光明、樹蛇と禍災の端を喚び
●アックス&ウィザーズ・大峡谷の谷底――忘れられたほこら
アックス&ウィザーズの大地を真っ二つに裂いている大峡谷の谷底にひっそり佇む、忘れられた古き神々――『光明神』のほこら。
今や祈りを捧げる者はおらず、祀られている神の名も伝わらず、ただ時の流れのままに朽ちてゆくのみと思われた小さなほこらの前に、突然半人半竜の騎士が現れた。
「くくく……とうとう見つけた、見つけたぞ」
人の手が入らなくなって久しいほこらに秘められた強大な力を感じ取り、半人半竜の騎士は身を震わせる。
「今や名すら忘れられた『光明神』のほこら……ここならば樹木の如き大蛇を召喚し、大いなる力を得ることができるぞ!」
力を渇望せし半人半竜の騎士は、満足げな笑みを浮かべると、ほこらに大蛇を降臨させるための儀式にとりかかった。
●グリモアベース
「グリモアエフェクトによって察知できた、アックス&ウィザーズの『大いなる危機』は、実はふたつあったんだよな」
集まった猟兵たちを前に、グリモア猟兵館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)は静かに話し始める。
敬輔が口にした『大いなる危機』のひとつは、天からの流れ星が魔物たちを狂わせる【恐怖の刻印】。
そしてもうひとつは、名すら忘れられた光明神のほこらに樹木の如き大蛇――樹蛇を召喚する【樹蛇の侵攻】。
「今回、僕が察知したのは、雲の中に蠢く巨大な『樹木の如き大蛇の幻影』……【樹蛇の侵攻】のほうだ」
今はまだ、巨大な『樹木の如き大蛇の幻影』は肉体を持っていないが、もし具現化するような事があれば、恐るべき強敵となる事は間違いないだろう。
「【恐怖の刻印】同様、こちらも放置しておけない重大な案件となっている。忙しい所恐縮だが、解決を頼めないだろうか」
いつになく丁寧に頭を下げる敬輔に対し、猟兵たちは其々の想いを胸に頷いた。
「召喚儀式が行われようとしているのは、アックス&ウィザーズの何処かに存在する大峡谷の谷底にある、忘れられた光明神のほこらだ」
ほこらへ向かう為には、陽すら届かぬほど深い、大峡谷の谷底に降りる必要がある。
「谷底まで降りれる道は一応あるのだけど、長年放置されているからか、かなり荒れ果てているようだ。注意して……でも出来るだけ急いで駆け降りて、ほこらに向かってほしいんだ」
道中、急な坂や落石、さらに苔むして滑りやすくなっていたり、そもそも道が寸断されている箇所がいくつもある。
荒れ果てた道を駆け降りるのはなかなか骨が折れるのだが、悠長に向かっていては樹蛇の召喚を許してしまうため、極力急いでほしい、と敬輔は念を押すように告げた。
「ほこらに辿り着いたら、樹蛇の召喚を企む半人半竜のオブリビオンを倒してほしい」
召喚儀式を行っているオブリビオンの名は『騎士竜アシド』。
儀式を止めるためにはアシドを倒すしかないのだが、一方でアシドは騎士らしく正々堂々とした戦いを好み、卑怯者は容赦なく追い詰めるらしい。
「過去の栄光にすがり、未来ある冒険者を葬ろうとする騎士だけど、正々堂々と挑めば、僕たちが把握していない情報を話してくれるかもしれないな」
あくまでも最優先は召喚儀式の阻止だが、アシドの興が乗れば会話に応じてくれるかもしれない。
「ブルーアルカディアで激戦が繰り広げられている中で無理を頼んで申し訳ないけど、放っておけば世界に厄災の種を撒きかねない……これはそういう案件だ」
だから、一刻も早い阻止を頼む、と念押しして。
敬輔は丸盾のグリモアを展開し、転送ゲートを形成して猟兵たちを送り出した。
北瀬沙希
北瀬沙希(きたせ・さき)と申します。
よろしくお願い致します。
ブルーアルカディアでの戦争中ですが、アックス&ウィザーズで「大いなる危機」に繋がる事件が再度察知されました。
猟兵の皆様、大至急現場に急行し、光明神のほこらで樹蛇の召喚を企むオブリビオンの撃破をお願いします。
●本シナリオの構造
冒険→ボス戦の【2章構造】となります。
第1章は冒険『下へ下へ駆け降りろ!』
大峡谷の谷底にある光明神のほこらまで、急いで谷を駆け降り向かって下さい。
POW/SPD/WIZを参考に、各々得意な手段で移動していただけますと。
第2章はボス戦『騎士竜アシド』。
樹蛇を召喚しようとしておりますので、躊躇ない撃破をお願い致します。
相手の性質を利用し戦う場合、会話次第で何か重要な情報を話してくれるかもしれません。
●プレイング受付について
第1章・第2章ともに、断章執筆後から受付開始。
いずれも受付締切は、MSページとTwitter、タグにてお知らせいたします。
なお、本シナリオはゆっくり運営致します。
もしプレイングが失効でお手元に戻りましたら、再送いただけますと幸いです。
※再送前に1度MSページに目を通していただけますと助かります。
全章通しての参加、気になる章のみの参加、どちらでも大歓迎です。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 冒険
『下へ下へ駆け降りろ!』
|
POW : 体力に任せて豪快に駈け降りる
SPD : 器用さを駆使して美しく駈け降りる
WIZ : 不思議な力で楽チンに駈け降りる
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●アックス&ウィザーズ・大峡谷入口――忘れられたほこらに通じる道
大峡谷の端に転送された猟兵たちは、谷底へ降りる道の入口に立っていた。
陽が届かぬ谷底への道の表面は、所々苔むしていて滑りやすくなっている。
地形上、急な坂もあるから、一気に駆け抜けるのは容易くなさそうだ。
ふと、猟兵たちが崖に目をやると、所々崩落し、石がパラパラと落ち始めている。
おそらく、道のどこかで落石が道を塞いでいるだろう。
あるいは、道自体が崩落して寸断されている可能性も十二分にあり得る。
放置されているとはいえ、道そのものは一応原型をとどめている。
慎重に道を辿り、想定される危険に対応していけば、猟兵ならば比較的安全に辿り着けるのかもしれない。
だが、今はその時間すらないことは、グリモア猟兵からも知らされている。
――手をこまねいている間にも、樹蛇の召喚儀式は着実に進行しているのだから。
猟兵たちは覚悟を決め、谷底へ通じる道を一気に駆け下りるべく、足を踏み入れた。
イクシア・レイブラント
移動はSPD判定。
翼を広げ[滑空][空中機動]、崖下の目的地まで一直線。
自分だけ目的地に向かうならこれで十分だけど、通路を駆け抜ける後続の支援もしておきたい。
ダミードローンも展開して[視力][暗視][索敵][情報検索]。通路を塞ぐ落石をアームドフォートの[砲撃]で破壊し、崩落の危険箇所と目的地の座標を後続の仲間に送信する。
「進路確保、これより突撃する」
●鎧装騎兵は仲間のために調査す
――すっかり荒れ果て放棄されている、忘れられたほこらに通じる道の手前にて。
イクシア・レイブラント(翡翠色の機械天使・f37891)は背中の翼を広げつつ、ダミードローンをいくつか展開し、先の見えぬ道に向かわせた。
「任務了解、やってみる」
イクシアは翼を軽く羽ばたかせ、身体を僅かに地面から浮きあがらせて移動を開始。
滑空も空中機動も自由自在な翼のおかげで、イクシアひとりであれば崖下の目的地まで一直線で向かえそうだ。
事実、この翼さえあれば、目的地の位置を把握出来次第、単独でも十分向かえるが、後続の猟兵たちがイクシアと同じように空を飛べるとは限らないだろう。
だから、イクシアは崖下の目的地まで一直線に飛行しつつ、通路を足で駆け抜ける後続の支援もするつもりだった。
少しずつ滑空するイクシアの上空から、パラパラと石礫が降り注ぐ。
苔むした通路の真上に垂直にそびえ立つ崖は、思った以上に脆くなっているようだ。
目的地向かって一直線に飛翔するイクシアの上空から降り注ぐ石礫は、その都度回避し、事なきを得る。
――たとえ小さな石礫であっても、当たり所が悪ければ墜落する可能性もあるからだ。
一方で、崖が上から少しずつ崩れているということは、崩落個所の下に通路を塞ぐ落石がある可能性は高い。
そう考えたイクシアが、ダミードローンで索敵しつつ情報収集をしていると、やがてダミードローンが通路を丸々塞ぐ落石をいくつか発見した。
ダミードローンが寄越した座標をもとに、イクシアが現地に急行すると、巨岩が通路を完全にふさぎ、徒歩で踏破しようとするものを妨げていた。
イクシアはアームドフォートを構え、躊躇なく巨岩を砲撃。
アームドフォートの直撃をうけた巨岩は、たまらず破壊された。
巨岩破壊の衝撃と爆音で崖が震え、さらに崖上から石礫が降って来たが、移動の支障になる程の巨岩は落ちてこない。
運がよかった、とほっとしながら、イクシアはさらに通路そのものが崩落しそうな箇所を特定し、記録しながら目的地たるほこらを探し、座標を特定した。
一通り通路を調べ、通路全体の安全はある程度確保できたと判断したイクシアは、先に目的地に向かうことにする。
「進路確保、これより突撃する」
後に続く猟兵に崩落の危険性がある箇所と目的地の座標を送信したイクシアは、背中の翼を羽ばたかせ、一直線に目的地に向かい滑空。
下へ下へと滑空していくと、徐々に差し込む陽が弱くなり、周囲が薄暗い闇に覆われ始める。
そんな陽の届かぬ谷底に小ぢんまりと存在する古びたほこらの外観を、イクシアの目は確かに捉えていた。
大成功
🔵🔵🔵
伊藤・毅(サポート)
『エネミータリホー、ドラゴン01、エンゲージ』
普段の口調は「真面目(自分、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、戦闘中は「無口(自分、呼び捨て、言い捨て)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、基本的に生身では戦闘を行いません。
空中戦をメインに戦い、航空爆撃や戦術偵察で地上の味方を助けます
依頼の達成を最優先とし、戦闘機パイロットとしての行動規範を根底に行動します
そのほか、キャラクターを壊しすぎない範囲でお願いします
リカルド・マスケラス(サポート)
『さーて、どう調べるっすかね~』
装着者の外見 オレンジの瞳 藍色の髪
基本は宇宙バイクに乗ったお面だが、現地のNPCから身体を借りることもある
得意なのはサポートで、非戦闘時はコミュ力や宇宙バイクの機動力で情報収集をしたりなどが可能。ある程度のその世界の知識や常識なども世界知識でわきまえていたりもする
色々な世界を渡って学んだことで魔術や機械の操縦など何でもござれ
また、仮面単体の時のサイズを利用すれば、念動力と組み合わせて、狭い場所を通ったり潜入調査を行うこともできる
基本的には真面目に仕事はしますが、きれいなお姉さんと一緒に行動できる選択肢があれば、迷わずそちらを選ぶチャラいキツネさんです
●パイロットとヒーローマスクは難所を越える
大地を大きく引き裂く大峡谷の上空に、普及型ステルス爆撃機『JSFライトニング』が現れる。
爆撃機の操縦席に座る伊藤・毅(Nemo・f06702)は、操縦桿を絶妙なさじ加減でコントロールし機体を安定させながら、大地に穿たれた大峡谷を見下ろしていた。
今回の任務は、谷底にあるという古びたほこらに向かう猟兵たちのサポート。
任務を果たすべく、毅は崖に機体が僅かにでも接触せぬよう慎重に愛機を操縦し、谷底へ降下し始めた。
一方、大峡谷の谷底に至る道の入口には、宇宙バイクに搭乗したリカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)の姿があった。
「さーて、どう調べるっすかね~」
先行した猟兵から受け取った、谷底にあるというほこらまでのルートと、通路の崩落個所を改めて確認するリカルド。
宇宙バイクに搭乗する限り、崩落個所は問題ないし、通路を塞ぐ巨岩は全て排除されているようだが、その後新たに落石が発生していないとは限らないし、何より見逃されている危険があるかもしれない。
ゆえにリカルドは、動物型の忍者を召喚し、先行させた。
「それじゃ、お願いするっすよ〜」
「わふっ」
犬の忍者たちは、嬉しそうにひとつ吠えると、宇宙バイクに先んじて走り出す。
そうして先行させた忍者たちが得た情報をもとに、リカルドは宇宙バイクを慎重に操縦し、苔むしぬかるんだ石畳の通路を進んでいった。
やがて、リカルドの目の前に、通路を完全に塞ぐ大きな岩が立ちはだかる。
先の猟兵が寄越した情報にはなかった以上、おそらく通過した後に新たに落ちてきたのだろう。
「これは困ったっすね……」
さすがに岩を壊す術はないため、リカルドが途方に暮れていると。
――ゴウウウウッ!!
「おお、戦闘機っすか!?」
突然現れたステルス爆撃機に驚くリカルドに、操縦者――毅から無線連絡が入った。
『こちらドラゴン01、ただいまより支援爆撃を行う。至急退避されたし』
「わ~お、わかったっす~」
毅からの無線連絡を受け、リカルドは急ぎ通路を戻り、岩陰に身を隠す。
目視でリカルドが安全圏に退避したことを確認し、さらに複合センサーシステムで周囲の地形を正確に把握した毅は、大きな岩に目標測定用のレーザーを照射。
『目標補足、侵入コース適正、誘導装置起動、自動投下用意……爆弾投下』
毅は機体を安定させながら、大きな岩目がけて小型のスマートボムを投下した。
――ドオオオオオオン!!
レーザーで的確に誘導されたスマートボムは、大きな岩に触れた瞬間爆発し、岩のみを木っ端みじんに破壊した。
『支援行動終了。健闘を祈る』
崖に一切の被害がないことを確認した毅は、意図的に爆煙を吹き散らすように愛機を駆りながら、一足先にほこらへ向かう。
「や~、ほんと助かったっす~」
リカルドもまた、毅に感謝しながら、再度宇宙バイクにまたがって苔むした道をゆっくりと下っていった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アテナ・アイリス
恐怖の刻印の次は樹蛇の侵攻ですって。
まったく、急に忙しくなってきたわね。でも、わたしがいる限り、A&Wの平和は大丈夫よ。
まずは祠に行けばいいのね。
まあ、「ブーツ・オヴ・エルヴンカインド」があるから、こんな足場でも問題なく走れるけど、わたしの【第六感】も急いだほうがいいと感じているわ。
なら、飛んで行った方が早いわね。
UC『ディバイン・フェザー』を使って、高速飛行で一気に谷底に降りる。
まあ道中の障害は、わたしの武具と技能を駆使すれば問題なさそうね。スピード重視でどんどん進むわよ!
※アドリブ、連携大好きです。
●勇者見届け人は裂け目を急降下する
「【恐怖の刻印】の次は【樹蛇の侵略】ですって。まったく、急に忙しくなってきたわね……」
アテナ・アイリス(才色兼備な勇者見届け人・f16989)は、ひとつため息を零しながら、ほこらに通じる道の入口に立った陽の差さぬ谷底へ通じる道をじっと観察していた。
「でも、私がいる限り、アックス&ウィザーズの平和は大丈夫よ」
そう豪語するアテナの目の前には、長年手入れされていない、荒れた通路が谷底まで伸びている。
おそらく、道中はこれ以上に荒れ果てているはずだが、どんな環境でも機敏に移動することができるといわれている純白の柔らかなブーツ『ブーツ・オヴ・エルヴンカインド』を履いていれば、たとえ苔むしぬかるんだ足場であっても問題なく走れるはずとアテナは踏んでいた。
先行した猟兵から、谷底のほこらの位置座標と危険個所の情報をもらっているから、なおさらだ。
それでも、アックス&ウィザーズの各地で|巡礼者《ピルグリム》によって『刻印』を刻まれ『触手の怪物』と成り果てたオブリビオンを目にしてきたアテナの第六感は、ほこらまで急いで向かったほうがいいと囁いていた。
(「時間の余裕はないかもしれない……なら、飛んで行った方が早いわね」)
「聖なる力よ。ここに集え!」
アテナが両手を頭上に掲げながら聖句を唱えると、両手の間に聖なる青白き光が現れる。
献身の想いに比例し強さを増す聖なる青白き光は、アテナの全身を覆いつつ、身体を空中へと導いた。
「高速飛行で一気に谷底に降りるわよ!」
飛翔能力を得たアテナは、手近な崖を軽く蹴って方向を変えると、マッハを超える速度で一気に谷底へと降下し始めた。
……それは、高速飛翔というよりは、急降下と見間違えそうな勢いではあったけど。
スピード重視でひたすら谷底へ降りていくアテナの頭上で、突然崖が崩れ、小さな石礫が降り注ぐ。
もし、このスピードで石礫に当たれば、あっさりバランスを崩して墜落しかねないが、アテナが纏う聖なる光が石礫をあっさり弾き飛ばし、彼女を護った。
飛翔し続ける限り、苔むした道で滑る心配も、寸断された通路を越える術も考える必要はない。
通路に潜む危険を高速飛翔で悉く突破したアテナは、危険らしい危険に遭遇することもなく、あっという間に谷底に到達していた。
●古びたほこら
「よっ……と」
谷底に鎮座する小さなほこらが目に入ったアテナは、聖なる青白き光を解除し、谷底に降り立つ。
「ここね。光明神のほこらは」
アテナはほこらの中に足を踏み入れようとし……しかしすぐに立ち止まった。
――ほこらの奥に、既に先客がいる。
気が付けば、アテナの手中にクラウ・ソラスが収まっていた。
ならば、先客は他の猟兵ではなく、樹蛇召喚を目論むオブリビオンだろう。
(「この先に……大いなる危機の根源が待ち構えているのね」)
そう直感したアテナは、ほこらの中へ足を踏み入れた。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『騎士竜アシド』
|
POW : ネイル・ジャベリン
【右腕】から【無限に出現する槍】を放ち、【磔にする事】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD : ナイツ・サンクチュアリ
【強制的に1対1の戦闘にする結界】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : ビハインド・キック
【背中】を向けた対象に、【後ろ脚からの蹴り】でダメージを与える。命中率が高い。
イラスト:朝梟
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「アルト・カントリック」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●アックス&ウィザーズ・大峡谷の谷底――忘れられたほこら
祀られている神の名だけでなく、存在そのものすら忘れ去られた谷底の小さなほこらに踏み入れた猟兵たち。
その奥では、半人半竜の騎士『騎士竜アシド』が樹蛇の召喚儀式を進めていた。
「ほう、『光明神』に祈りを捧げに来た……とは思えないな」
――おそらく、貴殿らは樹蛇の召喚を阻止しに来たのだろう。
猟兵たちの気配を察したか、アシドは儀式を中断しながら振り向き、猟兵たちをじっと見つめる。
その瞳は冷徹そのものだが、一方で瞳の奥底に隠し切れぬ戦意をも湛えていた。
「私にとって樹蛇は利用するだけの存在だが、阻止されるのもかなわんな」
手にしたジャベリンを一振りしながら、アシドはほこらを護るように立ちはだかる。
「猟兵たちよ、正面から堂々とかかって来るが良い。さすれば私も全力でそれに応えよう」
堂々と宣言し、猟兵たちを待ち受けるその姿は、まさに騎士そのものだった。
アシドは、猟兵たちの目的を見抜いた上で、正々堂々とした戦いを望んでいる。
ならば、彼の望み通り正面から堂々と挑めば、樹蛇や『光明神』に関する情報が得られるかもしれない。
一方で、アシドは――過去の栄光に縋り、世界を破滅へと導かんとするオブリビオン。
ならば、アシドの望みをあえて叶えないのも、ひとつの選択だろう。
――アシドの望みに応え、正面から挑むか。
――あるいは、あえて望みを叶えず、得意とする戦術で挑むか。
選択を迫られた猟兵たちが選び取った、道は――。
※マスターより補足
第2章は『騎士竜アシド』とのボス戦です。
正面から挑んだ場合、激戦は必至ですが、質問内容によっては重要な情報を引き出せるかもしれません。
逆に正面から挑まなかった場合、卑怯な手と判断したアシドは冷酷に攻め立てますが、戦術次第で正面から挑むより有利に立ち回れるかもしれません。
どちらを選んでも判定難易度は変わりませんので、お好きな方を選んでいただいて大丈夫です。
ただし、重要な情報を引き出せるのは「正面から挑んだ場合」のみとなります。
――それでは、悔いなき戦いを。
アテナ・アイリス
わたしは正面から挑むわよ。自分の力を信じているから。
まずは、スピード重視の剣技で挑む。2刀を持ち、【2回攻撃】【範囲攻撃】【見切り】を使って手数で攻めていき相手の力量を図る。
あら、なら次はこういうのはどうかしら。
戦法を変えて、【武器受け】【オーラ防御】【ジャストガード】【鎧砕き】【武器落とし】【怪力】を使って、パワー重視の攻撃を行う。
なかなかやるじゃない、じゃあ私も全力で行くわよ。
UC『不滅の刃』を使って、白銀色フルプレート姿にデュランダルの剣を両手で持って、必殺剣技「セレスチャルダイブ」を使って、攻撃する。
パラディンの姿で戦う事なんて、めったにないんだからね。あなたはラッキーよ!
●聖騎士と騎士竜の一騎打ち
『騎士竜アシド』の呼びかけに最初に応えたのは、アテナ・アイリス。
「わたしは正面から挑むわよ。自分の力を信じているから」
「よかろう。貴殿の全力を持って挑むが良い!」
アーパスブレードとクラウ・ソラスを構え、堂々とアシドの真正面に立つアテナの姿に騎士の矜持を見出したか、アシドもまた得物を構えた。
アテナは手始めにスピード重視の剣技で攻め、アシドの挙動を見切りつつ力量を図る。
二刀を持って手数で攻めるアテナの攻撃を、アシドも右手の槍で受け流しながら左手の曲刀で受け止めつつ、隙を見て槍で薙ぎ払った。
「あら、なら次はこういうのはどうかしら」
槍を二刀で受け流したアテナはガラリと戦法を変え、槍と曲刀を受け流しながら鎧ごと砕くような重い一撃をアシドに叩き込み始めた。
「ほう!」
手数重視の軽い攻撃から、一合ごとに確かな重さが乗った攻撃へいきなり転じたアテナに、アシドは軽く驚きながらも即応し、槍と曲刀に力を籠め打ち払っていった。
数十合に渡る剣戟の後、いったん距離を取るアテナとアシド。
双方とも目立つ傷はなく、軽く息は上がっているが、余力はまだありそう。
「なかなかやるじゃない」
「未来ある騎士の命をこの手で奪わねばならないのが惜しいな」
「じゃあ、私も全力で行くわよ。伝説のパラディンの力、見せてあげるわ!」
アテナの全身が白銀色のフルプレートアーマーに包まれ、アーパスブレードとクラウ・ソラスの代わりにデュランダルの剣を両手で構えた聖騎士の姿へと変身。
そのまま必殺剣技『セレスチャルダイブ』の構えを取り突撃するアテナを、アシドもまた真正面から迎え撃つ。
もし、アテナが背中を見せるようなことがあれば、アシドは即座に卑怯者と見做し、容赦なく後ろ足で蹴り飛ばしただろう。
だが、どこまでも真っ直ぐに、真正面から白銀の閃光を引きながらアシドに迫るアテナが背中を見せることは、決してない。
「パラディンの姿で戦う事なんて、めったにないんだからね。あなたはラッキーよ!」
「なら、その幸運を存分に享受するとしよう!」
アシドが得物を交差しアテナの突撃を受け止めようとするも、それより早くアテナが白銀の光とともに懐に飛び込み、真っ直ぐデュランダルの剣を振り抜いた。
――ザンッ!!!
スピードとパワー、双方が十二分に乗った一閃は、アシドの鎧の一部を砕き、胴に深い傷を穿つ。
真正面から聖剣の一撃を喰らった騎士竜は、かなりの深手を負いながらも冒険者――否、聖騎士と剣を交える喜びを噛みしめていた。
大成功
🔵🔵🔵
アイクル・エフジェイコペン(サポート)
猫っぽい舌足らず口調にゃ。こんにゃ感じで、可能なら末尾だけじゃにゃくて途中にも入れてほしいにゃ。めんどいならいいけど。
ちなみに機嫌悪い時は「に゛ゃ」って濁点入る感じにゃ。
正直状況とかよくわかってにゃいけどなんとなく気に入らない顔してるからぶっ殺すに゛ゃ。
パワーイズジャスティス。真正面から行っておもいっきり攻撃するのみにゃ。ユーベルコードは何使ってもいいにゃ。
基本はむちゃくちゃ猫かぶってかわいい子演じてるものだから、なるべくスマートに『せーとーはなれでぃー』的な感じで戦おうとするけど、むちゃくちゃ怒ったら地が出てむちゃくちゃ口が悪くなる。
「ぶっ殺おおおおおおす!●ぁぁぁぁぁぁっく!!」
桜井・乃愛(サポート)
桜の精のパーラーメイド×咎人殺しの女の子です。
普段の口調は「元気(私、~さん、だ、だね、だろう、だよね?)」、偉い人には「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
性格は明るく天真爛漫で、少し天然ボケな感じの少女。
一番好きな花は桜で、その他の植物も好き。
強敵にも怖気づく事は少なく、果敢に挑む。
人と話す事も好きなので、アドリブ歓迎。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
陽環・柳火(サポート)
東方妖怪のグールドライバー×戦巫女です。
悪い奴らはぶっ潰す。そんな感じにシンプルに考えています。
戦闘では炎系の属性攻撃を交えた武器や護符による攻撃が多い。
正面からのぶつかり合いを好みますが、護符を化け術で変化させて操作したりなどの小技も使えます。
全力魔法使用後の魔力枯渇はにゃんジュール等の補給で補います
名刀『マタタビ丸』は量産品なので、もしも壊れても予備があります。
ユーベルコードは指定した物を使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動し他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●力押しは時に搦め手にもなり得て
聖騎士との一騎打ちに満足していた『騎士竜アシド』の前に、3人の猟兵が現れた。
「正直状況とかよくわかってにゃいけど、なんとなく気に入らない顔してるからぶっ殺すに゛ゃ」
「気に入らないってことはないですけど……騎士様なら正々堂々と挑めそうです」
『せーとーはなれでぃー』の容姿を持つアイクル・エフジェイコペン(クロスオーバー三代目・f36327)の口から飛び出た物騒な台詞は、桜井・乃愛(桜花剣舞・f23024)の明るく天真爛漫な口調で和らげられていて。
「こいつ、悪い奴……ではなさげだが?」
陽環・柳火(突撃爆砕火の玉キャット・f28629)は、そんなふたりにちょっと呆れながらも炎系の護符を手に取った。
三者三様の猟兵たちを見て、アシドは若干ため息交じりに呟く。
……もっとも、その内容は呟き、というよりは猟兵たちに対する挑発だろう。
「私が喚ぼうとしていた樹蛇の正体が、『帝竜ミドガルズオルム』――かつてのオブリビオン・フォーミュラ『ヴァルギリオス』にも匹敵する、最強の帝竜にして『ベルセルク』だとすれば、貴殿らはどう考えるのだろうな」
「あー、それならぶっ潰すぜ」
アシドがさらりと零した情報を耳にして、柳火はあっさり方針転換。
おそらく、猟兵が此の地に到達した時点で召喚儀式自体は阻止できた可能性は高いが、帝竜を召喚すると耳にしたら流石に捨て置けないから。
「今はむずかしいことは考えにゃいで、真正面からいっておもいっきり攻撃するだけにゃ!」
「強敵でしょうけど、怖気づいていられないです」
軽機関銃『ブルーミング・ファイア』を構える乃愛の横で、アイクルは肩に担ぐようにバトルアンカーを持ち上げ、護符を構えたままの柳火と軽く目を合わせた後、いきなり走り出した。
「パワーイズジャスティス! に゛ゃ」
真正面から走ってアシドに接近したアイクルは、バトルアンカーを振り上げ、愚直な程真っ直ぐにアシドに叩きつける。
「錨というからには、怒りをぶつけるには最適な武器に違いにゃい!!」
「たとえ頓智だとしても、その力説は外れてはいないだろう」
アイクルの『錨』と『怒り』をかけたギャグと共に叩きつけられたバトルアンカーを、アシドは生真面目にギャグに同意しながらも四肢を踏ん張りつつ槍と曲刀を交差させ受け止めようとした。
アイクル自身はかつてそのように力説したら笑われたこともあったらしいが、その質量と籠められた破壊力は武器と呼ぶに相応しいのは、アシドも異論はない。
事実、単純な力と力のぶつかり合いであれば、バトルアンカーの重量分、アイクルに分がある。
結果、アシドはバトルアンカーを受け流しはしたものの、僅かに姿勢を崩した。
「おう、そこだぜ!」
アシドの姿勢をさらに崩すべく、柳火は手にしていた護符を一斉にばら撒く。
――ドドドドドン!!
柳火がばら撒いた炎系の護符――爆符『烈火乱れ咲き』は、爆裂弾のように次々と爆発し、さらにアシドの姿勢を崩した。
「連携して攻めるなら、妨害させてもらおうか」
姿勢を崩しながらも、アシドはジャベリンを召喚し、柳火に狙いをつける。
遠近双方に対応できる護符を持つ柳火が、攻撃の要となると悟っただろう。
――ドンドンドンッ!!
アシドの右腕から無限に出現するジャベリンが、柳火の四肢を地面に縫い付けようと次々と撃ち出される。
「悪ぃな。ちぃーっと足癖が悪いんだわ」
だが柳火は、地獄の焔を灯した脚で軽やかに飛び回りながら、磔にされまいとジャベリンを回避し続けた。
柳火の脚が地面や空中で弧を描くたびに、焔の軌跡が空中に残る。
「なかなか厄介な事をしてくれる」
揺らめく焔に視界を遮られたか、アシドは思うように身動きが取れない。
自然と、乃愛に対する警戒が薄くなった。
「さぁ、これでお終いにしてあげるよ!」
生じた隙を見逃さず、乃愛は軽機関銃『ブルーミング・ファイア』を腰だめに構え、狙いをアシドにつけて引き金を勢いよく引いた。
――パラパラパラパラパラパラッ!!
軽機関銃の銃口から豪雨の如く吐き出された無数の弾丸は、姿勢を崩したアシドの胴に叩き込まれ、鎧の一部を破壊する。
「真正面からの連携、見事……っ!」
銃弾の豪雨を胴に浴びながらも、アシドは猟兵たちを賞賛し、満足げな笑みを浮かべていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
古賀・茉莉
正々堂々と言う割には自らを鍛えずに別の力に頼るんだ?
と煽ってあげよう
ぴきっと来てくれれば隙も生まれるかもね
やろうとしていることはしょーもないも付け加えてあげるよ
両手に刃を持って襲いかかるよ
速さで撹乱しつつ手数で勝負
力や硬さではあっちに分があるだろうし
関節や腱など弱そうな部分を狙う
それでも硬そうだけどね…
さて、その神とやらはどんな力を与えてくれるのかな?
鍛錬では得られない筋肉とか?それとも別の力?
それを得て成し遂げたところで虚しいだけじゃないかな?
ボクは身体一つで成し遂げてみせるよ
正々堂々というだけはある強さではあるね
簡単には沈んでくれないか
狙うは超接近戦、槍や剣が振り回しにくいレンジがボクの武器の舞台
とにかく手数で攻める!
もちろんここまで近ければボクもかわすのは難しいけど
ネイルを槍にするくらいだからボクの肉なんて簡単に引き裂くか…
武器なしなら向こうも条件は同じだし
剥き出しの腹を爪で掻っ捌かれて腸管が飛び出し…
ヌルヌルした小腸が蠕動してる
痛みとショックで勝手に痙攣しても、手は止めない
ぐぶっ
●殺人鬼は痛みに生を見出し騎士と対峙する
鎧の一部を破壊され、それでもなお戦意が萎えぬ『騎士竜アシド』の前に次に現れたのは、古賀・茉莉(人間の殺人鬼・f33080)。
「正々堂々という割には、自らを鍛えずに別の力に頼るんだ?」
突然煽るような茉莉の口調に、思わずアシドもこめかみに青筋ひとつ浮かべるが、すぐに気を取り直し。
「私自身を鍛えるのと、樹蛇を喚ぶのは別の話なのでな」
「やろうとしていることはしょーもないね」
「煽っているつもりだろうが、そう簡単には釣られぬな」
槍と曲刀を構え、かかって来るが良い、と姿勢で語るアシドに、茉莉は両手に殺戮刃物を手にし、真正面から接近。
力や硬さでは、明らかにアシドに分がある。
関節や腱などの弱そうな部分を狙うつもりではいるのだが、それでも硬そうに見えるのは否めない。
とにかく速さで撹乱しつつ、手数で勝負するつもりだが、そうなれば必然的に接近戦を余儀なくされる。
「さて、その神とやらはどんな力を与えてくれるのかな?」
素早く接近し殺戮刃物で足の腱に斬りつけつつ挑発を続ける茉莉に、アシドはあくまでも平静を崩さない。
「二柱の光明神、世界樹の忠実な僕たる『バルドル』『ナンナ』の存在を忘れ去った人間が何を口にしても、戯言に過ぎないだろう」
「鍛錬では得られない筋肉とか? それとも別の力?」
「さあ、何だろうな」
斬り結びながら茉莉の挑発を受け流すアシドの口調に乗る熱は、全く変わっていない。
アシドに真っ当に応える気がないのか、それとも茉莉の質問を挑発と見抜いているのか。
何れかは口ぶりから判断できない以上、ならば、と茉莉はさらに挑発するかのように畳みかける。
「それを得て成し遂げたところで、虚しいだけじゃないかな?」
「確かに、虚しいと言えば虚しいのかもしれないな」
思いもよらぬアシドの答えに、茉莉も一瞬困惑の表情を浮かべるが、すぐ気を取り直し。
「ボクは身体一つで成し遂げてみせるよ」
「ならば存分にかかってくるが良い」
「もちろん!」
アシドの誘いに乗るように、茉莉はさらに殺戮刃物を強く握りしめ、四肢を斬り裂いていった。
おそらく、アシドは既に察しているのだろう。
――遠い空の彼方で、真に樹蛇の力を求めた存在は、既に討たれているであろうと。
だが、それでもアシドは、騎士としての矜持を胸に決して退こうとはしない。
猟兵たちを退け、召喚儀式を再開できる万にひとつの可能性に賭け、アシドは茉莉と1対1の戦闘に持ち込める結界を張り、超接近戦に持ち込んだ。
高速で撃ち込まれる槍と曲刀を、茉莉もまた殺戮刃物で逸らしながら、鎧が砕かれている胴や四つ足の関節を狙い斬りつける。
「正々堂々というだけはある強さではあるね。簡単には沈んでくれないか」
「私だって簡単には退けないのだよ」
一振りが九振りに見間違おう速さで殺戮刃物を打ち込み続ける茉莉に、超高速で槍を打ち込み曲刀で斬りつけ続けるアシド。
双方が至近距離まで接近すれば、アシドも殺戮刃物を躱すのは難しくなるが、茉莉も槍はともかく曲刀を躱すのは難しくなる。
さらに無数のジャベリンに変化できる爪で斬りつけられれば、茉莉の皮膚や肉も容易に引き裂かれてしまう。
アシドの全身に傷が増えるに連れ、茉莉も剥き出しの腹を曲刀と爪で少しずつ抉られていた。
抉られた腹から、少しずつ腸が零れ出していた。
「それ以上戦えば、貴殿は確実に命を失うが、良いのか」
「これこそ、ボクが生を感じられる瞬間だから」
アシドの情けを、零れた腸を片手で押さえながら流す茉莉。
掌中では、小腸がヌルヌルと蠕動していた。
その感触に、茉莉は生を実感しながらもう片方の手で斬りつけ続ける。
「ぐふっ……」
だが、思った以上に内臓にダメージを受けているのか、喉から血がこみ上げてくる。
正直、痛みとショックでいつ気を失ってもおかしくないし、所々けいれんしているが、それでも茉莉は攻撃をやめなかった。
――それこそが、少女が生を見出す一瞬なのだから。
その痛ましいまでの茉莉の姿に、何か感じたのだろうか。
アシドが曲刀で殺戮刃物をあしらいながら大きく槍を引く。
「ならば貴殿に敬意を表し、一思いに楽にしてやろう」
そして、茉莉の腹に一気に槍を突き込んだ。
――ドスッ!!
アシドが勢いよく突き出した槍は、茉莉の腹を深く貫く。
「ごふっ……!!」
腹に槍を突きこまれた衝撃に、茉莉は殺戮刃物を地面に落としながら盛大に喀血。
引き抜かれた槍の返しに引っ掛かったか、腹から腸が全て引きずり出される。
その悍ましい光景に笑みを浮かべながら、茉莉は意識を手放した。
茉莉が意識を失った直後、丸盾のグリモアが茉莉を護るように現れ、強制的にグリモアベースに引き戻す。
だが、アシドはそれを妨害せず、痛みに生を見出しながらも果敢に挑んだ戦士に対する敬意を表しながら見送っていた。
大成功
🔵🔵🔵
イクシア・レイブラント
公序良俗に従い品行方正に戦う。装甲や機械部位の損傷は気にしない。
* * *
「鎧装騎兵イクシア、交戦を開始する」
正面から突撃する。だけど簡単に磔にはならない。
ネイルジャベリンは[空中機動、見切り、瞬間思考力]のほか、ダミードローンや着脱可能なシールドを囮にして接近。1m以上の高度は維持せず低空高速戦闘を挑む。
「樹蛇とは何? 復活させて何をさせるつもり?」
大型フォースブレイドは両手用。損傷により片手が使用できなくなれば命中精度の低下は否めない。
それなら損傷部位を[念動力]で無理矢理固定し、翼による変則起動で振り回す。
[空中戦、鎧防御無視、なぎ払い、リミッター解除]で、最後まで諦めずに戦う。
●鎧装騎兵は騎士と正々堂々と渡り合う
猟兵たちと正々堂々刃を交えてきた『騎士竜アシド』の鎧は砕かれ、胴や四肢には無数の傷が穿たれている。
それでも、此処から退けぬ理由がある、と言わんばかりに構えるアシドの前に、イクシア・レイブラントが姿を現した。
「鎧装騎兵イクシア、交戦を開始する」
姿を見るなり、イクシアは宣戦布告のみ端的に言の葉に乗せ。
「……機体各部、安全装置解除。フォースリアクター、イグニション」
緑色のサイキックエナジーで全身を覆い、真正面から低空で高速飛行しつつ突撃。
あっという間に距離を詰めたイクシアに対し、アシドは嬉しそうに右腕を振り上げた。
「異世界の騎兵よ、その心意気、しかと受け取った!」
右腕から立て続けにジャベリンが撃ち出されるが、イクシアは高速飛翔しつつその軌道を見切り避けてゆく。
避け切れないジャベリンは、ダミードローンや着脱可能なシールドを囮に避けた。
だが、無数に撃ち出されるジャベリンを全て回避するには足りず、何本かはサイキックエナジーごとイクシア本体の装甲を削り取ってゆく。
もう少し高度を取れば、ジャベリンの軌道を見切りやすくなり、避けやすくなるかもしれないが、イクシアは決して地表から1メートル以上離れようとせず、低空高速戦闘を挑み続けた。
――公序良俗に従い、品行方正に戦う。
それこそがイクシアがこの戦いに臨む際に誓ったことだから、装甲や機械部位の損傷は気にしない。
やがて、集中的にジャベリンを受け、損傷が激しくなった左手が機能を停止する。
大型フォースブレイドは両手用。右手だけでは命中精度の低下は避けられない。
「その剣はもう使えまい?」
「まだ手はあるの」
イクシアは右手を念動力で無理やり固定し、左手と翼による変速起動で強引に振り回しながら接近。
命中精度の低下を力で補う、一見すると大雑把な攻撃は、高速飛翔で懐に飛び込めば十二分に有効な一撃となる。
アシドもイクシアの左手や翼を破壊せんとジャベリンを集中して投げ続けるが、イクシアが高速飛翔で懐に飛び込む方が早く。
「終わりね」
密着したイクシアは、そのまま勢いよくフォースブレイドを振り切った。
――ザンッ!!!!
フォースブレイドの一閃が、ジャベリンを砕きながらアシドの胴を深く鋭く薙ぐ。
「見事……ッ!!」
それが止めの一撃となったか、アシドは槍と曲刀を手放し喀血しながら、ゆっくりと四つ足を擱座させた。
●【樹蛇の侵略】とは
擱座したまま消滅を待つのみのアシドに、ゆっくりと近づくイクシア。
「樹蛇とは何? 復活させて何をさせるつもり?」
「――もはや意味はないかもしれないが、正々堂々と私に挑んだ貴殿には教えよう」
既に遥か彼方の天空でも、同様の儀式が阻止されたと悟っているのだろう。
アシドはひとつ息をつくと、ゆっくり話し始めた。
「巨大なる樹蛇の名は『樹蛇ミドガルズオルム』。かつてのオブリビオン・フォーミュラ『ヴァルギリオス』にも匹敵する、最強の帝竜にして『ベルセルク』」
――それはかつて帝竜戦役にて猟兵たちが撃破した、2体の帝竜の名。
「ヴァルギリオス? ベルセルク?」
「もし知らぬなら、当時を知る者に聞くか、過去の記録を辿ってみるが良い」
首を傾げるイクシアに、助言を与えたアシドはゆっくり長い息を吐き。
「この勝負、貴殿らの勝利だ。儀式を阻止した喜びを噛みしめつつ――絶望に抗うが良い」
謎めいた言の葉を遺しながら、『騎士竜アシド』はゆっくりと項垂れ、消滅した。
かくして、猟兵たちは忘れられた光明神のほこらで樹蛇――『帝竜ミドガルズオルム』を召喚せんとしたオブリビオンの野望を砕き、グリモアベースに帰還する。
再び静寂を取り戻した古びたほこらは、薄闇を取り戻した谷底にて、ただ静かに佇んでいた。
大成功
🔵🔵🔵