銀河帝国攻略戦㉑~過去を斬る、黒
「黒騎士アンヘルに、ついに猟兵たちの刃が届いた」
ミコトメモリ・メイクメモリアは、集った猟兵たちにそう告げた。
「解放軍は黒騎士アンヘルの撃破を諦めた……強すぎるし、本命はあくまで銀河皇帝だ。だからこの戦いは、ボクたち猟兵のもの……たとえ銀河皇帝を倒しても、黒騎士アンヘルはその力故に、あらたなオブリビオン・フォーミュラ……新たなオブリビオン達の主になりうる。ここで撃破しなくちゃあならあない」
いつもはどこか陽気な表情も、今は真剣そのものだ。
「黒騎士アンヘルは部下をすべて失って、一人で行動してる……ただ、彼は『一人であること』で最も力を発揮できる戦士だから、むしろより警戒心を高めていくべきだね……ユーベルコードは、『過去の確定』に関するもの。もし……辛い過去や、大きな怪我をしたことがある人がいたら、少し覚悟を決めてほしい。アンヘルは、その傷を蘇らせてくる」
続けて、グリモアベースの中空に表示されるのは、スペースシップワールドの中域図。光点がいくつも明滅している。
「ボクの予知では、次にアンヘルが現れるのはこのB29地点の艦の残骸だ。艦の中での戦闘になるから、宇宙空間で戦闘には……ならないはず。艦を壊したりしないでね? それと……」
いちばん大事なこと、と前おいて、ミコトメモリは言う。
「黒騎士アンヘルは、倒してもすぐに躯の海から蘇る……つまり、この戦いだけでは終わりにならない。けど、何度も倒し続ければ、いつかは真の死をくれてやれる。そういう相手さ。だから……無理だけはしないで。命より大事なものは、ないんだからね」
そう告げて、一礼した。
「その上で言うね。勇者たちよ。どうか……勝って帰ってきて。これからの、この世界のために」
甘党
黒騎士アンヘルとの決戦です。
下記の注意事項を一読した上での参加をお願いします。
●
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
●
黒騎士アンヘルは、先制攻撃を行います。
これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
第1章 ボス戦
『黒騎士アンヘル』
|
POW : 消えざる過去の刃
【虚空から現れる『空間に刻まれた斬撃』】が命中した対象を切断する。
SPD : 過去喰らいの三呪剣
【過去の鍛錬の経験を封じる白の呪剣】【過去の戦闘の経験を封じる黒の呪剣】【戦うに至った過去を封じる灰の呪剣】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ : 記憶されし傷痕
【対象の肉体】から【過去に刻まれた傷跡や病痕】を放ち、【一度に再現され肉体を蝕む出血や疾病】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
三二ニ=-==ニ二三三二ニ=-==ニ二三
【黒騎士アンヘル】
三二ニ=-==ニ二三三二ニ=-==ニ二三
黒騎士アンヘル。
圧倒的力を持つ、帝国の双翼の片割れ。
配下が全滅しても、あらゆる作戦が壊滅的なまでに封じ込まれようとも。
一片の気負いなく、それでいて一片の油断もなく。
誰も居ない打ち捨てられた艦の中で、一人“敵”を待っていた。
万物とは過去の積み重ねによって存在を成立させている。
ならばこそ、過去を断つアンヘルの剣は、この世界にあまねく万物の天敵。
「来たか」
顔を上げる。
“敵”の姿がある。
戦う理由は十分だ。
さあ――――殺し合おう。
ジャガーノート・ジャック
(ザザッ)
――先制は絶対に取られる。
ならばそれを前提として動くまでだ。
ミッションを開始する。
(ザザッ)
より迅速な行動を。
SPDにて挑む。
使用UC:『クイックドロウ』。
現時点での射出速度は1/23秒。
これをより研ぎ澄ませ、限界まで射出を早くし後の先で敵を穿つ。
より
早く、速く、疾く
二度の銃声が重なって聞こえる程に――!
(早業+クイックドロウ+二回攻撃+一斉発射)
一度目の射撃で標的の出した剣一本を、他の剣二本をも諸共巻き込む形で撃ち落とし(スナイパー+なぎ払い)
もう一撃で敵を撃つ。
本機の作戦概要は以上、作戦の実行に移る。
オーヴァ。
(ザザッ)
三二ニ=-==ニ二三三二ニ=-==ニ二三
【Juggeraut Jaeger】
三二ニ=-==ニ二三三二ニ=-==ニ二三
まず最初に、結論から述べるなら。
ジャガーノート・ジャック(OVERKILL・f02381)は敗北した。
●
「ふむ」
アンヘルは、特に何の感慨もなく、地に伏せた機械鎧を見下ろした。
若干、興味の色が見えるのは、その形状が普段目にしないものだからだろう。
洗練されているわけではなく、ひたすらに無骨で。
戦いの果てに摩耗し、それでも運用され続けている、豹を模した金属の塊。
それがどのような因果でこの場所に至ったか――その“過去”には、わずかに興味を惹かれる。
……ただそれだけだ。
白、黒、灰――――三色の呪剣が、胸と、腹と、腕に突き刺さっている。
鍛錬を、戦闘を、そして戦う理由を奪われれば、中身がどのような戦士であろうと、もはや等しくただの「モノ」だ。
「この場に至った猟兵の標準を、君と捉えて良いのかな。私は。であるとするならば――些か考えを改めなければならない」
ここで待っていてもよいが……一人来た以上、次々現れるのが猟兵という生き物だ。
次は一手、こちらから動いて見よう。“仕込み”の一つぐらいは、良いだろう?
●
――…………より迅速な行動を。
――…………限界を超えて。
――…………早く、速く、疾く。
会敵した瞬間、1/23秒で放たれるはずだった熱線は。
それを上回る速度で繰り出された呪剣の前に、為す術も無かった。
無いはずだった。
(――――想定値より遙かに速い攻撃)
高速で攻撃を放てる、という事は。
(――――作戦失敗)
その処理速度に追いつけなくてはならない。少なくとも自己の知覚の中では。
(――――“行動を変更する”)
幸いにも。
その判断と決断は、呪剣を上回った。
●
「ああ、考えを改めよう」
“熱線に貫かれた肩から流れる血”を一度だけ拭って。
黒騎士アンヘルは嘲笑った。
「全員が君の様に戦えるのならば――――我が剣、全力を賭す必要があると」
苦戦
🔵🔴🔴
エスチーカ・アムグラド
○
……お父さん、いつも言っていました
『毎日の稽古こそが、剣士の本当の剣になるんだよ』
って
だから……この傷も、この傷も、この傷だって、チーカの『本当の剣』を創るもの
一つ一つがチーカに勇気をくれます
一つ一つがチーカを鼓舞してくれます
だから、チーカの剣は折れません! この傷でだけは、決して折るわけにはいかないんです! チーカは……大丈夫っ!
再現されるのは日々の鍛練と少しばかりの戦いの証
チーカがもっともーっと小さかった頃、子ども用の木剣を初めて握った、チーカが剣士になった時からの傷
それでもチーカはチーカ自身を励まして、ただただ剣を振るいます
チーカの『本当の剣』を
ソラスティベル・グラスラン
任せてください
わたしたちは、勇者ですッ!!
先制攻撃は他の猟兵と連携し、死角を埋めます
【オーラ防御】で斬撃の威力と速度を軽減、
【盾受け・怪力】で強大な力を受け止め、
【見切り】で逸らし、受け流します!
その防御に籠めた力を【力溜め】し、反撃の予備動作に
そして蒼雷の大斧による【捨て身の一撃・鎧砕き】の一撃を!
以上全ての行動を、全力の【勇気】で補います!!
もはや退路など無く
背負うはこの世界の命運、賭けるはわたしたちの身命
心昂る戦いに滾れ!勇気の御旗を掲げよ!!(【鼓舞】)
いざ未来を斬り開くために、只管に前へ、前へ進むのです
勇者とは未来を見据え、誰より前に立つ者なのだからッ!!
三二ニ=-==ニ二三三二ニ=-==ニ二三三二ニ三
【ちいさな、ゆうしゃたちのたたかい】
三二ニ=-==ニ二三三二ニ=-==ニ二三三二ニ三
エスチーカ・アムグラド(Espada lilia・f00890)は思い出す。
初めて木剣を握った日。
誰かを傷つける、力を得た日。
だけど、誰かを守れる力でもあると知った日。
間違った使い方だけはしないようにと、胸に誓った。
初めて剣に選ばれた日。
猟兵として、故郷を離れ、一人旅立った日。
寂しかったけれど、でもワクワクもした。楽しみもあった。
……エスチーカは。
己の過去に、怯えない。
●
――――勇気だけで勝てるのであれば。
きっと人々の嘆きが、宇宙に響くことはなかっただろう。
堕ちる艦も、人々の命も、星になることはなかっただろう。
「さて、次は君かな」
まして相手が黒騎士ならば。
その気高き魂ですら、単なる無謀にまで成り下がる。
「――――――っ!」
エスチーカがその現場に駆けつけた時、全ては終わっていた。
ドラゴニアンの猟兵は、大斧を担いでアンヘルに挑み。
そして斬られて、倒れた。
オーラの障壁を突き破り。
斬撃を受け止めた腕ごとねじ伏せられて。
そして周囲の空間から現れた無数の斬撃に切り刻まれて、床に転がった。
事前に“斬って”おけば、その空間は永遠にその斬撃を記憶し続ける。
その場所にいるだけで、攻撃を受けてしまう――過去を繰るアンヘルのユーベルコード。
「小さいな……その矮躯なら、斬るのは確かに厄介か」
終わったモノに興味はない。
アンヘルの瞳は、既にエスチーカに向けられている。
「っ! やああああああああああああっ!」
反射的に、剣を構えて突っ込んだ。
退いたら駄目だ、という直感は正しい。もし後ろに下がっていれば、“過去”を斬る攻撃に首を断たれて居ただろう。
乾坤一擲の一撃を、全力で。
エスチーカは正しい選択をした。それは間違いではない。
ただし。
正しい選択をしたものが、勝利できるとは限らない。
「成る程、そのサイズでも猟兵ということだな」
フェアリーの身体からすれば途方もなく大きい“身体”から放たれる“力”。
その正体は……“過去”。
「なら、まずは堕とすか」
露出した、片方だけの瞳が、ぼう、と光った。
直後、エスチーカの全身を、途方もない痛みが襲う。
「あ……っ、ああああああああああっ!」
戦士であればあるほど。
強ければ強いほど。
積み重ねた過去があればあるほど―――身体に刻まれた傷は数多い。
故に、『過去に負った全ての傷を一度に開く』、アンヘルの能力は、猟兵にとっての文字通りの天敵となる。
エスチーカは真面目な、努力家だ。
父親の教えを守って、毎日毎日、しっかりと稽古を積んできた。
毎日努力を積み重ね、毎日傷を負い、それら一つ一つを己の成長として刻んできた少女だ。
――――だからこそ。
「君という過去に敗北するといい。小さな猟兵よ」
アンヘルには勝てない。
羽が千切れ、力が抜け、空に浮いていた身体が堕ちる。
一度も剣を抜くことなく、二人の少女を片付けて、アンヘルは歩みを進めた。
他の猟兵達を、同じように始末するために。
●
『毎日の稽古こそが、剣士の本当の剣になるんだよ』
尊敬する父の言葉を、チーカはちゃんと覚えている。
まだ、本当の剣がどんなものはかわからないけれど。
それを手にするために、一歩一歩近づくために。
剣をとって、振ってきた。
初めて木剣で打たれた腕の青痣。生々しいけれど、加減のない痛みは、一人前と認められたようで誇らしい。
初めて斬られた本物の剣の痛み。涙が出てしまったけれど、自分がどんなモノを振るうかを、知ることができた。
エスチーカの傷は、エスチーカを作ってきた傷だ。
今の彼女がここに在る為に必要なものだ。
だから、そうだ。
この傷でだけは――――彼女の剣は、折れてはいけない。
折れるわけには、行かない。
●
「大丈夫です」
声は、自然と出た。
「チーカは、大丈夫です――っ!」
己を鼓舞するその言葉は、確かに力をくれる。
目を見開いて、愛剣……アムグラドを構え直す。
「む?」
仕留めたはずの相手から、声が聞こえた。
アンヘルが振り返った時、エスチーカの刃は、もうその眼前に迫っていた。
「たあっ!」
「ふっ」
それを振る少女のサイズは小さいが、刀身はそうではない。
全身を纏う風の本流と、エスチーカの意志に応じて、斬撃の間合いは急速に広がっていく。
「ほう、アレを食らってまともに動ける戦士は少ないのだがね」
勿論、合理的な理屈だって説明がつく。
エスチーカはまだ九歳だ――――“物理的に戦士として生きてきた時間が少ない”のだ。
実戦も、訓練も、本人が真剣に取り組んでいることを踏まえた上で……まだまだ未熟で、幼いから。
身体が覚える傷だって……これから増えていくのだ。
「チーカは……いいえっ、人は、過去に負けません――っ!」
それでも、技量差は圧倒的だ。
正面から立ち向かえば一瞬で両断されるから、フェアリーの体躯を活かして、まとわりつくようなヒットアンドアウェイ。
「過去は、勇気なんですっ! 今ここにいるチーカの事を、支えてくれる……証なんですっ! だから……だからっ!」
鋭く突き込む。その刺突は、アンヘルの頬を裂いた。
「その気迫だけは認めよう」
だが、その位置はアンヘルの距離でもある。
僅かな面積、妖精の首を精密に狙って、横薙ぎの斬撃が放たれた。
「だが、実力が足りない」
避けるタイミングも防御の術もない、狙いすました一撃は。
「――――その、通りです」
……割り込んだ“勇者”の手によって、防がれた。
●
「――――! お前」
アンヘルの注意は完全に逸れていた。
もう終わったものだと、断じてしまっていた。
何という愚かな話だ。己が過去を操る存在でありながら。
己が始末した過去を、考慮しないなどと。
エスチーカと切り結んだ間に、その少女の元まで後退させられていたことに、気づかなかった。
「声が、聞こえました」
ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)は、傷だらけの身体で、立ち上がった。
「過去は、勇気だと……そう、その通りです。わたし達には、勇気があります」
「…………!」
アンヘルは、目を見開いた。
ソラスティベルと持つ大斧と鍔迫り合う己の剣が、動かない。
最初は剣を抜かなかったから気づかなかったが――――この怪力は!
「胸に、勇気がある限り。気合と根性で――何度だってっ!」
なんて強引な、勇者の理論。
だけど、彼女にとって、それは絶対の真実だ。何故なら――彼女が今ここに至る過去を、その理屈が支えてきた。
何よりも信頼出来る、確かなルール。
「面白い」
アンヘルの仮面に隠れた顔が、笑みの形になったのが、見えずとも伝わる。
「ならばこれは、どう切り抜ける?」
アンヘルと鍔競り合うということは、ソラスティベルも動けないということだ。
周囲の展開される、白、黒、灰、三本の剣。
手で握らずとも作り出し、振るわずとも貫く刃。
「させませんっ!」
割り込んだのは、エスチーカだ。白い剣を弾き飛ばし、黒い剣を蹴りつけて、灰色の剣にその体を貫かれる。
「――――っ!」
戦う理由、何故ここに居るのか。その意志と記憶が空白になっていく。
それでも、まだだ。まだ――――。
「大丈夫、チーカは――――大丈夫……っ!」
「ええ、大丈夫っ! ありがとう、小さな勇者さんっ!」
エスチーカが作った時間が、ソラスティベルを突き動かした。
全力で押し込む、力を込める。大斧を叩きつけるタイミングをなんとしてでも作り出す。
「無駄な足掻きを……するんじゃあない」
対して、アンヘルは、あえて脱力を選んだ。
「っ!」
支えられていた体重が行き場をなくし、前につんのめる。
その僅かな隙を、当然、アンヘルは見逃さなかった。
隙間を縫うように放たれた刺突が、ソラスティベルの胸を貫く。
「がっ――――――」
「力は認めよう、勇気も――ああ、たしかに無謀ではなかった」
刃の根本まで突き刺して、アンヘルは息を吐いた。
今度こそ終わりだ、という、ある種の安堵のため息だった。
「……いいえ、この間合に、来たかったんです」
血を吐きながら。
痛みを堪えながら。
「――――――! 貴様」
剣を引き抜こうとして、アンヘルは気づいた。
引き抜けない……腕を掴まれている。
「わたしの攻撃の当たる場所は……ここだから――――っ!」
勇気とは。
立ち向かうことだ。
挑戦することだ。
逃げたい、退きたい、恐ろしい。
誰もが抱くその感情に、ちょっと待ったと自らを奮わせ。
“だけど、戦わなくちゃ”と。
理由を与えるためのものだ。
「わたしが負けることは……怖くない」
けれど。
「背負ったこの世界の命運は! 絶対に譲れないっ!」
その射程範囲、僅か30cm。
そう……“剣で刺し突かれなければ叶わぬほど密着した距離”でなくては届かないほど、近くて遠い距離。
この場所に来るために。
この瞬間に至るために。
ソラスティベルは、命すら消えてしまうかも知れない恐怖に。
勇気を出して、立ち向かったのだ。
だから…………この一撃は、勇者たちが辿り着いた、誤魔化しようのない確かな“過去を超えた現在”。
その名前は――――――。
「《我が名は神鳴るが如く(サンダラー)》――――――ッ!!!」
蒼雷を纏う大斧が、絶対に避けられないタイミングで放たれた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
煌燥・燿
【SPD】で過去喰らいの三呪剣と対決する
俺の得物は呪いのカメラだ。鍛錬も経験も過去も無い荒唐無稽な武器だ。
もしかすると三呪剣を突破できるかも。
◆過去の鍛錬の経験
写真は趣味とセンスで身に付いたもんだ。した覚えがねえ。
◆戦闘の経験
ファインダー越しに標的を追いかけるのは戦闘の経験とは関係ねえ。
◆戦うに至った過去
例え過去が無かろうと、俺はお前を撮るさ。
物心つく前から親父の真似して、シャッター切って遊んでたんだからよ。
・攻撃を突破できたら装備の殺影機を使い【影焼透鏡】を使用。
【撮影】にフラッシュの【目潰し】と【破魔】を重ねて攻撃する。
ピントが完全に合わないと致命傷にはならない。体力くらい奪えれば重畳かな
三二ニ=-==ニ二三三二ニ=-==ニ二三
【Secret Soul Shot!!】
三二ニ=-==ニ二三三二ニ=-==ニ二三
「うん?」
黒騎士アンヘルの前に現れたその猟兵は、大凡“戦士”には見えなかった。
彼が両手で保持しているのは、彼の認識する時代の水準からすれば石器時代のそれと呼んでも良い、ただのカメラだったから。
だが、敵であることには変わりなく、この場にいる以上は等しく斬るべき対象だ。
故に、過去喰らいの三呪剣は、視認と同時に、即座に放たれた。
●
「ぐっ」
ファインダーの中に、その姿を収める前に、煌燥・燿(影焼く眼・f02597)の身体を三本の刃が貫いた。
白の剣は過去の鍛錬を封じ、本来持ちうる技量を使用できなくする。
黒の剣は過去の経験を封じ、そこに至る蓄積を無為とする。
(けどよ――――)
耀はこう考えていた。
“写真の技術は趣味とセンスで身につけたモノだ。だから鍛錬なんてした覚えはない”。
“ファインダー越しに標的を追いかけるのは戦闘の経験ではない”。
…………だが。
それは単に自分が鍛錬でないと認識していたにすぎず。
カメラを構え、被写体を収め、撮影する、という行為を日常的に繰り返す。
繰り返せば、精度が上がる。慣れと蓄積は、即ち“鍛錬と経験”だ。
(――――そう、甘くねえか――――)
面白いほどに手がブレる。
笑えるほどに頭が揺れる。
――――そもそも、どこを押せば撮影できるんだっけ?
――――どうすりゃ見栄え良くなるんだっけ?
――――カメラって楽しいんだっけ?
そして、灰の呪剣が、“理由”を喰らう。
戦うに至った経緯を。
アンヘルに立ち向かうその過去を。
なかったコトにする。
以上を持って、耀は敗れた。
完膚なきまでに敗北だ。
悠々と横を通り過ぎる黒騎士アンヘルに。
彼は何もできなかった。
――――最後の一瞬を除いて。
●
カシャッ、というシャッター音が背後から聞こえて。
アンヘルは振り向いた。仕留めたつもりだったのだが、まだ息があるなら止めてやらねば。
視界の中に、カメラを構えた男がいる。
倒れ伏しながら、身体を震えさせながら。
「…………っ!」
脱力を感じる。己を構成する魂の一部が、たしかに削り取られた感触。
何だ、と思った時にはもう遅い。
男が、もう一度シャッターを切った。
今度は、目が焼け付く莫大な光量と共に。
●
灰の剣は戦いに至る経緯を封じる。
だが。
例え理由を封じられても、耀はシャッターを切るだろう。
こればかりは明確な動機がなくても、そうする。
眼の前に敵の大物がいて、背中を晒しているのだ、撮らない理由がない。
幼い頃から父の真似をしてシャッターを切って遊んでいた彼の、本能だ。
“戦う為ではなく、写真家として撮る”のだ。
そして被写体を収めたカメラにかけられた呪いは、意志とは関係ない所で発動する。
即ち、撮影されたものの魂を抜き取る呪い。
手はブレている。
技術も失っている。
だが、確かに写した。
(はは、目を閉じるなよ、写りが悪いぜ――――)
その思考を最後に、耀の意識はブラックアウトした。
苦戦
🔵🔴🔴
富波・壱子
【スクルド】
ユーベルコードの未来予知によって空間に刻まれた斬撃の配置を把握。二人へと伝えて黒騎士への接近をサポートします
どこから斬撃が現れるか分かっていれば回避は可能なはずです
私の仲間があなたを殺します
自身へと放たれる呪剣は両手に持った刀で対処
特に灰の呪剣だけは、武器受け・第六感・二回攻撃・戦闘知識・見切り、自身に備わるありとあらゆる技能を用いて絶対に防ぎます
あれを受けてしまえば、最悪『作戦を立てた』という過去すら封じられて連携すら出来なくなります。それだけは避けなければ
他の二本は急所でさえなければ当たっても構いません。サポートの為の声さえ出せればそれで十分です
行って下さい。健闘を祈ります
ゼン・ランドー
【3人チーム:スクルド】
「過去」は実に良い商品です。
ですが、今回は喧嘩を売りに来ました
敵の初撃を「戦闘知識・第六感・見切り」など
技能と仲間の予知をフル活用し、星命の戦刃と刻諦を盾に変形して
損害を最小限に留めて耐久しながら距離を詰め
仲間へ意識が割かれるなど、チャンスを掴む機会をうかがい
空間に自分の斬撃を命中させ蓄積した斬撃と空間に刻まれた斬撃を併せて逆転を狙います
過去は無限でなく、剣を振るう以上は最適な軌跡があり
攻撃の起点を読むことは全くの不可能ではないはず
ところで戦いというのは何時始まるものだと思いますか?
私にとっては貴方の事を知り、此処に来る前に腕が痺れるほどの素振りを始めた時からです!
ティオレンシア・シーディア
○
【スクルド】で参加
…どうあがいても早撃ちじゃ勝てないわねぇ、これ。正直頭焼けるほど悔しいけど。
…一番得意なことが通じないんじゃ、覚悟決めるしかないわねぇ。
壱子ちゃんの予知を信じて、第六感・見切り・武器落とし・早業・ダッシュ・ジャンプ・スライディング、使えるものは洗いざらい全部使って接近するわぁ。
多少斬られた程度じゃ止まってなんてあげないわよぉ。
クロスレンジまで近づいたからって油断しないわぁ。そういう剣術だってあるし。
無事に帰れるなんて思ってないし、一撃当てられたらそれでいいわぁ。技能フル活用で滅殺を叩き込むわよぉ。
…こっちにだって、意地があるの。ナメんじゃないわよザマーミロ…なぁんて、ね。
三二ニ=-==ニ二三三二ニ=-==ニ二三
【Perfect Knoc kout!!】
三二ニ=-==ニ二三三二ニ=-==ニ二三
ここに至るまで。
黒騎士アンヘルと正面から戦い、勝てる猟兵は居なかった。
だが、それは彼らが弱いという事と、決してイコールではない。
鎧は砕け、手傷を幾度となく負い、瞳は焼かれ、視力の三割は一時的に戻らない。
一戦一戦を見ればアンヘルの勝ちだが、その蓄積は確実に最終的な“敗北”へとつながっていく。
「――――艦ごと沈めるか」
それは案外、良いアイディアに思えた。
猟兵は己を追ってこの艦の中に来ているわけで。
ならば、艦のコアを破壊して、爆発に巻き込んでやればいい。
その場合、アンヘルも助からぬだろうが、彼は過去から湧き出る災厄だ。
躯の海からまた這い出れば良い。銀河皇帝が生きている限り、彼は永遠だ。
それよりも、厄介な反乱分子をここで始末するほうが確実ではないか?
……幾度となく“敗北”して死んだ己の過去を、彼は全て覚えていない。
だが、その蓄積は彼に、本能的な警戒心を生んでいた。
その思考は即ち“敗北者”の“逃げ”の思考であるのだが。
アンヘルはまだ、それに気づいていなかった。
●
「―――来たわね」
富波・壱子(夢見る未如孵・f01342)の予知は、どうやら大当たりらしい。
コア・ルームへ続く長い廊下の向こうに、黒騎士アンヘルが姿を表した。
「――――――」
何を言うでもなく、即座に放たれた三本の呪剣。
「――――ッ!」
白の呪剣と、黒の呪剣が、その腹部に容赦なく突き刺さった。
鍛錬と、経験を封じる刃。
だが、壱子はその二つに、最初から頓着していなかった。
「……攻略完了」
痛みは無視。今は必要ない。
それよりも重要なのは、この三本目。
灰の呪剣を防ぐことだった。
両手に構えた《カイナ》と《オース》を交差させれば、持ち主の意思によって形状を変化させる刃は、確かに応じた。
刃が厚く、強く変質する。切れ味より強度を増し――――。
「――――そこ」
呪剣が壱子の顔面の、わずか数ミリに迫った瞬間、かちあげた。
天井の金属に呪剣が突き刺さる。その刹那。
「ユーベルコード、起動」
間一髪で助かったにもかかわらず、動揺も焦りもない。
戦闘用の人格に、怯えや恐怖は必要ない。
淡々と――役割を果たせ。
身体を貫かれ、床に縫い付けられながら、壱子は目を見開いた。
《あなたの為の灯が点る(インスタントポラリス)》。
その視界に、過去を斬り裂く、未来を視る。
「――――二人共、行って下さい。健闘を祈ります」
●
壱子の言葉に応じて、ゼン・ランドー(マネーの狐・f05086)が先行し、ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)がその後を追うように駆けた。
「さあ――――正念場ですねえ!」
走りながら、ゼンの右腕、《刻諦》が、大きく鋭く変化する。
《星命の戦刃》もまた、思念によって形を変える――それは、刃のついた盾にも見える。
「突貫か。甘く見られたものだな」
対してアンヘルの行動は【過去】の再来。
この艦はもともとアンヘル麾下の部隊のものだ、故に“仕込み”は終わっている。
ゼンの首を刎ね飛ばすその位置で、設置した“過去の斬撃”を起動。
「死ね」
ザシュ、と味気ない音を立てて、その胡散臭い頭がぽんと飛んだ。
「コャン!」
「コュン!」
瞬間、分かたれた首と身体が、煙をあげて、細い管狐の姿になった。
何も誰も斬られては居ない。そのまま、二匹の狐はパタパタとどこかへ逃げ出してゆく。
「ここに来るとわかっていたのに、正面から立ち向かう馬鹿がおりますか」
声は、背後から聞こえた。
「過去は実に良い商品です。ええ――何時でも高値で売れますからね」
ですが。
「今回は、喧嘩を売りに来ました」
《星命の戦刃》が、長く、鋭く、薄く伸びる。敵を確実に貫くための形状変化。
アンヘルが選んだのは、振り向くことだった。不意を打たれた以上、そちらに対応すべきだという判断で。
正面からくる猟兵は……今度こそ過去が斬って捨てる。
●
(…………つまり眼中にないって?)
舐められたものだ。
ティオレンシアにとってそれは屈辱であり、同時にチャンスだった。
壱子の未来予知は的確だった。
首を、腹を、目を、足を。
斬り裂こうとする“過去”の刃が、発動する寸前でかわす。
勿論、全て回避する事など、最初から出来はしない。
だが、死ななければそれでよい。
避けきれず、身体を裂く刃を。流れる血を。全て無視して突き進む。
「近づきさえ、すれば――――――」
その瞬間。
眼前にある、全ての空間が、斬撃の壁となった。
「――――――!」
視界の向こうにいるアンヘルは、横目でティオレンシアの姿を見て、すぐに離した。
“もう終わった”と言わんばかりに。
過去の斬撃を記録し続ける、アンヘルの刃。
狭い廊下の、一つの面を埋め尽くすほど斬撃を刻んでおけば。
予知も速度も関係なく、その地点を通った瞬間に全てを斬り捨てることが出来る。
全身、余すことなく斬り刻まれて、ティオレンシアの体中から赤が舞い散った。
●
「一手遅かったな」
敵の胸元を貫く己の剣に対して。
猟兵の刃は、アンヘルの頬をわずかにかすめただけだった。
熱と、血の滴りを感じるが、これをダメージと呼ぶにはあまりにささやかすぎる。
「…………ククッ」
「……何がおかしい?」
致命傷を与えたはずだが、まだ生きている。
いや、服の内側に何らかの防御手段を仕込んでいたのか、出血量が少ない。
「いえいえ……似ていると思いましてねえ」
「何?」
「私とあなたが……いえ、私とあなたのユーベルコードが。まるで銀河皇帝のお言葉のようですよ……クク、クククッ」
「…………銀河皇帝を侮辱するか。負け犬が」
「とんでもない……あなた、二つも間違っていますよ」
「…………」
「銀河皇帝を侮辱したのではなく、“あなたがた全員”を虚仮にしたのです。そして……」
かはっ、と小さく血を吐いて。
「……そして我々は。まだ誰も負けてなどいないのですから」
●
「――――――ところで戦いというのは何時始まるものだと思いますか?」
全て思い通りだと、言わんばかりに。
腕を掠ったその刃が触れたことで、ユーベルコードの発動条件は満たされた。
「私にとっては貴方の事を知り、此処に来る前に腕が痺れるほどの素振りを始めた時からです」」
違いが有るとするならば。
アンヘルの刃は、過去の斬撃をその場に発生させること。
ゼンの刃は、過去の斬撃を複製して、対象に叩きつけるモノ。
罠としての性質を捨てた代わりに。
殺意をひたすら、高めている。
「――――貴様! 猟兵如きが!」
「死ななきゃ安い、いい言葉ですね――――命の価値が捨て値になる最高の瞬間です」
《八相破軍(ハッソウハグン)》。
数多の斬撃の群れが、アンヘルの全身を包み込んだ。
●
過去で斬り伏せ続けた男にとって。
過去で斬られるという屈辱は如何ほどのものか。
「――――ククッ」
だが。
アンヘルは生きていた。
アンヘルは立っていた。
敗北したのは、猟兵の方だ。
黒騎士アンヘルは、銀河帝国における双璧。
負けるわけがない。
負ける訳にはいかない。
「ククッ、ハハハハハ!」
生意気な真似をしてくれたものだが……結局、彼らは捨て身で挑んできて、アンヘルを打ち倒すことを叶わなかった。
即ち、これが現実だ、これが結果だ。強いものが勝つのだ。それはこの宇宙で、絶対唯一無二のルール。
最後にこの戦いを制すのは銀河皇帝――――我々だ。
「ハ――――?」
ぽすん、と何かが背中にあたった。
さしものアンヘルも気づくのが遅れた。
理由はいくつか有る。
一つは、彼にとってそれはもう、既に対処した“過去”であったから。
終わっているものを思考の外に置いた。それだけのはずだった。
一つは、今だ視界が完全でないこと。
目が焼き付いていなければ、動く影に気づいたかも知れない。
もう一つは――結局の所、傲慢だ。
自分が負けるわけがない、という傲慢。
“猟兵如きが”。
それが即ち、これから彼が負ける理由である。
●
「――――そもそも、ねぇ」
予知がなければ死んでいた。
予知があったから生きている。
結局の所、それが最大の理由である。斬撃の壁をあのまま通り抜けていたら、全身細切れなます斬り。
一歩前で踏みとどまったから、致命傷一歩手前で済んだ。
それだけの話しだ。
「最初から業腹だったのよぉ……こちとら、早撃ちが得意だってのにねぇ」
愛用の銃は、銃身が大きく歪んでいた。全くなんてことだ。返ったら大規模なオーバーホールが居る。
「それが通じないって言うんだものぉ……いろいろ考えさせてくれるわぁ、本当に」
けれど、まだ使い手はある。
六連装リボルバー《オブシディアン》を握りしめて。
「こっちにだって、意地があるの」
「貴様――――」
アンヘルがとっさに放ったのは、過去の傷を全て開く呪い。
この近距離で、即座に通じるユーベルコードはそれだった。
だが。
“そもそも今傷だらけで開く傷すらないような人間に通じる訳がない”のだ。
「ナメんじゃないわよ」
《滅殺(ブラスト)》
その拳がアンヘルの顔面に突き刺さり、その衝撃で弾倉内部の弾丸の雷管がぶっ叩かれ、間をおかずに爆発した。
「ザマーミロ…なぁんて、ね」
ふら、と、今度こそ倒れゆくティオレンシアが見たものは。
力尽き、身体が消滅していく、黒騎士アンヘルの最後だった。
成功
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