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銀河帝国攻略戦㉑~過去よりの黒騎士

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦 #黒騎士アンヘル

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●艦隊の残骸の中で
 今や宙域に『アゴニーフェイス』艦隊の姿はなく、『クライングシェル』艦隊も破られるのは時間の問題だった。そうなればかの黒騎士アンヘルも、全ての配下を失ったことになるだろう。
 しかし……アンヘルは討ち果たされるつもりなど毛頭なかった。『解放軍』のいかなる艦船も、いかなる宇宙戦闘機も、たった1人の黒騎士を捕らえるようには作られておらぬ。彼らは躍起になるやもしれぬが、破壊された艦艇の中に身を潜めれば、何人たりとも捕らえることはできぬ。

 優先すべきは皇帝と諦めて去ってゆく『解放軍』の後ろ姿を、アンヘルは静かに見送っていた。だが……この黒騎士を諦めるとは愚かな奴らだと、彼は思っていたかもしれない。
 何故なら彼は銀河帝国『二大巨頭』のひとり。最強のフォースナイトにして『過去』を操るユーベルコードの使い手。たとえ銀河皇帝が失われたとしても、『オブリビオン・フォーミュラ』を受け継ぐのに相応しい力の持ち主である……だから彼は戦いつづけるのだ。
 幾度も猟兵たちに滅ぼされ、その体から全ての過去が抜け落ちるまで。

●グリモアベースにて
「此度の銀河帝国との戦いも、ようやく皇帝の首が見えかけて参った。皆々様に感謝申し上げるぞえ」
 そう微笑むヤクモ・カンナビ(スペースノイドのサイキッカー・f00100)ではあったが、彼女は皇帝だけを滅ぼせば済むわけではない可能性を予知していた。
 それは……仮にこの戦場から黒騎士アンヘルを取り逃がしたならば、彼が銀河帝国の残党やスペースシップワールド内の不満分子らを集めて新たな勢力を作るかもしれない明日だ。銀河皇帝との決戦は最重要……しかし彼を野放しにすれば、スペースシップワールドに平和は訪れない。それはこの世界に生まれたヤクモにとって、決して承服しがたい未来であったのかもしれない。
「そこで願わくば皆々様には、この黒騎士を討伐していただきたいのじゃ。黒騎士はその『過去を操る力』にて、幾度も『骸の海』から蘇るであろ。然し……猟兵の力で滅ぼされ続ければ、さしもの彼奴とて復活の力を失う」
 そこで……黒騎士の復活ポイントと推定された場所で待ち伏せる。だとしても強力な黒騎士は、こちらから攻撃を仕掛ける前に先制攻撃を仕掛けてくるに違いないのだ。
「彼奴の攻撃を十分にいなす術を考えておかねば、一撃を当てる事すら叶わぬやもしれぬ……」
 そうヤクモは唸ってみせるが、しかし猟兵たちであればそれでも何とかしてくれるであろうと、彼女は同時に信頼してもいる。
 だから最後には猟兵たちに、こんな言葉をかけるのだ。
「彼奴が如何に過去を重ねようとも、今と未来に生きる皆々様の力の方が素晴らしいのじゃと、彼奴に見せつけて賜れ」


あっと。
 あっと。でございます。
 本シナリオは、「戦争シナリオ」です。1フラグメントで完結し、『銀河帝国攻略戦』の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
 なお、本シナリオの対応戦場は㉑となります。

 黒騎士は皆様が攻撃する前に、皆様が使用した能力値に対応するユーベルコードを使用してきます。これに対抗する方法をプレイングに書かない限り、必ず「🔵🔴🔴苦戦」か「🔴🔴🔴失敗」になりますので、ご注意ください!
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第1章 ボス戦 『黒騎士アンヘル』

POW   :    消えざる過去の刃
【虚空から現れる『空間に刻まれた斬撃』】が命中した対象を切断する。
SPD   :    過去喰らいの三呪剣
【過去の鍛錬の経験を封じる白の呪剣】【過去の戦闘の経験を封じる黒の呪剣】【戦うに至った過去を封じる灰の呪剣】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    記憶されし傷痕
【対象の肉体】から【過去に刻まれた傷跡や病痕】を放ち、【一度に再現され肉体を蝕む出血や疾病】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

スピレイル・ナトゥア
「過去を操る能力……正直うらやましいです。ですが、実際にこうして食らう側になってみると、これはこたえますね」
仲間をかばったかなんかして刺さった呪剣に、顔をしかめます
色々な世界を旅できることが楽しくて、オブリビオンの脅威に晒されている世界の旅の景色を少しでも綺麗なものにしたくて始めた戦いですが、そんな理由ももう思い出せません
もうすぐユーベルコードも使えなくなってしまうでしょう

だけど、過去を忘れてしまっても猟兵って意外とお人好しなんですよ
それに、目の前で傷ついているひとたちを放っておけるほどのひとでなしでもないつもりです
鍛錬や戦闘の経験など関係ないキマイラの遺伝子の螺旋に刻まれたこの技を放ちます!


塩崎・曲人
【街角】で参加・連携
待ち伏せしてるのに先制されるって
どんだけ技量の差が在んだか
「だが、最後は数で押し切らせてもらうぜ!」

※敵UC対策
三本の呪剣のうち二本は食らっていいと【覚悟】し、灰の剣を喰らわない事だけに集中する
待ち伏せる段階から頭を空っぽにして「灰の剣を撃ち落とす」事だけをイメージしておく
「オレはテメェの敵だ。それさえ忘れなきゃ、後は迷わねぇんだよ!」

鍛錬も経験もなくしたら、貧民街でガキの喧嘩してた頃に逆戻りだが…
眼の前の敵を殴るだけなら【喧嘩殺法】で十分だぜ!
強敵相手に持久戦が出来るとも思えん
ひたすら攻撃速度を上げて、ラッシュで押し切ることに集中する

あ、仲間の援護や退避要請は素直に従うぜ


メンカル・プルモーサ
【街角】で参加。
…過去の傷や病気…あまり大きな病気や怪我はした事無いけど… 最初からそうなると判るなら対処可能…
怪我した事ある場所には予め止血等の処置をして、病気には医療術式で鎮痛作用の入った特効薬を精製、服用。これで今ぐらいなら戦える…
戦闘ではまずは【空より降りたる静謐なる魔剣】を使用。軌道を操作して呪剣や刻まれた斬撃を撃ち落とす事を優先する…
その間に相手のUCを解析…【崩壊せし邪悪なる符号】での無効化の成功率を高めて相殺に掛かる…
騎士の動きが鈍ったら隙を見て【尽きる事無き暴食の大火】を一つにまとめてぶつける…回避されても床から騎士に向けて「延焼」させてセカンドアタック…これでどうだ…


須藤・莉亜
【街角】の皆と参加。
「よっしゃ、カチコミだー。」
強い敵さんとの戦いは心が躍るよねぇ。

大鎌25本に複製して、その全てで相手の攻撃を迎撃してみる。優先は灰の剣かな。
命懸けの戦いが楽しいって気づいた時のこと消されたら、たぶん動きが鈍っちゃうしねぇ。他は特に問題ないかな?訓練とかまともにしたことないし。

その後は、攻撃用に20本、残りを防御用にして自身の周囲に展開。 攻撃用の大鎌で敵さんの全方位から攻撃していこう。
狙いは手足、出来れば首。

味方の攻撃に合わせて、大鎌で追撃を入れて相手の足止めも狙っていく。

もし隙があれば【吸血】したいとこだね。
「良いね、楽しくなってきた。アンヘルさんはどうかな?」


ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
【街角】で参加

保身のために主を見捨てる騎士ってのも笑える話だけど、厄介事は先に潰しておく主義なんでね。悪いけど、過去に帰ってもらうよ。

と軽く挑発したら【再生逆撃】を使って、真正面から突っ込んでぶん殴りに行くよ。
予兆も無しにどこにでも斬撃が出るなら防ぎようもないし、だったら最短距離を突っ切るのが一番攻撃を受ける回数が少ない。
食らって耐える分にはただの斬撃と同じだしね。
知ってるかい?鋭い斬撃による奇麗な切断面は、荒い切断面よりも治りやすいんだ。
その斬撃は過去に用意したものだろ?再生力で耐える相手の為の、荒い剣筋の斬撃はちゃんと用意したかい?
用意が無いってんなら、ちょっとばかり痛い目を見てもらうよ。


セルマ・エンフィールド
【街角】で参加

強力な敵です、堅実にいきましょう。

【冬の尖兵】で合体したⅤを5体召喚し、3体は私の前で呪剣への盾を、1体は氷の剣を振るい攻撃が集中した兵士へ届く剣を打ち払うようフォローを、最後の1体は間を縫ってきた呪剣や、不測の事態に備えて私のそばで待機させます。
もし受け切れないようであれば黒の呪剣を最優先に防ぎます。

この場にいるのは私1人ではありませんし、攻撃に移るのは他の人が攻撃を捌き、攻撃に移るのと同じタイミングで。残っている兵士の数字を二等分し、一体は私の傍で護衛、一体は攻撃を。

攻撃する氷の兵士の役目は隙を作らせること、その隙に私も他の猟兵の援護射撃を行い、隙を広げることを狙います。


アーサー・ツヴァイク
【街角】で参加だ!

野郎…やる事がシンプルな分、対策が厳しいな…
ここはヒーローらしく、真っ向から挑むぜ!

ライドランに【騎乗】して接近。真正面…だと他の猟兵の射線に被りそうだからちょい側面から行くぜ! 斬撃対策は…後ろからの攻撃に備えてバスターホーンを背負ってガード。前方・側面からの斬撃は【オーラ防御】と【残像】を駆使して子供騙し程度のことはしておく。それでも飛んでくる斬撃は【激痛耐性】で耐える!
ライドランに対して斬撃してくる場合は、槍モードに変形させて【槍投げ】だ。上手く接近出来た場合もデコイで投げとく!
ライドランを投げた後は【シャイニングブレイク】を発動だ!

俺達は…過去に打ち勝ち、未来を掴む!



 息を潜める猟兵たちの目の前で、過去が影の中から滲み出はじめていた。
 禍々しき黒。質量を持った闇。それがこの世に有り得べからざる存在であることを、本能的に感じ取らなかった者がいたであろうか?
「野郎……やる事がシンプルなぶん、対策が厳しいな……」
 アーサー・ツヴァイク(ドーンブレイカー・f03446)――今は改造ヒーロー『ドーンブレイカー』だ――の額に冷や汗が浮かんだ。
 それは猟兵たちの敵であり、現在と未来の敵たるオブリビオンだ。だが……須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)は知っている。今から彼に対峙するのは、心躍る、力強く頼もしい仲間たちであるのだと。
「よっしゃ、カチコミだー」
 莉亜をはじめとした猟兵たちが駆け出していった。ただひとつ、その先の闇を討ち滅ぼさんと。
 だが、闇もまた力を増してゆく。そして……その強大なるサイキックを身の周囲に集め、幾本の白黒灰の剣を練成し……投げる!

 まずはその中の黒い1本が、踊りかかってきた塩崎・曲人(正義の在り処・f00257)の右胸を貫いていた。
「待ち伏せしてるのに先制されるって、一体どんだけ技量差があるってんだ!?」
 悪態を吐いた後、他のオブリビオンどもは……と言いかけようとして、その先の言葉を失っていたことに曲人は気がついた。
 こいつはヤバい……次に取るべき行動を考えようとして、今度はそれも思いつかないことを曲人は自覚する。よく見ればさらに別の白い呪剣に、左脇腹を斬りつけられていた……仲間たちは? そんな心配をする余裕など、今の曲人にはひとかけらとてない。
 そんな曲人を嘲笑うかのように、剣たちは後方へと駆け抜けていった。まずは25本もの大鎌を召喚し、敵の剣をことごとく撃ち落とさんと構えている莉亜に。それからセルマ・エンフィールド(終わらぬ冬・f06556)の前で我が身を主にささげる、氷の剣を構えた氷の兵士、『冬の尖兵』らへと!
 ここが宇宙空間に浮かぶ残骸船でなかったとすれば、刃と刃が奏であう、激しい剣戟が聞こえただろう。四方八方から不規則な軌道を描いて飛来した鎌が、次々に敵の刃へと叩きつけられてゆく。あるいは自ら剣の前に身を投げ出した氷の兵士らが、自らに刺さった剣を抱えて無力化せんとする。
 だが……それらも時間稼ぎに過ぎないに違いなかった。剣たちが当たれば鎌たちすら自らが為すべき仕事を忘れ、氷の兵士らも自らの胴体に刻まれた数字――『Ⅴ』の意味を忘れたかのように力を失ってゆく。だから……ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(蛮族キマイラ・f07620)は仲間たちの守りが破られる前に、真正面から敵へと飛び込んでゆくのだ。軌道は真っ直ぐ一直線。敵の攻撃が素早く防ぎようがないものであるのなら、策を弄することなど捨てて、ただ最短距離・最短時間で敵をぶん殴ってやることこそが最善の策!
「やあキミ、皇帝のところに戻らずに、こんな所で油を売ってるのかい? 保身のために主を見捨てる騎士ってのも笑える話だけど……厄介事は先に潰しておく主義なんでね」
 悪いけど過去に帰ってもらうよ、と挑発の言葉を浴びせつつ、ただ力任せにアンヘルへと拳を振り上げる。そんなペトの拳も、全身も、黒騎士のサイキックにより空間そのものに『刻まれていた』斬撃の記憶が再現されたことで無数の裂傷に覆われていた……だが、それで敵が『倒した』と思ってくれればしめたもの、彼女の怪物じみた肉体にとって、剣による斬撃など所詮は『擦り傷』だ。
「知ってるかい? 鋭い斬撃による奇麗な切断面は、荒い切断面よりも『治りやすい』んだ」
 だから引き千切るような傷を与えられなかったのが、ペトとの戦いにおけるアンヘルの敗因だった。とはいえたった数度ほど殴っただけで斃されるほど、アンヘルとて弱い敵じゃない。
 だがそこで……畳み掛けるかのようにドーンブレイカー!
「いけ、『ライドラン』! 俺たちのヒーロー魂をみせつけてやれ!」
 ヒーローは当然真っ向から勝負だ! とはいえ、ただ闇雲に突撃するだけのものを勇気とは言わない……一角獣の角の大盾を背中に背負って後ろからの攻撃に備え、敵が斬撃を生み出すより素早く大型バイク『ライドラン』を駆る! 真の勇気とは、そういった準備を全て整えた後で、どうしても完璧にはいかないのを恐れずに行動することだぁぁぁぁ!!
 すると大方の予想通りアンヘルは、彼から機動力を奪うべく『ライドラン』への攻撃を目論んできた。ならば……こいつはくれてやろう。『ライドラン』を槍モードへと変形させて、思いっきり敵に向けてぶん投げてやるドーンブレイカー。
 これでドーンブレイカーも動けない。が、アンヘルも槍を避けたぶんだけ追い詰められている……一瞬の危うい均衡が辺りを支配する。が……それを一瞬で崩しうる存在が戦場の片隅にいることを、黒騎士は見逃しはしなかった。
 激しい戦いが行なわれている戦場の片隅で、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)が何やら此方を分析していることに、彼は目敏く勘付いている……さしもの『二大巨頭』といえども具体的なことまでは判らぬが、おそらくは此方への対抗策を練っているのであろう。ならば……いまだ彼らに見せたことのない技を用いて、ただ一度の攻撃にて息の根を止めてみせようぞ!
 その瞬間、メンカルの全身の随所から血が噴き出した。基本は研究者肌な彼女のこと、あまり大きな怪我などはしたことがない……だが、彼女とて気付かなかった日常生活上の小さな傷の数々が、一度に彼女に襲いかかったら? それは……たった1つの大怪我にも勝る怪我になるはずだ。
 ……でも。
「……最初からそうなると解っていれば対処可能……」
 そんなこともあろうかと、彼女は鎮痛剤を服用済みだった。どれほどの傷が襲ってこようとも、痛みさえ取り除いてしまえばそれ自体が彼女の分析対象だ。
 ……ビンゴ。『過去』が現在に侵食しているポイントが視えた。
「邪なる力よ、解れ、壊れよ」
 ならば彼女はその術理を解析し、カウンターハッキングを仕掛けるだけだ。
「汝は雲散、汝は霧消。魔女が望むは乱れ散じて潰えし理」
 傷が消えた。あとは反撃に移るのみ。だが折しもその時敵の呪剣は、莉亜の鎌の大半を、そしてセルマの冬の尖兵たちを砕いたところ! そして……曲人を襲っていた最後の呪剣が、今まさにその標的の体へと突き立てられんとす……。

 その時、咄嗟にスピレイル・ナトゥア(蒼色の螺旋の巫女姫・f06014)の体は動いていた。
 もしも過去を操ることができたなら、あの記憶も忘れてしまえるのだろうか?
 つい先ほどまではスピレイル)は、それは羨ましいことだとばかり思っていた。
 けれども実際に曲人を庇い、敵の呪剣を食らってみれば、そんなのは何も知らぬがゆえの夢物語であるのだと理解した。
 痛みに思わず顔をしかめる。痛むのは体ではなく心。必死に忘れぬよう何度も頭に浮かべてみても、いろんな世界を巡って知った素敵な景色も、それらを少しでももっと綺麗なものにしようと願ったことも、ぽろぽろと記憶の中から零れ落ちてしまう。
 哀れな彼女へと向けて、アンヘルはさらに呪剣を重ねる。
 そのために自分が何を目指したのかも、どんな敵と戦ってきたのかも、もはや、すっかり思い出せなくなってしまった。そして、それらを『忘れた』ことさえ忘れてしまえば……彼女はきっと、ユーベルコードも使えなくなってしまうのだろう。
 ただ呆然とする彼女。彼女を完全に無力化したことを確認し、黒騎士は改めて曲人へと呪剣を飛ばさんとす……。

 だがその直前……スピレイルは白銀の巨大鷲へと姿を変えた。それは、封じられたはずのユーベルコード……アンヘルは剣で身を庇わんと欲するが、咄嗟の出来事を前には間に合わぬ!
 大鷲の嘴が呪剣を砕き、黒騎士の鎧をも締めつけはじめた。
『目の前で傷つけられかけている人をほうってはおけない』
 どれほど戦う理由を奪っても、それが今新たに理由に変わるのだ。そして、鍛錬も経験もなくなったって……彼女の原点――キマイラの遺伝子が、戦いの術を知っている。
 ……そうだ。戦うための原点さえ残っていればそれでいい! 曲人の拳もまた強く、強く握られた。
「オレはテメェの敵だ。それさえ忘れなきゃ、後は迷わねぇんだよ!」
 貧民街で喧嘩ばかりしていた頃の、ただ闇雲に殴るだけのガキの戦い方だって十分だ。意志を拳に乗せて敵にぶつける、それ以上のことを考えたって仕方ないじゃねぇか。戦術、連携――そんなのは出来る奴に任せりゃいい。兎に角、殴る。殴る! 殴る!! 殴る!!!
 その血沸き肉踊る小刻みなビートは、莉亜の心もまた楽しませてくれる。命懸けの戦いがここにある。そこに堪えがたい誘惑を感じたからこそ、莉亜は戦いの道を選んだはずだ。
 敵は強敵。じゃあ、必要なのはその感情だけだ。最初、なるべく全てを防御しようと思ったのは、『有利さ』だけで言うのなら強ち間違いではなかったのかもしれない……だけど今ならはっきりと言える。灰の呪剣さえ食らわなければ、残りの過去などくれてやる。手足をもがせろ。できれば首。そして……僕に君の血を寄越せ。
「良いね、楽しくなってきた。アンヘルさんはどうかな?」
 黒騎士は、答えを返さなかった。代わりに返したのは血塗られた剣戟。どうやら彼は、随分と焦っているらしい……冬の尖兵を3体も潰されたのが痛手でないとセルマは言わないが、彼らは十分にそのための時間を稼いでくれた。
 手許にはまだ、そんな彼らをを支援していた1体と、万が一のために残しておいた予備の1体がいる。彼らを防御と攻撃に振り分ける手間が省けたのはむしろ好都合なほどだ。
 1体が氷の剣をアンヘルへと振るった。彼はそれを容易く自らの剣で受ける……その間にも冬の尖兵らを破壊した呪剣らはセルマを襲うが、彼女の場合、今までの戦闘経験さえ残っていれば、動機など忘れても淡々と任務を行なえるタイプだ。
 だから護衛の1体を使って黒の呪剣だけから身を守りつつ、ただ攻撃の1体に行動を命じた。アンヘルは自らの剣で氷剣を受ける……その瞬間に生まれた隙は、きっと頼もしい仲間が突いてくれるに違いない。
「Select……FINAL ACTION!!」
 だからドーンブレイカーのサンストーンは輝いて、その一撃を黒騎士へと放つ。
 闇には光を。悪には正義を。そして俺たちは……過去に打ち勝ち、未来を掴む!
 ドーンブレイカーの必殺キック、シャイニングブレイクのまばゆい光は、黒騎士を『骸の海』へと還していった……。

 ……少なくとも、今は。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年02月17日


挿絵イラスト