銀河帝国攻略戦㉑~それは過去を切り裂く刃
「みんな『クライングシェル』『アゴニーフェイス』艦隊の撃破、お疲れさま。」
大きな機械鎧の肩に乗った妖精の少年、妖精の少年、トゥール・ビヨン(時計職人見習い・f05703)は集まった猟兵達を労うように声をかける。
「現在、解放軍の艦隊は銀河皇帝を守る艦隊への攻撃を目指して銀河の海を進んでいる。」
トゥールが一旦言葉を切ると、グリモアベースのモニターに現在の戦況図が映し出される。
「このままボク達猟兵も解放軍に追随、といきたいところだけど、実はその前にやり残したことがあるんだ。」
トゥールの言葉とともにモニターの画面が切り替わり、黒い鎧を着た一人の男が映し出される。
「彼の名前は『黒騎士アンヘル』。銀河帝国「二大巨頭」と呼ばれるひとりで、帝国最強のフォースナイトだ。」
実はクライングシェルとアゴニーフェイスの艦隊を突破した解放軍は一旦はこの黒騎士アンヘルに戦いを挑んだ。しかし、解放軍の艦隊にこの黒騎士を撃ち破る事は叶わず、黒騎士の撃破を諦めた解放軍は銀河皇帝を守る艦隊へと攻撃の矛先を変えたのだった。
「現在、黒騎士アンヘル率いる艦隊はその戦力の悉くを失っている。銀河皇帝を滅ぼす、今回の作戦においてはもう重要とは言えない立ち位置にいるんだ。」
解放軍にとっては無視してしまっても良い敵、しかし、猟兵にとっては話は別だ。
「仮に今回の戦争でオブリビオン・フォーミュラである銀河皇帝を撃破しても、二大巨頭である黒騎士が逃げ延びれば、新たな、オブリビオン・フォーミュラとなりうる可能性が残される。それは、猟兵であるボク達には避けなければならない事態だ。」
もし、黒騎士が新たなオブリビオン・フォーミュラとならなくても銀河皇帝撃破後、銀河帝国の残党あるいは、スペースシップワールドの不平分子等を集めて、悪事を行う危険も大きい。
「そこで、今回はボク達猟兵による、この黒騎士アンヘルの抹殺作戦が行われることになったんだ。」
「状況を整理するね。まず、黒騎士アンヘルのいる場所。彼は破壊された配下の艦艇の内一つの中に出現する。周囲に部下達はおらず、黒騎士の他にこれといった戦力も存在しない状況だ。」
敵はたった一人との情報に猟兵達から安堵の声が上がる。しかし、状況を語るトゥールの表情は険しい。
「そう、敵は一人しかいない。でも、これは黒騎士アンヘルが一人の戦士として、最大の力を発揮できる状況でもあるんだ。」
帝国最強の騎士が最大限力を発揮できる状況。猟兵の精鋭であっても、勝敗は五分五分。いや、むしろ敗北する危険性の方が高いかも知れない。
「黒騎士アンヘルは『確定された過去を操る』ユーベルコードを操る強敵だ。詳細はみんなに情報を送るけど、彼のユーベルコードに対抗する策がなければこちらが攻撃を届かせる前に返り討ちに遭う。」
トゥールは顔を上げると、集まった猟兵達一人ひとりの顔を見つめ口を開く。
「もう一度繰り返すけど、この作戦は失敗する可能性が大きい危険な作戦だ。でも、スペースシップワールドの平和のために、ボク達にしか出来ないことでもある。」
トゥールは一旦言葉を句切ると、改めてはっきりとした声で告げる。
「みんなには負担をかけるけど、ボクとパンデュールもみんなを送り出すために全力を尽くす。だから、力を貸して欲しい。」
西駝きゅー
こんにちは、マスターの西駝きゅー(にしだ・きゅー)です。
おこしいただき、ありがとうございます。
成功条件は黒騎士アンヘルの撃破となります。
難易度相当の判定を行いますので十分ご注意ください。
●難易度
難しい
●このシナリオについて
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
●黒騎士アンヘル
黒騎士アンヘルはオブリビオンのため、仮に猟兵が勝利して、黒騎士を『骸の海』に放逐したとしても、黒騎士はすぐに『骸の海』から蘇り、別の場所から再出撃してきます。
(逆に猟兵が敗北した場合、黒騎士は『一旦、骸の海に撤退して、完全に回復』したうえで、別の場所に再出撃してきます。)
黒騎士が『骸の海』から出現する場所は、破壊された黒騎士配下の艦艇のどれかとなります。
基本は黒騎士配下の艦艇内に出現してくる黒騎士を待ち伏せて撃破を目指すことになります。
詳細等は以下の特殊ルールなどもご覧下さい。
●特殊ルール
黒騎士アンヘルは、先制攻撃を行います。
これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
第1章 ボス戦
『黒騎士アンヘル』
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POW : 消えざる過去の刃
【虚空から現れる『空間に刻まれた斬撃』】が命中した対象を切断する。
SPD : 過去喰らいの三呪剣
【過去の鍛錬の経験を封じる白の呪剣】【過去の戦闘の経験を封じる黒の呪剣】【戦うに至った過去を封じる灰の呪剣】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ : 記憶されし傷痕
【対象の肉体】から【過去に刻まれた傷跡や病痕】を放ち、【一度に再現され肉体を蝕む出血や疾病】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:藤本キシノ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
御倉・ウカノ
連携【ツーユウ_f04066】【喜夏_f13043】
過去からの刃、嫌なこと思い出させてくれるねえ。
実家の言いなりが嫌で、家を飛び出して一人でだって生きていけると勘違いしていた頃の傷だ。【力溜め】【鼓舞】【勇気】、かつてのあたしが持っていなかったものをもって耐えしのいで見せるよ。それに、もうあたしは一人じゃない。今は共に戦う仲間がいる。仲間の為を思うなら、あたしが変わらなくちゃあいけないよね。実家をでる前に死ぬほど叩き込まれた業。死んでも使うものかと思っていたが…意地をはって仲間が傷ついたらそれこそ死んでも死にきれないねえ。UC【御倉流巫女神楽『狐薊』】で反撃するよ。
「これがあたしの全力だッ!」
北条・喜夏
連携【ツーユウはん_f04066】【ウカノはん_f01251】
どないせえっちゅうねん。下手に撃ったら返されるっちゅうに……
ッ、ツーユウはん、それにウカノはんも……
――ああ、ほうか。ここにゃ、みんなおるんやなあ。
あんときとは違う。
なんや、ブルっとるのが情けのうなってきたわ。
出てきいや、「チューすけ」!ウチの、みんなの盾になったってや。行けるか?……ほんなら頼むで!
まずは「チューすけ」で【盾受け】して奴さんの攻撃を凌いで。
まあ、みんなもおるやろし。ちっとばかし痛かろうが、【激痛耐性】……んま、簡単には死なへんから大丈夫や。
『其は七発目の弾丸』!【スナイパー】で、一発で黒騎士のドタマをぶち抜いたる!
ツーユウ・ナン
連携【喜夏どの_f13043】【ウカノどの_f01251】
歴戦の兵に古傷の無い者などおるまい。挫けても立ち上がれる者、其れが強者じゃ。(戦場⑬を乗り越えて)
◆対UC
用心棒になった時から、他人の分まで引き受ける覚悟はできておる!
⇒『UC』仲間を【かばう】【オーラ防御】【激痛耐性】【覚悟】
(痛め付けられ、封じられ苦しむ仲間を【気合い】で激励)
見よ、此処には「今」がある!共に肩を並べて未来の為に戦う仲間がな!
◆反撃
敵UCを凌ぎ突進する。剣撃を【見切り】、格闘の間合で擒拿【グラップル】にて崩し、回り込んで横合いから強烈な靠撃【鎧無視攻撃】【吹き飛ばし】を食らわせて味方の攻撃へ繋げる。
「哼フン!」
銀河の闇にたゆたう一隻の艦艇。破棄され、今は残る者も無く宙の塵へと消えゆくのみとなった艦内に一人の男が降り立った。
黒騎士アンヘル。帝国最強と詠われた二大巨頭の一角が今、骸の海より甦ったのだ。
時同じくして、黒騎士の出現を待ち伏せた一つの影が弾けるように飛び出していく。紫の髪と尾をなびかせた龍女、ツーユウ・ナン(粋酔たる女用心棒・f04066)が黒騎士に息つかせる間もなく奇襲を仕掛けたのだ。
「わしが飛び込んで攻撃を引きつける。その隙に奴を討て!」
後に続く者達に思いを託し、その身で攻撃を引き受ける覚悟で飛び込んだツーユウの赤き瞳は黒騎士の鎧を打ち砕かんと捉え。
「――いや、終わりだよ。」
ツーユウが拳を振り抜かんと力を込めた、刹那。彼女の胴が正面より袈裟に切り裂かれ血が迸った。目前へと迫っていた黒騎士は紅き気を纏う剣の柄から手を離すと、ツーユウから視線を外し、その後を見つめていた。
「ツーユウ!」
ツーユウの後方にて追撃の機会をうかがっていた白肌金毛の妖狐、御倉・ウカノ(酔いどれ剣豪狐・f01251)は沈み行く仲間の背をその眼に捉えながら、たった今起こった出来事を反芻していた。ツーユウは確かに達人の洞察力で、黒騎士が放った高速の斬撃に紙一重で反応していたはずだ。しかし、彼女の身体には黒騎士の紅き刃が刻まれた。あれが、黒騎士アンヘルが使うユーベルコードの一つ。空間に刻まれる斬撃、『消えざる過去の刃』。
「君にはこれを。」
こちらを見つめる黒騎士の視線を振り払うように、御倉が背に負う大太刀に手をかけた、その瞬間。彼女の全身の各所に傷跡が浮かび上がり、その傷口から一斉に血が噴き出した。
「は?」
その身に起きた異変を飲み込めないまま、全身から血を噴き崩れ落ちようとする御倉は刻まれた傷跡に妙な感覚を覚えていた。
――ああ、あたしはこの傷を知っている。これはあの頃負った傷だ。実家の言いなりが嫌で、家を飛び出して。一人でだって生きていけると勘違いしていた、あの頃の。
『記憶されし傷痕』。肉体に刻まれた過去の傷跡を再現する、黒騎士アンヘルの二つ目のユーベルコードが御倉の身体を蝕んだのだ。
「ツーユウはん!ウカノはん!」
一瞬にして二人の仲間が黒騎士の攻撃に倒れ行く中、御倉の背に控えていた現代地球の学園制服に身を包んだ猟兵、北条・喜夏(武装召喚JKよしかちゃんとはウチのことやで!・f13043)は黒騎士が次の攻撃に移らんとする前に術式を展開し彼女達の身を守る『盾』を召喚する陣を描いていた。
「出てきいや、『チューすけ』!ウチの、みんなの盾になったってや!」
北条の描いた陣が光を放つと、彼女の前に超重量を誇る戦車が召喚された。北条は傍らで今にも倒れようとしている御倉の腕を掴み、戦車の影に隠れるように引き寄せると、軽機関銃・みなみちゃんを携え戦車の影から黒騎士に向けて銃口を構えた。
下手に撃てば黒騎士に攻撃の隙を許すかも知れない。だが今はそんなことを考えている余裕は、ない。弾幕を張り少しでも時間を稼ぐ。
「これが猟兵、呆気ないものだ。では、これが私からの最期の手向けだ。」
北条が放つ軽機関銃の弾丸は黒騎士の目前で弾けるように消えていく。黒騎士が空間に刻んだ刃が彼の身を守るように虚空に再現され続けているためだ。
その弾丸の雨の中で、黒騎士は三つ目のユーベルコードを発動する。彼の前に表れたのは、三本の呪われし剣。白と黒と灰の禍々しき呪剣の内一つの柄を握った黒騎士は、一心不乱に銃撃を行う北条に向けてその剣を、投擲した。
突如飛来した黒騎士の呪剣は軽機関銃を切り裂き、北条の腕に突き刺さる。剣は鈍い灰の色を称えていた。北条は呆然とした面持ちで自身の腕に突き刺さった刃を見つめながら、その手から愛用の軽機関銃の残骸を取り落としていた。
――あれ?ウチは、なんであたしはこんな所で銃なんか構えて。
灰の剣の呪いは、北条から『戦うに至った過去』を奪っていた。自らの戦う理由を見失った彼女は現状を認識できず固まっている。その北条の様子を認めた黒騎士は、最後に残る黒と白の呪剣を両手に握り、そして絶好の的となった北条へ向けて再び投擲した。
黒騎士アンヘル。帝国最強のフォースナイトは、出現地点より一歩も動くことなく、三人の猟兵を退けたのであった。
「何を勝手に終わろうとしておるのじゃ。」
北条へ向けて飛来する二本の呪剣の刃をその両手で掴んだ者がいた。
「我が身体に堅固不動なる心を宿せ……。」
その身に纏う気の本流は龍頭を象り、切り裂かれた身体とその手に握りしめた二つの刃の痛みをその覚悟で以て無理矢理押さえ込み、仲間を守った龍がいた。
「南無本師釈迦牟尼佛……哼!」
その龍の名はツーユウ。その身に金剛に輝く龍気を漲らせ、彼女は叫ぶように声を上げた。
「目を覚ませ、ウカノどの!喜夏どの!見よ、此処には「今」がある!共に肩を並べて未来の為に戦う仲間がな!」
過去の傷に倒れ、過去の戦う意味を奪われた仲間達へツーユウは、最後の力を振り絞り気合いを込めた檄を信じる仲間達へ飛ばす。
その声に最初に応えた者が、重厚な戦車の影からその姿を現した。
「……死んでも使うものかと思っていた。実家をでる前に死ぬほど叩き込まれた業。でも――。」
両手に握る大太刀・伊吹を正眼に構えた金毛の剣豪、御倉が過去の痛みと決別するようにその眼に黄金の意志を宿し立っていた。
「意地をはって仲間が傷ついたら、それこそ死んでも死にきれないねえ!」
――もうあたしは一人じゃない。今は共に戦う仲間がいる。仲間の為を思うなら、あたしが変わらなくちゃあいけないよね。
「臨兵闘者皆陣列在前!我が劒はこれより禍者を打ち祓うものとなる!」
大太刀の刀身が御倉が唱える護法と共に、咲き誇る狐薊の華へと姿を変える。散りゆく狐薊の花びらはやがて嵐となり黒騎士アンヘルを飲み込んだ。空間に刻まれた黒騎士の刃の軌跡もその小さな小さな花びらを捉えることは叶わなかった。
「これぞ御倉流巫女神楽『狐薊』なり!」
――ツーユウはん、それにウカノはん。
過去を切り裂かれ、戦う意味を見失っていた北条は目の前で立ち上がった仲間達の姿を見つめていた。
「ああ、ほうか。ここにゃ、みんなおるんやなあ。あんときとは違う。なんや、ブルっとるのが情けのうなってきたわ!」
呪いが解けたかのように瞳に輝きを取り戻した北条は、その腕に突き刺さった灰色の呪剣を手に握ると、力任せに引き抜きうち捨てた。そして、残る腕で召喚したボルトアクション式ライフル・からびんを戦車の影から構えると花びらの嵐にその身を包まれ視界を失っている黒騎士へ向けてその引き金に指をかけた。
「この一撃は、中てる、中たる……。」
アイン、ツヴァイ、ドライ……北条のカウントが七を数えたとき、その銃身から必殺の魔弾が放たれる。
「『其は七発目の弾丸』、――デア・フライシュツ!」
北条が放った弾丸は正確に黒騎士を捉え、その身体を撃ち抜いた。
宙に舞う花の嵐が終わりを迎え、その中より姿を現した黒騎士は左肩から血を流し黒き鎧を赤く染めていた。
成功
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ディスターブ・オフィディアン
【SPD】判定
アドリブ歓迎
可能なら味方と即席連携をしておこう
「過去を食らい戦闘経験等を封じるか――興味深いがここで潰させてもらう」
敵の先制攻撃に対しては見切りや残像第六感を駆使して回避
最悪でも一つは回避し、ユーベルコードを使える状態でバトンをつながなくてはな
一部喰らってしまった場合は、親友の人格『村雨丸』に切り替わることで対応
一時的に無力化された状態からの騙し討ち、ですね
「彼には彼の過去があり、ボクにはボクの過去がある。
すべての過去を都合よく書き換えることはできないと知りなさい。
「さあ覚悟!」
村雨小太刀から早業の居合切りを放って黒騎士に一撃を入れてやりましょう
オル・クブナス
黒騎士アンヘル…まさかこのような強者と戦うことができるとは。人生何があるかわからないものですなぁ。
さて、どれだけやれるかわかりませんがやってみましょうか。敵の攻撃を『ナノマシンアーマー』と液体の身でできるだけ凌ぎながら黒騎士に接近しましょう。全部防ぐ必要はありません。むしろ被弾覚悟で注意を引きつけながら【戦場の亡霊】による不意打ちを狙います。
私の体を目隠し代わりにして、後ろから亡霊にアサルトウェポンにて攻撃させましょう。私の戦闘法を再現する亡霊です、余計な符丁などは必要ありません。
『肉を切らせて骨を断つ』
敵は銀河帝国最強のフォースナイト、こんな小細工で一矢でも報いることができればよいのですが。
張・小龍
「確定された過去を操るって何ですか。本当に何でもアリですねユーベルコード」
「いいでしょう!過去など全てくれてやりましょう!我が目指すは常に未来にある栄光のみ!」
ボクは射程が短いので相手の懐に入って行く必要があります
『空間に刻まれた斬撃』というのですから相手の動きを見ても攻撃方向は予測できそうにないですね
技能の第六感と野生の勘を頼りに、ダッシュと残像を併用してかく乱しつつ敵の攻撃を避けて飛び込みます
避けきれない部分はオーラ防御と激痛耐性で耐えて、一撃に全てを賭けて如竜得翼を放ちます!
とはいえ、そう簡単に首は獲れないでしょう。ボクが狙うのはまず鎧です
技能の鎧砕きで敵の防御力を落とすことを狙います
流れる赤き血液が黒騎士アンヘルの漆黒の鎧を赤く染めていく。彼は倒し得ぬ怪物などではなく、彼もまた一人の人間だと訴えるかのように。
しかし、彼は既に人間ではない。今を生きる者全ての敵。過去の亡霊、オブリビオンなのである。
「……先ほどの言葉は撤回しよう。やはり、君達は。――覚悟を決めた人間は、強い。」
はっきりとした口調でそう告げた黒騎士は、今目の前にいる人間達を自身の『敵』と認めたようにその赤い瞳にこれまでとは比べものにならない明確な殺意をたたえ、一歩、その場より足を踏み出した。
黒いローブに身を包みその奥から赤き瞳を向ける多重人格者、ディスターブ・オフィディアン(真実を 暴く/葬る モノ・f00053)は傷付いた黒騎士に反撃の隙を与えまいとその手に持つ魔杖・ケリュケイオンに炎の魔力を宿し、全力の力を込めて解き放った。
「貴様の手の内は全て見せて貰った。過去を食らう力、実に興味深いがここで潰させてもらう。」
巨大な火の玉が黒騎士に直撃し、大火に飲み込まれる。帝国最強の騎士と言えど、今の一撃をただで耐え凌ぐことは出来ないだろう。ディスターブの中にそんな考えが過ぎった刹那であった。
燃えさかる炎の向こうから、何かが此方へ向けて放たれた。咄嗟の判断で初撃を躱したディスターブであったが、続く二撃、三撃はディスターブの身体を正確に捉え、その身体に黒と白二つの呪剣が突き刺さった。
「何!?」
すると、突如これまで巨炎を上げていた黒騎士の身体から炎がかき消え、その中から黒騎士アンヘルが平然とした様子でディスターブの前に現れた。
「君を鍛え上げた『過去の鍛錬』。そして、君の技を磨き上げた『過去の戦闘の経験』。これを今、私が切り裂いた。力も冴えも無き技は無力。故に、君の今の攻撃は『私に届かなかった』。そういうことになった。」
これが黒騎士アンヘルの過去を操る力。積み重ねられた過去の上に今がある。過去を崩されれば、その上に立つ今も崩壊することになる。
「馬鹿……な。」
ディスターブは黒騎士の力を侮っていたつもりはない。先の戦いで見た、三本の呪剣も最悪でも一つは回避出来れば反撃の目はあると、そう考えていたのだが。
深々と突き刺さった二本の剣のダメージが想定していたよりも大きい。更に、今目の前で起こった出来事に黒騎士の底知れなさを感じたディスターブは片膝をつく。
その彼を背に庇うように二人の猟兵が黒騎士アンヘルの前に進み出た。一人は白髪に琥珀色の瞳をたたえた小柄なドラゴニアン、張・小龍(飛竜子・f03926)。もう一人は、黒の礼装に身を包んだ紳士然としたブラックタール、オル・クブナス(殴られ屋・f00691)である。
「確定された過去を操るって何ですか。本当に何でもアリですねユーベルコード。」
ディスターブの攻撃をかき消した黒騎士の力を目の前で見せつけられ、苦笑する張。
「黒騎士アンヘル……まさかこのような強者と戦うことができるとは。人生何があるかわからないものですな!」
オルは黒騎士の力をまざまざと見せつけられながらも、平静を装う風に言葉を続ける。そして、共に進み出た張と目配せを交わすと弾けるようにそれぞれ別方向から黒騎士へ向けて間合いをつめる。
どちらか一方でも黒騎士の喉元に辿り着ければ良い。黒騎士が剣を振るう前に。そのつもりであった。
突如、二人の猟兵の身体を数多の斬撃が襲った。いや、彼ら二人が斬撃に向かって飛び込んだと言うべきか。
「これは……これ程の斬撃とは。」
「数が多すぎる!」
四方八方から襲い来る斬撃に驚愕を隠せない張とオル。共にすんでの所で致命傷は避けてはいるがそれも時間の問題だ。仮に目の前の黒騎士が認識出来ぬほどの速度で剣撃を放っていたとしても、これはあまりに多すぎる。
斬撃の嵐に飲まれる二人の猟兵に向けて黒騎士は平然とした様子で言い放った。
「かつて、私は銀河帝国のために数多の剣を握ってきた。この空間は、はるか昔私達が愚かな解放軍と刃を交えた宙域。その時の私が刻んだ戦いの記憶を、ここに再現した。改めて、剣を振るうまでもない。この場所は既に私の領域だ。」
はるか昔。伝説の初代解放軍と銀河帝国が起こした戦闘の記憶。今、猟兵達を苛んでいるのは、その時に刻んだ黒騎士の斬撃だと、彼は言っているのである。
そんな途方もない、時を経てなおその跡を再現する黒騎士の力に恐ろしいものを感じながらも、オルはその激しい斬撃の中を自身のナノマシンアーマーと液状の身体を頼りに少しずつ黒騎士へ向けて進んでいく。
既に、身体には剣撃に刻まれていない箇所を探す方が至難だ。ほとんど瀕死の状態の身体を引きずりながらかすれる声でオルは黒騎士に向けて言葉を紡いでいく。
「……貴方の過去を操る力……確かに強力です。ですが……その力故に貴方は『今』を軽んじている。だから……こんな小細工にも気付くことが出来ないのです!」
今にも地に伏せようとするオルの背後から突如、何かが武器を構えその引き金を引いた。オルはその瀕死の身体を目隠し代わりに、その背にユーベルコードにより召喚された亡霊を隠していたのだ。無謀とも言える彼の決死の覚悟に完全に不意を打たれた黒騎士は、戦場の亡霊が放つアサルトウェポンの銃撃をまともにその身に受けることになる。
「くっ、こんな事が……!」
反応が間に合わず、正面から銃火器の放火を受けることになった黒騎士は苦悶の言葉を漏らす。
「肉を切らせて骨を断つ……これが私の戦い方です!」
オルの決死の覚悟に完全に気を取られる形となった黒騎士はその場にいたもう一人の猟兵の存在を一瞬、認識から外していた。
「黒騎士アンヘル。あなたが過去にどれだけこの空間で剣を振るってきたかなんて、ボクには知るよしもない。」
その隙を逃さず、張は数多の斬撃の隙間をかいくぐり、黒騎士の喉元に手を届かせる位置までに迫っていた。
「君には私の刻んだ刃が見えているのか?」
あの斬撃の嵐の中をくぐり抜け、目の前に迫った張に驚きを隠せなかった黒騎士であったが、張はいやとかぶりを振るかのように言葉を続けた。
「言ったでしょう、過去など知らないと。これは、勘です!」
目に見えず、斬撃が何処に刻まれているか知るよしもないと判断した張は、その第六感と野生の勘を以て黒騎士の斬撃をくぐり抜けていた。流石に全てを交わすことは出来ずに、全身に刻まれた裂傷から血を噴き出しているが、それでもその痛みに耐え、オルが作り出した黒騎士の隙を突き、反撃を開始する。
「我が爪牙にて八つに引き裂かん!」
張はその手に竜の力を宿し、黒騎士に向けて必殺の一撃を放つ。彼が狙うは、黒騎士の身を包む漆黒の鎧。
「我が目指すは常に未来にある栄光のみ!」
竜化した張の爪牙によりその鎧を砕かれた黒騎士は、追撃が来る前にと二人の猟兵が迫るその場から飛ぶように後ろに跳ねた。それを待っていたかのように、猛然と黒騎士に駆け寄る一つの影があった。
「君の過去は封じたはず。何故、まだ戦うことが出来る!?」
それはディスターブであった。黒いローブは地に落ち、その下から表れたのは羽織袴姿の男性。彼はディスターブの三番目の人格。彼の得がたき友を象ったその人格は『村雨丸』と呼ばれていた。
「彼には彼の過去があり、ボクにはボクの過去がある。すべての過去を都合よく書き換えることはできないと知りなさい。」
ディスターブは人格を切り替えることで、切り裂かれた自身の過去を切り離し、代わりにもう一つの人格、村雨丸に攻撃をゆだねたのである。
「電光、影裡に春風を絶つ……。」
不意を突かれることになった黒騎士に迫る必殺の居合いの一刀。左方から迫るその斬撃を受け止めようと、黒騎士は左腕で剣を握ろうとするが、先ほどの戦いで撃ち抜かれた左肩のダメージにより、腕が上がらない。
「さあ覚悟!」
鎧を砕かれたことによって、その身を一閃された黒騎士は地に倒れ伏そうとする身体を無理矢理踏みとどめ、自らが戦った猟兵達を真っ直ぐに見つめ返す。
「見事だ、猟兵。」
賞賛の言葉とともに、骸の海へと消えゆく黒騎士アンヘル。
「それぞれの過去……か。人の心がもたらす力、侮るべきではなかった。」
帝国最強の騎士は、最後に独り言ちるように虚空に向け言葉を残し、戦場から消えていった。
成功
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