アルカディア争奪戦③〜熾火は赫く昌盛・モレンド
●明滅鉱脈ゼルフ
屍人帝国『ジェード王国』は、その浮遊大陸の重要性を正しく理解していた。
明滅鉱脈ゼルフ。
そこは多数の天使核を擁する浮遊大陸であった。
天使核は大空の世界、ブルーアルカディアにおいて無くてはならぬものである。
浮遊大陸を空に浮かばせ、雲海に沈むことを防いでいるのも天使核であるのならば、勇士達が駆る飛空艇もまた天使核を動力としている。
人々が生きる上で必要不可欠なもの。
それが天使核。
従来であれば、天使核は魔獣やオブリビオンの心臓から取り出すことができる。けれど、ここ明滅鉱脈ゼルフは違う。
鉱脈から発掘されるのだ。
その特異性は言うに及ばず。
「さあ、どんどん運び出しなさい。この浮遊大陸が沈むその時まで、一つ残らず」
『アシェラリア・シェイド』は屍人帝国の幹部級オブリビオンの影である。
強力なオブリビオンであるが、影たる彼女は末端でしかない。
手にした腕輪でもって情報を共有し、明滅鉱脈ゼルフの鉱脈、その坑道のあちこちに点在している。
「やはり天使核そのものが、この浮遊大陸の浮力を維持している。ふっ、天使核を失う度に鉱脈の明滅が弱くなっている。このまま輝きを失うのならば……」
そのときこそが明滅鉱脈ゼルフの終焉である。
だが、そんなことなど『アシェラリア・シェイド』には関係ない。
彼女たちにとって重要なことは、ここに数多の天使核があり、その力を持って屍人帝国『ジェード王国』はアルカディアの玉座に至るということだけだ。
「すべて奪い尽くしなさい。一欠片とて残すことは許さない」
『アシェラリア・シェイド』は、この浮遊大陸の住人たちを蹴り飛ばす。
叱咤するようであったが、それは迫害そのもの。
彼らが滅びることなど彼女にとっては虫を踏み潰すのと同義。
「さあ、坑道の奥へと案内なさい。まだ奥に隠しているのでしょう」
「だ、だめだ……! これ以上天使核を運び出したら、この大陸の浮力を維持できない!」
「だから?」
住人たちは青ざめる。
抵抗すれば死。けれど、抵抗しなくても死。
その悲壮なる現状に彼らはどうすることもできない。『アシェラリア・シェイド』は彼らをせっつかせるように鉱脈、その坑道の奥へと足を踏み入れる――。
●アルカディア争奪戦
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。『明滅鉱脈ゼルフ』という浮遊大陸が今まさに滅亡の危機にひんしています」
ナイアルテの言葉に猟兵たちは頷く。
6つの屍人帝国が動き出し、アルカディアの玉座を獲得するために先端を開いた。
幸いにして勇士達の『飛空艇艦隊』と共同作戦をしいているからこそ、屍人帝国との戦いの前線は押し切られることなく留められている。
「『明滅鉱脈ゼルフ』は、魔獣やオブリビオンの心臓から採取することのできる天使核を鉱脈から発掘することのできる珍しい浮遊大陸です。この浮遊大陸に目をつけた『ジェード王国』のオブリビオンによって、次々と天使核が運び出されようとしているのです」
天使核は浮遊大陸の浮力を維持するために必要なものである。
これを失えば、浮遊大陸は雲海に沈むしかないのだ。
だからこそ、『明滅鉱脈ゼルフ』は危機にひんしている。
次々と運び出される天使核によってゼルフの鉱脈は徐々に輝きを失っている。
「猶予はそう長くありません。多数の天使核が眠る『天使核坑道』に『ジェード王国』の強力なオブリビオン『アシェラリア・シェイド』が踏み込んでいるのです。彼女に寄ってすべての天使核が奪われてしまえば、浮遊大陸が雲海に沈むだけでなく、『ジェード王国』の脅威を増大させてしまうことでしょう」
だからこそ、これを阻まなければならない。
天使核をこれ以上奪わせないためには、坑道に踏み込み、『アシェラリア・シェイド』を打倒しなければならないのだ。
「幸い、坑道の地形を『アシェラリア・シェイド』は把握していません。ですが、彼女はオリジナルの幹部級オブリビオンの影。坑道のいくつかの入り口から複数入り込んでいるのです」
厄介なことである。
ただでさえ強力なオブリビオン。
それが分裂して影となって坑道内に存在しているというのだ。だが、坑道の地形をうまく利用すれば、『アシェラリア・シェイド』と言えど、体勢を整えることは難しいだろう。
「坑道内に直接転移させることはできます。坑道内部は天使核の見せる明滅によって視界は確保されていますが、一定周期で暗闇に落ちるのです。入り組んだ坑道の地形や、その特性を活かして戦うのならば、如何に強力なオブリビオンと言えど打倒は可能でしょう」
ナイアルテは小さく頷く。
強力なオブリビオンが複数存在する坑道は危険極まりない。だが、このまま手をこまねいていれば、住民たちの生命が危険に晒される。
それは猟兵としても望むところではないだろう。
屍人帝国『ジェード王国』。
その機先を制するための戦いが今始まろうとしていた――。
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『アルカディア争奪戦』の戦争シナリオとなります。
屍人帝国『ジェード王国』によって『明滅鉱脈ゼルフ』は、その天使核坑道に存在する天使核を奪われようとしています。
奪われる度にゼルフの鉱脈は徐々に輝きを失っていきます。
その輝きが失われた時、どうなるかは言うまでもないでしょう。
ゼルフの住民たちはオブリビオンによって迫害されています。彼らを救うためのシナリオとなっています。
坑道内部は明滅鉱脈の名の通り、一定周期で明暗を繰り返し、曲がりくねった内部構造をしています。
すでに内部には『アシェラリア・シェイド』と呼ばれる強力なオブリビオンの影が複数入り込んでいます。これをすべて撃破しなければ、次々と天使核は奪われ続けてしまうでしょう。
プレイングボーナス……坑道の地形を利用して戦う。
それでは『アルカディア争奪戦』、屍人帝国の野望を打ち砕くべく雲海を進む皆さんの冒険と戦いの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 ボス戦
『アシェラリア・シェイド』
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POW : 叡智の腕輪
自身の【腕輪】が捕食した対象のユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、[腕輪]から何度でも発動できる。
SPD : 帝国式格闘術
【天使核を暴走させる】事で【生命消費モード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : オール・フォー・オリジナル
他者からの命令を承諾すると【身を守る漆黒のオーラ】が出現し、命令の完遂か24時間後まで全技能が「100レベル」になる。
イラスト:里麻りも子
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠鏡繰・くるる」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
バルタン・ノーヴェ
POW アドリブ連携歓迎!
ハーイ、調子いい?(暗闇から顔を出すメイド)
悪くとも倒させてもらいマスヨ、オブリビオン!
この綺麗な島の天使核は奪わせマセーン!
ファルシオンで斬りかかり、白兵戦を行いマース!
叡智の腕輪がユーベルコードをコピーするというのなら、ユーベルコードを使用しない攻撃で攻め立てれば良いのデース!
……と、思わせておいて。
格闘術の有利なインファイトをするべく踏み込んできた所へ、カウンターUC起動!
「六式武装展開、鉄の番!」
零距離から叩き込む換装式チェインハンマーの一撃デース!
そのまま壁ドン!
HAHAHA、切り札は隠しておくものであります!
『明滅鉱脈ゼルフ』は、ブルーアルカディアにおいて鉱脈として天使核を産出することのできる浮遊大陸であった。
当然、その大陸を空に浮かばせている力は、その鉱脈に在る天使核である。
今まさにその光が明滅と共に弱まっている。
何故か、などと問う必要はない。
坑道の奥から屍人帝国『ジェード王国』によって迫害の如き仕打ちを受けた人々が運び出しているからだ。
「くそ……! このままじゃ俺達は浮遊大陸ごと……!」
彼らの懸念は正しい。
徐々に弱まっていっている鉱脈の明滅。
それが完全に潰えた時、この浮遊大陸は雲海に沈む。
「無駄口を叩いていてはいけませんよ。さっさと運び出してくださいね」
鉱脈で働く人々を蹴り飛ばし、オブリビオン『アシェラリア・シェイド』が言う。彼女は悶絶する住人を尻目に坑道の中へと入っていく。
彼女はこの鉱脈に眠る天使核すべてを根こそぎ奪っていくつもりなのだ。
この『アルカディア争奪戦』において天使核の保有数は大きな意味を持つ。
6つの屍人帝国が相争うのであればこそ、力の源たる天使核は多ければ多い方がいい。
「すべての天使核を持ち出すにはどれくらい時間が……」
『アシェラリア・シェイド』は気がつく。
この坑道。
明滅する光の中に影が一つ疾走った。言うまでもない。侵入者だ。彼女はその手にした腕輪を触る。
彼女の腕輪にはユーベルコードを吸収する力がある。
受け止め、放つ。
単純であるが、その力は敵対するものにユーベルコードの力を使わせるのを躊躇わせるには十分であった。
「ハーイ、調子いい?」
ぬ、とそんな『アシェラリア・シェイド』の前に暗闇から姿を表すメイド。
いや、バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)である。彼女は明滅する暗闇の中から顔を出し、ニコリと微笑む。
「猟兵!」
「悪くとも倒させてもらいマスヨ、オブリビオン!」
バルタンが手にしたファルシオンの白刃が煌めく。
明滅する光を受けた閃きは、狙い過たず『アシェラリア・シェイド』を襲う。だが、その一撃をスーツの防刃繊維で受け止め、彼女は不敵に笑う。
「白兵戦に持ち込むつもりですか。私のユーベルコードを、この腕輪の力に気がついて!」
「その腕輪がユーベルコードをコピーすることはわかっているのデース。なら、ユーベルコードを使わずに攻撃して攻め立てれば良いのデース!」
バルタンのファルシオンが振り下ろされる。
だが、それは『アシェラリア・シェイド』にとっては思うつぼであった。
「ユーベルコードを使わずに、こちらだけがユーベルコードを使えるという有利な状況に自ら飛び込むとは愚か!」
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
だが、バルタンは、『そう思わせる』ことに注力していたのだ。
ユーベルコードを使いたくても使えない。
そんな不利な状況に自身を置いているというように『アシェラリア・シェイド』に思わせる。
格闘術の有利な間合い。
互いの拳と刃が交錯する。
その瞬間、バルタンの瞳がユーベルコードに輝く。
「六式武装展開、鉄の番!」
元より坑道の中での戦い。インファイトとなるのは必然である。この坑道の地形は熟知している。
やるべきことは分かっている。
ゼロ距離からのチェインハンマーの一撃。
「ユーベルコード!?」
鉄拳制裁(アイアンフィスト)たる鉄槌の一撃が『アシェラリア・シェイド』の体を坑道の壁へと叩きつける。
地鳴りがするかのような強烈な一撃に彼女は血反吐をまき散らすしかない。
「こちらの腕輪の力を恐れているのでは……!」
「これが壁ドンデース! HAHAHA、切り札は隠しておくものであります!」
カウンターの一撃。
インファイトに誘い込み、この坑道の内部での戦いであるがゆえに互いの距離は縮まる。そこに打ち込まれる防御不能なカウンターの一撃。
それこそがバルタンのユーベルコード。
放つ一撃は、この『明滅鉱脈ゼルフ』を雲海に沈めようとする悪意を打ち砕くもの。
「この綺麗な島の天使核は奪わせマセーン!」
バルタンはそのまま坑道の壁をぶち抜くように『アシェラリア・シェイド』の体を吹き飛ばし、明滅の彼方へと叩き込むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
ぐぬぬ…こいつを何とかしたら天使核堀り放題とはいかない?
いかないか…
採掘権独占とかならない??
この苛立ちはオブリビオンにぶつける!
●
まずは暗転の周期を計ろう
周期を把握したら次は進路上の見える範囲の地形を岩陰から記録
それらを利用して暗闇に乗じて『忍び足』で移動して敵を追おう
敵を発見したら《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
そして【Duplicate Myself】起動
分身に残りの2剣を渡して戦闘準備
灯りが消えるタイミングを計り消える直前にまず私が姿を現して注意を引く
そして消えると同時に2人アタック!
『なぎ払い』『串刺し』のコンボを時間差で叩き込む!
さて、どっちが本物かな?
明滅する坑道の中で月夜・玲(頂の探究者・f01605)は一人うめいていた。
屍人帝国『ジェード王国』。
彼らが『明滅鉱脈ゼルフ』に送り込んだオブリビオン、『アシェラリア・シェイド』は本体ではない。
その名の通り影。
数多ある内の数体が、この鉱脈に入り込み住人たちを迫害するかのような強制労働でもって鉱脈に存在する天使核を搬出し続けている。
6つの屍人帝国が相争う『アルカディア争奪戦』。
これに介入した猟兵と勇士たちにとって、この『明滅鉱脈ゼルフ』にある天使核は死守しなければならないものである。
屍人帝国が天使核を手に入れれば、それだけ『アルカディア争奪戦』を有利に進めるだろう。
願いを叶える争奪戦において天使核は力そのものであったからだ。
「ぐぬぬ……こいつをなんとかしたら天使核堀り放題とはいかない?」
いかんのである。
魔獣やオブリビオンの体内から心臓として取り出される天使核であるが、この鉱脈からは掘り出すことができるのだ。
それが如何に特異なことであるのかは言うまでもない。
明滅する鉱脈に足を踏み入れた玲は一定周期で明滅する鉱脈内部を見回す。
徐々に光が弱まっているのは、オブリビオンによる天使核が運び出されているからだ。周期も時間が経つにつれて間隔が短くなっていっている。
「この鉱脈が、こうで……坑道がそれに沿って進んでいるわけだから……」
玲はオブリビオンである『アシェラリア・シェイド』が奥に眠る数多の天使核を確保するために辿るルートを割り出す。
そして、掘り進められた坑道の中にある岩陰を記録し、それらを利用して暗闇に乗じて進む。
「採掘権独占とかならない、ならないよなぁ……」
だんだん苛立ってきた。
玲にとって見れば、この鉱脈は宝の山である。
一生銭ジャブで生きていけそうな金額になりそうなほどの数多の天使核がある。だが、そういうのってやっぱりなのだが、うまくいかないものである。
どれだけ手を伸ばせば届くものであっても、世の中大変うまくできている。
天使核をすべて失えば、この浮遊大陸は沈む。
そうなればオブリビオンを満載して再び浮上するのである。そうなったら、お金があっても生活ができない。
通貨を手に入れても生活の基盤がなければ意味がないのである。
そんなふうに苛立っていた玲の目の前で他の猟兵が吹き飛ばした『アシェラリア・シェイド』が転がり込むようにして体勢を整える。
「飛んで火に入る夏の虫とかんとかんとか! ちょうどいいや! この苛立ちをぶつけさせてもらうよ!」
抜刀した二刀の模造神器。
その瞳が輝き、彼女の隣に立つのは玲自身。
分身として召喚された玲はオリジナルよりも戦闘力に勝る。しかし、財力に劣る。この場合、あまり関係ないことであるが。
「はい、模造神器~」
「猟兵……! こんな所にまで入り込んで……!」
「そういうこと。二人がかりであることに卑怯とは言うまいね!」
『アシェラリア・シェイド』が、その心臓たる天使核を暴走させ、凄まじい速度に到達しようとした瞬間、周囲が暗転する。
明滅していた周期。
玲が調べていたそれは、まさに測ったかのように『アシェラリア・シェイド』の攻勢の機先を制する。
いや、測ったかのように、ではない。
まさにそのタイミングで玲は仕掛けたのだ。
暗転した坑道の中で二人の玲が駆け出す。
「例え、暗闇で見えなくても!」
暴走する天使核。
その煌めきが坑道を照らす。そこにあったのはオリジナルの玲。
彼女の振るう模造神器が振り上げられ、蒼き残光を残しながら『アシェラリア・シェイド』に叩きつけられる。
防刃繊維で出来たスーツ、その腕部で一撃を受け止めた『アシェラリア・シェイド』の力はユーベルコードの発露によって戦闘能力を底上げしている。
先行した猟兵の一撃を受けてなお、健在であったのは彼女のオブリビオンとしての力の強大さであろう。
「この程度で……!」
拳を振るう。
だが、再びの暗転。空を切る拳。
「……また……!」
この明滅する坑道は思った以上に厄介であった。
さらに言えば、玲が分身と共に連携でもって迫ることこそが、『アシェラリア・シェイド』の失策そのもの。
玲を見た時点で退いていたのならば、彼女は追い詰められることはなかっただろう。
なまじ切り札があるからこそ、対峙した猟兵を追わずにはいられないのだ。
「こっちだよ!」
「さて、どっちが本物かな?」
分身の斬撃が『アシェラリア・シェイド』の防刃繊維のスーツごと腕を薙ぎ払う。
さらにオリジナルの玲が飛び込み、その暴走する天使核の心臓を模造神器の刀身が串刺しにする。
二人の玲。
彼女たちの思考は同一のもの。
だからこそできる完全な連携。その連携の前に『アシェラリア・シェイド』の一体は、滅び去るしかないのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
フォルク・リア
「浮遊大陸を落とし多くの人々の住み家を、
命を奪おうと言うのか。私利私欲の為に。
これは急がなければならないだろう。」
坑道内の構造を把握する為にファントムリキッドを使用。
明滅のタイミングを計りながら霧状にした身体を広範囲に広げつつ
敵に見つからない様に物陰に隠れ坑道内を探索。
ファントムリキッドの飛翔能力も生かして探索は
出来る限り迅速に。
敵を発見したら単独である事を確認後、
遠距離からデモニックロッドの闇の魔弾で奇襲。
わざと姿を見せて逃げる様にしながら行き止まりに誘き出し
追い詰められたふりをして再度身体を霧状にして
位置を入れ替え回避困難となったところで
液体の身体を弾丸の様に変えて散弾を放つ様に攻撃する。
『アシェラリア・シェイド』は屍人帝国の幹部級のオブリビオン、その影である。
オリジナルであるオブリビオンは遠き場所にありながら、影たる彼女たちはオリジナルの命令通りに動く。
『明滅鉱脈ゼルフ』での活動もまたその一つであった。
彼女たちは天使核が鉱脈から採掘されるという特異な浮遊大陸を支配し、そこに住まう住人たちに強制的な労働を強いる。
天使核がなくなれば、当然浮遊大陸を足らしめている浮力は失われる。
そうすれば雲海に沈むしか無く、再び浮上する頃には、オブリビオン満載した屍人帝国の版図の一部となっているのだ。
「浮遊大陸を落とし多くの人々のすみかを、生命を奪おうというのか。私利私欲のために」
これは急がなければならないとフォルク・リア(黄泉への導・f05375)の目深にかぶったフードの奥の瞳がユーベルコードに輝く。
彼が今から踏み込まねばならぬ坑道は明滅する周囲が存在している。
そして、その間隔は徐々に短くなっていることが伺える。
天使核が運び出されているからだ。この明滅が消えた時、この浮遊大陸は雲海に沈む運命となる。
「そうはさせるものか――森羅に遍く湖水の亡霊。我に宿りて、此の身を不浄の水へと変じ。仇讐討ち果たす無双の刃と成せ」
フォルクの体に水霊が宿り、その体が液体へと変わる。
温度、特性など変化自在たる液体の体となったフォルクは一気に坑道の中に霧状となりながら飛び込む。
体を霧としたからこそできる技であったことだろう。
彼は薄く伸びるように坑道を駆け抜けていく。
明滅のタイミングを図り、『アシェラリア・シェイド』の目に留まることなく一気に坑道を駆け抜ける。
「私の一体がやられた……? やはり猟兵が来ますか」
『アシェラリア・シェイド』の体が闇のオーラに包まれる。
オリジナルからの命令は多くの天使核を『ジェード王国』へと持ち帰ることだ。
6つの屍人帝国が相争う『アルカディア争奪戦』は、天使核が多ければ多いほどに有利にことが運ぶ。
ならばこそ、この『明滅鉱脈ゼルフ』を抑えることは最優先事項であったことだろう。
猟兵の侵入を察知した彼女はオーラによって周囲を索敵する。
「……敵の数は……いない? どういうことです?」
霧状となったフォルクの姿を彼女は捉えられないのだ。
故に奇襲ができる。
フォルクは見つけた一体の『アシェラリア・シェイド』に闇の魔弾を放ち、強襲する。
放たれた魔弾は彼女の頭部をしたたかに打ち据え、視界に火花を散らす。
「ぐっ――!? 奇襲……! どこから!」
「こっちだ!」
フォルクはあえて姿を晒す。
奇襲の一撃が成功したのならば、次の段階に進むべきであったからだ。
あくまで逃げるふりである。フォルクは実体化しながら己の背を『アシェラリア・シェイド』に追わせる。
敵が複数坑道内にいるのならば、合流されることこそ避けるべきことであったからだ。惹きつけるようにフォルクは駆け出し、事前に霧状になって把握した坑道の行き止まりへと駆け込む。
「馬鹿め! 袋小路に自ら飛び込むとは!」
飛び込んでくる『アシェラリア・シェイド』の拳の一撃がフォルクの背にあった壁に叩き込まれる。
いや、壁に?
『アシェラリア・シェイド』は確かにフォルクへと拳を叩き込んだはずだ。
けれど、彼女の拳は坑道の壁面を打ち据えただけに過ぎない。
今、ここに存在していたフォルクは現影であったのか。
「いいや。幻影などではないさ」
その声が彼女の背後から聞こえる。
振り返ったそこに在ったのは、霧状から実体化したフォルク。
ファントムリキッドは、その言葉どおり幽霊の如き実体無きもの。
空中に拡散し、幻惑するユーベルコードであり、『アシェラリア・シェイド』の拳を透過させたのだ。
「……この位置……誘い込まれた……!」
「ああ、そのとおりだ。君はまさに袋小路。この坑道からでられると思うな」
液体の体となったフォルクに魔力が満ちる。
変幻自在、特性自在。
ならばこそ、己の体を魔弾に変えて放つこともまた自在である。
「人々の生活を脅かした罪過、ここで灌がせてもらう!」
追い詰められた『アシェラリア・シェイド』の顔に焦燥が募る。
ここは袋小路。
そして天井も壁も、床も。すべてが覆われて逃げ場などない。
放たれる魔弾は散弾のように彼女の体を撃ち抜き、その肉体を霧消させるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
三上・くぬぎ
たいへんです、どろぼうさんがいるですー
しかも、住民さんたちをいじめてるです
とってもわるいひとです!
くぬぎ、がんばってわるいひとをやっつけるですよ!
坑道の中では、敵に見つからないように、ものかげとかをこっそり移動するです
敵を見つけても前に出ていかないでかくれたまま、暗くなったタイミングで【レプリカクラフト】発動です
足もとに強力トリモチをいっぱいいっぱい設置するですよ!
敵がベトベトで動きにくくなったところを注射器銃で毒こうげきですー!
三上・くぬぎ(アウトドア派・f35607)は、好奇心旺盛な薄灰色のモーラットである。
探検は大好きだし、『明滅鉱脈ゼルフ』のような場所は彼女の心が刺激されてやまぬ場所だ。
どんな冒険が待っているのだろうと坑道の中に入っていけば、その現状を目の当たりにするだろう。
坑道の中は一定周期で明滅する。
それはこの鉱脈の名の由来の通りである。
だが、徐々に明滅の間隔が狭まり、光が弱くなってきているように思える。
それは屍人帝国『ジェード王国』のオブリビオンが、この鉱脈から天使核を持ち出しているからだ。
此処はオブリビオンや魔獣の心臓から取れる天使核を鉱脈から掘り出すことのできる稀有なる場所なのだ。だからこそ、6つの屍人帝国が相争う『アルカディア争奪戦』においては重要な土地であるといえるだろう。
「猟兵たちが侵入してきている……幾人かの私がすでにやられているということは、此処にも猟兵が来るということ……まったく厄介なことです。さあ、急ぎなさい」
オブリビオン『アシェラリア・シェイド』は、この浮遊大陸の住人たちを強制的に働かせ、天使核を搬出させようとしている。
「たいへんです、どろぼうさんがいるですーしかも、住人さんたちをいじめてるです。とってもわるいひとです!」
くぬぎは怒った。
だってそうだろう。この浮遊大陸は天使核によって浮力を得ている。雲海に沈めば、すべからく滅びる運命にある。
なのに天使核を運び出せばどうなるかなんてわかっていることだ。
だというのに『アシェラリア・シェイド』は、其処に住まう住人たちに自ら滅びることを突きつけている。
今すぐ死ぬか。
後で死ぬか。
その選択肢にもならぬ選択肢を突きつけ、彼らを働かせている。
そんなこと絶対にさせてはならないと、くぬぎは坑道の明滅を利用して、その小さな体をもって走り出す。
敵に見つかる前に『アシェラリア・シェイド』を見つけることができたのはよかった。
ものかげからこっそり隠れたまま、坑道の内部の明滅……暗くなる瞬間を見計らってくぬぎはユーベルコードを発現させる。
それはレプリカクラフト。
造りは荒いが、仕掛け罠である強力トリモチを複数作り上げ、『アシェラリア・シェイド』の足元に放り投げるのだ。
「早くなさい。時間がないのです」
彼女が近くに倒れ込んだ住人を蹴りげ用とした瞬間、その足が動かぬことに気がつくだろう。
くぬぎの作り上げたトリモチは『アシェラリア・シェイド』の足を地面に縫い付け、乱暴を許さないのだ。
「な……っ、なんです!? これは……!!?」
「とってもわるいひと! みんなをいじめるのはくぬぎがゆるさないです!」
跳ねるようにして、くぬぎが飛び出す。
怖いけれど。
それでも誰かが傷つくのは見たくない。トリモチで動きを封じた『アシェラリア・シェイド』に飛びかかり、手にした注射器銃でもって彼女の体に毒を打ち込むのだ。
「くぬぎ、わるいひとをやっつけるのです!」
特性の毒が『アシェラリア・シェイド』の中に巡っていく。
「この程度の拘束で私を止められると……! ぐっ、うっ……これは、毒っ」
「そうです。くぬぎの注射器はわるいひとにだけ効く毒がいっぱいなのです」
生命消費モードになり、トリモチを振り切ろうとしても無駄である。
『アシェラリア・シェイド』の体内に打ち込まれた毒は、その毒性故に生命消費モードとすこぶる相性が悪い。
けれど、天使核が暴走するほどの出力がなければ抜け出すこともできないのだ。
完全に詰んだ状態。
くぬぎは、住人たちを開放し、毒に喘ぐ『アシェラリア・シェイド』を振り切る。
「わるいことをしたら必ず自分にかえってくるです。だから、反省してくださいですよ!」
そのまま住人たちと共にくぬぎは坑道の外に出る。
きっとあの様子では長くはないだろう。
それよりも住人たちを救えたことが、くぬぎにとっては誇らしい功績であった――。
大成功
🔵🔵🔵
クリシュリッツ・メーベルナッハ
悪いが、この島の天使核は持ち帰らせない。
その身ひとつで、骸の海へ還るがいいさ。
最初はLichtKlingeの【レーザー射撃】を主体に攻撃。
敵の接近しようとする動きに対しては、Rosendornenの暗器群から撒菱を地面に撒いたり、煙玉での【目潰し】をかけたりして牽制。
坑道内が暗闇に落ちるまでの【時間稼ぎ】も兼ねる。
坑道内が暗くなったら切り札――ヴァンパイアストームを発動、一気にダメージを与えにいこう。
此方が切り札を切ったとなれば敵もUCで強引な斬り込みをかけてくる可能性が出るが、其で近づいてきた処にGeheimSchwertで抜き打ちの斬撃を浴びせる。
僕が近接戦の術を隠してると、気付けたかい?
猟兵の打ち込んだ毒が『アシェラリア・シェイド』の中を駆け巡っていく。
天使核の暴走によって得られる生命消費モードは、彼女の足元に張り巡らされた強力トリモチを引き剥がし、住人たちを開放した猟兵を追わせる。
だが、その前に悠然と立ちふさがったのは、一人の執事然とした男装の麗人であった。
「悪いが、この島の天使核は持ち帰らせない。その身ひとつで、骸の海に還るがいいさ」
大仰な芝居がかった立ち振舞い。
余裕綽々といった態度。
気取った言動は、彼女の生来のものであろう。
クリシュリッツ・メーベルナッハ(真偽自在の探偵気取り・f36263)は明滅する坑道の中で、悠然と『アシェラリア・シェイド』の前に立つ。
「どうやら君は他の猟兵に寄って毒に侵されているようだね。だが、それでもなお、その出力。強大なオブリビオンであるといえるだろう。けれど……」
「講釈を垂れることなど必要とはしていませんよ!」
トリモチを振り切った『アシェラリア・シェイド』が毒に侵されながらも凄まじ居速度でクリシュリッツへと迫る。
彼女もまたハンドガンでもって応戦するが、魔力弾をことごとく『アシェラリア・シェイド』は躱す。
「ほう、それでもすごいスピードだ。すべて防がれるとはね」
放つ弾丸。
それらすべてが躱される。
これが天使核の暴走に寄って得られる力。
確かにこれを無数に持ち帰られては、屍人帝国『ジェード王国』は強大な力を得るだろう。
6つの屍人帝国が相争う『アルカディア争奪戦』。
この『明滅鉱脈ゼルフ』の天使核は、そのパワーバランスを崩しかねない。さらに言えば、これに介入する猟兵たちとの戦いにおいても敵の戦力を増強するものとなるだろう。
それに、この鉱脈の天使核がすべて奪われれば、この浮遊大陸は雲海に沈む。
そうなれば滅びるしかない。
再び、この大陸が浮上する時、そこにはオブリビオンが満載されている。
版図を広げるのと同時に戦力を拡充していく。
屍人帝国『ジェード王国』は戦略というものをよく理解しているようにクリシュリッツは思えただろう。
「だが、それでも止めなければならないのでね」
放つ暗器。
ばら撒かれる撒菱。
地面を覆う棘も『アシェラリア・シェイド』は壁を、天井を蹴って躱し、更に迫る。それをけむり玉の煙幕でもってクリシュリッツは目潰しし、さらに坑道を走る。
「反撃しないでどうやって留め置くつもりです! 私の中の毒が回るまで待つつもりですか! 其れより早く私はあなた達を殺す!」
オリジナルである幹部オブリビオンさえ残っていればいいのだ。
影たる自分たちがどれだけ滅びようとも、痛手にはならない。だからこそ、彼女は自身の生命を使い潰す。
「まったくもって理解に苦しむ……僕がただ闇雲に逃げ回っていただけだとでも?」
その言葉が響いた瞬間、暗転する。
坑道は明滅している。一定周期で暗闇に落ちる瞬間を狙ってクリシュリッツは、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
放たれる吸血コウモリの群れ。
その一撃は『アシェラリア・シェイド』へと迫り、彼女を包み込んでいく。
暗闇であるがゆえに、普段以上の力を発揮するヴァンパイアストーム。その一撃を防ぐことなどできはしまい。
けれど、天使核を暴走して得られた力によって『アシェラリア・シェイド』は命尽きるまでクリシュリッツの喉元を狙う。
飛び込む『アシェラリア・シェイド』の瞳には執念があった。
例え、生命が尽きるのだとしても猟兵を一人でも多く道連れにすると言わんばかりであった。
「接近戦なら……!」
「悪くはない。けれど、僕が接近戦の術を隠していると、気づけたかい?」
クリシュリッツは微笑みながらハンドガンの銃身に光刃を形成し、振り抜く。
一瞬の斬撃。
それは『アシェラリア・シェイド』を袈裟懸けに切り裂き、毒によって弱った肉体を容易く切り裂く。
斬撃は深々と胸に抱く心臓たる暴走する天使核を切り裂き砕くのだ。
暗転した中、輝く光がある。
爆ぜるように『アシェラリア・シェイド』は散り、クリシュリッツは外套でそれを防ぎ、振り払う。
「気づけなかったようだね。君たちの目的は何一つ達成させはしないさ」
芝居がかった口調であったけれど、クリシュリッツは確かに『アシェラリア・シェイド』を打ち倒す。
暗転の周期が終わり、光が戻る頃、彼女の姿はすでに『明滅鉱脈ゼルフ』にはない。
次なる戦場へと歩みを進めている。
すでに此処に興味はないのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
ヴェルンド・ラスリス
「自分の我欲の為にこの大陸の住民がどうなってもいいって言うのかよ…ならば相応の覚悟はできてるんだろうな!」
敵を一本道の坑道まで誘導、隠れる場所がない坑道で自身の高火力UC『灼砲』で一気に攻撃する。
「欲望で身を滅ぼす。よくある哀れな末路だな」
屍人帝国『ジェード王国』は、鉱脈から天使核が産出されるという稀有なる浮遊大陸『明滅鉱脈ゼルフ』へと進駐していた。
その目論見は確かに6つの屍人帝国が相争う『アルカディア争奪戦』においては必要不可欠なものであった。
天使核が多ければ多いほどに戦力は拡充されていく。
オブリビオン『アシェラリア・シェイド』がそうであるように、天使核を暴走させて戦闘能力を強化することができるのならば、天使核を保有している数が多いほうが、この『アルカディア争奪戦』においては有利となるだろう。
そうでなくとも、天使核をすべて失えば浮遊大陸は浮力を維持できず、雲海に沈む。
雲海に沈んだものの末路は言うまでもなく滅びである。
再び浮上する時、そこにはオブリビオンが満載され、版図の拡大と戦力の拡充をいっぺんに行うことができるのだ。
「だというのに……猟兵が来ましたか。すでに幾人かの私が滅ぼされている様子……まったくもって厄介なタイミングで」
『アシェラリア・シェイド』は歯噛みする。
猟兵の邪魔がなければ、つつがなくすべての天使核を『ジェード王国』へと輸送できたはずだ。
けれど、猟兵の介入に寄ってすでのそれは絶たれてしまっている。
坑道の明滅する光の中、一つの影が『アシェラリア・シェイド』の前に立ちふさがる。
「自分の我欲のためにこの大陸の住人がどうなってもいいっていうのかよ」
ヴェルンド・ラスリス(獄炎の復讐鬼・f35125)の瞳は怒りに燃えていたことだろう。
我欲。
願いのために『アルカディアの玉座』を求めるのが屍人帝国の『皇帝』である。
その願いが如何なるものであったとしても、ヴェルンドには許容できるものではなかった。
今を生きる人々の生活を脅かす願いのどこに正しさがあるといえるのだろう。
「だからなんだというのです。他人のことなど、どうでもいい。自分さえよければ、と思うのは人の性でありましょうに。もしかして、あなた自身だけはそうではないと?」
まるで挑発するように『アシェラリア・シェイド』は笑う。
人の本質。
人の善性。
それらを全く信じない悪性たるものであると断じる彼女にヴェルンドは、その瞳をたぎらせる。
「……ならば相応の覚悟はできてるんだろうな!」
ヴェルンドの振るう大剣が振るわれる。
防刃繊維のスーツすらも溶断しかねぬ発火の熱量が、『アシェラリア・シェイド』の表情を塗りつぶす。
揺らめくさなか、彼女は確かに笑っていた。
「あなたが滅びる覚悟でしょうか?」
強大なオブリビオンの力は個としての力では、猟兵を凌駕する。
ヴェルンドは弾き返されながら、坑道の明滅続く中走る。
分かれ道は駄目だと理解している。
『アシェラリア・シェイド』を確実に滅ぼすためには、一本道が必要だ。
隠れる場所のない、避けようのない一撃で滅ぼすしかないと判断したヴェルンドは走る。
「大層なことを言っておいて! 逃げるだけですか!」
挑発の声が響く。だが、それでもヴェルンドは答えない。
意味がないからだ。
己の怒りが大剣に伝播していく。
振るわれる拳の一撃を大剣の刀身で受け止め、弾き飛ばされるようにしながら坑道を往く。
「ちっ……! だがッ!」
一本道。
周囲に抜けられる場所はない。此処まで誘導したヴェルンドは、もはや遠慮はいらないと、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
「欲望で身を滅ぼす」
「欲望こそが生命の根源たるものでしょうに。それを否定するなど!」
襲いかかる『アシェラリア・シェイド』の前に突き出されるは掌。
煌めくは極大の獄炎。
迸る輝きは、レーザーの光条となって放たれ、吹き荒れる炎を坑道の中に走らせる。
「――!」
声無き声が響く。
灼砲(シャクホウ)の一撃は、それほどまでに強大な一撃。
「よくある哀れな末路だな」
消し炭一つ残らぬ末路。
それがヴェルンドが示した欲望の末路。
ぐらりと体が揺れるのをヴェルンドは感じただろう。
「この一撃は強烈だが……貧血のこの感じも……やってられねえな」
極大の一撃の代償をヴェルンドは感じながら坑道の壁に寄りかかる。敵は確かに強大である。
だが、それを取り除くのが己の使命であると彼は揺れる視界の中で消耗した力を取り戻すまで明滅する光を見やるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
エアリーネ・シルベンスタイン
…その浮遊大陸、実は「天使」だったりしませんよね……?
まあ、それは調べればいい話です…
姿を隠しながら接近、ある程度距離を取って竜呪杖から魔法攻撃を行い、
より狭い箇所へ誘導しつつ戦いますよ…
頃合いと思ったらこれ見よがしに魔法陣を出しUCです…
UCの使用後、または相手がコピーしても「一見何も起きない」事に戸惑ううちに
ベルトから気化毒入りのポーション瓶を投げ、マヒ毒と盲目毒をそれぞれ塗ったナイフとダガーで一撃加えます…
…ええ…これは「与えた、又はこれ以降与える状態異常を複合させ各効果を増幅するUC」、これ単独では意味ありませんよ…
それじゃ、そこで“静かにしてて”くださいね…
※アドリブ歓迎ですよ…
天使核とは、魔獣、オブリビオンの心臓から採れる素材の一つである。
ブルーアルカディアの世界において人々は魔獣を狩ることによって生活を成り立たせている。
血肉はもちろん、骨、爪、牙、革。
あらゆるものが生活の一部に組み込まれていく。
その逞しき人々であっても、天使核だけはどうしようもない。
浮遊大陸を浮かばせる動力たる天使核を失えば、浮遊大陸は雲海に沈む。
例外なく滅びるのだ。
再び浮上してくるのだとしても、そこにあるのはオブリビオンを満載している。
「……『明滅鉱脈ゼルフ』……実は『天使』だったりしませんよね……?」
エアリーネ・シルベンスタイン(びんぼうエルフ・f26709)は、本来魔獣やオブリビオンの心臓である天使核が鉱脈として残っている浮遊大陸に疑問を抱く。
天使核が鉱脈として存在しているという事実さえ驚愕に値する。
そして、その明滅は天使核が運び出される度に弱まっていっているのだ。
「まあ、それは調べればいい話です……」
だが、今はこの坑道に入り込んだオブリビオンの排除が先決だ。
オブリビオンを倒さねば、天使核の流出は止められない。
明滅する坑道の暗闇に紛れエアリーネは鉱脈内部で『明滅鉱脈ゼルフ』の住人たちに強制労働を強いているオブリビオンの姿を見つける。
この距離ならばまだ気が付かれていない。
手にした『竜呪杖』を向ける。
放たれる魔法攻撃が無防備なオブリビオン『アシェラリア・シェイド』の背中を撃つ。だが、その程度で倒れるオブリビオンではない。
個としての力は猟兵を越えているのだ。
「……ッ! 敵……猟兵ですか!」
「こっちですよ……」
エアリーネは駆け出す。より狭い箇所へと誘導するように時折、杖より魔法を放ち、『アシェラリア・シェイド』を人々から引き離していく。
「このような場所に誘い込んで……やることは一緒ですね。見え透いたことを!」
エアリーネの瞳がユーベルコードに輝く。
『アシェラリア・シェイド』にはわかっていた。エアリーネがこの狭い坑道に自身を誘い込んでいることを。
そして、放つユーベルコードの一撃で勝負を決めるつもりなのだと。
けれど、彼女には腕輪がある。ユーベルコードを吸い込み、そのユーベルコードをコピーする力が。
「馬鹿な真似を!」
魔法陣が展開し、エアリーネのユーベルコードが放たれる。
その一撃を腕輪で受け止め『アシェラリア・シェイド』が笑う。
受け止めたユーベルコードは彼女も使えるようになるのだ。
「あなたが私を攻撃しようとしたのならば、それをそっくりそのまま返すだけです……っ!? なぜ、なにも……起こらない!?」
だが、彼女の放つユーベルコードは不発に終わる。
何も起こらないのだ。
ユーベルコードは確かに発動している。
エアリーネは即座にベルトから帰化毒入りのポーション瓶を『アシェラリア・シェイド』へと投げつける。
弾ける瓶から毒素が放たれ、とっさにかばう『アシェラリア・シェイド』の目の前に躍り出たのは、エアリーネの持つナイフとダガーの一閃であった。
その刀身に塗られているのは麻痺毒と盲目毒。
狙い過たず、その二連撃が『アシェラリア・シェイド』の運動神経と視神経を潰すのだ。
「な、なぜ、ユーベルコードが……何も起こらないのです……!!」
「……ええ、これは『与えた、又は以降与える状態異常を複合させ各効果を増幅するユーベルコード』。これ単独では意味がありませんよ……」
エアリーネは静かに告げる。
きらめくユーベルコード、アンプリフ・デッドリーベノムが今度こそ効果を発露する。
付与された盲目毒と麻痺毒。
それらが合わさり、『アシェラリア・シェイド』は動きを止める。
「それじゃ、そこで“静かにしてて”くださいね……」
エアリーネの一閃が『アシェラリア・シェイド』を切り裂く。
どれだけ強大なオブリビオンであったとしても、動けぬ的にエアリーネが苦戦する理由などない。
『アシェラリア・シェイド』が倒れ込み、そのまま霧消していく。
この『明滅鉱脈ゼルフ』の謂れは未だわからぬが、これもまた調査という楽しみの過程の一つ。
自身の推察が正しいのか、それとも誤っているのか。
どちらにせよ、エアリーネの興味の対象はオブリビオンではなく、この浮遊大陸に移ったのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ステラ・タタリクス
【ルクス(f32689)様】と
|エイル様《主人様》の!!香りがします!!
誰がやべーメイドですか
そして何故被せてきました?
私のエイル様を奪うつもりですか??
まぁルクス様のおっしゃる通りですね
天使核は結構死活問題ですし(これでもガレオノイドである)
すぱーん!(フライング・スリッパ炸裂)
なぜ!突入前に!言わなかったのですか!!
ああもう、迷わないのはその通りですけども!
仕方ありませんね
ここは脳内エイル様にご命令をいただき
【バトラーズ・ブラック】発動で
音響を利用して索敵しましょう
聞き耳で十分把握できるはずです
位置を捉えたらルクス様に伝達
速攻で倒し……あの?
そのグランドピアノの重量は問題ないのでしょうか?
ルクス・アルブス
【ステラさんと】
師匠の!!香りがします!!(ステラさんと同タイミングで)
誰がやべー弟子ですか。これでも勇者ですよ!
まぁ、さっきふわっと香ったんですよね。
いまはしないんですけど……。
と、とりあえず!
『明滅鉱脈ゼルフ』を墜とさせるわけにはいきません。
坑道内に転送してもらって『アシェラリア』さんを倒しましょう!
……ステラさん、方眼紙と鉛筆忘れちゃいました(てへ)
い、いえわざとじゃないですよ!?
それにほら! 右手の法則でいけば迷わないですから!
『アシェラリア』さんに遭遇したら、
光力MAXの【光の勇者、ここに来臨!】で目を眩ませて、
【ベーゼンドルファー】で殴っちゃいますね。
坑道、崩れたりしないですよね?
『明滅鉱脈ゼルフ』の坑道内部に転移したステラ・タタリクス(紫苑・f33899)とルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)の二人は殆ど同時に叫んでいた。
「|『エイル』様《ご主人様》の!!」
「師匠の!!」
「「香りがします!!!」」
二人揃ってやべーのである。
正直に言って、この二人の追跡を振り切っている師匠とご主人様とは一体全体どういう存在なのだろうか。
いや、振り切っているという言葉は正しくないだろう。
彼女らの嗅覚を持ってしても、たどり着けない何かがあるのかもしれない。
とかんとか、それっぽいことを言っているが、二人はそれどころではないのである。
「誰がやべーメイドですか」
「誰がやべー弟子ですか。これでも勇者ですよ!」
本当ですよ。
しかしながら、ステラの目が釣り上がる。
味方だよね?
「私の『エイル』様を奪うつもりですか??」
「違いますよ! さっきふわっと香ったんですよね。今はしないんですけど……」
散々これまでステラのことをヤベーメイド呼ばわりしておいてなんであるが、ルクスも大概であると思った。
あ、いや天の声が。
天の声であって個人の意見ではないです。
地の文とも言う。
しかし、ルクスは勇者としてやらなければならないことがある。
そう、『明滅鉱脈ゼルフ』は今、オブリビオンによって雲海に沈む危機に瀕している。ここは鉱脈から天使核を産出する稀有なる大陸である。
通常、天使核は魔獣やオブリビオンの体内からしか取り出すことができない。
けれど、ここでは鉱脈として存在しているのだ。
「この『明滅鉱脈ゼルフ』を墜とさせるわけにはいきません。オブリビオンを倒しましょう!」
「まぁルクス様のおっしゃるとおりですね。天使核はブルーアルカディアに置いては死活問題ですし」
ガレオノイドであるステラにとっても同様である。
天使核がなければ浮遊大陸を空に浮かばせている力すらなくなってしまう。生活の基盤がなくなってしまえば、人々は生きてはいけないのだ。
そして、二人は坑道を意気揚々と進もうとして立ち止まる。ステラはどうしたのかとルクスの背中を見やる。
ぎぎぎ、とルクスの顔が振り返る。
なんだか表情がこわばっているように思える。
「……ステラさん、方眼紙と鉛筆忘れちゃいました」
てへっ、と可愛らしく言っても駄目である。
マッピングできない。
ステラは無言でスリッパを振るう。すぱーんと快音が響き渡る。
「なぜ! 突入前に! 言わなかったのですか!!」
「い、いえわざとじゃないですよ!? それにほら! 右手の法則で行けば迷わないですから!」
「それはそうでしょうね! 左手の法則でも問題なくたどり着きますが、それは出口が外の場合です! 目指す目的地が内部の場合には解けないこともあるんですよ!!」
「え、そうなんですか?」
頭が痛い、とステラは思ったかも知れない。
けれど、ステラは慌てない。
こんなときこそ、脳内|『エイル』様《ご主人様》のご命令でもって、自己暗示である。今自己暗示って言った?
そんなツッコミなどつゆ知らずステラの瞳がユーベルコードに輝く。
バトラーズ・ブラックは具現化された闇によって技能を底上げするのである。すでに坑道内部では猟兵と『アシェラリア・シェイド』との戦いが始まっている。
その音響、エコーロケーションでもってステラは曲がりくねり、明滅する鉱脈の坑道を進む。
「いました――速攻で倒し……」
「光の勇者、ここに来臨!(ユウシャトウジョウ) 光の勇者ルクスがお相手します!」
ステラの言葉を遮るように迸るは光力マックスの効果線。
凄まじい光であった。
『明滅鉱脈ゼルフ』の明滅する光など比べ物にならないほどの光。
うおまぶし。
速攻である。
『アシェラリア・シェイド』は何が起こったのかさえ理解できなかっただろう。
あまりにも強い光は、視界を照らす以上に塗りつぶすものである。一気に駆け込んだルクスの手にあったのはグランドピアノ。
背負って持ち歩けるようにしたグランドピアノ。背負って持ち歩けるようにしたグランドピアノ?
弾くも殴るも自在である。
「どっせい!」
目潰しでもって視界を奪われた『アシェラリア・シェイド』に叩き込まれるグランドピアノの一撃。
それは不意打ちも相まって凄まじい轟音を坑道に響かせる。
なんたる一撃。
「……あの? そのグランドピアノの重量……」
ステラの声にルクスは首をかしげる。
ここは坑道である。当然トンネルのように掘り進めた道である。これから掘り進める場所もあっただろう。
ならば、もろくなっている箇所もある。
「……坑道、崩れたりしないですよね?」
地響きが聞こえてくるようであった。
ステラは再びルクスの後頭部にスリッパの一撃を見舞う。オブリビオンは倒せても、メイドは倒せないのである――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
…あのオブリビオンが陣頭指揮を取って採掘してるわけか…つまり周囲に気を配っているわけで…ふむ…
…周囲は明滅してるから…暗くなったタイミングで物陰から物陰へと移動して先回り…先に天使核を発見…してしまおう…
…天使核の近くに【開けてはならぬ玩具箱】で出現させた爆破罠付きの箱を設置…
…露骨に危険なこの箱に目を奪われて…罠を解除すれば問題ないと思ってくれれば僥倖…
…爆破罠だと見抜ければ他人に開けさせようにも崩落の可能性がちらつくしね…
…仕掛けの本命は箱付近の床に仕込んだ遅発連動術式【クロノス】の印による電撃術式罠…
…これに引っかかって痺れてくれたなら黎明剣【アウローラ】でとどめを刺すとしようかな…
オブリビオン『アシェラリア・シェイド』は焦っていた。
何を、と言われれば、この『明滅鉱脈ゼルフ』における天使核の搬出である。すでに屍人帝国『ジェード王国』は、進駐している。
だが、抵抗する勇士たちや、坑道内部に入り込んだ猟兵たちの妨害に寄って運び出しが遅々として進まないのである。
「まったく……あの程度の者たちに妨害されるなど……」
彼女は強制労働を強いている住人たちを見やる。
彼らの生命など考慮しない。
なぜなら、どのみちこの浮遊大陸は雲海に沈む。どちらにせよ死に至る運命であるのならばこそ、気遣う理由などない。
それ以前に彼女はオブリビオンである。
すでに倫理観など捨て去っているのだ。
「さっさとなさい」
「で、でも……」
「なんです? 先に死にたいのですか?」
『アシェラリア・シェイド』の言葉に住人は首を横に振る。そうじゃないと弁明するように鉱脈の奥にある天使核の前にある箱を示してみせるのだ。
『危険! 開けるな!』と描かれた箱。
明らかに罠である。
あからさますぎて、逆に疑わしくも在る。これが猟兵の仕掛けた罠であるというのならば、こうして判断に迷っている時間こそが『アシェラリア・シェイド』を追い込んでいく罠であったことだろう。
「……露骨すぎますね。ですが」
彼女は住人を小突く。
「その箱を開けなさい」
「も、もし、中に爆発物があったら……?」
「崩落……ですか」
彼女たちが迷い、判断を送らせている様をメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は物陰から見ていた。
すでに彼女は陣頭指揮を取るオブリビオンである『アシェラリア・シェイド』を捕捉しており、内部の光が明滅するタイミングで彼女の目的である天使核の鉱脈に先回りして、開けてはならぬ玩具箱(パンドラズ・トイボックス)を仕掛けておいたのだ。
このユーベルコードは、見たものに開けて確認したいという好奇心を刺激し続ける。
ここが坑道であり、もしも、という可能性と開けたいという好奇心が拮抗するのをメンカルは計算に入れていたのだ。
「……露骨に危険な箱に目を奪われているね……罠を解除すれば問題ないと思ってくれている」
それはまさに僥倖であった。
『アシェラリア・シェイド』にとって住人たちの生命は塵に等しい。
自分さえ残っていれば、それでいいと判断して住人たちに箱を開けさせようとしたのならば、それこそ思うツボである。
住人たちの言う通り、爆発物であった場合は自分諸共に崩落に巻き込まれてしまう。
そうなれば、天使核をすべて持ち去り、この浮遊大陸を雲海に沈め、『ジェード王国』の版図とするという計画そのものが立ち消えになってしまう。
「……でも、本命の仕掛けは」
そう、それはあくまで『アシェラリア・シェイド』の気を引くためのものである。
箱の周囲に仕込んだ遅発連動術式『クロノス』が発動する。
放たれた電撃術式が迸り、『アシェラリア・シェイド』の体を撃つ。
「がっ――!? これはっ!」
「……全部計算づく……ここまで掛かってくれたのなら」
メンカルが走る。
手にしたのは黎明剣『アウローラ』。
確かに『アシェラリア・シェイド』は強力なオブリビオンであろう。だが、罠に掛かり身動きを封じられ、無防備な背中に攻撃を与えられれば、その肉体が耐えられるわけがない。
突き立てられる剣の刀身が心臓の天使核すら貫いて砕く。
「……トドメを刺すのは簡単……」
メンカルは霧消していく『アシェラリア・シェイド』の横を通り過ぎ、玩具箱を手に取る。
札を引き剥がし、その箱の中身を彼女に見せる。
中身は空。
「……疑いすぎもよくないよね」
メンカルは笑うでもなく霧消していく『アシェラリア・シェイド』を見送り人々を開放するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
まずは坑道が真っすぐな部分で相対を狙おう
狭く遮る物が無いならガトリングガンの攻撃を
躱す事は難しくなるからね
ゴーグルの暗視機能を利用し暗闇に対処
不意をついて接近されないよう気をつけよう
相手がUCでスピードと反応速度を上げたら
逃げるふりをして狭い場所に誘導し
速度を活かしにくくしようか
着いてきても来なくても
静寂領域を使用して
坑道を神気で満たそう
いくら速くても避けようが無いからね
石化させて機動力を奪いつつ
時間を稼ぐ事で消耗での自滅を狙おうか
簡単に逃げられない程度には
効果範囲が広いから確実に仕留めよう
こちらに接近して打開するつもりなら…
まあ、僕の周囲の方がUCとは別で神気は濃い訳で
一気に行動不能を狙うよ
ゴーグルの暗視機能が見せる視界の光景。
明滅する視界。
それは『明滅鉱脈ゼルフ』の名が示すとおりの光景であったことだろう。
佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は、その坑道内部を走る。
曲がりくねった地形を走る。晶が目指していたのは、真っ直ぐな一本道。一定周期で明滅を繰り返す坑道内部の光が徐々に強さを取り戻している。
それは他の猟兵達が、この坑道の鉱脈に在る天使核をオブリビオンから取り戻している証拠であろう。
だが、晶が走っているのは別の理由からであった。
背中から迫る重圧が在る。
「逃げてばかりで! こちらの思惑をそれで阻止したつもりですか! ここには我が『ジェード王国』が進駐しているのです。あなたたち猟兵さえ排除できれば!」
迫るは『アシェラリア・シェイド』。
彼女は幹部級オブリビオンであるオリジナルの影。
本体ではなく、影たる存在。その彼女たちはこの坑道で天使核を運び出す指揮を取っていた。
そこにやってきた猟兵たちは邪魔者以外の何者でもない。
晶は、そんな彼女と相対し、逃げるふりをしながら、自分に有利な場所へと誘導しているのだ。
あえて曲がりくねった坑道を選んだのは、天使核の暴走に寄る高速戦闘モードの利点を潰すためだ。
「そういう物言い、すでに敗北しているってわからないかな。僕ら猟兵が此処に在る時点で、君たちの目論見は打破されたようなものだというのに」
晶が振り返る。
瞳にはユーベルコードが輝く。
広がるのは、静寂領域(サイレント・スフィア)。虚空より放たれる森羅万象に停滞を齎す神気。
それは触れたものを停滞させる。
どれだけ『アシェラリア・シェイド』がユーベルコードで速度を上げるのだとしても、その神気の前には無意味だ。
「石化……!」
「そう、いくら君が速くても避けようがない。狭い坑道で戦うという選択肢をした以上、君に勝ち目は元からなかったんだよ」
「なら、石化仕切る前に!」
ガトリングガンの斉射を物ともせず、『アシェラリア・シェイド』が晶へと飛ぶように走る。
神気で停滞させてなお、この速度。
自身の心臓たる天使核を暴走させて得る速度は圧倒的だった。
けれど、それならば逃げればよかったのだ。立ち向かうのではなく、神気から逃れ、今まで搬出した天使核と共に、この浮遊大陸から逃れればよかった。
それだけでこの『明滅鉱脈ゼルフ』は浮力を失い続ける。
あとはちまちまと天使核を奪い続けるだけで『ジェード王国』は、その版図を広げることができたはずなのだ。
だが、欲をかいた。
敵を猟兵――個として己より劣る存在だと過信した。そして何より、己がオリジナルのコピーであり、代わりがいくらでも容易できるという慢心こそが敗北を読み込む。
「……まあ、僕の周囲の方が神気は濃い訳で」
迫る度に速度が落ちていく。
足元から始まった石化が『アシェラリア・シェイド』の全身を包み込んでいく。
振るわれた拳の一撃が晶の鼻先にまで迫った時、彼女の体は完全に石化し、動きを止める。
晶は息を吐き出す。
打開しようとする時、前に進むのは人の性である。
だが、オブリビオンは過去の化身。
ただ逃げ回るだけでいい。けれど、時として強大な力を持つ者が見せる慢心。それこそが彼らの弱点だ。
「……成長しないってことかな。でも、おかげで倒すことができる」
晶はガトリングガンのトリガーを引き、石化した『アシェラリア・シェイド』の体を弾丸で砕く。
飛び散る破片が明滅する鉱脈に煌めきながら霧消していく。
未だ強大な屍人帝国の全容は知れず。今相対したオブリビオンもまたオリジナルではない。
けれど、それでも晶は立ち止まらない。
それが人である自分自身の性であると知っているからだ――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
わーいトンネル探検だー!
●ごりごりごりごり
んーー…ボクの【第六感】によればこっちー!
と場所を見出して
出番だよ[ドリルボール]くん!と彼らに最短ルートを掘削してもらう!
坑道が崩れるって?心配ご無用!
ボクは隣で地下鉄工事をしても蟻の巣を崩さないと言われるほどの天才【トンネル掘り】なのだから!(UC『神知』使用時限定)
そのままドリルボールくんのファーストテイクでドーーンッ!!
みーつけたっ!ボクと遊ぼうよ!
と明滅の滅の瞬間に通路一杯に塞ぐ[ドリルボール]くんをさらに呼び出して坑道内挟み撃ちアターーック!
これでスピードを封じてこう!
ボクのこと穴掘りの神って呼んでいいよ!
「わーいトンネル探検だー!」
『明滅鉱脈ゼルフ』にそんな声が響き渡る。
どこかあっけらかんとした口調であり、すでに屍人帝国『ジェード王国』が進駐してきているというのに、緊張感を感じさせないものであった。
ゴリゴリと掘削の音が響き渡る。
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)の第六感が言っているのだ。
敵はこっちだと。
「んー……出番だよ、ドリルボールくん!」
さあ、ここだ! とろには呼び出した球体たちに道を示す。
彼が示した先はどう見ても壁である。
だが、道なき道を往くのが人の性であるというのならば、神たる彼はあらゆるものを超越するのである。
往くのならば最短ルート。
「坑道が崩れる心配御無用ー! なんたって、ボクは隣で地下鉄工事をしても蟻の巣を崩さないとも言われるほどの天才トンネル堀りなのだから!」
煌めく瞳はユーベルコードの輝き。
神知(ゴッドノウズ)たる彼にとって、この程度のことなど造作も無いのだ。
慎重さなど欠片もない掘削。
けれど、恐るべきことに彼の言うところの蟻の巣一つ崩さぬというトンネル堀りの技術は、坑道が崩落する危険性など一切感じさせないものであった。
ありとあらゆる理不尽を避けて進むかのようにドリルボールたちが進んでいく。
「あ、別に天使核の鉱脈がほしいってわけじゃないだよね! それ、ドリルボールくんのファーストテイクでド――ンッ!!」
ドリルボールが広い空間に飛び出す。
そこにあったのは『アシェラリア・シェイド』。
彼女は、この『明滅鉱脈ゼルフ』の天使核すべてを持ち出そうとしていたオブリビオンである。
「――ッ!? なぜ此処が……! 猟兵たちの数からして、こんな短時間で最奥までやってくることなどできはしないはずなのに!」
「ショートカット最短ルートで来たからね! みーつけたっ! ボクと遊ぼうよ!」
明滅繰り返す鉱脈内部でロニは笑う。
光が頂点に達すれば、次の瞬間には暗転する。
その一瞬を見極め、ロニはさらにドリルボールたる球体を呼出し、広い空間に敷き詰めるようにして『アシェラリア・シェイド』を取り囲む。
天使核の暴走に寄って得られる超スピードも、逃げ場を失わせればこのとおりである。
「坑道内挟み撃ちアタ――ック!」
「こんなっ! こんなところで!『ジェード王国』の覇道を!!」
「知らないよ、そんなこと! それよりもボクのこと穴掘りの神って呼んでいいよ!」
迫るドリルボールたち。
スピードすら活かせぬまま『アシェラリア・シェイド』を噛み砕き、霧消させる。
どれだけ屍人帝国の皇帝が願うのだとしても、『アルカディア争奪戦』は制させはしない。
そのいびつな欲望が世界にカタストロフを齎すのならば、猟兵たちは必ずこれを阻止する。
ロニはドリルボールの球体から飛び降り明滅する鉱脈を見やる。
天使核。
オブリビオン、魔獣の心臓。
搬出された天使核も他の猟兵達によって取り戻されている頃合いだろう。光の明滅、その間隔が戻り、光の強さも取り戻された。
ならば、ここに屍人帝国の野望の一端をくじくことができたのだろう。
「ありのままがいいとは言わないけどさ。でもやっぱりあるべき所にあるものがあるっていうのがいいよね」
手にした天使核を鉱脈に放り投げ、ロニは新たな浮遊大陸、戦いの場へと球体たちと共に自身が掘り進めた坑道を戻っていくのであった――。
大成功
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