6
もっきゅもきゅの悪夢

#シルバーレイン

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#シルバーレイン


0




●あるけばもふもふ座ればもきゅもきゅ
「もきゅ、もきゅ、もきゅぴー♪」
 花畑の中をふよふよくるくるする白いモーラットたち。
 綺麗なお花に囲まれて、とても楽しそう。
「ぴきゅ?」
 いっぴきのモーラットが見つけたのは、花かんむりを編む女の子。
 好奇心旺盛ないっぴきは、女の子に近づいていく。
「もきゅもきゅ、ぴきゅ!」
 ねえねえいっしょにあそびましょ。
 けれどかれらの姿を目にした少女は、顔を真っ青にして。
「やああー!!こないでぇー!!」
 かれらを拒絶して逃げ去ってしまったのだった。
「もきゅぅ……」
 取り残されたモーラットたちは、かなしい顔を浮かべるのだった。
 どうしてぼくらをこわがるの?

●分け入っても分け入っても白いもふ
「さて皆々様、おいでいただきありがとうございます」
 仮面吸血軍曹・エフ(謎の吸血軍曹F・f35467)は、自らの呼びかけに応えた猟兵たちに一礼する。彼の手元には、可愛らしい妖精の様な形をした小さな三十センチほどの像があった。
「シルバーレインの世界にて『眠っている一般人の夢の中』にオブリビオンが出現するという事件を予知いたしました。オブリビオンは夢の中で一般人の心を苛み、その心を折って支配下に置こうと企んでおり、そのため一般人は悪夢を見せられている状況なのですが……」
 悪夢を見せられている一般人の名は山中りりん。まだ七歳、小学校二年生の女の子である。急いで悪夢から目覚めさせねば、衰弱してしまう可能性も考えられる、と仮面の少年は言う。
「さて、その悪夢の内容ですが、……もっふもふの、もっきゅもきゅでございまして」
 もっふもふの、もっきゅもきゅ。
 猟兵の中にもいる、シルバーレインの世界に見られる「モーラット」。白いもっふもふの姿をして、猟兵に覚醒していないものはもきゅもきゅきゅぴきゅぴと鳴く。本来は妖獣と呼ばれるゴーストの一種だったのだが、苦痛から解放されたことによりこの姿になったとされる。昔から野良モーラット捕獲のお仕事が銀誓館学園にある程度にはポピュラーな、もふもふでふわふわの生き物だ。
「何故モーラットが悪夢になるかというと、りりんさんは数日前にサモエドと日本スピッツと白いポメラニアンに襲われて白いもふもふ恐怖症を患っているのでございます。犬たちにも害意はなく、ただじゃれついただけだったのでございましょうが、なにぶん小さな女の子。のしかかられて動けなくなった恐怖はすぐに忘れられるものではございませんでした。そこに目をつけたのが、オブリビオン「モーラット・デビルキング」なのでございます」
 もーらっと、でびるきんぐ。
「資料によればモーラット・デビルキングは「わるくてつよくてすごい」のだそうです。もふもふ|力《ぢから》をこめた体当たりによる敵対心だけを消滅させる攻撃、大量のモーラットの群れを放つ無差別攻撃、そして対象がモーラットでないならば死角から大量のモーラットを召喚して粘着させる……どれももっふもふで、もっきゅもきゅな攻撃でございます」
 もっふもふで、もっきゅもきゅ。
「モーラット・デビルキングもオブリビオン、もふもふを堪能しながらもできるだけ優しく倒してきてくださいませ。苦戦すればするほどもふもふを堪能することができますよ」
 この悪夢が悪夢として成立してしまっているその問題は少女りりんが|白いもっふもふ《モーラット》を怖がっているというその一点に尽きるのだが、と仮面の少年は言う。
「夢の中のモーラットたちに悪意はないのでございます。ただただもふもふしてもきゅもきゅして、夢の中で楽しく遊びまわっているだけ。りりんさんとも仲良く遊びたいと思っているのですが……先ずはりりんさんの恐怖心故に大量に溢れて逃げ出してしまったもふもふ、もといモーラットたちを捕まえねばモーラット・デビルキングの下にたどり着くことは出来ないでしょう。何しろ夢の世界ですので」
 夢の中は花畑であったり公園であったり、子供の遊び場がごちゃごちゃにつながった世界だ。その中でモーラットはもふもふもきゅもきゅと遊び回っている。それらをとりあえず捕まえねばならないらしい。
「ああ、言い忘れておりましたが、銀誓館学園所有のメガリス「ティンカーベル」の粉を使えば眠っているりりんさんの夢の中に入ることが可能です。夢の世界では現実世界同様に行動可能ですが、夢の中の負傷や死亡も現実に反映されてしまいますので、もふもふに溺れ死なないようご注意のほどを」
 モーラット・デビルキングを優しくもふもふしてから倒した後は、少女りりんの心のケアが必要になる。悪夢に苛まれた影響で、自然には目覚めることができないのだ。幸い夢の中であれば見ず知らずの不思議な人たちが助けてくれてもおかしなことはない。
「このままではりりんさんはサモエドや日本スピッツ・白いポメラニアンや白いプードルなどなどに一生触れないまま。それはとても可哀想なことではないでしょうか。りりんさんの白もふ恐怖症を治すために、とりあえずそこらで詰まっているモーラットたちを一緒に助けてあげると良いでしょう」
 そう、捕まえたはずのモーラットたちはモーラット・デビルキングを倒している間にまたもふもふと逃げ出し、あるいは増え、今度はそこかしこに詰まっているらしい。
「シルバーレインの世界ではモーラットは詰まるものです。特に回線とか回線とか回線とかですね。まあ此度の夢の中に回線はございませんので、違うものに詰まっているのでございましょう」
 少女りりんの白もふ恐怖症が払拭されれば悪夢は覚め、もふもふでもっきゅもきゅな悪夢もいつか忘れ去られることだろう。できれば優しい夢として目覚めさせてやりたいものだ。
「それでは皆様方、もふもふと戦う準備が出来ました方から、僕にお声がけくださいませ」
 仮面の少年はそう言って、にっこり笑って猟兵たちを送り出したのであった。


遊津
 遊津です。シルバーレインより、もっふもふでもっきゅもきゅなシナリオをお届けします。
 三章構成、一章冒険二章ボス戦三章日常となっております。

 「山中りりんについて」
 小学校二年生、七歳の一般人の女の子です。
 サモエドと日本スピッツと白いポメラニアンにじゃれつかれて怖い思いをした結果、白いもふもふ恐怖症に陥っており、そこをもふもふのオブリビオンにつけこまれてしまいました。

 「第一章ついて」
 冒険フラグメントです。必要成功数は7となりますのでご注意ください。
 夢の中は真夏。花畑や公園、児童会館など、小学生の子供の遊び場のそこかしこにモーラットがうろうろふよふよして遊んでいます。捕まえてください。
 様々な子供の遊び場がありますので、プレイングで指定していただければ描写いたします。指定がなければご用意いたします。
 遊んでいるモーラットを捕まえるプレイングを書いてください。野良モーラットですが人懐こいので一緒に遊んでくれる人がいれば一緒に遊びます。
 この章ではりりん少女はモーラットへの恐怖から夢の中を逃げ惑っており、確保することはできません。
 モーラットは繊細な生き物です。猟兵の方の中にはモーラットの方もいるでしょう。あまり乱暴な捕まえ方はしないようにしていただけると嬉しく思います。
 思う存分もふもふを堪能するシナリオとなっております。

 「二章・ボス戦について」
 もっふもふのもっきゅもきゅ!つよくてわるくてすごいぞ!
 詳細は二章の追記にて行います。

 「三賞・冒険について」
 りりん少女の白もふ恐怖症を治すためのアフターケアになります。
 詳細は三章の追記にて行います。

 当シナリオのプレイング受付開始は11/16(水)午前8:31からとなります。
 公開されたタイミングによっては上記タグやマスターページに受付中の文字がないことがありますが、開始時刻を過ぎていればプレイングを送ってくださってかまいません。
 プレイング送信前にマスターページを一読くださるようお願いいたします。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
75




第1章 冒険 『脱走モーラットを捕まえろ』

POW   :    全力で追いかけっこをして疲れさせて捕まえる

SPD   :    先読みして待ち構えて効率よく捕まえる

WIZ   :    餌や罠を準備して片っ端から捕まえる

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

木々水・サライ
もふもふ、いいんだけどなぁ。
ということで、可愛さ勝負しようぜモーラット。
うちのチビ共&精霊猫VSモーラットだ!

UC【精霊猫ライダー・チビサライ軍団参上!】を予め使っといて、まずは俺だけでモーラットとおいかけっこ。
公園内の遊具をうまく使いつつ、捕まえていく鬼ごっこだ。
だが、普通の鬼ごっこだと物足りないだろう?
そこで、次々に現れるチビ達と精霊猫で増え鬼だ!
あ、お前ら攻撃するなよ。するんじゃないぞ。いいな。追いかけっこだけだぞ。

「しゃらー」(訳:俺らのほうが可愛いんだぞー)
「ふぐるにょわー」(訳:あたしらのほうが可愛いぞこらー)
あんまり怖がらせるなよ?

はー、俺幸せ。もふもふ以外の要因でも。



●もきゅもきゅ盛りあがるもふへあゆむ
 季節外れの真夏の太陽が降り注ぐ、広いここはきっと小学校のグラウンドなのだろう。
「もきゅきゅ? ぴきゅー!♪」
 ねえねえ、ここでなにしているの?
「きゅぴ!もきゅぴ、もっきゅ♪」
 こわくないよこわくないよ、ぼくらとあそぼ!いっしょにあそぼ
 ふよふよくるくる、野良モーラットは踊る。けれどふわふわなかれらに囲まれた少女は今にも泣きだしそうだ。
「やだやだやだぁー!!あっちいってぇー!!」
 どん、とぶつかり、モーラットたちの垣根が崩れたところを猛ダッシュ。少女は逃げて行ってしまう。
「ぴきゅ……」
 かなしい顔をするモーラットたち。そして、がっかりしていたのはモーラットたちだけではなかった。
「あー、行っちまったかぁ……」
 木々水・サライ(|白黒猫使い人形《モノクローム・ドール》・f28416)もまた少女に逃げられてがっかりしていた一人である。
(もふもふ、いいんだけどなぁ)
 サライはそう思うが、グリモア猟兵から聞かされた少女の境遇を思えば仕方がない。サモエドと日本スピッツと白いポメラニアンに一気にじゃれつかれてのしかかられた七歳の少女の恐怖たるや、犬たちに害意がなかったとしても一時的なトラウマになるのはこの年頃を思えば仕方のないことだ。
(ま、それはおいおい払拭してやるとして、だ)
 まずはこの、グラウンド中をふよふよもふもふもきゅもきゅきゅぴきゅぴしているモーラットたちをすべて捕まえねば元凶のもっふもふオブリビオンの元にもたどり着けないのだ。
「よし!可愛さ勝負しようぜ、モーラット!」
「もきゅ? ぴきゅ!」
 サライの言葉になになになぁに? と集まってくるモーラットたち。もうもっふもふである。そのまま捕まえられそうだが、手を伸ばせばすい~とふよふよ逃げて行ってしまう。遊んでいるつもりなのだろう、モーラットたちはたのしそうだ。
 ところで、可愛さ勝負とは如何に? いくらなんでもキミじゃモーラットたちに可愛さでは勝てないぜ?
「誰が俺だっつったよ、勝負するのはこいつらに決まってんだろ!」
 ばーん、とサライの後ろに現れるのはサライが【|精霊猫ライダー・チビサライ軍団参上!《ガイスト・カッツェ・シュヴァルツヴァイス》】によって呼び出しておいた精霊猫に乗ったちまこいサライ――チビサライたちが115。
「うちのチビ共&精霊猫VSモーラットだ!」
「もきゅ? もきゅきゅきゅきゅ? もっきゅ!」
 おやおや? ぼくらにかわいさでかてるとおもっているの?
 そんないたずらっぽい顔を浮かべたモーラットの一匹が、ふよふよとチビサライの一体に近づいてくる。わしっとそのもふもふを掴もうとするチビサライ。ふわっと避けてみせるモーラット。
「勝負は簡単、増え鬼だ!捕まったら大人しくしろよ!」
「きゅぴっ!」
 増え鬼とはゾンビ鬼などともいわれる、タッチされたら逃げる側から鬼になる、鬼が増えていくタイプの鬼ごっこである。最後の方に残されれば残されるほど誰が鬼かわからなくて疑心暗鬼になってとても怖い。
「最初は俺が鬼だが……そらよっと」
「しゃっらー!」
「ふぐるにょわー」
 サライがまずいっぴきの精霊猫に乗ったチビサライを捕まえてみせれば、捕まえられたチビサライたちはたちまち鬼になって周りのチビサライたちを捕まえてみせる。そうして連鎖していく鬼ごっこに、モーラットも遊び方を理解してたちまち逃げていく。
「きゅぴっ!もきゅぴきゅきゅ、もっきゅ~♪もきゅっ!」
 たのしげにふよふよ逃げるモーラットたち。
「|しゃらー《俺らの方が可愛いんだぞー》」
「|ふぐるにょわー《あたしらの方が可愛いぞこらー》」
 可愛さを張り合うように追いかけていく精霊猫とチビサライたち。あれ? 精霊猫って女の子だったの? えっマジで? 知らなかった。
「あ、お前ら攻撃するなよ、するんじゃないぞ、いいな、おいかけっこだからな!」
「「|しゃっらーい《言われなくても》!!」」
「「|にょわー《わかってまーす》!」」
「もっきゅ!ぴきゅー!!」
「きゅぴっ!もきゅぴー!!」
 チビサライたちに追いかけられて捕まったモーラットは鬼になり、仲間のモーラットを捕まえに行く。
「きゅぴぃ~!!」
「さっらー!」
「にょわーん」
 追いかけるモーラットも、追いかけられるモーラットも楽しそう。
「はー、俺幸せ。もふもふ以外の要因でも」
 サライはそう呟いて、鬼ごっこが終わるまでの時間を堪能するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ディル・ウェッジウイッター
アドリブ・連携歓迎

彼女のトラウマを利用して悪夢を見せる事はよろしくないですが…
りりんさんもモーラットも悲しい行き違いを起こしてらっしゃいますね。解消できればいいのですがまずは目の前の事を解決していきましょう
しかし夏だとこの服装は…おやモーラットのかたまり。可愛いですね

UCを使いモーラットを眠らせて捕獲していきましょう
引き付けるのは…お茶よりはお菓子の方が良いでしょうか
あとは来た彼らを眠らせるだけ…という事で起きなさい。仕事ですよ仕事(ティーポットの中の眠りヤマネに声をかける)
…働きたくない?寝床を貸している分位は労働で返しなさい
とにかくメガリスを放ちモーラットを眠らせた所を捕獲していきましょう



●もふもふはもふもふで私は私で眠れない
 ディル・ウェッジウイッター(人間のティーソムリエ・f37834)が辿り着いたのは、どこかの部屋。板張りの床には子供のおもちゃが転がり、ついでにモーラットももきゅっと転がっている。そっと手を伸ばすと、モーラットはもきゅっと鳴いて空中へふよっと浮き上がった。
「やああ!やだやだぁ!」
 少女の涙交じりの声に顔を上げれば、向こう側に開いた扉から小さな少女が駆けだしてゆくのが見えた。あとに残されたモーラットたちが、心なしかしょぼんとした顔を見せている。
「もきゅぅ…」
 どうしてぼくらをこわがるの?
「きゅぴぃ…」
 どうしてあそんでくれないの?
 ちいちゃな眉を八の字にして、ふよふよ浮いているもふもふたち。ディルはむぅ、と唇を指で撫でた。
(彼女のトラウマを利用して悪夢を見せることはよろしくないですが……りりんさんもモーラットたちも、悲しい行き違いを起こしてらっしゃいますね)
 モーラットたちはただ遊びたい。モーラットたちは少女が白もふ恐怖症だと知らない。まさか自分たちの姿が怖がられているなんて、もはや妖獣ではなくなったふわふわ愛くるしい姿のモーラットたちは思っていないのだ。けれど少女にしてみれば、行く先々で怖いものがたくさん集まってくるとしか思えていない。
「解消できればいいのですが、まずは目の前の事を解決していきましょうか」
 それにしても暑い。現実ではもう初雪も観測される季節だというのに、ここは夢の中。真夏。しかも冷房もきいていない屋内の暑さたるや、むされるような暑さだ。
「夏だとこの服装は……おや、モーラットのかたまり。可愛いですね」
「「「もっきゅ!」」」
 わあいわあい、あそんであそんで!そう言わんばかりにディルの前でふよふよしてみせるだんごになったモーラットたち。試しに手を伸ばしてみれば、また触れる直前でふわっと散開して逃げられてしまう。鬼ごっこでもしているつもりなのだろうか。
「きゅっぴ♪」
「おや。これは難易度が高そうです」
「ぴきゅー!」
 ディルをからかうように、ディルと遊んでいるようにふわふわふよふよ、くるくるもきゅもきゅ。楽しそうに回転するモーラット。
(かれらを引きつけるには、お茶よりもこちらの方がよろしいでしょうか)
 そうしてディルが取り出したのは、ティータイムのお菓子の中からジンジャークッキーたち。こと、と机の上に置いてみれば、なになになあに? いいにおい! おいしいもの? おいしいもの!とモーラットたちがわっさり群れる。
「ぴきゅ!」
「もきゅぴ♪」
「きゅぴー!」
 ねえねえおいしいものおいしいもの、もっとないの、ぼくにもぼくにも!あっという間にディルの周りはモーラットでいっぱいになる。モーラットたちはふよふよ浮かんでくるくる回って、おいしいものちょうだい!とディルへ向かってきらきらした目を向けてくる。
 かれらのちいちゃな手に手に割ったクッキーを持たせてやると、ディルは懐からひとつの古いティーポットを取り出す。その中に入っているのはお茶でも茶葉でもなく、一匹のヤマネ。くうくうと寝息を立てているその鼻先をちょんと突ついて、ディルは言う。
「ほぉら、起きなさい。仕事ですよ、仕事」
「……ちちちちぃ……」
 不満げに鳴いてみせるヤマネ。ただのヤマネと思うなかれ、彼(彼女?)はれっきとしたメガリスなのである。
「働きたくない? もう。寝床を貸している分くらいは労働で返しなさい」
「……ちぃ」
 ぽい、とティーポットからヤマネを放り出すディル。ヤマネはチィ、とまた不満げに鳴く。
【|眠りヤマネは夢を見る《ドーマウス・ランニング》】。ディルの周囲119メートル、部屋を覆いつくす範囲にいるすべてのモーラットを対象に、ユーベルコードは放たれる。その効果は眠り。さくさくとちいちゃな手でジンジャークッキーを食べていたモーラットたちが、次々にぽてりぽてりと床に落ちていく。
全てのモーラットが眠りに落ちると、ヤマネはちぃ、と鳴いてティーポットに戻り、再び睡眠を貪り始めた。
「……まったくもう。それでは、この子たちを拾い集めないといけませんね」
 ディルはさっとティーポットを服の中に仕舞い込むと、くうくうと寝息を立てながら床に落ちているモーラットたちを拾い上げ始めるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オヴィリア・リンフォース
POW

見た目はもふもふでも油断できない存在もいるのです。
でも害の無い、もふもふまで怖がられてしまうのは
もふもふ仲間として放ってはおけないのです。
まずはモーラット達に接触して本当に
りりんさんに害がないのかを確かめるのです。
デビルキングの手先かもしれないのです。
間違っても火花をバチバチさせたりして
危害を加えたりしないよう言い聞かせるのです。
聞き分けの無い悪戯っ子には追いかけっこして
気分を発散させてから言う事を聞いてもらえるようにするのです。
怪しいモーラットが居たらにらめっこして、
目をじっくりと観察するのです。
ついでにもふもふ具合も確認しておくのです。

「りりんさんの相手に相応しいかテストするのです」



●もふりと寝ころべばもきゅ
 オヴィリア・リンフォース(銀色の魔女猫・f25140)は猫である。金色の瞳、銀色の毛並み美しくつやつやの猫である。彼女が降り立ったそこは草原だろうか、オヴィリアの姿を隠してしまいそうなほどに緑が生い茂っている。
「うああああん!もうやだ、やだやだ、こないでぇー!!」
 甲高い泣き声がオヴィリアの耳に飛び込んできた。見れば緑の向こう、白いもふもふの群れから少女が逃げ去るところであった。オヴィリアはそちらの方向へと駆ける。けれどついたときにはしゅんと悲しい顔をしたモーラットたちがいるばかりで、少女の姿はどこにもない。
「もきゅ……」
 どうしていなくなっちゃうの?
「きゅぴぃ……」
 どうしてあそんでくれないの?
ちいちゃな眉を八の字にして、モーラットたちはふよふよ浮いている。
(むぅ)
 その様を目にして、オヴィリアは思った。
(――見た目はもふもふでも、油断できない存在もいるのです。でも、害のないもふもふまで怖がられてしまうのは、もふもふ仲間として放ってはいけないのです)
 オヴィリアは賢い猫である。自分のやるべきことはすぐに思いついた。
(まずはモーラットたちに接触して、本当にりりんさんに害がないか確かめるのです!デビルキングの手先かもしれないのです!)
 オヴィリアが姿を現せば、モーラットたちはオヴィリアに意識を奪われる。
「もきゅ? きゅぴ!」
 わあわあ、きみもふわふわ。ぼくたちのなかま? なかま?
「ぴきゅっ!」
 ちがうよちがうよ、このこはねこ!
「もきゅぴ、きゅ!」
 ねえねえ、ぼくらといっしょにあそびましょ!
「あなたたち、りりんさんといっしょに遊びたいのですか?」
 オヴィリアは賢い猫であるので、動物――モーラットと話すことなど造作もない。
「きゅきゅぴ?」
 それってあのこ?
「ぴきゅ!」
 かわいいこ!
「きゅぴ、もっきゅ!」
 うん、あそびたい!いっしょにあそびたい!
「では、りりんさんの相手に相応しいかテストするのです」
「もきゅっ!」
 テスト、と言われたモーラットたちが眉をしゃきんとさせた。

 オヴィリアによるテスト、そのいち。
まずは間違っても火花をパチパチさせたりして危害を加えないこと。
「きゅぴっ!」
 はーい!
「もっきゅ!」
 できるよできる!
「もきゅぴ!」
 ぼくたち、けがさせたりしないよ!
「本当ですね? 火花パチパチはダメなのです!」
「もっきゅぅ!」
 はーい!
モーラットたちは元気な声でもきゅっ!とお返事するのであった。
 テスト、そのに。聞き分けのない悪戯っ子には気分を発散できるまで追いかけっこ!
「もきゅぴ!もっきゅ」
 わぁいわぁい!
「ぴきゅっ!」
 あそぼ、あそぼ!いっしょにあそぼ!
「こら、まちなさい!」
 ふよふよくるくると飛び回るやんちゃなモーラットたちを、オヴィリアは猫らしい俊敏な動きで追いかけ回す。
「ふぅ……」
「きゅぴぃ」
 つかまっちゃった!
「もきゅ!」
 たのしかった!
「強引なのはダメなのです」
 疲れておとなしくなったモーラットたちに、オヴィリアはもう一度言って聞かせた。
「もきゅ、きゅぴっ!」
 はぁい!
テスト、そのさん。怪しいモーラットがいたらにらめっこして、目をじっくりと観察。
「もきゅぅ?」
 なあに?
「ぴきゅ~?」
 にらめっこ? にらめっこ?
「……悪い子たちはいないようです、ほっ」
 モーラットたちのくりくりとした瞳はどれもとっても澄み切っていた。
テスト、そのよん。
「もふもふ具合も確認しておくのです」
「もっきゅ!」
 はあい!
それはもうみんなもっふもふの、もっきゅもきゅ!
「それではすべてのテストが終わったのです。あなたたちはテストに合格したよいこたちなのです。これから並んで一緒に行くのです」
「もきゅっ!」
「ぴきゅ!」
「もきゅぴ!」
 褒められて上機嫌なモーラットたちはオヴィリアのあとを一列になってついてくる。
 上から見たら、草原を白い列が移動していた。
「もきゅ~?」
「こら、レディのしっぽを触るのはマナー違反なのです」
 不意にいたずらしようとしたモーラットもびしっと叱るオヴィリア。
「きゅっぴ!」
 はあい!
 モーラットは良い声でお返事をするのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

プラリネ・トルテ
・心情
「 わるくてつよくてすごい」
なんじゃなんじゃ、それならばリーネの方が、わるくてつよくてすごいんじゃぞ!

・行動
「こ、これは……!なんという悪じゃ…」
目の前に広がるもふもふパラダイスに、自分のワルイコトがまだまだだと反省。
こんなに可愛いもふもふを堪能出来るのに悪夢とはなぁ
ひとまず片っ端から、怖がらせないように出来るだけ優しく微笑み、寄ってきてくれた子だけ、わっしゃわっしやもふもふの刑じゃ!(※ブラッシング)
ふふん、リーネのテクに溺れるが良いのじゃー!
なんじゃ?たくさん寄ってきて…ふむ、任せるがいい、全員もふもふの刑(※ブラッシング)じゃな!



●ひとりもふ越えてまたもふ
「「わるくてつよくてすごい」? なんじゃなんじゃ、それならばリーネの方が、わるくてつよくてすごいんじゃぞ!」
 プラリネ・トルテ(ラスボスの魔王・f38092)は魔王である。女王にしてお菓子の魔女である。とってもわるくてつよくてすごい、そんなモーラット・デビルキングの話を聞いて、勇んで夢の世界へやってきた。
「あいたたた……どこじゃここは?」
 リーネがついた先は、中庭のような場所。リーネには名も知らぬ鉄の棒で作られた遊具が並んで、その周囲にまっしろでもふもふでもきゅもきゅのモーラットたちがいっぱい!
「もきゅ?」
 だあれ? だあれ? きみはだあれ?
「きゅぴ!」
 あそぼ、あそぼ、いっしょにあそぼ!
 きらきらした瞳でリーネに訴えかけてくるもふもふのモーラットたち。
「こ、これは……!なんという悪じゃ……」
 目の前に広がるもふもふのパラダイスに、自分のしてきたワルイコトがまだまだ未熟であると反省するリーネ。
だってこんなもふもふ、駄目!反則!こんなの、すっごくわるいにきまってる!!
「やだやだ、やだやだ!もうやだぁ!」
 不意に響く少女の声にそちらを向けば、少女が取り囲んだモーラットを潜り抜けて泣きながら逃げ去っていくところだった。そちらへ向かおうとするリーネだったが、少女の姿はあっという間に見えなくなってしまう。
「ふむぅ、こんなに可愛いもふもふを堪能できるのに悪夢、とはなぁ」
「もきゅぅ……」
 やだっていわれちゃった。
「ぴきゅぅ……」
 ぼくたち、こわいの?
心なしかしゅんとしおれているモーラットたちの頭をリーネはぽんぽんとしてやる。怖がらせないように優しく微笑んでやると、きらきらと目を輝かせたモーラットたちがリーネにふよふよくるくる寄ってくる。そんなモーラットたちを捕まえて、リーネはわっしゃわっしゃもふもふ、そもふわふわの毛をブラッシングしてやる。
「きゅぴ!もきゅぴー♪」
 わあい、もっとして、もっとして!
「ぴきゅ!」
 ぼくもぼくも!
「もっきゅー!」
 つぎはぼくー!!
「ふふん、リーネのテクに溺れるがよいのじゃー!」
 上機嫌でモーラットを|わっしゃわしゃもふもふの刑《ブラッシング》に処していたリーネ。遊んで貰えていると思っているのか、楽しそうにもふもふされてはふよふよリーネの周囲を漂うモーラットたち。やがてリーネのもふもふの刑に気が付いたモーラットたちが、リーネの周りにどんどん集まってくる。
「もきゅっ」
 ぼくもして!ぼくもして!
「きゅぴ!」
 いいなあ!ぼくも!
「もきゅぴ!」
 ぼくもぼくも!
「なんじゃ? たくさん寄ってきて……」
「もっきゅ!もきゅぴー!」
 それぼくにも!ぼくにもやって!
「きゅきゅぴ!」
 ぼくにも!
「ぴきゅっ!」
 ぼくにも!
「ふむ、そうかそうか!任せるがいい、全員|もふもふの刑《ブラッシング》じゃな!」
「もっきゅぅー!」
 わあい!
 かくしてリーネの|わしゃわしゃもふもふの刑《ブラッシング》は続いた。
わしゃわしゃもふもふされたモーラットたちはリーネをすっかり気に入って、自分から捕まりに来るのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『モーラット・デビルキング』

POW   :    モーラット・スタンピード
【圧倒的もふもふ力】を籠めた【体当たり】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【敵対心】のみを攻撃する。
SPD   :    モーラット・オーバーラン
【周りを埋め尽くすモーラットの群れ】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    モーラット・カース
指定した対象を【モーラット】にする。対象が[モーラット]でないならば、死角から【大量のモーラット】を召喚して対象に粘着させる。

イラスト:熊谷狼

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠アルミィ・キングフィッシャーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「もーきゅっきゅっ、もっきゅ!」
 ふははははー、よくきたな!
 モーラットたちをつかまえた猟兵たちの前に姿を現したのは、後光を背負い王冠をかぶって黒くて悪そうなマントに身を包んだ、その名もモーラット・デビルキング!
「ぴきゅっ、もきゅ、もきゅきゅ!」
 あくむのせかいはどうだったかな? つぎはもっともっとこわいことをしてやるぞ!
こうもりの翼とあくまのしっぽ。とってもわるくてつよくてすごそうだ!
「きゅきゅぴ、もきゅぴきゅー!」
 このままもっともっともふもふをひろげてやろうー!!
それはとってももふもふだった。そしてとってももきゅもきゅだった。
「きゅぴーきゅきゅ!」
 わーはっはっは!かかってくるがいい!
 かつてない強敵の気配がする。猟兵たちはこのもふもふと戦わなければならない。
 少女を悪夢から救うため、白もふ恐怖症を払拭してやるために!
 もふもふとたたかえ、猟兵!
=====================================================
第二章 ボス「モーラット・デビルキング」が現れました。

 おめでとうございます。猟兵たちの活動の結果、この世界を悪夢の世界に変えているオブリビオン「モーラット・デビルキング」を引っ張り出すことに成功しました。
 以下に詳細を記します。
 
 「戦場について」
 一面のお花畑です。モーラット一匹分くらいの草花で地面が隠れています。夢の中は真夏で、夏の太陽に照らされています。
 戦闘を邪魔するようなものは何もありませんが、利用できそうなものも特にありません。
 それでも何かを利用する場合、「何を」「どうやって」使うか明記してください。
 リプレイ開始時点ですぐに戦闘が開始されるため、何かをあらかじめ準備しておくということは出来ません。何らかの準備行動は戦闘と並行して行うこととなります。
 
 「モーラット・デビルキングについて」
 かつてない強敵です。刺したり斬ったり燃やしたり苦しませたりなどというの普通の攻撃はもっふもふでもっきゅもきゅの前に通用しないでしょう。つよくてわるくてすごいのです。そんなことをするなんてとんでもない!
 反面、モーラットにするようなことをしてやると効果が覿面です。
 わしゃわしゃとかなでなでとかおいかけっことか、とっても効果があるでしょう。
 一緒に遊んであげるととんでもなく効果は抜群でしょう。
 つよくてわるくてすごい力によって、残酷な攻撃をするとそんなことをするなんてとんでもない!となり、攻撃が効かない可能性が非常に高くなります。掠りもしないかもしれません。
 それでもオブリビオンなので倒さなければなりません。
 モーラットなので、ひとしきり遊ぶと満足します。ひどい言葉をいわれるとかなしいかおをします。
 指定のユーベルコードの他、召喚したモーラットやもふもふ体当たり、ちいさな手でぺちぺち攻撃してくることがあります。
 猟兵がユーベルコードを用いない戦闘を行った場合も同様で、モーラット召喚やもふもふ体当たり、ぺちぺち攻撃などで戦います。
 ぺちぺち攻撃は痛くないです。

 第二章のプレイング受付は11/23(水)朝8:31から開始いたします。
 時間帯によっては上記タグやマスターページに受付中の文字がないことがありますが、時間を過ぎていればプレイングを送ってくださって構いません。
 マスターページを確認したうえでプレイングを送信してください。
 
 それでは、この夢の世界を悪夢に変えているつよくてわるくてすごいもっふもふのかつてない強敵と戦ってください!
オヴィリア・リンフォース
むむむ…圧倒的な、もふもふ力を感じるのです。
このままでは、本当にモーラットになってしまいそうなのです。
猫の威信にかけて、それは阻止しないといけないのです。
さっき仲良くなったモーラット達を呼び寄せて、
協力してもらうのです。
モーラット達と一緒にデビルキング軍団に突撃するのです。
モーラットでも敵に与するなら容赦はしないのです。
もふもふ力の違いを見せつけてやるのです。
猫耳と尻尾をぶんぶん降って、
もふもふとは違った魅力をアピールなのです。
モーラットが相手でも骨抜きにしてやるのです。
デビルキングに対しては王冠やマントを
剥ぎ取り、ただのモーラットにしてやるのです。
今度はこっちが悪夢を見せてあげる番なのです。



●ついてくるもふよおまえももきゅもきゅか
(むむむ……圧倒的なもふもふ|力《ぢから》を感じるのです)
 オヴィリアは背中の毛が逆立つような危機感を覚えた。
モーラット・デビルキングから感じるもふもふ|力《ぢから》。とってももっふもふでもっきゅもきゅ。
すごくてわるくてつよいそのオーラがひしひしと伝わってくる。
「もきゅー!きゅっぴきゅぴ!」
 ぶわり、とモーラット・デビルキングのもきゅもきゅオーラが増す。
(このままでは、本当にモーラットになってしまいそうなのです……!)
 オヴィリアは猫である。しかし猫としての本能が叫ぶ。このままではもきゅもきゅ鳴いてしまう、モーラットになってしまう、と。
(猫の威信にかけて、それは阻止しないといけないのです!)
「にゃー!にゃにゃーん!!」
 我はモーラットではない、猫であると自身に言い聞かせんばかりに鳴き声を上げると、オヴィリアは己のユーベルコードを発動させる。目には目を、モーラットにはモーラットを、【|モーラット呼び《コール・モーラット》】である。
「もきゅっ?」
 よんだ?
「きゅっぴ!」
 なになになあに?
「もきゅぴー!!」
 ぼくらもぼくらもー!
ぴょんぴょんぴょん、もふもふもっふと現れるのはさっき出会ってテストしたモーラットたち。だれもかれもみなぼくはやるぞぼくはやるぞと目を輝かせてもっきゅもきゅと鳴いている。
「行くのです、一緒に突撃するのです!」
「もっきゅー!!」
 わあい!
「ぴきゅ!もーきゅっきゅっ、きゅぴ!」
 わーっはっはっは、くるかー!かえりうちにしてやろうー!
「きゅぴぴー!」
 してやろうー!!!
 オヴィリアは猫である。モーラットではない。にゃーんと鳴くことでギリギリ耐えた。モーラットではないので死角からちょっと小ぶりのモーラットたちが大量に召喚され、オヴィリアへとくっついてくる。それはもうもっきゅもっきゅと!
「離れるのです!」
「もきゅー!」
 はなれろはなれろー!
「ぴきゅー!」
 やーだー!!
 モーラットたちが小ぶりなモーラットたちを剥がしては投げ剥がしては投げしてくれたおかげでオヴィリアはもふもふ団子から逃れる。そのままモーラット・デビルキングへと向かってモーラットたちと駆けていく。
「モーラットでも、敵に与するなら容赦はしないのです!もふもふ|力《ぢから》の違いを見せつけてやるのです!」
 さらつやの毛並み、ぴこぴこ動くねこのみみ。しっぽをぶんぶん振って、もふもふのモーラットたちとは違う猫としての魅力をたっぷりアピールするオヴィリア。モーラットが相手でも骨抜きにしてやらんというその雄姿に、召喚された小ぶりモーラットたちも思わずきゅん……としてしまう。
「もきゅぅ!」
 かっこいいー!
「きゅっぴ!?もきゅー、もっきゅ!」
 こらー!めろめろになってはいけないぞー!!
「よくもやってくれたのです!今度はこちらの番なのです!」
 オヴィリエの武器は猫としての俊敏さ。猫ぱーんち、で王冠を吹き飛ばし、きゅっとマントを咥えてくるくる回ればたちまち悪そうなマントは剥ぎ取られてしまう。こうなってはモーラット・デビルキングもただあくまのしっぽとこうもりの羽が生えたモーラットとあんまり変わらない。
「も、もきゅぅ……!」
 か、かえして……それかえしてよぅ……!
 かなしいかおで涙目になったモーラットデビルキングに、オヴィリアは猫らしく捕食者の表情で言うのだった。
「今度はこっちが悪夢を見せてあげる番なのです」
「もきゅぅー!!」
 もきゅー、もきゅー、きゅー、きゅー、きゅー……
真夏の太陽降り注ぐお花畑に、モーラット・デビルキングの悲鳴がこだまするのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木々水・サライ
待って、暑い……焼ける……直射日光は俺の敵……
(こんな格好してるから)

た、たすけて……父さん、母さん……
(UC【家族を呼び出す白黒人形】を使う)
「俺も暑い……」
『私はへーきだし、ちょっと追いかけっこしてくるね~』
(精霊猫を連れてモーラット・デビルキングと追いかけっこで遊ぶ母親)

……このクソ暑いのにあの毛玉、暑くねーのかなぁ。
体力が戻り次第、母さんと合流。父さんと俺で挟み撃ちにしつつ追いかけっこだ。

\ふぐるにょわー/
……精霊猫も大概、ワルな格好してる気がする。
というか同類では……?
いや……それ言うと双方から文句出そうから、いうのやめとこ。

ほらほらまてまてー。とっ捕まえてやるぞー。(腰が痛いが)



●あたたかい白いもふが在る
 ここは夢の中。現実では雪が降る地域もある季節だけれど、夢の中は真夏。夏の太陽かんかん照りのお花畑。
「待って、暑い……焼ける……直射日光は俺の敵……」
 なんか吸血鬼かなんかみたいなことを言いながら、サライはぺしょんぺしょんになっていた。大体|そんな服《黒コートとか》着ている方が悪い。素肌に黒コートである。真夏の太陽の下では日光を吸収しまくって暑いことこの上ない。
「た……たすけて、父さん、母さん……」
 サライは両親を呼ぶユーベルコードを使った。【|家族を呼び出す白黒人形《ファミリーコール・モノクローム》】である。出て来た両親は霊である。本物の両親はサライが幼い頃に死んでいるし、何ならオブリビオンになって帰ってきたから一回送り還してやった。それでも出て来た霊は確かにサライの両親である。
「あ、駄目。俺も暑い……」
 父ヴォルフは出てくるなりへたりこんだ。霊のくせに!!しかし仕方がない。ヴォルフの格好も黒コートである。なんならサライよりも着こんでいる分とても暑い。霊のくせに!
『あ、私はへーきだし、ちょっと追いかけっこしてくるね~♪』
 母アンナはいつだって元気だった。どっちかというと白い感じで光を反射するし涼しげだ。ところでこの両親は霊だけどユーベルコードが使える。【|精霊猫召喚《ガイスト・カッツェ》】を使って出て来た大量の翼つき精霊猫を連れて、モーラット・デビルキングを捕まえに走っていく。
「もっきゅぅ!もーっきゅっきゅっきゅ!」
 きたなー!かえりうちにしてやるぞー!
 モーラット・デビルキングは周りを埋め尽くすほどのモーラットの群れを召喚した。それぞれに精霊猫がかかっていく。
「もきゅー!」
 きゃー!
「ぴきゅー!」
 おいかけっこー!
「もーきゅっきゅっきゅ!」
 はーはーはー!つかまえてみるがいいー!
「にょわー」
 待てコラー。
「にゅよーん」
 もぐもぐしたろかー。
「あらあら、お待ちなさいな~♪」
 なんかヤバいこと言ってる奴もいるが、見た目には追いかけっこである。母アンナも混ざって、見た目にはとても楽しそうだ。
「……このクソ暑いのにあの毛玉、暑くねーのかなぁ……」
「サライお前それ世界中の毛皮持ってる動物にも同じこと言えんのか」
「でも犬とか夏暑そうじゃん」
「そうだな……まあここ夢の中らしいし、意外と快適なのかもな……」
「そっかぁ……いいなあ……俺らも夢の中仕様って事で涼しくなんねーかなぁ……」
 ならないね!
「ちくせう」
 ひとしきり休んだ後で、父子は母親と合流した。
「うふふ、楽しいわよ、ほら、あなたもサライもいらっしゃーい♪」
 母さんは元気です。
「よっこいせ、と……」
「ふぐるにょわーん」
「もっきゅ!」
 わあいわあい!
「きゅきゅぴー♪」
 つかまえてごらん!
「ぴきゅーきゅっきゅ!」
 わーはっはっは!!
 大量のモーラットたちを追いかけ回すこれまた大量の精霊猫たちを見て、ふとサライは思った。
(……|精霊猫《こいつら》も大概、ワルな格好してる気がする)
 もっふり。――というか、もっふもふという点ではわりと同類なのでは……? サライは訝しんだ。
(いや……それ言うと双方から文句出そうだから、いうのやめとこ)
「もっきゅ?」
 どしたの?
早い時点で追いかけっこに飽きたのか早々に捕まってちょこんとサライの肩に乗ったちょっと小ぶりのモーラットがきゅ? とくりくりした目でサライを見つめる。
「いや、なんでもない」
「きゅぴっ!」
 そっかあ!
 斯くしてサライの頭に浮かんだ疑問はサライの胸の中だけで抑えられることになった。もし口にしていたら精霊猫対モーラットのどっちがもふもふかの一大抗争が発生していたかもしれなかったかもしれないので、サライは世界を救った勇者であったかもしれない。ないかもしれない。
「もーきゅっきゅっきゅ!きゅぴぴー!」
 わーはっはっは、こんなものかー!もっとかかってくるがいいー!
「ほらほら待て待てー、とっ捕まえてやるぞー」
 腰が痛い。もうあんまり若くない自分の肉体に鞭を打ちつつ、サライは走り回る。
父ヴォルフはげんなりしているし、母アンナはやっぱり元気だ。
モーラット・デビルキングと小ぶりなモーラットたちの楽しそうなもきゅもきゅ言う声が、真夏の花畑でもっきゅもきゅするのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ディル・ウェッジウイッター
友人が好きそうな敵ですね。実際のところは分かりませんが
まぁ、いない人の話してもどうしようも無いので良い感じに対処しましょう
しかしこのキング・モーラットさん…いやーつよそうですねーこわいですねー

怖いのでお茶会開きその流れでUCで猫とか、こう、小さくてかわいらしい動物の様な姿をしたゴーストの方々をご招待。12人いらっしゃればよろしいでしょうか

ゴーストの皆さんご覧ください、あちらのモーラットさん方の動き回る大きなモフモフボディ。素敵では?本能に乗っ取って追いかけたくなるのでは?

ゴーストの皆さんがモーラットたちと遊んでいる様を見て自分はお茶を飲みます
やはり暑い日はアイスティーに限りますね



●何が何やらみんなもっふもふ
「もーきゅっきゅっきゅ、もきゅぴー!」
 ふーはーはーはーはー、どうだ、こわいだろうわるいだろう、かかってこいー!
 王冠をかぶって悪そうなマントを身に着けたモーラット・デビルキングがふんぞり返る。正確にはふよふよ浮いているのでそのままくるんと一回転した。もきゅっ、と自分で自分の一回転にびっくりしたモーラット・デビルキングは慌ててちいちゃな手で王冠を抑えてもう一度もーきゅっきゅっ!と鳴いた。まるっこいのでわからないが、表情を見る感じ多分胸を張っている。
(おや、これは友人が好きそうな敵ですね……実際のところはわかりませんが)
 ディルの脳裏にもっふもふでもっきゅもきゅな感じが、こう、好きそうな友の顔が浮かび。キラーンと白い歯を見せて笑う。
「まぁ、いない人の話してもどうしようも無いので。いい感じに対処しましょう」
 しかしこのモーラット・デビルキングさんときたら。
「もーっきゅきゅきゅきゅ!ぴきゅっ!」
 どうしたー!おそろしくてこえもでないかー!
「ふふふ、いやーつよそうですねーこわいですねー」
「もきゅっぴ!もーきゅっきゅ!」
 そうだろうそうだろうー!ふははははー!
ふん!と胸を張っているっぽいモーラット・デビルキング。ディルはそんなモーラット・デビルキングににっこりと微笑みかけると、その場でお茶会の準備を始めた。夏の日差しが眩しいので、今日はアイスティー日和だ。水出し紅茶にしよう。花畑にシートを引いて、ティーバッグに包んだ新鮮なヌワラエリヤの茶葉を取り出す。先にグリモア猟兵から夢の中は真夏と聞いていたので、魔法瓶の中にはお湯ではなくちょうどいい感じに冷たい状態で保温された水入りのペットボトルが入っている。
 さてさて、と準備が整った所でディルは両手を広げた。
「さあ皆様、いらっしゃいませ」
 ディルのユーベルコード、【ゴースト・ティーパーティー】は彼の淹れるお茶と引き換えに友好的なゴーストを呼び出すものである。黒猫、黒兎、黒いわんこ、黒いリス……白いもふもふに対して黒い毛並みの小さくて可愛らしい動物たちの姿をしたゴーストが12体現れた。ゴーストたちはすんすんと茶葉の香りを嗅いでいる。
「これからお茶をお淹れします。それまでの間、どうぞあちらのモーラットさんとご歓談をどうぞ。ほらほら皆さんごらんください、あのもふもふボディ。素敵では? 本能に従って追いかけたくなるのでは?」
「にゃーん」
 12匹のゴーストを代表して応えたのは黒い毛並みも美しい黒猫のゴーストだった。金色の目をらんらんと光らせ、モーラット・デビルキングに向かって走り出していく。他の黒いゴーストたちもそれに続いた。
「きゅぴっ? ぴきゅー!」
 むむっ!ものども、であえーであえー!!
「もっきゅ!」
 よんだ? よんだ?
「ぴきゅ!」
 あそぶ? あそぶ?
「きゅぴー!」
 ぼくもあそぶ!ぼくもあそぶ!
モーラット・デビルキングは花畑一面にちょっと小ぶりなモーラットたちを呼び出した。遊びたい盛りの小ぶりなモーラットたちと、黒猫を筆頭とした黒くて小さなかわいい動物たちのゴーストたちはころころごろごろ、白と黒のだんごになって花畑を転がりまわる。
「もきゅきゅきゅきゅっ……ぴきゅー!」
 むむむむむぅ……まぜてー!
楽しそうなその光景に、モーラット・デビルキングも遊びに混ざりだす。大きなもふもふと小さなもふもふ、しろいもふもふとくろいもふもふがふよふよころころ。確実に言えるのは、みんな楽しそう!
 そんな光景を眺めながらディルはしゃかしゃかしゃかしゃか、ティーバッグを入れたペットボトルを二十秒間振る。これで即席の水出し紅茶は完成。ここから常温で数時間待てばもっと良いのだが、さすがにそれは待ってはいられない。
「お茶の淹れ方としては邪道かもしれませんが、これもまた紅茶。であればこれもまたティーソムリエとしては嗜むべきものでしょう」
 からん、と氷を入れたグラスに水出し紅茶を注いで、ディルはお茶を楽しむのであった。
「やはり暑い日は、アイスティーに限りますね」

大成功 🔵​🔵​🔵​

プラリネ・トルテ
・心情
なるほどこれが強くてすごくて悪い奴なのじゃな?!

・行動
これはなんという、悪……!!!!!
こんなにもふもふなどとはなんという悪なのじゃ!とはいえ悪はリーネの方が上じゃがな!
ふふん、とはいえ、このリーネのブラッシングのテクに勝てるとは思わない事じゃ!
いっぱいもふもふふかふかにして、お前自ら王冠とマントを差し出させてやろうぞ!
お前の王冠もマントもリーネの物にするのじゃ!なんという悪!これこそ本物の悪というものなのじゃ!!



●いさましくもかなしくも白いもふ
「もーきゅっきゅっ!きゅぴ、きゅぴぴー!」
 わーはっはっは!どうだ!すごいだろうこわいだろうわるいだろうー!
モーラット・デビルキングはぴしっと得意げに胸をはる。もっふもふのもっきゅもきゅオーラが、リーネにびしばしと伝わってきた。
「なるほど、これが強くてすごくて悪いやつなのじゃな!?」
「もっきゅ!きゅぴーきゅきゅ!」
 そうだぞ!すごくてつよくてわるいんだぞ!
ふよふよくるくるしながら、きらきらした王冠と悪そうなマントを身に着け、後光を背負ったモーラット・デビルキングがもっきゅもきゅする。ぽむぽむした拍子に、もふん、と白い体が弾んだ。
「むぅぅ……これは、なんという、悪……!!」
(こんなにもふもふなどとはなんという悪なのじゃ……!!)
 あまりのモーラット・デビルキングのワルさに、ついモーラットになってしまいそうになるリーネ。自分ももふもふのもきゅもきゅになりたい、そんな気持ちが湧いてくる。しかしリーネは薔薇の女王である。ラスボスの魔王なのだ。
「そうじゃ!リーネの方が悪は上なのじゃ!」
 リーネは耐えた。モーラットになってしまいそうな衝動に耐えた。なのでモーラットではない。モーラットではないのでリーネの死角から大量の、ちょっと小ぶりなモーラットが大量に召喚されてリーネにぺとりぺとぺとと張り付いてくる。
「もっきゅ!」
 わあい!
「きゅっ!」
 あそぼ!
「きゅ!」
 ぼくらとあそぼー!
「わわわ、なんじゃなんじゃ……!」
 あっという間に白いもふもふまみれになるリーネ。小ぶりなモーラットたちはきらきらくりくりした目でリーネを見上げてくる。あそんであそんで、いっしょにあそぼ。そんな訴えを正面からくらってリーネはくらくらした。
「むむぅ、しかしその手には乗らぬのじゃ!くらえー!」
 ぽぽぽんぽん、小ぶりモーラットのちいちゃな手の中にリーネが魔法で生み出したアイスが現れる。鋭利な形をしているが甘くておいしい。その甘い味と香りに小ぶりなモーラットたちはたちまち虜になる。
「きゅぴー?」
 わあ、なあにこれ!
「もきゅぅ!」
 おいしいもの!
「ぴきゅー!」
 つめたくてあまいものだ!
「きゅぴっ、もきゅー!」
 あっ、いいないいなー!!
 真夏のお花畑、かんかん照りの太陽の下。リーネのもたらしたアイスはモーラットたちにとって革命であった。手の中のアイスを瞬く間に食べつくし、ねえねえもっとないのもっとないのともきゅもきゅぴきゅぴきゅ鳴いてアイスを欲しがる。もう一度アイスを与えてやればみんなおとなしくアイスに群がった。
「ふはは、どうだ!みんなリーネのアイスの虜であるぞ!お前もどうじゃ? ほれほれ!」
「も……もきゅぅ……!」
 うぐぐぐ……ひきょうなー!
アイス欲しさにくやしそうなかおをするモーラット・デビルキング。さらにリーネはまとわりついてくる小ぶりモーラットに指をかける。
「ぴきゅ?」
 なあにー?
「くっくっく、お前にリーネの超絶技巧を味合わせてやろう……!ほれほれー!」
 わしゃわしゃわしゃ。そのブラッシングの絶妙なわしゃわしゃ加減は小ぶりモーラットをたちまちメロメロにさせる。
とてもきもちよさそうなかおできゅぴぃとなく小ぶりモーラットに、周りの小ぶりモーラットたちもリーネにわくわくした目を向けてくる。
「もきゅ!」
 ぼくもー!
「ぴっきゅ!」
 ぼくもやって!
「もきゅぴー!」
 ぼくにもぼくにもー!
「きゅ……きゅぴぃ……!」
 うう……うぐぐぐぐぅ……
 リーネのブラッシングを受けてどんどん気持ちよくなっていく小ぶりモーラットたち。とうとう我慢できずにモーラット・デビルキングもリーネの下に飛び込んだ。
「きゅぴぴぃー!!」
 ぼくもしてー!!
「ふふん、このこのリーネのブラッシングのテクに勝てるとは思わないことじゃ!いっぱいもふもふふかふかにしてやろうー!」
「ぴきゅぅ……!」
 はううう……!
わっしゃわっしゃされて、ほわほわになったモーラット・デビルキング。いつの間にか王冠もマントも脱ぎ捨てて、ただいっぴきのモーラットに戻ってしまっているのだった。
「きゅぴぃ……」
 はうう……
 そのままデビルキングだったモーラットは王冠とマントを残して、小ぶりなモーラットの一匹に紛れ込んでしまう。もうもふもふのなかに紛れて、どれがデビルキングだったモーラットかわからなくなってしまった。
小ぶりモーラットたちが、モーラット・デビルキングが脱ぎ捨てた王冠を頭の上に乗せ、マントを肩に巻き付ける。
「ぴきゅ!」
 おれい!
「きゅ!」
 ありがと!
「ふはは……これぞ悪!なんという悪!これこそ本物の悪というものなのじゃー!」
 きゅぴきゅぴもきゅもきゅするモーラットたちに囲まれて、ちいちゃな王冠をかぶったリーネは誇らしげに笑うのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『モラ詰まり・夏』

POW   :    アイスクリームでおびき寄せて詰まりを解消

SPD   :    冷たいジュースでおびき寄せて詰まりを解消

WIZ   :    涼しい場所に誘って詰まりを解消

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 かつてない強敵、モーラット・デビルキングは去った。
猟兵たちの前に残されたのは、モーラット・デビルキングが猟兵たちとの熾烈な戦いの中で呼び出しまくった小ぶりなモーラットたち。
呼び出されただけ呼び出されたかれらは別にモーラット・デビルキングがいなくなったからといって消えはしない。
そこかしこでもきゅもきゅきゅぴきゅぴとふよふよくるくる自由放題した結果――
「ぴ、ぴぃ……!」
 たすけてー!
「きゅぅー……!」
 でられない、でられないよぅー!
 詰まっていた。
夢の世界は摩訶不思議、猟兵たちはお花畑からまた子供の遊び場がつぎはぎになった不思議な空間に戻ってきている。そこに何故かある、モーラットが詰まりそうな配管!パイプ!なんか透明のチューブ!エトセトラエトセトラ!
それらに小ぶりのモーラットたちが、まんべんなく詰まっている。
助けを求めるモーラットたちの前で、少女――夢の主である山中りりんが困り果てていた。
「あう……どうしよう……でも……」
 詰まってしまっているモーラットたちを助けてあげたいという気持ちはある。けれど助けてあげたらまた白いもふもふにもみくちゃにされてしまわないかと怯えているのだろう。
 猟兵たちが今からやるべきことは一つ。
 少女りりんとともに詰まっているモーラットを助け、彼女の白もふ恐怖症を払拭してあげることだ。
=====================================================
第三章 「モラ詰まり・夏」が始まりました。

 おめでとうございます。猟兵たちとの熾烈な戦いによってかつてない強敵であったモーラット・デビルキングはただの無害なモーラットになりました。このままりりん少女の夢が覚めれば夢の彼方の存在になることでしょう。
 その前に、りりん少女の悪夢の原因を取り除き、夢から覚ましてあげる必要があります。
 りりん少女の悪夢の原因とはこれすなわち、白いもふもふ。
 そして目の前にはモーラット・デビルキングとの戦いの中でたくさん呼び出された小ぶりなモーラットたちが、これ見よがしに詰まっています。
 モーラットたちをりりん少女と一緒に助け出してあげましょう。
 以下に詳細を記します。
 
 「場所について」
 再び校庭や中庭や児童会館などが適当に繋ぎ合わされた曖昧な場所になっています。相変わらず夢の中は真夏です。
 そこになぜかパイプやチューブなどが存在し、小ぶりなモーラットたちがみっちみちに詰まっています。
 モーラットたちは助けられることに抵抗しません。むしろ助けてと訴えています。
 夢の世界である故にいろいろなものがあるので、利用できそうなものは都合よくいろいろあります。
 何かを利用する場合、「何を」「どうやって」使うか明記してください。
 詰まっているモーラットたちを助けてあげてください。
 
 「少女・山中りりんについて」
 サモエドと日本スピッツと白いポメラニアンに一気にじゃれつかれてのしかかられ一時的な白もふ恐怖症を患ってしまった七歳の少女です。
 さすがに目の前で詰まって悲鳴を上げているモーラットたちをそのままにしておくことはできないようで、助けてあげるべきかどうか迷っています。ですがどう助けてやればいいのかわからないこと、助けたらまた怖いものが襲ってくるのではないかという思いから手を出せずにいます。
 夢の中なので、知らない人が突然現れてもそういうものだと納得します。
 彼女と一緒に詰まっているモーラットを助け、モーラットは怖くないのだと教えてあげてください。

 第三章のプレイング受付開始は、11/30(水)朝8:31からとなります。
 時間帯によっては上記タグやマスターページに受付中の文字がないことがありますが、時間を過ぎていればプレイングを送ってくださって構いません。
 マスターページを確認したうえでプレイングを送信してください。
 第三章の必要成功数は5と少ないので、ご注意ください。
 目安としましては12/3(土)夜22時までに送られてきたプレイングは取りこぼすことなく採用することが可能ですが、
 それ以降になるとシステムの都合上必要成功数の上限に引っかかって採用できなくなる可能性がございます。ご注意ください。
 
 それでは、詰まっているモーラットたちを少女と一緒に助け、もっきゅもきゅの夢の世界を終わりにしてください!
オヴィリア・リンフォース
むむ!これ見よがしに詰まるなんて、中々の策士なのです。
りりんさんも助けたそうにしているみたいだし、
これはチャンスなのです。
まずはりりんさんに接触するのです。
言葉は話すけれど悪い猫じゃない事を耳を
ピコピコさせてアピールするのです。
まずは1体だけ助けてモーラットに、
害がない事を知ってもらうのです。
もしもの時は自分が何とかすると約束して、
りりんさんに安心してもらうのです。
その気になってくれたなら後は
りりんさんに任せるのです。
その間にモーラット達が悪さをしないよう
しっかりと見張っておくのです。
悪戯モーラットにはくすぐりの刑なのです。

「もふもふ過ぎるのも罪なのです」
「モーラットは悪夢ではないのです」



●もふが汗ためている
「もきゅー!もきゅぅー!」
 たすけてー!たすけてぇー!
「きゅぴぃ……もきゅきゅぅ……」
 でられないよう、でられないよぅ……。
 透明なプラスチックのパイプの中にモーラットが詰まっている。何とか出ようとしているのだろうが、モーラットたちも混乱しているのか動けば動くほどぎゅうぎゅうに詰まるばかりだ。
「う、うう……あう……」
 少女、山中りりんは困り果てていた。このかわいそうないきもの、助けてあげられるものなら助けてあげたい。けれど助け方がわからない。そしてこれは白くてもふもふしている生き物だ。解き放ったらまたたくさん纏わりつかれて動けなくなってしまうかもしれない。白くてもふもふした犬たちにのしかかられて動けなくなった時の恐怖が、この夢を悪夢たらしめている。だけれど少女はだからといってこのちいちゃな生き物たちを見捨てていけるほど薄情な心根はしていないのだ。
「にゃーん。お困りなのですか」
「え……?」
 りりん少女の足元に、お行儀よく足を揃えて座る猫がいた。言うまでもない、オヴィリアである。
オヴィリアは自分がもふもふではないさらつやな毛並みの猫であることを主張すべく猫らしく鳴いたのである。
(むむ!このモーラットたち、これ見よがしに詰まるなんて、なかなかの策士なのです)
 モーラットは何も考えていない。楽しく遊んでいたら詰まった。それだけである。
(りりんさんも助けたそうにしているみたいだし、これはチャンスなのです!)
 耳をピコピコさせ、猫は危害を加えませんよと言わんばかりにアピールしながらオヴィリアはりりん少女に話しかける。
「わたしは猫なのです」
「しゃべるねこさん……?」
「これはあなたの夢の中。猫が喋ってもなにもふしぎなことはないのです。にゃーん」
「そっか、あのね、ねこさん、このこたちがね、かわいそうなの」
「はい。詰まっているのです。もふもふすぎるのも罪なのです」
「助けてあげたいの。でも、わたし、白くてもふもふしたの、こわくって……その、もふもふした白い犬に、いっぱいのっかられて……」
「それは大変だったのです。では、まず最初に一匹だけ助けてあげるというのはどうでしょう?」
「え、いっぴき、だけ?」
「その一匹が悪い子だったらわたしがりりんさんを守ってあげるのです。約束するのです。その子が悪い子じゃなかったら他の子も助けてあげたらいいのです」
「そ、そっか……!」
 りりんはオヴィリアの助言を得て、どうにかこうにか透明なパイプの中から一匹のモーラットをきゅっぽんと引っ張り出した。出てこられたモーラットはふよふよくるくる回って喜びを示す。
「もっきゅー!!」
 わあい!出られた出られた!ありがと!!
「ひゃ……!」
「こら、突然飛びついてはダメなのです」
「ぴきゅっ!」
 はあい!
りりん少女に飛びついて感謝の意を示そうとしたモーラットを、オヴィリアがすんでで制止する。
かわりにふよふよくるくるしながらうれしいかおをするモーラットを見て、りりんも安心したのだろう、透明なパイプからつぎつぎにモーラットたちを出していく。
「もっきゅ!」
 やったあ!
「きゅぴー!」
 でられたよぅ!
「ぴきゅ!」
 ありがと!
 いたずら心を起こしてりりん少女に近づきすぎるモーラットにはオヴィリアがこしょこしょとくすぐる事でお仕置きをする。透明なパイプに詰まっていたモーラットたちは無事救出され、りりん少女から適正な距離を置いた場所で一列に並んでふよふよしながらおじぎをした。
「もきゅ!」
 たすけてくれて、ありがと!
そのうれしそうなかおと仕草に、りりん少女も笑顔になる。オヴィリアはほっと胸を撫でおろして言うのだった。
「ほら、モーラットは悪夢ではないのです」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ディル・ウェッジウイッター
アドリブ・連携可

見事に詰まりましたねぇ
どうして彼らはこんなに詰まってしまうのでしょう
引き続きゴーストの皆さんにご協力願いましょう

りりんさんには最初はモラ詰まり解消のお手伝いは頼まず、先に淹れたお茶を渡して離れた所で様子を見てもらいます
じゃれた犬たちに悪気はなかったでしょう。だからと言って今抱いている感情を改めなくても良いのです。他人が口を出す問題ではありません

ゴーストの中でもリスさんと猫さんはりりんさんの傍にいてモーラットがじゃれつかない様に護衛してもらいます

残りのゴーストの皆さんは私と一緒にモラ詰まり解消のお手伝いを



りりんさんもお手伝いしてくださるのならばアドバイスをしながら抜いていきます



●どうしようもないもふが詰まっている
 そこは真夏の太陽降り注ぐ、中庭かどこかなのだろう。子供が喜びそうな鉄製の遊具がそこここに立っている、少女の夢の中。
「きゅぴぃー……」
 でられないよぅ……。
「もきゅぅ!もっきゅー!」
 たすけてぇ!たすけてよぅ!
ちいちゃな手をちたぱたちたぱた、チューブから手だけ出ているモーラット。その奥にはまだなんびきもモーラットが詰まっているのだろう、ぽこんぽこんとチューブがまるいかたちに膨れている。
「あ、う、えーと……」
 夢の主である少女、山中りりんはとても困っていた。これだけ切なる声を上げているのだ、助けられるものなら助けてあげたい。だけどこれはりりん少女にとってはとても怖い白くてもふもふないきもの。助けてあげたらもふっとわさっと飛びついてくるかもしれない、そう考えると手が出ないのだ。
「ど、どうしよう……」
 そんなりりん少女の背に立ったのは、浅黒い肌の青年だった。
「あら、見事に詰まりましたねぇ。どうして彼らはこんなに詰まってしまうのでしょう」
 モーラットは詰まるものだ。しかしいつからこんなに詰まるようになったのだろう。一説によれば最初に詰まったのは回線だという。回線? ホワイ? しかし誰かが「回戦にモーラットが詰まった」と言い出し、それがモーラットを知る者の間でその認識が共有されるようになっていったのは確か。そしてそれからモーラットはいろんなものに詰まるようになったらしい、というのが有力であるとかなんとか。
「さて、ではりりんさん。お茶でもいかがですか?」
 ヌワラエリヤのアイスティーをご用意しております。
「ぬ、わら……アイスティー?」
「はい」
「でも、このこたちが、あの、ここに……つまってるの」
「はい、詰まってますねぇ」
「どうにかして、あげたいの。けど……」
「怖いですか?」
「……うん」
「あなたにじゃれた犬たちには悪気はなかったでしょう。だからといって、いま抱いている感情を改めなくても良いのです」
「え……」
「そんなもの、他人が口を出す問題ではありません」
「……怖いままでも、いいの?」
 おずおずと聞いてきたりりん少女に、ディルはにっこりと笑みを返した。少女の目がまるくなる。きっと今まで、そう言われたことはなかったのだろう。
「猫さんとリスさんは怖いですか?」
「……ううん。へいき」
「じゃあ、一緒にいてもらいましょうか。白いもふもふがじゃれついてこないように、護衛していてもらいましょう」
 にゃあん、と黒猫のゴーストが鳴いた。ぴょん、と黒いリスが少女の肩に乗る。そのままディルが少女の手にアイスティーのグラスを握らせると、黒猫は先導し少女を日陰へと案内する。ちょこん、と少女が座ったのを見て、ディルは残りのゴーストたちを呼び出し、今まさにチューブに詰まっているモーラットたちに微笑みかけた。
「さて、今助けて差し上げますので、少しだけ動かないでいてくださいね?」
「きゅぅー!」
 はあい!たすけてぇ!
ぽこぽことチューブに詰まったモーラット。チューブの素材はゴムであるらしい。ならば、とゴーストたちが力でゴムチューブを良い感じの長さに切り、その辺にあった蛇口に繋いで水を流し込んでやると、ぽぽぽぽん!と音を立ててモーラットたちが水に乗って流れ出した。
「もっきゅー!」
 わあい!
「きゅぴっ!」
 でられた!
「ぴきゅー!」
 たのしー!
きゅぴきゅぴと鳴きながらぽぽぽんとチューブから溢れ出るモーラットたちの向こうに、虹が出来る。モーラットたちは助けてくれたディルへと群がった。
「きゅっぴ!」
 ありがと!
「もきゅ!」
 でられた!
「ぴきゅっ!」
 わあい!
 ひとしきりディルの周りで喜びとお礼のふよふよくるくるをすると、モーラットたちはふわふわと散る。ディルの服の裾を、きゅぅ、と握る小さな手があった。
「おや。お茶のおかわりですか?」
「ううん、あのね……わたしも、このこたち、たすけてあげたい、の」
「そうですか。では、一緒にやってみましょうか」
「……うん!」
 こくりとうなずく少女。その肩には黒いリスが、足元には黒猫がちょこんと待機している。今度はディルが蛇口を捻って、ゴーストたちが押さえるチューブを少女が持つ。いっせーの、の掛け声で水が放出され、ぽぽぽぽぽん、とモーラットたちが飛び出した。
「もっきゅぅー!!」
 でられたー!
「にゃっ」
「きゅ!」
 出してくれたりりん少女に感謝し飛びつこうとするモーラットたちを、黒リスと黒猫が牽制する。きゅぴっ!とモーラットたちは一線を引いて、お礼のくるくるのあと一斉にちょこんとおじぎをしてみせた。
「「「きゅぴ!」」」
 ありがと!
「わ、わ、……えっと、どういたしまして!」
 少女は頬を紅潮させて言葉を返す。その背中を、ディルはゴーストたちと一緒に見守っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木々水・サライ
うーわ、詰まってんじゃん。
ってことで父さんと母さん、あと精霊猫を使い冷たいジュースで釣り上げる。
「あの子のトラウマ拭ってやれよ?」
わかってるっつの。

で、少女にもジュースあげて。
小さい頃のトラウマってのはどうしたって拭いきれないし、怖かっただろうよ。
そりゃ視線が上になっちまうからな。怖いって思うのは自然の摂理。
とは言え……そうやって怖がりすぎてても、ちょっと可哀想だ。
今は無理して触らなくてもいい。ジュース見せびらかすぐらいでいい。
でも、怖くないって思ったら触ってあげようか。

さーて、後で飼い主ボコす。少女怖がらせた罪で。
『そういう性格、ヴォルフに似たのかしらねぇ……』
「俺じゃねェアイツだろ」



●詰まってもきゅもきゅ開いてもふもふ
「もきゅー!」
 たすけてぇー!
「きゅぴぃ…!」
 でられないよぅ!
 真夏の太陽が降り注ぐ、公園のような場所。透明なパイプの中でモーラットたちが押し合いへし合いしている。どうやら出ようとするあまりにお互いの体が絡まり合っているようだ。もっきゅもきゅきゅぴきゅぴと鳴きながらぽろぽろとパイプの中で涙を流している。
「う、あう……」
 少女、山中りりんはほとほと困り果てていた。助けられるものなら助けてやりたい。いくら怖いものとはいえ、泣いているのをそのままにしていくほど少女は冷たくない。かといってこの詰まり具合、少女一人の手ではどうにかできるものではなし。そして、もし出してあげたらこのもふもふたちは一斉に自分へと向かってくるのではないかという恐怖はやはり拭えるものではない。
「うーわ、詰まってんじゃん」
 その声に少女は振り向いた。そこには両親を背にしたサライが立っている。その足元には大量の精霊猫たちがふぐるにょわーと鳴いていた。
「さ、行ってこいサライ。あの子のトラウマ拭ってやれよ?」
 父ヴォルフがサライの背中を押す。
「わかってるっつの」
 もふもふしている精霊猫たちは少女を怖がらせないようにひとまず両親のもとで待機させて、公園に設置されている自動販売機でサライはジュースを買う。かこん、と取り出し口から出て来た冷たくて甘そうなジュースを二つ取り上げて、サライはそのひとつをしょうじょへと差し出した。
「あ、あの、」
「小さい頃のトラウマってのは、どうしたって拭いきれないし。怖かっただろうよ」
 そりゃ視線が上になっちまうからな。怖いって思うのは自然の摂理だ。
 幼少期のトラウマと言えるものならば、サライだって持っていた。この体になって、両親を送り返した今ではもう、痛まないものだけれど。
「とはいえ……そうやって怖がりすぎても、ちょっと可哀想だ」
「……うん……」
 小さな手でジュースの缶を手にして、少女はこくん、と頷く。
「今は無理して触らなくてもいい。ジュース見せびらかすくらいでいい。でも、怖くないって思ったら……触ってあげようか」
 そう言うと、サライは缶ジュースの口を開け。パイプの口からととと、とジュースを少しばかり注ぐ。
「きゅぴっ?」
 なあに?
「もきゅ!」
 あまい!
「ぴきゅっ!」
 おいしいものだ!
「もっきゅ!」
 あまいもの、おいしいもの!
「きゅぴー!」
 もっとちょうだい!おいしいもの!
「ほら」
 サライが少女の背を押すと、少女は緊張で紅潮した頬で缶ジュースを透明なパイプ越しにモーラットに見せつける。
「あ、……甘いジュースだよ、出て、おいで……!」
「もきゅぅー!!」
 おいしいもの!
「きゅぴっ!」
 ぼくにもぼくにも!
「ぴきゅぅ!」
 ちょうだいちょうだい!
 パイプの中で押し合いへし合いするモーラット。しかし今度は注ぎ込まれたジュースが上手いこと潤滑剤となって、つるつるとパイプの中をモーラットの絡まりがほどけて滑っていく。ややあって、最初のモーラットがパイプの口から滑り出て来た。
「もっきゅぅ!!」
 でられたー!!
 それを皮切りに、ぽぽぽぽぽ、とモーラットがパイプから飛び出てくる。ジュースに濡れた体をぶるん、と振って、サライと少女へと飛びつこうとするモーラットたち。
「わ、っ……」
「大丈夫だ」
 強張った少女の肩をサライはぽん、と叩いた。
「ふぐるにょわーん」
 ここから先には来ちゃ駄目、とばかりに精霊猫が少女に近づくモーラットたちを牽制する。制止されたモーラットたちは聞き分けよくぴたっと止まって、一列に並んでお礼と喜びのふよふよくるくるをした。
「もきゅっ!」
 たすけてくれて、ありがと!
ぺこり、とおじぎをしてみせるモーラットたちに、少女は頬を紅潮させて。そっと手を伸ばす。
「きゅ?」
 なあに?
なで、と少女の手が、一匹のモーラットの頭を撫でる。モーラットは喜んで、またくるくる回った。
今はまだ少しだけ怖いけれど、でも。少女の|悪夢の元凶《トラウマ》は払拭されたのだ、と、少女の笑顔が語っていた。

「さーて……後で飼い主ボコさねーとな。あの子怖がらせた罪で」
 バキバキと拳を鳴らすサライ。母アンナはあらあら、と笑って言った。
『そういう性格、ヴォルフに似たのかしらねぇ……』
 父ヴォルフは憮然とした顔で言う。
「俺じゃねェよ、アイツだろ」
 別の世界のどこかで、糸目の胡散臭い闇医者がくしゃみしていたとかなんとか。

 斯くして――悪夢は終わった。
少女は目覚め、もっきゅもきゅのモーラットたちは夢の彼方の存在に変わっていく。
少女が能力者として目覚めることがなければ、もうこの白いもっきゅもきゅのもふもふたちには出会うことはないだろう。モーラットとはそういうもの。世界結界の力はたらく銀の雨降る世界では、少女はモーラットを正しく認識することはできないからだ。
けれど、このもっきゅもきゅの夢は。
少女の心に、もしかしたら優しい夢の記憶として残り続けるのかもしれなかった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年12月04日


挿絵イラスト