銀河帝国攻略戦㉒~銀河帝国の狂科学者
「既に状況は聞き及んでいることだろう」
物資支給コンテナに立ったグィー・フォーサイス(風のあしおと・f00789)が、集まった猟兵たちに視線を送る。一人一人の顔を見て、その表情を読むように。
まずは軽く戦況をと、グィーは語る。
猟兵たちによって『アマルテア情報艦隊』『オロチウイルス突撃艇群』は無力化。ついにドクター・オロチの乗艦であり研究施設でもある実験戦艦ガルベリオンを発見、砲撃を加え航行不能に陥らせたがガルベリオンはたちまちその損傷を修復してしまった。
その光景に、猟兵たちはドクター・オロチの生存を確信する。
ドクター・オロチは、銀河帝国の興亡に興味をもっておらず、銀河帝国攻略戦の帰趨には全く影響を与えない。けれど、ドクター・オロチが存在する事は将来の禍根となることだろう。
「猟兵としても解放軍としても、看過する訳にはいかない。そこで、銀河帝国の執政官兼科学技術総監ドクター・オロチとの決戦を行うことになったよ」
告げる声は、とても静かなものだ。
「ドクター・オロチは常に1体しか居ないけど、骸の海から蘇る力をもっているんだ。その力が尽きるまで、何度でも。すごいよね。他の猟兵たちが勝って骸の海に放逐されても、すぐに別の場所に現れるよ」
けれど、その力が尽きるまで、倒しきってしまえば良い。グィーは猫の目を細めて続ける。
「ドクター・オロチが骸の海から出現する大体の場所は解っているから、僕がそこへ君たちを送るよ」
そこは広大な実験戦艦ガルベリオン内の多数ある実験施設の一つだ。ドクター・オロチは既に現れているかもしれないし、まだどこかで戦っているかも知れない。もし、まだ現れていなければ待ち伏せすることも可能だろう。
ただし。指をひとつ立てたグィーが難しそうな顔をする。
ドクター・オロチは、猟兵たちを見つけたら必ず先制攻撃を仕掛けてくる。こいかにれを防ぎ、反撃するかがこの戦いの要となってくることだろう。
また、猟兵たちが敗北した場合、ドクター・オロチは回復した状態で別の場所に現れることとなる。
「格上の相手だ。僕たち一人一人では敵わないかもしれない。けれど、僕たちには仲間が居る」
そうだろう?
尾を立てたグィーが笑顔を浮かべた。
君たちなら可能だ。
「うん。難しいことを承知でお願いするよ。――ドクター・オロチを倒して欲しい」
それじゃぁ、気を付けて。帽子に手を掛けて礼をすると、グィーは静かにゲートを開いた。
壱花
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
また、『難易度:やや難』の依頼になります。判定は厳しめに行われますのでお気をつけ下さい。
という訳で戦争シナリオをお送りします、壱花です。
●ドクター・オロチ
ドクター・オロチは、先制攻撃を行います。
これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
●プレイングについて
難易度の高い依頼となりますので、17日の朝8時半以降から受付とさせて頂きます。
皆様の素敵なプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『ドクター・オロチ』
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POW : ジャイアントカルシウム
自身の身長の2倍の【恨みの叫びをあげる骸骨巨人】を召喚する。それは自身の動きをトレースし、自身の装備武器の巨大版で戦う。
SPD : カリスティックボディ
自身の肉体を【あらゆる生命体を溶解し取り込む緑の粘液】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
WIZ : ビャウォヴィエジャの森のフェンリル
【水晶剣が変形した門から『フェンリル』】の霊を召喚する。これは【炎の体を持つ巨大狼で、爆発を呼ぶ咆哮】や【瞳から放たれる魔炎光線】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●第三十七兵器実験室
猟兵たちが飛ばされた先は、伽藍とした部屋だった。
天井からは太いチューブの様な機械等が垂れ下がり、何かは解らないが大型機械の実験をしていた跡がある。また、兵器と思われる物がいくつもの透明なケースの中にあることから、兵器開発実験の部屋だと推測された。
遠くで戦う音がする。きっと仲間の誰かが戦っている音だ。
室内は静かで、君たち以外の気配は……まだ、ない。
そこに、突然ひとつの影が音も無く現れる。
可愛らしい赤いクマのパーカーに、白いファーのついた赤いケープ。フリルのシャツにサスペンダーが揺れる。しかし、一見可愛く見えるその姿から伸びる手足には無骨な武具。そして顔面があるはずの頭部には、剥き出しの脳が収まっている。
水晶剣を片手に揺らすその人物は、確認しあわずとも猟兵たちには解る。
銀河帝国の狂科学者――ドクター・オロチ、本人だ。
黒瀬・ナナ
【茶 闘゛部】の皆と一緒に行動。
強敵みたいだし油断は禁物!
隙を見せないようにアルルさんと互いを補い合いながら警戒。
『聞き耳』と『第六感』で相手の攻撃の音を察知して回避!ダメだったら『気合い』たっぷりの『怪力』で受け止めたり『オーラ防御』でダメージ軽減。
よーし、今のであなたの動きは見切ったわ!ここからはわたし達の番よ!
武器を振り回して大見得切って、
背中は頼もしい仲間に任せて、わたしは真っ直ぐ前に出るわね。
その顔面、ぶち抜いてあげるから覚悟しなさいっ!
アルル・アークライト
【茶 闘゛部】の人と協力
【POW】
絶対先制の力…恐るべき相手ね、それでも勝機はあるはずっ!
『弓弦は束ねて強くする』
1人1人はか細く頼り無い糸でも。
仲間と並び立つ私達は、反撃の一矢を引き絞る弦となるのよ!
人の絆、繋がりの力…受けてみなさいっ!
仲間を護り
相手の攻撃の隙を味方に狙って貰う事を主眼に動くわね
感覚を研ぎ澄まして『第六感』まで動員
相手の攻撃を『見切り』、『武器受け』で威力を殺しつつ
【トリニティ・エンハンス】で対抗!
圧縮した風の盾、水を固めた氷の壁。
二重の守りで骸骨巨人を抑え込みにかかるわ!
耐えた所で反撃よ!
チャンスは…今!ナナさんお願いっ!
私も剣を抜いて左右から交差する様に、同時攻撃よッ!
「待っていたわ! あなたがドクター・オロチね!」
「ムシュ?」
突然掛かった高い声にドクター・オロチが視線を向けると、そこには二人の猟兵が立っていた。
「まぁたキミたちかぁ。ボクが復活する度に現れるけど、何か仕掛けがあるようだね?」
既に幾度か猟兵たちと戦い、そして復活してきているドクター・オロチは、うんざりと言った様子で頭を揺らす。
「ムシュシュ、ま、いいや。今度こそ道を開けてもらうだけだから、ね」
おいで遊んであげると声を掛け、ドクター・オロチは骸骨巨人を喚び出した。
「そぉれ」
ドクター・オロチが水晶剣を振るうと同じ動作で骸骨巨人が手にした武器を振り下ろす。
背中を仲間に任せた黒瀬・ナナ(春陽鬼・f02709)は、骸骨巨人を真正面から受けに行った。その身に宿る力を高め、更に気で防御力を高めるが、ナナの練度では気休め程度にしかならない。
「ナナさん!」
アルル・アークライト(星剣使い・f01046)は《トリニティ・エンハンス》を発動さてせ風と水の加護で自身を強化すると、今にも膝を付きそうなナナを助けに行く。
加護の準備をしていたアルルがすぐさま動けた事が幸いし、ナナは潰される事を免れた。そして、防御の加護を重ねたアルルが受けることにより、骸骨巨人の一撃を何とか一撃を退けることに成功した。
「チャンスは……今! ナナさんお願いっ!」
骸骨巨人が再度武器を振り下ろすべく振り上げた隙を狙い、アルルが声を掛ける。
先程の一撃で、既にナナの息は上がってしまっている。けれど気力で持ちこたえ、薙刀を振るった。銘は『迦陵頻伽【花嵐】』。ナナの手によく馴染む愛刀だ。
アルルも刀を抜き、ナナに合わせ左右から二人で斬り付けた。
「ふぅん。ムシュシュ! それじゃぁ、これならどうかなぁ~?」
骸骨巨人が膝をついても、ドクター・オロチは余裕の姿勢を崩さない。
手の一振りで新たにもう一体、骸骨巨人を喚び出したのだ。
「うそっ、二体目!?」
「一体を相手にするだけでもいっぱいいっぱいなのにっ」
「動きが単調になってつまらなくなるんだけどね~」
さっさと二体目を出すことも出来たであろうに、ドクター・オロチがわざと手を抜いていた事を二人は知った。
「ムッシュッシュシュシュシュ! さぁ、どうするの? もっとボクを楽しませてよ!」
二人の刃がドクター・オロチに届くことはなかった。
苦戦
🔵🔵🔴🔴🔴🔴
シュデラ・テノーフォン
俺の、Glasregenはね
硝子の弾を撃てる銃だけを複製する能力なんだ
先ず元となる、専用の銃を君は持ってるのかい?
装備していないなら、そもそもこのユーベルコードは使えないよ
そんな事もあろうかと、とかンな展開が残念だけどあるのなら
複製された銃をクィックドロウで撃ち落とし
間に合わない分の銃弾は指輪の盾で防ぐよ
さ、次は俺の番だよ脳味噌熊
Cenerentolaに氷の精霊弾セット
基本的に巨人も粘液も炎の狼も攻撃を盾受けして、
精霊弾で氷結させ動きを封じる
相手を少しでも止めたら勝機
AschenputtelのGlasregenで本体諸共一斉射撃
俺の能力よく見ておきなよ?
まァ、見た時にはもう狩られるんだけどな!
●天狼
俺の、『Glasregen』はね。硝子の弾を撃てる銃だけを複製する能力なんだ。
「ムシュ?」
シュデラ・テノーフォン(天狼パラフォニア・f13408)の声に、骸骨巨人を操っていたドクター・オロチが首を傾げながら振り向いた。
続くシュデラの言葉を、ふむふむなるほどと言いたげに顎――と思われる場所に手を掛け、頷きながら一通り話を聞いて。
「ムシュシュ! 御高説どうもありがと~。でもね、キミ、勘違いしているよ」
幼子のような無邪気さで肩を揺らして笑うと、赤いクマパーカーが愛らしく揺れる。
ドクター・オロチの笑いが収まると、ドロリ。脳が収まる頭部から緑の粘液が溢れ出し、その身を包んだ。
「キミがさっき説明してくれた、その硝子は溶かせないんだけどねぇ」
見た目からは想像がつかない鞭のような靭やかさで、粘液がシュデラを襲う。
「――ちっ」
ドクター・オロチが自分の攻撃を複製すると思っていたシュデラは、慌てて『Schild von Cendrillon』を起動させるも、間に合わない。粘液の一撃を受け、じゅくり、と肌が溶ける感覚に眉を顰めた。
しかし、シュデラとてやられるだけではない。お返しとばかりに『Cenerentola』を撃ち込んだ。
「ムシュシュシュシュ! まだやる気があるんだ? それなら、もう少し、遊んであげるよ」
硝子の銃弾を水晶剣で弾いたドクター・オロチは楽しげに笑うのだった。
苦戦
🔵🔴🔴
アリス・フェアリィハート
アドリブや他の方との連携も
歓迎です
いよいよ
ドクターオロチさんとの決戦…
みんなで力を合わせて
この非道な方を…倒さなきゃ…!
他の猟兵さん達とも連携して
ドクターオロチさんと戦闘
敵さんの先制攻撃は
【第六感】と【見切り】を
フルに活用し
UCの【アリスと不思議の国の鏡】で相殺
以降も敵さんの攻撃は
第六感や見切り、【残像】で回避や、UCで相殺
先制攻撃を防げたら
【早業】で攻撃に転じ
手にした剣
『ヴォーパルソード』での
剣戟を駆使し
【属性攻撃】や【鎧無視攻撃】、【2回攻撃】での時間差攻撃や【衝撃波】で遠攻撃、【なぎ払い】等で
攻撃を行い
撃破を目指します
『これまで、ひどい事をなさってきた貴方を…見逃す訳にはいきません…!』
ヨハン・デクストルム
率直に申し上げましょう。私ではまずあなたに勝てません。
なので他の方々のサポートに尽くします。
【WIZ】フェンリルが召喚されると同時に「敵」という単語を含んだ何かしらの発言(早業+カウンター+拡声器使用)をし、UCを発動。あれを敵と思わない人はいませんし、共感は得られるでしょう。あとは誰かしら突貫なさる方に向かった攻撃を、あらゆる技能を使ってかばい、退場しましょう。
この身は捨て駒でかまわない。最後に『猟兵』が勝てばいいのですから。
尭海・有珠
【WIZ】
何度でも甦るなら何度も殺せば良い
道理だな、殺りがいがある。
私達は死んだらそれまでで、数とて無限にいるわけではないが
「お前を殺したい奴はそこそこいるのさ」
他に攻撃手がいるなら、敵攻撃の軽減・相殺に回ろう
護りに特化するという者がいるなら全力で攻撃させて貰うが。
【第六感】で敵攻撃の回避を狙いつつ、武器による【2回攻撃】で光線を幾本でも良いので散らす
敵の咆哮は、武器を前に盾にすれば直撃は免れるだろうし
多かれ少なかれ傷を負ってもダメージが与えられればそれで構わない
攻撃の際には氷棘の戯を4波に分散
1波は正面から厚めに放ち、迎撃を兼ねる
他3波は側面、背後から出現、敵へ放つことで命中率を上げる
●Open The Gate
「まったく。キリがないねぇ、キミたちは」
まだ来るのかとでも言いたげにドクター・オロチは肩を竦めた。
「まぁいいや。フェンリル~、おいで~」
水晶剣は既に門へと変じており、そこから炎の体の巨大な狼がのそりと現れる。
「お前を殺したい奴はそこそこいるのさ」
「――前方に敵影、対処しましょう」
尭海・有珠(殲蒼・f06286)は冷たい海色でドクター・オロチを見据え、海珠の武器を構える。そこへすかさずヨハン・デクストルム(神亡き狂信者・f13749)が《敵対宣告》を発し、仲間たちの戦闘力を増強させた。
炎の巨大狼に瞳が眩く光り、次いで薙ぎ払うかのような光線が放たれる。
ヨハンの宣言で共感し戦闘力を底上げした猟兵たちは、神経を研ぎ澄ませそれを回避。
回避した動きのまま有珠はフェンリルへ接近し、『海昏』で斬りつける。しかし傷は浅く、消滅させるには足りない。
「やるじゃないか、キミたち」
座興を楽しむかのようにドクター・オロチがはしゃいだ声を上げる。ガシャガシャと手甲を打ち合わせ――拍手をした。
ギリギリの攻防をする猟兵たち。対するドクター・オロチは未だに無傷で、楽しむ余裕さえあった。力量の差は歴然。
それを一番に理解していたのはヨハンだ。だからこそ、仲間たちの戦闘力を底上げする手を選択した。それは実に良い判断だったと言えよう。
「ムシュシュ、それじゃぁこうしようか」
水晶の門がまた開く。
まだ一体目のフェンリルが居ると言うのに、二体目がのそりと門から顔を出そうとし――。
「その狼さんは既に見ました……! ――【白の女王の鏡】に、映らないものはありません……!」
アリス・フェアリィハート(猟兵の国のアリス・f01939)が《アリスと不思議の国の鏡》でフェンリルそっくりな幻影を作り、門から出ようとしていた巨大狼を相殺する。
そのままアリスは駆けると、空色の光焔を纏った白銀の剣『ヴォーパルソード』を手に一体目のフェンリルに迫り、先程有珠が傷つけた箇所を狙い横薙ぎに払った。その動きにエプロンドレスがふわりと揺れ、腰のリボンが優雅さを持って追従する。
「ふぅん」
アリスが攻撃を仕掛けた時、既に一体目のフェンリルに見切りをつけたドクター・オロチは次なる門を開いて巨大狼を喚ぶ。
開けし門。爆発を呼ぶ咆哮は高らかに。
有珠は武器を前にし防御を固め、攻撃に転じていたアリスは――
「――大事、ありませんか?」
ヨハンがその身を挺して庇った。
この時ばかりは目を開いて。少女の顔を見、安否を確認するとまた閉じて。
その身に庇われた少女は、薔薇の蕾のような紅唇を震わせる。けれど、今は未だその時ではない。大丈夫だと頷きと笑顔をヨハンへと返した。
下がるヨハン。白銀の剣を構えて前に出るアリス。
「これまで、ひどい事をなさってきた貴方を……見逃す訳にはいきません……!」
「ムシュシュ! 無駄無駄、無駄だよぉ。今ここでキミたちの刃が届いたとしても、ボクは何度だって蘇るんだからさ」
「何度でも甦るなら何度も殺せば良いだけさ」
有珠が指揮を執るように海珠の武器を掲げる。朱色の氷棘たちは命を待つように綺麗に並んで。
二度目の咆哮は、アリスが防ぎ。
ドクター・オロチを護るように立ったフェンリルへ、氷棘が向かう。
「ムシュシュシュ……ムシュ!?」
間近で行われる戦いを楽しげに見ていたドクター・オロチの声が揺れた。
有珠が放った《氷棘の戯》の半数以上がフェンリルとドクター・オロチを囲囲んでいる。フェンリルの正面にあるのは一波のみ。四波に分かたれた朱き氷棘は、ぐるりと四方を囲んでいたのだ。
フェンリルは斬られ氷棘に穿たれ倒れたが、ドクター・オロチはそれらのほとんどを回避した。
「今のはちょっと楽しかったよ」
さあ、次は何して遊ぼうか。
狂科学者が邪悪な笑顔を浮かべる気配がした。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
ペパシア・ドロキペ
【SPD】カリスティックボディへの対抗
あらゆる生命体を溶かす液体…ということは、生命体以外で身を守ればいいのですわ。生命体の基準がよくわかりませんけれど、わたくしのエメラルドマントを広げて、身を守りながら進みましょう…
相手がどこから現れるかわからないので、注意は決して怠りませんわ。先制攻撃は受けること前提で、攻撃を受けたらそのままマントを相手に覆いかぶせてしまいましょう。液状の相手をそうして捉えやすい形にした上で、ユーベルコードの発動ですわ。そうすれば命中率が低くてもきっと当たると思いますわ!
「オロチさん!年貢の納め時ですわよ!諦めてお縄につきなさい!」
●お嬢様とクマ
一体何名の猟兵たちが自分を狙っているのだろう。
既に何度か倒されて猟兵たちと戦ってきているが、それでも猟兵は現れる。
ペパシア・ドロキペ(お嬢様はカラスと戯れたい・f00817)もその一人だ。
「……ムシュ、案山子?」
自分が脳みそなのは棚に上げ、緑の案山子の姿に不思議そうな視線を送った。
この研究室に、こんなものはあっただろうが。
「ただの案山子ではありませんわー!」
「わ」
思わず声を上げたドクター・オロチは脳からドロリと緑の粘液を溢れさせる。あっという間に緑の粘液となった身体でぼよんと跳ね、ペパシアの身体を包んで溶かしてしまおうと襲いかかった。
《カリスティックボディ》を纏ったドクター・オロチの動きは素早く、一息飲む間もなくペパシアへ迫っている。
が――。
「むむぅ、溶かせない~」
生命体を溶解することが可能な《カリスティックボディ》だが、それ以外は溶かせない。
予め『エメラルドマント』で身を包んで守っていたペパシアは、マントをそのままドクター・オロチを覆ってしまう。
「オロチさん! 年貢の納め時ですわよ! 諦めてお縄につきなさい!」
「わ、わ、なにするの!」
マントの下、ドクター・オロチは《カリスティックボディ》を解く。自身を覆う邪魔なマントも、水晶剣で切り刻んでしまえばそれまでだ。
しかしペパシアはこの機を逃さない。
「このーー! これでもくらえですわー!」
両腕をブンブン振り回し、ボコボコとドクター・オロチを殴りつけたのだった。
成功
🔵🔵🔴
バラバ・バルディ
【SPD】
自分をからくり人形で『かばい』つつ、徐に体を床に横たえる。
「ふぃー……いや、すまんのう。ほれ、わしは見ての通り無害な爺じゃろう?正面切っての戦いは不得手でのう。そこでじゃ、お主、遊ぶの好きじゃろう?一つ賭けをせぬか」
『挑発、罠使い、おびき寄せ』で乗ってきたら、自分のUCを教える。
「わしが成功すればお主は己が能力を自身で味わうことになるが、失敗すればわしは倍のダメージを食らう。負けたとてどうせ甦るお主には大した痛手ではなかろう?」
糸と杖を放し、無防備な状態で待つ。
失敗した場合は『激痛耐性』で堪えつつ魔力で人形を動かし自分を救出させ『早業、逃げ足、ダッシュ』で離脱します。
※アドリブ他歓迎
●賭けごと
ドクター・オロチの粘液は、生命体しか溶かすことができない。バラバ・バルディ(奇妙で愉快な曲者爺さん・f12139)は自身をからくり人形に庇わせ、粘液と化したドクター・オロチの一撃を躱した。
そして徐に――体を床に横たえた。
何か裏があるのだろうか。罠ではなかろうか。ドクター・オロチは思案する。
「……何してるの、爺さん」
「ふぃー……いや、すまんのう。ほれ、わしは見ての通り無害な爺じゃろう? 正面切っての戦いは不得手でのう。そこでじゃ、お主、遊ぶの好きじゃろう?」
「フシュシュ、好きだよぉ。だからこうして遊んであげているんじゃないか」
「一つ、賭けをせぬか?」
「賭け?」
バラバの提案にドクター・オロチは首を傾げる。
興味を示したドクター・オロチへバラバは自身のユーベルコード《オペラツィオン・マカブル》の効果を教え、尚且ドクター・オロチが負けたとしても大した痛手にもならないことを強調して伝えた。
「ボクとしてはキミを拘束して他の猟兵たちへの盾にしたり、新しい発明の実験台にした方が有益なんだけど……」
でも。でもなぁ。
何故だかその誘いにとても惹かれたのだ。
「いいよ~。その賭けにのってあげる~」
どろりとした緑の液体の姿のまま、バラバに覆いかぶさった。
そして――。
「ぎゃあああ、痛い痛い痛い!」
《オペラツィオン・マカブル》は失敗した。
粘液――ドクター・オロチはバラバの身を溶かす。それは痛みへの耐性を持ってしても痛い。だがしかし、バルバの大げさな痛がりようは演技である。
ジタバタと暴れ、ドクター・オロチがほんの僅かに身を引いた隙にからくり人形に自身を回収させると、バラバは一目散に逃げ出す。その動きは年齢を偽っていそうな程俊敏で――。
「――ひぃ。年寄りにはこたえるわい!」
「……変な爺さんだったなぁ」
ドクター・オロチは肩の力が抜けたように佇み、後を追うようなことはしなかった。
苦戦
🔵🔴🔴
シュデラ・テノーフォン
アレごめんね、勘違いして
じゃあ改めてヤろうか
今度俺が使うのはPOW
だから来るのは巨人かな
脳味噌熊動きをトレースするの?ならさ
視線は巨人を見るふりして、視界内の脳味噌熊の動きを注視
勿論巨人の立ち位置も確認しながら、オロチの動きを見て巨人の動きを予測する
トレースは追跡だから、僅かでもタイムラグがある筈
まァ速さ勝負だとは思うけどね、野生の勘も頼りに目標は巨人の一撃を回避
間に合わなくても攻撃の軌道を読んで指輪の盾で受け流すか止めてみせるさ
さァ、今度はどうだ
巨人を回避、または盾止めした瞬間反撃だ
AschenputtelにAccoladeの魔法を与えて光線銃に変化
可能なら巨人ごと、あのドタマブチ抜いてやる
●再戦
一度退いて体勢を立て直したシュデラは、再度ドクター・オロチの前に立っていた。
「改めてヤろうか」
「あれ? キミ、まだやるの?」
まぁ結果は変わらないだろうけど。
ぞんざいな態度でドクター・オロチは骸骨巨人を喚び出し、水晶剣を振るう。
骸骨巨人はドクター・オロチの動きをトレースする。そこに目をつけたシュデラその動きにはタイムラグが生じるはずだと油断なく動きを追う。――しかし、生じたところでほんのひと瞬きに過ぎぬ程度だ。
(まァ速さ勝負だとは思うけどね)
シュデラとて、それは解っている。
軌道を読んで指輪の盾を展開し、防ぎながら回避した。
(矢張り易易とはいかないか。けれど――次は俺の番だ)
シュデラは自らの羽根を抜き取り、『Aschenputtel』に《Accolade》の魔法を与える。硝子細工を飾った金属製銃は封印を解かれ、硝子の羽根を飾る光線銃へと変化した。
骸骨巨人に確実に光線を当てるには、頭部を狙った方が良い。しかし、骸骨巨人はドクター・オロチの身長の二倍あり、双方の頭部を撃ち抜くには高く飛び上がる必要があった。
ならば、と狙うのは、骸骨巨人のその奥。本命はドクター・オロチ。
骸骨巨人を狙うと見せかけ、その脳天をブチ抜くべく『Aschenputtel』を構えた。
光の矢のように、まっすぐに光線は放たれ――
頭部中心に当たりはしなかったが、クマパーカーの耳を見事撃ち抜いた。
「むっきー! ボクの可愛い耳がぁっ」
「ハハッ、どうだ! 楽しくなってきただろう!」
「さァ、もっとヤりあおう! 次こそはブチ抜いてやるからな」
頭部を押さえてポコポコ怒るドクター・オロチを見てシュデラは口の端を上げて、油断なく『Aschenputtel』をドクター・オロチへ向けるのだった。
成功
🔵🔵🔴
一駒・丈一
【―morgen―】で6名参加。一番手で動く。
POW
狂人に印籠を渡す。先日の精神攻撃の礼としてな
俺の仕事は敵の『隙』を産む事だ。
敵の巨人召喚の先制行動を使わせ逆に利用する。
敵が召喚前なら
先制の範囲は召喚までで
以降の巨人攻撃までは範囲に含まれず俺のUCを早業で割り入れる余地がある筈だ。
召喚後or前述以外なら
早業・見切り・戦闘知識・第六感を総動員し致命傷回避に注力。
その後
『決して何事も為し得ぬ呪い』発動で皆の盾となり敵の2撃以降を無効化。
俺に攻撃する間は本体も巨人同様の動作を行う。
このトレース行動が『隙』だ。
この隙を突き、敵周囲から味方が同タイミングで一斉攻撃。
数の利を短期にぶつけ勝機を見出すぞ。
花巻・里香
【―morgen―】
悪趣味なヒトには退場して貰わないとね
丈一さんの作戦に合わせて糸遣いを思わせる様にフォース・ストリングを操り攻撃
私の周囲に展開し糸をセンサーに粘液の軌道を見切り回避
更に念動力で僅かでも粘液の速度を抑え軌道を逸らす
・骸骨巨人や巨大狼による攻撃は無敵化した丈一を盾に、時には丈一を念動力で動かして仲間をカバー
回避中のミスを装う等捨て身のフェイント(完全な脱力状態)で作り出した偽りの好機(オロチにとっての)で誘惑し【捕食の外装人形】2度目の好機をこの手に誘き寄せる
騙し討ちの如くオロチの「肉体変化を無効化」し元の人型に戻った瞬間、風景等に擬態(変装)した、からくり人形による早業の一撃を
彩花・涼
【―morgen―】で参加
此奴を此処で仕留めなければ、後々厄介な事が起きそうだ
【殺気】を消して【目立たない】位置取りをして黒鳥を持って待機し、敵が現れ一駒に攻撃を仕掛けた所を【スナイパー】でオロチ本体に仲間とタイミングを合わせ攻撃開始する
攻撃対象が私になった場合は【見切り】と【残像】で回避専念して敵を引きつけるたり、
攻撃が当たりそうなら【武器受け】して【怪力】で敵の攻撃を受け、その間に仲間にオロチを攻撃してもらう
纏めて攻撃されないよう、立ち位置は注意
仲間で瀕死になりそうな人がいれば【かばう】で攻撃を庇いにいく
自身が瀕死になった場合はUCで戦場の亡霊を召喚して戦闘継続する
アネット・レインフォール
【―morgen―】で参加
▼静
ふむ…さしずめ狂人か。
この手の思考は俺には理解出来ないが…今は剣で道を切り開くとしよう。
▼動
【POW】霽刀を主軸
事前に葬剣を鋼糸状にし周囲に展開。
目的は主に一駒の能力発動まで一瞬でも攻撃から時を稼ぐことだな。
先制攻撃の盾役は仲間に任せるが、自分に来ないよう誓斧を装着し
足が遅そうな雰囲気を出し偽装を。
仲間と一斉攻撃時は【零斬】の神速で移動を繰り返しながら居合斬りを叩き込む。
優先度はオロチ>巨人だが、後者が邪魔な場合は時間稼ぎ目的で攪乱も行う。
鋼糸を自身の周囲に纏わせ、狙われた際には受け流せるよう準備もしておく
▼他
技能は全て攻撃時の一撃に込める
連携を重視、アドリブ歓迎
ザッフィーロ・アドラツィオーネ
【―morgen―】
団長が盾になり先制攻撃を防いでくれている隙に、皆で一斉攻撃をする作戦だ
敵の攻撃は先制される場合もその後も常に『第六感』と『戦闘知識』を駆使しながら敵の動きや予備動作等で攻撃のタイミングを予測しつつ避けられる様行動を
避けられぬ場合は『盾受け』と『武器受け』両方を使いなるべく受け流そうと思う
盾になってくれた団長を敵が攻撃している時に、隙をつく形で攻撃を仕掛ける際は【蝗達の晩餐】を敵へ
当たっても当たらずともその後も【蝗達の晩餐】
攻撃に回復、強化が出来る故、ある程度は動けるだろう
盾になってくれた団長や怪我をした仲間に攻撃が当たりそうな場合は『かばい』行動を
…無事皆で帰らんと、な
弦月・宵
【―morgen―】で参加
後々どころか、今で十分厄介なヤツだよ。
これ以上とか考えたくないや、と冗談っぽくいう。
ヒトにしたことは、自分に返ってくる覚悟をもってないと。
余裕面ひき剥がしてやる。
・先制攻撃へ対処
『破魔』と『祈り』で『オーラ防御』を強化して、ダメージ軽減の為に皆の周囲に張っておく。
…誰も、欠けないで(小声)。
・役目は主にアタッカー
技能が有効なら『先制攻撃』対抗。負けても『捨て身の一撃』で『カウンター』する。
一駒おにーさんが防御状態の時は攻撃に専念。対象はオロチ固定。
オロチの動きを目で『追跡』、『フェイント』や『力溜め』からの『鎧砕き』で【UC:ブレイズフレイム(POW)】を叩き込むよ。
●明日の砦の猟兵たち
「うわ。まだウジャウジャいる~。君たちもしつこいねぇ」
幾らか傷を負ったドクター・オロチが本当にうんざりだと言いたげに肩を落とす。
愛らしい赤いクマのパーカーは片耳を落とされ、ケープのファーも毛羽立っている。猟兵たちとの練度差は二倍以上あるはずだ。それなのに、それなのに。
何の動作も無く新たな骸骨巨人が召喚された。
「もう遊ばないでさっさと倒しちゃおっかな、っと!」
水晶剣の動きに合わせ、骸骨巨人が猟兵たちへと武器を振り払う。同時に水晶剣を門へと変じさせて巨大狼を喚び出すと、自身の身はどろりとした緑の粘液に変化する。
ドクター・オロチは、向かってくる猟兵たち”全員”に対して先制攻撃が出来る。それ程の力量差があることを猟兵たちは理解していなくてはならない。猟兵たちの数が多ければ、その分ドクター・オロチからの攻撃回数も増える。それぞれがその攻撃をいかに防ぎ、次の手に繋げるかが重要だった。
骸骨巨人の武器が切っ先が向かう先に居るのは、アネット・レインフォール(剣の教育者・f01254)と一駒・丈一(金眼の・f01005)と弦月・宵(マヨイゴ・f05409)の三名。武器を多く持つアネットの姿から攻撃手と判じられたのだろう。真っ先に潰すに限る、と。
アネットは鋼糸状にした『葬剣【逢魔ガ刻】』を周囲に展開していたが、ぷちっと手中へ糸が千切れる感覚が伝わり、眉をひそめた。
けれど、ほんの僅か。僅かではあるが、敵の武器を押し止める事は叶ったのだろう。
アネットが作った僅かな時間。瞬きをする程の一瞬の間。その間を活かすべく、丈一は素早く行動した。まずは回避をと二人を突き飛ばし、骸骨巨人の攻撃を避けさせた。
素早く宵は体勢を立て直すと胸の前で両手を組み、祈る。
「……誰も欠けないで」
既に、一生分泣いた。小さな身には背負いきれぬほどの悲しみを抱いた。それ故に、宵は誰一人欠けてほしくはなかった。
小さな声に載るのは破魔の祈り。宵の祈りは仲間たちへと届き、気の守護が高まった。ほわりと暖かく感じるのは、宵の切なる願い故であろうか。
ビャウォヴィエジャの森から呼び出されたフェンリルの瞳が怪しく光ると、魔炎光線が真っ直ぐにザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)へと向かった。予備動作など、無いに等しい。
けれどザッフィーロは片手を正面に翳し『Erhalt uns, Herr, bei deinem Wort』を起動させる。それは、ザッフィーロの意識と連動し現界するエネルギーの盾。宵の加護を受けているとは言え、長く受けていては盾が保たぬと判断したザッフィーロは受ける時間を最小限に抑え、後方へ跳んで躱した。
「フシュシュシュシュ!」
ドクター・オロチが粘液の体を弾ませ花巻・里香(クリスタリアンの人形遣い・f05048)に向かえば、動きをトレースして骸骨巨人も里香へと向かおうとする。しかし、それはさせじと躍り出る長身の男――丈一の姿が。
「そこの骨。お前の相手は俺、だろう? ――俺の忌まわしき宿命を、今この場にて顕現させる。俺は、決して何事も為し得ぬ呪いを背負う」
――唯の、断罪人だ。
丈一が言葉を発した途端、怨嗟がその身に纏わりつく。おどろおどろしいそれは、咎人の怨嗟。
骸骨巨人の突進を正面から受けるも丈一の足は地に縫い付けられたかのようにビクともしない。
丈一は、骸骨巨人が丈一を攻撃する間はドクター・オロチ本人も同様の動作を行うと考えていた。そして、そこに『隙』が生じると。……しかし、骸骨巨人はドクター・オロチの動きをトレースするのであって、ドクター・オロチが骸骨巨人の動きをトレースする訳ではない。例えもしドクター・オロチがトレースしていたとしても、すぐさま解除してしまえばそれまでの話だ。――彼等が狙っていた一斉攻撃の好機が訪れることはなかった。
花巻・里香(クリスタリアンの人形遣い・f05048)は周囲に糸を展開し、緑の粘液と化したドクター・オロチがその糸に触れることで軌道を読もうとする。しかし、粘液の動きは想像以上に早い。そのため更に念動力を用いることで速度を抑え、触れることなく回避することに成功した。
粘液がぼよんと跳ね、里香から距離を取り――ドクター・オロチが元の姿に戻ったその時。
――ガウンッ!
銃声が響いた。
殺気を消して研究室の備品の影に身を潜めていた彩花・涼(黒蝶・f01922)の『黒鳥』――真っ黒な銃身のスナイパーライフルから銃弾が吐き出されていた。
一瞬の隙を突いた攻撃。――しかし、間に割り込んだフェンリルがその身を挺してドクター・オロチを庇い、ドクター・オロチにその銃弾が届くことはなかった。
「……」
涼は不服そうに眉を顰める。が、フェンリルは銃弾を受け消滅させる事が叶っている。最良の結果ではないが、良い結果は得られている。
「わあ、びっくりしたなぁ」
あまり驚いているようには思えない口調で言葉を紡いだドクター・オロチは、新たに骸骨巨人を喚び出すと水晶剣を振り払う。涼が銃を抱えて駆け出すよりも早く、その一撃は揮われ、涼は大量の血液と共に床に伏すこととなった。
仲間たちの、自分を呼ぶ悲鳴めいた声を耳にしながら、涼は《戦場の亡霊》を発動させる。自身が抜ける戦力の穴は、出さない。涼が喚び出した亡霊は、すぐさま主に重傷を負わせた骸骨巨人の頭部をスナイプし、これを撃破した。
「あっちは、っと……まあ、わざわざ今すぐ殺さなくても、後からゆっくりトドメを刺せるからいっか」
瀕死の状態で倒れている涼をチラリと見ただけで興味を失ったドクター・オロチは、水晶剣を片手で一振り。迫るアネットの霽刀を払い除け、返す刃でその身を斬りつけた。
それでも多勢に無勢。長引けばドクター・オロチの身にも微かな傷は増えていく。
「――肆式・零斬」
ただの剣術では届かぬならばと、アネットはユーベルコードを発動させる。しかし、技能を込めたところでドクター・オロチとの錬度差は覆らぬものであり、その攻撃は読まれていたかの如く易易と避けられ、逆に斬り伏せられる。
丈一の眼前の骸骨巨人も同じ動きをするため、丈一は《決して何事も為し得ぬ呪い》を解除することが出来ず、動くことが出来ない。
ザッフィーロは新たに喚び出されたフェンリルに応じるので手一杯。
宵の《ブレイズフレイム》も回避され、そして斬られた。
ドクター・オロチへのカウンターを狙った里香の《捕食の外装人形》は、相性の問題かも知れないがドクター・オロチに対してそもそもの成功率が低く、逆に二倍のダメージを返されてしまう。元の攻撃ですら命を奪いかねない一撃。宵の加護を得ていても、そのダメージ量は計り知れない。一瞬で意識を刈り取られて、地へと伏すこととなった。
次々に倒れていく仲間たち。
打つ手はないのか。そう、全員が思いかけた。
その時。
『黒鳥』が羽搏いた――。
――パァン。
研究室内に、三度目の銃声が響く。
「な」
表情という物があったとしたら、ドクター・オロチは驚いた表情をしていたことだろう。
細く伸びる残響音の中、ドサリとその身が床に倒れる。
猟兵たちも瞠目し、その姿が骸骨巨人や巨大狼と共にサラサラと砂のようになって消え去るのを息を呑んで見守った。
既に彼女は虫の息で、動けないはずだった。
口からは血を流し、自ら立ち上がる事も叶わず、倒れ伏した。
けれどその身には、宵の加護があった。宵の祈りがあの一撃を軽減させ、少しの間とは言え休む時間を与えてくれた。ドクター・オロチの認識外となったその身は、仲間たちが倒れても殺気も心も殺して耐え、好機を窺っていた。
(――貴様の敗因は、私達を侮ったことだ)
涼の手が『黒鳥』から離れ、床に落ちる。離れる瞬間、その手は愛銃を労るように撫でて。
言葉を発する気力など既に無く、最後の最後の力で引き金を引いた。勝利の声を挙げることも叶わず、意識は闇に飲まれようとしている。
――ああ、瞼が重たい。
ドクター・オロチの消滅を確認した仲間たちが駆けてくる振動を伏した身に感じる。
仲間の気配を近くに感じながら、涼の意識は暗闇に染まり――そして、閉ざした。
こうして第三十七兵器実験室での戦闘は終了した。
辛勝ではあるが、ドクター・オロチを討ち倒し、猟兵たちは仲間と肩を貸し合いあるべき場所へ帰るのだった。
これがドクター・オロチとの最後の邂逅であることを願って――。
苦戦
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