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アルカディア争奪戦④〜轟雷

#ブルーアルカディア #アルカディア争奪戦

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 『アルカディア争奪戦』が始まった。
 そんな中、琥珀龍号・烈(宵待・f34122)がおおよそ3Mほどある巨体を、ずっしりと横たえる。
 言ってしまえば真っ白な翼の生えた柴犬が、座っているという体なのであるが、何せ、でかい。ふす、とため息をつくような仕草をすると、もっふりと毛が揺れた。……なんともふてぶてしい顔をしている。
 そんな琥珀龍号は、わんともきゃんともいわずに、無言で鼻先を軽く押すような仕草をした。その仕草と同時に現われるのは、ホログラム映像だ。立体感を持った映像が、猟兵たちの前に現われる。

 ……最初に見えたのは、全体から謎の蒸気を発生させた獣であった。
 翼の生えた獅子のような姿をしており、その翼と翼の間。ちょうど背中のあたりに、何やら不釣り合いな機械を乗せている。
 機械を乗せながら、それは戦っている。全身から雷を発生させ、すさまじい勢いで敵を打つ姿は、獣というよりも災害に近かった。

 猟兵たちがその映像を確認したのを見て取って、琥珀龍号は映像を変更する。
 それは、アルダワのどこかでのようであった。映っているのは、同じような獣。しかし背中に機械はない。同じように雷を振りまき恐ろしい破壊力で周囲を蹂躙していく獣であるが、ほんの少し、最初の映像より出力が落ちているようであった。
 暴れる獣の映像を流し、そうして終わった。琥珀龍号は、「わかるだろう?」みたいな表情をしている。
 それで、思い出すものは思い出すかもしれない。
 蒸気帝国ルブラム。
 ブルーアルカディアにていにしえに伝わり、そして失われたという「アルダワ蒸気文明」を擁する軍事国家であり、今回の敵対勢力の一つ、マグナ聖帝国配下の屍人帝国であるその国は、配下のオブリビオンは全て「蒸気改造」を受けているのだという。
 蒸気エンジンによってブーストされた身体能力で多数の「蒸気で駆動する機械武器」を操る彼らであるが、どうやらこの獣もその一種であると想定できるだろう。
 ……蒸気武器。
 そこまで考えたのを見計らったかのように、琥珀龍号は再び映像を流す。それは最初の方の、蒸気を手にしている映像であった。
 身体能力の向上、雷の威力増加。後は……爪の攻撃が追加されている。よくよく見ると爪には蒸気機械が施されていて、これもまた侮れない攻撃力となっているだろう。
 全体的に機動力も上がっている。想定戦場は広く、戦闘に支障がない場所だが、それは相手も同じ事であろう。
 気を付けてあたらなければならない。そう、注意したかったのか……いや多分何にも考えていないのだろう……琥珀龍号は、ぶふ、と不機嫌そうな鼻息を一つして、映像をかき消した。
 あとはただ、戦って勝つだけだと、言っているかのようであった……。


ふじもりみきや
いつもお世話になり、ありがとうございます。
ふじもりみきやです。
今度は巨大な獣、一体との戦いになります。
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プレイングボーナス:敵の武装や肉体を動かす蒸気機関を無力化する。
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今回は、ボス戦ということもあり、
一人参加の方も、皆さん一緒に戦う形式で行こうと思います。
なるべく一括、全員参加での戦闘をやりたいな、と思っておりますが、
プレイング内容や、その他もろもろによっては変更になる可能性もあります。ご了承ください。

また、断章の追加はありません。
プレイング募集期間は、九月五日8:31より23:00までを目安とし、
完結に足りない場合は、その後も随時募集いたします。

それでは、よろしくお願いします
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第1章 ボス戦 『召喚獣『ヴァジュラ』』

POW   :    電磁結界
【雷の尻尾】から、戦場全体に「敵味方を識別する【レベル回の雷撃と超電磁場】」を放ち、ダメージと【電磁力反発による近接攻撃不可】の状態異常を与える。
SPD   :    サンダー・レールガン
【超電磁場と雷の拡散】によりレベル×100km/hで飛翔し、【超電磁場の強さ】×【雷エネルギー】に比例した激突ダメージを与える。
WIZ   :    雷電の支配者
【戦場を覆う超電磁場と雷の奔流】を放ち、戦場内の【金属の物品、および電気】が動力の物品全てを精密に操作する。武器の命中・威力はレベル%上昇する。

イラスト:shirounagi

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠アイン・セラフィナイトです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

シキ・ジルモント
敵を強化している機械は蒸気で駆動しているらしい
蒸気を使って動かしている機械…水、か

エンチャント・アタッチメント【Type:I】を銃へ装着
その状態でユーベルコードを発動、氷の魔力を付与した弾丸で敵の背にある蒸気機関への攻撃を試みる
蒸気機関の駆動に必要な蒸気となる水分に氷の魔力をぶつけて凍らせる事で、機械の機能停止・無力化を狙う

敵が激突してくるタイミングであれば、動きの予測が比較的容易だろうか
突進のスピードだけでなく爪の一振りにも注意を払い飛び越えるように跳躍し、頭上から機械を狙いたい
攻撃の手が緩まったなら即座に反撃に転じる

その他、味方に狙いがあるなら積極的に助力
援護射撃や敵を引き付け、共闘を行う


リグノア・ノイン
戦争初戦、全力で参ります

お可愛らしい柴犬様に送られてすぐ準備を
虚空から「Weiß of Pfeil」を呼びだして搭乗
キャバリアは人型形態でなく高速戦闘の飛行形態へ
「Vorsicht.Weiß of Pfeil、高速戦闘モードに移行致します」

今回は猟兵様達の戦いを補佐し
蒸気機関の無力化を目指します
「Bitte behandle mich gut.皆様宜しくお願い致します」

獣を視認すると同時に飛翔し、敵の高速移動に対応、翻弄します
猟兵様達の攻撃の合間を縫って【Flügel "Lignoa"】を発動
射撃は牽制にバラまくように撃ち本命の船首突進で蒸気機関を狙います
「Ja.問題なく破壊致します」


鵜飼・章
だからどうして魔獣を機械化するかな
僕は自然のままの生き物が見たいから
そういうの求めてないんだけど
この国、早く滅ぼさないと…

ひとまず可哀想な召喚獣くんの処理だね
皆と協力して戦えると有難いな
金属武器は念の為に置いていく
図鑑とオカリナがあれば十分だろう
鴉くん達は焼き鳥にならないようにね

自由に飛ばれると厄介だから
無神論を使って止めてしまおう
いつまでも効くとは思えないから
効果が出たら即鴉達を羽根に突撃させ
穴だらけにして使い物にならなくする
これで速度は出難くなるかな

その後も演奏を続行
不吉な音楽による精神攻撃と恐怖で敵を妨害し
鴉達に蒸気機関を狙わせる
味方に直接的な被害はない筈だけど…
我慢してもらうしかないか


栗花落・澪
【オーラ防御】に【高速詠唱】で雷魔法を乗せる事で
雷同士の誘導で少しでも外に電気を流す試み
基本援護寄りの戦闘スタイル

【指定UC】発動
同時に【多重詠唱】でオーラ防御の雷は維持したまま
氷魔法の【属性攻撃】
敵の突進の方向に氷の壁を生成し防御
更に詠唱や他猟兵への声掛けによって発した言葉をUC効果で物理的に実体化させ
氷壁との二重防壁にする、および避雷針代わりにして敵のUCによる激突ダメージの緩和

ほんの少しの隙さえ作れれば、あとは押し切るだけ
あーでもうーでも、何かしら声を出していれば無限に文字を量産できる
誰かの防壁に、避雷針に
そして余った文字は物理的な攻撃に転じて仲間の援護
少しでもダメージを通したいところ


弘原海・汐海
POW ※アドリブ連携等歓迎です
随分とごっついワンコやな
これを倒すのは骨が折れそうや

蒸気機関で強化された機動力、それに雷
攻撃を見てから回避するのはムズそうやな

ま、泣き言いっても始まらん
とっとと突っ込むで!
<瞬間思考力>を働かせ、召喚獣の位置から
想定される雷撃と磁場の発生位置を予測
細かい位置は──<第六感>で<見切る>!

刃圏に到達し次第、即座に攻撃を行う
狙いは蒸気機関
これを破壊してから、二の太刀でとどめを刺しに行くで!

この犬がどんなに迅かろうと、これは躱せんで
何故なら──この斬撃は、すり抜けるからなぁッ!
海神流、壱ノ型─海鳴リッ!【UC】

機関を破壊した後、即座に追撃に移る
逃げる隙なんて与えんで!


木霊・ウタ
心情
オブリビオンだけど
こいつも蒸気帝国の犠牲者だ
可哀そうに
海へ還してやるぜ

戦闘
迦楼羅を炎翼として顕現
宙を紅に裂いて突撃

爆炎で急制動をかけて雷撃を回避
当たっても纏う炎で迎撃

加速の勢いのまま
超電磁場へ向かって獄炎纏う焔摩天をぶち当てる
一回だけじゃないぜ
しつっこく何度もだ

そして超電磁場へ地獄の炎が延焼する
地獄の炎は何時何処でも燃える
なんでも燃やせる
燃え盛る紅蓮が超電磁場喰らって無効化していく
今なら届く!
電磁場を突破ざま焔摩天で薙ぎ払う

この一撃では倒せないかもな
けれど既に獄炎の延焼が
蒸気機関を過熱させ溶かしている
俺達の勝ちだ

火力を一気に高めて大焔摩天とし光刃一閃
海へと還す

事後
鎮魂曲を爪弾く
安らかに


月舘・夜彦
【華禱】
雷の獣とは厄介なものですね
まるで動く災害です
えぇ、倫太郎……速やかに対処致しましょう

霞瑞刀 [ 嵐 ]を構え、敵に狙いをつける
抜刀術『神嵐』を使用
回避される可能性も見込み、2回攻撃の2段構えで斬撃を当てる
機動力はあっても動きさえ封じられれば有利に戦えるはずです

敵の雷が電撃耐性で耐えられる範囲ならば、そのまま接近して攻撃
耐えられない場合は刀による斬撃波で遠くから攻撃
戦いの場は広いので動き回れるのはお互い様、あとは速さ勝負
鎧砕きとなぎ払いにて敵と機械武器ごと攻撃してしまいましょう

敵の動きに警戒し、見切りにて早めに回避行動
残像や飛んで回避して距離を取り、再度斬撃波を使いながら接近を狙います


篝・倫太郎
【華禱】
背中と爪ね……
流石に災害を止めたことはねぇなぁ

んじゃ、往こうぜ?夜彦

敵が射程内なのを確認して拘束術使用
鎖での攻撃から、四肢拘束を狙ってく

動きを完全に止める必要はねぇ
稼働範囲を制限しちまえばいい
鎖も金属じゃねぇから雷からの感電は大丈夫だろうし

斬撃波と鎧砕きを乗せた華焔刀で敵の足を部位破壊
刃先返して2回攻撃
後足の爪にも機関があるならそいつも潰すように立ち回る

拘束術は解ける前に適時重ね掛けて
夜彦や他の機関狙いの奴が立ち回りやすいようフォロー

敵の攻撃は見切りとフェイントを交えた残像で回避
回避不能時はオーラ防御でジャストガード
負傷は激痛耐性で凌ぎ、以降の攻撃には生命力吸収を乗せてく

決めちまえ!


リーヴァルディ・カーライル
…これだけの猟兵が集まったなら、蒸気機械への対策は任せても良さそうね

…ならば私は、電撃を防ぐ事に専念させて貰うわ

UCを発動して魔力を溜めた掌で地面に触れ"雷を吸収する地属性の曲刀"を錬成
雷の精霊を降霊した「精霊石の耳飾り」により第六感めいた精霊の視界を借り受け、
暗視した周囲の電磁波や磁力の流れから敵の雷撃を先読みして曲刀で受け流しつつ切り込み、
積み重ねた戦闘知識から爪撃や突撃の軌道を見切り曲刀で乱れ撃ちするカウンターで迎撃を試みる

…我が手に宿れ、大地の理。その刃にて、我に降り注ぐ災いの一切を打ち払え…!

…どれだけ強化したところで雷を操る能力に変わりはない以上、対策もまた容易いものよ


コルネリア・ツィヌア
まず、ドラゴンランスはここぞという時以外は竜型にさせておく。絶対に。絶対に!
金属判定されるかわからないから尚更!即戻るのよ、いいわね!?

蒸気機関を置いても強敵ね
まず、UCの風の魔力を使って、戦場と蒸気から空気の流れ――風を奪って私のものにする
電の攻撃も、逆にチャンスだわ
その雷撃と超電磁場で発生する余波の風も重ね絡めるように支配下に置いて、こっちの力を増強、広く行き届かせる
そうして力を溜めて、雷撃や爪を風の魔法で防ぐ
応用で、物品操作が起きたら、咄嗟に叩き落とす位は出来るかしら

防御に徹して、隙が出来たら、ドラゴンランスを風に載せて飛ばす
狙いは口内から上顎を貫通
竜型化と入れ替わりに風を錐状にして追撃


西条・霧華
「強敵ですね。でも…」

守護者の【覚悟】に掛けて、負けられません

【斬撃波】で牽制しつつ攻撃を誘います

敵の攻撃は高めた【集中力】と【視力】を以て【見切り】、【残像】と【フェイント】を交えた【ダッシュ】で回避
避け切れなければ【武器受け】しつつ【オーラ防御】と【覚悟】を以て受け止めます
何れの場合も返す刀での【カウンター】で蒸気機関を攻撃します
どれ程高速で動こうとも、激突しに来るのですからそこを狙えば無理に追いかけなくても大丈夫な筈です

蒸気機関にダメージを与えたら改めて攻撃です
纏う【残像】と【フェイント】で眩惑し、【破魔】と【鎧砕き】の力を籠めた[籠釣瓶妙法村正]にて『幻想華』
狙うのは勿論、蒸気機関です


クーナ・セラフィン
機械と野生の融合…実に厄介だね。
どんな強敵との戦い想定してたんだろうか現実逃避したくなる位。
でもまあ、戦わないとね?

予め符に冷却のルーン記述し準備。
距離取りつつ速度重視で敵を攪乱。
最高速度はともかく小回り含めればいい勝負できると思う。
電撃耐性限界まで付与したオーラ全身に纏い電磁場や感電防ぎつつ、敵の眼を見てUC発動。
見えた終焉を参考に飛翔突撃の軌道を見切り、跳ねつつ突進の直撃を銀槍で逸らし回転運動に転化する感じ回避。
回避直後敵の速度落ちた瞬間に蒸気機械部分に符を貼りつけ一気に冷却を狙う。
急な冷却は性能低下、もしくは機械の故障に繋がる筈。
隙あれば銀槍で足を串刺しにしようか。

※アドリブ絡み等お任せ



 ●●●
戦場はすでに雷が降っていた。
 雲もないのに落ちるそれは、雨を伴わず。むしろ自分たちが豪雨であると主張するかのように降り注ぐ。
 そこに敵も味方も関係ない。まるで感情すら伴わぬまさに災厄であるといわんばかりのその戦場に、
「いい? 絶対、絶対に! ドラゴンランスの姿に戻っちゃいけないのよ。いい!?」
 コルネリア・ツィヌア(人間の竜騎士・f00948)がとても懸命に言い聞かせていた。
「金属判定されるかわからないから尚更! どうしてもやりになった時も、即戻るのよ、いいわね!?」
 この雷だ。不要な苦しみを強いたくない。なんて、真剣な顔をして言うコルネリアだったが、ドラゴンの方はわかっているのかいないのか。きょとん、と首を傾げている。が、しばらくして軽く鳴いた。わかったかわかってないかはともかく、大丈夫であろう。
「僕も一応金属武器は念のために置いていこうかな。図鑑とオカリナがあれば十分だろう」
 鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)がそんなことを言いながら頭上に視線を向ける。
「鴉くん達は焼き鳥にならないようにね」
 割りとコルネリアと比べて温度差のあるその態度に、鴉君は何か言いたげ、だったかもしれないが、章は全く素知らぬ顔だ。
「私は、これ一本で参ります。寧ろ攻撃がこちらに向いてくれるのであれば、有り難いかと」
 愛刀。籠釣瓶妙法村正を手に、西条・霧華(幻想のリナリア・f03198)が静かに言うと、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)がちょっと心配そうに、目をぱちぱちとさせた。
「ええ。大丈夫??」
「そうですね……。確かに侮ってはいけない強敵ですから、絶対大丈夫とは言えません。でも……」
 雷はいっそまばゆく恐ろしいくらいである。けれどもその中を突っ切って、蒸気機関を狙えば確実に敵もこちらに注意を向けるだろう。ならば、霧華自身が蒸気機関に届かなくとも構わないのだ。なぜなら、
「守護者の覚悟に掛けて、負けられません」
 守ることが霧華の本懐だからである。
 そっか……。と、澪はほんの少ししゅん、と翼を垂らして、
「だったら、僕も精いっぱい援護するよ!」
 しゃきん、と再び翼を戻して決意を新たにするのであった。
「えーっと、オーラ防御を傘みたいにしてね、そこに雷魔法を乗せて、雷自身を誘導して外に電気を流そうかなって」
 これなら局所局所にオーラによる防御を展開することで、細かく援護できるだろうと澪が言う。
「なるほど。……ならば私は、広範囲に降る電撃を防ぐ事に専念させて貰うわ」
と、話を聞いていたリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は何もない己の手を軽く握りしめる。
「……これだけの猟兵が集まったなら、蒸気機械への対策は任せても良さそうだから。だったらこちらは、雷への対策を全力ですればいい……。後方から援護する人は私の後ろにいればいいわ。雷を吸収しながら進むから、少しは楽になると思う」
 なお、意識して守っているというわけではない。あくまで自分は雷を吸収するものを作り出し、そして進むだけであるとのリーヴァルディの言葉に頷いたのは、クーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)であった。
「機械と野生の融合……実に厄介だね。どんな強敵との戦い想定してたんだろうか現実逃避したくなる位」
 一瞬、クーナは遠い目をする。遠い目をしてから、
「でもまあ、戦わないとね?」
 と、小さな姿で肩を竦めた。
「てわけで、了解。じゃあこの三人(クーナと霧華とリーヴェルディ)が各自突っ込んで牽制とともに攻撃……ってことだね。勿論敵への攻撃もなるべく行うけど、どちらかというと攪乱を目指してあとにつなぐつもりってことで」
「異論ありません」
「……そうね」
 しっかり頷く霧華と、興味がなさそうなリーヴァルディに、
「なるべく頑張って、援護するから!」
 澪がふんすと両手を握りしめる。
「ひとまず可哀想な召喚獣くんの雷への対処ってことだね。皆と協力して頑張れると有難いな」
 それに合わせるように章も頷きながらちょっと期待を添える。協力とは無縁かもしれない身であるが、頑張りたい。そのまま、
「それにしてもどうして魔獣を機械化するかな。僕は自然のままの生き物が見たいから、そういうの求めてないんだけど」
 そして全くマイペースに己の所感を述べる章。
「そうね。蒸気機関を置いても強敵なのにね……」
「うん。全くわかってないよね。この国、早く滅ぼさないと……」
「そ、そうかしら? 確かに滅ぼさなきゃいけないとは思うけど……」
 コルネリアが同意して、同意しながらも、うん? と首を傾げている。そんな中で、
「もういいわね。私は先に行くわ」
 やっぱり興味ない、とばかりに走り出したのはリーヴァルディであった。
 そうして彼らは、雷躍る戦場へと突入する……。


 月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)と篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)がその場所を訪れた時、目の裏が焼き付くほどにまばゆい雷が周囲に満ちていた。
 戦場では、雷へ対処し援護しつつ敵を牽制する者たちと、その援護を受け蒸気機関に攻撃する者たちにだいたいわかれている。どちらかというと、二人は後者の方であった。
「雷の獣とは厄介なものですね……。まるで動く災害です」
 目を眇めて、敵のいるであろう方向を見る夜彦。雷の光が強すぎて、その実像をはっきりと掴むことすら怪しい。そんな相手を前に、倫太郎も肩を竦める。
「背中と爪ね……。流石に、災害を止めたことはねぇなぁ」
 さて、どうするべきだろうか。なんて腕を組んで考えて見せるそぶりをしている倫太郎。そんな倫太郎を微笑んでに夜彦は見ている。何? と倫太郎が目で問うと、夜彦は頷いた。
「いえ。倫太郎と一緒ならば、どんな場所でも恐れることはありません」
「……」
 まっすぐにかけられた信頼の言葉に、倫太郎は咳払いを一つ。
「んじゃ、往こうぜ? 夜彦」
 まるで買い物にでも行くような誘いに、夜彦も静かにうなずいて刀に手をかけるのであった。
「えぇ、倫太郎……速やかに対処致しましょう」


「随分とごっついワンコやな。これを倒すのは骨が折れそうや」
 戦場を見回して、最初の弘原海・汐海(海神流・八代目継承者・f36108)の感想はそんなであった。
 けたたましい声と、雨のように降る雷。金属と金属がこすれ合うような、おおよそ人類としては耐えられそうにない音を聞きながらも、平然と汐海は鼻を鳴らす。
「蒸気機関で強化された機動力、それに雷……。攻撃を見てから回避するのはムズそうやな」
「雷に関しては、他の猟兵たちが援護に回っているらしい。無論、対策が必要ないとは言えないが……」
 シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)が愛用のハンドガンにアタッチメントを装着しながらそうつぶやいた。生命の水で出来たそれは、放つ弾丸に氷の魔力を纏を纏わせたものである。
「なるほど。やったらま、これ以上泣き言いっても始まらん。とっとと突っ込むで!」
 シキの言葉に納得したように、すかさず汐海は走り出す。躊躇いのないその動きを、シキは目で追った。
「敵を強化している機械は蒸気で駆動しているらしい。蒸気を使って動かしている機械……水。これが効くといいが……」
「試してみるのですね」
「ああ。やってみる」
 そうしてシキも、汐海に数秒遅れて走り出す。それを見送って、リグノア・ノイン(感情の渇望者・f09348)は淡々と。感情の起伏を感じさせない顔で、小さく頷いた。
「何事もやってみることが大事でしょう……。ええ。私も、そのつもりで。戦争初戦、全力で参ります」
 小さく一礼をするような仕草。そんな仕草をしながらも、どこか重々しい気配を彼女は醸し出していた。それは、彼女が高速移動を得意とする白いキャバリアに登場していたからだろう。キャバリア越しに戦場を感じながら、彼女も飛び立つ。
「Vorsicht.Weiß of Pfeil、高速戦闘モードに移行致します」
 人型ではなく機動重視の形態へ。
「今回は猟兵様達の戦いを補佐し、蒸気機関の無力化を目指します。……Bitte behandle mich gut.皆様宜しくお願い致します」
 まるで機内アナウンスのような口調で言って、彼女もまた戦場に突入していく。
 戦場を駆ける雷を他の猟兵たちが対処してくれるなら、蒸気機関を対処するのは自分たちだ。
 そんな風に思ったかどうかは……兎も角。
「……」
 駆けていく仲間たちを見ながら、木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は大きく深呼吸をした。
 視線の先では、仲間たちと相対するように獣が戦っている。
「オブリビオンだけど、こいつも蒸気帝国の犠牲者だ。……可哀そうに」
 ウタには、この獣がどうしても、自分からすすんで蒸気機関を付けたとは思えなかった。蒸気をまき散らしながら動くさまは、どこか痛々しいものを感じさせる。だから彼は深呼吸をした後で、
「……海へ還してやるぜ」
 その目に決意を宿し。そうして……戦う仲間たちの後を追ったのであった。


●●●
「自由に飛ばれると厄介だから、足を止めるよ」
 雷でまぶしい。かなり前が見えづらいが、まあ光が強い場所に向けばいいだろう。そんなことを思いながらも、章はオカリナに口をつける。
「鴉君、効果が出たら突撃して」
 それだけ言い残して、章はオカリナを吹く。音楽の神様に嫌われたとか虚無の音がするとか聞いたものが全身から血を吹きだして死ぬ気がするとかさんざん言われる虚無の笛である。
 そんな筆舌に尽くしがたい恐ろしい音は落雷の音すら貫いて戦場に鳴り響く。
「助かります!」
 味方には直接害はない。ただ凄まじく音があれなだけだ。それをどう思ったかはともかく、霧華が動き弱まった雷獣に向かって突撃した。
 それと同時に走った章の鴉たちが一斉に獣たちに突入する。敵の場所を示すように、黒い点が獣をついばもうと攻撃する。
「いつまでも効くとは思えないから、注意してね」
「了解にゃー」
 鴉たちは敵の羽をメインに攻撃している。後は任せるにゃ、とばかりにクーナも走り出していた。ちなみにリーヴァルディはさっさと突入している。
 そうやって走り出した猟兵たちに向かって、雷が叩きつけられた。鴉に翼をついばまれながらも、現時点ではさほど脅威を感じていない。……そう。多少機動力がそがれたとて、この背には強力な蒸気機関があり、鋭い爪があり、そして何よりこの天を覆うような雷があるのだ。現時点で、移動を封じられたと手さほどの脅威は感じられない……。そう、現時点では。
「でもね、教えてあげる。世界に溢れる鮮やかな音!」
 しかし澪がさっと天に手を掲げる。先ほどの作戦通り、オーラの雷を負けじと作り出す。メロディや言葉を実体化させ自由に操る事ができる澪は、戦場のあらゆる音……それこそ怪しいオカリナに至るまで……操り、味方の防壁にする。
「そしてそして……!」
 ついでに作り出すのは氷魔法の障壁。戦場を動き回る、すべての猟兵たちにピンポイントで障壁を創造するのは骨が折れた。折れたが、それが澪の仕事であると思ってそれに専念する。突入する霧華たちへ。そして、蒸気装置を狙う仲間へと……。
「!」
 その時、けたたましい声がした。金属と金属がこすれ合うような、言葉にできぬ不快な音であった。
 自然のものとも人工の者とも判じかねるその声の主は、雷を放つ獣のようであった。獣が声をあげると同時に、再び雷が天から落ちる。背後の方でごちゃごちゃと動く人間たち。澪たちに向かって、雷は落ち……、
「ここは私に……任せてね!」
 その、音と光量に思わず身を竦ませる澪に、コルネリアがさっと手を掲げた。
「風は私の味方。電の攻撃も、逆にチャンスだわ」
 隣でコルネリアのドラゴンが羽ばたく。二人で力を合わせて、周囲に流れる風をコルネリアは掴む。掴みながら、魔法の力でそれを支配下に置く。糸をつむぐように風を手繰り寄せて、雷撃と超電磁場が発生させる風も巻き込んで、周囲に拡散していく。風の力によって仲間の背を押し、そして能力状況にも転化していくのだ。
「ありがとう」
「うん、いつでも任せてよ」
 繊細な魔法であり、動作としては地味だ。けれども澪のお礼に、コルネリアは嬉しそうに笑った。
「このままみんなで援護を続けて……正念場だね」
「うん。僕たちは焦らず、少しずつ削っていこう」
 章のまじめな声。そうして視線は、突入した者たちに向けられた……。


 仲間たちの援護を感じる。
 別にいらないのに。とリーヴァルディは心の中で思う。
 あんまり仲間とか、正義とか、そういうものに興味がないのだ。守ってくれた分だけ、彼女はだれかを守ることができない。助けてもらっても、助けてあげることができないから。
「……魔剣錬成」
 だから、返せないのは、辛い……訳ではないけれども。
 そんなことを一瞬思考の隅で考えて、それを破棄する。魔力を貯めた手のひらで地面に一瞬、触れて、雷を吸収する曲刀をリーヴァルディは作り出した。
 精霊と交信する耳飾りには今、雷の精霊を降霊している。それが第六感のようにリーヴァルディに囁いている。雷が来ると。
「……」
 曲刀を振るう。ふるうと同時に雷を吸収する刀は雷撃を吸収する。
「!」
 けたたましい、不愉快な金属音。獣の声だろうか。構わず、リーヴァルディはその敵に肉薄した。
「……どれだけ強化したところで雷を操る能力に変わりはない以上、対策もまた容易いものよ」
 雷を切り開き、前へと進む。敵がようやく視認できた。リーヴァルディがそのまま刀を構えた。一撃は覚悟した。まずはこの雷を吸収し、敵の爪の攻撃を受ければ返す……、
「させません!」
 しかし、爪の一撃は来なかった。リーヴァルディに向かって振り下ろされた曲刀は、霧華の二種の倶利伽羅の彫刻が施された刀がしっかりと受け止めていたからだ。オーラ防御で守られていたはずのその刀ですら、みしり、と、攻撃を弾き返せずに霧華の体が沈んでいる。
「後ろに三歩下がって!」
「わかりました!」
 同時に聞こえたのはクーナの声だ。下がる。下がると同時に霧華の鼻先を爪が通過する。それに合わせるようにクーナが霧華の肩から飛び降りて、手にしていた冷却のルーンを投げた。
「うわ。煙多……!」
 クーナは思わず声をあげた。冷やして煙がさらに出たのだ。勿論、想定内のことであったけれど。クーナはそのまま全身に雷撃体制を付与したオーラを纏うとやってやると言わんばかりにルーンを手にしている。
「!」
 金属音をあげて敵も下がった。突撃動作に霧華は目を細める。
「どれ程高速で動こうとも、激突しに来るのですからそこを狙えば無理に追いかけなくても大丈夫な筈です」
 かまわない。霧華は静かに獣の動きを見つめる。
「鬻ぐは不肖の殺人剣…。それでも、私は………」
 そうして獣が突入してくる。それと同時に霧華が刃を振るった。狙うはもちろん……その背中。怪しげな機械を付けられた場所であった。
「!」
「避けた……!」
「構いません、何度でも攻撃します!」
 霧華の言葉にクーナは頷く。そしてルーンを投げ続ける。些細な積み重ねでも、故障の原因くらいにはなるだろう、と思って。
 敵の方も、狙いを察したのであろう。至近距離からクーナに突撃しようとする。しかし、
「……それはもう視てるんだよ!」
 未来を見るクーナの目がその軌道を読んで、返すように銀の槍をその足にたたきつけた……、


 雷が降り注ぐ中を、二人もまた進んだ。
 耐えられるうちは耐えていく。そう決めた二人である。所見では幾分かの負傷を覚悟していたが、援護してくれる仲間がいてくれることはありがたかった。
 心の中で彼ら彼女らに感謝しながら、夜彦は光のように瞬く道を走る。獣まで数歩。すでに戦闘は始まっている。
「!」
 獣の咆哮。不快な金属と金属をこすり合わせたような音がする。離れたところからは雷を放ち、近づいた相手にはその爪を振るうのであろう。が、雷は仲間たちによってその威力を削がれつつあった。ならば……、
「うるせぇ……よ!」
 夜彦が走る。その先を行くように、倫太郎が腕を振るった。その手には何も握られていないように見える。しかし、見えない鎖が確かに。倫太郎の脇をすり抜けて、獣に激突した。
「!」
「当たった! 夜彦!」
「……はい」
 四肢を拘束する鎖は、今まさに爪を振るおうとした。その攻撃を抑え込む。すかさず夜彦は黒塗りの鞘に手をかけた。蒼と銀で清流が流れるさまを模して描かれた鞘を手に一閃する。
「!」
 二段構えで放たれた斬撃を、獣はすんでのところで避けた。ぐんっ、と獣を縛る鎖に負荷がかかる。縛られながらも、獣はかろうじて体をよじったのだ。
「……っ!」
「倫太郎!」
「大丈夫だ! くっそこの、大人しくしろ……!」
 振り払おうと獣がもがく。もがくと同時にまき散らされる雷は彼らも援護を受けてなお厳しいなんてものではなかった。
 雷にはじき返されそうになる倫太郎に、思わず夜彦が声をかける。何とかオーラを全身にいきわたらせて防御しながら、倫太郎は耐える。
「……こ、のっ。俺は夜彦の、邪魔をするつもりはねぇんだよ……!」
 爪に刃を突き立てる。誰かの攻撃を受けて、すでに傷がついてあったそれをさらになおも、ぐりぐりと、倫太郎は華焔刀で突き刺した。吹き飛ばされまいと、そのまま腕に力を込める。
「――奪え、嵐」
「決めちまえ!」
 霞瑞刀 [ 嵐 ]。蒼銀の刃が美しい霊刀をそう名付ける。怒り狂う獣に対して夜彦はもう一度、倫太郎の声援を聞きながら動きを封じる斬撃を放った。
「!」
 雷が放たれようが、その狙いが逸れることはない。ひとつ、腕の装置はすでに壊れている。故にその機動力を削ぐ意味も込め、足の爪を夜彦は狙った。
「戦いの場は広いので動き回れるのはお互い様、あとは速さ勝負。ならば……」
 負ける気はしませんと、そこまで言う前に。
 鎧をも砕く一撃は敵の左足にはまった期間を叩き潰し、同時に深々と敵の足に、そのまま流れるように足の付け根まで。斬り裂くのであった。


「このへん……やな!」
 とん! と。汐海は地を蹴った。その足元、すんでのところに雷が落ちる。
 一瞬の指向と感が入り混じった素早い動きで、間一髪、敵の雷を回避しながらも汐海はさらに肉薄した。
「いくら援護してくれるゆうたかて、援護の無駄遣いはあかんからな!」
 がさつで豪快。そう自分を評している汐海であるが、なるべく人に優しくありたいと思っている。それは、人の優しさを無駄にしないということでもあるだろう。故にある程度は任せながらも、ぎりぎりのところで自分も攻撃を回避して、そのまま敵へと肉薄する。
「背中の蒸気機関。汐海様の攻撃後に……突入します。素早い離脱をお願いします」
 キャバリアからリグノアの声がする。汐海が一瞬、瞬きした後で、
「体当たりか。あんたもまた豪快やなあ! ええで。一緒に行こか!」
 せいや! と汐海が大きな声で叫んで、刃渡り二尺四寸ほどの愛刀を構えなおす。
「この犬がどんなに迅かろうと、これは躱せんで! 何故なら──この斬撃は、すり抜けるからなぁッ!」
 躊躇うことなく刃を振り下ろした。狙いは足や爪などではない。その背に負う、巨大な蒸気機関であった。
「海神流、壱ノ型─海鳴リッ!」
 硬い何かを斬る手ごたえ。すかさず汐海は後退した。その直後、
「Schlagen Sie mit den Flügeln.名の如く、白き軌跡を」
 牽制に射撃をばらまきながらも、リグノアは飛行の勢いそのままに敵の背中に向かって突入した。
「!!」
 けたたましい方向がする。金切り音は周囲に雷を伴ってまき散らされる。強力な電磁波が、獣のもとに集おうとする人間を吹き飛ばす。
「やったか!?」
 汐海は思わず声をあげた。吹き飛ばされながらも、きれいに地面に着地した。一緒にいたリグノアもまた、キャバリエ越しに吹き飛ばされていて。即座に体勢を立て直そうとしている。
「!」
「……させん」
 獣は、傷だらけの体で飛ぼうとしていた。翼には穴が開いていたが、それでも飛ぼうとしていた。逃走目的ではなく、上空から攻撃を行うつもりだと……とっさに判断したのはシキであった。
「……」
 無言で、ハンドガンを構える。
「生憎と、俺は派手な攻撃は持ち合わせていない」
 故に。その突進のスピード。爪の一振り。あらゆる動きを計算に入れ、獣の鳥が飛びあがる前に人狼の跳躍力でシキはさらにその上を行った。
 上空から見ると、敵の背中の蒸気機関は壊滅寸前であった。……だが、まだ足りない。ならば攻撃を加えるか。そう考えて、シキがちらりと地上に目をやって……。そして、目標を変更した。
「……」
 言葉はない。ただ傭兵として、やるべきことをやる。シキが狙ったのは、獣の四つ足。そのうちの、未破壊だった二か所の爪に装着された蒸気機関だった。前足と後ろ足。それぞれ一本ずつ。吹き出す蒸気となる水分。ほんのそのわずかな隙間を狙い、氷の魔力が込められた弾丸を叩き込む。
「そこだ……!」
 爪に装着してあった機械がすべて破壊される。その隙を歌は見逃さなかった。声はシキのものではない。ウタのものである。
 炎が走る。ウタは己の地獄の炎を、炎の翼として具現化させていた。もとは金翅鳥であった翼はウタに沿い、空へと彼を連れていく。
「今なら届く! 届かないなら……何度でもやってやる!」
 刃に焔摩天の梵字が描かれた巨大剣を振りかぶった。最後の抵抗とばかりに雷撃が放たれる。それを空中で回避しながら、空を赤く咲いて唄は敵の背中へと急降下する。
 構わず、雷が何度も落ちる。しかしながらそれは仲間の援護により断たれた。それがこの状況で歌に認識できたかどうかはわからないが、
「何でも燃やす……。何度だってやってやる! 効かないなら効くまで。何度でも何度でも!」
 歌はそのつもりであった。くじけるつもりなんてなかった。……けれども、それが必要ないことももうわかっていた。何度だって。何度も何度も。仲間たちが同じように戦っていた。だから、
「だから……俺達の勝ちだ!」
 高らかに宣言して、歌は炎の剣を獣の背中に深々と突き刺した。
 度重なる攻撃を受けて、そうしてついに上記のそれはすさまじい量の煙を吹きだし……そして、沈黙したのであった。

●●●
 咆哮があった。
 傷だらけで、背に追うた機械も、両手両足につけた爪もはがされた。
 それでも……その獣は最後までたった。戦おうとしたのか、逃げようとしたのか、あるいはその両方だったのか……、
「ここまで来て……逃がすかよ!」
 すかさず倫太郎が反応した。見えない鎖で敵を一瞬にして縛り上げる。それと息を合わせるかのように、夜彦の愛刀が走った。
「ここまでです。これ以上は、苦しむだけ……。それは、私たちも望みません」
 一刀は、確かに首を落とさんとするその一撃。
「!」
 しかしながら、それを何とか獣はこらえた。獣は吠えた。不快な音を立て、まだ負けられないとでもいうように。
「……」
 霧華はその姿を見る。静かに。静かに。そして一瞬で理解する。愛刀の上に手を置く。獣が走る。……走り、霧華に激突する。その瞬間、
「私も……負けるわけには、行きませんから」
 納刀されていた刀が、目にもとまらぬ速さで抜かれ、そして深々と獣の体を引き裂いた。獣がそう気づいた時、既に刀は霧華の鞘に納まっていた。
 獣が吠える。跳躍して霧華に襲い掛かろうとしたその矢先、
「Ja.問題なく破壊致します」
 再びリグノアが乗ったキャバリアが獣に体当たりをした。先ほどの一撃に比べて速度が落ちていることはリグノアだって理解していたが、敵もまた数多の攻撃を受け、それをよけきれないことは計算ずくであった。
 突撃され、避けることなくそれを受けてたたらを踏む獣。
「弱ってる! だったら、今……!」
 雷は流れ続けている。それでも今だ、とコルネリアは思った。
 ドラゴンを風と共に飛ばす。それが獣のもとに言った、その一瞬、
「!」
 それは槍に転じた。槍に転じた、と思った瞬間、槍は獣の口に突っ込んだ。喉の奥から一気に上の顎辺りまで、その刃が貫通している。
「!」
 獣が攻撃に転じようとするが……。遅い。即座に槍は竜へと戻り、その場を離脱する。振るわれた爪も、
「危ない! すぐ逃げて……!」
 すかさずコルネリア自身が風の魔法により叩き落した。そして、
 入れ替わるようにウタが再び、炎の剣を持って突っ込んだ。
「もう……休んでくれ! 頼むから!」
 痛々しくて、見ていられなかった。勿論、容赦をするつもりなんてない。ウタの攻撃に、獣は炎に包まれた体をもたげる。それでも、やはりそれは立とうとしていた。
「行かせないよ。……鴉君」
 再度、章が突撃を命じる。……最初とは違う。その翼への攻撃に、獣は苦しげに唸るような声をあげた。
「ごめんね。生き物は好きだけど……助けてはあげられないんだ」
 ちっとも申し訳なくなさそうに、にっこりと章は笑った。鴉君たちももちろん、容赦はしない。最初のお返し、とばかりに全力で獣をついばむ。
「そういうこと。残念だけど……その動き、封じさせてもらうよ」
 クーナがぴょんと躍る。合わせるように、その足に槍を突き立てた。動きを封じる。その動きに合わせるように、弾丸が走った。
 シキが静かに、獣を見据えている。ハンドガンから射出される弾丸は、変わらず氷の魔力を伴っていた。動きを鈍らせるようなその動きが気に障ったのか、獣が吠える。
「させない……!」
 しかしながら澪はそれを、止める。防壁をシキの前に展開し、たとえ破壊されても即座に修復して壁を追加していった。
「……助かる。今も、先ほども」
「ううん、どういたしまして……!」
 短いシキの言葉に、澪が笑う。そうしてその声すらもまた澪は攻撃に転じて、攻撃の援護も行う。
「少しでもダメージを通したい、ところ……っ」
 あと少し。重ねれば必ず倒れる。
「そこまでや! 逃げる隙なんて与えんで! 往生……せんか!」
 澪の言葉を引き継ぐように、汐海が大きな声をあげてさらに踏み込んだ。肩口から、同へ。すかさず全力で愛刀を振り下ろす。
 傷だらけの獣に、さらに傷がつく。
 すさまじい雷に、リーヴァルディは目を細める。最後のあがきであることは理解していた。故に、
「……我が手に宿れ、大地の理。その刃にて、我に降り注ぐ災いの一切を打ち払え……!」
 彼女も、全力で行く。リーヴァルディの曲刀が、降り注ぐ雷を吸収し、巻き込んで、容赦なくその背の中に沈んだ。
 咆哮。最後に。獣は一つ、やはり不愉快な音を立てて鳴いた。
 長く長く……、細く、長く。
 そうしてそれは徐々に消えていき……。いつか途切れた。
 引き継ぐように、ウタが鎮魂歌を奏でたが、
 以降。その戦場に金切り音が響くことはなかったと、いう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年09月06日


挿絵イラスト