●|予知《グリモアエフェクト》さえた大いなる危機
「お集まり頂きありがとうございます。夏の陽射しが強い日の中、皆様方のご活躍により達成できたグリモアエフェクトによってブルーアルカディアにて『大いなる危機』が迫りつつあることが予知されました」
グリモアベースに集まった猟兵たちをシグルド・ヴォルフガング(人狼の聖騎士・f06428)が何時ものように敬々と出迎えたが、その顔は何時に増して険しいものであった。
「大いなる危機……その全容は全てが明らかにならないままで予知は途絶えてしまいましたが、数ある屍人帝国の中でも強大な勢力を誇っている屍人帝国に不穏な動きが見受けられました」
雲海に沈んだ浮島が再浮上するたび新たに現れる屍人帝国だが、その中でも古くから存在し今なおも勢力を拡大し続けている屍人帝国は大きく6つの列強として数えられる。
──オーデュボン。
──ジェード王国。
──日蝕帝国。
──コルディリネ。
──天帝騎士団。
──マグナ聖帝国。
「今回私が不穏な動きがあると予知しました屍人帝国は、日蝕帝国。太陽を奉じているとある小王国を浮島ごと沈め、自らの属領とした屍人帝国化することを目論んでいましたがその計画を推し進めていた首謀者であり同帝国の守護者でもあったオブリビオンごと企みは潰えました。ですが、日蝕帝国そのものは瓦解するには至らず、今も健在で新たな動きを見せているというところです」
彼が語る一幕は、茶飲み友達のグリモア猟兵から聞いた話だという。そのためシグルド自身は日蝕帝国については詳しいところまで知らないのであるが、そのような縁で結びついたからこそ自らのグリモアが予知したのだろう。
「とは言うものの、相手は広大な支配領域を持つ強大な屍人帝国です。帝国の本拠地である浮島へ潜入するにも周辺領空の警戒網は厳しいものでありましょうし、敵の狙いや真意は未だ読めまないまでに情報が少ないのが実情です。事を下手に進めば、こちらが探りを入れたことを察知して計画を早期実行される恐れもあります」
となれば、日蝕帝国の領土へと侵入し、内部の斥候活動で情報を持ち帰るのが良策か。それと屍人帝国は日々領土を拡大させれいるためか、前線を急拡大すると補給路が伸びてしまっていることが多々あるという。大抵は支配した浮島から物資を略奪することで兵站を維持しているが、それも限界があるとシグルドは語る。
「ですが、何処が手薄となっていて侵入が容易いかは領土が広大な分、選定するのに一苦労するのが実情です。そこで、我々と利害が一致する『彼ら』の手を借りようかと考えているところです」
シグルドが不敵な笑みを浮かべながら提案する彼らとは、屍人帝国もしくはその傘下に下った者のみを獲物として襲撃し、依頼があれば交易船の護衛もするという勇士の空賊『タンペット一家』だ。彼らは警備が手薄となっている屍人帝国拠点の襲撃しては各地で簒奪された物資を回収し、同志である商船を通じて返還するのを生業としている。そうなれば、日蝕帝国の支配領域で今何処が手薄となっているのかは手に取るように熟知しているであろう。
「幸いにも彼らとは縁がありますし、以前に彼らに迫った危機を助けたこともありましたので快く引き受けて貰えるでしょう。|日蝕帝国《オブリビオン》が敵対している我々猟兵が領地に潜入して偵察したと察知されないため、彼らと同じ空賊の勇士として行動せねばなりませんが、そこは致し方ないといったところですね」
そしてだが、今回の目的はあくまでも情報を持ち帰ることだと、シグルドは猟兵たちに再度念を押す。帝国領空の境界線付近を守るオブリビオンとの戦闘が予想されるが、何時ものようにすべてを倒し切って殲滅するよりも、手薄な箇所を突き崩したり敵の目を掻い潜ったりするなど、なるべく他の敵に気付かれないよう切り抜けたいところだ。
帝国領内への侵入を果たしても、大暴れせずに帝国兵の目を避けながら敵の動きや兵力を調査をすることが求められる。あくまでも猟兵が侵入したという痕跡は残さず、屍人帝国のお尋ね者である空賊一家の仕業に見せかけるのが現時点で最良の案だ。
「普段のオブリビオン殲滅とは異なる調査主体の活動となりますが、ご無事で帰られることを祈ります」
事は急を要すると話を締め括り、猟兵たちが無事帰還することを祈るようにシグルドはゆっくりと双瞼を閉じて意識を集中させる。純白の軽鎧を纏う人狼の騎士の内からサイキックエナジーが迸ると、グリモアを形勢させてゲートを展開させる。
眩い光とともに猟兵たちの視界を白ばませると、猟兵たちを勇士の空賊『タンペット一家』の逗留地へと誘うのであった。
ノーマッド
ドーモ、ノーマッドです。
気温がぐんと下がったせいか、コウロギが鳴き始めて秋の足音が少しずつ近づいてきました。昼夜の寒暖の差が大きくなりつつありますので、体調を崩しがちな季節の変わり目でもあります。布団を蹴飛ばしたりお腹を出したまま寝たりしての体調不良には特に気をつけねばなりませんね。
●シナリオ概要
グリモアエフェクトにより、グリモア猟兵は将来訪れたであろう「大いなる危機」を、その前段階で予知できました。
敵の狙いや真意は未だ読めませんが、何かしらの作戦を起こそうとしていることは確かです。密かに帝国周辺や内部の斥候を行い、情報を持ち帰りましょう。
第一章は【冒険】フラグメントです。
空賊の勇士『タンペット一家』が駆る空賊船『ペレグリン・ファルコン号』に同乗し、屍人帝国の領内へ接近します。
第二章は【集団戦】フラグメントです。
帝国領空の境界線を守るオブリビオンの群れを突破します。
目的はあくまで斥候なので、彼らをすべて倒し切ることを狙うよりは、手薄な所を突き崩したり、敵の目を掻い潜ったりして、なるべく目の前の屍人帝国に気付かれないよう切り抜けたいところです。
第三章は【冒険】フラグメントです。
境界線を守るオブリビオンの群れを突破し、帝国領内への潜入に成功しました。
市街地や軍事基地を巡回する帝国兵の目を避けながら、敵の動きや兵力を調査しましょう。
全ての章では猟兵ほどの強さはありませんが、勇士の空賊らが加勢してくれます。
共闘を希望する旨をプレイング内に記載して頂ければ、微力ながらも猟兵の支援を行います。
メンバーは下記の通りとなります。
・船長のアレックス(人間/飛空艇パイロット相当)
・副船長のモーリスと手下たち(人間/ロケットナイト相当)
・喋るオウムのビジュ(賢い動物/クリスタルサモナー相当)
また、OP内でも語られた経緯には以前出したシナリオの設定が入っていたり、斥候先の屍人帝国は月城祐一MSが手掛けました『勇士達よ、蒼空を征け』作品群に登場しました日蝕帝国となりますが、特に知らなくてもお楽しみ頂けます。
もしお気になるようでしたら、下記のリンクをご参考したり、シナリオ検索欄からご検索くださいませ。
( https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=36180 )
それでは、皆様の熱いプレイングをお待ちしています。
第1章 冒険
『クラウドジェリー空域』
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POW : 吹き飛ばしながら進む
SPD : 華麗に避けながら進む
WIZ : 魔術等で刺されないようにして進む
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第四『不動なる者』盾&まとめ役武士
一人称:わし 質実剛健古風
武器:黒曜山(槍形態)
ん?『タンペット一家』?『侵す者』があのとき、助けた空賊か
そのためか、霹靂が上機嫌である…
しかし、まさかまた会うとは…
※『日蝕帝国』には『不動なる者』で行っています
あれは…クラウドジェリー…クラゲの群れか
しれっとUCを使う。うん、向こうが不運ならば、何が起こっても不思議ではないからな
ま、潜るのも簡単であろうよ
※
霹靂「クエクエ♪」
知ってる人がたくさん!なので嬉しそうに鳴いてる。今は甲板にて、警戒体制。
陰海月「ぷきゅ」
クラゲとして、クラウドジェリーはライバル。きたらぺちぺちする。
風を切り雲を越え、空賊船『ペレグリン・ファルコン号』が大空を翔ける。甲板では重厚なロケットナイトの鎧を身に纏った副船長『モーリス』の号令を止まり木にしがみついた喋るオウム『ビジュ』が復唱する中、船員たちが威勢のいい掛け声とともに純白の帆を張らせる。それらを一望できる船体後方の頂きに据え付けられた舵を握るは、空賊の勇士『タンペット一家』を取り仕切る船長『アレックス・タンペット』だ。
『ふらりとシグルドの旦那が来たと思えば、あン時におれたちの窮地を救ってくれたあんたらも一緒だったとはな。改めてだが、一家を代表して歓迎するぜ』
「クエクエ♪」
被っている航空帽で顔半分を隠している彼女の周囲を、一匹のヒポグリフが嬉しそうな鳴き声とともに蹄を鳴らしながら跳び跳ね、挨拶をするかのに白毛に覆われた頭をこすり付けてくる。それを慣れた様子で片手で船を操舵しながら幻馬を撫で返している姿を、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は不思議そうに眺めている。
(何故か霹靂が上機嫌であるが……そうか。『侵す者』があのとき、助けた空賊がタンペット一家であったか)
彼、いや『彼ら』は馬県・義透を名乗っているが、その正体はひとつの身体に四人の魂が複合化された悪霊である。今は統括役の名は内県・賢好である『不動なる者』が表へと出てはいるが、アレックスとしてはその際に入れ替わっていた『侵す者』との区別など出来るはずもなく同一人物と思うのも無理もない話だ。
幸いにも同じく彼らの窮地を助けたヒポグリフ『霹靂』が、無邪気ながらも再会の喜びを見せたことによる橋渡し役として働いてくれたお陰で何とか面倒な説明をせずに済んでいる。
『どうした、難しい顔をして?』
「あ、いや少し考え事をしておってな。目的地の『日蝕帝国』領まで、あとどれ程か?」『そうだな……何もなけれりゃ、半刻ってところだ』
何もなければ、か。ぽつりと侵す者が言い返したと同時に、マスト頂上の見張り台から伝っている伝声管からけたましい声が漏斗状の受話器から鳴り響く。
『お頭! 前方に「クラゲの巣」だァ!!』
「ふむ、『クラゲの巣』とは……?」
クラゲの巣とは一体何か。賢好が目を凝らして遠くを見やると、何か半透明な雲状の物が太陽の光を反射させながらキラキラと光らせ、ガレオン船の進行方向を遮っているのが見えてくる。
『何だ、クラゲの巣は初めてかい? ありゃア、クラウドジェリーの幼体が集まったもんだよ』
『クラウドジェリー』。それは駆け出しの勇士でも狩れる比較的弱い存在なのだが、群れを形成する性質から風に乗って人を襲うというクラゲ獣人型オブリビオンだ。成体となればまるで笠を被った人間体が空の旅人を誘惑して神経毒が含まれた触腕で絡め取り捕食するというのだが、幼体はまだ人間に擬態した器官が未成熟で姿形はクラゲそのものだという。だが幼体期は食欲が旺盛で、うっかりと巣に迷い込んだ魔獣を見つけるや否や数の暴力で襲いかかっては獲物を痺れさせて捕食するという。
「となれば、迂回か?」
『いや、もうここは帝国の空域内だ。警戒網の隙間を掻い潜らねぇと見つかってしまう可能性が高けりゃ……突っ切るしかねぇだろ?』
「何とも無茶をなさる。では、船賃代わりに我らも手伝うか。征くぞ、霹靂」
無茶は承知の上さとアレックスが首に巻いて風ではためかせていたスカーフで口元を覆う中、任せたぞと賢好を背に乗せて翔んだ霹靂を見やる。
たっぷりと水分を含んだ空飛ぶクラゲの群れとの衝突する衝撃からマストの帆を守るためかペレグリン・ファルコン号が減速する中、大きく翼をはためかせた霹靂が船を先導するよう前方へと躍り出た。
「しかし、間近で見ると圧巻する数の群れだな……。ん、陰海月よ。貴殿も戦うか?」
「ぷきゅ!」
霹靂の背に浮かんだ影からにゅるりとジャイアントくらげの『陰海月』が這い出て来ると、やる気を示すかのように触腕をぶんぶんと振り回す。同じクラゲとして、クラウドジェリーはライバルとしての存在だ。
「ならば、背後は任せた。では、参ろうぞ」
「クエ!」
「ぷきゅ!」
賢好の目が薄っすらと開らかながら半透明の壁を睨むと、UC『|四悪霊・『解』《シアクリョウ・ホドキ》』が発現される。自身たち、四悪霊が封じてきた呪詛が身体の内から解放され、クラウドジェリー幼体の運気、霊力、生命力らを蝕んでいく。すると、突然と気流の流れは乱れて群れの下から旋風が吹き上がり、活力を奪われたクラゲの群れは上空へと舞い上げられる。これで群れの中央はドーナツ状の穴が開けられたこととなれば、船体へのダメージも幾分と減らすことができるだろう。
あとは目の前の壁を打ち崩すのみ。黒曜石の破片が柄に埋め込まれてた漆黒の穂先を疾走らせながら、名の示す通り雷鳴と思わせる嘶きと飛翔を行う霹靂がクラウドジェリーの群れへ飛び込む。疾風迅雷の如く|幻馬《ヒポグリフ》が空を翔け、また背中ではジャイアントクラゲが触腕を大きく振り回す中、護りを担う『不動なる者』が壁と壁同士で激しくぶつかり合うのであった。
大成功
🔵🔵🔵
稷沈・リプス
のんべんだらりとしている、自称:人間な男。説明時に偶然通りかかった。
『日蝕帝国』って聞こえたっすよ。なら、俺は行くっすよ!
(ここから)あの帝国が関連してるって、知らないときから関わってたっすけど。『蝕』司るものとして、許せないんすよ、あいつら(ここまで小声)
あ、『タンペット一家』の人たちに挨拶っす!よろしくお願いするっすね!
甲板でUC使って、雀(知性強化)作って。できるだけ避ける感じにできるように案内頼むっすね。
でも、避けきれないなら…俺は獣奏器を奏でて攻撃っすね。この時、『タンペット一家』にも共闘願うっすよ。
さて、この機会…生かすためにも。俺は全力っすからね。
「暫くの間っすけど、よろしくお願いするっす!」
時は少し遡るが、タンペット一家の隠れ家から猟兵たちを乗せて出港する前に甲板の上で威勢の良い挨拶がされた。
声の主は稷沈・リプス(明を食らう者・f27495)。人間を自称する神である彼だが、グリモア猟兵が猟兵たちにブルーアルカディアで起きようとする新たなる危機の説明の際に別用で偶然通りかかった。その際、『|日蝕帝国《イクリプス》』の名を聞くや否や食いつくような目で着の身着のままな状態で飛び入り参加したのだ。
のんべんだらりとしているが、その正体は『日蝕』や『月蝕』といった森羅万象の『|蝕《むしばみ》』を司る神である。『呪われた神』として半ば祟り神として祀られていた彼ではあるが、その実は今を生きる者に対し好意的な神である。とある都の祀神として祀られてはいたが、その都が失われて引きこもる場所も喪われてからはこうして飄々と大好きな人間の観察を愉しんでいるといったところだ。
「『日蝕帝国』って聞こえたっすよ。なら、俺は行くっすよ!」
その際、ブルーアルカディアを訪れていた折に邂逅した『日蝕帝国』の尖兵たち。リプスもまた世界を救う猟兵として、とある小国に訪れた日蝕帝国による侵略を退けさせた一員として、その帝国の名をを聞けば蝕を司る神として看過できなかった次第である。
「あの帝国が関連してるって、知らないときから関わってたっすけど。『蝕』司るものとして、許せないんすよ、あいつら」
『ん、何か言ったか?』
「あ、いや……何も言ってないっす! さぁ、ロープを引っ張って帆を張るっすよ!」
そして今、彼はタンペット一家の船員の手伝いとして、天使核エンジンという動力機関がありながも補助推進力としてガレオン船の後方から吹き抜ける風を受けるために帆の調整に勤しんでいる。風の流れは絶えず変動し、それを常に捉えて効率よく推力に変えるための過酷とも言える肉体労働ではあるが、気のいい空賊の掛け声に合わせてロープを引っ張っていると段々と楽しく思えてしまう。
だが、それも見張り台からの報告で一変する。目の前にクラウドジェリー幼体の群れ……『クラゲの巣』が空賊船の進路を阻んでいたからだ。
『野郎ども! 船は迂回しねぇで、このままクラゲの巣に突っ込む。船が喰われねぇようにしっかりと働きな!』
空賊船後方で舵を切り続ける空賊頭『アレックス』が発破を掛けると、先程まで気のいい掛け声を掛け合っていた船員たちの声色と目の色が次第に変わっていく。常に命の危険が纏う空の上において、空の荒くれ者が正体を晒した瞬間である。男たちは臨戦態勢として外していた兜を被ると無数の傷が走るロケットナイトの姿へとなり、船体へのダメージを少なくするために天使核ロケットを噴射させて帆を畳む作業に取り掛かり始めた。
「モーリスさん、俺クラゲたちを相手にしてくるっす!」
『ああ、俺たちも帆の撤収が終わり次第クラゲ退治に向かう。任せたぞ!』
船の操舵に意識を集中させているアレックスに代わり現場の指揮を担っている大男の副船長『モーリス』が、リプスの背中を強く叩いて送り出す。思わぬことに一瞬むせてしまうが、これも彼らなりのコミュニケーションなのだろうと納得するとリプスは自らのUCを発現させた。
「さ、とっても賢い雀ちゃんたち。道案内よろしくっすよ」
帆船による風力の推進力から天使核エンジンが駆動しての推進力へと切り替わるため速度が落ちつつある中、蝕神は『ゴッド・クリエイション』にて瞬時に創造した人間以上知恵を持つ雀たちを放つ。背後からはまだ風が吹き抜けており、気流に乗って小さい雀らは前方に突出した猟兵に同伴してクラゲの巣の情報を|創造主《リプス》に向けて念話に伝達する。
「……なーるほどっすね。えーと、お頭の操舵場に伝わる伝声管は……これっすか」
船体の各所に据えられた伝声管の蓋を開け、リプスは船を操るアレックスに向け雀たちが得た情報を逐一報告する。先行した猟兵によって中心部のクラゲたちは風で舞い上げられたこと、空洞化した中心部を埋め直そうとクラゲたちが動いて壁が薄くなりつつあること、先行した猟兵の手によって密度が少なくなった箇所などなど。思案しているためか暫し沈黙が続いたが、威勢の良い中性的でハスキーな声が管を響かせると船体が傾いてリプスが指示した方向へとペレグリン・ファルコン号は征く。
だがそれでも、クラゲたちは獲物がクラゲの巣に迷い込んだと感知するや否や、神経毒が含まれる触腕を振るって空賊たちに襲いかかろうとする。
「さて、この機会……生かすためにも。俺は全力っすからね」
だが、そうはさせないと黒く小さなオカリナの形をした獣奏器をリプスは高らかに奏でる。獣と意思疎通する音色を奏でる楽器はクラウドジェリーの幼体にも効果的だったようで、獲物を誤認させることで彼らの共食いを誘発させた。突然起きた不可解な出来事に船員らは一瞬戸惑いの色を見せるが、これを好機と見てカトラスを抜刀して船へ襲いかかる体長数十センチほどにもなる人食いクラゲを斬り伏せていく。
折角掴みかけた日蝕帝国に関する手がかりを逃すものかという意思が籠もった目でリプスは船が進む行く先をしっかりと見据えながら、漆黒のオカリナから軽やかな音色を奏で続けさせていたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ジン・マキハラ(サポート)
サイボーグのゴッドハンド×ブレイズキャリバー
胸に永久機関を持つ
口調は「俺、呼び捨て、だ、だな」
標的に事情があるなら同情する事もあるが手加減はしない(できる限り殺さない様にする)ただの悪人とオブリビオンには一切容赦しない
戦闘スタイルは前衛型
一撃重視か広範囲の殲滅に長けている
武器は両手剣クロックヘイズとアサルトライフルのレイジングストームと蒼炎覇気を纏った格闘術
探索時には自身の視覚同調型演算機器による解析やハッキングツールによる情報収集を行う他使える物は全て使う
ユーベルコードは指定した物を使用する
公序良俗に反する行動はせず猟兵達との連携を重視する
アドリブOK
複数リプレイOK
猟兵と空賊たちを乗せた|船《ガレオン》がクラゲの巣に突入すると、生ける者の息吹と体温を触腕のセンサーで感じ取ったクラウドジェリーの幼体らが一斉にして襲いかかってくる。体高は人間ほどはある成体のクラウドジェリーほどもなくユーベルコードも仕掛けてこない相手ではあるが、如何せん数が多い。
幸いにも先程活躍した猟兵の手によって数を減らされたり、密度が低い箇所を狙って突入したことでクラゲの数は少ないにしろ、身体の殆どが水分であるためか船体とぶつかり合う度に大粒の雨が叩きつけられたかのような重々しい音とともに船が小刻みに揺れる。空賊の船員たちは仮に船外に叩き落されてもいいようにロケットナイトの全身鎧に身を包みながら、操舵する船長のアレックスはけたたましく石を寄越せと喚く愛鳥のビジュを海賊服の懐に抱えながら片手でカトラスを振るっている。
「さながら、海賊同士の海戦だな」
そんな怒号が飛び交う中、ジン・マキハラ(ブレイズ・オブ・マキナ・f36251)もまた蒼炎を纏わせた両手剣『クロックヘイズ』を片手で振るいながら、自らの身体に埋め込まれた永久機関と|接続《リンク》させることで演算装置と連動される大口径の突撃銃『B.V.W レイジングストーム』でクラゲの群れを鉛玉で薙ぎ払う。一見すると無造作な攻撃であるが、身体の殆どを機械化された彼の目は小さなクラゲであろうとも見逃さず|捕捉《ロックオン》しており、一発一発が無駄なくゼリー状の物体に吸い込まれるよう大口径のライフル弾を喰らわせれば衝撃と質量をもって爆ぜさせる。
戦場で入り乱れる戦いの中で流れ弾を一発も味方へ当てさせない流れる動きに空賊たちから感嘆の声が漏れるが、ジンは当然のことをしたまでだと言わんばかりの顔持ちのまま船の進路の先を見据えている。
「ちっ、群れが寄り集まってきたか」
彼が見たものは、クラウドジェリーの幼体が集まって壁となった群体である。クラウドジェリーの幼体は獲物を捕食するが、一匹一匹の力はそれほどなくユーベルコードも扱えないので力ある魔獣の餌ともなる側だ。だが、個にして全となって群れを形成すれば、その圧倒的な数を武器にして彼らは補食しようとする魔獣にも抗う術を持っており、それが目の前に立ちはだかろうとしている壁なのだろう。
「面倒だな……一気に燃やすか」
全身から蒼炎をより激しく噴き上げさせながら、ジンが自らのUCを発現させる。UC『ヘルレイズ・バインド』。クラゲを巨大な群れごと捕らえようと無数の鎖と首枷状の蒼い炎によって覆われ、最後に蒼炎によって形成された杭が穿たれる。散ろうにも逃げ場を喪われたクラウドジェリーにはそれは叶わず、一気呵成に燃え盛る蒼き炎に呑み込まれるだけだ。
──ピギャアアッ!!
クラゲたちによる断末魔が上がる中、次第と壁が崩れていく。その隙間から覗いたのは太陽の陽射しが差し込む青空であり、クラゲの巣によって阻まれた『|日蝕帝国《イクリプス》』の領空である。
「今だ、|船長《キャプテン》。また寄り集まらないうち、一気に抜けようぜ」
『あたぼうよ!』
ジンが切り開いた突破口を前に、アレックスはペルグリン・ファルコン号の機関室に繋がる伝声管越しに指示を伝達した。|内容《オーダー》は天使核エンジンの最大出力だ。
天使核エンジンが暴走した際の危険性を考慮して普段はリミッターを設けて運行しているが、こういった緊急時に際しては船長判断によってリミッターが解除されるのだ。
『野郎ども! ペレグリン・ファルコン号が文字通りハヤブサになる瞬間だ。振り落とされねぇよう、しっかりしがみついてな!!』
アレックスの号令の元で、先程まで荒々しく戦っていた空賊たちが一斉にしてありとあらゆる物にしがみつき始めた。その様子にこれから何が起きようとしているのかを察したジンも、とりあえず手近な物にしがみついた瞬間、強烈なGが重く身体にのしかかって来る。
「これは……中々と堪えるぜ」
間を置かず瞬間的に巨大な船体が加速され、重い風圧が機械化された身体ごと吹き飛ばそうと襲いかかってくる。真の性能を発揮したペルグリン・ファルコン号は機関部を唸らせて更に加速し、一陣の風となってクラゲの巣から脱出したのであった。
成功
🔵🔵🔴
第2章 集団戦
『ウールドラゴン』
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POW : 彼らは群れで協力し、外敵から身を守ります
【決死の】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【ウールドラゴン】の協力があれば威力が倍増する。
SPD : 一匹が囮となり、仲間が攻撃する隙を作ります
レベルm半径内の、自分に気づいていない敵を【仲間との連携】で攻撃する際、ほぼ必ず狙った部位に命中する。
WIZ : 群れの一員と認められれば、大きな恩恵を貰えます
【可愛らしい鳴き声の合唱】によって【士気を高める癒しの風】を発生させ、自身からレベルm半径内の味方全員の負傷を回復し、再行動させる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『よぉし! 抜けた!!』
空域全体を覆っていた広大なクラゲの巣を抜け、猟兵と空賊らを乗せたペレグリン・ファルコン号が再び陽光の下へと躍り出た。
『野郎ども、船にへばりついたクラゲを残らず落とせ! 機関部に潜り込んで絡まれば雲の下に真逆さまだぞ!』
|最大加速《フルスロットル》されていた船体が天使核エンジンの出力を落として徐々に減速する中、副船長の指示の下で船員たちが天使核ロケットエンジンを搭載した『動力甲冑』をもって船の内外にへばりついたクラウドジェリーの幼体を剥がしにかかる。
だがその時、太陽を背にして何者かが船に影を落とした。全ての者がそれに気づいて上空を見上げると、何かが急降下してきたのだ。
──きゅるるるるるん♪
何やら喜んでいる様子の嘶きが上空に響くと、巨大な毛玉状の物体が空賊船の甲板に激突するように着地をして船全体が大きく揺れて傾く。突如として空賊戦を強襲した生物がムクリと起き上がると、船員を見向きもせずに蠢くクラウドジェリー幼体を見つけるや否やバクリと噛みついて美味しそうに補食し始めたのだった。
『コイツぁ……ウールドラゴンか!』
ウールドラゴン。それは名が示すとおりに鱗の代わりに保温性と保湿性が高く柔軟で独特のぬめりある白い毛に覆われた|魔獣《ドラゴン》の一種で、高級素材の代表ともされる上質な毛が織り成す毛織物は数多くの王族が愛用している。また産み出す卵や竜骨に食肉などと行った素材も珍重され、ブルーアルカディアの歴史とともに人類とともに歩み続けた結果として家畜やペットなど品種改良がなされてきた。
だが、屍人帝国による侵略によってペットとして買われていた個体や牧場で飼育されていた個体が脱走し、草と水さえあれば何処にでも住んでいける環境適応力と旺盛な繁殖力も相まって近年は野生化した個体が増えているという。|日蝕帝国《イクリプス》の領地に近づいている中でコレが現れたということは、恐らくはこのウールドラゴンたちも元は人間の手によって飼われていたものなのだろう。
『気性が荒いって訳でもなく、寧ろ人間様によく懐くまで性格は温厚だけどよぉ……。それが逆に始末ならねぇんだ。上を見てみな?』
『上ヲ見テミナ! 上ヲ見テミナ!』
喋るオウムのビジュが飼い主の言葉を反復させる中、物凄く面倒な相手と出くわしてしまったと言いたげなアレックスが上空を指を差す。猟兵らが見上げると、黒い点が上空を旋回していて可愛らしい鳴き声を上げながらこちらへと急降下していた。
『アイツら、好奇心が旺盛すぎて遊んでくれってすぐやって来やがるんだ。ちっちゃい頃ならまだしも、成体となりゃ……身体が幾つあったって身が持たねぇんだよ』
その時、哀れな被害者となった船員のひとりが助けを求める叫び声を上げた。見ると、ライオンか虎と言った大型哺乳類ほどある体躯のウールドラゴンが伸し掛かっているが、襲いかかったという訳でもなくただ単にじゃれて遊んで欲しいようでもある。だが、屈強な男でさえ数人がかりで取り押さえるほどの巨体であれば、確かに身体が幾らあたっとしても身が持たないのも頷ける。
『この調子だと、帆を張り直すにもちょっかいを出されりゃ怪我人が出ちまう。どんどん来ちまう前に追っ払って、さっさとこの空域を抜けるぞ』
ため息を吐きながらアレックスが舵から手を離す様子から、相当な重労働であることが想像に難しくない。ともあれ、可愛らしく友好的で厄介なお客人にお帰り頂かねば屍人帝国の警戒挺に見つかってしまうのも時間の問題だろう。
さて、旺盛な好奇心を満足させて巣へと帰させるか、それとも少し可愛そうだが手荒な方法で追い払うか。猟兵たちも目を輝かせながら、無邪気そうにこちらを見ているウールドラゴンへの対応に追われることとなったのであった。
馬県・義透
引き続き『不動なる者』にて
まだまだ先行中
追い払おうと思ったのだがな、陰海月がな…阻止してきてな…。
というわけで、じゃれることにした(孫に弱い祖父な気分)
まあ、傷つけぬのならば…そっちのほうがよい。
ふむ…撫でてみると、意外とよい手触りなのだな?陰海月が張りきるのも、わかる気がするの。
※
陰海月、ウールドラゴンに興味津々。触腕総動員して、ふかふかなでなでするし、UCで仄かに目立たないように光る!
ぷっきゅ!ぷるぷる、ぼくは食べられないよ?
霹靂「クエ」
霹靂は、陰海月が撫でやすいように位置調整している。友はこういうことが好きなのだ。
ウールドラゴンは噂でだけ知ってた。
「なるほど……これが噂に聞きしウールドラゴンか」
クラゲの巣をペレグリン・ファルコン号が抜けてもなお、屍人帝国の警戒挺が周囲に居ないかを先行する形で偵察を行っていた賢好と霹靂の前にもウールドラゴンの群れが現れる。正体不明な魔獣の出現に思わずとて黒槍を突き刺そうとしそうになったが、敵意が微塵に感じれない姿を確認すると既のところでそう言えばと思い留まる。
確か、そう。この霹靂と出会ったヒポグリフ牧場で聞いたのが初めてであったか。ウールドラゴンは持て余すことのない素材に愛くるしい姿から、家畜用から愛玩用と幅広く飼育されていると聞く。だがしかし、その旺盛な繁殖力と食欲から飼育するにはそれなりに纏まった土地が必要とされ、下手すると浮島ひとつがウールドラゴンの牧場になることもあるという。
そのためウールドラゴンから採れる体毛から織られる滑らかな手触りの毛織物に魅了された王侯貴族が自らの所領地で飼育するのが一般的であり、彼らを所有することが一種のステータスとして持て囃されてきた。だが、雨後の筍のように雲海の底から浮上してくる屍人帝国にとってもウールドラゴンは珍重の的であり、ウールドラゴン牧場への略奪が加熱した結果、次第とその姿も消しつつある幻獣となったという。
「しかし……害がないとは言え、このまま放っておけば|日蝕帝国《イクリプス》の拠点にまで付いて来そうである」
周囲を見渡すと、既に賢好と霹靂に興味を示して近づいた個体を見つけて、他の個体もぽつぽつと集まりつつある。このまま進めば彼らを屍人帝国との戦いに巻き込みかねないと判断した賢好は、心を鬼とし追い払うべく黒槍を握る力を再び強める。
「ぷきゅぷきゅ!!」
「クエクエ!!」
だがそれも、再び賢好の影から這い出た陰海月と霹靂による抗議の声で再び意志が揺らぎ始める。程なくして賢好が深いため息とともに折れ、実力行使による追い払いは断念されたのであった。
(まあ、傷つけぬのならば……そっちのほうがよい)
孫にはめっぽう弱い祖父の気持ちとはこのことか。二匹の種族を超えた親友同士は喜びの鳴き声を上げると、霹靂は帽子さながらにジャイアントクラゲの陰海月を頭へと乗せてウールドラゴンへと近寄っていく。
『キュルルルン?』
さながら犬や猫のように鼻を鳴らしながらご挨拶すると、ウールドラゴンがまず目に止まったのが陰海月であった。彼らは草食性だが僅かながらに雑食性でもあり、先程空賊船に取り付いていたクラウドジェリーの幼体を食べたのもオヤツとしてだったのかもしれない。賢好が目を凝らしてみるとウールドラゴンの毛並みは意外にと深く、これなら麻痺毒を帯びた触腕が表皮へと到達するのは困難であろう。
だが、そうなればジャイアントクラゲの陰海月もクラウドジェリーの幼体同様に食べれるのではと思われても致し方ない。
「ぷっきゅ!
(特別意訳:ぷるぷる、ぼくは食べられないよ?)」
「クエ!」
『キュルルルル……』
しかし、種族を越えた会話によって『食べられない』ことをウールドラゴンに伝わったのか、軽く舐めるだけに留まった。そのお返しに陰海月が触腕を伸ばしてウールドラゴンが差し出した頭を撫でると、大変気に入ったのか思わずUC『|翳鏡虫霓《カゲニテヤサシクヒカルゲーミングクラゲ》』由来の1680万色に優しく光る発光色を仄かに浮かばせた。
「ふむ……陰海月がこうも喜ぶとは」
『キュルルン』
陰海月がひとしきり撫で終えると、今度はウールドラゴンが賢好へと頭を差し出してくる。
「これは……意外とよい手触りなのだな? 陰海月が張りきるのも、わかる気がするの」
一見すると体毛の豊かさ故にごわついた印象を受けるが、いざ触ってみると程よくしっとりとした湿り気にビロードのような滑らかな手触りの毛質が癖になってしまう。王侯貴族が夢中になるのも頷けると実感し、わしゃわしゃと指を立ててかき乱すと心地良いのかウールドラゴンが喉を鳴らして応えた。
『キュルルルン♪』
そうして一匹は満足して去っていったが、交代とばかりに他の個体と入れ替わる。見渡せば辺りはウールドラゴンに囲まれているようで、どうやら群れの一員として認められているような気もしてくる。
「……よし。霹靂、陰海月。責任を持って、彼らを満足させて帰そう」
「ぷきゅ、ぷっきゅ!」
「クエクエ♪」
こうなれば約得とばかりに構ってやろう。一匹、また一匹と密着するウールドラゴンの無邪気さに当てられたのか、賢好の顔も何時しかほころんでいたのであった。
大成功
🔵🔵🔵
稷沈・リプス
おおう、この世界特有といえる生き物っすね…。
でも、傷つけずに追い払えるってのなら…うん、そっちにするっすね!
UC使って、作り上げたは『人間』(筋力強化)っすよ。ん、かつて神官としていた人に似てるっすね…。
で、人懐こいなら、この人にもくるはず。筋力強化してるっすから、潰される心配もないっすよ!
あ、俺は俺で別個体をうりうりと撫でるっすね。これでもビーストマスターっすから。
動物と話すも活用して、満足するまで遊ぶっすよー。
ちょいと俺たち、用事があるっすから。名残惜しいっすけど…ここまでっすよ。
それでも来るなら…獣奏器で追い払うっすよ。
「おおう、この世界特有といえる生き物っすね……」
『キュルルルルン♪』
無害と言えば無害であるのだが、逆にその無害さが裏目と出てしまう。遊び場を得たとしてウールドラゴンが甲板を走り回っているが、流石にライオンか虎。もしくはクマのような猛獣並みの体躯であればわりかしシャレにならない。
幸いに先程じゃられた船員は助けられたようであったが、大の大人でも数人がかりでようやくどけれるところが例え愛くるしい姿でも竜と言ったところか。
「ウールドラゴンたちは遊びたがってるだけみたいっす。傷つけずに追い払えるってのなら……うん、そっちにするっすね!」
モコモコの毛並みにつぶらな瞳で見つめられれば、これらを痛めつけて追い払うのは流石に気が引ける。とは言え、例え神であるリプスであってもこの数を相手にするのは少々骨が折れるというものでもある。
そこで、彼は自らのユーベルコード『ゴッド・クリエイション』を持って、助っ人となる『ヒトガタ』をその場で数人ほど作り上げる。
「ん、かつて神官としていた人に似てるっすね……」
無意識に創り出したのだが、彼らの顔立ちや着ている衣服は何処となく『蝕』を司る『呪われた神』として、とある都にて祀られていた時期に神官たちに似ていた。更には創造主に対する敬服の念を示そうと、|頭《こうべ》を垂れて跪いているのだから尚更だ。
『主よ、何なりとお申し付けください』
「いいっすよ。そう堅苦しい挨拶をしなくても。それはともかく、ウールドラゴンに襲いかかれているというかジャレられている船員さんたちを助けて欲しいっす」
『ははー』
創造主の命を受けたヒトガタらはそれぞれに分かれて、空賊船の船員に構って欲しいとねだっているウールドラゴンの元へと歩んでいく。一見するとひょろっとした只の人間に見える彼らだが、その膂力は鍛えられた大男の筋力は軽く超えたものである。まるで猫をあやすかのように軽々しく持ち上げれば、船員たちから驚嘆の声が上がる様がリプスとしては創造主として何ともこそばゆく感じる。
だが、彼らだけでは手が足らないのは事実であり、自身もウールドラゴンの面倒を見ようと手近でゴロゴロと転がっている個体に目を留めて近寄ってみた。
「こんにちはーっす。こうして近寄ってみると、中々可愛いもんっすね」
『キュルン?』
ルプスが腰をかがめてウールドラゴンと目線を合わせながら挨拶をすると、返答代わりにウールドラゴンが猫のようにお腹を見せてくる。とても野生化したとは思えないまでの人懐っこさを前にしてもしかして裏があるのではと勘ぐってしまうかもしれないが、ビーストマスターとしての感としてはただ単に構って欲しいだけと見受けられる。
「ここが痒いんっすか? うりゃうりゃ!」
『キュルルン、キュルン♪』
ルプスもお構いなしに両手でウールドラゴンのお腹にも生えた毛をワチャワチャと手櫛すと、喉をゴロゴロと鳴らしながら気持ちよさそうな声を鳴き返される。
そうしてルプスがウールドラゴンと戯れていく内に、何となく彼らの鳴き声から何を伝えているのかが分かり始めてくる。もっと遊んで欲しい、ただそれだけだ。
「もっと遊んで欲しいのは山々っすけど……。ちょいと俺たち、用事があるっすから。残惜しいっすけど……ここまでっすよ」
「キュルルルン……」
だが、ここは心を鬼にして、ルプスはじっとウールドラゴンのつぶらな瞳を見つめながら語りかけるように宥める。彼の言葉と思いが届いたのか、名残惜しむようにウールドラゴンが嘶くと白い体毛で覆われた両翼を広げて大空へと翔んだ。
「また会えたら、この分の穴埋めにもっと遊んでやらないとっすね」
しかし、名残惜しいのはルプスも同じこと。バイバイと告げる鳴き声に手を振って応えると、次の遊んで欲しがっている個体を見つけて再び近づくのであった。
大成功
🔵🔵🔵
琳谷・花咲音(サポート)
自身とよく似た姿の影(背格好は同じ、性別とロングヘアが違う)悪魔【影(エイ)】を召喚するガジェッティア。
柔らかな口調と行動で男女どちらともとれないジェンダーレスな雰囲気。
女の子になりたい訳じゃない、男女の垣根はなく自分は自分。
友人(感情を結んでいる人)以外には『僕』。
友人には『私』。
戦闘時にはガジェットを臨機応変に変化させて戦う。
火力はないので手数で押す…又は牽制などサポートの立ち位置にいる事が多い。
【影】は本人と鏡合わせのような行動をとる事が多い。
生贄として、魔法媒体として様々な因子を詰め込まれた存在。
その影響で召喚したものを身に宿して戦う降霊術も得意とするが、その戦い方は好きではない。
陽殿蘇・燐(サポート)
バーチャルキャラクターの寵姫×国民的スタア?いいえ、これでも(元)ラスボスな悪女NPCよ。
基本は高性能スマホを利用して、配信しつつの行動になるわね。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用するし、多少の怪我は厭わず積極的に行動するの。これでもバーチャルキャラクターだもの。
悪女たるもの、その行為は健全な世界あってこそなのよ。だから他の猟兵に迷惑をかける行為はないわ。
また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしない。配信垢BANされちゃう。
あとはおまかせ。よきに計らいなさい(思い出した悪女ムーブ)
※
キマフュ出身なので、トンチキでも適応していきます。
リカルド・マスケラス(サポート)
『正義のヒーローの登場っすよ~』
装着者の外見 オレンジの瞳 藍色の髪
基本は宇宙バイクに乗ったお面だが、現地のNPCから身体を借りることもある
NPCに憑依(ダメージはリカルドが請け負う)して戦わせたりも可能
接近戦で戦う場合は鎖鎌の【薙ぎ払い】と鎖分銅の【ロープワーク】による攻撃がメイン
遠距離戦では宇宙バイク内臓の武装で【薙ぎ払い】や【一斉発射】。キャバリアもあります
その他状況によって魔術的な【属性攻撃】や【破魔】等使用
猟兵や戦闘力のあるNPCには【跳梁白狐】で無敵状態を付与できる
また、無力なNPCが大人数いる場所での戦闘も彼らを【仮面憑きの舞闘会】で強化して戦わせつつ身を守らせることも可能。
スピレイル・ナトゥア(サポート)
精霊を信仰する部族の巫女姫です
好奇心旺盛な性格で、世界をオブリビオンのいない平和な状態に戻して、楽しく旅をするために戦っています
自分の生命を危険に晒してでも、被害者の方々の生命を救おうとします
技能は【第六感】と【援護射撃】と【オーラ防御】を主に使用します
精霊印の突撃銃を武器に、弾幕を張ったり、味方を援護したりする専用スタイルです(前衛はみなさんに任せました!)
情報収集や交渉のときには、自前の猫耳をふりふり揺らして【誘惑】を
接近戦の場合は精霊の護身用ナイフで【捨て身の一撃】を繰り出します
マスター様ごとの描写の違いを楽しみにしている改造巫女服娘なので、ぜひサポート参加させてくださると嬉しいです!
「あはは! こら、くすぐったいじゃないか」
『キュルルン♪』
一方その頃、他の猟兵たちもペレグリン・ファルコン号の甲板上でウールドラゴンの対処もとい遊び相手として奮戦していた。
男女どちらともとれないジェンダーレスの様相でリス系の尻尾が特徴的な琳谷・花咲音(気ままな異邦人・f35905)は、大型犬をあやすかのようにウールドラゴンと戯れる。ウールドラゴンが中性的な顔をペロペロと舐めてくるが、ざらついた舌の感触がなんともくすぐったいもので思わずとして笑い声を上げてしまう。ウールドラゴンもその様子が面白そうなのか、もっとペロペロと舐めて花咲音の笑い声を愉しんでいるようにも思える。
そしてユーベルコード『ガジェットショータイム』でウールドラゴン向けのヘンテコなガジェット、もとい玩具を召喚すると、それで遊ぶウールドラゴンの姿を見守っている。
「まぁまぁ。とても大きいのに、甘えん坊さんですこと」
その傍らでは、黒猫めいた耳と尻尾が特徴的なキマイラのスピレイル・ナトゥア(蒼色の螺旋の巫女姫・f06014)が、ウールドラゴンをあやしている。彼女がふりふりとさせる尻尾に興味を抱いたウールドラゴンが猫さながらにじゃらけるが、その様子が何とも愛おしい。
もとよりナトゥアも世界をオブリビオンのいない平和な状態に戻す大志を抱く一方、楽しく旅をするために戦うという好奇心旺盛な性格なのもあってか、ウールドラゴンと何処か波長が合うものがある。改造巫女服娘が思いついた遊びを興じると、ウールドラゴンも興味津々に応える辺りが十全と物語っていた。
「まったく……私は|悪女NPC《ラスボス》なのよ? 何でこんな|魔獣《けもの》の相手をしなくちゃならないのよ!」
キマイラフューチャーにて絶賛配信中である『|悪女NPC《ラスボス》だったけど、猟兵になってみた』の|動画配信者《バーチャルキャラクター》である陽殿蘇・燐(元悪女NPC・f33567)は激しく憤っているが、彼女の生い立ちと築き上げてきたイメージを考えると無理の無い話かもしれない。
悪女としては恐ろしい魔獣を侍らせてこそ絵になるが、ウールドラゴンのような愛くるしい魔獣となれば流石に悪女としての沽券に関わってくる。コレでは悪女の意外な一面特集となってしまい、視聴者からの弄りネタとして定着しそうな気もするからでもある。
であるが、悪女と言っても悪辣な悪女ではなく善良な悪女である燐としては、愛くるしい姿で無邪気なウールドラゴンを邪険にすることは悪女を演じるにしても難しいもの。故に本音と建前の狭間で葛藤するのであったが、その様子をウールドラゴンが興味津々に眺めているのだから何とも滑稽なものである。
「それなら、ここは編集でカットしてしまえばいいじゃないのかい?」
「ハッ……それよ!!」
だが、それも花咲音の何気ない一言で解決してしまう。配信で悪女たる姿が崩壊してしまうのであれば、その配信をしなければいいというだけのコペルニクス的発想術。
「この事は他言無用ですわよ。もし、|視聴者《下僕たち》」にバラしたりしたら……分かっていますわよね?」
「はい、大丈夫です。このことはご内密にしますので」
キツく睨みながら念を押してくる燐に対し、スピレイルはにこやかな笑顔で応える。花咲音も折角なんだからオフとして楽しめばと提案するので、覚悟を決めた趣で燐が深く深呼吸した後、ウールドラゴンの豊かな体毛へとダイブした。
「ン~~~~~💕 よちよちよち、かわいいでちゅね~~。ふわふわな毛並みとお日様の匂いが堪りませんわ~~~💕」
(うわぁ……このキャラ崩壊っぷりは、流石にオンエアできねぇっすね)
悪女のキャラを捨て去り、猫撫で声でネコチヤンをあやすような様子でウールドラゴンの体毛に顔を埋めて吸っている燐のを目の当たりにしたリカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)は思わずドン引きしてしまう。
とは言え、例えば猫に対する対応も十人十色であり、でちゅ言葉であやすのはよくあるものである。悪女NPCのバーチャルキャラクターである燐も、そのキャラを維持するために多くのストレスを抱えていたのかもしれない。そうなれば、己を曝け出して癒やしを求めるこの姿は正しい姿なのかもしれない。それでいいのか悪女。
(ヒソヒソ……ここだけの話し、お頭もあんな風になるから)
(ええ、マジっす!?)
身体を借りている空賊の一員によれば、大の男も萎縮するような|烈女《ハチキン》であるアレックスも、人目がない時に猫をあやせばああなるとのこと。本人はバレていないと思っているだろうが、この事は公然の秘密として船員たちに情報が共有されている。
そう思うと、空賊服がウールドラゴンの抜け毛がこびりつく中で船員たちと対処に当たっているアレックスの姿を見やれば、どこか顔が綻んでいるようにも思えてくる。その気になれば船長命令でウールドラゴンを始末することが可能であったはずであったが、そのように命じず遊んであげて返すという方針を取ったのは、そんな彼女の一面があってのことだったのかもしれない。
「人は見かけによらないンっすねぇ……」
そんなことをリカルドが呟きながら、自らのユーベルコード『|仮面憑きの舞闘会《マスカレイドパーティ》』にて召喚された狐面の分体を被って身体能力が超強化された船員たちと一緒にオールドラゴンをあやしては帰していく。
こうして猟兵たちの活躍によって、すべてのウールドラゴンは満足して大空へと帰っていった。甲板には彼らが残していった体毛の抜け毛が飛散しているが、こんな端材であったとしても高級素材には変わらない。空賊たちは思わぬ行き掛けの駄賃を得て、猟兵たちも記念に持ち帰れるのだからだ。
思わぬ客人が去った。再び帆が張られたペレグリン・ファルコン号は風を捉えて前進し、天使核エンジン由来の駆動音を極力抑えることで音もなく『|日蝕帝国《イクリプス》』の浮島へと侵入するのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
第3章 冒険
『宝物奪還!』
|
POW : 門番を蹴散らし、殴り込む
SPD : 隠し場所に目星をつけ、素早く探す
WIZ : 交渉や脅迫で拠点の敵から情報を引き出す
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『空賊だぁ! 空賊の襲来だ
ッ!!』
嵐のように現れ、嵐のように暴れ、嵐のように去っていく屍人帝国のお尋ね者。タンペット一家を現すドクロを鷲掴みするハヤブサの姿が描かれた|空賊旗《ジョリー・ロジャー》をはためかせながら、推力を天使核エンジンへと切り替えて戦闘状態の船速となったペレグリン・ファルコン号が狙いを付けていた|日蝕帝国《イクリプス》が近隣から簒奪した物資を集積している居留地を強襲する。
だが、帝国に仇成す空賊の襲来だというのに、|空を飛ぶ魔獣に跨がって迎撃《スクランブル》打って出ようとする帝国兵の数が圧倒的少ない。それもそのはず、その多くは襲撃者の到来に備えて周辺空域の|警戒《パトロール》に出ており、居留地を守備する兵力は最も手薄な状態なのだ。これもひとえに命知らずの空賊が、屍人帝国すらも近寄らない危険極まりない空域を突破することで警戒網の隙を突いたことによるものだ。
「させるかよ!」
船長アレックスが伝声管で船員らに指示を送り、船底に開いた穴から高粘度の油と起爆用の爆薬がぎっしりと詰まった樽が投下されて、魔獣たちを目がけて爆撃する。地上では激しい爆轟が立て続けに起き、空を飛ぶ魔獣たちとそれらに騎乗しようとしていた守備兵らは尽く炎に灼かれていった。
とは言え、そこは慣れたもので簒奪された品々が収められている砦には一樽も落下されていない。外部への連絡手段と反撃のすべを喪失したとの報告を船員から受けたアレックスがペレグリン・ファルコン号を下降させ、砦の目の前に船を強行着陸させる。着陸したと同時に副船長のモーリスの号令の元、船員たちは天使核ロケットを唸らせながら砦へと強襲して激しい白兵戦が繰り広げられたのであった。
「ま、ここまで派手にやりゃあ、お客人らがどんなに暴れようがおれたちタンペット一家の仕業ってなるもんさ」
詰まるところ、普段であればここまですることなく仕事をするところであったが、猟兵が侵入した痕跡と情報を残さないための彼らなりな協力である。アレックスの言う通り、ここまで派手にすれば屍人帝国側も情報が錯綜して猟兵であったとしても空賊の仕業として処理されるだろう。
「それともうひとつ。どうも日蝕帝国の連中は、他の屍人帝国のように金目の物や食いモン以外の物……。そうだな、古文書なり一文にもなりもしねぇ骨董品を各地で略奪してるって聞いているぜ。もしかしたら、連中にとって知られちゃ不都合なもの始末するために集めてるかもしれねぇぜ。それらしいモンを見つけたら、あんたらにやるよ」
──ただし、すべてが終わったら持ち主に返す条件付きでだ。
そう言い残すと、船番を残してアレックスも部下とともに白兵戦を繰り広げるべく颯爽と船を降りる。
彼女からの情報が正しければ、タンペット一家が撤収する目安としている主力である警備中の部隊がこの砦へと戻ってくる僅かな時間の間に、効率良く情報収集するための一助となろう。
時間は刻々と進んでいる。限りある時間の中で日蝕帝国の情報を得るべく、猟兵たちも喧騒が止まない砦の内部へと侵入を開始するのであった。
稷沈・リプス
【悪蝕】
…先行していた猟兵って、お前さんたちだったんすね…。
※『四悪霊』であることを知っている。
そして一家は豪快っすね…。いや、助かるっすし、その粋には答えるっすけど!
あと、『持ち主に返す』ってーと、つまりは…そういうことっすよね!
しかし、古文書はわかるとして(文書とか調べる発端になった人)…骨董品?どういうことっす?
よくある『絵に残されてる』というやつっす?
っと、そういってる場合じゃないっすね。俺たちには、念のため蝕属性の結界張って。
その『古文書』や『骨董品』
を目についた片っ端から回収…あ、回収した荷物は任せたっす!
あと、さりげなく『セシェアト』に古文書のコピーしておくっすね!
馬県・義透
【悪蝕】
引き続き『不動なる者』にて
ああ、あの雀の主は、貴殿であったか。
(蝕神であることを知っています)
はは、本当に今のうち、というやつであるの。情報もありがたい。
うむ、『持ち主に返す』ということは、まずはこの場から持ち出さねばな。
収集しているその品も気になるが、まずは…な?
UCを使用して中を倉庫に近くして、陰海月がまず中に入る。
そして…ここにその古文書も骨董品も、入れるがよい。容量は考えなくともよい。持ち帰れるだけ持ち帰る!
※
陰海月「ぷきゅ!」
むむむ…と食べたメガリスパワーで大きくなりつつ、怪力生かして整理整頓!
骨董品は割れないように『ふかふかの間』に運ぶ。
「豪快っすね……。いや、助かるっすし、その粋には答えるっすけど!」
浮島の大地を削りながら着陸したペレグリン・ファルコン号。その後方では今も爆撃によって起きた火災が続いており、熱気とともに魔獣が焼けたことだろうか焦げた臭いが鼻につく。とは言え、彼らが陽動以上にここまで暴れてくれたお陰で相手の注意はタンペット一家へと向けられているので、猟兵たちの斥候活動は容易くなっているはずだ。
リプスは空賊と警備兵との喧騒に巻き込まれないよう砦内の通路を注意深く進むと、角に人影が見えた。
(ここは……軽く気絶させて、おねんねして貰うっす)
騒ぎとなれば、一家が引き付けている警備兵が集まってこよう。そうならない為にも、不意打ちを仕掛けるべくにじり寄るリプスであったが、襲いかかろうとしたその時、影の主が身体を翻して得物の刃先を彼の喉元へと突き付ける。
「うん……? お主は……」
「ぷきゅ!」
だが、その正体は同じくタンペット一家と行動を共にして先行する形で砦へと侵入を果たしていた『|不動なる者《内県・賢好》』とジャイアントクラゲの陰海月であった。
「ああ、あの雀の主は、貴殿であったか」
「……先行していた猟兵って、お前さんたちだったんすね……。それより、そろそろ下ろして貰っていいっす?」
「いや、すまんすまん」
彼らはとある王国に侵攻した|日蝕帝国《イクリプス》の一件で共闘した仲であり、互いの顔も見知り合っている。不動なる者はクラゲの巣より空賊船を誘導するよう霹靂を駆って先行していたが、リプスは船内で空賊一家と行動を共にしていた。故にここで両雄がようやく相まみえたといったところだ。
なお、霹靂は周辺空域の警備に出払っている本隊の帰還や騒ぎを聞きつけて近隣の砦より駆けつけた援軍が来た際の備えとして、砦の上空で警戒しながら待機している。
「ふぅ、寿命が縮まるかと思ったっす。それで、もう何か見つけたっすか?」
「うむ。この扉を開けようと思っていてな」
黒曜石の槍を下ろして、賢好が示した先には重々しい扉があった。鍵穴がひとつだけはなくどうやら幾重にも鍵が掛けられており、何かを厳重に保管していることだけは明らかだ。
「はぁー。これはぶち壊すには一苦労しそうっす」
「ああ、なので陰海月に開けて貰おうとな。陰海月、頼んだぞ」
「ぷっきゅ!」
特別意訳をするまでもなく『任せて』と張り切りながら、ブンブンと触腕を振り回してみせる。半透明な触腕が鍵穴に潜り込むと、柔らかな触手が鍵の形となって最後に硬質化すれば……。
──ガチャリ。
このように厳重な扉も『合鍵』さえあれば、簡単に開くということである。
「はえー。何時見ても凄いクラゲさんっすね」
「ぷっきゅん!
(特別意訳:えっへん!)」
リプスがよくやったっすと陰海月を撫でる中、賢好が力を込めて扉を押せば重々しい音と共に開けられる。そして彼らの目の前に広がったのは、金銀財宝とは程遠く、どちらかと言えば歴史的な価値があるといった収容物である。
しかし、これほどの扉で護っていたと言うことは、特別な理由があってのことだろう。ふたりと一匹が薄暗い室内の壁に据えられた松明を灯して部屋内を明るくさせると、その理由が次第に明らかとなってくる。
「これは……どうやら、絵壺っすね」
人ひとりが入りそうな壺に描かれたのは模様ではなく、人物や魔獣と言った物ばかりである。
「わしは美術品に疎いのだが……絵巻物のようでもあるな」
「そう、それっす。神話や英雄物語とかを主題にして絵を描かれるっすよ」
一般的に、陶磁製の壺の上に絵を施すことはあっても、それらは壺全体の芸術性を高めることが目的とされている。しかし、壺絵とは絵が壺本体から独立した芸術であり、壺の表面を立体的に装飾加工させる近世美術とは異なる価値観を有していた古代文明期に盛んに用いられたものである。
故に金や銀、宝石や息を呑むような彫刻の類は施されておらず、今となっては歴史好きな|好事家《こうずか》にしか見向きもされないだろう。
「となれんば、古より舞い戻った日蝕帝国の者もそのような感性の持ち主……ということになるか?」
「それはどうっすかね。一通り見てみたっすけど、どれもこれも”日蝕”に纏わる物語を描いたように見えるっす。日蝕帝国の連中にとっては最上級の美術品に違いないっすけど……妙に引っかかるんすよね」
「ぷきゅ!」
何か他に見落としている点がないかと云々と唸りながら、並べた壺と睨めっこするふたりを他所に、陰海月は他の収容物を物色すると一枚の古びた羊皮紙を見つける。それをふたりの元に持って来て見せれば、そこに書かれた古代文字をルプスが目を追っていく。
「ああ、古文書もあったんすね。これなら|智恵の神《ジェフティ》の力を借りれば読めるっす」
陰海月から古文書を受け取ったリプスが、ユーベルコードを発現させて遥か遠くに停泊させている中が書庫となっている大型飛空艇、移動型魔導収集書庫『ジェフティ』と接続させる。船内に収容されている蔵書から適合する文字を照らし合わせることで解読し、内容を一言一言ずつ詠み上げていくが、それに連れて彼の顔持ちは次第に曇っていく。
「……どうもきな臭くなってきたっすね。これは”昏き闇夜の神”を崇める日蝕帝国が、如何に滅んでいったかを綴った|叙事詩《言い伝え》っすよ」
──曰く、今から遥か昔に昏き闇夜の神を戴く|凶《まが》ツ国ありけり。突如としてこの世に顕し黒き邪竜が凶ツ国の王となり、国号を日蝕帝国と返る崇め奉る邪神の教えを世へと広めるべく、他国への侵略を始める。
瞬く間に戦火が燃え広がった|世界《ブルーアルカディア》は闇に閉ざされようとしたが、絶望に呑み込まれようとする世界に一粒の光が生まれた。
長じて太陽の勇者として名を馳せる勇士の名は、アルクトゥルス。強大な闇の帝国を討つ旅へと出た彼は、ヘリオス王家の姫君『空渡りの巫女』をはじめとした数多くの仲間に支えられながら、幾多の困難を乗り越えて遂に邪神と邪竜との決戦と相成る。
だが、太陽の子とも称された勇者の出現と活躍によって敗北が目前となり、数多くの将を喪って万策が尽きた日蝕帝国は起死回生の手に打って出た。
……日蝕だ。黒き邪竜が昏き邪神と同化することで膨大な魔力を得て降臨した暗黒の邪竜神がついに太陽そのものを呑み込み、無限の力を得たのだ。絶対絶大な神に等しき暴威を前に、旅を共にしてきた仲間はひとり、またひとりと倒れ、最後には太陽の勇者と空渡りの巫女のみが残った。
世界は完全なる闇に閉ざされようと誰もが絶望に陥る寸前だったその時、暗黒の邪竜神に異変が起きる。確かに暗黒の邪竜神は太陽を手中に収めて無限なる力を得た。この力を持って勇者たちの攻撃を受け付けなかったが、力を行使すればするほど纏った闇が衰えていく。
禁忌の融合を果たし、闇の力と光の力を手中に収めた暗黒の邪竜であったが、完全無欠な神ではなかったのだ。太陽が齎す無限の力を行使すればするほど内部から闇の力が削がれ、闇の防壁に綻びが生じたのだ。
この異変に気づいた太陽の勇者と空渡りの巫女による乾坤一擲の一撃をもって、暗黒の邪竜神は遂に敗れた。狂気によって世界を闇に閉ざそうとした邪神と邪竜の亡骸は、浮遊大陸と共に雲海の底へと沈んで終焉を迎えた。
こうして、再び世界に|太陽の輝き《平和の世》が取り戻されたのだ。
「……って内容っすね。よくある”過ぎたる力は身を滅ぼす”とかいう教訓が込められたお話みたいっすけど……。日蝕帝国の手で滅ぼされたヘリオス王国の王都を探索した時に見聞きした『歴史』や『お伽話』と大筋は一緒っすけど、それよりも深く踏み込んだところまで書かれているところが多いっす」
「……そうか、妙にどこかで見た覚えがあると思えば、絵壺に描き印されている紋様はヘリオス王国の紋章だったか。すると、この絵壺を並び替えれば……羊皮紙に記されていた内容の大筋に沿った流れとなるか」
「お見事、正解っす。けど、そうなるとあれもこれも日蝕帝国の恥辱とも言える記録になるのっすよね……」
それならば、尽く壊してしまえば良い。歴史とは勝者によって作られるものであるが、時に敗者が再び勝者となれば上塗りをして新たな歴史が生み出されるものだ。
とすれば、屍人帝国として復活を遂げた日蝕帝国は破竹の勢いでヘリオス王国を滅亡させ、唯一の生き残りである『アルク』と『スピカ』の少年少女のみを残して虜囚とせずに鏖殺し尽くした。これも単に怨敵である空渡りの巫女を配した国という恨みもあるだろうが、お伽話にも隠された日蝕帝国の『弱点』を知っている彼らを口封じのために処したのだろう。
もし、これらが伝える内容が史実に即したものであるならば、屍人帝国として|骸の海《過去》から黄泉帰った日蝕帝国にとって致命的な痛手を与えることが可能かもしれない。だとすれば、先手を打って真っ先にヘリオス王国を滅亡させるには十分な理由となろう。
「娯楽性を持たせるため、民草の間で語り継がれていく内に話の内容が変わるのもままあることよ。さすれば、これらをすべて持ち帰り検める必要があるの。陰海月、頼んだぞ」
「ぷきゅ!」
任せてと張り切る仕草を見せる陰海月がメガリスパワーを得て身体を肥大化させると、賢好が発現させたユーベルコード”四悪霊・『届』”によって召喚された、ねじれ双四角錐状の透明結晶へと持ち上げた壺を接触させていく。すると壺はするりと吸い込まれ、内部の夕焼け空が何時までも続く可変式日本家屋の中へ移動する。そこは『ふかふかの間』であって、壺が割れてしまう心配はない。
「時間もないっすし、俺も手伝うっす! 古文書は任せてくれっす! ……あ、そういえば、これらを元の持ち主に返さないとならないでしたっすね。でも、もしこの持ち主がヘリオス王国の人たちだったら……」
「それなら日蝕帝国との決着が済んだらば、今の預かり主であるわしがタンペット一家事情を話し、これらの処遇は彼らに任せるとしよう。それと……扉を破壊せずに宝物庫へ忍び込めたのであるから静かにな?」
「あ……了解っす」
折角扉の鍵をこじ開けずに済んだのだ。仮に警備兵が目の前の通路を横切ろうとも、厳重な施錠が施されてる扉が無事であれば、そのまま過ぎて行くだろう。そして、すべて持ち出した後に再び陰海月が鍵をかけ直せば、自らの管理下に置くことで秘匿していた重要情報が盗まれたことに気付くまでの時間稼ぎとなる。
刻々と撤収の時間が迫る中、ふたりと一匹は物音を立てないよう静かにかつ急いで、今は亡きヘリオス王国の財宝を回収していくのであった。
大成功
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アルシェ・アステル(サポート)
星々の運行を司る女神です
普段の口調は「無口(わたし、あなた、ね、わ、~よ、~の?)」です。
ぼんやり無口な感じです
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
「……どれも目が奪われる財宝ですけど、どれもこれも決めてに欠けるわね」
星々の運行を管理する星の女神、アルシェ・アステル(神のレトロウィザード・f32239)は深く溜め息を吐く。それもそのはず、確かにこれらは召喚石100億個分……ブルーアルカディア内で流通している|金貨《G》に換算すれば5,000万Gにも匹敵する目を奪われる財宝の数々だ。
だが、見れば見るほど|日蝕帝国《イクリプス》が近隣諸国を占領した折に戦利品として巻き上げた物であり、今はアレックスの指示の元で空賊船の船員らが船へと搬入していた。
「やっぱり、直接聞くしか無いわよね?」
|星の女神《アルシェ》がぼんやりとした視線を落とすと、そこには空賊との戦いの末に敗れ去った日蝕帝国兵の屍が転がっている。既にカラとなった宝箱に腰を掛けながら、彼女は人差し指のを既に事切れた|骸《むくろ》へと伸ばして指し示すと、“の”の字状にくるくると回して見せる。すると、指先から星屑のような光が散らばって行き、それらが日蝕帝国兵の屍を覆い被さっていく。そうしていく内に骸は光となって浮かび上がり、ヒトガタ状へと姿を整えていく。
『どうかされましたか、我が|創造主《あるじ》よ』
ユーベルコード『ゴッド・クリエイション』。自身の創造物に生命を与えるというもので、この場合は転がっていた骸を古代の魔術をもってして触媒に光へと置換させたものである。こうすれば記憶を継承させることがある程度は可能であり、死人に口なしとは言うが幾らかの情報を聞き出すことはできよう。だが、隷従させるだけの知性を与えている半面に寿命は限りなく少ないのが玉に瑕なのであるのだが、何も収穫がないよりはマシである。
「聴きたいことが幾つかあります。その質問に答えなさい」
『はっ……何なりとお申し付けください』
そうして時間が許される限りの詰問が始められる。しかし、どれもこれも決め手に欠けるものが多く、今UDCアースで流行りのAIによって出力される創造物が入力した内容どおりのモノができないようなもどかしさをアルシェは覚え始める。
「そろそろ時間が迫ってきていますね……。これを最後の詰問としましょう。ここに各地から簒奪した財宝を集めるよう指示したのは|何方《どなた》?」
『はい。骸の海より|この世《ブルーアルカディア》へとご帰還された日蝕帝国の帝にして守護竜。蝕の力司りし偉大なる者……”太陽を喰らう者”でございます』
その名を聞いたアルシェは思わず目を見開いた。『太陽を喰らう者』……それは日蝕帝国の大立者だからだ。
『帝竜様は過去における戦い……太陽の勇者との死闘の末に|敗《やぶ》』れましたが、骸の海より我らと屍人帝国として復活を果たした折に宣言なさいました。”完全なる存在など存在せぬ”、と。我らに課せられたご命令は、帝竜さまの弱みを知る者たちの抹殺と記録の風化ならびに封印。帝竜さまは同じ過ちを二度と繰り返さないため、ヘリオス王国に連なる者たちを……』
真実の核心へと足を踏み入れようというところで、時間が切れた。寿命を迎えたヒトガタの光は次第に光が衰えて消え去ってしまう。後もう少しだったというところであったのだが、残念ながらもこちらも時間切れでもある。
『そろそろ時間だ! 船が|出港《トンズラ》するぞ!』
ひとつでも簒奪された品々を回収すべく、空賊の船員たちが様々なものを抱えながら砦の外で天使核エンジンを再始動させているペレグリン・ファルコン号へと戻っている。あともう一歩のところでと歯噛みするアルシェであったが、帝竜自身が自らの弱点を隠すべくここまでのことをさせたのであれば、有力な情報を回収できたと言っても過言ではないだろう。
周辺空域を警戒中であった本隊と、日蝕帝国の領内に賊が侵入したとの報を受けた近隣の拠点から飛来する増援部隊が到達する前に、ペレグリン・ファルコン号は飛翔する。空賊と猟兵を乗せたハヤブサの名を冠する高速ガレオン船が最大出力状態の天使核エンジンを唸らせながら、一陣の風となって日蝕帝国の領内から離脱する。
果たしてこの斥候活動によって猟兵たちが得た『帝竜が恐れる弱点』とは何か。
謎が謎を呼ぶ中、この答えが導き出される日はそう遠くないであろう。
成功
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