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銀河帝国攻略戦㉑~強敵!黒騎士アンヘル!

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦 #黒騎士アンヘル

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『「クライングシェル艦隊」、「アゴニーフェイス艦隊」の二つが解放軍に落とされたか』
 全身を黒一色で統一された恰好、紅蓮を思わせるオーラを身に纏った騎士がつぶやいた。
 黒き騎士は、眉一つ動かすことなく、剣の柄に手を添えながら独り言を続ける。
『猟兵達が黒騎士である我がもとに来るのも時間の問題か。艦隊を二つ失ったに過ぎない、が、借りを返しておくのもいいだろう。さらに言えば、一人の戦士として剣を振るう方がやりやすいというものだ』
 味方の助力など、返って足かせだと言わんばかりにそう言うと、黒騎士は眼光鋭く暗黒の宙を眺めた。
『猟兵ども、二大巨頭の一人と言われた我が力、思い知るがいい。先手が我が物なのは明白。反撃の余地などないまま朽ちていくがいい』


「みなさん、「クライングシェル艦隊」、「アゴニーフェイス艦隊」での戦い、お疲れさまでシタ。銀河皇帝との戦いも間近。ですが、黒騎士アンヘル、彼も捨て置けまセン!」
 グリモア猟兵であるモッチ・モチの話し方にも熱が入る。
「二大巨頭と言われる『白騎士』と『黒騎士』。その片方が黒騎士アンヘル、デス。彼の力は強大。もし、銀河皇帝を倒したとしても、その後、第二のオブリビオンフューチャーとなる可能性や、残党を率いて悪だくみをする。そんな可能性が残ってしまいマス!叩けるうちに叩いておくのも戦術としてあるのではないでしょうか」
 モッチは眉を寄せ、さらに続ける。
「ぶっちゃけ、すごく強敵デス!とても危険なことを承知してくだサイ。敵は、ユーベルコードを使用してくるばかりか、『必ず』先制してくることが分かっていマス」
 猟兵たちにどよめきが広がる。モッチは、猟兵達をなだめると、さらに続けた。
「みなさん、『敵の攻撃をいかに防いで、反撃を加えるか』、それが重要になってきマス。『敵の攻撃をいかに防いで、反撃を加えるか』、とても重要なので2回言いまシタ」
 よっぽど大事なのか、2回繰り返したモッチ。これで猟兵たち全員に伝わったことだろう。

「今回、解放軍の援護は期待できまセン。なぜなら、彼らにとって銀河皇帝との決戦が最重要でありそちらに向かったからデス。そして解放軍に、戦力を大きく削がれた『黒騎士アンヘル』を優先する理由はない」

「しかし、猟兵は違いマス。黒騎士撃破、よろしくお願いしマス。みなさんの無事と作戦の成功を祈っていマス」


オノマトP
 オノマトPです、よろしくお願いします。
 対応戦場㉑黒騎士アンヘルのシナリオになります。
 敵はすごく強敵で、先制攻撃をしてきますので、いかに防いでいかに反撃するか、みなさんの検討を期待しています。


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 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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第1章 ボス戦 『黒騎士アンヘル』

POW   :    消えざる過去の刃
【虚空から現れる『空間に刻まれた斬撃』】が命中した対象を切断する。
SPD   :    過去喰らいの三呪剣
【過去の鍛錬の経験を封じる白の呪剣】【過去の戦闘の経験を封じる黒の呪剣】【戦うに至った過去を封じる灰の呪剣】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    記憶されし傷痕
【対象の肉体】から【過去に刻まれた傷跡や病痕】を放ち、【一度に再現され肉体を蝕む出血や疾病】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 朽ちた戦艦が何隻も宇宙空間を漂っている。あっちにもこっちにも。それはもう何隻もである。
 そのうちの一隻に異変が生じた。人影、だろうか。何もない空間から突如滲み出すように現れたそれは言った。
『さて、何度目となるだろうな、躯の海から滲み出るのは』
 黒騎士アンヘルは、己が手を見つめながら、握っては開きを繰り返している。自身の肉体を確認しているのだろうか。最後にぐっと力を込めて握り、開いた。
『準備運動も必要としなさそうだ。十分に力は満ちている』
 首を左右に倒し、コキッと小気味よく音を立て、指の関節を曲げると、ゴキンと不吉な音を奏でた。
『ここにもそう遠からず来るであろうな。あの者たちが。ならば掛かる火の粉は振り払わねばなるまい』
 無感情なまでの口調。しかして、その眼光は、深く深くどす黒く、悪意を帯びていた。矛盾ではあるが例えるなら、まるで鈍く鋭いガラスのよう。
『来い、猟兵ども』
 振り向き様にそう告げるやいなや、戦いの火蓋は切って落とされた。
水心子・静柄
過去の亡霊、過去の刃ね…常に前を向いて(未来に向かって)進んでいる私達、猟兵からしたら大した相手じゃないわね。

黒騎士には得意の居合をブチかます…その為に黒騎士まで最短距離をダッシュするわ。前に進んでいる私に後ろから空間を刻んでも当たらない…なら前に刻むしかないわよね?居合で斬るなら右腕と機動力の両足さえ繋がっていれば十分、それ以外なら切断されても問題はないわ。相手の攻撃を防ぐなんて生半可な事はしない、居合で相手を斬る為に肉を斬らせて骨を断つ!

それにしても過去を操る黒騎士が未来を(前から)斬るしか出来ないなんて滑稽だわ。


アポリー・ウィートフィールド
悪辣なる艦隊を率いた黒騎士、汝に引導を渡さん。

POW対策
即座に貪食の黒き靄を発動。射程範囲全てに我が蟲を満たし、空間に刻まれた斬撃に蟲を斬らせる事で可視化し、回避する。
黒き靄の展開を維持しながら可視化した虚空の斬撃をくぐり抜け、黒騎士アンヘルに肉迫。
マグロク・O・スレイヤーを抜き放ち、蟲と剣撃の同時攻撃をかける!
汝の用意した斬撃の結界をも喰らう我の蟲の結界からは、逃れられはしない!


ビスマス・テルマール
来るべき時が来ましたか、対策として編み出した物が通用するか解りませんが、いざ勝負です。

●POW
アンヘルのユーベルコードに対し、わたしのユーベルコードの適応の範疇なら割り込み『範疇攻撃』『オーラ防御』『盾受け』『武器受け』『カウンター』を併用し、わたしのユーベルコードでアンヘルのユーベルコードを食べます

ソレで自己強化の後に
『誘導弾』『一斉発射』『属性攻撃(凍結)』『2回攻撃』可能なら『スナイパー』も付けて、ディメイション・なめろうブレイカーの砲撃で反撃です

相手のユーベルコードで食べる範疇のが来る度に、仲間と連携して立ち回り、食べれる位置どりをキープします

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎



『先手は頂いた。何度試そうとそれは変わらん』
(ブォン…!)
 黒騎士アンヘルが手を前に伸ばし邪悪な力を籠める。視覚的変化は何も起こらない。ただただ、威圧感のようなものが辺りを渦巻くような不吉とも呼ぶべき違和感が残る。
 黒騎士はその場から動くことなく、不敵な笑みを浮かべ猟兵の出方を窺っている。
「過去の亡霊、過去の刃ね…常に前を向いて(未来に向かって)進んでいる私達、猟兵からしたら大した相手じゃないわね」
 水心子・静柄(剣の舞姫・f05492)が臨戦態勢を取る。得意とする居合をブチかますべく、接近する腹積もりだ。
「来るべき時が来ましたか、対策として編み出した物が通用するか解りませんが、いざ勝負です」
 ビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)が静柄の横で身構える。彼女は理解していた。敵が先手を……、過去を軸とした攻撃を放ってくるということを。ユーベルコード【フードユーベルネーション・アーマード】。この能力(ちから)を持ってすれば、いかに黒騎士の操るユーベルコードが強かろうと、恐るるに足らず。
「そう、わたしのユーベルコードは、敵のユーベルコードを食べるユーベルコード。それこそフードファイトの極みです!」
 空間に刻まれた斬撃の数々。確かにそこにあるはずのもの。見えないそれの食べるべく、自らの鎧装でもって受けんと前に出ようとした。
「我が援護しよう。我の力で黒騎士の不可視である斬撃を可視化する。『我の忌むべき欲望の片鱗、今解き放たん!《貪食の黒き靄》!』」
 そう名乗り出たのはアポリー・ウィートフィールド(暴食のイナゴ男・f03529)。イナゴのキマイラである彼は、即座に異形の蟲を放った。翅を有した蟲、蟲、蟲。貪欲に、本能のままに全てを貪り喰らう獰猛な五分の魂たちは、その夥(おびただ)しいまでの数的暴力でもって、黒騎士に向かい、波のように、風のように、飛ぶ。いや、これはもはや嵐。
『蟲など何の役に立とう。扱う武器が二刀なら足りぬだろうが、我が剣は無数』
 自身の周りに漂わせていた紅蓮の剣が意思を持ったかの如く、個々が飛びまわり、蟲を屠っていく。
 次々と切られていく蟲たち。しかし、その過程で不可視な斬撃の位置をも見破っていく。
 位置を看破すればこちらのもの。猟兵達は一気に距離を詰める。
「援護助かります!」
 斬撃のひとつに近付きつつ、アポリーに礼をいうビスマス。斬撃に口を近付ける。
(ピキン……ッ!)
 ビスマス結晶のクリスタリアンであるビスマスの口に、斬撃が入る。自身の持つオーラで負傷を抑え、斬撃を食べるというよりも、敵のユーベルコードを食べるという意識でもって、飲み下した。
 文字通り体内を切り刻まれるような、それでいて、身を引き裂かれるような激痛がビスマスを襲う。
「「ビスマス(殿)!!」」
 猟兵二人も味方の身を案じて叫んだ。
(ドクン…ッ!)
 ビスマスの鼓動が強まり、その姿を変えていく。青だった肌は、鎧とマスクで覆われ、今は何色であるのか窺い知ることはできなくなった。そう、その姿を黒騎士へと変容させたのだ。
『面妖な真似を。斬撃を食べただと?……あとなんでしれっと今のを真似たかのように蟲たちも食べ始めてる』
「汝の用意した斬撃の結界をも喰らう我の蟲の結界からは、逃れられはしない!」
 可視化した斬撃を避けつつ、黒騎士に接近しながらアポリーがそう告げた。
「はぁ…はぁ……、なかなかの味でした。今度はお返しです。なめろうはお好きですか?」
 ビスマスは、敵の斬撃を食べたことで強化されたディメンション・なめろうブレイカーを構え、砲撃を放った。
(ドッゴォーン!!)
 なめろうを宿した武器による攻撃は黒騎士に命中すると、爆炎と煙を発生させた。
 その隙を突き、黒騎士に肉迫する影があった。
「マグロク・O・スレイヤーの威力を見よ」
「ハッ!」
 大太刀級の包丁を構えたアポリー、鞘に納めた状態の脇差を構えた静柄の両名が、黒騎士と目と鼻の先まで近付く。その距離わずか30cm。
『接近戦か。私にその手で挑んでくるとは、命知らずな』
 自身のオーラで形作られた剣が、黒騎士を中心に高速回転、猟兵二名は必然その剣に引き飛ばされた。
「ぐっ!」
「っ!」
 紅蓮の剣が鮮血をすする。
 二人は重症とまではならずとも、痛手を負う。

『猟兵どもの力、予想以上ではあるがまだまだ。これで終いかな?』
 マスクで顔の大半を覆ったその顔からも伝わってくる。こちらも値踏みするような目をその表情。
 騎士は手に持つ剣の血振りをすると、次の攻撃に備えるのだった。

苦戦 🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​


 宇宙に浮かぶ廃頽した戦艦の数々。それらが四方八方から戦場である甲板を見下ろしている。
『殺風景な場所だ。だが、ここなら墓標いらずだな。ここが貴様らの墓場となるのだから』
 黒騎士アンヘルは両手に握る紅蓮の剣を地面に、いや、宇宙戦艦の甲板に突き刺した。
 黒騎士が片手を前に出すと、その手は真っ直ぐ猟兵達がいる方へと向けられた。
『墓標に刻む文字など考える必要はない。ただ、貴様らの髑髏(しゃれこうべ)を差し出せ』
 前に突き出した手に全身を纏っていたオーラが集中しだす。黒騎士は次いで、詠唱を始める。とても低く、冷たい。ただただ確固たる殺戮の意思を感じる声色で、はっきりと、告げる。
『我が力により、過去……「干渉」し、肉体……「具現」させ、痛み……「再現」せよ』
亜儀流野・珠
お前がアンヘルとかいう奴か。随分と禍々しい気を纏ってるな?
何しに来たかは分かるよな。お前を放っておく訳にはいかないからな!
俺達は負けないぞアンヘルよ!

過去の傷や病を一気に放出か…病はあまりないがこんな性格だから傷は多く受けてきた。
動けなくなるだろう…俺はな!
だが苦難を共に乗り越えてきた相棒、いや相棒たちがいる!
「千珠魂」…俺たち、召喚だ!
俺たちよ薙刀・狐の爪を構え全員で掛かれ!
随分と剣を持っているようだがこちらの刃は百を超えるぞ?
すばしっこい俺たち皆を相手にするのは大変だろう!
俺たちよ、存分に斬って薙ぎ払え!隙があったら狐火で燃やしてしまってもいいぞ!


萬場・了
一時的で構わねえ。〈安定錠剤〉を通常よりも多目に噛み砕く。
ふひひ、俺は平凡な街の生まれだ。他のヒーロー(猟兵)達と比べりゃあ前線に立つ機会も少ねえ。この肉体に刻まれた傷なんて大したことねえな!〈激痛耐性〉で堪えてやるよ!

ま、自分の傷にギリ耐えたところで、ボスじゃ、ユベコが無くたって強いんだろうよ。ひ弱な俺が正面向かっていったってやられちまうだけだからな。
この呪いのカメラでヤツの〈生命力吸収〉を狙う。俺には俺の戦い方、ってやつだ。
【強制記録媒体】なら、敵に近付かなくともカメラを向けるだけでヤツに金縛り効果と〈恐怖を与える〉攻撃ができる…。俺の身体がどうにかなろうと、カメラは回ったままだぜ……!


ジロー・フォルスター
いかにも強敵だな
最初は聖痕で味方の傷を回復支援する

敵のUCを食らえば、病気こそしてねえが、全身に聖痕を刻んでいるから痛みで一瞬は足が止まるだろう
が、その後は【激痛耐性・オーラ防御・呪詛耐性】で耐え、すぐに復帰する
元より、自分の血を操る咎人殺し、痛みに耐える聖者、体の強い半吸血鬼だ
【医術】知識も使い聖痕で命に関わる出血だけ塞ぐ

「傷を負った分だけ、強くなってきたつもりだ」

【カウンター】だ
『思念の鎖』と『周囲に散った自分の血で動かし易くした銀の鞭』
双方を【ロープワーク】で操って黒騎士の体を拘束する
【属性攻撃】で血を凍らせ拘束力を強める

文字通り命がけで動きを止めて、味方の攻撃をぶちこむ隙を作ろう


雛月・朔
依頼参加前に器物から生み出したばかりのヤドリガミの肉体で参加
主武器:薙刀、くない、念動力、【WIZ判定】
UC:巫覡載霊の舞
アドリブ&他PCとの絡み歓迎

【心情】
他人の過去を武器にする?そんな自分の努力も実力も伴わない力を振るっていい気になっているんですかあの黒騎士とやらは。

【行動】
UC巫覡載霊の舞(WIZ)で黒騎士を攻撃します。
黒騎士のUCは【対象の肉体】に刻まれた傷を再現するものですよね?
残念でしたね、【肉体】を器物から何度でも生み出せるヤドリガミには意味がありません。
『そんなUC、私たちヤドリガミには効きませんよ。なにせ、この肉体は今朝生みだしたばかりの傷ひとつない身体です。』



「お前がアンヘルという奴か。随分と禍々しい気をっ……纏っているな……っ」
 黒騎士の【記憶されし傷痕】を受け、痛みに耐えるような声を出したのは、亜儀流野・珠(狐の恩返し・f01686)。彼女は外見の年齢こそ16歳ほどに見える。だが、実年齢はそれをゆうに超える年月を生きていた。ゆえに、過去を操り攻撃してくる黒騎士のユーベルコードは、彼女の体表に、いくつもの傷を噴出させた。おそらく体内も同様のことと思われる。現出するのは体外の傷のみにあらず。体内の疾病もまた現出されるのだ。
「俺たちが……っ何しに来たかは分かるよなっ……、お前を放っておく訳にはいかないからな……っ」
 珠の詰まり詰まりの声。音を発するのもやっとだろう。だがそんな状況でなお彼女の赤い眼は力強い光りを放っている。
 傷の一つ一つ。そこにはいくつもの『過去』が宿っている。長き時を歩んできた彼女には普通の人よりも多くの傷(想い)が宿っている。それらの傷が彼女の心を激しく揺さぶる。ここで倒れる訳にはいかないと。それこそが、彼女の『生きる目的(恩返し)』なのだと。

「その通り……だっ。相手が強敵なのは分かっていた…っ。」
 珠の声に反応を返したのは、ジロー・フォルスター(現実主義者の聖者・f02140)。彼も同様に黒騎士のユーベルコードを受けている。そのため、体表を裂く傷口からは血が滲みだし、浅いもの深いもの合わせると、百を超えんばかりの傷がジローの体を覆っていた。
 半吸血鬼である彼が歩んできた『過去(みち)』も、生半可なものではなかっただろう。孤児院にいた頃、彼の兄弟と遊んでいた時に作った傷、それも体表に現れていた。それを目にし、ジローは何を思うのか。ただ言えることがあるとすれば、それは黒騎士を倒す決意が一層強固になった、その一点だけは確かな事だった。
「傷を負った分だけ……っ、強くなってきたつもりだ……っ」
 ジローは持てるすべての手段で痛みに耐え、自身の傷も直ちに応急処置を行う。

「くっ……!」
 もう一人、痛みに耐える者があった。萬場・了(トラッカーズハイ・f00664)である。彼の生い立ちは他の猟兵たちに比べると、いくらか平凡と言えなくもなかった。そのため負ってきた傷の量は比較的少ない。それでも苦痛は苦痛。なので、了は安定錠剤を通常よりも多めに口の中に放り込み、バリボリと噛み砕く。切れた口内で、薬剤と血の味が混ざる。了は構わず飲み込んだ。
「ふひひ、他のヒーロー達と比べりゃあ前線に立つ機会も少ねえ。この肉体に刻まれた傷なんて大したことねえなっ」
 了は、一般人であれば気絶していてもおかしくない痛みを、耐えつつ、相手の出方を伺う。

「そんなユーベルコード、私たちヤドリガミには効きませんよ。なにせ、この肉体は今朝生みだしたばかりの傷ひとつない身体です」
 雛月・朔(たんすのおばけ・f01179)は無傷。彼女の言うように、ヤドリガミの特性を利用し、朝、器物より生み出した肉体であるからだ。ゆえに黒騎士のユーベルコードも通用しない。
「他人の過去を武器にする?そんな自分の努力も実力も伴わない力を振るっていい気になっているんですかあの黒騎士とやらは」
 黒騎士への率直な感想を口にしつつ、朔は前に出る。正確には、彼女の神霊体が、だ。赤刃の大薙刀『鳳翼』を構えると、黒騎士目掛け距離を詰める。

『我がユーベルコードのみの存在だとでも思ったか』
 黒騎士も禍々しくも仄暗い紅蓮の剣を両手に構え、猟兵たちを迎え撃つ。
 朔の踏み込みに臆した様子もなかった。
「ボスじゃ、ユベコが無くたって強いんだろうよ。臆すこともねえだろう、恐怖を与える能力を喰らいさえしなければな、だろう?」
 相手の出方を予測していた了が、カメラを手にした。彼が手にした呪いのカメラが真っ直ぐ被写体をそのレンズに写す。
(ぐらっ)
『うおっ!?』
 黒騎士がガラにもなく慌てた様子の声をあげる。そう、了の使用する【強制記録媒体(オビディエント・パフォーマー)】の効果だ。今、黒騎士は幻影に囚われているはず。黒騎士も感情を支配された今、冷静ではいられない。カメラを通して敵の生命力を得て、傷がゆっくり治るのを感じながら、了はカメラを回し続けた。
「俺の身体がどうにかなろうと、カメラは回ったままだぜ……!」
 カメラを止めない、その確固たる決意を持って。

『ふん、黒騎士たる我を謀るとはな。多少弱体しようとも、これしきのことで……っ』
 黒騎士が頭を左右に振って、気を確かに持とうとする。
(ジャラ……)
 鎖の音がこの場にいる全員の耳に届いた。【思念の鎖】、そして所々赤みがかった『銀の鎖』、その二種類を操り黒騎士の四肢を縛るのはジローその人だ。血を媒介としさらに強固に操作された鎖がゆとりなく黒騎士を締め上げていく。
『くっ、動け、んっ』
 黒騎士の焦りだけがジャラジャラと音を立てつつ空回る。
「あとは分かるな」
 味方に問いかけるジローの声が常闇の宙に溶ける。

 味方の援護に無言で応えんとする影が一気に切り込む。
「間合いは詰めずとも……っ」
 朔は、力強く踏み込むと黒騎士に届かぬ距離で薙刀を振るった。
(ブンッ!)
 そこから生まれた衝撃波が黒騎士に襲い掛かる。しかし、黒騎士は動けないまでも、生み出した紅蓮のオーラの剣でそれを阻んだ。朔は二撃目を放たんと振りかぶる。
『そちらは薙刀1本。こちらは無数の剣。勝負したらどちらが勝つか。試してみるか』

「受けて立とう。随分と剣を持っているようだがこちらの刃は百を超えるぞ?」
『ッ!!』
 声の主に目をやる。小型の珠の分身体110体。それが黒騎士に飛び掛かっていく。
 走馬灯さえ浮かぶような状況だったゆえ、発動が遅れたものの、繰り出した【千珠魂(センジュコン)】が加勢する。
 薙刀や爪が黒騎士を襲う。質より量の攻撃がやむことなく続いていく。
『ぐわああああああああ!?』
 黒騎士の鮮血が吹き出され、丸まり、無重力を漂う。
 連携、そしてなによりも個々の心の強さが、『過去』を乗り越え、ついに『希望』に届き得たのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

ロア・ネコンティ
【SPD】過去が消えても心はそのままのはず

・SPD攻撃対策
予め両手のひらに「戦え」と書いておく。
[武器受け]で可能な限り呪剣を防ぐ。

呪剣をくらった僕はなぜここにいるかも、握っているタガーや体の使い方すらも忘れ、敵に怯えて逃げてしまうかもしれない。でも手のひらの『戦え』を見たら、僕の心は戦えと言うのだろう。

記憶がない代わりに心のままに戦おう。動く内に体が記憶を取り戻すかもしれない。装備品を[盗み攻撃]で奪い[属性攻撃]闇属性を込めたタガーで影から[だまし討ち]する。

可能なら[シーブズ・ギャンビット]で敵にタガーを刺し返す!泥棒猫から盗みを働くなんて、いい度胸だね。必ず記憶は取り返すよ。


嶋野・輝彦
●対策
消えざる過去の刃は第六感で避ける

SPD、過去の鍛錬の経験を封じると過去の戦闘の経験を封じるは
すまねぇなぁ、こちとらド素人、いつでもどこでも自爆特攻するだけだからあっても無くても関係ねぇんだわ
戦うに至った過去を封じるは、俺は悪党なんだよ、戦うとかどうとかじゃねぇんだよ、ここに居る経緯は俺の人生の結果なんだよ、すべて忘れさせるってか?無理に決まってんだろが舐めてんのかクソが!!

記憶されし傷痕は覚悟と激痛耐性で耐える

●戦闘
だまし討ち、捨て身の一撃、怪力、鎧砕きでウィーハンマーで攻撃

恫喝、存在感、殺気
素人舐めんなよぶち殺すぞ

第六感で避ける
ダメージは覚悟、激痛耐性で耐える
死にかけたら戦場の亡霊発動



『実力差のある相手にこうもしつこく来るとはなっ。甚だ理解出来んっ。だが、それもここまで。次の攻撃を受ければお前たちの勝ちはなくなるのだからなっ』
 猟兵達の攻撃を受け、疲弊していく黒騎士アンヘル。無感情な声色や佇まいを貫いていた黒騎士だったが、今やその出で立ちには苛立ちが見られる。
 黒騎士は言葉通り、剣を構え、そして攻撃に転じた。右手に白の呪剣、左手に黒の呪剣、さらに灰色の呪剣を自分の傍に漂わせる。無重力で落下することなく己の傍に置かれた剣はビタッと固定されたように動かない。黒騎士のオーラの作用が働いているのだろうか。
 黒騎士は続け様に異色の剣を投擲した。1本、2本、3本と投げられた剣は無重力の中を一直線に飛んでいく。その先にいた二人の猟兵目掛けて。
 ロア・ネコンティ(泥棒ねこ・f05423)は、手にする武器で飛んできた剣をはじく。嶋野・輝彦(人間の戦場傭兵・f04223)も42歳とは思えぬ身のこなしで剣を避ける。
 しかし、真空かつ無重力状態で減速することなく飛んでくる剣、それも黒騎士が投じる剣のスピードは凄まじく達人をもってしても避けるのは困難だっただろう。
 ロアは黒と灰の呪剣が、輝彦は白と黒の呪剣がそれぞれ肌を裂いた。
(ぐにゃり)
 意識の混濁、めまい、頭痛。それらが同時に来たと思えば、すぐに消え去った。

「ぐっ」
 戦闘経験と戦うに至った過去を封じられたロアは、意識改変による頭痛を受け、片手で頭を押さえていた。
「僕は……、なぜここに?」
 急な記憶の喪失にロアは不安を覚える。そして今、分かることを確認する。自分の事、日常生活の事、敵の事、武器の扱い、そういう事は覚えている。
 ロアが頭から押さえていた片手を外す。すると視線の端に文字が見えた。見ると「戦え」の文字が掌に書かれている。両手に、だ。
 戦闘前に予め書いておいた文字。だが、今のロアにそれが分かるはずもない。
「戦、え?」
 戦い方が分からない。不安だ。ロアに迷いが生じる。
 しかし、心の中に小さく輝く灯火のような光がロアに囁くのだ。大丈夫だ、と。元気を出して前を向け、と。そう囁いてくる。
ーーそうだ、心のままに戦おう!
 小さな心の中の光に元気をもらい、ロアはダガーをギチッと握りこむ。


 小さな灯火の名。


 それは。


 ”勇気”!

 ロアは戦艦の甲板を駆ける。まさに電光石火の速度で接近すると、黒騎士の懐に潜り込んだ。
『ふん、この距離まで近付いてきて何ができる。お前に戦闘の記憶はない。棒立ちのまま、紅蓮の剣の錆となれ!』
 振り下ろされる剣に、ロアは『一歩近づいた』。
 ダガーを黒騎士の握りこぶしに突き刺すと、剣を放した隙に剣を奪う。
『なっ!お前は戦闘についての記憶を奪われているはずっ!』
「戦闘?何を言っているの?僕がしているのは戦闘じゃなくて『盗み』なんだよね」
『ぐっ……!』
「泥棒猫から盗みを働くなんて、いい度胸だね。必ず記憶は取り返すよ」

 一方で、鍛錬と戦闘の過去を奪われた輝彦はふらふらと、黒騎士に近付いていく。混乱。表情にはそう書かれていた。
『そっちの男は放っておいても害はなさそうだな。男の相手は先にケットシーを相手にしてからだ』
 よろよろと歩く。戦うすべがない。敵の強さも承知している。ならどうして立ち向かえよう。そういう表情をしている。
 黒騎士が、輝彦から視線を外した、その時。
(ダッ!)
 輝彦は全力特攻をかけ、黒騎士めがけてウォーハンマーをフルスイング。黒騎士のボディーにズガンときつい一撃が入る。
 だまし討ち、からのフルスイングに黒騎士も悶絶する。
『ぐわああああああ!?猫の次は男もか……!!』
「素人舐めるなよ、ぶち殺すぞ!」
『な、なぜ……!』
「すまねぇなぁ、こちとらド素人、いつでもどこでも自爆特攻するだけだからあっても無くても関係ねぇんだわ」
『く、タダでやられはしないっ』
 黒騎士がダメージを受けつつカウンターの斬撃を見舞う。
「ぐぅ……っ」
 腹部を斬られ膝をつく輝彦。どう見ても致命傷となる一撃だ。
『終わったな。次は猫。お前の番だ』

 チャキっとダガーを握るロア。【シーブズ・ギャンビット】を使い、宙色のマントを翻しながら接近する。
 両者必殺の距離!
『猫かぶりどもがあああああ!!』
 黒騎士が吠える。
「猫かぶり、か……。誰かに養われたいと思う俺はたしかに飼い猫っぽいかも、な……。奥の手を残しておくのも、猫っぽい、か……?」
 膝をつき、途切れ途切れに声を出す輝彦。彼の奥の手。ユーベルコード【戦場の亡霊】が彼の背後に現れた。
 二体一の構図。
 前後からの挟み撃ちに一瞬の気の迷いが生じた黒騎士は、高速の一撃と、亡霊のきつい一発を受けることもできず喰らう。
『ぐわああああああああああ?!』
 黒騎士は仰け反り、血を吐きながら痛みからの叫び声をあげる。
 姿は虚ろになり、やがて塵となり消えていった。

 戦いは猟兵達の勝利となり閉幕となった。だが、双方楽な戦いではなかっただろう。傷を癒すべく、猟兵達は戦場を去るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月21日


挿絵イラスト