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癒せ、躁鬱の地下迷宮

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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●躁鬱の乱高下
「1歩踏み入れば鬱になるんだって…皆なら、どうする?」
 アルファ・ユニ(愛染のレコーディングエンジニア・f07535)は猟兵達に問いかける。…なんの前置きもなくその言葉があったので、猟兵達は戸惑った。
 しかしおそらく今回の依頼の概要なのだろう。その問いかけの答えをそれぞれ思案しながら彼女の言葉を待つ。
 その様子を見てか自分のペースか、彼女は言葉を紡ぎ始める。
「名付けて、躁鬱の迷宮。ワクワクしながら攻略に挑んでもその中に入ると…一気に冷める。なんか直近の嫌なこと思い出したり、倦怠感に苛まれたりする」
 鬱になる?そんなシステムが迷宮に?トラップダンジョンなどはよく聞くが、トラップ鬱は聞いたことないと猟兵達がざわめき始める。まさか、そこで…と誰かが零すと、ユニが反応する。
「うん。アルダワ迷宮…刻一刻とその姿を変える摩訶不思議な迷宮。そこで躁鬱の迷宮ができて…そこに迷い込んだ学生達が帰って来なくなった。」
 その迷宮の周辺は入り組んだりしておらず、学生達でも簡単に倒せる様な災魔しかいないので気軽に立ち入る者も多い。その近くの場所が突然変異を起こし、知らずに踏み入ってしまった学生達が鬱病被害にあっているのだ。
 辛い、苦しい、なんで私だけ、嫌だ、怠い、死にたい…。
 鬱になった状態で災魔にも襲われ心身共にボロボロだろう。まともに戦えやしないだろうし、そのまま彼らをそこに居させる訳にはいかない、ので。

「皆には…彼らの回復処置、メンタルケア、救助をお願いしたい」

 ……至れり尽くせりだな。でもまぁ確かに、そんな状態の彼らにそのまま脱出を促しても帰っては来れなさそうだ。
 回復魔法でもパフォーマンスでもカウンセリングでも、手段は選ばなくていいから彼らをとにかく癒して無事に連れ帰ってきて欲しいと彼女は言う。
「迷宮から患者を探して癒して連れて帰る。言葉にすれば簡単だね。」
 鬱って自分がなっても人がなっても面倒くさいけどね、と毒を吐くユニ。確かに鬱病患者話を聞くのは中々精神が削れていきそうではある。
 とはいえ…鬱効果は微弱だが猟兵達にも作用する。
 プリン食われたとか喧嘩したとかそういう小さなことだとは思うが直近の辛いことを思い出したり、急に悲しくなるとかあるかもしれないから気を強く保つんだよ、と彼女は心配していた。
「迷宮にいるオブリビオンも鬱になってるからね」
 えっ?──間の抜けた声が、どこからか聞こえた。え?奴らの住処じゃないの?奴らにも効果あるの?
 元々学生達のいいカモになっていた弱めの災魔…そう、奴らが迷い込んでいる。同じように、躁鬱の迷宮に。
 学生達を襲うスタンスこそ変わっていないが、例に習って奴らも鬱病患者になっているらしい。そんなことある?と心では思うも、猟兵達はそれを口には出さずそのまま話を聞いていた。
「それによって凶暴化してるから困ったものだよね…ストレスが爆発して発狂状態っていうか」
 人間とかと一緒だ。抱え込んだストレスはどんな形かはそれぞれだが、いずれ如何様にかの形で爆発する。怒りやヒステリーに任せて物に当たり、危害を加え…それが、今の災魔の状態である。奴らもカウンセリングするべきではないかと考えた優しい猟兵は果たしていたのか。
「そしておそらく最奥にいるであろうボス災魔もぶっ倒してきてね。言わずもがな、危険だから」
 フラフラと迷宮を徘徊する鬱の学生達。そこを住処としたフロアボスのナワバリに迷い込み、犠牲がでる最悪のヴィジョン。ユニは予知の記憶を必死に手繰り寄せながら、確かボス災魔は鬱になってなかったと思い返す。
 万全のボス災魔と鬱の学生達が対峙するのはまずい。そんな事態は絶対にダメだとユニは強く告げた。
 …またこのグリモア猟兵はマニアックで面倒な依頼を拾ってきた。そう思いながらもそれぞれの覚悟が徐々に…この場にひしひしと伝わってくる。嫌な思い出なかったかな。大丈夫かな。
「さて、皆の旅が、時間が。有意義なものになりますように!…笑顔で帰ってきてね…。」


知野侑李
 知野です。1作目はハンバーガーでしたが2作目は鬱と歩むことになりました。

 回復系技能を使う依頼って中々見かけないな、と思ってそれをテーマにシナリオを作成してみました。
 1章冒険、2章集団戦、3章ボス戦という構成になっています。

 2章の集団戦ではユニが説明した通り災魔も鬱病患者となっていて、それのせいで凶暴化をしています。
 なので殴る前にワンクッション癒してあげてからボコボコに殴るともしかしたら有利に戦いが進むかも知れません。良心は痛みますね。

 それでは皆様の癒される素敵なプレイング、お待ちしております!皆様も鬱になる前に適度に人にぶちまけて、ゆっくり休んでくださいね。
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第1章 冒険 『災魔から魔法学園の生徒を救え!』

POW   :    負傷した生徒を運んだり、元気付けたりする。

SPD   :    負傷した生徒を探したり、救助経路を探したりする。

WIZ   :    負傷した生徒の居場所を予測したり、治療の準備をしたりする。

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

イルミ・ウェスタレス
嫌な気分になった時は、大きな声で歌うか…家で寝るのが一番です!
なので、まずはなけなしの【勇気】を振り絞って、ダンジョンの少し奥の方まで歩いていきます。たぶん、しっぽをドアに挟んじゃった時のこととか、アイドル事務所のスカウト受けたのに恥ずかしくて逃げちゃった時のこととか、昨日のコーヒーが美味しくなかったこととか、色々思い出してちょっと鬱になると思います…。
そ、そこで!【歌唱】【範囲攻撃】【全力魔法】を使って『春の曙光よ、暁よ』の歌をダンジョンに響かせます!ちょっと鬱になってる私なら鬱な人の共感できる歌を歌えるはず…そうしたら、共感してくれた人達は少し回復して、家に帰ろうという気持ちが起こるはず…


サラ・メリータティ
【WIZ/アドリブ絡み歓迎】
はわわ~!具合悪い生徒さん戻ってこれてないんですか?
心配です、助けにいかないと!
【準備】
気持ちが暗くなった時って隅っことかに行きたくなりますよね
私もよくやっちゃいますから…
はわわ~!いけないいけない、しっかり私!(ぺちぺち)

【発見】
大丈夫ですか?ケガしていませんか?
足は痛くないですか?
私たくさん歩いて足が痛くなっちゃいました
となり座っちゃいますね
ケガをしていたら【キュアライト】で回復
どうしてこんなところにすわりこんじゃったんですか?
何か嫌な事ありましたか?
聞き役に徹して受け止めます
【元気になったら】
はわわ~お話してたらお腹がすいてきちゃいました
そろそろ戻りましょうか



●1.まずは相手を理解し同調すること
 鬱に囚われ迷宮から出られなくなってしまった学生達を地上へ引き上げる為、心優しき猟兵達は各々の心持ちで地下迷宮へと乗り込んだ。
 ポツポツと等間隔で存在するオレンジ灯のみで通路が照らされ、どこか淀んだ空気が流れる薄暗いこの迷宮は、その中にいる者の気分をも暗く染める。その効果は救助に挑んだ猟兵達にも例外はなく。
 その通路を恐る恐る小さめな歩幅で進むイルミ・ウェスタレス(アイドル志望の恥ずかしがり屋・f08058)もその影響下にあった。人に比べ内気ぎみで気の弱いイルミだが、しかしその良心に従い学生達を救出する為、彼女なりに勇気を振り絞ってここに来た。
 …踏み入るまでは、順調だったのだ。
「昨日入れたコーヒー、美味しくなかったな…何が悪かったんだろう、豆が合わなかったのかな、それとも入れ方…もう少しじっくり入れるべきだったのかな?コーヒーひとつまともに入れられないの?この前は不注意でドアに尻尾挟んじゃうし、スカウトされたときだって、アイドルになりたいって思ってたくせに耐えられなくて逃げちゃうし、あぁあの時もあの時も」
 迷宮の先へと進めるその歩みが止まることこそないが、この迷宮に入ってからイルミの口はひっきりなしに動き彼女の中で消化しきれなかった思いが独り言としてとめどなく溢れ続けていた。
 畳み掛けるようにフラッシュバックしていくマイナスな思い出。その一つ一つは大きいトラウマではないにしろ、このどんよりとした暗がりも手伝い積み重なってその心を押し潰す。
「はわわ~!だ、大丈夫ですか~!?鬱になったら大変です…!気を、つよく持ちましょう」
 そんな彼女を隣で必死に励ます猟兵も。サラ・メリータティ(こやんかヒーラー・f00184)は独り言を呟き続けるイルミに声をかけながら共に迷宮を歩いていた。その存在にふと気が付いたイルミは一旦立ち止まりぷるぷると頭を横に振る。
「すみませんっ、だ、大丈夫です…」
 そう告げるイルミの動きはぎこちない。そっとその背を撫で努めて明るく接するサラ。しかし彼女もこの迷宮の暗がりに心を持っていかれないように必死だった。そんな自分を落ち着ける意味でも、サラは彼女を慰めていた。
「きっと、イルミさんの歌を必要としている人がいるはずです」
 だから、一緒に頑張りましょう。へにゃと笑ってそう声をかける彼女はその存在だけでも癒しになりそうだ。その言葉に励まされ少し表情が緩むイルミ。
 …自分を気遣ってくれている彼女も、辛いのではないだろうか。そう思ったイルミはそっとサラの手をとり優しく握る。イルミを安心させるように、かつ自分の心の支えとなるようにサラもその手を握り返した。
 互いの存在に安心し声を掛け合いながら、2人は迷宮を奥へ奥へと進んで行く。
しばらく歩いていると、ふと道が開け大きな広間に出た。
 そこには──鬱病患者と化した学生達が、その身を屈め、ある者は地に突っ伏して…泣き叫び、独り言を漏らし、無気力になってそこにいた。
 その地獄絵図に驚きながらも、彼らを救う為迷宮に乗り込んだ2人はターゲットを発見し、行動を開始する。
 まず前に出たのはイルミ。当初の予定通り学生達に自分の歌を届けるべく周囲の確認をした後、一つ大きく深呼吸をする。そして、大きな声で学生達に呼びかけた。
「私の歌を…っ!あ、いや、やっぱ…いえ、聞いてください!」
 呼びかけた声に上がる視線。ほんの一瞬で集まる注目に鼓動が高まり肺周辺が引き攣る感覚がする。行き場のなくなった、緊張で軽く汗ばんだ手でゴシックドレスの裾をきゅっと握り、大きく息を吸う。
 …緊張してる、体が震えてる。おさえる、大丈夫。この鬱な気持ちを、そのまま歌にすればいい──考えが過ぎるのは、一瞬。彼女の周りをシンフォニックデバイスが浮遊し広周囲へ主人の音を届ける準備をする。それは、彼女のパフォーマンスが始まる合図。
 響かせるは、【春の曙光よ、暁よ】。

『嗚呼、恋しきは故郷の安らぎ♪嗚呼、されど我が身は遥かに遠し♪其は時として身を縛る鎖が如し♪』

(嫌な気分になった時は、大きな声で歌うか…家で寝るのが一番です。)
 その思いをそのまま告げるかのような歌。どこかのんびりと怠惰なその歌詞と、意図せずとも歌に乗る先程まで彼女を苛んでいた鬱な気持ちが…鬱になり、脱出を諦めここに居座ることを是とした学生達の心を共感に誘った。
 …歌い始め、震えていた声は段々と芯を持ち安定してくる。受け入れられていることを実感し、場に慣れ始めたイルミの歌に宿る癒しの力は、その声が響くこの広間中に満ちわたる。
 ──帰って、お布団で寝たい。そんな感情を誰かが抱き、誰かがぽつりとその口から零す。その言葉を聞いてまた別の誰かがと伝染してゆくその気持ち。
 屈んでいた者は立ち上がり、泣いていた者はその眼を拭い。広間にいた学生達は外傷と共に、心も少しだけ前を向いた。
(ここはもう大丈夫そうですね)
 歌に共感し癒されていく人々を確認しイルミに感心しつつその奥へと歩みを進めるサラ。見た限り広間にいた学生は歌によってそれぞれ回復したようだが、彼女は他にあぶれた者がいないか捜索を続けた。
(気持ちが暗くなった時って隅っことかに行きたくなりますよね。私もよくやっちゃいますから…)
 もしかしたら歌声の届かない場所にいる学生もいるのではないか。そんな心配が過ぎり死角になりそうな通路を探し回った。…無意識に彼らの気持ちに同調し、暗くなりかけたことに気付くと彼女はいけないいけない、と頬を叩き気付けをする。
 広間から伸びる細い道、その内の1本。少し奥に進むと明かりが少なくなっていて…その暗がりに1人の男子学生が膝を抱えてしゃがみこんでいた。すかさず駆け寄るサラ。
「大丈夫ですか?ケガ、していませんか?」
 膝に埋めていた顔を微かにあげその声を認識する素振りは見せるも、直ぐにふい、と顔を背ける学生。
 サラの予測通りこんな迷宮の隅にいてはイルミの歌も聞こえないのか、この学生は他の学生のように癒された様子は見られなかった。
 続けてサラは心配する声をかけるが反応を返さない。苦痛も何も口にしない彼だが…その体には災魔に受けたであろう大きな傷が見られた。
 その様子を見かねてまずサラは【キュアライト】の狐火で外傷を治療していく。嫌がられるかとも思い慎重になるサラだったが彼は干渉されることにも無反応で、全く抵抗の素振りも見せず大人しく治療されていった。
 ほう、と灯る優しい狐火と共に、警戒心を解きほぐす為サラは語りかける。
「足は痛くないですか?私、たくさん歩いて足が痛くなっちゃいました」
 フレンドリーに、しかし琴線には触れないように、デリケートに。柔らかい物腰で話し続けていると少しづつ彼の話を聞けるようになってくる。
 会話の流れをそのまま彼のペースに乗せ、ダムが決壊するように流れ出たその気持ちをサラはただただ受け止める。
 そんなことで、というような悩み。相手が悪く聞こえるような過剰な尾ひれがついた説明に被害妄想。自分を正当化するのに必死な言葉。返答の余地も与えられず吐き出されてゆくそれを、しかしサラは一つ一つにしっかり相槌をうち、拾い上げ、その心に寄り添った。
 きっと母も同じことをする。優しい母親に育てられ、その愛情を受け。その背中を見てきたサラはその優しさをちゃんと受け継いでいた。

「お友達と喧嘩しちゃったんですね。それから、避けられてる気がしちゃうんですね…でも、仲直りしたいんですね。…きっと、大丈夫です。私はすこしお話聞いただけですけど、お友達もそう思ってると思います。ゆっくりでいいんです。自分を卑下することは無いと思います…貴方がそう思えるのって、すごいことです」


 広間と、その周辺通路を再確認。もうこの辺りには取り残された学生はいないようだ。イルミとサラは再び合流し、学生達と来た道の方へ振り返る。
「そろそろ、戻りましょうか」
 お腹がすいちゃいました、とサラは優しく微笑んで言った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セルヴィ・アウレアム
●行動「POW:負傷した生徒を元気付ける。」
「おいおい、どいつもこいつも辛気くさい顔しおって!しゃんとせんかいな、しゃんと!」
傷ついた生徒たちの元へやたら高いテンションで向かい、鞄から取り出した薬草や包帯で(嫌がろうとなんだろうと)応急処置。
勝手に恩を売り付けたうえで、「ほな、お代は銀貨一枚な。ここで死によったら親からでも伴侶からでも取り立てたるで。」
と告げ、ネガティブな形での行動を誘導。生徒たちと迷宮を脱出する。

生徒たちと別れたのち
「はー、なんでウチがこんな迷宮入らなあかんねん…二度と入るかい…。」と、鬱ぎみにぼやく。


レイ・キャスケット
人の感情に作用する迷宮かぁ
殆ど落ち込むことないボクには鬱ってどんな感覚なのかわかんないなぁ?

【POW】
落ち着く香りの香水を使えば単純な男の子相手なら【誘惑】効果も期待できるかな?
【優しい】言葉と明るい表情と大げさ目の動きで元気づけてあげるように頑張る!あと笑顔!

気分が落ち込んでるんだもんね、【救助活動】中に棘のある言葉とか言われても(イライラゲージ微上昇)我慢我慢、スマーイル!

どうしようもなくうだうだ言って動かない人には最終手段、弱めの電気でびりっと【気絶攻撃】
気絶した人を背負って、まだ自力で動き始めない人に向かって、すまーいる(威圧)
これも一種の【コミュ力】(物理)だね!



●2.時には厳しく鞭を振るう
 本来鬱病は否定をするのではなく、その気持ちに同調しプラスの方へ向くように肯定してあげることが最適解なのだろう。さしずめ──サラとイルミのように。
 それとはまた違った形で彼らを脱出へ導く者達もいた。

 彼女達とは別のルートを捜索するレイ・キャスケット(だいたい全部半人前・f09183)とセルヴィ・アウレアム(『迷宮喰らい』セルヴィ・f14344)は迷宮を奥へと進む道中、その通路で動けなくなっている学生達を発見していた。
 ……しかし、その現場はとても凄惨なものだった。
 気分が沈み死んだ顔をした傷だらけの生徒達。その大半はまともに立つことが出来ず壁に張り付いたり地面に延々と丸を書いたり、気が滅入ったか何かをブツブツ言いながら周辺を歩き回る学生もいて。
 この迷宮の薄暗くどこか淀んだ空気も手伝い彼女達の視界にはとても不気味な光景が広がっていたのだった。
「おいおい、どいつもこいつも辛気くさい顔しおって!しゃんとせんかいな、しゃんと!」
 最初に声を出したのはセルヴィ。通路に響き渡るハリのある声で学生達に激励をかまし、1番近くにいた女学生の元へずかずかと歩み寄る。
 先程まで静かに鬱に浸っていた女学生は急な大声に驚き少しの間セルヴィを見つめていたが、はっとして自分の世界に踏み込まれないように顔を背け体を縮める。
 その様子を見てセルヴィ…彼女はしかし、何も起こす行動を変えようとはしなかった。
 セルヴィは持っていた鞄を床に下ろし、その中から薬草や包帯などの処置道具を取り出し、それを携え女学生の傷口に手を伸ばす。
 女学生がその行動を拒否したりするよりも早く…その暇を全く作らせずに、すり潰した薬草を塗りこみ消毒、別の薬草…葉による止血、その上からくるくると包帯を巻いて取れないように固定…彼女から見える怪我を手際よく手当てし始めた。
 ざっと処置し終わると他にどこを怪我したか言ってみ、とそこで初めて女学生に問いかける。ポカンとされるがままに治療を受け、やっと返答の余地を与えられた女学生だったが、自身の怪我の状況を伝えるよりも素直になれない反論をセルヴィにぶつける。
 しかしセルヴィにはその言葉が届いていないのか聞き流されたのか、情報が得られないとわかると自分で女学生の体を調べ回していた。
「これでアンタは大丈夫そうやな?元気出しぃ!世の中辛いことばっかやないで?」
 バシッと治療が終わった女学生の背中を叩き少し雑だが笑顔で元気づけたセルヴィは、次はどいつやと別の学生の元へと道具を持って向かって行くのだった。
「…ボクも負けてられないね」
 その一連の流れを視界の端にいれながら、レイもセルヴィの後であれど行動を始める。彼女は癒し効果を期待し、迷宮に入る前に落ち着いた香りの香水を軽くつけてきた。
 自身のスタイルにそこそこの自信を持っているレイは…香水の力も相まり、これならそこら辺の男くらいは落とせるだろうと。
 そして癒すことが出来るだろうと。そう、思っていた。
 レイはぱっと目に付いた男子学生1人をロックオンする。…さっきからブツブツ歩き回っている、あいつ。
 きっと履いていたものであろう、ズボンを頭に被り下はパンツ1枚で徘徊しているあいつ。
 1番やばそうではあるんだけど、なんとなく…きっと1番さっさと片付けなくてはいけないんだと思う。
 覚悟を決め声をかける。自分の魅力を最大限に発揮できるように、優しい言動で、とびきりの笑顔で。
 手首と耳の後ろにつけた香水も、つけてから大体30分…1番いい香りがするミドルノート。万全だ。
 上々の入りに良い反応を待つレイだが…しかし男子学生は例に習って良い反応は返さず閉じこもる。
 彼は言う。なんかやべぇのきた、と。
 やべぇのってなんだよ。お前の方が存分にやべぇよ。レイは笑顔のまま心の中で悪態をつくがそれを表に出しはしない。
 …まぁ待て、相手は鬱病患者だ。棘のある言葉が飛んできてもおかしくはない。そんな状態の彼らに色恋沙汰が効かないのは仕方の無いことであって。
 でもやばいのってそれはないでしょ!?
「やばくなんてないよ~?どうしたのお兄さんそんな格好して、何か辛いことでもあった?」
 さりげなくやばい発言のフォローをいれて、柔らかい物腰で相談に入る。怒ってない。怒ってないよ。
「いや、無理…話しても何も変わらねーし…」
 更に面倒くさいタイプときた。何でも聞くしちゃんと一緒に考えるから話してみてようじうじうじうじうじうじ五月蝿いな。…とりあえずもう一押し
「いいからいいから、とにかく聞くだけ聞いてみたいし」
「絶対無理。こんな俺に構うなんて…絶対変人に違いない……」
 お前に言われたくねぇよ。
 既に苛々は限界に達しているものの一筋の理性が留めその笑顔を崩さないレイ。
 しかしその後ろから、セルヴィがレイの肩に手を置いた。
 やっていい。と無言で背中を押されたような気がした。
 彼の口から続けて並べ立てられるレイに対しての理不尽な文句。
 それをほぼ聞き流しつつ彼女は彼に手を伸ばす。くらえ。
「そんなにやばいボクが嫌だったら…おねんねしてて…ねっ!!」
 次の瞬間、男子学生に電撃が走り…スタンガンを受けたかのように、男子学生は倒れ伏す。彼の頭に被さっていたズボンをしっかり履かせ、その体をレイは女の力ながらもしっかりと背負う。
 大きな音に反応しその光景をそのまま見ていた学生達に気付くと、男子学生を背負ったその状態で。その方向に顔を向けニッコリと微笑む。

「さ、みんな…お外、でようね?」

 ──恐怖が、その場を支配した。
 その声とほぼ同時、周辺の学生全員の処置を終えたセルヴィはその掌を学生達に差し出し、立ち上がる手伝いをしたかと思うと。
 その掌をくいくいっと何かを強請るように動かした。

「ほな、お代は銀貨一枚な。ここで死によったら親からでも伴侶からでも取り立てたるで。」

 …え?お金取られるの?いや彼女が勝手に治療したのに、と様々な文句が上がる所ではあったのだが。
 その言葉と、セルヴィの視線の圧と……その後ろから満面の笑みで此方を見てくるレイの視線に……学生達はまだ鬱の雰囲気を残しながらもさっさと退散する準備を始めていったのだった。

 そうして学生達を(半分脅迫じみた方法で)地上まで送り届ける為道を引き返すレイとセルヴィ。彼女達は強靭な精神力を持っていたのか学生達に自身の鬱な姿を見せることはなかったが…心の内は、どうだったのか。
 ぽつりと、誰も見ていないときに、セルヴィがこう零していたような。
「はー、なんでウチがこんな迷宮入らなあかんねん…二度と入るかい…。」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シャルロット・リシュフォー
鬱病迷宮…なんて恐ろしい場所なんですの!
こんな所に弱った学生さんを置いておくわけには参りません!
シャルロット、全力で救助に参りますですの

ということで、学生さん達の居そうな場所を事前に予測してから迷宮に突入して
実際に学生さん達の救助にあたります
「迷宮に迷いこんだ学生さんですね?もう大丈夫ですよ!」
優しく、柔らかく、相手を労ることを心がけて声を掛けるです!
鬱の人に頑張れとかそういうのは禁じ手だって聞いたです
だからあくまで相手を否定せず、慰めながら地上へ誘導しますね
「さ、私についてきて下さいです。柔らかいベッドも、温かいスープもありますよ」
地上に戻ったら、他の救助された学生さんも含め全力で治療ですっ



●3.鬱に飲まれない、優しく強靭な精神を
 優しく寄り添った猟兵達と、愛の鞭で一喝浴びせた猟兵達。あと、もう1チームも学生達の救出に出向いていた。
 ただ、こちらのルートは…かつて躁鬱の迷宮ではなく、学生が頻繁に出入りしていた頃。
 他のルートより、災魔が多かった場所で。
 この迷宮周辺について下調べをしていたシャルロット・リシュフォー(歌声アステリズム・f00609)はその情報から、本来災魔退治に来ていた学生が迷い込むならこのあたりではないかと睨みを効かせ、ここに来ていた。
「迷宮に迷いこんだ学生さんですね?もう大丈夫ですよ!」
 想定通り行き倒れていた学生を発見し、ぱあっとその表情を明るくして声をかけるシャルロット。彼女は気合十分に小さな歩幅でとてとてと学生の方へ向かってゆく。
 彼女が出会ったのは3人、文字通り行き倒れていた学生達。チームで迷宮に挑んでいたのか、仲良さそうに(倒れた状態ではあるが)纏まっていた。…意識はあるようだ。
 その不思議な状況に軽く驚きつつもまず声をかけながらゆっくりと彼らの体を起こすシャルロット。
 そして彼らと同じ目線の高さで問いかける。
「皆さん暗い顔をして、どうしたんですか?なにか、ありましたか?」

 放っておけよ。

 シャルロットの最初の言葉。それを遮るように学生の1人が開口一番、ぽつりと零す。
 その音は小さく瞬間的なものな筈なのにとても重く感じた。
 その言葉で、シャルロットは自らのいる環境を改めて実感する。
 気分を暗くする、薄暗く不気味な洞窟。
 不安を煽る、何処からか吹く風による空洞音。
 3人の学生達を…シャルロットを包み込むように…重く、どんよりとした空気がその場周辺を覆っている。
「…なんて恐ろしい場所なんですの」
 近くにいるこちらにまで鬱が伝染しそうになる。ここに来るまでの十分な気合いも、かけようとしていた言葉も。何もかもを彼らの闇に吸い取られていきそうな…
 いや、負けてはいけない。ここで屈してしまったら、学生達が。ぷるぷると首と共に大きな紫のポニーテールを横に揺らし嫌な気分を払う。
 助けたい。
 放っておけと言われても、放ってなんかおけない。それでも根気よく、優しく。
 その会話を繋げ…警戒心を解き、ゆっくり相手の扉が開くのを待つように、悩み事を聞き出してゆく。
 その流れ出た言葉を、絶対に否定しない。それに対して頑張れとは、言わない。
(鬱の人に頑張れとかそういうのは禁じ手だって聞いたです)
 彼らだって頑張ろうとしている。それで無理だったから鬱なのだ。それに頑張れとは他人事じゃないか。
 熱くできる!!できる!!と五月蝿く持ち上げられても、苛々が募るだけだ。
 優しいシャルロットはその相手を気遣った話術で…少し時間はかけたものの、3人の愚痴を気持ちよく吐き出させた。
(…悩みの解決とか、完全な回復は時間がかかりそうですの)
 聞いてみれば3人を鬱にたらしめた悩みは勿論別々。鬱特有の支離滅裂な言動と3人ランダムに次々と吐き出される鬱憤を…聞き分けることはできたが、それぞれちゃんと理解し言葉かけてあげるのは難しいところだ。
 一旦脱出してから…怪我と一緒に片付けるべきか。シャルロットはちらりと奥の通路を一瞥する。
「さ、私についてきて下さいです。柔らかいベッドも、温かいスープもありますよ」
 人に悩み事ぶちまけ少し楽になったように見えるとはいえ、鬱状態が完全に治り切っていない彼らが素直に着いてくるか不安ではあったが。
 彼らはシャルロットのことを少なからずも信頼したのか重たい腰を上げ自分のペースで歩いてくる。
 立ち上がらせた彼らを見て、改めて傷跡が多数あることに気付く。…戻ったら直ぐにシンフォニック・キュアで治療しないとな、と考えるシャルロット。
 ほらほら、とあくまで明るく脱出を促すシャルロットだったが、勘のいい彼女は迷宮の奥から迫る何者かの気配を感じていて。
 この傷ついた学生達を早く無事にここから出さなくては、と早足で出口に向かうようだった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『ふよふよくらげ』

POW   :    ふよふよ、とうめいになる
全身を【うっすら透明っぽい姿】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD   :    ふよふよ、ぴゅーっとする
【空中をふよふよすること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【口から噴き出した水】で攻撃する。
WIZ   :    ふよふよ、しびしびする
【ふよふよした全身】から【高圧電流】を放ち、【感電】により対象の動きを一時的に封じる。
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●災魔も鬱です
 ふよふよ。ふよ。
 学生達のいなくなった迷宮。引き返した猟兵達の前。その通路には先程まではいなかったはずの…クラゲが浮いていた。
 ふよふよ…ふよふよ。
 クラゲは外敵を認識した瞬間、そのゆったりとした雰囲気から一転して激しく暴れ始める。
 ふよ、ふよ。
 壁に張り付いて、びりびり。仲間とぶつかって、しびしび。しかしその動きはどこか重々しく、悲壮感が漂っていた。
 ふよん!!ふよん!!

 ………なにかを訴えかけているようだ。

 彼らもまた鬱病迷宮の被害者で。かつては学生達でも簡単に倒すことが出来た災魔であったが…鬱になったことによって凶暴性が増している。
 その彼らに追い打ちをかけるのは少し申し訳ないが、放っておけば危険なのも確かだ。
 猟兵達は、鬱クラゲの群れに立ち向かっていったのであった。
シャルロット・リシュフォー
オブリビオンが鬱になるというのも変な気分ですね……
過去とは既に確定していて、形の変わらないもののことですのに……

「一体何を訴えたいのでしょうか……。気になりますけど、言葉は話せないんですよね」
せめて、シャルの歌を聞いて下さいです!
【シンフォニック・キュア】でくらげの気持ちに共鳴できないか、すこし試してみるです
鬱に飲み込まれないように注意して、逆に相手を落ち着かせられないか歌ってみましょう!

戦うとなったら剣でくらげオブリビオンをサクサクと斬っていきますです
反撃の電撃で多少ダメージを貰うでしょうけど
それは【シンフォニック・キュア】で自己回復して凌ぐですっ
「痛っ……!もー、大人しくしなさいですっ!」



●星空のように美しく、澄み渡る歌声で
 かつてその世界に存在した者の姿を持ち、世界を滅亡に導くオブリビオン。彼らにも、悔やむような過去があった。
 心の闇を引きずり出す躁鬱の迷宮。オブリビオンであれど、迷宮の変化についてゆけず迷い込んでしまった彼らもその力に飲み込まれたのだ。
 学生達を地上に連れ戻し、感じた気配の元へと戻ってきたシャルロットはそんな彼らと対峙していた。
 壁に張り付き激しい電流を放ったり、仲間に絡み付いて暴れたり。過去に何があったのかは知らないが…その記憶による鬱状態で凶暴化しているようだ。
「一体何を訴えたいのでしょうか……。気になりますけど、言葉は話せないんですよね」
 過去は確定したものであって、今更悔やんだところでどうすることも出来ないし、勿論シャルロットは彼らにどうしてあげることもできない。ただこの有様を見て、心優しく争いを好まない彼女は無意識にも彼らの苦痛を思い浮かべてしまう。
 そのファンシーな見た目からは想像のつかない程の散々な荒れよう。自分以外の生き物だけではなく、ある物全てに向けられる敵意…一桶のクラゲが、悲痛な叫び声を上げた。
 叫び声とシンクロするようにその体からバチバチと大きな電流が散る。薄暗い迷宮内で急に満ちた激しい光とその騒音に圧され一瞬思わず目を背けるシャルロット。
 光が止み、開けた視界にはこちらへ正面から突進してくる数桶のクラゲがいて。彼女は自身の双剣を咄嗟に構え、襲い掛かって来たクラゲに向かってそれを振り抜く。
 迎撃には成功したものの、剣戟の最中に、先程目の前で爆ぜた電流が再びクラゲから放たれる。
「痛っ……!もー、大人しくしなさいですっ!」
 電撃を受け痺れた身体は思うように動かず、このままでは攻撃も回避もままならない。
 元々は学生達が楽々倒していた災魔のはずなのだが、敵の攻撃はとても強力なものだった。…鬱病化によって凶暴化しているのであれば。言葉が通じずとも、彼らを癒すことが出来たならば。
 自己回復も兼ねて、彼女はまだまともに動く口から大きく息を吸い込む。
「せめて、シャルの歌を聞いて下さいです!」
 紡ぎ出されるは、優しく柔らかい旋律。それはこの薄暗く物悲しい空間を、クラゲ達を包み込み…その心の隙間に入り込むシンフォニック・キュア。
 彼女自身もその歌詞と音階に感傷を寄せ移入していくことで自身の状態異常を回復していった。感情はそのまま歌に乗り、その効力を大きくする糧となる。
 その体から、心から発される癒しの音はクラゲ達をを共感へ誘い、1部のクラゲはその動きが徐々に沈静化していった。
 癒されたことにより表情が緩み行動が落ち着いたクラゲ達の様子を見て、自身もその表情を軽く緩ませるシャルロット。よかった。元気になったんだね。
 ただ、その感情とは反対に。双剣を握る手には、湧き上がる何らかの想いを抑えるように力が入っていた。
 シャルロットは…オブリビオンの脅威から、この美しい世界を守るために戦っている。
 その決意は、立場は、何があっても変わらない。…変えてはならない。1猟兵としてここに立っている以上、たとえ鬱状態から解放されたとしても。元の影響力が弱く危険性の低いクラゲ達に戻ったとしても。
 だからといって彼らを見逃す訳にはいかなくて。

「ごめんなさい」

 洞窟のかすかなオレンジ灯を受けて。淡く輝く2振りの剣は、その所有者の心を映し出すかのように、涙を流すかのようにその光を刀身で受け流す。
 その冠する女神の名のもとに…美しい星のごとく、輝きを放った。
 金と銀の光に切り裂かれていったクラゲ達。その体は溶けかけ、間もなく骸の海へ帰ってゆくそれをシャルロットは電気が流れていないことを確認して、優しく拾い上げた。 
「また、どこかで…違う形で、出会えたならいいですね」
 心優しき少女は、消えゆくクラゲ達を見送って。己の信念のもと、戦場に戻って行くのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

鈴木・志乃
指定、怪人
周りの人に聞かれたくない
私の大切な、記憶の中の……きっと、あの子の歌

【UC発動】【歌唱】【誘惑】【礼儀作法】【コミュ力】
適切なタイミングで【衝撃波】
語りかけるように
包み込むように歌おう

これは【祈り】の歌
命の儚さや切なさ
頑張っても報われないやるせなさ
それでもひたむきに生きようとする
全ての命と意志を肯定し応援するバラード

姿形が変わっても
心は偽れないよ、違う?
まだギリギリ視認できるかな、良かった
そっと近づいて、ぎゅっと抱き締める

大丈夫 怖かったね 辛かったね
そんなに警戒しなくても大丈夫だよ
何がそんなに辛いのかな……
【見切り】【第六感】でそれっぽいこと分からない?

骸の海で、いつかまた、会おう



●記憶の底の、肯定の歌
 ──同時刻、別通路。変わらず多数のクラゲが浮遊するそこでは、別の歌が響いていた。

 それは癒しのシャルロットの歌とはまた違う…どこか胸を穿つ、暖かみのある歌声。
 クラゲの群れの間を流れるように漏れ出る、その響き渡る旋律の、空気の振動を辿った先には鈴木・志乃(ブラック・f12101)の姿。人には聞かれたくないと個人行動を選び、他の猟兵がいないことを確認している彼女は気負いなく全力で歌う。自身の使い慣らしたデバイスを通して発されるその歌声は広い迷宮によく響き、暗く淀んだ空気をもかっさらっていくようだった。
 しかし志乃はピッチやリズムにブレを見せないものの。どこかたどたどしく、何かを思い出すかのように、その歌を口遊んでいた。
 ……きっと、あの子の歌。彼女に残っているわずかな大切な記憶の、その1部分。頭に浮かぶのは、この歌を歌う彼女の──

 ──響くは、女神の歌。

 志乃の歌を聴いたクラゲは、威嚇のしびしびをやめる。歌が始まり、少しの時が経つ頃には皆、優しく包み込むような歌声に聴き入っていた。
 キマイラフューチャーで音楽活動をしている志乃は、敵意を向けてくる大勢の鬱クラゲ達の前でも臆することなくその歌声を披露する。
 敵の戦意を奪い、直接その罪悪感に働きかける。その効果は見て取れるように抜群であった。彼女に向けていた敵意のある視線は薄れ、見られることから与えられるプレッシャーも心なしか軽くなっていた。
 ただ、クラゲ達の表情は暗いまま。志乃や仲間からターゲットは外れたものの、壁や物にあたる行為は未だ続けていた。…放っておくのも危険そうだ。
(何がそんなに辛いのかな……)
 歌声が届きつつも苦しむクラゲ達を気にかけ、その歌は止めずとも彼らを深く観察していく。すると、小さな傷がついたクラゲが数桶いることに気付く。…遭遇して、まだこちらからは傷をつけるような攻撃はしていない。
(…暴れた時に何かにぶつかった?それとも…)
 …先人か。凶暴化する前に学生達が中途半端につけた傷口だろうか。理不尽に狙われ狩られてゆくことに、怒りを感じているのだろうか。
 …なればこそ、ちゃんと、聞いてほしい。鬱の理由を推測した志乃はその歌声のボリュームをあげる。

 ──この歌は命の儚さや切なさ、頑張っても報われないやるせなさ
 それでもひたむきに生きようとする、全ての命と意志を肯定し応援するバラード

 祈りの歌を、響かせる。クラゲという観衆を前にして、彼らを包み込むように。
 ──その歌詞を届けるように、はっきりとした滑舌で。
 ──その歌に込められた想いが伝わるように、感情をこめて。
一つ一つのフレーズを丁寧に歌い上げていく。
 歌声による効果を振り切るように突進して来たクラゲがいるならば、語りかけるようにその動きを静止させ。
 ──怖かったね、辛かったね。そんなに警戒しなくても大丈夫だよ

 甘く優しい言葉と共に近付いて、そのしびしびする足には触れないようにギュッと抱きしめる。その行動に一瞬戸惑い暴れようとしたクラゲだったが…すぐに大人しくなり、彼女の腕の中にそっと、身を預けていた。
 落ち着いたのを確認すると、志乃はクラゲからそっと離れる。こちらの存在を信頼したのか、抵抗をやめ安心しきった表情のクラゲ達が彼女の眼に映った。

 刹那、衝撃波が空間全体に走る。戦意が喪失しその場に浮き留まっていたクラゲ達は抵抗する術も無く、その波動に体が靡き吹き飛ばされてゆく。
 彼らもまたオブリビオンで。倒さなくてはいけない敵であって。
 歌い終え、立ち尽くす志乃の周辺にはもう浮遊するクラゲはいない。力尽き地面に潰れ伏すクラゲは今にも消えんとゆっくりその姿を薄れさせていく。その様子を彼女はじっと見届けた。
「骸の海で、いつかまた、会おう」

成功 🔵​🔵​🔴​

レイ・キャスケット
ボクも最初は比較的安全な相手に力の扱い方を覚えていったんだよ
脅威が少ないってだけで学生に目の敵にされれば鬱憤とかも溜まったりするのかな
キミ達には悪いけど、これからも学生のお相手でいてほしいね

いつも学生がお世話になってありがとうございますって深々と頭を下げ
これからもよろしくお願いする為に今日の所は大人しくボク達に成敗されてほしいな?

炎と風の熱風魔法に特殊な薬品を混ぜ、透明になってもわかるように煤で着色
動かなくなった敵は絶縁性の網を投げ一匹ずつ捕獲
抑えきれないしびしび攻撃は≪付与の羽衣≫の電撃耐性で耐える

一纏めにしたくらげちゃんは≪リフレクト・リフレクティア≫で一掃
無敵とボクの魔力の根競べだよ



●炎と氷の閃き
 その弱さと可愛らしい見た目から、まだ戦い慣れしていない学生達のウォーミングアップとして狩られゆくクラゲ災魔。
 ただただ世界を滅ぼす為に行動する彼らだが、この迷宮の摩訶不思議な力によってマイナスの感情を持ってしまったなら…なによりその理不尽な運命を呪うことが自然ではなかろうか。
 アルダワの学生であるレイにはそんな予測ができていた。彼女もまた、そうやって育成をされてきた1人なのだ。戦いの理論を学び、模擬戦闘を経験して、最初は弱い災魔の相手をさせられる。その回数を重ね、学び、強くなって…大型の敵と戦闘できるようになっていく。
 弱いからと育成の為にターゲティングされ狩られゆくのは可哀想だ、とは言っても。
 彼らも紛れもないオブリビオンで。自分達にとって害悪な行動をすると、決まっているのだ。
 クラゲ達に若干の哀れみを抱えつつ、レイは真っ直ぐと彼らを見据える。そしてひとつ、深々とお辞儀をする。
 いつも学生がお世話になっています。ありがとうございます。
「これからも、ずっと学生のお相手でいてね」
 それが、きっと正解なんだ。

 しびしびと可愛らしい音をあげ、可愛らしい体から細い線が伸び鋭く光る。
 電流を纏って突進してくるクラゲの群れに対して、上手く躱せるように立ち回りながら魔法攻撃を放ってゆくレイ。
 自身の得意とする炎属性と、風属性の複合魔法…呼び出すのは、荒れ狂う熱風。慣れた詠唱で反射とほぼ同時、素早く発動したそれはクラゲ達が進撃してくるコースに強く吹き付ける。
 レイの行動に反応が追いつかず、逃げ遅れ熱風に絡め取られてゆくクラゲ達。最初は炎の中でうっすらと影が見えていたものの、すぐに見えなくなる。
 みずみずしかったクラゲ達でもその水分を完全に奪われる程の熱風。猛威を振るう地獄の熱に次々とやられてゆく仲間を見て危機を感じたか、熱風近辺のクラゲ達は次々とその姿を消してゆく。
「…消えた?」
 逃げた、というわけではないのだろう。何となくだが、うっすらと視認できる。存在を確認したレイは攻撃を再開するが、当たっているかどうかもわからないし、手応えもない。
 しかし彼女の機転が回るのは早かった。再び熱風を発現させ、軽く広範囲に満遍なく吹かせる。今度の熱風には、特殊な薬品を乗せている。
 一言で言うと、着色料だ。
 透明な敵に対しての戦い方なんて決まっている。…見えてしまえばいい。熱風に乗せた薬品は形あるものに付着し、化学反応を起こす。無色だったその色はクラゲを形取り、色とりどりに染まっていった。
 …やっぱり、いた。
 だが攻撃力を落としているといえど、彼らは先程のように熱風の影響を受けていないように見える。あの透明な状態だと防御力も上がっているらしい。ただその状態では動けないのか、微動だにもしないクラゲ。
 なればと、別の方法へと転換したレイは懐から網を取り出す。動かないクラゲ目掛けてそれを放り投げた。色とりどりに染まり硬直したクラゲ達にそれを避ける術はなく、あっさりと捕まってゆく。
 クラゲ達を絶縁体で構成されている網で捕獲し1箇所に纏める。捕獲された事に気付き防御形態を解いてゆくがその速度はあまり早くなく。保険に付与の羽衣に雷耐性を付与していたのだが、防御形態を解いたばかりのクラゲ達の反抗は弱々しく、その心配はなさそうであった。
「クラッシュドアイス!」
 レイは大きな氷塊を魔力で精製し、クラゲ達へとぶつける。だが捕まり攻撃を覚悟していたクラゲ達、その攻撃には反応が早く。防御形態へと戻ることによってその外質は固くなり、勢いよく体にぶつかった氷塊の結合を打ち負かしそれを細かい結晶へと砕く。
 透けた体をチカチカと点灯させどうだ、と少し余裕を見せたクラゲ。その様子を見てレイの口元が緩んだことも、知らずに。

 ──これで終わりだと、思った?

「からのっ…リフレクト・リフレクティア!!」
 レイの指から光線が放たれる。クラゲ達は氷塊同様それに対して防御の姿勢をとるが、しかしそれは直接クラゲ達に向かってはいない。
 その周辺へ…クラゲに打ち負けた氷の破片へと、光は伸びた。
 砕けた氷塊の、破片がその光を眩しく拾い上げる。目が眩んだかと思えば、光はランダム軌道を描き檻のようにクラゲを囲い、その個体を捉える。予想外の連発にクラゲ達も理解が追いつけておらず、防御形態も不安定になっていた。
 冷たく輝くその光がそんな状態の彼らの装甲を灼くのはいとも容易く。網の中のクラゲ達は文字通り一網打尽にされたのだった。

 想像していたよりも簡単に、あっさりと決着がつき…ふと、自身も受けてきた雑魚災魔との戦闘授業を思い返す。
 後輩達もああやって、成長していってるのかな?その為にも、この迷宮は何とかしなくちゃ。そう、彼女は思うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

小宮・あき
後衛。
【オーラ防御】【激痛耐性】【呪詛耐性】【氷結耐性】【電撃耐性】

UC【愛雨霰】で牽制攻撃。
愛用のマスケット銃をレベル本を宙に浮かせ【一斉発射】の【援護射撃】。
高さ・距離をバラバラに【フェイント】【だまし打ち】をしたり【零距離射撃】も。
刀身で【串刺し】、2本クロスし【武器受け】【盾受け】要領で敵を前進させない。

自身は両手杖を握り【全力魔法】のUC【神罰】。
聖職者の私の【祈り】は、光の範囲は半径レベルmの円柱。
【範囲攻撃】で複数体を纏めて光の海に沈めましょう。

【視力】で敵を見て【聞き耳】で音を逃さない。
【第六感】【野生の勘】を重視し【ダッシュ】【ジャンプ】
【スライディング】【逃げ足】で回避!


チャド・アランデル
【心情】
遅れて登場だよー。
健康な体には健康な精神が宿るっていうし、早く迷宮を脱出して美味しいご飯でも食べないとだよねー。
ところで、オブリビオンも鬱になるんだねー。
クラゲさん達もこのままじゃ辛いだろうし、早目に退場願おうかなー。

【行動】
【ガチキマイラ】使用
技能を活用し、回避をしながら攻撃を行い回復をします
攻撃が通らない相手は後に回し、通る相手を優先して数を減らします

活用技能
【生命力吸収 野生の勘 見切り 2回攻撃 ダッシュ フェイント 逃げ足 敵を盾にする カウンター 情報収集】

【その他】
「クラゲって食べた事無いんだよねー。どんな味なんだろー?イタダキマース!」(ガチキマイラ)
アドリブ歓迎



●撹乱せよ、そちらはお前が滅ぶ道
 もう一方の戦場。そこでは迫り来るクラゲ達に向かって、多数のマスケット銃が宙に舞う、どこか幻想的な光景が広がっていた。
 通常では有り得ないような光景、そのマスケット銃達を支配下に置き浮遊させるのは小宮・あき(人間の聖者・f03848)。彼女のユーベルコード【愛雨霰】によって複製されそれぞれが意志を持ったかのように空中で踊る。
 しかし銃口の向けられる先は全てクラゲ。危険を察知したクラゲは透明化とともに外皮を固くして防衛するものもいて。彼らには生半可な攻撃が通らないことがわかると同時に機転が回るあきはその者達をターゲットから外した。
 ただ、その中にも─お構い無しにこちらに侵攻してこようとする荒ぶるクラゲが。カムフラージュだろうか、たまに硬くなったと思えば前進を繰り返し、防御体勢に入った仲間達の隙間を縫って…徐々にこちらへ距離を縮めていく。
 そんな異端の存在をあきが見逃すわけもなく。戦いに慣れた彼女の目と、その直感が敵の位置を正確に追う。そこへ向けて一発、逃げた先に、もう一発。そうして追い詰めていく先は、別の銃による行き止まり。
「残念でしたね。私からは逃げられませんよ?」
 悔しさにしびしびと電流を体から垂れ流すも無残に、その体は撃ち抜かれた。
 銃たちは侵攻するクラゲ達へ向かってその都度妨害をしていく。自らを操る力の主の元へはそう簡単にたどり着かせてくれないようだ。
「クラゲって食べた事無いんだよねー。どんな味なんだろー?」
 戦いが繰り広げられる中、それを見守りふと思ったのか…そう呟いたチャド・アランデル(キマイラのシーフ・f12935)は前に出る意欲をその言葉や空気感から放つ。その意向を敏感に感じ取ったあきはどうぞ、と言わんばかりにマスケット銃を器用に操りその隊列を入れ替える。クラゲ達が逃げ出す隙はないままに手早く彼が通れるだけの道を作り出した。
 その道ができることをわかってか一直線に迷わず駆け抜けるチャド。その視線の先には連携の隙を見て侵攻しようと企んだが失敗に終わった…まだ柔らかいクラゲが見受けられた。
 餌だ。ユーベルコードによって変化した口元に唾液がたまるのがわかった。衝動は彼の背中を押し勢いとなる。
「イタダキマース!」
 百獣の王…ライオンの頭部が、その大きな口が一体のクラゲを捕らえる。がぶりと噛み付いたと思えばその鋭利な歯がクラゲの外皮を裂き引きちぎる。反撃の隙も与えられずに大きな損傷を負ったクラゲは力なく茶色い土の床にぼとりと落ちた。少しの間よく咀嚼し味わっていたチャドだったが、一体ではまだ満たされなかったか…百獣の王の頭部のまま、その鋭い目で次の獲物を探しすごいスピードで駆けていった。
 狙われ続ける銃口の恐怖に、捕食される事に対する…生物としての恐怖がクラゲ達を苛む。その感情はこの迷宮に課せられた鬱よりも時には強く──
 黙って固まっていれば狙われることはないものの、恐怖に耐えられなくなった者達が暴走を始め防御形態を解き電気や水鉄砲で闇雲に攻撃をしてくる。しかしそれは照準が定まらず乱れ打ちと言ってもいいようなもので。
 あきは攻撃を見切り水鉄砲をクロスさせたマスケット銃で防ぎ、的にならないようその足を止めずに動き続ける。チャドは目にも止まらぬ素早い動きで攻撃を避け、時には硬いクラゲの後ろに入って攻撃を受けさせ、撹乱し。
 回避能力が高い2人には攻撃も避けられるばかりであった。
 ──チャドの撹乱は敵のヘイトを煽り、その視線を彼の体が一身に背負う。最初は狙われた一匹、次いで盾にした2匹目、次いで煽られ3匹目…気付けば集団を引き連れ走り回る。
 ふと、急にチャドが足を止めクラゲ達の方へ向き直った。
「さ、集まったねー。残念だけど、僕についてきたのは」

「罠です」

 凛と響くあきの声。その方向へクラゲ達が気を向けると同時にチャドはその場から離れる。先程までクラゲを喰らっていて、少し満たされたその口元は笑っていたか。しかしクラゲ達がそれに気付くことは、ない。
「可愛いクラゲさんを倒すのは少し気が引けますけど…」
 その言葉と共にクラゲ達が発光…否。床から漏れ出す光を受け、みずみずしい体がその光を受け取り受け流す。その光は火山の噴火のように放出を待っているようだった。あきが自分の近くに戻ってきたチャドの姿を確認すると、その光は放たれた。
 ──神罰を与えましょう。
 目を眩ませるほどに強い輝きを持ったその光の柱は迷宮ごとクラゲ達を灼く。広範囲攻撃である聖なる光は、あきの強い祈りの力は、狭い迷宮の道には十分すぎる光源で。

 ──クラゲ達は2人の見事な連携により、滅びて行ったのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『兵器蜘蛛』

POW   :    蹂躙
【長大な八脚から繰り出される足踏み】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    蜘蛛の糸
【腹部の後端から放つ鋭い鋼線】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に鋼線 による蜘蛛の巣を形成し】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ   :    子蜘蛛
レベル×5体の、小型の戦闘用【子蜘蛛ロボット】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は世良柄野・奈琴です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●鬱は極上の麻痺薬なり
 クラゲの残骸を越えたその先。奥まるにつれ更に淀む空気に薄暗くなる迷宮。学生なら正気を保っていられないのではないだろうか。

──カシャン

 その音がした方向に、耳のいい猟兵が視線を向ける。そこにあったのは薄い照明を拾い鋭利な光を放つ糸に磔にされたクラゲと、同じように磔にされ気絶した生徒達。
 蜘蛛の糸のようなものにがんじがらめにして絡め取られている彼ら。まずは救出しようと手を伸ばす猟兵達。しかし─その行動は阻害される。

 ──カシャン カシャカシャカシャカシャ

 ぎらぎらと輝くその糸に触れたか触れないか。そこで後ろから、先程よりも五月蝿い音が継続的に鳴り始める。振り返る猟兵達の前には、巨大蜘蛛──の形状をした、機械兵器。
 鬱迷宮に住み着き、その恩恵に甘え餌を貪っていたフロアボスが、そこにはいた。
 蜘蛛はカシャカシャ音を立てながらその身体から次々と子蜘蛛を生み出してゆく。母体から生まれた子蜘蛛はこちらへと軍を為して襲いかかってくる。
 ──絡め取られた生徒達の救助は、もう少し後になりそうだ。
鈴木・志乃
(鬱に意識が遠退くと体が二つに分離する。
本体は光の球へ、花と羽は白髪のオラトリオヘ
【真の姿】
無言)

(喉をさすると、光球が吸い込まれる
発声を確認し)
【UC発動】
【歌唱・誘惑・衝撃波・祈り・パフォーマンス】

(柔らかく微笑み
目線は真っ直ぐ敵を見つめて
全ての生命を愛する意志を、肯定する歌詞を歌い続ける。
今度は淀まず、もっと力強く明るく
希望を持って輝くように

たとえそれが、オブリビオンであっても)

(【第六感・見切り】で避け光の鎖で【武器受け】からの【カウンター】
【スライディング】【ダッシュ】併用

魔法のトランプ【早業・投擲・念動力】で敵を撹乱
糸を切断)

『貴方も私も、たった一つの大切な命』(唇が動く)


シャルロット・リシュフォー
見つけましたです、フロアボス!
見逃す理由は1つもないのです!
「人々を、世界を守るため……シャルロット、参ります!」

【ハーモニックワールド】を使用して果敢に攻撃を仕掛けるです
歌で子蜘蛛を散らし、炎のエンチャントで糸を切り裂きながら接近して
魔法の双剣で蜘蛛の装甲をものともせずに連続斬りですぅ
「ha――ッ!」
まずは足から、可能なら頭を落としたいところですっ
大丈夫だとは思いますけど、囚われの生徒さん達を巻き込まないようにだけは注意しますね
「待ってて下さいね!すぐに片付けて助けますので!」
もちろん、他の猟兵さんとは協力して対処しますぅ
一人で勝てる、なんてうぬぼれちゃダメですよね

【アドリブ歓迎】


チャド・アランデル
【心情】
なるほどー、心無い兵器だからこの迷宮は狩場になるんだー!
早くこの蜘蛛を倒して生徒さん達を助けないとだねー。
下手に暴れられて被害が出てもいけないから、まずは武器でもあるその足を狙って機動力を削いでいこうかなー。

【行動】
【シーブズ・ギャンビット】使用
足の関節部を狙い、機動力を削ぐ
側面や後方の位置取りを意識する
回避を行い、隙を見て一撃を入れる

活用技能
【野生の勘 逃げ足 敵を盾にする 見切り 2回攻撃 フェイント ダッシュ カウンター 暗視 暗殺 鎧無視攻撃】

【その他】
「蜘蛛さんは益虫って聞くけど、君は明らかに害虫だよねー」
「蜘蛛さんって本物だったら美味しいって聞くから残念だなー」
アドリブ歓迎


レイ・キャスケット
なるほどね、機械じゃ鬱にはならないかぁ
ボク機械の敵って苦手なんだよねぇ、行動を予測しづらいというか…

【POW】
機械相手なら雷が定石なんだろうけど、鋼線を通して生徒達にも被害が出るかもだから自重して
って戦法をあれこれ考えるんだけどなんか全然集中できない
(鬱の迷宮の影響か普段より短気で判断能力が鈍い)
ああもうやりにくい!こういうときは直感で動く!

UC≪マトウモノ≫を発動し格闘近接特化戦闘
【ダッシュ】(脚部に風魔法)・攻撃の瞬間に【全力魔法&属性攻撃】でブーストし魔力消費と寿命の代償を最小限に

慣れないUCで加減がわからず使い始め加速で止まれなかったり、終了後筋肉痛になったり
い、癒して…(立てない)



●剣戟の饗宴
「人々を、世界を守るため……シャルロット、参ります!」

 その戦場には、絶えず歌が響いていた。
 歌声の主はシャルロット。学生達を救った癒しの歌とはまた別のナンバーを安定した声量で口遊み蜘蛛へと駆けてゆく。親蜘蛛を守るかのように群れを為して迎え撃つ子蜘蛛。
 だが子蜘蛛の襲来に合わせてシャルロットは声の圧を調整し、波動とも言っていいような音を放つ。その圧力は凄まじく…無力にも小蜘蛛は散らされて行った。
「待ってて下さいね!すぐに片付けて助けますので!」
 視界の端々に入る、囚われた学生達。彼らを救うためにも。強い覚悟と決意をもって進む彼女は勇ましくも、美しい。2振りの剣を携え、歌で子蜘蛛を難なく蹴散らし蜘蛛へと走ってゆくシャルロットを見て。蜘蛛は後腹部の先端から鋼の糸を射出する。
 ─鋭利で丈夫な、鋼の糸。だが囚われた学生達を見たその時に糸の性質を知ったシャルロットは対処方法を決めていた。炎のエンチャントを施した剣でいなし、通行を邪魔する糸は切り裂いて。速度を落とすことなく蜘蛛へ向かっていく。蜘蛛は危機を感じたのか鋼の糸を手繰り巣へと登っていく。
 逃がすか、と追いかけるも…蜘蛛の移動スピードは、先程とは段違いに上がっていた。
 蜘蛛は瓦礫が引っかかっていようが滅茶苦茶に張り巡らされた鋼糸の上を乱雑に踏み歩く。その動きを捉えようとシャルロットが動くも糸の上ではホームグラウンド、といったように物凄い早さで動く蜘蛛。別の場所からも、手早い斬撃と炎が飛ぶが、それをも軽々と避ける。
「蜘蛛さんは益虫って聞くけど、君は明らかに害虫だよねー」
 その気持ち悪さとオブリビオンとしての行動をディスりながらもその動きを追おうとするチャドとレイ。
「ちょこまかと…っ」
 当たらない攻撃。レイは段々と焦燥感を募らせていた。動き回る蜘蛛をロックオンし、炎魔法を放つ。
 ひらり。
 その逃げる先を予測して、また手早く放つ。
 ひらり。
 …ひらりひらりとこちらの感情を逆撫でするように攻撃を回避する様はまるで飛び回る蚊のように見えてくる。…煩わしい。
 普段ならそこまで気にとめないだろうが、湧いてくる子蜘蛛、鋼と鋼が擦れる耳障りな駆動音。そして、鬱の迷宮。猟兵である彼女達への効果は微弱ではあるものの、その空気が最も濃い奥地で、焦燥感に狩られながら戦闘をしている状況では…その小さな不快感に溶け込み、マイナスの方向へと連れて行かれる感じがわかる。
 回らない思考。いつものように浮かばない策。そんな自分にも苛立ちが募る。こんな時、どうするべきか─そんなの、決まっている。
 とにかく、動け。
「get…ready?」
 意を決したかのように力強く発された号令は場にその存在を刻む。─が、次の瞬間にはその発信源はそこにはない。
 駆け出した。しかしその脚力は人間の常識の域を超えていて。切った風がコンマ数秒遅れて通過した場所を吹き荒らす。【制限術式-魔闘強化-】─風魔法の放出による、足の超絶推進力と高速回転。生身では考えられないようなスピードで蜘蛛へ一直線に突っ込む。体には絶大な負担をかけるがその効果は確かで。
 …すれ違いざまに振り抜いた斬撃が蜘蛛を捉え、その体をかする。先程までは、全くと言っていいほど避けられてしまったというのに。
「っとと、バランス、難しいなぁ…?」
 咄嗟に使ってしまったものの、普段身に馴染みのないユーベルコードの制御がうまくいっていないのか加速をし過ぎ正面衝突した壁に手を着くレイ。自分の感覚が危険信号を早いうちに出してくれたおかげで直前で減速し壁に打ち付けられることこそなかったが。
 気を取り直し、少し加減をしながらも再び加速。器用に蜘蛛の巣を掻い潜り場合によっては足場にし、逃げ回る蜘蛛の後ろを走る。蜘蛛が振り向いた時にはもう遅い。攻撃にも…ブースト。躊躇なく轟速で振り抜かれた炎属性の剣は鋼の胴体を切り裂く。ギィインと耳に痛い音を立てて焼傷を身に刻んだ。損傷に大きく体を仰け反らせる蜘蛛。追撃を狙うレイから逃げるように蜘蛛は大きく飛躍し、別の糸へと飛び移る。
 ──ぐらり。糸を掴んで留まる蜘蛛の身体が傾く。前脚で掴んだ1本の糸が緩んでいる。体勢を整える為別の糸へと脚を伸ばす。が。気付けば周辺には足場になるような張り糸が殆ど残っていなかった。その異変に糸の先を辿る蜘蛛の視線は、1人の猟兵を捉えた。
 シャルロットだ。敵の独壇場から退場させるべく、熱魔法を纏った剣を振り回し近くの糸を切断する彼女。張っていた糸は力点を失くし次々と垂れてゆく。彼女は強い眼差しで蜘蛛を見据えていた。

 ──さぁ、落ちてこい と。

 気を取られているうちに1本、また1本と体を支えていた糸が緩み、残り1本となったところで─普通の蜘蛛なら粘性のある糸で耐えただろうが、機械蜘蛛の丈夫で鋭利な鋼の糸がその脚を掴むことは無く、残酷にも淡い照明の光を返すだけで。脚を滑らせ無様な格好で地面に落下。
「ha――ッ!」
 彼女の歌は蜘蛛の回避行動を鈍らせ、炎を帯びた斬撃は装甲を溶かし、胴体の傷をまた増やしてゆく。
「ナイスっ!」
 落下を見届け同じように追撃に向かうレイ。効率よく、必要最低限の瞬間的なものではあるが、魔力により稼働限界のリミッターを外したレイの攻撃をも同時に蜘蛛を襲う。サンドバッグに成り果てていた蜘蛛はまた蜘蛛の巣に戻ろうとその鈍重な足を踏み荒らし2人を除けた後、駆け出す。しかし、それは叶わない。

「いかせないよー…君の足、もらうねー?」

 待ち構えていたのは、チャド。素早く振り抜かれた2振りの─紅と白の双剣が蜘蛛の後ろ脚2本を切り裂いた。重い装甲の胴体を支える後ろ脚の1部分が失われ、あるはずの場所に体重をかけそこなった体はバランスを崩し大きな音を立てて地面に伏す。
 その隙を逃さんとレイが追撃を試みるが、しかし。
「っ、あれ、活動限界─」
 通常の何倍も酷使されたその足は、ガクガクと震え膝をつく。逆に蜘蛛がその好機を逃さんと必死に立ち上がる。その様子を見てならば自分がとシャルロットが再び前に出ようとした、が。

 振り向けと言わんばかりの存在感が、後ろから。

 前線の猟兵達の後方、上空には長く美しい白髪を持ったオラトリオと、それに守られるような形で周囲を浮遊する光球。オラトリオはゆったりとした動きで位置を示すかのように喉のあたりをさすり、浮遊する光球を受け入れる。
 新たな刺客に気付いた蜘蛛は地に伏した体勢から器用に後腹部を跳ねあげ、向かって鋼の糸を放つ。されど彼女は光の鎖でそれを全て受け止め絡め取り、その軌道を曲げて跳ね返した。
 そんな動作を行いながらも、吸い込まれた光球が体に馴染んだことを確認するように軽く声を出すオラトリオ。"声"を確認するとそっと息を吸った。

 女神の歌が、戦場を包み込む。

 ─志乃だ。発された声は彼女のものだった。クラゲ達を落ち着かせたこの歌。あの時とは違い、確信を持ちしっかりとした発声で戦場に響かせる。
 心無い兵器には届かないとわかっていても。戦意を喪失させる歌を真っ直ぐに届ける。蜘蛛しっかりと見据えているその表情は、慈愛に溢れていた。滑らかに紡がれてゆくフレーズ、言葉1つ、歌詞の意味1つ取りこぼすことなく歌い上げられるその歌。曲の高まりに合わせて…すくいあげられるように差し出される手。
 その歌や仕草、美しさまでも全てが生き物を引き込む魅力として輝く。
『貴方も私も、たった一つの大切な命』
 ─たとえそれが、オブリビオンであっても。
 蜘蛛に向けてだろうか。声にこそならないが、そう口元で呟いた。心無い兵器に届くはずのない想い。しかし蜘蛛は彼女をじっと見つめ、歌を聴き、動かなくなった。
 ──そして、見蕩れた蜘蛛は、追撃に気付かない。

「蜘蛛さんって本物だったら美味しいって聞くから残念だなー」
「アンコール、ですっ!」
 左からは紅と白、右からは金と銀の双剣が蜘蛛のまた別の脚を切り落とす。後ろの4本が欠け、支えを失くしドスンと音を立てて落ちる後腹部。
 半分の脚を刈り取られ、胴体に深い傷を負った蜘蛛は…まだ倒れる気配がなく動きつつも、機動力の大半を失ったようだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

リサ・ムーンリッド
【芋煮】
おお、これは立派なメカ蜘蛛だ。実験…いや、どんな戦いが効くか考えてみよう
●戦闘
【レプリカクラフト(錬金術)】を使って補助や防御にまわろう。
親蜘蛛の偽物で小蜘蛛を混乱させられないか試したり。
蜘蛛の糸は鋼鉄だというなら強塩酸を精製して壊せるかな…?
糸が高命中なら、回避と防御はやることが別だし障害物を精製して防いだり【超小型の炭素荷電粒子銃】でのなぎ払いで対処できないだろうか

他にも壁を作り後衛のサラさんやイルミさんを守りたいところ。
壁はチタン酸アルミニウムの塊を生成することで耐熱性と耐衝撃性に優れた遮蔽物にしよう。これならハロさんが思いっきり攻撃してもたぶん大丈夫。

・アドリブやアレンジも歓迎


ハロ・シエラ
【芋煮】で参加
遅れてすみません、ポジションはクラ……え?こう言う時の挨拶では?

……とにかくこの機械の蜘蛛退治に加勢致します。
まずは後衛の方々を守る為、敵を【おびき寄せ】られるように派手に動きます。
特に子蜘蛛は一撃で倒せるような脆い敵、【早業】でさっさと片付けましょう。
親蜘蛛は固そうです、【鎧無視攻撃】にて装甲の下の機械か何かを貫いてしまいます。
攻撃、特に蜘蛛の糸は【見切り】、【第六感】にて回避しようと思いますが、傷ついてもサラさんやイルミさんがいらっしゃるので安心です。
詰めは子蜘蛛、蜘蛛の糸ごとユーベルコートにて焼き払います。
皆さんの事はリサさんが守ってくれるでしょう。


サラ・メリータティ
【WIZ/アドリブ絡み連携歓迎】
【芋煮】のサラ、イルミ、ハロ、リサの4人で参加

なっなんの音ですか…もしかしておばけですか…?
はわわ~!クモがいっぱいいます~!
はわわ~!おばけのほうがマシでした!

蜘蛛への攻撃、引きつけはリサさん、ハロさんに任せます
二人共とても強くてかっこいいんです
でも怪我をするようでしたら回復します
はわわ~!派手に暴れちゃってください!

私はイルミさんと後方支援です
気絶している生徒が心配です
狐火を小さく目立たなくし、リサさんの作った壁等利用し
気がつかれないようにまずは回復を
糸が切れそうなら揺らさないように気を付けて剣で切ります


イルミ・ウェスタレス
【芋煮】で参加
く、蜘蛛……生じゃなくて機械なだけまだましですが、できれば近づきたくないですね……
と、ということで、私はなるべくみなさんの後ろからユーベルコードで支援したいと思います。みなさん血気盛んというか意欲抜群というかなので、「奮い立てよ我が愛しき英雄」でバッチリ強化できるはず…!
あっ、捕まってる生徒のみなさんの救助が出来たら、「春の曙光よ、暁よ」で治療も試みます。きっとみなさんおうちに帰りたいと思うので…



⚫子蜘蛛を制したものが戦いを制す
 機械蜘蛛は脚の1部を奪われ、胴体にも大きく損傷を残し…ほぼ、その機動力はなくなってしまった。移動制御のパーツが壊れた箇所にあったのか、もしくは壊れた脚が重要なものだったのか─まともに立てず、まともに移動出来ず。死を待つばかりの状態ではあるが、未だ子蜘蛛を量産しこちらへ向けてくるあたり諦めが悪い。
 リサ・ムーンリッド(知の探求者・エルフの錬金術師・f09977)は、考える。今のあの機械蜘蛛に効くのはどんな攻撃か、どんな戦略か…
「…あの子蜘蛛が、邪魔だね」
 あれをどうにかしてしまえば、親玉にたどり着いてさえしまえれば。もう勝ちは決まったようなものだ。…ならば。自身の得意とする錬金術で何かを作り上げていく。胴体、頭、そして…八本の脚。
 そして生まれた、親蜘蛛Mk-2。
 我ながらいい出来ではないだろうか。そう自画自賛しながらもこの戦法が効くのかわくわくして子蜘蛛の群れへと放つ。

 …溶け込んだようだ。

「はわわ~!クモがいっぱいいます~!」
 リサの偽親蜘蛛を含め、全て機械とはいえ戦場は蜘蛛だらけの異様な光景になっていた。前衛の2人が敵のヘイトを引き受けているおかげで軽く蚊帳の外状態となっているサラとイルミの後方チームはそれを眺めながらも囚われた学生達の救助活動をしようとしていたのだが…進む先に。
「はわぁっ!」
 学生達の糸の近くに。
「はわわぁっ!」
 足元に。
「はわわ~!?」
「く、蜘蛛…生じゃないけど…む、むりですぅ……」
 …が、いるのだった。子蜘蛛ではあれど、耐性のない彼女達はこのままではまともに動けそうではない。
 その悲鳴に駆けつけるのは、リサと同じ前線で戦うハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)。銀色に輝く細身の剣…レイピアの先端で2人に仇なす子蜘蛛を貫く。
「…こんなものですか?」
 大きな声で挑発するように蜘蛛へ言い放つ。その発言で一気にヘイトを買ったのか、後衛の2人を囲っていた子蜘蛛達はハロの方へ一斉に向かってゆく。引き連れるようにして、彼女はその場から移動していった。
「行ったね」
 ──Al2 O3・Ti O2
 いつの間にか偽蜘蛛を野放しに戻ってきたリサの錬金術により、戦場と救助班を区切るように高く広い壁が生み出される。すべすべと軽く壁を撫でこれで見つかりにくいかな、と2人に声をかけた。
 無から有を生み出したリサの能力に感嘆しつつも蜘蛛に見つかる危険性が薄れ、2人は顔を見合わせ本格的に学生達の救助活動を開始した。鋼糸にがんじがらめにされた生徒の元に駆け寄り、薄めのほんのりとした狐火で回復を試みるサラ。その内に糸を解こうと奮闘してみるイルミだが、鋼で出来た糸はそんな簡単に切れることは無い。精一杯役に立とうと彼女なりに力をこめ、手に線の跡がつく。
「…HCl、塩酸で溶かせるかな?」
 その様子を見兼ねたリサが強塩酸を錬金術で生み出す。ちょっと手を離してね。と声をかけ問題の糸に強塩酸をかける。鋼鉄であることは確かなようで、少しずつ溶け…千切れた。効果を確認し、これ使っていいよ、と強塩酸を入れた小瓶をイルミに渡した。
「前線は大丈夫なんですか、リサさん抜けちゃってて」
 ちらちらと壁の向こうを覗こうとしながら、ここにいないもう1人の仲間の少女を心配するイルミ。彼女はここの誰よりも武術に長けていて頼りがいのある印象を受けるが、しかし誰よりも年下の儚い少女で。大丈夫だとわかっていても素直に心配になってしまうのだ。
 その顔が蜘蛛側からも見え…一匹の子蜘蛛と目が合う。ぴゃっと可愛い悲鳴をあげ慌てるイルミとこちらに向かってくる子蜘蛛。
「なぁに」
 襲いかかった子蜘蛛はリサがほいと後ろに放った強塩酸によってじゅわ、と溶ける。
「ハロさんに任せておけば大丈夫さ」

 ─剣閃。細身の剣から繰り出される斬撃は脆い子蜘蛛を次々と散らしてゆく。妖狐の炎を宿す細身の剣は少女の手によく馴染み、慣れた動きで向かってくる敵を切り落とす。飛びかかってきた正面の蜘蛛を切り払い、その振り抜いた刃はまた別の蜘蛛の体を傷付ける。剣の軌道は美しい線を描き、その1連の動きは舞踏のように滑らかだ。
「…脆いですね」
 一方的と言っていいほど華麗で敵の攻撃する間を許さない剣は硬く高い金属音を迷宮に反響させる。攻撃や回避に合わせて黒檀のような美しい髪が流れる。その戦闘技術は彼女の若さながらも一人前の剣士に引けを取らないだろう。
 ある一匹の子蜘蛛を蹴散らした直後、蜘蛛が鋭利な糸をこちらに飛ばしてきた。機動力を他の猟兵達に削がれ、子蜘蛛の排出以外の動きを鈍らせていた敵からの咄嗟の攻撃に反応が遅れるハロ。当たる、そう思ったがしかし後方から伸びた黒っぽいビームに鋼糸は手早く薙ぎ払われた。
「チタン酸アルミニウム。耐熱衝撃性に優れていて熔湯しにくい。ハロさんが思いっきり攻撃しても多分大丈夫」
 向こうに設置したよ、という報告にきたリサ。今のビームも彼女の炭素荷電粒子銃によるものだ。助かりました、と丁寧に礼を伝えるハロは再び蜘蛛に向き直る。
 共に蜘蛛の方を見やるリサはその装甲がどんな金属でできているかを考えていた。目視情報だけの為はっきり断言出来る回答には行き当たらなかったが、色々と仮説をあげてみるも自身の作った壁より遅く溶けることはなさそうだと判断した…今回の切り札である攻撃は、なんとか上手くいきそうだ。
「あとは、トドメだけな気がするんですけどね」
 鋭い糸は放ってきたもののもう蜘蛛の動きは鈍く、攻撃スパンも遅い。何より子蜘蛛達がこちらを攻めるのではなく、今は母体を守るようにわらわらと集まっているのだ。一撃、大きいのが入れば。当初の予定通り、あれを使って。
「あのっ、とどめ…」
 出遅れた、と急いできょろきょろと辺りを見回し子蜘蛛が近辺にいないことを確認したイルミが建てられた壁から意を決したように顔を出す。インターバル無しで息を吸ったかと思うと…前線の2人へと歌を届けた。

 ─歌い踊れや勇士の心 汝の前に敵あれど 汝の内に迷いなし

 熱き心をモチーフにしたフレーズは戦闘意欲を、勝利への渇望を駆り立てる。イルミの歌声に耳を傾ける2人はそれぞれしっかりと、心地よい音から伝わるメッセージを受け止め、共感し。その恩恵を受け取った。頑張ってください、と目線で伝え再び壁の向こう側へと姿を隠すイルミ。

 それが、合図だ。

 ハロは機械蜘蛛目掛けて走り出す。向かってくる子蜘蛛は少なく、リサの援護射撃もあり、そして…"偽"親蜘蛛が、子蜘蛛の半分を騙し取っていたおかげで。近づくことは容易だった。
 飛び上がる。蜘蛛の真上、損傷した胴体に、ダメ押しの一撃。
「貫けっ!」
 全体重をかけた落下攻撃に加え、歌の加護も相まって──レイピアは、その硬い装甲を突き破る。悲鳴ともいわぬ音を上げる蜘蛛。それは、ここまで追い詰めても1度も見た事のない反応だった。
 もう一押しを確信したハロ。

 ──チタン酸アルミニウム防壁は、ちゃんと構成されてます。
 ──3人は、しっかり隠れてますね。学生達と一緒に。

 ──蜘蛛はもう、動けない。

「逃げ場はありません」
 レイピアが熱く、光り輝く。その熱量は瞬く間に炎となり、周囲へと拡散する。チタン酸アルミニウムの防壁がなければ巻き込まれていたであろう、巨大な炎の尾を引く剣。力いっぱいに、振りぬく──

 ──それは、暗きこの迷宮を照らす灯となった。

●鬱病は帰って寝るのが1番です
 機械蜘蛛が討伐されると同時に、迷宮の暗い空気は晴れた──なんてことは、なかったのだが。少しずつ薄らいでいるようではあった。このまま何も住み着いたりしなければ、また学生達が賑わう迷宮に戻るのだろう。

 鬱迷宮の効果は消えていないので、帰り道も気持ちを保てるように何か策を立てた方が良い、と誰かが言った。猟兵達は考える。
 柔らかい狐火の回復魔法をかけようか?命を肯定する歌を歌おうか?逆に、厳しく喝を入れながら帰ろうか?…カウンセリングでも、しようか?
 そんな中、誰かがふと歌ったんだ。

 ─嗚呼、恋しきは故郷の安らぎ 嗚呼、されど我が身は遥かに遠し 其は時として身を縛る鎖が如し

 さ、皆さんで暖かいおうちに帰りましょう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年03月17日


挿絵イラスト