アルカディア争奪戦⑧〜熾火は赫く昌盛・アジタート
●アルカディア・ガーデン
『アルカディアの玉座』は至りし者の願いを叶える。
それは6つの屍人帝国が競い合うのに十分な理由であったことだろう。
そして、その『アルカディアの玉座』を隠していた『雲海の聖域』の一つに『それ』はあった。
美しい花々が咲き誇る楽園。
まさにそう呼ぶにふさわしい光景。
誰もが見れば、そう呼ぶだろう。
だが、楽園の如き場所であるがゆえに、生半可の実力の勇士では到達できない。
「足りぬ。これではまったく足りぬ」
その楽園の如き『アルカディア・ガーデン』に一体のオブリビオンが存在する。
彼は――雷霆獣『ミカヅチ』。
嘗ては雷の悪魔として恐れられ、召喚獣としてブルーアルカディア世界に召喚された者である。
屈強な体躯に満ちるのは雷。
放つあらゆる力が雷に満ちて、圧倒的な力を持って破壊を齎す。
誰もが恐れた。
誰もが畏怖した。
誰もが屈服した。
ただ一人の例外を除いて。
「『アルカディア・オブリビオン』に成り果ててもなお、足りぬ!!」
豪雷の如き咆哮が花園に響き渡る。
巨大な体躯を包み込む花々。体の内側から放たれる雷は、まさに嵐そのものであった。だが、彼はこれだけの力を持っていてもなお、足りないと言った。
嘗て己が敗れ、あまつさえ生命を見逃された過去を『アルカディア・オブリビオン』となった今でも反芻しているのだ。
「殺すに値せずなどと二度と言わせるものか。我が! この我が! 生命奪うに値せぬ弱者などと二度と言わせぬ!!」
憤怒が迸る雷撃となって落ちる。
「『■■■』ァァァァァァァ――!!」
●アルカディア争奪戦
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。ブルーアルカディアにおける『アルカディア争奪戦』も徐々に屍人帝国の支配や侵攻を押し返しつつあるようです」
彼女はそう告げ、微笑む。
だが、その微笑みも長くは続かない。彼女が予知したのは次なる戦いの場であった。
ブルーアルカディアにはこれまで多くの勇士たちが挑戦してきた空域がある。
『雲海の聖域』と呼ばれる難所。
これまで『アルカディアの玉座』を隠していた空域の一つであり、美しい花々が咲き誇る楽園だ。
けれど、この花々は恐るべき殺傷能力を持っている。
例え、優れた勇士たちがこの地を訪れたとしても、彼らは二度と戻ることはない。
彼らはこの花々に殺され『アルカディア・オブリビオン』へと改造されてしまうからだ。
改造された『アルカディア・オブリビオン』へと変貌した勇士たちは、この楽園を守るためだけに存在している。
そして、次なる『偉大な勇士』を殺し、さらに楽園を守る戦力を増やしていくのだ。
「かつて、ブルーアルカディアには雷霆獣『ミカヅチ』と呼ばれる雷の悪魔の召喚獣がいたそうなのです。ですが、彼はある日突然姿を消してしまったのだと言います。噂によれば、ある勇士と決闘を行い敗れたからだと言われていますが、真偽の程はわかりません」
ナイアルテは、雷霆獣『ミカヅチ』が本来の状態でも強力な勇士であったことを語る。
だが、『アルカディア・ガーデン』に存在する『アルカディア・オブリビオン』となった雷霆獣『ミカヅチ』は、さらに強大な存在となっているのだと言う。
まともに戦って勝利するのはあまりにも難しい。
「この戦いにも『|飛空艇艦隊《ガレオンフリート》』が同行してくださいます。その中の勇士の一人が雷霆獣『ミカヅチ』のことを知っているのです。彼女から生前の雷霆獣『ミカヅチ』の情報を得て、少しでも有利に戦いましょう」
どれだけ強大な存在でも、情報が十全にあるのならば過剰に恐れる必要はない。
彼女はそう告げ、猟兵たちを送り出す。
どんな嵐も終わりを告げる。
どんな強大な存在も黄昏が訪れるように衰えていく。
その理を知るのならば――。
●『■■■』
「――なるほど。だから私の元に来たのか」
猟兵たちは『|飛空艇艦隊《ガレオンフリート》』に所属する一つの飛空艇の甲板上で、一人の女性とまみえていた。
彼女は静かに頷く。
雷霆獣『ミカヅチ』。雷の悪魔。召喚獣としてブルーアルカディアに将来された存在。そして今は『アルカディア・オブリビオン』として『アルカディア・ガーデン』を守護している存在である。
その雷霆獣『ミカヅチ』を知る女性。
彼女は『オルダナ円環島』にいた『新たな勇士』の一人であった。
ぼんやりしたような顔をしているのはいつものこと。飄々とした雰囲気を纏いながら、猟兵たちの求めに応じる。
「あれは、謂わば荒れ狂う嵐そのもの。確かに雷を手繰る力は脅威だろうよ。だが、やつが雷そのものであり、実体を持たぬ雷であるというのならば、私にもどうにもできなかった」
彼女は頭を振る。まるで実体があるのならば、雷であろうと破壊してみせるとでも言わんばかりの口ぶりであった。
だが、と続けるのだ。
「あれはあくまで人型だ。身の内に満ちるのが雷であっても、人の形をしているのならば、そこに勝機はある。どれだけ恵まれた体躯であり、巨大に見えるのだとしても、人の形をしているんだ。いくらでも壊しようはあるだろう。例えば『関節』。例えば『経穴』。例えば『呼吸』」
即ち、雷霆獣『ミカヅチ』は人体であるがゆえの弱点を備えているということである。
肉体事態は雷で構成されていたとしても、関節部はもろく砕かれればまともに動くことはできないだろう。
人体に存在する経穴があるのならば、経脈を阻害すれば雷は躯体を巡らぬ。
呼吸をするのならば、呼吸を塞がれると判断は鈍り、反応が遅れる。
あらゆるものが人型をしているがゆえに弱点となることを彼女は言葉にする。それが容易でないからこそ、雷霆獣『ミカヅチ』は『偉大なる勇士』として名を馳せたのだ。
だが、それでもやらねばならない。
女性はぼんやりしたような表情を崩すことなく、猟兵たちを送り出す。
「何、肩に力を入れる必要はない。おまえたちならばできるはずだ。力を求め、力に溺れ、力に使われるような者を倒すことなどな――」
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『アルカディア争奪戦』の戦争シナリオとなります。
『アルカディア争奪戦』において『アルカディアの玉座』に至ることは6つの屍人帝国にも、皆さん猟兵にとっても重要なことです。
これを隠していた『雲海の聖域』の一つ、『アルカディア・ガーデン』に皆さんは『|飛空艇艦隊《ガレオンフリート》』と共に至ります。
ですが、そこは花々が咲き誇る楽園であっても、驚異的な殺傷能力によって殺され改造された『アルカディア・オブリビオン』、雷霆獣『ミカヅチ』が待ち構えています。
守護する強大な力を持つ彼を打倒するシナリオになります。
生前の雷霆獣『ミカヅチ』を知る勇士がオープニングで伝える情報を元に、少しでも有利に戦いましょう。
プレイングボーナス……飛空艇艦隊の勇士から得た敵の情報を利用して戦う。
それでは『アルカディア争奪戦』、屍人帝国の野望を打ち砕くべく雲海を進む皆さんの冒険と戦いの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 ボス戦
『雷霆獣『ミカヅチ』』
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POW : 天雷招来『カミングサンダー』
【自身の放つ特定の位置への雷撃】を合図に、予め仕掛けておいた複数の【帯電させた物質】で囲まれた内部に【装備のあらゆる加護を停止させる滅びの雷】を落とし、極大ダメージを与える。
SPD : 雷霆合成『ハイ・ボルテージ』
自身と仲間達の【戦場に放った全ての雷】が合体する。[戦場に放った全ての雷]の大きさは合体数×1倍となり、全員の合計レベルに応じた強化を得る。
WIZ : 洗礼雷撃『ライトニングストーム』
【雲海および全身】から、戦場全体に「敵味方を識別する【荒ぶる雷の嵐】」を放ち、ダメージと【24時間解除されない全身麻痺】の状態異常を与える。
イラスト:V-7
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠祓戸・多喜」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
雪・兼光
●アドリブとかお任せ
へぇー雷神って奴かな?
難しく考える必要は無いらしい
情報元の勇士が言うとおり
人型で助かったぜ、まだ攻撃が通用するって訳だ
経穴は専門外だから、狙うは関節と鼻と口だな
2回攻撃と乱れ打ち、誘導弾、呪殺弾、部位破壊のユーベルコードでそこを狙うとしよう
部位破壊は必ずつけてユーベルコードを撃つ
関節部を粉々して動きを鈍くしたり、膝をつかせた間に顔面にユーベルコードを打ち込んだりな
特に鼻や口を狙う場合は呼吸困難にして更に動きを封じてやる
相手の雷の本数は気にしても仕方ないので速攻で落とす
どっちが落とされるか勝負と行こうじゃぁないか
雷霆獣『ミカヅチ』の体から発露する雷の力は、凄まじいの一言に尽きる。
『アルカディア・ガーデン』の花々に包まれた体躯は、生前のそれよりを遥かに凌駕する雷撃を解き放つ。
「生命の奪い合いだ。それこそが我の求めるモノ。生命ひりつくやり取り! それこそが!!」
周囲に解き放たれた雷が束ねられていく。
体内より解き放った稲妻は、雷霆獣『ミカヅチ』の掌に集まり、槍のような形を生み出していく。
「へぇー雷神って奴かな?」
その姿、その威容を見て雪・兼光(ブラスターガンナー・f14765)は呟く。
飛空艇より飛び降り、『アルカディア・ガーデン』の花々を見下ろす。これ事態が強力な殺傷能力を持つと言われても俄には信じがたいものがあっただろう。
けれど、この楽園の如き花園に到達した『偉大な勇士』たちは例外なく、この花々に殺され雷霆獣『ミカヅチ』のように『アルカディア・オブリビオン』へと変えられる。
その力の凄まじさは言うまでもない。
「だが難しく考える必要はないらしい」
情報元の勇士の言葉を信じるのならば、人型であることが弱点であるという。
確かに雷の力は凄まじい。
けれど、雷霆獣『ミカヅチ』は、その力を発露する出力器にすぎない。ならば、その肉体は雷という物理的に干渉できぬものではないのだ。
兼光は走る。
手にした愛用の熱線銃から放たれるクイックドロウの目にも留まらぬ速射は、雷霆獣『ミカヅチ』の関節を狙う。
一瞬の間に放たれる熱線は二回。
誘導弾と呪殺弾。
それらは雷霆獣『ミカヅチ』の膝関節を狙う。
「ぬっ――……!」
「あえて人型なのか。それとも人型から雷の力を得たのかしらないが」
放たれる弾丸は何度も雷霆獣『ミカヅチ』に打ち込まれる。体を支える膝。その関節にダメージが蓄積すれば、躱すのも、こちらに踏み込んでくるのもままならないだろう。
「人型ゆえに弱点が多いというのは、難儀なものだな」
「黙れ。我がお前たちに合わせているだけだ。いや、違う。これこそが。この体こそが、神の作り出した至高の形。神は己をもして人を作り上げた。ならば、この形こそが!」
振るう稲妻の槍が兼光を襲う。
放たれる雷撃を熱線銃で迎え撃ち、叩き落とすと雷の奔流が花園の花々を散らし、炭へと変えていく。
雷の本数など気にも止められない。
己がすべきことは、熱線銃の一撃を雷霆獣『ミカヅチ』の膝に叩き込むことだけだ。
「形ばかり真似たところでな……どっちが落とされるか勝負と行こうじゃぁないか」
兼光は雷の奔流を躱しながら弾丸を叩き込む。
ユーベルコードの輝きが瞳に満ちている。
圧倒的な力の差がある。
これが『アルカディア・オブリビオン』だ。花々に身を包んだオブリビオン。かつての『偉大な勇士』。
生前であったとしても、雷霆獣『ミカヅチ』は強力な召喚獣であったことだろう。
力はオブリビオン化することによって増大している。
だが、過去の敗北を活かせてはいない。
自身の関節を狙い続ける敵。
人体を模しているからこその弱点。それをオブリビオン化した時に補えばよかったのだ。
「だが、それをしなかったということは、プライドがあるのだろう。誇りがあったのだろう。敗北を否定しながら、敗北から得ることをしなかったから!」
クイックドロウの弾丸が、ついに雷霆獣『ミカヅチ』の膝を折る。
巨体がガクン、と一段下がった瞬間、兼光は飛ぶ。
「狙いやすくなった!」
立膝付いた『ミカヅチ』の膝を蹴って、飛ぶ。
その鼻先に突きつけるは熱線銃の銃口。
引き金を引くのは躊躇わなかった。
放たれた弾丸が雷霆獣『ミカヅチ』の鼻先を強かに打ち据え、その巨体を仰向けに倒す。
巨体ゆえの地響きが浮遊大陸に響き渡り、兼光は熱線銃の銃口から立ち上る熱せられた空気を振り払うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ヴェルンド・ラスリス
人型で人の構造を模していると言うなら、視覚からの情報が大半を占めているはず。狙うなら、目潰し、煙幕による視覚の封じ込め。
UC『修羅の道を征く蒼鎧』を発動。その獄炎の鎧で、雷を一撃くらいは防げる筈だ。
大剣「黒焔」を用いて、切り上げと同時に地面を抉りながら、土煙を巻き上げ、相手の視界を潰そう。その後に連撃を喰らわせよう。
知ってたか?炎には電気を流す電気伝導性があることをな
膝をついた雷霆獣『ミカヅチ』の鼻っ面に叩き込まれる弾丸を受けて、かのオブリビオンは地面に仰向けに倒れ込む。
だが、瞬時に立ち上がり、稲妻をほとばしらせながら体勢を整える。
『偉大な勇士』と例えられた召喚獣。
彼の肉体は人型。
雷の力をたぐりながら、その五体を構成しているのは人と同じものであった。
例えば関節。呼吸、経穴。
あらゆるものが人を模している。もしも、彼の肉体が雷で構成されていおり、物理的に干渉することができないのであれば、猟兵たちも手間取ったことだろう。
いや、今でも十分手間取っているといってもいいだろう。
雷霆獣『ミカヅチ』は生前の力量に加え、ここ『アルカディア・ガーデン』の花々によって『アルカディア・オブリビオン』へと変貌させられている。
その力は強大そのものであった。
「我の膝を折るか! だが、その程度幾度も我が踏破してきた道である!!」
放たれるユーベルコードの雷撃。
凄まじい勢いで巻き起こる嵐。その嵐に触れてしまえば、24時間続く麻痺に寄って動きを妨げられてしまう。
だが、ヴェルンド・ラスリス(獄炎の復讐鬼・f35125)は前を向く。
「俺の進む道は茨の道だが、俺の望む道だ」
瞳に輝くのはユーベルコード。
修羅の道を征く蒼鎧(フルリベンジアーマー)を身にまとった彼は、地獄の炎により、その防御の力を高めていく。
人型で人の構造をもしているのが『アルカディア・オブリビオン』である雷霆獣『ミカヅチ』であるというのならば、その一対の瞳から視覚的情報を得ているはずである。
だが、目の前のオブリビオンは『偉大な勇士』と呼ばれた存在だったものだ。
ならばこそ、視覚を失ったとて、こちらの攻撃を察知する術を持っているからもしれない。
だが、それを知るためには目の前の雷の嵐を防がねばならない。
「防ぐか! 我の嵐を! 我が雷撃を!!」
「そうしなければ貴様の前に立てぬというのならな!」
底上げされた地獄の炎による防御力。
満ちる力が雷撃を防ぐ鎧となって、ヴェルンドの体を守る。圧倒的な熱量が皮膚を焼く。
だが、その嵐の中で煌めくものがある。
手にした大剣。
その大剣に宿るのはヴェルンドの心にある復讐という種火。
燃え盛る炎が、一瞬で大地を抉りながら土煙を巻き上げていく。空気中に撒き散らされた小さな砂や埃がぶつかり合って静電気を生み出す。
その小さな静電気が雷霆獣『ミカヅチ』の放つ雷撃の道となって、放たれた雷を逸らしていくのだ。
「我が雷撃がそれていく……!?」
さらに炎が巻き起こる。
炎は空気の中にある原子が高速で衝突し陰陽のイオンに分かたれる。即ち、プラズマ。
そして、プラズマ化した空気を生み出し炎が雷を伝え、土埃の中へと誘導していくのだ。
「知ってたか?」
ヴェルンドは走る。
土埃によって誘導される雷と炎によって引き寄せられる力の奔流。それらをブラインドにして彼は手にした大剣を振るい上げる。
その大剣は雷霆獣『ミカヅチ』へと振り下ろされる。
斬るのではなく、溶断する。
圧倒的な熱量を持った大剣の一撃が『ミカヅチ』の肉体を袈裟懸けに引き裂かんばかりの勢いで振り下ろされる。
「炎には電気を流す電気伝導性があるってことをな」
炎と雷。
両者ともに力である。
その力によって曇る視界。雷霆獣『ミカヅチ』が追い求めた力は、人の連綿たる歴史が積み上げてきた経験から導き出された法則性の前に容易く打ち破られるものであることを知らしめる。
ヴェルンドの一撃を受け、巨体が傾ぐ――。
大成功
🔵🔵🔵
メリヲ・テフルヴイ
なるほどなるほど。ヒトの形に縛られたが故の弱点ってワケだね。
情報どーも、これならやってやれるよ!
とゆーワケでミカヅチと対峙。
【残像】が残るくらいの速度で動き回って撹乱しつつ、二刀で攻撃していくよ。
最初は兎に角攻撃を当てて、出血させることを主目的に。反応鈍化の【呪詛】も重ねて付与して、少しでも当てやすく。
周りに帯電した物質があれば、ミカヅチ本体への攻撃の流れから【斬撃波】を放って随時破壊。
ある程度相手が出血してきたらUC発動。
流れた血を毒の釘に変えて、その身体に食い込ませてダメージを与えるよ。
人の身体があるなら毒も効くよね?
呪詛も合わせて充分動きの鈍った処で、思いっきり切り刻んじゃおうか。
「なるほどなるほど。ヒトの形に縛られたゆえの弱点ってワケだね」
斬撃の一撃を受けて、その傷跡から雷の奔流を血の代わりに噴出させる雷霆獣『ミカヅチ』。
その肉体は確かに雷で出来ていただろう。
力の奔流は、その強大な体躯を突き動かす原動機。
だがしかし、人の形にこだわるからこそ雷霆獣『ミカヅチ』は、その人体としての弱点を備えている。
例え『アルカディア・ガーデン』に存在する『アルカディア・オブリビオン』となっても変わらないことであった。
勇士から得た情報を元にメリヲ・テフルヴイ(フリヰダムスヲウド・f22520)は作戦を組み立てていく。
楽しそうだと思っただろう。
好奇心が強いともいえる。彼女にとって雷霆獣『ミカヅチ』は興味の対象でしかない。雷の力をたぐり、その力でもって己の優位性を示そうとする存在。
「この程度で、我を打倒できると思ったか! 刀傷一つで、この、我を!!」
怒りと共に走り抜ける雷撃。
花々を炭化させながら雷霆獣『ミカヅチ』は、周囲に雷を放つ。
帯電している。
メリヲは理解しただろう。あの帯電する物質。それが陣形と成った時、極大の一撃彼女に振り落とされるだろうと。
「なら、とにかく撹乱だよね!」
メリヲの構えた二刀が『ミカヅチ』の肉体を切り裂く。
血潮の如く雷がこぼれていく。
肉体を構成しているのが実体持つ雷であるというのならば、その雷は血液そのもの。失えば、それだけ動きは鈍るし、失い続ければ生命だって失う。
それはオブリビオンであっても変わらない。
「――反応が遅れる……! 呪詛か! まだるっこしい真似を!!」
振るわれる拳の一撃そのものが雷撃となってメリヲを襲う。
だが、反応鈍化の呪詛を叩き込む斬撃は止まらない。
休ませない。
猟兵とオブリビオンの力の差は言うまでもない。
オブリビオンの個としての力は言うまでもなくオブリビオンよりも上だ。だが、猟兵は紡いでいく。
他の猟兵の付けた傷を広げるように、その傷から流れ出る血潮のごとき雷を消耗させるようにメリヲは二刀を振るう。
「その帯電させたところが形を作る前に!」
放つ斬撃波が帯電した物質を切り裂き、霧消させる。
あれを完成させられては、一発で形勢が傾く。だからこそ、メリヲは帯電した物質を目ざとく見つけ、斬撃波で霧消させるのだ。
だが、しかし、その一撃は彼女の隙を生み出す。
「かまけていては、我の拳を躱せまい!」
振るわれる一撃を二刀で受け止める。メリヲの足元の大地、その花園の花弁が舞い散り、砕けていく。
音を立てるように雷が傷口から溢れていくのをメリヲは見た。
「救われぬ躯体で、踊りませ?」
煌めくはユーベルコード。
狂舞ノ躯体(ホーリーグレイル・オブ・セミラミス)へと変える黒い鋼の刀による一撃が、その傷口から溢れる雷を棘もつ釘へと変えて『ミカヅチ』の傷口を塞がせぬとばかりに楔と成って打ち込まれる。
激痛が走る。
怒りにも苦しみにも似た咆哮が『アルカディア・ガーデン』に響き渡る。
「馬鹿なっ、我の体が毒に侵されているだと……!?」
「人の身体があるなら毒も効くよね?」
メリヲは走る。
手にした二刀を振るい上げ、呪詛に寄って鈍化した『ミカヅチ』の周囲を駆け抜ける。その度に斬りつける斬撃は傷口を増やし、彼女のユーベルコードに寄って生み出された釘が、その体を打ちのめしていく。
「下手に人型に近づけたのが敗因だよ」
「我に敗因を語るか! 未だ勝利せぬものが!!」
鈍化された拳は今のメリヲであっても容易く躱せる。身を反らし、体をひねるようにしてメリヲは手にした二刀で振るわれた『ミカヅチ』の腕部を切り裂いていく。
無数に咲く花のように釘が傷口に打ち込まれ、『ミカヅチ』は再び苦悶の咆哮を上げるしかない。
メリヲはゆるりと二刀を収め言うのだ。
「何に憧れたのか、何を憎んでいるのか。その力のあり方もわからないまま倒れたのなら、過去は過去のまま、そこにとどまるだけだよ――」
大成功
🔵🔵🔵
鹿村・トーゴ
かつてミカヅチを退けたってゆー女人の言動も参考に
猛る雷獣相手取ってにあれだけ冷静なのもすげーな
オレなんか見習わなねーと
敵UCの事も聞けたら【情報収集】
雷は速い
オレ足に自信あるけど話にならねー
【視力】で敵の動きを察知、【野生の勘】で反射的に動く
【激痛耐性】で戦闘を乗り切る
奴の弱点は人型である事
見た目のごつさと首の太さには圧倒されるが…オレが狙うのは腰
あとは羅刹のサガに任せ勝負
戦場全部を奴の射程内と見積もり初見即殺と敵の腰部(=地形)破壊狙い
UCの空気を練り上げ【念動力】でそれを自身にオーラ状に纏い空気の絶縁性に賭け防御利用
非金属の猫目雲霧を槍状に、そこへUC威力乗せ突撃【串刺し/暗殺】
アドリブ可
勇士たる女性の言葉を借りるのならば、雷霆獣『ミカヅチ』の弱点は人型であること。
それが言葉にすれば容易であるものの、実行することは容易ではない。
かつて雷霆獣『ミカヅチ』を退けたという彼女の言葉は参考になるものであったが、鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)は彼女の冷静さのほうに着目していた。
「オレなんか見習わねーと」
トーゴは『アルカディア・ガーデン』にて猟兵たちと戦う雷霆獣『ミカヅチ』の巨躯を見やる。
確かに人型。
迸る血潮は雷。
人の形をした稲妻と言われれば、それがしっくり来るほどの力。
「さらに『アルカディア・オブリビオン』になって力が増しているってんだからな!」
「もはや我に情けをかけることなど出来はすまい!!」
迸る雷撃が次々とトーゴの周囲に打ち込まれていく。
それが敵のユーベルコードの事前に打ち込む予備動作であることを知っている。
あの打ち込まれた雷撃が成す陣形の如き形が生まれた時、放たれる極大の一撃はトーゴの肉体を焼き滅ぼすだろう。
だからこそ、反射的に動く。
野生の勘とでも言えばよいだろうか。
放たれる雷撃が身を撃つ。
痛みが走るが、それら全ては耐えることができる。
「情け、情けと言ったのか! それが『ミカヅチ』、お前の戦う理由だっていうのか!」
トーゴは、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
敵の射程は恐らくこの『アルカディア・ガーデン』の全て。
どこに居ても攻撃が届くはずだ。
初見即殺。
それが雷霆獣『ミカヅチ』の力。
その初見殺しの如き力を見破ったものがいる。トーゴは自分がそれに及ばないことを知っている。
時として恥と思うこともあるだろう。
けれど、生き残ること。
戦う以上生き残っていることが最大の戦果でもある。生きてこそ、次に繋がるのだから。
「“視ずの鳥其の嘴は此の指す先に” …穿て大鉄嘴」
雷撃を受けながらトーゴは雷霆獣『ミカヅチ』の懐に飛び込む。
巨躯。
見た目の恐ろしさは、圧倒されるほどであった。けれど、トーゴが見据えるのは、複数の傷刻まれた場所ではない。
狙うのは腰。
全ての動きの要。
その腰を狙ったユーベルコードの一撃。
超圧縮した空気による一撃。
帯電する物質が成す陣形が完成する。
「我に打ち勝つつもりか! その程度の拳で!!」
放たれる極大の一撃。
だが、その雷撃の一撃はトーゴには届かなかった。
空気は電気を通さない。介する塵や埃は圧縮された空気の中を走らない。真空であるがゆえの絶縁性。
トーゴは超圧縮した空気を盾として扱ったのだ。
「我が雷撃が……通らぬだと!?」
「知っていれば、乗り越えることができる。人の知恵ってやつは神様の力だった雷すら乗り越えて己がモノにできるんだぜ!」
放つは、空嘴(カラバシ)。
手にした手ぬぐいが槍の形へと変えられる。超圧縮された空気によって放たれるそれは矢のように。
「だから、あんたもオレは乗り越えていく!」
放たれる一撃が雷霆獣『ミカヅチ』の腰を貫く。
鋭く。
重く。
あの日の再現のように。要たる骨格の一部を貫く一撃に寄って『ミカヅチ』は再び敗北という受け入れ難き未来が己に迫ることを知る――。
大成功
🔵🔵🔵
リーヴァルディ・カーライル
…ありがたい情報ね。生物の域を出ないなら如何様にでもやり様があるわ
…我が身に満ちよ、風精の理。我に降り注ぐ雷霆の暴威を祓いたまえ
UCを発動して自身に風の精霊を降霊して非実体の精霊化を行う肉体改造を施し、
全身を絶縁体である圧縮空気のオーラで防御する事で敵の雷撃を受け流し、
敵の周囲の大気に魔力を溜めて真空状態を作り呼吸を阻害する風属性攻撃で隙を作り、
空中機動の早業で懐に切り込み呪詛を纏う大鎌をなぎ払い敵の生命力を吸収する
…無駄よ。風と大気を操る今の私に稲妻が通じると思うな。そして…。
…お前が生物である以上、呼吸をしなければ意識を保てない事に変わりは無い
…さあ、花と散りなさい、オブリビオン
勇士のもたらした情報は猟兵たちにとって有益そのものであった。
雷霆獣『ミカヅチ』は、オブリビオンになる以前も『偉大なる勇士』と呼ばれるに値する力を持つ召喚獣であった。
その力は雷。
実体を持たぬ存在であったのならば、『アルカディア・オブリビオン』へと変貌した時、手のつけられぬ存在になっていたことだろう。
だが、人型として実体を持つ雷であるというのならば、人体としての弱点を備え持つ。
そう、彼女は示したのだ。
「……ありがたい情報ね。生物の域を出ないなら如何様にもやりようがあるわ」
リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は猟兵の一撃に寄って、その腰部を砕かれた雷霆獣『ミカヅチ』へと走る。
その瞳に輝くのはユーベルコード。
風の精霊を降霊して己の肉体を非実態の精霊化を行う吸血鬼狩りの業・変幻の型(カーライル)によって、彼女は飛び込むようにして雷霆獣『ミカヅチ』との距離を詰める。
敵の雷を束ねる隙すら与えない。
多くの猟兵達が知るように、雷は確かに強大な力であるが絶縁体には無力である。
この場において多く満ちているのは空気。
雷が走るのは空気の中にある塵や埃が起こることに寄って生まれる静電気を道筋として輝くのだ。
そして、その速度は実に音速をも超える。
轟音は即ち、雷が空気の壁をぶち抜くときの音である。
故に彼女の体は風の精霊の力を借りて、己を圧縮空気のオーラそのものへと変える。
「まただ、また! 我の雷撃が通らぬ! なぜだ!!」
雷霆獣『ミカヅチ』は理解できなかった。
これまで多くの敵を倒してきた。
ただ一人を除いて、多くが恐れ、屈服してきた。
だが、今日という日において彼の前に現れた猟兵たちの誰一人として彼に屈服することはなかった。
「……無駄よ。風と待機を操る今の私に稲妻が通じると思うな。そして……」
リーヴァルディは精霊の力、風を操作し『ミカヅチ』の周囲を真空へと変える。
人体である以上、その呼吸こそが巨躯たる肉体を突き動かす。
雷が肉体に満ちているのだとしても、呼吸できなければ、その頭部にある脳へと酸素を送り込むことができない。
「――ッ!!?」
呼吸が出来ない。
音も伝わることがない。
雷霆獣『ミカヅチ』はもがくようにして真空にされた己の周囲から脱しようともがく。
「……お前が生物である以上、呼吸をしなければ意識を保てないことに変わりはない」
彼女の大鎌が『ミカヅチ』の体を切り裂く。
血潮の代わりに迸るのは雷。
体内を形勢されるエネルギーの奔流を呪詛をまとう斬撃が襲い、彼女の力へと変えていく。
迸る風と雷の力。
それを蓄えたリーヴァルディの大鎌が閃き、『ミカヅチ』の体を十字に切り裂く。
傷を覆うのは『アルカディア・ガーデン』に咲き誇る花。
これまで多くの勇士たちを葬ってきた美しくも恐るべき花々である。
『ミカヅチ』もまたその一人であった
敗れ、力を求め続けた結果、この『アルカディア・ガーデン』に辿り着けたという功績は確かに偉業といえるものであったことだろう。
だが、それは過ちでもあったのだ。
形骸化した力に意味などない。
求める理由がない者に宿る力は虚ろなるもの。
「……さあ、花と散りなさい、オブリビオン」
故にリーヴァルディの斬撃は、その体を覆う花々を切り裂き散らすのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
フォルク・リア
「弱点を持つというのはそれが
そのまま弱さを示すものじゃない。
弱さを知ればそれを補い克服する
事も可能だからだ。」
敵を見据えて
「お前はどちらかな。」
敵の雷の軌道を【見切り】回避しながら【呪装銃】カオスエンペラーの
【誘導弾】で攻撃。マヒ、幻覚の【呪詛】を与える。
「人の特徴を残しているなら
これも効く筈だな。」
敵の雷撃を受け麻痺状態になっても
【念動力】を使って身体を動かし接近し生命を喰らう漆黒の息吹を発動。
敵の胸部に集中して攻撃。
「人型であるなら急所の位置も同じ理屈。
これを心臓に撃ち込まれたら
ただでは済まないだろう。」
雷霆獣『ミカヅチ』に対する猟兵たちの攻勢は苛烈そのものであった。
如何に彼の力が強大そのものであり、『アルカディア・ガーデン』に咲く花々に寄って『アルカディア・オブリビオン』へと変えられてもなお猟兵たちは怯むことなく攻撃を打ち込む。
そのどれもが『ミカヅチ』に対する有効打であった。
「なぜだ……! なぜこうも我が翻弄される!! 我の力は『アルカディア・ガーデン』の花々に寄って強化されているはずだ! なのに! なぜ!!」
迸る雷が嵐となって猟兵達を襲う。
だが、その雷の軌道を見切る者がいる。
まさに生命の埒外たる存在。
「我の弱点は克服したはずだ! 我が拳、その極地たる人体の動き。この巨躯こそが、あらゆるものを砕く力のはず。我と『■■■』。何が違うというのだ!!」
その咆哮を前にフォルク・リア(黄泉への導・f05375)は告げる。
「弱点を持つというのはそれが、そのまま弱さを示すものじゃない。弱さを知ればそれを補い克服することも可能だからだ」
フォルクは雷に煌めく中、目深にかぶったフードの中の影をさらに色濃くしながら、手にした『呪装銃カオスエンペラー』から放たれる弾丸でもって『ミカヅチ』を牽制する。
「お前はどちらかな」
放たれた呪詛は『ミカヅチ』に幻覚を与える。
麻痺は雷めぐる体故に意味をなさない。けれど、人体である以上、その視覚は人に準ずるものである。
人よりも優れていることは百も承知であった。
だが、それでも人体たる特徴を残しているのならば。
「これも効くはずだな」
放たれる雷撃がフォルクの体を穿つ。
痛みが走り、己の体を麻痺が襲う。
「これで……貴様も!!」
「いいや、終わりではない。確かにお前の雷撃は強烈だ。体が動かなくなるのも理解できる……だが、言っただろう。弱さを知ればそれを補い克服する。お前には人にある、それがない」
フォルクは己の体を念動力で無理矢理に動かし、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
「よく見ておけ。これが、お前の命を刈り取る手向けの花だ」
手にした銃が花へと変わっていく。
それは触れる者の生命を喰らう冥界の鳳仙花。
生命を喰らう漆黒の息吹(イノチヲクラウシッコクノイブキ)が、雷霆獣『ミカヅチ』を襲う。
ぞっとするほどに美しい冥界の鳳仙花の花弁が『アルカディア・ガーデン』に満ちる花々すら枯れ果てさせる。
生命奪う花弁は、一気に『ミカヅチ』へと迫り、その身を包む花々を枯らしながら胸部に迫る。
「人型であるなら急所の位置も同じ理屈」
「我は人を超えた存在であるぞ! 人の姿をしているのは、おのれの力を十全に……!」
「発揮するために最適だからか? だが、これを心臓に撃ち込まれたら、ただではすまないだろう」
フォルクは走る。
念動力で自身の体を強引に突き動かし、迫る雷撃を躱しながら限界を超えていく。
人は雷を恐れる。
自らの手には余る力であるからだ。
けれど、その恐れを踏み越えることのできるのが人間である。フォルクは、それを知るからこそ、恐れという弱点を克服して『ミカヅチ』へと迫る。
弱さを知り、それを如何にして乗り越えるのか。
フォルクはおのれこそが人間であると示すように、知恵でもって雷撃の一撃をしのぎ切る。
触れる。
「――……! この、我の生命を……吸うか、この花は!」
「ああ、多くの猟兵達が刻んだ傷。そのおかげで届いた」
フォルクの拳が打ち出す鳳仙花の花弁。
それが『ミカヅチ』の胸部に叩き込まれ、その傷口から心臓に殺到し、満ちる生命を吸い上げていく。
紡ぎ、大いなるを打倒する。
それが人間の真価であると示すように、鳳仙花の花弁が戦場に舞う――。
大成功
🔵🔵🔵
紅月・スズ
あー、わかるアル
腕が後ろに曲がらないとか足払いでもバランスが簡単に崩れるとか
まあ人型でそういう相手なら人間相手の戦術は大体通用する、つまりいつも通りアルよ
格闘戦を挑むネ
多少のケガは無視アル、だって僵尸だし
その攻防の中で膝・足先(特に小指)・肩・目・顎、そういうとこを狙って暗器を打ち込むネ
で、相手の大技が来たらこっちもUCアル。森羅万象に己を合一させ、天地万物全てを己が体のように操る(※極めた場合に限る)護業天象拳、見ていくといいアルヨ
その雷に己が気を巡らせ一時掌握、『掃天雷爪』として己が腕と成し、そのまま相手の膝を打ち抜き、腕を変な向きに曲げたり側頭部殴ったりするアルヨー
※アドリブ等歓迎アル
『護業天象拳』とは如何なる拳であっただろうか。
天象は自然の力と己を合一させること。
そして護る業は五体より放たれる。
紅月・スズ(路上格闘僵尸娘・f32726)にとって、拳を交えるとはそういうことであったのだ。
ただ、それだけが受け継がれてきた業。
拳を交えるだけでいい。
スズは、構える。目の前にあるのは『アルカディア・オブリビオン』。雷霆獣『ミカヅチ』、『偉大な勇士』と呼ばれた力は、生前のそれよりもさらに増大している。
だが、猟兵たちの攻勢はそれを遥かに超えるものであった。
雷そのものでありながら、人型であること。
それこそが『ミカヅチ』の弱点。
「あー、わかるアル」
人の姿をしているからこそスズは理解する。
腕が後ろに曲がらないのと同じように。足払い一つで重心が崩れること。ならば、スズの手繰る拳の業は人間相手の戦術は一通り通用する。
「ならばなんとする」
血潮の如き雷を垂れ流しながら、関節、腰部、心臓。
あらゆる箇所に打撃を加えられた『ミカヅチ』が構える。
迸る雷は未だ彼が滅びぬことを知らしめるだろう。咆哮のごとく放たれる雷撃がスズに迫る。
打ち据える雷撃は重たく鋭い。
けれど、スズは気にしなかった。無視した。なぜなら、今の彼女は僵尸。
踏み込む度に互いの拳が、蹴撃が飛ぶ。
打ち合う度に骨が砕ける。だが、それは互いに同じことであった。けれど、スズは拳のみにて戦う者ではない。
「使えるものはなんでも使うネ」
仕込んだ暗器による打撃。肩、目、顎。
そのどれもが急所足り得る場所であったことだろう。
「その程度で我を打倒できると思うな!」
迸る雷が束ねられる。
その瞬間をスズは狙っていた。己は森羅万象と同一。ならば、周囲に満ちる雷もまた己と合一されるべきものである。
「天地万物全てを己が体のように操る――『護業天象拳』、見ていくといいアルヨ」
煌めくユーベルコード。
その護業転身・蒼天雷装(ゼンシンビリビリアル)はスズの肉体を雷そのものへと変貌させていく。
気を介して雷を操る力。
満ちる気は、『ミカヅチ』の手繰る雷全てを己の身へと合一させる強引さ。
「我の雷を吸収し、掌握するだと……!?」
「動く事雷の如く!」
踏み込む。
それはこれまでスズが見せた踏み込みの中で最速。
音速を超えた踏み込み、轟音を響かせる。いや、踏み込んだ後から聞こえてくる轟音。その光景に『ミカヅチ』は人の姿をしているがゆえに己の聴覚と視覚との差異に混乱する。
一瞬に満たぬ困惑。
だが、それでいいのだ。
掌握された雷がスズの腕へとまとわりつき巨大な爪へと変貌していく。
振るわれる一撃は『ミカヅチ』の腰を打ち据える。
体の基部たる腰部。
要。
その要所を撃ち抜く雷撃の爪。さらに振るわれる拳よりも速く踏み込み、『ミカヅチ』の腕を砕くように蹴り上げ、さらに回転した勢いで側頭部を蹴りぬく。
吹き飛ぶ巨大が地鳴りを上げて花園の沈む。
「これが『護業天象拳』アルヨ。覚えておくといいアル。けど、ワタシはアナタを忘れるかもしれないアルネ――?」
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステラさんと】
どこで香ったんですか!?
ついに幻嗅とかのレベルまで到達しちゃったんですか!?
『ミカヅチ』さん、雷を操るとはいっても、基本は人と同じなんですね。
それならば!
わたしの演奏で魅了することももちろん可能ですね!
【ルジェッリ】を取り出して演奏し、わたしの音色で正気に……。
さらなる狂気ってどういうことですか!?
そんなこというと【Canon】いっちゃいますよ!
って、さっきとそんなに変わらないとか、どういうことですか!
ステラさんをみてください、
わたしの演奏に聴き惚れてるじゃないですか!(どやぁ
……ステラさん、こんど朝まで演奏会しますからね。
ほんとの感想はそのときしっかり聞かせてもらいますね。
ステラ・タタリクス
【ルクス(f32689)様】と
|エイル様《主人様》の!!香りがします!!
いえ気にしないでください
単に気合いれただけですので
誰がやべーメイドですか
ルクス様にしては作戦がまとも
わかりました、では私は後方で待機していましょう
えーと耳栓耳栓
代わりにネコミミをつけておきますね(ぴこぴこ
ああ、演奏が聞こえなくても目の前の光景が理解できます
私も何か狂気に汚染されていく感覚が……
あの、聞こえてないんですが?
おやルクス様が振り返って私に何かを?
とりあえず優雅なメイドスタイルで
ネコミミをぴこぴこさせておきましょうか
誤魔化せるでしょう、たぶん
……あっ
ルクス様今がチャンスです
私が関節を貫いてみせましょう!(誤魔化した
「『|エイル様《ご主人様》』の!! 香りがします!!」
『アルカディア・ガーデン』の楽園如き光景に響き渡る声。
この美しき花園は今戦場となっている。
雷撃が迸り、戦いの音が響き渡っているのだ。
雷霆獣『ミカヅチ』は『アルカディア・オブリビオン』である。強大無比なる力を持ちながら、この『アルカディア・ガーデン』の花々に殺され、覆われることで、さらに強大な力を持つ存在だ。
だが、そんなことなど関係ないというようにステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は、ふんす、と息を吐き出す。
「どこで香ったんですか!? ついに幻嗅とかそのレベルにまで到達しちゃったんですか!?」
ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)はとなりでいきなりステラが宣言するものだから驚愕してしまっていた。
いや、本当にびっくりしている。
今回ブルーアルカディアでの戦いに参加していると、常にステラはそう言っているように思えた。
ちょっとマジでヤベーメイドになりつつある。
「単に気合を入れただけですので、誰がやべーメイドですか」
「わたし言ってませんからね!?」
思ってはいるけど、とルクスは心の中で呟く。声に出してはいけない。絶対後で面倒なことになるのは目に見えているからだ。
「と、そんなことより作戦ですよ!『ミカヅチ』さん、雷を操るとはいっても、基本は人と同じなんですね。それならば!」
ダブルベースのヴァイオリンを手に取るルクス。
彼女のドヤ顔はステラにとっては嫌な予感でしかない。えーと、耳栓どこでしたっけ、とステラは自身のポケットの中を漁る。
「わたしの演奏で魅了することも、もちろん可能ですね!」
Canon(カノン)が響き渡る。
いや、不協和音が響き渡る。全部音が酷い。もうなんていうか、すでに破壊魔法的なそんな具合にまで昇華されたユーベルコードが雷霆獣『ミカヅチ』の耳に響く。
「なんだ、この気味の悪い音は……! 我の聴覚を支配する……! 他に何も聞こえない……! 我の声すらも!?」
猟兵たちの苛烈な攻撃は『ミカヅチ』を疲弊させていた。
だからこそ、ルクスの音響兵器じみた攻撃は『ミカヅチ』を困惑させる。音が響かない。自身の耳を支配する鼓膜を破壊するかの如き音は、『ミカヅチ』の平衡感覚すら失わせるのだ。
「ああ、演奏が聞こえなくても目の前の光景が理解できます。私も何か狂気に汚染されていく感覚が……」
耳栓の代わりに猫耳をぴこぴこさせているステラ。
いや、なぜ猫耳にしたのかはわからない。ぴこぴこしている様が可愛いから、まあいいかとはならんでのある。
しかしながら、ステラは自分の言葉がルクスの演奏に寄ってかき消されているのを知る。
だが、ルクスは読唇術でもって理解する。
「狂気ってどういうことですか!?」
さらにルクスはヴァイオリンを奏でる。ひどい。さっきよりひどい。
「……」
ステラは何も言わなかった。
これ以上言うと面倒なことになると思ったからだ。
二人は互いの面倒なことを知っている。それは時に信頼と呼ぶに値するものであったことだろう。
ご主人様の魅力を、師匠の魅力を、演奏を、お世話を。
あらるゆる互いの面倒だなぁって思える部分を知っているからこそ、こんな状況にあっても二人は連携できるのだ。
「つまりそういうことです」
優雅なメイドスタイルに騙されそうになった。
だが、概ねそういうことである。たぶん。
「……あっ」
ステラはそんなルクスの演奏響く中、『ミカヅチ』が困惑し、よろめくのを見た。
「ステラさんみてください。わたしの演奏に聞き惚れているじゃあないですか!」
どやぁってするルクスを前にステラは面倒くさいから指差す。
「ルクス様今がチャンスです。私が関節を貫いて見せましょう。いえ、投げナイフはメイドの嗜み、ですので」
よろめく『ミカヅチ』にステラの投げナイフが放たれる。それはあらゆる防護を貫通する一撃。あらゆる防御も、鍛えられた体躯も関係ない。
彼女の投げナイフは狙いを過つことはない。
撃ち込まれたナイフが『ミカヅチ』の腕関節を貫き、その小節を振るわない。
「……ステラさん、こんど朝まで演奏会しますからね。ほんとの感想はそのときしっかり聞かせてもらいますね」
ほーら、面倒なことになった、とステラは思ったが口には出さなかった。
抵抗したって無駄であると知っているからである。
ステラは仕方ないとばかりに聞こえないふりをしつつ、『ミカヅチ』へと投げナイフを放つ。
「お返事は!?」
ルクスの不協和音が響く。
それに反比例するように二人の連携は『ミカヅチ』を追い込む。見事な連携であったとしても、二人の中は、まあ、その、いつもどおりである――!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
(飛行式箒【リントブルム】に騎乗)
なるほどねぇ……人型になってしまったからその弱点も受け継いでしまったと…
…その上デカい…と…ふむ…ひとまず【彩り失う五色の魔】で雷に対する耐性を強化しておこう…
…その上で…魔力の刃を飛ばして狙うは首筋や手首足首や動脈…つまり傷つけば激しく出血する部分…
…医療の知識を生かしてそう言った部分を集中的に攻撃しようか…
…さらに周囲を飛び回って【ミカヅチ】の運動量を上げよう…
…体内に血の代わりに雷が流れていて…傷からは雷が噴き出す…
…でもそれは『血の役割をする物を失っても問題無い』訳じゃないよね…
…そのまま失血死ならぬ失雷死してもらうとしようか…
「なるほどねぇ……人型に成ってしまったからその弱点も受け継いでしまったと……」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は飛行式箒『リンドブルム』に腰掛けながら、猟兵と『アルカディア・オブリビオン』である雷霆獣『ミカヅチ』との苛烈な攻防を見やる。
勇士の女性が言っていたように『ミカヅチ』は確かに強大な敵だ。
生前であっても強大な力を持つ召喚獣。
その雷を人型にした姿は、巨躯であり、また人以上の膂力を持つ。さらには雷をたぐり、極大なる一撃を絶えず打ち込んでくる。
それほどの『偉大な勇士』と呼ばれた『ミカヅチ』ですら『アルカディア・ガーデン』の花々は殺し、『アルカディア・オブリビオン』へと変える。
「……その上デカい……と……」
「我を止めることなど出来るものか!! 貴様たち全てを滅ぼし、我はあの女を今度こそ、打ち倒す!!」
咆哮が轟く。
執着するは力か。それとも己を下した宿敵に対するものか。
どちらにせよ、メンカルにとっては関係のないことであった。
描く術式は、彩り失う五色の魔(ロスト・カラーズ)。
みなぎるは電撃に対する耐性。
雷霆獣『ミカヅチ』が手繰るのは雷。
全てが雷そのものであるからこそ出来る業であったことだろう。
「耐性を上げたとて! 我の拳は貴様を砕くのみ!」
振るわれる拳は神速。
光速にまで至るのではと思うほどの拳速は空気の壁を撃ち抜き、轟音を轟かせる。だが、これまで猟兵たちの攻勢によってあらゆる箇所に傷を刻まれ、さらには関節を砕かれた彼は、拳を振るうだけで己の血液たる雷を溢れさせている。
言う成れば、失血しながら戦っているのと同義であった。
飛行式箒『リンドブルム』による機動力でもギリギリだった。
かすめる雷撃は耐性を上げていなければ、それだけで致命傷になるだろう。メンカルは魔力の刃を飛ばす。
「……狙うのは、首筋、手首足首……つまり傷つけば激しく出血する部分……」
巨体であることは敵対する者にとって恐れを齎すものである。
だが、今回に限って言えばメンカルに利するものであった。巨大であるということは狙いやすいということだ。
さらに機動力で勝る彼女は拳の届かぬ範囲から魔力の刃を放ち、あらゆる箇所を斬りつける。
『ミカヅチ』の体を追う花々は、その傷を覆う。
他の猟兵たちの攻撃の傷跡もそうして癒そうとしている。だが、そこにメンカルは斬撃を飛ばすのだ。
「ちょこまかと……!」
「……それだけの傷を負ってよく動く……」
メンカルは斬撃を見舞いながら、周囲を飛び回る。これは賭けではない。やぶれかぶれでもない。
彼女は計算している。
他の猟兵と自分が与えた傷から溢れるのは血液たる雷。
確かに人ならざる存在。
しかし、人と同じ弱点を持つ。
「……でもそれは『血の役割をするものを失っても問題ない』訳じゃあないよね……」
運動量が上がれば、それだけ血潮たる雷は傷口から噴出し続ける。
どれだけ多くの出力を生み出す核たる心臓を持っていようとも、とめどなく溢れるものを止めなければ、その力を衰退させていく。
「……そのまま失血死ならぬ失雷死してもらうとしようか……」
時はメンカルに利する。
戦いが長引けば長引くほどに『ミカヅチ』は勝利への道筋を絶たれていく。
「この我が! 拳も交えずに、死ぬというか!!」
そんなことなどあってはならないと咆哮する。
しかし、メンカルの言葉通りだ。血液たる雷を失い続ける五体は、それまでの業のキレを失い始めている。
メンカルはただ冷静に周囲を飛び回り『ミカヅチ』を翻弄し、彼を敗北という道へといざなうのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
どれだけ強力な存在だろうと、人型である以上は人の理の内にあるって事かなま、攻略法が見えてるっていうのはありがたい
…自分で見つけた方が楽しかっただろうなっていうのはちょっとあるけど
●
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
人の形をしているならまあ、頭への攻撃は嫌でしょ?
『斬撃波』を頭部へ集中的に放ち、敵を防御体勢へと追い込もう
そして少しでも隙が出来たらチャンスだ
人型であるなら、正面より上からの攻撃の方がチャンスはあるはず
【剣技・暴嵐剣】起動
飛び上がり、急降下
一瞬でも此方を見失えば、こっちの勝ちだよ
剣戟を叩き込んで削る!
そっちが耐えきるか、こっちが削り切るか
根競べといこうじゃないか
撃ち込まれた傷口から溢れるようにして雷が迸る。
それは力の発露ではなく、力の流出そのものであった。雷霆獣『ミカヅチ』は体内に流れる血潮を雷とする実体持つ嵐のような存在であった。
『偉大な勇士』と呼ばれた生前よりそうであったように、彼は雷を手繰る。
その力は絶大そのもの。
しかし、人型である。
人の形をなぜ取ったのかと問われれば、彼は言うだろう。
「この形こそが神なる者たちが己の似姿として生み出したもの。ならばこそ、我が究極の存在と成さしめるためには、神たる者の模様より入るのが当然の理」
だからこそ、彼は咆哮する。
猟兵たちに翻弄されることなどあってはならない。
身に宿した『アルカディア・オブリビオン』としての力は、生前の力を更に増大させている。だというのに、なぜ自分が此処まで追い込まれているのかを理解しないのだ。
「どれだけ強大な存在だろうと、人型である以上は人の理の内にあるってことかな」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は、勇士の言葉を思い出さう。
攻略法と言えるのかは定かではないが、ヒントにはなっていた。ありがたいと思う。
けれど、逆にこうも思うのだ。
勇士の彼女ならば玲の言葉に理解を示すかもしれない。
「……自分で見つけた方が楽しかっただろうなっていうのは、ちょっとあるけど」
抜刀される模造神器。
その蒼き刀身が煌めく。彼女の力。彼女が知り得たもの。その結晶である。彼女は自身であらゆるものを知ろうとするものだ。
誰かに教わるのではなく。自分自身の手を伸ばして得た力にこそ価値を見出す。
故に彼女は消耗激しくもなお、業のキレを発露する『ミカヅチ』へと踏み込む。
巨躯。
その巨体より繰り出される拳は重たいだろう。まともに受け止めてはこちらが潰れる。故に翻弄する。
放つ斬撃波は『ミカヅチ』の頭部を狙う。
「――ッ! 狙いは我が首級か!」
「ま、そういうことだよ。ともあれ、人の形をしているならまあ、頭への攻撃は嫌でしょ?」
散々他の猟兵に人体ゆえの弱点を突かれてきたのだ。
本能的に防御しようとするのもわかる。
正面からの斬撃波はブラフ。
関節を砕かれた腕を盾にするように『ミカヅチ』はガードを上げる。
「プログラムロード、さてと此処からは暴嵐の時間だよ」
彼女の瞳がユーベルオードに輝く。
剣技・暴嵐剣(プログラム・ランページソード)は、彼女の周囲に荒れ狂う蒼嵐を生み出す。まとう嵐は彼女を巨躯のさらに頭上へと舞い上げる。
「正面ではなく上……! 頭上を取ったとてな!」
それでも雷は走る。
音速を超える速度で玲へと迸る。だが、彼女の剣技は嵐のごとく。ただ漫然と飛び上がったのではない。
敵の虚をつくためでもない。
彼女は一気に空中から急降下し、迫る雷撃を掠めながらその手にした蒼き刀身を振るう。
嵐をまとった剣戟。
それは『ミカヅチ』を圧倒する剣技であった。
「一瞬でも此方を見失ったね。なら――こっちの勝ちだよ」
叩き込まれる剣戟は凄まじい速度。一撃で叩ききれぬのならば、叩き切れるまで打ち込む。
絶え間なく荒ぶ風のように放たれる斬撃は『ミカヅチ』の腕を切り裂き、血潮の如き雷を流出させつづける。
もはや彼に出来るのは嵐が過ぎ去るのを待つだけだ。
「そっちが耐えきるか、こっちが削り切るか。根比べといこうじゃないか」
玲は手にした二刀を振るう。
きしむ腕。
骨身の芯にまで到達する己の剣技の負荷。だが、それでも止まらない。
打ち込み、刻み込む。
いつだって人の歩みは止められない。時が止まらぬように。故に玲は己自身を蒼嵐そのものとなし、雷の化身を切り裂き続け打倒するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
おお勇士よ嵐の神に挑むとは!
いやボクって嵐の神だっけ?なーんか違ったような?
ま、いっか!
●すまーとなせんじゅつ
呼吸をしているのなら空気が必要ってことだね!
じゃあ空気を塞ぐ以外のあらゆるものを擦り抜け設定の[白昼の霊球]くんを彼の顔にぴったり重ね合わせよう
これは…スマートじゃない!いやむしろスマート過ぎて楽しくないやつ!
とはいえキミだってこれだけで死にはしないだろうしキミだって勝つためにはあらゆることをするはずだし卑怯とは言うまいね!
手加減されるのは嫌なんでしょう?
じゃあ後は本気も本気の真っ向勝負で決着を着けよう!
【第六感】回避からのUC『神撃』でドーーーーンッ!!
剣戟の嵐が雷霆獣『ミカヅチ』を打ち据える。
猟兵たちの攻勢は凄まじいものであった。
だが、かつて『偉大な勇士』と呼ばれ『アルカディア・ガーデン』に咲く花々によって『アルカディア・オブリビオン』へと変貌した『ミカヅチ』は、その攻勢に押されながらも耐えきっていた。
溢れる血潮の代わりに雷が体内から溢れ出す。
力の源。
『ミカヅチ』そのものと言えるもの。
だが、彼は立っている。
力の源たる雷を多く失ってもなお、彼は立っている。
「まだだ。まだ、我は倒れぬ。我が求めるのは力と戦い。生命のやり取りだ。我は生命を奪うまで止まらぬ。我は生命を奪われるまで止まらぬ。戦いとはそう在るべきだろう!!!」
咆哮が轟く。
その咆哮を前にロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は舞い降りる。
「おお勇士よ嵐の神に挑むとは! いやボクって嵐の神だっけ? なーんか違ったような? ま、いっか!」
適当なことを言いながらロニは『アルカディア・ガーデン』に舞い降りる。
彼にとって『ミカヅチ』との戦いは、暇つぶしと同義であったことだろう。
『ミカヅチ』の言葉はロニには響かない。
彼が神性であるからではない。
彼が彼であるからだ。そこに神という存在の理屈は通用しない。
「呼吸をしているのなら空気が必要ってことだよね!」
放つ球体が『ミカヅチ』の頭部を包み込む。
それは空気を塞ぐ以外のあらゆるものを通り抜ける設定にした球体。『ミカヅチ』は躱さない。いや、躱せないのである。
彼はこれまで猟兵たちとの戦いで疲弊していた。
「――……!」
空気を塞がれ、呼吸すらままならない。
だが、それでも拳は振るわれる。暴風そのものである。彼にとって呼吸は本来必要ないものだ。
だが、人型を取ることによって空気を取り込み、力を発露させる。
謂わば力のポンプそのものに空気を必要としているのだ。
「これは……スマートじゃない! いやむしろスマート過ぎて楽しくないやつ!」
雷が迸る。
ロニは対する『ミカヅチ』もまた同様であろうと思った。
それで死ぬほど『偉大な勇士』はやわではないだろうと。
「キミだって勝つためにはあらゆることをするはずだし卑怯とは言うまいね!」
「そのとおりである――」
かすれた声が響く。
引上した球体を投げ捨て、満身創痍の躯体がロニの前にある。
振るわれる拳は全盛のそれではない。
けれど、それでもロニの振るう拳と激突し力の奔流を迸らせる。
大地が砕け、『アルカディア・ガーデン』の花々が散っていく。戦いは常にあらゆるものを破壊していく。
「手加減されるのは嫌なんでしょう? じゃあ、後は本気の真っ向勝負で決着をつけよう!」
ロニの体がくるりと拳の衝撃を受け流しながら舞う。
着地し、顔を上げた時、そこに輝くのはユーベルコードの光であった。
飛び込む。
「我は敗北を否定する! 生命のやり取りなき敗北など、認めぬ!」
振るわれる拳が砕ける。
それは、神撃(ゴッドブロー)。
神々しさを感じさせる拳の一撃であった。あらゆるものを砕く拳。雷で構成された肉体出会ったとしても、それすらも破壊する拳であった。
神なる拳の一撃。
それによって『ミカヅチ』の右腕は完全に砕けて霧消していく。
「さらに、ド――ンッ!!」
ロニは『ミカヅチ』の胸へと拳を叩き込む。
無情なる一撃であると思われたかもしれない。けれど、これが本気の本気である。加減などない。手心もない。
あるのは絶対たる敗北を刻むための拳。
「これで満足かい? どこまで行ってもキミが求めるものは此処にはないよ」
だから、敗北だけを抱えて消えるしかないのだとロニは輝く拳でもって『ミカヅチ』を下すのであった――。
大成功
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村崎・ゆかり
人型の嵐か。ううん、嵐を圧縮して人型に押し込めたというべきか。
人型であることが弱点だというならば、あたしの絶陣で丁度いいものがある。
「全力魔法」で「呪詛」を帯びた「仙術」「道術」の金光陣。
実体があるのなら、あたしの放つ金光を前にして、影が生まれる。その影があなたを捕らえ動きを封じるわ。せいぜい影を振り払おうと傷つけてごらんなさい。その傷はあなたに返る。
ミカヅチがもがく隙に、「斬撃波」を宿した薙刀を振り抜き「なぎ払」う。
わざわざ実体を持ったからこそ、滅ぼされるのよ。
さあ、自分の影と共に逝くがいいわ。
「召喚術」で雷雲を召喚。あなたが帯びる雷気を呼び水に、紫電の落雷を叩き付ける!
暴風が『アルカディア・ガーデン』を包み込んでいる。
慟哭の如き咆哮が雷撃と共に走り、楽園の如き花園を焼き滅ぼすかのように撃ち込まれている。
束ねられた雷を手にする隻腕の雷霆獣『ミカヅチ』の体は片腕を失ってもなお、その身に刻まれた傷跡によって満身創痍。
それほどまでに苛烈な戦いであった。
猟兵たちの攻勢は、『偉大な勇士』と呼ばれた彼をして、ここまで追い込む。
『アルカディア・オブリビオン』となった彼の強大な力を持ってしてもなお、彼の求める者は何一つ与えられなかった。
いや、一つだけ与えられるものがある。
「人型の嵐か。ううん、嵐を圧縮して人型に押し込めたというべきか」
村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は雷霆獣『ミカヅチ』が人型であることこそ、弱点であると知っている。
勇士の女性が言っていたように。
人の形、人の性質。
故に、ゆかりは嵐そのものである『ミカヅチ』を前にして、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
「実体があるなら、あたしの放つ金光を前にして影が生まれる」
金光陣(キンコウジン)は、金光が作る影より現れる偽物の影を生み出す。
「……我そのものか。だが、こんなものなど!」
束ねた雷が偽物の影へと放たれる。
極大の一撃。
だが、その影は霧消しない。それどころか、その雷を受けて大きく形を歪ませる。いや、それだけならばまだ理解できた。
けれど、『ミカヅチ』には理解できぬことがある。
己の体にもまた雷の一撃が叩き込まれる。
経穴たる全てに走る雷。
経脈を阻害され、その肉体の五感が失われていくのを彼は感じただろう。理解不能であった。
「――何が、起こった。なんだ、これは!!」
「それは影より返される傷。その影を傷つけるということは自身を傷つけるということ。あなたに返る傷は、あなたが生み出したもの」
さらに影が『ミカヅチ』へと迫る。
己の影でありながら、己とは違う十全たる体躯。
拳が振るわれる。
全盛の拳。
軽い、と彼は思ったことだろう。こんな軽い拳で己は、敗北を認めなかったのかと思い知らされたことだろう。
「こんな、こんな軽い拳で我はッ!!」
振りほどこうともがく『ミカヅチ』にゆかりは肉薄する。
手にした薙刀の斬撃が、その巨躯たる肉体を切り裂く。
「わざわざ実体を持ったからこそ、滅ぼされるのよ」
「この五体が、こんなものであるはずがない! 我は、人の願いの極地に至ったはずだ! この雷の体も! 神の如き力を振るう拳も! なのに、何一つ及ばなかったと!」
「その現実を認めて、自分の影と共に逝くがいいわ」
ゆかりの頭上に招来されるは雷雲。
『ミカヅチ』は雷そのもの。
その肉体を流れる血液の如き雷は、経脈を阻害されることによって流れ満ちることのないただの雷の塊。
故に雷雲から放たれる雷は、それを呼び水にして放たれる。
「紫電の雷によって滅びさない」
五体は弾けて飛び散る。
肉体を為していたものは、ことごとくが焼ききれた。
猟兵たちの攻撃は、雷霆獣『ミカヅチ』が人であるがゆえの弱点を的確に捉え、その最期を呼び込む。
もはや実体化することすら出来ぬ獣。
己が獣であることを認められず、人の形を真似るもの。それが雷霆獣『ミカヅチ』であったというのならば、彼の存在はただ滅びる必定にあったのだ。
「あなたが憧れたのは敗北知らぬ勝利者ではなく、生きるという営みに立ち向かう人そのものであったと思い出すべきだったわね」
ゆかりの言葉は敗北者に届いただろうか。
この青空の世界にあってたくましさこそが生きる条件。
己より強大な存在に立ち向かう勇気こそが、人の本来の力であると知り、力そのものに意味を見出そうとした『ミカヅチ』は、やはり滅びる定めであったと、ゆかりは霧消して消えていく雷に背を向けるのであった――。
大成功
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