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銀河帝国攻略戦㉖～救え、未来の灯を

作者：灰色幽霊

「皆様、新しい予知が出ました」
　そう言っていつもの無表情より少しだけ興奮した面持ちで猟兵たちを集めたのはアマータ・プリムス（人形遣いの人形・f03768）アマータはさらに続ける。
「アマルテア情報艦隊で得た情報から、スペースシップから拉致された有能な科学者や技術者が、帝国旗艦インペリウムの科学技術センターで働かされている事がわかり、救出に向かう事になりました。
　科学者や技術者は、生体コンピューターの部品として、科学技術センターの中央コンピューターの一部に組み込まれており、無理やり引きはがしてしまうと、意識が焼ききれて死亡してしまいます。
　多くの技術者や研究者を、安全に中央コンピューターから切り離し、無事に連れ帰ってきてください。
　彼らは、元から優秀な技術者や研究者でしたが、ドクター・オロチの研究に携わるコンピューターの一部とされていた事で、これまでのスペースシップワールドには存在しなかった、高度な技術や知識を得ています。
　彼らを救出する事ができれば、今後のスペースシップワールドの発展に大きく役立つ事でしょう」
　ですが問題が、とアマータは俯きながら言う。
「中央コンピューターは、グロテスクな機械の大樹に、果実のように『技術者や科学者が直結されたコンピューターユニット』が無数にぶら下がっているのですがそこから彼らを救いだすにはコンピューターユニットに『提示される謎』の『正しい解答』を入力する必要があるのです。無理に引き剥がそうとすると助けようとしていた人が死亡してしまいます」
　今回掲示された謎はこれです。とアマータは猟兵たちに資料を見せる。
『それは万人が抱くモノ。破滅と栄光を齎す悪魔。追い求める者の手からは滑り落ち、努力する者から逃げ回る。運否天賦に身を任せればあるいは届くモノ。さぁ、意思の力を見せてみろ。その先は蝶が案内してくれる』
　この謎を解き捕らわれた方々をどうかお救いください。とアマータは深々と頭を下げた。

第1章 冒険 『中央コンピューターの謎かけ』

POW   :    総当たりなど、力任せの方法で謎の答えを出して、救出します。 SPD   :    素早く謎の答えを導き出した後、救出した人のケアを行います。 WIZ   :    明晰な頭脳や、知性の閃きで、謎の答えを導き出して、救出します。 👑3 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●ソレを追い求める者たち

　科学技術センターに転移した猟兵たち。彼らはコンピューターユニットの入力画面の前で頭を悩ませていた。
「また悪趣味なものを……」
　集まった猟兵たちの一人エルス・クロウディス（昔日の残響・f11252）もまたコンピュータの前で頭を悩ませていた。エルス自身がこの手の頭脳労働に向いていないことは百も承知だがそれでも捕らわれた研究者たちを見逃すことはできなかった。頭が悪い？そんなことは見捨てる理由にはならない。

「ええ、何とも趣味が悪い光景…」
　眼前に広がる研究者たちという奇妙な果実を見て上垣・重（虚飾の魔人・f00260）もまたその口から見たままの感想を零す。ここまでして研究を進めようするドクター・オロチの思惑を推察しながら。

『明らかにハンドレッドが苦手な分野…』
「人の命も関わってんだ！フローラも一緒に考えてくれ…！」
　自身に宿るもう一つの人格『フローラ』と相談しながら謎の答えを探すのはハンドレッド・コール（双縁銃士・f00371）『フローラ』の知識を持ってしてもなお謎の答えは見つからない。

「くっ、謎解きは苦手なのですが…」
　トリテレイア・ゼロナイン（紛い物の機械騎士・f04141）もまた謎に頭を悩ませる。だがこの謎を解かなければ研究者たちは救えない。ならば苦手だからと言って放っておくわけにはいかない。紛い物とは言え騎士たるこの身は誰かを救うためにあるのだから。自身がこれまでに体験、経験し蓄積した知識の海へと謎の答えを探すべく潜っていくトリテレイア。

「にしても、ほんとに人じゃなく物としか見てないんだなって思えるな…」
　玖篠・迅（白龍爪花・f03758）の目に映る研究者たちはもはやヒトではなくコンピュータの部品のようにしか見えなかった。ドクター・オロチの思惑を調べておきたいところだが今はそれよりも大事なのは研究者たちの救出。ハッキングは余裕があればすることにした。

「さて、皆さん折角集まったことですし考えを共有しましょう。一人で考えていては煮詰まりますので」
　そう言って皆の注目を集めたのはミニステリアリス・グレイグース（夢に囚われし灰塵の徒・f06111）これだけの猟兵がいるのだ。各々がこれまでに体験したこと、味わった経験、知りうる知識を動員すればこの程度の謎など解けぬはずがない。
「まずは『それは万人が抱くモノ』というフレーズ。思い当たるものがある方はいらっしゃいますか？」
「万人というのが示す範囲が広すぎて特定できかねますね」
　トリテレイアが自身の記憶領域を漁った結果だが万人が該当する項目は多すぎて之と言うモノに絞り込めずにいた。
「分からねぇ事を考えても仕方ねぇだろ。次行こうぜ次」
「次は『破滅と栄光を齎す悪魔』ですか。これはまだ分かりやすそうです」
　即座に白旗をあげたハンドレッドと腕を組みながら次のフレーズについて考える重。たしかに『それは万人が抱くモノ』というフレーズは抽象的過ぎてここから答えを導くのは難しいだろう。今は頭の隅に置いておくべきフレーズだ。
「破滅と栄光、相反する二つの事柄を内包するもの」
「つまり人によりけりってことだな」
「誰かにとっては破滅を導くもので。誰かにとっては栄光への道しるべ……」
　ミニステリアリスと迅とエルスの中で答えが浮かび上がってくる。分不相応なそれは身を滅ぼすが同時に叶えてしまえば栄光を与えてくれるモノ。
「『追い求める者の手からは滑り落ち、努力する者から逃げ回る』。誰でも簡単には手に入らないってことか」
「『運否天賦に身を任せればあるいは届くモノ』。それが手に入るかどうかは運次第ということですね」
　ハンドレッドとトリテレイアもまた次のフレーズの見解をあげていく。それは弛まぬ努力と時の運。双方を持つ者にしか振り向かないモノ。
「『さぁ、意思の力を見せてみろ。その先は蝶が案内してくれる』。このフレーズがこの謎の根幹でしょう」
「ええ、その蝶が案内AIといった便利なものではなく答えへの道に繋がる手がかりとするなら」
「夢、かな……」
　エルスの口から漏れた一言。それに他の猟兵たちも頷く。
「高すぎたそれは理想と呼ばれて、行き過ぎたものは野望となる」
「追い求める者や努力する者が望む『夢』に近づこうとすりゃ滑り落ち、逃げ回る…大人になるにつれ、冷めちまうってことだろ」
「蝶が案内してくれるってとは、胡蝶の夢だっけ？あれじゃね？」
「すごくふわっとした回答なのは分かってるんですけど。まあ問いかけ自体ふわっとしてますしこれが回答でしょう」
　答えを出した猟兵たちはそれぞれコンピューターユニットの前に立ち『夢』という回答を入力する。【UNLOOK】の機械音と共に捕らわれていた研究者たちの拘束が外れ解放される。それを猟兵たちは受け止め救いだす。

　夢、それは妥協、あるいは充足を得られなかったなら、それらはいつか、己に牙を剥いて身を滅ぼす。だがどそれは、誰が何と言おうとも、目指す本人にとっては希望でもあるのかもしれない。他者が否定しようと、己が卑下しようと。
「……ひょっとしたら、俺にもいつか、こうなる日が来るのかもしれないな……」
　エルスは自身のこれからに頭を悩ませながら研究者たちを助け出す。

「それにしても夢ですか。皮肉ですね」
　重もまた自身が『夢』というワードを入力したことを自嘲する。バーチャルキャラクターの重が夢について語るのはあまりにも可笑しいと感じてしまったからだ。だがバーチャルキャラクターであろうと夢は抱くかもしれない。重がそれを見つけられるかはまた別の話。

　救助を続けながらトリテレイアは夢想する。トリテレイアもまた紛い物から真の騎士になりたいという夢がある。その夢が命取りになることもあるかもしれない。だがトリテレイアは諦めない。自分自身の意思の力で夢に手を届かせたいのだ。それがトリテレイアと言う騎士だから。

「確かに夢で蝶、といえば胡蝶の夢ですがあのお話に出てきた夢の中の蝶が案内した先は現実でしたね。さ、夢の時間はおしまいです。この現実の、手が届くかも不確かな未来の夢のため彼らには早くこちらに戻ってきてもらいましょう」


　こうして猟兵たちは救いだした研究者たちと共にインペリウムを脱出した。彼らの知識と技術がこの戦いを終わらせるために使われると信じて。
　―――戦争の早期終結と言う『夢』に向けて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年02月17日