覚醒しそうな勢いで、ドゥンドゥンドゥンと身震いしている状況にあった。
あとは、この場に猟兵が駆け付け、指導や鼓舞してくれれば……頭巾を被り、目と口のところに丸く穴を開けた仮面を装着する勇士の卵であるよいこたちが、この空へと旅立っていくことだろう。
色とりどりの頭巾を被り、仮面を付けた、|兵歩《へいほー》たちが!
●招集:配管工でもカメでもクリでもない。
「これは、ブギーモンスター……? もしくはヒーローマスク……?
人間が仮面をつけているだけにも見えマスガ……まー、いいデショー!」
実際のところ、この町のよいこたちの種族は謎に包まれているが、それはさておき。
グリモア猟兵であるバルタン・ノーヴェは、アルカディア争奪戦の予知を確認し始めた。
最初に見たのは戦闘ではなく、戦いに臨もうとする若き卵たちの壮行会の様子であった。
「このスーパーよいこランドに住む超人『スーパーよいこ』たちは、特殊なきのこを食べて育ったことで猟兵に匹敵する強さとユーベルコードを持つようになってマース!
そして、この町ではそんなよいこたちの有志が名乗りを上げて、勇士として屍人帝国との戦いに臨もうとしてマース!
ありがたい心意気でありますな!」
わちゃわちゃと集まっている彼らは皆、仮面と色とりどりの頭巾で頭部を隠しており、年齢も性別も見抜けない。
この町のよいこ、|兵歩《へいほー》としての風習らしい。
ただ、町の外に出る時には外すこともあり、よいこの中にはこの出立を機に仮面を置いていくものもいるらしい。
別に、厳格な掟とかではないようだ。
「その中でも特に秀逸なよいこ『シャル』殿でありますが、このタイミングで猟兵へと覚醒しそうなのであります!
皆様の励まし、助言、教えを受けることで、無事に『🍄猟兵化』することが予知されてマース!
あ、Bボタンを押してはいけマセンヨ!」
彼、あるいは彼女が、どのような性格なのか、何を好むのか、それは不明瞭だ。
猟兵たちが接触することで、いろいろとわかってくるかもしれない。
将来の後輩を鼓舞することは、先達である猟兵たちにとって必要なことだろう。
「そういう訳で、皆様! 戦火の中ではありマスガ、よろしければご協力くだサーイ!
何かしらの技術を教授したり、ノウハウを伝授したり、あるいは熱意を込めて語ったりしてくだサーイ!」
バルタンはそう言って、スーパーよいこランドまでのゲートを展開する。
現地に赴けば、目を輝かせて興奮する数多くのよいこたちに囲まれることだろう。
君たちの健闘を祈る。
リバーソン
こんにちは。リバーソンです。
マスターとして皆様に喜んでいただけるよう、つとめさせていただきます。
今回のシナリオは一章構成です。ブルーアルカディアの戦争シナリオとなります。
旅立つ|よいこ《ヘイホー》たちの壮行会に参加し、彼ら彼女らの士気を向上させることが目的です。
プレイングボーナスは、『よいこが勇士になれるよう応援する』です。
また、今回のシナリオには下記特記事項があります。ご確認ください。
※プレイング冒頭に「🍄猟兵化希望」の記載があった場合、この記載を行ったシナリオ参加者から1人を指名して「『シャル』を猟兵にする権利」を贈呈いたします。
シナリオ完結時に、リプレイの最終行で「この人に権利をあげます」と告知いたします。選出方法は独自に行わせていただきます。
登場人物:シャル。年齢も性別も仮面に隠されているよいこ。種族も本名も未定。
「🍄猟兵化希望」の中から指名された方の設定を利用して肉付けさせていただきます。
選出されなかった方々につきましては、『シャル』以外の勇士候補生たちに活用させていただきます。ご了承ください。
オープニング公開後、断章を公開します。
プレイングの受付期間はタグにてお知らせいたします。
皆様、よろしくお願いいたします。
第1章 日常
『青空教室』
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POW : 実践的に教える
SPD : 感覚的に教える
WIZ : 論理的に教える
👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●断章:卵の殻を破る時。
グリモアの転移により、スーパーよいこランドに到着した猟兵たち。
町の入り口に次々に降り立つ猟兵たちに、壮行会を開いていたよいこたちが気づき、にわかに活気づく。
「あ。りょ……猟兵さんだっ! みんな、猟兵さんが来てくれたぞ!」
「「「な、なんだってー!?」」」
ざわめき、ワラワラと猟兵たちに群がってくる、よいこたち。
思い思いの頭巾や仮面越しに、キラキラと輝く瞳を向けて集まってくる。
「あ、あの! あ、悪手、じゃなくて、握手! してもらえませんか!?」
「は、はじめまして! 私、皆さんの活躍をきて、聞いて! 私もって!」
「お、おれ! とべる! すごく、とべる! み、みてて、みてて!」
性別も年齢も様々な、いろんな|兵歩《へいほー》たちが集う中、一人のよいこは震えていた。
歓喜か、興奮か。それとも不安か、義憤か。
『シャル』と仲間たちに呼ばれる、スーパーよいこの中でもデラックスなよいこであるヘイホーが、仮面をつけた顔を上げて猟兵を見つめる。
交わす言葉、向けあう意思。
勇士の先達である猟兵たちの想いを受けて、殻を破ることができるのか――――。
―――そして。破るのは、一人だけなのだろうか……?
アルテミシア・アガメムノン
スーパーよいこランドの噂は聞いております。
今回はいい機会ですから、足を運んで現地でくだんのきのこを食してみましょうか。
ほほほ、もちろん、壮行会なのは分かっております。
聞けばよいこさん達は力量は十分、実戦に堪えられるでしょう。問題があるとすればよいこであること。これは我が魔界の悪魔にも言えることですからね。ノウハウがあります。
戦場の過酷さ、時には厳しい決断をしなければならないこと。オブリビオンに敗北すれば世界がどうなるか。等々を実例を交えて語って彼等に戦場の心構えを身に着けてもらいましょう。あとは希望者がいれば魔法を教授してもいいですわね。
貴方達の武運を祈ります。いってらっしゃいませ!
ヴェルンド・ラスリス
🍄猟兵化希望
※アドリブ共闘歓迎
子供は『苦手』だ。『嫌い』という訳では無い。寧ろ好ましいとすら思う。ただ『苦手』なのだ。あの日の自分と姿が重なるだけで…
ひとりで剣を振るう10歳前後の元気で真面目そうな少女に声をかける。
まるで教科書通りの剣の振り方だな。お前は教科書と同じ身長で腕力なのか?しっくり来てないなら自分の身体にあった剣技を探すことだ。剣技だけじゃダメだ。体術に投擲、他の武器にも触れておけ。選択肢の数が、戦場では役に立つ。
その尾は…お前、人狼か。ならばもっと速さを生かした方がいい。
生きるためには、使えるものは全て使え。俺が教えられることはこれくらいだからな
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
|兵歩《へいほー》、です?
古の戦士「よさく」氏が使ったという伝説の技、|平異兵法《へいへいほー》を伝承されている方々でしょうかぁ?
元々優秀な方々ですが、より町の安全が確保出来れば、安心して出立出来るでしょうかぁ
【涵輔】を発動し『女神の信徒』を召喚、|兵歩《へいほー》さん達の要望を聞きつつ、町が狙われた場合の『防御施設』の構築をお願いしますねぇ。
資材の方は『FFS』を使い指定すれば、幾らでもご用意可能ですので。
その上で、私自身は『射撃手段』をお持ちの方に[砲撃]や[援護射撃]をお教えすれば、勇士として出る方にも、町に残る方にも役立つ筈ですぅ。
ご活躍の程、応援致しますねぇ。
久留米・圓太郎
🍄猟兵化希望
■WIZ
細かいことは抜き、だ!
まずは壮行会をもっと盛り上げていこう!
【UC】と、[鼓舞、コミュ力、野生の勘]でこの場をさらに盛り上げていくぞ
■対シャルさん
[鼓舞、コミュ力]全開
なるほどー、ここの方々は飛ぶのが得意なのか
オレも飛べることは飛べるぜ!(空飛ぶ箒を持ち出して)
ちょっと競争してみるか?
([騎乗]は使ってはみるが、いかんせんUCをもう使ってるので、かろうじて
シャルさんに勝てるかな~な程度)
「いやー恐れ入った!これでユーベルコードを使いこなせれば、もっと速くなりそうだぜ」
(仮面の奥の目ヂカラに圧倒されながら)
頑張れば強くなれるのが猟兵!
ここを守りたいというその意気さえあれば!
京極・美咲
★未来創造★
【🍄猟兵化希望】
シャルさまは、女性のようです。
私よりも、少し年下で小柄な方ですね
名前は、シャルティエ・アルジェン
栗色の髪が可愛らしい女性です
耳も髪型のようになっておりますので、種族は分かりづらいですが
シャルさまは、人狼のようです
「星霊」と呼ばれる魔法存在を召喚し、使役する
いわゆる召喚術士のようです
わたくしも、ある事件で主さまと出会って猟兵となった身でありますので
闘い方は、わたくしも勉強中ですので、主さまの講義で一緒に学ぶことで
親睦と知見を深めることにいたしましょう
ベルカ・スノードロップ
★未来創造★
シャルさんをはじめ、勇士の方々には
【戦闘知識】【世界知識】【コミュ力】【優しさ】で
闘い方を教示しましょう
『年下に好かれる』『女性に好かれる』という特性が私にはあるのですが
勇士のなかで、年下の少女たちの食いつきが良い中で
シャルという仮面の子の食いつきも良いですね
小柄なので年下ではあるでしょうが、少女ということなのでしょうか
詳しくは、分かりませんが私が扱うユーベルコードで
召喚している『星霊「ヒュプノス」』を呼び出せたりするので
そんな感じのジョブなのかもしれないですね
《選択UC》を披露してみます
将来的に、グリモアベースと繋がることがあれば
彼女は、猟兵に目覚めるのかもしれませんね
馬県・義透
🍄猟兵化希望
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第三『侵す者』武の天才
一人称:わし 豪快古風
何でわし!?と思うたが。まあ…よいか。
守るために戦う、というのは立派な志である。現にわしらもそうであるからな。
だが、『自分のやれること』をよく知るがよい。
わしの場合は…まあ…破壊なのだが。わかりやすく前線での戦いに直結するな。
だが、癒しが苦手なのよ。そこはここにおる陰海月が得意とする分野であるの。
それを霹靂が守ったりすることもある。
うん?ああ、癒しも大切ぞ?戦い続けておったら、怪我をするでな。
それを治せるのは、重要なのだ。
※
陰海月「ぷきゅ!」
霹靂「クエ!」
皆にご挨拶!『おじーちゃんたち』は強いんだ!
夢幻・天魔
【超絶厨二病:厨二であればアドリブご自由に】
ククク……オレは育成スキルも超級……!
かつて異世界にて幾人もの勇者や英雄と呼ばれる者達を育ててきたものだ……
(※妄想です)
そう、あれは第18の世界であったか……
俺自身が動いては世界への影響が大きすぎるため
勇者を育てて邪神を討伐したのだったな……
決戦では俺の授けた必殺技が勝負を決めたのだ……!
(妄想を語って『異世界で取った杵柄』発動、育成成功率アップ)
さて……仮面とはなかなか見込みがあるが、足りんな
穴を△にして、装飾を付けて……こんなものか
後は必殺技は必須だ
格好いい名前の最強必殺技を伝授してやろう…
(厨二な方向にがっつり教え込む。シャル以外の子を担当)
成田・且胤
🍄猟兵化希望
「何でござろうな……大きなカブを引き抜いてぶつけないといけない様な気がしてくるのは」
「気の迷いはさておき、拙者も猟兵」
仕事はガチ
UCを使って見せ、UCには利点と欠点のあるものもあると教える
「大振りでわかり易くなってるでござろう? 避けられない相手への追撃などではこれも有用でござるが、ねっと」
「しかし、『でらっくす』なよいこ……」
豪華であるからシャル殿については脱いだらすごい『ないすばでぃ』な女人と推測
「こう、同じ大陸内にスタイルのよいこだの発育のよいこだの居たらしいでござるしな」
すわ三人目かと挑戦者精神に駆られ
「早速応援ついでに確認に赴――うん、ティーダ=サン? 待、アバーッ!」
リーヴァルディ・カーライル
………まあ。所変われば品変わる、世の中には色々な風習や文化があるからね
一々、見た目に突っ込みを入れるほど無粋じゃ…え?普通に外せるの?……そう
陽光を遮る「影精霊装」を纏い右眼だけの|吸血鬼《魔眼》化を行うUCを発動し、
よいこの魂の波長を暗視して各人の|能力や耐性《ステータス》を見切り助言して回る
…指揮をあげるすると言っても、あまり弁が立つ方じゃない私には荷が重いわ
…だから、代わりに貴方達が望むなら現在の能力を教えてあげる
|殻を破る《レベルアップする》のに必要な効率的な鍛練方法と一緒にね
…もっとも、結局実戦で鍛えるのが一番効率が良かったり、
今回の戦争には間に合わないかもしれないけど…どうする?
星野・空
久遠寺・遥翔(f01190)と一緒
アドリブ◎
★二人で、ライブ&航空ショーのパフォーマンスを行い、よいこの勇士に対する憧れを高めます
よいこたちが適度に、集まったところで遥翔へ合図して、私は歌の準備を
「ねぇ、勇士になりたい――? だったらあちらに注目して――!」
遥翔に目配せすると同時に空を指差せば、きっと遥翔が大空を優雅に舞うのが見えるはず
指先で、飛翔する遥翔を追いながら、私は軽快なダンスと共に、UCを発動。【白浜の煌めき】を歌唱します
遥翔の航空ショーに合わせて、私も踊りには緩急と共に大仰な手振り身振りで踊りを強調。歌には強弱をつけながら感情をのせて歌い上げ、遥翔のパフォーマンスを盛り上げます
久遠寺・遥翔
ソラ(f28884)と参加
よいこたちの壮行会をふたりなかよく応援!
イグニシオンに[騎乗]してUCは平和的に使用だ
[空中戦]で培った高速機動で、黄金の光の帯を残しながら飛び回るぜ
ソラが歌と踊りのパフォーマンスでよいこを元気づけはじめたら飛んで近づいてステージの横につける
彼女に向って敬礼はもちろん忘れない!
まるで彼女のメロディに乗せて舞うように空を飛び回って
君たちの先行きには希望が満ち溢れている、と
よいこ達にエールを送ろう!
●イェーガーだよ、よいこはおいで!
今、スーパーよいこランドに十人を超える猟兵たちが訪れていた。
集会に集まったよいこたちがざわめき、猟兵たちに集って興奮を隠せないでいる。
そんなよいこたちの前に立ち、デビルキングワールドの7thKINGである堕天使の魔王、アルテミシア・アガメムノン(黄金の女帝・f31382)は自信に満ち溢れた笑顔を浮かべて、よいこたちを見つめている。
「スーパーよいこランドの噂は聞いております。
今回はいい機会ですから、足を運んで現地でくだんのきのこを食してみましょうか?」
「何でござろうな……|大きなカブを引き抜いて《ドキドキしてパニック》ぶつけないといけない様な気がしてくるのは」
同じく参上した羅刹の剣豪にして宿星武侠、大鉞を担いでやってきた若き猟兵である成田・且胤(今邢道栄・f36853)は何かしらの思念を受け取っているらしく、きのこではなくカブを求めている様子だ。
きっと、気のせいです。(泳ぐ視線)
「細かいことは抜き、だ! まずは壮行会をもっと盛り上げていこう!」
三毛猫の耳と尻尾を生やし、鳩のような羽根を背に備えたキマイラのウィザード、久留米・圓太郎(自称魔法使いの一番弟子・f00447)は持ち前のコミュ力を活かしてよいこたちを鼓舞していく。
持ち前のアクティブさを象徴するユーベルコード《威風堂々(イフウドウドウ)》を発動させて、共感したこの町にいる猟兵やよいこたちの戦闘力を増強させていく。
場の空気がヒートアップしていく。
「そうでござるな。気の迷いはさておき、拙者も猟兵。仕事はガチるでござるよ」
「ほほほ、もちろん、壮行会なのは分かっております。
さあ、よいこの皆さん! わたくしたちが来ましたわよ!」
「へい、へい、ほー!」「へい、へい、ほー!」
猟兵たちの早速のパフォーマンスと挨拶に盛り上がるよいこたち。
彼ら彼女らを見つめる、童顔且つ小柄ながら、桁違いに発育の良い体型の少女、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は意味深にあごに手を当てている。
「|兵歩《へいほー》、ですか?」
知っているのか、るこる!
どうやら、るこるはこの町のよいこたちの由来に心当たりがあるようだ。
近くにいるよいこたちは、自分たちのルーツについて話が聞けるのかと、ワクワクしている。
「古の戦士『よさく』氏が使ったという伝説の技、|平異兵法《へいへいほー》を伝承されている方々でしょうかぁ?」
「ククク……『よさく』に、|平異兵法《へいへいほー》か……。
懐かしい名を聞いたものだ……。まさかこの島に|伝承者《サクセッサー》が残っているとはな」
な、なんだってー!?
数多の世界を旅し、ある時は救い、ある時は滅ぼしてきた究極の戦士(を自称している)、アリスナイトの青年、夢幻・天魔(千の設定を持つ男・f00720)は右目を手で隠しながらるこるの証言に同意する。
どうやら、二人の話は真実のようである!(※検証はしていません)
「ククク……オレは育成スキルも超級……!
かつて異世界にて幾人もの勇者や英雄と呼ばれる者達を育ててきたものだ……。
俺のスペシャルスキルを以てして、ここのよいこたちを教導してやろう……!」
「わぁ、頼もしいですぅ」
やんややんやと、るこると天魔を囲むよいこたち。
そんな元気なよいこたちと猟兵たちを眺めるのは、ダークセイヴァーから訪れた猟兵。
陽光を遮る『影精霊装』を纏う、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)だ。
仮面をつけ、頭巾を被るよいこたちの姿に戸惑っている様子だ。
「…………まあ。所変われば品変わる、世の中には色々な風習や文化があるからね。
一々、見た目に突っ込みを入れるほど無粋じゃ……」
そう言って、意識を切り替えて理解を示すリーヴァルディの目の前で、仮面を外して汗をぬぐうよいこがいる。
別に、着け続ける義務とか、素顔を晒してはならない掟とか、そういう事情は無いようだ。
「……え? 普通に外せるの? ……そう……」
リーヴァルディは静かに、理解を放棄してやるべきことを済ませることに決めた。
「さて、と。優しく……闘い方を教示するとしましょうか」
「ベルカさまの教え、私も一緒に学ばせてもらいます」
『運命の糸症候群』を発症したメガリス・アクティブの少女、京極・美咲(一般人→能力者→猟兵へと目覚めたレディ(志望)従者・f38304)と、
数多くの人を救ってきた紳士的なダンピールの王子様、ベルカ・スノードロップ(【中将】少女を愛に染め救済せし夜の王・f10622)。
シルバーレインにて縁を結んだ二人も、手助けするべくスーパーよいこランドに現れた。
どうやら、ベルカが様々な世界を渡り歩いて得て来た知識を教えようと考えているようだ。
ほかにも、一人佇む者、四人の中から代表を選出のために会議する者、壮行会を盛り上げるべく準備を進める者たちなど、様々な思惑を抱えて猟兵たちは準備を進めていく。
猟兵たちはそれぞれ、零人から十数人のよいこをまとめ、各々のやり方で対応していく。
よいこによっては色んな猟兵を巡り、たっぷりと吸収していくことだろう。
指導や教練、あるいは激励や鼓舞。
猟兵たちは思い思いのやり方で、よいこたちが勇士になれるよう応援を始めていく。
●すごい魔王様のお言葉。
「聞けばよいこさん達は力量は十分とのこと。
ユーベルコードも使えるというのならば、実戦に堪えられるでしょう」
居並ぶ仮面のよいこたちを見回して、アルテミシアはしかと力量を見極める。
純粋なステータスだけならば、ここにいるよいこたちは前線で活躍している各飛空艇艦隊の勇士たちと肩を並べることができるだろう。
猟兵に褒められて嬉しそうにするよいこたちに、アルテミシアは表情を引き締めて指摘をする。
「問題があるとすれば、よいこであること……。
ですが、これは我が魔界の悪魔にも言えることですからね。ノウハウがあります。
よくお聞きください」
アルテミシアが語る事例は、町の中できのこを食べて育ってきたよいこたちの知らない、現実の厳しさを突きつける。
「戦場は過酷です。時には厳しい決断をしなければならないことがあります。
仲間が怪我した時、助けに行くべきか、仲間を傷つけた敵を倒すべきか。
助けに向かえば、敵に背中を撃たれるかもしれません。
敵を倒しに向かえば、仲間が手遅れになるかもしれません」
アルテミシアの話を聞いて、よいこたちは回りの仲間たちを顔を見つめ合わせる。
もし、その状況になった時、自分たちはどう動けばいいのか。
あるいは……動くことが、できるのだろうか、と。
「これと定まった答えはありません。その時々に応じて、判断をしなければなりません。
すべてを守ることができれば最善です。
しかし、選ばなければならない時はきっとくる。
仲間や、友人や、守るべき民、囚われた人々……。
そして、オブリビオンに敗北すれば世界がどうなるか……。
今のうちに、戦場での心構えを身に着けておきましょう」
アルテミシアの教導を受けて、よいこたちの意識は大きく変わっていく。
浮ついた熱気だけでなく、しっかりと心の芯に決意を抱くようになっていく。
アルテミシアはよいこたちの仮面の奥の瞳を見つめ、満足気に頷くと希望者にデビルキングワールド流の魔法を教授し始めていった。
●『使徒』による事前対応。
「はぁい、皆さん上手ですよぉ」
「おー、こうしたら安定するんだ……」「ありがとうございます!」
るこるは、遠距離攻撃手段を持つよいこたちに砲撃や援護射撃といった技能を教導していた。
勇士として飛空艇に乗り込む場合も、町に残って防衛に回る場合も、射撃能力は役に立つ。
るこる自身の『祭器』を使わせる訳にはいかないが、各々の所持する武装を用いて練度を向上させることに成功していた。
その上で、るこるはスーパーよいこランドの町の安全にも意識を向けていた。
「さぁて、それでは後顧の不安を取り除いておきましょう。
大いなる豊饒の女神の使徒の名に於いて、女神の加護を得し豊饒の信徒達よ、私の下へ」
るこるが行使したのは《豊乳女神の加護・涵輔》。
130体もの『様々な生物の獣人』の姿の『女神の信徒』を召喚する、るこるのユーベルコードである。
美しく【豊饒】な属性をもつ女性型の出現に、思春期の男子よいこが顔を赤らめたりする中、『女神の信徒』たちは|兵歩《へいほー》たちの要望を聞きつつ、町が狙われた場合に備えての『防御施設』の構築を行っていく。
不足する資材は、浮遊する四個の立方体である祭器、『フローティング・フラワーズ・システム』で出現させていく。
キマイラフューチャーのコンコンンコンのように、ポコジャガと物資を生み出していく様子は圧巻だ。
「わぁ……すごい……!」「これが、るこるさんの力……!」
感嘆するしかないよいこたちに向けて、るこるは優しく微笑みかける。
「みなさんは元々優秀な方々ですが、より町の安全が確保出来れば、安心して出立することが出来るでしょうかぁ」
「はい、ありがとうございます! パパとママを残していくのがちょっと不安だったけど……これなら、安心です!」
「それはよかったですよぉ」
フンスとやる気に満ち溢れてるよいこを見つめて、るこるは射撃訓練を再開していった。
奮起したよいこたちの中から、将来の狙撃手が生まれることになるかもしれない。
●超絶厨二病の波動。
「そして、そう、あれは第18の世界であったか……。
俺自身が動いては世界への影響が大きすぎるため、勇者を育てて邪神を討伐したのだったな……。
決戦では俺の授けた必殺技が勝負を決めたのだ……!」
「おおー!」「すごい!」「流石、天魔様……!」
天魔の語る異世界での経験(※妄想設定)を聞き、よいこたちが目を輝かせ、天満が次に行う育成成功率が向上していく。
《異世界で取った杵柄(スペシャルスキル)》。
名探偵として解き明かした難事件(※参考文献あり)。
大統領として民衆を導いた武勇伝(※想像)。
そして、邪神を討伐する勇者の師匠として必殺技を伝授した逸話(※以下略)を語り聞かせ、天魔の| 《妄》言を鵜呑みにしたよいこたちの崇敬の視線を一身に浴びているのだった。
そうして十分に成功率を高めたあたりで、天魔はよいこたちの仮面に目を付けた。
「さて……仮面とはなかなか見込みがあるが、足りんな。
俺のセンスでさらにバージョンアップさせてみよう。
こう、穴を△にして、装飾を付けて……」
工作道具を用意して、よいこたちといっしょに新しい仮面を製作する天満。
(▼▲▼)や(▲▼▲)のように穴を掘った仮面に、赤色の線を描くなどして、かっこいい仮面を作り上げる。
進化した仮面に、ワクワクするよいこたちのテンションがアゲアゲである。
「フッ。こんなものか。
世界最高の頭脳を持つ発明家であるこの俺にとっては、造作もないことだ」
「おお、おおおお!」「すごく……カッコイイです!」「流石、天魔様……!」
盛り上がるよいこたちを前にして、天魔もテンションがアゲアゲになっているようだ。
「ククク……次は必殺技だ。必殺技は必須だ。
お前たちのために、俺が直々に格好いい名前の最強必殺技を伝授してやろう……!」
「おおー!」「必殺技……!」「さすてん……!」
カタカナを組み合わせたり、漢字を組み合わせたりして、カッコイイ必殺技を身に着けるよいこたち。
その様子を、天魔は満足気に見届けていく。
●超絶厨二病の余波。
「……限定解放。光を灯せ、血の赫眼」
「ふぉぉぉ……!」「カッコイイ……!」
一方、リーヴァルディが《限定解放・血の赫眼(リミテッド・ブラッドゲイズ)》を起動する。
光り輝くその右眼は、左眼の聖痕とは異なる魔眼。
右眼だけを限定して吸血鬼化することにより、魔眼と化したその|眼《まなこ》にて、よいこたちの魂の波長を暗視して各人の能力や耐性ステータスを見極めているのだ。
カッコイイその眼を見て、天魔の教えを受けたよいこたちが激しく興奮している。
「……士気上げをすると言っても、あまり弁が立つ方じゃない私には荷が重いわ。
……だから」
血のように真紅に染められた右眼でよいこたちを見つめ、リーヴァルディが告げる。
「貴方達が望むなら、|殻を破る《レベルアップする》のに必要な効率的な鍛錬方法を教えてあげる。それでいいかしら?」
「はいっ! よろしくお願いします!」「お願いします!」
リーヴァルディが行うのは、鼓舞ではなく指導。
よいこたちの現在の能力を教え、基礎能力を整えつつ進むべき鍛え方を助言する。
筋力があるのにレイピアを持ったり視野が狭いのに弓を選んだりしたよいこに、ランスを勧めたり周囲に目を配る心構えを伝授する。
よいこたちはリーヴァルディの助言を素直に受け入れ、それぞれに適した獲物に切り替えたり、不足していた分野のトレーニングを模索していく。
若く、柔軟なよいこたちを見つめて、リーヴァルディは思案する。
「……もっとも、結局実戦で鍛えるのが一番効率が良いのだけれど……」
アルテミシアが見極めたように、よいこたちは素の能力だけならば十分に戦場で戦えるだけのものは持っている。
足りないのは、実戦経験だ。
だが、だからといって激戦区に送り込めば、死傷者が出るかもしれない。
悩みどころである。
「……ねぇ。あなた。今回の戦争には間に合わないかもしれないけど……どうする?」
「……? それなら、次の戦いに備えて頑張ります!
次は、猟兵さんの……勇士の皆さんの助けになれるように!」
「……そう。……なら、頑張りなさい」
「はいっ! 頑張ります!」
いつか来る実戦の時に命を散らすことが無いように。
リーヴァルディは、よいこたちの基本的な生存能力を高めるべく、指導を続けて行った。
●人狼少女の師となる剣士。
「へい、へい、ほー!」
「……」
身内を失い放浪の旅を続けていた半吸血鬼の猟兵、ヴェルンド・ラスリス(獄炎の復讐鬼・f35125)は、よいこたちの教導を行う他の猟兵たちから離れ、大勢のよいこたちを見守っていた。
こうしてスーパーよいこランドに訪れたものの、和気あいあいとした空気に混ざることなく一人距離を取っていた。
「……(子供は『苦手』だ)」
ヴェルンドは、子どもが嫌いという訳では無い。寧ろ好ましいとすら思っている。
ただただ、『苦手』なのだ。
かつての、幼い頃の……あの日の自分と姿が重なるだけで……。
「……む」
「フッ……! フッ……!」
ヴェルンドの視線の先に、10歳前後の少女がいた。
壮行会に加わっているにもかかわらず、猟兵たちに殺到するよいこたちから離れた木陰で、一人で黙々と剣を振るっている。
元気があり、真面目そうなその少女は、背丈に合わない立派な剣を素振りしている。
……その動作は、何かの手本を愚直にこなしているだけに見えた。
その姿に思うところがあったのか、ヴェルンドは少女に歩み寄っていく。
「……まるで教科書通りの剣の振り方だな」
「えっ? あ、猟兵さん……!?」
おもむろに、少女に近づいたヴェルンドは少女の握っていた剣を取り上げる。
ヴェルンドが睨んだ通り、重量のある長剣は少女に合っていない代物であった。
無理矢理に振るうことはできているようだが、戦場では重みに振り回されてしまい隙だらけになるところだろう。
「お前は教科書と同じ身長で腕力なのか?
しっくり来てないなら自分の身体にあった剣技を探すことだ」
「うっ。でも、剣技が一番役に立つ、って聞いたから……」
「剣技だけじゃダメだ。体術に投擲、他の武器にも触れておけ。
選択肢の数が、戦場では役に立つ。
……これに思い入れがないのなら、固執するな」
素直に頷く少女を見下ろして、ふと。ヴェルンドは少女の臀部から生える尻尾に気づく。
仮面と頭巾でわからなかったが、彼女はどうやら人狼のようであった。
「その尾は……お前、人狼か。ならばもっと速さを活かした方がいい」
「速さ? うん、足の速さなら、誰にも負けない自信があるよ!」
「なら、使え。生きるためには、使えるものは全て使え。
……俺が教えられることは、これくらいだからな」
「……! はい、わかりました、師匠!」
仮面越しにもわかるほど、元気いっぱいな笑顔を感じて、ヴェルンドは小さく笑みを溢す。
そして、目の前にいる少女の素性を知らないことに気づいた。
「そういえば、お前の名前を聞いていなかったな。俺はヴェルンドだ」
「あ、はい、師匠! 私の名前は―――」
斯くして。一人の人狼少女は猟兵の剣士を師と仰ぐようになったのだった。
●空を翔ける楽しい競争。
圓太郎は、よいこたちを全体的に見て回っていた。
《威風堂々》の効果で猟兵たちの指導に耐えられる戦闘力を得たよいこたちに、声をかけ、励まして、応援して回っていた。
そして、一人の元気な飛翔能力持ちのよいこと向き合っていた。
「なるほどー、ここの方々は飛ぶのが得意なのか」
「うん! おちたらしんじゃう、から!
それに、ふゆうたいりく、いききするの、ひくうてい、だけじゃない!
おれ、ろけっとで、とぶの、すごくはやい!」
「おお、それはすごいな! ……そうだ!」
飛べることを元気よくアピールするよいこに笑顔を向けて、圓太郎は『魔法使いの箒』を取り出した。
穂の根本にある黄色と水色のリボンがアクセントの立派な箒に跨り、圓太郎が空中に浮かび上がる。
「オレも飛べることは飛べるぜ! どうだ、ちょっと競争してみるか?」
「きょうそう! うん、する! おれ、がんばる! りょうへいさんにも、まけない!」
「ははっ、いい意気込みだ! よし、それじゃあ……よーい、ドン!」
『天使核ロケットエンジン』の爆発的な駆動力で空を飛ぶよいこ。
一方で箒に乗る圓太郎は騎乗スキルを駆使して、空中戦にもつれ込もうと肉薄する。
互いに、ユーベルコードを使用しない純粋な技量のぶつかり合い。
観覧するよいこたちの声援を浴びながら、圓太郎は先達の意地を見せて、競争に勝利する。
「よっし、勝ったー! あぶねー、僅差だったか!」
「うー! まけた……。えんたろーさん、すごくはやい! かっこいい!」
「いやー恐れ入った! これでユーベルコードを使いこなせれば、もっと速くなりそうだぜ」
ロケットの出力を落として降下していくよいこの、仮面の奥の目力に圧倒されながらも、圓太郎は健闘を称える。
「頑張れば強くなれるのが猟兵だ! ここを守りたいというその意気さえあれば!
君だってもっと強くなれる!」
「……うん! おれ、がんばる! おもいっきり、がんばる!!」
「そう、その調子だー!」
地上に戻ってきた圓太郎とロケット使いのよいこを取り囲み、よいこたちが称賛を浴びせかけてくる。
圓太郎も、圓太郎と競争することで成長したよいこも、笑顔でよいこたちに囲まれていた。
●力とは倒すばかりに非ず。
各地で転戦している猟兵たち。
その中でも活躍している猟兵の一人、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)もよいこ指導のためにやってきた。
今回のスーパーよいこランドの教導を担当するのは、生前からの戦友四人が一人となって形成されている複合型悪霊の人格の一人。
『侵す者』馬舘・景雅(またち・かげまさ)であった。
「何でわし!?」
会議の結果でしょうか。さておき。
武の天才であり、生前と異なる体躯となってもすぐに新しい戦法に方向転換することができた景雅は、まだ若い雛鳥であるよいこたちにいろいろと教えることができるのだろう。
他の人格の意図はともかく、現場に出ている景雅は小さく息を吐いてよいこたちに向き合うことにした。
「まあ……よいか。
守るために戦う、というのは立派な志である。現にわしらもそうであるからな。
だが、『自分のやれること』をよく知るがよい」
「自分のやれること……」「俺、剣が得意です!」「あーしは神聖詠唱できるしー!」
「うむ、理解しているか。
わしの場合は……まあ、やれることは……破壊なのだが。
わかりやすく前線での戦いに直結するな」
よいこたちはそれぞれ、自分の得意な武器や術を声に上げる。
初々しいその様子に目を細め、景雅は告げる。
「だが、癒しが苦手なのよ。
そこはここにおる陰海月が得意とする分野であるの。
それを霹靂が守ったりすることもある」
「ぷきゅ!」「クエ!」
陰海月と霹靂。
大きなミズクラゲとヒポグリフが声を上げる。
《翳鏡虫霓(カゲニテヤサシクヒカルゲーミングクラゲ)》により、辺りは1680万色に優しく光る『陰海月』の癒し空間へと変貌する。
よいこたちは皆、治療に関わる全ての物事が強化され、ダメージを与える全ての行動が弱体化されるこの環境を味わうことになった。
陰海月を守るように動く霹靂が、二人の連携を物語って魅せている。
「綺麗……」「なんか、あったけー……」
「ぷきゅ~きゅきゅ~♪」「クエー♪」
「このように、自分には不得意な分野も仲間と協力して補い合うことができるのだ」
「癒し……敵を倒せなくっても、みんなの役に立てるのかな……」
感嘆するよいこたちの中で、一人大人しいよいこが呟く。
景雅はその呟きを耳にして、怯えさせないように優しく声をかける。
「うん? ああ、もちろんだとも。癒しも大切ぞ?
戦い続けておったら、怪我をするでな。それを治せるのは、重要なのだ」
「わたし……重要なんだ……治療できる。それが、わたしにできる、こと」
景雅の励ましを聞いて、静かに仮面の奥の瞳を輝かせるよいこ。
景雅の教導を受けて、自分のやれることと苦手なことを把握したよいこたちは、互いに支え合うことを理解したことだろう。
あとは、実戦にて連携を磨いて行けば良いのだ。
「ぷきゅ~、ぷきゅきゅ!」「クエッ!」
「そうか、わかったぜ! 役割分担だ!」
「なるほど、攻撃するだけが勇士って訳じゃないんだな」
『おじーちゃんたち』は強いんだ、と言うように訴える陰海月と霹靂と触れ合いながら、よいこたちは自己認識を高めていった。
●すごく、でっかいです。
「とぁ!」
「おおおお……!」「すごいパワーだ……!」
且胤は、よいこたちにユーベルコードを披露していた。
予め武器を振り回しておく事でその時間に応じて戦闘力を増強する攻撃系ユーベルコード《羅刹旋風》を発動させ、用意したカカシを粉砕することでその威力を見せつけていた。
豪快な一撃を間近で見て、驚愕するよいこたちに向けて且胤は大鉞を担いで説明を始める
「そうでござろう? 強力な一撃を叩き込むことができるのでござる。
しかし、この技にも重大な欠点があるのでござるよ。よっと」
且胤が再び《羅刹旋風》を放とうとする。
十分に振り回し、叩きつけようとするタイミングであえて体勢を崩し、つんのめる。
大きくバランスを崩した且胤はカカシにもたれかかる。
隙だらけであり、カカシが出来であったならば回避されるどころかカウンターを受けていただろう。
「このように大振りでわかり易くなってるでござろう?
避けられない相手への追撃などではこれも有用でござるが、ねっと」
「なるほどー」「必殺技も使うところを考えないといけないんだ」
真面目に教えを飲み込んでいくよいこたち。
その中でも、一際背丈の大きなよいこに、且胤の視線は誘導されていた。
「しかし……『でらっくす』なよいこ……でござるな」
仮面で顔は見えず、頭巾で髪の毛も隠されているが、且胤の眼力にて対象のよいこが脱いだらすごい『ないすばでぃ』な女人と推測する。
且胤がグリモアで得た情報によると、スーパーよいこランドのほかの町ではとても発育の良いよいこや、スタイル抜群のよいこが居たと聞いていた。
「(すわ、三人目か……)ん、ん~。ところで、そちらのよいこ殿」
「え? 私ですか?」
「(よし、声色は乙女にござる!)そうそう、早速でござるが、応援ついでに一つ確認もとい指導をと……」
手取り足取り大鉞の振るい方を教導しようという高潔な思いで、且胤がよいこに近づこうとする。
そのまま手が伸びれば、うまく目論見通りに事が運んでいたことだろう……。
だが、そうはならなかった。
「あ」
「――うん?」
且胤の後ろに近づいてきたのは、しゃべれないがサキュバスに変身する能力を持つ|天馬《ペガサス》。
とある有名な普通の聖騎士から譲り受けた、相棒のティーダさんだ。
嫉妬なのか、純粋に甘えようとしているのか。
ティーダが且胤に襲い掛かった。
「ティーダ=サン? 待、アバーッ!」
「わあ……」「おおー……大人だ……!」
「且胤さん、すごすぎんだろ……」
何が起こったのか、詳細は伏す。きっと、合法の範囲内で収まったと信じよう。
●中将にすくわれる少女たち。
「……!」
猟兵たちの指導を順繰り回り、成長していたスーパーよいこの、シャル。
心構えや技能、あるいは勇気を授かって、いつ爆発的に覚醒しても不思議ではない状況にあった。
プルプルと覚醒衝動に震える中、シャルに二人の猟兵が語り掛けて来た。
美咲とベルカだ。
「こんにちは、シャルさま」「はじめまして、シャルさん」
「猟兵さん……!」
ベルカは年下や女性に好かれやすいという特徴の中、勇士の子どもたちにも好評な授業を行っていた。
他の世界の戦闘知識、戦い方を語ることで、多くのよいこたちが広い価値観に目覚めたことだろう。
「(話に聞いていたシャルさん。食いつきが良いということは……)」
そう、小柄なシャルは、ピンポイントでベルカに対する好意の対象であった。
シャルティエ・アルジェンという人狼の少女もまた、ベルカの語りを聞いて打ち震えていたのだ。
美咲は、自分がベルカに救われたように……猟兵へとなろうとしているシャルの手助けになれればと、近づいて手を差し伸べる。
「わたくしも、ある事件でこちらのベルカ様……主さまと出会って猟兵となった身でありますの」
「あなたも……? じゃあ、」
―――わたしのように、このドキドキを経験していたの?
―――はい。救ってもらえて……とてもドキドキしました。
その想いを共有できる相手が現れたことで、シャルがリラックスする。
(※なお、ドキドキの意味合いは異なるようです)
美咲と向かい合い、落ち着いて会話による親睦を深めていく。
「シャルさまは、どういったことができるのでしょう?」
「わたしは……召喚術士、と言えればいいんですけど……。
『星霊』と呼ばれる魔法存在を使役することができたのですが、召喚石は高くて、あんまり練習はできなくて……」
ブルーアルカディアの召喚系ユーベルコードで使用する『召喚石』は、1個200Gだ。
日本の円に換算すると、およそ200万円の価値がある。
スーパーよいこといえど、子どもが易々と使える額ではない。
そして『星霊』という単語を聞いて、心当たりのあるベルカは手本を見せようと思い至り、ユーベルコードを用意する。
「シャルさん。詳しくは、分かりませんが……。
私が扱うユーベルコードでも、『星霊』を呼び出せたりできるので。
……もしかしたら、シャルさんもそんな感じのジョブなのかもしれないですね」
「え? ベルカさんも、『星霊』を……?
あ、あの! もしよろしければ、見せてもらえないでしょうか?」
仮面越しに目を輝かせるシャルに、ベルカは笑顔で応じる。
「もちろんですよ。では、楽園へと誘(いざな)いましょう」
展開される、ベルカのユーベルコード。《もふもふの楽園(パラダイスシフト)》。
ナインテイルの『あんこさん』。
モーラットの『りんごさん』。
ヒュプノスの『とまとさん』。
ピュアで、もふもふな、みんなが召喚され……辺りはもふもふに包まれる。
「わわ……! も、もふもふです……!」
もふもふに覆われ、間近に召喚術を目撃したことで、シャルは一気に覚醒状態に入る。
まだ未成熟だが……そう遠くないうちに、猟兵として目覚めることになるだろう。
「シャルさま。闘い方は、わたくしもまだ勉強中です。
だから、主さまの講義で一緒に学ぶことで知見を深めることにいたしませんか?」
「! それって……! いいんですか?」
個別指導のようなものを受けられると聞き、喜色に染まるシャル。
ベルカとしても、拒絶する理由はなさそうだ。
「はい。美咲さんと一緒に、頑張りましょうシャルさん」
「~~~! はい! よろしくお願いします、美咲さん、ベルカさん!」
こうしてまた一人、新しい猟兵が誕生するのであった。
●壮行会のパフォーマンス!
そして、猟兵たちの指導が終わりつつある頃合い。
クルド系のクォーターのレトロウィザード、大学二年生の星野・空(アイユーブの血の一滴・f28884)がステージに立ち、
イグニスの骸魂を宿した黒剣を扱う|焔黒騎士《フレアライザー》、久遠寺・遥翔(焔の機神イグニシオン/『黒鋼』の騎士・f01190)がスーパーよいこランドの空を翔けていた。
「今日は平和的に使用だ。さあ……いくぞ、イグニシオン!」
UDCアースに存在する小さな映画館から駆け付けた二人の猟兵は、よいこたちに向けてパフォーマンスを披露することとした。
誰かにとっての笑顔の記憶を、いつまでもその心に残せるように。
よいこたちの勇士に対する憧れを高めるべく、ライブと航空ショーで壮行会を締めくくろうとしていた。
準備を済ませ、よいこたちが集まったところで遥翔へと合図を送り、空がマイクを手にしてライブを開始する。
「ねぇ、みんな! 勇士になりたい―――? だったらあちらに注目して―――!」
遠く、空が指さした上空では、遥翔が最新鋭キャバリア『イグニシオン』に騎乗して、空中戦で培った高速機動で黄金の光の帯を残して優雅に飛び回っている。
「天焔解放(オーバーフロウ)―――フレアライザー・ヘヴンッ!」
《天焔解放(オーバーフロウ)》。
漆黒と黄金の焔を纏った飛空騎士、フレアライザー・ヘヴンへと変身して、音速を容易く超える超高速飛翔でブルーアルカディアを翔けている。
「わああああ!!」「すご、はっやい……!」「きれい……見たことない……!」
「さあ、はじめようか! みんなの旅路を……物語を!」
人狼のよいこも、ロケット使いのよいこも、治療術を得意とするよいこも、『でらっくす』なよいこも。
そして、召喚術士のスーパーよいこも。
|兵歩《よいこ》たちはみんな、猟兵たちと一緒に青空を仰いでいる。
「揺蕩う波間に夢を見ているの―――♪
深い空が続く様に―――♪
二人で白へ飛び込むの―――♪」
遥翔が地上にいる空へと敬礼を向けて、『イグニシオン』がステージ上空を通り過ぎる。
空が指先で遥翔を追いながら、軽快なダンスと共に《白浜の煌めき(シラハマノキラメキ)》を歌唱する。
その曲の効果により、よいこたちに夢見るような、明朗な感情を与えていく。、
遥翔と『イグニシオン』の航空ショーに合わせて、空も踊りに緩急をつけ、大仰な手振り身振りで強調する。
よいこたちの旅立ちに幸いあれ、よいこたちの戦いに祝福あれ、と。
歌に強弱をつけながら感情を載せて歌い上げる。
遥翔も、空のメロディに乗るように。舞うように青い空を旋回しする。
青いキャンバスを彩る黄金の光が、よいこたちの先行きに希望が満ち溢れているのだとエールを送る。
空の歌と、遥翔の航空ショー。
ズレが一切生じない息の合ったコンビネーション、二人のパフォーマンスに会場は最高潮に盛り上がっていた。
「君たちの! あなたたちの! 活躍を応援するよ!」
「よいこ達……行ってらっしゃい!」
「「「へい、へい、ほー!」」」
猟兵たちによる最高の指導と、最高の鼓舞を受けて。
よいこたちは各々のルートで、町を旅立っていく。
飛空艇に乗り込むか、少数で飛んでいくのか。
はたまた、勇士候補生たちから猟兵として目覚め、グリモアベースに踏み入れるのか……。
それは、今後に語られる物語となるのであろう。
よいこたちを見送り、あるいは伴って、猟兵たちはスーパーよいこランドを後にするのだった……。
「🍄猟兵化希望」の記載があった、京極・美咲(一般人→能力者→猟兵へと目覚めたレディ(志望)従者・f38304)さんに、『シャル』を猟兵にする権利をあげます。
大成功
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