アルカディア争奪戦③〜燦然と輝くは
●燦然鉱脈の輝く浮遊大陸へ
「ブルーアルカディアでのアルカディア争奪戦が始まってるけど、ちょっと力を貸してくれないかな」
グリモアベース、ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)は集まった猟兵達にそんな風に切り出した。
「今回向かって貰いたいのは『燦然鉱脈ゼルフ』って浮遊大陸だ。この浮遊大陸では多数の天使核が発掘されていて、それを狙った『ジェード王国』って屍人帝国が住民を迫害して天使核を自国に持ち帰ってるらしいんだ」
何故かそのたびに明滅するゼルフの鉱脈は輝きを徐々に失っていってるらしいんだけど、とヴィクトルは言う。
「それでこの浮遊大陸には戦士がいる。ゼルフの鉱脈の輝きに応じて力を増す不思議な力を持つ『燦然たる勇士ゼルフォニアブレイブ』っていう彼らは今もまだ必死に抵抗している。……浮遊大陸の名前から取ったのかな?」
何か引っかかったのか首を傾げるシャチ、けれどすぐにそれは後で考えようかと話に戻る。
「それで今回は彼らに加勢して迫害されてる住民を守り抜いて欲しいんだ。やってくるのは邪竜の群れ、数は多いけど協力して戦えればきっと有利に戦えて、勝つのも難しくはないだろう」
そこまで説明したヴィクトルは首にかけた鍵型のグリモアを手にして、転送の準備を開始する。
「戦場はフラットな平原になる。隠れる場所はないけど向こうもそれは同じ。ほぼ真っ向勝負になるから連携上手く取れればそれだけ有利に戦えるだろうね」
それじゃ、頑張っていこうか。ヴィクトルはそう締め括ると鍵型のグリモアから光が溢れ出す。
その光に包み込まれた猟兵達は、奇妙な鉱脈輝く浮遊大陸へと転移したのであった。
寅杜柳
オープニングをお読み頂き有難うございます。
世界全土が焼き尽くされたりはしないと信じたい。
このシナリオはブルーアルカディアの『明滅鉱脈ゼルフ』で『空を砕くもの『スターブレイカー』』を迎撃するシナリオとなります。
鉱脈の輝きに応じて力を増す不思議な「燦然たる勇士ゼルフォニアブレイブ」達が徹底抗戦しているので、彼らに加勢して邪竜から人々を守ってください。
また、下記の特別なプレイングボーナスがある為、それに基づく行動があると判定が有利になりますので狙ってみるのもいいかもしれません。
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プレイングボーナス……「燦然たる勇士ゼルフォニアブレイブ」と共に戦う。
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それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
第1章 集団戦
『空を砕くもの『スターブレイカー』』
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POW : 暴食の邪竜『デス・オブ・ホープス』
【体中いたるところから生えている爪】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【恐怖、苦痛、悲鳴】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
SPD : 厄災速射砲『コンティニュアス・カラミティ』
レベル分の1秒で【全身から放出される【星破壊】属性の光線】を発射できる。
WIZ : 星砕きの厄災『スターブレイク・ディザスター』
詠唱時間に応じて無限に威力が上昇する【星破壊】属性の【厄災レベルの光線】を、レベル×5mの直線上に放つ。
👑11
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●|燦然たる勇士《ゼルフォニアブレイブ》は抗いて
その勇士達は草原に陣取っていた。
天使核を狙いやってくる屍人帝国『ジェード王国』――その兵たる魔獣を迎え討つと決意した彼らは、一般人を守る為に防戦の準備を整えていた。
だが、やってきた邪竜は数も能力も想定以上であった。
全身より生やした爪は勇士達が切り込む隙を潰し、高速で連射される光線や時間をかけて強烈な厄災の如き光線を放ってきて、勇士達の鉄壁の守りを突破してくる。
何とか戦線が維持できているのは勇士たちの連携が優れているからで、戦える人数が減ってくればあっという間に押し込まれてしまうだろう。
「狼狽えるな! 我等|燦然たる勇士《ゼルフォニアブレイブ》は負けはせん!」
指揮官であるターゲスと言う名の男が部下達を鼓舞し、一頭の邪竜を切り捨てる。
しかし、彼は理解していた。
鉱脈の輝きに応じて力が高まる特性を有している彼らであっても、このままでは勝機はない事を。
それでも彼らは退く事は出来ない。退けば一般人が迫害され、天使核を奪われてしまう事は避けられないからだ。
例え全滅するとしても戦い続けねばならない――誰しもがそんな悲愴な覚悟で戦う|燦然たる勇士《ゼルフォニアブレイブ》の元に、救援はやってきたのであった。
火土金水・明
「相手に詠唱時間を与えないよう、こちらの攻撃を撃ち込んでいきますか。」(燦然たる勇士ゼルフォニアブレイブさん達とタイミングを合わせて攻撃をします。)
【WIZ】で攻撃します。
攻撃は【対空戦闘】で【弾幕】と【誘導弾】を付け【フェイント】を絡めた【ホーリーランス】を【範囲攻撃】にして、『空を砕くもの『スターブレイカー』』達を纏めて【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【残像】【オーラ防御】でダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「私の役目は、少しでもダメージを与えて次の方に繋げる事です。」
アドリブや他の方との絡み等はお任せします。
四王天・焔
アドリブ・連携歓迎
●心情
島の住民を守る為にも、邪悪なる竜の群れを
皆で一緒に倒そうね!
●行動
燦然たる勇士たちに、焔が猟兵である事、仲間であることを告げて
一緒に戦う事を提案するね。
上手く信頼して貰えたら【集団戦術】で燦然たる勇士たちと一緒に戦う。
焔は、白狐召還符(UC)を使用して戦うね。
白狐様に騎乗して、【属性攻撃】で炎属性を強化した狐火を放って攻撃。
焔自身も、白狐様を走らせて【フローレ】を使った【ランスチャージ】で突撃攻撃。
燦然たる勇士たちが狙っている相手を優先的に倒し
確実に各個撃破して数を減らしていくね。
敵の厄災速射砲は
【オーラ防御】を展開して弾いたり、【盾受け】で直撃を受けない様注意するね。
ヴォルフスブルク・ヴェストファーレン
うーん…ちょっと厄介そうですね…
とりあえず全速力で向かった方がいいですね!ガレオンチェンジして行きましょう…
ウ゛ェ゛ア゛ア゛ァ゛ア゛!?轢き倒しながら来たら敵陣のど真ん中に来ちゃいました!?いやー!?タースーケーテッ!?
ああっそこのゼル…フォーマル…ベイベイ…?…勇士の方!助けて!?
ひぃん…助かりました…船底の方を爪で叩かれるのはそこそこ痛かったので…あ、私ガレオノイドです…
兎に角下から援護して頂けるなら大丈夫ですね!下はお任せします!上空は頑張って押さえますのでっ!
全身の艦載砲と対空機関砲で弾幕を張って近寄らせません!
あ、切り込みが得意な勇士の人は私に乗って頂いても大丈夫ですよ!飛ばします!
箒星・仄々
天使核を渡してなるものですか
勇士さん達と力を合わせて
ゼルフの皆さんをお守りしましょう
竪琴をぽろん
数が多いですから魔力の矢で対抗です
畳み掛けて詠唱させないようにしたり
風の矢の残滓が風の魔力となって
その場に留まり
音の伝達を阻害することで詠唱を阻害します
炎と水で空気を歪めて光線を逸らします
明滅に合わせて支援しましょう
ブレイブさん達の力が増している時には
撃破重視
逆に力が弱くなっている時には
ブレイブさん達の援護を主に矢を放ちます
邪竜さん方も王国の犠牲者なのかもしれません
海へと導きましょう
終幕
鎮魂の調べ
安らかに
勇士さん
お疲れ様でした!
フォルク・リア
勇士達の救援に入り
「その覚悟は立派だけど。
勇士と呼ばれるのであれば勝って帰る為に戦おうじゃないか。」
勝てぬと悟っている事を見抜いて。
「確かに敵は強力だが。打つ手はある。
それは俺だけでも君達だけでも出来ない事だ。」
表の呪い裏の呪詛を発動し特性を勇士達に伝える。
効果範囲内であれば味方に治癒、敵にダメージを与えられるため
極力範囲内で行動して貰う事と一撃で倒れるダメージを
受けない様に注意して戦う事。
範囲外に出ても傷を負ったら戻れる体制を整える事
加えて星砕きの厄災の威力が上がりすぎない内に
詠唱を阻止する事を作戦として
自身は術の制御に専念。
戦闘中の細かい指示は指揮官に任す。
「さあ、邪竜退治と行こうか。」
ゾーヤ・ヴィルコラカ
遅くなってごめんなさい、ゼルフォニアブレイブ。ここからはわたしが皆の力になるわ! わたしが守るから、みんなは攻撃に専念してね!
傷ついた勇士さん達のところに駆けつけたら、【UC:栄光の吹雪】(WIZ)を発動! 雪が彼らの傷を癒して、その身体にさらなる力を宿すわ。ドラゴンさんの光線は、全力の〈結果術〉で受け止めて何とか耐えるわね。ブレスの直後はきっと隙が出来るから、そこですかさず〈切り込み〉、残った力を振り絞った〈怪力〉でお相手するわ。
わたしが来たからには、もう誰も傷つけさせないわ。心強い味方がいるゾーヤさんは、いつもよりもっと頑張れるの。さぁ、反撃開始よ!
(アドリブ連携負傷等々大歓迎)
●明滅鉱脈に救援来たれり
|燦然たる勇士《ゼルフォニアブレイブ》と邪竜の群れの激戦が繰り広げられる中、少しばかり離れた位置に猟兵達は転移されていた。
(「うーん……ちょっと厄介そうですね……」)
その中の一人、ヴォルフスブルク・ヴェストファーレン(鉄の狼・f34026)と言う名のガレオノイドの猟兵が見る限り、高空低空様々な方向から攻め立ててくる邪竜の群れに、もはや勇士達の防衛ラインは崩壊寸前だ。
このまま空を邪竜の好きにさせたままでは非常にまずいように感じる。
「とりあえず全速力で向かった方がいいですね!」
そして彼女はユーベルコードにより全長21メートルの飛空艇に変身、高速での飛翔を開始した。
――因みに、この草原でガレオン船は非常に目立つものである。
一方の|燦然たる勇士《ゼルフォニアブレイブ》の陣地。
『もうこれ以上は保たない……!』
満身創痍の勇士の一人が弱音を吐いた。
無理もない。援軍も期待できず敵は圧倒的多数。空を自由に舞い光線を放ってくる邪竜達は酷く厄介で、そう考えている内にまた一人の勇士が速射性の高い光線に足を貫かれて戦闘不能に追い込まれていく。
そして、弱音を呟いた彼にも邪竜の光線が放たれようとしていた。
だがそれが放たれる直前、空を幾つもの銀の光が切り裂いた。
銀の光――よく見れば槍の形をしている数百は下らない数のそれは、幾何学的な機動で邪竜を取りかこむように飛翔して一斉に串刺しにする。
「ウ゛ェ゛ア゛ア゛ァ゛ア゛!?」
更に何か空中から竜のものではない何かの叫び声が響き、何故か邪竜の群れの中心側へと巨大なガレオン船が突っ込んでいっていた。
目立つ故に大量の邪竜達に群がられる事になっていたガレオン船。
空を舞う邪竜達を轢き弾き飛ばしながら反撃の爪等を避けていく内に敵陣ど真ん中にまで突っ込んでしまっていたのだ。
このままではまずいと判断したか、
「いやー!? タースーケーテッ!?」
そこから|燦然たる勇士《ゼルフォニアブレイブ》たちの方へと急に切り返してくる。
後方からは当然のように怒れる邪竜達が追いかけてきている。速度だけならガレオン船が上回るが、追い縋る邪竜からはどこまでも逃がさないとでも言うかのような執拗さが感じ取られる。
「ああっそこのゼル……フォーマル……ベイベイ……?」
『|燦然たる勇士《ゼルフォニアブレイブ》!』
「そうでした! 勇士の方! 助けて!?」
救助に来て逆に救助を求めるとはこれ如何に。
ともあれ、残る力を振り絞りガレオン船の救助にかかろうとする勇士達。
だが、その前に勇士達の後方から闇の魔弾と無数の魔力の矢が邪竜の群れに放たれて、数体の竜を撃ち落とし追跡を阻む。
『……誰だ?』
指揮官ターゲスは思わず呟く。
邪竜を貫いた銀槍も、魔弾や魔力矢も、この場の勇士達でこの強さの術を操れるものはいない。邪竜の墜落を背に勇士達が術の飛んできた方角を振り返れば、そこには見知らぬ者が数人いた。
「遅くなってごめんなさい、|燦然たる勇士《ゼルフォニアブレイブ》。ここからはわたしが皆の力になるわ!」
礼儀正しく勇士達に力強く告げたのはゾーヤ・ヴィルコラカ(氷華纏いし人狼聖者・f29247)という人狼だ。
「天使核を渡してなるものですか」
竪琴を構え邪竜達への警戒を崩さない小柄な黒の毛並みのケットシー、箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)がはっきりと言う。
この勇士たちの力に直結する鉱脈の輝き、それが天使核の略奪で衰えていくのであれば、一欠けらも渡す訳にはいかない。
その二人に続いて術士らしきローブの青年が前に出て、警戒する勇士達に語り掛ける。
「その命を賭けて民衆を守る――その覚悟は立派だけど」
彼、フォルク・リア(黄泉への導・f05375)はターゲスの――いや、この場の|燦然たる勇士《ゼルフォニアブレイブ》達が勝てぬと悟っている事を見抜いていた。
故にフォルクはこの戦いを自己犠牲などで終わらせぬように。
「勇士と呼ばれるのであれば勝って帰る為に戦おうじゃないか」
あの邪竜共を討ち果たし勝利を掴もうと、勇士達に言って。
「島の人たちを守る為にも、邪悪なる竜の群れを皆で一緒に倒そうね!」
そのフォルクの提案を後押しするように、四王天・焔(妖の薔薇・f04438)という妖狐の少女はそう言って真っすぐに勇士達を見つめる。
勇士たちにとって何よりも優先すべきは護るべき民の安全だ。その事を明言した焔の言葉に勇士たちの警戒は解けていく。
丁度そこで邪竜達から逃れてきた空のガレオン船が降下してきて、ヴォルフスブルクの人型に変身した。
「ひぃん……助かりました……船底の方を爪で叩かれるのはそこそこ痛かったので……」
あ、私ガレオノイドですと説明する彼女。
『まさか助けがくるとは……』
――期待はしていなかった。だが、この猟兵達は救援がやってきたのだと、勇士達ははっきりと理解した。
そこに邪竜の一群が空より距離を詰めてくる。だが、即座に黒の衣装を纏うウィザードが迎撃にかかる。
「相手に詠唱時間を与えないよう、こちらの攻撃を撃ち込んでいきますか」
彼女、火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)はごく穏やかな雰囲気を崩さぬまま、為すべき事を定め七色の杖を携え次の詠唱にかかる。
展開されるのは先程も空の邪竜を貫いた1290本もの聖なる槍。幾何学的な機動で飛翔するそれらが狙うは、やはり空の邪竜共。
「悪しきものを貫きし槍を」
放たれた聖槍は幾何学的な軌道で飛翔し、勇士達を空から狙う紫鱗の竜達を広範囲に渡り包囲し、容赦なく貫き落としていく。
そして明が空の邪竜を撃ち落としている間にゾーヤがユーベルコードを発動し、叫ぶ。
「絶対に、絶対に諦めないわ!」
その覚悟の叫びと共に、全身全霊の魔力を放出するゾーヤ。その魔力は邪竜の戦場に猛吹雪を呼び寄せる。
『これは……傷が治っていく……?』
光り輝く激しい吹雪は人を凍てつかせるのではなく、その傷を癒し再び動き出すための活力を与える栄光の吹雪。
「わたしが守るから、みんなは攻撃に専念してね!」
『これなら……やれる!』
ゾーヤの支援と鼓舞を受け、勇士達の眼に光が再び灯る。後方の民衆の為に、絶対に守り切るのだという決意の光が。
彼女による治療が行われる中、フォルクは手早く作戦を説明する。
「確かに敵は強力だが。打つ手はある」
この窮地にあっても、確定した実験結果を述べるようにフォルクは淡々と言う。
「それは俺だけでも君達だけでも出来ない事だ」
そしてフォルクはユーベルコードを発動し、体に闇を纏う。
「冥府の果てにある忌わしき呪詛。我が手に来たりてその死の力と転変の呪い、現世のものに存分に振るえ」
自身の魔力を代償に纏う闇は冥府へと繋がるもの――それはフォルクから一定距離内の対象としたすべてに冥府の呪詛を齎す力だ。
一つは内側から湧き上がり精神と肉体を蝕む死の呪詛、もう一つは任意の対象――この場だと邪竜にダメージを肩代わりさせるという呪詛。
その二つの特性を勇士たちに説明し、フォルクから極力127メートル以内で行動しつつ、一撃で倒れるダメージを受けるような無茶な戦いはしない事をフォルクは要請する。
「もう二つ……範囲外に出ても傷を追ったらすぐに戻れるようにして欲しいのと、邪竜が詠唱を始めたら威力が上がり過ぎない内に詠唱を阻止する事を作戦としてほしい」
『成程……この力であれば致命傷を受けないよう応戦すれば活路はある、か』
フォルク、そしてゾーヤの力があれば撃で倒されさえしなければ即座に立て直せる。実際に治療の効果を目の当たりにしたターゲスは納得し、その作戦を部下の勇士達に通達する。
「俺は術の制御に専念する……指揮は今まで通り、ターゲスに任せる」
この術を使用している間、フォルクは魔法を使えなくなってしまう。自身は制御に専念し、指揮は慣れているターゲスに任せるのがいいと判断したフォルクはそう言って、
「さあ、邪竜退治と行こうか」
その言葉を皮切りに、|燦然たる勇士《ゼルフォニアブレイブ》と猟兵の邪竜への反攻が始まった。
「符よ妖の郷への扉を開け。おいでませ白の御狐様」
ユーベルコードを起動する為の詠唱と共に、彼女の倍の大きさの白狐が焔の元に召喚されて焔が騎乗する。
「さあ、ちょっと派手にいきますよ〜」
勇士達を、そして彼らが守るゼルフの人々を守る為に。
猫の楽師が愛用の竪琴を展開し、弦をぽろんと爪弾けば、六百もの魔力の矢が展開する。
低空を飛行する邪竜の群れに対し数で対抗する為の魔力の矢が一斉に放たれ、一直線に貫き邪竜を撃ち落とす。
魔力矢に切り崩された邪竜の群れに白狐に騎乗した焔が飛び込んで、隙間を駆け抜けながら蒼い狐火をばら撒き攪乱。
狐火は焔の魔力により本来の威力以上に強く紫の竜鱗を焼き、合わせて勇士達が狐火に足止めを喰らった邪竜に攻撃を加えていく。
既に死を覚悟していた彼らだ。ゾーヤの吹雪による支援もあって邪竜達の反撃に怯みもしない。
「流石に数は多いですね」
邪竜が詠唱を開始する前に草原を走りながら攻め立てていく明。ゾーヤの吹雪による活力は彼女にも及んでいて、詠唱を重ね銀槍を連続で発動するのも容易になっている。
嵐の如く襲い掛かる銀槍の勢いに押され詠唱も半端な状態で災厄の如き光線を数体の竜が放つ。
十分時間をかけていなくとも明の攻めを止めさせるには十分な破壊力を持つ光線が彼女を吞み込んで――、
「残念、それは残像です」
光に包まれた明の姿が掻き消え、実際はその光線のすぐ横に躱していた彼女が聖槍を再び飛翔させた。
そんな明の攻撃で出来た邪竜達の陣の崩れに対し、|燦然たる勇士《ゼルフォニアブレイブ》が連携の取れた動きで切り込んでいく。
(「下から援護して頂けるなら大丈夫ですね!」)
そんな地上での戦いをちらりと見下ろし、再びガレオン船へと変身したヴォルフスブルクは空の邪竜と相対していた。
「兎に角下はお任せします! 上空は頑張って押さえますのでっ!」
そう元気に言ったヴォルフスブルクは艦載砲と船体中部の対空機関砲の弾幕で邪竜を迎撃、空から地上の勇士達に接近する事を許さない。
先に空の邪魔者を片付けんと、全身に爪を生やした邪竜はヴォルフスブルクの変じたガレオン船へと翼広げ弾幕を躱して突撃してきた。
既にガレオン船に傷をつけていたその爪は、既に記憶していた敵の恐怖と苦痛によって艦載砲の迎撃を躱しつつ船体に爪を突き立てんとし――。
『させない!』
ガレオン船から翔剣士の勇士が邪竜に飛びかかり、その翼を風のレイピアで切断する。
飛行手段を奪われた邪竜の爪はガレオン船に届かず、そこを狙った天使核動力の砲弾が炸裂。竜は重力に引かれるままに墜落していく。
「危ない所でした……」
先ほどの効果でヴォルフスブルクは切り込みを得意とする勇士達に呼びかけ、ガレオン船に乗船させていたのだ。
最大乗船人数は21人、ガレオン船の護衛も可能だが、それ以上に空を飛翔する邪竜達にこちらから仕掛けられることは大きいだろう。
空の邪竜達にヴォルフスブルクと勇士たちが仕掛けていく中、地上では術を維持するフォルクを数人の燦然たる勇士たちが全力で護衛する。
闇において光は一層輝くかのように。|燦然たる勇士《ゼルフォニアブレイブ》の力は何故か増したように邪竜のみならずその光線すらも寄せ付けない。
彼を中心に一定距離で戦う勇士達は、猟兵に続き邪竜に激しい攻撃を仕掛けていく。多少の傷は邪竜にフォルクの呪詛で返せる、致命傷を負わぬようにターゲスの怒号に近い指揮が飛び、勇士達は息を合わせ一体一体確実に仕留めていく。
そんな彼らを援護するよう仄々は次々と魔力矢を放ち手負い、そして後方で詠唱時間を稼ごうとする邪竜を容赦なく確実に撃ち抜いていく。
勇士達が戦えば戦う程に邪竜達を侵す呪詛は重なっていって、耐えきれなかった個体から草原へと伏していく。
反撃の光線を勇士に放つ邪竜もいるが、炎水風、属性を宿した三種の矢が本来の自然にあるべき形に解け炎と水に還った魔力が大気に干渉し幾ばくかの厄災の光線を歪め逸らし致命傷には至らない。
そんな光景を見ながら、ふと、そんな事を仄々は思う。
(「邪竜さん方も王国の犠牲者なのかもしれません」)
雲海に沈み、なぜか屍人帝国として浮上するというこの世界のオブリビオンの成り立ちを考えれば、この邪竜達も雲海に沈んだ犠牲者なのかもしれない。
そんな彼らを海へと導くために、蒸気機関式の竪琴の演奏を一層激しく、三種の魔力矢を次々に仄々は放つ。
フォルクから離れた勇士達が攻め込み難い位置にいる邪竜、それらに風の矢を放ち詠唱を妨害。その矢を受けながら詠唱を続けようとする竜の声が止まる。ほどけた風の矢が音の伝達を阻害し、詠唱を阻んでいるのだ。
慌て邪竜は詠唱を止めて厄災の光線を一直線に放つ。しかし詠唱を妨害され然程威力を上昇できていないそれは、ゾーヤの全力の氷の結界術に明後日の方向に弾かれた。
「わたしが来たからには、もう誰も傷つけさせないわ」
直後の隙に即座にゾーヤが飛び込み、重量のある片手剣で竜の胸に斬りつける。全力の魔力放出直後の疲労が体を苛む中、振り絞れる全力の怪力で振るった刃は竜を両断。
「心強い味方がいるゾーヤさんは、いつもよりもっと頑張れるの」
荒くなった息を整えながら人狼はそう言い、そして闘志に燃える勇士達に高らかにこう告げる。
「さぁ、反撃開始よ!」
おおっ! と応え更に反撃を激化させる勇士達。
彼らの表情には、先程までの悲壮感は既に消え失せていた。
「いい調子だね」
他の猟兵や勇士達に負けじと、小さな青の竜が変じたドラゴンランス『フローレ』を構えた焔が魔力矢や銀槍により墜落した邪竜へと突撃を仕掛ける。
彼女の狙いも各個撃破。他の仲間達の攻撃で弱った個体、そして追撃が少ないフォルクの術の範囲外の個体を確実に仕留め数を減らす事を優先していた。
咄嗟に竜の全身から放たれる厄災の光線が焔を狙う。だが、焔の騎乗した白狐が左右に揺さぶるように走り回避して、躱し切れぬ光線も焔が全身に纏うオーラや手袋より生じたエネルギーの盾で弾き受け流すようにして逸らす。
直後、重い衝撃と邪竜が絶命する感触。その手応えを感じながら、槍を抜いた焔と白狐は再び駆けだす。
まだまだ敵は多い。燦然たる勇士達と共に戦わねば、凌ぎきる事は難しいのだから。
突撃の勢いに耐えかねて高空に逃げんとする邪竜もいたが、広範囲を包囲するように飛翔した聖槍の群れ、或いは上空のガレオン船からの砲撃と勇士の攻撃はそれを見逃さず夜闇の紫鱗を容赦なく貫いていった。
壊滅寸前だった|燦然たる勇士《ゼルフォニアブレイブ》だったが、猟兵達の加勢により戦況は一気に変化して邪竜を圧倒し。
ガレオン船からの砲撃と銀槍、魔力矢が最後の邪竜を撃ち落とす。
静寂を取り戻した草原で、勇士達は立っていた。
彼らはみなボロボロに傷ついてはいたが、誰一人落命する事はなく、生き延びたのだ。
ヴォルフスブルクも人型に戻り勇士達を地上に下ろせば、竪琴の演奏が響き始める。
それは鎮魂の調べ――邪竜達を大いなる海へと導くような、安らかな音色。
その演奏に聞き入る勇士達、しばらくして演奏は終わる。
「勇士さん、お疲れ様でした!」
仄々がぺこりと礼をして、|燦然たる勇士《ゼルフォニアブレイブ》ににっこりと微笑む。
猟兵と|燦然たる勇士《ゼルフォニアブレイブ》は後方の街を振り返る。
破壊されず、残ったその地の人々の平和こそ、彼らの望んでいたものであった。
かくして明滅鉱脈ゼルフにおける戦いの一つは終わり、猟兵達は|燦然たる勇士《ゼルフォニアブレイブ》に別れを告げて次なる戦いへと向かっていくのであった。
大成功
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